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特許7578563パネル型入力装置、及びこれを使用したエレベーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】パネル型入力装置、及びこれを使用したエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/46 20060101AFI20241029BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B66B1/46 A
G06F3/041 520
G06F3/041 580
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021132609
(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公開番号】P2023027492
(43)【公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】前原 知明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通之
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-317201(JP,A)
【文献】特開2018-052680(JP,A)
【文献】特開2013-124166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の操作動作によって表示パネル面の入力部から入力信号を入力するパネル型入力装置において、
前記表示パネル面に位置座標が付与される複数の前記入力部を設け、前記位置座標には、前記表示パネル面の取付状態に対応して決められた確からしさが付与されており、複数の前記入力部より少ない数の複数の前記入力部から複数の入力信号が入力された場合において、前記入力信号が入力された複数の前記入力部の夫々の前記位置座標の確からしさを評価して、尤も確からしい1つの前記位置座標の前記入力部を真の入力部として特定する制御手段を備え
前記制御手段は、前記入力部からの前記入力信号を検出する入力検出器と、前記入力部の前記位置座標を記憶する入力部座標記憶部と、前記表示パネル面の取付状態の状態情報を記憶する取付状態記憶部と、前記入力信号、前記位置座標、及び前記状態情報から前記真の入力部を求める入力処理部とを備え、前記入力処理部は、前記位置座標の大小関係によって前記真の入力部を求めると共に、
前記表示パネル面は、床面から垂直方向に延びる壁面に沿って複数の前記入力部が位置するように取り付けられており、
前記入力処理部は、前記入力信号に対応する複数の前記入力部の中で、前記位置座標が最も上側に位置する前記入力部を前記真の入力部とし
更に、前記壁面に沿った方向で見て、前記表示パネル面を境にして、前記垂直方向に直交する横方向の一方側に入口が存在する場合には、
前記入力処理部は、前記位置座標が最も上側に位置する前記入力部と、この最も上側に位置する前記入力部に隣接する他の前記入力部とが存在する状態においては、これらの前記入力部の中で、前記横方向でみて前記入口から遠い側の前記入力部を前記真の入力部とする
ことを特徴とするパネル型入力装置。
【請求項2】
操作者の操作動作によって表示パネル面の入力部から入力信号を入力するパネル型入力装置において、
前記表示パネル面に位置座標が付与される複数の前記入力部を設け、前記位置座標には、前記表示パネル面の取付状態に対応して決められた確からしさが付与されており、複数の前記入力部より少ない数の複数の前記入力部から複数の入力信号が入力された場合において、前記入力信号が入力された複数の前記入力部の夫々の前記位置座標の確からしさを評価して、尤も確からしい1つの前記位置座標の前記入力部を真の入力部として特定する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記入力部からの前記入力信号を検出する入力検出器と、前記入力部の前記位置座標を記憶する入力部座標記憶部と、前記表示パネル面の取付状態の状態情報を記憶する取付状態記憶部と、前記入力信号、前記位置座標、及び前記状態情報から前記真の入力部を求める入力処理部とを備え、前記入力処理部は、前記位置座標の大小関係によって前記真の入力部を求めると共に、
前記表示パネル面は、前記表示パネル面を正面から見た時に手前側と奥側に向けて、床面に平行方向、或いは所定の傾斜角方向で延びる行先階登録装置の外側上面に沿って複数の前記入力部が位置するように取り付けられており、
前記入力処理部は、前記入力信号に対応する複数の前記入力部の中で、前記位置座標が最も奥側に位置する前記入力部を前記真の入力部とする
ことを特徴とするパネル型入力装置。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載のパネル型入力装置において、
前記パネル型入力装置は非接触で入力可能な入力装置であり、
前記入力処理部は、所定時間内に入力された複数の前記入力信号を基に前記真の入力部を求める
ことを特徴とするパネル型入力装置。
【請求項4】
乗りかごと、前記乗りかごが発着する乗場ホールを備えたエレベーターにおいて、
前記乗りかごの内部の壁面には行先階を登録するパネル型入力装置、及び/または前記乗り場ホールに前記乗りかごの行先階を登録するパネル型入力装置が設けられ、
前記パネル型入力装置は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の前記パネル型入力装置である
ことを特徴とするエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の手の操作によって入力されるパネル型入力装置、及びこれを使用したエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作者の手の操作によって入力されるパネル型入力装置においては、表示パネル面を指で触るか、或いは指を接近させることで、必要とされる入力信号を入力している。ところが、このようなパネル型入力装置においては、手首から指先までの間の領域が、表示パネル面に接触、或いは接近することによって、複数の入力信号が入力されることがある。このため、本来の指示に対して誤った入力信号が入力されるという現象があった。
【0003】
このような、表示パネル面から誤った入力信号を含む複数の入力信号が入力されるのを避けるために、例えば、特開2011-134069号公報(特許文献1)には、以下のようなパネル型入力装置が示されている。
【0004】
特許文献1においては、タッチ操作があったと予測されるオブジェクト領域を抽出し、抽出されたオブジェクト領域がいかなる物体によるものかを判定し、指以外の属性が付与されたオブジェクト領域の周囲に存在する指の属性が付与されたオブジェクト領域の出現状態に基づいて、その指の属性が付与されたオブジェクト領域の有効性を判定し、ここで無効と判定されると、その領域をタッチ位置検出の対象から除外することで、正確な入力信号を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-134069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えばエレベーターにおいて、乗場ホールには、乗場呼び登録を行なうための乗場呼びのためのパネル型入力装置や、乗りかご内には、行先階を登録するためのパネル型入力装置が設置されている。これらのパネル型入力装置は、乗り場呼びボタンや行先階ボタンが設けられている。尚、ボタンとしては、接触式や非接触式のボタンが使用されている。
【0007】
そして、このようなパネル型入力装置においても、上述した手首から指先までの間の領域が、表示パネル面に接触、或いは接近することによって、複数の入力信号が入力されることがある。このため、本来の指示に対して誤った指示が入力されるという現象があった。この現象を、図9を用いて簡単に説明する。
【0008】
図9には乗りかご内に設けられた、行先階を登録するパネル型入力装置を、乗客が操作する状態を示している。
【0009】
図9において、行先階を登録するためのパネル型入力装置50は、表面に入力用の矩形状の表示パネル面60を備えており、表示パネル面60には複数の入力部(行先階登録ボタン等)70が配置されている。
【0010】
そして、乗りかごに乗車した乗客は目的とする行先階を登録するため、表示パネル面60の入力部70の何れかを指定するが、この時、乗客の手首から指先までの領域(Hnd)が複数の入力部70に重なり、意図せずに複数の入力部70から行先階の入力信号が入力されることがある。
【0011】
このため、本来の行先階に対して誤った行先階が入力されるという現象があった。特に、非接触式のボタンでは、手首から指先までの領域(Hnd)が、検出空間に接近するので、誤った信号が入力される蓋然性が高い傾向にある。尚、接触式のボタンであっても、この現象は生じるものである。
【0012】
このよう課題に対応するために、例えば特許文献1に記載されたパネル型入力装置を使用した場合、オブジェクト領域の属性の有効性を判断するために多くの検出スイッチが必要となり、またその制御ソフトウエアが複雑になるといった課題を生じる。
【0013】
したがって、複雑な検出機構や制御ソフトウエアを使用しないで、簡単なシステム構成で、意図せずに複数の入力部から入力信号が入力されても、尤も確からしい入力部を特定できるパネル型入力装置が要請されている。
【0014】
本発明の目的は、簡単なシステム構成で、意図せずに複数の入力部から入力信号が入力されても、尤も確からしい入力部を特定できるパネル型入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の特徴は、操作者の操作動作によって表示パネル面の入力部から入力信号を入力するパネル型入力装置において、表示パネル面に位置座標が付与される複数の入力部を設け、複数の入力部より少ない数の複数の入力部から入力信号が入力された場合において、入力された複数の入力部の位置座標の関係性を評価して、尤も確からしい1つの位置座標の入力部を真の入力部として特定する制御手段を備えた、ところにある。
【発明の効果】
【0016】
これによれば、簡単なシステム構成で、意図せずに複数の入力部から入力信号が入力されても、尤も確からしい入力部を特定できるパネル型入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態になるパネル型入力装置の外観形状を示す正面図及び側面図である。
図2図1に示す実施形態になるパネル型入力装置の制御ブロック図である。
図3】本発明が適用されるエレベーターの乗りかごの内部を内側から眺めた斜視図である。
図4】本発明の実施形態になるパネル型入力装置における行先階検出機能の制御フローを示すフローチャートである。
図5図4に示す入力点検出処理(ステップS13)の制御フローを示すフローチャートである。
図6図4に示す入力点選定処理(ステップS15)の制御フローを示すフローチャートである。
図7】本発明の他の実施形態になるパネル型入力装置の外観を示す外観図である。
図8】本発明の更に他の実施形態になるパネル型入力装置の構成を示す構成図である。
図9】従来のパネル型入力装置での操作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0019】
図1は、本発明の実施形態になるパネル型入力装置10の正面図と側面図を示している。パネル型入力装置10は、表面に表示パネル面11を備えており、この表示パネル面11には複数の入力部12が設けられている。入力部12は、見かけ上はボタン形式とされ、4行3列の形態で配置されている。
【0020】
この入力部12は接触式であっても良く、また非接触式であっても良い。接触式は、接点を備える周知のスイッチ機構を用いることができ、また、非接触式は、光学式、静電容量式等の周知のスイッチ機構を用いることができる。
【0021】
本実施形態では、非接触式の入力部12を使用しており、その検出領域13は、表示パネル面11の表面から所定の距離(D)に設定されている。したがって、操作者の指が、この検出領域13に入って何れかの入力部12に接近すると、指が接近した入力部12の入力信号が検出されることになる。
【0022】
そして、本実施形態では、表示パネル面11における夫々の入力部12に、パネル型入力装置10の取付状態に対応して位置座標(直角座標を適用)が付与される(これについては後述する)。尚、この位置座標は、表示パネル面11における入力部12の位置情報と見做すこともできる。
【0023】
例えば、図1の図示形態で、説明のために簡略化したパネルの座標が入力部(ボタン)の位置に対応して配置されているとすると、図1のアラビア数字の入力部「0」を原点として、横方向を「X軸」、縦方向を「Y軸」と定義した時、入力部「0」は位置座標(0、0)、入力部「E」は位置座標(1、0)、入力部「C」は位置座標(2、0)、入力部「7」は位置座標(0、1)、入力部「8」は位置座標(1、1)、入力部「9」は位置座標(2、1)、入力部「4」は位置座標(0、2)、入力部「5」は位置座標(1、2)、入力部「6」は位置座標(2、2)、入力部「1」は位置座標(0、3)、入力部「2」は位置座標(1、3)、入力部「3」は位置座標(2、3)となる。
【0024】
これらの入力部12の夫々は、その位置座標と紐付けられて、制御手段の記憶部に記憶される。したがって、例えば、入力部12の「1」が指示されたとすると、「1」に対応する位置座標(0、3)が指定されて読み出されることになる。当然のことながら、複数の入力部12に入力信号が生じると、これに対応した入力部12の位置座標が読み出されることになる。以下では、図1の入力部「2」、「6」、「7」、「8」が、操作者の手の操作動作によって生じる複数の入力部12として説明を進める。
【0025】
このように、複数の入力部12に入力信号が生じると、これに対応した入力部12の位置座標が読み出されるが、本実施形態では、この複数の位置座標の関係性を評価して、尤も確からしい1つの位置座標の入力部12の入力信号を真の入力信号として特定することを特徴としている。
【0026】
尚、位置座標の関係性とは、少なくとも、パネル型入力装置10の取り付け状態と、操作者の一般的な操作におけるパネル型入力装置10に対する操作者の指先の方向とを基に決められた関係性である。
【0027】
例えば、パネル型入力装置10が、床面から垂直方向に延びる壁面に取り付けられているとすると、一般的な通常の操作においては、指先で目標とする入力部12を指し示すことになるので、指先が上側となり、手のひら(掌)は下側となる。
【0028】
したがって、複数の入力部12に入力信号が生じた場合、これに対応した入力部12の複数の位置座標が読み出されるが、本実施形態では、Y軸方向(上側)の最も大きい位置座標が尤も確からしい位置座標となり、これを真の入力部として特定するものである。尚、この関係性は、パネル型入力装置10の取り付け状態によって種々存在するので、この中から選択されるものである。これについては後述する。
【0029】
次に、パネル型入力装置10の制御手段について図2を用いて簡単に説明する。尚、制御手段は、パネル型入力装置10と一体的に構成されていても良いし、パネル型入力装置10とは別の制御装置に設けられ、無線や有線で接続されていても良い。
【0030】
制御手段15は、マイクロコンピュータを主体に構成されている。表示パネル面11には入力検出器16が接続されており、操作者によって入力される入力信号を検出する機能を備えている。入力検出器16で検出された入力信号は、入力処理部17で処理される。
【0031】
この入力処理部17においては、複数の入力信号の有無や、複数の入力信号がある場合は,上述したような真の入力信号を特定するための演算処理を実行する。この演算処理のために、制御手段15は、更に取付状態記憶部18、入力部座標記憶部19を備えている。取付状態記憶部18は、パネル型入力装置10が何処にどの様な状態で取り付けられるかといった「状態情報」を記憶している。この「状態情報」によって、入力部12の位置情報の評価を変更することができる。入力座標記憶部19は、先に説明したように、表示パネル面11における入力部12の夫々の位置座標を記憶する。
【0032】
したがって、入力処理部17は、取付状態記憶部18の「状態情報」と、入力部12に対応した位置座標を用いて、尤も確からしい位置座標を特定することができる。これの具体的な方法は図3図6を用いて説明する。
【0033】
入力処理部17の演算処置で特定された入力部12の入力信号は、入力出力部20から他の制御機器や表示機器に伝送されて、必要な処理が実行される。例えば、パネル型入力装置10が、エレベーターの乗りかごに設けられている場合は、入力出力部20は行先階を出力し、この出力はエレベーターの管理制御装置に送られる。管理制御装置は、乗りかごから送られてきた行先階を基に、乗りかごを行先階に向けて運行させることになる。
【0034】
次に実施形態の具体例を図3図6に基づいて説明する。この具体例は、パネル型入力装置10をエレベーターに用いた例を示している。
【0035】
エレベーターは、複数の乗りかごと、この乗りかごが発着する乗場ホールを備えており、乗りかごの内部の壁面には行先階を登録するパネル型入力装置、及び/または乗り場ホールの壁面には乗りかごの乗場呼びを登録するパネル型入力装置が設けられている。本実施形態では、パネル型入力装置がエレベーターの乗りかごに設置された場合を例にしている。
【0036】
図3は、エレベーターを構成する乗りかご30の内部の構成を示している。乗りかご30は、床面壁30FLと、この床面壁30FLから垂直方向で上側に延びる背面壁(図示せず)と、床面壁30FLから垂直方向で上側に延び、背面壁に隣接する右側面壁30RS及び左側面壁30LSと、背面壁に向き合うようにして、右側面壁30RSと左側面壁30LSの間に隣接して配置された正面壁30FRと、背面壁、側面壁30RS、左側面壁30LS、正面壁30FRを上側から覆う天井壁30CEとから構成されている。そして、乗りかご30の隣り合う夫々の壁面は垂直の関係を有して接続され、四角筒の形状とされている。
【0037】
正面壁FRの中央には、乗客が出入りするスライド式の開閉ドア31が設けられている。この開閉ドア31が開くと、乗客は乗車、或いは降車のために出入りし、また、出発する際は閉じられるものである。
【0038】
開閉ドア31と右側面壁30RSの間の正面壁30FRには、行先階を登録するパネル型入力装置10が取り付けられている。尚、開閉ドア31と左側面壁30LSの間の正面壁30FRにも、行先階を登録するパネル型入力装置10を取り付けることもできる。このパネル型入力装置10は、図1に示したパネル型入力装置と同じ構成であり、表示パネル面11が矩形状に形成され、4行3列の形態で入力部12が配置されている。
【0039】
そして、夫々の入力部12には、図1で説明したように、入力部12毎に位置座標が付与される。夫々の入力部12と位置座標が紐付けられることは先に述べた通りであり、この位置座標は、制御手段15の入力座標記憶部19に記憶される。
【0040】
パネル型入力装置10の取付状態は、表示パネル面11が、正面壁FRに沿って垂直方向に延びるように配置され、しかも表示パネル面11が、正面壁FRに沿って右側面壁RSの方向に延びるように配置されており、このことを表す「状態情報」が制御手段15の取付状態記憶部18に記憶されている。この「状態情報」は位置座標の関係性を決めるために重要なパラメータある。
【0041】
つまり、表示パネル面11の上側(Y軸上で上側)は、通常の操作では操作者の指の先端が位置する領域であり、表示パネル面11の右側(X軸上で右側)は、操作者の手が開閉ドア31の側の左側から伸びて指の先端が位置する領域である。尚、右側からは、右側面壁30RSがあるので、操作者の手は伸びてこない。したがって、指の先端が位置する可能性が高い上述の領域の入力部12の位置座標が、尤も確からしい位置座標と見做すことができる。したがって、Y軸、X軸上で原点から遠ざかるほど確からしい度合いが大きくなる。
【0042】
このように、マイクロコンピュータによる論理演算の中で、この「状態情報」を参酌することで、複数の入力部12の位置座標を評価することができる。ここで、表示パネル面11の下側や左側は、操作する上で手のひら(掌)が存在しなく、指だけが存在する可能性が高いので、複数の入力部12の入力信号が生じる恐れが少ない。このため、上述したような設定を行っても制御ロジックが成立する。尚、開閉ドア31の左側に、パネル型入力装置10を取り付けた場合も同様である。
【0043】
以上のような考え方で、パネル型入力装置10の入力処理部17が実行する制御処理を、図4図6に示すフローチャートで説明する。図4は、エレベーターを稼働するときを含む制御フローを示しており、図5は、図4の「入力点検出処理」の詳細な制御フローを示しており、更に図6は、図4の「入力点選定処理」の詳細な制御フローを示している。
【0044】
≪ステップS10≫
ステップS10においては、パネル型入力装置10の取付状態を取得する。この取付状態は、エレベーターの乗りかごにパネル型入力装置10を設置したときに、予め制御手段15の取付状態記憶部18に、「状態情報」として登録されている。したがって、エレベーターを稼働する時に、パネル型入力装置10の入力部12の位置座標を評価するために、パネル型入力装置10の取付状態を取得している。ステップS10が完了するとステップ11に移行する。
【0045】
「状態情報」は少なくともパネル型入力装置10が入口の左側に設置されているのか、右側に設置されているのかを示す情報を含み、設置されている高さに関する情報を含んでいても良い。「状態情報」を使用することにより入口の左側に設置するパネル型入力装置と右側に設置するパネル型入力装置を共通にできる。
【0046】
≪ステップS11≫
ステップS11においては、入力部12の座標を設定する。このステップでは、上述した「状態情報」に基づいて、X軸方向とY方向にしたがって、図1に示した入力部12の位置座標を設定する。つまり、上方向をY軸方向、開閉ドア31から右側面壁32RSの方向をX軸方向に設定し、図1の図示形態で、アラビア数字の「0」を原点として、入力部「0」を位置座標(0、0)、入力部「E」を位置座標(1、0)、入力部「C」を位置座標(2、0)、入力部「7」を位置座標(0、1)、入力部「8」を位置座標(1、1)、入力部「9」を位置座標(2、1)、入力部「4」を位置座標(0、2)、入力部「5」を位置座標(1、2)、入力部「6」を位置座標(2、2)、入力部「1」を位置座標(0、3)、入力部「2」を位置座標(1、3)、入力部「3」を位置座標(2、3)と設定する。
【0047】
これらの位置座標は、夫々の入力部12と紐付けられて入力部座標記憶部19に記憶される。入力部座標記憶部19は、一般的にはマイクロコンピュータのRAM領域を使用することができるし、また、EEPROM(フラッシュメモリ等)も使用することができる。
【0048】
これまでの処理で、パネル型入力装置10の入力部12の位置座標の設定が完了し、次に実際の乗りかごの行先階登録の処理が実行される。
【0049】
≪ステップS12≫
ステップS12においては、エレベーターを利用する乗客が乗りかごに乗車して、パネル型入力装置10の操作を開始する。尚、ステップS12は、操作者による行為を示しているので、破線枠で示している。この操作時に操作者の手によって、複数の入力部12に入力信号が生じると、これに対応した入力部12の位置座標が読み出されることになる。操作者による操作が開始されるとステップS13の処理が実行される。
【0050】
≪ステップS13≫
ステップS13においては、最初の1点目の入力信号の入力を検出する。これによって、パネル型入力装置10の入力部12が操作されたことが検出される。尚、このステップS13の詳細は、図5に示しており、後述する。この1点目の入力信号の入力が検出されると、次のステップS14に移行する。
【0051】
≪ステップS14≫
ステップS14においては、所定の決められた時間(ここでは一定の時間に設定されている)内に、他の入力部12からの入力信号の入力があったかどうかを判定している。所定時間内の間に入力が増加しない場合はステップS15に移行する。一方、入力が増加する場合は、再びステップS14の処理を実行する。尚、このステップS14においても、他の入力信号があった場合は、図5に示す入力点検出処理が実行される。そして、最終的に入力信号の入力が完了すると、ステップS15の処理を実行する。
【0052】
≪ステップS15≫
ステップS15においては、入力点の選定処理を実行する。この場合、入力信号の入力が1個の場合は、その入力信号を特定するが、複数の入力信号が入力されている場合は、上述した説明にある通り、尤も確からしい入力部を選定して確定する。
【0053】
次に、ステップS13、及びステップS15の制御処理について説明するが、先ず、図5を用いてステップS13の処理フローを説明する。
【0054】
≪ステップS20≫
ステップS20においては、操作者の手がパネル型入力装置10の検出領域13(図1参照)に接近して入力信号が発生するのを検出する。尚、前にも述べたが接触式の場合は、操作者の手がパネル型入力装置10の検出面に接触して入力信号が発生するのを検出する。この入力信号の検出が行われるとステップS21に移行する。
【0055】
≪ステップS21≫
ステップS21においては、操作者の手が一定時間以上に亘って接近しているかどうかを判断する。この場合は、入力信号の発生からの時間経過をタイマで測定して判断することができる。これは、操作者が意図をもって入力部12を指し示す場合は、所定の時間に亘って入力部12を指し示しているという考え方に基づいている。尚、チャタリングを防止する点にローパスフィルタを利用して入力信号を取得することもできる。
【0056】
このステップS12で入力信号が一定時間より前に途絶するとステップS22に移行し、一定時間以上に亘って入力信号が継続するとステップS23に移行する。
【0057】
≪ステップS22≫
ステップS21で、入力信号が一定時間より前に途絶していると判断されているので、ステップS22においては、誤信号として入力信号が無いものとしてエンドに抜けて処理を終了する。
【0058】
≪ステップS23≫
ステップS21で、入力信号が一定時間に亘って継続していると判断されているので、ステップS23においては、操作者の手が検出領域から離脱するのを検出する。この場合は、入力信号が途絶したことを検出して離脱としている。入力信号の途絶を検出するとステップS24に移行する。
【0059】
≪ステップS24≫
ステップS24においては、操作者の手が検出領域から離脱する直前の入力部12の検出位置である位置座標を取得する。この座標は、図4に示すステップS11で設定された位置座標である。検出位置が取得されるとステップS25に移行する。
【0060】
≪ステップS25≫
ステップS25においては、ステップS24で取得された検出位置を出力する。この場合は、上述したステップS15での処理に使用するので、RAMに一時的に記憶される。以上の処理は、複数の入力部12の入力信号についても実行されるので、操作者の操作動作による複数の入力部12の位置座標は、夫々についてRAMに記憶される。この処理が完了すると、エンドに抜けて処理を終了する。
【0061】
次に、図6を用いてステップS15の処理フローを説明する。
【0062】
≪ステップS30≫
ステップS30においては、複数の入力点(入力信号)が存在するかどうかを判断している。上述したように、複数の入力信号が入力されているとステップS31に移行し、1つの入力信号が入力されているとステップS35に移行する。
【0063】
≪ステップS31≫
ステップS31においては、先のステップS10、S11でパネル型入力装置10が図3に示す状態で取り付けられていることを前提にして、操作者の操作による手の指が位置するであろうと見做される入力部12を選定する。この選定では、入力部12のY座標が最大となる入力部12を仮に選定する。
【0064】
例えば、図1において複数の入力として、入力部「2」、入力部「6」、入力部「7
」、入力部「8」の入力信号が検出されると、このステップS31では、Y軸方向の位置座標が最も大きい位置座標(1、3)である入力部「2」を、尤も確からしい入力部12と見做して仮に選定する。入力部12の仮の選定が実行されるとステップS32に移行する。
【0065】
≪ステップS32≫
ステップS32においては、壁側方向又は入口方向の設定があるかどうかの判断をステップS10で取得したパネルの取付状態を示す情報を基に実行する。この判断は、図3に示しているように、操作者の手が開閉ドア31の側の左側から伸びてくることを想定しての判断である。したがって、この設定がなされていない場合は、ステップS35に進んで、ステップS31で仮に選定され入力部「2」を確定する。一方、壁側方向の設定がある場合は、操作者の手が開閉ドア31の側から伸びてきた可能性があるとしてステップS33に移行する。
【0066】
尚、この判断は、パネル型入力装置10がエレベーターの乗りかごに取り付けられる場合を想定しており、側面壁30RS、30LSがない場合は、このステップS32は省略することができる。
【0067】
≪ステップS33≫
ステップS33においては、Y座標の最大の入力部12の座標近傍に、他の入力部12の入力信号が生じているかどうかを判断している。例えば、上述したステップS31で仮に選定したY座標が最大となる入力部「2」の近傍に、他の入力信号が生じている入力部12が存在しているかどうかを判断する。そして、入力部「2」の近傍に他の入力部12が存在しない場合は、ステップS35に進んで、ステップS31で仮に選定された入力部「2」を確定する。
【0068】
ここで「近傍」とは、位置座標の差が所定値の範囲内にあれば「近傍」とするものであり、本実施形態では、ある特定の入力部12に対して、上下に隣接、左右に隣接、斜め方向に隣接してる場合を近傍としている。例えば、入力部「2」に対して、入力部「1」、「3」、「4」、「5」、「6」は近傍の範囲である。
【0069】
一方、入力部「2」の近傍に他の入力部12が存在する場合は、操作者の手が開閉ドア31の側から伸びてきた可能性があるとしてステップS34に移行する。上述したステップS31では、Y座標が最大の入力部「2」の近傍である入力部「6」が存在しているので、ステップS34に移行する。
≪ステップS34≫
ステップS34においては、Y座標が最大の入力部12と、その近傍の入力信号が生じている入力部12の中から、X座標の最大の入力部12を選定する。尚、近傍の入力部12は、1つに限らず、複数の入力部12の場合も存在する。したがって、これらの入力部12の中からX座標が最大の入力部12を選定するものである。
【0070】
例えば、上述したステップS31で仮に選定したY座標が最大となる入力部「2」の近傍に、入力部「6」が存在しているので、ステップS34においては、入力部「2」と入力部「6」で、X座標が最大となる入力部12を選定する。
【0071】
ここで、入力部「2」の位置座標は(1、3)であり、入力部「6」の位置座標は(2、2)であるので、X座標が大きい入力部「6」が選択される。この選定処理が終了するとステップS35に移行する。
【0072】
≪ステップS35≫
ステップS35においては、夫々のステップS30、S32、S33の判断によって選定された入力部12を、真の入力部12として確定処理する。確定された入力部12の入力信号は、行先階として登録され、この出力はエレベーターの管理制御装置に送られる。管理制御装置は、乗りかごから送られてきた行先階を基に、乗りかごを行先階に向けて運行させることになる。
【0073】
このように本実施形態によれば、表示パネル面に位置座標が付与される複数の入力部を設け、複数の入力部より少ない数の複数の入力部から入力信号が入力された場合において、入力された複数の入力部の位置座標の関係性を評価して、尤も確からしい1つの位置座標の入力部を真の入力部として特定する構成としている。
【0074】
これによれば、簡単なシステム構成で、意図せずに複数の入力部から入力信号が入力されても、尤も確からしい入力部を特定できるパネル型入力装置を提供することができる。
【0075】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。上述した実施形態は、エレベーターの乗りかごに取り付けたパネル型入力装置10の実施形態であるが、本実施形態は、例えば建築物の乗場ホールの入口に設けられた行先階登録装置に用いられるパネル型入力装置の実施形態である。
【0076】
行先階登録装置は、複数のエレベーターの乗りかごの何れかに乗客を振り分けるものであり、例えば、乗客が行先階を指定すると、これにしたがって乗客を割り振って、まとめて同じ行先階に乗客を搬送させる装置である。
【0077】
図7に示しているように、この行先階登録装置40のパネル型入力装置41は、床面に平行、或いは所定の傾斜角(垂直より角度が小さい)で、行先階登録装置40の外側上面に取り付けられている。この場合も図1に示したように、表示パネル表面42に複数の入力部43が配置されており、夫々の入力部43の位置座標も図1に示すものと同じである。
【0078】
そして、操作者からパネル入力装置41を正規の状態で見て、手前側をX軸とし、奥側に向かう方向をY軸としている。したがって、この状態では図1に示すパネル型入力装置10と同じ位置座標の関係になる。このため、操作者の操作動作によれば、奥側が操作者の指が位置する可能性が高くなり、Y軸座標が大きいほど尤も確からしい入力部12となる。
【0079】
ただ、本実施形態の行先階登録装置40は、乗場ホールの入口に設置されるので、乗りかごのような側面壁30RS、30LSがなく、「状態情報」も側面壁がないものとして設定されている。したがって、制御処理においても、図6に示すステップS32~S34までの制御ステップは省略される。これ以外は、先に説明した実施形態と同様の制御処理が実行される。
【0080】
図8は、乗りかご内に存在する乗客に対する、パネル型入力装置10のアナウンス機能について示している。
【0081】
図8において、パネル型入力装置10が、乗りかごの側壁面に鉛直方向に設置されており、パネル型入力装置10の上端面にはスピーカ44が設けられ、下端側には3Dカメラ45が設けられている。3Dカメラ45は、乗客47の下半身側を視野46としており、表示パネル面の検出領域13より下側を撮像することで、パネル型入力装置10に近い乗客までの距離を検出する。3Dカメラ45は、ステレオ方式やToF方式のカメラを使用することができる。
【0082】
そして、3Dカメラ45で撮影された画像から検出された、乗客47までの距離が設定距離より近い場合は、スピーカよりパネル型入力装置10から離れるように促す報知を行うことができる。これによって、無用な入力が発生することを抑制することができる。
【0083】
以上述べた通り、本発明によれば、操作者の操作動作によって表示パネル面の入力部から入力信号を入力するパネル型入力装置において、表示パネル面に位置座標が付与される複数の入力部を設け、複数の入力部より少ない数の複数の入力部から入力信号が入力された場合において、入力された複数の入力部の位置座標の関係性を評価して、尤も確からしい1つの位置座標の入力部を真の入力部として特定する制御手段を備えた、ことを特徴としている。
【0084】
これによれば、簡単なシステム構成で、意図せずに複数の入力部から入力信号が入力されても、尤も確からしい入力部を特定できるパネル型入力装置を提供することができる。
【0085】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
10…パネル型入力装置、11…表示パネル面、12…入力部、13…検出領域、15…制御手段、16…入力検出器、17…入力処理部、18…取付状態記憶部、19…入力部座標記憶部、20…入力出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9