(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/70 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
E06B1/70 Z
(21)【出願番号】P 2021137645
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】高畠 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】関 雅美
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-154563(JP,A)
【文献】特開2007-138641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に配置される下枠と、スロープ部材を備え、
下枠は、縦枠間に位置する下枠本体部と、下枠本体部から浴室側に延設され縦枠間から突出するスロープ受け部を有し、
スロープ部材は、スロープ受け部に載置されるスロープ部を有し、
スロープ受け部は、浴室側端に見付壁を有するとともに左右の小口面に小口蓋が取り付けられて上下方向に厚みを有する見付面が形成されており、スロープ受け部の外周にシール材が充填されている建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に配置される建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下枠にスロープ部材を設けた建具が知られている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建具において、下枠部分の施工性を向上させることが求められている。
本発明は、下枠にスロープ部材を設けた建具に対して、施工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の建具は、開口部に配置される下枠と、スロープ部材を備え、下枠は、縦枠間に位置する下枠本体部と、下枠本体部から浴室側に延設され縦枠間から突出するスロープ受け部を有し、スロープ部材は、スロープ受け部に載置されるスロープ部を有し、スロープ受け部は、浴室側端に見付壁を有するとともに左右の小口面に小口蓋が取り付けられて上下方向に厚みを有する見付面が形成されており、スロープ受け部の外周にシール材が充填されている建具である。
【発明の効果】
【0006】
本実施形態によれば、下枠にスロープ部材を設けた建具に対して、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】一実施形態の建具の下枠部分の縦断面図であり、(a)はスロープ部材単体の断面図であり、(b)は下枠単体の断面図である。
【
図5】一実施形態の建具の下枠部分の平面図であり、(a)はスロープ部材の平面面図であり、(b)は下枠部分の平面図である。
【
図6】一実施形態の建具の下枠部分の縦断面図である。
【
図7】一実施形態の建具の施工工程の一部を示す縦断面図である。
【
図8】一実施形態の建具の施工工程の一部を示す縦断面図である。
【
図9】一実施形態の建具の施工工程の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態の建具について、浴室の開口部に設けられる三枚引戸の例を用いて、図面を参考にして説明する。なお、以下の説明においては、見込み方向で建具の一方側を「浴室側」とし、他方側を「脱衣室側」として説明する。
【0009】
一実施形態の建具は、
図1に示すように、上枠11、下枠12及び左、右縦枠13,14を四周に組んでなる枠体1の内周に、上框21,31,41、下框22,32,42及び左、右縦框23,24,33,34,43,44を框組して内周にパネル体を保持してなる三枚の障子2,3,4が摺動自在に配置されている三枚引戸である。
【0010】
枠体1を構成する上枠11は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2に示すように、中空部を有し上枠11の内周面を形成する上枠本体部11aと、上枠本体部11aの脱衣室側に連続する額部11bと、上枠本体部11aの内周面に形成される脱衣室側から上第1レール11c、上第2レール11d,上第3レール11eと、上枠本体部11aの浴室側内周面から下方に延びる見付壁11fと、上枠本体部11aの外周から外周方向に延びる取付片11gを有している。
【0011】
上枠11は、上第1レール11cと上第2レール11dの間、及び上第2レール11dと上第3レール11eの間にそれぞれ風止め部材71,72が設けられている。
【0012】
枠体1を構成する下枠12は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図2,
図4(b),
図5(b)に示すように、中空部を有し四周に枠組みされた際に左、右縦枠13,14の間に位置する下枠本体部12aと、下枠本体部12aの脱衣室側に連続する額部12bと、下枠本体部12aの浴室側に延設され、左、右縦枠13,14の間から浴室側に突出するスロープ受け部12cと、下枠本体部12aの外周から外周方向に延びる取付片12gを有している。
【0013】
下枠12の下枠本体部12aは、上面がほぼ平坦に形成されており、
図4(b)に示すように、脱衣室側の上面に後述するスロープ部材5が係止される被係止部材123が取り付けられている。なお、下枠12は、排水性等を考慮して、下枠本体部12aの上面に浴室側が低くなるような傾斜部分を有していてもよい。
【0014】
下枠12のスロープ受け部12cは、下枠本体部12aの浴室側から延びる上壁と、上壁の浴室側端から下方に延びる見付壁12dを有しており、上壁の上面は下枠本体部12aの上面と略同一かやや低い高さ位置の平坦面に形成されている。
スロープ受け部12cは、
図5(b)に示すように、左右の小口面に小口蓋122が取り付けられており、スロープ受け部12cの浴室側及び左、右側の外周面は見付壁12d及び小口蓋122によって上下方向に厚みを有する見付面が形成されている。
【0015】
本実施形態の建具は、
図2,
図3,
図6に示すように、下枠12の上面にスロープ部材5が配置されている。
スロープ部材5は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図4(a),
図5(a)に示すように、下枠12の下枠本体部12aの上面に載置されるレール部51と、レール部51の浴室側に連続して下枠12のスロープ受け部12cの上面に載置され、下枠から出入り方向に傾斜する傾斜面を有するスロープ部52を有しており、スロープ部52の下面にスロープ支持部品53が取り付けられている。
なお、スロープ部材5は、合成樹脂等の材料から形成してもよい。
【0016】
スロープ部材5のレール部51は、上面に脱衣室側から下第1レール51a、下第2レール51b,下第3レール51cを有し、下面に複数の脚部51d及び下枠12の被係止部材123に係合する係合部51eを有しており、複数の脚部51dが下枠12の下枠本体部12aの上面に載置され、スロープ支持部品53がスロープ受け部12cの上面に載置されて取り付けられている。
【0017】
本実施形態の建具のスロープ部材は、
図3,
図5(a)に示すように、左右に並ぶ二つスロープ部材5,5が中央の連結部5aで連結されて形成されており、左右端部に端部キャップ5b,5bが取り付けられている。
なお、スロープ部材は、下枠12の長さ寸法に応じて、一体形成した長尺部材でもよく、また、3つ以上のスロープ部材5を連結してなるものであってもよい。
【0018】
3つの障子2,3,4は、それぞれスロープ部材5の下第1レール51a、下第2レール51b及び下第3レール51cに案内され、枠体1を開閉自在に支持されている。
【0019】
枠体1を構成する左縦枠13は、アルミ合金等の金属材料からなり、
図3,
図5(b)に示すように、中空部を有し建具開口部の内周面を形成する左縦枠本体13aと、左縦枠本体13aの脱衣室側に連続する額部13bと、左縦枠本体13aの浴室側内周面に形成される戸先受部13cと、左縦枠本体13aの外周側に設けられる取付片13gを有している。
左縦枠13は、戸先受部13cに外障子4の左縦框(戸先側縦框)43を係合する係合部13e及び左縦框43に当接する気密材s13が設けられている。
【0020】
枠体1を構成する右縦枠14は、左縦枠13と同様に、中空部を有し建具開口部の内周面を形成する右縦枠本体14aと、右縦枠本体14aの脱衣室側に連続する額部14bと、右縦枠本体14aの脱衣室側内周面に形成される戸先受部14cと、右縦枠本体14aの外周側に設けられる取付片14gを有している。
右縦枠14は、戸先受部14cに内障子2の右縦框(戸先側縦框)24を係合する係合部14e及び右縦框24に当接する気密材s141,s142が設けられている。
【0021】
本実施形態の建具の枠体1は、浴室と脱衣室との間の開口部に配置されるが、以上のように、下枠12の浴室側にスロープ受け部12cが延設されており、該スロープ受け部12cの上面にスロープ部材5が載置されているので、スロープ部材5を安定して配置することができる。
以下、スロープ受け部12cを有する下枠12について、施工方法等さらに説明する。
【0022】
下枠12が取付けられる躯体は、
図7(a)に示すように、基礎の一部立上り部Aの上面に木材等の土台Bが載置されており、土台Bの上面には額部材Cが固定され、基礎の立上り部Aの間には防湿コンクリート等によって床面(基礎)Dが形成されている。
【0023】
浴室と脱衣室との間に配置される建具の下枠12は、下枠本体部12aの取付片12gよりも脱衣室側部分が土台Bの上面に載置されており、額部12bが額部材Cの上面に固定されるとともに、取付片12gが土台Bの浴室側面に固定される。
土台Bに固定された下枠12は、スロープ受け部12cの左右両小口面に小口蓋122が取り付けられている。
【0024】
土台Bに固定された下枠12は、
図7(b)に示すように、スロープ受け部12cの下面にアンカー部材Eが取り付けられ、基礎の一部立上り部Aの浴室側の床面(基礎)D上に下枠12に取り付けられたアンカー部材Eを埋没させるようにモルタルMが充填される。
【0025】
床面(基礎)D上のモルタルMは、下枠12のスロープ受け部12cの下端よりも上方位置まで充填され、スロープ受け部12cの浴室側及び左、右側の外周には見付壁12d及び小口蓋122が露出して、上下方向に厚みを有する見付面が形成されている。
【0026】
充填されたモルタルMの上面で下枠12の周りには、
図8(a)に示すように、タイル等の仕上げ材6が配置されて仕上げが施される。
スロープ受け部12cの浴室側及び左、右側に形成された見付面の露出部の高さ寸法は、タイル等の仕上げ材6の施工高さ寸法と同程度の寸法を有しており、仕上げ材6の上面とスロープ受け部12cの上面とは同じ高さとなっている。
【0027】
タイル等の仕上げ材6が施工された後、
図8(b),
図9に示すように、スロープ受け部12cの露出した見付面と仕上げ材6との間にシール材Sが充填される。
シール材Sは、スロープ受け部12cの浴室側及び左、右側の外周に充填され、スロープ受け部12cの上面とその周りの仕上げ材6の上面とはシール材によって面一に連続している。
【0028】
開口部の内周面に固定された下枠12の上面には、被係止部材123(
図4(b)参照)が取り付けられ、下枠12の上面に下レールを備えたスロープ部材5が取り付けられて下枠12の施工を完了する。
以上、下枠12の施工手順について説明した。
【0029】
以上のように、下枠12のスロープ受け部12cを床面(基礎)D上に充填されるモルタルMに固定して、スロープ受け部12cの上面でスロープ部材5を支持することによって、スロープ部材5を安定して取り付けることができる。
【0030】
そして、下枠12は、スロープ受け部12cの左右両端の小口に小口蓋122が取り付けられ、スロープ受け部12cの外周に上下方向で仕上げ材6の施工寸法以上の厚みを有する見付面が形成されているので、仕上げ材6の仕上げ面とスロープ受け部12cの上面を同一高さに施工することができる。
【0031】
また、仕上げ材6とスロープ受け部12cとの間に十分な深さを有するシールポケットを形成することができ、シール材を十分に充填して高い水密性能を付与することができる。
【0032】
なお、本実施形態の建具においては、スロープ受け部12cは、見込壁12dと小口蓋122によって上下に厚みを有する見付面を形成しているが、例えば下枠本体部12aの浴室側見付壁の下方位置から水平に底壁を延設させて、その上にブロック状の部材を載置するなどして上下に厚みを有する見付面を形成するなど、見付面を形成する構成は限定されるものではない。
【0033】
また、下枠12の下枠本体部12aに下レールを設けることなどで、スロープ部材5にレール部51を設けなくてもよく、スロープ部材5はスロープ部52のみによって形成されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態の建具は、引違い戸等、ドア種は何ら限定されない。
以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
12 :下枠
12a :下枠本体部
12c :スロープ受け部
12d :見付壁
122 :小口蓋
5 :スロープ部材
5a :連結部
5b :端部キャップ
51 :レール部
52 :スロープ部
53 :スロープ支持部品
6 :仕上げ材
S :シール材