(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】インスリン送達構成体およびインスリン投与方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241029BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20241029BHJP
A61B 5/145 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
A61M5/31 520
A61B5/145
(21)【出願番号】P 2021549365
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020054431
(87)【国際公開番号】W WO2020169706
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521196925
【氏名又は名称】マイシュガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴレーデ、ヤン
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504779(JP,A)
【文献】特表2017-525451(JP,A)
【文献】特表2015-526218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/31
A61B 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン用量を手動で事前設定するための調整ユニット(14)と、事前設定されたインスリン用量をユーザに送達するようにトリガされることができるアプリケータユニット(24)とを含む、手動操作型インスリン送達装置(12)を備えるインスリン送達構成体(10;42)であって、
前記インスリン用量のための前記事前設定を入力として受信し、それぞれのインスリン用量によって補償されることができる食事の炭水化物の量に相当する炭水化物値を出力として提供するように適合された用量変換器(16)と、
前記炭水化物値を前記ユーザに表示するためのディスプレイ(20、20’、20’’)と、を備えることを特徴とする、構成体。
【請求項2】
前記用量変換器(16)が、デジタルプロセッサまたはアナログ機構によって形成されている、請求項1に記載の構成体。
【請求項3】
前記ディスプレイ(20、20’、20’’)が、デジタル画面またはアナログスライディングスケールとして提供される、請求項1または2に記載の構成体。
【請求項4】
前記調整ユニット(14)が、段階的に回転可能なダイヤル(30)を含み、前記炭水化物値が、前記ダイヤル(30)の回転と同期して前記ディスプレイ(20、20’、20’’)上で変更される、請求項1から3のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項5】
前記インスリン送達装置(12)が、インスリン注射ペン(12)として形成されており、前記用量変換器(16)が、前記インスリン注射ペン(12)の一部である、請求項1から4のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項6】
前記ディスプレイ(20)が、前記インスリン注射ペン(12)の表面上に配置されている、請求項5に記載の構成体。
【請求項7】
前記インスリン送達装置(12)とは別個に配置された遠隔モバイル装置(44、46
)をさらに備え、モバイル装置(44)が、前記インスリン送達装置(12)と無線通信するように適合され
る、請求項1から4のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項8】
前記遠隔モバイル装置(44、46)が、スマートフォンおよび/またはスマートウォッチである、請求項7に記載の構成体。
【請求項9】
前記モバイル装置(44)が、モバイルアプリケーションとして前記用量変換器(16)を含む、請求項7または8に記載の構成体。
【請求項10】
前記遠隔モバイル装置(44、46)が、前記インスリン送達装置(12)のユーザ操作時に前記インスリン用量のための前記事前設定を自動的に取得して処理するように構成されている、請求項
7から9のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項11】
前記炭水化物値を表示するための前記ディスプレイ(20’、20’’)が、前記遠隔モバイル装置(44、46)に設けられている、請求項
7から10のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項12】
血糖測定値を前記用量変換器(16)に提供するように構成されている、血糖計(48
)をさらに備える、請求項1から
11のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項13】
前記血糖計(48)が、連続監視血糖計である、請求項12に記載の構成体。
【請求項14】
前記血糖測定値が
、遠隔モバイル装置(44、46)によって前記血糖計(48)から取得され、前記血糖測定
値が、前記遠隔モバイル装置から前記インスリン送達装置(12)に送信される、請求項
12または13に記載の構成体。
【請求項15】
他の患者固有のデータが、前記遠隔モバイル装置から前記インスリン送達装置(12)に送信される、請求項14に記載の構成体。
【請求項16】
前記用量変換器(16)が、前記炭水化物値の計算にユーザ固有の補正ボーラスを含むように構成されている、請求項1から
15のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項17】
前記インスリン送達装置(12)が、前記インスリン送達装置(12)が作動されたときに遠隔モバイル装置(44、46)からのユーザ固有パラメータの送信をトリガする作動回路を有する、請求項1から
16のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項18】
前記用量変換器(16)が、前記インスリン用量についての事前設定値と、測定血糖値、目標血糖値、インスリン対炭水化物比、インスリン感受性因子および基礎インスリン用量のうちの少なくとも1つとに基づいて、前記炭水化物値を判定するためのルーチンを有する、請求項1から
17のいずれか一項に記載の構成体。
【請求項19】
調整ユニット(14
)のユーザ操作により、手動操作型インスリン送達装置(12)においてインスリン用量を事前設定するステップを含むインスリン送達構成体(10)を投与調整するための方法であって、
追加のユーザ相互作用なしに、前記インスリン用量の事前設定を用量変換器(16)への入力として自動的に提供するステップと、
前記用量変換器(16)からの出力として、食事の炭水化物の量に相当する炭水化物値を受信するステップと、
前記インスリン用量の事前設定と並行して前記炭水化物値を表示するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記インスリン用量を事前設定するステップが、前記調整ユニット(14)の段階的に回転可能なダイヤル(30)のユーザ操作により、前記手動操作型インスリン送達装置(12)においてインスリン用量を事前設定するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン用量を増分的に事前設定するための調整ユニットと、事前設定されたインスリン用量をユーザに送達または適用するようにトリガされることができるアプリケータユニットとを含む、手動操作型インスリン送達装置を備えるインスリン送達構成体に関する。本発明は、さらに、そのようなインスリン送達構成体を投与調整するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日まで、インスリン注射ペンを使用している糖尿病患者は、スマートフォンまたは血糖計においてボーラス計算機アプリケーションを広く使用して食事ボーラスの推奨を得ている。したがって、患者は、食べたい炭水化物量をボーラス計算機に入力しなければならず、ボーラス計算機は、投与されるインスリンユニットを計算し、次いで、患者は、対応するインスリン量が注射されるようにペン上のダイヤルを回転させなければならない。
【0003】
米国特許出願公開第2018/0121630号明細書は、インスリン(注射)ペンを介したインスリンの投与が、外来環境において患者および提供者によって広く受け入れられており、近年、入院患者の急性期ケア環境においても広く受け入れられていることを開示している。インスリンペンは、従来のインスリンバイアルおよびシリンジを超えるいくつかの利点を提供する。注射部位でのより大きな快適性および患者にとっての使いやすさは、より良い経験を提供する。さらに、インスリンペン上のダイヤルは、用量選択を可能にし、用量精度をより正確にする。
【0004】
米国特許出願公開第2016/117481号明細書は、インスリン投与またはインスリン投与を管理するためのシステムを開示している。インスリンを投与する方法は、患者の皮下情報をコンピューティングデバイスにおいて受信することと、推奨インスリン用量を判定するための皮下外来プログラムを実行することと、を含む。
【0005】
国際公開第2016/019192号パンフレットは、血糖センサから受信した情報に基づいてインスリンの最適なボーラス用量を提供することができるインテリジェンスおよび通信能力を有するインスリン注射器を開示している。実施形態はまた、患者およびそのヘルスケア提供者を含む関係者に情報を提供するために健康システム内でデータを通信する注射器に関する。
【0006】
米国特許出願公開第2016/0279336号明細書は、患者がインスリンペンを有効にするか、オンにするか、そうでなければ操作して、1日を通して所望に応じて患者の身体に流体のボーラスを送達することを開示している。例えば、食事時に、患者は、血糖計を利用して現在の血糖測定値を取得し、次いで注射ペンをオンにして食事ボーラスを開始することができる。そのような実施形態では、患者は、食事に関連する一定量の炭水化物を提供する。例えば、患者は、注射ペンに関連付けられたユーザインターフェース要素を操作して炭水化物量を注射ペンに直接入力することができ、あるいは、その患者は、電子デバイスを操作して、電子デバイス上のクライアントアプリケーションに入力された炭水化物量を受信し、次いで注射ペンに転送することができる。さらに、注射ペンが血糖計と通信しない実施形態では、患者は、現在の血糖測定値を注射ペンに入力することができる。入力炭水化物量、現在の血糖測定値、および記憶された患者固有のパラメータ値に少なくとも部分的に基づいて、注射ペンは、患者固有の方法で炭水化物を補償するように構成された食事ボーラス量を自動的に計算または他の様態で判定する。注射ペンによって判定されたボーラス量がユーザによって確認または他の様態で受け入れられると、注射ペンは、その作動構成体を自動的に構成して、注射ペンのユーザインターフェース要素(例えば、流体送達に関連するボタン)の手動操作に応答してボーラス量を自動的に正確に送達する。
【発明の概要】
【0007】
これに基づいて、本発明の目的は、既知のインスリン送達装置およびシステムならびに投与方法をさらに改善し、インスリン投与決定の負担およびボーラス注射のためにユーザがとるべきステップの数を容易にすることである。
【0008】
この目的を達成するために、独立請求項に記載されている特徴の組み合わせが提案されている。本発明の有利な実施形態およびさらなる開発は、従属請求項から導き出される。
【0009】
本発明は、インスリン用量をダイヤルしながら、並行して、ユーザがダイヤルされたインスリン単位を注射するときに食べることができる等価量の炭水化物を判定してユーザに表示するという考えに基づいている。したがって、インスリン用量についての事前設定値または実際の設定値を入力として受信し、インスリン用量についての実際の設定によって補償されることができる食事炭水化物の量に相当する炭水化物値を出力として提供するように用量変換器が適合され、炭水化物値をユーザに表示するためのディスプレイが設けられているインスリン送達構成体またはシステムが提案される。このようにして、ユーザは、炭水化物の量を入力するステップを節約することができるが、インスリンの用量を増加させるだけであり、同時にまたは並行して、選択されたインスリンの用量によって補償されるそれぞれの炭水化物の量の指示が表示される。ユーザは、複雑な精神的計算および/または関連する入力操作から解放され、同時に、インスリン送達装置は、意図されたように簡単な方法で操作されることができ、したがって、糖尿病を有する患者の血糖制御および治療満足度を改善する。したがって、本発明は、
既存のペンで回転可能なダイヤルを利用することができ、
ユーザインターフェースのデジタルメニューを介したディスプレイ上のクリックと比較して、より高速な相互作用/入力を可能にし、
例えば食事サイズを入力するための限られたボタンと比較して、より柔軟な方法で使用されることができる。
【0010】
本発明の一態様では、
インスリン用量を事前設定するための調整ユニットと、事前設定されたインスリン用量をユーザに送達するようにトリガされることができるアプリケータユニットとを含む、手動操作型インスリン送達装置を備えるインスリン送達構成体であって、
前記インスリン用量のための前記事前設定を入力として受信し、前記それぞれのインスリン用量によって補償されることができる食事炭水化物の量に相当する炭水化物値を出力として提供するように適合された用量変換器と、
前記炭水化物値を前記ユーザに表示するためのディスプレイと、を備えることを特徴とする、インスリン送達構成体が開示される。
【0011】
一実施形態では、手動操作型インスリン送達装置は、インスリン用量を手動で事前設定するための調整ユニットを含む。したがって、調整ユニットは、インスリン用量を手動で事前設定するための機械的に操作される用量設定部材を備えることができる。調整ユニットは、例えば、インスリン用量を手動で事前設定するための段階的に回転可能なダイヤルを備えることができる。したがって、手動操作型インスリン送達装置は、簡単な例として、インスリン用量を手動で事前設定するための段階的に回転可能なダイヤルを備える調整ユニットを含むインスリンペンとして形成されることができる。したがって、本発明における手動操作型インスリン送達装置は、電気的に操作される用量設定部材(例えば、タッチ画面またはプラス/マイナスボタンを介して入力を受信する)なしで行うことができる。
【0012】
好ましくは、複数のステップまたは増分で、より好ましくは少なくとも5ステップでインスリン用量を事前設定するために、回転可能なダイヤルが設けられている。
有利には、用量変換器は、インスリンから炭水化物への変換を解決するように適合されたデジタルプロセッサによって形成されている。あるいは、製造が非常に簡単な設計では、アナログ機構が計算機として使用されることができる。
【0013】
さらなる改善は、ディスプレイが、ダイヤルされたインスリンユニットと並行して炭水化物値を表示するためのデジタル画面として設けられていることを提供する。この目的のために、アナログスライディングスケールを使用することも考えられることができる。
【0014】
この方向におけるさらに別の改善は、調整ユニットが段階的に回転可能なダイヤルとして形成されており、炭水化物値がダイヤルの回転の程度に対応してディスプレイ上で同時に変更されることを提供する。
【0015】
設計および使用をさらに単純化するために、インスリン送達装置は、インスリン注射ペンとして形成されており、用量変換器は、インスリン注射ペンの一部である。
【0016】
これに関連して、ディスプレイが表面、具体的には略円筒形のインスリン注射ペンの端面に配置されている場合も有利である。
【0017】
1つ以上の有利な実施形態は、インスリン送達装置とは別個に配置された遠隔モバイル装置、好ましくはスマートフォンまたはスマートウォッチをさらに備えることができ、モバイル装置は、インスリン送達装置と無線通信するように適合され、好ましくはモバイルアプリケーションとして用量変換器を含む。このようにして、広く使用されているスマートウェアラブルデバイスが使用されて、追加のリソース要求タスクを満たすことができる。
【0018】
特に、インスリンペン上でインスリン用量のためにダイヤルを回転させると、遠隔ボーラスまたは用量変換器を開始する遠隔装置に信号が送信される。ペンがインスリン用量情報を送信すると、変換器ユニットは、炭水化物の等価量を計算して表示する。
【0019】
これに関連して、炭水化物値を表示するためのディスプレイがモバイル装置に設けられていると有利である。追加的または代替的に、スマートウォッチまたはフィットネストラッカなどの別の接続されたウェアラブルデバイスのディスプレイを使用することも考えられる。
【0020】
ユーザの取り扱いのさらなる改善は、遠隔装置が、インスリン送達装置のユーザ操作時にインスリン用量の実際の設定を自動的に取得および処理するように構成されていることを提供する。したがって、一実施形態では、遠隔装置は、ダイヤルの回転時にインスリン用量の実際の設定を自動的に取得して処理するように構成されている。別の実施形態では、インスリン送達装置は、ダイヤルの回転時に遠隔モバイル装置にインスリン用量の実際の設定を自動的に送信するように構成されている。
【0021】
さらに有利な手段として、血糖計、特に連続監視血糖計は、血糖測定値を用量変換器に提供するように構成されている。これにより、ボーラス計算を改善するために血糖情報をさらに考慮することができる。
【0022】
1つ以上の有利な実施形態は、血糖測定値が遠隔装置によって血糖計から取得されることと、血糖測定値、および適切な場合には他の患者固有のデータが遠隔装置からインスリン送達装置に送信されることと、をさらに含むことができる。
【0023】
この方向における別の改善は、用量変換器が炭水化物値の計算にユーザ固有の補正ボーラスを含むように構成されていることを提供する。
【0024】
使用の利便性を向上させるために、インスリン送達装置が、インスリン送達装置が作動されたときに遠隔装置からのユーザ固有のパラメータの送信をトリガする作動回路を有すると有利である。
【0025】
特に、インスリン用量を調整しながら、インスリンペンは、並行して、食事で補償されることができる等価量の炭水化物を表示する。ボーラス計算のための血糖データおよび患者固有のパラメータが遠隔装置からペンに送信される、補正ボーラスを必要とする血糖上昇の場合も考慮するペン積分用量変換器を使用して、等価炭水化物量が計算される。
【0026】
さらにより洗練された実施形態では、用量変換器は、インスリン用量の実際の設定値と、測定血糖値、目標血糖値、インスリン対炭水化物比、インスリン感受性因子および基礎インスリン用量のうちの少なくとも1つとに基づいて炭水化物値を判定するためのソフトウェアルーチンを有する。
【0027】
本発明の別の態様は、インスリン送達構成体を投与調整するための方法であって、
調整ユニット、好ましくは段階的に回転可能なダイヤルのユーザ操作により、手動操作型インスリン送達装置においてインスリン用量を事前設定するステップと、
追加のユーザ相互作用なしに、インスリン用量の事前設定を用量変換器への入力として自動的に提供するステップと、
用量変換器からの出力として、食事の炭水化物の量に相当する炭水化物値を受信するステップと、
インスリン用量の事前設定と並行して炭水化物値を表示するステップと、を含む、方法に関する。
【0028】
このようにして、インスリン送達システムに関連して上記詳述したのと同じ利点が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下では、本発明は、図面に概略的に示される実施形態の例に基づいてさらに説明される。
【0030】
【
図1】インスリン注射ペンと、調整されたインスリン用量に相当する炭水化物の量を計算するための用量変換器との配置を斜視図で示している。
【
図2】炭水化物値を示すデジタルディスプレイを含むインスリンペンの近位端を示している。
【
図3】インスリンペン、スマートフォンおよび血糖計を備えるさらなる例示的なインスリン送達システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示すように、インスリン送達構成体10の例示的な実施形態は、インスリン用量を事前設定するための調整ユニット14を有するインスリンペン12を備え、インスリンペン12に組み込まれているものとして概略的に示されている用量変換器16をさらに備え、用量変換器16は、インスリン用量の実際の設定値を入力として受信し、等価な炭水化物値を出力18としてデジタルディスプレイ20上に提供するように適合される。
【0032】
インスリンペン12は、遠位突出注射針26およびインスリンカートリッジ28を備えるものとして破線で概略的に示されているアプリケータユニット24を保護するための取り外し可能なペンキャップ22を含む。
【0033】
調整ユニット14は、アプリケータユニット24の最終トリガ時に送達されるインスリン用量をユーザが事前設定するための手動で回転可能なダイヤル30を備える。ダイヤル30は、インスリン用量を増加または減少させるために前方または後方(矢印32)に回すことができる用量ノブとして形成されている。実際の設定に関するユーザへのフィードバックのために、調整ユニット14は、ダイヤル30に接続されたアナログスライディングスケールとしての用量カウンタ34をさらに備え、調整されたインスリン用量36は、中央に並ぶ。
【0034】
本明細書に記載の例示的な実施形態では、用量変換器16は、ダイヤル30の実際の設定または回転位置を入力値として受信するデジタルプロセッサ38を含む。以下により詳細に説明するように、次いで、用量変換器16は、実際の設定にしたがってインスリン用量によって補償されることができる食事中の炭水化物の量に相当する炭水化物値を計算する。
【0035】
図2に示すように、用量変換器16の炭水化物値または出力18は、ペン12の近位端の表示画面20上にデジタル形式で示される。したがって、ユーザは、ダイヤル30を回して適切な設定を見つけながら、炭水化物値に直接気付くことができる。ディスプレイ20はまた、最後に注射されたインスリン単位を視覚化するための用量メモリ40などの追加情報を提供することができる。ディスプレイ20は、好ましくはスケール34の近傍でペン12の長辺に配置されていることも考えられる。
【0036】
代替的な実施形態では、用量変換器16は、入力側でダイヤル14に機械的に結合され、さらにアナログ段階スケールに結合されて、用量カウンタ34と同様の炭水化物値を示すアナログ機構によって単に提供されてもよい。
【0037】
図3は、インスリンペン12と、一次遠隔モバイル装置44と、必要に応じて二次モバイル装置46および血糖計48とを備えるより強化されたインスリン送達システム42を示している。
【0038】
一次モバイル装置44は、スマートフォンとして示されているが、二次装置は、スマートウォッチまたはフィットネストラッカとすることができる。図示の装置12、46、48は、
図3の無線信号50によって示されるように、例えばブルートゥースプロトコルを使用してスマートフォン44と無線通信する。
【0039】
場合によっては、スマートフォン44は、内部プロセッサ上で実行されるモバイルアプリケーション52として用量変換器16を含むことができる。例示的な実施形態では、スマートフォンの画面は、計算された炭水化物値18をユーザに示すためのディスプレイ20’として使用されることができる。さらなるユーザの利便性のために、スマートフォン44は、インスリンペン12のユーザ操作時にインスリン用量の実際の設定を自動的に取得して処理することができる。同期は、ユーザに触覚または音響フィードバックを提供するために、インデックス付けされた位置またはダイヤル30からのクリックによって生じることができる。
【0040】
血糖計48は、ユーザ相互作用とは無関係に血糖の連続測定を可能にする身体装着型機器として示されている。他の場合には、モバイル装置44は、測定を行い、血糖測定値を送信または入力するようにユーザに促すことができる。
【0041】
インスリン送達システムのさらなる実施形態では、インスリンペン12が作動されると、ボーラス計算のための血糖データおよび患者固有のパラメータがスマートフォン44からペン12に送信される。接続された血糖計48からスマートフォンに血糖データが送信される。そのような通信は、ペン12上の作動回路(図示せず)によってトリガされることができる。次いで、ペン12のディスプレイ20が使用されて、血糖データ、インスリン用量および等価炭水化物値を示すことができる。
【0042】
炭水化物値の計算時に、用量変換器16は、現在と目標(血液)血糖値との間の差に基づいて、ユーザ固有の補正ボーラスを含むことができる。例えば、現在の血糖値が200mg/dlであり、目標血糖値が150mg/dlである場合、対応する量のインスリンが血糖値を低下させるためにのみ必要とされるため、炭水化物値の出力は、ダイヤル30の回転の最初のステップではゼロのままである。
【0043】
最も単純な実施形態は、1単位のインスリンが何グラムの炭水化物を補償することができるかを患者に示すために、1つの(ユーザ定義の)インスリン対炭水化物比のみを使用することができる。これは、単純なスライディングスケールによって機械的ボーラス変換器において実装されることができる。
【0044】
より高度な実施形態では、患者についての時刻(例えば、朝、昼食、夕食の時間)に応じて異なるインスリン対炭水化物比が定義されることができる。ボーラス計算において現在の血糖値が考慮される場合、インスリンに対する患者の感受性を反映する患者特異的インスリン感受性因子(例えば、投与されたインスリンの単位当たりの血糖レベルの低下量)が考慮されることができる。ユーザが一定量の炭水化物を食べたい昼食時に血糖値が目標レベルを下回る場合、ユーザは、現在の血糖値が正常であるかまたは目標レベルを上回っている状況よりも少ないインスリンを注射して、血糖を目標レベルに戻す必要がある。
【0045】
後者の場合、スマートフォン44に加えてまたはスマートフォンに代えて、スマートウォッチ46に情報を表示することが好ましい。この場合、ユーザは、自身のポケット(スマートフォンではない)からペン12を取り出し、透析された量のインスリンを用いて自身が食べることができる炭水化物の量を示す自身のスマートウォッチ46のディスプレイ20’’を見る必要があるのみである。
【0046】
より高度な計算ルーチンでは、用量変換器16は、インスリン用量(It)の実際の設定値、ならびに測定血糖値Gt、目標血糖値Tg、インスリン対炭水化物比ICR(すなわち、U/g単位で与えられる1単位Uのインスリンの血糖低下効果と一致するのに必要な炭水化物の量)、およびインスリン感受性因子ISF(U/(mg/dl)で与えられる、投与されたインスリンの1単位によって引き起こされる血糖レベルの減少の尺度として)などの他のユーザイベントおよび/またはパラメータに基づいて、炭水化物値(Ct)を判定するためのソフトウェアルーチンを有する。
【0047】
次いで、炭水化物値は、以下のように計算されることができる:
Ct=(It-(Gt-Tg)*ISF)/ICR(1)
【0048】
一実施形態では、用量変換器16は、より一般的なソフトウェアルーチンを有する。炭水化物値(Ct)は、以下のように判定されることができる:
Ct=f(It,Gt,Tt,Φt,θt)(2)
ここで、Itは、実際の時間tにおけるインスリン用量の設定値であり、Gtは、実際の測定血糖値であり、Ttは、実際の目標血糖値であり、
ここで、
Φt=[(Ct1,It1,Gt1,・・・),・・・,(Ctn,Itn,Gtn,・・・)](3)
は、過去の時点t1から過去の遮断時刻tnまでのユーザイベント(例えば、食事(摂取炭水化物Cとして示される)、インスリン注射I、測定血糖値G)の履歴を記述し、
ここで、
θt=[(ISFt,ICRt,Tt,・・・),・・・,(ISFtn,ICRtn,Ttn,・・・)](4)
ここで、θtは、過去の時点t1から遮断時刻tnまでのユーザパラメータ(例えば、インスリン感受性因子ISF、インスリン対炭水化物比ICR、目標血糖値T)の履歴を記述する。
【0049】
したがって、経時的なパラメータの変動が考慮されることができる。例えば、患者についての時刻に応じて異なるインスリン対炭水化物比が定義されることができる。
【0050】
必要に応じて、基礎インスリン用量、体重および生理学的活性など、上記例示したもの以外のさらなるイベントおよびパラメータ(上記式(3)および(4)において「・・・」として示される)も考慮されることができる。
【0051】
一般に、当該技術分野では、ユーザがボーラス計算を行わなければならない方法で駆動される炭水化物であるインスリンボーラスサイズ計算のために食事インスリンを炭水化物摂取量に一致させることが知られている。対照的に、本発明のインスリン駆動型アプローチは、はるかに単純な相互作用を可能にする。