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特許7578613ガンを処置するための、ポリクローナル抗体と抗PD1又は抗PDL1抗体との組み合わせ
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  • 特許-ガンを処置するための、ポリクローナル抗体と抗PD1又は抗PDL1抗体との組み合わせ 図1
  • 特許-ガンを処置するための、ポリクローナル抗体と抗PD1又は抗PDL1抗体との組み合わせ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ガンを処置するための、ポリクローナル抗体と抗PD1又は抗PDL1抗体との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/02
A61P1/16
A61K45/00
C07K16/28
A61K39/395 V
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021564785
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061710
(87)【国際公開番号】W WO2020221723
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】19305556.3
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521475543
【氏名又は名称】ゼノセラ
【氏名又は名称原語表記】XENOTHERA
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デュヴォー,オディル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァノヴ,ベルナール
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/059161(WO,A1)
【文献】Current Oncology Reports,2018年,20:1,page 1-9,https://doi.org/10.1007/s11912-018-0738-2
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2014年,4, 4984,page 1-7 ,DOI: 10.1038/srep04984
【文献】HUMAN VACCINES & IMMUNOTHERAPEUTICS,2017年,13(5),pp.1112-1114,http://dx.doi.org/10.1080/21645515.2016.1276140
【文献】Oncotarget,2016年,7(28),pp.43039-43051
【文献】Journal of Immunological Methods,2019年12月,478,112720, page 1-8,https://doi.org/10.1016/j.jim.2019.112720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほ乳類患者におけるガンを予防しかつ/又は治療するのに使用するための、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、
組み合わせ医薬
【請求項2】
ポリクローナル抗体が、
-(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースからなる群において選択される第一の抗原決定基と、
-第1の抗原決定基とは異なり、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースからなる群において選択される第2の抗原決定基とを欠いている、請求項1記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項3】
ポリクローナル抗体が、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースの2つの抗原決定基を欠いている、請求項1又は2記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項4】
ポリクローナル抗体が、免疫グロブリンG(IgG)である、請求項1~3のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項5】
モノクローナル抗体が、抗PDL1抗体である、請求項1~4のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項6】
前記非ヒトほ乳類が、げっ歯類;ウサギ類;フェレット;ネコ科動物;イヌ科動物;ヤギ;ヒツジ;ウシ属動物;ブタ(swine);ラクダ科動物;ウマ並びに霊長類からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項7】
前記非ヒトほ乳類が、げっ歯類並びにウサギ類からなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項8】
前記ほ乳類患者が、げっ歯類;ウサギ類;フェレット;ネコ科動物;イヌ科動物;ヤギ;ヒツジ;ラクダ;ウシ属動物;ブタ(swine);アルパカ;ウマ;霊長類並びにヒトからなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項9】
前記ほ乳類患者が、ヒトである、請求項1~8のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項10】
ガン細胞が、膀胱ガン、乳ガン、結腸直腸ガン、腎臓ガン、肺ガン、リンパ腫、白血病、骨髄腫、メラノーマ、口腔又は中咽頭ガン、膵ガン、前立腺ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、腺様嚢胞ガン、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門ガン、虫垂ガン、胆管ガン、骨ガン、脳ガン、中枢神経系腫瘍、子宮頸ガン、食道ガン、眼ガン、眼瞼ガン、消化管ガン、HIV/AIDS関連ガン、涙腺ガン、喉頭ガン又は下咽頭ガン、白血病、肝ガン、髄膜腫、鼻咽頭ガン、卵巣ガン、卵管ガン、腹膜ガン、副甲状腺ガン、陰茎ガン、唾液腺ガン、肉腫、非メラノーマ皮膚ガン、小腸ガン、胃ガン、精巣ガン、胸腺腫及び胸腺ガン、膣ガン並びに外陰ガンからなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項11】
ガン細胞が、肝ガン由来である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項12】
ガン細胞が、非炎症性腫瘍(cold tumor)に由来する、請求項1~11のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項13】
前記非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体及び前記少なくとも1つのモノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体が、同じ組成物又は別個の組成物で、ほ乳類患者に投与される、請求項1~12のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項14】
記非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体とは異なる少なくとも1種の追加の抗ガン剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項15】
少なくとも1種の追加の抗ガン剤が、特に、抗CD137、抗CTLA4、抗TIM-3、抗B7-H3、抗CD134、抗CD154、抗LAG-3、抗CD227、抗BTNA3、抗CD39、抗CD73、抗CD115、抗SIRPアルファ、抗SIRPガンマ、抗CD28、抗NCR、抗NKp46、抗NKp30、抗NKp44、抗NKG2D及び抗DNAM-1モノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項14記載の使用のための組み合わせ医薬
【請求項16】
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、
組み合わせ医薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫学の分野に関し、とりわけ、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗PD1及び/又は抗PDL1抗体との組み合わせ並びにヒトへの医学におけるそれらの使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、ガンの処置におけるポリクローナル非ヒトほ乳類抗体と、モノクローナル抗PD1及び/又は抗PDL1抗体との、組み合わせの使用に関する。
【0003】
関連技術の説明
ガンは、世界中で第2位の死因であり、2018年に推定960万人の死亡の原因となっている。世界的には、世界中で約6人に1人の死亡が、ガンによるものである。この分野において、アクセス不能又は十分に活性でない処置が一般的である。このため、ガンを処置するための新規で改良された治療法を開発するための十分に認識された必要性が存在する。
【0004】
免疫療法は、非常に多くのガンの処置、特に、従来の治療法では現在効率的に治癒されないガンの処置において、現実の希望を表わす。この処置は、主に、腫瘍細胞に対するモノクローナル抗体の投与又はガンに対する免疫応答のチェックポイントのアクチベーター又はインヒビターに対するモノクローナル抗体の投与からなる。
【0005】
腫瘍に対する抗体(受動免疫療法)は、2つの補完的な方法
-補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)又は抗体依存性細胞貪食(ADCP)により、
-適応免疫応答の誘引により作用することができる。実際に、ターゲットのオプソニン化及び補体分子(C3a、C5a)の局所産生がTリンパ球の共刺激を活性化し、その生存率を上昇させることが実証されている(Strainic et al., Immunity, 2008 Mar;28(3):425-35を参照のこと)。このため、抗腫瘍抗体の受動的投与により、第1の工程として、第2の工程においてT細胞応答を容易にする補体からの因子の放出を生じさせることができる。
【0006】
しかしながら、患者の40人%~85%は、モノクローナル抗体の使用に基づく処置に抵抗性である。回避メカニズムは、免疫選択メカニズム、すなわち、免疫系により認識される抗原を失う腫瘍細胞の能力及び免疫崩壊機構(特定の寛容の誘引)を含む。免疫原性の低い腫瘍変異体の出現は、(固有のエピトープに特異的な)モノクローナル抗体の使用に基づく処置において特に有害である場合がある。
【0007】
したがって、腫瘍細胞上の異なるエピトープをターゲッティングするポリクローナル抗体の使用に基づく治療により、回避メカニズムを最小限にすることが可能となる場合がある。
【0008】
しかしながら、その潜在的な有効性にもかかわらず、ポリクローナル抗体は、特に、患者における高い毒性リスクのため、腫瘍の処置にはほとんど使用されていない。この毒性は、主に、多くの細胞表面抗原が、生物における多くの異なる細胞種において発現されるという事実に基づいている。この事実により、非ガン性細胞との主な交差反応性がもたらされる場合がある。この毒性は、動物免疫グロブリンに対するNeu5GC及びアルファ-1,3-ガラクトース炭水化物の表出とも関連しており、この場合、ヒトは、アレルギー、血清病疾患及び免疫複合体の形成に関連する強力な抗Neu5GC及び抗アルファ-1,3-ガラクトース免疫応答を誘発する。さらに、これらの架橋反応性は、生物における効率的な抗体を「希釈」すること、すなわち、実際のガンターゲットとは異なる部位に結合した著しい量の投与されたポリクローナル抗体集団の別の問題にも関連していた。ターゲッティングされた腫瘍における有効な抗体のこの損失により、患者へのより多量のポリクローナル抗体の投与が必要となり、これにより、当然、関連する毒性作用の悪化がもたらされた。
【0009】
このように、ガンを処置するための効果的で改善された治療法を提供し、有害作用を減少させるか又は有害作用を生じないことが、当技術分野において依然として必要とされている。
【0010】
モノクローナル抗体の使用に基づく処置に対する多くの腫瘍の抵抗性は、「非炎症性腫瘍」(Bonaventura et al, 2019; Front. Immunol.; 10; 168)、すなわち、様々な理由で、浸潤免疫細胞をほとんど含まず、特に浸潤T細胞をほとんど含まないため、免疫系から強い反応を引き起こさず、免疫療法による治療が非常に困難である腫瘍の存在からも生じる可能性がある。実際、この種の腫瘍では、治療用抗体、例えば、腫瘍の処置に一般的に使用される免疫チェックポイントをターゲッティングする治療用モノクローナル抗体に対する応答速度は、比較的低いままであるため、効果がない。
【0011】
このため、当技術分野において、非炎症性腫瘍の処置を可能にする有効な処置を提供する必要性が依然として存在する。
【0012】
また、当技術分野において、非炎症性腫瘍を「炎症性腫瘍(hot tumor)」、すなわち、上記説明されたように浸潤性T細胞を十分なレベル又はされに高レベルで含有する腫瘍に変える手段を提供する必要性も依然として存在する。
【0013】
当技術分野において、特に、免疫チェックポイントをターゲッティングするモノクローナル抗体に対する「非炎症性」腫瘍の抵抗性を、免疫細胞、特に、T細胞及び骨髄細胞、とりわけ、T細胞により浸潤されるこれらの腫瘍の能力を改善する、すなわち、向上させることにより低下させる手段を提供する必要性が依然として存在する。
【0014】
発明の概要
第1の態様によれば、本発明は、ほ乳類患者におけるガンを予防しかつ/又は治療するのに使用するための、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせに関する。
【0015】
本発明の組み合わせの非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体は、ほ乳類患者において予防され又は治療されるガンに対応するか又はさらにそれに属するガン細胞に対する。
【0016】
本発明者らにより、ガン、特に肝ガンに対するポリクローナル抗体をモノクローナル抗PDL1抗体と共にin vivoで併用投与すると、ターゲット腫瘍に対して予想外に高い効率が提供されることが初めて示された。特に、腫瘍の処置に対するこれらの活性物質の相乗作用が観察される。
【0017】
さらに、処置の数週間後、生存動物には、組織病理学的評価又は毒性評価による目に見える疾患の証拠は認められなかった(自己免疫が検出されない、すなわち、動物に苦痛、体重減少、着色(coloration)、脱毛又は下痢がない)。
【0018】
したがって、本発明者らは、ガンを処置するための新規で、有効で、改善された、非毒性の治療法を決定することに成功した。
【0019】
特定の実施態様では、本発明の組み合わせのポリクローナル抗体は、
-(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースからなる群において選択される第一の抗原決定基と、
-第1の抗原決定基とは異なり、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースからなる群において選択される第2の抗原決定基とを欠いている。
【0020】
とりわけ、ポリクローナル抗体は、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースの2つの抗原決定基を欠いていることができる。
【0021】
特定の実施態様では、ポリクローナル抗体は、免疫グロブリンG(IgG)である。
【0022】
更なる実施態様では、本発明の組み合わせのモノクローナル抗体は、抗PDL1抗体である。
【0023】
別の実施態様では、非ヒトほ乳類は、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット及びハムスター;ウサギ類、例えば、ウサギ;フェレット;ネコ科動物、例えば、ネコ;イヌ科動物、例えば、イヌ;ヤギ;ヒツジ;ウシ属動物、例えば、ウシ;ブタ(swine)、例えば、ブタ(pig)及びブタ(hog);ラクダ科動物;ウマ並びに霊長類からなる群より選択される。
【0024】
特に、前記非ヒトほ乳類は、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット及びハムスター並びにウサギ類、例えば、ウサギからなる群より選択することができる。
【0025】
とりわけ、前記非ヒトほ乳類は、ウサギ類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ及びウシ属動物からなる群より選択することができる。
【0026】
特定の実施態様では、ほ乳類患者は、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット及びハムスター;ウサギ類、例えば、ウサギ;フェレット;ネコ科動物、例えば、ネコ;イヌ科動物、例えば、イヌ;ヤギ;ヒツジ;ラクダ;ウシ属動物、例えば、ウシ;ブタ(swine)、例えば、ブタ(pig)及びブタ(hog);アルパカ;ウマ;霊長類並びにヒトからなる群より選択される。
【0027】
特に、前記ほ乳類患者は、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット及びハムスターからなる群より選択することができる。
【0028】
特に、前記ほ乳類患者は、ヒトであることができる。
【0029】
特定の実施態様では、ほ乳類患者は、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット及びハムスター並びにヒトからなる群より選択することができる。
【0030】
別の実施態様では、ガン細胞は、膀胱ガン、乳ガン、結腸直腸ガン、腎臓ガン、肺ガン、リンパ腫、白血病、骨髄腫、メラノーマ、口腔又は中咽頭ガン、膵ガン、前立腺ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、腺様嚢胞ガン、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門ガン、虫垂ガン、胆管ガン、骨ガン、脳ガン、中枢神経系腫瘍、子宮頸ガン、食道ガン、眼ガン、眼瞼ガン、消化管ガン、HIV/AIDS関連ガン、涙腺ガン、喉頭ガン又は下咽頭ガン、白血病、肝ガン、髄膜腫、鼻咽頭ガン、卵巣ガン、卵管ガン、腹膜ガン、副甲状腺ガン、陰茎ガン、唾液腺ガン、肉腫、非メラノーマ皮膚ガン、小腸ガン、胃ガン、精巣ガン、胸腺腫及び胸腺ガン、膣ガン並びに外陰ガンからなる群より選択される
【0031】
特に、ガン細胞は、肝ガン由来である
【0032】
特定の実施態様では、非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体及び少なくとも1つのモノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体は、同じ組成物又は別個の組成物、好ましくは、別個の組成物で、ほ乳類患者に投与される。
【0033】
別の実施態様では、本発明の組み合わせは、
-前記非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体及び
-モノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体とは異なる少なくとも1種の追加の抗ガン剤をさらに含む。
【0034】
特に、少なくとも1種の追加の抗ガン剤は、モノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体とは異なるモノクローナル抗体であることができる。
【0035】
特に、少なくとも1種の追加の抗ガン剤は、抗CD137、抗CTLA4、抗TIM-3、抗B7-H3、抗CD134、抗CD154、抗LAG-3、抗CD227、抗BTNA3、抗CD39、抗CD73、抗CD115、抗SIRPアルファ、抗SIRPガンマ、抗CD28、抗NCR、抗NKp46、抗NKp30、抗NKp44、抗NKG2D及び抗DNAM-1モノクローナル抗体からなる群より選択されるモノクローナル抗体であることができる。
【0036】
本発明の更なる目的は、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせに関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、ELISAにより測定された抗血清力価を示すグラフを表わす。血清をHepa1.6細胞系統(肝細胞ガン)由来のマウス腫瘍細胞で免疫化したウサギから取得し、連続希釈し、精製されたHepa1.6細胞と反応させる。血清を免疫前のウサギ(ウサギ-J0)、1回目の皮下注入の7日後(ウサギ-I1+7)及び2回目の皮下注入の7日後(ウサギ-I2+7)に収集した。縦軸:光学密度(DO 450nm)、横軸:収集された血清の連続希釈。左から右へ:1:20;1:60;1:180;1:540;1:1620;1:4860;1:14580;1:43740。
図2図2は、門脈動脈中に2.5.10個のHepa1.6細胞を注入した最日から30日間の間における、8週齢のC57/BL6J免疫コンピテントマウスにおいて測定された臨床スコアを表わす。異なる処理をHepa1.6細胞の注入の4日後(D4)に投与した。1の臨床スコアは、剛毛(bristly hairs)及びわずかに腫大した腹部を呈する動物に相当する。2の臨床スコアは、腫大した腹部及び顔面浮腫を呈する動物に相当する。3の臨床スコアは、腫大した腹部及び眼球突出を呈する動物に相当する。4の臨床スコアは、高度に腫大した腹部(直径>9cm)、衰弱、円背、隔離(個体の殺処分につながる)を呈する動物に相当する。4種類の処置群を形成した。第1の群(群1;n=7;対照)には、対照アイソタイプ(3G8:無関係なモノクローナル抗体(mAb)-アイソタイプIgG1)(8mg/kgを週2回、28日間)+ウサギの免疫前ポリクローナル抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。第2の群(群2;n=8;比較)には、対照アイソタイプ(3G8:無関係なモノクローナル抗体(mAb)-アイソタイプIgG1;8mg/kgを週2回、28日間)+免疫化ウサギの血清から単離されたポリクローナル抗Hepa1.6細胞抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。第3の群(群3;n=8)には、モノクローナル抗PDL-1抗体(8mg/kgを週2回、28日間)+免疫化ウサギの血清から単離されたポリクローナル抗Hepa1.6細胞抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。第4の群(群4;n=7;比較)には、モノクローナル抗PDL-1抗体(8mg/kgを週2回、28日間)+ウサギの免疫前ポリクローナル抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。得られた平均臨床値をグラフに示す。縦軸:臨床スコア、横軸:日数。
図3図3は、門脈動脈中に2.5.10個のHepa1.6細胞を注入した4日後に行った処置の最日から50日間の間における、8週齢のC57/BL6J免疫コンピテントマウスの生存率を表わす。表わされた群1、群2、群3及び群4は、図2において定義されたものと同じ群である。縦軸:生存率、横軸:日数。
図4図4は、腫瘍生検にCD3+T細胞(第一のライン)又はLY6G+骨髄細胞(第二のライン)のいずれかを明らかにすることにより得られた免疫組織学的結果を表わす。前記腫瘍は、Balb/CマウスにB16F10メラノーマ細胞を皮下移植することにより得られる。2つの群は、以下のような関係を有する。-群1(対照pAb;n=7)には、ウサギの免疫前ポリクローナル抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。-群2(抗B16 pAb;n=8)には、マウスB16F10メラノーマ細胞で免疫化されたウサギから得られた抗腫瘍ポリクローナル抗体のIgG分画を4日目(D4)から30日目(D30)まで週2回(12.5mg/kgを週2回)注入して受けさせた。
【0038】
発明の詳細な説明
1.定義
本発明をより完全に理解するために、幾つかの定義を以下で説明する。このような定義は、文法的同等物を包含することを意味する。
【0039】
「抗体」という用語は、本明細書において最も広い意味で使用される。「抗体」は、免疫グロブリンの(i)Fc領域及び(ii)可変領域に由来する結合性ポリペプチドドメインを少なくとも含む任意のポリペプチドを指す。このため、抗体は、全長免疫グロブリン、抗体、抗体コンジュゲート及びそれぞれのフラグメントそれぞれを含むが、これらに限定されない。「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0040】
「抗体」という用語は、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び/又は(ii)α-1,3-ガラクトースを含む群において選択される抗原決定基を含むことができ又はそれらを欠いていることができ、特に、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースの2つの抗原決定基を含むことができ又はそれらを欠いていることができ、上記言及されたポリペプチドを包含する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「ポリクローナル抗体」は、所定の抗原及び/又は細胞の異なるエピトープを認識する抗体の混合物を意味する。ポリクローナル抗体は、ほ乳類生物、特に、非ヒトほ乳類生物に由来する体液、特に、血清又は血漿に含まれるか又は代替的にはそれらに由来するものを包含する。
【0042】
ヒト免疫グロブリンの場合、軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖と分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンと分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「IgG」は、認識されている免疫グロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされる抗体クラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトにおいて、IgGは、サブクラス又はアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。マウスにおいて、IgGは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。全長IgGは、2つの免疫グロブリン鎖の2つの同一のペアからなり、各ペアは、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVL及びCLを含み、各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、Cγ1(CH1とも呼ばれる)、Cγ2(CH2とも呼ばれる)及びCγ3(CH3とも呼ばれる)を含む。
【0044】
本発明の「生理学的に許容し得る媒体」は、投与される化合物の治療特性を保持しながら、処置されるほ乳類患者に生理学的に許容し得る担体又は賦形剤を意味する。1つの例示的な薬学的に許容し得る媒体は、生理食塩水である。本発明の場合における他の生理学的に許容し得る媒体は、当業者に公知である。
【0045】
本明細書で使用する場合、「抗体依存性細胞媒介性傷害」(又はADCC)は、免疫系のエフェクター細胞が特異的抗体に結合したターゲット細胞を能動的に溶解する、細胞媒介性免疫のメカニズムを指す。ADCCは、ほとんどがNK細胞により媒介されるが、他の免疫細胞、例えば、好中球及び好酸球によっても媒介される。典型的には、ADCCは、NK細胞の活性化により生じる。NK細胞の活性化には、そのFcレセプターがターゲット細胞の表面に存在する抗原に結合したIgGのFc領域に結合することが関与する。このような相互作用は、NK細胞によるサイトカイン及び細胞傷害性顆粒の放出を誘引する。ADCCを誘引する抗体の能力を評価するために、de Romeuf et al. Br J Haematol. 2008 Mar;140(6):635-43に記載されているようなアッセイを行うことができる。
【0046】
本明細書で使用する場合、本明細書において非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体に適用された「抗原決定基」(又はエピトープ)は、抗原性タンパク質及び抗原性炭水化物を含む抗原性分子の構造成分を意味し、同じ又は関連する抗原により誘発される抗体分子とのその特異的相互作用を担う。拡大解釈すれば、本明細書において非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体に適用された「抗原決定基」という用語は、本明細書において、同じ又は関連する抗原により誘発される抗体分子により認識されやすい複数のエピトープを含む抗原性分子にもまとめて使用される。例示的に、抗原性分子であるN-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)を本明細書において「抗原決定基」と呼ぶことができるが、前記抗原性分子は、Neu5Gc又はNeu5Gc含有分子により誘発される抗体により認識される2つ以上のエピトープを含有する場合がある。
【0047】
血液において、「血清」は、細胞(白血球及び赤血球)及び凝固因子が除去された血漿由来成分である。血清は、血液凝固(凝固)に使用されない全てのタンパク質及び全ての電解質、抗体、抗原、ホルモン並びに最終的には任意の外因性の物質(例えば、薬剤及び微生物)を含む。
【0048】
「悪性細胞」、「ガン細胞」及び「腫瘍細胞」という用語は、本明細書において互換的に使用することができる。本明細書で使用する場合、「腫瘍細胞」は、in vivoで自律的に過剰増殖する細胞を指す。腫瘍細胞の例は、(1)肉腫、例えば、骨肉腫及び軟部組織肉腫、(2)ガン、例えば、乳ガン、肺ガン、膀胱ガン、甲状腺ガン、前立腺ガン、結腸ガン、結腸直腸ガン、膵臓ガン、胃ガン、肝ガン、子宮ガン、子宮頚ガン及び卵巣ガン、(3)リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、(4)神経芽腫、(5)メラノーマ、(6)骨髄腫、(7)ウィルムス腫瘍、(8)白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)、(9)グリオーマ並びに(10)網膜芽細胞腫を含む。
【0049】
本明細書で使用する場合、「ガン」という用語は、細胞の制御されていない異常な増殖を意味し、その範囲内に、細胞の制御されていない異常な増殖により生じる全ての周知の疾患を含む。一般的なガンの非限定的な例は、膀胱ガン、乳ガン、卵巣ガン及び胃ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、子宮内膜ガン、頭頸部ガン、肺ガン、メラノーマ、多発性骨髄腫、白血病(例えば、骨髄性、リンパ性、骨髄球性及びリンパ芽球性白血病)、非ホジキンリンパ腫、前立腺ガン、直腸ガン、悪性メラノーマ及び特に、膵ガンを含む。
【0050】
特に、本発明のガン細胞は、膀胱ガン、乳ガン、結腸直腸ガン、腎臓ガン、肺ガン、リンパ腫、メラノーマ、口腔又は中咽頭ガン、膵ガン、前立腺ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、腺様嚢胞ガン、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門ガン、虫垂ガン、胆管ガン、骨ガン、脳ガン、中枢神経系腫瘍、子宮頸ガン、食道ガン、眼ガン、眼瞼ガン、消化管ガン、HIV/AIDS関連ガン、涙腺ガン、喉頭ガン又は下咽頭ガン、白血病、肝ガン、髄膜腫、鼻咽頭ガン、卵巣ガン、卵管ガン、腹膜ガン、副甲状腺ガン、陰茎ガン、唾液腺ガン、肉腫、非メラノーマ皮膚ガン、小腸ガン、胃ガン、精巣ガン、胸腺腫及び胸腺ガン、膣ガン並びに外陰ガンからなる群より選択されるガンに含まれる細胞であることができる。
【0051】
特定の実施態様では、本発明のガン又は腫瘍は、非炎症性腫瘍である。「非炎症性腫瘍」は、「非炎症性(non-inflamed)」腫瘍、すなわち、T細胞が浸潤しないことを特徴とする腫瘍を指すのに一般的に使用される用語である。これらは、適応免疫応答が設定され又は維持されないために困難であることが一般的に公知の腫瘍である。それらは、「炎症性(hot)腫瘍」又は「炎症性(inflamed)腫瘍」とは反対である。炎症性腫瘍は、それらに対する適応応答を誘発するのに十分な量でT細胞が浸潤する腫瘍である。
【0052】
特に、非炎症性腫瘍は、膀胱ガン、乳ガン、結腸直腸ガン、腎臓ガン、肺ガン、リンパ腫、メラノーマ、口腔又は中咽頭ガン、膵ガン、前立腺ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、腺様嚢胞ガン、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門ガン、虫垂ガン、胆管ガン、骨ガン、脳ガン、中枢神経系腫瘍、子宮頸ガン、食道ガン、眼ガン、眼瞼ガン、消化管ガン、HIV/AIDS関連ガン、涙腺ガン、喉頭ガン又は下咽頭ガン、白血病、肝ガン、髄膜腫、鼻咽頭ガン、卵巣ガン、卵管ガン、腹膜ガン、副甲状腺ガン、陰茎ガン、唾液腺ガン、肉腫、非メラノーマ皮膚ガン、小腸ガン、胃ガン、精巣ガン、胸腺腫及び胸腺ガン、膣ガン並びに外陰ガンからなる群より選択することができる。
【0053】
2.本発明の組み合わせ
上記言及された目的に応える観点から、特に、その改善された効率が処置された生物におけるいかなる観察可能な毒性とも関連しない、ガンに対する新規な処置を提供するために、本発明者らは、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせに想到した。
【0054】
本発明の抗PD1モノクローナル抗体は、例えば、Nivolumab、Pembrolizumab及びCemiplimabからなる群より選択することができる。
【0055】
本発明の抗PDL1モノクローナル抗体は、例えば、Atezolizumab、Avelumab及びDurvalumabからなる群より選択することができる。
【0056】
好ましい実施態様では、本発明の組み合わせのモノクローナル抗体は、抗PDL1抗体である。
【0057】
本発明の組み合わせは、ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体をさらに含む。
【0058】
ポリクローナル抗体は、同じガン細胞に対するものである。すなわち、それらは全て、同じガン細胞の表面に存在する異なる又は同一の抗原に由来する異なるエピトープをターゲッティングする。
【0059】
本発明のポリクローナル抗体を、
a)目的のガン細胞に対して非ヒトほ乳類を免疫化する工程と、
b)工程a)の前記非ヒトほ乳類の体液中に含まれる抗体を収集する工程とを含む方法を使用して得ることができる。
【0060】
目的のガン細胞に対して非ヒトほ乳類を免疫化する工程は、前記細胞を非ヒトほ乳類に注入することからなる。
【0061】
細胞に対する非ヒトトランスジェニックほ乳類の良好なレベルの免疫化を得るためのプロトコールは、特に、EP第0335804号に記載されている。
【0062】
このようなプロトコールは、特に、ウサギ、ウマ又はブタ、好ましくは、ブタ等の動物を公知の方法に従って、ガン細胞の反復投与により免疫化することからなる。
【0063】
例えば、アジュバントの有無において、毎回4.10~10個の細胞を静脈内又は皮下に、少なくとも1週間隔で投与する数回の投与を行う。最後の免疫化の約1週間後、血清を免疫化動物から収集し、公知の方法に従って単離する。
【0064】
抗体を収集する工程は、例えば、目的の抗体が収集される免疫化された非ヒトほ乳類の血液流体の一部の除去からなることができる。
【0065】
特定の実施態様によれば、前記体液を、血漿及び血清を含む群において選択することができる。
【0066】
血液流体、とりわけ、血漿又は血清を得るためのプロトコールは、当業者の一般的な知識の範囲内である。
【0067】
好ましい実施態様によれば、上記言及されたように、本発明のポリクローナル抗体を得るための方法は、前記体液からポリクローナル抗体を精製する工程をさらに含むことができる。
【0068】
前記精製工程は、免疫化された非ヒトほ乳類による、対応する汚染抗体の形成を伴う可能性がある種々の細胞汚染物質の体液内での存在に関連する可能性のある望ましくない副作用を顕著に克服することが可能となる点で有利である。
【0069】
また、前記精製工程は、所望の純度を有するポリクローナル抗体を得ることが可能となる点でも有利である。
【0070】
前記精製工程は、当業者の一般的な知識の範囲内である。また、任意の従来の精製プロトコールの全ての可能性のある適応も、当業者の一般的な知識の範囲内である。
【0071】
目的のこれらのポリクローナル抗体を精製するのに適した方法としては、抗原、プロテインG又はプロテインAに結合した親和性支持体、例えば、ProteoGenix, Cell Biolabs, Inc.もしくはCliniSciences社により商業化されているか又はさらにEP第1601697号、JP第7155194号もしくはUS第6,870,034号に開示されているものにより抗体を精製するための方法を挙げることができる。
【0072】
また、血液流体から目的の抗体を選択的に固定するための親和性支持体も挙げることができる。この親和性支持体は、血液流体から前記目的の抗体に特異的に結合する固定化アプタマーを有する固体支持体材料を含む。このような方法は、特に、WO第2010/094901号に開示されている。
【0073】
特定の実施態様によれば、本発明のポリクローナル抗体は、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースを含む群において選択される第1の抗原決定基を欠いている。
【0074】
特定の実施態様によれば、ポリクローナル抗体は、第1の抗原決定基とは異なる第2の抗原決定基をさらに欠いていることができ、ここで、前記第2の抗原決定基は、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースを含む群において選択される。
【0075】
したがって、ポリクローナル抗体は、(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースの2つの抗原決定基を欠いていることができる。
【0076】
これらの抗原決定基を欠いているポリクローナル抗体は、それらを含むポリクローナル抗体と比較して、ヒトにおいて低下した免疫原性特性を有すると考えられる。
【0077】
当技術分野において、Neu5Gcが、ヒトにおいて免疫原性であることが公知である(Noguchi A. et al., J. Biochem. Tokyo (1995), 117(1): 59-62)。さらに、動物の免疫グロブリン注入後に重度の免疫複合体(IC)を発症した患者は、ほとんどがNeu5Gcエピトープに対して発現する抗体が高まることが公知である(Merrick JM et al., Int. Allergy Appl. Immunol., 1978, Vol. 57: 477-480;Aggarwal S.et al., Nat Biotechnol. 2008;26:1227-1233;Arnold JN et al., Annu Rev Immunol. 2007;25:21-50;Durocher Y et al., Curr Opin Biotechnol. 2009;20:700-707;Higgins E et al., Glycoconj. J. 2009)。
【0078】
また、当技術分野において、酵素であるα1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1,3GT又はGGTA1)により、α1,3-ガラクトース(α1,3Gal)エピトープ(Galα1、3Galβ1、4GlcNAc-R)が合成され、α1,3-ガラクトースが、ブタからヒトへの異種移植において超急性拒絶反応を引き起こす主な異種抗原であることも公知である。
【0079】
これらの実施態様によれば、本発明のポリクローナル抗体は、
a)(i)機能性シチジン-5’-モノホスファートN-アセチルノイラミン酸ヒドロラーゼ(CMAH)をコードする遺伝子及び(ii)機能性α-(1,3)-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含む群において選択された第一の遺伝子を欠いている遺伝的に改変された非ヒトほ乳類を提供する工程と、
b)前記遺伝的に改変された非ヒトほ乳類をヒト細胞に対して免疫化する工程と、
c)工程b)の前記遺伝的に改変された非ヒトほ乳類の体液中に含まれる抗体を収集する工程とを含む方法を使用して得ることができる。
【0080】
好ましくは、前記遺伝的に改変された非ヒトほ乳類は、CMAH及び/又はGGTA1ノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類(又はCMAH及び/もしくはGGTA1 KO非ヒトほ乳類)であり、CMAH及びGGTA1ダブルノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類を含む。
【0081】
本明細書で使用する場合、「ノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類」は、検討される遺伝子の1つ以上のアレルの機能が例えば、相同組換え又は他の挿入もしくは欠失により改変されている、非ヒトトランスジェニックほ乳類からなる。
【0082】
特定の実施態様では、この遺伝子は破壊される。「破壊された遺伝子」は、遺伝コードの一部が改変されることにより、遺伝コードのそのセグメントの転写及び/又は翻訳が影響を受ける、例えば、ノックアウト技術により又は所望のタンパク質に対する追加の遺伝子の挿入もしくは既存の配列の転写をモデュレーションするレギュラトリー配列の挿入により、コードのそのセグメントを読めなくすることを意味する。
【0083】
一部の実施態様では、非ヒトトランスジェニックほ乳類の全ての細胞が、破壊された遺伝子を含む。
【0084】
特定の実施態様では、ノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類は、検討される遺伝子の1つ以上のアレルが非機能的にされている、非ヒトトランスジェニックほ乳類である。
【0085】
一部の実施態様では、検討される遺伝子の両アレルが、非機能的にされる。このような実施態様は、一般的に「遺伝子ノックアウト」、「遺伝子ノックイン」と呼ばれるもの及びこのような遺伝子を非機能性にする、ネイティブな検討される遺伝子の1つ以上のネイティブなアレルの任意の他の改変を含む。このような非ヒトトランスジェニックほ乳類は、本発明のポリクローナル抗体を産生するための供給源として有用であることができる。
【0086】
(i)機能性シチジン-5’-モノホスファートN-アセチルノイラミン酸ヒドロラーゼをコードする遺伝子及び/又は(ii)機能性α-(1,3)-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含む群において選択された遺伝子を欠いている遺伝的に改変された非ヒトほ乳類を得るための方法は、当業者の一般的な知識の範囲内である。
【0087】
CMAHノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類を得るための方法は、特に、WO第2006/133356号に記載されている。この文献には、とりわけ、ヒトへの使用のためのN-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)を欠いている動物製品を製造するための方法が開示されている。この方法は、機能性シチジン-5’-モノホスファートN-アセチルノイラミン酸ヒドロラーゼ(CMAH)遺伝子を欠いている遺伝的に改変された非ヒトほ乳類を準備する工程と、この遺伝的に改変された非ヒト動物から少なくとも1つの動物製品を取り出す工程とを含む。
【0088】
GALノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類を得るための方法は、当業者の一般的な知識の範囲内である(Cooper DK et al., Genetically engineered pigs, Lancet 1993, 342: 682;Lai L et al., Science 2002, 295: 1089;Sachs DH et al., Current Opinion in Organ Transplantation, 2009, 14:148-153)。
【0089】
GALノックアウト非ヒトトランスジェニックほ乳類を得るための方法は、特に、US第7,547,816号に記載されている。
【0090】
当技術分野において公知であるように、ほ乳類細胞、特に、ガンほ乳類細胞に対する抗体を、目的のガン細胞を含む免疫原性組成物の投与により非ヒトほ乳類を免疫することにより容易に得ることができる。
【0091】
(i)N-グリコールノイラミン酸(Neu5Gc)及び(ii)α-1,3-ガラクトースを含む群において選択される第1の抗原決定基を欠いている本発明のこれらの特定の形態のポリクローナル抗体を特定し又は特徴付けることを意図する方法は、当業者の一般的な知識の範囲内である。
【0092】
本発明のこのような特定のポリクローナル抗体を特定し又は特徴付けるために当業者により使用することができる方法は、抗Neu5Gc抗体及び/又は抗Gal抗体が検出分子として使用される酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。
【0093】
Neu5Gc抗原決定基の欠如を評価するための抗Neu5Gc抗体として、Sialix, Inc.社により商業化されているGc-Free Basic Kitを挙げることができる。
【0094】
α-1,3-ガラクトース抗原決定基の欠如を実証するための抗Gal抗体としては、Jianq-Qiang Wang et al.(J. Am. Chem. Soc.,1999,121: 8181)に開示されているプロトコール又はSigma-Aldrich社によりWH0051083M1 Sigmaの名称で商業化されているものを考慮することができる。
【0095】
特に、本発明の組み合わせは、
-前記非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体及び
-モノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体とは異なる少なくとも1種の追加の抗ガン剤をさらに含む。
【0096】
とりわけ、少なくとも1種の追加の抗ガン剤は、モノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体とは異なるモノクローナル抗体であることができる。
【0097】
特に、少なくとも1種の追加の抗ガン剤は、抗CD137、抗CTLA4、抗TIM-3、抗B7-H3、抗CD134、抗CD154及び抗LAG-3、抗CD227、抗BTNA3、抗CD39、抗CD73、抗CD115、抗SIRPアルファ、抗SIRPガンマ、抗CD28、抗NCR、抗NKp46、抗NKp30、抗NKp44、抗NKG2D及び抗DNAM-1モノクローナル抗体からなる群より選択されるモノクローナル抗体であることができる。
【0098】
3.本発明の医療的使用
上記言及されたように、本発明は、その態様のうちの1つに従って、ほ乳類患者におけるガンを予防しかつ/又は治療するのに使用するための、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせに関する。
【0099】
これらのポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、本明細書全体を通して記載される。
【0100】
前述のように、本発明の組み合わせの非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体は、ほ乳類患者において予防され又は治療されるガンに対応するか又はさらにそれに属するガン細胞に対する。
【0101】
上記言及されたような必要性を有する患者を処置するために、治療上有効用量の本発明の組み合わせを投与することができる。
【0102】
本明細書において「治療上有効用量」は、それが投与される効果を生じる用量を意味する。正確な用量は、処置の目的により決まり、公知の技術を使用して当業者により確認されるであろう。
【0103】
投与量は、体重1kgあたりに0.001~100mg(mg/kg)以上、例えば、0.1、1.0、10又は50mg/kg 体重 本発明のポリクローナル抗体の範囲であることができる。特に、投与量は、0.1~100mg/kg又はとりわけ、1~10mg/kg 本発明のポリクローナル抗体の範囲であることができる。
【0104】
また、投与量は、体重1kgあたりに0.001~100mg(mg/kg)以上、例えば、0.1、1.0、10又は50mg/kg 体重 本発明の抗PD1及び/又は抗PDL1モノクローナル抗体の範囲であることもできる。特に、投与量は、0.1~100mg/kg又はとりわけ、1~10mg/kg 本発明の抗PD1及び/又は抗PDL1モノクローナル抗体の範囲であることができる。
【0105】
投与の用量及び頻度をより良好な寛容のために、ホスト応答及び注入の頻度に応じて適合させることができる。
【0106】
例示の目的のみのために、本発明の組み合わせの投与の頻度は、5~15連続日間の毎日の投与であることができる。
【0107】
当技術分野において公知のように、タンパク質分解、全身送達対局所送達並びに年齢、体重、全身健康、性別、食事、投与のタイミング、薬剤相互作用及び状態の重症度に対する調節が必要である場合があり、当業者による日常的な試行錯誤により容易に決定される。
【0108】
本発明の組み合わせの投与を、経口、皮下、静脈内、非経口、鼻腔内、皮質内、眼内、直腸、膣、経皮、局所(例えば、ゲル剤)、腹腔内、筋肉内、肺内又は髄腔内を含むが、これらに限定されない各種の方法で行うことができる。
【0109】
特定の実施態様では、本発明の組み合わせは、静脈内又は非経口経路による投与に適した形態にある。
【0110】
上記言及されたように、本発明は、ほ乳類患者におけるガンを予防しかつ/又は治療するのに使用するための、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせに関する。
【0111】
ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体並びに抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体を1つの同じ組成物内で組み合わせることができ又は同時にもしくは連続して投与することができる別個の組成物の形態で使用することができる。
【0112】
特定の実施態様では、ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体並びに抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体は、別個の組成物で投与される。
【0113】
ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体並びに抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体が、別個の組成物で投与される場合、この組成物をほ乳類患者に、同じ経路又は異なる経路を通して、同時に又は別個に投与することができる。
【0114】
同時とは、該組成物は同じ瞬間に又は同じ日の内もしくは数日間に投与することができると理解される。
【0115】
別個にとは、該組成物を少なくとも数日、例えば、少なくとも2日間の差で投与することができると理解される。
【0116】
一部の実施態様では、本発明のポリクローナル抗体の組成物並びに抗PD1及び/又は抗PDL1モノクローナル抗体の組成物は、液体形態にある。
【0117】
一部の実施態様では、本発明のポリクローナル抗体の組成物並びに抗PD1及び/又は抗PDL1モノクローナル抗体の組成物は、凍結乾燥形態を含む固体形態にある。
【0118】
これらの組成物を標準的な方法、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(Lippincott Williams & Wilkins; Twenty first Edition, 2005)に記載されている方法に従って製剤化することができる。
【0119】
上記言及された組成物は、生理学的/薬学的に許容し得る媒体/賦形剤を含む。「生理学的に許容し得る」及び「薬学的に許容し得る」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0120】
使用することができる薬学的に許容し得る賦形剤又は媒体は、特に、Handbook of Pharmaceuticals Excipients, American Pharmaceutical Association(Pharmaceutical Press; 6th revised edition, 2009)に記載されている。
【0121】
本発明の組み合わせを例えば、低分子、他の生物学的製剤、放射線療法、外科手術等を含む、上記言及された追加の抗ガン剤とは異なり、
-前記非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-モノクローナル抗PD1又は抗PDL1抗体とも異なる他の治療法又は治療剤と共に投与することができる。
【0122】
特定の実施態様によれば、本発明の組み合わせは、他の治療剤として、少なくとも1種の免疫サプレッション剤、例えば、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤(アザチオプリン、メトトレキサート)、免疫フィリンに作用する抗体又は薬剤(シクロスポリン、タクロリムス、ラパミシン)をさらに含むことができる。
【0123】
これらの他の治療剤をほ乳類患者に、ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体又は抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と同じ組成物又は別個の組成物で投与することができる。
【0124】
特に、これらの他の治療剤は、ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体又は抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体とは別個の組成物で投与される。
【0125】
特定の実施態様では、本発明は、ほ乳類患者におけるガンを予防しかつ/又は治療するための医薬の製造のための、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせの使用に関する。
【0126】
別の実施態様では、本発明は、ほ乳類患者におけるガンの予防及び/又は治療のための方法であって、前記ほ乳類患者に、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせを投与することを含む、方法に関する。
【0127】
また、本発明は、医薬として使用するための、
-ガン細胞に対する非ヒトほ乳類ポリクローナル抗体と、
-抗PD1及び抗PDL1モノクローナル抗体からなる群より選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との、組み合わせに関する。
【0128】
本発明を以下の実施例によりさらに例証する。
【0129】
実施例
実施例1:ウサギをガン細胞系統で免疫化することにより得られるポリクローナル抗体のELISA制御
ウサギをマウス腫瘍細胞系統Hepa1.6(肝細胞ガン)由来の細胞により免疫化し、対応する抗腫瘍ポリクローナル抗体を得る。
【0130】
前記腫瘍細胞を2週間の間隔をおいて2回皮下注射する。
【0131】
血清を、ウサギを免疫化するのに使用された腫瘍細胞を認識する抗体の能力を試験するために、免疫化前のウサギ(ウサギ-J0)、1回目の皮下注入の7日後(ウサギ-I1+7)及び2回目の皮下注入の7日後(ウサギ-I2+7)に、実際に収集する。
【0132】
とりわけ、免疫化ウサギの抗体応答を、ウサギを免疫化するのに使用されたHepa1.6細胞に基づく細胞ELISA試験を使用して測定する。収集された血清をPBS-0.05% ウシ血清アルブミン中に1:20;1:60;1:180;1:540;1:1620;1:4860;1:14580;1:43740で連続希釈し、室温で2時間インキュベーションする。遠心分離及び細胞を吸引しないように注意しながらELISAプレートを洗浄した後、ペルオキシダーゼラベルヤギ抗ウサギ抗体(1/1000希釈)を加え、1時間インキュベーションし、再度洗浄する。ついで、TMB 50マイクロリットルを加え、暗所で15分間インキュベーションする。HCL 10マイクロリットルを加えた後、光学濃度を450nmで読み取る。
【0133】
結果を図1に表わす。
【0134】
コメント
2回目の注入後、収集された血清中で得られたポリクローナル抗体は、目的のターゲット腫瘍細胞を効率的に認識することが分かる。
【0135】
実施例2:同系かつ同所性マウスモデルにおける収集されたポリクローナル抗体のin vivo使用
Gauttier et al., Int J Cancer. 2014 Dec 15;135(12):2857-67に記載されているHepa1.6肝細胞ガンマウスモデルを使用した。
【0136】
このモデルは、免疫コンピテントC57/BL6Jマウスにおいて同系と同所性との両方である。
【0137】
PBS中に再懸濁させた2.5.10個のHepa1.6細胞を8週齢のオスマウスの門脈に注する。これにより、処置されなかった場合には、肝高血圧に至り、12~15日後には動物が死に至る。
【0138】
異なる処置を4日後(D4)に投与した。
【0139】
第1の群(群1;n=7;対照)には、対照アイソタイプ(3G8:無関係なモノクローナル抗体(mAb)-アイソタイプIgG1)(8mg/kgを週2回、28日間)+ウサギの免疫前ポリクローナル抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。
【0140】
第2の群(群2;n=8;比較)には、対照アイソタイプ(3G8:無関係なモノクローナル抗体(mAb)-アイソタイプIgG1;8mg/kgを週2回、28日間)+免疫化ウサギの血清から単離されたポリクローナル抗Hepa1.6細胞抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。
【0141】
第3の群(群3;n=8)には、モノクローナル抗PDL-1抗体(8mg/kgを週2回、28日間)+免疫化ウサギの血清から単離されたポリクローナル抗Hepa1.6細胞抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。
【0142】
第4の群(群4;n=7;比較)には、モノクローナル抗PDL-1抗体(8mg/kgを週2回、28日間)+ウサギの免疫前ポリクローナル抗体(20mg/kgを週2回、28日間)を受けさせた。
【0143】
使用されたポリクローナル抗体は、実施例1に従って得られ、プロテインA上での親和性カラムを含む当業者に周知の方法を使用してウサギ血清から精製されたIgG抗体に対応する。
【0144】
これらの処置後に、異なる群の臨床スコアを腫瘍細胞注入後30日間にわたって観察する。
【0145】
得られた結果を図2に表わす。
【0146】
0~4の臨床スコアは下記のとおりである。
【0147】
1の臨床スコアは、剛毛及びわずかに腫大した腹部を呈する動物に相当する。2の臨床スコアは、腫大した腹部及び顔面浮腫を呈する動物に相当する。3の臨床スコアは、腫大した腹部及び眼球突出を呈する動物に相当する。4の臨床スコアは、高度に腫大した腹部(直径>9cm)、衰弱、円背、隔離(動物の殺処分につながる)を呈する動物に相当する。
【0148】
コメント
予想されたように、対照非処置群1では、全てのマウスが細胞の注入後15日までに死んだ(図3に表わす)。
【0149】
観察された結果は、上記言及されたように得られた精製ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗PDL1抗体のいずれかの投与に対応する群2及び群4について同様である。これら2つの別々の処置により、25日後に臨床スコアが約3に低下する。
【0150】
対照的に、本発明のポリクローナル抗体と抗PDL1モノクローナル抗体との組み合わせにより処置された群3の動物では、相乗効果が観察される。それらが、30日目(実験の終了)まで、0~1の臨床スコアを維持するためである。
【0151】
驚くべきことに、この実験を過ぎて数日間の群3のマウスの注意深い観察では、いかなる毒性、特に、いかなる自己免疫徴候(すなわち、動物に苦痛、体重減少、着色、脱毛又は下痢がない)も観察することができなかった。
【0152】
実施例3:本発明のポリクローナル抗体により非炎症性腫瘍の炎症性腫瘍への変換が可能となる
ウサギをマウスB16F10メラノーマ細胞により免疫化して、対応する抗腫瘍ポリクローナル抗体を得る。
【0153】
B16F10メラノーマ細胞系統は、例えば、抗PDL1抗体に抵抗性であるため、「非炎症性」腫瘍の良好な例であることが公知である。この場合、このような抗体は、腫瘍の退行に対して非常に限定された効果しか有さない(Chen et al., Cancer Immunol res. 2014; 3(2):149-60;Ueha et al., 2015; 3(6):631-40)。
【0154】
B16F10細胞に対して生じたウサギ由来のこれらのポリクローナル抗体のIgG分画を、B16F10メラノーマ細胞を皮下移植した(D0)Balb/Cマウス(群2-n=8)に、4日目(D4)から30日目(D30)まで週2回(12.5mg/kgを週2回)注入する。
【0155】
B16F10メラノーマ細胞を皮下移植した対照群(群1-n=7)の動物にも、ウサギの免疫前ポリクローナル抗体(20mg/kgを週2回、28日間)のみを受けさせた。
【0156】
腫瘍生検を採取し、(群2について)細胞の注入の30日後又は群1について前記注入の18日後(この群の個体は全て死んでいるため)に免疫組織学により分析する。
【0157】
CD3+ T細胞及びLY6G+骨髄細胞を図4に示されたように明らかにする。
【0158】
T細胞及び骨髄細胞による顕著に高い浸潤が、前記腫瘍に対する本発明のポリクローナル抗体を受けさせた動物の腫瘍において観察される。
【0159】
このため、本発明のポリクローナル抗体により、CD3+ T細胞及び骨髄性免疫細胞の腫瘍床への浸潤が誘引されたことが分かる。
【0160】
したがって、それにより、公知の「非炎症性」腫瘍が「炎症性」腫瘍に変換され、それにより、抗PD1/抗PDL1が、現在腫瘍に接近しているT細胞を腫瘍細胞が不活性化するのを防き、それにより、免疫系が腫瘍に対して完全な力で働くのを可能にするのにおけるそれらの役割を効率的に果たすことが可能となる。
図1
図2
図3
図4