(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2021115082
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 真一
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/127977(WO,A1)
【文献】特開平07-183694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する部品実装装置であって、
前記部品を吸着するノズルが軸線上に装着された実装ヘッドと、
前記ノズルを前記軸線の回りに回転させる回転機構と、
前記ノズルを前記軸線の軸方向と直交する撮像方向から撮像する撮像部と、
ノズルデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記ノズルデータは、複数の検査角度を含み、
前記複数の検査角度は、前記ノズルの先端部の欠けが発生しやすい箇所が、前記軸方向および前記撮像方向の双方に直交する幅方向における端部に配されるようになっている前記ノズルの前記軸線の回りの角度であり、
前記ノズルデータは、前記ノズルと同種類であり、先端部が欠けていない標準ノズルを前記複数の検査角度に回転させて前記標準ノズルを前記撮像方向から見たときの前記標準ノズルのサイズである複数の標準サイズを含み、
前記制御部は、前記回転機構により前記複数の検査角度のうちの1つ以上の検査角度に前記ノズルを回転させて、前記撮像部により前記1つ以上の検査角度にある前記ノズルを撮像することで、1つ以上の撮像画像を取得し、前記1つ以上の撮像画像と前記記憶部に記憶された前記ノズルデータとに基づいて前記ノズルの状態を検査する、部品実装装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記1つ以上の撮像画像に基づいて1つ以上の計測サイズを算出するサイズ算出処理と、
前記1つ以上の計測サイズと前記複数の標準サイズのうちの1つ以上の標準サイズとを比較することで、前記ノズルの先端部が欠けているか否かを判定する判定処理と、
を実行する、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記複数の検査角度は、前記ノズルが取り付けられる前記実装ヘッドに固有のオフセット量を加味して設定されている、請求項1または請求項2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記制御部が前記ノズルの状態を検査するタイミングは、前記ノズルを前記実装ヘッドに装着した直後、前記ノズルをノズルストッカーに収納する直前、吸着エラーの発生時、予め設定された定期タイミング、および前記基板の搬送時のうち、少なくとも1つのタイミングとされる、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記ノズルを撮像する検査用カメラと、前記撮像方向について前記検査用カメラとともに前記ノズルを挟むように配される検査用照明と、を備え、
前記検査用照明の光源は平行光である、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着ヘッドに装着したノズルに部品を吸着する部品実装装置として、下記特許文献1(特開平7-183694号公報)に記載のものが知られている。この部品実装装置は、吸着ヘッドと、吸着ヘッドに着脱可能とされるノズルと、吸着ヘッド部分の近傍に向けて側方からほぼ水平方向にレーザー光を照射する発光部と、発光部に対して吸着ヘッド部分を挟んで対向する位置に配されて発光部が照射したレーザー光を受光する受光部と、を備える。発光部から発せられたレーザー光が吸着ヘッドに装着したノズルを越えて受光部に受光された際に、ノズルの存在による非投影部分を基にノズルの形状および寸法等を測定することができる。したがって、例えば、吸着ヘッドに装着したノズルの径が、予め与えられたノズル径データと一致するか否かを調べることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、ノズルに対してある一方向からのみレーザー光を照射してノズルの径を計測するため、レーザー光を照射する方向によっては、ノズルの状態を正確に確認できない場合がある。例えば、ノズルの先端部の欠けが、レーザー光が照射されない位置にある場合等には、ノズルの先端部の欠けを検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記部品を吸着するノズルが軸線上に装着された実装ヘッドと、前記ノズルを前記軸線の回りに回転させる回転機構と、前記ノズルを前記軸線の軸方向と直交する撮像方向から撮像する撮像部と、ノズルデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記ノズルデータは、複数の検査角度を含み、前記複数の検査角度は、前記ノズルの先端部の欠けが発生しやすい箇所が、前記軸方向および前記撮像方向の双方に直交する幅方向における端部に配されるようになっている前記ノズルの前記軸線の回りの角度であり、前記ノズルデータは、前記ノズルと同種類であり、先端部が欠けていない標準ノズルを前記複数の検査角度に回転させて前記標準ノズルを前記撮像方向から見たときの前記標準ノズルのサイズである複数の標準サイズを含み、前記制御部は、前記回転機構により前記複数の検査角度のうちの1つ以上の検査角度 に前記ノズルを回転させて、前記撮像部により前記1つ以上の検査角度にある前記ノズルを撮像することで、1つ以上の撮像画像を取得し、前記1つ以上の撮像画像と前記記憶部に記憶された前記ノズルデータとに基づいて前記ノズルの状態を検査する、部品実装装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ノズルを軸線の回りの1つ以上の角度において撮像することにより、ノズルの先端部の欠け等の異常を検知しやすい部品実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る部品実装装置の平面図である。
【
図2】
図2は、ノズル、第1カメラ、および第1照明の位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、R軸サーボモータによるノズルの角度の制御について示す図である。
【
図4】
図4は、平行光を用いたノズルの撮像と撮像画像について説明する図である。
【
図5】
図5は、拡散光を用いたノズルの撮像と撮像画像について説明する図である。
【
図6】
図6は、部品実装装置の電気的構成を示す図である。
【
図7】
図7は、先端部が長方形の形状をなすノズルの複数の検査角度と複数の撮像画像について説明する図である。
【
図8】
図8は、先端部が長方形の形状をなすノズルの先端部の欠けの検査について説明する図である。
【
図9】
図9は、ノズルの先端部の欠けの検査における制御部の処理を説明するフローチャートである。
【
図10】
図10は、先端部が正方形の形状をなすノズルの複数の検査角度と複数の撮像画像について説明する図である。
【
図11】
図11は、先端部が正方形の形状をなすノズルの先端部の欠けの検査について説明する図である。
【
図12】
図12は、先端部が菱形の形状をなすノズルの複数の検査角度と複数の撮像画像について説明する図である。
【
図13】
図13は、先端部が菱形の形状をなすノズルの先端部の欠けの検査について説明する図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る先端部が長方形の形状をなすノズルの複数の撮像画像について説明する図である。
【
図15】
図15は、
図14に示したノズルの複数の撮像画像の計測サイズとノズルの角度の関係を表すグラフである。
【
図16】
図16は、先端部が菱形の形状をなすノズルの複数の撮像画像について説明する図である。
【
図17】
図17は、
図16に示したノズルの複数の撮像画像の計測サイズとノズルの角度の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)本開示に係る部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記部品を吸着するノズルが軸線上に装着された実装ヘッドと、前記ノズルを前記軸線の回りに回転させる回転機構と、前記ノズルを前記軸線の軸方向と直交する撮像方向から撮像する撮像部と、ノズルデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記ノズルデータは、複数の検査角度を含み、前記複数の検査角度は、前記ノズルの先端部の欠けが発生しやすい箇所が、前記軸方向および前記撮像方向の双方に直交する幅方向における端部に配されるようになっている前記ノズルの前記軸線の回りの角度であり、前記ノズルデータは、前記ノズルと同種類であり、先端部が欠けていない標準ノズルを前記複数の検査角度に回転させて前記標準ノズルを前記撮像方向から見たときの前記標準ノズルのサイズである複数の標準サイズを含み、前記制御部は、前記回転機構により前記複数の検査角度のうちの1つ以上の検査角度に前記ノズルを回転させて、前記撮像部により前記1つ以上の検査角度にある前記ノズルを撮像することで、1つ以上の撮像画像を取得し、前記1つ以上の撮像画像と前記記憶部に記憶された前記ノズルデータとに基づいて前記ノズルの状態を検査する、部品実装装置である。
【0009】
このような構成によれば、ノズルを撮像する複数の検査角度がノズルデータに含まれているから、ノズルの状態の検査に必要な1つ以上の撮像画像のみを取得でき、検査に要する時間を短縮することができる。また、複数の検査角度では、ノズルの先端部の欠けが発生しやすい箇所が、幅方向における端部に配されるようになっているから、ノズルの異常、特にノズルの先端部の欠けを検知しやすい。ノズルの異常を検知しやすい構成であるから、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制することができる。
【0010】
(2)前記制御部は、前記1つ以上の撮像画像に基づいて1つ以上の計測サイズを算出するサイズ算出処理と、前記1つ以上の計測サイズと前記複数の標準サイズのうちの1つ以上の標準サイズとを比較することで、前記ノズルの先端部が欠けているか否かを判定する判定処理と、を実行することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、制御部は、1つ以上の撮像画像に基づいて算出された1つ以上の計測サイズと、ノズルデータに含まれる複数の標準サイズのうちの1つ以上の標準サイズとを比較することで、ノズルの先端部が欠けているか否かを判定するから、ノズルの先端部の欠けの検査の精度を向上させることができる。
【0012】
(3)前記複数の検査角度は、前記ノズルが取り付けられる前記実装ヘッドに固有のオフセット量を加味して設定されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、使用する実装ヘッドを変更しても正確にノズルの状態を検査できる。
【0014】
(4)本開示に係る部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記部品を吸着するノズルが軸線上に装着された実装ヘッドと、前記ノズルを前記軸線の回りに回転させる回転機構と、前記ノズルを前記軸線の軸方向と直交する撮像方向から撮像する撮像部と、ノズルデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転機構により前記ノズルを回転させて、前記ノズルの前記軸線の回りの複数の角度において前記撮像部により前記ノズルを撮像することで、1つの前記ノズルにつき複数の撮像画像を取得し、前記複数の撮像画像と前記記憶部に記憶された前記ノズルデータとに基づいて前記ノズルの状態を検査する、部品実装装置であってもよい。
【0015】
このような構成によれば、ノズルを軸線の回りの複数の角度において撮像して取得された複数の撮像画像と記憶部に記憶されたノズルデータとに基づいてノズルの状態が検査されるから、ノズルの先端部の欠け等の異常を検知しやすい。また、ノズルの異常を検知しやすい構成であるから、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制することができる。
【0016】
(5)前記ノズルデータは、第1極大サイズと、前記第1極大サイズ以下の第2極大サイズと、除外角度と、を含み、前記ノズルと同種類であり、先端部が欠けていない標準ノズルを前記軸線の回りに180°以上回転させて、前記撮像方向から見たときの前記標準ノズルのサイズは、前記第1極大サイズと前記第2極大サイズにおいて極大値をとり、前記制御部は、前記回転機構により前記ノズルを180°以上回転させながら、前記撮像部により前記ノズルを連続的に撮像することで、前記複数の撮像画像を取得する連続撮像処理と、前記複数の撮像画像に基づいて複数の計測サイズを算出するサイズ算出処理と、前記計測サイズが最大である第1画像と、前記第1画像を撮像した際の前記ノズルの角度の前後の前記除外角度において撮像された前記撮像画像を除いて前記計測サイズが最大である第2画像と、を抽出する画像抽出処理と、前記第1画像の前記計測サイズと前記第1極大サイズとを比較するとともに、前記第2画像の前記計測サイズと前記第2極大サイズとを比較することで、前記ノズルの先端部が欠けているか否かを判定する判定処理と、を実行してもよい。
【0017】
このような構成によれば、ノズルを180°以上回転させながらノズルを連続的に撮像して取得される複数の撮像画像に基づいてノズルの状態を検査するから、ノズルデータにノズルを撮像すべき角度が含まれていない場合や、実装ヘッド固有の角度のオフセット量が加味されていない場合でも、ノズルの状態、特にノズルの先端部の欠けの検査が可能である。また、制御部は、複数の撮像画像から第1画像と第2画像とを抽出し、第1画像の計測サイズと第1標準サイズとを比較するとともに、第2画像の計測サイズと第2標準サイズとを比較することで、ノズルの先端部が欠けているか否かを判定するから、ノズルの先端部の欠けの検査の精度を向上させることができる。
【0018】
(6)前記制御部が前記ノズルの状態を検査するタイミングは、前記ノズルを前記実装ヘッドに装着した直後、前記ノズルをノズルストッカーに収納する直前、吸着エラーの発生時、予め設定された定期タイミング、および前記基板の搬送時のうち、少なくとも1つのタイミングとされることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、設定された少なくとも1つのタイミングでノズルの状態の検査が行われるから、ノズルの異常を一層検知しやすく、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制することができる。
【0020】
(7)前記撮像部は、前記ノズルを撮像する検査用カメラと、前記撮像方向について前記検査用カメラとともに前記ノズルを挟むように配される検査用照明と、を備え、前記検査用照明の光源は平行光であることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、検査用照明の光源が平行光であるから、複数の撮像画像に基づいてノズルの先端部のサイズを正確に算出しやすく、ノズルの異常を一層検知しやすい。
【0022】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示の実施形態1を、
図1ないし
図13を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。実施形態1は、
図1に示すように、電子部品等の部品(図示せず)をプリント基板等の基板B上に実装する部品実装装置10を例示している。
【0023】
<部品実装装置の全体構成>
部品実装装置10は、
図1に示すように、基台11と、基板Bを搬送する搬送コンベア14と、ヘッドユニット30と、ヘッドユニット30を基台11上にて移動させる駆動装置20とを備えている。なお、以下の説明において、基台11の長手方向(
図1の左右方向)を左右方向、基台11の奥行方向(
図1の上下方向)を前後方向、
図1の紙面垂直方向を上下方向とする。各図において、X方向は右方、Y方向は前方、Z方向は上方を示している。
【0024】
搬送コンベア14は、基台11の中央に配置されている。搬送コンベア14は左右方向に循環駆動する一対の搬送ベルト15を備えており、搬送ベルト15上の基板Bを、搬送ベルト15との摩擦により右方に搬送する。本実施形態では、基板Bは、左側より搬送コンベア14を通じて部品実装装置10の内部へと搬入される。搬入された基板Bは、搬送コンベア14により基台11の中央の作業位置まで運ばれ、そこで停止される。
【0025】
基台11上には、作業位置の周囲を囲むようにして、部品供給部12が4箇所設けられている。各部品供給部12には、部品を供給するフィーダ13が左右方向に隣接して多数設置されている。
【0026】
作業位置では、フィーダ13により部品が供給され、ヘッドユニット30の実装ヘッド31により部品が基板B上に実装される。その後、部品が実装された基板Bは搬送コンベア14を通じて右方に運ばれ、部品実装装置10の外部に搬出されるようになっている。
【0027】
駆動装置20は、ヘッドユニット30を所定の可動範囲内でX軸方向およびY軸方向に搬送するものである。駆動装置20は、
図1に示すように、X軸ビーム21、Y軸フレーム22、X軸サーボモータ23、Y軸サーボモータ24などを備えている。ヘッドユニット30は、X軸ビーム21に支持され、X軸サーボモータ23によりX軸方向に往復移動可能となっている。X軸ビーム21は、Y軸フレーム22に支持され、Y軸サーボモータ24によりY軸方向に往復移動可能となっている。
【0028】
ヘッドユニット30は、
図1および
図2に示すように、箱形状をなすヘッドユニット本体31と、部品の実装動作を行う3つの実装ヘッド32と、各実装ヘッド32を撮像するための撮像部40と、を有している。
【0029】
実装ヘッド32は、ヘッドユニット本体31から下方に突出した形態とされている。実装ヘッド32は、
図2に示すように、上下方向に延びるシャフト33と、シャフト33の下端部に着脱可能とされるノズル60と、を有している。実装ヘッド32の中心を通り、上下方向(軸方向の一例)にのびる線は軸線Lとされており、ノズル60は実装ヘッド32の軸線L上に装着されている。実装ヘッド32には、図示しないエア供給装置から負圧が供給されることで、ノズル60の先端部61に吸引力が生じるようになっている。これにより、ノズル60による部品の吸着および実装が可能とされている。
【0030】
シャフト33には、ヘッドユニット本体31内に設けられたZ軸サーボモータ(図示せず)が取り付けられている。シャフト33(およびノズル60)は、Z軸サーボモータによって上下方向に昇降可能とされている。
【0031】
本実施形態では、
図3に示すように、ヘッドユニット30の3つの実装ヘッド32(シャフト33)に対して1つのR軸サーボモータ36(回転機構の一例)が設けられている。R軸サーボモータ36の外周には駆動プーリー36Aが、シャフト33の外周にはシャフトプーリー33Aが設けられている。駆動プーリー36Aおよびシャフトプーリー33Aには、ベルト37がかけ渡されている。ベルト37は、駆動プーリー36Aおよびシャフトプーリー33Aの他、ヘッドユニット30に設けられている補助プーリー38にもかけ渡されている。R軸サーボモータ36を駆動すると、駆動プーリー36Aにかけ渡されたベルト37を介してシャフトプーリー33AにR軸サーボモータ36の回転が伝達される。これによりシャフト33(およびノズル60)が軸線Lの回りに回転するようになっている。
【0032】
本実施形態の撮像部40は、
図1に示すように、3つの実装ヘッド32のそれぞれについて1つずつ設けられている。
図2に示すように、撮像部40は、各実装ヘッド32の後方に設けられる第1カメラ41(検査用カメラの一例)と、各実装ヘッド32の前方に設けられる第1照明42(検査用照明の一例)と、を備える。第1カメラ41と第1照明42は、前後方向に実装ヘッド32を挟むように配置されている。撮像部40により、実装ヘッド32の下端部周辺、すなわちノズル60やノズル60に吸着された部品を前後方向(撮像方向の一例)から撮像することができる。
【0033】
図4(A)に示すように、第1照明42から出射された光は、対象物の周りを透過して第1カメラ41のレンズに入射される。すなわち、第1カメラ41は透過光を撮像するようになっている。このため、
図4(B)に示すように、得られた撮像画像において対象物はシルエット(網掛け部分で示す)として現れるようになっている。なお、
図4(A)は第1照明42、対象物であるノズル60の先端部61、および第1カメラ41の上下方向から見た位置関係を示す模式図であり、
図4(B)は
図4(A)の状態で撮像された撮像画像を示す図である。撮像画像では、ノズル60の先端部61に対応するシルエットのみが示されており、図示上下方向はノズル60の先端部61の高さ方向(Z方向)に対応している。
図5は
図4と同様に表された図であるが、次述するように第1照明42に使用する光源が異なっている。
【0034】
第1照明42の光源には、
図4(A)に示すような平行光を用いてもよいし、
図5(A)に示すような拡散光を用いてもよい。ただし、拡散光を第1照明42の光源とした場合、対象物(
図5ではノズル60の先端部61)の側面に光が回り込む。このため、
図5(B)に示すように、撮像画像のシルエットの左右方向の端部のコントラストが不明瞭になる。したがって、対象物のサイズを正確に計測するためには、光の回り込みが発生しない平行光を第1照明42の光源とすることがより好ましい。以下では、簡単のため、平行光を第1照明42の光源に用いた場合について説明する。
【0035】
図1に示すように、ヘッドユニット30には第2カメラ50が撮像面を下に向けた状態で配置されている。第2カメラ50は、基板Bの位置および姿勢を認識するために、基板Bのフィデューシャルマーク(図示せず)を撮像するように構成されている。また、第2カメラ50の近傍には第2照明51(
図6参照)が設けられている。第2照明51は、第2カメラ50の撮像時に可視光を基板Bに照射するように構成されている。これにより、第2カメラ50により基板Bを鮮明に撮像することができる。
【0036】
図1に示すように、基台11上には第3カメラ52が撮像面を上に向けて配置されている。第3カメラ52は、ノズル60に吸着された部品の画像(下面画像)を撮像し、ノズル60による部品の吸着姿勢を検出する。また、第3カメラ52の近傍には、第3照明53(
図6参照)が設けられている。第3照明53は、第3カメラ52の撮像時に可視光をノズル60に吸着された部品に照射するように構成されている。これにより、第3カメラ52によりノズル60に吸着された部品を鮮明に撮像することが可能である。
【0037】
<部品実装機の電気的構成>
次に、部品実装装置10の電気的構成を、
図6を参照して説明する。部品実装装置10は、CPU(中央演算処理装置)81と、記憶部82と、メモリ83と、表示部84と、入力装置85と、モータコントローラ86と、カメラI/F87と、照明コントローラ88と、各種I/O89と、モータアンプ90と、モータ91とを備えている。なお、CPU81は、制御部の一例である。
【0038】
CPU81は、実装ヘッド32による部品実装動作を制御するように構成されている。具体的には、CPU81は、一対の搬送コンベア14による基板Bの搬送動作、ヘッドユニット30による実装動作、第1カメラ41、第2カメラ50、および第3カメラ52による撮像動作など、部品実装装置10の全体の動作を制御するように構成されている。
【0039】
記憶部82には、基板Bに部品を実装するための実装プログラムや各種データなどが記憶されている。各種データには、生産が予定されている基板Bの寸法や搬送速度に関する基板情報、ヘッドユニット30に装着されているシャフト33やノズル60の識別情報、第1カメラ41、第2カメラ50、および第3カメラ52によって測定された対象物の位置、および対象物の位置ずれを判断するための基準となる位置などが含まれている。記憶部82は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)や、SSD(ソリッドステートドライブ)などを含んでいる。
【0040】
本実施形態の記憶部82は、ノズル60の状態の検査に用いるパラメータとしてノズルデータを記憶している。本実施形態のノズルデータには、後述する複数の検査角度、複数の標準サイズが含まれている。これらのパラメータはノズル60の種類毎に設定されている。
【0041】
メモリ83は、CPU81の動作の際に情報が記憶されるように構成されている。表示部84は、部品実装装置10の状態や、生産している基板Bの情報などが表示されるように構成されている。入力装置85は、ユーザの部品実装装置10に対する操作が入力されるように構成されている。入力装置85には、例えば、マウス、キーボード、スイッチ、タッチパネルなどが含まれる。
【0042】
モータコントローラ86は、CPU81の制御によりモータアンプ90を介して各種モータ91(X軸サーボモータ23、Y軸サーボモータ24、Z軸サーボモータ、R軸サーボモータ36など)を駆動させるように構成されている。カメラI/F(インターフェース)87には、第1カメラ41、第2カメラ50、および第3カメラ52が接続されている。また、カメラI/F87は、CPU81に接続されている。これにより、CPU81と、第1カメラ41、第2カメラ50、および第3カメラ52とをそれぞれ接続するように構成されている。
【0043】
照明コントローラ88は、CPU81の制御により第1照明42、第2照明51、および第3照明53を駆動させるように構成されている。各種I/O(入出力)89は、CPU81に対して、入力および出力される信号を制御するように構成されている。
【0044】
<ノズルの状態の検査>
本実施形態に係る部品実装装置10は、ノズル60を軸線Lの周りに回転させて、予め設定された複数の検査角度において撮像部40によりノズル60を撮像することで、1つ以上の撮像画像を取得する。そして、取得された1つ以上の撮像画像と記憶部82に記憶されたノズルデータとに基づいて、ノズル60の状態を検査することを特徴としている。ここでいうノズル60の状態とは、例えば、ノズル60の種類や装着姿勢が正しいか、ノズル60の先端部61が欠けていないか等を含む。
【0045】
基板Bに実装される小型の部品は、長方形の形状を有することが多い。このため、小型の部品を吸着するためのノズル60の先端部61の形状も、ノズル60の軸線Lの軸方向(上下方向)に直交する方向に細長い形状であることが多い。例えば、ノズル60の先端部61は、平面視において長方形の形状をなしている。このような小型の部品用のノズル60の先端部61において、角や端の部分は応力を受けやすく、例えば材質によっては欠けやすい。ノズル60の先端部61に欠けが発生すると、ノズル60の吸着力が低下して、部品の吸着姿勢が不安定になったり、部品を正しい位置に実装できなくなったりする場合がある。
【0046】
本実施形態の部品実装装置10は、以下に詳細に説明するように、ノズル60の状態、特にノズル60の先端部61の欠けを検査することができるから、部品の吸着率の低下や実装位置精度の低下等を抑制できる。
【0047】
図7に示すように、ノズル60の先端部61は、4つの角部62A~62Dと、部品を吸着するための2つの吸着孔63と、を有する。4つの角部62A~62Dは、ノズル60の先端部61において欠けが発生しやすい箇所となっている。以下の説明では、4つの角部62A~62Dを特に区別せずに4つのうちのいずれかを、単に角部62と呼称する場合がある。2つの吸着孔63は、平面視において円形状であり、ノズル60の長辺方向に並んで設けられている。
【0048】
<複数の検査角度>
ノズル60の複数の検査角度は、軸方向(上下方向、Z方向)および撮像方向(前後方向、Y方向)の双方に直交する幅方向(左右方向、X方向)において、ノズル60の先端部61の角部62が端に配される角度とされている。すなわち、複数の検査角度にあるノズル60を撮像した複数の撮像画像においては、角部62が左右方向の端部に配されるようになっている。
【0049】
本実施形態では、複数の検査角度は第1検査角度と第2検査角度とからなる。第1検査角度にあるノズル60の撮像画像は、第1撮像画像とされている。第1撮像画像において、2つの角部62A、62Cがシルエットの幅方向の端部に配されている。第2検査角度にあるノズル60の撮像画像は、第2撮像画像とされている。第2撮像画像において、2つの角部62B、62Dがシルエットの幅方向の端部に配されている。
【0050】
また、本実施形態では、ノズル60を複数の検査角度に回転させた状態では、ノズル60の先端部61の角部62同士を結んだ対角線が幅方向(左右方向)にのびる基準軸SAに平行となるように複数の検査角度を設定している。これにより、撮像画像においてシルエットの幅方向の寸法を大きくすることができ、ノズル60の状態をさらに検査しやすい。
【0051】
ノズル60が軸線Lの回りに回転する角度θを、長方形の長辺が基準軸SAと平行となる角度を基準角度(θ=0°)とし、平面視における反時計回りの方向を正の方向として、定義する。この場合、第1検査角度はθ=θ1(>0°)であり、第2検査角度はθ=θ2(=-θ1<0°)である。
【0052】
図3に示すように、本実施形態では、ヘッドユニット30の3つの実装ヘッド32は、1つの同一のR軸サーボモータ36によって回転するようになっている。複数の実装ヘッド32が同一の種類のノズル60を有する場合でも、複数の実装ヘッド32のそれぞれのノズル60の角度は互いに異なっている場合がある。例えば、
図3において、左端のノズル60の角度がθ=0°であるとき、中央のノズル60の角度はθ=α(>0°)であり、右端のノズル60の角度はθ=β(<0°)である。なお、複数の実装ヘッド32間の角度のずれは、出荷時で±0.5°未満であるが、
図3においては、角度のずれが見やすいように誇張して図示してある。複数の実装ヘッド32間に角度のずれが生じている場合、それぞれのノズル60の検査角度は、実装ヘッド32毎に異なる設定とされる。例えば、
図3において、左端のノズル60の第1検査角度がθ=θ1であれば、中央のノズル60の第1検査角度はθ=θ1-αとなり、右端のノズル60の第1検査角度はθ=θ1+βとなる。このように、部品実装装置10が複数の実装ヘッド32(およびノズル60)を備える場合、各ノズル60の検査角度は、各実装ヘッド32に固有のオフセット量を加味して設定されている。
【0053】
<複数の標準サイズ>
図7に示すノズル60は、先端部61が欠けていないノズル60であり、本開示においては標準ノズル60Sとされている。標準ノズル60Sを複数の検査角度に回転させて標準ノズル60Sを撮像方向から見たときの標準ノズル60Sの先端部61のサイズは、複数の標準サイズとされている。すなわち、複数の標準サイズは、
図7の第1撮像画像および第2撮像画像のシルエットのサイズと等しい。ここでは、標準サイズの意義がわかりやすいように、標準ノズル60Sの第1撮像画像および第2撮像画像を図示して説明したが、実際のノズル60の状態の検査の際に、標準ノズル60Sを撮像し、標準サイズを算出する必要はない。標準サイズは数値パラメータとして予め記憶部82のノズルデータに含めておくことができる。標準サイズとしては、シルエットの面積や幅方向の寸法に対応する数値を採用することができる。本実施形態の標準サイズは、シルエットの面積に対応する数値とされている。第1撮像画像の標準サイズは第1標準サイズとされ、第2撮像画像の標準サイズは第2標準サイズとされている。
【0054】
<複数の計測サイズ>
実装ヘッド32に装着されているノズル60の角部62が欠けているか否かの判定は、具体的には、上記の複数の標準サイズと、ノズル60の複数の撮像画像から算出される複数の計測サイズと、を比較することにより行われる。ここで、複数の計測サイズとは複数の標準サイズに対応する計測値である。第1撮像画像の計測サイズは第1計測サイズとされ、第2撮像画像の計測サイズは第2計測サイズとされている。したがって、第1計測サイズと第1標準サイズが一致するとともに、第2計測サイズと第2標準サイズが一致すれば、ノズル60の先端部61は欠けていないと判定することができる。
【0055】
より詳細には、計測サイズが、対応する標準サイズに基づいて定められた許容値の範囲内(例えば標準サイズの95%以上等)であれば、角部62は欠けていないと判定されるようになっている。反対に、計測値サイズが許容値の範囲外であれば、角部62は欠けていると判定されるようになっている。許容値は、ノズル60が正常に部品を吸着および実装できる先端部61の形状、寸法などを考慮して設定することができる。例えば、吸着孔63の形状が変化するような先端部61の欠けは、吸着率を低下させやすいため、そのような先端部61の欠けが発生しているノズル60の計測サイズは、許容値の範囲外となるように許容値を設定しておくことが好ましい。許容値の範囲は、記憶部82のノズルデータに含まれている。
【0056】
以下、
図9のフローチャートを参照しつつ、ノズル60の状態を検査する手順について説明する。ノズル60の状態の検査が行われるタイミングは、例えば、ノズル60を実装ヘッド32に装着した直後、ノズル60を部品実装装置10内のノズルストッカー(図示せず)に収納する直前、吸着エラーの発生時、予め設定された定期タイミング、および基板Bの搬送時のうち、少なくとも1つのタイミングとすることができる。
【0057】
ノズル60の状態の検査が開始されると、CPU81はR軸サーボモータ36を制御し、ノズル60を第1検査角度に回転させる角度設定処理を実行する(S10)。
【0058】
CPU81は、第1検査角度にあるノズル60の先端部61を撮像部40により撮像し、第1撮像画像を取得する撮像処理を実行する(S20)。
【0059】
CPU81は、第1撮像画像に基づいて第1計測サイズを算出する算出処理を実行する(S30)。
【0060】
CPU81は、第1計測サイズが第1標準サイズにより設定された許容値の範囲内であるか否かによって、ノズル60の先端部61が欠けているか否かを判定する判定処理を実行する(S40)。第1計測サイズが許容値の範囲内である場合(S40:YES)、S50に移行する。第1計測サイズが許容値の範囲内ではない場合(S40:NO)、S100に移行する。
【0061】
例えば、
図8に示す場合には、シルエットの面積とされる第1計測サイズは第1標準サイズ(
図7参照)に一致するから、S40からS50に移行する。以下、
図9のフローチャートにおいてS50以降を説明する。
【0062】
CPU81はR軸サーボモータ36を制御し、ノズル60を第2検査角度に回転させる角度設定処理を実行する(S50)。
【0063】
CPU81は、第2検査角度にあるノズル60の先端部61を撮像部40により撮像し、第2撮像画像を取得する撮像処理を実行する(S60)。
【0064】
CPU81は、第2撮像画像に基づいて第2計測サイズを算出する算出処理を実行する(S70)。
【0065】
CPU81は、第2計測サイズが第2標準サイズにより設定された許容値の範囲内であるか否かによって、ノズル60の先端部61が欠けているか否かを判定する判定処理を実行する(S80)。第2計測サイズが許容値の範囲内である場合(S80:YES)、S90に移行する。すなわち、ノズル60の先端部61の角部62はいずれも欠けていないと判定し、ノズル60による部品実装が行われる。第2計測サイズが許容値の範囲内ではない場合(S80:NO)、S100に移行する。
【0066】
図8に示す場合では、ノズル60の角部62Dが欠け、吸着孔63の形状が損なわれている。第2計測サイズは、撮像画像において一点鎖線で示される第2標準サイズの90%程度となっている。第2標準サイズの95%以上を許容値の範囲内としている場合、CPU81は、第2計測サイズが許容値の範囲外であると判定し、先端部61の欠けを検知することができる(S80:NO)。
【0067】
仮に
図8に示すノズル60の状態の検査を、第1撮像画像のみに基づいて行った場合には、ノズル60の先端部61の欠けは見逃されてしまう。しかし、本実施形態では、上記したように、第1検査角度で第1撮像画像を取得し、ノズル60の状態の検査を行った後、第2検査角度で第2撮像画像を取得し、ノズル60の状態の検査を再度行うから、ノズル60の先端部61の欠けを検知しやすくなっている。したがって、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制しやすくなっている。
【0068】
また、
図8に示す場合とは異なり、第1撮像画像から算出された第1計測サイズが許容値の範囲内でなかった場合には(S40:NO)、ノズル60の先端部61が欠けていると判定され、第2撮像画像は取得されずにノズル60の状態の検査が終了する。このように、本開示には、取得予定のすべての(検査角度の数と同数の)撮像画像を取得することなく、少なくとも1つの撮像画像に基づいてノズル60の異常が検知されることにより、ノズル60の状態の検査が終了する場合も含まれる。
以下、
図9のフローチャートにおいてS100以降を説明する。
【0069】
ノズル60の先端部61が欠けていると判定された場合、CPU81は、ノズルストッカーに予備のノズル60があるか判定する(S100)。ノズルストッカーに準備されているノズル60の個数については、予めユーザが入力装置85により記憶部82のノズルデータに記憶させることができ、CPU81はノズルデータに基づいて判定を行う。
【0070】
ノズルストッカーに予備のノズル60がある場合、CPU81は実装ヘッド32に装着されているノズル60を、予備のノズル60と交換し、生産を継続させる(S110)。
【0071】
ノズルストッカーに予備のノズル60がない場合、CPU81はエラーメッセージの送信などによりノズル60の異常をユーザに知らせて、マシン動作を停止させる(S120)。ユーザは、ノズル60をノズルストッカーに補充することにより、生産を再開させることができる。
【0072】
<ノズルの先端部が正方形の形状をなす場合>
続いて、
図10および
図11を参照しつつ、平面視において先端部66が正方形の形状をなすノズル65の状態の検査について説明する。上記したノズル60と同様に説明できる事項については、説明を省略する。
図10に示すように、ノズル60と同様にノズル65の回転する角度θを定義すると、ノズル65の複数の検査角度は、θ=45°とされる第1検査角度と、θ=-45°とされる第2検査角度と、からなる。
【0073】
ノズル65の先端部66は、4つの角部67A~67Dと、略X字形の吸着孔68と、を有する。例えば、
図11に示すように、角部67Dが欠けているノズル65を複数の検査角度で撮像すると、第2撮像画像に基づいて角部67Dの欠けを検知することができる。
【0074】
<ノズルの先端部が菱形の形状をなす場合>
続いて、
図12および
図13を参照しつつ、平面視において先端部71が菱形の形状をなすノズル70の状態の検査について説明する。上記したノズル60と同様に説明できる事項については、説明を省略する。
図12に示すように、ノズル70が軸線Lの回りに回転する角度θを、菱形の長い方の対角線が基準軸SAと平行となる角度を基準角度(θ=0°)とし、平面視における反時計回りの方向を正の方向として、定義する。ノズル70の複数の検査角度は、θ=0°(基準角度)とされる第1検査角度と、θ=90°とされる第2検査角度と、からなる。
【0075】
ノズル70の先端部71は、4つの角部72A~72Dと、2つの吸着孔73と、を有する。ノズル70が第1検査角度にあるとき、鋭角(<90°)とされる2つの角部72A、72Cが第1撮像画像の幅方向の端部に配されている。ノズル70が第2検査角度にあるとき、鈍角(>90°)とされる2つの角部72B、72Dが第2撮像画像の幅方向の端部に配されている。例えば、
図13に示すように、角部72Cが欠けているノズル70を複数の検査角度で撮像すると、第1撮像画像から角部72Cの欠けを検知することができる。
【0076】
[実施形態1の作用効果]
以上のように、実施形態1に係る部品実装装置10は、基板Bに部品を実装する部品実装装置10であって、部品を吸着するノズル60が軸線L上に装着された実装ヘッド32と、ノズル60を軸線Lの回りに回転させる回転機構(R軸サーボモータ36)と、ノズル60を軸線Lの軸方向と直交する撮像方向から撮像する撮像部40と、ノズルデータを記憶する記憶部82と、制御部(CPU81)と、を備え、ノズルデータは、複数の検査角度を含み、複数の検査角度は、ノズル60の先端部61の欠けが発生しやすい箇所が、軸方向および撮像方向の双方に直交する幅方向における端部に配されるようになっているノズル60の軸線Lの回りの角度であり、ノズルデータは、ノズル60と同種類であり、先端部61が欠けていない標準ノズル60Sを複数の検査角度に回転させて標準ノズル60Sを撮像方向から見たときの標準ノズル60Sのサイズである複数の標準サイズを含み、制御部(CPU81)は、回転機構(R軸サーボモータ36)により複数の検査角度のうちの1つ以上の検査角度にノズル60を回転させて、撮像部40により1つ以上の検査角度にあるノズル60を撮像することで、1つ以上の撮像画像を取得し、1つ以上の撮像画像と記憶部82に記憶されたノズルデータとに基づいてノズル60の状態を検査する。
【0077】
このような構成によれば、ノズル60を撮像する複数の検査角度がノズルデータに含まれているから、ノズル60の状態の検査に必要な1つ以上の撮像画像のみを取得でき、検査に要する時間を短縮することができる。また、複数の検査角度では、ノズル60の先端部61の欠けが発生しやすい箇所が、幅方向における端部に配されるようになっているから、ノズル60の異常、特にノズル60の先端部61の欠けを検知しやすい。ノズル60の異常を検知しやすい構成であるから、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制することができる。
【0078】
実施形態1では、制御部(CPU81)は、1つ以上の撮像画像に基づいて1つ以上の計測サイズを算出するサイズ算出処理と、1つ以上の計測サイズと複数の標準サイズのうちの1つ以上の標準サイズとを比較することで、ノズル60の先端部61が欠けているか否かを判定する判定処理と、を実行する。
【0079】
このような構成によれば、制御部(CPU81)は、1つ以上の撮像画像に基づいて算出された1つ以上の計測サイズと、ノズルデータに含まれる複数の標準サイズのうちの1つ以上の標準サイズとを比較することで、ノズル60の先端部61が欠けているか否かを判定するから、ノズル60の先端部61の欠けの検査の精度を向上させることができる。
【0080】
実施形態1では、複数の検査角度は、ノズル60が取り付けられる実装ヘッド32に固有のオフセット量を加味して設定されている。
【0081】
このような構成によれば、使用する実装ヘッド32を変更しても正確にノズル60の状態を検査できる。
【0082】
実施形態1では、制御部(CPU81)がノズル60の状態を検査するタイミングは、ノズル60を実装ヘッド32に装着した直後、ノズル60をノズルストッカーに収納する直前、吸着エラーの発生時、予め設定された定期タイミング、および基板Bの搬送時のうち、少なくとも1つのタイミングとされる。
【0083】
このような構成によれば、設定された少なくとも1つのタイミングでノズル60の状態の検査が行われるから、ノズル60の異常を一層検知しやすく、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制することができる。
【0084】
実施形態1では、撮像部40は、ノズル60を撮像する検査用カメラ(第1カメラ41)と、撮像方向について検査用カメラ(第1カメラ41)とともにノズル60を挟むように配される検査用照明(第1照明42)と、を備える。検査用照明(第1照明42)の光源は平行光であることが好ましい。
【0085】
このような構成によれば、検査用照明(第1照明42)の光源が平行光であるから、複数の撮像画像に基づいてノズル60の先端部61のサイズを正確に算出しやすく、ノズル60の異常を一層検知しやすい。
【0086】
[本開示の実施形態2の詳細]
本開示の実施形態2を、
図14ないし
図17を参照しつつ説明する。以下、実施形態1と同様の構成、作用効果については、説明を省略する。また、実施形態1と同一の構成については、同一の符号を用いて説明する。
【0087】
実施形態2の部品実装装置110においては、CPU81は、ノズル60を軸線Lの周りに180°以上回転させながら、撮像部40によりノズル60を連続的に撮像することで、複数の撮像画像を取得する。すなわち、実施形態2では、実施形態1に係る複数の検査角度を用いないから、ノズルデータは複数の検査角度を含まなくてよい。また、角度θの相対値のみが問題となるので、実装ヘッド32固有の角度θのオフセット量を加味しなくてもよい。
【0088】
CPU81は、取得した複数の撮像画像のそれぞれの計測サイズを算出する。例えば、
図14に示される先端部61が欠けたノズル60を例にとると、撮像画像の計測サイズは、角度θに対して
図15の実線のような関係を示す(破線は標準ノズル60S)。
図15において白抜き矢印で示すように、計測サイズは、角度θ=θ3(>0°)、θ4(<0°)において極大となり、角度θ=-90°、0°、90°において極小となっている。計測サイズが極大または極小となる撮像画像は、
図14に示されている。
【0089】
CPU81は、計測サイズが最大である撮像画像、すなわち、角度θ=θ3における撮像画像を第1画像として抽出する。次に、CPU81は、第1画像を撮像した際のノズル60の角度θ=θ3の前後の除外角度dθにおいて撮像された撮像画像を除いて、計測サイズが最大である撮像画像、すなわち、角度θ=θ4における撮像画像を第2画像として抽出する。第1画像の前後の除外角度dθにおける撮像画像を除くことで、例えば、
図15の角度θ=θ5における撮像画像が第2画像として抽出されることを回避することができる。
【0090】
CPU81は、第1画像の計測サイズと第1極大サイズとを比較するとともに、第2画像の計測サイズと第2極大サイズとを比較することで、ノズル60の先端部61が欠けているかを判定する。ここで、第1極大サイズおよび第2極大サイズとは、標準ノズル60S(ノズル60と同種類であって先端部61が欠けていないもの、実施形態1の
図7参照)を軸線Lの回りに180°以上回転させて、撮像方向から見たときの標準ノズル60Sのサイズの角度θに対する極大値であり、第2極大サイズは第1極大サイズ以下とされる。
図14および
図15に示す場合、欠けが無い標準ノズル60Sの先端部61は平面視において長方形の形状であるから、第1極大サイズおよび第2極大サイズは等しい。第1極大サイズおよび第2極大サイズは、数値パラメータとして予め記憶部82のノズルデータに含まれている。
【0091】
本実施形態では、
図15に示すように、除外角度dθが適切に設定されているため、第2画像としてノズル60の先端部61の欠けが反映された角度θ=θ4における撮像画像が抽出されている。よって、
図14に示すように、第2画像の計測サイズと第2極大サイズ(撮像画像の一点鎖線)を比較することにより、先端部61の欠けを検知することができる。
【0092】
<ノズルの先端部が菱形の形状をなす場合>
次に、菱形の形状の先端部71を有するノズル70について説明する。ノズル70は、簡単のため先端部71が欠けていない標準ノズル70Sとする。
【0093】
図16に示すノズル70の先端部71の撮像画像の計測サイズは、角度θに対して
図17の実線のような関係を示す。
図17において白抜き矢印で示すように、計測サイズは、角度θ=-90°、0°、90°において極大となり、角度θ=θ6(>0°)、θ7(<0°)において極小となっている。
図16は、計測サイズが極大または極小となる撮像画像を示す。
【0094】
ところで、標準ノズル70Sに係る第1極大サイズと第2極大サイズは大きく異なるとともに、第2極大サイズは計測サイズの極小値に近い数値となっている。したがって、例えば、θ=θ8における撮像画像が第2画像として抽出されないように除外角度Dθを設定する必要がある。仮にθ=θ8における撮像画像が第2画像として抽出されると、本来抽出されるべき角度θ=-90°、90°の周辺の撮像画像が抽出されないため、角部72B、72Dの欠けを検知できない場合がある。
【0095】
上記したように、実施形態2に係るノズル60、70の状態の検査においては、連続撮像により得られた複数の撮像画像から真正な第1画像および第2画像を抽出するために、除外角度dθ、Dθを適切に設定することが重要である。
[実施形態2の作用効果]
【0096】
実施形態2に係る部品実装装置110は、基板Bに部品を実装する部品実装装置110であって、部品を吸着するノズル60が軸線L上に装着された実装ヘッド32と、ノズル60を軸線Lの回りに回転させる回転機構(R軸サーボモータ36)と、ノズル60を軸線Lの軸方向と直交する撮像方向から撮像する撮像部40と、ノズルデータを記憶する記憶部82と、制御部(CPU81)と、を備え、制御部(CPU81)は、回転機構(R軸サーボモータ36)によりノズル60を回転させて、ノズル60の軸線Lの回りの複数の角度において撮像部40によりノズル60を撮像することで、1つのノズル60につき複数の撮像画像を取得し、複数の撮像画像と記憶部82に記憶されたノズルデータとに基づいてノズル60の状態を検査する。
【0097】
このような構成によれば、ノズル60を軸線Lの回りの複数の角度において撮像して取得された複数の撮像画像と記憶部82に記憶されたノズルデータとに基づいてノズル60の状態が検査されるから、ノズル60の先端部61の欠け等の異常を検知しやすい。また、ノズル60の異常を検知しやすい構成であるから、部品の吸着率の低下や実装ずれ等を抑制することができる。
【0098】
実施形態2では、ノズルデータは、第1極大サイズと、第1極大サイズ以下の第2極大サイズと、除外角度dθと、を含み、ノズル60と同種類であり、先端部61が欠けていない標準ノズル60Sを軸線Lの回りに180°以上回転させて、撮像方向から見たときの標準ノズル60Sのサイズは、第1極大サイズと第2極大サイズにおいて極大値をとり、制御部(CPU81)は、回転機構(R軸サーボモータ36)によりノズル60を180°以上回転させながら、撮像部40によりノズル60を連続的に撮像することで、複数の撮像画像を取得する連続撮像処理と、複数の撮像画像に基づいて複数の計測サイズを算出するサイズ算出処理と、計測サイズが最大である第1画像と、第1画像を撮像した際のノズル60の角度の前後の除外角度dθにおいて撮像された撮像画像を除いて計測サイズが最大である第2画像と、を抽出する画像抽出処理と、第1画像の計測サイズと第1極大サイズとを比較するとともに、第2画像の計測サイズと第2極大サイズとを比較することで、ノズル60の先端部61が欠けているか否かを判定する判定処理と、を実行する。
【0099】
このような構成によれば、ノズル60を180°以上回転させながらノズル60を連続的に撮像して取得される複数の撮像画像に基づいてノズル60の状態を検査するから、ノズルデータにノズル60を撮像すべき角度θが含まれていない場合や、実装ヘッド32固有の角度θのオフセット量が加味されていない場合でも、ノズル60の状態、特にノズル60の先端部61の欠けの検査が可能である。また、制御部(CPU81)は、複数の撮像画像から第1画像と第2画像とを抽出し、第1画像の計測サイズと第1極大サイズとを比較するとともに、第2画像の計測サイズと第2極大サイズとを比較することで、ノズル60の先端部61が欠けているか否かを判定するから、ノズル60の先端部61の欠けの検査の精度を向上させることができる。
【0100】
<他の実施形態>
(1)実施形態1では、3つのシャフト33は1つの同一のR軸サーボモータ36により軸線Lの回りに回転するようになっていたが、複数のシャフトのそれぞれにR軸サーボモータが設けられ、各シャフトが別のR軸サーボモータにより回転する構成としてもよい。
(2)実施形態1では、ノズル60、65、70の先端部61、66、71の形状は、四角形であったが、例えば、ノズルの先端部の形状は、丸みを帯びた略多角形や、楕円形、略円形であってもよい。
【0101】
(3)実施形態1では、ノズル60の先端部61の欠けが検知され、ノズルストッカーに予備のノズル60がない場合、CPU81はノズル60の異常をユーザに知らせて、マシン動作を停止させる構成であったが(S120)、これに限られることはない。例えば、異常を検知したノズルを使った基板一枚の生産を中止し、終了後にマシン動作を停止させてもよい。または、異常を検知したノズルを使った生産を中止し、統合管理システムにノズル不足を連絡し、生産を継続し、予備のノズルが補充されたらそのノズルを使った生産を再開するようにしてもよい。
【0102】
(4)実施形態1では、CPU81は第1撮像画像を取得した後、第1計測サイズを算出し、ノズル60の先端部61の欠けの判定を実行し、欠けが検知されない場合には、次いで第2撮像画像を取得する構成であったが、これに限られることはない。例えば、CPUは第1撮像画像を取得した後、第2撮像画像を取得し、次いで、第1計測サイズおよび第2計測サイズを算出し、ノズルの先端部の欠けを判定してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10、110…部品実装装置
11…基台、12…部品供給部、13…フィーダ、14…搬送コンベア、15…搬送ベルト
20…駆動装置、21…X軸ビーム、22…Y軸フレーム、23…X軸サーボモータ、24…Y軸サーボモータ
30…ヘッドユニット
31…ヘッドユニット本体、32…実装ヘッド、33…シャフト、33A…シャフトプーリー、36…R軸サーボモータ、36A…駆動プーリー、37…ベルト、38…補助プーリー、40…撮像部、41…第1カメラ、42…第1照明
50…第2カメラ、51…第2照明、52…第3カメラ、53…第3照明
60…ノズル(先端部が長方形の形状)
60S…標準ノズル、61…先端部、62A、62B、62C、62D…角部、63…吸着孔
65…ノズル(先端部が正方形の形状)
66…先端部、67A、67B、67C、67D…角部、68…吸着孔
70…ノズル(先端部が菱形の形状)
71…先端部、72A、72B、72C、72D…角部、73…吸着孔
81…CPU、82…記憶部、83…メモリ、84…表示部、85…入力装置、86…モータコントローラ、87…カメラI/F、88…照明コントローラ、89…各種I/O、90…モータアンプ、91…モータ
B…基板、dθ、Dθ…除外角度、L…軸線、SA…基準軸