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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】弾性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/10 20060101AFI20241029BHJP
   B32B 25/14 20060101ALI20241029BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241029BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B32B25/10
B32B25/14
B32B27/32 Z
A61F13/49 313A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021560942
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 IB2020053612
(87)【国際公開番号】W WO2020212906
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】19169837.2
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【弁理士】
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】中川 宗重
(72)【発明者】
【氏名】内田 翔
(72)【発明者】
【氏名】生島 伸祐
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103439(JP,A)
【文献】特開平10-046461(JP,A)
【文献】特表2011-514391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの第1の弾性スキン層と、少なくとも1つの第2の弾性コア層とを含む多層フィルムを含み、該第1の弾性スキン層が、該少なくとも1つの第2の弾性コア層の両側に配置されており、該第2の弾性コア層が、これを挟み込んでいる該第1の弾性スキン層よりも高い弾性を有し、ここで、該第1の弾性スキン層は、オレフィンポリマーを含み、かつ該第2の弾性コア層は、エラストマー層を含み、かつ、
該多層フィルムが、その両方の外表面に配置された、(i)ホットメルト粘着剤層を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合された不織布層を有し、
該第2の弾性コア層が、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有し、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含む、弾性積層体であって、
該弾性積層体が、300mm/分の引き伸ばし速度で50%引き伸ばした時の20N/50mm幅未満の伸び強度を特徴とし、
該多層フィルムのフィルム総厚が、26μm~60μmの範囲内であり、
該第1の弾性スキン層の総厚と該第2の弾性コア層(複数の場合もある)の総厚との比率が、1:10~1:25の範囲内であり、
該不織布層が、スパンボンド不織布又はカード式不織布から選択され、かつ、
該弾性積層体の予め決められた部分が、伸長処理に供されて、該弾性積層体の該予め決められた部分上の不織布層の繊維構造が機械的に緩められている、弾性積層体。
【請求項2】
少なくとも2つの第1の弾性スキン層と、少なくとも1つの第2の弾性コア層とを含む多層フィルムを含み、該第1の弾性スキン層が、該少なくとも1つの第2の弾性コア層の両側に配置されており、該第2の弾性コア層が、これを挟み込んでいる該第1の弾性スキン層よりも高い弾性を有し、ここで、該第1の弾性スキン層は、オレフィンポリマーを含み、かつ該第2の弾性コア層は、エラストマー層を含み、かつ、
該多層フィルムが、その両方の外表面に配置された、(i)ホットメルト粘着剤層を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合された不織布層を有
該第2の弾性コア層が、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有し、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含む、弾性積層体であって、
該弾性積層体が、300mm/分の引き伸ばし速度で50%引き伸ばした時の20N/50mm幅未満の伸び強度を特徴とし、
該多層フィルムのフィルム総厚が、26μm~60μmの範囲内であり、
該第1の弾性スキン層の総厚と該第2の弾性コア層(複数の場合もある)の総厚との比率が、1:10~1:25の範囲内であり、かつ、
前記不織布層が、スパンレース不織布から選択される、弾性積層体。
【請求項3】
カトーテック株式会社製のウェアラブル接触力センサーHapLog Haptic Skill Loggerによって測定された50%伸び時の引張強度が、0.15N/mm以下である、請求項1又は2に記載の弾性積層体。
【請求項4】
前記第1の弾性スキン層が、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性積層体。
【請求項5】
前記第1の弾性スキン層中の前記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、25重量%以上である、請求項4に記載の弾性積層体。
【請求項6】
前記第2の弾性コア層中の前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量が、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である、請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性積層体。
【請求項7】
前記スチレン系エラストマー(a)が、5%未満のジブロック含有量を有し、かつ前記スチレン系エラストマー(b)が、10%~20%の範囲内のジブロック含有量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性積層体。
【請求項8】
前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)が、SIS系エラストマー及び/又はSBS系エラストマーから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の弾性積層体。
【請求項9】
前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)は、SIS系エラストマーから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の弾性積層体。
【請求項10】
前記第1の弾性スキン層中の前記オレフィン系エラストマーが、α-オレフィン系エラストマーである、請求項に記載の弾性積層体。
【請求項11】
低弾性層中の前記結晶性オレフィンポリマーが、HDPE、r-PP、又はLDPEから選択される少なくとも1種類である、請求項に記載の弾性積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の弾性積層体を含む物品。
【請求項13】
請求項1及び請求項3~11のいずれか一項に記載の弾性積層体を製造する方法であって、
前記少なくとも1つの第2の弾性コア層と前記少なくとも2つの第1の弾性スキン層とを互いに直接的に接合させて、多層フィルムを得ることと、
前記多層フィルムの両方の外表面に不織布を(i)ホットメルト粘着剤を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合させて、弾性積層体を得ることと、
前記弾性積層体の予め決められた部分を伸長処理に供して、前記弾性積層体の前記予め決められた部分上の前記不織布層の繊維構造を機械的に緩めることと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項2~11のいずれか一項に記載の弾性積層体を製造する方法であって、
前記少なくとも1つの第2の弾性コア層と前記少なくとも2つの第1の弾性スキン層とを互いに直接的に接合させて、多層フィルムを得ることと、
前記多層フィルムの両方の外表面に不織布を(i)ホットメルト粘着剤を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合させて、弾性積層体を得ることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に引き伸ばすことができるような伸び強度を特徴とする弾性積層体、及び該弾性積層体を含む物品に関する。特に、上記弾性積層体は、特にオープン型おむつに使用される場合の「弾性耳部(elastic ear)」として、すなわち、サイドテープ(フックテープ)とおむつとの間の弾性積層体として利用可能である。
【背景技術】
【0002】
多層共押出フィルムを含んだ様々な弾性積層体は、衛生用品、例えば、おむつ及びマスク等の物品用の材料に提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3を参照)。
【0003】
典型的には、エラストマー層の少なくとも片側に不織布層を有する弾性積層体が提案されてきた。このような伸縮性積層体においては、エラストマー層と不織布層とは、一般に、接着剤又は粘着剤で互いに接合されている。しかしながら、エラストマー層を含む2層以上から形成されたそのような関連技術の弾性積層体は、その伸び強度が高すぎる場合に、「弾性耳部」として、すなわち、サイドテープ(フックテープ)とおむつとの間の弾性積層体として快適に使用することができない。
【0004】
さらに、そのような弾性積層体は、様々な利用者の各々に心地よく馴染むような優れた触感を有することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-112877号
【文献】特開2016-204625号
【文献】特開2016-204634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、関連技術の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、「弾性耳部」として、すなわち、サイドテープ(フックテープ)とおむつとの間の弾性積層体として快適に使用されるような伸び強度を有する弾性積層体を提供することである。本発明の別の目的は、そのような弾性積層体を含む物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 本発明の一実施の形態による弾性積層体は、少なくとも2つの第1の弾性スキン層と、少なくとも1つの第2の弾性コア層とを含む多層フィルムを含み、上記第1の弾性スキン層が、上記少なくとも1つの第2の弾性コア層の両側に配置されており、上記第2の弾性コア層が、これを挟み込んでいる上記第1の弾性スキン層よりも高い弾性を有し、ここで、上記第1の弾性スキン層は、オレフィンポリマーを含み、かつ上記第2の弾性コア層は、エラストマー層を含み、かつ、
上記多層フィルムが、その両方の外表面に配置された、(i)ホットメルト粘着剤層を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合された不織布層を有する、弾性積層体であって、
上記弾性積層体は、300mm/分の引き伸ばし速度で50%引き伸ばした時に20N/50mm幅未満の伸び強度を特徴とし、
上記多層フィルムのフィルム総厚は、26μm~60μmの範囲内であり、
上記第1の弾性層の総厚と上記第2の弾性コア層(複数の場合もある)の総厚との比率は、1:10~1:25の範囲内であり、
上記不織布層は、スパンボンド不織布又はカード式不織布から選択され、かつ、
上記弾性積層体の予め決められた部分は、伸長処理に供されて、上記弾性積層体の上記予め決められた部分上の不織布層の繊維構造が機械的に緩められている、弾性積層体である。
[2] 本発明の別の実施の形態による弾性積層体は、少なくとも2つの第1の弾性スキン層と、少なくとも1つの第2の弾性コア層とを含む多層フィルムを含み、上記第1の弾性スキン層が、上記少なくとも1つの第2の弾性コア層の両側に配置されており、上記第2の弾性コア層が、これを挟み込んでいる上記第1の弾性スキン層よりも高い弾性を有し、ここで、上記第1の弾性スキン層は、オレフィンポリマーを含み、かつ上記第2の弾性コア層は、エラストマー層を含み、かつ、
上記多層フィルムが、その両方の外表面に配置された、(i)ホットメルト粘着剤層を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合された不織布層を有する、弾性積層体であって、
上記弾性積層体は、300mm/分の引き伸ばし速度で50%引き伸ばした時に20N/50mm幅未満の伸び強度を特徴とし、
上記多層フィルムのフィルム総厚は、26μm~60μmの範囲内であり、
上記第1の弾性層の総厚と上記第2の弾性コア層(複数の場合もある)の総厚との比率は、1:10~1:25の範囲内であり、かつ、
上記不織布層は、スパンレース不織布から選択される、弾性積層体である。
本発明の弾性積層体は、「弾性耳部」として、すなわち、サイドテープ(フックテープ)とおむつとの間の弾性積層体として使用される場合に、特にオープン型おむつに使用される場合に「着用しやすい」という特質を示す。
【0008】
本発明はさらに、項目[1]による弾性積層体を製造する方法であって、
上記少なくとも1つの第2の弾性コア層と上記少なくとも2つの第1の弾性スキン層とを互いに直接的に接合させて、多層フィルムを得ることと、
上記多層フィルムの両方の外表面に不織布を(i)ホットメルト粘着剤を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合させて、弾性積層体を得ることと、
上記弾性積層体の予め決められた部分を伸長処理に供して、上記弾性積層体の上記予め決められた部分上の上記不織布層の繊維構造を機械的に緩めることと、
を含む、方法を提供する。
さらに、本発明は、項目[2]による弾性積層体を製造する方法であって、
上記少なくとも1つの第2の弾性コア層と上記少なくとも2つの第1の弾性スキン層とを互いに直接的に接合させて、多層フィルムを得ることと、
上記多層フィルムの両方の外表面に不織布を(i)ホットメルト粘着剤を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合させて、弾性積層体を得ることと、
を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明による物品は、本発明による弾性積層体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の弾性積層体の一実施形態の活性化処理に使用されるリングロールの概略図である。
図2】実施例及び比較例で使用されるウェアラブル接触力センサーを装着した右手を示す写真である。
図3】実施例及び比較例で行われる初期勾配試験で使用される弾性積層体を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による弾性積層体は、第2の弾性コア層の両側に配置された第1の弾性スキン層を含む多層フィルムであって、上記第2の弾性コア層がこれを挟み込んでいる第1の弾性スキン層よりも高い弾性を有し、第1の弾性スキン層がオレフィンポリマーを含み、かつ第2の弾性コア層がエラストマー層を含む、多層フィルムを含む。
【0012】
本発明によれば、弾性積層体は、300mm/分の引き伸ばし速度で50%引き伸ばした時に20N/50mm幅未満の伸び強度を特徴とする。したがって、本明細書では、伸び強度は、ラミネートが当初の長さ(100%)から当初の長さの150%まで引き伸ばした時の力を意味する。本明細書で後に使用される「50%伸び時の力」が小さい場合に、これはラミネートを容易に引き伸ばすことができることを意味する。
さらに、上記[1]又は[2]、特に[2]による本発明の弾性積層体は、好ましくは、実施例で詳細に記載されるように、カトーテック株式会社製のウェアラブル接触力センサーHapLog Haptic Skill Loggerによって測定された0.15N/mm以下の、本明細書では初期勾配とも呼ばれる50%伸び時の引張強度を有する。初期勾配の値が低いほど、ラミネートはより容易に引き伸ばすことができる。
【0013】
<<第1の弾性スキン層>>
本発明によれば、第1の弾性スキン層はオレフィンポリマーを含む。特に、オレフィンポリマーは、特に、ランダムなエチレン分布を有するアイソタクチックプロピレン繰返し単位から主として構成されるプロピレン/エチレンコポリマーを含み得る。好ましくは、第1の弾性スキン層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含む。より好ましくは、第1の弾性スキン層中の上記オレフィン系エラストマーの含有量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更により好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。第1の弾性スキン層中の上記オレフィン系エラストマーの含有量は、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更により好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。第1の弾性スキン層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更により好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。第1の弾性スキン層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更により好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。この配合比は、弾性、耐ブロッキング特性、及びスリット加工性能の満足のいく特性バランスを実現する結果である。特に、第1の弾性層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量が25重量%未満である場合に、耐ブロッキング特性は十分ではないこととなる。配合比が上記結晶性オレフィンポリマーについてより高くなることによって、耐ブロッキング特性及びスリット加工特性がより良好になる。しかしながら、弾性は悪化する。配合比が上記オレフィン系エラストマーについてより高くなることによって、弾性はより良好になる。一方で、フィルム表面は粘着性になるため、フィルムロールのスリット加工及び巻出しは困難である。
【0014】
オレフィン系エラストマーとして、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切なオレフィン系エラストマーを採用することができる。このようなオレフィン系エラストマーの例としては、α-オレフィン系エラストマー、オレフィンブロックコポリマー、オレフィンランダムコポリマー、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、エチレンオレフィンブロックコポリマー、プロピレンオレフィンブロックコポリマー、エチレンオレフィンランダムコポリマー、プロピレンオレフィンランダムコポリマー、エチレンプロピレンランダムコポリマー、エチレン(1-ブテン)ランダムコポリマー、エチレン(1-ペンテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-ヘキセン)ランダムコポリマー、エチレン(1-ヘプテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-オクテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-ノネン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-デセン)オレフィンブロックコポリマー、プロピレンエチレンオレフィンブロックコポリマー、エチレン(α-オレフィン)コポリマー、エチレン(α-オレフィン)ランダムコポリマー、エチレン(α-オレフィン)ブロックコポリマー、及びこれらの組合せが挙げられる。中でも、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、α-オレフィン系エラストマーが好ましい。オレフィン系エラストマーの種類の数は1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。
【0015】
α-オレフィン系エラストマーの好ましい例は、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、及び1-ブテン系エラストマーから選択される少なくとも1種である。
【0016】
α-オレフィン系エラストマーは、市販品として入手することもできる。そのような市販品の例としては、ExxonMobil Corporation製の「VISTAMAXX」(商標)シリーズの幾つかの製品(VISTAMAXX 3980、VISTAMAXX 6102、及びVISTAMAXX 3000等)、及び三井化学株式会社製の「TAFMER」(商標)シリーズの幾つかの製品(TAFMER PN-3560等)が挙げられる。
【0017】
結晶性オレフィンポリマーとして、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な結晶性オレフィンポリマーを採用することができる。このような結晶性オレフィンポリマーの好ましい例は、HDPE、r-PP、又はLDPEから選択される少なくとも1種である。このような結晶性オレフィンポリマーは市販されており、例えば、National Petrochemical Company、Iran Petrochemical Commercial Companyから販売されている52518(HDPE)、Thai Polypropylene Co., Ltd.からEL-Pro(商標)の商標で販売されているPP756C(r-PP)、又はPetkimからPETILENの商標で販売されているG03-21T(LDPE)である。
【0018】
第1の弾性スキン層のそれぞれの厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、またより好ましくは1.5μm以上で、かつ好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、またより好ましくは5μm以下、又は3μm以下である。例えば、第1の弾性スキン層のそれぞれの厚さは、好ましくは1μm~10μmの範囲内であり、より好ましくは2μm~5μmの範囲内である。第1の弾性スキン層の厚さがそのような範囲内にあるとき、優れた弾性を有する多層フィルムが提供され得る。第2の弾性コア層の両側に配置されている第1の弾性スキン層の厚さは、同じであっても又は異なっていてもよい。
【0019】
第1の弾性スキン層と第2の弾性コア層との厚さ比は、残留ひずみ及びフィルム生産性に影響を与え得る。第1の弾性スキン層の総厚と第2の弾性コア層(複数の場合もある)の総厚との比率は1:10~1:25の範囲内であり、好ましくは1:10~1:15の範囲内である。第1の弾性スキン層の総厚は、弾性積層体に含まれる全ての第1の弾性スキン層の厚さの合計を指す。第2の弾性コア層(複数の場合もある)の総厚は、弾性積層体に含まれる全ての第2の弾性コア層の厚さの合計を指す。
【0020】
<<第2の弾性コア層>>
本発明によれば、第2の弾性コア層はエラストマー層を含み、ここで、上記エラストマー層はこれを挟み込んでいる第1の弾性スキン層よりも高い弾性を有する。好ましい実施形態では、第2の弾性コア層はエラストマー層からなる。好ましくは、第2の弾性コア層は、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有する(「硬質スチレン系エラストマー」)一方で、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有する(「軟質スチレン系エラストマー」)という点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)、例えばSIS系エラストマー又はSBS系エラストマーの組合せを含み、ここで、上記第2の弾性コア層中の上記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である(但し、合計で100重量%を超えない)。
スチレン系材料、特にSIS材料の場合に、高いスチレン含有量の材料はより良好な弾性をもたらす。しかしながら、溶融粘度が高いためフィルム形成はより困難となり、その際、特に機械方向に厚さ変動が起こる場合がある。したがって、本発明によれば、適切なフィルム形成に向けて溶融粘度を調整するために、高スチレン含有量グレードと低スチレン含有量グレードとが配合されるが、同時により良好な弾性が得られる。スチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)、特にSIS系エラストマー(a)及び(b)を採用することによって、生産性とフィルム特性との優れたバランスが実現され得る。
スチレン系エラストマーとして、SIS系エラストマー又はSBS系エラストマー等の任意の適切なスチレン系エラストマーを採用することができる。そのようなスチレン系エラストマーは、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、好ましくは特定の分子構造を有するSIS系エラストマーである。具体的には、SIS系エラストマーは、異なる末端スチレンブロック鎖長を有するスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー分子構造を含むSIS系エラストマー(以下で、「特定のSIS系エラストマー」と呼ばれることもある)であり、従来のSIS系エラストマーとは区別される。
【0021】
硬質スチレン系エラストマー(a)に関して、スチレン含有量の下限は30重量%以上、好ましくは32重量%以上、より好ましくは34重量%以上である。スチレン含有量の上限は60重量%以下、好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
軟質スチレン系エラストマー(b)に関して、スチレン含有量の下限は10重量%以上、好ましくは12重量%以上、より好ましくは14重量%以上である。スチレン含有量の上限は29重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは21重量%以下である。
第2の弾性コア層中の硬質スチレン系エラストマー(a)のパーセンテージに関係する限り、下限は35重量%以上、好ましくは37重量%以上、より好ましくは39重量%以上であり得る。第2の弾性コア層中の硬質スチレン系エラストマー(a)のパーセンテージの上限は60重量%以下、好ましくは57重量%以下、より好ましくは54重量%以下であり得る。
【0022】
第2の弾性コア層の数は1つであっても又は2つ以上であってもよい。第2の弾性コア層の数は、好ましくは1つである。
さらに、本発明の弾性積層体は、好ましくは1つの多層フィルムを含む。
多層フィルムは、好ましくは層の配置A/B/A(A=第1の弾性スキン層、B=第2の弾性コア層)を有する。
【0023】
更なる好ましい実施形態では、HPLCによって測定した場合に、スチレン系エラストマー(a)は5%未満、より好ましくは3%未満、更により好ましくは1%未満のジブロック含有量を有する一方で、スチレン系エラストマー(b)は10%~20%、より好ましくは10%~15%の範囲内のジブロック含有量を有する。例えば、以下の条件:装置:東ソー株式会社製のHPLC-8320;カラム:Shodex製のKF-404HQ X 3;溶剤:THF;速度:0.35ml/分;温度:40℃を使用することができる。
【0024】
本発明で使用されるスチレン系エラストマー(a)及び(b)の例としては、日本ゼオン株式会社製の「Quintac 3390」(スチレン含有量=48重量%)、「Quintac SL-190」(スチレン含有量=35重量%)、「Quintac SL-188」(スチレン含有量=30重量%)、「Quintac 3191」(スチレン含有量=44重量%)、「Quintac 3620」(スチレン含有量=14重量%)、又は「Quintac SL-189」(スチレン含有量=18重量%)の商品名の製品が挙げられる。
【0025】
本発明において、スチレン系エラストマー(a)、すなわち上記の「硬質スチレン系エラストマー」は、JIS K 7210に準じて測定した場合に、200℃/5kgで測定された、好ましくは10g/10分~20.0g/10分のメルトインデックスMIを有する一方で、上記の「軟質スチレン系エラストマー」(b)は、JIS K 7210に準じて測定した場合に、200℃/5kgで測定された、好ましくは5g/10分~10.0g/10分のMIを有する。MIが上記の範囲内にある特定のSIS系エラストマーが採用されると、延伸されて、ホットメルト粘着剤層を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって別の材料、特に不織布層上に接合された場合に十分な保持能力を有し、かつ触感がより優れている多層フィルムが提供され得る。上述のように、第2の弾性コア層中のスチレン系エラストマー(a)及びスチレン系エラストマー(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内、好ましくは40重量%~55重量%の範囲内、より好ましくは45重量%~50重量%の範囲内である。
【0026】
少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の他に、第2の弾性コア層は、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な他の成分を更に含むことができる。そのような他の成分の例としては、任意の他のポリマー、粘着付与剤、可塑剤、劣化防止剤、任意の他の顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、滑沢剤、発泡剤、熱安定剤、光安定剤、無機フィラー、及び有機フィラーが挙げられる。それらの成分の種類の数は1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。第2の弾性コア層中の他の成分の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、またより好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、より特に好ましくは1重量%以下である。
【0027】
本発明の一実施形態では、第2の弾性コア層は5重量%~10重量%の範囲内でTiO/LDPEマスターバッチ(c)を含み得る。好ましくは、上記マスターバッチ中のTiOの総量対LDPEの総量の質量比は50/50~80/20、より好ましくは70/30である。白色顔料としてのTiOは衛生製品の顧客に好まれる。このようなTiO/LDPEマスターバッチは市販されている。
本発明の更なる実施形態では、多層フィルムは、TiO/LDPEマスターバッチ(c)中のTiOを除いて、粘着防止剤又は無機粒子を一切含まない。
【0028】
第2の弾性コア層の厚さは、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、またより好ましくは35μm以上で、かつ好ましくは55μm以下、より好ましくは50μm以下、またより好ましくは45μm以下である。第2の弾性コア層の厚さがそのような範囲内にあるとき、優れた弾性を有する多層フィルムが提供され得る。
【0029】
好ましい実施形態では、多層フィルムのフィルム総厚は、26μm~60μm、好ましくは30μm~55μm、より好ましくは35μm~50μmの範囲内である。
【0030】
第1の弾性スキン層の主な機能は、特にロール巻取りが行われるときに耐ブロッキング特性をもたらすことである。そのために、これらの層は低い弾性を示すべきである。それに対して、第2の弾性コア層は高い弾性を示すべきである。第1の弾性スキン層が薄いほど、多層フィルムひいては弾性積層体の弾性は高くなる。しかしながら、その際、押出性能が低下するため、フィルムの生産が悪化することとなる。したがって、そのような層の配置A/B/A(A=第1の弾性スキン層、B=第2の弾性コア層)の場合に、適切な層比は、厚さに関してA/B/A=2.5%~5%/90%~95%/2.5%~5%であり得る。
【0031】
本発明の一実施形態では、上記多層フィルムは、その上に配置された、外側の不織布層を接合するために該多層フィルムの両側に塗布されたホットメルト粘着剤層を有する。ホットメルト粘着剤として、任意の適切なホットメルト粘着剤を採用することができる。ホットメルト粘着剤の種類の数は1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。
そのようなホットメルト粘着剤の例としては、スチレン系エラストマーを含むホットメルト粘着剤、及びオレフィン系ポリマーを含むホットメルト粘着剤が挙げられる。中でも、ホットメルト粘着剤としては、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、スチレン系ポリマーを含むホットメルト粘着剤が好ましい。そのようなスチレン系ポリマーの例としては、SISを含むスチレン系ポリマー、SBSを含むスチレン系ポリマー、それらの水素化生成物、及びそれらのブレンドが挙げられる。ホットメルト粘着剤がスチレン系ポリマーを含む場合に、ホットメルト粘着剤中のスチレン系ポリマーの含有量は、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは20重量%~80重量%、またより好ましくは30重量%~70重量%、特に好ましくは40重量%~60重量%である。
オレフィン系ポリマーの例としては、オレフィン系エラストマー、1-ブテンコポリマー、アモルファスポリ-α-オレフィン、プロピレン系ポリマー、ポリエチレン、又はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、及びその変性物等のポリオレフィン樹脂、α-オレフィンとビニル化合物(例えば、酢酸ビニル又は(メタ)アクリル酸エステル)とのコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びポリ塩化ビニルが挙げられる。プロピレン系ポリマーの例としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、及びランダムポリプロピレンが挙げられる。中でも、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、オレフィン系エラストマー、1-ブテンコポリマー、又はアモルファスポリ-α-オレフィンが好ましく、1-ブテンコポリマーがより好ましく、以下で説明するプロピレン/1-ブテンコポリマーがまたより好ましい。
オレフィン系エラストマーとして、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切なオレフィン系エラストマーを採用することができる。このようなオレフィン系エラストマーの例としては、α-オレフィン系エラストマー、オレフィンブロックコポリマー、オレフィンランダムコポリマー、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、エチレンオレフィンブロックコポリマー、プロピレンオレフィンブロックコポリマー、エチレンオレフィンランダムコポリマー、プロピレンオレフィンランダムコポリマー、エチレンプロピレンランダムコポリマー、エチレン(1-ブテン)ランダムコポリマー、エチレン(1-ペンテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-ヘキセン)ランダムコポリマー、エチレン(1-ヘプテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-オクテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-ノネン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-デセン)オレフィンブロックコポリマー、プロピレンエチレンオレフィンブロックコポリマー、エチレン(α-オレフィン)コポリマー、エチレン(α-オレフィン)ランダムコポリマー、エチレン(α-オレフィン)ブロックコポリマー、及びこれらの組合せが挙げられる。中でも、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、α-オレフィン系エラストマーが好ましい。オレフィン系エラストマーの種類の数は1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。
α-オレフィン系エラストマーの好ましい例は、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、及び1-ブテン系エラストマーから選択される少なくとも1種である。
α-オレフィン系エラストマーは、市販品として利用することもできる。そのような市販品の例としては、三井化学株式会社製の「TAFMER」(商標)シリーズの幾つかの製品(TAFMER PN-3560等)、ExxonMobil Corporation製の「VISTAMAXX」(商標)シリーズの幾つかの製品(VISTAMAXX 3000、VISTAMAXX 6202、VISTAMAXX 7010、及びVISTAMAXX 7050等)、REXtac, LLC製の「REXtac」(商標)シリーズの幾つかの製品(REXTAC RT2780及びREXTAC RT2788等)、及び住友化学株式会社製のTAFTHRENシリーズの製品(T3712及びT3522等)が挙げられる。
さらに、オレフィン系ホットメルト粘着剤として、Bento Bantcilik製の商品名「AC600」を有する製品を使用することもできる。
1-ブテンコポリマーとして、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な1-ブテンコポリマーを採用することができる。そのような1-ブテンコポリマーの例としては、エチレン/1-ブテンコポリマー及びプロピレン/1-ブテンコポリマーが挙げられる。中でも、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、プロピレン/1-ブテンコポリマーが好ましい。1-ブテンコポリマーの種類の数は1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。
1-ブテンコポリマーは、市販品として利用することもできる。そのような市販品の例としては、REXtac, LLC製の「Rextac」(商標)シリーズの幾つかの製品(REXTAC RT2780及びREXTAC RT2788等)が挙げられる。
ホットメルト粘着剤は、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な他の成分を含むことができる。このような他の成分の例としては、液体パラフィン、粘着付与剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤、及び蛍光剤が挙げられる。このような他の成分の種類の数は、1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。
粘着付与剤は、感圧接着の強度を改善するのに効果的である。ホットメルト粘着剤が粘着付与剤を含む場合に、ホットメルト粘着剤中の粘着付与剤の含有量は、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、好ましくは10重量%~90重量%、より好ましくは20重量%~80重量%、またより好ましくは30重量%~70重量%、特に好ましくは40重量%~60重量%である。
粘着付与剤の例としては、炭化水素系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤、及びケトン系粘着付与剤が挙げられる。粘着付与剤の種類の数は、1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。
炭化水素系粘着付与剤の例としては、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂(キシレン樹脂等)、脂肪族環式炭化水素樹脂、脂肪族芳香族石油樹脂(スチレン-オレフィンコポリマー等)、脂肪族脂環式石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、及びクマロン-インデン系樹脂が挙げられる。
テルペン系粘着付与剤の例としては、α-ピネンポリマー又はβ-ピネンポリマー等のテルペン系樹脂、及びテルペン系樹脂を変性(例えば、フェノール変性、芳香族変性、又は水素添加変性)することにより得られる変性テルペン系樹脂(テルペン-フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、又は水素添加テルペン系樹脂等)が挙げられる。
ロジン系粘着付与剤の例としては、ガムロジン又はウッドロジン等の未変性ロジン(生ロジン)、未変性ロジンを水素添加、不均化、重合等によって変性することによって得られる変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、又は他の化学変性ロジン等)、及び他のロジン誘導体が挙げられる。
フェノール系粘着付与剤の一例は、レゾール型又はノボラック型アルキルフェノールである。
粘着付与剤は、オレフィン樹脂又は熱可塑性エラストマーとのブレンドとしての市販品であってもよい。
【0032】
本発明の別の実施形態では、外側の不織布層は、超音波(溶接)接合又は熱接合、特に超音波接合によって上記多層フィルム上に設けられる。超音波(溶接)接合により多層フィルムと不織布層とを直接融着させて互いに接合する場合に、本発明の弾性積層体は、以下の特徴を有する:多層フィルムとそれに隣接する不織布との間でより剥離が起こりにくいこと、粘着剤に由来する特有の臭いの発生が更に抑えられること、多層フィルムとそれに隣接する不織布層との接合による通気性の抑制を更に防ぐことができること、及びラミネートをこれまでより更に低いコストで製造することができること。
超音波溶接接合として、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な超音波溶接接合を採用することができる。超音波溶接接合において、被接合部材は、一般に「ホーン」と呼ばれる部分、すなわち超音波による振動エネルギーを送り込むように構成されている部分と、一般に「アンビル」と呼ばれるロール形状の部分との間に配置される。多くの場合に、ホーンは被接合部材及びアンビルの上方に鉛直に配置される。ホーンは、典型的には、圧力下で20000Hz~40000Hzで振動して、エネルギーを典型的には摩擦熱の形で被接合部材へと伝達する。少なくとも1つの被接合部材の部分は、摩擦熱及び圧力によって軟化又は溶融されるため、材料が互いに接合される。超音波溶接接合の1つの好ましい種類は、一般に「連続超音波溶接接合」として知られている。連続超音波溶接接合は、典型的には、実質的に連続的に接合装置へと供給され得る被接合部材をシールするために使用される。連続超音波溶接接合では、ホーンは典型的には固定されており、被接合部材がホーンの真下を移動する。或る種類の連続超音波溶接接合では、固定されたホーン及び回転するアンビル表面が使用される。連続超音波溶接接合の間に、被接合部材はホーンと回転するアンビルとの間で引っ張られる。ホーンは典型的には被接合部材に向かってその長手方向に延びており、その振動はホーンに沿ってその軸方向で材料へと移動する。別の好ましい種類の超音波溶接接合では、ホーンは回転型であり、円柱形状を有し、その長手方向軸線を中心に回転する。入力振動はホーンの軸線方向に存在し、出力振動はホーンの半径方向に存在する。ホーンはアンビルに近接するように配置され、アンビルも典型的には回転することができるため、被接合部材は円柱表面の接線速度に実質的に等しい線速度で円柱表面間の空間を通過することができる。超音波溶接接合は、例えば、特開2008-526552号、特開2010-195044号、特開2013-231249号、特開2015-16294号、及び米国特許第5976316号に開示されており、これらの開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0033】
不織布層として、本発明の効果が損なわれない限り、任意の適切な不織布層を採用することができる。不織布層を構成する不織布の種類の数は1種類だけであっても又は2種類以上であってもよい。好ましい実施形態では、上記ホットメルト粘着剤層を介して又は超音波接合若しくは熱接合によって多層フィルムの両外側に配置される不織布層は、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、及びカード式不織布から選択される。例えば、不織布層を構成する不織布は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エラストマー、レーヨン、セルロース、アクリル、それらのコポリマー、又はそれらのブレンド、又はそれらの混合物、又は任意の他のポリオレフィンの繊維を含み得る。それらの繊維の中でも、本発明の効果をより大きい程度で発揮することができるので、不織布は、好ましくは、ポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィンの繊維を含む。不織布層を構成する不織布は、均質な構造体としての繊維を含み得る又は二成分構造体、例えば、シース/コア型構造物、サイドバイサイド型構造物、シーアイランド型構造物、及び任意の他の二成分構造物を含み得る。不織布の詳細な説明は、例えば、"Nonwoven Fabric Primer and Reference Sampler", E.A. Vaughn, Association of the Nonwoven Fabrics Industry, third edition (1992)に見出すことができる。
不織布層を構成する不織布の坪量は、好ましくは150gsm以下、より好ましくは100gsm以下、またより好ましくは50gsm以下、特に好ましくは10gsm~30gsmである。
【0034】
本発明の更なる実施形態では、少なくとも1つの第1の弾性層と、該少なくとも1つの第1の弾性層よりも高い弾性を有する少なくとも1つの第2の弾性層とを有する少なくとも2つの異なる弾性層を含む多層フィルムを含む弾性積層体であって、
第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、ここで、第1の弾性層中の上記オレフィン系エラストマーの含有量は、30重量%~80重量%の範囲内であり、かつ第1の弾性層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、20重量%~70重量%の範囲内であり、かつ、
第2の弾性層は、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有する一方で、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含み、ここで、上記第2の弾性層中のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内であり、
上記多層フィルムは、その両方の外表面に配置された、(i)ホットメルト粘着剤層を介して又は(ii)超音波接合若しくは熱接合によって接合された不織布層を有する、弾性積層体が提供される。
この実施形態に関して、上記で既になされた全ての記述はこの態様による弾性積層体にも適用される。
【0035】
<<弾性積層体の製造>>
本発明に使用される多層フィルムの製造において、第2の弾性コア層及び第1の弾性層は互いに直接的に接合される。そのような接合方法の例としては、Tダイ共押出又はインフレーション共押出によって第1の弾性層及び第2の弾性層を積層することを含む方法が挙げられる。
スパンボンド不織布、カード式不織布、及びスパンレース不織布から選択される不織布層は、上記のホットメルト粘着剤を使用して又は上記の超音波(溶接)接合若しくは熱接合によって多層フィルムの両方の外表面に接合される。
ホットメルト粘着剤は、好ましくは、複数のストリップで多層フィルム上に適用される。
熱接合は、弾性積層体の一部又は全体に熱を加えることによって行われる。
本発明の弾性積層体は、国際公開第95/12488号及び米国特許出願公開第2017/0296399号(これらは、引用することにより本明細書の一部をなす)等の従来技術で知られるように、多層フィルムとスパンボンド不織布及びカード式不織布から選択される不織布層とを積層した後に、活性化処理又は伸長処理と呼ばれる処理に供される。スパンレース不織布が不織布層として使用される場合、活性化処理は任意である。弾性積層体の伸び強度の特質は活性化処理によって改善される。
活性化処理は、弾性積層体を複数ペアの送りリングロール(running ring rolls)又は噛合波形ロールの間に供することにより行われ、それにより弾性積層体は「活性化」又は延伸/伸長される。噛合リングロールは、図1で4a及び4bとして概略的に示されている。好ましくは、活性化処理は、上述のホットメルト粘着剤が塗布された、超音波が印加された、又は熱接合の間に熱が印加された弾性積層体の部分に対して行われる。好ましくは、活性化/伸長処理は、弾性積層体の幅方向(すなわち、CD方向)で行われ、すなわち、弾性積層体は、複数のリングロール間で幅方向に対して垂直なMD方向に送られることにより、CD方向に弾性が付与される。本明細書における幅方向又は横方向(CD方向)とは、機械方向(MD方向)に対して垂直な方向を意味する。MD方向とは、多層フィルムが押し出される方向を意味する。活性化/伸長処理において、不織布層の領域の一部の繊維構造物は、それぞれ機械的に緩められ又は解きほぐされ、それにより弾性積層体の弾性が高められる。そのような処理が行われると、弾性積層体をより小さな力で引き伸ばすことができる。活性化/伸長処理を1回若しくは2回又は3回以上行うことができる。好ましくは、活性化処理は2回行われる。弾性積層体は活性化処理の間に延伸されるが、弾性積層体の長さは活性化処理後に当初の長さに戻る。それというのも、第1の弾性スキン層及び第2の弾性コア層は、活性化プロセスの間に実質的に損傷を受けずにいるからである。その結果、弾性積層体中の不織布は、活性化が行われた領域で寄せ集められる。
活性化率(%)は、弾性積層体がリングロールによってどれだけ伸長されたかの基準であり、実施例に記載されるように計算される。活性化率(%)は、好ましくは150%~300%である。
例えば、延伸方向を制御するために、活性化/伸長処理として、多層フィルムを140℃~155℃の温度にて1:1.5~1:10の当初の長さと延伸した長さとの比率で第1の方向に延伸させた後に室温まで冷却することができるため、該フィルムは第1の方向に対して垂直な延伸方向で延伸され、第1の延伸方向で剛性に留めることができる。第1の延伸方向はCD方向又はMD方向であり得る。
延伸及び緩和特性を更に改善するために、弾性積層体を延伸してから、ダイバージングディスク延伸装置(diverging disks stretching device)を使用することによってフィルムを活性化処理に供することができるため、フィルムは横方向(CD方向/幅方向)に、例えば当初の長さの110%~500%の長さまで延伸され得る。
外側層にスパンレース不織布が使用される場合に、300mm/分の引き伸ばし速度で50%引き伸ばした時に20N/50mm幅未満の伸び強度の特質を実現するのに、活性化処理は任意である。その理由は、スパンレース不織布が、スパンボンド不織布又はカード式不織布と比べてかなり柔らかいからである。スパンレース不織布の使用とこのような活性化処理とを組み合わせることで、弾性積層体はより柔らかくなる。スパンボンド不織布又はカード式不織布は、それらのポイントボンド構造のため、より硬い不織布である。したがって、スパンボンド不織布又はカード式不織布を用いる実施形態では、そのような活性化処理は、伸び強度の特質に有利に影響を及ぼす。
【0036】
<<弾性積層体の用途>>
本発明の弾性積層体は、本発明の効果を効果的に利用することができる任意の適切な物品において使用され得る。すなわち、本発明の物品は本発明の弾性積層体を含む。そのような物品の典型的な例は衛生用品である。このような衛生用品の例としては、おむつ(特に、使い捨ておむつの耳部分)が挙げられる。
【実施例
【0037】
以下で、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によって決して限定されるものではない。実施例及び比較例において、試験方法及び評価方法は以下に記載される通りである。さらに、別段の定めがない限り、「部("part(s)")」は「重量部("part(s) by weight")」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0038】
実施例1
押出機において、50重量%のα-オレフィン系エラストマー樹脂(ExxonMobil製、商品名:VISTAMAXX 3980)及び50重量%の結晶性オレフィンポリマー樹脂(National Petrochemical Company、Iran Petrochemical Commercial Company製、商品名:52518)の配合物をA層にロードし、46.5重量%のSIS系エラストマー樹脂(Zeon Corporation製、商品名:Quintac 3390、スチレン含有量=48重量%、MFR=14.0g/10分)及び46.5重量%のSIS系エラストマー樹脂(Zeon Corporation製、商品名:Quintac 3620、スチレン含有量=14重量%、ジブロック含有量=12重量%、MFR=9.0g/10分)及び7重量%のTiO/LDPEマスターバッチ(酸化チタン、Ampacet製、商品名:White PE MB 111413)の配合物をB層にロードして、A層/B層/A層=2μm/46μm/2μmで合計50μmの構成を有する弾性多層フィルムを押出した。結果を表1に示す。
引き続き、ホットメルト粘着剤層を多層フィルムに塗布するか(実施例1~実施例9及び比較例1~比較例7を参照)又は多層フィルムを超音波接合若しくは熱接合して(実施例10~実施例18を参照)、不織布層を接合した。
接着剤塗膜(ホットメルト粘着剤層)用の材料として、一般に使用されるホットメルト粘着剤を使用した。
こうして得られたラミネートを活性化処理に供した。各ラミネートにつき、活性化処理をCD方向に1回行った。各ペア(4a、4b)が図1に概略的に示されるようにラミネートの両側と互いに向かい合っている複数ペアの送りリングロールの間にMD方向でラミネートを送ることによってラミネートを活性化/伸長させ、それによりラミネートをCD方向で活性化/伸長させた。活性化率(%)は(CD方向に活性化した後で活性化領域が当初の長さに戻る前の活性化領域の幅/CD方向に活性化する前の活性化される領域の幅)×100の近似値であり、ソフトウェアAutodesk AutoCAD(Autodesk Inc.)によって各リングの厚さ、隣接するリング間の距離、及び噛合ロールの先端間の距離に基づいて計算され得る。活性化率は、向かい合うリングロール4a及び4bの先端間の距離(深さ)を適切に選択することによって、当業者により容易に調整され得る。各実施例の活性化率を表1に示す。活性化率0は、活性化を行わなかったことを意味する。
表1において、実施例1~実施例3、実施例5~実施例9、実施例13~実施例18並びに比較例5及び比較例6の活性化領域の積層率(%)とは、活性化処理に供されたラミネートの面積に対するホットメルト粘着剤が塗布された又は超音波が印加されたラミネートの面積のパーセンテージを意味する。実施例4並びに比較例2~比較例4及び比較例7では、活性化処理が行われなかったが、活性化領域の積層率が42%として示されており、これは実施例2と同様に接着剤が塗られたことを意味する。さらに、実施例10~実施例12では、活性化処理が行われなかったが、活性化領域の積層率が8%として示されており、これは実施例13と同様に超音波(実施例10及び実施例11)又は熱(実施例12)が印加されたことを意味する。比較例1では、実施例1と同様に接着剤が塗られた。
【0039】
以下の表1に示される他の実施例/比較例は、表1に示される組成及び積層法を使用して実施例1と本質的に同様に製造された。
本明細書で既に上述したように、伸び強度は、ラミネートが当初の長さ(100%)から当初の長さの150%まで引き伸ばした時の力を意味する。本明細書で後に使用される「50%伸び時の力」が小さい場合に、これはラミネートを容易に引き伸ばすことができることを意味する。
以下に記載される引張試験機を用いた従来の方法を使用して、ラミネートの引張強度を評価した。さらに、ウェアラブル接触力センサーを用いた以下に記載される初期勾配試験によっても引張強度を評価した。
50%伸び時の力
実施例及び比較例のそれぞれで得られた弾性積層体をCD方向で50mmの幅及びMD方向で100mmを超える長さに切断し、得られた試料を引張試験機(株式会社島津製作所製:AG-20kNG)において、2つのチャックが弾性積層体の端部をMD方向で、すなわち上述の伸長/活性化処理の活性化方向に対して鉛直方向で保持するように設置した。弾性積層体を保持する2つのチャックの距離を40mmに設定した。弾性積層体を300mm/分の引き伸ばし速度で100%伸長させた。100%伸長させた後に、ラミネートを伸長状態から当初の状態、すなわち40mmの長さに解放した。50%伸び時の引張強度を50%伸び時の力として規定した。
初期勾配試験
カトーテック株式会社製のウェアラブル接触力センサーHapLog Haptic Skill Loggerを使用して、初期伸び(0%~100%伸び)試験とも呼ばれ得る初期勾配試験を実施して、ラミネートの引張強度を評価した。図2に示されるように、右手の親指及び人差し指の先のそれぞれにウェアラブル接触力センサーを取り付けた。較正ユニットを使用して親指及び人差し指で較正を行った。上記の実施例及び比較例で得られた各ラミネートを、図3に示されるように、CD方向で50mm×MD方向で100mmのサイズに切断した。左手及び右手で掴まれた部分の中心間の距離が図3に示されるように40mmとなるように、ラミネートの一方の端部(図3に示される部分A)を、センサーを装着していない左手の親指及び人差し指で掴み、ラミネートのもう一方の端部(図3に示される部分B)を、センサーを装着している右手の親指及び人差し指で掴んだ。弾性積層体を0.5秒で100%(80mmの距離まで)伸長させ、直ちに次の0.5秒間で当初の状態、すなわち40mmの長さに戻した。したがって、引き伸ばし速度は約4800mm/分であった。引張強度を、右手の親指及び人差し指に取り付けられた接触力センサーによって測定した。50%伸び時の引張強度を初期勾配として規定し、HapLog Haptic Skill Loggerにインストールされたソフトウェアによって測定した。各試料について測定を3回行い、3つの値の平均を表1に示す。
おむつの装着のしやすさ
○:優良:50%伸び時の力の値(N/50mm)は20N未満であり、初期勾配(N/mm)は0.7未満である。
△:良好:50%伸び時の力の値(N/50mm)は20N以上で25N未満であり、初期勾配(N/mm)は0.7以上で1.0未満である。
×:不良:50%伸び時の力の値(N/50mm)は25N以上であり、初期勾配(N/mm)は1.0以上である。
例えば、実施例2と実施例7とを比較すると、多層フィルムの総厚に違いがある。フィルムがより薄いため、実施例7で得られるように50%伸び時の力はより低くなる。実施例2と実施例8とを比較すると、多層フィルムの厚さ及び活性化率/伸び率が異なる。実施例8では、150%の長さに引き伸ばすのにより多くの力が必要とされる。実施例3と実施例4とを比較すると、活性化の有無に違いがある。活性化を行わない実施例4のラミネートの場合には、引き伸ばし力が実施例3の力よりも高いため、より多くの力が必要とされる。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【符号の説明】
【0045】
1 不織布層
2 多層フィルム
3 ホットメルト粘着剤層
4a、4b リングロールのペア

図1
図2
図3