(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】偽単為結果性の果実形成が可能なナス科植物
(51)【国際特許分類】
A01H 5/08 20180101AFI20241029BHJP
A01H 5/02 20180101ALI20241029BHJP
A01H 5/04 20180101ALI20241029BHJP
A01H 5/06 20180101ALI20241029BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20241029BHJP
A01H 5/12 20180101ALI20241029BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20241029BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
A01H5/08 ZNA
A01H5/02
A01H5/04
A01H5/06
A01H5/10
A01H5/12
C12N15/29
C12Q1/68
(21)【出願番号】P 2021533576
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2019083605
(87)【国際公開番号】W WO2020120242
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517030099
【氏名又は名称】ヌンヘムス、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】NUNHEMS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ、スーシン、アリエタ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーサム、プラカーシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリア、ロシオ、アパリシオ、シレ
(72)【発明者】
【氏名】ビム、ブリズン
(72)【発明者】
【氏名】リーケ、メリテンス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ギスベーツ
(72)【発明者】
【氏名】インカ、ガウェンダ
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン、ダビラ、オリバス
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、エルナンド、ガレアーノ、メンドーサ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-023664(JP,A)
【文献】HANANIA, U et al.,Silencing of chaperonin 21, that was differentially expressed in inflorescence of seedless and seeded grapes, promoted seed abortion in tobacco and tomato fruits,Transgenic Research,2007年,Vol. 16, No.4,pp. 515-525
【文献】OLIMPIERI, I et al.,Constitutive co-suppression of the GA 20-oxidase1 gene in tomato leads to severe defects in vegetative and reproductive development,Plant Science,2011年,Vol. 180, No. 3,pp. 496-503
【文献】ACCESSION NO. PHU23006, Homeobox-luecine zipper protein ROC5 [Capsicum chinese],GenBank[online],2017年10月27日,[検索日2023/11/10], Retrieved from the Internet,https://www.ncbi.nim.nih.gov/protein/PHU23006
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H
C12N
C12Q
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むトウガラシ植物であって、
前記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし
、
前記変異型アレルが、
配列番号3に記載の変異型ssper-1タンパク質をコードする、前記植物。
【請求項2】
前記植物が、前記変異型アレルについてホモ接合性である、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記植物が、近交系植物、二ゲノム性半数体植物またはハイブリッド植物である、請求項1または2に記載の植物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の植物が成長し得る種子。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の植物から生じた果実であって、前記SSPER-1遺伝子の前記変異型アレルについてホモ接合性であるとともに種なしである、前記果実。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の植物の部分であって、前記野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含む、前記植物の部分。
【請求項7】
請求項6に記載の植物の部分であって、葉、葯、雌しべ、茎、葉柄、根、胚珠、花粉、プロトプラスト、組織、種子、花、子葉、胚軸、胚または細胞である、前記植物の部分。
【請求項8】
請求項6に記載の植物の部分から繁殖された栄養繁殖植物。
【請求項9】
偽単為結果性の果実を生産する方法であって、
以下の工程:
請求項1~3または8のいずれか一項に記載の植物を生育する工程、および
前記植物から生じた前記果実を収穫する工程
を含む、前記方法。
【請求項10】
ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こすアレルを含むトウガラシ植物または植物部分を特定する方法であって、
前記方法が、前記植物または植物部分がSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むか否かを決定する工程を含み、
前記変異型アレルが、
配列番号3に記載の変異型ssper-1タンパク質をコード
する、前記方法。
【請求項11】
前記植物または植物部分がSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むか否かを決定する前に、前記植物または植物部分が変異誘発工程に供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーを含む植物または植物部分を選抜する工程をさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むトウガラシ植物を生産する方法であって、
前記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、
前記方法が、以下の工程:
(i)第1のトウガラシ植物と第2のトウガラシ植物とを交配する工程であって、前記第1の
トウガラシ植物が、請求項1~3または8のいずれか一項に記載の植物である前記工程
を含む、前記方法。
【請求項14】
以下の工程:
(ii)(i)の交配工程から得られた種子を収穫し、請求項1に記載のSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含む種子を選抜する工程
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(i)において、前記第1のトウガラシ植物および前記第2のトウガラシ植物の両方が、請求項1~3または8のいずれか一項に記載の植物である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法から得られた種子であって、前記種子が、請求項1に記載の野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含む、前記種子。
【請求項17】
請求項16に記載の種子から成長した植物。
【請求項18】
請求項4または16に記載の種子を生育することにより、偽単為結果性の果実形成が可能なトウガラシ植物を生産する方法であって、
前記植物が、前記変異型アレルについてホモ接合性である、前記方法。
【請求項19】
消費用作物としての、請求項1~3、8および17のいずれか一項に記載の植物の使用。
【請求項20】
繁殖材料の供給源としての、請求項1~3、8および17のいずれか一項に記載の植物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育種(plant breeding)の分野に関する。特に、ホモ接合型で存在する場合に偽単為結果性の果実形成を引き起こす変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物に関する。本発明はさらに、本発明の植物から生じた花粉および種子、本発明の植物が成長し得る種子、ならびに本発明による植物の部分に関する。本発明はさらに、本発明による植物を特定および/または選抜する方法、ならびに本発明による植物を生産する方法に関する。本発明はさらに、消費用作物として、または繁殖材料の供給源としての本発明の植物の使用に関する。本発明はさらに、本発明の植物の特定のための、または本発明の植物を育種(breeding)するための核酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を生産するほとんどの市販の種なし果実は、その果実が通常果実の果肉全体にわたって分布する多数の比較的大きな硬い種を含む植物種において開発されてきた。種なし果実は、例えば、スイカ、キュウリ、ブドウ、バナナ、柑橘類果実(例えば、オレンジ、レモンおよびライム)について知られているが、ナス科植物、例えば、トマト(tomato)植物、ナス(eggplant)植物およびペッパー(pepper)植物からも知られている。種なし果実の消費は概してより簡単で、より便利であるため、これらは有益であると考えられている。
【0003】
通常、花の胚珠区画内の1つ以上の卵細胞が花粉からの精核により受精すると、果実の発育は始まる。
【0004】
種なし果実は、2つの異なる現象に起因し得る。ある場合には、花粉による胚珠の受精なしで果実が発育する、単為結果として知られている現象である。別の場合には、受粉後に種子(胚および/または内胚乳)の成長が阻害され、または種子が早期に死ぬが、果実の残部は成長し続ける場合に、種なし果実が発育する(偽単為結果)。単為結果と対照的に、偽単為結果は、果実成長の開始のために受粉を必要とする。
【0005】
種なしキュウリ、種なしカボチャおよび種なしナスは、例えば、受粉が損なわれる条件下(例えば、低温条件下)において、受粉なしで種なし果実を実らせること(単為結果)ができる作物の例である。市販品質の果実は、これらの条件下において生じ得る。しかしながら、これらすべての作物は、受粉時に果実を有する種子を生じ得る。したがって、これらの作物は、条件的単為結果である。作物の繁殖は、自家受粉または他家受粉、in vitro繁殖、および接ぎ木により行われ得る。
【0006】
正常な受粉/受精が損なわれる条件下(例えば、低温環境下)において種なし果実を実らせることができるトマト変異体も知られている。したがって、これらの変異体も、条件的単為結果である。この表現型を示すことが知られている変異体は、pat、pat-2およびpat-3/pat-4系である(W01999021411A1)。これらの変異体に内在する遺伝子は不明であり、pat-3/pat-4系は、複数の遺伝子座に依存すると思われる。
【0007】
単為結果はまた、遺伝子組換えによっても、いくつかの植物種に導入されてきた。胚珠および胎座特異的DefH9プロモーターの制御下におけるオーキシン合成をもたらす細菌性トリプトファンモノオキシゲナーゼ(iaaM)の発現は、キュウリ(Yin et al., 2006, Cellular & molecular Biotech. Letters 11, 279-290)、ナス(Acciarri et al., 2002, BMC Biotech. 2(4))、トマト(Rotino et al., 2005, BMC Biotech. 5(32))およびタバコにおける単為結果を誘発した。
【0008】
これらのトランスジェニック植物は、種子および果実の発育における植物ホルモンの重要性を示している。種子および果実の発育がその他の要因に加えていくつかの植物ホルモンの強力な制御下にあることは、当技術分野において周知である。果実の種なしの論理的帰結を含む単為結果は、例えば、植物ホルモン、特に、オーキシンまたはジベレリンの外的適用によっても誘発され得る(Ruan et al., Trends in Plant Sci. 17(11), 1360-1385)。
【0009】
WO2008/152134A1には、植物全体にわたって正常な外観の食用の種なし果実が成長する雄性不稔性ハイブリッドペッパー植物であって、上記種なし果実が、少なくとも95%種なしであることを特徴とする、雄性不稔性ハイブリッドペッパー植物が記載されている。WO2008/152134A1の「種なし」形質は、ブダペスト条約の下で寄託された様々なペッパー植物から得られる遺伝的決定因子によって制御されているが、これについてさらなる具体的な説明はされていない。WO2008/152134A1にはさらに、そこに開示されている単為結果性の形質は受粉プロセスおよび受精プロセスとは無関係であり、単為結果を誘発する植物ホルモン(例えば、オーキシン、ジベレリンおよびサイトカイン)、オーキシン輸送阻害剤もしくはその他、および/またはその他の単為結果を誘発する外的因子、および/または外的に投与される単為結果の誘発剤(例えば、天然もしくは合成の成長調節物質)、または植物抽出物(例えば、死花粉抽出物)による処理とは無関係であり、あるいは外部の気候条件とも無関係である。
【0010】
WO2009/098983A1には、種なし果実を生じるペッパー植物であって、特定の交配方法によって得られるペッパー植物が記載されている。第1のプロセス工程において、交配方法は、雄性不稔性系統の植物と単為結果性系統の植物との間の交配によって得られた雑種第一代の植物群から、種なし果実を生じ得、かつ、遺伝的に決定される雄性不稔性の形質および遺伝的に決定される単為結果性の形質を有することができる雑種第一代の植物を選抜する工程を含む。次いで、第2のプロセス工程では、このように選抜された雑種第一代の植物に、当該植物の遺伝的に決定される単為結果性の形質および遺伝的に決定される雄性不稔性を維持することができる特定の単為結果性の固定系統である「み74系統」を花粉親として交配させることにより、遺伝的に決定される単為結果性の形質および遺伝的に決定される雄性不稔性の形質を有する後代植物を得る。最終プロセス工程では、こうして得られた後代植物に、さらに、第2のプロセス工程において花粉親として使用された単為結果性の固定系統の植物を花粉親として戻し交配させることにより、遺伝的に決定される単為結果性の形質および遺伝的に決定される雄性不稔性の形質を有する後代植物を得、ここで、第3のプロセス工程は少なくとも1回繰り返される。
【0011】
WO2012/087140A2には、ホモ接合的に存在する場合に単為結果性の果実形成を引き起こす変異した遺伝的決定因子を含むペッパー植物であって、上記遺伝的決定因子が、ブダペスト条約の下で寄託された種子から成長した特定の植物からの遺伝子移入によって得ることができる、ペッパー植物が記載されている。
【0012】
WO2013/078319A1には、単為結果性の種なしペッパー果実を実らせるペッパー植物が記載されている。WO2013/078319A1のペッパー植物は、雌性親として細胞質雄性不稔(CMS)形質を含む第1のペッパー植物を、単為結果である第2の植物と交配して、単為結果性の種なしペッパー植物の種子を生産することを含む方法によって得ることができる。WO2013/078319A1のCMS形質は、キイロトウガラシ(Capsicum baccatum)植物に由来する。
【0013】
WO2016/120438A1には、タンパク質構造の細胞内ループにアミノ酸変化を含む改変PIN4タンパク質が、植物に存在する場合に単為結果性の着果を誘導することができ、植物は好ましくはメロン植物、キュウリ植物、スイカ植物、トマト(Solanum lycopersicum)植物、ナス(Solanum melongena)植物またはトウガラシ(Capsicum annuum)植物であることが記載されている。
【0014】
WO2017/125931A1には、条件的単為結果を示し、かつ、AGL6遺伝子に機能喪失変異を含むトマト、ペッパーおよびナスからなる群から選択されるナス科植物が記載されている。WO2017/125931A1のナス科植物は、好ましくはトマト植物である。
【0015】
種なしスイカは、偽単為結果性の作物の一例である。通常のスイカ植物は二倍体(2n)である。スイカを生じる種なし果実は、雄性二倍体(2n)スイカ植物を、雌性四倍体(4n)スイカ植物と交配させることにより生産された雑種である。得られたF1雑種の種子は三倍体(3n)である。F1雑種植物における果実の着果誘発は受粉を必要とする。三倍体(3n)F1雑種植物は繁殖性花粉を生じないため、二倍体(2n)授粉媒介植物(または送粉植物)となる植物が同じ畑に栽培されていなければならない。二倍体(2n)花粉媒介植物および雌性三倍体(3n)雑種植物間の他家受粉は着果を誘発し、三倍体雑種植物に種なし三倍体果実を生じる。概して、約1~3体の雑種植物に対する花粉媒介植物の比は、すべてのF1雑種植物を花粉媒介するのに十分な花粉を提供するための所与の計画において栽培されなければならない。F1雑種の二倍体(2n)および四倍体(4n)親は各々種あり果実を実らせ、双方は自家受粉により互いに独立して繁殖することができる。
【0016】
種なしブドウは、単為結果または偽単為結果のいずれかである植物から生産可能である。品種Black Corinthは単為結果であり、品種サルタナは偽単為結果である。概して、つる植物は、挿し木および別の台木に連続的に接ぎ木することにより繁殖される。
【0017】
上記考察から、植物が種なし果実を生じるか否かを決定する要因は、実際は複数あり、いくつかの原因、例えば、形態的、生理的および/または遺伝的原因に存在し得ることは明白である。
【0018】
従来技術に従って種なし果実を生産することができるナス科植物はすべて単為結果であり、すなわち、それらは受粉なしで着果することができる。単為結果の帰結として種なし果実を生じる植物の育種および栽培に関連するいくつかの不利が存在する。最も重要なことは、多くの作物において単為結果性の植物は、異常な形状および/または縮小したサイズを有する果実を生じることである。さらに、単為結果性の植物と交雑して単為結果性の形質を同じ植物種の異なる果実タイプおよび品種に導入することは、前提条件として雄性不稔性のバックグラウンドを必要とするため、非常に複雑になる可能性がある。また、単為結果性の植物のF1雑種種子の生産は、不可能であることが多いか、あるいは非常に困難で非効率的である可能性がある。したがって、通常の形状およびサイズを有する種なし果実を生じ得、種なし形質を同じ植物種の異なる果実タイプおよび品種に容易に移入することができ、かつ、種子を効率的に生じ得る、改良されたナス科植物を開発する差し迫ったニーズが存在する。
【0019】
驚くことに、ホモ接合型で存在する場合に偽単為結果性の果実形成を引き起こす変異型アレルをナス科の植物において同定することができた。野生型遺伝子は、本明細書においてSSPER-1(Stenospermocarpy-1)と呼ばれる。さらに驚くことに、この変異型アレルについてホモ接合性の植物から生じた種なし果実は、正常な形状およびサイズを有することが見出された。さらに驚くことに、偽単為結果性の果実形成を誘導することができる変異型アレルは、同じ植物種における異なる果実タイプおよび品種に容易に移入することができることが見出された。さらに驚くことに、変異型アレルを含む種子を効率的に生じ得、その種子から、偽単為結果性の果実形成が可能な植物が成長し得ることが見出された。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをゲノムに含むナス科の植物であって、前記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、前記野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする、前記植物に関する。
【0021】
本発明はさらに、本発明の植物が成長し得る種子、前記種子から成長した植物、本発明の植物から生じた果実、本発明の植物の部分および本発明の植物の部分から繁殖された栄養繁殖植物に関する。
【0022】
加えて、本発明は、偽単為結果性の果実を生産する方法であって、以下の工程:本発明の植物を生育する工程、および前記植物から生じた前記果実を収穫する工程を含む、前記方法に関する。本発明はさらに、SSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むナス科の植物または植物部分を特定および/または選抜する方法であって、以下の工程:前記植物または植物部分がSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むか否かを決定する工程であって、前記変異型アレルが、前記SSPER-1遺伝子の発現低下または発現消失をもたらすか、あるいは、前記変異型アレルが、野生型タンパク質と比較した場合に機能が低下または喪失しているタンパク質をコードする前記工程、および場合により、前記SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーを含む植物または植物部分を選抜する工程であって、前記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする前記工程を含む、前記方法に関する。本発明はさらに、本明細書で定義されるSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物を生産する方法であって、前記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こす、前記方法に関する。本発明はさらに、本明細書で定義されるSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物を生産する方法であって、前記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、前記方法が、以下の工程:(i)第1のナス科植物と第2のナス科植物とを交配する工程であって、前記第1のナス科植物が、本発明の植物である前記工程;(ii)場合により、(i)の交配工程から得られた種子を収穫し、本明細書に記載のSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含む種子を選抜する工程を含む、前記方法に関する。
【0023】
さらに、本発明は、消費用作物としての、本発明の植物、好ましくはホモ接合型の変異SSPER-1アレルを含む本発明の植物の使用に関する。本発明はさらに、繁殖材料の供給源としての本発明の植物の使用に関する。さらに、本発明は、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物を特定するための、SSPER-1タンパク質をコードする核酸の使用であって、前記SSPER-1タンパク質が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する、前記使用に関する。本発明はさらに、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物を育種するためのSSPER-1タンパク質をコードする核酸の使用であって、前記SSPER-1タンパク質が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する、前記使用に関する。
【0024】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、野生型トウガラシSSPER-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0025】
配列番号2は、野生型トウガラシSSPER-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【0026】
配列番号3は、変異型トウガラシssper-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0027】
配列番号4は、変異型トウガラシssper-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【0028】
配列番号5は、野生型カプシクム・キネンセ(Capsicum chinense)SSPER-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0029】
配列番号6は、野生型カプシクム・キネンセSSPER-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【0030】
配列番号7は、野生型キイロトウガラシSSPER-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0031】
配列番号8は、野生型キイロトウガラシSSPER-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【0032】
配列番号9は、野生型ナスSSPER-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0033】
配列番号10は、野生型ナスSSPER-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【0034】
配列番号11は、野生型Solanum pennellii SSPER-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0035】
配列番号12は、野生型Solanum pennellii SSPER-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【0036】
配列番号13は、野生型トマトSSPER-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0037】
配列番号14は、野生型トマトSSPER-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列(コードDNAまたはcDNA)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、
図1の植物が本発明のSSPER-1遺伝子の変異型アレルについてホモ接合性であることを除いて、野生型植物(
図3を参照)と同一の遺伝的背景を有するパプリカ(sweet bell pepper)植物の果実を示すグレースケール写真である。果実は、正常な種子が形成されていないが、果実の胎座組織および隔壁組織は正常に発育しており、正常な果実の形状を形成している。
【
図2】
図2は、
図2の植物が本発明のSSPER-1遺伝子の変異型アレルについてヘテロ接合性であることを除いて、野生型植物(
図3を参照)と同一の遺伝的背景を有するパプリカ植物の果実を示すグレースケール写真である。野生型植物からの果実と比較した場合、果実は、果実の胎盤組織における種子形成の減少を示す。
【
図3】
図3は、野生型のパプリカ植物、すなわち、SSPER-1遺伝子の野生型アレルがホモ接合性である植物の果実を示すグレースケール写真である。果実は、果実の胎盤組織における正常な種子形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
一般的な定義
「ゲノム」という用語は、生物の遺伝物質に関連している。それはDNAからなる。ゲノムには、遺伝子とDNAの非コード配列の両方が含まれる。
【0040】
「遺伝的決定因子」という用語は、植物の特定の形質を引き起こす植物のゲノム内の遺伝情報に関連している。したがって、遺伝的決定因子は、特定の形質を与える遺伝情報(遺伝子または遺伝子座または遺伝子移入)を含む。一般に、遺伝的決定因子は、単一の遺伝子(または1つの量的形質遺伝子座(QTL))または複数の遺伝子を含み得る。本発明において、遺伝的決定因子は、単一の遺伝子である。
【0041】
対立性検定は、同じ形質を与える2つの遺伝子が同一の遺伝子座に位置するか否かを特定するために使用可能な当技術分野で既知の試験である。
【0042】
本出願の文脈における「形質」という言葉は、植物の表現型を指す。植物が本発明の形質を示す場合、そのゲノムは、特に変異型アレルがホモ接合型である場合の本発明において、本発明の形質を引き起こす変異型アレルを含む。したがって、植物は本発明の遺伝的決定因子を有する。本発明の植物の形質を含む植物に言及する場合、偽単為結果性の果実形成の形質を含むナス科植物に言及していることが理解される。
【0043】
遺伝的決定因子は、劣性形式、中間形式または優性形式において遺伝され得る。交配の後代の大部分が形質を明らかにするため、中間遺伝または優性遺伝が関与する場合に、表現型形質の選抜はより簡単である。遺伝的決定因子はまた、劣性および/もしくは中間および/もしくは優性遺伝子の組み合わせまたはQTLの組み合わせを含み得る。本発明において、遺伝的決定因子は、単一の劣性遺伝子である。
【0044】
遺伝的決定因子(例えば、変異SSPER-1アレル)の選抜は、表現型(観察可能な形質)により実施可能である。選抜はまた、分子的な遺伝子型決定法(例えば、変異型アレルに遺伝的に関連している1種または2種以上の分子マーカーを使用すること)によって、あるいは好ましくは遺伝子またはアレル配列自体を使用すること(例えば、変異型アレルおよび野生型アレル、またはそれらの産物(例えば、アレルによってコードされるmRNAまたはタンパク質)の存在を区別することができる分子的方法)によって実施され得る。育種における分子的な遺伝子型決定法(例えば、遺伝的に関連しているマーカーを使用する場合の「マーカーアシスト選抜」、またはその他の遺伝子型決定法、例えばSNP遺伝子型決定法)の使用は、スクリーニングに必要な集団が少なくて済み(表現型選抜と比較した場合)、非常に早期に実行可能である。分子的な遺伝子型決定法のさらなる利点は、SSPER-1遺伝子の野生型コピーを有さないホモ接合性の植物または種子(変異ssper-1アレルのホモ接合体)、ヘテロ接合性の植物または種子、および本発明の変異SSPER-1遺伝子のコピーを有さないホモ接合性の植物または種子を容易に区別可能であることである。これは、種子が発芽する前または初期の植物発育(例えば、成熟した果実が発育する前)においてさえ、実行可能である。
【0045】
「植物系統」または「育種系統」は、植物およびその後代を表す。本明細書で使用される場合、用語「近交系」は、繰り返し自殖した植物系統を表し、すべての特性に関してほとんどホモ接合性である植物を表す。したがって、「近交系」または「親系統」は、高い均一性を有する植物系統において得られた同系交配のいくつかの世代(例えば、少なくとも5、6、7またはそれ以上)を経験した植物を表す。
【0046】
「アレル(単数または複数)」という用語は、特定の遺伝子座における遺伝子の1種または2種以上の代替形態のいずれかを意味し、このアレルのすべては特定の遺伝子座において1種の形質または特性に関係する。生物の二倍体細胞では、所与の遺伝子のアレルは、染色体上の特定の位置または遺伝子座(単数もしくは複数)に位置する。1種のアレルは、相同染色体の対の各染色体上に存在する。二倍体植物種は、特定の遺伝子座における多数の異なるアレルを含み得る。これらは、遺伝子の同一のアレル(ホモ接合)であっても、2種の異なるアレル(ヘテロ接合)であってもよい。
【0047】
「遺伝子座(単数または複数)」という用語は、例えば遺伝子または遺伝子マーカーが見出される染色体上の特定の場所(単数もしくは複数)または部位を意味する。したがって、種なしの遺伝子座(単数または複数)は、SSPER-1遺伝子が見られるナス科植物のゲノム内に位置する。
【0048】
「遺伝子」という用語は、細胞内でメッセンジャーRNA分子(mRNA)に転写される領域(転写領域)と、作動可能に関連している調節領域(例えば、プロモーター)とを含む(ゲノム)DNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、いくつかの作動可能に関連している配列、例えば、プロモーター、5’リーダー配列(例えば、翻訳開始に関与する配列を含む5’リーダー配列)、(タンパク質)コード領域(cDNAまたはゲノムDNA)、および3’非翻訳配列(例えば、転写終結部位を含む3’非翻訳配列)を含み得る。したがって、遺伝子の異なるアレルは、遺伝子の異なる代替形態であり、例えば、コードされたタンパク質のゲノムDNA配列(例えば、プロモーター配列、エクソン配列、イントロン配列等)、mRNAおよび/またはアミノ酸配列における1つまたは複数のヌクレオチドの違いの形態として存在し得る。遺伝子は、内在性遺伝子(系統の種において)またはキメラ遺伝子(例えば、トランス遺伝子もしくはシス遺伝子)であり得る。遺伝子配列の「プロモーター」は、特定の遺伝子の転写を開始するDNAの領域として定義される。プロモーターは、それらが転写する遺伝子の近傍、同一の鎖上およびそのDNAの上流に位置している。プロモーターの長さは約100~1000塩基対である。一態様において、プロモーターは、約1000塩基対以上、例えば、約1500塩基対または約2000塩基対であり、遺伝子によってコードされるタンパク質の開始コドン(すなわち、ATG)の上流にある領域として定義される。
【0049】
「トランス遺伝子」または「キメラ遺伝子」は、DNA配列、例えば、形質転換(例えば、アグロバクテリウム媒介性の形質転換)によって植物のゲノムに導入された組換え遺伝子を含む遺伝子座を指す。そのゲノムに安定して組み込まれたトランス遺伝子を含む植物は、「トランスジェニック植物」と呼ばれる。
【0050】
「遺伝子の発現」は、適切な調節領域、特にプロモーターに作動可能に関連しているDNA領域が、生物学的に活性なRNA、すなわち生物学的に活性なタンパク質もしくはペプチド(もしくは活性ペプチドフラグメント)に翻訳され得るRNAまたはそれ自体が活性であるRNA(例えば、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAiにおけるRNA)に転写されるプロセスを指す。コード配列は、センス配向であり得、かつ、所望の生物学的に活性なタンパク質またはペプチド、または活性ペプチドフラグメントをコードする。
【0051】
「量的形質遺伝子座」または「QTL」は、連続的に分布する(量的)表現型の表現度に影響を与える1種または2種以上のアレルをコードする染色体遺伝子座である。
【0052】
同じ染色体上の遺伝子座間(例えば、分子マーカー間および/または表現型マーカー間)の「物理的距離」は、塩基または塩基対(bp)、キロ塩基またはキロ塩基対(kb)、またはメガ塩基またはメガ塩基対(Mb)で表される実際の物理的距離ある。
【0053】
同じ染色体上の遺伝子座間(例えば、分子マーカー間および/または表現型マーカー間)の「遺伝的距離」は、交差頻度または組換え頻度(RF)によって測定され、センチモルガン(cM)で示される。1cMは1%の組換え頻度に対応する。組換え体が見られない場合、RFはゼロであり、遺伝子座は物理的に非常に接近しているか、または同一である。2種の遺伝子座が離れているほど、RFは高くなる。
【0054】
「野生型アレル」(WT)は、本明細書において、完全に機能するタンパク質(野生型タンパク質)をコードする遺伝子型を指す。したがって、「野生型SSPER-1アレル」または「SSPER-1アレル」または「SSPER-1遺伝子の野生型アレル」という用語は、SSPER-1遺伝子の完全に機能するアレルを指し、これは果実において成熟および/または生存可能な種子の正常な形成を可能にする。例えば、トウガラシ種のそのような野生型SSPER-1アレルは、配列番号2に示される野生型SSPER-1 cDNA(mRNA)配列をコードする野生型ゲノムDNAである。この野生型トウガラシSSPER-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、815アミノ酸を有し、NCBI参照配列XP_016564676.1に対応する配列番号1に示されている。例えば、カプシクム・キネンセ種の野生型SSPER-1アレルは、配列番号6に示される野生型SSPER-1 cDNA(mRNA)配列をコードする野生型ゲノムDNAである。この野生型カプシクム・キネンセSSPER-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、818アミノ酸を有し、NCBI参照配列PHU23006.1に対応する配列番号5に示されている。例えば、キイロトウガラシ種の野生型SSPER-1アレルは、配列番号8に示される野生型SSPER-1 cDNA(mRNA)配列をコードする野生型ゲノムDNAである。この野生型キイロトウガラシSSPER-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、819アミノ酸を有し、NCBI参照配列PHT53105.1に対応する配列番号7に示されている。例えば、ナス種の野生型SSPER-1アレルは、配列番号10に示される野生型SSPER-1 cDNA(mRNA)配列をコードする野生型ゲノムDNAである。この野生型ナスSSPER-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、749アミノ酸を有し、GenBankアクセッションGBGZ01086676.1に対応する配列番号9に示されている。例えば、Solanum pennellii種の野生型SSPER-1アレルは、配列番号12に示される野生型SSPER-1 cDNA(mRNA)配列をコードする野生型ゲノムDNAである。この野生型Solanum pennellii SSPER-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、807アミノ酸を有し、NCBI参照配列XP_015070591.1に対応する配列番号11に示されている。例えば、トマト種の野生型SSPER-1アレルは、配列番号14に示される野生型SSPER-1 cDNA(mRNA)配列をコードする野生型ゲノムDNAである。この野生型トマトSSPER-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、824アミノ酸を有し、NCBI参照配列XP_004234441.1に対応する配列番号13に示されている。ナス科のさらなる植物種において、本明細書に具体的に記載された野生型SSPER-1アレルの1種または2種以上のオーソログは、当技術分野で既知の方法を使用して同定可能である。野生型SSPER-1アレルは、本明細書に記載の野生型SSPER-1 cDNAおよびアミノ酸配列をコードする野生型ゲノムDNAの機能的変異体をさらに含む。本明細書に具体的に記載される野生型SSPER-1アレルの特定のバリアント(variant)が機能的バリアントを表すか否かは、果実における成熟および/または生存可能な種子の正常な形成についての表現型試験ならびにタンパク質機能に影響を与えるアミノ酸変化のin silico予測を含むがこれらに限定されない日常的な方法を使用することによって決定され得る。例えば、WebベースのコンピュータプログラムであるSIFT(Sorting Intolerant From Tolerant)は、アミノ酸置換がタンパク質の機能に影響を与えるか否かを予測するプログラムである(sift.bii.a-star.edu.sgにおいてワールドワイドウェブを参照)。機能的に重要なアミノ酸はタンパク質ファミリーにおいて保存されるため、よく保存された位置における変化は、許容されないかまたは有害であると予測される傾向がある(Ng and Henikoff (2003) Nucleic Acids Res 31(13): 3812-3814参照)。例えば、あるタンパク質ファミリーのアラインメント中のある位置がアミノ酸イソロイシンのみを含む場合には、その他のいかなるアミノ酸への置換もアゲインスト(against)と選択され、タンパク質の機能にはイソロイシンが必要であると推定される。したがって、その他のいかなるア
ミノ酸への変更も、タンパク質の機能に有害であると予測される。アラインメント中のある位置が疎水性アミノ酸であるイソロイシン、バリンおよびロイシンを含む場合には、SIFTは、事実上、この位置は疎水性のアミノ酸のみを含み得ると想定する。この位置において、その他の疎水性アミノ酸への変更は通常、許容されると予測されるが、その他の残基(例えば、荷電性または極性残基)への変更はタンパク質機能に影響を与えると予測される。タンパク質機能の予測に役立つ代替ツールはProveanである(provean.jcvi.org/index.phpにおいてワールドワイドウェブを参照)。
【0055】
「変異型アレル」は、本明細書において、野生型アレルと比較して、コード配列(mRNA、cDNAまたはゲノム配列)に1つまたは複数の変異を含むアレルを指す。そのような変異(例えば、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、逆位、欠失および/または置換)は、in vitroおよび/もしくはin vivoにおいて低下した機能(機能低下)またはin vitroおよび/もしくはin vivoにおいて消失された機能(機能喪失)を有するコードされたタンパク質をもたらし得る。これは、例えば、トランケートされたタンパク質、または1つもしくは複数のアミノ酸が削除、挿入もしくは置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質によるためである。このような変化は、異なる3Dコンフォメーションを有するタンパク質、異なる細胞内区画を標的とするタンパク質、修飾された触媒ドメインを有するタンパク質、核酸またはタンパク質への修飾された結合活性を有するタンパク質等を生じ得る。本発明による変異型アレルは、変異誘発法、例えば、化学的変異誘発(例えば、EMSもしくはMNUによる変異誘発または活性酸素種を生成することによる変異誘発を使用する)またはその他の放射線変異誘発(例えば、UV照射またはイオンビーム照射を使用する)によって生成され得る。したがって、「変異型ssper-1アレル」または「ssper-1アレル」または「SSPER-1遺伝子の変異型アレル」は、野生型アレルと比較して、コード配列に1つまたは複数の変異を含むSSPER-1遺伝子のアレルを指し、その1つまたは複数の変異は、コードされた遺伝子産物の機能低下または機能喪失をもたらし、変異型アレルがホモ接合型である場合には、果実における成熟および/または生存可能な種子の正常な形成を妨げる。例えば、トウガラシ種におけるそのような変異型ssper-1アレルは、配列番号4に示される変異型ssper-1 cDNA(mRNA)配列である。この変異型トウガラシssper-1 cDNAによってコードされるタンパク質配列は、181アミノ酸を有し、配列番号3に示されている。好ましくは、本明細書で使用される変異型ssper-1アレルという用語は、本明細書において、自然集団または育種集団の植物には見られないが、人の介入、例えば、変異誘発または標的遺伝子改変(標的遺伝子編集とも呼ばれる)、例えば、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpflまたは同様の方法によって生産された野生型SSPER-1遺伝子またはssper-1アレルの任意のアレルを指す。変異型ssper-1アレルという用語は、ノックアウトssper-1アレルおよびノックダウンssper-1アレル、ならびに機能が低下しているか機能が消失しているSSPER-1タンパク質をコードするssper-1アレルも含む。本明細書で使用される場合、「ノックアウトアレル」という用語は、それぞれの(野生型)遺伝子の発現がもはや検出不可能であるアレルを指す。「ノックダウン」ssper-1アレルは、野生型アレルと比較して、それぞれの(野生型)遺伝子の発現が低下している。
【0056】
「野生型植物」は、本明細書において、果実における成熟および/または生存可能な種子の正常な形成を示す野生型SSPER-1アレルの2コピーを含むナス科の植物を指す。このような植物は、例えば、表現型アッセイにおける適切な対照である。
【0057】
ナス科の植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号1に対して少なくとも70%(71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%)のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする。配列番号1のアミノ酸配列によって記載されるタンパク質は、トウガラシの野生型SSPER-1タンパク質を表し、NCBI参照配列XP_016564676.1に対応する。したがって、ナス科のその他の植物において、野生型SSPER-1タンパク質は、トウガラシの野生型SSPER-1遺伝子のオーソログによってコードされている。好ましくは、ナス科の他の植物におけるトウガラシSSPER-1遺伝子のオーソログは、配列番号1に対して少なくとも65%(例えば、少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%)のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0058】
「オーソログ遺伝子」または「オーソログ」という用語は、種分化の過程を通じて進化した様々な種に存在する遺伝子として定義される。一般に、オーソログは異なる種において同じ生物学的機能を有すると考えられている。したがって、ナス科のその他の植物における野生型トウガラシSSPER-1遺伝子のオーソログによってコードされるタンパク質が、野生型トウガラシSSPER-1タンパク質と同じ生物学的機能を有することが特に好ましい。オーソログを同定する方法は、進化プロセスの力とメカニズム(the forces and mechanisms of evolutionary process)を検討するための遺伝子の遺伝系統の説明と、同じ生物学的機能を有する遺伝子群の作成という2つの目標を達成するため、当技術分野では非常によく知られている(Fang G, et al (2010) Getting Started in Gene Orthology and Functional Analysis. PLoS Comput Biol 6(3): e1000703. doi:10.1371/journal.pcbi.1000703)。例えば、特定の遺伝子またはタンパク質のオーソログは、目的のタンパク質の遺伝子配列とその他の種の遺伝子配列との配列アラインメントまたは配列同一性を使用して同定することができる。遺伝子アラインメントまたは遺伝子配列同一性の決定は、当技術分野で知られている方法、例えば、既存の核酸またはタンパク質データベース(例えば、GENBANK、SWISSPROT、TrEMBL)内の核酸またはタンパク質配列を特定し、標準的な配列分析ソフトウェア(例えば、配列類似性検索ツール(BLASTN、BLASTP、BLASTX、TBLAST、FASTA等))を使用することによる方法に従って行うことができる。本発明の一態様において、ナス科のその他の植物におけるトウガラシSSPER-1タンパク質のオーソログは、配列番号1に対して少なくとも65%(例えば、少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%)のアミノ酸配列同一性を有する。
【0059】
野生型SSPER-1タンパク質は、DNA結合ホメオボックスドメインおよび脂質結合STARTドメインを含むがこれらに限定されない、いくつかの異なる保存されたドメインを含む。トウガラシの野生型SSPER-1タンパク質において、DNA結合ホメオボックスドメインは、配列番号1のアミノ酸118で始まり(アミノ酸118を含む)、アミノ酸171で終わる(アミノ酸171を含む)アミノ酸残基(本明細書ではアミノ酸118~171として示される)を含む。トウガラシの野生型SSPER-1タンパク質において脂質結合STARTドメインは、配列番号1のアミノ酸残基320~548を含む。これらの保存されたドメインは、タンパク質のin vivo活性にとって重要であると考えられている。
【0060】
「遺伝子移入フラグメント」または「遺伝子移入セグメント」または「遺伝子移入領域」は、交配または従来の育種技術、例えば、戻し交配によって、同じまたは関連する種の別の植物に導入された染色体フラグメント(または染色体部分または染色体領域)を指す。すなわち、遺伝子移入されたフラグメントは、「遺伝子移入する」という動詞によって言及される育種方法(例えば、戻し交配)の結果である。「遺伝子移入フラグメント」という用語は、染色体全体を含むことはなく、染色体の部分のみを含むことが理解される。遺伝子移入フラグメントは大きくてもよく、例えば、染色体の4分の3または半分でさえあってもよいが、それより小さいこと、例えば、約15Mb以下、例えば、約10Mb以下、約9Mb以下、約8Mb以下、約7Mb以下、約6Mb以下、約5Mb以下、約4Mb以下、約3Mb以下、約2.5Mbまたは2Mb以下、約1Mb(1,000,000塩基対に等しい)以下、または約0.5Mb(500,000塩基対に等しい)以下、例えば、約200,000bp(200キロ塩基対に等しい)以下、約100,000bp(100kb)以下、約50,000bp(50kb)以下、約25,000bp(25kb))以下であることが好ましい。
【0061】
「同質遺伝子植物(isogenic plant)」という用語は、本発明の変異型アレルを除いて遺伝的に同一である2種の植物を指す。偽単為結果性の果実形成形質の影響を検討するために、目的の植物系統(または品種)を、偽単為結果性の果実形成形質を引き起こす変異型アレルを含む植物と交配し、所望の形質を発現する後代を選抜することができる。場合により、植物の表現型における偽単為結果形質に対する遺伝的決定因子を決定することができるように、後代を1回または複数回自家受粉しなければならない場合がある。次いで、目的の植物系統(または品種)と同じ表現型を有し、かつ、偽単為結果形質の遺伝的決定因子を発現する後代を選抜しながら、上記後代を目的の植物系統(または品種)と戻し交配(少なくとも2回、例えば、3回、4回、または好ましくは5回もしくは6回)させる場合がある。次いで、目的の植物系統(品種)と、偽単為結果性の果実形成形質に対する遺伝的決定因子を含まないその同質遺伝子系統との間で、偽単為結果性の果実形成形質を引き起こす変異型アレルの影響を比較することができる。
【0062】
「核酸配列」または「核酸分子」またはポリヌクレオチドという用語は、交換可能に使用され、一本鎖または二本鎖形態のDNAまたはRNA分子、特に本発明によるタンパク質またはタンパク質フラグメントをコードするDNAを指す。「単離された核酸配列」は、それが単離された自然環境にもはや存在しない核酸配列、例えば、細菌の宿主細胞または植物の核もしくは色素体のゲノムにおける核酸配列を指す。
【0063】
「タンパク質」、「ペプチド配列」、「アミノ酸配列」または「ポリペプチド」という用語は、交換可能に使用され、特定の作用様式、サイズ、三次元構造または起源に関係なく、アミノ酸鎖からなる分子を指す。したがって、タンパク質の「フラグメント」または「一部」は、依然として「タンパク質」と呼ばれることがある。「単離されたタンパク質」は、もはやその自然環境に存在しないタンパク質、例えば、in vitroまたは組換え細菌または植物の宿主細胞におけるタンパク質を指すために使用される。
【0064】
「活性タンパク質」または「機能性タンパク質」は、in vitro、例えば、in vitro活性アッセイによって、および/またはin vivo、例えば、タンパク質により付与される表現型によって測定可能なタンパク質活性を有するタンパク質である。「野生型」タンパク質は、野生型植物に存在するように、完全に機能するタンパク質である。「変異型タンパク質」は、本明細書において、タンパク質をコードする核酸配列に1つまたは複数の変異を含むタンパク質であり、上記変異は、変化した活性を有するタンパク質(変異型核酸分子がコードするタンパク質)をもたらす。
【0065】
本明細書に記載のタンパク質の「機能的誘導体」は、タンパク質のフラグメント、バリアント、アナログ(analog)または化学的誘導体であり、かつ、その活性の少なくとも一部または変異型タンパク質に特異的な抗体との免疫学的交差反応性の少なくとも一部を保持する。
【0066】
変異型タンパク質のフラグメントは、分子の任意のサブセットを指す。
【0067】
バリアントのペプチドは、直接化学合成によって、例えば、当技術分野で周知の方法を使用して、作製され得る。
【0068】
変異型タンパク質のアナログは、タンパク質全体またはその断片のいずれかに実質的に類似する非天然タンパク質を指す。
【0069】
核酸分子における「変異」は、野生型配列と比較した1つまたは複数のヌクレオチドの変化、例えば、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入による変化である。
【0070】
タンパク質を構成するアミノ酸分子における「変異」は、野生型配列と比較した1つまたは複数のアミノ酸の変化、例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入による変化である。このようなタンパク質は、「変異型タンパク質」とも呼ばれる。
【0071】
「点変異」は、単一のヌクレオチドの置換、または単一のヌクレオチドの挿入もしくは欠失である。
【0072】
「ナンセンス変異」は、タンパク質をコードする核酸配列中の(点)変異であり、これにより、核酸分子中のコドンが終止コドンに変化する。これは、mRNA中に存在する未成熟終止コドンをもたらし、トランケートされたタンパク質の翻訳をもたらす。トランケートされたタンパク質の機能は低下または喪失している場合がある。
【0073】
「ミスセンスまたは非同義変異」は、タンパク質をコードする核酸配列中の(点)変異であり、これにより、コドンは変化して異なるアミノ酸をコードする。得られたタンパク質の機能は低下または喪失している場合がある。
【0074】
「スプライス部位変異」は、タンパク質をコードする核酸配列中の変異であり、これにより、プレmRNAのRNAスプライシングが変化し、野生型と異なるヌクレオチド配列を有するmRNAおよび異なるアミノ酸配列を有するタンパク質が生じる。得られたタンパク質の機能は、低下または喪失している場合がある。
【0075】
「フレームシフト変異」は、タンパク質をコードする核酸配列中の変異であり、これにより、mRNAのリーディングフレームが変化し、異なるアミノ酸配列をもたらす。得られたタンパク質の機能は、低下または喪失している場合がある。
【0076】
本発明の文脈において、「欠失」は、所与の核酸配列中の任意の位置において、少なくとも1つのヌクレオチドが対応する野生型配列の核酸配列と比較して欠損しているか、または所与のアミノ酸配列中の任意の位置において、少なくとも1つのアミノ酸が対応する(野生型)配列のアミノ酸配列と比較して欠損していることを意味する。
【0077】
「トランケーション」は、ヌクレオチド配列の3’末端もしくは5’末端のいずれかにおける少なくとも1つのヌクレオチドが、対応する野生型配列の核酸配列と比較して欠損しているか、またはタンパク質のN末端もしくはC末端のいずれかにおいて少なくとも1つのアミノ酸が、対応する野生型タンパク質のアミノ酸配列と比較して欠損しており、これにより、3’末端もしくはC末端のトランケーションにおいて、それぞれ、少なくとも5’末端の1番目のヌクレオチドまたはN末端の1番目のアミノ酸が依然として存在し、5’末端もしくはN末端のトランケーションにおいて、それぞれ、少なくとも3’末端の最後のヌクレオチドまたはC末端の最後のアミノ酸が依然として存在することを意味すると理解されるべきである。5’末端は、対応する野生型核酸配列の翻訳において開始コドンとして使用されるATGコドンにより決定される。
【0078】
「置換」は、核酸配列中の少なくとも1つのヌクレオチドまたはタンパク質配列中の少なくとも1つのアミノ酸が、それぞれのタンパク質のコード配列中のヌクレオチドの交換により、それぞれ、対応する野生型核酸配列または対応する野生型アミノ酸配列と比較して異なることを意味する。
【0079】
「挿入」は、タンパク質の核酸配列またはアミノ酸配列が、それぞれ、対応する野生型核酸配列または対応する野生型アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つの追加のヌクレオチドまたはアミノ酸を含むことを意味する。
【0080】
本発明の文脈において、「未成熟終止コドン」は、対応する野生型コード配列の終止コドンと比較して、5’末端の開始コドンに近いコード配列(cds)中に終止コドンが存在することを意味する。
【0081】
「調節配列中の変異」、例えば、遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー中の変異は、野生型配列と比較して1つまたは複数のヌクレオチドの変化、例えば、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入により、生じる遺伝子のmRNA転写産物が減少するか、または転写されなくなる変化である。
【0082】
本明細書で使用される場合、「作動可能に関連している」という用語は、機能的関係におけるポリヌクレオチド要素の関連を指す。核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に配置しているとき、「作動可能に関連している」。例えば、プロモーター、より厳密には転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に関連している。作動可能に関連しているとは、関連している核酸配列が通常隣接していることを意味する。
【0083】
「配列同一性」および「配列類似性」は、グローバルまたはローカルアラインメントアルゴリズムを使用した2種のペプチドまたは2種のヌクレオチド配列のアラインメントによって決定され得る。したがって、例えばGAPプログラムまたはBESTFITプログラムまたはEmbossプログラム「Needle」(デフォルトのパラメータを使用する、以下を参照)により、それらが最適に配置され、配列同一性について少なくとも一定の最小のパーセンテージ(at least a certain minimal percentage of sequence identity)(下記でさらに定義される)を共有する場合に、配列は「実質的に同一」と呼ばれる。これらのプログラムは、NeedlemanおよびWunschのグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、2種の配列を全長にわたってアラインさせ、マッチの数を最大化し、ギャップの数を最小化する。一般に、ギャップ生成ペナルティ=10およびギャップ伸長ペナルティ=0.5であるデフォルトのパラメータを使用する(ヌクレオチドおよびタンパク質のアラインメントの両方について)。ヌクレオチドの場合、使用するデフォルトのスコアリングマトリックスはDNAFULLであり、タンパク質の場合、デフォルトのスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 10915-10919)。配列アラインメントおよび配列同一性パーセンテージのスコアは、例えば、コンピュータプログラム、例えば、EMBOSS(インターネット上でebi.ac.uk(http://www.ebi.ac.uk under /Tools/psa/emboss_needle/)から入手可能)を使用して決定され得る。あるいは、配列類似性または配列同一性は、データベース、例えば、FASTA、BLAST等に対して検索することによって決定され得るが、ヒットを取得し、ペアごとにアラインさせて、配列同一性を比較する必要がある。配列同一性パーセンテージが少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%である(デフォルトのパラメータ(すなわちギャップ作成ペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティ=0.5)を使用し、核酸にはスコアリングマトリックスDNAFULLおよびタンパク質にはBlosum62を使用して、Embossの「Needle」によって決定される)場合に、2種のタンパク質もしくは2種のタンパク質ドメイン、または2種の核酸配列が「実質的な配列同一性」を有する。このような配列はまた、本明細書では「バリアント」とも呼ばれる。例えば、本明細書に開示される特定の核酸およびアミノ酸配列以外の、偽単為結果性の果実形成形質を引き起こすアレルのバリアントとタンパク質とを同定することができ、これらは本発明の植物と同じ効果を偽単為結果性の果実形成に及ぼす。
【0084】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、一般に、プローブ配列および標的配列の性質に応じて当業者に容易に明らかであるように、ストリンジェンシーの適切な条件(ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)における核酸のハイブリダイゼーションを意味するために使用される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は当技術分野で周知であり、溶液のインキュベーション時間、温度および/またはイオン強度を変化させることによる所望のストリンジェンシーに応じた条件の調整は容易に達成される。例えば、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照されたい。条件の選択は、ハイブリダイズする配列の長さ(特にプローブ配列の長さ)、核酸の相対的なG-C含有量および許容されるミスマッチの量によって影響される。相補性の程度がより低い鎖間の部分的ハイブリダイゼーションが望まれる場合には、低ストリンジェンシー条件が好ましい。完全またはほぼ完全な相補性が望まれる場合には、高ストリンジェンシー条件が好ましい。典型的な高ストリンジェンシー条件の場合、ハイブリダイゼーション溶液には、6×S.S.C.、0.01M EDTA、1×デンハルト溶液および0.5%SOSが含まれる。ハイブリダイゼーションは、クローン化されたDNAの断片については約68℃で約3時間~約4時間、および真核生物のトータルDNAについては約12時間~約16時間行われる。より低いストリンジェンシーの場合、ハイブリダイゼーションの温度は、二本鎖の融解温度(TM)より約42℃低くする。TMは、G-C含有量および二重鎖の長さに加えて溶液のイオン強度の関数であることが知られている。
【0085】
本明細書で使用される場合、DNAまたはRNA分子に「ハイブリダイズする」という語句は、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または任意のヌクレオチド配列(センスまたはアンチセンス配向で)をハイブリダイズする分子が、ほぼ同じサイズであり、適切な条件下でハイブリダイゼーションを行うのに十分な配列類似性を有する別の核酸の配列を認識し、その配列にハイブリダイズすることを意味する。例えば、ある遺伝子の3’コード領域または3’非コード領域由来の100ヌクレオチド長の分子は、2種の配列間に約70%以上の配列類似性が存在する限り、その遺伝子またはその他の植物の遺伝子の3’コードまたは3’非コード領域内のヌクレオチド配列の約100ヌクレオチドの部分を認識し、その部分にハイブリダイズする。対応する部分は、いくつかのミスマッチを許容し、その結果、対応する部分のサイズがそれにハイブリダイズする分子よりも小さくても大きくてもよく、例えば20~30%大きくても小さくてもよく、好ましくは約12~15%以下の範囲で大きくても小さくてもよいことを理解されたい。
【0086】
本明細書で使用される場合、「少なくとも70%の配列同一性を含む配列」または「少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を含む配列」または「少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を含む配列」という語句は、示されている参照配列と比較した場合に、少なくとも70%、例えば、少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有する配列を意味する。配列同一性は、本明細書に記載の方法に従って決定され得る。
【0087】
上記の定義によれば、本発明の文脈における野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルである遺伝的決定因子のオーソログまたはオーソロガス配列は、トウガラシ以外の異なるナス科種において偽単為結果性の果肉形成を付与するアレル(例えば、ナス科の別の種におけるトウガラシSSPER-1遺伝子のオーソログの変異型アレルであって、その種においてホモ接合型である場合に偽単為結果性の果実形成を引き起こす変異型アレル)、すなわち、本発明の変異型アレルのオーソログを指す。ここで、その遺伝子によってコードされるオーソロガスなゲノム配列は、配列番号4によって記載される核酸に対する実質的な配列同一性、すなわち少なくとも65%(例えば、少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%)の配列同一性を有し、かつ/あるいは、その遺伝子によってコードされるオーソロガスなアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列に対して実質的な配列同一性、すなわち少なくとも65%(例えば、少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%)の配列同一性を有する。
【0088】
遺伝子またはDNA配列の「フラグメント」は、分子の任意のサブセット、例えば、より短いポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを指す。一態様において、フラグメントは、本発明によって定義される変異を含む。
【0089】
遺伝子またはDNAの「バリアント」は、遺伝子全体またはそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する分子、例えば、1つまたは複数の置換ヌクレオチドを有するが、特定の遺伝子とハイブリダイズする能力または天然のDNAとハイブリダイズするmRNA転写産物をコードする能力を保持するヌクレオチド置換バリアントを指す。好ましくは、バリアントは、本発明によって定義されるような変異型アレルを含む。
【0090】
本明細書で使用される場合、「植物」という用語は、植物全体またはその任意の部分またはその派生物、例えば、植物器官(例えば、収穫されたまたは収穫されていない花、葉等)、植物細胞、植物プロトプラスト、植物全体を再生し得る植物細胞培養物または植物組織培養物、再生可能または再生不可能な植物細胞、植物カルス、植物細胞塊、および植物または植物部分(例えば、胚、花粉、胚珠、子房(例えば、収穫された組織もしくは器官)、花、葉、種子、塊茎、クローン的に繁殖した植物、根、茎、子葉、胚軸、根端等)におけるインタクトな(intact)植物細胞を含む。また、任意の発育段階(例えば、実生、幼若および成熟等)が含まれる。好ましくは、植物部分または派生物は、本発明によって定義されるような遺伝子または遺伝子座を含む。
【0091】
「植物系統」または「育種系統」は、植物およびその後代を指す。
【0092】
「植物品種」とは、知られている最下層の同じ植物分類群内の植物のグループである。それは(植物育種者の権利の認識に関する条件が満たされているか否かに関係なく)、特定の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせに起因する特徴であって、それらの特徴の少なくとも1つの発現によってその他の植物群と区別可能であり、かつ、それらの変化を伴うことなく増殖可能であるために本質的特徴と見なすことができる特徴の発現に基づいて定義され得る。したがって、「植物品種」という用語は、たとえ同じ種類であっても、それらがすべて1つの遺伝子座または遺伝子(またはこの単一の遺伝子座または遺伝子に起因する一連の表現型の特徴)の存在を特徴とするが、その他の遺伝子座または遺伝子に関しては互いに大幅に異なる場合には、植物のグループを表すために使用することはできない。「F1、F2等」とは、2個体の親植物または親系統間の交配後に連続的に関連する世代を指す。2個体の植物または系統を交配することによって生産される種子から成長した植物は、F1世代と呼ばれる。F1植物を自家受粉すると、F2世代等になる。「F1ハイブリッド」植物(またはF1種子、またはハイブリッド)は、2個体の近交系親系統を交配することから得られる世代である。したがって、「自家受粉」とは、植物の自家受粉、すなわち同じ植物からの配偶子の結合を指す。
【0093】
「戻し交配」とは、(単一の)形質、例えば、偽単為結果性の果実形成の能力をある遺伝的背景(「ドナー」とも呼ばれる;一般的に劣性の遺伝的背景であるが、必ずしもそうではない)から別の遺伝的背景(「反復親」とも呼ばれる;一般的に優性の遺伝的背景ではあるが、必ずしもそうではない)に移入することができる育種方法を指す。交配の子孫(例えば、本発明の変異型アレルを含む特定の植物種の第1の植物を、同じ植物種である第2の植物または上記第1の植物種と交配することができる異なる植物種である第2の植物と交配することによって得られるF1植物であって、上記第2の植物種が本発明の変異型アレルを含まない、上記F1植物;またはF1を自家受粉することによって得られるF2植物もしくはF3植物等)を、上記第2の植物種の親植物に「戻し交配」する。戻し交配を繰り返した後、ドナーの遺伝的背景の特徴、例えば偽単為結果性の果実形成形質を付与する変異型アレルは、反復親の遺伝的背景(recurrent genetic background)に組み込まれている。この文脈における「遺伝子変換(gene converted)」または「変換植物(conversion plant)」または「単一遺伝子座変換(single locus conversion)」という用語は、戻し交配により作出され、反復親の所望の形態学的および/または生理学的特徴の本質的にすべてがドナーの親から移された1つまたは複数の遺伝子に加えて回復されている植物を指す。F1植物の第2の親植物系統との戻し交配によって生産された種子から成長した植物は、「BC1世代」と呼ばれる。BC1集団からの植物は、自家受粉されてBC1F2世代をもたらし得、あるいは、栽培された親植物系統と再び戻し交配されてBC2世代を提供し得る。「M1集団」は、特定の植物系統の変異誘発された複数の種子/植物である。「M2、M3、M4等」は、最初の変異誘発種子/植物(M1)の自家受粉後に得られる連続世代を指す。
【0094】
「ナス科植物」または「ナス科の植物」は、植物学的なナス科の植物、すなわち、ナス科の任意の植物、例えば、野生のナス科植物および栽培されたナス科植物である。植物学的なナス科は、約98属で構成されており、そのうちナス属およびトウガラシ属は、経済的に非常に重要な食用作物として広く栽培および使用されている多くの栽培化された種を含むため、商業的に最も関連性がある。
【0095】
トウガラシ属(genus Capsicum)は20~27種で構成され、そのうち5種:C.annuum(トウガラシ);C.baccatum(キイロトウガラシ);C.chinense(カプシクム・キネンセ);C.frutescens;およびC.pubescensは栽培化されている。種間の系統発生関係は、生物・地理学的データ、形態学的データ、化学体系的データ、雑種形成データおよび遺伝的データを使用して調査されてきた。「ペッパー」または「ペッパー果実(pepper fruits)」と呼ばれることも多いトウガラシ属種の果実は、種間および種内の両方で色、形状およびサイズが大きく異なる場合がある。化学体系的研究は、品種間および種間の違いを区別するのに役立った。
【0096】
Capsicum annuum L.(トウガラシ)植物は、本発明の文脈において特に関連性のあるナス科の草本植物である。トウガラシ植物は、約0.5~1.5メートル(約20~60インチ)に到達する。単一の白い花は、ペッパー果実を実らせるが、この実は、熟していないときは緑色であり、いくつかの品種は茶色または紫色に熟すことがあるが、基本的に赤色に変化する。この種はほとんどの気候に耐え得るが、特に暖かく乾燥した気候において生産性が高い。トウガラシ種の栽培植物には、様々な種類のペッパー、例えば、ピーマン、カイエンペッパー、パプリカおよびハラペーニョが含まれる。「トウガラシ染色体3(Capsicum annuum chromosome 3)」は、当技術分野で知られているトウガラシ染色体3(Capsicum annuum cv CM334のゲノム染色体(リリース1.55)およびCapsicum annuum UCD10Xのゲノム染色体(v1.0)およびCapsicum annuum zunlaのゲノム染色体(v2.0)を参照)を指す。「オーソロガス染色体3(Orthologous chromosome 3)」は、トウガラシの近縁種の対応する染色体を指す。
【0097】
ナス属(genus Solanum)は、非常に重要な食用作物であるS.lycopersicum(トマト)、S.melongena(ナス)およびS.tuberosum(ジャガイモ)を含む約1330種で構成されている。
【0098】
トマト植物または「トマト植物」は、本発明の文脈において特に関連性のあるナス科のさらなる草本植物である。トマト植物は、その本来の自生地では多年生植物であるが、一年生植物として栽培されている。栽培されたトマト植物は、通常、高さが1~3メートル(3~10フィート)まで成長する。トマトの果実は、植物学的にはベリータイプの果実であり、料理用の野菜と見なされている。果実のサイズは栽培品種によって異なり、幅は約1~10cm(約0.5~4インチ)である。トマトは、Lycopersicon lycopersicum(L.)H.KarstまたはLycopersicon esculentum Millとしても知られている。「栽培トマト植物」または「栽培トマト」という用語は、人によって栽培され、良好な農業的特性を有するトマト植物、例えば、トマト種の品種、育種系統または栽培品種を指す。「トマトの野生近縁種」には、S.arcanum、S.chmielewskii、S.neorickii(=L.parviflorum)、S.cheesmaniae、S.galapagense、S.pimpinellifolium、S.chilense、S.corneliomulleri、S.habrochaites(=L.hirsutum)、S.huaylasense、S.sisymbriifolium、S.peruvianum、S.hirsutumまたはS.pennelliiが含まれる。トマトおよびトマトの野生近縁種は二倍体であり、1~12までの番号が付けられた12対の相同染色体を有する。
【0099】
ナス植物または「ナス」または「ナス(aubergine)植物」は、本発明の文脈において特に関連性のあるナス科のさらなる草本植物である。卵形の光沢のある濃い紫色から白色の果実は、肉質の白い果肉を有する。ナス植物は、高さが約40~150cm(約1.3~5フィート)まで成長し、長さが約10~20cm(約3~8インチ)で、幅が約5~10cm(約2~4インチ)である大きくて粗い浅裂の葉を有する。
【0100】
「栽培植物」または「栽培品種」という用語は、人によって栽培され、良好な農業的特性を有する所与の種、例えば、上記種の品種、育種系統または栽培品種を指す。いわゆる在来品種または在来栽培品種、すなわち、人類の歴史の初期に一般的に生育され、特定の地理的地域にしばしば適応された開放授粉品種または開放授粉栽培品種は、栽培植物として本明細書に含まれる本発明の一態様にある。「栽培植物」という用語は、野生植物を含まない。「野生植物」には、例えば野生の系統(wild accession)が含まれる。
【0101】
「食物」という用語は、身体に栄養サポートを提供するために消費される任意の物質である。通常、植物または動物由来であり、必須栄養素、例えば、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミンまたはミネラルが含まれる。この物質は、生物によって摂取され、生物の細胞によって吸収されて、エネルギーを生成し、生命を維持し、あるいは成長を刺激する。食物という用語には、人体および動物の身体に栄養サポートを提供するために消費される物質の両方が含まれる。
【0102】
「栄養繁殖」または「クローン繁殖」は、栄養組織からの植物の繁殖、例えば、挿し木からの植物の繁殖またはin vitro繁殖による繁殖を指す。in vitro繁殖は、in vitro細胞培養またはin vitro組織培養、およびin vitro培養物からの植物全体の再生(regeneration)に関係する。したがって、元の植物のクローン(すなわち、遺伝的に同一の栄養繁殖)は、in vitro培養によって生じ得る。「細胞培養物」または「組織培養物」は、植物の細胞または組織のin vitro培養物を指す。「再生」とは、細胞培養物または組織培養物または栄養繁殖物からの植物の発育を指す。「非繁殖細胞」とは、植物全体に再生することができない細胞を指す。
【0103】
「平均」は、本明細書では算術平均を指す。
【0104】
異なる植物系統間の比較は、1種または2種以上の対照植物系統の植物(好ましくは野生型の植物)と同じ条件下における、ある系統(または品種)の複数個体の植物(例えば、系統ごとに少なくとも5個体の植物、好ましくは少なくとも10個体の植物)の生育と、同じ環境条件下で栽培された場合の植物系統間の統計的に有意な差の決定とを含むことが理解される。好ましくは、植物は同じ系統または品種のものである。
【0105】
「偽単為結果」または「偽単為結果性の果実形成」という用語は、一般に当技術分野で理解されており、本発明との関連で、果実の着果および発育の誘導が受粉を必要とするが、成熟した種子または生存可能な種子を生じる果実が存在しないことを意味すると理解されるべきである。偽単為結果において、抑止された種子発育または胚珠および/もしくは胚芽の退化または胚珠および/もしくは胚芽および/もしくは内胚乳の発育不全により、成熟に達する前に成熟した種子または生存可能な種子が発育しない。「単為結果」または「単為結果性の果実形成」という用語は、当技術分野で一般に理解されており、本発明との関連で、雌性胚珠の受精を伴わずに果実が発育することを説明すると理解されるべきである。受粉過程は、果実の形成に必要なく、果実は受粉の欠如のために種なしである。したがって、本明細書で使用される「偽単為結果性の果実形成が可能な植物」または「偽単為結果形質を有する植物」という用語は、着果および果実の発育の誘導に受粉を必要とするが、成熟した種子または生存可能な種子を生じる果実を伴わない果実を発育する植物を表す。当技術分野、特に育種において一般的に使用される「種なし果実」は、「果実」の植物学的意味と何らかの形で矛盾しているが、本発明の文脈において、実質的に成熟した種子または生存可能な種子を有しない果実であると理解されるべきである。成熟した種子または生存可能な種子は、それぞれの植物に適した条件下において土壌中で発芽して植物に成長することができる。この試験を使用して、植物が種なし果実を形成するか否かを決定することができる。種なし果実は、それぞれの植物に適した条件下において発芽して植物に成長する種子を実質的に形成しない。本発明の文脈において、「種なし果実」または「実質的に種子を含まない果実」という用語は、好ましくは、平均して、通常の果実の生存可能な種子の5%以下、例えば、通常の果実の生存可能な種子の4%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下または0.5%以下を含む果実を表すと理解される。
【0106】
この文書およびその特許請求の範囲において、動詞「含む」およびその活用形は、その単語に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目が除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される。さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、文脈が要素の1つおよび1つだけが存在することを明確に要求しない限り、要素が複数存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は通常「少なくとも1つ」を意味する。本明細書で「配列」に言及する場合、一般に、サブユニットの特定の配列(例えば、アミノ酸または核酸)を有する実際の物理的分子が言及されることがさらに理解される。
【0107】
本発明の植物および方法
本発明は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物であって、上記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記植物を提供する。
【0108】
本発明者らは、驚くことに、ナス科の植物における野生型SSPER-1タンパク質の正常なタンパク質機能が、受粉時の成熟した種子および/または生存可能な種子の発育に不可欠であることを見出した。さらに驚くことに、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルは、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こすことが見出された。本発明による変異型アレルは、本明細書において、好ましくは、stenospermocarpy pepper 1を表すSSPER-1と呼ばれる野生型遺伝子のバリアントを表す。さらに驚くことに、本発明による植物から生じ得る種なし果実は、正常な形状およびサイズを有することが見出された。特に、種なし果実を生じる本発明の植物における悪影響は、果実の数、果実のサイズおよび果皮の厚さに関して観察されなかった。これは、従来技術に対して大幅な改善を提供する。例えば、現在入手可能な種なしペッパーは、すべて単為結果に基づいており、それらの同質遺伝子の非単為結果の対応物と比較した際、および/または条件的単為結果形質の場合における普通に受精した種なしではない対応物と比較した際に、果実のサイズおよび/または果実の形状が変化することを特徴とする。
【0109】
したがって、本発明は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物であって、変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こす植物を提供する。野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性(本明細書の他の場所に開示されている方法を使用して決定される)を有するタンパク質をコードする。
【0110】
一実施形態において、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルは、SSPER-1遺伝子によってコードされるタンパク質の正常な(野生型)タンパク質機能の障害をもたらす。したがって、本明細書に記載の変異型アレルは、野生型SSPER-1遺伝子の発現低下または発現消失をもたらし得る。本明細書に記載の変異型アレルはまた、野生型タンパク質と比較した場合に、機能が低下または喪失しているタンパク質をコードし得る。したがって、ホモ接合型で存在する場合に偽単為結果性の果実形成を引き起こす変異型アレルは、そうでなければ機能的なSSPER-1遺伝子産物の発現低下または発現喪失にさえ関連している場合がある。非限定的な例において、そのような発現低下または発現喪失は、SSPER-1遺伝子の調節領域、例えば、SSPER-1遺伝子のプロモーター配列における1つまたは複数の変異の結果である場合がある。さらなる非限定的な例において、そのような発現低下または発現喪失は、SSPER-1遺伝子産物(例えば、野生型SSPER-1タンパク質の機能的バリアント)の正常な(野生型)発現に必要とされる転写因子における1つまたは複数の変異の結果である場合がある。さらなる非限定的な例において、そのような発現低下または発現喪失は、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAiの結果である場合がある。所与の遺伝子の発現レベルを決定するための手段および方法は、当技術分野で周知であり、特定のmRNAの検出および定量のための定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT-PCR)および特定のタンパク質の検出および定量のための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含むがこれらに限定されない。ホモ接合型で存在する場合に偽単為結果性の果実形成を引き起こす変異型アレルは、野生型タンパク質と比較した場合に、機能が低下または喪失しているタンパク質(例えば、野生型SSPER-1タンパク質の非機能的バリアント)の発現に関連している場合がある。非限定的な例において、そのような機能低下または機能喪失は、SSPER-1遺伝子のコード領域における変異、例えば、野生型タンパク質と比較して1つまたは複数のアミノ酸が置換(例えば、フレームシフト変異またはミスセンス変異による)、挿入または削除されている変異の結果である場合がある。タンパク質機能を決定するための手段および方法は、当技術分野で周知であり、明細書において上でさらに記載のように、正常なタンパク質機能の表現型試験アッセイ(例えば、果実における成熟した種子および/または生存可能な種子の正常な形成の検出)、酵素活性の定量が可能なバイオアッセイおよびタンパク質機能に影響を与えるアミノ酸変化についてのin silico予測を含むがこれらに限定されない。
【0111】
したがって、本発明の一実施形態において、ナス科、特に、トウガラシ属種またはナス属種の植物細胞または植物であって、以下の変異:
(a)ゲノム配列中の欠失、トランケーション、挿入、点変異、ナンセンス変異、ミスセンスもしくは非同義変異、スプライス部位変異、フレームシフト変異;
(b)1種もしくは2種以上の調節配列中の変異;
(c)コード配列中の欠失、トランケーション、挿入、点変異、ナンセンス変異、ミスセンスもしくは非同義変異、スプライス部位変異、フレームシフト変異;
(d)プレmRNAもしくはmRNA中の欠失、トランケーション、挿入、点変異、ナンセンス変異、ミスセンスもしくは非同義変異、スプライス部位変異、フレームシフト変異;および/または
(e)SSPER-1タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸の欠失、トランケーション、挿入もしくは置換
からなる群から選択された1つまたは複数の変異を含むか、あるいは当該変異に影響を与える変異型ssper-1アレルを特徴とするSSPER-1タンパク質をコードする遺伝子の変異型アレルを含む、上記植物細胞または植物に関する。
【0112】
上記の変異型アレルは、それぞれの種における野生型SSPER-1タンパク質と比較して変異型SSPER-1タンパク質の活性の低下をもたらす。活性の低下は、SSPER-1遺伝子発現のノックアウト、当該遺伝子発現のノックダウン、コードされた変異型SSPER-1タンパク質の機能喪失、または変異型SSPER-1タンパク質の機能低下のためである。
【0113】
一実施形態において、本発明は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルを含む植物であって、野生型タンパク質と比較した場合に、本明細書に記載の変異型アレルがトランケートされたタンパク質をコードする、上記植物を提供する。一実施形態において、トランケートされたssper-1タンパク質は、配列番号1の最大でアミノ酸残基1~500またはそのフラグメントを含み、これは、本発明の文脈において、トランケートされたタンパク質が、配列番号1の最大でアミノ酸残基1~500(すなわち、配列番号1のアミノ酸1で始まり(アミノ酸1を含む)、最大でアミノ酸500で終わる(アミノ酸500を含む)アミノ酸残基)または配列番号1の上記アミノ酸残基1~500の間の任意のフラグメントを意味する。例えば、本発明のトランケートされたタンパク質は、配列番号1の最大でアミノ酸残基1~400もしくはそのフラグメント、配列番号1の最大でアミノ酸残基1~300もしくはそのフラグメント、または配列番号1の最大でアミノ酸残基1~400もしくはそのフラグメントを含む。一実施形態において、本発明のトランケートされたssper-1タンパク質はホメオボックスドメインを含む。さらなる実施形態において、本発明のトランケートされたssper-1タンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基118~175(すなわち、アミノ酸118で始まり(アミノ酸118を含む)、アミノ酸175で終わる(アミノ酸175を含む)アミノ酸残基)を含む。一実施形態において、トウガラシ種における変異型ssper-1アレルは、配列番号4に示される変異型ssper-1 cDNA(mRNA)配列である。一実施形態において、トウガラシ種の変異型ssper-1アレルは、配列番号3に示される変異型ssper-1タンパク質をコードする。
【0114】
本発明の植物は、ナス科の植物である。一実施形態において、本発明は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むトウガラシ属の植物であって、変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記植物を提供する。上記トウガラシ属の植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性(本明細書の他の場所に開示されている方法を使用して決定される)を有するタンパク質をコードする。一実施形態において、本発明は、トウガラシ植物、カプシクム・キネンセ植物、キイロトウガラシ植物、ナス植物、Solanum pennellii植物またはトマト植物である植物を提供する。上記トウガラシ植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。上記カプシクム・キネンセ植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号5に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号5に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。上記キイロトウガラシ植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号7に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号7に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。上記ナス植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号9に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号9に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。上記トマト植物において、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号13に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号13に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0115】
本発明による植物は、本明細書で提供される変異型アレルの少なくとも1コピーを含む。したがって、そのような植物は、本発明の変異型アレルについてヘテロ接合性であり得る。そのようなヘテロ接合性植物は、野生型アレルの(少なくとも)1コピーおよび本発明の変異型アレルの(少なくとも)1コピーを含む。そのようなヘテロ接合性植物は、生じた果実が成熟した種子および/または生存可能な種子を部分的に含む(すなわち、ホモ接合性野生型植物の相当する果実と比較した場合に、成熟した種子および/または生存可能な種子の数が少ない)表現型を示し得る。したがって、本発明はまた、ヘテロ接合型の本発明の変異型ssper-1アレルを含む植物も対象とする。そのようなヘテロ接合性植物はまた、本明細書で以下にさらに記載されるように、変異型ssper-1アレルについてホモ接合性である子孫を得るための育種に有利に使用され得る。一実施形態において、本発明は、本発明の変異型アレルについてホモ接合性である植物を提供する。そのような植物は、とりわけ、本明細書で以下にさらに記載されるように、偽単為結果性の果実形成が可能であることを特徴とする。
【0116】
本発明の植物は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含む、本明細書に記載のナス科の任意の植物であり得る。一実施形態において、本発明は、さらに近交系植物、二ゲノム性半数体(dihaploid)植物またはハイブリッド植物である、本明細書に記載の植物を提供する。したがって、一態様において、本発明は、近交系植物である本発明の植物を提供する。例えば自家交配工程を繰り返すことによって、そのような近交系植物のホモ接合性は高くなる。このような近交系植物は、F1ハイブリッド種子の生産のための親植物として非常に有用であり得る。一態様において、本開示は、本明細書に記載の変異型ssper-1アレルを含む、本明細書に包含される本発明の植物の半数体植物および/または二ゲノム性半数体(倍加半数体(double haploid))植物を提供する。半数体および二ゲノム性半数体植物は、例えば、葯または小胞子(microspore)の培養および植物全体への再生によって生産可能である。二ゲノム性半数体の生産のために、既知の方法、例えば、コルヒチン処理等を使用して染色体の倍加を誘導することができる。したがって、一態様において、記載されているような偽単為結果性の果実形成表現型を含み、二ゲノム性半数体植物であるナス科植物が提供される。本発明はさらに、利点、例えば、均一性の向上、生命力および/または耐病性を有し得るハイブリッド植物を提供する。
【0117】
本発明によって提供される植物は、果実を生産するために使用され得る。したがって、本発明は、消費用作物としての、本明細書で提供されるナス科の植物の使用を提供する。特に、本発明の植物から生じた果実は、これらの果実が生存可能な種子および/または成熟した種子を著しく少なくまたは実質的に全く含まないため、消費用の作物として有利に使用され得る。
【0118】
本発明によって提供される植物は、繁殖材料を生産するために使用され得る。そのような繁殖材料は、有性生殖に適したおよび/または有性生殖から生じる繁殖材料、例えば、花粉および種子を含む。そのような繁殖材料は、無性生殖もしくは栄養繁殖に適したおよび/またはそれらから生じる繁殖材料、例えば、挿し木、接ぎ木、塊茎、細胞培養物および組織培養を含むがこれらに限定されない繁殖材料を含む。したがって、本発明は、繁殖材料の供給源としての、本明細書で提供されるナス科の植物の使用をさらに提供する。
【0119】
種子
本発明は、本発明による任意の植物が成長し得る種子を提供する。さらに、本発明は、複数のそのような種子を提供する。表現型的に(偽単為結果性の形成表現型を有する植物に基づく)および/または細胞もしくは組織中の変異型アレルを検出するための分子的な方法(例えば、本発明の変異型アレルを検出するための分子的な遺伝子型決定法または配列決定)を使用して、本発明の種子は、本明細書に記載の野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの存在によりその他の種子と区別可能である。種子には、例えば、変異型アレルについてヘテロ接合性である本発明の植物から、自家受粉後および場合により変異型アレルの1もしくは2コピーを含む種子の選抜(例えば、非破壊的な種子のサンプリング法およびssper-1アレルの存在の分析による選抜)後に得られた種子、または他家受粉(例えば、他のナス科植物からの花粉による本発明の植物の受粉、または本発明の植物の花粉による別のナス科植物の受粉)後に生じた種子が含まれる。
【0120】
特に、本発明は、本発明による植物から生じた花粉もしくは種子、または本発明の植物が成長し得る種子を提供し、ここで、上記植物は、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物であって、変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こす植物であり、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0121】
特に、本発明は、本発明による植物から生じた花粉もしくは種子、または本発明の植物が成長し得る種子を提供し、ここで、花粉または種子は、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こすことができる、野生型SSPER-1遺伝子の本明細書で定義された変異型アレルを含む。特に、本発明は、本発明の植物が成長し得る種子を提供する。
【0122】
一態様において、種子が、変異型ssper-1アレルについてヘテロ接合性である第1のナス科植物と野生型SSPER-1アレルについてホモ接合性である第2のナス科植物とを交配することによって生産され、これにより、上記交配によって収穫される種子の約50%は、変異型ssper-1アレルについてホモ接合性であり、収穫された種子の約50%は、変異型ssper-1アレルについてヘテロ接合性である。この方法では、場合により、例えば非破壊的な種子DNAサンプリングを使用して、変異型ssper-1アレルについてホモ接合性の種子を選抜し、あるいは、例えば子葉または葉のサンプルのDNA分析を使用して、変異型SSPER-1アレルについてホモ接合性の実生を選抜する。したがって、一態様において、変異型ssper-1アレルについてホモ接合性である種子または実生を選抜する方法が、本明細書において提供される。この方法は、変異型ssper-1アレルについて分離する(segregate)複数の種子を準備する工程、ならびにa)非破壊的な種子サンプリングと種子における変異型ssper-1アレルの有無の分析とを使用して、変異型ssper-1アレルを2コピー含む種子を選抜する工程、および/またはb)種子を発芽させ、変異型ssper-1アレルの有無について実生の子葉または葉のサンプルを分析して、変異型ssper-1アレルを2コピー含む実生を選抜する工程を含む。選抜された種子または選抜された実生から成長した植物は、種なし果実を生じる。したがって、それらは顧客に販売可能である。選抜された複数の種子または実生は、そのすべてが変異型ssper-1アレルについてホモ接合性であり、本発明の一実施形態である。
【0123】
本発明はさらに、本明細書に記載の植物を生産する方法から得られる種子を提供する。
【0124】
一態様において、複数の種子が容器(例えば、バッグ、カートン、缶等)に包装される。容器は任意のサイズであり得る。種子は、(丸剤またはペレットを形成するために)パッキングする前にペレット化されてもよく、かつ/あるいは、種子コーティングを含む様々な化合物により処理されてもよい。
【0125】
植物部分および栄養繁殖
さらなる態様において、本発明の植物から得られる(から得ることができる)植物部分、および上記植物部分を含む容器またはパッケージが本明細書で提供される。
【0126】
特に、本発明は、本発明の植物からの部分であって、その部分が、本明細書に記載の変異型ssper-1アレルの少なくとも1コピーをそのゲノム中に含み、好ましくは、その部分が、果実、葉、葯、雌しべ、茎、葉柄、根、胚珠、花粉、プロトプラスト、組織、種子、花、子葉、胚軸、胚または細胞からなる群から選択される、部分を提供する。したがって、本発明は、本発明による植物の部分であって、上記植物の部分が、葉、葯、雌しべ、茎、葉柄、根、胚珠、花粉、プロトプラスト、組織、種子、花、子葉、胚軸、胚または細胞であり、上記植物の部分が、本明細書に記載の変異型ssper-1アレルの少なくとも1コピーをそのゲノム中に含む、上記植物の部分を提供する。変異型ssper-1アレルの少なくとも1コピーをそのゲノム中に含む本発明による植物の部分は、好ましくは、本明細書に記載の変異型ssper-1アレルについてホモ接合性である。上記された植物部分の発育の様々な段階が本発明に含まれる。
【0127】
特に、本発明の植物から生じた果実が提供される。本発明による植物は、SSPER-1遺伝子の変異型アレルについてヘテロ接合性であり得る。そのようなヘテロ接合性植物から生じた果実は、SSPER-1遺伝子の野生型アレルについてホモ接合性である相当する植物から生じた果実と区別可能である表現型をすでに示している場合がある。例えば、ヘテロ接合性植物は、相当するホモ接合性野生型植物の果実と比較した場合に、種子数が減少している成熟した種子および/または生存可能な種子を含む果実を生じ得る。好ましくは、果実は、SSPER-1遺伝子の変異型アレルについてホモ接合性であり、種なしである。したがって、本発明は、具体的に、植物がホモ接合型の本発明の変異型ssper-1アレルを含むトウガラシ植物、カプシクム・キネンセ植物またはキイロトウガラシ植物の場合には種なしペッパー果実を提供し、植物がホモ接合型の本発明の変異型ssper-1アレルを含むナス植物である場合には種なしナス果実を提供し、かつ、植物がホモ接合型の本発明の変異型ssper-1アレルを含むトマト植物である場合には種なしトマト果実を提供する。本発明はさらに、本明細書に記載される植物から生じた果実を含む(加工された)食品を提供する。好ましくは、上記(加工された)食品に含まれる果実は、SSPER-1遺伝子の変異型アレルについてホモ接合性であり、したがって種なしである植物から生じる。
【0128】
好ましくは、SSPER-1遺伝子の変異型アレルについてホモ接合性である果実は、SSPER-1遺伝子の野生型アレルを2コピー含む遺伝的に同一の植物の果実と比較した場合に、同じ形状および/またはサイズを有する。驚くことに、本発明の文脈において、本発明による植物から生じ得る種なし果実は、正常な形状およびサイズを有することが見出された。したがって、本発明は、遺伝的に同一の野生型植物(すなわち、SSPER-1遺伝子の野生型アレルを2コピー含む植物)の果実と比較した場合に、同じ形状および/またはサイズを有する、ナス科の植物から生じる種なし果実を初めて提供する。
【0129】
本発明はさらに、本発明による植物の部分であって、上記植物の部分が、葉、葯、雌しべ、茎、葉柄、根、胚珠、花粉、プロトプラスト、組織、種子、花、子葉、胚軸、胚または細胞であり得る
【0130】
さらなる態様において、植物部分は植物細胞である。さらに別の態様において、植物部分は、再生不可能な細胞または再生可能な細胞である。別の態様において、植物細胞は体細胞である。
【0131】
再生不可能な細胞は、in vitro培養によって植物全体に再生することができない細胞である。再生不可能な細胞は、本発明の植物または植物部分(例えば、葉)中に存在する場合がある。再生不可能な細胞は、種子中の細胞中または上記種子の種皮中の細胞であり得る。成熟した植物器官、例えば、成熟した葉、成熟した茎または成熟した根は、少なくとも1個の再生不可能な細胞を含む。
【0132】
さらなる態様において、植物細胞は、生殖細胞、例えば、胚珠、または花粉の一部である細胞である。一態様において、花粉細胞は、栄養(非生殖)細胞または精細胞である(Tiezzi, Electron Microsc. Review, 1991)。そのような生殖細胞は半数体である。それが植物全体に再生される場合、それは出発植物の半数体ゲノムを含む。染色体の倍加が(例えば、化学処理を通じて)発生した場合、倍加半数体植物を再生することができる。一態様において、変異型ssper-1アレルを含む本発明の植物は、半数体または倍加半数体のナス科植物である。
【0133】
さらに、本発明のナス科植物のin vitro細胞培養物またはin vitro組織培養物が提供され、ここで、上記細胞または組織培養物は、上記の植物部分(例えば、以下に限定されないが、葉、花粉、胚、子葉、胚軸、カルス、根、根端、葯、花、種子もしくは茎、またはそれらの任意の部分、または分裂組織細胞、体細胞、または生殖細胞)に由来する。
【0134】
本発明はさらに、栄養繁殖植物を提供し、ここで、上記植物は、本発明による植物部分から繁殖される。
【0135】
さらに、本発明の変異型ssper-1アレルの少なくとも1コピーを含む、単離された細胞、in vitro細胞培養物およびin vitro組織培養物、プロトプラスト培養物、植物部分、収穫された材料(例えば、収穫されたペッパー果実)、花粉、子房、花、種子、雄しべ、花の部分等が提供される。したがって、上記細胞または組織が完全なナス科植物に再生または成長する際、植物は、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こすことができる変異型アレルを含む。
【0136】
したがって、本発明の植物の細胞または組織のin vitro細胞培養物および/またはin vitro組織培養物も提供される。細胞培養物または組織培養物は、ナス科植物を再生するために、苗条用培地および/または発根培地(shooting and/or rooting media)により処理され得る。
【0137】
また、本発明による植物の栄養繁殖またはクローン繁殖も本明細書に含まれる。多くの異なる栄養繁殖技術が存在する。挿し木(節、茎頂、茎等)は、例えば、上記のようにin vitro培養に使用され得る。また、その他の栄養繁殖技術、例えば、接ぎ木または空中取り木が存在し、使用され得る。空中取り木では、茎の一部が親植物に付着したまま根を発育させ、十分に根が発育すると、クローン植物は親から切り離される。
【0138】
したがって、一態様において、以下の工程:
(a)本発明の植物の部分(例えば、細胞または組織、例えば挿し木)を入手する工程;
(b)上記植物の部分を栄養繁殖させて、植物の部分から同一の植物を得る工程
を含む方法が提供される。
【0139】
したがって、クローン/栄養繁殖のための本発明の植物の栄養植物部分の使用もまた、本発明の一実施形態である。一態様では、変異型ssper-1アレルの2コピーを含む本発明のナス科植物(好ましくはトウガラシ)を栄養繁殖させるための方法が提供される。変異型ssper-1アレルの2コピーを含む栄養繁殖植物もまた提供される。
【0140】
別の態様において、本発明による変異型ssper-1アレルの2コピーを含む本発明の植物は、体細胞胚形成の技術によって繁殖される。
【0141】
任意の上記の植物部分から再生されたナス科植物または上記の細胞培養物もしくは組織培養物から再生されたナス科植物であって、上記再生された植物が、野生型SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物であり、変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こす植物であり、野生型SSPER-1遺伝子は、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記ナス科植物が提供される。この植物はまた、本発明の栄養繁殖植物と呼ばれることもある。好ましくは、再生された植物は、本発明の変異型ssper-1アレルについてホモ接合性であり、したがって、偽単為結果性の果実形成が可能である。
【0142】
本発明はまた、本明細書に記載の植物部分を含むか、またはそれからなる食品または飼料製品に関する。食品または飼料製品は、新鮮であってもよく、または加工、例えば、缶詰加工、蒸し加工、煮物加工、揚げ物加工、湯通し加工および/または冷凍加工されていてもよい。例えば、本発明の植物の果実または果実の部分を含むサンドイッチ、サラダ、ジュース、ソース、フルーツペースト、ケチャップまたはその他の食品である。
【0143】
本発明はさらに、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物を特定するための、SSPER-1タンパク質をコードする核酸の使用であって、上記SSPER-1タンパク質が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有する、上記使用を提供する。本発明はさらに、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物を特定するための、SSPER-1タンパク質をコードする核酸配列の使用であって、上記SSPER-1タンパク質が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有する、上記使用を提供する。例えば、本発明のSSPER-1タンパク質をコードする核酸配列を使用して、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物の特定および/または選択に有用な遺伝子マーカーを設計することができ、ここで、上記SSPER-1タンパク質は、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有する。
【0144】
本発明はさらに、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物を育種するための、SSPER-1タンパク質をコードする核酸配列の使用であって、上記SSPER-1タンパク質が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有する、上記使用を提供する。例えば、本発明のSSPER-1タンパク質をコードする核酸配列を使用して、植物が育種(例えば、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物が成長し得る種子を生産すること)において親植物として適切であるか否かを決定することができる。
【0145】
植物および後代
別の実施形態において、本発明のナス科植物の植物および部分、ならびに本発明のナス科植物の後代は、例えば、種子から成長すること、有性生殖または栄養繁殖から生じること、上記の植物部分から再生すること、または細胞培養物もしくは組織培養物から再生することから生じる。ここで、繁殖した(種子繁殖または栄養繁殖)植物は、本発明の変異型ssper-1アレルの少なくとも1コピーを含む。
【0146】
本発明はさらに、本明細書に記載の種子から成長したナス科の植物を提供する。したがって、本発明は、本明細書に記載のナス科植物を生産する方法から得られた種子から成長したナス科植物を提供する。
【0147】
さらに、本発明は偽単為結果性の果実形成表現型(変異型ssper-1アレルによって付与される)を含むまたは保持する後代、例えば、1回または2回以上の自家受粉によって得られた後代および/あるいは本発明の植物を、同じ植物種(もしくは本発明のナス科植物と交配可能な植物種)の異なる品種もしくは育種系統または本発明のナス科植物との1回または2回以上の自家受粉によって得られた後代を提供する。特に、本発明は、種なし果実を形成可能な、変異型ssper-1アレルについてホモ接合性の後代を提供する。一態様において、本発明は、変異型ssper-1アレルを含む後代植物(例えば、自家受粉、交配、変異、二ゲノム性半数体の形成または形質転換からなる群から選択される1種または2種以上の方法によって変異型ssper-1アレルを含むナス科植物から生じる後代植物)に関する。好ましい変異は、ヒト誘発変異またはソマクローナル変異(somaclonal mutation)である。一実施形態において、本発明の植物または種子はまた、変異させられ(例えば、照射、化学的変異誘発、熱処理、TILLING等による)、かつ/あるいは、変異した種子または植物は、選択され(例えば、ソマクローナルバリアント等)、この結果、植物の1種または2種以上の特性を変更し得る。同様に、本発明の植物は、形質転換および再生され、それにより、1種または2種以上のキメラ遺伝子が植物に導入され得る。形質転換は、標準的な方法、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を介した形質転換またはバイオリステリック法を使用して実施され得、次いで、形質転換細胞を選択し、植物に再生する。本発明の植物またはその後代に所望の形質を付与するトランス遺伝子を形質転換することにより、所望の形質(例えば、病虫害抵抗性、病害抵抗性、除草剤耐性、殺菌剤耐性、殺虫剤耐性等)を本発明の植物またはその後代に導入することができ、ここで、形質転換された植物は、変異型ssper-1アレルを保持し、変異型ssper-1アレルがホモ接合型である場合に、それによって付与される偽単為結果性の果肉形成表現型を保持し、かつ、所望の形質を含む。
【0148】
別の実施形態において、本発明は、種子を生産する方法であって、本発明の植物を、それ自体または異なる植物と交配する工程および得られた種子を収穫する工程を含む、上記方法に関する。さらなる実施形態において、本発明は、この方法に従って生産された種子および/またはそのような種子が成長することから生じた植物に関する。したがって、本発明の植物は、種子の生産において、雄性および/または雌性の親として使用可能であり、それにより、上記種子から成長した植物は、本明細書で提供される変異型ssper-1アレルを含む。したがって、本発明はさらに、本発明の種子から成長した植物を提供する。
【0149】
したがって、一態様では、本発明のナス科植物の後代が提供され、ここで、後代植物は、自家受粉、交配、変異、二ゲノム性半数体形成または形質転換から生じ、好ましくは、後代は変異型ssper-1アレルを保持する。
【0150】
本発明はさらに、偽単為結果性の果実を生産する方法であって、本発明に従って植物を生育する工程および上記植物から生じた果実を収穫する工程を含む、上記方法を提供する。好ましくは、本発明の方法に従って偽単為結果性の果実を生じる植物は、本明細書に記載の変異型ssper-1アレルについてホモ接合性であり、したがって種なしである。
【0151】
本発明はさらに、SSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むナス科の植物または植物部分を特定および/または選抜する方法であって、
以下の工程:
上記植物または植物部分がSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むか否かを決定する工程であって、上記変異型アレルが、上記SSPER-1遺伝子の発現低下または発現消失をもたらすか、あるいは、上記変異型アレルが、野生型タンパク質と比較した場合に機能が低下または喪失しているタンパク質をコードする上記工程、および
場合により、上記SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーを含む植物または植物部分を選抜する工程であって、上記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする上記工程
を含む、上記方法を提供する。
【0152】
この方法は、本発明による変異型アレルの存在を検出するために、既知の方法を使用してDNA、RNA(もしくはcDNA)またはタンパク質レベルにおけるスクリーニングを含む。遺伝子の変異型アレルの存在を検出する多くの方法が存在する。
【0153】
例えば、野生型アレルと変異型アレルとの間に一塩基の違い(一塩基多型、SNP)が存在する場合、SNP遺伝子型決定アッセイを使用して、植物または植物部分または細胞がそのゲノム内に野生型ヌクレオチドまたは変異型ヌクレオチドを含むか否かを検出することができる。例えば、KASPアッセイ(kpbioscience.co.ukにおいてワールドワイドウェブを参照)またはその他のSNP遺伝子型決定アッセイを使用して、SNPを容易に検出することができる。KASPアッセイを実施するため、例えば、SNPの70塩基対上流および70塩基対下流を選択することができ、2種のアレル特異的フォワードプライマーおよび1種のアレル特異的リバースプライマーを設計することができる。例えば、Allen et al. 2011, Plant Biotechnology J. 9, 1086-1099、特にKASPアッセイ法に関してp097-1098参照。
【0154】
同様に、その他の遺伝子型決定アッセイを使用することができる。例えば、TaqMan SNP遺伝子型決定アッセイ、高分解能融解曲線(HRM:High Resolution Melting)アッセイ、SNP遺伝子型決定アレイ(例えば、Fluidigm、Illumina等)またはDNA配列決定を同様に使用することができる。
【0155】
分子マーカーはまた、変異型ssper-1アレルを含む植物(または植物部分またはそれから得られる核酸)の特定を補助するために使用され得る。例えば、変異型ssper-1アレルに遺伝的に(そして好ましくは物理的にも)密接に関連している1種または2種以上の適切な分子マーカーを開発することができる。これは、以下により実施され得る。本発明によるナス科植物(好ましくは偽単為結果性の果実形成が可能)を野生型植物と交配し、その交配から分離集団(segregating population)(例えば、F2集団または戻し交配集団)を展開する。次いで、分離集団は、偽単為結果性の果実形成について表現型を決定され、遺伝子型決定される(例えば、分子マーカー、例えば、SNP(一塩基多型)、AFLP(増幅断片長多型、例えばEP534858を参照)等の分子マーカーを使用して遺伝子型決定される)。ソフトウェア分析により、分離集団において偽単為結果性の果実形成形質と共分離する分子マーカーを同定し、SSPER-1遺伝子(または遺伝子座)に対する順序および遺伝的距離(センチモルガン距離、cM)を特定することができる。次いで、SSPER-1遺伝子座に対して密接に関連している分子マーカー、例えば5cM以下の距離にあるマーカーを使用して、変異型ssper-1アレルを含む遺伝子移入フラグメントを含むまたは保持する植物(例えば、本発明の植物もしくは本発明の植物の後代)または植物部分を検出および/または選択することができる。そのような密接に関連している分子マーカーは、育種プログラムにおける、すなわちマーカーアシスト選抜(MAS)における表現型選抜を置き換えることができる(または表現型選抜に加えて使用され得る)。好ましくは、関連しているマーカーがMASにおいて使用される。より好ましくは、隣接しているマーカーがMASにおいて使用される。すなわち、変異型ssper-1アレルの遺伝子座のいずれかの側に存在する1種のマーカーが使用される。
【0156】
好ましくは、植物または植物部分がSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むか否かを決定する前に、植物または植物部分が変異誘発工程に供される。上記変異誘発工程は、上記植物または植物部分を変異原と接触させることを含み得る。上記変異誘発工程はまた、標的への変異誘発技術、例えば、CRISPR-Casを包含し得る。好ましくは、変異原と接触する植物は、ホモ接合型の野生型SSPER-1アレルを含む。次いで、変異誘発工程は、野生型SSPER-1アレルに変異を引き起こし、偽単為結果性の果実形成を誘発し得る変異型ssper-1アレルを提供する。また、トランスジェニック植物は、当技術分野で知られている植物の形質転換技術および再生技術を使用して、本発明の変異型ssper-1ヌクレオチド配列を使用して作製され得る。「エリートイベント(elite event)」を選択することができ、これは、キメラ遺伝子(機能喪失ssper-1タンパク質または機能低下ssper-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に関連しているプロモーターを含む)をゲノム内の特定の位置に挿入する形質転換イベント(transformation event)であり、これにより、所望の表現型が良好に発現する。トランスジェニック植物はまた、内因性(野生型)ssper-1遺伝子の発現を減少または消失させるコンストラクト、例えば、RNAiコンストラクトを含んで作製され得る。
【0157】
したがって、本発明は、以下の工程:
(a)ナス科の植物から植物材料を入手する工程;
(b)上記植物材料を変異原により処理して、変異を起こした植物材料を生じさせる工程;
(c)上記変異を起こした植物材料を分析して、SSPER-1遺伝子に少なくとも1つの変異を有する植物を特定する工程であって、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記工程
を含む、本発明のナス科植物を生産する方法を提供する。
【0158】
TILLING(Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)は、従来の化学的変異誘発法を使用して変異を起こした個体のライブラリーを作成し、次いで、変異を見出すためにハイスループットスクリーニングに供する一般的な逆遺伝学的手法である。TILLINGは、化学的変異誘発をプールされたPCR産物の変異スクリーニングと組み合わせて、標的遺伝子のミスセンス変異型アレルおよびナンセンス変異型アレルを単離する。したがって、TILLINGは、従来の化学的変異誘発(例えば、EMSもしくはMNU変異誘発または活性酸素種を生成することによる変異誘発)またはその他の変異誘発方法(例えば、UV照射またはイオンビーム照射を使用する放射線変異生成)、次いで、特定の標的遺伝子例えば、本発明によるSSPER-1遺伝子における変異に対するハイスループットスクリーニングを使用する。S1ヌクレアーゼ、例えば、CEL1またはENDO1を使用して、変異型および野生型の標的DNAのヘテロ二本鎖を切断し、切断産物を、例えば電気泳動(例えば、LI-CORゲルアナライザーシステム、例えばHenikoff et al. Plant Physiology 2004, 135: 630-636を参照)を使用して、検出する。TILLINGは、多くの植物種、例えば、ナス科植物、例えば、トマト(http://tilling.ucdavis.edu/index.php/Tomato_Tillingを参照)、イネ(Till et al. 2007, BMC Plant Biol 7: 19)、アブラナ属のシロイヌナズナ(Till et al. 2006, Methods Mol Biol 323: 127-35)、トウモロコシ(Till et al. 2004, BMC Plant Biol 4: 12)等に適用されてきた。また、自然集団における変異を検出するEcoTILLINGも広く使用されている(Till et al. 2006 (Nat Protoc 1: 2465-77)およびComai et al. 2004 (Plant J 37: 778-86)を参照)。
【0159】
本発明の一実施形態において、そのような変異型SSPER-1タンパク質をコードする(cDNAまたはゲノムの)核酸配列は、1つまたは複数のナンセンス変異および/またはミスセンス変異、例えば、トランジション(プリンの別のプリンへの置換(A⇔G)もしくはピリミジンの別のピリミジンへの置換(C⇔T))またはトランスバージョン(プリンのピリミジンへの置換もしくはその逆(C/T⇔A/G))を含む。一実施形態において、ナンセンス変異および/またはミスセンス変異は、任意のSSPER-1エクソンをコードするヌクレオチド配列中、またはバリアントSSPER-1タンパク質の本質的に類似のドメイン、すなわち、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するドメイン中に存在する。
【0160】
一実施形態において、1つまたは複数のナンセンス変異および/またはミスセンス変異を、エクソンをコードする配列の1つに含むSSPER-1ヌクレオチド配列が提供され、ならびに、変異型アレルがホモ接合型で存在する場合に偽単為結果性の果実形成が可能な植物をもたらすそのような変異型アレルを含む植物が提供される。
【0161】
したがって、一態様において、植物または植物部分は、植物または植物部分を変異原に供することによって得られたTILLING集団から特定および/または選抜される。したがって、一態様では、以下の工程:
(a)ナス科の植物種のTILLING集団を準備する工程;
(b)SSPER-1遺伝子の変異について上記TILLING集団をスクリーニングする工程であって、野生型SSPER-1遺伝子が、配列番号1に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、例えば、配列番号1に対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.3%、98.7%、99.0%または99.3%、より好ましくは99.7%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記工程;および
(c)(b)の変異植物から、偽単為結果性の果実形成が可能な植物(またはそれらの植物の後代)を選抜する工程
を含む、aを生成する方法(method for producing a)が提供される。
【0162】
変異植物(M1)は、好ましくは1回または2回以上自家受粉して、例えば、表現型決定のためにM2集団、好ましくはM3またはM4集団を生じる。M2集団において、変異型アレルは、1(変異型アレルに対してホモ接合性):2(変異型アレルに対してヘテロ接合):1(野生型アレルに対してホモ接合性)の比率で存在する。
【0163】
本発明はさらに、本明細書で定義されるSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物を生産する方法であって、
上記変異型アレルが、ホモ接合型で存在する場合に、偽単為結果性の果実形成を引き起こし、
上記方法が、以下の工程:
(i)第1のナス科植物と第2のナス科植物とを交配する工程であって、上記第1のナス科植物が、本明細書の植物である上記工程;
(ii)場合により、(i)の交配工程から得られた種子を収穫し、本明細書に記載のSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含む種子を選抜する工程
を含む、上記方法を提供する。SSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物を生産する上記方法は、植物が本明細書に記載のSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むか否かを決定することを含むプロセス工程をさらに含み得る。
【0164】
一態様において、第1のナス科植物は、変異型SSPER-1アレルについてヘテロ接合性であり、第2のナス科植物は、野生型SSPER-1アレルについてホモ接合性であり、それにより、上記交配から収穫された種子の一部は、変異型SSPER-1アレルについてホモ接合性であり、残りの種子は、変異型SSPER-1アレルについてヘテロ接合性でる。次いで、この方法では、場合により、例えば非破壊的な種子DNAサンプリングを使用して、変異型SSPER-1アレルについてホモ接合性である種子を選抜し、あるいは、例えば子葉または葉のサンプルのDNA分析を使用して、変異型SSPER-1アレルについてホモ接合性である実生を選抜する。
【0165】
好ましくは、本明細書で提供されるナス科植物を生産する方法の工程(i)において、第1のナス科植物および第2のナス科植物の両方が、本発明による植物である。
【0166】
本発明はさらに、本明細書に記載のSSPER-1遺伝子の変異型アレルを含むナス科の植物または植物部分を特定および/または選抜する方法によって得られた種子から成長した植物を提供する。本発明はさらに、本明細書で定義されるSSPER-1遺伝子の変異型アレルの少なくとも1コピーをそのゲノムに含むナス科の植物を生産する方法によって得られた種子から成長した植物を提供する。
【0167】
本発明はさらに、本発明による種子を生育することにより、偽単為結果性の果実形成が可能なナス科の植物を生産する方法であって、上記植物が、変異型アレルについてホモ接合性である、上記方法を提供する。
【0168】
一態様において、偽単為結果性の果実形成形質は、ssper-1アレルまたはオーソロガスアレルまたは相同性のあるアレル(homologous allele)の変異によって引き起こされる。したがって、一態様では、特定の変異型ssper-1アレルが提供される。変異誘発技術、例えば、化学的変異誘発またはUV変異誘発を使用して、あるいは、標的への変異誘発技術、例えば、CRISPR-Casを使用して、本発明の偽単為結果性の果実形成形質を付与する、野生型SSPER-1遺伝子への変異を誘導することができる。一態様において、本発明による植物、植物部分および細胞は、規則28(2)EPCによって定義される本質的に生物学的な方法によって排他的に得られるわけではない。
【実施例】
【0169】
実施例1:ランダム変異誘発およびそれに続く表現型評価
変異は、電離放射線によって誘発され得、活性酸素種(ROS)を生成することによってDNA鎖切断および酸化的DNA損傷を引き起こし得る。ROSによって誘発される酸化生成物の1種は、8-オキソ-7-ヒドロデオキシグアノシン(8-oxo-dG)DNAであり、これはG/CからT/Aへのトランスバージョンを誘発し得る。花のつぼみを収穫し、室温で様々な線量、例えば、100Gyの60Co線源からのγ線を照射することにより、花粉に変異を発生させることができる(Akbudak et al. (2009) New Zealand Journal of Crop and Horticultural Science 37: 361-367)。単一塩基の置換または欠失から数メガ塩基にまたがる大きな欠失までの様々な変異を含む照射された花粉は、未処理の植物を交配するために使用され得る(Ryouhei Morita, et al. (2009) Genes Genet Syst. 84:361-70)。交配(F1)からの種子は再び播種可能であり、生存可能な種子は成長して、それぞれ特定の変異についてのその独自のセットを有する植物を生じる。F1からの種子を植物ごとに収集し、生育して、表現型を決定することができる。変異はF2ファミリーにおいて分離され、それらの表現型の影響を評価することができる。
【0170】
実施例2:ランダム変異誘発およびそれに続くTILLING変異集団からの逆スクリーニング
市販のペッパーの育種において使用される、高度にホモ接合性の近交系は、以下のプロトコルにより変異誘発処理に使用され得る。湿ったWhatman(登録商標)紙上で種子を24時間吸水させた後、-20,000個の種子をそれぞれ2500個ずつの8バッチに分割し、三角フラスコ内で100mLの超純水および1%の濃度のメタンスルホン酸エチル(EMS)に浸す。フラスコを室温で16時間穏やかに振とうする。最後に、EMSを流水下で洗い流す。EMS処理後、種子を温室内で直接播種する。発芽した種子のうち、十分な数の未発育植物(plantlet)を畑に移植する。これらの未発育植物から生き残った、植物体を有する植物から少なくとも1つの果実を収穫する。例えば、残存する各M1変異植物から、1つの果実が収穫され、その種子が単離される。得られた集団(M2集団と名付けられた)から、着果が低いことにより、特定のファミリーが集団から除外される場合がある。
【0171】
各M2種子ロットに由来する10個の種子のプールからDNAを抽出する。変異系統ごとに、10個の種子を96ディープウェルプレートのMicronic(登録商標)ディープウェルチューブ(http://www.micronic.com)にプールし、2個のステンレスボールを各チューブに追加する。液体窒素中でチューブおよび種子を1分間凍結し、種子をすぐにディープウェルシェーカー(Vaskon96グラインダー、ベルギー、http://www.vaskon.com)中で16.8Hz(最高速度の80%)において2分間、微粉末に粉砕する。AGOWA(登録商標)Plant DNA Isolation Kit(http://www.agowa.de)のAgowa(登録商標)溶解バッファーP(300μL)をサンプルプレートに添加し、ディープウェルシェーカー中で16.8Hzにおいて1分間振とうすることにより、粉末を溶液に懸濁する。プレートを4000rpmで10分間遠心分離する。JanusMDT(登録商標)(Perkin Elmer、米国;http://www.perkinelmer.com)プラットフォーム(96ヘッド)を使用して、75μLの上清を96Kingfisherプレートにピペットで移す。PerkinElmerJanus(登録商標)リキッドハンドラーロボットおよび96Kingfisher(登録商標)(Thermo lab-systems、フィンランド;http://www.thermo.com)を使用して、以下の工程を実施する。DNAを含む上清を結合バッファー(150μL)および磁気ビーズ(20μL)により希釈する。DNAがビーズに結合すると、2つの連続した洗浄工程を実行し(洗浄バッファー1:Agowa洗浄バッファー1 1/3、エタノール1/3、イソプロパノール1/3;洗浄バッファー2:70%エタノール、30%Agowa洗浄バッファー2)、最後に溶出バッファー(100μL MQ、0.025μL Tween)中に溶出する。
【0172】
トウガラシの4個の種子の粉砕により、一般に、十分なDNAが生成され、磁気ビーズを飽和させ、その結果、すべてのサンプルにおいて非常に均質で同等のDNA濃度が得られる。ラムダDNAリファレンスと比較すると、各サンプルの濃度は30ng/μLと推定される。2倍希釈したDNAを4倍フラットでプールした(Two times diluted DNA was 4 fold flat pooled.)。2μLのプールされたDNAを変異検出分析のためのマルチプレックスPCRに使用した。
【0173】
高分解能融解曲線分析(HRM:High Resolution Melt curve analysis)は、ヒトおよび植物の遺伝学において高感度で高スループットの方法であることが証明されている。HRMは非酵素的スクリーニング技術である。PCR増幅中に、色素(LCGreen+色素、Idaho Technology Inc.、ユタ州、米国)分子は、二本鎖DNA分子の各アニーリングされた塩基対の間にインターカレートされる。色素が分子に捕捉されると、470nmで励起後に510nmで蛍光を発する。蛍光検出器(LightScanner、Idaho Technology Inc.、ユタ州、米国)のカメラは、DNAサンプルが徐々に加熱されている間、蛍光強度を記録する。DNAヘリックスの配列特異的安定性に依存する温度で、二本鎖PCR産物が融解し始め、色素を放出する。色素の放出により蛍光が減少し、蛍光検出器によって融解曲線として記録される。変異を含むプールは、PCR後のフラグメントミックスにおいてヘテロ二本鎖を形成する。これらは、ホモ二本鎖と比較した際に特異的な融解温度曲線(differential melting temperature curve)として特定される。
【0174】
HRM用の遺伝子断片を増幅するのに有用なプライマーは、コンピュータプログラム(Primer3、http://primer3.sourceforge.net/)を使用して設計される。増幅産物の長さは、200~400塩基対に制限される。プライマーの品質は、単一の産物を生成するはずのテストPCR反応によって決定される。
【0175】
遺伝子断片を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、以下のように実行され得る。総量10μLにおいて、4μLの反応バッファー(5×反応バッファー)、2μLの10×LC色素((LCGreen+色素、Idaho Technology Inc.、ユタ州、米国)、それぞれ5pモルのフォワードおよびリバースプライマー、4nモルのdNTP(Life Technologies、NY、米国)および1ユニットのDNAポリメラーゼ(Hot Start II DNAポリメラーゼ)に、10ngのゲノムDNAを混合する。反応条件は、30秒98℃、次いで、10秒98℃、15秒60℃、25秒72℃の40サイクル、最後に72℃で60秒であった。
【0176】
別個の植物における特定の変異の存在は、特定された対応するDNAプールの別個のM2種子ロットからのDNAに対してHRM分析を繰り返すことによって確認される。HRMプロファイルに基づいて、4つの別個のM2ファミリーDNAサンプルの1つで変異の存在が確認されると、PCRフラグメントの配列が決定され、遺伝子の変異が特定される。
【0177】
変異がわかると、例えば、ユーザーが選択した遺伝子およびそのコード配列(ここで予想される点変異は、遺伝子の機能に有害な影響を与える可能性が最も高い)の領域を特定するコンピュータプログラムCODDLe(有害な損傷の発見を最適化するためのコドンの選択(for Choosing codons to Optimize Discovery of Deleterious Lesions)、http://www.proweb.org/coddle/)を使用することにより、そのような変異の影響を予測することができる。
【0178】
植物の表現型分析のために、タンパク質活性に対する影響が予測される変異を含むM2ファミリーの種子を播種する。ホモ接合性変異型を選択する、あるいは自家受粉に続く選択後に得る。次いで、例えば本明細書で以下に記載する方法を使用することによって、植物の対応するタンパク質および表現型に対する変異の影響を決定する。
【0179】
実施例3:本発明による種なしペッパー植物の特性評価
分離世代(segregating generation)(F3およびF4)から選択された試験対象の様々なタイプのトウガラシ植物(blocky、sweet pointedおよびLamuyo)と、野生型SSPER-1アレルについてホモ接合性であることを除いて同じ遺伝的背景を有する対応する対照植物とを、播種し、通常通り成熟した果実を生じ得まで、同じ条件下で播種および栽培した。選択された植物は、栄養繁殖である接ぎ木法により繁殖され、アルメリア(スペイン)の秋冬サイクルにおいて2つ組の4個体の植物により試験を確実にした。成長条件は、温室、十分な水の供給、温度:光周期約14時間で約26℃/18℃昼/夜、光強度:約120μmol×sec-1×m-2μ[PAR]、成長培地:土壌(半分の芝(turf)および半分のピット(pit))であった。次いで、植物あたり少なくとも3個の成熟した果実を収穫し、収穫直後に、以下の特性:平均果実長(cm);平均果実幅(cm);および平均果実重量(g)の特性を調べた。この特性評価の結果を以下の表に示す。
【0180】
【0181】
したがって、本発明による植物から生じ得る種なし果実は、通常の形状およびサイズを有すると結論付けることができる。
【0182】
実施例4:本発明の種なしペッパー植物の繁殖
本発明によるSSPER-1遺伝子の変異型アレルについてホモ接合性(ssper-1/ssper-1)である上記植物の結果として種なし果実を生じるトウガラシ植物は、接ぎ木および/またはその他の従来の栄養繁殖の方法、例えば、挿し木によって繁殖される。。
【0183】
あるいは、同胞交配を使用して、変異型SSPER-1アレル(ssper-1/ssper-1)についてホモ接合性である、種なし果実を生産する植物を、同じファミリーまたは系統である、変異型SSPER-1アレル(SSPER-1/ssper-1)についてヘテロ接合性である植物と交配することによって、繁殖させる。そのような同胞交配から生じた種子は、変異型SSPER-1アレルによって支配される種なし形質のために分離している集団を表す。本明細書に記載の分子的な遺伝子型決定法を使用することによる、変異型SSPER-1アレルについてホモ接合性(ssper-1/ssper-1)である、その結果生じた種子、またはそのような種子から成長した植物を、変異型SSPER-1アレルについてヘテロ接合性(SSPER-1/ssper-1)である同じく生じた子孫から区別および/または別々にすることができる。
【配列表】