(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20241029BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241029BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/06
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021097702
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2020102144
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020108283
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】千葉 祐毅
(72)【発明者】
【氏名】階堂 睦子
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2021-091620(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111219(WO,A1)
【文献】特開2011-225419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル酸系水溶性高分子と、
(B)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン及びジステアルジモニウムヘクトライトからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性増粘剤と、
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルと、
(D)比重が0.950以上の油剤と
を含み、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sであり、かつpHが5.3~8.0である、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
さらに、(E)比重が0.950未満の油剤を含み、かつ前記成分(B)の含有量と該成分(E)の含有量との質量比(成分(B)/成分(E))が0.10超過である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記成分(D)及び前記成分(E)の含有量の総量が9.0質量%以上である、請求項2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(D)の含有量と前記成分(E)の含有量との質量比(成分(D)/成分(E))が2.0以上である、請求項2~3のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー及び(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸系水溶性高分子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
下記成分(A)を含む水相に、下記成分(B)~(D)を含む油相を添加して、乳化することにより、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sであり、かつpHが5.3~8.0である水中油型乳化化粧料を得る工程
を含む、水中油型乳化化粧料の製造方法。
(A)アクリル酸系水溶性高分子
(B)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン及びジステアルジモニウムヘクトライトからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性増粘剤
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル
(D)比重が0.950以上の油剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化化粧料は、連続相が水相であり、しっとりとした使用感を有しながら、含有する油分により皮膚に対して、適度に水分を保持する水分保持機能及び生体内部の水分が失われないようにする水分バリア機能といった保湿機能を備える。
【0003】
優れた保湿機能を得ようとして、油剤の含有量を多くすると、水中油型乳化化粧料の安定性が悪くなり、保管中に層分離が生じる。このような水中油型乳化化粧料の安定性の問題を解決するものとして、特許文献1には、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、セトステアリルアルコールなどの高級アルコールと、流動パラフィンなどの油剤と、水と、乳酸ナトリウムなどの電解質とを含有し、かつ25℃における粘度が1,000mPa・s以上である水中油型乳化化粧料が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の水中油型乳化化粧料のように、粘度を高めることで、水中油型乳化化粧料の安定性を高めることができる。一般的に、粘度の低い水中油型乳化化粧料では、水分と油分との比重差により、温度が高くなるにつれ、層分離が発生する傾向にある。1,000mPa・s以下の低粘度の水中油型乳化化粧料は、高温度条件下では、均一な乳化状態に維持することが困難とされている。
【0005】
1,000mPa・s以下の低粘度であっても安定性があるものとして、特許文献2には、ショ糖モノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(60)グリセリルイソステアリン酸エステルなどの乳化剤と、ベヘニルアルコールなどの高級アルコールと、パルミチン酸デキストリンなどの多糖脂肪酸エステルと、パラメトキシケイ皮酸オクチルなどの油溶性の紫外線吸収剤とを含有する油相を乳化してなる、水中油型乳化化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-160619号公報
【文献】特開2016-030728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の水中油型乳化化粧料は、粘度を400mPa・s未満にしようとすると、油溶性の紫外線吸収剤を5.8質量%程度しか含有することができず、求める油剤の保湿機能などが発揮されないという問題がある。また、紫外線吸収剤の含有量を10質量%以上にしようとすると、乳化剤及び高級アルコールの合計含有量が6質量%以上になり、これらによる皮膚刺激性が顕在化する可能性があるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の水中油型乳化化粧料は、水相に油相を加えて乳化及び冷却した後、キサンタンガムを添加及び混合することによって得られる。特許文献2に記載の水中油型乳化化粧料は、水、ポリオール(グリセリン)、界面活性剤、及び油剤を混合した中間エマルションにさらに水を添加することによって得られる。このように、特許文献1及び2に記載の水中油型乳化化粧料は、水相に油相を加えて得られる乳化中間体を経て得られるものであり、これらの製造方法は煩雑であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、簡便に製造可能でありながら、種々の剤形に適用できる粘度を有し、かつ皮膚刺激性成分の含有量を低減できる、保湿機能及び安定性を備えた水中油型乳化化粧料を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、保湿成分である油剤の量を10質量%程度にするための処方設計を試みた。その際、まず油剤を比重によって重油剤と軽油剤とに分け、重油剤の含有量を多くすることを考えた。その上で、乳化剤として使用される成分だけでも数百種類はあるとされている数多の化粧料成分について種々検討して、安定性の良い水中油型乳化化粧料を得るために試行錯誤を繰り返した。
【0011】
本発明者らが鋭意研究開発に励んだ結果、遂に、重油剤に加えて、所定のアクリル酸系水溶性高分子、油性増粘剤及びポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することにより、油剤の含有量を10質量%程度で設定可能な水中油型乳化化粧料を得ることに成功した。
【0012】
しかも、驚くべきことに、上記水中油型乳化化粧料は、水相に油相を加える通常の乳化工程によって製造可能であり、さらに粘度を種々の剤形に適用できる範囲に調整することが可能なものであることを見出した。さらに驚くべきことに、上記水中油型乳化化粧料は、油剤の総量を10質量%以上としても、皮膚刺激が懸念される乳化剤の1種であるポリグリセリン脂肪酸エステルを3質量%以下に設定可能であることを見出した。
【0013】
本発明者らは、このような知見を基に、本発明の課題を解決するものとして、所定のアクリル酸系水溶性高分子、油性増粘剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び重油剤を含み、かつ粘度及びpHが所定の範囲である、油分による保湿機能が期待できる水中油型乳化化粧料を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0014】
したがって、本発明の一態様によれば、以下の[1]~[10]の水中油型乳化化粧料及び方法が提供される。
[1](A)アクリル酸系水溶性高分子と、
(B)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン及びジステアルジモニウムヘクトライトからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性増粘剤と、
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルと、
(D)比重が0.950以上の油剤と
を含み、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sであり、かつpHが5.3~8.0である、水中油型乳化化粧料。
[2]さらに、(E)比重が0.950未満の油剤を含み、かつ前記成分(B)の含有量と該成分(E)の含有量との質量比(成分(B)/成分(E))が0.10超過である、[1]に記載の水中油型乳化化粧料。
[3]前記成分(D)及び前記成分(E)の含有量の総量が9.0質量%以上である、[2]に記載の水中油型乳化化粧料。
[4]前記成分(D)の含有量と前記成分(E)の含有量との質量比(成分(D)/成分(E))が2.0以上である、[2]~[3]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[5]前記成分(A)は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー及び(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸系水溶性高分子である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[6]下記成分(A)を含む水相に、下記成分(B)~(D)を含む油相を添加して、乳化することにより、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sであり、かつpHが5.3~8.0である水中油型乳化化粧料を得る工程
を含む、水中油型乳化化粧料の製造方法。
(A)アクリル酸系水溶性高分子
(B)(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン及びジステアルジモニウムヘクトライトからなる群から選ばれる少なくとも1種の油性増粘剤
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル
(D)比重が0.950以上の油剤
[7]前記油相は、さらに(E)比重が0.950未満の油剤を含み、かつ該成分(E)の含有量と前記成分(B)の含有量との質量比(成分(E)/成分(B))が0.10超過である、[6]に記載の方法。
[8]前記水中油型乳化化粧料は、前記成分(D)及び前記成分(E)の含有量の総量が9.0質量%以上である、[7]に記載の方法。
[9]前記成分(D)の含有量と前記成分(E)の含有量との質量比(成分(D)/成分(E))が2.0以上である、[7]~[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]前記成分(A)は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー及び(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル酸系水溶性高分子である、[6]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、保湿機能が期待できる油分量でありながら、安定性に寄与するポリグリセリン脂肪酸エステルの量を抑えて皮膚刺激性の危険性を低減し得ることから、使用者に快適かつ日常的に好ましく使用されることが期待できる。また、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、経時安定性に優れていることから、長期間の使用及び保存が可能である。
【0016】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、粘度を種々の剤形に適用できるように設定可能であることから、クリーム、乳液、化粧水、美容液などのスキンケア化粧品、ファンデーションなどのメーキャップ化粧品、さらにはこれらを不織布などに含侵させたシートマスク、ポンプやエアゾールを用いたスプレータイプといった種々の化粧品形態をとることが期待できる。
【0017】
本発明の一態様の方法によれば、簡便かつ工業的規模で、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例に記載されているとおりの、経時安定性の評価における分離例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一態様である水中油型乳化化粧料及び方法の詳細について説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0020】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている理論や推測は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような理論や推測のみによって拘泥されるものではない。
【0021】
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、水中油型乳化化粧料の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、各成分の含有量の総量は、100%を越えることはない。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。なお、成分の含有量は、市販品を用いる場合は、市販品に含まれる成分の量であることが好ましいが、市販品自体の量であってもよい。
数値範囲の「~」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まない、下限及び上限をそれぞれ意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
「経時安定性」を有する水中油型乳化化粧料とは、後述する実施例に記載のとおりに、化粧料を、規格ビンに充填し、50℃で保管した場合に、保管後1ヵ月において、目視観察によって下層分離又は二層分離が認められない水中油型乳化化粧料をいう。
【0022】
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0023】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、アクリル酸系水溶性高分子(成分(A))と、油性増粘剤(成分(B))と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(成分(C))と、重油剤(成分(D))とを含む。
【0024】
成分(A)のアクリル酸系水溶性高分子は、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を構成単位として含む水溶性高分子であり、構成単位が1種のホモポリマーであってもよいし、構成単位が2種以上のコポリマーであってもよい。成分(A)は、水相に含まれる成分として使用され、成分(B)及び成分(C)とともに、水中油型乳化化粧料が層分離することを回避するように機能する。
【0025】
ホモポリマーのアクリル酸系水溶性高分子としては、例えば、カルボマー、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリクロトン酸及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩などが挙げられる。コポリマーのアクリル酸系水溶性高分子としては、例えば、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸/クロトン酸共重合体及びその塩などが挙げられる。アクリル酸系水溶性高分子は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0026】
成分(A)は、コポリマーのアクリル酸系水溶性高分子であることが好ましく、水中油型乳化化粧料に優れた経時安定性を付与するためには、構成単位のいずれもが(メタ)アクリロイル基を有するコポリマーのアクリル酸系水溶性高分子であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩であることがさらに好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。
【0027】
成分(A)の好ましい具体例は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー及び(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーである。
【0028】
成分(A)は、これまでに知られている方法で合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。市販されているアクリル酸系水溶性高分子としては、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーについては「SIMULGELTM FL」(SEPPIC社製)、「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー」については「PemulenTM TR-2」(Lubrizol Advanced Materials社製)、カルボマーについては「HIVISWAKO MD-105」(富士フイルム和光純薬社製)などが挙げられる。
【0029】
成分(A)の含有量は、水中油型乳化化粧料に経時安定性を付与し得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.07質量%~0.4質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%~0.4質量%であることがなおさらに好ましい。成分(A)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、経時安定性に優れつつも、保湿機能を発揮することが期待できる量の油剤を含有することができる。ただし、成分(A)の含有量は、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有量によって適宜設定され得る。
【0030】
成分(B)の油性増粘剤は、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン、ジステアルジモニウムヘクトライト又はこれらの2種若しくは3種全てである。成分(B)は、油相に含まれる成分として使用され、成分(A)及び成分(C)とともに、水中油型乳化化粧料が層分離することを回避するように機能する。
【0031】
成分(B)は、これまでに知られている方法で合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。市販されている(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンとしては「レオパール TT2」(千葉製粉社製)、ステアリン酸イヌリンとしては「レオパール ISL2」(千葉製粉社製)、ジステアルジモニウムヘクトライトとしては「BENTONE(登録商標)38V CG」(エレメンティスジャパン社製)などが挙げられる。
【0032】
成分(B)の含有量は、水中油型乳化化粧料に経時安定性を付与し得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。成分(B)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、経時安定性に優れつつも、保湿機能を発揮することが期待できる量の油剤を含有することができる。ただし、成分(B)の含有量は、成分(A)、成分(C)及び成分(D)の含有量によって適宜設定され得る。
【0033】
成分(C)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、化粧料を製造する際に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルであれば特に限定されず、任意のHLB値を有するものであってもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの非限定的な具体例としては、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10及びステアリン酸ポリグリセリル-10などが挙げられ、経時安定性の観点からラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10及びステアリン酸ポリグリセリル-10が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、これらの1種を単独で、又は2種以上の組み合わせであってもよい。成分(C)は、油相に含まれる成分として使用され、成分(A)及び成分(B)とともに、水中油型乳化化粧料が層分離することを回避するように機能する。
【0034】
成分(C)は、これまでに知られている方法で合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。市販されているラウリン酸ポリグリセリル-4としては「SYグリスター ML-310」(阪本薬品工業社製)、ラウリン酸ポリグリセリル-6としては「SYグリスター ML-500」(阪本薬品工業社製)、「NIKKOL Hexaglyn 1-L」(日光ケミカルズ社製)、ラウリン酸ポリグリセリル-4及びラウリン酸ポリグリセリル-6の混合品としては「PolyAquolTM LW」(Innovacos社製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10としては「NIKKOL Decaglyn 2-ISV」(日光ケミカルズ社製)、ミリスチン酸ポリグリセリル-10としては「NIKKOL Decaglyn 1-M」(日光ケミカルズ社製)、「Sフェイス M-1001」(阪本薬品工業社製)、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10としては「NIKKOL Decaglyn 5-OV」(日光ケミカルズ社製)、ステアリン酸ポリグリセリル-10としては「NIKKOL Decaglyn 1-SV」(日光ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0035】
成分(C)の含有量は、水中油型乳化化粧料に経時安定性を付与し得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましく、1.0質量%~3.0質量%であることがさらに好ましい。成分(C)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、経時安定性に優れつつも、保湿機能を発揮することが期待できる量の油剤を含有することができる。ただし、成分(C)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(D)の含有量によって適宜設定され得る。
【0036】
なお、成分(C)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、非イオン性界面活性剤に分類される。しかし、ポリグリセリン脂肪酸エステルに代えて、その他の非イオン性界面活性剤、例えば、ステアリン酸PEG-40などのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリルなどのモノグリセリン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ソルベス-30などのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどを用いる場合、得られる化粧料は経時安定性が劣り、pHが低くなり、及び/又は粘度が非常に高くなる傾向にある。
【0037】
成分(D)の油剤は、比重が0.950以上である油剤であればよく、本明細書では「重油剤」ともよぶ。また、比重が0.950未満である油剤は、重油剤と対比して、「軽油剤」ともよぶ。成分(D)は、油相に含まれる成分として使用され、水中油型乳化化粧料に保湿機能を付与するように機能する。
【0038】
重油剤としては、油性エモリエント成分として使用されているものであることが好ましい。比重が0.950以上である油性エモリエント成分としては、例えば、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2などのエステル油;シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチコン、ジフェニルジメチコン、アモジメチコンなどのシリコーン油;ヒマシ油、水添ヒマシ油などの天然又は改質天然油性成分;ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテルなどのフッ素油などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
また、紫外線吸収剤を重油剤として用いてもよい。重油剤として用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメチルPABAエチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
成分(D)は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。成分(D)の好ましい具体例としては、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチコン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、水添ヒマシ油などが挙げられる。
【0041】
成分(D)は、これまでに知られている方法で合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。成分(D)の比重は、例えば、市販されているものであれば、製造者又は販売者が公示している値を採用できる。
【0042】
成分(D)の含有量は、水中油型乳化化粧料に保湿機能を付与し得る量であれば特に限定されないが、例えば、5質量%~20質量%であることが好ましく、7質量%~15質量%であることがより好ましく、9質量%~12質量%であることがさらに好ましい。ただし、成分(D)の含有量は、成分(E)の含有量によって適宜変更し得る。
【0043】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、重油剤に加えて、軽油剤(成分(E))を含んでもよい。成分(E)は、油相に含まれる成分として使用され、水中油型乳化化粧料に保湿機能を付与するように機能する。
【0044】
軽油剤としては、油性エモリエント成分として使用されているものであることが好ましい。比重が0.950未満である油性エモリエント成分としては、例えば、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、スクワラン、スクワレンなどの直鎖及び分岐鎖の炭化水素油;セタノール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキシルデカノール、2-デシルテトラデシノール、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)などの高級アルコール;イソノナン酸イソノニル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルなどのエステル油;ホホバ油、オリーブ油、ダイズ油、マカデミアナッツ油などの植物油などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
成分(E)は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。成分(E)の好ましい具体例としては、流動パラフィン、スクワラン、セタノールなどが挙げられる。
【0046】
成分(E)は、これまでに知られている方法で合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。成分(E)の比重は、例えば、市販されているものであれば、製造者又は販売者が公示している値を採用できる。
【0047】
成分(E)の含有量は、水中油型乳化化粧料に保湿機能を付与するために、成分(D)と合わせて、9質量%以上であることが好ましい。ただし、成分(E)の含有量が過剰であると、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の安定性が損なわれる傾向にあることから、成分(E)は、成分(B)及び/又は成分(D)と一定の関係にあることが好ましい。
【0048】
具体的には、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料が成分(E)を含む場合、成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比(成分(B)/成分(E))が0.10超過であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。成分(B)/成分(E)の上限は特に限定されないが、例えば、10である。また、成分(D)の含有量と成分(E)の含有量との質量比(成分(D)/成分(E))は2.0以上であることが好ましい。これらの関係性を保ちつつ、成分(E)の含有量は、0質量%~7質量%であることが好ましく、0質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0049】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、成分(A)~(D)を含有し、さらに粘度及びpHが所定の範囲内にあることにより、均一な乳化状態を維持した水中油型乳化化粧料であり得る。
【0050】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の粘度は、300mPa・s~1,500mPa・sの範囲内にあればよいが、様々な剤形に適用し得ることから、好ましくは300mPa・s~1,000mPa・sであり、より好ましくは500mPa・s~1,000mPa・sである。
【0051】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料のpHは、5.3~8.0の範囲内にあればよいが、優れた経時安定性を得るために、好ましくは5.4~7.5であり、より好ましくは5.4~7.2である。
【0052】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の粘度及びpHは、後述する実施例に記載があるとおりの方法によって測定して得られる値である。
【0053】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、粘度及びpHが所定の範囲内にあって、本発明の課題を解決し得る限り、成分(A)~(E)に加えて、その他の成分を含有してもよい。
【0054】
その他の成分は特に限定されず、例えば、通常の水中油型乳化化粧料に用いられる成分などが挙げられ、より具体的には水などの基剤、保湿剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、清涼剤、キレート剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。その他の成分のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0055】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール(BG)、ジグリセリン、トレハロース、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、加水分解エラスチン、乳酸ナトリウム、シクロデキストリン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。保湿剤の含有量は、0質量%~15質量%であることが好ましい。
【0056】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0057】
増粘剤としては、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、フコイダン、チューベロース多糖体などの水溶性多糖類;カラギーナン、アルギン酸などの天然高分子;カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの半合成高分子などが挙げられる。増粘剤は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。増粘剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0058】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、エチドロン酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。pH調整剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0059】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、δトコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体;チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0060】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、化粧料として用いられる限りにおいて、その機能及び/又は効果については特に限定されない。本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、経時安定性について、例えば、後述する実施例に記載の経時安定性の測定により、下層分離又は二層分離が認められない程度であることが好ましい。
【0061】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料における水分は特に限定されないが、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。水分の上限は特に限定されないが、概ね85質量%以下であり、好ましくは82質量%以下である。
【0062】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の具体的な態様は、成分(A)を0.05質量%~1.0質量%、成分(B)を0.1質量%~5質量%、成分(C)を0.5質量%~5質量%、成分(D)を7質量%~15質量%及び成分(E)を0質量%~7質量%にて含み、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sであり、かつpHが5.3~8.0であることにより、油分による保湿機能が認められつつも、経時安定性が良好である水中油型乳化化粧料である。
【0063】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の別の具体的な態様は、成分(A)を0.1質量%~0.4質量%、成分(B)を0.3質量%~1.0質量%、成分(C)を1.0質量%~3.0質量%、成分(D)を9質量%~12質量%及び成分(E)を0質量%~5質量%にて含み、粘度が300mPa・s~1,000mPa・sであり、かつpHが5.4~7.5であることにより、油分による保湿機能が認められつつも、経時安定性が良好である水中油型乳化化粧料である。
【0064】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、成分(A)~(D)並びに成分(E)及び任意のその他の成分を混合して、乳化することにより得られる。本発明の別の一態様は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の製造方法である。
【0065】
本発明の一態様の方法は、成分(A)を含む水相に、成分(B)~(D)を含む油相を添加して、乳化することにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を得る工程を含む。
【0066】
本発明の一態様の方法の具体例としては、それぞれ60℃~90℃に加温して成分(A)を含む水相及び成分(B)~(D)を含む油相を調製し、次いで水相に油相を添加しつつ、高速撹拌機を用いて、3,000rpm~8,000rpm、数分間の高速撹拌処理に供して乳化を行い、次いで室温~30℃程度に冷却することにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を得る方法などが挙げられるが、これに限定されない。成分(E)は成分(B)~(D)とともに油相に含め、その他の任意の成分はそれぞれの性質(水溶性又は脂溶性)に応じて、水相又は油相に含めればよい。
【0067】
本発明の一態様の方法は、水相に油相を添加して、乳化することにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を得ることが可能であり、複雑な工程又は特別な装置を用意することなく、簡便に実施できることから、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を工業的規模で製造することが可能である。
【0068】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、その使用態様や剤形については特に限定されず、例えば、スキンケア化粧品、メーキャップ化粧品、フレグランス化粧品、ボディケア化粧品など、具体的にはクリーム、乳液、ファンデーション、化粧水、美容液、サンスクリーンミルク、パック、洗顔クリーム、ハンドクリーム、メーキャップクレンジング、化粧下地、コンシーラー、ほほ紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、口紅、日焼け止めクリーム、脱毛・除毛クリーム、オールインワン化粧品などに適用可能である。本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、乳液、クリーム、美容液などの一定の粘性を有する剤形とすることにより、安定性に優れ、さらにしっとりとした良好な使用感触を有し得るものとなることから好ましい。また、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、低粘性という性質上、シートなどに含浸すること、噴射することなどが可能である。そこで、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、含浸シート、含浸マスク、ポンプ及びエアゾールなどのスプレーといった剤形とすることが好ましい。
【0069】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、皮膚に塗布することで、油分による保湿機能により、皮膚表面からの水分蒸発を防ぐことが可能である。また、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、水分及び保湿剤を含有することにより、塗布した乾燥皮膚を改善すること又はさらなる乾燥による悪化を抑制することが可能である。
【0070】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0071】
[例1 水中油型乳化化粧料の調製及び評価(1)]
(1-1)被験化粧料の調製
表1に示した処方に従い、以下の手順により、被験化粧料として各種水中油型乳化化粧料を調製した。なお、表中の数値は、質量%(wt%)を表わす。
【0072】
表中のA相(水相)及びB相(油相)のそれぞれについて、80℃にて各成分を溶解混合及び撹拌して均一にすることにより調製した。次いで、ホモミキサー(「ラボ・リューション」;プライミクス株式会社製)内でA相にB相を投入し、高速撹拌処理に供した。なお、ホモミキサーの撹拌条件は、B相投入時は3,000rpmとし、乳化時は4,000rpm、2分間とした。その後パドルで撹拌しながら30℃まで冷却することにより被験化粧料を得た。
【0073】
(1-2)pH
pHは、常法に従ってpHメーター(「pH METER F-22」;堀場製作所社製)を使用して測定した。
【0074】
(1-3)粘度
BH型粘度計(「VISCOMETER BH-II」;東機産業社製)を使用した。計測条件は、20℃の被験化粧料について、3号ローター、20rpm、3分間とした。
【0075】
(1-4)経時安定性
被験化粧料を、規格ビン(70ml容)に充填し、50℃で保管した。保管後1日後、1週間後及び1ヵ月後のビンを目視にて観察し、分離の有無を評価した。分離の態様を
図1に示す。
図1に示すとおりに、底部周辺に透明な層(
図1において矢印で示した部分)が生じた場合(「下層分離」)及び全体として二層に分離した場合(「二層分離」)を「×」と評価し、これらがみられずに全体として均一な状態にあった場合を「○」と評価した。
【0076】
(1-5)評価結果
各種測定の結果を表1に示す。実施例1~4の被験化粧料は、粘度が400mPa・s~980mPa・sであり、かつpHが5.39~5.63であった。これらはアクリル酸系水溶性高分子として(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、油性増粘剤として(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてラウリン酸ポリグリセリル-4及びラウリン酸ポリグリセリル-6を含み、かつ重油剤を含むことにより、1ヵ月までの経時安定性が優れたものであった。
【0077】
また、実施例2~4の被験化粧料は、きしみ感及びべたつきがなく、使用感が優れたものであった。
【0078】
それに対して、上記のアクリル酸系水溶性高分子、及び/又は油性増粘剤が欠如した比較例1~3の被験化粧料は、50℃で1日保管した場合に下層分離又は二層分離が観察された。なお、アクリル酸系水溶性高分子及び油性増粘剤の両方を欠如した比較例1の被験化粧料は、20℃で保管した場合も1日で二層分離がみられた。
【0079】
また、比較例4~7の被験化粧料は重油剤に加えて軽油剤を含むところ、油性増粘剤の含有量と軽油剤の含有量との質量比(油性増粘剤/軽油剤)が0.10以下であり、油性増粘剤に対して軽油剤の量が多く、これらは保管1日後又は1週間後に層分離がみられた。また、比較例8の被験化粧料は、重油剤の含有量と軽油剤の含有量との質量比(重油剤/軽油剤)が1.86であり、重油剤に対して軽油剤の量が多く、保管1日後に層分離がみられた。
【0080】
参考例1~5は、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sの範囲内になく、及び/又はpHが5.3~8.0の範囲内にないものであったが、アクリル酸系水溶性高分子、油性増粘剤、及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの量を調整することで、粘度及びpHをこれらの範囲内に設定することが可能である。
【0081】
(1-6)まとめ
アクリル酸系水溶性高分子として(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、油性増粘剤として(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてラウリン酸ポリグリセリル-4及びラウリン酸ポリグリセリル-6を含み、かつ重油剤を含む水中油型乳化化粧料は、経時安定性が優れたものであった。
【0082】
また、軽油剤を含む場合、油性増粘剤の含有量と軽油剤の含有量との質量比(油性増粘剤/軽油剤)及び/又は重油剤の含有量と軽油剤の含有量との質量比(重油剤/軽油剤)が所定の範囲内にある水中油型乳化化粧料は、経時安定性が優れたものであった。
【0083】
[例2 水中油型乳化化粧料の調製及び評価(2)]
(2-1)被験化粧料の調製
例1と同様にして、表2及び表3に示した処方に従い、被験化粧料として各種水中油型乳化化粧料を調製した。ただし、撹拌条件は、B相投入時は4,000rpmとし、乳化時は5,000rpm、2分間とした。
【0084】
(2-2)評価結果
例1と同様に、pH、粘度及び経時安定性を測定した。各種測定の結果を表2及び表3に示す。
【0085】
実施例5~10の被験化粧料は、粘度が310mPa・s~1,350mPa・sであり、かつpHが5.74~7.21であった。これらのうち、実施例5~8の被験化粧料はアクリル酸系水溶性高分子として(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、油性増粘剤として(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてステアリン酸ポリグリセリル-10を含み、かつ重油剤を含むことにより、1ヵ月までの経時安定性が優れたものであった。
【0086】
実施例9及び10の被験化粧料は、油性増粘剤として(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンに代えてステアリン酸イヌリン又はジステアルジモニウムヘクトライトを含むものであるか、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてステアリン酸ポリグリセリル-10に代えてラウリン酸ポリグリセリル-4及びラウリン酸ポリグリセリル-6を含むものであるところ、他の実施例の被験化粧料と同様に、1ヵ月までの経時安定性が優れたものであった。
【0087】
また、実施例5~7及び実施例9~10の被験化粧料は、きしみ感及びべたつきがなく、使用感が優れたものであった。
【0088】
それに対して、上記の油性増粘剤が欠如した比較例9の被験化粧料は、保管1週間後に層分離がみられた。
【0089】
参考例6~7の被験化粧料は、粘度が300mPa・s~1,500mPa・sの範囲内にないものであったが、アクリル酸系水溶性高分子、油性増粘剤、及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルの量を調整することで、粘度をこれらの範囲内に設定することが可能である。
【0090】
一方、実施例11~16の被験化粧料は、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10及びそれらの組み合わせを含むものであるところ、他の実施例の被験化粧料と同様に、1ヵ月までの経時安定性が優れたものであった。
【0091】
それに対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルの代わりに非イオン性界面活性剤を用いた比較例10~12の被験化粧料は、保管1週間後に層分離がみられるか、pHが低くなるか、或いは極端に高粘度になった。
【0092】
(2-3)まとめ
アクリル酸系水溶性高分子と、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン、ジステアルジモニウムヘクトライトといった油性増粘剤と、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、重油剤とを含む水中油型乳化化粧料は、経時安定性が優れたものであった。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
表中の成分のうち、使用した製品名を抜粋して以下に示す。
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー:「SIMULGELTM FL」(コポリマー35~40%;SEPPIC社製)
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:「PemulenTM TR-2」(Lubrizol Advanced Materials社製)
カルボマー:「HIVISWAKO MD-105」(富士フイルム和光純薬社製)
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン:「レオパール TT2」(千葉製粉社製)
パルミチン酸デキストリン:「レオパール KL2」(千葉製粉社製)
ステアリン酸イヌリン:「レオパール ISL2」(千葉製粉社製)
ジステアルジモニウムヘクトライト:「BENTONE(登録商標)38V CG」(エレメンティスジャパン社製)
(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン:「レオパール WX」(千葉製粉社製)
ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-6:「PolyAquolTM LW」(Innovacos社製)
ステアリン酸ポリグリセリル-10:「NIKKOL Decaglyn 1-SV」(日光ケミカルズ社製)
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10:「NIKKOL Decaglyn 2-ISV」(日光ケミカルズ社製)
ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB:14.0):「NIKKOL Decaglyn 1-M」(日光ケミカルズ社製)
ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB:14.8):「Sフェイス M-1001」(阪本薬品工業社製)
ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10:「NIKKOL Decaglyn 5-OV」(日光ケミカルズ社製)
ステアリン酸PEG-40:「NIKKOL MYS-40V」(日光ケミカルズ社製)
ステアリン酸グリセリル:「NIKKOL MGS-BV」(日光ケミカルズ社製)
テトラオレイン酸ソルベス-30:「レオドール 430V」(花王社製)
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、油分による保湿機能がありながら、皮膚刺激性の危険性が低く、経時安定性に優れたものであることから、クリーム、乳液、化粧水、美容液、含浸シート、含浸マスク、スプレーなどのスキンケア化粧品などとして利用することができる。使用者は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を使用することにより、日常的に快適に、皮膚の乾燥を低減又は防止することができるようになる。