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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチ
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20241029BHJP
   A01K 89/017 20060101ALI20241029BHJP
   A01K 89/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A01K89/015 A
A01K89/015 E
A01K89/017
A01K89/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021074977
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169129
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑太郎
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-184271(JP,A)
【文献】特開平07-099867(JP,A)
【文献】特開平08-103195(JP,A)
【文献】米国特許第05749533(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/015
A01K 89/017
A01K 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに糸巻き操作を行う操作部と、該スプールを回転可能に支持する支持軸部と、該支持軸部と該スプールとの間に復元力を発生させる復元力生成部と、該スプールの該支持軸部に対する回転移動量を規制する規制部と、該スプールの該支持軸部に対する回転移動量を検出する検出部と、を備えることを特徴とする糸巻き装置。
【請求項2】
前記スプールに巻かれる釣糸の巻き取り半径を検出する釣糸径検出部と、該釣糸径と該スプールの該支持軸部に対する回転移動量から張力を算出する張力算出部と、を備える、請求項1に記載の糸巻き装置。
【請求項3】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールを回転可能に軸支する支持軸部と、該支持軸部を回転操作可能な操作部と、該支持軸部と該スプールの間に復元力を働かせる復元力生成部と、該支持軸部の軸方向に移動可能な被検出部と、該被検出部の軸方向の変位を検出する検出部と、該スプールの該支持軸部に対する回転方向の移動を変換して被検出部に伝達する変換機構とを有することを特徴とする糸巻き装置。
【請求項4】
前記復元力生成部は、バネ部材である、請求項3に記載の糸巻き装置。
【請求項5】
前記変換機構は、カム構造又はネジ構造である、請求項3又は4に記載の糸巻き装置。
【請求項6】
前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に投光する発光部と、該発光部の光を受光する受光部と、から構成される、請求項3から5までのいずれか1項に記載の糸巻き装置。
【請求項7】
前記被検出部には永久磁石が設けられ、
前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられる永久磁石の磁気を検出する磁気検出部である、請求項3から5までのいずれか1項に記載の糸巻き装置。
【請求項8】
前記被検出部には音波反射部が設けられ、
前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられた音波反射部からの音波を検出する音波検出部である、請求項3から5までのいずれか1項に記載の糸巻き装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の糸巻き装置は、魚釣用リールである、魚釣用リール。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の糸巻き装置は、ウィンチである、ウィンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止時も含め高精度で張力を検出可能な糸巻き装置、魚釣用リール及びウィンチに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リール等の糸巻き装置では、糸の張力を検出することで、糸フケ発生の有無を検知して糸絡みを未然に防止したり、魚信の有無を検知することで魚釣りを効率的に行うことができるようにしている。従来より、糸の張力を検出するための方法として、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、魚釣りに用いる釣竿を構成する筒状の竿体であって、炭素繊維に合成樹脂を含浸させたプリプレグ素材を焼成してなる筒状の本体部と、前記本体部の周面に配置された軸方向に伸びる圧電素子帯と、前記本体部の竿元側端部に脱着自在に装着される底栓と、前記底栓に配置された前記圧電素子帯からの入力電圧を昇圧する昇圧手段とを備え、前記本体部の周面には前記本体部の周面から順に、第1電極層、絶縁層、発光層、第2電極層、表面層とが積層されており、前記昇圧手段からの電圧が前記第1電極層と前記第2電極層との間を加圧する竿体について開示している。
【0004】
また、特許文献2では、魚の当りにより魚釣り用の釣り糸に加えられた振動を検出する検出部とその信号を電気信号に変換処理して後、信号処理回路に入力し、その処理信号のアナログ的変化を異なる種類の音、或は光に変換する手段を具えた魚釣り用センサについて開示している。
【0005】
さらに、特許文献3では、釣り糸を巻取る回転体を備え、この回転体からの釣り糸に作用する張力に対応した回転体の変位を許容する支承部を備え、この回転体の変位に基づき釣り糸に作用する張力を計測するセンサを備え、このセンサからの計測結果が出力される報知装置夫々を備えると共に、この報知装置、及び、センサ夫々を単一の防水ケースに収めて成る釣り用リールについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-008005号公報
【文献】特開昭64-037238号公報
【文献】特開平5-184271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る竿体では、竿体を検出対象とし、竿体のたわみや振動を検出するが、竿体と釣糸が真っ直ぐな状態になると検出できなくなるなど、竿体が特定の位置にあるときのみに検出可能となるに過ぎないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に係る魚釣り用センサでは、釣糸を検出対象とし、プーリー等の案内部を設けることで釣糸を曲げ、その屈曲点で張力が外部に与える力を検出しているが、張力検出のために糸道を曲げる必要があるため、キャスト時など釣糸を高速で繰出したい時に抵抗となり得、またタックル全体を小型化しにくいといった問題があった。
【0009】
また、特許文献3に係る釣り用リールでは、回転体が張力以外の外力によっても変位し得るため、回転体の変位から正確な張力を検出するのが実際上難しいという問題があった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに糸巻き操作を行う操作部と、該スプールを回転可能に支持する支持軸部と、該支持軸と該スプールとの間に復元力を発生させる復元力生成部と、該スプールの回転移動量を規制する規制部と、該スプールの回転移動量を検出する検出部と、を備えるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、前記スプールに巻かれる釣糸の径を検出する釣糸径検出部と、該釣糸径と該スプールの回転移動量から張力を算出する張力算出部と、を備えるように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールを回転可能に軸支する支持軸部と、該支持軸部を回転操作可能な操作部と、該支持軸部と該スプールの間に復元力を働かせる復元力生成部と、該支持軸部の軸方向に移動可能な被検出部と、該被検出部の軸方向の変位を検出する検出部と、該スプールの回転方向の移動を変換して被検出部に伝達する変換機構とを有するように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記復元力生成部は、バネ部材である。
【0015】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記変換機構は、カム構造又はネジ構造である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に投光する発光部と、該発光部の光を受光する受光部と、から構成される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、前記被検出部には永久磁石が設けられ、前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられる永久磁石の磁気を検出する磁気検出部である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、前記被検出部には音波反射部が設けられ、前記検出部は、非接触式の位置検出手段であり、前記被検出部に設けられた音波反射部からの音波を検出する音波検出部である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、魚釣用リールである。
【0020】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、ウィンチである。
【発明の効果】
【0021】
上記実施形態によれば、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置の分解斜視図を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置の分解斜視図を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る糸巻き装置の断面図を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る糸巻き装置の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0024】
まず、図1から3を参照して、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100の構成について説明する。なお、説明の簡略化のため、以下の説明では張力検出機構の箇所のみを扱い、従来の糸巻き装置と同様の箇所は説明を省略する。まず、図1及び2は糸巻き装置100の分解斜視図を示し、図3は糸巻き装置100の中心軸を通る断面で破断した断面図を示す。
【0025】
これらの図に示すように、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、スプール1と、支持軸部(支持軸ともいうが以下支持軸部と呼ぶ)2と、回転規制部3と、復元部(復元手段)4と、直進部材5と、被検出部(被検出手段)6、検出部(検出手段)7とから構成される。スプール1は、円筒形状に形成され、その外周部により釣糸を巻き取ることが可能に構成される。なお、以下の説明ではスプール1の中心軸方向を軸方向、その回転方向を回転方向と定義する。
【0026】
支持軸部2は、概略円柱状に形成され、軸受け21によってスプール1を回転可能に軸支する。また、軸受け22によって、図示しない糸巻き装置100の本体部に対して回転可能に軸支され、同様に図示しない公知の操作手段を操作することによって、回転操作することができる。この操作により、糸をスプール1に巻き取ることができる。操作手段は、支持軸部2を回転させることができ、ハンドルやレバーといったユーザの操作を受け付ける装置と、ギヤやベルト、シャフトなどの動力伝達手段の組み合わせによって実現できる。必要に応じて、モータやエンジンなどの動力源を用いてもよい。また、伝達される動力に制限を設けるドラグ装置(トルクリミッタ)や、動力伝達の可否を切り替えるクラッチ装置を有するようにしてもよい。また、操作手段の一部にワンウェイクラッチやラチェットなどの逆転防止機構を設け、スプール1が不用意に逆回転することを防止するようにしてもよい。
【0027】
また、回転規制部3は、支持軸部2に固定され、スプール1の支持軸部2に対する角度移動量を所定の範囲に規制する。本発明の一実施形態においては、回転規制部に設けたダボ31が、スプール1に設けた空隙11の両端に突き当たるようにしている。これにより、スプール1が支持軸2に対して0°から60°の範囲の角度で回転可能に構成される。以降、この角度をθと定義する。
【0028】
復元部(復元手段)4は、スプール1に所定の復元力を生じさせることができる。本発明の一実施形態においては、バネ部材(例えば、トーションバネ)によって構成することができ、その一端が回転規制部31に接触し、他端がスプール1に接触している。これにより、スプール1に働くトルクTが所定値以下のときはθ=0°となるようにバネ付勢される。そしてトルクの増加に伴い、角度θが増加するように構成される。本発明の一実施形態においては、トーションバネの中心軸をスプール1の中心軸と概略同軸にすることで、トルクTの増加量と角度θの変位量が比例し、トルクTの値が所定値以上のときは、回転規制部とスプールの空隙の一端が接触することで、角度θ=60°となるように構成される。復元部(復元手段)として、上記のような弾性バネ以外にも、永久磁石によって生じる磁力を用いるなど、復元力を発生させる他の方法を用いても構わない。
【0029】
直進部材5は、概略円筒状に構成され、支持軸2に対して軸方向に直進可能に支持される。回転伝達部51によって、スプール1から回転方向の伝達力を受けることで、支持軸2に対してスプール1と共に回転方向に角度θ分移動する。直進部材5の側面部には、螺旋状に形成されたカム溝52が設けられることで、支持軸2に固定されるフォロワピン23と共に、変換機構10としてカム機構を構成する。このカム機構により、直進部材5は回転移動に応じて軸方向にも移動する。すなわち、スプール1の回転方向の角度θ変位量が、直進部材5の軸方向の移動量Xに変換するように構成されており、本発明の一実施形態においては、角度θが60°移動した際に、軸方向に2mm移動するように構成される。
【0030】
なお、本発明の一実施形態における変換機構は上記構成に限らず、他の構成でも同様の効果を実現できる。例えば、ネジ機構、すなわち、スプール1と直進機構5にそれぞれ雌ネジ部、雄ネジ部を設けて螺合させ、直進部材5は支持軸2に対して直進可能に支持しておくことにより、スプール1の回転運動を、ネジ機構によって直進部材5の軸方向の直進運動に変換できる。また、本発明の一実施形態における変換機構は、カム機構やネジ機構
以外の機構であってもよい。
【0031】
被検出部(被検出手段)6は直進部材5に固定され、リール本体に配置された検出手段7によって軸方向の移動を検出可能としている。本発明の一実施形態においては、被検出部(被検出手段)6は永久磁石であり、検出部(検出手段)7はホール素子等の公知の磁気センサである。被検出部(被検出手段)6の軸方向の移動量に比例して、検出部(検出手段)の電圧値が上昇するように、着磁特性等を調整するように構成することができる。
【0032】
また、被検出部(被検出手段)6は、回転方向に対称な特性を持つ。本発明の一実施形態においては、円筒形状に形成され、回転方向にむらのない着磁がされている。これにより、被検出手段が回転をしたときでも、軸方向の移動量が無ければ検出手段からの出力は変わらないように構成することができる。
【0033】
なお、被検出部6と検出部7の組み合わせは、上記のような磁気式に限定されるものではない。検出部として、例えば、PSD等のフォトセンサを用い、被検出部として、遮光板や反射板を用いるような光学式検出方法や、検出部として、超音波受信部および超音波発信部を用い、被検出部として、音波反射部を用いるような超音波式検出方法など、従来公知の変位検出方式を使用することができる。
【0034】
被検出部6と検出部7の組み合わせは、非接触で被検出部の軸方向の変位が検出できるとより良好である。これにより、支持軸部2を回転させたときの摺動抵抗発生を避けることができる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、釣糸を巻回可能なスプール1と、該スプール1に糸巻き操作を行う操作部と、該スプール1を回転可能に支持する支持軸部2と、該支持軸部2と該スプール1との間に復元力を発生させる復元力生成部(復元部)4と、該スプール1の回転移動量を規制する規制部(回転規制部)3と、該スプール1の回転移動量を検出する検出部7と、を備えるように構成される。
【0036】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100により、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することが可能となる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、スプール1に巻かれる釣糸の径を検出する釣糸径検出部と、該釣糸径と該スプールの回転移動量から張力を算出する張力算出部と、を備えるように構成される。
【0038】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、釣糸を巻回可能なスプール1と、該スプール1を回転可能に軸支する支持軸部2と、該支持軸部2を回転操作可能な操作部と、該支持軸部2と該スプール1の間に復元力を働かせる復元力生成部(復元部)4と、該支持軸部2の軸方向に移動可能な被検出部6と、該被検出部6の軸方向の変位を検出する検出部7と、該スプール1の回転方向の移動を変換して被検出部6に伝達する変換機構10とを有するように構成される。
【0039】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100により、リール内に組み込み可能でかつ小型化でき、糸道を曲げる必要なく停止時も高精度で測定可能な張力検出部を有する糸巻き装置を提供することが可能となる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該復元力生成部(復元部)4は、バネ部材である。
【0041】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該変換機構10は、カム機構(カム構造)又はネジ機構(ネジ構造)である。
【0042】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該検出部7は、非接触式の位置検出手段であり、当該被検出部6に投光する発光部と、該発光部の光を受光する受光部と、から構成される。
【0043】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100において、当該被検出部6には永久磁石が設けられ、当該検出部7は、非接触式の位置検出手段であり、当該被検出部6に設けられる永久磁石の磁気を検出する磁気検出部である。
【0044】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置100は、当該被検出部6には音波反射部が設けられ、当該検出部7は、非接触式の位置検出手段であり、当該被検出部6に設けられた音波反射部からの音波を検出する音波検出部である。
【0045】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、魚釣用リールである。また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、ウィンチである。ここで、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置は、魚釣用リールやウィンチに限定されるものではない。
【0046】
次に、糸巻き装置100によって糸に働く張力を検出する方法について詳細に説明する。既述のように、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置において、スプール1にトルクが働くと、その大きさに応じてスプール1は支持軸部2に対して、回転方向に移動する。本発明の一実施形態では、トルクの大きさが10gcm以下ではθ=0°であり、100gcm以上ではθ=60°であり、その間ではトルクの変化量に対して移動量θが比例して変化するような特性を持つように、復元部(復元手段)4を構成している。そして、カム機構によって、スプール1の回転方向の移動量θに応じて、直進部材5は軸方向に移動をする。本発明の一実施形態では、回転方向の移動量θと軸方向の移動量Xが比例するように、カム溝51を形成している。これにより、直進部材5に設けられた被検出手段6は軸方向にXだけ移動するため、その移動を検出部(検出手段)7によって検出できる。したがって、検出部7の出力を見ることで、スプール1に働くトルクを算出することできる。
【0047】
なお、スプール1に働くトルクは、釣糸に働く張力Tに、糸の巻き取り半径Rを乗じたものとなる。釣糸の巻き取り半径Rは、スプール1の回転量に応じて変化し得るが、別の手段によって釣糸の巻き取り半径Rを得ることで、糸に働く張力Tを算出することもできる。
【0048】
釣糸の巻き取り半径Rを得るためには従来公知の方法が利用可能である。例えば、超音波式距離計などによって糸巻き装置本体からスプール外周部に巻き取られた釣糸までの距離を測定する方法や、予め初期状態における糸巻き半径Rmax、糸の太さΔDを入力しておき、初期状態からのスプール1の回転量を常時測定することで、糸巻き半径Rを算出する方法、使用範囲において糸巻き半径の変化が無視できるような、浅溝形状のスプール(最小径と最大径の差が少なく、軸方向に長い形状)を用いる方法などがある。
【0049】
このとき、操作手段によってスプール1や被検出手段6が回転しても、スプール1に働くトルクに変化が無ければ、被検出手段6の軸方向位置は変わらない。被検出手段6は、回転方向には対称となっているため、検出手段7から得られる信号に変化はない。したがって、支持軸2の回転方向の位置に依らずに、安定してスプール1に働くトルクを検出することができる。なお、支持軸2の軸方向のガタによって検出手段7の出力が変化しないよう、支持軸2の軸方向の遊びは小さくしておく、バネ等によって軸方向に片寄せしておく、軸方向の移動可能量xをガタ量や組み立て誤差よりも十分大きく設定する、などの方法をとるとよい。
【0050】
また、検出した張力の利用法として、ユーザへの情報伝達がある。上述の方法により得られた、スプール1に働くトルクや釣糸に働く張力情報は、LCD等の表示装置やスピーカーなどの音情報発生装置に出力することで、ユーザに伝えることができる。これにより、魚信の有無や糸フケの有無を判断したり、糸巻き装置の状態を把握したりすることができる。
【0051】
また、検出した張力の別の利用法として、張力情報をマイコンに送り、メモリやスマートフォン等の外部機器等にその履歴を記憶してもよい。これにより、視認が難しい短周期の変化や長周期の変化を把握することができる。また、制御対象として、該張力情報を利用して、操作手段のモータやドラグ装置などの外部装置をフィードバック制御する際の制御対象としてもよい。これにより、一定張力での巻き取りを行うなど、種々の制御を実現することができる。
【0052】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置によれば、糸を曲げる方式と比較して、糸道を曲げることなく糸に働く張力を測定することができる。これにより、糸道を曲げるための機構が不要であり、装置全体の大型化を避けることができる。また、糸道に余計な屈曲点が無いため、キャスト時などの高速に糸が出ていく際の障害になることを避けることができる。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係る糸巻き装置によれば、リール構成部材のひずみ・変位を検出する方法と比較して、スプールに加わるトルクに応じて直進部材が軸方向に移動するように構成しており、その軸方向の移動量を検出することで、トルクを得ることができる。スプールに張力を加えるには、糸巻き装置の構造上、糸張力を増やす以外の方法で行うには実現しにくいことが多く、糸巻き装置本体に外力が加わった際でもスプールにはトルクが掛からない。このようなことから、スプールを軸支する本体フレーム等のひずみを検出する方法に比べて、外乱に対して安定したトルク測定および張力測定を実現することが可能となる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る糸巻き装置によれば、モータで検出する方式と比較して、操作手段を停止させているときでも、回転させているときでも、張力を検出させることが可能となる。
【0055】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 スプール
2 支持軸部
3 規制部(回転規制部)
4 復元部(復元手段)
5 直進部材
6 被検出部
7 検出部
10 変換機構
100 糸巻き装置
図1
図2
図3