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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】インナーホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R1/10 104B
H04R1/10 104A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021508970
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2020010150
(87)【国際公開番号】W WO2020195762
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019056633
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松村 俊之
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202018107057(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0043708(US,A1)
【文献】特開2018-121285(JP,A)
【文献】特開2015-109542(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181431(WO,A1)
【文献】特開2008-278439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を発生させるスピーカユニットと、
前記スピーカユニットを収容し、前記スピーカユニットの音波の発生面に対向する第一の開口部を備えた第一の筐体と、
一端が前記第一の開口部に接続された音導管と、
前記音導管の他端に取り付けられ、外耳道に挿入されるイヤープラグと、
前記音導管と独立して、前記イヤープラグと前記第一の筐体とを貫通するように設けられた通気管と、
第二の開口部と第三の開口部とを備え、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する第二の筐体と、
を備え、
前記通気管の前記第一の筐体側の一端は、前記第二の開口部と接続されている、
インナーホン。
【請求項2】
前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する第二の筐体を更に備え、
前記通気管は、更に、前記第二の筐体を貫通するように設けられている
請求項1に記載のインナーホン。
【請求項3】
前記第一の筐体は、更に、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する
請求項1に記載のインナーホン。
【請求項4】
音波を発生させるスピーカユニットと、
前記スピーカユニットを収容し、前記スピーカユニットの音波の発生面に対向する第一の開口部を備えた第一の筐体と、
第二の開口部と第三の開口部とを備え、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する第二の筐体と、
一端が前記第一の開口部に接続された音導管と、
前記音導管の他端に取り付けられ、外耳道に挿入されるイヤープラグと、
一端が前記第一の筐体内における前記発生面と前記第一の開口部との間の空間に設けられ、他端が前記第二の開口部に接続され、前記第一の筐体を貫通するように設けられた通気管と、
を備えるインナーホン。
【請求項5】
前記通気管の内径を変化させる調整機構と、
前記調整機構を制御して、前記通気管を閉塞させる閉塞状態又は前記通気管を開放させる開放状態に切り替える制御部と、
を更に備える、
請求項1、2又はに記載のインナーホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外耳道にイヤープラグを挿入して使用するインナーホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外耳道にイヤープラグを挿入して使用するインナーホンが知られている。しかし、このようなインナーホンでは、外耳道内の空間が密閉された状態になり、蒸れによる不快感が生じる。このため、例えば、特許文献1では、スピーカユニットで発生した音波を外耳道内へ放出する音導管にイヤープラグを取り付け、音導管内に通気孔を設け、当該通気孔の開口面積を制御して、外耳道内の空間の密閉状態を調整するインナーホンが提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のインナーホンでは、通気孔が音導管内に設けられるため、通気孔の長さは音導管の長さに制限される。このため、通気孔内の空気抵抗が小さく制限され、外耳道内の低域の音波が通気孔内を通って外部に漏洩し易くなる。その結果、外耳道内において低域の音質が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5914887号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、外耳道内の蒸れによる不快感と再生音の低域の音質の低下とを共に抑制することができるインナーホンを提供することを目的とする。
【0006】
本開示のインナーホンは、音波を発生させるスピーカユニットと、前記スピーカユニットを収容し、前記スピーカユニットの音波の発生面に対向する第一の開口部を備えた第一の筐体と、一端が前記第一の開口部に接続された音導管と、前記音導管の他端に取り付けられ、外耳道に挿入されるイヤープラグと、前記音導管と独立して、前記イヤープラグと前記第一の筐体とを貫通するように設けられた通気管と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一実施形態に係るインナーホンの構造図である。
図2】第一実施形態に係るインナーホンを耳の模型に装着し、スピーカユニットに発生させた音波を当該模型における鼓膜の位置で測定した結果から得られた音圧周波数特性を示す図である。
図3】第二実施形態に係るインナーホンの構造図である。
図4】第三実施形態に係るインナーホンの構造図である。
図5】第四実施形態に係るインナーホンの構造図である。
図6】第五実施形態に係るインナーホンの構造図である。
図7】従来のインナーホンを耳の模型に装着し、スピーカユニットに発生させた音波を当該模型における鼓膜の位置で測定した結果から得られた音圧周波数特性を示す図である。
図8】調整機構の構造の第一例を示す図である。
図9】調整機構の構造の第一例を示す正面断面図である。
図10】調整機構の構造の第二例を示す図である。
図11】調整機構の構造の第二例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
上述の特許文献1に記載のインナーホンを耳の模型に装着し、スピーカユニットにより発生させた音波を当該模型における鼓膜の位置で測定したところ、図7に示す音圧周波数特性が得られた。図7の横軸は周波数を示し、図7の縦軸は音圧レベルを示す。図7には、音導管内に設けられた通気孔の開口部の半径を4mm、2mm、1mm、0.5mm、0.25mm及び0.125mmにした場合における各音圧周波数特性を示している。また、通気孔の開口部の半径を0mmにした場合、つまり、通気孔を音導管内に設けなかった場合における音圧周波数特性を示している。
【0009】
図7に示すように、特許文献1に記載のインナーホンによれば、1200Hz以上の高域の音波の音圧レベルは、開口部の半径に関係なく、通気孔を音導管内に設けない場合と略同等のレベルに維持される。しかし、300Hz以下の低域の音波の音圧レベルは、開口部の半径が大きくなる程、通気孔を音導管内に設けない場合よりも大きく低下する。これにより、本発明者は、特許文献1に記載のインナーホンには、300Hz以下の低域の音質が低下するという問題があることを知見した。
【0010】
そこで、本発明者は、特許文献1に記載のインナーホンにおいて、300Hz以下の低域の音質が低下する理由について検討を行い、以下の知見を得た。特許文献1に記載のインナーホンでは、通気孔が音導管内に設けられるため、通気孔の長さが音導管の長さに制限される。これにより、通気孔内の空気抵抗が小さく制限され、外耳道内の低域の音波が通気孔内を通って外部に漏洩し易くなる。その結果、外耳道内において低域の音質が低下するという問題が発生することを知見した。
【0011】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、外耳道内の蒸れによる不快感と外耳道内における低域の音質の低下とを共に抑制することができるインナーホンを提供することを目的とする。
【0012】
本開示の一態様に係るインナーホンは、音波を発生させるスピーカユニットと、前記スピーカユニットを収容し、前記スピーカユニットの音波の発生面に対向する第一の開口部を備えた第一の筐体と、一端が前記第一の開口部に接続された音導管と、前記音導管の他端に取り付けられ、外耳道に挿入されるイヤープラグと、前記音導管と独立して、前記イヤープラグと前記第一の筐体とを貫通するように設けられた通気管と、を備える。
【0013】
本態様によれば、通気管がイヤープラグと第一の筐体とを貫通するように設けられている。このため、イヤープラグが外耳道に挿入された場合に、通気管によって、外耳道内の空間と外耳道外部の空間とを連通し、外耳道内の空気を外耳道外部の空間へ放出することができる。これにより、外耳道内の蒸れによる不快感を低減することができる。
【0014】
また、通気管は、音導管と独立して設けられているので、通気管の長さを音導管の長さによらずに長くすることができる。これにより、通気管内の空気抵抗を増大させ、音導管によって外耳道内に放出された低域の音波が、通気管内を通って外部に漏れる量を低減することができる。その結果、外耳道内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0015】
上記態様において、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する第二の筐体を更に備え、前記通気管は、更に、前記第二の筐体を貫通するように設けられていてもよい。
【0016】
本態様によれば、通気管がイヤープラグと第一の筐体と第二の筐体とを貫通するように設けられている。このため、通気管がイヤープラグ及び第一の筐体だけを貫通するように設けられている場合よりも通気管を長くすることができる。これにより、上記場合よりも、通気管内の空気抵抗を増大させ、音導管によって外耳道内に放出された低域の音波が、通気管内を通って外部に漏れる量を低減することができる。その結果、上記場合よりも、外耳道内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0017】
また、通気管における第一の筐体と第二の筐体との間の中間部を耳の付け根の上部で支持させることで、本態様のインナーホンを、インナーホンを駆動するための制御回路及びバッテリーを備えた所謂耳かけ型のインナーホンとして利用することができる。
【0018】
上記態様において、第二の開口部と第三の開口部とを備え、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する第二の筐体を更に備え、前記通気管の前記第一の筐体側の一端は、前記第二の開口部と接続されていてもよい。
【0019】
本態様によれば、通気管がイヤープラグと第一の筐体を貫通し、通気管の第一の筐体側の一端が、第二の筐体が備える第二の開口部に接続されている。また、第二の筐体には、第三の開口部が備えられている。このため、イヤープラグが外耳道に挿入された場合に、外耳道内の空気を、通気管内でイヤープラグと第一の筐体とを通過させた後、第二の開口部から第二の筐体内に放出し、第二の筐体内から第三の開口部を介して外部へ放出することができる。
【0020】
したがって、外耳道内の空気が外部へ放出されるまでに受ける空気抵抗を、通気管がイヤープラグと第一の筐体だけを貫通するように設けられている場合よりも増大させることができる。これにより、音導管によって外耳道内に放出された低域の音波が外部に漏れる量を低減することができる。その結果、上記場合よりも、外耳道内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本態様のインナーホンを、インナーホンを駆動するための制御回路及びバッテリーを備えた所謂耳かけ型のインナーホンとして利用する場合、通気管における第一の筐体と第二の筐体との間の中間部を、耳の付け根の上部で支持させるため、前記中間部の長さが制限される。しかし、本態様では、上述のように前記中間部の長さが制限されたとしても、第二の筐体の容積を大きくして、外耳道内の音波が外部に放出されるまでに受ける空気抵抗を増大することができる。その結果、外耳道内の低域の音波が外部に漏洩することで、外耳道内の低域の音質が低下することを抑制することができる。
【0022】
上記態様において、前記第一の筐体は、更に、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容してもよい。
【0023】
本態様によれば、前記制御回路及び前記バッテリーが第一の筐体内に収容されている。このため、第一の筐体の外部の筐体にスピーカユニットの駆動を制御する制御回路及びスピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容し、当該制御回路及び当該バッテリーと、第一の筐体内のスピーカユニットと、を有線接続する場合よりも、インナーホンを利用するために必要なスペースを軽減することができる。
【0024】
また、本開示の一態様に係るインナーホンは、音波を発生させるスピーカユニットと、前記スピーカユニットを収容し、前記スピーカユニットの音波の発生面に対向する第一の開口部を備えた第一の筐体と、第二の開口部と第三の開口部とを備え、前記スピーカユニットの駆動を制御する制御回路及び前記スピーカユニットを駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容する第二の筐体と、一端が前記第一の開口部に接続された音導管と、前記音導管の他端に取り付けられ、外耳道に挿入されるイヤープラグと、一端が前記第一の筐体内における前記発生面と前記第一の開口部との間の空間に設けられ、他端が前記第二の開口部に接続され、前記第一の筐体を貫通するように設けられた通気管と、を備えていてもよい。
【0025】
本態様によれば、通気管は、第一の筐体を貫通するように設けられ、一端が第一の筐体内におけるスピーカユニットの音波の発生面と第一の開口部との間の空間に設けられ、通気管の他端が第二の開口部に接続されている。このため、イヤープラグが外耳道に挿入された場合に、外耳道内の空気を、音導管内を通過させて第一の筐体内におけるスピーカユニットの音波の発生面と第一の開口部との間の空間に放出した後、通気管内で第一の筐体を通過させて第二の筐体内に放出し、その後、第二の筐体内から第三の開口部を介して外部へ放出することができる。
【0026】
したがって、従来のように、音導管内に設けられた通気管によって外耳道内の空気を外部へ放出する場合よりも、外耳道内の空気が外部へ放出されるまでに受ける空気抵抗を増大させることができる。これにより、従来よりも、音導管によって外耳道内に放出された低域の音波が外部に漏れる量を低減することができる。その結果、従来よりも、外耳道内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0027】
上記態様において、前記通気管の内径を変化させる調整機構と、前記調整機構を制御して、前記通気管を閉塞させる閉塞状態又は前記通気管を開放させる開放状態に切り替える制御部と、を更に備えてもよい。
【0028】
本態様によれば、制御部が、調整機構を制御して、通気管を開放状態又は閉塞状態に切り替えることによって、当該通気管によって外耳道内の空気を外部へ放出させるか否かを切り替えることができる。これにより、外耳道内の蒸れによる不快感の解消を優先するか、再生音の低域の音質の低下の抑制を優先するかを切り替えることができる。
【0029】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るインナーホン10の構造図である。尚、図1の左図は、耳に装着された状態のインナーホン10の正面断面図を示し、図1の右図は、耳に装着された状態のインナーホン10を鼓膜102から外耳道101の外部を見たときに得られる側面図を示している。図1の左図に示すように、インナーホン10は、スピーカユニット11と、第一の筐体12と、音導管15と、イヤープラグ14と、通気管13と、を備える。
【0030】
スピーカユニット11は、外部装置(図示せず)から有線又は無線を介して入力される音声信号に基づいて音波を発生させる。
【0031】
第一の筐体12は、略筒状の部品であり、スピーカユニット11を収容する。第一の筐体12の右面128には、第一の開口部121と第二の開口部122とが設けられている。第一の筐体12の左面129には、第三の開口部123が設けられている。
【0032】
第一の開口部121は、円形の形状を有し、スピーカユニット11の音波の発生面111に対向する位置に設けられている。第一の開口部121は、スピーカユニット11の音波の発生面111において発生された音波を第一の筐体12外部に放出するために設けられている。
【0033】
第二の開口部122は、第一の開口部121よりも上方に配置され、第一の開口部121よりも小さい径の円形の形状を有している。第三の開口部123は、第二の開口部122と同じ形状であり、上下方向において、第二の開口部122と同じ位置(高さ)に設けられている。第二の開口部122及び第三の開口部123は、円筒状の通気管13を貫通させる貫通孔として設けられている。
【0034】
音導管15は、両端が開口された略筒状の部品であり、音導管15の内径は第一の開口部121の直径と略同じとなっている。音導管15の左方の開口端151(一端)は、第一の筐体12の右面128に設けられた第一の開口部121に接続されている。音導管15の右方の開口端152(他端)の周面157には、イヤープラグ14が取り付けられている。
【0035】
音導管15は、スピーカユニット11の音波の発生面111において発生され、第一の開口部121から放出された音波を、左方の開口端151から入力し、右方の開口端152から放出する。尚、音導管15は、両端が開口されていればよく、断面の形状は、図1の右図に示すような円形に限らず、円形とは異なる形状であってもよい。
【0036】
イヤープラグ14は、外耳道101に挿入される略筒状の部品であり、ゴム等の弾性部材により構成されている。イヤープラグ14は、左右方向に延びる二個の貫通孔141、142を備えている。イヤープラグ14は、貫通孔141に通気管13の右方の開口端131を貫通させ、また、貫通孔142に音導管15の右方の開口端152を貫通させ、通気管13の右方の開口端131の周面137及び音導管15の右方の開口端152の周面157で固定される。イヤープラグ14が外耳道101に挿入されると、イヤープラグ14の周面147が上下及び前後方向に広がり、外耳道101の内壁に当接した状態となる。これにより、インナーホン10が耳に装着された状態となる。
【0037】
通気管13は、両端に開口端131、132を備えた略筒状の部品である。通気管13は、イヤープラグ14の貫通孔141を貫通し、更に、第一の筐体12の右面128に設けられた第二の開口部122及び第一の筐体12の左面129に設けられた第三の開口部123を貫通するように設けられている。つまり、通気管13は、イヤープラグ14及び第一の筐体12を貫通するように設けられている。尚、上述のように、第二の開口部122及び第三の開口部123は、上下方向において、第二の開口部122と同じ位置(高さ)に設けられている。このため、通気管13を直線状の簡素な形状で構成することができる。
【0038】
また、通気管13は、イヤープラグ14に設けられた音導管15の貫通孔142とは異なる貫通孔141を貫通し、第一の筐体12の右面128において、音導管15の左方の開口端151が接続されている第一の開口部121とは異なる第二の開口部122を貫通するように設けられている。このようにして、通気管13は、通気管13内の空間と音導管15内の空間とが直接的に連通しないように、音導管15と独立して設けられている。
【0039】
通気管13は、イヤープラグ14が外耳道101に挿入され、インナーホン10が耳に装着された状態となったときに、外耳道101内の空間と外耳道101外部の空間とを連通し、外耳道101内の空気を右方の開口端131から左方の開口端132へと移動させる。尚、通気管13の内径は、音導管15の内径よりも小さい内径を有している。これにより、スピーカユニット11の発生面111から放出され、第一の開口部121から音導管15を通過して外耳道101内に放出された音波が、通気管13を介して外部に漏洩しすぎることを抑制している。
【0040】
尚、通気管13は、両端が開口されていればよく、断面の形状は、図1の右図に示すような円形に限らず、円形とは異なる形状であってもよい。また、図1では、通気管13の左方の開口端132は、第三の開口部123よりも左方に突出しているが、通気管13の左方の開口端132は、これに限らず、第三の開口部123に接続されていてもよい。
【0041】
また、図1では、第二の開口部122と第三の開口部123とが上下方向における同じ位置(高さ)に設けられているが、第三の開口部123を第二の開口部122よりも下方に設ける、又は、第一の筐体12の周面127に設けてもよい。これに合わせて、通気管13を、第一の筐体12内で折り曲がる又は湾曲する形状にし、第二の開口部122と第三の開口部123とを貫通させてもよい。
【0042】
このように、第一実施形態の態様によれば、通気管13がイヤープラグ14と第一の筐体12とを貫通するように設けられている。このため、イヤープラグ14が外耳道101に挿入された場合に、通気管13によって、外耳道101内の空間と外耳道101外部の空間とを連通し、外耳道101内の空気を外耳道101外部の空間へ放出することができる。これにより、外耳道101内の蒸れによる不快感を低減することができる。
【0043】
また、通気管13は、通気管13内の空間と音導管15内の空間とが直接的に連通しないように、音導管15と独立して設けられている。このため、通気管13の長さを音導管15の長さによらずに長くすることができる。これにより、通気管13内の空気抵抗を増大させ、音導管15によって外耳道101内に放出された低域の音波が、通気管13内を通って外部に漏れる量を低減することができる。その結果、外耳道101内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0044】
図2は、第一実施形態のインナーホン10を耳の模型に装着し、スピーカユニット11に発生させた音波を当該模型における鼓膜の位置で測定した結果から得られた音圧周波数特性を示す図である。図2の横軸は周波数を示し、図2の縦軸は音圧レベルを示している。また、図2には、通気管13の長さを50mmにした場合における前記音圧周波数特性と、通気管13の長さを0mmにした場合、つまり、通気管13を設けなかった場合における前記音圧周波数特性とを示している。
【0045】
図2に示すように、第一実施形態のインナーホン10によれば、1000Hz以上の高域の音圧レベルを、通気管13を設けない場合と略同じレベルにすることができる。これにより、当該高域の音圧レベルを確保し、高域での音質を通気管13を設けない場合と略同じ特性にできる。また、通気管13の長さを50mmにした場合に、100Hzから約400Hzまでの低域の音圧レベルを、通気管13を設けない場合よりも上昇させることができる。これにより、当該低域の音圧レベルを確保し、低域での音質の低下を抑制することができる。
【0046】
(第二実施形態)
図3は、第二実施形態に係るインナーホン10aの構造を示す図である。尚、図3は、図1の左図と同様に、耳に装着された状態のインナーホン10の正面断面図を示す。ただし、外耳道101内の図は省略している。尚、以降の説明では、上述した構成要素と同様の構成要素については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図3に示すように、第二実施形態に係るインナーホン10aは、スピーカユニット11、第一の筐体12、音導管15、イヤープラグ14及び通気管13aを備え、更に、第二の筐体22を備える。
【0048】
第二の筐体22は、上下方向が長尺の箱状の部品であり、スピーカユニット11の駆動を制御する制御回路16及びスピーカユニット11を駆動させるための電力を供給するバッテリー17を収容する。第二の筐体22は、右面228が第一の筐体12の左面129に対向するようにして配置されている。第二の筐体22の右面228には、第四の開口部224が設けられている。第二の筐体22の左面229には、第五の開口部225が設けられている。
【0049】
第四の開口部224は、上下方向において、第一の筐体12の第三の開口部123と同じ位置(高さ)に設けられている。これにより、第四の開口部224は、第三の開口部123と対向するようにして設けられている。第四の開口部224は、第三の開口部123と同じ形状を有している。第五の開口部225は、第四の開口部224と同じ形状であり、上下方向において、第四の開口部224と同じ位置(高さ)に設けられている。第四の開口部224及び第五の開口部225は、通気管13aを貫通させる貫通孔として設けられている。
【0050】
制御回路16及びバッテリー17とスピーカユニット11は、第四の開口部224及び第三の開口部123を通る、通気管13aの外周部に取り付けられた配線18によって接続されている。尚、図3では、説明を明瞭にするために、配線18を通気管13aの外周部から離間した位置に図示している。
【0051】
通気管13aは、イヤープラグ14の貫通孔141(図1の右図)、第一の筐体12が備える第二の開口部122及び第三の開口部123だけでなく、更に、第四の開口部224及び第五の開口部225を貫通するように設けられている。これにより、通気管13aは、イヤープラグ14、第一の筐体12及び第二の筐体22を貫通するように設けられている。通気管13aの左方の開口端132aは、第五の開口部225に接続されている。ただし、通気管13aの左方の開口端132aは、これに限らず、第五の開口部225よりも左方に突出していてもよい。
【0052】
尚、上述のように、第二の開口部122、第三の開口部123、第四の開口部224及び第五の開口部225は、上下方向において同じ位置(高さ)に設けられている。このため、通気管13aを直線状の簡素な形状で構成することができる。
【0053】
第二実施形態の態様によれば、通気管13aがイヤープラグ14と第一の筐体12と第二の筐体22とを貫通するように設けられている。このため、通気管13aがイヤープラグ14及び第一の筐体12だけを貫通するように設けられている場合よりも通気管13aを長くすることができる。これにより、上記場合よりも、通気管13a内の空気抵抗を増大させ、音導管15によって外耳道101内に放出された低域の音波が、通気管13a内を通って外部に漏れる量を低減することができる。その結果、上記場合よりも、外耳道101内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0054】
また、通気管13aにおける第一の筐体12と第二の筐体22との間の中間部を耳の付け根の上部で支持させることで、本態様のインナーホン10aを、インナーホンを駆動するための制御回路及びバッテリーを備えた所謂耳かけ型のインナーホンとして利用することができる。
【0055】
(第三実施形態)
図4は、第三実施形態に係るインナーホン10bの構造を示す図である。尚、図4は、図1の左図と同様に、耳に装着された状態のインナーホン10bの正面断面図を示す。ただし、外耳道101内の図は省略している。
【0056】
図4に示すように、第三実施形態に係るインナーホン10bは、スピーカユニット11、第一の筐体12、音導管15、イヤープラグ14、通気管13b、及び第二の筐体22bを備える。
【0057】
第二の筐体22bは、上下方向が長尺の箱状の部品であり、スピーカユニット11の駆動を制御する制御回路16及びスピーカユニット11を駆動させるための電力を供給するバッテリー17を収容する。第二の筐体22bは、右面228bが第一の筐体12の左面129に対向するようにして配置されている。第二の筐体22bの右面228bには、第四の開口部224b(第二の開口部)が設けられている。第二の筐体22bの左面229bには、第五の開口部225b(第三の開口部)が設けられている。
【0058】
第四の開口部224bは、上下方向において、第一の筐体12の第三の開口部123と同じ位置(高さ)に設けられている。これにより、第四の開口部224bは、第三の開口部123と対向するようにして設けられている。第四の開口部224bは、第三の開口部123と同じ形状を有している。
【0059】
第五の開口部225bは、第四の開口部224よりも下方の位置(高さ)に設けられている。第五の開口部225bは、第四の開口部224bと同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。尚、第五の開口部225bは、第四の開口部224よりも下方の位置(高さ)に設けられているとしたが、これに限らず、第二の筐体22bの左面229bにおける第四の開口部224よりも上方の位置に設けてもよいし、第二の筐体22bの上面227又は下面226に設けてもよい。また、第二の筐体22bの何れかの面に、第四の開口部224bとは異なる複数の開口部を設けてもよい。
【0060】
通気管13bの左方(第一の筐体12側)の開口端132bは、第二の筐体22bが備える第四の開口部224bに接続されていている。つまり、通気管13bは、図3に示した第二実施形態の通気管13aとは異なり、イヤープラグ14及び第一の筐体12を貫通するが、第二の筐体22bは貫通しない構成となっている。尚、上述のように、第二の開口部122、第三の開口部123及び第四の開口部224bは、上下方向において同じ位置(高さ)に設けられている。このため、通気管13bを直線状の簡素な形状で構成することができる。
【0061】
このように、通気管13bがイヤープラグ14と第一の筐体12を貫通し、通気管13bの第一の筐体12側の開口端132bが、第二の筐体22bが備える第四の開口部224に接続されている。また、第二の筐体22bには、第四の開口部224よりも下方の位置に第五の開口部225bが備えられている。このため、イヤープラグ14が外耳道101に挿入された場合に、外耳道101内の空気を、通気管13b内でイヤープラグ14と第一の筐体12とを通過させた後、第四の開口部224から第二の筐体22b内に放出することができる。そして、第二の筐体22b内に放出された空気を、第二の筐体22b内で上方から下方へと移動させた後、第五の開口部225bを介して外部へ放出することができる。
【0062】
したがって、外耳道101内の空気を移動させる距離を長くすることができる。このため、外耳道101内の空気が外部へ放出されるまでに受ける空気抵抗を増大させることができる。これにより、音導管15によって外耳道101内に放出された低域の音波が外部に漏れる量を低減することができる。その結果、外耳道101内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0063】
また、本態様のインナーホン10bを、インナーホンを駆動するための制御回路及びバッテリーを備えた所謂耳かけ型のインナーホンとして利用する場合、通気管13bにおける第一の筐体12と第二の筐体22bとの間の中間部を、耳の付け根の上部で支持させるため、前記中間部の長さが制限される。しかし、本態様では、上述のように前記中間部の長さが制限されたとしても、第二の筐体22bの容積を大きくして、外耳道101内の音波が外部に放出されるまでに受ける空気抵抗を増大することができる。その結果、外耳道101内の低域の音波が外部に漏洩することで、外耳道101内の低域の音質が低下することを抑制することができる。
【0064】
(第四実施形態)
図5は、第四実施形態に係るインナーホン10cの構造図である。尚、図5は、図1の左図と同様に、耳に装着された状態のインナーホン10cの正面断面図を示す。ただし、外耳道101内の図は省略している。
【0065】
図5に示すように、第五実施形態に係るインナーホン10cは、スピーカユニット11と、第一の筐体12cと、音導管15と、イヤープラグ14と、通気管13cとを備える。
【0066】
第一の筐体12cは、上下方向が長尺の箱状の部品であり、スピーカユニット11、スピーカユニット11の駆動を制御する制御回路16及びスピーカユニット11を駆動させるための電力を供給するバッテリー17を収容する。制御回路16及びバッテリー17とスピーカユニット11とは、第一の筐体12c内において、不図示の配線によって接続されている。
【0067】
第一の筐体12cの右面128cには、第一の開口部121cと第二の開口部122cとが設けられている。第一の筐体12cの左面129cには、第三の開口部123cが設けられている。
【0068】
第一の開口部121cは、円形の形状を有し、スピーカユニット11の音波の発生面111に対向する位置に設けられている。第一の開口部121cは、スピーカユニット11の音波の発生面111において発生された音波を第一の筐体12c外部に放出するために設けられている。
【0069】
第二の開口部122cは、第一の開口部121cよりも下方に配置され、第一の開口部121cよりも小さい径の円形の形状を有している。第三の開口部123cは、第二の開口部122cと同じ形状であり、上下方向において、第二の開口部122cと同じ位置(高さ)に設けられている。第二の開口部122c及び第三の開口部123cは、円筒状の通気管13cを貫通させる貫通孔として設けられている。
【0070】
通気管13cは、イヤープラグ14を貫通し、更に、スピーカユニット11及び音導管15よりも下方において、第一の筐体12cの右面128cに設けられた第二の開口部122c及び第一の筐体12cの左面129cに設けられた第三の開口部123cを貫通するように設けられている。つまり、通気管13cは、イヤープラグ14及び第一の筐体12cを貫通するように設けられている。通気管13cの左方の開口端132cは、第三の開口部123cに接続されている。尚、上述のように、第二の開口部122c及び第三の開口部123cは、上下方向において、第二の開口部122と同じ位置(高さ)に設けられている。このため、通気管13cを直線状の簡素な形状で構成することができる。
【0071】
また、通気管13cは、イヤープラグ14を貫通し、第一の筐体12cの右面128cにおける、音導管15の左方の開口端151が接続されている第一の開口部121cとは異なる第二の開口部122cを貫通するように設けられている。このように、通気管13cは、通気管13c内の空間と音導管15内の空間とが直接的に連通しないように、音導管15と独立して設けられている。
【0072】
尚、通気管13cの左方の開口端132cは、第三の開口部123cよりも左方に突出していてもよい。また、第二の開口部122c及び第三の開口部123cが、第一実施形態の第二の開口部122及び第三の開口部123(図1)と同様に、第一の筐体12cにおけるスピーカユニット11よりも上方であって、上下方向において同じ位置(高さ)に設けられていてもよい。これに合わせて、通気管13cが、スピーカユニット11及び音導管15よりも上方において、当該第二の開口部122c及び第三の開口部123cを通るようにして、第一の筐体12cを貫通するように設けられていてもよい。
【0073】
また、図5では、第二の開口部122cと第三の開口部123cとが上下方向における同じ位置(高さ)に設けられているが、第三の開口部123cを第二の開口部122cよりも下方に設けてもよい。又は、第三の開口部123cを第一の筐体12cの上面127c又は下面126cに設けてもよい。これに合わせて、通気管13cを、制御回路16及びバッテリー17に衝突しないよう、第一の筐体12c内で折り曲がった形状又は湾曲した形状にし、第二の開口部122cと第三の開口部123cとを貫通させてもよい。
【0074】
本態様によれば、制御回路16及びバッテリー17が第一の筐体12c内に収容されている。このため、第一の筐体12cの外部の筐体にスピーカユニット11の駆動を制御する制御回路及びスピーカユニット11を駆動させるための電力を供給するバッテリーを収容し、当該制御回路及び当該バッテリーと、第一の筐体12c内のスピーカユニット11と、を有線接続する場合よりも、インナーホンを利用するために必要なスペースを軽減することができる。
【0075】
(第五実施形態)
図6は、第五実施形態に係るインナーホン10dの構造を示す図である。尚、図6は、図1の左図と同様に、耳に装着された状態のインナーホン10dの正面断面図を示す。ただし、外耳道101内の図は省略している。
【0076】
図6に示すように、第五実施形態に係るインナーホン10dは、スピーカユニット11、第一の筐体12d、音導管15d、イヤープラグ14d、第二の筐体22d及び通気管13dを備えている。
【0077】
第一の筐体12dは、左右方向に長尺の略筒状の部品であり、スピーカユニット11を収容する。第一の筐体12dの右面128dには、第一の開口部121dが設けられている。第一の筐体12dの左面129dには、第三の開口部123dが設けられている。また、第一の筐体12dは、スピーカユニット11の音波の発生面111と第一の開口部121dとの間に空間125を有する。
【0078】
第一の開口部121dは、円形の形状を有し、スピーカユニット11の音波の発生面111に対向する位置に設けられている。第一の開口部121dは、スピーカユニット11の音波の発生面111において発生された音波を前記空間125を介して第一の筐体12外部に放出するために設けられている。
【0079】
第三の開口部123dは、第一の筐体12dの左面129dにおける任意の位置に設けられている。第三の開口部123dは、通気管13dを貫通させる貫通孔として設けられている。
【0080】
音導管15dは、両端が開口された略筒状の部品であり、音導管15dの内径は第一の開口部121dの直径と略同じとなっている。音導管15dの左方の開口端151d(一端)は、第一の筐体12dの右面128dに設けられた第一の開口部121dに接続されている。音導管15dの右方の開口端152(他端)の周面157dには、イヤープラグ14dが取り付けられている。
【0081】
音導管15dは、スピーカユニット11の音波の発生面111において発生され、前記空間125を介して第一の開口部121dから放出された音波を、左方の開口端151dから入力し、右方の開口端152dから放出する。尚、音導管15dは、両端が開口されていればよく、断面の形状は、円形とは異なる形状であってもよい。
【0082】
イヤープラグ14dは、ドーム状の傘147dが一方端に形成された貫通孔141dを有する略筒状の部品である。イヤープラグ14dは、貫通孔141dの途中まで音導管15dの右方の開口端152dを挿入させた状態で、音導管15dの右方の開口端152dの周面157dで固定される。イヤープラグ14dは、外耳道101(図1)に挿入されると、イヤープラグ14dの前記ドーム状の傘147dが上下及び前後方向に広がり、外耳道101の内壁に当接する。これにより、インナーホン10dが耳に装着された状態となる。
【0083】
第二の筐体22dは、右方が平面状に形成された袋状の部品であり、制御回路16及びバッテリー17を収容する。第二の筐体22dは、右方の平面228dが第一の筐体12dの左面129dに対向するようにして配置されている。第二の筐体22dの右方の平面228dには、第四の開口部224d(第二の開口部)が設けられている。第二の筐体22dの湾曲面229dには、第五の開口部225d(第三の開口部)が設けられている。
【0084】
第四の開口部224dは、第三の開口部123dと同じ形状を有している。第五の開口部225dは、第四の開口部224dよりも下方の位置(高さ)に設けられている。第五の開口部225dは、第四の開口部224dと同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。尚、第二の筐体22dの右方の平面228d又は湾曲面229dに、第四の開口部224bとは異なる複数の開口部を設けてもよい。
【0085】
制御回路16及びバッテリー17とスピーカユニット11とは、第四の開口部224d及び第三の開口部123dを通る、通気管13dの外周部に取り付けられた配線18によって接続されている。尚、図6では、説明を明瞭にするために、配線18を通気管13dの外周部から離間した位置に図示している。
【0086】
通気管13dは、例えばゴムチューブ又はシリコンチューブ等の両端が開口されたチューブによって構成され、形状を柔軟に変更できる。通気管13dの右方の開口端131d(一端)は、前記空間125に設けられている。通気管13dの左方の開口端132d(他端)は、第四の開口部224dに接続されている。通気管13dは、形状を柔軟に変更できるため、第一の筐体12dの左面129dにおける任意の位置に設けられた第三の開口部123dを通るようにして、第一の筐体12dを貫通するように設けることができる。
【0087】
通気管13dの右方の開口端131dの周面は、スピーカユニット11の上面117と第一の筐体12dの周面127dと当接している。また、通気管13dの内径は、音導管15dの内径、つまり、第一の開口部121dの直径よりも小さく構成されている。これらにより、スピーカユニット11の発生面111から空間125内に放出された音波が、第一の開口部121dを介して音導管15内を通過し易くしている。尚、通気管13dの右方の開口端131dは、空間125内において、スピーカユニット11の発生面111よりも右方に突出していてもよい。
【0088】
本態様によれば、通気管13dは、第一の筐体12dを貫通するように設けられ、右方の開口端131dが第一の筐体12d内におけるスピーカユニット11の音波の発生面と第一の開口部121との間の空間125に設けられ、通気管13dの左方の開口端132dが第四の開口部224dに接続されている。また、第二の筐体22dには、第四の開口部224dよりも下方の位置に第五の開口部225dが備えられている。このため、イヤープラグ14dが外耳道101に挿入された場合に、外耳道101内の空気を、音導管15d内を通過させて第一の筐体12d内におけるスピーカユニット11の音波の発生面111と第一の開口部121との間の空間125に放出することができる。その後、空間125に放出された空気を、通気管13d内で第一の筐体12dを通過させて第二の筐体22d内に放出することができる。そして、第二の筐体22d内に放出された空気を、第二の筐体22d内で上方から下方へと移動させた後、第五の開口部225bを介して外部へ放出することができる。
【0089】
したがって、従来のように、音導管内に設けられた通気管によって外耳道101内の空気を外部へ放出する場合よりも、外耳道101内の空気が外部へ放出されるまでに受ける空気抵抗を増大させることができる。これにより、従来よりも、音導管15dによって外耳道101内に放出された低域の音波が外部に漏れる量を低減することができる。その結果、従来よりも、外耳道101内における低域の音質の低下を抑制することができる。
【0090】
尚、上記実施形態は、本開示に係る実施形態の例示に過ぎず、本開示を上記実施形態に限定する趣旨ではない。例えば、以下に示す変形実施形態であってもよい。尚、以降の説明では、上述した構成要素と同様の構成要素については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
(変形実施形態)
図3の点線部に示すように、第二実施形態に係るインナーホン10aにおいて、第一の筐体12又は第二の筐体22に、通気管13aの内径を変化させる調整機構30が、更に備えられてもよい。これに合わせて、制御回路16(制御部)が、更に、調整機構30を制御して、通気管13aを、空気を外部へ放出させない閉塞状態又は空気を最大限外部へ放出する開放状態に切り替えるようにしてもよい。
【0092】
具体的には、調整機構30は、例えば図8及び図9に示すように構成される。図8は、調整機構30の構造の第一例を示す図である。尚、図8は、図3のVIII-VIII線断面図を示す。図9は、調整機構30の構造の第一例を示す正面断面図である。図8に示すように、調整機構30は、筐体33と、押圧部材32と、モーメンタリースイッチ31と、を備える。
【0093】
筐体33は、前後方向一対の側壁331、332と、一対の側壁331、332の下部に設けられた底面333とを含む。一対の側壁331、332の上部には、第一の筐体12又は第二の筐体22がある。通気管13aは、筐体33の底面333に配置されている。通気管13aは、シリコンゴム等の弾性部材で構成されている。これにより、通気管13aは、外部から押圧されることで変形し、内径を変化させることができる。
【0094】
押圧部材32は、シリコンゴム等のゴム部材により構成されている。押圧部材32は、通気管13aよりも上方に設けられている。押圧部材32の前方の端部321は、筐体33の前方の側壁331によって支持されている。押圧部材32の後方の端部322は、筐体33の後の側壁332によって支持されている。
【0095】
モーメンタリースイッチ31は、左右方向から見てT字状である。モーメンタリースイッチ31は、上下方向に延びる軸部311が、第一の筐体12に設けられた貫通孔120又は第二の筐体22に設けられた貫通孔220に貫通するようにして取り付けられている。モーメンタリースイッチ31の下端313は、押圧部材32に取り付けられている。
【0096】
モーメンタリースイッチ31は、制御回路16から下方への移動を示す駆動信号が入力されている間、下方に移動する。モーメンタリースイッチ31は、制御回路16から上方への移動を示す駆動信号が入力されている間、上方に移動する。このように、モーメンタリースイッチ31が上下方向に移動することで、モーメンタリースイッチ31の下端313に取り付けられた押圧部材32も上下方向に移動する。
【0097】
押圧部材32が下方に移動した場合、押圧部材32によって通気管13aが押圧され、通気管13aの内径が小さくなる。図8の左図は、制御回路16が、所定の最大時間、下方への移動を示す駆動信号を調整機構30に出力したことで、モーメンタリースイッチ31が最大限下方に移動し、通気管13aが閉塞状態に切り替えられた例を示している。
【0098】
一方、押圧部材32が上方に移動した場合、押圧部材32が通気管13aを押圧する力が弱まり、通気管13aの内径が大きくなる。図8の右図は、制御回路16が、所定の最大時間、上方への移動を示す駆動信号を調整機構30に出力したことで、モーメンタリースイッチ31が最大限上方に移動し、通気管13aが開放状態に切り替えられた例を示している。
【0099】
尚、図9は、通気管13aが図8の右図に示した開放状態になった後、通気管13aが図8の左図に示した閉塞状態に切り替わるまでの途中の状態を示している。
【0100】
制御回路16は、スマートフォン等の携帯端末との間で無線通信を行う不図示の無線通信回路を備える。制御回路16は、当該無線通信回路を介して、携帯端末から通気管13aを閉塞状態に切り替える指示を受けると、所定の最大時間、下方への移動を示す駆動信号を調整機構30に出力する。これにより、調整機構30は、モーメンタリースイッチ31を下方に最大限移動させることで、通気管13aを閉塞状態に切り替える。
【0101】
一方、制御回路16は、当該無線通信回路を介して、携帯端末から通気管13aを開放状態に切り替える指示を受けると、所定の最大時間、上方への移動を示す駆動信号を調整機構30に出力する。これにより、調整機構30は、モーメンタリースイッチ31を上方に最大限移動させることで、通気管13aを開放状態に切り替える。
【0102】
調整機構30は、図8及び図9に示した例に限らず、例えば図10及び図11に示すように構成されてもよい。図10は、調整機構30の構造の第二例を示す図である。尚、図10は、図3のVIII-VIII線断面図を示す。図11は、調整機構30の構造の第二例を示す正面断面図である。
【0103】
図10に示すように、本具体例では、調整機構30は、モーメンタリースイッチ31(図8図9)に代えて、バルブ式開閉弁31aを備える。バルブ式開閉弁31aは、左右方向から見てT字状である。バルブ式開閉弁31aは、上下方向に延びる軸部311aを備える。軸部311aの周面には、らせん状のネジ溝が形成されている。バルブ式開閉弁31aは、軸部311aのネジ溝と、第一の筐体12に設けられたネジ穴120a又は第二の筐体22に設けられたネジ穴220aと、が嵌合するようにして取り付けられている。バルブ式開閉弁31aの下端313aは、軸部311aを回転軸にして軸周りに回転自在な状態で押圧部材32に取り付けられている。
【0104】
制御回路16からバルブ式開閉弁31aに時計回りを示す回転駆動信号が入力されている間、軸部311aは時計回りに回転する。これにより、第一の筐体12に設けられたネジ穴120a又は第二の筐体22に設けられたネジ穴220aと嵌合する軸部311aは、下方に移動する。一方、制御回路16からバルブ式開閉弁31aに反時計回りを示す回転駆動信号が入力されている間、軸部311aは反時計回りに回転する。これにより、ネジ穴120a又はネジ穴220aと嵌合する軸部311aは、上方に移動する。このように、バルブ式開閉弁31aの軸部311aが上下方向に移動することで、バルブ式開閉弁31aの下端313に取り付けられた押圧部材32も上下方向に移動する。
【0105】
押圧部材32が下方に移動した場合、押圧部材32によって通気管13aが押圧され、通気管13aの内径が小さくなる。図10の左図は、制御回路16が、所定の最大時間、時計回りを示す回転駆動信号を調整機構30に出力したことで、バルブ式開閉弁31aの軸部311aが最大限下方に移動し、通気管13aが閉塞状態に切り替えられた例を示している。
【0106】
一方、押圧部材32が上方に移動した場合、押圧部材32が通気管13aを押圧する力が弱まり、通気管13aの内径が大きくなる。図10の右図は、制御回路16が、所定の最大時間、反時計回りを示す回転駆動信号を調整機構30に出力したことで、バルブ式開閉弁31aの軸部311aが最大限上方に移動し、通気管13aが開放状態に切り替えられた例を示している。
【0107】
尚、図11は、通気管13aが図10の右図に示した開放状態になった後、通気管13aが図10の左図に示した閉塞状態に切り替わるまでの途中の状態を示している。
【0108】
本構成では、制御回路16は、前記無線通信回路を介して、携帯端末から通気管13aを閉塞状態に切り替える指示を受けると、所定の最大時間、時計回りを示す回転駆動信号を調整機構30に出力する。これにより、調整機構30は、バルブ式開閉弁31aの軸部311aを下方に最大限移動させることで、通気管13aを閉塞状態に切り替える。
【0109】
一方、制御回路16は、前記無線通信回路を介して、携帯端末から通気管13aを開放状態に切り替える指示を受けると、所定の最大時間、反時計回りを示す回転駆動信号を調整機構30に出力する。これにより、調整機構30は、バルブ式開閉弁31aの軸部311aを上方に最大限移動させることで、通気管13aを開放状態に切り替える。
【0110】
尚、上述した例とは反対に、軸部311aが、時計回りに回転することで上方に移動し、反時計回りに回転することで下方に移動するように、軸部311aの周面にネジ溝が形成されていてもよい。
【0111】
本変形実施形態の構成によれば、制御回路16が、調整機構30を制御して、通気管13aを開放状態又は閉塞状態に切り替えることによって、当該通気管13aによって外耳道内の空気を外部へ放出させるか否かを切り替えることができる。これにより、外耳道内の蒸れによる不快感の解消を優先するか、再生音の低域の音質の低下の抑制を優先するかを切り替えることができる。
【0112】
また、調整機構30を第一の筐体12に配置する方が、調整機構30を第二の筐体22に配置するよりも第二の筐体22を小型化できる。第一の筐体12よりも第二の筐体22の方が空洞部が大きい場合、調整機構30を第一の筐体12に配置するよりも、第二の筐体22に配置する方が容易である。
【0113】
尚、上記と同様にして、調整機構30を図1に示す第一の筐体12に備えてもよい。この場合、制御回路16(図3)と同様の制御回路を第一の筐体12に設け、当該制御回路に調整機構30による通気管13aの内径の変化を制御させればよい。また、調整機構30を、図4乃至6のそれぞれに示す第一の筐体12、12c、12dに備えてもよい。この場合、図4乃至6のそれぞれに示す制御回路16に、調整機構30による図4乃至6のそれぞれに示す通気管13b、13c、13dの内径の変化を制御させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示のインナーホンは、テレビ用、携帯音楽プレイヤー用、携帯電話用などのインナーホンとして利用可能であり、特に、外耳道内の蒸れによる不快感を解消しつつ、インナーホンの音圧周波数特性の変化を回避したい場合に有用である。
図1
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図5
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図8
図9
図10
図11