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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】P2X3修飾薬での治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/437
A61K31/4545
A61K45/00
A61K45/06
A61P15/00
A61P25/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021549617
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 IB2020000160
(87)【国際公開番号】W WO2020174283
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】62/810,163
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524010217
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、(ナンバー3)、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline Intellectual Property (No.3) Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントニオス・マッゾラニス
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ガルソー
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ベリーニ
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537122(JP,A)
【文献】特表2016-506935(JP,A)
【文献】米国特許第10111883(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第108904507(CN,A)
【文献】国際公開第2012/158117(WO,A1)
【文献】特表2013-511517(JP,A)
【文献】Int. J. Nanomedicine,2017年,vol.12,pp.8171-8183,10.2147/IJN.S146569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61P 15/00-15/18
A61P 25/00-25/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療するための薬剤の製造における、式(I)
【化1】
(式中、
は、シアノ、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択され;
およびRは、独立に、水素、C~CアルキルおよびヒドロキシC~Cアルキルからなる群から選択され;または
およびRは、それらが両方とも結合している窒素と一緒になって、5員または6員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシルおよびC~Cアルキルからなる群から独立に選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されており;
およびRは、独立に、水素およびC~Cアルキルからなる群から選択され;
は、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルキル-C~Cシクロアルキル、ハロ-C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ハロ-C~CアルコキシおよびC~Cアルコキシ-C~Cアルキルからなる群から選択さ
れ;
Xは、結合、CHおよびOからなる群から選択される)
の化合物、または薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項2】
は、メチルであり、Rは、水素である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
およびRは、フルオロである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
Xは、Oである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
化合物は、構造において、
【化2】
に相当し;
は、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
は、水素であり、Rは、C~Cアルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
およびRは、水素およびC~Cアルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
化合物は、構造において、
【化3】
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
化合物は、構造において、
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【化4-5】
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
化合物は、構造において、
【化5】
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
化合物は、構造において、
【化6】
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
化合物は、構造において、
【化7】
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
化合物は、構造において、
【化8】
に相当する、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
それを必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う症状を治療するための、請求項1に記載の使用であって、前記子宮内膜症に伴う症状は、月経困難症、性交困難、排尿困難および排便困難から選択される、前記使用。
【請求項15】
第2の治療剤の使用をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
第2の治療剤は、ホルモン避妊薬、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、プロスタグランジンEシンターゼ(PTGES)阻害薬、インターロイキン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)阻害薬、プロスタノイドEP4受容体拮抗薬、アルド-ケトレダクターゼ1C3(AKR1C3)阻害薬およびプロラクチン受容体(PRLR)拮抗薬から選択される、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それが参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、2019年2月25日に出願した米国特許仮出願第62/810,163号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症は、子宮内膜組織が、子宮の外で、多くの場合、骨盤部中で増殖する一般の婦人科疾患である。子宮内膜症は、現在の療法が子宮内膜症の疼痛の再発生および副作用に帰着することが多いため、有効な治療の選択肢を欠く。そのため、新しい治療剤が、子宮内膜症を治療するために必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、例えば、哺乳動物における子宮内膜症をP2X3修飾薬で治療する方法を提供する。本開示はまた、薬剤としての、および/または哺乳動物、例えばヒトにおける子宮内膜症を治療するための薬剤の製造における、P2X3修飾薬の使用も提供する。いくつかの実施形態では、P2X3修飾薬は、P2X3拮抗薬である。
【0004】
一態様では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であり、該方法は、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、子宮内膜症の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症を治療する方法であり、該方法は、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う疼痛の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う疼痛を治療する方法であり、該方法は、治療有効量のP2X拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であり、該方法は、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であり、該方法は、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、ここで、前記症状は、月経困難症、性交困難、排尿困難および排便困難から選択される。
【0005】
いくつかの実施形態では、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、ここで、P2X3拮抗薬は、式(I):
【化1】
(式中、
は、シアノ、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択され;
およびRは、独立に、水素、C~Cアルキルおよびヒドロキシ-C~Cアルキルからなる群から選択され;または
およびRは、それらが両方とも結合している窒素と一緒になって、5員または6員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシルおよびC~Cアルキルからなる群から独立に選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されており;
およびRは、独立に、水素およびC~Cアルキルからなる群から選択され;
は、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルキル-C~Cシクロアルキル、ハロ-C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ハロ-C~CアルコキシおよびC~Cアルコキシ-C~Cアルキルからなる群から選択され;
Xは、結合、CHおよびOからなる群から選択される)
の化合物、または薬学的に許容されるその塩である、方法である。
【0006】
いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rはフルオロである。いくつかの実施形態では、XはOである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【化2】
に相当し、Rは、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、RはC~Cアルキルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、RはC~Cアルコキシである。いくつかの実施形態では、Rはメトキシである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【化3】
に相当する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【0007】
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
に相当する。
【0008】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【化5】
に相当する。
【0009】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【化6】
に相当する。
【0010】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【化7】
に相当する。
【0011】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、構造において、
【化8】
に相当する。
【0012】
いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化9】
に相当する。
【0013】
いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化10】
に相当する。
【0014】
いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化11】
に相当する。
【0015】
いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、ここで、哺乳動物はヒトである、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う疼痛の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う疼痛を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、ここで、子宮内膜症に伴う症状は、月経困難症、性交困難、排尿困難および排便困難から選択される、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を、本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬で治療する方法であって、ここで、P2X3拮抗薬は、静脈内投与、皮下投与、経口投与、吸入、経鼻投与、局所投与または点眼投与による、哺乳動物への投与のために製剤化される、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を、本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬で治療する方法であって、ここで、P2X3拮抗薬は、錠剤、丸剤、カプセル、液体、サスペンション、ゲル、分散体、溶液、エマルション、軟膏またはローションの形態において製剤化される、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、第2の治療剤の投与をさらに含む、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の式(I)のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、ホルモン避妊薬、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、プロスタグランジンEシンターゼ(PTGES)阻害薬、インターロイキン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)阻害薬、プロスタノイドEP4受容体拮抗薬、アルド-ケトレダクターゼ1C3(AKR1C3)阻害薬およびプロラクチン受容体(PRLR)拮抗薬から選択される第2の治療剤の投与をさらに含む、方法である。
【0016】
参照による組み入れ
本明細書中で挙げられる全ての刊行物、特許および特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的にかつ個々に、参照により組み入れられていると示されているかの如く、同程度まで、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】化合物1を投与した(30mg/kg、腹腔内)同系C57BL/6マウスで生成したフォンフライフィラメントの図である。
図1B】メロキシカムを投与した(5mg/kg、腹腔内)同系C57BL/6マウスで生成したフォンフライフィラメントの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
子宮内膜症に伴う疼痛は、子宮腔の外で、神経線維で埋め込まれている機能性子宮内膜症病巣に起因する。求心性感覚繊維と炎症誘発性メディエータとが、子宮内膜症に伴う疼痛に相互関連する。詳細には、子宮内膜症を有する女性は、腹腔液および子宮内膜症病巣中に、高レベルの炎症誘発性サイトカイン、例えば高レベルのインターロイキン(IL)-1β、IL-6、プロスタグラジン(PG)、腫瘍壊死因子(TNF)-αおよび神経増殖因子(NGF)を有する。子宮内膜症腹腔炎症微小環境中の炎症メディエータは、子宮内膜症病巣内で神経支配されている感覚神経線維(C-またはAδ-線維を含む)を刺激することによって、求心性神経細胞における非侵害性受容体を活性化させ、感覚神経の感作をもたらし、最終的に疼痛シグナルカスケードをトリガーする。いくつかの事例では、抗炎症剤が鎮痛をもたらす。しかしながら、これらの作用剤は、疼痛症状の軽減が最小であることが多く、再発生および重大な副作用が起こりうる(Dingら、PloS one、2017、12(9)、1~17頁、Yuanら、Int.J.Nanomed.、2017、8171~8183頁)。
【0019】
子宮腔の外で子宮内膜症病巣中に見出される求心性神経細胞は、後根神経節のC-またはAδ-繊維からなり、脊髄とシナプスを形成する。C-およびAδ-繊維末端は、炎症誘発性メディエータに応答する受容体を発現して、CNSに伝えられる活動電位を開始する。これらの神経によって発現されるこのシグナル伝達経路の重要なトランスデューサは、P2X3カチオンチャネルである。とりわけ、P2X3チャネルは、侵害性刺激の重要な疼痛トランスデューサである、小径および中径の感覚神経の細胞膜上で共発現される。加えて、子宮内膜症の子宮内膜および子宮内膜症病巣中でのP2X3発現度は、通常の子宮内膜組織よりも著しく高く、両方とも子宮内膜症に伴う疼痛に肯定的に関連している(Hanら、Nat.Neurosci.、2013、174~182頁、Vilottiら、PloS one、2013、8(11):e81138、Dingら、PloS one、2017、12(9)、1~17頁)。
【0020】
P2X3チャネルは、神経伝達物質および炎症誘発性サイトカインであるATPの限局的放出によって活性化される神経細胞興奮性調整物質である。ATPは、多数の病理的症状における神経および非神経細胞型によって過剰に放出される重要な化学伝達物質として良く確立されている(Burnstock,Front.Pharmacol.、2017、661;Burnstock,Biochem.Pharmacol.、2017、doi:10.1016/j.bcp.2017.07.016)。したがって、病態生理学的条件下で、炎症メディエータにより修飾されたATPの放出の増加は、P2X3の活性化へと導いて、子宮腔の外の子宮内膜中に位置している求心性神経細胞の興奮性亢進、および子宮内膜症に伴う疼痛への感受性の高まりへと至らせうる。総じて、病理的ATP放出を介して働くP2X3チャネルは、子宮内膜症に伴う疼痛と組み合わされる求心性神経細胞の感知へと修正するための潜在的に適切な標的でありうる。それらを阻止することは、子宮内膜症および子宮内膜症様症状から生じた疼痛を緩和するアプローチを付与する(Yuanら、Int.J.Nanomed.、2017、8171~8183頁)。
【0021】
定義
本明細書において、さらに添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形態「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに別段のことを述べていない限り、複数の指示物を含む。そのため、例えば、「1つの作用物質(an agent)」への言及は、複数のこうした作用物質を含み、「細胞(the cell)」への言及は、1種またはそれ以上の細胞(または複数の細胞)およびその等価物への言及を含む。範囲が、本明細書において、分子量のような物理的性質について用いられるとき、または化学式のような化学的性質について用いられるとき、範囲およびその中の特定の実施形態の、全ての組合せおよびサブ組合せが含まれることが意図される。用語「約」は、数または数値範囲に言及しているとき、言及されている数または数値範囲が実験の多様性内(または実験の統計的な誤差内)の近似値であり、そのため、数または数値範囲が、述べられた数または数値範囲のうちの1%から15%の間で多様であることを意味する。用語「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有する(having)」または「含む(including)」のような関連する用語)は、他の特定の実施形態において、例えば、本明細書で記載の、物質、組成、方法またはプロセスなどの、任意の組成物の実施形態において、それが、記載された特徴「からなる」または「から本質的になる」ことがあり得ることを排除することは意図されていない。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、逆のことが指定されていない限り、以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0023】
本明細書において使用されるとき、C~Cは、C~C、C~C...C~Cを含む。C~Cは、それが指名している分子を作り上げている炭素原子の数を指す(場合による置換基を除く)。
【0024】
「アミノ」は、-NH基を指す。
【0025】
「シアノ」は、-CN基を指す。
【0026】
「ニトロ」は、-NO基を指す。
【0027】
「オキサ」は、-O-基を指す。
【0028】
「オキソ」は、=O基を指す。
【0029】
「チオキソ」は、=S基を指す。
【0030】
「イミノ」は、=N-H基を指す。
【0031】
「オキシモ」は、=N-OH基を指す。
【0032】
「アルキル」または「アルキレン」は、炭素原子および水素原子のみからなり、不飽和を含有せず、1~15個の炭素原子を有する、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖基を指す(例えば、C~C15アルキル)。特定の実施形態では、アルキルは、1~13個の炭素原子を含む(例えば、C~C13アルキル)。特定の実施形態では、アルキルは、1~8個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~6個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~5個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~4個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~3個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~2個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1個の炭素原子を含む(例えば、Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、5~15個の炭素原子を含む(例えば、C~C15アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、5~8個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、2~5個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキルは、3~5個の炭素原子を含む(例えば、C~Cアルキル)。他の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、1-プロピル(n-プロピル)、1-メチルエチル(iso-プロピル)、1-ブチル(n-ブチル)、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(iso-ブチル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)および1-ペンチル(n-ペンチル)から選択される。アルキルは、単結合によって分子の残部に結合される。本明細書で特に別段の指定がない限り、アルキル基は、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-OC(O)R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-OC(O)-NR、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)(式中、tは1または2である)、-S(O)OR(式中、tは1または2である)、-S(O)(式中、tは1または2である)および-S(O)N(R(式中、tは1または2である)の置換基のうちの1つまたはそれ以上によって場合により置換されており、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、各Rは、独立に、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである。
【0033】
「アルコキシ」は、式-O-アルキルの酸素原子を介して結合されている基を指し、ここでアルキルは、上で定義したアルキル鎖である。
【0034】
「アルケニル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、2~12個の炭素原子を有する、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖基を指す。特定の実施形態では、アルケニルは、2~8個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルケニルは、2~4個の炭素原子を含む。アルケニルは、単結合によって分子の残部に結合し、例えば、エテニル(すなわちビニル)、プロパ-1-エニル(すなわちアリル)、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなどである。本明細書中で特に別段の指定がない限り、アルケニル基は、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-OC(O)-R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-OC(O)-NR、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)(式中、tは1または2である)、-S(O)OR(式中、tは1または2である)、-S(O)(式中、tは1または2である)および-S(O)N(R(式中、tは1または2である)の置換基のうちの1つまたはそれ以上によって場合により置換されており、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、各Rは、独立に、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである。
【0035】
「アルキニル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有し、2~12個の炭素原子を有する、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖基を指す。特定の実施形態では、アルキニルは2~8個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルキニルは2~4個の炭素原子を含む。アルキニルは、単結合によって分子の残部に結合し、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどである。本明細書中で特に別段の指定がない限り、アルキニル基は、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ、トリメチルシラニル、-OR、-SR、-OC(O)R、-N(R、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)N(R、-N(R)C(O)OR、-OC(O)-NR、-N(R)C(O)R、-N(R)S(O)(式中、tは1または2である)、-S(O)OR(式中、tは1または2である)、-S(O)(式中、tは1または2である)および-S(O)N(R(式中、tは1または2である)の置換基のうちの1つまたはそれ以上によって場合により置換されており、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、各Rは、独立に、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである。
【0036】
「アリール」は、環炭素原子から水素原子を除去することによって、芳香族の単環式または多環式炭化水素環系から誘導される基を指す。芳香族の単環式または多環式炭化水素環系は、水素、および6~18個の炭素原子からの炭素のみを含有し、ここで、環系中の環のうちの少なくとも1つは、完全に不飽和であり、すなわちそれは、ヒュッケル理論に従って、環状の非局在化(4n+2)π-電子系を含有する。そこからアリール基が誘導される環系は、ベンゼン、フルオレン、インデーン、インデン、テトラリンおよびナフタレンのような基が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で特に別段の指定がない限り、用語「アリール」または接頭辞「ar-」(「aralkyl」でのような)は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、シアノ、ニトロ、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)N(R、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)OR(式中、tは1または2である)、-R-S(O)(式中、tは1または2である)、-R-S(O)(式中、tは1または2である)および-R-S(O)N(R(式中、tは1または2である)から独立に選択される1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換されているアリール基を含むことを意味し、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つまたはそれ以上のハロ基で場合により置換されている)、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、各Rは、独立に、直接結合、または直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、Rは、直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖である。
【0037】
「アリールオキシ」は、式-O-アリールの酸素原子を通して結合された基を指し、ここで、アリールは上で定義したものである。
【0038】
「アラルキル」は、式-R-アリールの基を指し、ここで、Rは、上で定義したアルキレン鎖であり、例えばメチレン、エチレンなどである。アラルキル基のアルキレン鎖部分は、アルキレン鎖について上に説明したように、場合により置換されている。アラルキル基のアリール部分は、アリール基について上に説明したように、場合により置換されている。
【0039】
「アラルキルオキシ」は、式-O-アラルキルの酸素原子を介して結合された基を指し、ここで、アラルキルは上で定義したものである。
【0040】
「アラルケニル」は、式-R-アリールの基を指し、ここで、Rは上で定義したアルケニレン鎖である。アラルケニル基のアリール部分は、アリール基について上に説明したように、場合により置換されている。アラルケニル基のアルケニレン鎖部分は、アルケニレン基について上に説明したように、場合により置換されている。
【0041】
「アラルキニル」は、式-R-アリールの基を指し、ここで、Rは上で定義したアルキニレン鎖である。アラルキニル基のアリール部分は、アリール基について上に説明したように、場合により置換されている。アラルキニル基のアルキニレン鎖部分は、アルキニレン鎖について上に説明したように、場合により置換されている。
【0042】
「シクロアルキル」は、縮合環系または架橋環系を含み、3~15個の炭素原子を有する、炭素原子および水素原子のみからなる安定な非芳香族の単環式または多環式炭化水素基を指す。特定の実施形態では、シクロアルキルは、3~10個の炭素原子を含む。他の実施形態では、シクロアルキルは、5~7個の炭素原子を含む。シクロアルキルは、単結合によって分子の残部に結合される。シクロアルキルは飽和であり(すなわち単一のC-C結合のみを含有する)、または部分的に不飽和である(すなわち1つまたはそれ以上の二重結合または三重結合を含有する)。単環式シクロアルキルの例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。特定の実施形態では、シクロアルキルは、3~8個の炭素原子を含む(例えばC~Cシクロアルキル)。他の実施形態では、シクロアルキルは、3~7個の炭素原子を含む(例えばC~Cシクロアルキル)。他の実施形態では、シクロアルキルは、3~6個の炭素原子を含む(例えばC~Cシクロアルキル)。他の実施形態では、シクロアルキルは、3~5個の炭素原子を含む(例えばC~Cシクロアルキル)。他の実施形態では、シクロアルキルは、3~4個の炭素原子を含む(例えばC~Cシクロアルキル)。部分的に不飽和のシクロアルキルはまた、「シクロアルケニル」とも称される。単環式シクロアルケニルの例としては、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルが挙げられる。多環式シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル、ノルボルニル(すなわちビシクロ[2.2.1]ヘプタニル)、ノルボルネニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。本明細書中で特に別段の指定がない限り、用語「シクロアルキル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、シアノ、ニトロ、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)N(R、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)(式中、tは1または2である)、-R-S(O)OR(式中、tは1または2である)、-R-S(O)(式中、tは1または2である)および-R-S(O)N(R(式中、tは1または2である)から独立に選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているシクロアルキル基を含むことを意味し、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール(1つまたはそれ以上のハロ基で場合により置換されている)、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、各Rは、独立に、直接結合、または直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、Rは、直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖である。
【0043】
「ハロ」または「ハロゲン」は、ブロモ、クロロ、フルオロまたはヨードの置換基を指す。
【0044】
「ハロアルキル」は、上で定義したように、上で定義した1つまたはそれ以上のハロ基によって置換されているアルキル基を指す。
【0045】
「フルオロアルキル」は、上で定義したように、1つ以上のフルオロ基、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチルなどによって置換されているアルキル基を指す。フルオロアルキル基のアルキル部分は、アルキル基について上で定義されているように場合により置換されている。
【0046】
「ハロアルコキシ」は、上で定義したように、上で定義した1つまたはそれ以上のハロ基によって置換されているアルコキシ基を指す。
【0047】
「ヘテロシクロアルキル」は、2~12個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を含む、安定な3員~18員の非芳香族環基を指す。本明細書中で特定に別段の記載がない限り、ヘテロシクロアルキル基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系であり、これには、縮合した環系、スピロの環系または架橋した環系が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子は、場合により酸化される。1つまたはそれ以上の窒素原子は、存在する場合、場合により四級化される。ヘテロシクロアルキル基は、部分的にまたは完全に飽和される。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、環の任意の原子を通して分子の残部に結合する。こうしたヘテロシクロアルキルの例には、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニルおよび1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で別段の記載がない限り、用語「ヘテロシクロアルキル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)N(R、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)(式中、tは1または2である)、-R-S(O)OR(式中、tは1または2である)、-R-S(O)(式中、tは1または2である)および-R-S(O)N(R(式中、tは1または2である)から選択される1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換されている、上で定義したヘテロシクロアルキル基を含むことを意味し、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、式中、各Rは、独立に、直接結合、または直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、Rは、直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖である。
【0048】
「ヘテロアリール」は、1~17個の炭素原子、および窒素、酸素および硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を含む、5員~18員の芳香族環基から誘導される基を指す。本明細書で使用されるとき、ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系を指し、ここで、環系中の環の少なくとも1つは、完全に不飽和であり、すなわちそれは、ヒュッケル理論に従って、環状の非局在化(4n+2)π-電子系を含有する。ヘテロアリールは、縮合環系または架橋環系を含む。ヘテロアリール基中のヘテロ原子は、場合により酸化される。1個またはそれ以上の窒素原子は、存在する場合、場合により四級化される。ヘテロアリールは、環の任意の原子を介して分子の残部に結合している。本明細書中で特に別段の指定がない限り、用語「ヘテロアリール」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、アリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-R-OR、-R-OC(O)-R、-R-OC(O)-OR、-R-OC(O)-N(R、-R-N(R、-R-C(O)R、-R-C(O)OR、-R-C(O)N(R、-R-O-R-C(O)NR 、-R-N(R)C(O)OR、-R-N(R)C(O)R、-R-N(R)S(O)(式中、tは1または2である)、-R-S(O)OR(式中、tは1または2である)、-R-S(O)(式中、tは1または2である)および-R-S(O)N(R(式中、tは1または2である)から選択される1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換されている、上で定義したヘテロアリール基を含むことを意味し、式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、各Rは、独立に、直接結合、または直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、Rは、直鎖状または分枝状の、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖である。
【0049】
「N-ヘテロアリール」は、少なくとも1個の窒素を含有する、上で定義したヘテロアリール基を指し、ここで、ヘテロアリール基の、分子の残部への結合点は、ヘテロアリール基中の窒素原子を介している。N-ヘテロアリール基は、ヘテロアリール基について上に説明したように、場合により置換されている。
【0050】
「C-ヘテロアリール」は、上で定義された通りのヘテロアリール基であって、ヘテロアリール基の分子の残部への結合点がヘテロアリール基中の炭素原子を介しているヘテロアリール基を指す。C-ヘテロアリール基は、ヘテロアリール基について上で定義したように場合により置換されている。
【0051】
「ヘテロアリールオキシ」は、式-O-ヘテロアリールの酸素原子を介して結合された基を指し、ここで、ヘテロアリールは上で定義したものである。
【0052】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-R-ヘテロアリールの基を指し、ここで、Rは、上で定義したアルキレン鎖である。ヘテロアリールが窒素含有ヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、窒素原子においてアルキル基に場合により結合される。ヘテロアリールアルキル基のアルキレン鎖は、アルキレン鎖について上で定義したように場合により置換されている。ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上で定義したように場合により置換されている。
【0053】
「ヘテロアリールアルコキシ」は、式-O-R-ヘテロアリールの酸素原子を介して結合された基を指し、ここで、Rは、上で定義したアルキレン鎖である。ヘテロアリールが窒素含有ヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、窒素原子においてアルキル基に場合により結合される。ヘテロアリールアルコキシ基のアルキレン鎖は、アルキレン鎖について上で定義したように場合により置換されている。ヘテロアリールアルコキシ基のヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について上で定義したように場合により置換されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示の化合物は、1つまたはそれ以上の不斉中心を含有し、そのため、鏡像異性体、ジアステレオマー、および(R)-または(S)-のように、絶対立体化学の点で定義されている他の立体異性体形態を起こす。別段の記載がない限り、本明細書に開示の化合物の全ての立体異性体形態が本開示によって想定されることが意図される。本明細書に記載の化合物がアルケン二重結合を含有するとき、別段の指定がない限り、本開示がE幾何異性体とZ幾何異性体と(例えば、cisとtransと)の両方を含むことが意図される。同様に、全ての可能な異性体、ならびにそれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態、ならびに全ての互変異性体の形態もまた含まれることが意図される。用語「幾何異性体」は、アルケン二重結合のE幾何異性体またはZ幾何異性体(例えばcisまたはtrans)を指す。用語「位置異性体」は、ベンゼン環の周りのオルト-、メタ-およびパラ-異性体のような中心環の周りの構造的異性体を指す。
【0055】
「互変異性体」は、分子の1つの原子から、同じ分子の別の原子へのプロトンシフトが可能な分子を指す。特定の実施形態では、本明細書で存在する化合物が互変異性体として存在する。互変異性が可能である状況では、互変異性体の化学的平衡が存在することになる。互変異性体の正確な比は、物理的な状況、温度、溶媒およびpHを含むいくつかの要因に依存する。互変異性体平衡のいくつかの例としては、
【化12】
が挙げられる。
【0056】
「場合による」または「場合により」は、続いて記載される事象または状況が、起こることもあり起こらないこともあること、および記載が、事象または状況が起きるときの例とそこでそれが起きないときの例とを含むこと、を意味する。例えば、「場合により置換されているアリール」は、アリール基が、置換されていてもされていなくてもよいこと、およびその記載が、置換されたアリール基と置換基を有していないアリール基との両方を含むことを意味する。
【0057】
「プロドラッグ」は、投与後に、薬理学的に活性な薬剤へと代謝される化合物を含む(R.B.Silverman、1992、「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」Academic Press、第8章)。プロドラッグは、化合物の吸収のされ方、分布のされ方、代謝のされ方、排泄のされ方を改善するために使用することができる。
【0058】
「薬学的に許容される塩」は、酸基付加塩と塩基付加塩との両方を含む。本明細書で記載の化合物の任意の1種の薬学的に許容される塩は、任意かつ全ての薬学的に好適な塩の形態を包含することが意図される。本明細書に記載の化合物の好ましい薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸付加塩および薬学的に許容される塩基付加塩である。
【0059】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、生物学的にまたはそうでなくても非所望ではなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などのような無機酸で形成されている、遊離酸の生物学的な有効性および特性を保つ塩を指す。さらに挙げられるのは、脂肪族モノ-およびジカルボン酸、フェニル置換アルカノール酸、ヒドロキシアルカノール酸、アルカンジオール酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような有機酸から形成されている塩であり、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。このようにして、例示的な塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩酸塩、臭酸塩、ヨウ素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソブチル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。さらに熟慮されるのは、アルギン酸塩、グルコン酸塩およびガラクツロン酸塩のようなアミノ酸の塩である(例えば、Berge S.M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science、66:1~19頁(1997年)を参照されたい)。塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を、十分な量の所望の酸と接触させて塩を生成することによって調製される。
【0060】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、生物学的にまたはそうでなくても非所望ではない、遊離酸の生物的な有効性および特性を保つ塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に付加することから調製される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のような金属、または有機アミンのようなアミンで形成される。無機塩基から誘導される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。有機塩基から誘導される塩としては、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンの塩、自然に発生した置換アミン等の置換アミンの塩、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられるがこれらに限定されない。前のBergeらを参照されたい。
【0061】
用語「哺乳動物」は、ヒト、非ヒトの霊長目の動物、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、または他の獣医学のもしくは研究室の哺乳動物を指す。当業者は、哺乳動物の1つの種における病理の重症度を低減する療法が、哺乳動物の別の種における療法の効果を予測することを認めている。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「治療」または「治療する」または「緩和させる」または「寛解させる」は、本明細書で互換可能で使用される。これらの用語は、治療的利益および/または予防的利益を含むがこれらに限定されない、利益のあるまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。「治療的利益」は、治療されている基礎疾患の根絶または寛解を意味する。さらに、治療的利益は、患者が依然として基礎疾患に悩まされていたとしても、改善が患者において観察されるような、基礎疾患を伴う生理学的徴候の1つまたはそれ以上の根絶または寛解で、達成される。予防的利益については、該組成物は、特定の疾患を発症するリスクにある患者に、または疾患の生理学的徴候のうちの1つまたはそれ以上を報告している患者に、この疾患の診断が下されていない場合でさえ投与される。
【0063】
方法
いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、治療有効量のP2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、ここで、P2X3拮抗薬は、構造:
【化13】
(式中、
は、シアノ、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択され;
およびRは、独立に、水素、C~CアルキルおよびヒドロキシC~Cアルキルからなる群から選択され;または
およびRは、それらが両方とも結合している窒素と一緒になって、5員または6員のヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、ヒドロキシルおよびC~Cアルキルからなる群から独立に選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されており;
およびRは、独立に、水素およびC~Cアルキルからなる群から選択され;
は、C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルキル-C~Cシクロアルキル、ハロ-C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ハロ-C~CアルコキシおよびC~Cアルコキシ-C~Cアルキルからなる群から選択され;
Xは、結合、CHおよびOからなる群から選択される)
を有する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0064】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Xは結合である)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはCHである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0065】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはシアノである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはハロゲンである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはエチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0066】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rは水素である)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはハロゲンである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはエチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0067】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはハロゲンである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはフルオロである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはエチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0068】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rは水素である)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはハロゲンである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはフルオロである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはエチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメトキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0069】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RおよびRは、独立に、水素およびC~Cアルキルからなる群から選択される)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RおよびRは、それぞれ水素である)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RおよびRは、それぞれC~Cアルキルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rは水素であり、RはC~Cアルキルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rは水素であり、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0070】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RおよびRは、独立に、水素およびメチルからなる群から選択される)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RおよびRはそれぞれ水素である)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rは水素であり、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0071】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rは、C~CアルキルおよびC~Cアルコキシからなる群から選択される)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RはC~Cアルキルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはエチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、RはC~Cアルコキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、Rはメトキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0072】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化14】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩であり、Rは、ハロゲン、メチルおよびエチルからなる群から選択される。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化15】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0073】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはハロゲンであり、Rはハロゲンであり、Rは水素であり、RはC~Cアルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RはC~Cアルキルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0074】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはハロゲンであり、Rはハロゲンであり、Rは水素であり、RはC~Cアルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RはC~Cアルコキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはメトキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0075】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RはC~Cアルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RはC~Cアルキルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはメチルである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0076】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RはC~Cアルキルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、RはC~Cアルコキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、式(I)(式中、XはOであり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはメトキシである)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0077】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
【化16-4】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0078】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化17】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0079】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化18】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0080】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化19】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0081】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化20】
に相当する式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0082】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、
【化21】
の構造に相当する。
【0083】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化22】
に相当する。
【0084】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、P2X3拮抗薬は、構造において、
【化23】
に相当する。
【0085】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、子宮内膜症を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う疼痛を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、子宮内膜症に伴う症状を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、月経困難症、性交困難、排尿困難および排便困難から選択される子宮内膜症に伴う症状を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、月経困難症を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、性交困難を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、排尿困難を治療する方法である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、排便困難を治療する方法である。
【0086】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状は、急性状態である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状は、慢性状態である。
【0087】
特定の実施形態では、前述の方法のうちの1つまたはそれ以上によって利用される開示されている化合物は、本明細書に記載の式(I)の化合物のような、属の、亜属の、または本明細書に記載の特定の化合物のうちの1種である。
【0088】
化合物の調製
本明細書に記載の方法において使用される化合物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第9,598,409号に開示の手順に従って作製され、または市販の化学物質から、および/または化学文献に記載の化合物から出発する既知の有機合成技術によって作製される。市販の化学物質は、Acros Organics(Geel,Belgium)、Aldrich Chemical(Milwaukee,WI、Sigma Chemical and Flukaを含む)、Apin Chemicals Ltd.(Milton Park,UK)、Ark Pharm,Inc.(Libertyville,IL)、Avocado Research(Lancashire,U.K.)、BDH Inc.(Toronto,Canada)、Bionet(Cornwall,U.K.)、Chemservice Inc.(West Chester,PA)、Combi-blocks(San Diego,CA)、Crescent Chemical Co.(Hauppauge,NY)、eMolecules(San Diego,CA)、Fisher Scientific Co.(Pittsburgh,PA)、Fisons Chemicals(Leicestershire,UK)、Frontier Scientific(Logan,UT)、ICN Biomedicals,Inc.(Costa Mesa,CA)、Key Organics(Cornwall,U.K.)、Lancaster Synthesis(Windham,NH)、Matrix Scientific(Columbia,SC)、Maybridge Chemical Co.Ltd.(Cornwall, U.K.)、Parish Chemical Co.(Orem,UT)、Pfaltz & Bauer,Inc.(Waterbury,CN)、Polyorganix(Houston,TX)、Pierce Chemical Co.(Rockford,IL)、Riedel de Haen AG(Hanover,Germany)、Ryan Scientific,Inc.(Mount Pleasant,SC)、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)、Sundia Meditech(Shanghai,China)、TCI America(Portland,OR)、Trans World Chemicals,Inc.(Rockville,MD)およびWuXi(Shanghai,China)を含む標準的な商業的供給源から得られる。
【0089】
本明細書に記載の化合物の調製において有用な、反応物の合成に詳しい好適な参照書籍および専門書、または調製を説明している論文への提供参照物としては、例えば「Synthetic Organic Chemistry」、John Wiley & Sons,Inc.、New York;S.R.Sandlerら、「Organic Functional Group Preparations」第2版、Academic Press、New York、1983年;H.O.House、「Modern Synthetic Reactions」、第2版、W.A.Benjamin,Inc.Menlo Park,Calif.1972年;T.L.Gilchrist、「Heterocyclic Chemistry」、第2版、John Wiley & Sons、New York、1992年;J.March、「Advanced Oganic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure」、第4版、Wiley Interscience、New York、1992年が挙げられる。本明細書に記載の化合物の調製において有用な、反応物の合成に詳しいさらなる好適な参照書籍および専門書、または調製を説明している論文への提供参照物としては、例えば、Fuhrhop,J.and Penzlin G.「Organic Synthesis:Concepts,Methods,Starting Materials」、第2版改訂版および拡大版(1994年)John Wiley & Sons ISBN:3-527-29074-5;Hoffman,R.V.「Organic Chemistry,An Intermediate Text」(1996年)Oxford University Press、ISBN:0-19-509618-5;Larock,R.C.「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations」第2版(1999年)Wiley-VCH、ISBN:0-471-19031-4;March,J.「Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure」第4版(1992年)John Wiley & Sons、ISBN:0-471-60180-2;Otera,J.(編集者)「Modern Carbonyl Chemistry」(2000年)Wiley-VCH、ISBN:3-527-29871-1;Patai,S.「Patai’s 1992 Guide to the Chemistry of Functional Groups」(1992年)Interscience ISBN:0-471-93022-9;Solomons,T.W.G.「Organic Chemistry」第7版(2000年)John Wiley & Sons、ISBN:0-471-19095-0;Stowell,J.C.、「Intermediate Organic Chemistry」第2版(1993年)Wiley-Interscience、ISBN:0-471-57456-2;「Industrial Organic Chemicals:Starting Materials and Intermediates:An Ullmann’s Encyclopedia」(1999年)John Wiley & Sons、ISBN:3-527-29645-X、8巻;「Organic Reactions」(1942~2000頁)John Wiley & Sons、55巻以上;および「Chemistry of Functional Groups」John Wiley & Sons、73巻が挙げられる。
【0090】
特定および類似の反応物はまた、ほとんどの公共図書館および大学図書館で、ならびにオンラインデータベース(さらなる詳細のためには、The American Chemical Society,Washington,D.C.で接触することができる)を介して入手可能な、アメリカ化学会のChemical Abstract Serviceによって調製される既知の化学物質のインデックスを介して確定される。既知ではあるがカタログでは市販されていない化学物質は、注文型の化学合成会社によって場合により調製され、ここで、標準的な化学物質供給会社の多く(例えば上に列挙したもの)は、注文型の合成サービスを提供している。本明細書に記載の化合物の薬学的な塩の調製および選択のための参照物は、P.H.Stahl & C.G.Wermuth「Handbook of Pharmaceutical Salts」、Verlag Helvetica Chimica Acta,Zurich,2002である。
【0091】
本明細書に開示の化合物のさらなる形態
異性体
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は幾何異性体として存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つまたはそれ以上の二重結合を有する。本明細書において提供される化合物には、全てのcis異性体、trans異性体、syn異性体、anti異性体、entgegen(E)異性体およびzusammen(Z)異性体、ならびに対応するこれらの混合物が挙げられる。いくつかの状況では、化合物は互変異性体として存在する。本明細書に記載の化合物は、本明細書に記載の式の中の全ての可能な互変異性体を含む。いくつかの状況では、本明細書に記載の化合物は、1つまたはそれ以上のキラル中心を有し、各中心は、R配置またはS配置において存在する。本明細書に記載の化合物は、全てのジアステレオマー形態、鏡像異性体形態、およびエピマー形態、ならびに対応するこれらの混合物を含む。本明細書で提供されている化合物および方法のさらなる実施形態では、単一の調製工程から得られる鏡像異性体および/またはジアステレオ異性体の混合物、組合せまたは相互変換体が、本明細書に記載の用途に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、化合物のラセミ混合物を、光学的に活性な分割剤と反応させて1組のジアステレオ異性体化合物を形成することと、ジアステレオマーを分離して光学的に純粋な鏡像異性体を回収することによって、それらの個々の立体異性体として調製される。いくつかの実施形態では、解離性複合体(例えば結晶質のジアステレオマー塩)が好ましい。いくつかの実施形態では、ジアステレオマーは、別個の物理的性質(例えば、融点、沸点、可溶性、反応性など)を有し、これらの相違点であるという利点を取ることによって分離される。いくつかの実施形態では、ジアステレオマーは、キラルクロマトグラフィーによって、または好ましくは、可溶性の差に基づく分離/分解技術によって分離される。いくつかの実施形態では、光学的に純粋な鏡像異性体は、次いで、ラセミ化に帰結しないであろう任意の実践的手段によって、分解剤と共に、回収される。
【0092】
標識化合物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、それらの同位体標識形態で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の方法は、こうした同位体標識化合物を投与することによって疾患を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の化合物は、こうした同位体標識化合物を医薬組成物として投与することによって疾患を治療する方法を含む。そのため、いくつかの実施形態では、本明細書で開示の化合物は、1個またはそれ以上の原子が、通常自然界において見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられているという事実がないのであれば、本明細書中に引用されたものと同一である同位体標識化合物を含む。本発明の化合物中に組み込まれる同位元素の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素および塩素が挙げられ、例えば、それぞれH、H、13C、14C、15N、16O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clである。本明細書に記載の化合物、ならびに前述した同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する、薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、水和物またはそれらの誘導体が、本発明の範囲内にある。例えばそれらの中にHおよび14Cのような放射性同位元素が組み込まれたものである特定の同位体標識化合物が、薬物および/または基剤組織の分布アッセイにおいて有用である。トリチウム標識された、すなわちH、および炭素-14、すなわち14C同位元素が、それらが調製および検出性に容易であることから特に好ましい。さらに、重水素、すなわちHのような重同位元素での置換は、より大きい代謝安定性からもたらされる特定の治療上の利点、例えばインビトロ半減期の増大または必要投与量の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、同位体標識化合物、薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物、水和物、または誘導体は、任意の好適な方法によって調製される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、発色団部分もしくは蛍光部分、生物発光標識または化学発光標識の使用が挙げられるがこれらに限定されない他の手段によって標識される。
【0094】
薬学的に許容される塩
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、それらの薬学的に許容される塩として存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法は、こうした薬学的に許容される塩を投与することによって疾患を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法は、こうした薬学的に許容される塩を医薬組成物として投与することによって疾患を治療する方法を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、酸性基または塩基性基を有し、したがって無機塩基または有機塩基、ならびに無機酸および有機酸のうちの多くの任意のものと反応して薬学的に許容される塩を形成する。いくつかの実施形態では、これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間にin situで、またはその遊離形態にある精製化合物を好適な酸または塩基と別々に反応させることと、そのようにして形成された塩を単離することとによって、調製される。
【0096】
プロドラッグ
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、特定の作用剤についての体内分布または薬物動態を変更するために、活性な形態にインビボで転換される作用剤として製剤化される。例えば、カルボン酸基は、メチル基またはエチル基でエステル化されてエステルを生成することができる。エステルが対象に投与されたとき、エステルは、酵素的にまたは非酵素的に、還元的にもしくは酸化的にまたは加水分解的に開裂されて、アニオン性基をあらわにする。アニオン性基は、開裂されて中間作用剤をあらわにして続いて分解して活性剤をもたらす部分(例えば、アシルオキシメチルエステル)でエステル化されうる。プロドラッグ部分は、エステラーゼによって、または他の機序によってインビボでカルボン酸へと代謝されうる。或いは、他の官能基がプロドラッグ形態へと修飾されうる。例としては、アミン基が、インビボで開裂されうるカルバメートまたはアミドへと転換されうる。
【0097】
溶媒和物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は溶媒和物として存在する。本発明は、こうした溶媒和物を投与することによって疾患を治療する方法を提供する。本発明は、こうした溶媒和物を医薬組成物として投与することによって疾患を治療する方法をさらに提供する。
【0098】
溶媒和物は、化学量論の量または非化学量論の量のいずれかの溶媒を含有し、いくつかの実施形態では、水、エタノールなどのような薬学的に許容される溶媒での結晶化の方法の間に形成される。溶媒が水であるときに水和物が形成され、または溶媒がアルコールあるときにアルコレートが形成される。本明細書に記載の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法の間、便利に調製されるまたは形成される。例を介してのみ、本明細書に記載の化合物の水和物は、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはメタノールが挙げられるがこれらに限定されない有機溶媒を使用して、水性/有機溶媒混合物からの再結晶化によって便利に調製される。加えて、本明細書で提供される化合物は、非溶媒化形態または溶媒化形態で存在する。一般に、本明細書に提供されている化合物および方法の目的では、溶媒化形態は非溶媒化形態と等価であるとみなされる。
【0099】
医薬組成物
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、純粋な化学物質として投与される。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro、第21版.Mack Pub.Co.、Easton,PA(2005年))に記載の、選ばれた投与経路および標準的な薬学的実践に基づいて選択される、薬学的に好適なまたは許容される担体(本明細書では、薬学的に好適な(もしくは許容される)賦形剤、生理的に好適な(もしくは許容される)賦形剤、または生理的に好適な(もしくは許容される)担体とも称される)と組み合わされる。
【0100】
したがって、本明細書で提供されるのは、1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体と一緒に、本明細書に記載の少なくとも1種の化合物、または薬学的に許容される塩を含む医薬組成物である。担体(または賦形剤)は、該担体が該組成物の他の成分と適合性があって該組成物のレシピエント(すなわち対象)に有害でない場合に許容されるまたは好適である。
【0101】
一実施形態は、薬学的に許容される担体、および式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0102】
別の実施形態は、薬学的に許容される担体、および式(I)の化合物、または薬学的に許容されるその塩から本質的になる医薬組成物を提供する。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、それが約5%未満、または約1%未満、または約0.1%未満の、例えば合成方法の工程のうちの1つまたはそれ以上において作成される汚染中間体または副生成物のような他の有機小分子を含有することにおいて、実質上、純粋である。
【0104】
これらの製剤には、経口投与、局所投与、バッカル投与、非経口投与(例えば皮下、筋肉内、真皮内もしくは静脈内)またはエアロゾル投与にとって好適なものが挙げられる。
【0105】
例示的な医薬組成物は、例えば、外用投与、腸内投与または非経口投与に好適な有機または無機の担体または賦形剤との混合物中に、有効成分として、開示されている化合物のうちの1種またはそれ以上を含む、固体、半固体または液体形態にある医薬製剤の形態で使用される。いくつかの実施形態では、有効成分は、錠剤、ペレット、カプセル、坐薬、溶液、エマルション、サスペンション、および使用に好適な他の任意の形態のための、通常の、非毒性の、薬学的に許容される担体と化合される。目的の活性化合物は、疾患のプロセスまたは症状に対して所望の効果をもたらすのに十分な量で、医薬組成物中に含まれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の式(I)の化合物は、皮膚の疾患、障害または症状を治療するまたは予防するための局所投与に好適な生物学的に適応性のある形態において、対象に投与される。「局所投与に好適な生物学的に適応性のある形態」によって、そこで任意の毒性作用よりも阻害剤の治療効果が超えるような、投与されることになる式(I)の化合物の形態が意味される。本明細書に記載の式(I)の化合物の投与は、単独で、または薬学的に許容される担体との組合せで治療有効量の式(I)の化合物を含む任意の薬理的形態にあることができる。
【0107】
式(I)の化合物の局所投与は、エアロゾル、半固体の医薬組成物、粉末または溶液の形態で提示されうる、用語「半固体の医薬組成物」によって、軟膏、クリーム、膏薬、ゼリー、または皮膚への適用に好適な実質的に類似の稠度の他の医薬組成物が意味される。半固体の組成物の例は、Lea and Febiger(1970)により刊行されたThe Theory and Practice of Industrial Pharmacy,Lachman,Lieberman and Kanigの第17章において、かつMack Publishing Companyにより刊行されたRemington’s Pharmaceutical Sciences、第15版(1975)において付与されている。
【0108】
真皮または皮膚のパッチは、本明細書に記載の治療または医薬組成物の経皮送達の別の方法である。パッチは、化合物の吸収性を向上させるためにDMSO等の吸収促進剤を付与することができる。パッチは、皮膚への薬剤送達の速度を制御するものを含むことができる。パッチは、それぞれ、リザーバ系または一体化系を含む多様な投薬系を付与することができる。リザーバの設計は、例えば4つの層:皮膚と直接接触する接着層、薬剤分子の拡散を制御する制御膜、薬剤分子のリザーバ、および耐水性バッキングを有することができる。そのような設計は、特定の時間の期間にわたり、均一量の薬剤を送達し、送達の速度は、異なるタイプの皮膚の飽和限界未満でなければならない。一体化の設計は、例えば、典型的には、3つの層のみ:接着層、化合物を含有するポリマーマトリックス、および耐水性バッキングを有する。この設計は、飽和量の薬剤を皮膚にもたらす。それによって、送達は、皮膚によって制御される。薬剤量がパッチ中で飽和レベルを下回るまで減少するにつれて、送達速度は下がる。
【0109】
一実施形態では、局所用組成物は、例えば、例えば標準の軟膏DAB8(50%のPEG300、50%のPEG1500)のような、担体としてポリエチレングリコール(PEG)を有する軟膏として;または場合により、添加されたリポソームを有する、油中水または水中油をベースとするエマルション、特にマイクロエマルションとして、ポリアクリル酸またはポリアクリルアミドをベースとするヒドロゲルの形態をとってもよい。好適な浸透促進剤(共留剤)には、スルホキシド誘導体、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)またはデシルメチルスルホキシド(デシル-MSO)およびトランスクトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)またはシクロデキストリン;ならびにピロリドン、例えば2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン-5-カルボン酸、または生分解性N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよびそれらの脂肪酸エステル;尿素誘導体、例えばドデシル尿素、1,3-ジドデシル尿素、および1,3-ジフェニル尿素;テルペン、例えばD-リモネン、メントン、α-テルピネオール、カルボール、リモネンオキシドまたは1,8-シネオールが挙げられる。
【0110】
軟膏、ペースト、クリームおよびジェルはまた、賦形剤、例えばデンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸およびタルク、またはこれらの混合物を含むことができる。粉末およびスプレーはまた、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物も含有することができる。ナノ結晶抗菌剤金属の溶液が、エアロゾル医薬品を作製するのに通常使用される既知の手段のうちの任意のものによって、エアロゾルまたはスプレーへと転換されうる。一般に、そのような方法は、通常不活性担体ガスでの、加圧、または溶液の容器を加圧するための手段の提供、および加圧されたガスを小さいオリフィスを通すことを含む。スプレーは、付加的に、通例の噴霧材、例えばクロロフルオロヒドロカーボンおよび揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含有することができる。
【0111】
錠剤のような固体組成物の調製についてのいくつかの実施形態では、主な有効成分は、医薬担体、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム、および水のような他の医薬希釈剤のような従来の錠剤化成分と混合されて、開示の化合物、または非毒性の薬学的に許容されるその塩の均質な混合物を含有する固体の予備製剤組成物を形成する。これらの予備製剤組成物が均質であると言及するとき、それは、組成物が、錠剤、丸剤およびカプセルのような等しく有効な単位剤形へと直ちに細分化されるように、有効成分が組成物全体にわたって均一に分散されていることを意味する。
【0112】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖剤、粉末、顆粒など)では、対象組成物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、ならびに/または(1)フィラーもしくは増量剤、例えばデンプン、セルロース、微結晶セルロース、硅化微結晶セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/もしくはケイ酸、(2)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒプロメロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア、(3)保水剤、例えばグリセリン、(4)崩壊剤、例えばクロスポビドン、クロスカメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(5)溶液遅延化剤、例えばパラフィン、(6)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、(7)湿潤剤、例えばドキュセートナトリウム、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリン、(8)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ、(9)滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物、および(10)着色剤、のうちの任意のもの、のような1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の事例では、いくつかの実施形態では、組成物は緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、同様のタイプの固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する、軟らかく詰めたまたは硬く詰めたゼラチンカプセル中のフィラーとして利用される。
【0113】
いくつかの実施形態では、錠剤は、場合により1種またはそれ以上の補助成分と一緒に、圧縮または成形によって作製される。いくつかの実施形態では、圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製される。いくつかの実施形態では、成形錠剤は、好適な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた対象の組成物の混合物を成形することによって作製される。いくつかの実施形態では、錠剤、ならびに糖剤、カプセル、丸剤および顆粒のような他の固体剤形は、刻み目を入れるか、または腸コーティングおよび他のコーティングのようなコーティングおよびシェルで調製される。
【0114】
吸入および送気用の組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機の溶媒中またはこれらの混合物中の溶液およびサスペンション、ならびに粉末が挙げられる。経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、サスペンション、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。対象の組成物に加えて、いくつかの実施形態では、液体剤形は、不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および懸濁剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(具体的には、綿実油、ピーナツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセリン、テトテラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリン、ならびにこれらの混合物を含有する。
【0115】
いくつかの実施形態では、サスペンションは、対象の組成物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物を含有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、粉末およびスプレーは、対象の組成物に加えて、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、ならびにこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有する。いくつかの実施形態では、スプレーは、さらに、クロロフルオロヒドロカーボン、ならびにブタンおよびプロパンのような揮発性非置換炭化水素などの通例の噴霧剤を含有する。
【0117】
本明細書で開示の組成物および化合物は、別法では、エアロゾルによって投与される。これは、水性エアロゾル、リポソーム製剤、または該化合物を含有する固体粒子を調製することによって達成される。いくつかの実施形態では、非水性(例えばフロオロカーボン噴射剤)サスペンションが使用される。いくつかの実施形態では、超音波ネブライザが使用され、その理由は、それらが、対象の組成物中に含有されている化合物の分解をもたらす剪断への作用物質の曝露を最小限にするためである。通常、水性エアロゾルは、対象の組成物の水性溶液またはサスペンションを、従来の薬学的に許容される担体および安定剤と一緒に調合することによって作製される。担体および安定剤は、特定の対象の組成物の要件に伴って多様であるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronicsまたはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンのようなアミノ酸、緩衝剤、塩、糖または糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは、一般に、等張性溶液から調製される。
【0118】
非経口投与に好適な医薬組成物は、対象の組成物を、使用直前に無菌の注射用溶液または分散液へと再溶解される1種またはそれ以上の薬学的に許容される無菌の等張性の水性または非水性溶液、分散液、サスペンションまたはエマルション、または無菌の粉末と組み合わせて含み、これらは、いくつかの実施形態では、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、意図されたレシピエントの血液または懸濁剤または増粘剤で製剤を等張性にする溶質を含有する。
【0119】
医薬組成物中に利用される好適な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびこれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルおよびシクロデキシトリンのような注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散液の事例では、必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持される。
【0120】
本明細書に記載の少なくとも1種の化合物を含む組成物の用量は、患者(例えばヒト)の症状、すなわち疾患のステージ、一般的な健康状態、年齢および他の要因によって異なる。
【0121】
医薬組成物は、治療される(または予防される)疾患に適当な方法で投与される。適当な用量ならびに投与の好適な期間および頻度は、患者の症状、患者の疾患のタイプおよび重症度、有効成分の具体的な形態、ならびに投与方法などの要因によって決定されることになる。一般に、適当な用量および治療レジメンは、治療的および/または予防的利益(例えば、臨床転帰の改善、例えばより頻度の高い完全なもしくは部分的な緩和、またはより長い無疾患期間および/もしくは全生存期間、または徴候の重症度の低減)をもたらすのに十分な量において、組成物を提供する。最適な用量は、一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を用いて決定される。いくつかの実施形態では、最適な用量は、患者の、体質量、体重または血液量に依存する。
【0122】
経口投与は、典型的には、1日当たり1~4回またはそれ以上で、約1.0mg~約1000mgの範囲である。
【0123】
組合せ医薬
本明細書でまた熟慮されるのは、組合せ療法、例えば、開示されている化合物と、付加的な活性剤とを、これらの治療剤の共作用から有益性のある効果をもたらすことが企図された特定の治療レジメンの部分として共投与することである。組合せの有益性のある効果には、治療剤の組合せからもたらされる薬物動態的または薬力学的な共作用が挙げられるがこれらに限定されない。組合せにおけるこれらの治療剤の投与は、典型的には、規定された時間の期間にわたって実施される(通常は、選択される組合せに応じて、数週間、数か月または数年)。組合せ療法は、連続した方法における多数の治療剤の投与、すなわち、各治療剤が異なる時間に投与されること、および実質的に同時の方法におけるこれらの治療剤、または治療剤のうちの少なくとも2種の投与を包含することが企図される。
【0124】
実質的に同時の投与は、例えば、各治療剤の固定した比を有する、または治療剤のそれぞれについて、多数の、単一の製剤(例えば、カプセル)にある、単一の製剤または組成物(例えば、錠剤またはカプセル)を対象に投与することによって実現される。各治療剤の、続けての、または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通した直接吸収が挙げられるがこれらに限定されない任意の適当な経路によって果たされる。治療剤は、同一の経路により、または異なる経路により、投与される。例えば、選択された組合せの第1の治療剤は静脈内注射によって投与され、一方、組合せの他の治療剤は経口投与される。或いは、例えば、全ての治療剤は経口投与され、または全ての治療剤は静脈内注射によって投与される。
【0125】
いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、P2X3拮抗薬を哺乳動物に投与することを含み、1種またはそれ以上の追加の医薬用薬剤を哺乳動物に投与することをさらに含む、方法である。いくつかの実施形態では、子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状の治療を必要とする哺乳動物における子宮内膜症、子宮内膜症に伴う疼痛および子宮内膜症に伴う症状を治療する方法であって、式(I)の化合物を哺乳動物に投与することを含み、1種またはそれ以上の追加の医薬用薬剤を哺乳動物に投与することをさらに含む、方法である。いくつかの実施形態では、1種またはそれ以上の追加の医薬用薬剤は、ホルモン避妊薬、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、プロスタグランジンEシンターゼ(PTGES)阻害薬、インターロイキン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)阻害薬、プロスタノイドEP4受容体拮抗薬、アルド-ケトレダクターゼ1C3(AKR1C3)阻害薬およびプロラクチン受容体(PRLR)拮抗薬からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、ホルモン避妊薬である。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、非ステロイド抵抗炎症剤(NSAID)である。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、プロスタグランジンEシンターゼ(PTGES)阻害薬である。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、インターロイキン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)阻害薬である。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、プロスタノイドEP4受容体拮抗薬である。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、アルド-ケトレダクターゼ1C3(AKR1C3)阻害薬である。いくつかの実施形態では、追加の医薬用薬剤は、プロラクチン受容体(PRLR)拮抗薬である。
【0126】
組合せ療法はまた、上に記載した治療剤の、他の生物学的に活性な成分および非薬剤療法とのさらなる組合せにおける投与も包含する。組合せ療法が非薬剤治療をさらに含むところでは、非薬剤治療は、治療剤と非薬剤治療との組合せの共作用からの有益性のある効果が達成される限り、任意の好適な時間において行われる。例えば、適当な事例では、非薬剤治療が、おそらくは数日または数週間でさえ、治療剤の投与から一時的に外されるときであっても、有益性のある効果は依然として達成される。
【0127】
組合せの成分は、同時にまたは続けて患者に投与される。成分が、同一の薬学的に許容される担体中に存在し、したがって同時に投与されることが、評価されることになる。代替的に、有効成分は、従来の経口剤形のように、同時にまたは続けてのいずれかで投与される別々の医薬担体中に存在する。
【実施例
【0128】
この実施例は、例示目的でのみ提供され、本開示中に提供される「特許請求の範囲」の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0129】
子宮内膜症の同系マウスモデル
本明細書に記載の式(I)のP2X3受容体拮抗薬化合物を、子宮内膜症の同系マウスモデルで評価した。
【0130】
パート1:同系子宮内膜組織を移植する外科手術
C57BL/6マウス(8週齢)を麻酔し、その後、腹部に縦切り込みを作製した。子宮を回収し、5ミリメートルの片に分け、次いでそれらを同系レシピエント動物の腹膜に外科的に縫合した。レシピエントマウスはまた、エストラジオールで処置し、生成した病巣を11週間の間、発達させた。
【0131】
パート2:試験化合物の評価
ベースライン測定を、第0日に、全ての移植マウスにおいて、以下に記載するプロトコルに従ってフォンフライ疼痛刺激手順を用いて機械誘発異痛を測定することによって確立した。第1日に、移植マウスに生理食塩水を注射し(腹腔内)、フォンフライフィラメント法を用いて機械誘発異痛を再度測定した(対照)。第4日および第5日のそれぞれで、移植マウスを化合物1(30mg/kg)または正の対照(メロキシカム、5mg/kg)のいずれかで処置した(腹腔内)。機械誘発異痛を、フォンフライ疼痛刺激手順を用いて評価した。全ての異痛測定を1時間行い、続いて処置した。マウスを第6日に安楽死させ、子宮内膜症病巣の存在について評価した。
【0132】
フォンフライ疼痛刺激手順
動物を、メッシュまたはそうでなければ貫通可能な底部を有する小型ケージ内に置いた。疼痛閾値を、動物における正の疼痛応答を引き出すのに必要な機械力を決定する単純化した増加減少方法を用いて、フォンフライフィラメントで評価した。
【0133】
フォンフライモノフィラメントを、腹部に、それが留められるまで垂直に適用し、一定の所与の力を送達した。フィラメントに対する正の応答が、使用されることになる、より低い力の次のフィラメントを示し、その一方で負の応答が、使用されることになる、より高い力の次のフィラメントを示すように、試験する力を異なる力のフィラメントを適用して進行させ、続いて増加減少シーケンスを行った。疼痛閾値を各動物の腹部で測定した。フォンフライモノフィラメントを下腹部から中腹部に、少なくとも10秒の刺激間の間隔を伴って1~2秒間適用した。外性器を回避するために、かつ同じ地点を続けて2回刺激しないようにケアした。腹部の鮮明な退縮、ヘア適用の部位の即座のリッキングまたはスクラッチング、およびエスケーピングまたはジャンピングのトライアルは、腹部刺激に対する正の応答であると考えた。
【0134】
結果
アッセイの結果を図1Aおよび図1Bに示す。フォンフライ試験は、齧歯動物における機械誘発異痛を評価する有効な方法である。疼痛応答を引き出すのに必要な増加した圧力は、減少する疼痛感覚を示し、鎮痛効果を有する潜在的治療剤を画定するのを助けることができる。この実施例では、フォンフライ試験を使用して、マウスモデルにおける子宮内膜症によって引き起こされた疼痛感覚の減少に対する化合物1の効果を測定した。子宮内膜症によって引き起こされた疼痛を減少させることが知られ、診療において一般に使用されている治療剤のメロキシカムを、正の対照として働かせた。フォンフライ試験では、刺激閾値が高いほど、疼痛知覚が低減していることを示す。図1Bに提示している結果は、メロキシカム(5mg/kg)で処置した正の対照群が、第4日と第5日(それぞれp=0.0002およびdp<0.05)との両方における薬剤処置の後に刺激閾値が増加していたことを明らかにしており、これは、メロキシカムが、予期した通り、痛覚を低減させたことを明示している。同様に、化合物1について、第4日および第5日に、より大きい刺激閾値を観察し(30mg/kg)(図1A)、フォンフライアッセイにより測定した化合物1の鎮痛効果を確認した(p<0.05)。図1Aおよび図1Bにおける結果を、挙動反応を引き起こすのに必要な圧力刺激におけるベースライン第0日からの百分率変化(%)として示す。
図1A
図1B