(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】高速歯科用光コヒーレンストモグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20241029BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241029BHJP
A61B 1/24 20060101ALI20241029BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B1/00 526
G01N21/17 630
A61B1/24
A61B1/045 610
(21)【出願番号】P 2021554728
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2020022362
(87)【国際公開番号】W WO2020186041
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513097067
【氏名又は名称】デンタル・イメージング・テクノロジーズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】タオ シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ビクター シー
(72)【発明者】
【氏名】ファン チャンマオ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0109911(US,A1)
【文献】特開2009-014728(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013950(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363415(US,A1)
【文献】特表2004-502957(JP,A)
【文献】特表2013-521071(JP,A)
【文献】特開2008-145188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをスキャンするための歯科用光コヒーレンストモグラフィシステムであって、
(a)ある範囲の光波長を有する出力光を発生させるように構成されている掃引光源レーザと、
(b)2つ以上の光チャネルであって、各光チャネルが、前記掃引光源レーザからの前記出力光のための参照経路およびサンプル経路を提供し、各光チャネルが、前記サンプル経路および前記参照経路からの結合光に従って出力信号を提供するように構成されている対応する検出器を有し、前記
各光チャネルについての出力信号が、前記サンプル経路から戻った、サンプル表面下のある範囲の深さにわたる後方反射光または後方散乱光を特徴付ける、光チャネルと、
(c)前記2つ以上の光チャネルの各々からのサンプル経路出力光を前記サンプル表面に同時に向け、前記サンプルからの前記戻り光を前記対応するサンプル経路および検出器に向けるように構成されているスキャン反射器と、
(d)光チャネルごとに前記検出器と信号通信し、各検出器から受信した出力信号の結果を記録および格納するように構成されているプロセッサと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、プローブの動きを検出するため、または前記サンプルに関連する色情報を取得するためのカメラをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記プロセッサが、前記格納された出力信号の結果からサンプルの2次元セクションまたは3次元ボリュームを再構築するようにさらに構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記スキャン反射器がMEMS反射器であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記掃引光源レーザ光を前記2つ以上の光チャネルに分配するように構成されている光ファイバアレイをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記光ファイバアレイが1次元アレイまたは2次元アレイであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記出力光を光チャネル内に向ける光スイッチをさらに備え、前記スイッチの第1の位置が、第1の光路長にわたって前記出力光を向け、前記スイッチの第2の位置が、前記第1の光路長よりも短い第2の光路長にわたって前記出力光を向けることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記出力光を第1の光チャネルまたは第2の光チャネルに向ける光スイッチをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記サンプル経路内の所定の固定位置に配置され、歯科用スキャナの視野内にある後方散乱参照特徴、反射参照特徴、または拡散参照特徴をさらに備えること
、および前記参照特徴の検出を使用して、各チャネル間の光路長差を補償するか、または前記参照特徴の検出を使用して、各チャネルの強度変化を監視し、それに応じて強度変動を補償するか、または前記参照特徴の検出を使用して、前記レーザまたは前記スキャナの状態を監視するか、または前記参照特徴の検出を使用して、前記サンプルからの前記戻り光からアーチファクトを除去するか、または前記参照特徴の検出を示す信号が、OCT信号を線形波数空間にリサンプリングする際に使用されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、高偏光感度の光コヒーレンストモグラフィを提供するように配置された1つ以上の偏光ビームスプリッタをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、各参照経路が、反射器または光学ストレッチャを含む調整可能な光学遅延線としてさらに構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記サンプル経路が、複数の光ファイバを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記2つ以上の光チャネルの前記サンプル経路が、前記サンプル表面上で離間して、スキャン領域の1次元アレイまたは2次元アレイを形成することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記2つ以上のチャネルの前記参照経路および前記サンプル経路における対応する光路長が、異なるイメージング範囲をスキャンするために異なっていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
サンプルをイメージングするための歯科用光コヒーレンストモグラフィの方法であって、
a)掃引光源レーザに通電して、ある範囲の光波長を有する出力光を発生させるステップと、
b)前記出力レーザ光を2つ以上の光チャネルに通すステップであって、各光チャネルが、前記掃引光源レーザからの前記出力光のための参照経路およびサンプル経路を有し、各光チャネルが、前記サンプル経路および前記参照経路からの結合光に従って出力信号を提供するように構成されている対応する検出器を有し、前記
各光チャネルについての出力信号が、前記サンプル経路から戻った、サンプル表面下のある範囲の深さにわたる後方反射光または後方散乱光を特徴付ける、ステップと、
c)前記2つ以上の光チャネルの各々からのサンプル経路出力光を前記サンプル表面に同時に向け、前記サンプルからの前記戻り光を前記チャネル内の前記対応するサンプル経路および検出器に向けるようにスキャン反射器を構成するステップと、
d)光チャネルごとに、各検出器から受信した出力信号の結果を記録するステップと、
e)前記記録された結果に従って前記サンプルのスキャンされた部分を再構築し、前記再構築された部分を表示するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の方法であって、前記サンプル経路内の反射参照特徴、吸収参照特徴、または後方散乱参照特徴を検出し、前記検出に応じてスキャンタイミングを調節するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項
15に記載の方法であって、前記サンプル経路内の反射参照特徴、吸収参照特徴、または後方散乱参照特徴を検出し、前記検出に従って1つ以上の画像アーチファクトを抑制するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、歯科および顎顔面用光コヒーレンストモグラフィ(OCT)イメージングに関し、より詳細には、速度が向上し、イメージング範囲が拡大されたハンドヘルド口腔内OCT装置およびそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)は、干渉原理を使用して、サンプルの深さ構造を特徴付ける高解像度の断面トモグラフィ画像を取得する非侵襲的イメージング技術である。OCTは、特に人間の組織の体内イメージングに適しており、眼科、皮膚科、腫瘍学、およびその他の分野におけるような様々な生物医学研究および医用イメージングの応用、ならびに耳鼻咽喉科(ENT)用および歯科用イメージングにおいて有用であることがわかっている。
【0003】
OCTは、生体組織内からの反射エネルギーをイメージングして断面データを取得する、ある種の「光超音波」として説明されている。OCTイメージングシステムでは、スーパールミネッセントダイオード(SLD)またはその他の光源などの広帯域幅光源からの光が、2つの異なる光路、すなわち、既知の光路長の参照アームまたは経路と、調査中の組織または他の被験体を照明するサンプルアームまたは経路とに沿って向けられる。その後、参照アームおよびサンプルアームからの反射光および後方散乱光がOCT装置内で再結合され、干渉効果を使用して、サンプルの表面および表面近くの基礎構造の特性を判定する。干渉データは、サンプル全体にわたって照明を迅速にスキャンすることによって取得することができる。サンプル表面に沿った数千の点の各々において、OCT装置は干渉プロフィールを取得し、この干渉プロフィールを使用して、主に光源コヒーレンスの係数である材料への軸方向深さを有するAスキャンを再構築することができる。ほとんどの組織イメージングの応用について、OCTは広帯域照明光源を使用し、数ミリメートル(mm)までの深さの画像コンテンツを提供することができる。
【0004】
ハンドヘルド歯科用および顎顔面用光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンシステムの課題には、十分なイメージング速度を得ること、および診断補助として使用するのに適したイメージング範囲を有することがある。高速は、ハンドヘルドスキャナの動きによって生じるイメージングアーチファクトを最小限に抑える重要な要因であるが、ほとんどのOCTシステムで使用される高速ラスタスキャンは、ぶれ、ゆがみ、および空間エイリアシングなどのアーチファクトを引き起こす。後処理に基づくアーチファクト補正は信頼できる結果をもたらすことができず、後処理時間はリアルタイムイメージングには長すぎることが多い。十分なイメージング範囲を得ることにより、OCTイメージング装置は、イメージングされた歯または他のサンプルの表面下の組織または他の材料の状態をより効果的に示すことができる。
【0005】
画像取得速度を向上させる1つの方法は、高速掃引レーザ光源と高速スキャナとを利用することである。リアルタイムOCTイメージングは、高速フーリエドメインモード同期(FDML)レーザを使用することによって実証されている。しかしながら、FDMLレーザは複雑さが増し、コストが高くなるため、歯科用途への応用が制限される。加えて、FDMLレーザを使用するOCTシステムは、制限されたイメージング範囲しか提供することができない。
【0006】
メガヘルツ範囲で高い掃引速度の動作を提供することができる、同調垂直キャビティ面発光レーザなどの微小電気機械システム(MEMS)ベースの掃引光源の最近の利用可能性は、スキャン速度の向上を達成し、より高速な画像取得を可能にするのに役立つことがある。しかしながら、残念なことに、高い掃引速度の掃引光源を使用することには、いくつかの欠点がある。例えば、高速掃引光源OCTシステムを使用するとき、イメージング範囲を拡大するには高価な高速デジタイザが必要である。加えて、フォトンノイズおよび電気ノイズのため、高いサンプリングレートでは画質が大幅に低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OCTをより使いやすくするには、OCTの取得速度を向上させる必要があるが、コストを大幅に増加させることなく、画質を損なうことなく、かつイメージング範囲を制限することなく、これを達成しなければならない。非常に高い掃引速度の掃引光源に依存することなく、高速画像取得およびイメージング範囲の拡大における改良をもたらす高速歯科用OCTシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
広く説明すると、本発明は、非常に高い掃引速度の掃引光源に依存することなく、高速画像取得およびイメージング範囲の拡大における改良をもたらす装置および方法を含む、高速歯科用OCTシステムを含む。本発明の一態様によれば、サンプルをスキャンするための歯科用光コヒーレンストモグラフィシステムであって、(a)ある範囲の光波長を有する出力光を発生させるように構成されている掃引光源レーザと、(b)2つ以上の光チャネルであって、各光チャネルが、(i)掃引光源レーザからの出力光のための参照経路およびサンプル経路、ならびに(ii)サンプル経路および参照経路からの結合光に従って出力信号を提供するように構成されている対応する検出器を含み、検出器が、サンプル経路から戻った、サンプル表面下のある範囲の深さにわたる後方反射光または後方散乱光を特徴付ける信号を出力するように動作可能である、光チャネルと、(c)2つ以上の光チャネルの各々からのサンプル経路出力光をサンプル表面に同時に向け、サンプルからの戻り光を対応するサンプル経路および検出器に向けるように構成されているスキャン反射器と、(d)光チャネルごとに検出器と信号通信し、各検出器から受信した出力信号の結果を記録および格納するように構成されているプロセッサとを備えるシステムが提供される。
【0009】
本発明の上記およびその他の態様、特徴、および利点は、その例示的な実施形態の以下のより詳細な説明および添付図面から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の掃引光源OCT(SS-OCT)装置を示す概略図である。
【
図2A】Bスキャンを取得するためのスキャン動作の概略図である。
【
図2B】Cスキャン取得のためのOCTスキャンパターンを示す図である。
【
図3A】本発明の例示的な実施形態による、複数のチャネルを有する高速口腔内OCTシステムを示す概略図である。
【
図3B】各チャネルからの光をコリメートし、集束させ、スキャンする構成要素を示す概略図である
【
図3C】イメージングされたサンプルを見るための追加のカメラを含むチャネルを示す概略図である。
【
図4A】複数のチャネルからの出力ビームを提供するために1次元アレイを使用する装置の概略図である。
【
図4B】複数のチャネルからの出力ビームを提供するために2次元アレイを使用する装置を示す概略図である。
【
図5】異なる深さの複数のチャネルをスキャンするための装置を示す概略図である。
【
図6】サンプルアームごとに異なる光長を有する複数のチャネルをスキャンするための装置を示す概略図である。
【
図7】関心領域をスキャンするためのファイバアレイおよび光スイッチングの使用を示す概略図である。
【
図8A】チャネル間の深さシフトを補償するための構成を示す図である。
【
図8B】チャネル間の深さシフトを補償するための構成を示す図である。
【
図8C】チャネル間の深さシフトを補償するための構成を示す図である。
【
図9A】拡散表面補償が、参照アームの機械的ドリフトを補正するのにどのように役立つかを示す図である。
【
図9B】拡散表面補償が、参照アームの機械的ドリフトを補正するのにどのように役立つかを示す図である。
【
図10】偏光を使用する掃引光源OCT(SS-OCT)装置の代替実施形態を示す概略図である。
【
図11】参照特徴を使用するアーチファクト除去のシーケンスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下は、図面を参照してなされる本発明の例示的な実施形態の詳細な説明である。図中、同一の参照符号は、いくつかの図面の各々における構造または方法のステップの同一の要素を特定する。
【0012】
本開示の文脈で使用される場合、「第1の」、「第2の」などの用語は、必ずしも順位、順序、または優先関係を示すものではなく、特に指定されない限り、単に、1つのステップ、要素、または要素のセットを、別のステップ、要素、または要素のセットから明確に区別するために使用される。
【0013】
「スキャナ」という一般的な用語は、広帯域近赤外(BNIR)光などの光のスキャンされた光ビームを投射するように通電可能な光学システムに関し、このような光は、表面のOCTイメージングに使用される参照アームからの光との干渉を測定するために、サンプルアームに戻った反射光および散乱光として、サンプルアームを通して歯の表面に向けられて取得される。「ラスタスキャナ」という用語は、以下でより詳細に説明するように、サンプルに沿って均一に離間した位置に向かって光を連続的にスキャンするハードウェア構成要素の組合せに関する。
【0014】
本開示の文脈において、「イメージング範囲」という表現は、OCT測定が利用可能である有効距離(一般に、z軸方向またはAスキャン方向の距離とみなされる)に関連する。OCTビームは、イメージング範囲にわたって焦点が合っているとみなされる。画像深さは、画像範囲に関連するが、サンプルの歯または他の組織を通る信号透過に関連する追加の要因を有する。
【0015】
例として、
図1の簡略化された概略図は、一種のOCT装置、ここでは、同調レーザ50の一部であるプログラム可能なフィルタ10によって提供される光源を有するマッハツェンダ干渉計(MZI)システムを使用する、従来の掃引光源OCT(SS-OCT)装置100の構成要素を示す。例えば、口腔内OCTの場合、レーザ50は、約400~1600nmの波長に対応する周波数範囲(波数kで表される)にわたって同調可能であり得る。本開示の実施形態によれば、約1300nmを中心とする約60nmの帯域幅の同調可能な範囲が、口腔内OCTに使用される。
【0016】
図1のデバイスにおいて、可変同調レーザ50の出力は、カプラ38を通ってサンプルアーム40および参照アーム42へ進む。サンプルアーム40の信号は、サーキュレータ44を通り、ハンドピースまたはプローブ46からのサンプルSのイメージングに向けられる。サンプリングされた信号は、サーキュレータ44を介して戻り、カプラ58を介して検出器60に向けられる。参照アーム42の信号は、ミラーまたは光ガイドであり得る参照34によって、カプラ58を介して検出器60に向けられる。検出器60は、コモンモードノイズを除去するように構成されている一対の平衡光検出器を使用することができる。
【0017】
制御論理プロセッサ70(本明細書で「制御処理ユニットCPU70」または「CPU70」とも称することがある)は、同調レーザ50およびそのプログラム可能なフィルタ10ならびに検出器60と信号通信している。プロセッサ70は、プローブ46のスキャン機能を制御し、スキャン信号に対する線形応答を得るために必要な校正データを格納することができる。プロセッサ70は、検出器60からの出力を取得して処理する。CPU70は、コマンド入力およびOCT結果表示のためのディスプレイ72とも信号通信している。
【0018】
図1の掃引光源アーキテクチャは一例に過ぎず、掃引光源OCTイメージングを提供するために干渉計の構成要素を配置できるいくつかの方法があることに留意されたい。
【0019】
OCTシステムにおいて、より高い画像取得速度を得るために提案された戦略には、単に高い掃引速度の掃引光源を使用することがある。しかしながら、前述したように、問題はより複雑である。より高い掃引速度で動作する試みは、コストの増加につながっており、OCT画像コンテンツの診断上の利点および全体的な品質に関して残念な結果をもたらすことがある。
【0020】
さらなる背景として、
図2Aおよび
図2Bは、プローブ46によって実行されるOCTスキャンパターンの概要を示す。スキャンシーケンスの各点で、OCTデバイスはAスキャンを実行する。次に、Aスキャンの線形連続がBスキャンを形成する。次いで、並んだ連続するBスキャン列がCスキャンを形成し、サンプル「S」の3次元(「3D」)OCT画像コンテンツを提供する。
【0021】
図2Aは、各Aスキャン中に取得された情報を概略的に示す。各Bスキャン画像を取得するためのスキャン信号は、図示の例では2つの線形セクションを有し、この線形セクションは、スキャンミラーが駆動されてサンプリングビームを開始位置から終了位置に向ける間のスキャン部分92と、スキャンミラーがその開始位置に戻される間のレトロスキャン93とを含む。DC信号コンテンツが除去された状態で示される干渉信号88が、点82ごとに時間間隔にわたって取得され、信号は掃引に必要な時間間隔の関数であり、取得される信号は、干渉計(
図1)の参照サンプルアームからの光とフィードバックサンプルアームからの光とを結合することによって発生するスペクトル干渉縞を示す。高速フーリエ変換(「FFT」)は、Aスキャンごとに変換「T」を生成する。Aスキャンに対応する1つの変換信号が、例として
図2Aに示されている。
【0022】
上記の説明から、単一のBスキャンシーケンス中に大量のデータが取得されることが理解できる。このデータを効率的に処理するために、高速フーリエ変換(FFT)を使用して、時間ベースの信号データを対応する周波数ベースのデータに変換し、そこから画像コンテンツをより容易に生成することができる。
【0023】
フーリエドメインOCTにおいて、Aスキャンは深さ(z軸)分解OCT信号の線を生成するスペクトル取得の1つの線に対応する。Bスキャンデータは、対応するスキャン線に沿った2次元(「2-D」)OCT画像を生成する。
【0024】
ラスタスキャンを使用して、ラスタスキャナ90の取得をCスキャン(y軸)方向に増分することによって複数のBスキャンデータを取得する。これは、Aスキャンデータ、Bスキャンデータ、およびCスキャンデータを使用して3Dボリューム情報がどのように生成されるかを示す
図2Bに概略的に示されている。
【0025】
各Aスキャン点82で使用される波長または周波数掃引シーケンスを、通常使用される昇順または降順の波長シーケンスから修正することができる。あるいは、任意の波長シーケンスを使用してもよい。OCTのいくつかの特定の実装形態に有用であり得る任意の波長シーケンスの場合、各掃引の結果として、利用可能な波長の一部のみが提供される。任意の波長シーケンスにおいて、1回の掃引中にOCTシステムで使用するように、各波長を任意の順序でランダムに選択することができる。Aスキャン点82をx軸に対して互いに均一に離間させて、任意のBスキャン画像に沿った隣接する点82の間に略等しいx軸距離を提供することができる。同様に、Bスキャンごとのスキャン点82の線間の距離は、y軸に対して均一であってよい。X軸の間隔はy軸の間隔とは異なっていてもよく、あるいは、スキャンされた表面のこれらの直交軸に沿った間隔が等しくてもよい。
【0026】
従来のOCTアプローチの場合、画像取得速度は掃引速度およびデジタイザ機能の係数に関連する。掃引速度が高いと、Aスキャン周波数が向上するが、ノイズが大きくなる。取得速度が高いと高速デジタル化の構成要素も必要とされ、必要なパフォーマンスのために構成要素のコストが大幅に増加する。したがって、スキャン速度と全体的なOCTパフォーマンスに対するいくつかの実際的な制限があり、これは、チェアサイドの診断および治療のためのOCTの使用を制限することがある。
【0027】
本開示の例示的な実施形態は、
図3Aに概略的に示されており、歯科用OCTスキャンおよびデータ取得のためのマルチチャネルアプローチを使用することにより、画像取得速度の問題とイメージング範囲の拡大の必要性に対処する。
図3Aの概略図を参照すると、複数のチャネルを有する本開示の例示的な高速口腔内OCTシステム150が示されている。スキャン速度を向上させるために、チャネルの数「N」は、
図3Aに示す4つのチャネル20a、20b、20c、20dのように、2つ、3つ、または4つであってよい。加えて、本明細書の4つのチャネルについて説明する全体的なパターンに従って、5つ以上のチャネルを使用してもよい。プローブ46内のスキャナ90は、掃引波長レーザ光源50から発生する光を、複数のチャネル内で歯または他のサンプル「S」に向ける。
【0028】
図3Aに示すように、ファイバカプラ27は、レーザ光のごく一部をMZI28に分割する。MZIからの干渉光は、光検出器および追加の回路30によって集められて、時間で定義された等しい波数間隔を有するタイミング制御トリガであるKクロック(Kトリガ)信号を提供する。これらの信号の間隔が等しい場合、KクロックタイミングでサンプリングされたOCT信号は、波数空間で線形になる。あるいは、OCT信号を、MZI28からの干渉信号を使用して線形波数空間にリサンプリングすることができる(マッハツェンダ干渉(MZI)信号のゼロ交差を使用してKトリガ信号を生成し、SS-OCT信号の取得を促すことができる)。掃引光源レーザ50の光出力の大部分は、PLC(平面光波回路)スプリッタなどのスプリッタ32を介して、OCTイメージングのためにマルチチャネルシステムに供給される。各チャネルにおいて、光は、サーキュレータ44と、光を参照アーム42およびサンプルアーム40(
図1)に分割する90/10ファイバカプラ38とを有する光ファイバ干渉計を照明する。システムは、高偏光感度の光コヒーレンストモグラフィを提供するために、追加の検出器および光学部品を任意選択で備えることができる。
【0029】
図3Bは、4つのチャネル20a、20b、20c、20dの各々からの光をコリメートし、集束させ、スキャンするプローブ46の構成要素を示す。
図3Bの概略図に示すように、マルチチャネルサンプリングアームは、口腔内または口腔外で使用できるスキャナハンドピースであるプローブ46の内側のファイバアレイ54に接続されている。可変波長光は、リボンファイバ(図示せず)を介して接続される。ファイバアレイ54は、光ファイバコアを所望のピッチで正確に位置合わせする。ファイバアレイからの光は、コリメーションレンズL1を通って微小電気機械システム(MEMS)スキャナ52へ進む。その後、スキャンされた光は、
図3Bに示すような集束レンズL2を通る。この集束光は、第1の折畳みミラー面56および第2の折畳みミラー面86から反射し、サンプルSに向けられる。複数のスポットが、所望の間隔でサンプルSの表面に集束される。各スポットは、複数のチャネル20a、20b、20c、20dのうちの1つからのものである。
【0030】
図3Cの概略図に示すように、プローブ46は、例えば、色情報を取得するため、またはプローブの動きを支援するためのカメラ62などの他の構成要素を任意選択で備えることができる。カメラ62を使用する場合、表面56は、OCTスキャンに使用されるIR光を反射し、可視光をカメラ62に伝送するように処理されたダイクロイック面であってよい。あるいは、カメラは、光軸OAに対して斜めの角度で設けることができる。例として、第2のカメラまたは唯一のカメラであり得るカメラ62’の代替位置が
図3Cに示されている。
【0031】
プローブ46内のファイバアレイ54は、いくつかの異なる構成を有することができる。
図4Aは、各チャネル20a、20b、20c、20dからの出力ビームを同時に提供する1次元(「1D」)アレイとして一列に配置されたファイバアレイ54を示す。1Dアレイ構成を使用して、スキャンしたビームをターゲットサンプルSに位置合わせされた複数のスポットに向けることができる。この方法でN個の照明ビームをスキャンすることにより、
図4Aの4つのチャネルの例においてサブ画像76a、76b、76c、76dとして示す、N個の隣接するサブ画像を生成することができる。その後、処理ソフトウェアを使用して、スキャン線に沿って位置するN個の隣接する画像をつなぎ合わせることができる。
【0032】
図4Aの配置を使用して1次元光学アレイでスキャンする際に、視野(FOV)はストリップの数に分割される。チャネルからの各集束スポットは、FOVの小さいサブ領域のみをスキャンする。サンプルの各集束スポットからの反射光は、プローブ46の光学素子によって集められ、各チャネルのサンプリングアームに導かれる。サンプルアーム40および参照アーム42(
図1)からの光ビームは、50/50カプラ58を介して検出アーム内で再結合される。形成された干渉縞は、平衡光検出器または検出器60内の他の機構によって検出される。平衡光検出器60からのアナログ信号を、データ取得カードによってデジタル化することができる。各チャネルからの画像ボリュームを、OCT再構築アルゴリズムを使用して生成することができる。最後に、完全なスキャン画像ボリュームの再構築を、異なるサブ画像ボリュームをつなぎ合わせることによって形成することができる。
【0033】
図4Bは、2×2のファイバアレイ54を使用してFOVをスキャンする代替配置を示す。この配置は、つなぎ合わせのための画像のアレイとしてサブ画像コンテンツを生成する。
【0034】
各チャネルは視野の一部のみをスキャンするため、マルチチャネルシステムは、単一チャネルシステムと比較してはるかに高い速度を達成することができる。N個の複数のチャネルを使用して同時にスキャンすることにより、従来の単一チャネル配置に必要な時間の1/Nで完全なFOVをスキャンすることができる。
【0035】
ソースレーザ出力はN個のチャネルに分割されるため、マルチチャネルOCTイメージング機能を提供するためには、レーザ出力をいくらか高める必要がある。本開示の実施形態によれば、40mWのレーザを使用して4つのチャネルを駆動し、出力は各チャネルに10mWを提供するように細分される。
【0036】
一般に、同じスキャン速度を達成するために、Nチャネルシステムの掃引レーザ光源は、単一チャネルシステムで使用される掃引速度の1/Nしか必要としない。したがって、掃引速度を下げることにより、データ取得カードのデジタル化速度要件が下がり、システムコストを大幅に削減することができる。
【0037】
同じイメージング範囲を達成するために、OCT信号の周波数f
OCTは、単一チャネルシステムで使用される周波数よりもマルチチャネルシステムで、はるかに低くてよい。f
OCTは以下の式1のように表すことができる。
【数1】
ここで、Δλはレーザスペクトルの帯域幅、
λは中心波長、
Zはイメージング範囲、
αはレーザのデューティサイクル、
f
sは掃引レーザ光源の周波数である。
【0038】
Nチャネルシステムでは、OCT信号の周波数は単一チャネルシステムで使用される周波数の1/Nしかないため、デジタイザはより低いサンプリングレートで動作することができる。したがって、Nチャネル設計は、コストおよびシステムノイズの両方を削減することができる。あるいは、単一スキャナOCTプローブに使用される同じ高速デジタイザをNチャネルシステムで使用すると、イメージング範囲のN倍まで性能を向上させることができる。
【0039】
可変範囲スキャン
マルチチャネルシステムは、サンプリングレートに影響を与えることなく、スキャナの有効なイメージング範囲を拡大する能力も有する。参照アームまたはサンプリングアームに追加の光路差(OPD)を導入することによって、
図5に概略的に示すように、各チャネルからのビームは、ターゲットの異なる範囲をスキャンすることができる。Nチャネルシステムを使用するとき、範囲をN倍に拡大することができる。しかしながら、この構成では、各チャネルが視野全体をスキャンする必要があるため、他の配置と比較してスキャン速度が低下するおそれがある。
【0040】
N個のチャネルを同時にスキャンし、画像処理を使用して個々のチャネルの画像コンテンツをつなぎ合わせることにより、本開示の実施形態は、対応する画像コンテンツを並行して処理し、所定のサンプル領域にわたる、所望のスキャン範囲のOCTイメージングに必要な全体的なスキャン時間を大幅に短縮することができる。
【0041】
各チャネルが異なる範囲でスキャンする同時マルチチャネルスキャンは、OCTスキャナから利用可能な全体的なイメージング範囲を効果的に拡大する。
図5のスキャン配置は、本発明の例示的な実施形態により、チャネル内の可変範囲を、チャネルの干渉計サブシステム内でどのように達成できるかを概略的に示す。各チャネル(
図1)において、参照アーム42または経路42およびサンプルアーム40または経路40の相対的な光路長をそれぞれ変化させることにより、個々のチャネルごとのz方向のスキャン範囲を修正することができる。
【0042】
各チャネルの干渉計システム内で、参照アーム42は、通常、ある種のミラーまたは他の反射面を含む。光が反射面に向かって進み、反射面から戻る距離、すなわち参照アームの光路遅延は、サンプリングされた材料内の特定の範囲に直接関係する。したがって、反射材料または後方散乱材料と干渉計とを組み合わせた構成要素間の光学距離を調整することにより、サンプル内の可変深さからの戻り光が検出信号に寄与する。異なる範囲でスキャンするための代替アプローチ(
図5には示さない)は、チャネルごとにサンプリングアームの光路遅延を変更する。
【0043】
光路遅延を変更するための方法は、光路に沿った2点間の光ファイバの長さを追加すること、光ストレッチャを追加すること、またはファイバコリメータおよび可動リフレクタもしくはファイバストレッチャを使用して可変ファイバ遅延線を追加すること、または光ガイドもしくはより高いもしくは低い屈折率の他の透過機構を光路に追加することを含むことができる。
【0044】
光スイッチングの追加
図6は、各チャネルに光スイッチを追加することによって、イメージング範囲を拡大し、様々なスキャンパターンを取得するための柔軟な方法を示しており、光スイッチは、異なる光路長の交互の光路を選択する。例として、2つのチャネル20a、20bのための2つの光スイッチ66a、66bが示されている。Nチャネル構成の追加のチャネルも、同じパターンに従って切り替えることができる。本開示の実施形態により、異なる切替えパターンを使用して、掃引スキャンレーザ信号を用いて異なる領域および異なる範囲を同時にスキャンできることにも留意されたい。したがって、
図6に概略的に示す4チャネル構成では、各チャネルを切り替えて、そのターゲットサンプル領域上の第1の範囲までスキャンすることができる。次に、スイッチング構成を変更して、サンプルの対応する領域上の第2の範囲までスキャンすることができる。チャネルごとに複数のスイッチ位置を設けることができるため、任意の1つ以上のチャネルについて複数の光路遅延が可能になり、その結果、複数のスキャン範囲が可能になる。このシーケンスは、最小の動きアーチファクトで広い適応イメージング範囲を達成することができる。
【0045】
図6に示すような複数のスキャンチャネルを有する切替え遅延配置を使用することにより、OCTスキャン装置が、スキャン速度を犠牲にすることなく、イメージング範囲を拡大および適応させることが可能になることが容易に理解できる。可変範囲スキャンの実装を使用して、歯の形状および輪郭特性ならびにその他の口腔内特徴の突然の変化などの、表面の輪郭の変動要素に対応することもできる。高速スイッチャは、2つ以上のスキャンボリューム間の範囲設定を容易に変更することができるため、リアルタイムの範囲適応機能をもたらす。
【0046】
ROIスキャン
マルチチャネルOCTシステムは、適応関心領域(ROI)スキャンの選択肢を提供することもできる。
図7は、そのようなROIスキャンの構成を示し、マトリックス光スイッチ68および2Dファイバアレイ54がスキャナシステムに統合されている。マトリックススイッチ68の機能を使用して、複数のチャネルからの入射光がFOV内の複数のサブ領域に再分配される。結合されたサブ領域は、視野内の関心領域(ROI)を定義する。この構成により、光を効果的に使用して、関心のある特定の特徴を高速でイメージングすることができる。スキャンされた領域を選択的に整形する機能は、再構築および格納のために取得されるデータの量を劇的に減らすことができる。
【0047】
加えて、
図5および
図6に関して前述したように、ROI選択性と調整可能な範囲のスキャンとを組み合わせることにより、本発明の例示的な実施形態は、かなりの計算リソースおよび時間を必要とすることなく、口腔内表面がスキャンされるときに非常に正確なOCTイメージング結果を提供することを助けることができる。
【0048】
範囲シフトの補正
マルチチャネルの実施形態に関する1つの固有の問題は、サンプルアームと参照アームとの間のOPDの変化に関連する要因による、チャネル間の範囲シフトまたはz軸オフセットに関するものである。これらのシフトオフセットの影響は、例えば、取扱い中のサンプルアーム内のケーブル配線および曲げの変化、温度シフト、および振動、または光学マウントの機械的ドリフトに関連する様々な要因によるものであり得る。相対的な範囲シフトは、適切に補償されなければ、表面の再構築に重大なエラーを引き起こすおそれがある。頻繁な校正チェックは静的ドリフトを補償するのに役立つことがあるが、プローブの取扱いおよび動作中に生じる動的ドリフトは、扱いにくい計装なしでは十分な精度で測定するのが困難な場合がある。
【0049】
本発明の例示的な実施形態は、チャネルの対応する範囲オフセットを測定するための空間参照として光路に沿った固定位置に配置される、代替の後方散乱面もしくは特徴、反射面もしくは特徴、または拡散(すなわち、拡散反射)面もしくは特徴を使用することによって、各チャネル内の相対ドリフトを補償する。後方散乱特徴、反射特徴、または拡散特徴は、光路の一部である表面、または光路内の固定位置、例えばサンプル経路内の所定の固定位置に配置され、口腔内スキャナの視野(FOV)内にある表面として提供される表面の処理によって形成されることを含む、いくつかの方法のうちのいずれかで形成され得る。
【0050】
図8Aの概略図を参照すると、各OCTボリュームをスキャンするために提供される範囲参照として、拡散または後方散乱参照面または参照特徴110の展開が示されている。参照特徴110は、
図8A、
図8B、
図8Cにおいて、いくつかの代替構成で示されている。参照特徴110の拡散または後方散乱面は、折畳みミラー86(
図8A、
図8B)に付着するか、またはスキャナFOV内のスキャンされた光の経路に配置されるがミラー86から離間している(
図8C)テープなどの光散乱面であってよい。代わりに、既知の事前定義された位置における特徴のパターンを使用してもよい。光路に沿った参照面または特徴110の正確な位置は既知であり、取得された各データラインの範囲を調整/補正するための範囲参照として使用することができる。
【0051】
図示の構成では、チャネルによる各スキャン(
図2Aのスキャン部分92中)が光を参照面または特徴110に向ける。拡散または後方散乱参照特徴110から戻った光を、チャネルの干渉計システム内のサンプルアーム光の一部として処理することができる(
図1)。各スキャン線の開始もしくは終了時、またはスキャン線の既知の点でスキャナ52から受ける入射光の大部分を散乱させることにより、参照特徴110は、参照特徴110に対応するスキャン線データの相対範囲を示す強い信号を提供する。
【0052】
図9Aおよび
図9Bの概略図は、イメージングされた表面を正確に表すOCTデータを提供するために、各チャネルの可変範囲データをどのように補償および正規化することができるかを示す。
図9Aに示すように、最初に取得したスキャンデータは、隣接するチャネル間で固有の範囲の不一致を有する。
図9Bに概略的に示すように、取得したデータのz軸オフセットをそれに応じて調整することにより、表面の高さの差を正しく補償することができる。
【0053】
また、拡散もしくは後方散乱面または他のタイプの参照特徴110からのOCT信号を使用して、強度変動を測定する、またはスキャナおよびレーザの状態を監視する、例えば、レーザもしくはスキャナがアクティブであり動作していることを判定することができる。加えて、参照特徴110を使用して、OCT信号をリサンプリングし、MZI28を使用することなく線形波数空間内でOCT信号を表すことができ、スキャン中の光ファイバの分散変動をなくすことができる。
【0054】
OCTスキャンのための方法は、サンプルアーム内のスキャンされた光の経路に参照特徴を配置し、参照特徴は、kクロックのサンプリングおよび同期のために、スキャンされた光の一部を、サンプルアームを通して検出器に向け直す。
【0055】
偏光の使用
OCTイメージングシステムの代替実施形態によれば、偏光選択OCTを提供することができる。このイメージング方法を使用して、例えば、サンプル内の材料の相互作用の態様を示すことができる。
図10の概略図は、偏光機能が追加されたマッハツェンダ干渉計の修正を示す。追加の偏光コントローラ(「PC」)をサンプルおよび参照経路またはアームに設けて、サンプルに向けられた偏光を提供および処理することができる。1つ以上の偏光ビームスプリッタ(「PBS」)は、各偏光状態の光を適切な平衡光検出器(「BPD」)の入力に向けることができる。検出された出力は、例えば、偏光されたサンプル光を使用して利用可能なサンプルまたは他のデータに関連する情報を提供することができる。OCTシステムは、高偏光感度の光コヒーレンストモグラフィを提供するために、追加の検出器および光学部品を任意選択で備えることができる。
【0056】
アーチファクトの抑制
図11のシーケンスで概略的に示すように、参照特徴110は、アーチファクトの除去または抑制などの信号調節にも使用することができる。光学システム内の内部反射は、Bスキャン画像に水平線アーチファクト96を生成することができる。これらのアーチファクトにより、光ケーブルがねじれたり曲がったりすると、画像内の位置がずれることがある。いくつかの条件下では、アーチファクト96がサンプルSからの実際の信号と重なってしまうこともあり、アーチファクトと実際の信号コンテンツとを区別することを困難にする。
【0057】
この種のアーチファクトを補正し、これをAスキャン信号から効果的に除去するためのシーケンスは以下の通りであり、
図11に示される。
(i)参照機能および任意のアーチファクトを含むAスキャン信号を取得する。
(ii)参照特徴110の振幅をバックグラウンド(またはベースノイズ)レベルとして設定する。
(iii)Bスキャン画像内の他のAスキャンからAスキャン信号を引く。
【0058】
図11では、スキャンA1は、参照特徴110を含まない代表的なスキャンである。スキャンA2は、特徴110を含むスキャンである。このシーケンスは、スキャンA2から特徴110のコンテンツを効果的に除去して、アーチファクト96のコンテンツを分離する。その後、アーチファクト96のコンテンツを、サンプルSの他のスキャンA1のいずれかから引くことができる。それにより、最終結果にアーチファクトがなくなる。
【0059】
本発明の例示的な実施形態は、スキャナ速度の向上またはデジタイザ応答時間の向上の両方を必要とすることなく、イメージング範囲の拡大およびOCTスキャンの有効速度の向上のための改良を示す。OCTスキャナシステムの様々な配置によっても、本明細書で教示されるようなシステム設計に対応する変更を伴って、速度の向上および範囲の拡大の両方を達成することができることを認識および理解されたい。
【0060】
本発明について、現在理解されている例示的な実施形態を特に参照して詳細に前述したが、本開示の精神および範囲内で変更および変形を行うことができることを認識および理解されたい。例えば、制御論理プロセッサ70は、コンピュータまたはコンピュータワークステーション、専用ホストプロセッサ、マイクロプロセッサ、論理アレイ、または格納されたプログラム論理命令を実行する他のデバイスを含む、いくつかのタイプの論理処理デバイスのいずれかであってよい。ある種のマッハツェンダ干渉計として上記の例示的な構成で説明した、1つ以上のチャネルに使用される干渉計は、代わりに、例えば適切な構成要素の再配置を有するマイケルソン干渉計などの別の適切なタイプであってもよい。
【0061】
したがって、現在開示されている例示的な実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的でないものとみなされる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その等価物の意味および範囲内に入るすべての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0062】
少なくとも1つの例示的な実施形態と一致して、例示的な方法/装置は、電子メモリからアクセスされる画像データに対して実行する格納された命令を含むコンピュータプログラムを使用することができる。画像処理技術の当業者には理解できるように、本明細書の例示的な実施形態のコンピュータプログラムは、パーソナルコンピュータまたはワークステーションなどの適切な汎用コンピュータシステムによって利用することができる。しかしながら、他の多くのタイプのコンピュータシステムを使用して、例えば、1つのプロセッサまたはネットワーク化されたプロセッサの配置を含む、説明した例示的な実施形態のコンピュータプログラムを実行することができる。
【0063】
本明細書に記載のいくつかの例示的な実施形態の方法を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータ可読記憶媒体に格納することができる。この媒体は、例えば、ハードドライブもしくはリムーバブルデバイスもしくは磁気テープなどの磁気ディスクのような磁気記憶媒体、光ディスク、光テープ、もしくは機械可読光エンコーディングなどの光記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくは読取り専用メモリ(ROM)などのソリッドステート電子記憶デバイス、またはコンピュータプログラムを格納するために使用される任意の他の物理デバイスもしくは媒体を含むことができる。説明した例示的な実施形態の方法を実行するためのコンピュータプログラムを、インターネットまたは他のネットワークまたは通信媒体を介して画像プロセッサに接続されたコンピュータ可読記憶媒体に格納してもよい。当業者は、そのようなコンピュータプログラム製品の等価物をハードウェアで構築してもよいことをさらに容易に認識するであろう。
【0064】
本出願の文脈において、「コンピュータアクセス可能なメモリ」に相当する「メモリ」という用語は、画像データの格納およびそれに対する動作に使用され、コンピュータシステムにアクセス可能な、一時的またはより永続的な任意のタイプのデータ記憶ワークスペース、例えばデータベースを指すことができることに留意されたい。メモリは、例えば、磁気または光学記憶装置などの長期記憶媒体を使用する、不揮発性のものであってもよい。あるいは、メモリは、マイクロプロセッサまたは他の制御論理プロセッサデバイスによって一時的なバッファまたはワークスペースとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)などの、電子回路を使用する、より揮発性のものであってもよい。例えば、表示データは通常、表示デバイスに直接関連付けることができる一時的記憶バッファに格納され、表示されるデータを提供するために必要に応じて周期的に更新される。この一時的記憶バッファは、その用語が本出願で使用されるとき、メモリであるとも考えられる。メモリは、計算および他の処理の中間結果および最終結果を実行および格納するためのデータワークスペースとしても使用される。コンピュータアクセス可能なメモリは、揮発性、不揮発性、または揮発性タイプと不揮発性タイプとのハイブリッドの組合せであってよい。
【0065】
本明細書の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品は、周知の様々な画像操作アルゴリズムおよび/またはプロセスを利用できることを認識および理解されたい。本明細書の例示的なコンピュータプログラム製品の実施形態は、本明細書に具体的に図示または記載されていない、実装に有用なアルゴリズムおよび/またはプロセスを具体化することができることをさらに認識および理解されたい。そのようなアルゴリズムおよびプロセスは、画像処理技術の当業者の範囲内にある従来のユーティリティを含むことができる。そのようなアルゴリズムおよびシステム、ならびに画像を生成および他の方法で処理するための、または本出願のコンピュータプログラム製品と協働するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアの追加の態様は、本明細書に具体的に図示または記載されず、当技術分野で既知のそのようなアルゴリズム、システム、ハードウェア、構成要素、および要素から選択され得る。
【0066】
本発明による例示的な実施形態は、本明細書に記載の様々な特徴を(個々にまたは組み合わせて)含むことができる。
【0067】
本発明を1つ以上の実装形態に関して例示したが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、例示の実施例に対して変更および/または変形を行うことができる。加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの実装形態/例示的な実施形態のうちの1つのみに関して開示されていることがあるが、そのような特徴を、所定のまたは特定の機能について望ましくかつ有利であり得るように、他の実装形態/例示的な実施形態の他の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0068】
「a」または「少なくとも1つの」という用語は、列挙された項目の1つ以上を選択することができることを意味するために使用される。「約」という用語は、変更が、図示の例示的な実施形態に対するプロセスまたは構造の不適合をもたらさない限り、列挙された値をいくらか変更することができることを示す。
【0069】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示された本発明の明細書および実施の考察から当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単なる例示として考えられることが意図されており、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。