(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】周囲温度に基づく磁気センサ出力補償のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241029BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01R33/02 X
G01R33/09
(21)【出願番号】P 2021547413
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 US2020018787
(87)【国際公開番号】W WO2020172245
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524154452
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】モーハン, アヌラーグ
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0136020(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363638(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02767843(EP,A2)
【文献】特開2009-281881(JP,A)
【文献】特表2000-512020(JP,A)
【文献】特開2015-099089(JP,A)
【文献】特開2009-092381(JP,A)
【文献】特開2006-184122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補償されていない磁気センサ出力信号を生成する磁気センサと、
周囲温度信号を生成する温度センサと、
該磁気センサおよび該温度センサに接続されている補償回路
と、を含む回路であって、
該補償回路は、該補償されていない磁気センサ出力信号の熱的誘起される変動を低減している、温度補償されている磁気センサ出力信号を生成するために、算出される温度補償信号を、該補償されていない磁気センサ出力信号に加算するように構成されている、補償回路とを備え、
前記補償回路は、前記周囲温度信号、室温信号、室温係数利得信号、温度係数利得信号および前記補償されていない磁気センサ出力信号の関数として、前記算出される温度補償信号を形成する当該回路。
【請求項2】
前記補償回路は、前記周囲温度信号と前記室温信号との差に基づいて温度差信号を算出する、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記補償回路は、前記室温係数利得信号によって除算される前記温度係数利得信号に基づいて利得比信号を算出する、請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記補償回路は、利得変動信号を形成するために前記利得比信号と前記温度差信号とを乗算する、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記補償回路は、前記算出される温度補償信号を形成するために、前記補償されていない磁気センサ出力信号を前記利得変動信号に乗算する、請求項4に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は概して、磁気トンネル接合を利用する磁気センサに関連する。より特定すると、本発明は、周囲温度に基づく磁気センサ出力補償を対象とする。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
磁気センサは、磁気トンネル接合(MTJ)を活用し、適正な状況の下でトンネル磁気抵抗(TMR)センサの役目を果たす。TMRセンサは、周囲磁場の存在下でその抵抗の変化を経験する。これは、TMRセンサを磁場の検出に好適にする。磁気センサの感度は、具体的なバイアス電圧に対してmV/mTの比として表される。これは、外部磁場の変化に対するセンサの出力電圧の変化を定義する。センサの動作温度は、いくつかの場合では、-40℃から+155℃まで有意に変動し得る。温度の変化はまた、磁気センサの感度を変化させ、いくつかの場合では、出力ドリフトは、5%変動し得る。感度の温度係数は、感度の温度依存性を定量化する。感度の熱的誘起される変動は、磁気センサの正確度を阻害する。したがって、磁気センサの出力の熱的な補償に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の概要)
回路は、補償されていない磁気センサ出力信号を生成する磁気センサを有する。温度センサは、周囲温度信号を生成する。補償回路は、磁気センサおよび温度センサに接続されている。補償回路は、補償されていない磁気センサ出力信号の熱的誘起される変動を低減している、温度補償されている磁気センサ出力信号を生成するために、算出される温度補償信号を、補償されていない磁気センサ出力信号に加算するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
(図面の簡単な説明)
本発明は、付属の図面と併せて受け取られる以下の詳細な説明に関連して一層ことごとく理解される。
【0005】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に従って構成されているシステムを図示している。
【0006】
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に従って構成されている補償回路を図示している。
【0007】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図の全体を通じて、対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
図1は、本発明の実施形態に従って構成されているシステム100を図示している。システム100は、標準的な磁気センサ102を含み、標準的な磁気センサ102は、補償されていない磁気センサ出力信号をノード104上に生成する。本発明に従って、標準的な磁気センサ102は、補償回路106および温度センサ108で補われる。温度センサ108は、周囲温度に比例する信号をノード110上に生成する。補償回路106は、温度補償されている磁気センサ出力信号をノード112上に生成するために、ノード104からの補償されていない磁気センサ出力信号とノード110からの周囲温度信号とを処理する。より特定すると、補償回路106は、補償されていない磁気センサ出力信号の熱的誘起される変動を低減している、温度補償されている磁気センサ出力信号を生成するために、算出される温度補償信号を、補償されていない磁気センサ出力信号に加算するように構成されている。補償回路106は、
図2に関連して下に詳述されるように、周囲温度信号、室温信号、室温利得信号、温度係数利得信号および補償されていない磁気センサ出力信号の関数として、算出される温度補償信号を形成する。
【0009】
図2は、磁気センサ102および温度センサ108と共に補償回路106を図示している。先に指し示されたように、磁気センサ102は、任意の標準的な公知の磁気センサであり得る。温度センサ108は、Texas、DallasのTexas Instrumentsによって販売されるTMP20などの別個の温度センサ集積回路(IC)であり得、またはTMRセンサと同じもしくは異なるIC上に配置されるカスタム設計の温度回路であり得る。
【0010】
利得変動算出ブロック201、乗算器204、加算器210、ブリッジ増幅器220およびブリッジ回路222は、本明細書において開示される算出を実装する。利得変動算出ブロック201、乗算器202および加算器210は、ハードウェア、ソフトウェアまたは混成のハードウェアおよびソフトウェア回路において実装され得る。ソフトウェア実装の場合には、シンプルプロセッサおよびこれに関連付けられるメモリは、開示される信号処理を実装するために用いられ得る。すなわち、メモリは、開示される信号処理動作を実装するためにプロセッサによって実行される命令を格納する。ハードウェア実装の場合には、加算器210は、演算増幅器であり得、乗算器204は、別個のアナログ乗算器ICであり得、またはTMRセンサと同じもしくは異なるIC内に配置されるカスタム設計のICであり得る。利得変動算出ブロック201は、温度センサ出力信号の関数としてプログラムされる利得を伴う演算増幅器のセットを伴って実装され得る。
【0011】
温度補償される磁気センサ出力信号(Vcomp)は、以下のように表され得る。
Vcomp=Vsense+(G’*ΔT*Vsense)/G0
ここで、Vsenseは、ノード104上の、磁気センサ102からの出力信号である。G’は、利得の温度係数であり、実験データから確定され得る値(例えば一実施形態では2.531×10-3)である。ΔTは、ノード110上の、温度センサ108からの周囲温度信号と、(例えば23℃に対応する)室温信号値との差である。G0は、室温での利得値の温度係数である。
【0012】
利得変動算出ブロック201は、利得変動信号を生成するように構成されており、利得変動信号は、(G’*ΔT)/G0のように特徴付けられ得る。利得変動信号は、ノード202に印加される。乗算器204は、算出される温度補償信号を生成し、算出される温度補償信号は、(G’*ΔT*Vsense)/G0のように特徴付けられ得る。加算器210は、温度補償されている磁気センサ出力信号(Vcomp)をノード212上に形成するために、Vsenseと称される、ノード104上の、磁気センサ102からの出力信号を、算出される温度補償信号に加算する。ブリッジ回路222および増幅器220は、必要であれば、磁気センサからの出力信号に対して利得を提供する。
【0013】
開示される補正電圧(Vcomp)は、10の倍数で感度の温度係数を低減する。開示される回路構成は、標準的な磁気センサ102の動作温度の範囲にわたってその5%の誤差範囲を実質的に除去する。
【0014】
前述の記載は、説明の目的のために、本発明の徹底的な理解を提供するために具体的な用語体系を用いた。しかしながら、具体的な詳細が、本発明を実践するためには要求されないことは、当業者にとって明白であろう。したがって、本発明の具体的な実施形態の前述の記載は、図示および記載の目的のために提示される。これらは、包括的であることを意図されておらず、本発明を、開示される精密な形態に限定することも意図されておらず、明らかに、多くの改良および変形が、上の教示に照らして可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実践的な応用を最良に説明するために選択および記述されたものであり、これらは、それにより、他の当業者が、予定される特定の用途に適した様々な改良を伴って本発明および様々な実施形態を最良に活用することを可能とする。以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物が、本発明の範囲を定義することが、意図されている。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
補償されていない磁気センサ出力信号を生成する磁気センサと、
周囲温度信号を生成する温度センサと、
該磁気センサおよび該温度センサに接続されている補償回路であって、該補償回路は、該補償されていない磁気センサ出力信号の熱的誘起される変動を低減している、温度補償されている磁気センサ出力信号を生成するために、算出される温度補償信号を、該補償されていない磁気センサ出力信号に加算するように構成されている、補償回路とを備える回路。
2.
前記補償回路は、前記周囲温度信号、室温信号、室温係数利得信号、温度係数利得信号および前記補償されていない磁気センサ出力信号の関数として、前記算出される温度補償信号を形成する、上記1に記載の回路。
3.
前記補償回路は、前記周囲温度信号と前記室温信号との差に基づいて温度差信号を算出する、上記2に記載の回路。
4.
前記補償回路は、前記室温係数利得信号によって除算される前記温度係数利得信号に基づいて利得比信号を算出する、上記3に記載の回路。
5.
前記補償回路は、利得変動信号を形成するために前記利得比信号と前記温度差信号とを乗算する、上記4に記載の回路。
6.
前記補償回路は、前記算出される温度補償信号を形成するために、前記補償されていない磁気センサ出力信号を前記利得変動信号に乗算する、上記5に記載の回路。