(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】半導体装置、蓄電装置および半導体装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/12 20060101AFI20241029BHJP
H03H 11/44 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H03B5/12 B
H03H11/44
(21)【出願番号】P 2021530328
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 IB2020055940
(87)【国際公開番号】W WO2021005439
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019125872
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】井上 広樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】八窪 裕人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-012199(JP,A)
【文献】特開2015-047061(JP,A)
【文献】特開2010-103888(JP,A)
【文献】特開2008-103888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00- 5/28
H03H 11/00-11/54
H03K 3/00- 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、発振器と、第1の配線と、第2の配線と、第1の回路と、
二次電池と、コンパレータと、を有し、
前記発振器は、前記第1の配線、前記第2の配線および前記第1の回路のそれぞれと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウム及び亜鉛の少なくとも一を含む金属酸化物を有し、
前記発振器は、第
3のトランジスタと、第
4のトランジスタと、第
5のトランジスタと、第
6のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、
前記第
3のトランジスタのゲートおよび前記第
4のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記第
5のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、前記第1の容量素子の一方の電極と、に電気的に接続され、
前記第
4のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、前記第
6のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、前記第1の容量素子の他方の電極と、に電気的に接続され、
前記第
5のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第
6のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第
6のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第1の回路と、前記第
5のトランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第1の配線は、前記第
3のトランジスタのソースおよびドレインの他方と、前記第
4のトランジスタのソースおよびドレインの他方と、に電気的に接続され
、
前記コンパレータの非反転入力端子および反転入力端子の一方は、前記二次電池の正極と電気的に接続され、他方は、前記第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウム及び亜鉛の少なくとも一を含む金属酸化物を有し、
前記第2のトランジスタをオン状態にすることにより、第1の電位を前記非反転入力端子および前記反転入力端子の他方に与え、前記第2のトランジスタをオフ状態にすることにより、前記第1の電位を前記非反転入力端子および前記反転入力端子の他方に保持する機能を有し、
前記コンパレータは、前記正極の電位と前記第1の電位の比較結果に応じた出力信号を出力する機能を有し、
前記発振器は、前記出力信号に応じて前記第1の配線と前記第2の配線の間の電流を遮断する機能を有する蓄電装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の回路は、インバータおよびバッファの少なくとも一つと、入力端子と、を有し、
前記第
5のトランジスタのゲートは、前記入力端子に電気的に接続され、
前記第1の回路は、前記入力端子に与えられる信号の整形および増幅の少なくとも一を行う機能を有する
蓄電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第
3のトランジスタ乃至前記第
6のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウム及び亜鉛の少なくとも一を含む金属酸化物を有する
蓄電装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
第2の容量素子を有し、
前記第2の容量素子の一方の電極は、前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、
前記第2の容量素子の他方の電極は、前記第1の配線に電気的に接続される
蓄電装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
抵抗素子と、第
7のトランジスタと、第
8のトランジスタと、を有し、
前記第1の配線は前記第6のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、電気的に接続され、
前記第
7のトランジスタのソースおよびドレインの他方は前記第
8のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、電気的に接続され、
前記第
8のトランジスタのソースおよびドレインの他方は前記抵抗素子の一方の電極に、電気的に接続され、
前記抵抗素子の他方の電極は前記第2の配線に、電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第
8のトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、
前記第1の配線には低電位信号が与えられ、
前記第2の配線には高電位信号が与えられる
蓄電装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1の回路は、n個のトランジスタ(nは2以上の自然数)を有し、
前記第1の回路が有する前記n個のトランジスタは、前記第1の配線と前記第2の配線の間に直列に接続され、
前記第1の回路が有するn個のトランジスタは、隣接する2のトランジスタにおいて、一方のトランジスタのソースまたはドレインと他方のトランジスタのソースまたはドレインが電気的に接続され、
前記第
5のトランジスタのゲートは、前記第1の回路が有する前記n個のトランジスタの少なくとも一つのゲートに電気的に接続される
蓄電装置。
【請求項7】
発振器と、第1のトランジスタと、第1の回路と、第2の回路と、第1の配線と、を有し、
前記第1のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウム及び亜鉛の少なくとも一を含む金属酸化物を有し、
前記発振器は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、
前記第1の回路は、入力端子を有し、
前記第1の配線は、前記第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、前記第3のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートおよび前記第3のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第4のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、前記第1の容量素子の一方の電極と、に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第5のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、前記第1の容量素子の他方の電極と、に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第5のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第1の回路と、前記第4のトランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第2の回路は、二次電池の正極に電気的に接続され、
第1の電位を前記第2の回路に与える第1のステップと、
前記第2の回路において、前記第1の電位を保持する第2のステップと、
前記第2の回路が、前記正極の電位と前記第1の電位の比較結果に応じた第1の信号を出力する第3のステップと、
前記第2の回路が、前記第1の配線に低電位信号を与える第4のステップと、
前記第1のトランジスタをオン状態とし、前記第2のトランジスタのゲートおよび前記第3のトランジスタのゲートに第2の電位を与える第5のステップと、
前記発振器が前記第1の電位に応じた第2の信号を前記第1の回路が有する前記入力端子に与える第6のステップと、
前記第1のトランジスタをオフ状態とし、前記第2のトランジスタのゲートおよび前記第3のトランジスタのゲートに与えられた前記第2の電位が保持される第7のステップと、
前記第1の回路が前記第2の信号の整形および増幅の少なくとも一を行う第8のステップと、を有する半導体装置の動作方法。
【請求項8】
請求項
7において、
第2の配線と、抵抗素子と、第6のトランジスタと、第7のトランジスタと、を有し、
前記第1の配線は前記第6のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、前記第6のトランジスタのソースおよびドレインの他方は前記第7のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、前記第7のトランジスタのソースおよびドレインの他方は前記抵抗素子の一方の電極に、前記抵抗素子の他方の電極は前記第2の配線に、それぞれ電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、前記第7のトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、
前記第7のステップにおいて、前記第1のトランジスタをオフ状態とした後、前記第6のトランジスタおよび前記第7のトランジスタの少なくとも一つをオフ状態とし、前記第1の配線と前記第2の配線との間に流れる電流が遮断される半導体装置の動作方法。
【請求項9】
請求項
7または請求項
8において、
第2の容量素子を有し、
前記第2の容量素子の一方の電極は、前記第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、
前記第2の容量素子の他方の電極は、前記第1の配線に電気的に接続される半導体装置の動作方法。
【請求項10】
請求項
7乃至請求項
9のいずれか一において、
前記第1の回路は、インバータおよびバッファの少なくとも一方を有する半導体装置の動作方法。
【請求項11】
請求項
7乃至請求項
10のいずれか一において、
前記第2のトランジスタ乃至前記第5のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウム及び亜鉛の少なくとも一を含む金属酸化物を有する半導体装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、及び半導体装置の動作方法に関する。また、本発明の一態様は、電池制御回路、電池保護回路、蓄電装置、及び電気機器に関する。
【0002】
なお本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、表示装置、発光装置、蓄電装置、撮像装置、記憶装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
発振器は無線通信機等の様々な機器に広く用いられている。特許文献1には、発振器に用いられる負性インピーダンス回路の一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、新規な発振器、新規な増幅回路、新規なインバータ回路、新規な増幅回路、新規な電池制御回路、新規な電池保護回路、蓄電装置、半導体装置及び電気機器等を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、消費電力の低減を図ることができる、新規な構成の発振器、インバータ回路、増幅回路、電池制御回路、電池保護回路、蓄電装置、半導体装置及び電気機器等を提供することを課題の一とする。
【0006】
なお本発明の一態様の課題は、上記列挙した課題に限定されない。上記列挙した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお他の課題は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない課題である。本項目で言及していない課題は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び/又は他の課題のうち、少なくとも一つの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1のトランジスタと、発振器と、第1の配線と、第2の配線と、第1の回路と、を有し、発振器は、第1の配線、第2の配線および第1の回路のそれぞれと電気的に接続され、第1のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有し、発振器は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートは、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、第4のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第1の容量素子の一方の電極と、に電気的に接続され、第3のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、第5のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第1の容量素子の他方の電極と、に電気的に接続され、第4のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第5のトランジスタのゲートに電気的に接続され、第5のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第1の回路と、第4のトランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第1の配線は、第2のトランジスタのソースおよびドレインの他方と、第3のトランジスタのソースおよびドレインの他方と、に電気的に接続される半導体装置である。
【0008】
また、上記構成において、第1の回路はインバータおよびバッファの少なくとも一と、入力端子と、を有し、第4のトランジスタのゲートは、入力端子に電気的に接続され、第1の回路は、入力端子に与えられる信号の整形および増幅の少なくとも一を行う機能を有する半導体装置である。
【0009】
また、上記構成において、第2のトランジスタ乃至第5のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有することが好ましい。
【0010】
また、上記構成において、第2の容量素子を有し、第2の容量素子の一方の電極は、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第2の容量素子の他方の電極は、第1の配線に電気的に接続されることが好ましい。
【0011】
また、上記構成において、第2の配線を有し、第1の回路は、第1の配線と第2の配線の間に直列に接続される二以上のトランジスタを有し、第1の回路が有する二以上のトランジスタの一は、ソースおよびドレインの一方が第1の配線に電気的に接続され、ゲートが第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第1の配線には低電位信号が与えられ、第2の配線には高電位信号が与えられることが好ましい。
【0012】
また、上記構成において、抵抗素子と、第6のトランジスタと、第7のトランジスタと、を有し、第1の配線は第6のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、電気的に接続され、第6のトランジスタのソースおよびドレインの他方は第7のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、電気的に接続され、第7のトランジスタのソースおよびドレインの他方は抵抗素子の一方の電極に、電気的に接続され、抵抗素子の他方の電極は第2の配線に、電気的に接続され、第1のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第7のトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、第1の電位が保持される期間において、第6のトランジスタおよび第7のトランジスタの少なくとも一をオフ状態とし、第1の配線と第2の配線の間に流れる電流を遮断する機能を有し、第1の配線には低電位信号が与えられ、第2の配線には高電位信号が与えられることが好ましい。
【0013】
また、上記構成において、第1の回路は、n個のトランジスタ(nは2以上の自然数)を有し、第1の回路が有するn個のトランジスタは、第1の配線と第2の配線の間に直列に接続され、第1の回路が有するn個のトランジスタは、隣接する2つのトランジスタにおいて、一方のトランジスタのソースまたはドレインと他方のトランジスタのソースまたはドレインが電気的に接続され、第4のトランジスタのゲートは、第1の回路が有するn個のトランジスタの少なくとも一のゲートに電気的に接続されることが好ましい。
【0014】
また、上記構成において、第1の回路は、n個のトランジスタ(nは2以上の自然数)を有し、第1の回路が有するn個のトランジスタは、第1の配線と第2の配線の間に直列に接続され、第1の回路が有するn個のトランジスタのうち、第(m-1)のトランジスタ(mは3以上n以下の自然数)のソースまたはドレインは、第(m-2)のトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、第1の回路が有するn個のトランジスタのうち、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方は第1の配線に、他方は第2のトランジスタのソースまたはドレインに、それぞれ電気的に接続され、第1の回路が有するn個のトランジスタのうち、第nのトランジスタのソースおよびドレインの一方は第2の配線に、他方は第(n-1)のトランジスタのソースまたはドレインに、それぞれ電気的に接続され、第4のトランジスタのゲートは、第1の回路が有するn個のトランジスタの少なくとも一つのゲートに電気的に接続されることが好ましい。
【0015】
または、本発明の一態様は、上記に記載の半導体装置と、コンパレータと、第8のトランジスタと、を有し、コンパレータの非反転入力端子および反転入力端子の一方は、二次電池の正極と電気的に接続され、他方は、第8のトランジスタのソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、第8のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有し、第8のトランジスタをオン状態にすることにより、第1の電位を非反転入力端子および反転入力端子の他方に与え、第8のトランジスタをオフ状態にすることにより、第1の電位を保持する機能を有し、コンパレータは、正極の電位と第2の電位の比較結果に応じた出力信号を出力する機能を有し、発振器は、出力信号に応じて第1の配線と第2の配線の間の電流を遮断する機能を有する蓄電装置である。
【0016】
または、本発明の一態様は、発振器と、第1のトランジスタと、第1の回路と、を有し、第1のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有し、発振器は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、第1の回路は、入力端子を有し、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートは、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、第4のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第1の容量素子の一方の電極と、に電気的に接続され、第3のトランジスタのソースおよびドレインの一方は、第5のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第1の容量素子の他方の電極と、に電気的に接続され、第4のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第5のトランジスタのゲートに電気的に接続され、第5のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第1の回路が有する入力端子と、第4のトランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第1のトランジスタをオン状態とし、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートに第1の電位を与える第1のステップと、発振器が第1の電位に応じた第1の信号を、第1の回路が有する入力端子に与える第2のステップと、第1のトランジスタをオフ状態とし、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートに与えられた第1の電位が保持される第3のステップと、第1の回路が第1の信号の整形および増幅の少なくとも一を行う第4のステップと、を有する半導体装置の動作方法である。
【0017】
また、上記構成において、第1の配線と、第2の配線と、抵抗素子と、第6のトランジスタと、第7のトランジスタと、を有し、第1の配線は第6のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、第6のトランジスタのソースおよびドレインの他方は第7のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、第7のトランジスタのソースおよびドレインの他方は抵抗素子の一方の電極に、抵抗素子の他方の電極は第2の配線に、それぞれ電気的に接続され、第1のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第7のトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、第1のステップにおいて、第1の配線には低電位信号が、第2の配線には高電位信号が、それぞれ与えられ、第3のステップにおいて、第1のトランジスタをオフ状態とした後、第6のトランジスタおよび第7のトランジスタの少なくとも一つをオフ状態とし、第1の配線と第2の配線との間に流れる電流が遮断されることが好ましい。
【0018】
また、上記構成において、第2の容量素子を有し、第2の容量素子の一方の電極は、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第2の容量素子の他方の電極は、第1の配線に電気的に接続されることが好ましい。
【0019】
また、上記構成において、第1の回路は、インバータおよびバッファの少なくとも一方を有することが好ましい。
【0020】
また、上記構成において、第2のトランジスタ乃至第5のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有することが好ましい。
【0021】
または、本発明の一態様は、発振器と、第1のトランジスタと、第1の回路と、第2の回路と、第1の配線と、を有し、第1のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有し、発振器は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第1の容量素子と、を有し、第1の回路は、入力端子を有し、第1の配線は、第2のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第3のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、に電気的に接続され、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートは、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第2のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第4のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第1の容量素子の一方の電極と、に電気的に接続され、第3のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第5のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、第1の容量素子の他方の電極と、に電気的に接続され、第4のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第5のトランジスタのゲートに電気的に接続され、第5のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第1の回路と、第4のトランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第2の回路は、二次電池の正極と電気的に接続され、第1の電位を第2の回路に与える第1のステップと、第1の電位を保持する第2のステップと、第2の回路が、第2の信号を出力する第3のステップと、第2の回路が、第1の配線に低電位信号を与える第4のステップと、第1のトランジスタをオン状態とし、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートに第2の電位を与える第5のステップと、発振器が第2の電位に応じた第2の信号を第1の回路が有する入力端子に与える第6のステップと、第1のトランジスタをオフ状態とし、第2のトランジスタのゲートおよび第3のトランジスタのゲートに与えられた第2の電位が保持される第7のステップと、第1の回路が第2の信号の整形および増幅の少なくとも一を行う第8のステップと、を有する半導体装置の動作方法である。
【0022】
また、上記構成において、第2の配線と、抵抗素子と、第6のトランジスタと、第7のトランジスタと、を有し、第1の配線は第6のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、第6のトランジスタのソースおよびドレインの他方は第7のトランジスタのソースおよびドレインの一方に、第7のトランジスタのソースおよびドレインの他方は抵抗素子の一方の電極に、抵抗素子の他方の電極は第2の配線に、それぞれ電気的に接続され、第1のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第7のトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、第7のステップにおいて、第1のトランジスタをオフ状態とした後、第6のトランジスタおよび第7のトランジスタの少なくとも一つをオフ状態とし、第1の配線と第2の配線との間に流れる電流が遮断されることが好ましい。
【0023】
また、上記構成において、第2の容量素子を有し、第2の容量素子の一方の電極は、第1のトランジスタのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、第2の容量素子の他方の電極は、第1の配線に電気的に接続されることが好ましい。
【0024】
また、上記構成において、第1の回路は、インバータおよびバッファの少なくとも一方を有することが好ましい。
【0025】
また、上記構成において、第2のトランジスタ乃至第5のトランジスタは、チャネル形成領域にインジウムまたは亜鉛を含む金属酸化物を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様により、新規な発振器、新規な増幅回路、新規なインバータ回路、新規な増幅回路、新規な電池制御回路、新規な電池保護回路、蓄電装置、半導体装置及び電気機器等を提供することができる。また、本発明の一態様により、消費電力の低減を図ることができる、新規な構成の発振器、インバータ回路、増幅回路、電池制御回路、電池保護回路、蓄電装置、半導体装置及び電気機器等を提供することができる。
【0027】
なお本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び/又は他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。従って本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は半導体装置の構成例を示す回路図である。
図2は半導体装置の構成例を示す回路図である。
図3Aは回路の構成例を示す図である。
図3Bは回路の構成例を示す図である。
図3Cは回路の構成例を示す図である。
図3Dは回路の構成例を示す図である。
図4Aは回路の構成例を示す図である。
図4Bは回路の構成例を示す図である。
図4Cは回路の構成例を示す図である。
図4Dは回路の構成例を示す図である。
図4Eは回路の構成例を示す図である。
図5は半導体装置の動作例を説明するタイミングチャートである。
図6Aは半導体装置の構成例を示す回路図である。
図6Bは半導体装置の構成例を示す回路図である。
図7Aは増幅回路の構成例を示す回路図である。
図7Bは増幅回路の構成例を示す回路図である。
図8Aは二次電池および半導体装置の一例を示す回路図である。
図8Bは半導体装置の動作の一例を説明する図である。
図9は半導体装置の構成例を示す断面図である。
図10Aはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図10Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図10Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図11Aはトランジスタの構造例を示す上面図である。
図11Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図11Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図12Aはトランジスタの構造例を示す上面図である。
図12Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図12Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図13Aはトランジスタの構造例を示す上面図である。
図13Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図13Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図14Aはトランジスタの構造例を示す上面図である。
図14Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図14Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図15Aはトランジスタの構造例を示す上面図である。
図15Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図15Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図16Aはトランジスタの構造例を示す上面図である。
図16Bはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図16Cはトランジスタの構造例を示す断面図である。
図17は半導体装置の構成例を示す断面図である。
図18は半導体装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
なお本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0031】
なお図面において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0032】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために図に反映しないことがある。
【0033】
また、上面図(「平面図」ともいう)や斜視図などにおいて、図面をわかりやすくするために、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。
【0034】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0035】
また、本明細書等において「端子」は例えば、配線、あるいは配線に接続される電極を指す場合がある。また、本明細書等において「配線」の一部を「端子」と呼ぶ場合がある。
【0036】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含む場合を除外しない。
【0037】
また、ソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0038】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、直接接続している場合と、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。よって、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0039】
また、本明細書などにおいて、「平行」とは、例えば、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」および「直交」とは、例えば、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0040】
なお、本明細書などにおいて、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0041】
また、本明細書において、レジストマスクを形成した後にエッチング処理を行う場合は、特段の説明がない限り、レジストマスクは、エッチング処理終了後に除去するものとする。
【0042】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、「電圧」と「電位」は互いに言い換えることが可能な場合が多い。本明細書などでは、特段の明示が無いかぎり、「電圧」と「電位」を言い換えることができるものとする。
【0043】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「絶縁体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「絶縁体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「絶縁体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0044】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「導電体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「導電体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「導電体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0045】
なお、本明細書等において、トランジスタの「オン状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に短絡しているとみなせる状態(「導通状態」ともいう)をいう。また、トランジスタの「オフ状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に遮断しているとみなせる状態(「非導通状態」ともいう)をいう。
【0046】
また、本明細書等において、「オン電流」とは、トランジスタがオン状態の時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。また、「オフ電流」とは、トランジスタがオフ状態である時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。
【0047】
また、本明細書等において、高電位信号とは、低電位信号よりも高い電位の電源電位を示す。また、低電位信号とは、高電位信号よりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位を高電位信号または低電位信号として用いることもできる。例えば高電位信号が接地電位の場合には、低電位信号は接地電位より低い電位であり、低電位信号が接地電位の場合には、高電位信号は接地電位より高い電位である。また、高電位信号を高電源電位と呼ぶ場合がある。また、低電位信号を低電源電位と呼ぶ場合がある。
【0048】
また、本明細書等において、ゲートとは、ゲート電極およびゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0049】
また、本明細書等において、ソースとは、ソース領域、ソース電極、およびソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0050】
また、本明細書等において、ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、及びドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0051】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の例を説明する。
【0052】
<半導体装置の例>
図1に示す半導体装置21は、発振器30と、回路31と、回路32と、配線VD1と、配線VS1と、を有する。配線VD1および配線VS1はそれぞれ、発振器30、回路31および回路32に電気的に接続される。例えば配線VD1には高電位信号が与えられ、配線VS1には低電位信号が与えられる。
【0053】
発振器30は、トランジスタ42、トランジスタ43、トランジスタ44、トランジスタ45、容量素子51、端子OU1および端子OU2を有する。回路32が有する端子VBI1は、発振器30等に電気的に接続される。端子VBI1は信号Sv1を発振器30等に与える機能を有する。
【0054】
トランジスタ42のソースおよびドレインの一方は、トランジスタ44のソースおよびドレインの一方と、容量素子51の一方の電極と、ノードND1と、に電気的に接続される。またトランジスタ43のソースおよびドレインの一方は、トランジスタ45のソースおよびドレインの一方と、容量素子51の他方の電極と、ノードND2と、に電気的に接続される。またトランジスタ44のソースおよびドレインの他方は、トランジスタ45のゲートと、端子OU2と、ノードND3と、に電気的に接続される。またトランジスタ45のソースおよびドレインの他方は、トランジスタ44のゲートと、端子OU1と、ノードND4と、に電気的に接続される。トランジスタ42のソースおよびドレインの他方と、トランジスタ43のソースおよびドレインの他方と、は配線VS1に電気的に接続される。
【0055】
端子OU1は、回路31が有する端子IN2に電気的に接続される。
【0056】
また発振器30は、トランジスタ54およびトランジスタ55を有することが好ましい。
図1において、トランジスタ54のソースおよびドレインの一方は、トランジスタ45のゲートと電気的に接続される。またトランジスタ54のソースおよびドレインの他方と、ゲートと、は配線VD1に電気的に接続される。またトランジスタ55のソースおよびドレインの一方は、トランジスタ44のゲートと電気的に接続される。またトランジスタ55のソースおよびドレインの他方と、ゲートと、は配線VD1に電気的に接続される。
【0057】
また、トランジスタ54およびトランジスタ55に替えて、抵抗素子を用いてもよい。あるいは、直列に接続され、互いのゲートが電気的に接続された複数のトランジスタを用いてもよい。
【0058】
発振器30は、例えば、容量素子51の容量値、トランジスタ44およびトランジスタ45のしきい値、トランジスタ44およびトランジスタ45に流れる電流、等に応じて決められる周波数の信号を、端子OU1等に出力する機能を有する。
【0059】
発振器30はSource Coupled Voltage Controlled Oscillatorと呼ばれる場合がある。
【0060】
トランジスタ42およびトランジスタ43のゲートは、端子VBI1に電気的に接続される。トランジスタ42およびトランジスタ43のドレイン電流の大きさは、端子VBI1より与えられる信号Sv1により制御することができる。よって、発振器30において、トランジスタ44およびトランジスタ44を流れる電流の大きさは、信号Sv1により制御することができる。
【0061】
また、信号Sv1を変更することにより、発振器30の周波数を調整することができる。
【0062】
回路31はインバータ53を有する。なお回路31はインバータに替えてバッファ回路を有してもよい。回路31は、端子IN2に与えられる信号の整形、増幅、等を行う機能を有することが好ましい。
【0063】
図1に示す回路31は、インバータ53と、トランジスタ61と、端子IN2と、端子OU3と、を有する。インバータ53は端子IN2から入力される信号を、端子OU3に出力する機能を有する。
【0064】
インバータ53には配線VD1から高電位信号が与えられる。トランジスタ61のソースおよびドレインの一方はインバータ53に、他方は配線VS1に、それぞれ電気的に接続される。トランジスタ61がオン状態の場合には、配線VS1からトランジスタ61を介してインバータ53に低電位信号が与えられる。
【0065】
トランジスタ61のゲートは、端子VBI1に電気的に接続される。トランジスタ61のドレイン電流の大きさは、端子VBI1より与えられる信号Sv1により制御することができる。よって、回路31において、インバータ53を経由して配線VD1と配線VS1の間を流れる電流は、信号Sv1により制御することができる。よって回路31に必要以上の電力を流さず、回路31の消費電力を低減することができる。
【0066】
図1に示す回路32は、トランジスタ41と、端子VBI1と、端子SH1と、端子EN1と、を有する。トランジスタ41のソースおよびドレインの一方は、端子VBI1に電気的に接続される。トランジスタ41のゲートには、端子SH1が電気的に接続される。また、回路32は容量素子52を有することが好ましい。
図1において、容量素子52の一方の電極はトランジスタ41の端子SH1に電気的に接続され、他方は配線VS1に電気的に接続される。
【0067】
回路32の詳細については後述する。
【0068】
半導体装置21が有するトランジスタはバックゲートを有してもよい。
図2に示す半導体装置21において、トランジスタ42、トランジスタ43、トランジスタ44、トランジスタ45、トランジスタ54、トランジスタ55およびトランジスタ61のバックゲートは、それぞれのトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続され、トランジスタ41のバックゲートは、配線VS1に電気的に接続される。
【0069】
図2に示す半導体装置21においては、トランジスタ42、トランジスタ43、トランジスタ44、トランジスタ45、トランジスタ54、トランジスタ55およびトランジスタ61のバックゲートがソースまたはドレインに電気的に接続される例を示すが、トランジスタのバックゲートに所望の電位を与え、該電位を固定してもよい。所望の電位は例えば、配線VS1の電位でもよい。あるいはバックゲートに与えられる電位は、いくつかの電位から選ばれる1つの電位でもよい。あるいは、時間と共に変化する値でもよい。また、バックゲートが、ゲート絶縁体および半導体層を挟んで対となるゲートに電気的に接続されてもよい。
【0070】
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図3Dには、回路32の具体的な構成の例を示す。回路32は、端子VBI1から所望の電位を出力し、保持する機能を有する。
【0071】
図3Aに示す回路32は、トランジスタ41と、トランジスタ46aと、トランジスタ47aと、容量素子52と、抵抗素子RL1と、を有する。
図3Aにおいて、トランジスタ41のソースおよびドレインの一方は、端子VBI1と、容量素子52の一方の電極と、に電気的に接続される。容量素子52の他方の電極は、配線VS1に電気的に接続される。トランジスタ41のソースおよびドレインの他方は、抵抗素子RL1の一方の端子と、トランジスタ47aのソースおよびドレインの一方と、トランジスタ47aのゲートと、に電気的に接続される。トランジスタ41のゲートには、端子SH1が電気的に接続される。抵抗素子RL1の他方の端子は、配線VD1に電気的に接続される。トランジスタ47aのソースおよびドレインの他方は、トランジスタ46aのソースおよびドレインの一方に電気的に接続され、トランジスタ46aのソースおよびドレインの他方は、配線VS1に電気的に接続される。トランジスタ46aのゲートには端子EN1が電気的に接続される。
【0072】
抵抗素子として、トランジスタを用いてもよい。また、抵抗素子は電流源であってもよい。例えば、抵抗素子に替えて、電流生成回路を接続し、該回路からの電流を与えてもよい。
【0073】
図3Bに示す回路32は、トランジスタ41と、トランジスタ46aと、トランジスタ47aと、容量素子52と、抵抗素子RL1と、を有する。
図3Bに示す回路32は、トランジスタ41のソースおよびドレインの一方ではなく、端子VBI1が、トランジスタ47aのゲートに電気的に接続される点が
図3Aと異なる。
【0074】
図3Cに示す回路32は、トランジスタ41と、トランジスタ46bと、トランジスタ47bと、容量素子52と、抵抗素子RL1と、を有する。
図3Cにおいて、トランジスタ41のソースおよびドレインの一方は、端子VBI1と、容量素子52の一方の電極と、に電気的に接続される。容量素子52の他方の電極は、配線VS1に電気的に接続される。トランジスタ41のソースおよびドレインの他方は、トランジスタ47bのソースおよびドレインの一方と、トランジスタ46bのゲートと、トランジスタ46bのソースおよびドレインの一方と、に電気的に接続される。トランジスタ41のゲートには、端子SH1が電気的に接続される。トランジスタ46bのソースおよびドレインの他方は、配線VS1に電気的に接続される。トランジスタ47bのソースおよびドレインの他方は、抵抗素子RL1の一方の端子に接続される。抵抗素子RL1の他方の端子は配線VD1に電気的に接続される。トランジスタ47bのゲートには端子EN1が電気的に接続される。
【0075】
図3Dに示す回路32は、トランジスタ41と、トランジスタ46bと、トランジスタ47bと、容量素子52と、抵抗素子RL1と、を有する。
図3Dに示す回路32は、トランジスタ41のソースおよびドレインの一方ではなく、端子VBI1が、トランジスタ46bのゲートに電気的に接続される点が
図3Cと異なる。なお、
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図3D等においては、トランジスタ41のバックゲートが配線VS1に電気的に接続される例を示すが、トランジスタ41のバックゲートは配線VS1とは異なる電位を出力する端子に電気的に接続されてもよい。あるいは、トランジスタ41のバックゲートはトランジスタ41のソースおよびドレインの一方に電気的に接続されてもよい。あるいは、トランジスタのバックゲートは、ゲート絶縁体および半導体層を挟んで対となるゲートに電気的に接続されてもよい。
【0076】
トランジスタ41として、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(以下、OSトランジスタという)を用いることにより、そのオフ電流を極めて低くすることができる。トランジスタ41をオン状態として端子VBI1に好適な電位を与えた後、トランジスタ41をオフ状態とすることにより浮遊状態とし、与えた電位を保持することにより、ノードND2に電位をプログラミングすることができる。
【0077】
OSトランジスタについて、詳細は後述する。
【0078】
端子SH1にトランジスタ41がオン状態となる電位を与えてトランジスタ41をオン状態とし、端子VBI1に信号Sv1として所望の電位を与える。その後、端子SH1にトランジスタがオフ状態となる電位を与えてトランジスタ41をオフ状態とし、端子VBI1の電位が保持される。トランジスタ41としてOSトランジスタを用いることにより、端子VBI1から与えられる電位を長時間、好ましくは1分以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは10時間以上保持することができる。
【0079】
その後、端子EN1にトランジスタ46aまたはトランジスタ46bがオフ状態となる電位を与え、回路32において抵抗素子RL1等を経由して配線VD1と配線VS1の間を流れる電流を遮断することができる。該電流を遮断することにより、回路32の消費電力を大幅に低減することができる。
【0080】
トランジスタ46aおよびトランジスタ46bの少なくとも一方にOSトランジスタを用いることが好ましい。より具体的には、たとえば、トランジスタ46aおよびトランジスタ46bのうち、端子EN1がゲートに電気的に接続されるトランジスタとして、OSトランジスタを用いることにより、回路32において配線VD1と配線VS1の間を流れる電流を遮断する場合において、リーク電流を極めて低くすることができる。
【0081】
また、端子EN1にトランジスタ46aまたはトランジスタ46bがオフ状態となる電位を与えた後、回路32に信号、電源、電流、等を与える各回路、例えば制御回路、電源回路、電流生成回路、電圧生成回路、電流源、定電流源、等をオフ状態としてもよい。これらの回路をオフ状態とすることにより消費電力を低減することができる。
【0082】
また、
図1に示す半導体装置が有する発振器30、回路31および回路32が有するトランジスタを全て、OSトランジスタとしてもよい。
図1に示す半導体装置が有する発振器30、回路31および回路32が有するトランジスタを全て、単極性、例えばnチャネル型トランジスタで構成することができる。例えば、全てのトランジスタをnチャネル型のOSトランジスタで構成することができる。
【0083】
チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタという)を有する層の上に積層して、OSトランジスタを設けることができる。発振器30、回路31および回路32が有するトランジスタを全て、OSトランジスタとすることにより、Siトランジスタを用いて構成された回路の上に、発振器30、回路31および回路32を積層して配置し、回路面積の縮小を行うことができる。
【0084】
また、OSトランジスタに用いられる酸化物半導体は、スパッタリング法などの薄膜法を用いて形成することができる。よって、ガラス基板をはじめ、様々な基板上に簡便に形成することができ、半導体装置を低コストで作製できる場合がある。
【0085】
図4Aには、回路31の構成例を示す。
図4Aに示す回路31は、トランジスタ61と、トランジスタ62と、回路63と、を有する。トランジスタ61のゲートは、端子VBI1に電気的に接続される。トランジスタ61のソースおよびドレインの一方はトランジスタ62のソースおよびドレインの一方に、他方は配線VS1に、それぞれ電気的に接続される。トランジスタ62のソースおよびドレインの他方は回路63と、端子OU3と、に電気的に接続される。トランジスタ62のゲートには端子IN2が電気的に接続される。
【0086】
図4Aにおいて、トランジスタ61およびトランジスタ62はバックゲートを有し、それぞれのトランジスタのバックゲートはそれぞれのトランジスタのソースまたはドレインに電気的に接続される。
【0087】
図4Bには、回路31の構成例を示す。
図4Bに示す回路31は、
図4Aに示す回路31の構成に加えて、トランジスタ64、トランジスタ65および容量素子66を有する。トランジスタ61のゲートは、端子VBI1に電気的に接続される。トランジスタ61のソースおよびドレインの一方はトランジスタ62のソースおよびドレインの一方に、他方は配線VS1に、それぞれ電気的に接続される。トランジスタ62のソースおよびドレインの他方は、回路63と、容量素子66の一方の電極と、トランジスタ65のゲートと、に電気的に接続される。容量素子66の他方の電極は、トランジスタ64のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ65のソースおよびドレインの一方と、端子OU3と、に電気的に接続される。トランジスタ62のゲートおよびトランジスタ64のゲートには、端子IN2が電気的に接続される。トランジスタ64のソースおよびドレインの他方は、配線VS1に電気的に接続され、トランジスタ65のソースおよびドレインの他方は、配線VD1に電気的に接続される。
【0088】
図4Bにおいて、トランジスタ64およびトランジスタ65はそれぞれバックゲートを有する。トランジスタ64のバックゲートは、例えば、配線VS1に電気的に接続される。またトランジスタ65のバックゲートは、例えば、端子OU3に電気的に接続される。
【0089】
【0090】
図4Cに示す回路63はトランジスタ63aを有し、トランジスタ63aのソースおよびドレインの一方は、トランジスタ63aのゲートおよび配線VD1に電気的に接続され、他方は、トランジスタ62のソースおよびドレインの他方に電気的に接続される。
【0091】
図4Dに示す回路63はトランジスタ63aおよびトランジスタ63bを有し、配線VD1は、トランジスタ63aのソースおよびドレインの一方と、ゲートと、に電気的に接続され、トランジスタ63aのソースおよびドレインの他方は、トランジスタ63bのソースおよびドレインの一方と、ゲートと、に電気的に接続され、トランジスタ63bのソースおよびドレインの他方は、トランジスタ62のソースおよびドレインの他方に電気的に接続される。
【0092】
また、
図4Eに示すように、回路63は、n個のトランジスタ(nは2以上の整数)を有してもよい。配線VD1は、第1のトランジスタ(
図4Eにおいてはトランジスタ63a)のソースおよびドレインの一方と、ゲートと、に電気的に接続され、第1のトランジスタのソースおよびドレインの他方は、第2のトランジスタ(
図4Eにおいてはトランジスタ63b)のソースおよびドレインの一方と、ゲートと、に電気的に接続され、以下、順に、トランジスタのソースおよびドレインの他方が、次段のトランジスタのソースおよびドレインの一方と、ゲートと、に電気的に接続される。第nのトランジスタ(
図4Eにおいてはトランジスタ63n)のソースおよびドレインの他方は、トランジスタ62のソースおよびドレインの他方に電気的に接続される。
【0093】
なお、
図4C、
図4Dおよび
図4Eに示すトランジスタはバックゲートを有し、それぞれのバックゲートはそれぞれのトランジスタのソースまたはドレインと電気的に接続される。
【0094】
図5は発振器30の動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【0095】
ここで、トランジスタ54、トランジスタ55、トランジスタ44およびトランジスタ45のしきい値を電位Vtとする。これらのトランジスタのしきい値はトランジスタ毎にばらつく場合もあるが、ここでは説明を簡単にするため、これらのトランジスタのしきい値が同じ値であるとする。
【0096】
発振器30において、ある時刻において、トランジスタ44およびトランジスタ45の一方がオン状態、他方がオフ状態である場合について、その後の発振器30の動作の一例を考える。ここでは例として時刻t0においてトランジスタ44がオン状態、トランジスタ45がオフ状態である場合を考える。
【0097】
時刻t0において、トランジスタ45がオフ状態であり、ノードND4の電位は例えば、電位VD1からトランジスタ55のしきい値分低い電位、すなわち電位(VD1-Vt)である。
【0098】
時刻t0において、トランジスタ44はオン状態であり、ノードND1とノードND3の電位はおおよそ等しい。時刻t0におけるノードND1およびノードND3の電位を電位V0とする。電位V0は電位(VD1-Vt)よりも少なくともトランジスタ44のしきい値分低い値、例えば電位(VD1-2Vt)である。
【0099】
トランジスタ45はオフ状態であり、容量素子51の電荷のトランジスタ43等へのリークにより、ノードND2の電位は時間の経過とともに徐々に低下する。
【0100】
時刻t1において、ノードND2の電位が、ノードND3の電位からトランジスタ45のしきい値分低い電位、すなわち電位(V0-Vt)を下回ると、トランジスタ45がオン状態となる。
【0101】
トランジスタ45がオン状態となり、導通状態となると、ノードND4の電位が低下し、トランジスタ44において、ソースに対するゲートの電位(Vgs)が電位Vt以下となり(Vgs≦Vt)、トランジスタ44はオフ状態となる。
【0102】
トランジスタ44がオフ状態となると、ノードND3の電位が例えば、電位VD1からトランジスタ54のしきい値分低い電位、すなわち電位(VD1-Vt)まで上昇する。ノードND1の電位もノードND3とともに上昇する。その後、容量素子51のリークにより、ノードND1の電位が時間の経過とともに徐々に低下する。
【0103】
時刻t2において、ノードND1の電位が、ノードND4の電位からトランジスタ44のしきい値分低い電位を下回ると、トランジスタ44がオン状態となる。トランジスタ44がオン状態となると、ノードND1およびノードND3の電位は電位V0となる。トランジスタ45はオフ状態となり、ノードND4の電位は電位(VD1-Vt)まで上昇する。ノードND2の電位もノードND4とともに上昇するが、時間と共に低下する。
【0104】
ノードND4の電位は時刻t0から時刻t1の間には電位VD1-Vtとなり、時刻t1から時刻t2の間は電位V0となり、以後、電位VD1-Vtと、電位V0と、を交互に繰り返し、発振器として機能する。また、時刻t0から時刻t1までの時間の長さおよび時刻t1から時刻t2までの時間の長さは、容量素子51の容量値の大きさ、トランジスタ42およびトランジスタ43を流れる電流の大きさ、トランジスタ54、トランジスタ55、トランジスタ44およびトランジスタ45のしきい値、等で決められる。
【0105】
図6Aには、半導体装置21の構成例を示す。
図6Aに示す半導体装置21は
図1等に示す構成要素に加えて、増幅回路36を有する。増幅回路36には発振器30の端子OU1および端子OU2から出力されるそれぞれの信号が与えられる。増幅回路36は、端子OU1および端子OU2から与えられる信号を基に、増幅信号を生成し、回路31の端子IN2に与える機能を有する。
【0106】
また、
図1、
図2、
図6A等に示す半導体装置21の構成において、出力部において回路31を2段重ねて用いてもよい。
図6Bは、
図6Aにおいて、出力部の回路31を2段重ねて用いる構成とする例である。
【0107】
【0108】
図7Aに示す増幅回路36は、トランジスタ71、トランジスタ72、トランジスタ73、回路63xおよび回路63yを有する。回路63xおよび回路63yとして、
図4C、
図4Dおよび
図4Eに示す回路63等を用いることができる。
【0109】
図7Aにおいて、回路63xは、配線VD1と、トランジスタ72のソースおよびドレインの一方と、の間に配置され、それぞれと電気的に接続される。回路63yは、配線VD1と、トランジスタ73のソースおよびドレインの一方と、の間に配置され、それぞれと電気的に接続される。トランジスタ73のソースおよびドレインの一方は、端子IN2に電気的に接続される。トランジスタ72のゲートは端子OU1に電気的に接続される。トランジスタ73のゲートは端子OU2に電気的に接続される。トランジスタ72のバックゲートと、トランジスタ72のソースおよびドレインの他方と、トランジスタ73のバックゲートと、トランジスタ73のソースおよびドレインの他方と、はトランジスタ71のソースおよびドレインの一方に電気的に接続される。トランジスタ71のソースおよびドレインの他方と、バックゲートと、は配線VS1に電気的に接続される。トランジスタ71のゲートは、回路32の端子VBI1に電気的に接続される。
【0110】
図7Aに示す増幅回路36は、端子OU1に与えられる信号と端子OU2に与えられる信号の差分を増幅する機能を有する。
【0111】
図7Bに示す増幅回路36は、
図7Aに示す構成要素に加えて、トランジスタ74、トランジスタ75、トランジスタ76およびトランジスタ77を有する。
【0112】
図7Aでは、トランジスタ73のソースおよびドレインの一方は、端子IN2に電気的に接続されるが、
図7Bにおいては、トランジスタ77のゲートに電気的に接続される。また
図7Bにおいて、トランジスタ72のソースおよびドレインの一方と、回路63xと、はトランジスタ76のゲートに電気的に接続される。
【0113】
トランジスタ76のソースおよびドレインの一方は、配線VD1に電気的に接続され、他方はトランジスタ74のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ74のゲートと、トランジスタ75のゲートと、に電気的に接続される。トランジスタ74のソースおよびドレインの他方は、トランジスタ74のバックゲートと、配線VS1と、に電気的に接続される。
【0114】
トランジスタ77のソースおよびドレインの一方は、配線VD1に、他方はトランジスタ75のソースおよびドレインの一方と、端子IN2と、に電気的に接続される。トランジスタ75のソースおよびドレインの他方は、トランジスタ75のバックゲートと、配線VS1と、に電気的に接続される。
【0115】
半導体装置21が上記に述べた増幅回路36および回路31を有することにより、発振器30により生成される所望の周波数の信号の増幅および整形を行うことができ、好ましい出力信号を得ることができる。
【0116】
図8Aには、二次電池に本発明の一態様の半導体装置を適用する例を示す。本発明の一態様の半導体装置を二次電池に接続し、蓄電装置を構成することができる。
【0117】
図8Aには、二次電池121と、二次電池121に電気的に接続される半導体装置21と、を示す。
図8Aに示す半導体装置21は、回路33と、トランジスタ49と、回路32と、発振器30と、回路31と、を有する。
【0118】
回路33は、コンパレータ56と、トランジスタ48と、容量素子57と、を有する。コンパレータ56は、基準電位と、二次電池121の正極電位と、を比較し、比較結果に対応する信号を出力する機能を有する。
図8Aに示す例では、二次電池121の正極がコンパレータの非反転入力端子に電気的に接続され、コンパレータ56の反転入力端子には基準電位が与えられる。なお、
図8Aに示す例では、基準電位が反転入力端子に、基準電位との比較を行う電位が非反転入力端子に、それぞれ与えられるが、基準電位を非反転入力端子に、比較を行う電位を反転入力端子に、それぞれ与えてもよい。
【0119】
コンパレータ56に与えられる基準電位は、端子VT1からトランジスタ48を介して与えられる。トランジスタ48としてOSトランジスタを用いることが好ましい。例えば端子SH2からトランジスタ48のゲートに高電位信号を与えてトランジスタ48をオン状態としてコンパレータ56の反転入力端子に好適な電位を与えた後、端子SH2からトランジスタ48のゲートに低電位信号を与えてトランジスタ48をオフ状態とすることにより浮遊状態とし、与えた電位を保持することにより、コンパレータ56の反転入力端子に電位をプログラミングすることができる。
【0120】
コンパレータ56の出力端子(端子OU4とよぶ)は、トランジスタ49のゲートに電気的に接続される。トランジスタ49のソースおよびドレインの一方(
図8Aでは端子SG1と呼ぶ)は、配線VS1に電気的に接続され、他方は回路32、発振器30および回路31に電気的に接続される。トランジスタ49は、それぞれの回路と、配線VS1と、が電気的に接続される状態と、切断される状態と、を制御する機能を有する。トランジスタ49は、例えば、
図1等に示す発振器30のトランジスタ42およびトランジスタ43、回路31のトランジスタ61、
図3A等に示す回路32のトランジスタ46a、
図3C等に示す回路32のトランジスタ46b、等に電気的に接続される。
【0121】
回路33に二次電池121の制御、あるいは保護を行うための基準電位を与えることにより、半導体装置21を、二次電池121の制御、あるいは保護を行う回路として動作させることができる。以下に、回路33に基準電位として過充電検知のための電位を与える例について、
図8Bに示すタイミングチャートを用いて説明する。回路32、発振器30および回路31に流れる電流の合計を電流ID1とする。
【0122】
時刻t11において、端子OU4の電位は低電位信号である。端子SG1は浮遊状態である。
【0123】
時刻t12において、二次電池121の正極電位が基準電位を超えると、すなわち二次電池121が過充電状態と判断されると、コンパレータ56は端子OU4から高電位信号を出力する。コンパレータ56から高電位信号がトランジスタ49のゲートに与えられ、トランジスタ49がオン状態となる。
【0124】
トランジスタ49がオン状態となると、配線VS1と、回路32、発振器30および回路31が導通状態となり、端子SG1には配線VS1の電位(
図8Bに示す例では低電位信号)が与えられ、各回路に端子SG1を介して配線VS1からの電位が与えられ、回路32、発振器30および回路31と配線VS1が導通状態となる。
【0125】
時刻t13に、端子EN1に信号が与えられ、回路32においてトランジスタ46aまたはトランジスタ47aがオン状態となる。また、端子SH1に信号が与えられ、トランジスタ41がオン状態となり、端子VBI1から電位VBI1が発振器30に与えられると、端子OU3から所望の周波数の信号が出力される。
【0126】
時刻t14において、端子SH1に信号が与えられ、トランジスタ41がオフ状態となる。端子VBI1から出力される電位は一定の値に保持される。
【0127】
時刻t15に端子EN1に信号が与えられ、トランジスタ46aまたはトランジスタ47aのゲートにオフ状態となる電位が与えられる。回路32に流れる電流が遮断され、電流ID1が低くなる。
【0128】
時刻t16に端子OU4から低電位信号が出力され、回路32、発振器30および回路31に流れる電流が遮断される。端子SG1は浮遊状態となる。
【0129】
端子OU3からの信号を例えば、二次電池の充電を制御する回路に与えて充電を停止する、あるいは充電条件を変更することにより、二次電池の保護、あるいは制御を行うことができる。本発明の一態様の半導体装置を用いて二次電池を制御することにより、本発明の一態様の蓄電装置を構成することができる。本発明の一態様の蓄電装置は、少ない消費電流で二次電池の安全性を高めることができ、また、二次電池の寿命を高めることができる。また、安全性の高い状態を保ちながら、二次電池の容量を向上させることができる場合がある。
【0130】
トランジスタ49がオフ状態のときには配線VS1と回路32、発振器30および回路31の電流は遮断されるため、各回路において消費電力を大幅に低減することができる。トランジスタ49としてOSトランジスタを用いることにより、トランジスタ49のオフ状態におけるリーク電流を極めて小さくすることができ、消費電力を極限まで低くすることができる。
【0131】
また、例えば過放電検知の場合には、非反転入力端子に、過放電状態と判断される基準電位を与え、二次電池の正極電位を反転入力端子に与えてもよい。この場合には、二次電池の正極電位が該基準電位より低くなると、コンパレータから高電位信号が出力される。
【0132】
本発明の一態様の半導体装置には例えば、電池の制御を行う機能を有する回路が搭載されてもよい。本発明の一態様の半導体装置に電池の制御を行う機能を有する回路を搭載し、二次電池と接続することにより、蓄電装置を構成することができる。電池の制御を行う機能を有する回路として、
図8において、制御回路38を有する。端子OU3からの信号が制御回路38に与えられる。また制御回路38は、端子SH1、EN1、VT1、SH2、等の信号を生成し、各回路に与えてもよい。あるいは、これらの信号を生成する回路に制御信号を与えてもよい。
【0133】
制御回路38には例えば、電池の充電または放電の条件を変更する機能を有する回路が搭載されてもよい。該条件は例えば、電流密度、上限電圧、下限電圧、モードの切り替え、等を含む。モードとして例えば、定電流モード、定電圧モード、等が挙げられる。また、本発明の一態様の半導体装置は例えば、電池の保護を行う機能を有する。例えば、電池の充電または放電を停止する機能を有する。例えば、過充電の検出に伴い、電池を放電する機能を有する。例えば、電池の異常を検出し、電池の動作を停止、あるいは電池の条件を変更する機能を有する。電池の動作を停止とは、例えば、充電の停止、あるいは放電の停止が挙げられる。電池の異常とは例えば、過充電、過放電、充電時の過電流、放電時の過電流、ショート、後述するマイクロショート、動作温度の所定の範囲からの逸脱、等が挙げられる。
【0134】
制御回路38は、例えば、Siトランジスタを用いて構成することができる。あるいは、制御回路38が、OSトランジスタと、Siトランジスタと、を用いて構成されてもよい。あるいは制御回路38が、OSトランジスタで構成される場合がある。
【0135】
また、本発明の一態様の半導体装置は、温度センサ、圧力センサ、照度センサ、モーションセンサ、光学センサ、湿度センサ、等を有してもよい。本発明の一態様の半導体装置は、例えば、これらのセンサの検知結果に応じて電池の制御を行う機能を有する。
【0136】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に用いることができる、OSトランジスタの構成例について説明する。なお、OSトランジスタは薄膜トランジスタであり、積層して設けることができるため、本実施の形態では、単結晶シリコン基板に形成されたSiトランジスタの上方に、OSトランジスタを設けた半導体装置の構成例について説明する。
【0137】
<半導体装置の構成例>
図9に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500、および容量素子600を有している。
図10Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図10Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図10Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0138】
トランジスタ500は、チャネル形成領域にOSトランジスタである。トランジスタ500は、オフ電流が非常に小さい特徴を有する。
【0139】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図9に示すように、トランジスタ300、トランジスタ500、および容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、トランジスタ300およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0140】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0141】
トランジスタ300は、
図10Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0142】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0143】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0144】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0145】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0146】
なお、導電体の材料により、仕事関数が定まるため、導電体の材料を変更することで、トランジスタのVthを調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0147】
なお、
図9に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0148】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0149】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0150】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0151】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0152】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0153】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS分析)法などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積あたりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0154】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0155】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0156】
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0157】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図9において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0158】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0159】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0160】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図9において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0161】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0162】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図9において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0163】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0164】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図9において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0165】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0166】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0167】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0168】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0169】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0170】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0171】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0172】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0173】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0174】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0175】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0176】
図9においては、容量素子600が有する導電体610が絶縁体580等の開口部に設けられる導電体を介してトランジスタ500のソースおよびドレインの一方と、トランジスタ300のゲートと、に接続される例を示すが、トランジスタ500と同じ層にOSトランジスタをもう一つ設け、導電体610が、絶縁体580等の開口部に設けられる導電体を介して該OSトランジスタのゲートに接続されてもよい。
【0177】
図10A、
図10Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516と導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に、互いに離して配置された導電体542a、および導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の中に配置された導電体560と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、導電体560と、の間に配置された絶縁体550と、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、および絶縁体580と、絶縁体550と、の間に配置された酸化物530cと、を有する。
【0178】
また、
図10A、
図10Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580の間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図10A、
図10Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図10A、
図10Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0179】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。また、導電体542aおよび導電体542bをまとめて導電体542という場合がある。
【0180】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図9、
図10A、
図10Bに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0181】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0182】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有することができる。
【0183】
導電体560は、第1のゲート(トップゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のVthを制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0184】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0185】
また、本明細書等において、S-channel構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造及びプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0186】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。
【0187】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、および絶縁体550は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0188】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0189】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0190】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0191】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0192】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0193】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0194】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0195】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0196】
なお、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0197】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0198】
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0199】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0200】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0201】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0202】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0203】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0204】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0205】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0206】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0207】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0208】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0209】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0210】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0211】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を主成分として有することで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0212】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0213】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542(導電体542a、および導電体542b)が設けられる。導電体542としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0214】
また、
図10Aに示すように、酸化物530の、導電体542との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543(領域543a、および領域543b)が形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0215】
酸化物530と接するように上記導電体542を設けることで、領域543の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543に導電体542に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543のキャリア濃度が増加し、領域543は、低抵抗領域となる。
【0216】
絶縁体544は、導電体542を覆うように設けられ、導電体542の酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0217】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0218】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネートなどを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542が耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成要素ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0219】
絶縁体550は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下の範囲が好ましい。
【0220】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0221】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0222】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0223】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図10A、
図10Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0224】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0225】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0226】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0227】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0228】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0229】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0230】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0231】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0232】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0233】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0234】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540aおよび導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546および導電体548と同様の構成である。
【0235】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0236】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0237】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0238】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0239】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0240】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0241】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0242】
図9等には、容量素子の誘電体として絶縁体630を用いる例を示すが、容量素子の誘電体として、他の絶縁体を用いてもよい。また、容量素子の電極として、他の導電体等を用いてもよい。
【0243】
例えば、トランジスタ300のゲート絶縁体として機能する絶縁体315を用いてもよい。絶縁体315を容量素子の誘電体として用いる場合には、導電体316を容量素子の一方の電極、低抵抗領域314a等を他方の電極として用いてもよい。
【0244】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0245】
図9では、導電体612、および導電体610は単層構造として示しているが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0246】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0247】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0248】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0249】
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。
【0250】
<トランジスタの構造例1>
図11A、
図11Bおよび
図11Cを用いてトランジスタ510Aの構造例を説明する。
図11Aはトランジスタ510Aの上面図である。
図11Bは、
図11Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図11Cは、
図11Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図11Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0251】
図11A、
図11Bおよび
図11Cでは、トランジスタ510Aと、層間膜として機能する絶縁体511、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584を示している。また、トランジスタ510Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電体546(導電体546a、および導電体546b)と、配線として機能する導電体503と、を示している。
【0252】
トランジスタ510Aは、第1のゲート電極として機能する導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、第2のゲート電極として機能する導電体505(導電体505a、および導電体505b)と、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁体550と、第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524と、チャネルが形成される領域を有する酸化物530(酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体542aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体542bと、絶縁体574とを有する。
【0253】
また、
図11に示すトランジスタ510Aでは、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560は、導電体542a、および導電体542bとの間に配置される。
【0254】
絶縁体511、および絶縁体512は、層間膜として機能する。
【0255】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、PZT、SrTiO3または(Ba,Sr)TiO3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0256】
例えば、絶縁体511は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。
【0257】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0258】
導電体503は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体503の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体503は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体503は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0259】
トランジスタ510Aにおいて、導電体560は、第1のゲート(トップゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体505は、第2のゲート(ボトムゲート、ともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体505に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ510Aのしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体505に負の電位を印加することにより、トランジスタ510Aのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体505に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0260】
また、例えば、導電体505と、導電体560とを重畳して設けることで、導電体560、および導電体505に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体505から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0261】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体560の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体505の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。すなわち、先に記載のトランジスタ500と同様に、S-channel構造である。
【0262】
絶縁体514、および絶縁体516は、絶縁体511または絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ510A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0263】
第2のゲートとして機能する導電体505は、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体505aが形成され、さらに内側に導電体505bが形成されている。ここで、導電体505aおよび導電体505bの上面の高さと、絶縁体516の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ510Aでは、導電体505aおよび導電体505bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0264】
ここで、導電体505aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一つ、または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0265】
例えば、導電体505aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体505bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0266】
また、導電体505が配線の機能を兼ねる場合、導電体505bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体505bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0267】
絶縁体521、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0268】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ510Aの周辺部からトランジスタ510Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0269】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、PZT、SrTiO3または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0270】
また、絶縁体521は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体521を得ることができる。
【0271】
なお、
図11には、第2のゲート絶縁膜として、3層の積層構造を示したが、単層、または2層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0272】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物530は、酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の酸化物530cと、を有する。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物530として、上述した金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0273】
なお、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体574を介して設けられることが好ましい。絶縁体574がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0274】
導電体542は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0275】
導電体542aと、導電体542bとは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0276】
また、
図11では単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0277】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0278】
また、導電体542上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体574を成膜する際に、導電体542が酸化することを抑制することができる。
【0279】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0280】
バリア層を有することで、導電体542の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542に、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0281】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、および絶縁体574を介して設けられることが好ましい。
【0282】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0283】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0284】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0285】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0286】
導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560は、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタンまたは窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0287】
絶縁体580と、トランジスタ510Aとの間に絶縁体574を配置する。絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0288】
絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0289】
絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584は、層間膜として機能する。
【0290】
絶縁体582は、絶縁体514と同様に、水または水素などの不純物が、外部からトランジスタ510Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0291】
また、絶縁体580、および絶縁体584は、絶縁体516と同様に、絶縁体582よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0292】
また、トランジスタ510Aは、絶縁体580、絶縁体582、および絶縁体584に埋め込まれた導電体546などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0293】
また、導電体546の材料としては、導電体505と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0294】
例えば、導電体546として、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0295】
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0296】
<トランジスタの構造例2>
図12A、
図12Bおよび
図12Cを用いてトランジスタ510Bの構造例を説明する。
図12Aはトランジスタ510Bの上面図である。
図12Bは、
図12Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図12Cは、
図12Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図12Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0297】
トランジスタ510Bはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0298】
トランジスタ510Bは、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と、酸化物530c、絶縁体550、および導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0299】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、および導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体505aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一つ)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0300】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0301】
また、導電体560の上面および側面、絶縁体550の側面、および酸化物530cの側面を覆うように、絶縁体574を設けることが好ましい。なお、絶縁体574は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0302】
絶縁体574を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体574を有することで、絶縁体580が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ510Bへ拡散することを抑制することができる。
【0303】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0304】
また、バリア性を有する絶縁体576を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0305】
<トランジスタの構造例3>
図13A、
図13Bおよび
図13Cを用いてトランジスタ510Cの構造例を説明する。
図13Aはトランジスタ510Cの上面図である。
図13Bは、
図13Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図13Cは、
図13Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図13Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0306】
トランジスタ510Cはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ510Aと異なる点について説明する。
【0307】
図13に示すトランジスタ510Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面および導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547は、導電体542に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547の膜厚は、少なくとも導電体542より厚いことが好ましい。
【0308】
図13に示すトランジスタ510Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ510Aよりも、導電体542を導電体560に近づけることができる。または、導電体542aの端部および導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ510Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および周波数特性の向上を図ることができる。
【0309】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体546a(導電体546b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0310】
また、
図13に示すトランジスタ510Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成にしてもよい。絶縁体544としては、水または水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ510Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0311】
また、
図13に示すトランジスタ510Cは、
図11に示すトランジスタ510Aと異なり、導電体505を単層構造で設けてもよい。この場合、形成された導電体505の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体505の上面が露出するまでCMP法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体505の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体505上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体505の上に形成される、絶縁層の平坦性を良好にし、酸化物530bおよび酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
【0312】
<トランジスタの構造例4>
図14A、
図14Bおよび
図14Cを用いてトランジスタ510Dの構造例を説明する。
図14Aはトランジスタ510Dの上面図である。
図14Bは、
図14Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図14Cは、
図14Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図14Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0313】
トランジスタ510Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0314】
図14A乃至
図14Cでは、導電体503を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体505を配線としても機能させている。また、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0315】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0316】
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層とすることができる。これをOC電極と呼ぶことができる。
【0317】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0318】
トランジスタ510Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0319】
金属酸化物552を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ510Dのオン電流の向上を図ることができる。または、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、および金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、および導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0320】
具体的には、金属酸化物552として、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0321】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁層である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネートなどを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成要素ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0322】
絶縁体570は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水または水素などの不純物が、導電体560および絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0323】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0324】
なお、絶縁体571に、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0325】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0326】
また、トランジスタ510Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0327】
領域531aおよび領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリンまたはボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0328】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531aおよび領域531bを形成することもできる。
【0329】
酸化物530bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531aおよび領域531bを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0330】
絶縁体571および/または導電体560をマスクとして用いることで、領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531aおよび/または領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531aまたは領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531aおよび領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0331】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0332】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、および酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0333】
また、トランジスタ510Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体574を有する。絶縁体574は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水または水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体574として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0334】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体574が酸化物530および絶縁体575から水素および水を吸収することで、酸化物530および絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0335】
<トランジスタの構造例5>
図15A乃至
図15Cを用いてトランジスタ510Eの構造例を説明する。
図15Aはトランジスタ510Eの上面図である。
図15Bは、
図15Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図15Cは、
図15Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図15Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0336】
トランジスタ510Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0337】
図15A乃至
図15Cでは、導電体542を設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531aおよび領域531bを有する。領域531aまたは領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体574の間に、絶縁体573を有する。
【0338】
図15に示す、領域531(領域531a、および領域531b)は、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0339】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物530bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0340】
なお、酸化物530を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、SIMSなどを用いて測定すればよい。
【0341】
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0342】
続いて、酸化物530b、およびダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、および絶縁体574となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531と、酸化物530cおよび絶縁体550とが重畳する領域を設けることができる。
【0343】
具体的には、絶縁体574となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体574、および絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、および導電体560となる導電膜の一部を除去することで、
図15に示すトランジスタを形成することができる。
【0344】
なお、絶縁体573、および絶縁体574は必須の構成要素ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0345】
図15に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体542を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0346】
<トランジスタの構造例6>
図16A乃至
図16Cを用いてトランジスタ510Fの構造例を説明する。
図16Aはトランジスタ510Fの上面図である。
図16Bは、
図16Aに一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。
図16Cは、
図16Aに一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、
図16Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0347】
トランジスタ510Fはトランジスタ510Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0348】
トランジスタ510Aでは、絶縁体574の一部が絶縁体580に設けられた開口部内に設けられ、導電体560の側面を覆うように設けられている。一方で、トランジスタ510Fでは絶縁体580と絶縁体574の一部を除去して開口が形成されている。
【0349】
また、導電体546と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576(絶縁体576a、および絶縁体576b)を配置してもよい。絶縁体576を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0350】
なお、酸化物530として酸化物半導体を用いる場合は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0351】
酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OS等の結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損等)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物530bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物530bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ510Fは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0352】
なお、酸化物530aおよび酸化物530cの一方または双方を省略してもよい。酸化物530を酸化物530bの単層としてもよい。酸化物530を、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの積層とする場合は、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物530cは、酸化物530aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物530cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0353】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0354】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いてもよい。また、酸化物530cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物530cとして用いてもよい。
【0355】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成、または1:1:0.5[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、In:Ga:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、または10:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物、または、In-Zn酸化物を用いればよい。酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いればよい。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。
【0356】
また、酸化物530cは、2層以上の積層構造を有していてもよい。酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、酸化物530cの下層として、In:Ga:Zn=5:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成、または10:1:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物、または、In-Zn酸化物を用い、酸化物530cの上層として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成、Ga:Zn=2:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはGa:Zn=2:5[原子数比]もしくはその近傍の組成、または酸化ガリウムを用いればよい。
【0357】
酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ510Fは高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物530cを積層構造とした場合、上述の酸化物530bと、酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物530cが有する構成元素が、絶縁体550側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物530cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、絶縁体550側に拡散しうるInを抑制することができる。絶縁体550は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物530cを積層構造とすることで、信頼性の高い表示装置を提供することが可能となる。
【0358】
酸化物530は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0359】
<半導体装置の構成例2>
図17には、
図9に示す半導体装置において、絶縁体650上に導電体692を有する例を示す。導電体692は半導体装置の一方の面を覆うように形成される。
図17には図示されないが、導電体692は開口部を有してもよい。また絶縁体650よりも下層の導電体に電気的に接続される導電体が該開口部内に設けられてもよい。
【0360】
導電体692として金属を用いることができる。また導電性を有する金属窒化物や金属酸化物を用いてもよい。導電体692として例えば、チタン、窒化チタン、酸化チタン等を用いる事ができる。導電体692は半導体装置よりも外部からの電磁波を遮断する、あるいは弱める機能を有する。また導電体692は静電気を拡散して逃がす、または電荷の局在化を防ぐ機能を有する。導電体692を設けることにより、半導体装置の動作をさらに安定させることができる。
【0361】
図18には、絶縁体650と導電体692との間に絶縁体693を有する例を示す。絶縁体693として例えば、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を用いることができる。繊維体として例えばガラス繊維を用いてもよい。また有機樹脂として例えば臭素化エポキシ樹脂を用いてもよい。
【0362】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0363】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物の構成について説明する。
【0364】
<<金属酸化物>>
酸化物530として、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物530に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0365】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特に、インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、インジウムおよび亜鉛に加えて、ガリウム、イットリウム、錫などが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0366】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫より選ばれる一以上の元素とする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0367】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0368】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0369】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0370】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0371】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0372】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0373】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0374】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0375】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0376】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0377】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0378】
酸化物半導体に不純物が混入すると、欠陥準位または酸素欠損が形成される場合がある。よって、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が混入することで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、チャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
【0379】
また、上記欠陥準位には、トラップ準位が含まれる場合がある。金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0380】
また、酸化物半導体のチャネル形成領域に不純物が存在すると、チャネル形成領域の結晶性が低くなる場合がある、また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低くなる場合がある。チャネル形成領域の結晶性が低いと、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する傾向がある。また、チャネル形成領域に接して設けられる酸化物の結晶性が低いと、界面準位が形成され、トランジスタの安定性または信頼性が悪化する場合がある。
【0381】
したがって、トランジスタの安定性または信頼性を向上させるには、酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍の不純物濃度を低減することが有効である。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0382】
具体的には、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、SIMSにより得られる上記不純物の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。または、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、EDXを用いた元素分析により得られる上記不純物の濃度を、1.0atomic%以下にする。なお、当該酸化物半導体として元素Mを含む酸化物を用いる場合、当該酸化物半導体のチャネル形成領域およびその近傍において、元素Mに対する上記不純物の濃度比を、0.10未満、好ましくは0.05未満にする。ここで、上記濃度比を算出する際に用いる元素Mの濃度は、上記不純物の濃度を算出した領域と同じ領域の濃度でもよいし、当該酸化物半導体中の濃度でもよい。
【0383】
また、不純物濃度を低減した金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0384】
また、金属酸化物中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。VOHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。
【0385】
従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0386】
つまり、金属酸化物中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0387】
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、酸化物半導体中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0388】
特に、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損を形成する場合がある。酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0389】
酸素欠損に水素が入った欠陥(VOH)は、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0390】
よって、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0391】
また、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0392】
本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様は、低消費電力の半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0393】
<<その他の半導体材料>>
酸化物530に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物530として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0394】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0395】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0396】
酸化物530として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物530として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS2)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe2)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe2)、硫化タングステン(代表的にはWS2)、セレン化タングステン(代表的にはWSe2)、タングステンテルル(代表的にはWTe2)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS2)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe2)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS2)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe2)などが挙げられる。
【0397】
なお、本実施の形態は、本明細書に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0398】
EN1:端子、ID1:電流、IN2:端子、ND1:ノード、ND2:ノード、ND3:ノード、ND4:ノード、OU1:端子、OU2:端子、OU3:端子、OU4:端子、RL1:抵抗素子、SG1:端子、SH1:端子、SH2:端子、Sv1:信号、VBI1:端子、VD1:配線、VS1:配線、VT1:端子、21:半導体装置、30:発振器、31:回路、32:回路、33:回路、36:増幅回路、38:制御回路、41:トランジスタ、42:トランジスタ、43:トランジスタ、44:トランジスタ、45:トランジスタ、46a:トランジスタ、46b:トランジスタ、47a:トランジスタ、47b:トランジスタ、48:トランジスタ、49:トランジスタ、51:容量素子、52:容量素子、53:インバータ、54:トランジスタ、55:トランジスタ、56:コンパレータ、57:容量素子、61:トランジスタ、62:トランジスタ、63:回路、63a:トランジスタ、63b:トランジスタ、63n:トランジスタ、63x:回路、63y:回路、64:トランジスタ、65:トランジスタ、66:容量素子、71:トランジスタ、72:トランジスタ、73:トランジスタ、74:トランジスタ、75:トランジスタ、76:トランジスタ、77:トランジスタ、121:二次電池、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、505a:導電体、505b:導電体、510:絶縁体、510A:トランジスタ、510B:トランジスタ、510C:トランジスタ、510D:トランジスタ、510E:トランジスタ、510F:トランジスタ、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、521:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、531:領域、531a:領域、531b:領域、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543:領域、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547:導電体、547a:導電体、547b:導電体、548:導電体、550:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、584:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、650:絶縁体、692:導電体、693:絶縁体