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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】燃料供給部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B60K15/04 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021149904
(22)【出願日】2021-09-15
(65)【公開番号】P2023042660
(43)【公開日】2023-03-28
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 学
(72)【発明者】
【氏名】北山 瑞希
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-254979(JP,A)
【文献】特開2013-116653(JP,A)
【文献】特開2013-063703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0266835(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018005004(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材からなり、車両内外方向に面しつつ、車両上下方向に延在する板面を有し、車両の外形形状を形成しつつ、板面を貫通するパネル開口部を有するアウタパネルと、
開口部分を有する中空箱形状を有し、開口部分が該パネル開口部に臨みつつ、該アウタパネルの内面に配置されたアダプタと、
該パネル開口部の下縁部分から車両内外方向内側へ延設されつつ、該アダプタの底面を構成する底壁の内面に接合された一対の接合片と、
該一対の接合片の間に位置する該底壁の内面に、車両内外方向に沿って延在しつつ、内側から外側へ下る排出溝と、
該底壁から突出し、該一対の接合片のそれぞれに接合される一対の台座と、
を備え、
該排出溝が該一対の台座の間に配置され、
該一対の台座は、それぞれの上面が、車両内外方向内側の部位は、車両内外方向に水平となるように設定され、それよりも車両内外方向外側の部位は、車両内外方向外側に向かって下方に傾斜する
ことを特徴とする燃料供給部構造。
【請求項2】
前記底壁は、
前記排出溝の上流部に向かって下方に傾斜しつつ、車両内外方向における外側から内側に向かって下方に傾斜する集約部を備え、
該集約部と前記パネル開口部に対向する奥壁との稜線部分を溝底とし、前該排出溝の上流部へ下りつつ、連続する集約溝を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料供給部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に燃料を供給するための給油口周りの構造としての燃料給油部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、燃料タンクに燃料を供給するための注ぎ口として、いわゆる給油口が設けられており、給油口には、着脱可能に給油口を閉止するキャップが設けられている。
そして、燃料供給部構造は、給油口を支持しつつ、車外からキャップの着脱、および燃料の給油が行えるように構成されている。
また、給油口が外部に剥き出しのままでは、車両外観の意匠性が低下してしまう。
このため、燃料供給部構造では、車体表面に凹形状を有する収容室を形成して、給油口を収容室内に収容するとともに、収容室の開口部をリッドで開閉可能に閉止することが、従来から行われている。
たとえば、特許文献1では、リッドのヒンジを収容室内に収容し、ヒンジから収容室の開口部に向けてアームを伸ばし、アームの先端をリッドの裏面に接合する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-231084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リッドは、操作性等の点から収容室を密閉するように構成されていないため、降雨時には、収容室内に雨水が浸入することを想定して燃料供給部構造は構成されている。
しかしながら、このような構成とした場合、収容室内に侵入した水が、アウタパネル内面とプレス材開口部との接合部分に溜まってしまい、錆の発生原因となるおそれがある。
【0005】
本発明は、前述の点に鑑みてなされたものであり、収容室内に侵入した水を外部へ速やかに排出し、錆の発生を抑制することができる燃料供給部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明に係る燃料供給部構造は、板状部材からなり、車両内外方向に面しつつ、車両上下方向に延在する板面を有し、車両の外形形状を形成しつつ、板面を貫通するパネル開口部を有するアウタパネルと、開口部分を有する中空箱形状を有し、開口部分が該パネル開口部に臨みつつ、該アウタパネルの内面に配置されたアダプタと、該パネル開口部の下縁部分から車両内外方向内側へ延設されつつ、該アダプタの底面を構成する底壁の内面に接合された一対の接合片と、該一対の接合片の間に位置する該底壁の内面に、車両内外方向に沿って延在しつつ、内側から外側へ下る排出溝と、該底壁から突出し、該一対の接合片のそれぞれに接合される一対の台座と、を備え、該排出溝が該一対の台座の間に配置され、該一対の台座は、それぞれの上面が、車両内外方向内側の部位は、車両内外方向に水平となるように設定され、それよりも車両内外方向外側の部位は、車両内外方向外側に向かって下方に傾斜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収容室内に侵入した水を外部へ速やかに排出し、錆の発生を抑制することができる燃料供給部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の燃料供給部構造を備えた車両の後方側面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図4のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図4のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の燃料供給部構造Sについて、図1図8を参照して詳細に説明する。
なお、説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
また、以下の説明においては、「前」「後」、「上」「下」、「内」「外」については、特別に断らない限り、車両前後方向における「前」「後」、車両上下方向における「上」「下」、車内側と車外側における「内」「外」を指すものとする。
【0010】
本実施形態の燃料供給部構造Sは、図1図3に示すように、車外から燃料タンク(図示せず)へ燃料の供給(給油)を行う際の燃料の注ぎ口となる給油口23aを支持するための構造である。
燃料供給部構造Sは、アウタパネル10、アダプタ20、リッド30で構成されている。
【0011】
アウタパネル10は、図2図4に示すように、複数の板状部材が接合され、車両外形形状を構成している。
アウタパネル10は、パネル開口部11、接合切片12を備えている。
パネル開口部11は、アウタパネル10の車両後方の側面を構成する部位に配置され、アウタパネル10の板面を貫通する円形の貫通孔で構成されている。
また、パネル開口部11は、貫通孔の開口縁が車幅方向内側へ折り返され、端面が車外から見えないように開口している。
【0012】
接合切片12は、図4図6に示すように、パネル開口部11の上縁部の折返し部分、およびパネル開口部11の下縁部の折返し部分のそれぞれと一体に形成されている。
また、接合切片12は、各折返し部分の端縁から片持ち梁状に、車幅方向(車両内外方向)に沿って形成されている。
上縁部側の接合切片(図示せず)、および下縁部側の接合切片12は、それぞれが、車幅方向内側へ平行に延在する一対の切片で構成されている。
【0013】
なお、これ以降は、上側の接合切片については説明を省略し、下側の接合切片12について説明するため、下側の接合切片12を接合片13と称する。
また、一対の接合片13について、前方に位置する接合片13を前側接合片13F、後方に位置する接合片13を後側接合片13Rと称する。
【0014】
アダプタ20は、図2図4に示すように、プレス加工を施された板状部材で構成されており、側方に開口部分を有する中空箱形状に形成されている。
アダプタ20は、開口部分がパネル開口部11に臨みつつ、アウタパネル10の内面に配置されている。
アダプタ20は、アウタパネル10とともに、収容室Rの外殻を構成している。
【0015】
収容室Rは、ヒンジ収容部R1、給油口収容部R2、ロック収容部R3の3つの区画に分かれている(図2参照)。
ヒンジ収容部R1は、リッド30を構成するヒンジ31を収容するために設けられている。
ヒンジ31は、収容室Rに対して開閉可能にリッド30を支持するための構成である。
【0016】
給油口収容部R2は、給油口23aを収容、支持するために設けられている。
ロック収容部R3は、リッド30を構成するロック機構(図示せず)を収容するために設けられている。
ロック機構は、リッド30が収容室Rを閉止した状態に保持するための構成である。
【0017】
なお、アダプタ20は、パネル開口部11に対向しつつ、収容室Rの車幅方向における内側面を構成する壁部が、奥壁21に設定されている。
また、アダプタ20は、収容室Rの底面を構成する部位が底壁22に設定されている。
【0018】
奥壁21は、車幅方向に面しつつ、下方に向かってアウタパネル10へ近づくように傾斜している。
そして、奥壁21の傾斜角度は、外部の給油ノズル(図示せず)を給油口23aに差し込み易い角度に設定されている。
また、奥壁21には、板面を貫通する支持孔23が開口している。
【0019】
支持孔23には、ホルダ23bが挿嵌されている。
ホルダ23bは、筒形状を有しており、支持孔23内部に挿嵌されるとともに、自身の筒内に給油口23aが挿嵌されている。
【0020】
底壁22は、水平面に面して形成され、収容室Rの底面を構成している。
また、底壁22には、車両前方から順に前側集約部22a、台座部22b、後側集約部22cが設定されている(図8参照)。
前側集約部22aは、前後方向における底壁22の前方部分に設定され、収容室Rにおけるヒンジ収容部R1の底面を主に構成している。
前側集約部22aは、車両前後方向において、後方に向かって下方に傾斜しつつ、車幅方向(車両内外方向)において、内側に向かって下方に傾斜している。
【0021】
つまり、前側集約部22aは、奥壁21との谷折れの稜線部分に向かって下方に傾斜している。
そして、図5に示すように、前側集約部22aと奥壁21とで、断面略V字形状を呈する集約溝24が形成されている。
【0022】
台座部22bは、前後方向における底壁22の中央部に設定され、収容室Rにおける給油口収容部R2の底面を主に構成している。
また、台座部22bは、パネル開口部11における最下部の円弧形状に倣って湾曲している。
このため、台座部22bは、底壁22の中で、最も低い位置に位置している。
また、台座部22bには、接合台座25が形成されている。
【0023】
接合台座25は、台座部22bの板面から上方へ突出している。
接合台座25は、台座部22bにおけるパネル開口部11側縁部から内側へ所定の間隔L25を空けて突出している(図6図7参照)。
そして、接合台座25は、車幅方向において、車幅方向内側へ奥壁21まで連続している。
つまり、台座部22bには、パネル開口部11近傍において、車幅方向に段差が形成されている。
【0024】
接合台座25には、前側台座26(一対の台座の一方)、排出溝27、後側台座28(一対の台座の他方)が設定されている。
前側台座26は、アウタパネル10の前側接合片13Fが接合される部位として形成されており、前側台座26の上面が、前側接合片13Fとの接合点に設定されている。
後側台座28は、アウタパネル10の後側接合片13Rが接合される部位として形成されており、後側台座28の上面が、後側接合片13Rとの接合点に設定されている。
【0025】
そして、前側台座26、および後側台座28は、それぞれの上面が、前後方向に対して、略水平となるように形成されている。
また、前側台座26、および後側台座28は、それぞれの上面が、車幅方向に対して、奥壁21近傍の部位は、車幅方向に水平となるように設定され、それよりも外側の部位は、外側に向かって下方に傾斜している。
前側台座26に前側接合片13Fが接合されつつ、後側台座28に後側接合片13Rが接合されることで、アダプタ20がアウタパネル10の内面に位置決めされつつ、固定される。
【0026】
排出溝27は、前側台座26と後側台座28との間の谷間部分に形成されている。
つまり、排出溝27は、一対の台座26、28の間に配置されている。
排出溝27は、車両内外方向に対する内側から外側に向かって下方に傾斜している。
排出溝27は、溝底面27aの傾斜角度が、前側台座26上面の傾斜角度と同様に設定されている。
【0027】
後側集約部22cは、前後方向における底壁22の後方部分に設定され、収容室Rにおけるロック収容部R3の底面を主に構成している。
そして、後側集約部22cは、車両前後方向において、前方に向かって下方に傾斜している。
【0028】
なお、収容室R内部は、塗装作業によって塗装膜(図示せず)が形成されている。
この塗装膜によって、アダプタ20と接合片13の間などの小さな隙間が埋められており、これによって、隙間への水の侵入が防止されている。
【0029】
リッド30は、ヒンジ31によって、リッド本体32がパネル開口部11を開閉可能に支持されている。
また、リッド30は、ロック機構(図示せず)によって、パネル開口部11を閉じた状態で保持されるように構成されている。
リッド本体32は、パネル開口部11内に嵌め込み可能な円盤形状を備えている。
【0030】
次に、収容室内に侵入した水が、排出される経路について説明する(図4図8参照)。
パネル開口部11は、燃料給油時を除き、リッド本体32によって閉止されている。
ところが、リッド本体32は、パネル開口部11を密閉する構成を備えておらず、リッド本体32とパネル開口部11との間には隙間が形成されている。
このため、雨などで車両に水が掛かった際には、リッド本体32とパネル開口部11との隙間から収容室R内に水が浸入する。
【0031】
収容室R内に侵入した水は、図4図5の破線FLに示すように、底壁22の前側集約部22a上を奥壁21に向かって車幅方向(車両内外方向)の内側へ流れ下る。
そして、奥壁21に流れ着いた水は、図4図8の破線FLに示すように、集約溝24内を排出溝27の上流部に向かって車両前後方向の後方へ流れ下る。
車両後方へ流れた水は、図4図7図8の破線FLに示すように、排出溝27内を車幅方向の外側へ流れ下り、収容室Rの外へ排出される。
【0032】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態の燃料供給部構造Sでは、パネル開口部11の下縁部分から車幅方向(車両内外方向)の内側へ前側接合片13Fと後側接合片13Rとが、延設されている。
そして、前側接合片13Fは、アダプタ20の前側台座26に接合され、後側接合片13Rは後側台座28に接合されている。
【0033】
また、前側台座26と後側台座28との間に排出溝27が設けられている。
つまり、一対の接合片13の間に、車両内外方向の外側に向かって下方に傾斜する排出溝27が設けられている。
このような構成とすることで、収容室R内に侵入した水がアウタパネル10の最下部に留まることを防ぎ、車外へ速やかに排出し、錆の発生を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の燃料供給部構造Sでは、アダプタ20の底壁22に、前側集約部22aが設定されている。
前側集約部22aは、車幅方向の内側に向かって下方に傾斜しつつ、アウタパネル10の板面方向におけるパネル開口部11の最下部側に向かって下方に傾斜している。
また、本実施形態では、前側集約部22aと奥壁21との稜線部分が溝底に設定され、排出溝27の上流部へ下りつつ、排出溝27に連続する集約溝24を備えている。
【0035】
このような構成とすることで、前側集約部22a(集約部)を設け、集約溝24を形成することで、パネル開口部11の折返し部分と、アダプタ20の底壁22との接合部分に侵入した水を速やかに排出溝27へ流すことができる。
これによって、パネル開口部11の折返し部分と、アダプタ20の底壁22との接合部分に侵入した水が溜まることを抑制し、収容室R内の排水性を高めることができる。
【0036】
また、上記構成とすることで、ヒンジ収容部R1内に侵入した水が集約溝24に集められ、集約溝24を通じて排出溝27から車外へ排出される。
これによって、接合片13と接合台座25との接合箇所に水が流れることが抑制されるため、接合箇所の錆発生を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の燃料供給部構造Sでは、一対の台座(前側台座26、後側台座28)を備え、これら一対の台座26、28の間に排出溝27が配置されている。
このような構成とすることで、パネル開口部11の下縁部(底壁22の最下部)に対して排出溝27の上流側の位置をより高く設定することができる。
これによって、排出溝27の傾斜を大きく設定することができるため、排水性を高めることができる。
【0038】
また、前側台座26を設けることで、底壁22の前側集約部22aをより高い位置に設定することができるため、前側集約部22aの奥壁21に向かう傾斜をより大きくすることができる。
このような構成とすることで、侵入した水をより効果的に排出溝27へ導くことができる。
これによって、収容室R内の排水性をさらに高めることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、給油口23aが車両Vの後方側面に設置される構成について説明したが、このような構成に限定されるものではない。
たとえば、車両Vの前面、および車両後面に配置する構成等、車両内外方向に面しつつ、車両上下方向に沿って延在するアウタパネル10の任意の場所へ適宜設定することが可能である。
そして、これらの場所に給油口23aを配置した場合であっても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
S 燃料供給部構造
10 アウタパネル
11 パネル開口部
13 接合片
20 アダプタ
21 奥壁
22 底壁
22a 前側集約部(集約部)
24 集約溝
26 前側台座(一対の台座の一方)
28 後側台座(一対の台座の他方)
27 排出溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8