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特許7578610多層共押出フィルム及び該多層共押出フィルムを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】多層共押出フィルム及び該多層共押出フィルムを含む物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/14 20060101AFI20241029BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B32B25/14
B32B27/32 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021560943
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 IB2020053611
(87)【国際公開番号】W WO2020212905
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】19169801.8
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【弁理士】
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】中川 宗重
(72)【発明者】
【氏名】内田 翔
(72)【発明者】
【氏名】生島 伸祐
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-514391(JP,A)
【文献】特開2008-1104(JP,A)
【文献】特開平10-46461(JP,A)
【文献】特開2018-103439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の弾性層と、該少なくとも1つの第1の弾性層よりも高い弾性を有する少なくとも1つの第2の弾性層とを有する少なくとも2つの異なる弾性層を含む多層共押出フィルムであって、
前記第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、
前記第1の弾性層中の前記オレフィン系エラストマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ前記第1の弾性層中の前記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ、
前記多層共押出フィルムの23℃で10分間の100%伸長後の残留ひずみは、15%未満であ
該第2の弾性層が、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有し、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含む、多層共押出フィルム。
【請求項2】
前記第2の弾性層中の前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量が、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である、請求項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項3】
前記フィルムが3つの層を含み、第1の弾性層が前記少なくとも1つの第2の弾性層の両側に配置されている、請求項1または2に記載の多層共押出フィルム。
【請求項4】
前記多層共押出フィルムのフィルム総厚が30μm~60μmの範囲内である、請求項1~のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項5】
前記第2の弾性層の厚さが、25μm以上で、かつ55μm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項6】
前記スチレン系エラストマー(a)が、5%未満のジブロック含有量を有し、かつ前記スチレン系エラストマー(b)が、10%~20%の範囲内のジブロック含有量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項7】
前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)が、SIS系エラストマー及び/又はSBS系エラストマーから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項8】
前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)が、SIS系エラストマーから選択される、請求項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項9】
前記第1の弾性層中の前記オレフィン系エラストマーが、α-オレフィン系エラストマーである、請求項1~のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項10】
低弾性層中の前記結晶性オレフィンポリマーが、HDPE、r-PP、又はLDPEから選択される少なくとも1種類である、請求項1~のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項11】
前記第1の弾性層の総厚と前記第2の弾性層の総厚との比率が、1:10~1:25である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多層共押出フィルム。
【請求項12】
少なくとも1つの第1の弾性層と、該少なくとも1つの第1の弾性層よりも高い弾性を有する少なくとも1つの第2の弾性層とを有する少なくとも2つの異なる弾性層を含む多層共押出フィルムであって、
前記第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、ここで、前記第1の弾性層中の前記オレフィン系エラストマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ前記第1の弾性層中の前記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ、
前記第2の弾性層は、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有する一方で、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含み、ここで、前記第2の弾性層中の前記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である、多層共押出フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の多層共押出フィルムを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層共押出フィルム及び該多層共押出フィルムを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多層共押出フィルムを含んだ様々な伸縮性積層体は、衛生用品、例えば、おむつ及びマスク等の物品用の材料に提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3を参照)。
【0003】
そのような多層共押出フィルムは、良好な弾性及び満足のいく耐ブロッキング特性によって実現される良好な巻出し性能を有することを特徴とすべきである。
【0004】
しかしながら、そのような伸縮性積層体用の関連技術の多層共押出フィルムは、しばしば多層共押出フィルムが十分な弾性及び巻出し性能を有しないという問題を有する。
【0005】
さらに、そのような多層共押出フィルムを含んだそのような伸縮性積層体は、様々な利用者の各々に心地よく馴染むような優れた触感を有することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-112877号
【文献】特開2016-204625号
【文献】特開2016-204634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、関連技術の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、良好な弾性及び良好な巻出し性能を有する多層共押出フィルムを提供することである。本発明の別の目的は、そのような多層共押出フィルムを含む物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による多層共押出フィルムは、少なくとも1つの第1の弾性層と、該少なくとも1つの第1の弾性層よりも高い弾性を有する少なくとも1つの第2の弾性層とを有する少なくとも2つの異なる弾性層を含む多層共押出フィルムであって、
上記第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、かつ、
上記多層共押出フィルムの23℃で10分間の100%伸長後の残留ひずみは、15%未満である。
【0009】
好ましい実施の形態では、上記多層共押出フィルムのフィルム総厚は、30μm~60μmの範囲内である。
【0010】
更に好ましい実施の形態では、多層共押出フィルムは、第1の弾性層が第2の弾性層の両側に配置されている3つの層を含む。したがって、第1の弾性層をそれぞれスキン層又は表面層と呼ぶこともできる一方で、少なくとも1つの第2の弾性層をコア層と呼ぶことができる。
【0011】
第1の弾性層(スキン層)の主な機能は、特にロール巻取りが行われるときに耐ブロッキング特性をもたらすことである。そのために、これらの層は低い弾性を示すべきである。それに対して、コア層(第2の弾性層)は高い弾性を示すべきである。第1の弾性層(スキン層)が薄いほど、多層共押出フィルムの弾性は高くなる。しかしながら、その際、押出性能が低下するため、フィルムの生産が悪化することとなる。したがって、第1の弾性層が第2の弾性層の両側に配置されている場合に、すなわち層の配置A/B/A(A=第1の弾性層、B=第2の弾性層)の場合に、適切な層比は厚さに関してA/B/A=2.5%~5%/90%~95%/2.5%~5%であり得る。
【0012】
本発明の一態様では、多層共押出フィルムの23℃で10分間の100%伸長後の残留ひずみは15%未満である。
この測定のために、例えば、以下で本明細書に示される実施例及び比較例のいずれか1つで得られる伸縮性フィルム又は積層体をその幅方向で25mmのサイズに切断し、引張試験機に50mmのチャック間距離でその長手方向において設置した。得られたものを300mm/分の引張速度で100%伸長させた。100%伸長させた後に、フィルム又は積層体をそれぞれ伸長状態で固定し、室温で10分間保持した。10分が経過した後に、積層体を伸長状態から解放し、チャック間の初期距離、すなわち50mm(A)及び試験後のフィルムの長さ、すなわち(50+α)mm(B)を測定した。その後、「[{(B)-(A)}/(A)]×100」という数式から変動率を計算した。
【0013】
更なる好ましい実施の形態では、HPLCによって測定した場合に、スチレン系エラストマー(a)は5%未満、より好ましくは3%未満、更により好ましくは1%未満のジブロック含有量を有する一方で、スチレン系エラストマー(b)は10%~20%、より好ましくは10%~15%の範囲内のジブロック含有量を有する。例えば、以下の条件:装置:東ソー株式会社製のHPLC-8320;カラム:Shodex製のKF-404HQ X 3;溶剤:THF;速度:0.35ml/分;温度:40℃を使用することができる。
スチレン系エラストマーとして、SIS系エラストマー又はSBS系エラストマー等の任意の適切なスチレン系エラストマーを採用することができる。そのようなスチレン系エラストマーは、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、好ましくは特定の分子構造を有するSIS系エラストマーである。具体的には、SIS系エラストマーは、異なる末端スチレンブロック鎖長を有するスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー分子構造を含むSIS系エラストマー(以下で、「特定のSIS系エラストマー」と呼ばれることもある)であり、従来のSIS系エラストマーとは区別される。本発明では、この特定のSIS系エラストマーが第2の弾性層中の主成分としての役割を果たすエラストマー樹脂として採用されると、それぞれ、延伸されて別の材料上に結合された場合に更なる十分な保持能力を有し、かつ触感がより優れている伸縮性フィルム又は積層体が提供され得る。
【0014】
別の好ましい実施の形態では、第1の弾性層中のオレフィン系エラストマーは、α-オレフィン系エラストマーである。特に、オレフィン系ポリマーは、特に、ランダムなエチレン分布を有するアイソタクチックプロピレン繰返し単位から主として構成されるプロピレン/エチレンコポリマーを含み得る。
【0015】
本発明の更なる実施の形態では、少なくとも1つの第1の弾性層と、該少なくとも1つの第1の弾性層よりも高い弾性を有する少なくとも1つの第2の弾性層とを有する少なくとも2つの異なる弾性層を含む多層共押出フィルムであって、
上記第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、ここで、上記第1の弾性層中の上記オレフィン系エラストマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ上記第1の弾性層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ、
上記第2の弾性層は、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有する一方で、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含み、ここで、上記第2の弾性層中の上記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である、多層共押出フィルムが提供される。
【0016】
本発明による物品は、本発明による多層共押出フィルムを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<第1の弾性層>>
上述のように、第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、ここで、第1の弾性層中の上記オレフィン系エラストマーの含有量は、25重量%~75重量%、好ましくは28重量%~72重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、更により好ましくは40重量%~60重量%の範囲内であり、かつ第1の弾性層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、25重量%~75重量%、好ましくは28重量%~72重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、更により好ましくは40重量%~60重量%の範囲内である。この配合比は、弾性、耐ブロッキング特性、及びスリット加工性能の満足のいく特性バランスを実現する結果である。配合比が上記結晶性オレフィンポリマーについてより高くなることによって、耐ブロッキング特性及びスリット加工特性がより良好になる。しかしながら、弾性は悪化する。配合比が上記オレフィン系エラストマーについてより高くなることによって、弾性はより良好になる。一方で、フィルム表面は粘着性になるため、フィルムロールのスリット加工及び巻出しは困難である。
【0018】
オレフィン系エラストマーとして、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切なオレフィン系エラストマーを採用することができる。このようなオレフィン系エラストマーの例としては、α-オレフィン系エラストマー、オレフィンブロックコポリマー、オレフィンランダムコポリマー、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、エチレンオレフィンブロックコポリマー、プロピレンオレフィンブロックコポリマー、エチレンオレフィンランダムコポリマー、プロピレンオレフィンランダムコポリマー、エチレンプロピレンランダムコポリマー、エチレン(1-ブテン)ランダムコポリマー、エチレン(1-ペンテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-ヘキセン)ランダムコポリマー、エチレン(1-ヘプテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-オクテン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-ノネン)オレフィンブロックコポリマー、エチレン(1-デセン)オレフィンブロックコポリマー、プロピレンエチレンオレフィンブロックコポリマー、エチレン(α-オレフィン)コポリマー、エチレン(α-オレフィン)ランダムコポリマー、エチレン(α-オレフィン)ブロックコポリマー、及びこれらの組合せが挙げられる。中でも、本発明の効果を更に発揮することができるという観点から、α-オレフィン系エラストマーが好ましい。オレフィン系エラストマーの種類の数は1種類だけであってもよく、又は2種類以上であってもよい。
【0019】
α-オレフィン系エラストマーの好ましい例は、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、及び1-ブテン系エラストマーから選択される少なくとも1種である。
【0020】
α-オレフィン系エラストマーは、市販品として入手することもできる。そのような市販品の例としては、ExxonMobil Corporation製の「VISTAMAXX」(商標)シリーズの幾つかの製品(VISTAMAXX 3980、VISTAMAXX 6102、及びVISTAMAXX 3000等)、及び三井化学株式会社製の「TAFMER」(商標)シリーズの幾つかの製品(TAFMER PN-3560等)が挙げられる。
【0021】
結晶性オレフィンポリマーとして、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な結晶性オレフィンポリマーを採用することができる。このような結晶性オレフィンポリマーの好ましい例は、HDPE、r-PP、ホモ-PP、LDPE、又はLLDPEから選択される少なくとも1種である。このような結晶性オレフィンポリマーは市販されており、例えば、National Petrochemical Company、Iran Petrochemical Commercial Companyから販売されている52518(HDPE)、Thai Polypropylene Co., Ltd.からEL-Pro(商標)の商標で販売されているPP756C(r-PP)、Dow Chemical Co.からINSPIRE(商標)の商標で販売されているD118(ホモ-PP)、PetkimからPETILENの商標で販売されているG03-21T(LDPE)、又はExxonMobil Co.から販売されているLL3404.48(LLDPE)が挙げられる。
【0022】
第1の弾性層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、またより好ましくは1.5μm以上で、かつ好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、またより好ましくは5μm以下である。例えば、第1の弾性層の厚さは、好ましくは1μm~10μmの範囲内であり、より好ましくは2μm~5μmの範囲内である。第1の弾性層の厚さがそのような範囲内にあるとき、優れた弾性を有する多層共押出フィルムが提供され得る。第1の弾性層が第2の弾性層の両側に配置されている場合に、第1の弾性層の厚さは同じであっても又は異なっていてもよい。
第1の弾性層と第2の弾性層との厚さ比は、残留ひずみ及びフィルム生産性に影響を与え得る。
第1の弾性層の総厚と第2の弾性層の総厚との比率は1:10~1:25の範囲内であり、好ましくは1:10~1:15の範囲内である。第1の弾性層の総厚は、多層共押出フィルムに含まれる全ての第1の弾性層の厚さの合計を指す。第2の弾性層の総厚は、多層共押出フィルムに含まれる全ての第2の弾性層の厚さの合計を指す。
【0023】
<<第2の弾性層>>
第2の弾性層は、少なくとも2種のスチレン系エラストマー(a)および(b)の組み合わせを含み、例えば、SIS系エラストマーであって、それらはスチレン含有量が異なり、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量(「硬質スチレン系エラストマー」)を有し、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有する(「軟質スチレン系エラストマー」)し、ここで、上記第2の弾性層中の上記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である(但し、合計で100重量%を超えない)。
硬質スチレン系エラストマー(a)に関して、スチレン含有量の下限は30重量%以上、好ましくは32重量%以上、より好ましくは34重量%以上である。スチレン含有量の上限は60重量%以下、好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
軟質スチレン系エラストマー(b)に関して、スチレン含有量の下限は10重量%以上、好ましくは12重量%以上、より好ましくは14重量%以上である。スチレン含有量の上限は29重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは21重量%以下である。
第2の弾性層中の硬質スチレン系エラストマー(a)のパーセンテージに関係する限り、下限は35重量%以上、好ましくは37重量%以上、より好ましくは39重量%以上であり得る。第2の弾性層中の硬質スチレン系エラストマー(a)のパーセンテージの上限は60重量%以下、好ましくは57重量%以下、より好ましくは54重量%以下であり得る。
【0024】
第2の弾性層の数は1つであっても又は2つ以上であってもよい。
【0025】
本発明において、上述のように、少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)は、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有し(「硬質スチレン系エラストマー」)、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有する(「軟質スチレン系エラストマー」)という点でスチレン含有量が異なる。スチレン系材料、特にSIS材料の場合に、高いスチレン含有量の材料はより良好な弾性をもたらす。しかしながら、溶融粘度が高いためフィルム形成はより困難となり、その際、特に機械方向に厚さ変動が起こる場合がある。したがって、本発明によれば、適切なフィルム形成に向けて溶融粘度を調整するために、高スチレン含有量グレードと低スチレン含有量グレードとが配合され、同時により良好な弾性が得られる。スチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)、特にSIS系エラストマー(a)及び(b)を採用することによって、生産性とフィルム特性との優れたバランスが実現され得る。
フィルム形成性にとって重要な要因は溶融粘度である。この文脈において、スチレン含有量は溶融粘度を制御する要因の1つであり得る。
【0026】
本発明で使用されるスチレン系エラストマー(a)及び(b)の例としては、日本ゼオン株式会社製の「Quintac 3390」(スチレン含有量=48重量%)、「Quintac SL-190」(スチレン含有量=35重量%)、「Quintac SL-188」(スチレン含有量=30重量%)、「Quintac 3191」(スチレン含有量=44重量%)、「Quintac 3620」(スチレン含有量=14重量%)、又は「Quintac SL-189」(スチレン含有量=18重量%)の商品名の製品が挙げられる。
【0027】
本発明において、スチレン系エラストマー(a)、すなわち上記の「硬質スチレン系エラストマー」は、JIS K 7210に準じて測定した場合に、200℃/5kgで測定された、好ましくは10g/10分~20.0g/10分のメルトインデックスMIを有する一方で、上記の「軟質スチレン系エラストマー」(b)は、JIS K 7210に準じて測定した場合に、200℃/5kgで測定された、好ましくは5g/10分~10.0g/10分のMIを有する。MIが上記の範囲内にある特定のSIS系エラストマーが採用されると、延伸されて別の材料上に結合された場合に十分な保持能力を有し、かつ触感がより優れている多層共押出フィルムが提供され得る。上述のように、高弾性層中のスチレン系エラストマー(a)及びスチレン系エラストマー(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内、好ましくは40重量%~55重量%の範囲内、より好ましくは45重量%~50重量%の範囲内である。
【0028】
少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の他に、第2の弾性層は、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意の適切な他の成分を更に含むことができる。そのような他の成分の例としては、任意の他のポリマー、粘着付与剤、可塑剤、劣化防止剤、任意の他の顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、滑沢剤、発泡剤、熱安定剤、光安定剤、無機フィラー、及び有機フィラーが挙げられる。それらの成分の種類の数は1種類だけであってもよく、又は2種類以上であってもよい。第2の弾性層中の他の成分の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、またより好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、より特に好ましくは1重量%以下である。
【0029】
本発明の一実施形態では、第2の弾性層は5重量%~10重量%の範囲内でTiO/LDPEマスターバッチ(c)を含み得る。好ましくは、上記マスターバッチ中のTiOの総量対LDPEの総量の質量比は50/50~80/20、より好ましくは70/30である。白色顔料としてのTiOは衛生製品の顧客に好まれる。このようなTiO/LDPEマスターバッチは市販されている。
本発明の更なる実施形態では、多層共押出フィルムは、TiO/LDPEマスターバッチ(c)中のTiOを除いて、耐ブロッキング剤又は無機粒子を一切含まない。
【0030】
第2の弾性層の厚さは、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、またより好ましくは35μm以上で、かつ好ましくは55μm以下、より好ましくは50μm以下、またより好ましくは45μm以下である。第2の弾性層の厚さがそのような範囲内にあるとき、優れた弾性を有する多層共押出フィルムが提供され得る。
【0031】
<<多層共押出フィルムの製造>>
本発明の多層共押出フィルムの製造において、第2の弾性層(コア層)及び第1の弾性層(複数の場合もある)(表面層、スキン層)は互いに直接的に結合される。そのような結合方法の例としては、Tダイ共押出又はインフレーション共押出によって第1の弾性層及び第2の弾性層を積層することを含む方法が挙げられる。
本発明の多層共押出フィルムを、従来技術で知られるように、予備伸長処理及び活性化処理と呼ばれる処理に供することができる。
例えば、延伸方向を制御するために、予備伸長処理として、多層フィルムを140℃~155℃の温度にて1:3~1:10の比率で第1の方向に延伸させた後に室温まで冷却することができるため、該フィルムは第1の方向に対して垂直な延伸方向で延伸され、第1の延伸方向で剛性に留めることができる。
活性化処理として、延伸及び緩和特性を改善するために、多層フィルムを、ダイバージングディスク延伸装置(diverging disks stretching device)を使用することによって本質的に活性化させることができるため、該フィルムは、例えば110%~500%で横方向に延伸され、ほぼ当初の状態に緩和され得る。
【0032】
上述のように、少なくとも1つの第1の弾性層と、該少なくとも1つの第1の弾性層よりも高い弾性を有する少なくとも1つの第2の弾性層とを有する少なくとも2つの異なる弾性層を含む多層共押出フィルムであって、
上記第1の弾性層は、オレフィン系エラストマーと結晶性オレフィンポリマーとの組合せを含み、ここで、上記第1の弾性層中の上記オレフィン系エラストマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ上記第1の弾性層中の上記結晶性オレフィンポリマーの含有量は、25重量%~75重量%の範囲内であり、かつ、
上記第2の弾性層は、スチレン系エラストマー(a)が30重量%~60重量%の範囲内のスチレン含有量を有する一方で、スチレン系エラストマー(b)が10重量%~29重量%の範囲内のスチレン含有量を有するという点でスチレン含有量が異なる少なくとも2種類のスチレン系エラストマー(a)及び(b)の組合せを含み、ここで、上記第2の弾性層中の上記スチレン系エラストマー(a)及び(b)の含有量は、それぞれ35重量%~60重量%の範囲内である、多層共押出フィルムも提供される。
この実施形態に関して、上記で既になされた全ての記述はこの態様による多層共押出フィルムにも適用される。
【0033】
<<多層共押出フィルムの用途>>
本発明の多層共押出フィルムは、本発明の効果を効果的に利用することができる任意の適切な物品において使用され得る。すなわち、本発明の物品は本発明の多層共押出フィルムを含む。そのような物品の典型的な例は衛生用品である。このような衛生用品の例としては、おむつ(特に、使い捨ておむつの耳部分)、サポーター及びマスクが挙げられる。
【実施例
【0034】
以下で、本発明を実施例及び比較例として具体的に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によって決して限定されるものではない。実施例及び比較例において、試験方法及び評価方法は以下に記載される通りである。さらに、別段の定めがない限り、「部("part(s)")」は「重量部(゛part(s) by weight")」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0035】
実施例1
押出機において、50重量%のα-オレフィン系エラストマー樹脂(ExxonMobil製、商品名:VISTAMAXX 3980)及び50重量%の結晶性オレフィンポリマー樹脂(National Petrochemical Company、Iran Petrochemical Commercial Company製、商品名:52518)の配合物をA層に充填し、46.5重量%のSIS系エラストマー樹脂(Zeon Corporation製、商品名:Quintac 3390、スチレン含有量=48重量%、MFR=14.0g/10分)及び46.5重量%のSIS系エラストマー樹脂(Zeon Corporation製、商品名:Quintac 3620、スチレン含有量=14重量%、ジブロック含有量=12重量%、MFR=9.0g/10分)及び7重量%のTiO/LDPEマスターバッチ(酸化チタン、Ampacet製、商品名:White PE MB 111413)の配合物をB層に充填し、A層/B層/A層=2μm/46μm/2μmで合計50μmの構成を有する弾性フィルムを押出した。結果を表1に示す。
【0036】
以下の表1に示される他の実施例/比較例は、実施例1と本質的に同様に製造された。
【0037】
<耐ブロッキング特性の評価>
実施例及び比較例のいずれか1つで得られた多層共押出フィルムの巻回体をその幅方向で30mmのサイズに切断し、23℃×50RH%の状態で24時間貯蔵した。その後に、得られたものを300mm/分の巻き戻し速度で巻き戻した。巻き戻し時に多層共押出フィルムが断裂した場合を不良と評価し、巻き戻し時に多層共押出フィルムが断裂しなかった場合を優良と評価し、巻き戻し時に多層共押出フィルムが収縮した場合を良好と評価した。
【0038】
<フィルム生産性>
実施例及び比較例のそれぞれにおいて、多層フィルムを、3つのタイプの3つの層(A層/B層/A層)を含む押出Tダイ成形機で成形した。以下の押出温度条件:
A層:210℃
B層:200℃
ダイ温度:210℃
で成形を実施した。
成形材料をTダイからの共押出成形に供して一体化した。得られた多層フィルムを十分に固化させた後にロール状に巻回した。こうして巻回体を得た。
フィルム形成の開始から2時間以内にダイリップ部分に樹脂の粒子又は固体が見られなかった場合に、フィルム形成性/生産性を良好と評定した。粒子又は固体はフィルム厚さを不均一にし、つまりは外観を悪くするため、そうならないためには生産を止めて、ダイリップ部分を掃除しなければならない。
【0039】
<不織布及びホットメルト接着剤との剥離の評価>
実施例及び比較例のいずれか1つで得られた多層フィルムから作製されたそれぞれの積層体をその幅方向で25mmのサイズに切断し、50℃の状態で4週間貯蔵した。その後に、得られたものを引張試験機に50mmのチャック間距離でその長手方向において設置した。得られたものを300mm/分の引張速度で破断するまで伸長させた。その後に、伸び時に多層フィルムが不織布に対して剥離した場合を、100%伸長が起こらなかったと評価し、伸縮性積層体又は積層体が伸び時に剥離しなかった場合を、100%伸長が起こったと評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】