(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】着用物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20241029BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20241029BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/49 311Z
A61F13/49 319
A61F13/496 100
B32B3/30
(21)【出願番号】P 2021520769
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019486
(87)【国際公開番号】W WO2020235495
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019096159
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】真部 貴仁
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208513(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069807(WO,A1)
【文献】特開2019-097927(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胴回りに配置される胴回り部を有する着用物品であって、
前記胴回り部の少なくとも一部を形成するとともに、特定方向に伸縮可能な複合伸縮部材
を備え、
前記複合伸縮部材は、
互いに対向する2枚のシートと、
前記各シートの間で前記特定方向に伸縮可能となるように当該特定方向に沿って延びる複数の弾性部材とを備え、
前記各シートは、複数の第1接合部で互いに接合されており、
前記各第1接合部は、それぞれ前記特定方向と交差する交差方向に沿って連続的に延びて複数の前記弾性部材と交差しており、
前記各弾性部材は、前記各第1接合部との交差点においてそれぞれ前記各シートに接合され、
前記各第1接合部は、凸部および凹部が交互に連続して現れるように前記交差方向に延びる波線形状を有し、
隣接する2本の前記第1接合部の少なくとも一部は、前記特定方向から見たときに前記凸部同士または前記凹部同士が重なるように配置され
、
前記胴回り部は、前記着用者の腹部の前側に配置される前腹部と、前記着用者の臀部側に配置される後背部とを有し、前記前腹部と前記後背部とが一対の連結領域で連結されることにより環状に形成されており、
前記前腹部および前記後背部は、前記複合伸縮部材によって形成され、
前記複合伸縮部材は、前記特定方向が前記胴回り部における胴回り方向に一致するように配置され、
前記連結領域は、前記交差方向に直線状に延び、
前記連結領域と当該連結領域に最も近い前記第1接合部との間には、前記交差方向に直線状に延びる少なくとも1本の第2接合部が形成されている、
ことを特徴とする
着用物品。
【請求項2】
請求項1に記載の
着用物品であって、
隣接する2本の前記第1接合部は、少なくとも一部の領域において前記交差方向における両接合部の位相が一致するように配置されている、
ことを特徴とする
着用物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の
着用物品であって、
前記複数の第1接合部は、前記交差方向から見たときに、隣接する2本の第1接合部の間が当該2本の第1接合部のうちの少なくともいずれか一方の第1接合部の凸部によって塞がるように設定された間隔をあけて配置されている、
ことを特徴とする
着用物品。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1項に記載の着用物品であって
、
前記連結領域の少なくとも一部は、前記第1接合部と前記弾性部材との交差点が形成されない非形成領域である、
ことを特徴とする着用物品。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項に記載の着用物品であって、
複数の前記第2接合部が並んで形成されている、
ことを特徴とする着用物品。
【請求項6】
請求項
1~
5のいずれか1項に記載の着用物品であって、
液体を吸収する吸収性本体をさらに備え、
前記吸収性本体は、前記胴回り部を構成する前記複合伸縮部材に重ね合されて固定され、
前記複合伸縮部材における前記吸収性本体と重なり合う重合部分以外の領域では、前記第1接合部と前記弾性部材との交差点が形成され、当該重合部分では、前記弾性部材が途切れている、
ことを特徴とする着用物品。
【請求項7】
請求項
6に記載の着用物品であって、
前記重合部分は、前記交差方向に直線状に延びる縁を有しており、
前記重合部分と当該重合部分に最も近い前記第1接合部との間には、前記交差方向に直線状に延びる少なくとも1本の第3接合部が形成されている、
ことを特徴とする着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定方向に伸縮可能な複合伸縮部材およびそれを用いた着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、胴回り部分と股下部分とを有する使い捨ておむつ等の着用物品が知られている。この着用物品では、履き心地を良好にする等のために着用物品の胴回り部分が伸縮可能な複合伸縮部材により構成される場合がある。
【0003】
複合伸縮部材としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の部材は、2枚のシートと複数の弾性部材とを有する。これら2枚のシートが弾性部材の伸縮方向と交差する方向に延びる直線状の熱融着線によって接合される。これにより、間欠的にシートどうしあるいはシートと弾性部材とが接合されている。
【0005】
上記のような胴回り部分を有する着用物品を製造する場合において、胴回り部材が収縮した際に生じるひだの形状に種々の変化をもたせて着用物品の意匠性を向上させることが望まれている。しかし、上記のような複合伸縮部材では、収縮時において熱融着線に沿って直線状のひだが形成されて単調な模様が形成されるにすぎず、意匠性の向上が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1:国際公開第2016/208513号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、収縮時の意匠性を向上することが可能な着用物品を提供することである。
【0008】
前記課題を解決するためのものとして、本発明の複合伸縮部材は、特定方向に伸縮可能な複合伸縮部材であって、互いに対向する2枚のシートと、前記各シートの間で前記特定方向に伸縮可能となるように当該特定方向に沿って延びる複数の弾性部材とを備え、前記各シートは、複数の第1接合部で互いに接合されており、前記各第1接合部は、それぞれ前記特定方向と交差する交差方向に沿って連続的に延びて複数の前記弾性部材と交差しており、前記各弾性部材は、前記各第1接合部との交差点においてそれぞれ前記各シートに接合され、前記各第1接合部は、凸部および凹部が交互に連続して現れるように前記交差方向に延びる波線形状を有し、隣接する2本の前記第1接合部の少なくとも一部は、前記特定方向から見たときに前記凸部同士または前記凹部同士が重なるように配置されている、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る複合伸縮部材の平面図である。
【
図4】
図1に対応する図であって接合部を模式的に示した図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る複合伸縮部材を製造するための製造装置の構成を示す概略説明図である。
【
図9】
図7のガイドプレートのガイド溝の拡大図である。
【
図10】(a)は
図6の製造装置のガイドプレートおよびその周辺部の拡大図、(b)は(a)のガイドプレートのガイド溝からアンビルロールへ弾性部材が送られる部分の拡大図である。
【
図11】
図6のアンビルロールの外周面を示した図である。
【
図13】複合伸縮部材が用いられた使い捨ておむつの展開図である。
【
図14】
図13の使い捨ておむつの前腹部を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0011】
(1)複合伸縮部材の構成
図1は、本発明の実施形態に係る複合伸縮部材の平面図である。
図2は、
図1のII-II線断面図の一部である。
【0012】
複合伸縮部材1は、互いに対向する長尺な2枚のシート2a,2bと、特定方向である長手方向Aに伸縮可能な複数の長尺な弾性部材10とを備える。各弾性部材10は、両シート2a,2bの間に各シート2a,2bの長手方向A(
図1の左右方向)に伸縮可能となるように、すなわち、各シート2a,2bの長手方向Aに伸縮するようにこの長手方向Aに沿って延びる状態で配置されている。本実施形態では、これら弾性部材10は、シート2a,2bの幅方向B(シート2a,2bの長手方向Aと直交する交差方向)について、互いに等間隔に配置され、シート2a,2bの長手方向Aと平行に延びている。
【0013】
本実施形態では、両シート2a,2bとして、不織布などのシート状の材料が用いられている。
【0014】
弾性部材10は、シート2a、2bの材料(不織布など)と比べて伸縮性を有する材料が用いられる。本発明では弾性部材10の材料については特に限定しない。
【0015】
図3に示されるように、本実施形態の弾性部材10は、例えば、複数の糸ゴム(繊維状弾性体)10aが束状に集合したマルチストランドであって、少なくとも一部の糸ゴム10aの周囲が被覆層10bにより覆われたものなどが用いられ、具体的には、複数の糸ゴム10aのうち特に外周部分に配置される糸ゴム10aが被覆層10bにより覆われている。なお、全ての糸ゴム10aが被覆層10bにより覆われていてもよい。
【0016】
糸ゴム10aの材質としては、例えば、ポリウレタンが採用される。また、被覆層10bの材質としては、例えば、シリコンオイルやステアリン酸マグネシウム等の滑剤が採用される。
【0017】
両シート2a,2bどうし、および、両シート2a,2bと弾性部材10とは、
図1に示されるように、波線形状の複数の第1接合部4において接合されている。
【0018】
図4~5は、
図1の接合部を模式的に示したものである。これら
図1および
図4~5に示されるように、各第1接合部4は、それぞれ両シート2a,2bの長手方向Aに等間隔に配置され、これらシート2a,2bの幅方向Bへ向かうように互いに平行になるように連続的に延びている。
【0019】
各第1接合部4は、すべての弾性部材10と交差点4aの位置で交差しており、弾性部材10の伸縮方向(すなわち長手方向A)と交差する線に沿って延びている。具体的には、各第1接合部4は、弾性部材10が配置された領域よりもシート2a,2bの幅方向Bの両外側部分間にわたって延びている。
【0020】
各弾性部材10と第1接合部4とが交差する交差点4aでは、各弾性部材10と各シート2a,2bとが接合されている。
【0021】
各第1接合部4は、
図1に示されるように凸部4bおよび凹部4cが交互に連続して現れるように長手方向Aに周期的に変位しながら幅方向Bに延びる波線形状を有している。隣接する2本の第1接合部4は、凸部4b同士または凹部4c同士の少なくとも一部が重なるように配置されている(具体的には、凸部4b同士または凹部4c同士の少なくとも一部の形状が一致するように配置されている)。これにより、複合伸縮部材1が収縮した際に波線形状の複数の第1接合部5のそれぞれの部位で当該第1接合部に沿って波線形状のひだをそれぞれ形成することが可能になる。その結果、複合伸縮部材1は複数の波線形状のひだを有することによって複合伸縮部材1の意匠性が向上する。
【0022】
図1に示される隣接する2本の第1接合部4は、具体的には、少なくとも一部の領域において幅方向Bにおける両接合部4の位相が一致するように配置されている。例えば、隣接する2本の第1接合部4における波線は、
図1に示されるように全長に亘って同位相で並んでいてもよいが、一部の区間だけ同位相で並ぶとともに他の区間では位相が異なるように並んでいてもよい。
【0023】
また、波線形状の第1接合部4の波長は、
図1に示されるように全長に亘って一定でもよいし、当該第1接合部4の幅方向Bの位置によって波長が変化してもよい。
【0024】
さらに、波線形状の第1接合部4の振幅も、
図1に示されるように全長に亘って一定でもよいし、当該第1接合部4の幅方向Bの位置によって振幅が変化してもよい。
【0025】
上記のように、複数の波線形状の第1接合部5の一部または全体において、位相、波長、および振幅のうちの少なくとも1つを適宜変えて設定することにより、複合伸縮部材1が収縮時に形成される複数の波線形状のひだに部分的または全体的に変化を与えることが可能になる。その結果、変化に富んだ模様の複合伸縮部材1を形成することが可能になる。
【0026】
複数の第1接合部4は、幅方向Bから見たとき、例えば、
図1の矢印B1から見たときに隣接する2本の第1接合部4の間が当該2本の第1接合部4のうちの少なくともいずれか一方の第1接合部4の凸部4bによって塞がるように設定された間隔をあけて配置されている。
【0027】
第1接合部4では、シート2a,2bどうし、および、シート2a,2bと弾性部材10とは溶着により互いに接合されている。本実施形態では、これらは、超音波溶着されている。
【0028】
シート2a,2bどうしは、その一部が溶融して互いに溶着することで接合されている。一方、弾性部材10とシート2a,2bとは、シート2a,2bの一部が溶融し、弾性部材10のうち被覆層10bが溶融することで互いに溶着されている。
【0029】
具体的には、本実施形態では、弾性部材10に含まれる糸ゴム10aとして融点が約200℃の糸ゴムが用いられ、被覆層10bとしてこれよりも融点の低いステアリン酸マグネシウム(融点:約120℃)が用いられており、弾性部材10とシート2a,2bとの溶着時に、糸ゴム10aが溶融することなく被覆層10bが溶融して被覆層10bとシート2a,2bとが溶着される。
【0030】
(2)複合伸縮部材の製造装置
次に、前記複合伸縮部材1を製造するための製造装置について説明する。
【0031】
図6は、本発明の実施形態に係る製造装置100の概略図である。
【0032】
製造装置100は、シート2a,2bの間に弾性部材10を挟み込んだ状態で弾性部材10とシート2a,2b、および、シート2a,2bどうしを超音波溶着させて接合する接合装置200と、下側のシート2bを接合装置200(具体的には後述のアンビルロール210)に案内する第1案内ローラ102と、弾性部材10を接合装置200に供給する弾性部材案内装置(案内装置)110と、上側のシート2aを接合装置200に案内するとともに2枚のシート2a、2bおよび弾性部材10を押さえるニップロール(第2案内ローラ)104と、接合されたシート等すなわち複合伸縮部材1を案内する第3案内ローラ106とを有する。
【0033】
接合装置200は、アンビルロール(搬送ローラ)210と、ホーン(挟圧装置)220とを有する。
【0034】
アンビルロール210は、
図6の紙面と直交する方向に延びる軸回りに回転する回転部材である。以下、この
図6の紙面と直交する方向を「前後方向」という。アンビルロール210は、図示されない鏡板などの装置における縦壁の部分に対して、水平方向(上記の前後方向)に延びる回転軸を回転中心として回転自在に取り付けられている。アンビルロール210は、回転することで、その外周面上において、ローラ102、104により案内されたシート2a,2bの間に弾性部材案内装置110により案内された弾性部材10を挟み込んだ状態で搬送する。
図6に示される例では、アンビルロール210は
図6において反時計回りに回転する。以下、弾性部材10を挟み込んだシート2a,2bを接合前シートという。
【0035】
アンビルロール210の外周面には、
図11に示されるように、径方向外側に突出する凸部212が形成されている。凸部212は、アンビルロール210の外周面にその回転軸方向Cの全幅にわたって設けられている。凸部212は、複合伸縮部材1の第1接合部4と対応する波線形状を有している。
【0036】
すなわち、波線形状を有する複数の凸部212は、アンビルロール210の回転軸方向Cに沿って延びて、互いに平行にかつ周方向Dに等間隔に配置されている。
【0037】
また、波線形状を有する複数の凸部212は、上記の複合伸縮部材1の複数の第1接合部4の形状に対応するように、アンビルロール210の回転軸方向Cから見たとき、例えば、
図11の矢印C1から見たときに隣接する2本の凸部212の間が当該2本の凸部212のうちの少なくともいずれか一方の第1接合部4の凸部4bに対応する突出部分212a(周方向Dに突出する凸部)によって塞がるように設定された間隔をあけて配置されている。これにより、超音波溶着時において、ホーン220における後述の出力部221をアンビルロール210の複数の波線形状の凸部212に対向させて、これら出力部221および凸部212よってシート2a、2bを確実に挟むことが可能である。その結果、
図1の複合伸縮部材1の複数の第1接合部4を超音波溶着によって形成する際に、2枚のシート2a、2bをホーン220の出力部221およびアンビルロール210の波線形状の凸部212によって挟むとき(
図12参照)の圧力の変動が複合伸縮部材の1の幅方向B(すなわちアンビルロール210回転軸方向C)のいずれの位置においても変動を抑えることが可能になる。
【0038】
図11~12に示されるように、波線形状を有する凸部212のそれぞれには、アンビルロール210の径方向内側に凹む複数の溝214が形成されている。複数の溝214は、各凸部212において回転軸方向Cに等間隔に配置されている。また、隣接する凸部212同士の溝214は、アンビルロール210の周方向Dに等間隔に並ぶように配置されている。
【0039】
これら溝214の内側には下側のシート2b(アンビルロール210側に配置されるシート)のうち弾性部材10が配置される部分が挿通される。そのため、第1接合部4に対する弾性部材10の配置と、凸部212に対する溝214の配置とは同じになっている。
【0040】
シート2bのうち弾性部材10が配置された部分は、各溝214内に挿入された状態でアンビルロール210によって搬送される。前記のように、本実施形態では、各溝214に対応する位置にガイド溝114b(
図7参照)が設けられたガイドプレート112によって各溝214に弾性部材10がそれぞれ案内されるため、弾性部材10はシート2b上の適切な位置に安定して配置される。
【0041】
本実施形態では、シート2bに加えて弾性部材10の一部が、これら溝214内に挿入された状態でアンビルロール210によって搬送される。なお、シート2bのみが挿入された状態で搬送されてもよい。
【0042】
このように凸部212のうち弾性部材10が配置される部分に溝214が形成されていることで、接合時に接合前シートが挟圧された際には、接合前シートに配置された弾性部材10の少なくとも一部分は、この溝に退避した状態となる。そのため、挟圧に伴って弾性部材10が切断されるのが回避される。
【0043】
ただし、溝214の断面積が大きすぎる場合に、弾性部材10とシート2a,2bとを適切に接合させることが困難になるおそれがある。そこで、本実施形態では、
図12に示されるように、自然長の弾性部材10が溝214に配置されたとき、弾性部材10の一部が、溝214から外側にはみ出し、弾性部材10の残りが溝214内に収容されるようになっている。詳細には、アンビルロール210の周方向D(搬送方向)と略直交する平面で溝214を切断した断面の形状は、弾性部材10が自然長で溝214に配置された状態において、溝214の開口端(Q1,Q2)を結ぶ直線状の仮想線L10よりも弾性部材10の一部がアンビルロール210の径方向の外側にはみ出るような形状に設定されている。さらに、この溝214の前記断面形状は、自然状態から伸長させた状態(例えば300%伸長させた状態)の弾性部材10が溝214に配置されたときに、溝214の開口端(Q1,Q2)を結ぶ直線状の仮想線L10よりも弾性部材10の一部がアンビルロール210の径方向の外側にはみ出るように設定されている。このような溝214の断面形状としては、
図12に示されるように、略V字状が好ましい。さらに、このような溝214の断面積S1としては、配置される弾性部材10の断面積よりも小さいほうが好ましい。
【0044】
図6および
図10(a)に示されるホーン220は、アンビルロール210によって搬送されている接合前シートをアンビルロール210の外周面との間で挟圧(挟み込みながら加圧する)しながらこの接合前シートに超音波振動を付与する装置である。ホーン220は、アンビルロール210の外周面と対向して配置されている。
図6の例では、アンビルロール210の外周面の上側の部分と対向して配置されている。ホーン220の先端には、アンビルロール210の外周面に向かって超音波振動を付与する出力部221が設けられている。
【0045】
ホーン220は、出力部221を接合前シートに押し付けてアンビルロール210との間で接合前シートを挟圧しながら接合前シートに超音波振動を付与する。これにより、シート2a,2bはそれぞれ溶融し、互いに溶着される。また、弾性部材10も溶融して、弾性部材10とシート2a,2bとが互いに溶着される。具体的には、出力部221は、前記凸部212との間で接合前シートを挟圧し、接合前シートのうちこの凸部212上に配置された部分においてシート2a、2bどうしおよび弾性部材10とシート2a,2bどうしとを互いに接合する。出力部221の先端は、平面状を有している(
図12参照)。
【0046】
ここで、前記のように、本実施形態では、被覆層10bとして糸ゴム10aよりも融点の低いステアリン酸マグネシウムが用いられる。そのため、弾性部材10とシート2a,2bとの溶着時において、糸ゴム10aが溶融することなく被覆層10bが溶融して被覆層10bとシート2a,2bとが溶着される。
【0047】
ホーン220先端の出力部221は、前後方向(アンビルロール210の回転軸方向C)に延びており、ホーン220は、アンビルロール210の外周面に対してアンビルロール210の回転軸方向C全体に超音波振動を付与する。アンビルロール210によって接合前シートが搬送されている間、ホーン220は常に超音波振動を付与している。従って、アンビルロール210によって接合前シートが搬送されることに伴い、接合前シートは連続して接合される。
【0048】
図6に示されるように、本実施形態では、下側のシート2bは、第1案内ローラ102によってアンビルロール210の外周面のうちホーン220から搬送方向上流側(
図6では右側)に離れた位置に案内される。シート2bは、アンビルロール210の回転に伴ってアンビルロール210の外周面に沿ってホーン220側に搬送される。
【0049】
上側のシート2aは、ニップロール104によって、アンビルロール210の外周面のうちホーン220近傍の部分であってホーン220よりも搬送方向上流側(
図6では右側)の部分に導入される。
【0050】
弾性部材10は、弾性部材案内装置110によって、シート2bがアンビルロール210に導入される位置とシート2aがアンビルロール210に導入される位置との間の位置において、アンビルロール210の外周面に導入される。これにより、弾性部材10は、シート2a,2bの間に挟まれた状態でホーン220と対向する位置に搬送される。
【0051】
なお、シート2aがニップロール104からアンビルロール210に導入される位置は、弾性部材10が導入される位置からホーン220と対向する位置までの間であればいずれの位置でもよいが、ホーン220と対向する位置寄りであるのが好ましく、ホーン220と対向する位置に近接する位置であるとさらに好ましい。本実施形態では、
図6および
図10(a)に示されるように、ニップロール104は、シート2a、2bの搬送方向(すなわちアンビルロール210の回転方向(
図10(a)では反時計方向))においてホーン220の搬送方向上流側(
図6および
図10(a)では右側)の直近の位置に配置されている。この場合、アンビルロール210の外周面に導入された弾性部材10が、早期にシート2aに覆われることによって位置ズレを生じさせることを防止できる。
【0052】
弾性部材10は、前後方向に互いに平行に並んだ状態でアンビルロール210の外周面に導入され、アンビルロール210の外周面上において、先にアンビルロール210の外周面に導入されたシート2b上にその幅方向Bに互いに平行に載置される。また、弾性部材10は、アンビルロール210の周方向Dに伸長された状態でアンビルロール210に導入される。本実施形態では、弾性部材10は、自然状態の300%に伸長した状態(自然状態を100%とする)でアンビルロール210に導入される。
【0053】
図6および
図10(a)、(b)に示されるように、弾性部材案内装置110は、複数の案内ローラ111と、ガイド部材としての板状のガイドプレート112とを有する。
【0054】
案内ローラ111は、それぞれ前後方向に延びる軸回りに回転可能な回転部材であり、弾性部材10を伸長した状態(例えば300%伸長した状態)でアンビルロール210側に案内する。
【0055】
図6~10(a)、(b)に示されるように、ガイドプレート112は、各弾性部材10を前後方向(すなわち、アンビルロール210の軸と平行な方向)に互いに離間した状態でアンビルロール210の外周面に形成された複数の溝214(
図11~12参照)に案内する平板状の部材である。
【0056】
ガイドプレート112は、アンビルロール210の外周面に最も近接する縁である先端114aと、先端114aよりもアンビルロール210から離れて配置された基端とを有し、アンビルロール210に接離する方向に延びるとともに前後方向に延びるように配置されている。本実施形態では、ガイドプレート112とシート2a,2bとが干渉しないように、ガイドプレート112の厚みt(
図8に示される上下方向の寸法)は小さく設定されており、ガイドプレート112は薄板状を有している。
【0057】
ガイドプレート112の先端114aは、先細りの形状をしている。具体的には、
図8に示されるように、ガイドプレート112の先端部分(アンビルロール210側の部分)には、先端114aに向かうほどガイドプレート112の底面114dに近づくように傾斜する傾斜面114cが形成されている。傾斜面114cおよび底面114dによって、先細り形状の先端114aを形成する。本実施形態では、傾斜面114cと底面114dとが成す角度θ2は小さい角度になるように設定されている。
【0058】
ガイドプレート112の先端114aは、
図10(a)、(b)に示されるように、アンビルロール210の外周面における弾性部材10と接する接点P2よりもアンビルロール210の回転方向(
図10(a)、(b)では反時計方向)における搬送方向上流側(
図10(a)、(b)の右側)に配置され、かつ、当該搬送方向上流側を向いている。
【0059】
ガイドプレート112の先細りになった先端114aには、複数のガイド溝114bが形成されている。具体的には、複数のガイド溝114bは、ガイドプレート112の先端114aにおいて、前後方向(アンビルロール210の軸と平行な方向)に互いに等間隔に離間した位置に形成され、複数の弾性部材10をアンビルロール210の複数の溝214にそれぞれ案内するように、各弾性部材10を個別に保持する。
図7のガイド溝114bの一部を拡大して示す
図9に示されるように、これらガイド溝114bは、傾斜面114cの先端114aから基端側に凹み、開度が90度程度のV字状を有している。これらガイド溝114bは、各弾性部材10をアンビルロール210の外周面に前後方向に互いに離間した状態で案内するために、各弾性部材10を確実に位置決めして保持する。これらガイド溝114bは、アンビルロール210に形成された溝214に対向して、溝214と同じ間隔で設けられており、これら溝214にそれぞれ弾性部材10を案内する。
【0060】
ガイドプレート112の先端114aおよび当該先端114aに形成されたガイド溝114bは、アンビルロール210の回転方向(
図6および
図10(a)では反時計方向)に対して反対方向(すなわち時計方向)を向いている。そのため、ガイド溝114bに係合している弾性部材10は、反時計方向に回転するアンビルロール210によって引っ張られてガイド溝114bの底P1で屈曲し、アンビルロール210の外周面の接点P2の接線方向に延びて当該接点P2でアンビルロール210の外周面の溝214(
図11~12参照)に挿入される。
【0061】
図10(a)、(b)に示されるように、ガイドプレート112は、ガイド溝114bとアンビルロール210の溝214との間に位置する弾性部材10の長さL1(具体的には、ガイド溝114bの底P1から弾性部材10がアンビルロール210に接する接点P2までの距離L1)は、短いほど糸ゴムなどの弾性部材10のアンビルロール210の溝214から外れる不具合を低減する。
【0062】
図10(b)に示されるように、ガイドプレート112は、ガイド溝114bの底P1とアンビルロール210の凸部212の外周面との隙間δ1がなるべく小さくなるように、配置されている。これにより、上記の弾性部材10の長さL1をさらに短縮することが可能であり、弾性部材10がアンビルロール210の溝214から外れる不具合をさらに低減する。
【0063】
図10(b)に示されるように、ガイドプレート112は、アンビルロール210に対向する底面114dがアンビルロール210と弾性部材10とが接する接点P2における当該アンビルロール210の接線に対して角度θ1が鋭角(90度以下)をなすように、配置されている。これにより、上記の弾性部材10の長さL1をさらに短縮することが可能であり、弾性部材10がアンビルロール210の溝214から外れる不具合をさらに低減する。
【0064】
図6および
図10(a)に示されるように、複数の案内ローラ111は、弾性部材10の搬送方向においてガイドプレート112の搬送方向上流側に配置され、弾性部材10をガイド溝114bに案内する。各案内ローラ111の外周面には、複数の弾性部材10を複数のガイド溝114bにそれぞれ案内するために、当該案内ローラ111の回転軸の延びる方向に互いに離間した複数の溝(図示せず)を有する。
【0065】
図10(a)に示されるように、複数の案内ローラ111のうち最も下流側に位置する案内ローラ111Aは、当該案内ローラ111Aの回転ムラおよびガタツキなどによる影響(例えば、弾性部材10のたるみなど)が出ないように、弾性部材10が案内ローラ111から離れてガイド溝114bに挿入するまでの距離L2をある程度確保できるように、配置されている。これにより、案内ローラ111の回転ムラおよびガタツキなどによる弾性部材10への影響、例えば弾性部材10のたるみなどを無くすことが可能である。
【0066】
また、
図6および
図10(a)に示されるように、ニップロール104は、ホーン220の搬送方向上流側に配置されている。弾性部材10がアンビルロール210の溝214に挿入されている領域(すなわち、アンビルロール210の外周面のうち弾性部材10が溝214に挿入された最初の位置(すなわち、アンビルロール210と弾性部材10との接点)P2(
図10(b)参照)からホーン220の出力部221(
図10(a)参照)までの区間)においてアンビルロール210と協働して2枚のシートおよび弾性部材10を挟むことが可能である。
【0067】
(3)着用物品およびその製造方法
図13~14は、前記のように構成された複合伸縮部材1の使用例として、この複合伸縮部材1が用いられた使い捨ておむつ(着用物品)30を示した概略図である。
【0068】
図13~14に示される使い捨ておむつ30は、パンツタイプの形態を有しており、主として、伸縮性を有する複合伸縮部材1で構成された胴回り部31と、股下部34と、水分などの液体を吸収することが可能な吸収性本体37とを備えている。
【0069】
本実施形態の複合伸縮部材1は、胴回り部31において、当該複合伸縮部材1の長手方向Aが胴回り部31における胴回り方向Xに一致するように、配置されている。いいかえれば、複合伸縮部材1の伸縮方向(複合伸縮部材1の長手方向A)が着用時の胴回り方向X(
図13の左右方向)と一致するように、複合伸縮部材1が前腹部32及び後背部33に適用される。すなわち、胴回り部31は、前腹部32及び後背部33を有し、前腹部32と後背部33とが一対の連結領域39で連結されることにより環状に形成されている。
【0070】
使い捨ておむつ30は、
図13に示される展開した状態では、胴回り部31の前身頃を構成する前腹部32と、胴回り部31の後身頃を構成する後背部33と、股下の部分を構成する股下部34と、吸収性本体37とを有する。股下部34は、前腹部32と後背部33とを連結する。吸収性本体37は、前腹部32、股下部34、および後背部33に跨って配置される。具体的には、吸収性本体37は、複合伸縮部材1によって構成された前腹部32および後背部33に部分的に重ね合されて重合部分Sを形成した状態でこれら前腹部32および後背部33に固定されている。
【0071】
前腹部32の上端および後背部33の下端には、折返し線36で折り返される折返し部分38が連続して設けられている。股下部34には、脚が挿入可能な略半円形の穴であるレッグホール35が形成されている。
【0072】
前腹部32は、胴回り方向Xへの伸縮を許容する伸縮性を有する左右両側の伸縮領域32aと、伸縮性が弱化された中央の弱化領域32bとを有し、これら左右両側の伸縮領域32aおよび中央の弱化領域32bは連続して形成されている。前腹部32と同様に、後背部33も、胴回り方向Xへの伸縮を許容する伸縮性を有する左右両側の伸縮領域33aと、伸縮性が弱化された中央の弱化領域33bとを有し、これら左右両側の伸縮領域33aおよび中央の弱化領域33bは連続して形成されている。前側の弱化領域32bおよび後側の弱化領域33bは、少なくとも吸収性本体37と前腹部32および後背部33との重合部分Sに形成されていればよく、
図13~14に示されるように重合部分Sよりも広い範囲に形成されてもよい。弱化領域32bおよび33bを重合部分Sよりも広く形成すれば、吸収性本体37の取付誤差を吸収することが可能である。
【0073】
複合伸縮部材1は、
図13の前腹部32および後背部33の全体の範囲(すなわち、伸縮領域32a、33aおよび弱化領域32b、33b全体の範囲)において、複数の弾性部材10を一対のシート2a、2bによって表裏両面から挟み込み、これらを互いに超音波溶着することにより形成されている。すなわち、
図14に示されるように、複数の弾性部材10が胴回り方向X(長手方向A)に伸長された状態で一対のシート2a、2bに挟み込まれた状態で、複数の弾性部材10と一対のシート2a、2bとが胴回り方向X(長手方向A)に互いに離間する複数の波線形状の第1接合部4において互いに超音波溶着されている。
【0074】
なお、
図13~14における複合伸縮部材1の前腹部32および後背部33以外の部分、例えば股下部34および折返し部分38などは、一対のシート2a、2bのうちの一方のシート2a(使い捨ておむつの形態の使い捨ておむつ30でいう外側になるシート体)で構成されている。
【0075】
図14に示される前腹部32の弱化領域32bのように、本実施形態では、複合伸縮部材1のうち吸収性本体37との重合部分Sを含む範囲において、複数の弾性部材10のそれぞれが切断されることにより、複数の弾性部材10の伸縮性を弱化させた弱化領域32bが形成されている。弾性部材10の切断場所は、少なくとも1か所あればよいが、例えば、長手方向Aに等間隔に複数個所設けられる。
【0076】
また、弱化領域32bでは、波線形状の第1接合部4は、弾性部材10と交差しない複数の点が波線状に点在して構成された点状接合部40によって構成されている。点状接合部40は、2枚のシート2a、2bを超音波溶着などで接合するが、シート2a、2bと弾性部材10とを接合しない。したがって、複合伸縮部材1における吸収性本体37と重なり合う重合部分Sを含む弱化領域32bの範囲では、点状接合部40によって構成された第1接合部4は、弾性部材10との交差点4aが形成されないよう配置され、かつ、弾性部材10は切断によって途切れている。
【0077】
また、
図13~14に示される使い捨ておむつ30は、胴回り方向Xにおける前腹部32の両側の端部および後背部33の両側の端部にはそれぞれ、当該前腹部32の端部と当該後背部33の端部とを連結する前記連結領域39が形成されている。連結領域39は、幅方向Bに直線状に延びている。
【0078】
連結領域39の少なくとも一部は、第1接合部4と弾性部材10との交差点4a(
図1参照)が形成されない非形成領域になるように構成されている。そのため、使い捨ておむつ30における連結領域39の部分は、伸縮性を有しない。なお、前腹部32および後背部33の連結領域39同士は、超音波溶着などによって接合されているが、このときに弾性部材10はシート2a、2bに接合されていてもよいが、弾性部材10は必ずしも接合されていなくてもよい。
【0079】
また、
図14に示される各連結領域39に対して胴回り方向(幅方向)Xの外側の領域では、シート2a、2b同士は、複数の点が波線状に点在して構成された点状接合部41によって接合されているが、弾性部材10とは接合されていない。
【0080】
また、
図14に示されるように、本実施形態の使い捨ておむつ30では、連結領域39と当該連結領域39に最も近い第1接合部4との間には、複合伸縮部材1の幅方向B、すなわち、胴回り部31の幅方向Yに直線状に延びる少なくとも1本の第2接合部42が形成されている。
図14には、複数(2本)の第2接合部42が胴回り方向Xに並んで形成されている例が示されている。
【0081】
本実施形態では、重合部分Sを含む弱化領域32bは、幅方向Yに直線状に延びる縁を有している。重合部分Sを含む弱化領域32bと当該弱化領域32b(重合部分S)に最も近い第1接合部4との間には、幅方向Bに直線状に延びる少なくとも1本の第3接合部43が形成されている。
【0082】
上記のように構成された使い捨ておむつ30は、以下のようにして製造される。
【0083】
まず、胴回り部31の前腹部32および後背部33をそれぞれ形成するための一対の複合伸縮部材1と股下部34とが一体化した連続体を用意する。
【0084】
ここで、
図13~14に示される複合伸縮部材1を製造する場合、超音波溶着をする際には、波線形状の複数の第1接合部4とともに、弱化領域32b、33bの点状接合部40、点状接合部41、直線状の第2接合部42、および弱化領域32b、33b近傍の第3接合部43を複合伸縮部材1に連続的に形成する必要がある。そのため、アンビルロール210の外周面には、波線形状の第1接合部4に対応する凸部212(
図11参照)だけでなく、上記の点状接合部40、41、第2接合部42、および第3接合部43に対応する形状の凸部を形成しておき、このような複数種類の凸部を有するアンビルロール210を用いて超音波溶着が行われる。
【0085】
また、複合伸縮部材1は、超音波溶着後において、弱化領域32b、33bの弾性部材10を切断して当該弱化領域で伸縮しないように弱化処理が施される。
【0086】
そして、股下部34にレッグホール35を形成した後、股下部34の中間位置(胴回り方向Xと直交する幅方向Yにおける中間位置)で股下部34が内側となるように二つ折りにする。
【0087】
そして、胴回り方向Xにおける前腹部32の両端部の連結領域39と後背部33の両端部の連結領域39とを超音波溶着によって接合してサイドシールを形成して使い捨ておむつ30の形にする。その後、使い捨ておむつ30を隣接する一対の複合伸縮部材1の連続体から分離すれば、使い捨ておむつ30は完成する。
【0088】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の複合伸縮部材1は、互いに対向する2枚のシート2a、2bと、各シート2a、2bの間で長手方向Aに伸縮可能となるように当該長手方向Aに沿って延びる複数の弾性部材10とを備える。各シート2a、2bは、複数の第1接合部4で互いに接合されている。各第1接合部4は、それぞれ長手方向Aと交差する幅方向Bに沿って連続的に延びて複数の弾性部材10と交差している。各弾性部材10は、各第1接合部4との交差点4aにおいてそれぞれ各シート2a、2bに接合されている。各第1接合部4は、凸部4bおよび凹部4cが交互に連続して現れるように幅方向Bに延びる波線形状を有する。隣接する2本の第1接合部4の少なくとも一部(本実施形態では第1接合部4の全部)は、長手方向Aから見たときに凸部4b同士または凹部4c同士が重なるように配置されている。
【0089】
このような構成では、複合伸縮部材1が収縮した際に波線形状の複数の第1接合部4のそれぞれの部位で当該第1接合部4に沿って波線形状のひだがそれぞれ形成され、複合伸縮部材1によって独特な風合いを表現することが可能になる。その結果、複合伸縮部材1を用いて意匠性の高い着用物品として本実施形態の使い捨ておむつ30を製造することが可能である。
【0090】
(2)
本実施形態の複合伸縮部材1では、隣接する2本の第1接合部4は、少なくとも一部の領域において幅方向Bにおける両接合部4の位相が一致するように配置されている。そのため、複合伸縮部材1が収縮した際に位相がそろった波線形状の複数のひだを形成することが可能になり、より意匠性が高い使い捨ておむつ30(着用物品)を製造することが可能である。
【0091】
(3)
本実施形態の複合伸縮部材1では、複数の第1接合部4は、幅方向Bから見たときに隣接する2本の第1接合部4の間が当該2本の第1接合部4のうちの少なくともいずれか一方の第1接合部4の凸部4bによって塞がるように設定された間隔をあけて配置されている。かかる構成では、幅方向Bから見たときに隣接する2本の第1接合部4の間にはいずれか一方の第1接合部4の凸部4bが介在しているので、複数の第1接合部4を形成する際に2枚のシート2a、2bをアンビルロール210の凸部212とホーン220の出力部221によって挟む圧力の変動が当該幅方向Bのいずれの位置においても変動を抑えることが可能になり、第1接合部4のムラ(具体的には第1接合部4の高さおよび密着強度のムラなど)の無い第1接合部4を形成することが可能である。また、第1接合部4を形成する際に2枚のシート2a、2bに圧力をかける手段であるアンビルロール210およびホーン220などの振動を抑えることが可能である。
【0092】
(4)
本実施形態の着用物品である使い捨ておむつ30は、着用者の胴回りに配置される胴回り部31を有する。胴回り部31の少なくとも一部が、本実施形態の複合伸縮部材1により形成されている。これにより、上記のように第1接合部4に沿って波線形状のひだがそれぞれ形成され、複合伸縮部材1によって独特な風合いを表現することによって、意匠性の高い使い捨ておむつ30を製造することが可能である。
【0093】
(5)
本実施形態の着用物品である使い捨ておむつ30では、胴回り部31は、着用者の腹部の前側に配置される前腹部32と、着用者の臀部側に配置される後背部33とを有している。胴回り部31は、前腹部32と後背部33とが一対の連結領域39で連結されることにより環状に形成されている。前腹部32および後背部33は、複合伸縮部材1によって形成されている。複合伸縮部材1は、長手方向Aが胴回り部31における胴回り方向Xに一致するように配置されている。連結領域39の少なくとも一部は、第1接合部4と弾性部材10との交差点4aが形成されない非形成領域になるように構成されている。
【0094】
この構成では、前腹部32と後背部33とを連結する連結領域39の少なくとも一部は、第1接合部4と弾性部材10との交差点4aが形成されない非形成領域であるので、弾性部材10はシート2a、2bに接合されない。そのため、当該連結領域39は、弾性部材10によって伸縮されずにシート2a、2bの有する柔軟性を維持することが可能である。
【0095】
(6)
本実施形態の着用物品である使い捨ておむつ30では、連結領域39は、幅方向Bに直線状に延び、連結領域39と当該連結領域39に最も近い第1接合部4との間には、幅方向Bに直線状に延びる少なくとも1本の第2接合部42が形成されている。この構成では、直線状に延びる第2接合部42によって、第1接合部4よりも連結領域39に近い位置において、弾性部材10の端部を見た目良くシート2a、2bに接合することが可能になる。その結果、使い捨ておむつ30(着用物品)(とくに連結領域39近傍の部分)における意匠性がさらに向上する。
【0096】
(7)
本実施形態の着用物品である使い捨ておむつ30では、複数の第2接合部42が並んで形成されている。この構成により、複数の第2接合部42によって弾性部材10の端部を確実に保持することが可能である。
【0097】
(8)
本実施形態の着用物品である使い捨ておむつ30は、液体を吸収する吸収性本体37を備える。吸収性本体37は、胴回り部31を構成する複合伸縮部材1に重ね合されて固定されている。複合伸縮部材1における吸収性本体37と重なり合う重合部分S以外の領域では、第1接合部4と弾性部材10との交差点4aが形成され、当該重合部分Sでは、弾性部材10が途切れている。
【0098】
この構成では、胴回り部31を構成する複合伸縮部材1における吸収性本体37と重なり合う重合部分Sでは、第1接合部4と弾性部材10との交差点4aが形成されず、しかも、弾性部材10が途切れている。そのため、当該重合部分Sは部分的に収縮しなくなるので、吸収性本体37を胴回り部31に安定して保持することが可能であり、吸収性本体37における皺の発生を抑制することが可能である。
【0099】
(9)
本実施形態の着用物品である使い捨ておむつ30では、重合部分S(本実施形態では重合部分Sを含む弱化領域32b)は、幅方向Yに直線状に延びる縁を有しており、重合部分Sと当該重合部分Sに最も近い第1接合部4との間には、幅方向Bに直線状に延びる少なくとも1本の第3接合部43が形成されている。
【0100】
この構成では、直線状に延びる第3接合部43によって、第1接合部4よりも重合部分Sに近い位置において、弾性部材10の端部を見た目良くシート2a、2bに接合することが可能になり、使い捨ておむつ30(着用物品)(とくに重合部分S近傍の部分)における意匠性がさらに向上する。なお、第3接合部43は、少なくとも1本設けられていればよく、複数設けられてもよい。
【0101】
(その他の実施形態)
以上の実施形態では、着用物品の一例としてパンツタイプの使い捨ておむつを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複合伸縮部材1と吸収性本体37とを有するものであれば、種々の形態の着用物品に適用することが可能である。したがって、本発明の着用物品は、パンツタイプの使い捨ておむつ以外にも、テープタイプやパッドタイプ等の種々の形態の使い捨ておむつに適用することが可能であり、さらには、生理用ナプキン等にも適用することが可能である。
【0102】
<実施形態のまとめ>
前記実施形態をまとめると以下のとおりである。
前記実施形態にかかる複合伸縮部材は、特定方向に伸縮可能な複合伸縮部材であって、互いに対向する2枚のシートと、前記各シートの間で前記特定方向に伸縮可能となるように当該特定方向に沿って延びる複数の弾性部材とを備え、前記各シートは、複数の第1接合部で互いに接合されており、前記各第1接合部は、それぞれ前記特定方向と交差する交差方向に沿って連続的に延びて複数の前記弾性部材と交差しており、前記各弾性部材は、前記各第1接合部との交差点においてそれぞれ前記各シートに接合され、前記各第1接合部は、凸部および凹部が交互に連続して現れるように前記交差方向に延びる波線形状を有し、隣接する2本の前記第1接合部の少なくとも一部は、前記特定方向から見たときに前記凸部同士または前記凹部同士が重なるように配置されている、ことを特徴とする。
【0103】
かかる構成では、複合伸縮部材が収縮した際に波線形状の複数の第1接合部のそれぞれの部位で当該第1接合部に沿って波線形状のひだがそれぞれ形成され、複合伸縮部材によって独特な風合いを表現することが可能になる。その結果、複合伸縮部材を用いて意匠性の高い着用物品を製造することが可能である。
【0104】
上記の複合伸縮部材において、隣接する2本の前記第1接合部は、少なくとも一部の領域において前記交差方向における両接合部の位相が一致するように配置されているのが好ましい。
【0105】
かかる構成では、複合伸縮部材が収縮した際に位相がそろった波線形状の複数のひだを形成することが可能になり、より意匠性が高い着用物品を製造することが可能である。
【0106】
上記の複合伸縮部材において、前記複数の第1接合部は、前記交差方向から見たときに隣接する2本の第1接合部の間が当該2本の第1接合部のうちの少なくともいずれか一方の第1接合部の凸部によって塞がるように設定された間隔をあけて配置されているのが好ましい。
【0107】
かかる構成により、交差方向から見たときに隣接する2本の第1接合部の間にはいずれか一方の第1接合部の凸部が介在しているので、複数の第1接合部を形成する際に2枚のシートを挟む圧力の変動が当該交差方向のいずれの位置においても変動を抑えることが可能になり、第1接合部のムラの無い第1接合部を形成することが可能である。また、第1接合部を形成する際に2枚のシートに圧力をかける手段の振動を抑えることが可能である。
【0108】
本発明の着用物品は、着用者の胴回りに配置される胴回り部を有する着用物品であって、前記胴回り部の少なくとも一部が、上記の複合伸縮部材により形成されたことを特徴とする。かかる構成により、意匠性の高い着用物品を製造することが可能である。
【0109】
上記の着用物品において、前記胴回り部は、前記着用者の腹部の前側に配置される前腹部と、前記着用者の臀部側に配置される後背部とを有し、前記前腹部と前記後背部とが一対の連結領域で連結されることにより環状に形成されており、前記前腹部および前記後背部は、前記複合伸縮部材によって形成され、前記複合伸縮部材は、前記特定方向が前記胴回り部における胴回り方向に一致するように配置され、前記連結領域の少なくとも一部は、前記第1接合部と前記弾性部材との交差点が形成されない非形成領域であるのが好ましい。
【0110】
かかる構成により、前腹部と後背部とを連結する連結領域の少なくとも一部は、第1接合部と弾性部材との交差点が形成されない非形成領域であるので、弾性部材はシートに接合されない。そのため、当該連結領域は、弾性部材によって伸縮されずにシートの有する柔軟性を維持することが可能である。
【0111】
上記の着用物品において、前記連結領域は、前記交差方向に直線状に延び、前記連結領域と当該連結領域に最も近い前記第1接合部との間には、前記交差方向に直線状に延びる少なくとも1本の第2接合部が形成されているのが好ましい。
【0112】
かかる構成では、直線状に延びる第2接合部によって、第1接合部よりも連結領域に近い位置において、弾性部材の端部を見た目良くシートに接合することが可能になり、着用物品における意匠性がさらに向上する。
【0113】
上記の着用物品において、複数の前記第2接合部が並んで形成されているのが好ましい。
【0114】
かかる構成では、複数の第2接合部によって弾性部材の端部を確実に保持することが可能である。
【0115】
上記の着用物品において、液体を吸収する吸収性本体をさらに備え、前記吸収性本体は、前記胴回り部を構成する前記複合伸縮部材に重ね合されて固定され、前記複合伸縮部材における前記吸収性本体と重なり合う重合部分以外の領域では、前記第1接合部と前記弾性部材との交差点が形成され、当該重合部分では、前記弾性部材は途切れているのが好ましい。
【0116】
かかる構成により、前記胴回り部を構成する複合伸縮部材における前記吸収性本体と重なり合う重合部分では、前記第1接合部と前記弾性部材との交差点が形成されず、しかも、前記弾性部材が途切れている。そのため、当該重合部分は部分的に収縮しなくなるので、吸収性本体を胴回り部に安定して保持することが可能であり、吸収性本体における皺の発生を抑制することが可能である。
【0117】
上記の着用物品において、前記重合部分は、前記交差方向に直線状に延びる縁を有しており、前記重合部分と当該重合部分に最も近い前記第1接合部との間には、前記交差方向に直線状に延びる少なくとも1本の第3接合部が形成されているのが好ましい。
【0118】
かかる構成では、直線状に延びる第3接合部によって、第1接合部よりも重合部分に近い位置において、弾性部材の端部を見た目良くシートに接合することが可能になり、着用物品における意匠性がさらに向上する。
【0119】
以上のように、本実施形態の複合伸縮部材およびそれを用いた着用物品によれば、複合伸縮部材の収縮時に波線形状の複数のひだを形成することにより、複合伸縮部材およびそれを用いた着用物品の意匠性を向上することができる。