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特許7578532摩擦圧接機、摩擦圧接方法及び部材の製造方法
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  • 特許-摩擦圧接機、摩擦圧接方法及び部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】摩擦圧接機、摩擦圧接方法及び部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B23K20/12 F
B23K20/12 A
B23K20/12 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021064084
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159717
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】須永 頼匡
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特公昭44-013814(JP,B2)
【文献】特開2008-272834(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017514(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のワークを回転させつつ、第2のワークを一定の回転角度で保持して前記回転している第1のワークに押し付けることにより、前記第1のワークと前記第2のワークの接触部分を加熱する第1工程と、
前記第1のワークの回転を停止させると共に、前記第2のワークを前記第1のワークに押し付ける荷重を増加させる第2工程と、
前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第1のワークを再度回転させる第3工程と、
前記荷重を解除する第4工程と、
を備えた摩擦圧接方法。
【請求項2】
第1のワークを固定させつつ、第2のワークを一定の回転角度で保持して前記固定している第1のワークに押し付け、その後、前記第1のワークを回転させることにより、前記第1のワークと前記第2のワークの接触部分を加熱する第1工程と、
前記第1のワークの回転を停止させると共に、前記第2のワークを前記第1のワークに押し付ける荷重を増加させる第2工程と、
前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第1のワークを再度回転させる第3工程と、
前記荷重を解除する第4工程と、
を備えた摩擦圧接方法。
【請求項3】
第1のワークを固定させつつ、第2のワークを一定の固定角度で保持して前記固定している第1のワークに押し付け、その後、前記第1のワーク及び前記第2のワークを回転させることにより、前記第1のワークと前記第2のワークの接触部分を加熱する第1工程と、
前記第1のワークの回転を停止させると共に、前記第2のワークを前記第1のワークに押し付ける荷重を増加させる第2工程と、
前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第1のワークを再度回転させる第3工程と、
前記荷重を解除する第4工程と、
を備えた摩擦圧接方法。
【請求項4】
第1のワークを回転させつつ、第2のワークを一定の固定角度で保持して前記回転している第1のワークに押し付け、その後、前記第2のワークを回転させることにより、前記第1のワークと前記第2のワークの接触部分を加熱する第1工程と、
前記第1のワークの回転を停止させると共に、前記第2のワークを前記第1のワークに押し付ける荷重を増加させる第2工程と、
前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第1のワークを再度回転させる第3工程と、
前記荷重を解除する第4工程と、
を備えた摩擦圧接方法。
【請求項5】
前記第2工程は、前記第2のワークの回転を停止させると共に、前記第1のワークを前記第2のワークに押し付ける荷重を増加させ、
前記第3工程は、前記第1のワークが前記第2のワークに押し込まれている間に、前記第2のワークの回転角度を検出し、前記第2のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第2のワークを再度回転させる請求項3または4に記載の摩擦圧接方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の摩擦圧接方法を備えた部材の製造方法。
【請求項7】
前記部材はラックバーであり、
前記第1のワークには第1の歯面が形成されており、
前記第2のワークには第2の歯面が形成されている請求項6に記載の部材の製造方法。
【請求項8】
前記部材は中空である請求項6又は7に記載の部材の製造方法。
【請求項9】
サーボモータを有し、前記サーボモータにより第1のワークを回転させるチャックと、
第2のワークを一定の回転角度で保持して前記第1のワークに押し付けるバイスと、
前記バイスが前記第2のワークを前記第1のワークに押し付けた状態で、前記サーボモータが回転を停止させた後、前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記サーボモータからの信号に基づいて前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定値に近づくように、前記サーボモータに前記第1のワークを再度回転させる制御部と、
を備えた摩擦圧接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、摩擦圧接機、摩擦圧接方法及び部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦圧接機の中には、チャックにサーボモータを内蔵し、摩擦圧接後のワークの回転角度を制御できるものがある。しかしながら、摩擦圧接後の2つのワーク間で回転角度を高精度に一致させる必要がある場合には、回転角度の精度が不十分である場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3355586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、接合後の回転角度の精度が高い摩擦圧接機、摩擦圧接方法及び部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る摩擦圧接機は、サーボモータを有し、前記サーボモータにより第1のワークを回転させるチャックと、第2のワークを一定の回転角度で保持して前記第1のワークに押し付けるバイスと、制御部と、を備える。前記制御部は、前記バイスが前記第2のワークを前記第1のワークに押し付けた状態で、前記サーボモータが回転を停止させた後、前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記サーボモータからの信号に基づいて前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定値に近づくように、前記サーボモータに前記第1のワークを再度回転させる。
【0006】
本発明の実施形態に係る摩擦圧接方法は、第1のワークを回転させつつ、第2のワークを一定の回転角度で保持して前記回転している第1のワークに押し付けることにより、前記第1のワークと前記第2のワークの接触部分を加熱する工程と、前記第1のワークの回転を停止させると共に、前記第2のワークを前記第1のワークに押し付ける荷重を増加させる工程と、前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第1のワークを再度回転させる工程と、前記荷重を解除する工程と、を備える。
【0007】
本発明の実施形態に係る部材の製造方法は、第1のワークを回転させつつ、第2のワークを一定の回転角度で保持して前記回転している第1のワークに押し付けることにより、前記第1のワークと前記第2のワークの接触部分を加熱する工程と、前記第1のワークの回転を停止させると共に、前記第2のワークを前記第1のワークに押し付ける荷重を増加させる工程と、前記第2のワークが前記第1のワークに押し込まれている間に、前記第1のワークの回転角度を検出し、前記第1のワークの回転角度が設定された回転角度に近づくように、前記第1のワークを再度回転させる工程と、前記荷重を解除する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、接合後の回転角度の精度が高い摩擦圧接機、摩擦圧接方法及び部材の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る摩擦圧接機を示す図である。
図2】(a)は第1の実施形態に係る摩擦圧接機よって製造される部材を示す上面図であり、(b)はその側面図である。
図3】横軸に時間をとり、縦軸にワークW1の回転数、ワークW2に印加する荷重、及び、ワークW2の移動量をとって、第1の実施形態に係る摩擦圧接方法を示すサイクル線図である。
図4】横軸に時間をとり、縦軸にワークW1の回転数、ワークW2に印加する荷重、及び、ワークW2の移動量をとって、第2の実施形態に係る摩擦圧接方法を示すサイクル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る摩擦圧接機を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る摩擦圧接機1においては、土台10、支持部11、チャック12、バイス13、及び、制御部14が設けられている。
【0011】
土台10は、例えば、奥屋の床面に設置されている。支持部11は、土台10上に配置されている。支持部11は、チャック12を支持している。チャック12には、サーボモータ15が設けられている。チャック12はワークW1を所定の回転角度に位置決めして保持することができる。また、チャック12は、サーボモータ15によりワークW1を回転させることができる。サーボモータ15は、ワークW1の回転角度を制御することができる。また、サーボモータ15は、ワークW1の回転角度を検出し、検出結果を表す検出信号S1を出力することができる。
【0012】
なお、本明細書において「回転角度」とは、例えばワークW1については、ワークW1の回転軸に垂直な平面において、この回転軸からワークW1の表面のある1点に向かう方向が、回転軸を通過する基準線に対してなす角度であり、0°以上360°未満の値で表される角度である。ワークW2についても同様である。
【0013】
制御部14は、例えば、支持部11内に配置されている。制御部14には、ワークW1の回転角度の設定値θを入力することができる。また、制御部14は、サーボモータ15からワークW1の回転角度の検出値θを表す検出信号S1が入力される。制御部14は、ワークW1の回転角度の設定値θ及び検出値θに基づいて、サーボモータ15に対して制御信号S2を出力し、サーボモータ15を所定の回転量だけ回転させることができる。
【0014】
バイス13は、土台10上における支持部11から離れた位置に配置されている。バイス13は例えば2つ割りのバイスである。バイス13は、ワークW2をワークW1に対向する位置で保持することができる。バイス13は、ワークW2を所定の回転角度に位置決めすることができ、この回転角度が変化しないように、ワークW2を強く把持している。また、バイス13は、ワークW2を把持したまま移動させて、ワークW1に押し付けることができる。
【0015】
図2(a)は本実施形態に係る摩擦圧接機よって製造される部材を示す上面図であり、(b)はその側面図である。
図2(a)及び(b)に示すように、ワークW1及びW2は、摩擦圧接されて1つの部材Mとなる部品である。部材Mにおいて、ワークW1は接合面Pを介してワークW2に接合されている。部材Mは、例えば、自動車のパワーステアリングシステムに用いられるダブルピニオンラックバーであり、例えば、中空ラックバーである。部材Mが中空ラックバーである場合、ワークW1及びW2も中空である。
【0016】
ワークW1には、歯面B1が形成されている。歯面B1は、パワーステアリングシステムの第1のピニオン(図示せず)と噛み合う部分である。ワークW2には、歯面B2が形成されている。歯面B2は、パワーステアリングシステムの第2のピニオン(図示せず)と噛み合う部分である。歯面B1の位相と歯面B2の位相は高精度に対応している必要がある。このため、ワークW1の回転角度とワークW2の回転角度は高精度に対応している必要がある。
【0017】
次に、本実施形態に係る摩擦圧接機の動作、すなわち、本実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法について説明する。
図3は、横軸に時間をとり、縦軸にワークW1の回転数、ワークW2に印加する荷重、及び、ワークW2の移動量をとって、本実施形態に係る摩擦圧接方法を示すサイクル線図である。
【0018】
先ず、図1に示すように、チャック12にワークW1を装着し、所定の回転角度で位置決めする。また、バイス13にワークW2を装着し、所定の回転角度で位置決めする。接合後のワークW1の回転角度の設定値θを制御部14に入力する。
【0019】
次に、図1及び図3に示すように、チャック12のサーボモータ15がワークW1を回転させる。このときの回転数は、例えばワークがφ30mm肉厚4mmの中空ラックバーの場合、1500rpm以上2500rpm以下である。一方、バイス13はワークW2を回転させない。そして、バイス13がワークW2をワークW1に向けて移動させ、ワークW1に一定の荷重で押し付ける。このときの荷重は、例えば、5.0kN以上10kN以下である。これにより、ワークW1とワークW2との接触部分に摩擦により熱が発生し、この接触部分が加熱される。
【0020】
この状態を一定の時間維持する。例えば、10秒間以上20秒間以下の期間維持する。接触部分の温度は、例えば、800~1000℃程度となる。ワークW2はワークW1に少しずつ押し込まれる。ここまでの工程を「摩擦工程(第1工程)」という。
【0021】
次に、サーボモータ15を停止し、ワークW1の回転を急停止させると共に、バイス13がワークW2をワークW1に押し付ける荷重を増加させる。例えば、荷重を20kN以上25kN以下とする。これにより、ワークW2はワークW1にさらに3~8秒間ほど押し込まれ、接触部分が径方向に膨張し、バリとなる。この工程を「荷重増加工程(第2工程)」という。
【0022】
ワークW1の回転を急停止させた時、サーボモータ15はワークW1を設定された回転角度θで止めようとするが、実際には慣性力等により、ばらつきが生じる。例えば、±1°程度のばらつきが生じる。サーボモータ15は回転を停止した後、ワークW1の実際の回転角度θを検出し、検出結果を表す検出信号S1を制御部14に対して出力する。制御部14は、サーボモータ15に対して制御信号S2を出力し、ワークW1の回転角度θが設定値θに近づくように、サーボモータ15にワークW1を再度回転させる。このときの回転量の絶対値は、例えば、1°未満である。この工程を「回転角度検出工程(第3工程)」という。
【0023】
これにより、ワークW1の回転角度θが設定値θに近くなり、例えば、±0.15°未満となる。このような回転角度θの調整は、ワークW2の移動量が増加し続けている期間中、すなわち、接触部分が熱がある軟らかい間に行う。これにより、接触部分に内部応力が残留することを抑制できる。
【0024】
その後、ワークW2に印加する荷重を解除し、接触部分は放冷される。これにより、ワークW1がワークW2に接合されて、部材Mが製造される。この工程を「荷重解除工程(第4工程)」という。なお、部材Mの規格によっては、接触部分における膨張した部分を除去してもよい。
【0025】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、バイス13がワークW2をワークW1に押し付けた状態で、サーボモータ15が回転を停止した後、制御部14がサーボモータ15からの検出信号S1に基づいてワークW1の回転角度θを検出し、回転角度θが設定値θに近づくように、サーボモータ15にワークW1を再度回転させている。このとき、摩擦圧接のためのワークW1の回転は既に停止しているため、この回転による慣性力が、ワークW1を再度回転させる際に影響を及ぼすことはない。これにより、ワークW1の回転角度をワークW2の回転角度に精度良く対応させることができる。
【0026】
この結果、ワークW1に歯面B1が形成され、ワークW2に歯面B2が形成されている場合には、歯面B1の位相と歯面B2の位相を精度良く対応させることができる。このため、本実施形態によれば、予め歯面を形成したワーク同士を接合することができる。この結果、部材Mを製造するための工程を簡略化できる。
【0027】
また、本実施形態においては、ワークW2の移動量が増加し続けている間に、ワークW1を再回転させている。これにより、接触部分が軟質なうちにワークW1を再回転させて回転角度を調整することができる。これにより、接触部分における内部応力の残留を抑制できる。この場合、摩擦圧接機1又はその周辺に、別途熱源を設ける必要がない。
【0028】
なお、仮にワークW1を再回転させないと、製造後の部材MにおいてワークW1の回転角度の誤差が大きく、歯面B1の位相と歯面B2の位相を十分な精度で対応させることができない。したがって、歯面B1及び歯面B2のうち、少なくとも一方は、ワークW1とワークW2を摩擦圧接した後に形成する必要がある。このため、部材Mを製造するための工程が複雑になる。また、摩擦圧接後に中空のワークに歯面を切削などで形成しようとするとワークに穴が開いてしまう可能性があるため、摩擦圧接後に歯面を形成するワークは、中実ワークとする必要がある。したがって、例えば部材Mがラックバーである場合には、全体が中空のラックバーを製造することが困難になる。この結果、ラックバーの軽量化が阻害される。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法について説明する。
図4は、横軸に時間をとり、縦軸にワークW1の回転数、ワークW2に印加する荷重、及び、ワークW2の移動量をとって、本実施形態に係る摩擦圧接方法を示すサイクル線図である。
【0030】
先ず、図1に示すように、チャック12にワークW1を装着し、所定の回転角度で位置決めする。また、バイス13にワークW2を装着し、所定の回転角度で位置決めする。接合後のワークW1の回転角度の設定値θを制御部14に入力する。
【0031】
次に、図1及び図4に示すように、チャック12のサーボモータ15はワークW1を回転させない(固定させる)。また、バイス13もワークW2を回転させない(固定させる)。そして、バイス13がワークW2をワークW1に向けて移動させ、ワークW1に一定の荷重で押し付け、その後、ワークW1を回転させる。このときの回転数は、例えばワークがφ30mm肉厚4mmの中空ラックバーの場合、1500rpm以上2500rpm以下である。このときの荷重は、例えば、5.0kN以上10kN以下である。これにより、ワークW1とワークW2との接触部分に摩擦により熱が発生し、この接触部分が加熱される。
【0032】
この状態を一定の時間維持する。例えば、10秒間以上20秒間以下の期間維持する。接触部分の温度は、例えば、800~1000℃程度となる。ワークW2はワークW1に少しずつ押し込まれる。ここまでの工程を「摩擦工程(第1工程)」という。
なお、この第1工程以降の第2から第4工程は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態の効果についても第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法について説明する。
【0034】
先ず、図1に示すように、チャック12にワークW1を装着し、所定の回転角度で位置決めする。また、バイス13にワークW2を装着し、所定の回転角度で位置決めする。接合後のワークW1の回転角度の設定値θを制御部14に入力する。
【0035】
次に、図1及び図4に示すように、チャック12のサーボモータ15はワークW1を回転させない(固定させる)。また、バイス13もワークW2を回転させない(固定させる)。そして、バイス13がワークW2をワークW1に向けて移動させ、ワークW1に一定の荷重で押し付け、その後、ワークW1及びワークW2を回転させる。このときの回転数は、例えばワークがφ30mm肉厚4mmの中空ラックバーの場合、ワークW1の回転数を1500rpm以上2500rpm以下とし、ワークW2の回転数を100rpm以上300rpm以下とする。このときの荷重は、例えば、5.0kN以上10kN以下である。これにより、ワークW1とワークW2との接触部分に摩擦により熱が発生し、この接触部分が加熱される。
【0036】
この状態を一定の時間維持する。例えば、10秒間以上20秒間以下の期間維持する。接触部分の温度は、例えば、800~1000℃程度となる。ワークW2はワークW1に少しずつ押し込まれる。ここまでの工程を「摩擦工程(第1工程)」という。
【0037】
次に、サーボモータ15を停止し、ワークW1及びワークW2の回転を急停止させると共に、バイス13がワークW2をワークW1に押し付ける荷重を増加させる。例えば、荷重を20kN以上25kN以下とする。これにより、ワークW2はワークW1にさらに3~8秒間ほど押し込まれ、接触部分が径方向に膨張し、バリとなる。この工程を「荷重増加工程(第2工程)」という。
なお、この第2工程以降の第3から第4工程は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態の効果についても第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0038】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法について説明する。
【0039】
先ず、図1に示すように、チャック12にワークW1を装着し、所定の回転角度で位置決めする。また、バイス13にワークW2を装着し、所定の回転角度で位置決めする。接合後のワークW1の回転角度の設定値θを制御部14に入力する。
【0040】
次に、図1及び図3に示すように、チャック12のサーボモータ15はワークW1を回転させる。一方、バイス13はワークW2を回転させない(固定させる)。そして、バイス13がワークW2をワークW1に向けて移動させ、ワークW1に一定の荷重で押し付け、その後、ワークW2を回転させる。このときの回転数は、例えばワークがφ30mm肉厚4mmの中空ラックバーの場合、ワークW1の回転数を1500rpm以上2500rpm以下とし、ワークW2の回転数を100rpm以上300rpm以下とする。このときの荷重は、例えば、5.0kN以上10kN以下である。これにより、ワークW1とワークW2との接触部分に摩擦により熱が発生し、この接触部分が加熱される。
【0041】
この状態を一定の時間維持する。例えば、10秒間以上20秒間以下の期間維持する。接触部分の温度は、例えば、800~1000℃程度となる。ワークW2はワークW1に少しずつ押し込まれる。ここまでの工程を「摩擦工程(第1工程)」という。
【0042】
次に、サーボモータ15を停止し、ワークW1及びワークW2の回転を急停止させると共に、バイス13がワークW2をワークW1に押し付ける荷重を増加させる。例えば、荷重を20kN以上25kN以下とする。これにより、ワークW2はワークW1にさらに3~8秒間ほど押し込まれ、接触部分が径方向に膨張し、バリとなる。この工程を「荷重増加工程(第2工程)」という。
なお、この第2工程以降の第3から第4工程は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態の効果についても第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0043】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法について説明する。
第5の実施形態では、回転角度検出工程(第3工程)が第1の実施形態と異なる。その他の工程及び本実施形態の効果は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る回転角度検出工程(第3工程)では、ワークW1の回転を急停止させた場合、サーボモータ15はワークW1を設定された回転角度θで止めようとするが、実際には慣性力等により、ばらつきが生じる。例えば、±1°程度のばらつきが生じる。そのため、サーボモータ15は回転を停止せず、速度を低下させた一定の回転数(例えばワークがφ30mm肉厚4mmの中空ラックバーの場合、100rpm以上300rpm以下)で維持しつつ、ワークW1の実際の回転角度θを検出し、検出結果を表す検出信号S1を制御部14に対して出力する。制御部14は、サーボモータ15に対して制御信号S2を出力し、ワークW1の回転角度θが設定値θに近づくように、サーボモータ15にワークW1を再度回転させる。このときの回転量の絶対値は、例えば、1°未満である。
本実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法は、上記のようにすることで、当該ばらつきを抑制することができる。
【0045】
なお、本実施形態での回転角度検出工程(第3工程)は、第2の実施形態での回転角度検出工程(第3工程)にも適用できる。その他の構成及び効果は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法について説明する。
第6の実施形態では、回転角度検出工程(第3工程)が第3の実施形態と異なる。その他の工程及び本実施形態の効果は第3の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係る回転角度検出工程(第3工程)では、ワークW1の回転を急停止させた場合、サーボモータ15はワークW1を設定された回転角度θで止めようとするが、実際には慣性力等により、ばらつきが生じる。例えば、±1°程度のばらつきが生じる。これはワークW2も同様なことが言える。
【0048】
そのため、サーボモータ15やバイス13は回転を停止せず、速度を低下させた一定の回転数(例えばワークがφ30mm肉厚4mmの中空ラックバーの場合、ワークW1は100rpm以上300rpm以下、ワークW2は10rpm以上50rpm以下)で維持しつつ、ワークW1の実際の回転角度θを検出し、検出結果を表す検出信号S1を制御部14に対して出力する。制御部14は、サーボモータ15に対して制御信号S2を出力し、ワークW1の回転角度θが設定値θに近づくように、サーボモータ15にワークW1を再度回転させる。このときの回転量の絶対値は、例えば、1°未満である。
本実施形態に係る摩擦圧接方法及び部材の製造方法は、上記のようにすることで、当該ばらつきを抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態での回転角度検出工程(第3工程)は、第4の実施形態での回転角度検出工程(第3工程)にも適用できる。その他の構成及び効果は第4の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0050】
前述の実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこの実施形態には限定されない。例えば、前述の各実施形態において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1:摩擦圧接機
10:土台
11:支持部
12:チャック
13:バイス
14:制御部
15:サーボモータ
B1、B2:歯面
M:部材
P:接合面
S1:検出信号
S2:制御信号
W1、W2:ワーク
図1
図2
図3
図4