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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ビルベリーの識別のための方法とキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20241029BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6895 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021560683
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020059807
(87)【国際公開番号】W WO2020212190
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】19169555.0
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591092198
【氏名又は名称】インデナ エッセ ピ ア
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ロンゴ、 ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】ベルランダ、 ダヴィデ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/078093(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/101794(WO,A1)
【文献】Food Chemistry,2010年,Volume 123,pp. 494-500
【文献】Database Genbank, Accession No. AF382732.1 [online], 2002.07.11 [検索日 2024.02.29], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/af382732>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物組成物中のビルベリーを同定する方法であって、該方法はPCR増幅の手段により、試料から内部転写スペーサー1、5.8SリボソームRNAゲノム領域および内部転写スペーサー2内に位置するビルベリーの核酸断片を検出することを含み、前記方法は以下の工程、
(a)試料から核酸を単離し、
(b)単離された核酸に対するリアルタイムPCRを、
以下の対
(i)SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6;
(ii)SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8;
(iii)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10;
(iv)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12;
からなる群から選択される一対のプライマーと、
プライマーによって増幅された核酸領域内でアニーリングしたプローブであって、SEQ ID NO:13の配列を有するプローブ;
とを用いて実施し、
(c)増幅産物の存在を決定し、ここで増幅産物の検出は、植物組成物中のビルベリーの存在を示す、
を含む方法。
【請求項2】
前記一対のプライマー(i)が、工程(b)で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リアルタイムPCRが、以下の条件下、
- 95℃で180秒間の初期の変性工程、
- 95℃(第1工程)で15秒、62~68.5℃(第2工程)で15秒の2工程を40~50回繰り返す、
で行われる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
植物組成物が植物抽出物である請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6;
(ii)SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8;
(iii)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10;
(iv)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12;
からなる群から選択される一対のプライマーおよび前記プライマーによって増幅された核酸領域内でアニーリングしたSEQ ID NO:13の配列を有するプローブを含む、植物組成物中のビルベリーの同定のためのキット。
【請求項6】
DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチド(dNTP)の混合物、緩衝液をさらに含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
陽性対照として使用するためのビルベリーの核酸および陰性対照としてのヌクレアーゼを含まない水または緩衝液のサンプルを、別個の容器中にさらに含む、請求項5または6に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR増幅を用いた特定のゲノム断片の検出に基づく、植物組成物中のビルベリー(Vaccinium myrtillus)の同定方法を提供する。本発明はさらに、本発明の方法を実施するために特に設計されたキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
植物抽出物は、医療、栄養補助食品、化粧品および食品産業において広く使用されている。植物抽出物を取り扱う際に遭遇する主な問題の1つは、偽造の危険性を排除するために、それらの化学組成だけでなく、それらの植物起源も決定することである。
【0003】
植物材料の植物起源を決定するための遺伝に基づく方法は当技術分野で公知である(Parker, J. ら、リアルタイムナノポアシーケンスを使った密接に関連した植物のフィールドベースの種識別Sci Rep, 2017. 7(1): Group, C.P.W., 陸生植物のためのDNAバーコード.Proc Natl Acad Sci U S A, 2009. 106(31): p. 12794-7;Fazekas, A.J., et al., 陸生植物のためのDNAバーコード化法Mol Biol, 2012. 858: p. 223)。 このような方法は、植物材料中に存在するDNAと、公に利用可能なデータベース中に存在する既知のDNA配列との比較に基づく。例えば、WO2006/020147(カルフォニア大学理事)は、植物混合物中に存在する個々の生物学的遺伝子成分を同定するための方法を開示し、該方法は、ゲノム遺伝子座特異的PCR、一本鎖高次構造多型pm(SSCP)、および配列分析の組み合わせに基づく。この方法はどの植物が存在し得るかについての事前の知識を必要とすることなく、組成物の生物学的成分に関する情報を提供することができ、混合物中に存在し得る未知の生物学的成分を検出および同定することができると言われている。
【0004】
植物試料からの植物の遺伝子同定のための方法はまた、CN102146477、CN106119394、CN1372005、CN107142329、CN107653330、CN105629291、CN105603107、ES2176066、CN104673930、CN102222969、CN102732513、CN10563203、JP2007282626に開示されている。いくつかの場合において、植物種の同定のための方法は、PCR増幅による、内部転写スペーサー(ITS)領域ITS-1および/またはITS-2を含む核リボソームRNAコード遺伝子座内に位置する特異的配列の検出に基づく。特定の場合(CN1052429、CN105603107、ES2176066)において、この方法は、植物材料を含有する商業化された製品における混ぜ物処理を同定することを目的とする。
【0005】
Jaakola Lら、Food Chemistry vol. 123, no.2(2010)pp.494~500は、野生ベリーの種特異的同定を可能にする設計されたプライマー対を用いた、DNAバーコード化およびHRM(高分解能融解)解析の組み合わせ手法の手段による商業的に重要なベリー種の同定を開示している。ビルベリーは、プライマーITSVm2fおよびITSVm2rを用いて得られたITS(内部転写スペーサー)領域に位置するアンプリコンのHRM分析によって同定される。
【0006】
CN108642207は、ビルベリー植物の対立遺伝子地図の構築、ならびにプライマー特異的PCR増幅を使用するブルーベリー品種および関連種の同定のための方法を開示する。
【0007】
Marieschi M.ら、Food Chemistry vol. 202(2016)(2016)pp.438-444は、配列特徴付け増幅領域(SCAR)に基づいての、複数のバッチ分析に有用なビルベリーおよび混ぜ物処理種の存在を検出する方法を開示している。
【0008】
Koskima Ki JJ ら、European Journal of Plant Pathology, Kluwer Academic Publishers-vol. 125 no.4 (2009)pp.629-640は、蛍光レポーターとしてSYBR-greenを用いたリアルタイムPCRによって定量化されたビルベリー遺伝子の相対的発現を開示している。
【0009】
植物材料が処理される場合、特に、それらが抽出手順に供される場合、DNAは分解して、抽出方法に従って可変サイズおよび量のフラグメントを生じ、そしてそれは、公知のDNA配列と直接比較され得ず、それによって、出発材料に適用され得るゲノム同定方法を抽出物に適用することを、実際的に不可能ではないにしても、困難にする。
【0010】
ビルベリー抽出物は、それらの公知の健康上有益な特性のために、医薬品、化粧品、栄養補助食品および食品に主に使用されている。ビルベリーが栄養補助食品としても治療薬としても臨床的に有益であるのは、フラボノイドとアントシアニンが多量に存在するためとされている。抽出物製造業者にとって、ビルベリー抽出物が、化学成分および申告された純粋な植物起源に関して必要とされる仕様を有することを保証することが重要である。
【0011】
したがって、植物組成物中、例えば植物抽出物中でビルベリーを同定することを可能にし、特にビルベリーが密接に関連する汚染種と混合されている場合に、高レベルの精度および種特異性を確保する方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0012】
これらの目的は本発明によって達成され、本発明はビルベリー抽出物の残留DNA中に含まれる核酸フラグメントの検出を通して、植物組成物中のビルベリーの特異的かつ正確な同定のための方法を提供する。
【0013】
具体的には、本発明の方法は、植物組成物の試料中で、内部転写スペーサー1、5.8SリボソームRNA遺伝子および内部転写スペーサー2内に位置するビルベリー特異的核酸断片を検出することを含み、前記核酸断片は、SEQ ID NO:1、またはSEQ ID NO:2、3および4の群から選択されるSEQ ID NO:1を含む配列のいずれかからなる。
【0014】
好ましい実施形態において、PCR増幅のために使用されるプライマーは、以下の対、
(i)SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6;
(ii)SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8;
(iii)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10;
(iv)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12;
から選択される。
【0015】
特に好ましい実施形態では、前記PCRはリアルタイムPCR(rt-PCR)であり、本発明の方法は以下の工程を含む:
(a)植物組成物の試料からの核酸の単離し、
(b)単離された核酸に対するrt-PCRを、
以下の対、
(i)SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6;
(ii)SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8;
(iii)SEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10;
(iv)SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12;
からなる群より選択される一対のプライマーと、
プライマーによって増幅された核酸領域内でアニーリングしたプローブであって、SEQ ID NO:13の配列を有するプローブ、
とを用いて実施し、
(c)増幅産物の存在を決定し、それにより増幅産物の検出は、植物組成物中のビルベリーの存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、植物組成物は、植物またはその一部、例えば、葉、果実、樹皮、根の混合物であり、植物抽出物、特に果実抽出物を含み、これらは消費または治療用途を意図する。好ましい実施形態では、植物組成物が単独で、またはガンコウラン(Empetrum nigrum)、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、ツルコケモモ(Vaccinium oxycoccos)、ハイブッシュブルーベリー(Vaccinium corymbosum)およびクランベリー(Vaccinium macrocarpon)などの関連種と組み合わせて、ビルベリーの果実の抽出物を含有する製品である。
【0017】
核酸の単離は植物混合物または抽出物の他の成分からの核酸の分離および精製を含み、市販のキットを使用する従来の技術を用いて行うことができる。特に、ゲノムDNAは、抽出-沈殿プロトコル、シリカ-膜-またはアニオン-交換に基づく手順を使用して単離され得る。
【0018】
リアルタイムPCR技術は当技術分野で公知であり、PCR反応の各サイクル中の増幅産物の産生を監視するために、ポリメラーゼ連鎖反応化学を蛍光レポーター分子の使用と組み合わせる。標的DNAの増幅は、変性とそれに続くプライマーおよびプローブのアニーリングの繰り返しサイクルによって、およびDNAポリメラーゼ触媒プライマー伸長によって得られる。
【0019】
DNA増幅は、例えば二本鎖DNAと挿入される非特異的蛍光色素によって、またはその相補的DNA標的とのプローブハイブリダイゼーション後の検出を可能にする蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブによって産生される蛍光シグナルを測定することによって、PCRの各サイクルで監視される。適切な挿入色素には、SYBR(登録商標)(Green I、Green II、Gold)、LCGreen(登録商標)、SYTO-(9、13、16、60、62、64、82)、BOBO-3、LCGreen(登録商標)、POPO-3、BEBO、TO-PRO3、PicoGreen(登録商標)、SYTOX Orangeおよび市販の蛍光染料(フルオロフォア)がある。
【0020】
オリゴヌクレオチドプローブは、一端が蛍光レポーター(フルオロフォア)、プローブの反対端が蛍光のクエンチャーで標識される。ポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性は、レポーター分子を放出するプローブを切断し、蛍光強度の増加を生じる。フルオロフォアの例は、5- または6-カルボキシフルオレセイン(5-または6-FAM)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(JOE)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、5-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRASE)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(ジメチルアミノアゾ)ベンゼン-4-カルボン酸(DABCYL)。消光剤の例には、BHQ(Black Hole quencher(登録商標))ファミリー、NFQ-MGB(非蛍光消光剤および小溝結合剤)、QSY 7または21カルボン酸スクシンイミジルエステルが挙げられる。
【0021】
rt-PCRのパラメーターおよび条件(例えば、変性およびアニーリングの各サイクルの温度および長さ)は当業者に公知のように、増幅される核酸フラグメント、増幅において使用されるプライマーのセット、および他の変数に依存して調節され得る。本発明の好ましい実施形態において、本明細書中に開示される核酸フラグメントは、以下の条件を適用して、プライマー(i)~(iv)を用いて増幅される:
- 95℃で180秒間の初期変性工程
- 95℃(第1工程)で15秒、62~68.5℃(第2工程)で15秒の2工程を40~50回繰り返す。
【0022】
本発明によるプライマーおよびプローブの特定の組み合わせは、ガンコウラン、セイヨウニワトコ、ツルコケモモ、ハイブッシュブルーベリーおよびクランベリーなどの密接に関連する種を含有する植物組成物中のビルベリーの特異的同定を可能にする。実験の部で報告されているように、ビルベリーの特異的プローブSEQ ID NO:13とは異なるプローブの使用および断片SEQ ID NO:1~4での同様のアニーリングにより、上記で開示したのと同じプライマーおよびrt-PCR条件を用いて、ガンコウランとの混合物中のビルベリーを同定するシステム能力が失われる。これは、プライマー、プローブの選択された組み合わせの特異性、および本発明によるrtPCR条件の有効性を示す。
【0023】
本発明の別の局面は、植物組成物中のビルベリーを同定するためのキットに関する。本発明のキットは、(i)~(iv)から選択される少なくとも1対のプライマーと、上記定義のプローブとを含む。さらに、キットは別個の容器中に、(rt)PCRを実行するために必要な試薬、特にデオキシヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼ、ならびにDNAを単離、精製および任意に定量するための試薬を含み得る。キットはまた、陽性対照としてのビルベリーのDNA、および陰性対照としてのヌクレアーゼを含まない水または緩衝液、ならびにPCR評価を実施するための説明書を伴う印刷物を含み得る。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、キットは以下を含む:
- 分析を行うのに必要なすべての試薬を入れた1本の試験管またはバイアル(DNAポリメラーゼ、dNTP、緩衝液、プローブ化学、プライマーおよびプローブ)
- 陽性対照(ビルベリーのDNA)を含む1本の試験管またはバイアル
- 陰性対照DNA(ヌクレアーゼを含まない水)を含む1本の試験管またはバイアル。
【0025】
このキットは、全ての市販のリアルタイムPCRシステムと共に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】rt増幅プロトコールを示す図である。
図2A-2C】ビルベリー冷凍果実から単離されたゲノムDNAのrt増幅結果(a)および融解曲線分析(b)を示す図である。
図3】ビルベリーの標準曲線分析を示す図である。
図4】ビルベリーNTCに特異的なM-FAMプローブを用いたプローブベースのrt-PCR増幅:陰性対照を示す図である。
図5A-5B】(a)凡例に報告された比率を有する混合サンプル中のビルベリーに特異的なMプローブを用いたプローブベースのrt増幅NTC:陰性対照を示す図である。(b)ガンコウランに特異的なE-HEXプローブを用いたプローブベースのrt-PCR増幅を、凡例に報告されている比率で混合サンプル中で行った。NTC:陰性対照を示す図である。
図6】ビルベリーの対象種に対するCq平均値および割合の関係を示す図である。
図7】乾燥抽出物試料のrt分析に使用した実験スキームを示す図である。
図8A-8B】ビルベリー乾燥抽出物試料から単離された残留DNAのrtPCR増幅を示す図である。陽性対照はビルベリー冷凍果実から抽出したgDNAであり、a)プライマーセットL、b)プライマーセットSを示す。
図9】rtアンプリコンのアガロースゲル分析を示す図である。
図10】配列決定されたアンプリコン(上)および相対配列同一性マトリックス(下)のアラインメント分析を示す図である。
図11A-11F】ビルベリー EET。36%のrt-PCR。増幅および融解曲線を示す図である。
図12A-12C】ビルベリー EET。36%のプローブベース法によるrt-PCRを示す図である。PTC:陽性対照(ビルベリーの冷凍果実から抽出したgDNA);NTC:陰性対照を示す。
【実施例
【0027】
実験の項 - 一般的な手順
ゲノムDNA(gDNA)の抽出
DNA抽出は供給業者によって記載されているように、NucleoSpin(登録商標)プラントIIプロトコルを使用することによって行った(Macherey nagel. Cat. 740770. 250-July 2014/Rev. 09)。
【0028】
乾燥抽出物からの残留DNAの精製
最初の精製は供給業者によって記載されているように(Macherey nagel. Cat. 740770. 250-July 2014/Rev. 09)、キットNucleoSpin(登録商標)プラントII Maxiプロトコルを使用して行われ、以下に報告するいくつかの改変が行われた。
- 3~5gの乾燥抽出物を50mlのコニカルチューブ中で秤量する。
- 3mlの蒸留水を加える。
- 9mlの溶解緩衝液を添加する。
- 30秒間ボルテックスする。
- 試料をNucleoSpin(登録商標)Filter Maxiに移す。
- 4500×gで5分間遠心分離し、透明なフロースルーを収集し、NucleoSpin Filter Maxiを廃棄する。
- 20mlの結合緩衝液を添加する。
- 30秒間ボルテックスする。
- NucleoSpin(登録商標) Plant II Maxiカラムに試料を装填する。
- 4500×gで3分間遠心分離し、フロースルーを廃棄する
- 全ての休止試料について装填を繰り返す。
- 4mlの洗浄緩衝液(PW1)をNucleoSpin(登録商標)Plant II Maxiカラムに添加する。
- 4500×gで3分間遠心分離し、フロースルーを廃棄する。
- 10mlの洗浄緩衝液(PW2)をNucleoSpin(登録商標)Plant II Maxiカラムに添加する。
- 4500×gで3分間遠心分離し、フロースルーを廃棄する。
- 2mlの洗浄緩衝液(PW2)をNucleoSpin(登録商標)Plant II Maxiカラムに添加する。
- 4500×gで12分間遠心分離し、フロースルーを廃棄する。
- NucleoSpin(登録商標) Plant II Maxi Columnを新しい収集チューブ(50ml)に入れる。
- 1000μlの溶出緩衝液(PE)(65℃)を膜上にピペットで移す。
- NucleoSpin(登録商標) Plant II Maxiカラムを65℃で5分間インキュベートする。
- 4500×gで3分間遠心分離し、DNAを溶出する。
【0029】
第2の精製は、供給者によって記載されているように(Promega. Cat. A2893)、キットReliaPrep(商標)DNA Clean-UPおよび濃縮システムプロトコールを使用することによって行った。
【0030】
DNAの定量
DNAは、NanoQuant Plate(登録商標)装置によって定量した。定量はUV法を用いて行った。260nmの吸光度を用いて、260nmの1 ODがDNAの50μg/μlに対応するようにDNAを定量した。260nm/280nmの吸光度比を、DNA純度の評価のために決定した。
【0031】
rt-PCRおよび溶融曲線分析
rt-PCR増幅は、SYBR Greenまたはプローブベースの化学反応を用いて、供給者が記載しているようにして(SsoAdvanced(商標) Universal SYBR(登録商標) Green Supermix、BioRad Cat.N. 1725272; SsoAdvanced(商標) Universal Probes Supermix、BioRad Cat.N. 1725281)、図1に報告されているように、3段階ベースの増幅プロトコルで行った。
【0032】
リアルタイムPCR
混合物をフォロスとして調製し、最終容量20μl:
【0033】
【表1】
【0034】
試料をリアルタイム機器(BioRadまたは同等物)に装填し、以下の方法を適用した。
【0035】
【表2】
【0036】
第2工程のサイクリングの後に取得した。
【0037】
DNA配列の決定
増幅したDNAをアガロースゲル上で精製し、精製したフラグメントを、各サンプルについて2つの配列の生成を通して配列決定した。一方はフォワードプライマーを使用することによって生成され、他方はリバースプライマーを使用することによって生成された。配列決定に要求される濃度(配列の長さに依存して、2~5ng/μL)を得るために、精製DNAおよびTRIS-HCl 5mM pH 8.0を混合することによって、各配列決定チューブを調製した。
【0038】
配列を比較および同定するために、BioEditまたはBLASTソフトウェアを用いて配列を分析した。
【0039】
実施例
実施例1 - 方法の検証
gDNAを精製し、ビルベリー冷凍果実および以下に報告するその汚染物質/関連種について定量した(表1):
【0040】
【表3】
【0041】
Cq (定量サイクル)およびTm(溶融温度)ピークに関するrt-PCR反応パラメーターの設定を、最初に、ビルベリー冷凍果実から抽出したgDNAを用いて評価した(図2)。rt-PCRの結果は、設計されたプライマーが全てのプライマーセットについて単一のDNA領域の増幅を可能にすることを示した(表2および3)。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
rt-PCRは、また、ビルベリー汚染物質/関連種から単離されたDNAを用いて実施され、その結果は、プライマーセット、特にS2プライマーを用いることによって異なるDNAを区別することが可能であることを示した(表4)。
【0045】
【表6】
【0046】
増幅曲線の直線性はまた、S2プライマーセットを使用することによって、ビルベリーについての標準曲線生成を用いて評価した(図3)。試験した濃度範囲(約0.0625~8.00ng/μl)で直線性が保証されていることが分かる。
【0047】
ビルベリーと汚染物質/関連種とを区別する方法能力を改善するために、ビルベリー配列の増幅を可能にするように特異的に設計されたMinor Groove Binding-Probe(M-FAM-SEQ ID NO:13)を用いてrtPCRを行った。
【0048】
比較実験では、rtPCRを、Minor Groove Binding-Probes SEQ ID NO:13(M-FAM)およびSEQ ID NO:14(E-HEX)を同時に使用して行った。
【0049】
プローブベースの方法を試験するために、実験の異なるサブセットを実施し、以下の表にまとめた。
【0050】
【表7】
【0051】
増幅結果は、標的種の含有量に比例した(図6)。
【0052】
実施例2 ビルベリー乾燥抽出残存DNA特定
各サンプルについて、残留DNAの2つの独立した単離(生物学的複製)を行い、抽出した各DNAについて、3つの技術的複製を試験した(図7)。
【0053】
全手順は最初に、4つのサンプル:32549/H76、32549/H80、32549/H83、32549/H84について行った。残留DNA単離および定量(表6)の後、これらの試料をrt-PCR増幅特性(CqおよびTm)について分析し、陽性対照のものと比較した(図8および表7)。
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
全ての試料を用いたrt-PCR増幅の結果は、以下のことを示した:
- DNAは、陽性対照およびすべての試験試料について増幅した;
- 陰性対照(DNAなし)は増幅シグナルを示さなかった;
- 陽性対照および試料は、Tmピークについて等しい値を示した。
【0057】
この結果は、アンプリコンが長さおよび/またはヌクレオチド塩基組成に関して同じ特徴を有することを示す。
【0058】
さらに、Cq結果は試験されたDNA量と相関し、これは、増幅が選択された標的に特異的であることを意味する。
【0059】
生成されたアンプリコンが陽性対照と同じ配列を有するかどうかを確認するために、全ての増幅配列をアガロースゲル上で精製し(図9)、精製断片を配列決定した(図10)。
【0060】
アガロースゲル分析はアンプリコン長の差異を確認した:プライマーセットSで生成されたフラグメントが約130bpの長さを示し、一方、プライマーセットLで生成されたフラグメントは、約270bpの長さを示す。さらに、ゲルアガロース分析から、2つのバンドが見える試料32549/H83_1についての図9のレーン4のような非特異的rt-PCR産物の存在もまた、Tmピーク結果と良好に一致して見ることが可能である(図8、b)。
【0061】
全ての生成された配列は、高品質の配列決定パラメーターを有する部分のみを考慮することによって整列された。配列決定の結果(図10)は、全てのアンプリコン配列(小および大)がビルベリー標準参照の配列と同一であることを示した。
【0062】
実施例3 ビルベリー36%乾燥エタノール抽出物(E.ET.)残留DNA同定
残留DNA分析はまた、Indenaコード9042202、MIRTILLO(ビルベリー)E.ET.36%を用いて、乾燥粉末混合相、32788/M1、32786/M2、32788/M2の後に試料に対して行った。以前の試料32549/H76、32549/H80および32549/H83を再び対照試料として試験した。
【0063】
精製方法を最適化するために、DNA精製の第一段階の後、単離された残留DNAをReliaPrep(商標)キット(プロメガ)で処理した。2つの精製工程(表8)におけるDNA量(ng/μL)および質(260/280比)に関する結果は、濃度ならびに精製が第2の工程をより良く導入することを明らかにした。
【0064】
【表10】
【0065】
rt-PCR分析は、上記のプロトコルに従って、SYBR green(図11)およびプローブベースの方法(図12)を使用することによって行った。
【0066】
結果は以下のことを示している:
(a)試験したすべての試料は、SYBR green 法で分析した場合、陽性対照の同じTmピークを示した(図11および表9)。
【0067】
【表11】
【0068】
(b)全ての試験サンプルは、プローブに基づく方法で分析した場合、ビルベリー(図12および表10)配列に特異的なプローブを用いて検出された。
【0069】
【表12】
【0070】
実施例4 分析用キット
キットは次のように構成される:
- 分析を行うのに必要なすべての試薬を入れた1.5mlの試験管(DNAポリメラーゼ、dNTP、緩衝液、プローブ化学、プライマーおよびプローブ)
- 陽性対照(ビルベリーのDNA)を含む1.5ml試験管
- 陰性対照DNA(ヌクレアーゼを含まない水)を含む1.5ml試験管。
【0071】
このキットは、市販されているすべてのリアルタイムPCRシステムと共に使用することができる(BioRad CFX96 (商標)、BioRad CFX96(商標)、bCube(登録商標)、Roche LightCycler(登録商標) 480 など)。
【0072】
配列のリスト
核酸断片
GCATTGCGTCACCCACTCCCCCCGTGCCCCAAGCGGGCACGTCGGAGCGTGGGCGGATATTGGCCCCCCGTTCGCATCCGTGCGCGGTCGGCCTAAAAAACGGGTCCCCAATGACGGACATCACGACAAGT (SEQ ID NO:1)

TGAAGGCACGTCTGCCTGGGCGTCACGCATTGCGTCACCCACTCCCCCCGTGCCCCAAGCGGGCACGTCGGAGCGTGGGCGGATATTGGCCCCCCGTTCGCATCCGTGCGCGGTCGGCCTAAAAAACGGGTCCCCAATGACGGACATCACGACAAGTGGTGGTTGCTAAA (SEQ ID NO:2)

TTGCAGAATCCCGTGAACCATCGAGTCTTTGAACGCAAGTTGCGCCTGAAGCCATTAGGTTGAAGGCACGTCTGCCTGGGCGTCACGCATTGCGTCACCCACTCCCCCCGTGCCCCAAGCGGGCACGTCGGAGCGTGGGCGGATATTGGCCCCCCGTTCGCATCCGTGCGCGGTCGGCCTAAAAAACGGGTCCCCAATGACGGACATCACGACAAGTGGTGGTTGCTAAA (SEQ D NO:3)

CCATCGAGTCTTTGAACGCAAGTTGCGCCTGAAGCCATTAGGTTGAAGGCACGTCTGCCTGGGCGTCACGCATTGCGTCACCCACTCCCCCCGTGCCCCAAGCGGGCACGTCGGAGCGTGGGCGGATATTGGCCCCCCGTTCGCATCCGTGCGCGGTCGGCCTAAAAAACGGGTCCCCAATGACGGACATCACGACAAGTGGTGGTTGCTAAACCGTCGCGTCACGTCGTGCATGCCATCGTTTGTTGCGGGTTGGCCCATTTGACCCTGAAGTG (SEQ ID NO:4)

プライマー
"S"
F GCATTGCGTCACCCACTC (SEQ ID NO:5)
R ACTTGTCGTGATGTCCGTCA (SEQ ID NO:6)

"S2"
F TGAAGGCACGTCTGCCTG (SEQ ID NO:7)
R TTTAGCAACCACCACTTGTCGT (SEQ ID NO:8)

"L2"
F TTGCAGAATCCCGTGAACCA (SEQ ID NO:9)
R TTTAGCAACCACCACTTGTCGT (SEQ ID NO:10)

"L"
F CCATCGAGTCTTTGAACGCA (SEQ ID NO:11)
R CACTTCAGGGTCAAATGGGC (SEQ ID NO:12)

プローブ
M-FAM
ACGTCGGAGCGTGGGC (SEQ ID NO:13)

E-HEX
TAGGGCGGGTAAGTGAGT (SEQ ID NO:14)
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
【配列表】
0007578608000001.app