(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】脂質制御放出組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/14 20170101AFI20241029BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241029BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241029BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20241029BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20241029BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/04
A61K47/20
A61K47/22
A61K38/02
A61K38/12
A61M5/28
A61M5/31 530
(21)【出願番号】P 2021569162
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2020065073
(87)【国際公開番号】W WO2020240017
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-09
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】505345749
【氏名又は名称】カムルス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チベルグ、フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】ニスター、カタリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヘメルリーン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ウィックラマナヤケ、プリヤンガ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520090(JP,A)
【文献】特表2008-542437(JP,A)
【文献】特開2014-169244(JP,A)
【文献】Barthelemy DEMEULE et al.,“Characterization of Particles in Protein Solutions: Reaching the Limits of Current Technologies”, The AAPS Journal,2010年10月16日,Vol. 12, No. 4,p.708-715,DOI: 10.1208/s12248-010-9233-x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61M 5/31
A61K 38/02
A61K 38/12
A61M 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジであって、前記ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジの少なくとも内部表面は、前記脂質をベースとする予備製剤と接触しており、前記内部表面は、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を伴わず、前記脂質をベースとする予備製剤は、
a)20~80重量%の、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール;
b)20~80重量%のリン脂質;
c)1~30重量%の溶媒;
d)生理活性剤
を含み;
ここで、a)及びb)は、前記脂質をベースとする予備製剤の総脂質含量の少なくとも94重量%であり、前記脂質をベースとする予備製剤は、10℃以下の温度、例えば、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度での少なくとも1カ月間の貯蔵、及びそれに続く室温での少なくとも1時間の期間の平衡化の後、USP<790>に従って決定するように、20℃にて1000mPas未満の粘度を有する透明な液体であり、目視による沈殿物を本質的に伴わない、ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項2】
USP<788>によって決定するように、6000個以下(NMT)の10μm以上の粒子、及び/又はNMT600個の25μm以上の粒子を含有するか、又はそれからなる、請求項1に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項3】
前記ジアシルグリセロールが、2重量%以下、例えば、1.5重量%以下、例えば、1重量%以下、例えば、0.5重量%以下のモノアシルグリセロールを含む、請求項1又は2に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項4】
前記予備製剤が、5重量%以下のトリアシルグリセロール、例えば、4重量%以下のトリアシルグリセロール、例えば、3重量%以下のトリアシルグリセロールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項5】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ジオレイルホスファチジルコリン及びこれらの混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項6】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)又はジオレイルホスファチジルコリンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項7】
ジアシルグリセロールとリン脂質の比が、20:80~80:20、例えば、60:40~40:60の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項8】
a)及びb)が、前記予備製剤の総脂質含量の少なくとも95重量%、例えば、少なくとも96重量%、例えば、少なくとも97重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項9】
前記溶媒が、エタノール、プロピレングリコール(PG)、注射用水(WFI)、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項10】
前記溶媒が、エタノール又はエタノール及びプロピレングリコール(PG)の混合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項11】
生理活性剤が、10℃以下、例えば、0~10℃の温度での貯蔵を必要としている薬剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項12】
前記生理活性剤が、ペプチド活性剤、例えば、45個以下、例えば、30個以下のアミノ酸残基を有するペプチド活性剤である、請求項1~11のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項13】
前記活性剤が、環状及び/又は拘束性ペプチド活性剤である、請求項1~11のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項14】
前記ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジの少なくとも内部表面が、事前塗布された潤滑剤を伴わない、請求項1~13のいずれか一項に記載の脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項15】
少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月、例えば、少なくとも12カ月貯蔵される、請求項1~14のいずれか一項に記載のガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項16】
室温での1時間の期間の平衡化の後、目視による沈殿物及び/若しくは混濁度が伴わない、請求項1~15のいずれか一項に記載のガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項17】
0.1~3ml、例えば、0.2~2.5ml、例えば、0.4~1.5mlの前記脂質をベースとする予備製剤を含有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項18】
前記シリンジ又はカートリッジを封鎖するプランジャーが、35N以下、例えば、30N以下、25N以下、20N以下、15N以下、10N以下又は5N以下の離脱力を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【請求項19】
前記シリンジ又はカートリッジを封鎖する前記プランジャーが、35N以下、例えば、30N以下、25N以下、20N以下、15N以下、10N以下又は5N以下の滑走力を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脂質組成物、特に、医薬の製剤における使用に適したもの、及びこのような脂質組成物を含む予備製剤に関する。本開示はさらに、脂質医薬の貯蔵の間に寿命の長い沈殿物が形成することを防止又は低減することにおけるある特定の脂質組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、栄養素、ビタミンなどを含めた多くの生理活性剤は、「機能ウインドウ」を有する。すなわち、これらの薬剤がいくつかの生物学的効果を実現することを観察することができる一連の濃度が存在する。体の適当な部分における濃度(例えば、局所的、又は血清濃度によって示されるように)がある特定のレベル未満に下がる場合、有益な効果は薬剤に起因し得ない。同様に、一般にそれを超えると濃度を増加させてもそれ以上の利点がもたらされない上限濃度レベルが存在する。場合によっては、濃度を特定のレベルより上に増加させることは、望ましくない或いは危険な影響をもたらす。
【0003】
いくつかの生理活性剤は、長い生物学的半減期及び/又は広範な機能ウインドウを有し、したがって、時々投与すれば、かなりの期間(例えば、6時間から数日)に亘り機能的生物学的濃度を維持し得る。他の場合、クリアランスの速度が高く、且つ/又は機能ウインドウが狭く、したがって、このウインドウ内で生物学的濃度を維持するために、少量の定期的(又はそれどころか連続)用量が必要とされる。非経口的投与経路(例えば、非経口投与)が望ましいか又は必要である場合、自己投与は困難であり得、したがって、不都合及び/又は乏しい服薬遵守をもたらすため、これは特に困難であり得る。このような場合、単回投与について、活性が必要とされる全期間に亘り治療レベルで活性剤を提供することが有利である。
【0004】
処置を受けている幾人かの患者は典型的には、治療用量がかなりの期間維持されること、及び/又は何カ月若しくは何年も現行の処置を必要とする。このように、より長期間に亘るより大きな用量の充填及び制御放出を可能とするデポー系は、通常の送達系を超えたかなりの利点を提供する。
【0005】
特定の本開示の製剤は、投与に続いて非ラメラ液晶相を生じさせる。生理活性剤の送達における非ラメラ相構造(例えば、液晶相)の使用は、今や相対的に良好に確立されている。高度に有効な脂質デポー系は、国際公開第2005/117830号パンフレットに記載されている。しかし、いくつかの点で改善された性能を有するデポー製剤を達成する余地が依然として存在する。
【0006】
特に、ある特定の脂質をベースとする組成物、例えば、国際公開第2005/117830号パンフレットに記載されている脂質デポー系が、冷蔵条件下で貯蔵されてきた後に室温にもどされるとき、曇った又は「混濁状の」外観が残り得ることが観察されてきた。この混濁度は、予備製剤が室温にて平衡化したときでさえ残存する。混濁度は注射可能な医薬において望ましくなく、規制上及び/又は安全性の理由のために禁止し得る。本明細書において使用するように、「混濁度」は、溶液中の透明性の欠如を示すために使用される。これは、溶液中の液体又は固体材料の懸濁、沈殿、分離又は他の理由によるものであり得る。
【0007】
医薬中の乳光及び沈殿物の形成を含めた混濁度(再溶解するのに長時間かかるか、又は不溶性のままである)は、医薬が対象へと投与することがより困難であるか、又は多くの場合において、このような投与を阻害することを意味し得る。その活性剤の分解を防止するために、いくつかの活性剤は冷蔵条件下で貯蔵しなければならないため、これらの寿命の長い沈殿物及び/若しくは混濁度の形成は、実際に、このような脂質をベースとする製剤の部分として投与することができる活性剤の選択を限定する可能性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、混濁度、乳光及び/又は沈殿物を伴わずに、冷蔵条件下で貯蔵に供されており、且つ対象に安全に投与することができる、脂質をベースとする製剤を調製する方法を提供することが必要とされている。
【0010】
脂質をベースとする製剤と接触し、且つシリコーン油を伴わないか、又はそれどころか事前塗布された潤滑剤を伴わない内部表面を有する特定のガラス製シリンジと組み合わせて、(製造スケールで)高純度ジアシルグリセロール組成物を使用して製剤を調製することによって、冷蔵条件下の後で低減した混濁度及び/又は沈殿物形成を有する脂質をベースとする製剤を提供することができることを、本発明者らは今や確立した。高純度ジアシルグリセロール組成物、例えば、ジオレイン酸グリセロールを含む脂質をベースとする製剤を調製し、シリコーン油を伴わないガラス製シリンジ中に充填することによって、冷蔵条件下での貯蔵及びそれに続く室温での平衡化の後の沈殿物及び乳光/混濁度の形成は、注射性が維持される一方で、驚くほど低減する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本開示は、脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジを提供し、ここで、ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジの少なくとも内部表面は、脂質をベースとする予備製剤と接触しており、前記内部表面は、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を伴わず、脂質をベースとする予備製剤は、
a)20~80重量%の、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール;
b)20~80重量%のリン脂質;
c)1~30重量%の溶媒;
d)生理活性剤
を含み;ここで、a)及びb)は、脂質をベースとする予備製剤の総脂質含量の少なくとも94重量%であり、脂質をベースとする予備製剤は、10℃以下、例えば、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度での少なくとも1カ月間の貯蔵、及びそれに続く室温での少なくとも1時間の期間の平衡化の後、USP<790>に従って決定するように、20℃にて1000mPas未満の粘度を有する透明な液体であり、目視による沈殿物を本質的に伴わない。
【0012】
一態様において、ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジは、脂質をベースとする予備製剤を含有し、予備製剤は、USP<788>によって決定するように、6000個以下(NMT)の10μm以上の粒子(沈殿物及び/若しくは混濁度)、並びに/又はNMT600個の25μm以上の粒子(沈殿物及び/若しくは混濁度)を含有するか、又はこれらからなる。
【0013】
第2の態様から見ると、本開示は、添付の特許請求、並びに本明細書において記載する実施形態及び態様によるガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ中に圧縮された脂質をベースとする予備製剤を、それを必要とする患者に投与する方法を提供し、ここで、予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジは、10℃以下、例えば、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて投与の前に維持され、投与の前に室温にて平衡化される。
【0014】
第3の態様から見ると、本開示は、前記ジアシルグリセロール組成物及び少なくとも1種の生体適合性有機溶媒を含む予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させることにおける、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール組成物の使用を提供する。
【0015】
第4の態様から見ると、本開示は、
予備製剤が、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて、少なくとも24時間、例えば、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月の期間貯蔵されるとき、
(i)ジアシルグリセロール組成物;及び
(ii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒
を含む、前記予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させるための方法を提供し;前記方法は、第1の態様によるジアシルグリセロール組成物を有する前記予備製剤を形成させることを含む。第4の態様の一例は、
前記予備製剤が、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて、少なくとも24時間、例えば、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月の期間貯蔵されるとき、
a)(i)20~80重量%の、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール;
b)20~80重量%のリン脂質;
c)1~30重量%の溶媒;
d)生理活性剤
を含む、脂質をベースとする予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させるための方法である。
【0016】
第5の態様から見ると、本開示は、脂質をベースとする組成物を事前充填された、内部表面を有するバレルを含む、第1の態様による事前充填されたガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジを提供し、ここで、脂質をベースとする組成物と常に接触するバレルの内部表面の部分は、事前塗布された潤滑剤を実質的に伴わず(すなわち、シリコーン油及び任意の他の事前塗布された潤滑剤を伴わず)、事前塗布された潤滑剤を実質的に伴わないとは、潤滑剤をシリンジの製造の間又は製造後の間に加えず、すなわち、前記シリンジを本明細書において開示されている脂質をベースとする組成物で充填する前に、内部表面は、潤滑剤、例えば、シリコーン油を本質的に伴わないと理解される。適切なシリンジの例、例えば、Gerresheimer、Schott及びBD(Becton,Dickinson and Company)によって市販されているもの、例えば、1mLのガラス製シリンジは市販されており、ただし、内部表面は、シリコーン油を伴わないか、又は潤滑剤を伴わない。
【0017】
さらなる態様において、本開示は、シリコーン油を伴わないシリンジ中に含有される本開示による予備製剤を、それを必要とする患者に投与する方法を提供し、ここで、予備製剤を含有するシリンジは、投与の前に概ね1時間まで(例えば、投与の前の24カ月間まで)冷蔵温度(例えば、2~8℃)で維持され、投与の前概ね1時間、室温にて(15~25℃、例えば、25Cにて)平衡化される。
【0018】
予備製剤は、例えば、投与のときに目に見える曇り(混濁度)を示さない透明な液体であるべきである。混濁度は、USP<790>に従って、目視検査によって検出し得る。
【0019】
さらなる態様において、本開示は、第1の態様によるシリンジを提供し、ここで、予備製剤の安定性は、2~8℃にて貯蔵して、少なくとも6カ月、例えば、少なくとも12カ月、例えば、少なくとも18カ月である。
【0020】
さらなる態様において、本開示は、第1の態様によるシリンジを提供し、ここで、シリンジは、ストッパーと共に提供する。例は、本明細書に記載されているシリンジ、例えば、1mLのガラス製シリンジに適したBD又はWestからの市販のストッパーである。
【0021】
さらなる態様及び実施形態は、添付の特許請求において提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】人工気象室からの採取の0分後、5分後、15分後、及び30分後に偏光で撮った、5℃にて14カ月貯蔵した本開示による事前充填されたシリンジの写真。
【
図2a】22G TWW針を通して注射した、様々な粘度の製剤についての滑走力に対する注射時間のグラフを示す。
【
図2b】23G UTW針を通して注射した、様々な粘度の製剤についての滑走力に対する注射時間のグラフを示す。
【
図3】推定した滑走力及び離脱力の間の相関関係を示す。
【
図4】実施例2による事前充填されたガラス製シリンジの写真。
【
図5】実施例2による事前充填されたガラス製シリンジの写真。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、高純度ジアシルグリセロール組成物を提供する。本明細書において使用する場合、用語「高純度ジアシルグリセロール組成物」は、少なくとも97.0重量%の、16~20個の炭素原子及び1個又は2個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ有する2個の脂肪酸残基を有する、例えば、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有する、ジアシルグリセロールを含む組成物又は製剤であると理解される。
【0024】
全ての%は、他に示さない限り、本明細書を通して重量によって特定される。重量パーセント(%)は、例えば、重量%と略し得る。さらに、示される重量%は、他に示さない限り、本明細書において示す構成要素の全てを含む総組成物又は製剤の%である。重量パーセントが活性剤化合物の塩に関して示される場合、重量パーセントは、他に示さない限り、遊離塩基の量(又は当量)に関する。ある特定の例において、特定の塩の重量%を提供するが、適当な場合は示され、遊離塩基の対応する重量へと容易に変換し得る。
【0025】
組成物又は製剤が本明細書においてある特定の構成要素「から本質的になる」と示される場合、例えば、特定の構成要素が、製剤の少なくとも95%、好ましくは、少なくとも98%を構成するとき、特定の構成要素は、その製剤の本質的な性質を提供する。これは、複数の材料で形成し得る任意の構成要素又は構成物に等しく適用される。同様に、「約」、「概ね」、「およそ」又は同様の言語の使用が本明細書において存在する場合、これは、特定の量が主要な実施形態であるが、実際の量は、当業者が判断するような特定したものと実質的に異なるべきではないことを示す。これは典型的には、文脈が禁止しない限り、特定の値の±10%、±5%又は±1%である。
【0026】
本明細書において、特に、特許請求の範囲に関連して、「からなる群から選択される」薬剤又は構成要素「を含むか、又はそれからなる」という言語について、その言語は、2つの実施形態;「含む」実施形態についての開放的な群、及び「からなる」実施形態についての閉鎖的な群を示すために使用される。後者の場合は、薬剤及び構成要素のリストは、閉鎖的であると考えられ、「及び」リストの最終の例で終了すると考えてもよい。この言語は、したがって、「…及び…からなる群から選択される」と判断し得る。
【0027】
本開示における態様、実施形態、請求項などにおいて用語「含むこと」又は「含有すること」が使用されるときはいつも、このような用語は、前記用語が、「から本質的になる」、又は「からなる」で置き換えられている態様、実施形態、及び請求項を包含すると理解される。特定の例は、用語「脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ」が使用されるときはいつでも、また下記「脂質をベースとする予備製剤から本質的になるガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ」及び「脂質をベースとする予備製剤からなるガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ」が明確に意図されると考えられる。
【0028】
任意の活性剤(例えば、薬物又はAPI)が本明細書において示される場合、これはまた、文脈が禁止しない限り、任意の薬学的に許容される塩の形態の活性剤についての開示である。適切な医薬塩は当技術分野で周知であり、全ての実施形態についての適切な例は本明細書に記載されている。塩、例えば、ハロゲン化物(特に、塩化物)、酢酸塩、パモ酸塩などは、塩基性部分の適切な塩の例である。アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン又はアルキルアミン塩は、酸部分の適切な塩の例である。
【0029】
用語「前駆体製剤」又は予備製剤は、注射されて、対象の体内で制御放出「デポー」製剤を生じ得る医薬製剤を示すために本明細書において使用される。予備製剤は、任意選択で本明細書において示す構成要素のみ(本明細書の下記において及び添付の特許請求の範囲において示す適当なさらなる任意選択の構成要素を含めた)から本質的になり、一態様では、このような構成要素から全体的になることができる。
【0030】
一実施形態では、任意の適当な態様のジアシルグリセロール組成物は、少なくとも97.5重量%、例えば、少なくとも98.0重量%、例えば、少なくとも98.5重量%の、16~20個の炭素原子及び1個又は2個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ独立に有する2個の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールを含む。一実施形態では、ジアシルグリセロール組成物は、16~20個の炭素原子及び1個又は2個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ独立に有する2個の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロール、例えば、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジオレイン酸グリセロールから本質的になる。
【0031】
ジアシルグリセロール組成物は従来技術において公知である一方、本開示のジアシルグリセロール組成物と同じくらい高い純度を有するジアシルグリセロール組成物は、医薬製品、例えば、脂質をベースとする予備製剤、例えば、本明細書に記載されているものの製造において従前に使用されておらず、事前塗布されたシリコーン潤滑剤(例えば、シリコーン油)を伴わないガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジと組み合わせて使用される。
【0032】
脂質をベースとする製剤が、従来技術において公知の(より低い純度の)通常のジアシルグリセロール組成物の代わりに本開示の高純度ジアシルグリセロール組成物を使用して生じるとき、冷蔵条件下貯蔵された後、前記脂質をベースとする組成物を解凍した後で観察される混濁度は低減又は除去されることを本発明者らは驚いたことに確立した(例えば、USP<790>による目視検査によって決定される)。本発明者らはまた、高純度のジアシルグリセロールを合成し得る方法を確立した。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、脂質をベースとする組成物中の飽和不純物の存在は、その組成物を組み込んでいる製剤が冷蔵条件下で貯蔵され、それに続いて室温にて平衡化されるときに観察される混濁度に関与していると考えられる。高純度を有するジアシルグリセロール組成物を有する製剤を調製することによって、製剤中の飽和不純物の量は低減し得、したがって、冷蔵貯蔵及びそれに続く解凍によって形成される不溶性の寿命の長い沈殿物の量はまた低減する。
【0034】
一実施形態ではしたがって、ジアシルグリセロール組成物は、3重量%未満の飽和脂肪酸残基を含む。一実施形態では、ジアシルグリセロール組成物は、2重量%未満、例えば、1重量%未満の飽和脂肪酸残基を含む。ジアシルグリセロール組成物中の飽和脂肪酸残基の量は、当技術分野において公知の任意の手段、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定することができる。特に適切な方法は、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)において見出すことができる。
【0035】
望ましいジアシルグリセロールの脂肪酸残基は、それぞれ独立に、16~20個の炭素原子を有する。一実施形態では、ジアシルグリセロールの脂肪酸残基は、それぞれ独立に、16~20個の炭素原子を有する。一実施形態では、脂肪酸残基は、それぞれ独立に、16個又は18個の炭素原子を有する。一実施形態では、脂肪酸残基は、16個の炭素原子をそれぞれ有するか、又は18個の炭素原子をそれぞれ有する。一実施形態では、脂肪酸残基は、18個の炭素原子をそれぞれ有する。
【0036】
望ましいジアシルグリセロールの脂肪酸残基は、それぞれ独立に、1個又は2個の炭素-炭素二重結合を有する。一実施形態では、ジアシルグリセロールの脂肪酸残基は、1個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ有するか、又は2個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ有する。一実施形態では、脂肪酸残基は、1個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ有する。
【0037】
一実施形態では、ジアシルグリセロールの脂肪酸残基は、独立に、オレイン酸酸残基(C18:1)又はリノール酸酸残基(C18:2)である。記号表示「CX:Z」は、X個の炭素原子及びZ個の不飽和(特に、二重結合)を有する炭化水素鎖を示す。一実施形態では、脂肪酸残基は、それぞれオレイン酸残基又はそれぞれリノール酸残基である。一実施形態では、脂肪酸残基は、それぞれオレイン酸残基であり、すなわち、ジアシルグリセロールは、ジオレイン酸グリセロールである。本明細書における全ての態様において、本明細書において言及するジアシルグリセロールは、ジオレイン酸グリセロール、ジリノール酸グリセロール又はこれらの混合物であり得ることは重要な実施形態である。一実施形態では、全ての態様において本明細書にて言及するジアシルグリセロールは、ジオレイン酸グリセロールであり得る。
【0038】
一実施形態では、16~20個の炭素原子及び1個又は2個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ有する2個の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールは、1,2-ジアシルグリセロール及び1,3-ジアシルグリセロール異性体の混合物である。一実施形態では、1,2-ジアシルグリセロールと1,3-ジアシルグリセロールの異性体比は、5:1~1:5、例えば、4:1~1:4、例えば、1:1.5~1:3.5(例えば、1:2~1:3)である。
【0039】
一実施形態では、ジアシルグリセロール組成物は、2重量%以下、例えば、1.5重量%以下、例えば、1重量%以下、例えば、0.5重量%以下のモノアシルグリセロールを含む。一実施形態では、ジアシルグリセロール組成物は、2.5重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1.5重量%以下のトリアシルグリセロールを含む。
【0040】
予備製剤
一態様において、本開示は、i)ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール組成物、及びii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒を含む前駆体製剤(また「予備製剤」と称される)に関する。ジアシルグリセロール組成物の構成要素i)は、本明細書に記載されているジアシルグリセロール組成物であり得る。
【0041】
本明細書において使用する場合、用語「製剤」又は「予備製剤」は、構成要素(i)及び(ii)、並びに任意選択で他の構成要素の混合物に関する。予備製剤は典型的には、低粘度のものである。用語「予備製剤」は、製剤が、過剰な水性液体との接触によって、少なくとも1つの非ラメラ(特に、液晶)相構造を形成するか、又は形成することができることを示す。
【0042】
用語「デポー」は、例えば、非経口投与の間に、過剰な水性液体への予備製剤の曝露によって形成される組成物に関する。理論に束縛されるものではないが、この変化は、水性液体のための溶媒(ii)の交換によって、及び/又は脂質構造への水性液体の添加によって少なくとも部分的にもたらされると考えられる。デポーは典型的には、対応する予備製剤より非常により高い粘度を有し、デポー内に含有される活性剤の徐々の放出を実現する。
【0043】
一実施形態では、本開示の予備製剤は、投与に続いて非ラメラ相(例えば、非ラメラ液晶相)を生じさせる。生理活性剤の送達における非ラメラ相構造(例えば、液晶相)の使用は、今や相対的に良好に確立されている。有効な脂質デポー系は、国際公開第2005/117830号パンフレット(参照により本明細書中に組み込まれている)に記載されている。このような製剤の最も都合のよい相構造の説明のために、国際公開第2005/117830号パンフレットにおける考察、特に、その29頁が注目される。好ましくは、本開示による予備製剤は、投与の前に分子性溶液又はL2相構造を有する。
【0044】
本開示の予備製剤は、過剰な水性液体との接触によって、少なくとも1種の液晶相構造を形成するか、又は形成することができる。本明細書において、「過剰な水性液体」は、予備製剤の容量の少なくとも10倍(例えば、10~1000倍)多い水性液体の容量であると理解される。
【0045】
本開示の全ての態様に適用可能である一実施形態では、本開示による予備製剤は、分子性溶液又はL2相構造を有する(投与の前)。予備製剤は、投与に続いて非ラメラ(例えば、液晶)相を形成する。このような相変化は典型的には、本明細書において示すように生理学的環境からの水性液体の吸収によってもたらされる。国際公開第2012/160213号パンフレットにおいて、注意深く制御された量の水は許容することができることが従前に確立されてきた(ただし、モノアルコール溶媒が存在する)が、投与によって、予備製剤は、多量の水性液体にin vivoで曝露され、これは、非ラメラ相の形成をもたらすことが理解される。典型的には、予備製剤は、少なくとも等容量の水性液体との接触によって非ラメラ相を形成する。
【0046】
本開示の予備製剤の粘度は、それらの製剤によって制御可能であるが、典型的には、容認できる期間(例えば、30秒未満)以内でシリンジ又はオートインジェクターによって効果的に送達することができる範囲内である。適切な粘度は、25℃にて10~1000mPas、例えば、25℃にて100~800mPas又は200~600mPasであり得る。25℃での300~500mPasの粘度は適切であり得る。
【0047】
構成要素(i):ジアシルグリセロール組成物
本開示の予備製剤は、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール組成物を含む。一実施形態では、このジアシルグリセロール組成物は、予備製剤中に存在する唯一のジアシルグリセロールであり、すなわち、予備製剤は、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール組成物以外のジアシルグリセロールを実質的に伴わない。
【0048】
本開示の予備製剤及び従来技術において公知のものの間の原理の差異は、本開示の予備製剤が、本明細書に定義されているような高純度ジアシルグリセロール組成物を含むことである。予備製剤が、任意選択で、事前塗布された潤滑剤を伴わない内部表面を有するシリンジと組み合わせて、本開示の高純度ジアシルグリセロール組成物を使用して調製されるとき、例えば、1カ月間若しくはそれより長い貯蔵によって、冷蔵条件、例えば、2~8℃下での貯蔵後の組成物中の寿命の長い沈殿物の形成は低減し、防止し得ることを本発明者らは驚いたことに確立した。
【0049】
理論に束縛されるものではないが、冷蔵条件下での貯蔵の後の従来技術の製剤における寿命の長い沈殿物の形成は、脂質構成要素中の飽和不純物の存在によるものであると考えられる。本開示の高純度ジアシルグリセロール組成物の使用は、製剤中の飽和不純物のレベルを低減させ、したがって、前記寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させる。
【0050】
構成要素(ii):生体適合性有機溶媒
本開示の予備製剤の構成要素(ii)は、少なくとも1種の生体適合性有機溶媒である。構成要素(ii)は、単一の溶媒又は2種以上の溶媒の混合物であり得る。予備製剤は、投与(例えば、in vivo)に続いてデポー組成物を生じさせるか、又は生じさせることができるため、過剰な水性液体との接触によって、これらの溶媒が対象にとって容認でき、且つ水性液体と混合し、且つ/又は予備製剤から水性液体中へと拡散若しくは溶解することができることが望ましい。少なくとも中程度の水溶解性を有する溶媒がしたがって好ましい。本明細書の下に記載されているように、構成要素ii)は、極性共溶媒、例えば、プロピレングリコールを含み得る。
【0051】
本明細書において使用する場合、用語「生体適合性有機溶媒」は、哺乳動物対象(例えば、ヒト)における使用のために安全である溶媒であると理解される。典型的には、生体適合性有機溶媒は、(ラットにおいて経口投与によって計算するように)700mg/kg超、例えば、1000mg/kg超、特に、1500mg/kg超のLD50を有する。一般に使用される溶媒についてのLD50データは、MSDSシートにおいて容易に利用可能である。
【0052】
一実施形態では、構成要素ii)は、アルコール、アミン、アミド及びエステルからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むか、又はそれからなる。好ましくは、構成要素ii)は、少なくとも1種のモノアルコール溶媒を含む。最も好ましくは、構成要素ii)は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はこれらの混合物を含む。構成要素ii)が、エタノールを含むか、又はそれからなることが特に好ましい。構成要素ii)は、モノアルコール溶媒、好ましくは、エタノール、及び極性共溶媒を含むか、又はこれらからなってもよい。エタノール及びプロピレングリコールを含むか、又はこれらからなる混合物は、適当である。実施形態では、体適合性有機溶媒は、生体適合性酸素含有有機溶媒である。
【0053】
溶媒の例は、エタノール、プロピレングリコール(PG)、注射用水(WFI)、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びこれらの混合物である。本明細書において開示する一部の実施形態では、溶媒は、エタノール、プロピレングリコール(PG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びこれらの混合物である。
【0054】
構成要素(ii)は、上記の溶媒のリストからの2種以上の構成要素、特に、モノアルコール溶媒、及びアミド、スルホキシド又はジアルコール溶媒から選択される溶媒を含み得る。モノアルコール溶媒ではない任意の溶媒は、本明細書において共溶媒と称し得る。2種以上の溶媒が存在する場合、適当な組み合わせは、エタノール及びアミド(例えば、エタノール及びN-メチルピロリドン(NMP))、エタノール及びスルホキシド(例えば、エタノール及びジメチルスルホキシド(DMSO))、又はエタノール及びジアルコール溶媒若しくはポリアルコール溶媒(例えば、エタノール及びプロピレングリコール(PG))を含む。エタノール及びPGは、一実施形態を形成する。
【0055】
溶媒の適切な組み合わせは、エタノール及びPGであり、特に、エタノールとPGの比は、1:5~20:1、例えば、1:1~10:1、例えば、1.5:1~8:1、例えば、2:1~5:1(例えば、概ね3:1、例えば、2.8:1~3.2:1)である。一実施形態では、構成要素(ii)は、生体適合性酸素含有溶媒、例えば、エタノール、NMP、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、DMSO、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒であり得る。構成要素(ii)は、エタノールを含むか、若しくはそれからなってもよく、又はエタノール及びPGの混合物を含むか、若しくはそれから本質的になってもよい。一実施形態では、構成要素(ii)は、プロピレングリコールを含むか、若しくはそれから本質的になる。
【0056】
予備製剤中の構成要素(ii)の量は、いくつかのフィーチャに対してかなりの効果を有する。特に、粘度及び放出の速度(及び持続時間)は、溶媒レベルと共に相当に変化する。溶媒の量は、このように低粘度混合物を実現するのに少なくとも十分であるが、さらに望ましい放出速度を実現するために決定される。これは、下記の実施例を考慮して、通例の方法によって決定し得る。典型的には、1~30%、特に、2~25%の溶媒のレベルは、適切な放出及び粘度特性を実現する。これは、好ましくは、2~20%、好ましくは、5~15%であり、概ね10%(例えば、10±3%)の量は、高度に有効である。これらのレベルは、上記のような構成要素(ii)の部分として存在する任意の共溶媒を含む。
【0057】
上記で示すように、本開示の予備製剤中の構成要素(ii)の量は、構成要素(i)及び(ii)の低粘度混合物(例えば、分子性溶液)を実現するのに少なくとも十分であり、標準的な方法によって構成要素の任意の特定の組み合わせについて容易に決定される。
【0058】
任意の予備製剤、組成物又は混合物の相挙動は、技術、例えば、偏光顕微鏡観察と組み合わせた目視観測、X線散乱及び回折技術、核磁気共鳴、及び低温透過型電子顕微鏡観察(低温TEM)によって分析して、溶液、L2若しくはL3相、又は液晶相、或いは低温TEMの場合のように、このような相の分散したフラグメントを探し得る。粘度は、標準的な手段によって直接的に測定し得る。本明細書に記載のように、適当な実用的な粘度は、効果的に注入し、特に、無菌濾過することができるものである。これは、本明細書において示すように容易にアセスメントされる。
【0059】
ハロゲン置換炭化水素はより低い生体適合性を有する傾向があるため、構成要素ii)の僅かなものがハロゲン置換炭化水素を含有するか、又は含有しないこと好ましい。
【0060】
構成要素(ii)は、本明細書において使用するように、単一溶媒又は適切な溶媒の混合物であり得るが、一般に、低粘度のものである。本開示の重要な態様の1つは、これが低粘度である予備製剤を提供することであり、適切な溶媒の主な役割は、この粘度を低減させることであるため、これは重要である。この低減は、溶媒のより低い粘度の効果、並びに溶媒及び脂質組成物の間の分子間相互作用の効果の組み合わせである。本発明者らの1つの観察は、本明細書に記載されている低粘度の酸素含有溶媒が組成物の脂質部分と高度に有利及び予想外の分子間相互作用を有し、それによって、小容量の溶媒の添加を伴って粘度における非直線的低減を実現することである。
【0061】
「低粘度」溶媒構成要素(ii)(単一溶媒又は混合物)の粘度は典型的には、20℃にて18mPas以下であるべきである。これは、20℃にて、好ましくは、15mPas以下、より好ましくは、10mPas以下、最も好ましくは、7mPas以下である。
【0062】
国際公開第2012/160213号パンフレットにおいて、モノアルコール溶媒に加えて極性溶媒の添加は、低減した粘度及び低減した活性剤バーストプロファイルを含めた多数の利点をもたらすことが記載されている。構成要素ii)について従前に記載した好ましい態様に加えて、1つの特に好ましい実施形態では、構成要素ii)は、モノアルコール溶媒及び極性共溶媒を含む。用語「極性共溶媒」は、本明細書において使用するように、25℃にて少なくとも28、より好ましくは、25℃にて少なくとも30の比誘電率(diel)を有する溶媒を定義するが、水又は任意の水性液体ではない。高度に適切な例は、プロピレングリコール(diel約32)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP、diel約32)を含む。本明細書において列挙した構成要素ii)の好ましいレベルは、文脈が他を容認しない限り、モノアルコール溶媒及び極性共溶媒の混合物に等しく適用される。
【0063】
典型的な共溶媒は、それらの高い極性に対応する比較的に高い比誘電率を有する。このように、適切な共溶媒は一般に、25℃にて少なくとも28、より好ましくは、25℃にて少なくとも30の比誘電率を有する。高度に適切な例は、水(約80)、プロピレングリコール(約32)、ジメチルスルホキシド(約47)及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP、約32)を含む。プロピレングリコールは、いくつかの活性剤に関連して特に有用である。
【0064】
特に好ましい実施形態では、構成要素ii)は、モノアルコール溶媒及び極性共溶媒の混合物を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。極性共溶媒は、一実施形態では、ジアルコールC3~C6有機溶媒、すなわち、2個のヒドロキシ基を含むC3~C6有機溶媒であり得る。ジアルコール溶媒は、好ましくは、プロピレングリコールである。存在するとき、極性共溶媒は、予備製剤の2~12重量%、例えば、3~10重量%、特に、4~9重量%のレベルで含まれる。このレベルは、構成要素ii)について上記で列挙した範囲の部分としてカウントされる。最も好ましくは、構成要素ii)は、エタノール及びプロピレングリコール(PG)の混合物を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0065】
有機モノアルコール溶媒及び極性共溶媒の両方、例えば、エタノール及びPGが存在する場合、モノアルコール溶媒と極性共溶媒の比は、好ましくは、20:80~70:30、好ましくは、30:70~70:30(w/w)、より好ましくは、40:60~60:40の範囲内である。およそ等しい量のモノ及びジアルコール構成要素が高度に適当である。
【0066】
特に好ましい実施形態では、構成要素ii)は、1~30%のレベルで存在し、エタノール及びPGの混合物を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になり、ここで、エタノールとPGの比(w/w)は、30:70~70:30、好ましくは、40:60~60:40の範囲である。より好ましくは、構成要素ii)は、5~15重量%又は8~18重量%、最も好ましくは、8~18%重量%の範囲で存在し、40:60~60:40の比(w/w)のエタノール及びPGの混合物である。
【0067】
疑義を避けるために、極性共溶媒が本開示の予備製剤中に存在する場合でさえ、総水レベルは、本明細書における様々な実施形態において記載するように残存する(例えば、0.1~1.0重量%)。
【0068】
一部の実施形態では、構成要素(ii)についての溶媒の特に適当な組み合わせは、アミド、スルホキシド又はジオールからなる群から選択されるモノアルコール溶媒及び共溶媒を含む。特に好ましい組み合わせは、エタノール及びアミド、エタノール及びスルホキシド又はエタノール及びジオールである。特に好ましい組み合わせは、エタノール及びプロピレングリコール(PG);エタノール及びジメチルスルホキシド(DMSO);及びエタノール及びN-メチル-ピロリドン(NMP)である。
【0069】
存在するとき、共溶媒の適切な量は典型的には、予備製剤の1重量%超、例えば、2~15重量%、特に、4~12重量%、特に、4~10重量%である。構成要素(ii)としてのモノアルコール溶媒及び共溶媒の組み合わせは、本開示の組成物中で有望な利点を有する。特に、モノアルコール構成要素と混和性であるいくらかの共溶媒が含まれることによって、アルコール内容物からの注射部位においてもたらし得る僅かな感覚を実質的に除去することができる。このように、一実施形態では、モノアルコール構成要素:共溶媒の比は、30:70~90:10、より好ましくは、50:50~80:20、特に、60:40~80:20の範囲であり得る。およそ等しい量の構成要素(w/w)が高度に適当である。
【0070】
任意選択のリン脂質構成要素
一実施形態では、本開示の予備製剤は、リン脂質構成要素を含む。
【0071】
実施形態では、リン脂質構成要素は、予備製剤の15~50重量%の量で存在する。一部の実施形態では、リン脂質の量は、15~45重量%、例えば、20~45重量%であり得る。
【0072】
実施形態では、ジアシルグリセロール組成物:リン脂質の比は、35:65~65:35(w/w)、例えば、40:60~60:40、例えば、45:55~55:45である。概ね50:50(例えば、±2)の比は、特に適切である。
【0073】
リン脂質は、極性頭部基及び少なくとも1個の非極性尾部基を含む。一実施形態では、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン(PC))は、2個の非極性基を含有する。特に、いずれの場合でも0個、1個又は2個の不飽和(例えば、1個又は2個の不飽和)を有するC12~C20、例えば、C16~C18アシル基は、リン脂質の非極性基を形成する部分として高度に適切である。実施形態では、非極性基の少なくとも50%は、オレオイル基(C18:1)である。
【0074】
一実施形態では、リン脂質の非極性基の少なくとも50%、例えば、少なくとも75%又は少なくとも90%は、C16~C18(例えば、C18:1)部分である。一実施形態では、リン脂質の非極性基のおよそ100%は、このような部分である。
【0075】
さらなる実施形態では、リン脂質の非極性基の少なくとも50%、例えば、少なくとも75%又は少なくとも90%は、C18(例えば、C18:1)部分である。一実施形態では、リン脂質の非極性基のおよそ100%は、このような部分である。
【0076】
実施形態では、リン脂質は、25℃にて水中の純粋な化合物として非ラメラ液晶相構造を形成しないリン脂質を含むか、又はそれからなる。実施形態では、リン脂質は、25℃にて水中で非ラメラ液晶相構造、例えば、六方液晶相構造を形成するリン脂質を含むか、又はそれからなる。
【0077】
リン脂質部分は、自然源に由来し得る。リン脂質の適切な源は、卵、(例えば、ウシの)心臓、脳、(例えば、ウシの)肝臓、及び大豆を含めた植物源を含む。このような源は、リン脂質構成要素の1つ又は複数の構成物を提供し得、これは、リン脂質の任意の混合物を含み得る。
【0078】
リン脂質についての適切な極性頭部基は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールを含む。一実施形態では、予備製剤は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるリン脂質を含む。国際公開第2013/038460号パンフレット及び国際公開第2013/083459号パンフレットにおいて、リン脂質の総量の少なくとも50重量%のPEの使用は、改善されたデポーのロバスト性をもたらすことができることが示されてきた。
【0079】
実施形態では、リン脂質は、1種又は複数のPCを含むか、又はそれからなる。例えば、リン脂質の頭部基の少なくとも50%、例えば、頭部基の65%超、特に、85%超又は90%超は、PCであるべきである。単一の源からのPC(例えば、大豆PC)、又は異なる源からのPCの混合物(例えば、大豆PC及び卵PC)を使用し得る。実施形態では、PC構成要素は、少なくとも50%の大豆PC、例えば、少なくとも75%の大豆PC、又は本質的に純粋な大豆PCを含有する。実施形態では、PC構成要素は、少なくとも50%の卵PC、例えば、少なくとも75%の卵PC、又は本質的に純粋な卵PCを含有する。
【0080】
本開示の全ての態様に適用可能な一実施形態では、リン脂質は、PC、例えば、大豆に由来するPC(大豆PC)を含むか、又はそれからなる。PCは、Lipoidを含めた様々な供給業者から入手可能である。天然に由来するPCは一般に、主要な脂肪酸構成要素として18:2脂肪酸を含み、第2の脂肪酸構成要素として16:0及び/又は18:1を伴う。実施形態では、(18:2脂肪酸:他の脂肪酸)の間の比は、1.5:1及び6:1である。およそ60~65%の18:2、10~20%の16:0、及び5~15%の18:1を有するPC(残りは主に、他の16個の炭素及び18個の炭素脂肪酸である)は、特に、適切であり、大豆PCに特有である。
【0081】
また本開示の全ての態様に適用可能である代替ではあるが等しく適切な実施形態では、PC構成要素は、合成ジオレオイルPC(DOPC)を含み得る。これは増加した安定性を実現すると考えられ、長期間の貯蔵に対して安定であることが必要とされ、且つ/又はin vivoで長い放出期間を有する組成物のために特に適している。この実施形態では、PC構成要素は、少なくとも50%の合成ジオレオイルPC、例えば、少なくとも75%の合成ジオレオイルPCを含有し、本質的に純粋な合成ジオレオイルPCであり得る。
【0082】
一実施形態では、本開示の予備製剤は、少なくとも部分的に合成DOPC(すなわち、少なくとも95%のPC頭部基及び少なくとも90%のオレオイル(C18:1)アシル基を有するPC)からなり、且つHPLCによってアッセイすると、少なくとも6カ月、例えば、少なくとも12カ月又は少なくとも24カ月後に、15~25℃での貯蔵に対して安定性(5%未満の活性剤分解として定義される)を有する。
【0083】
本開示の予備製剤は、対象に投与されるため、構成要素が生体適合性であることが重要である。これに関しては、PC及びDAGの両方は耐容性良好であり、in vivoで哺乳動物の体内で天然に存在する構成要素へと分解される。
【0084】
合成又は高度に精製されたPC、例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)及びパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、並びに本明細書に記載されている他の様々な高純度PCは、リン脂質の全て又は部分として高度に適当である。本明細書において使用する場合、用語「高度に精製された」は、汚染物質を除去する精製を受けた自然源に由来するPCに関する。本明細書において使用する場合、用語「合成又は高度に精製された」PCは、少なくとも95重量%のホスファチジルコリンを含む材料に関し、ここで、PC内の2個のアシル鎖は、それぞれ独立に16~20個の炭素を有し、少なくとも1個のアシル鎖は、炭素鎖中に少なくとも1個の不飽和、及び2個の炭素鎖上に4個以下の不飽和を有する。
【0085】
典型的には、これは、リン脂質の少なくとも95%がPC頭部基を有し、少なくとも95%のC16~C20アシル鎖が0~3個の不飽和を有するリン脂質であり得る。
【0086】
実施形態では、合成PCは、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)である。他の実施形態では、合成PCは、DDPC(1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DEPC(1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DLOPC(1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DLPC(1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);MPPC(1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ3-ホスホコリン);MSPC(1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);PMPC(1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);POPC(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);PSPC(1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);SMPC(1-ステアロイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);SOPC(1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン);及びSPPC(1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、又は任意のこれらの組み合わせを含むか、又はこれらからなってもよい。全ての場合において、合成PCは、好ましくは、5%以下(例えば、0.01~5%)の他の材料、例えば、2%以下又は1%以下の他の材料を含む。
【0087】
活性剤
本開示の予備製剤は、生理活性剤ともまた称される活性剤を含む。本開示の予備製剤は、1種又は複数のペプチド又は非ペプチド活性剤を任意選択で含む。本開示は一般に適用可能であり、したがって、本開示は、目的の任意の生理活性剤、特に、冷蔵貯蔵を必要としている活性剤を含有するか、又はそれどころか生理活性剤を全く含有しない予備製剤に適用可能であることが認識されることに留意することは重要である。生理活性剤は、望ましい生物学的又は生理学的効果を有する任意の化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、薬物、抗原、栄養素、化粧品、芳香剤、香味剤、診断用剤、医薬品、ビタミン、又は栄養剤であり得、機能的レベルでのin vivoでの濃度(局所組成物のための局所濃度を含めた)を実現するのに十分なレベルで製剤化される。適切な活性剤は、薬物、ワクチン、及び診断用剤を含めた医薬品を含む。ある特定の実施形態において適した活性剤の1つのクラスは、ソマトスタチン及びソマトスタチン類似体であり、その例は、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、及びバプレオチド、又はそれらの塩からなる群から選択される。本開示のいくつかの態様において、生理活性剤は、オクトレオチドである。本開示のいくつかの態様において、生理活性剤は、SST-14である。
【0088】
一実施形態では、活性剤は、冷蔵を必要としているもの、すなわち、室温にて長時間貯蔵された場合、さもないと分解するものである。本明細書において使用する場合、活性剤は、関連性のある製剤中のその活性剤が分解する場合、その活性成分(適当な場合、製剤中)が25℃にて18カ月の期間貯蔵された場合、活性剤の90%未満(例えば、HPLCによって測定して)が残存するように、「冷蔵を必要としている」。例は、25℃にて18カ月未満、例えば、12カ月間(例えば、1~12カ月間)、6カ月間又は3カ月間貯蔵されたとき、それらの最初のレベルの90%以下まで活性剤を含む。
【0089】
一実施形態では、活性剤は、室温(例えば、25℃)にて12カ月の期間貯蔵されたとき、最初のレベルの90重量%未満まで分解するものである。
【0090】
本開示の組成物によって送達し得る活性剤の例には、これらに限定されないが、抗菌剤、免疫賦活剤及び免疫抑制剤を含めた免疫調節剤、抗がん薬及び/又は抗ウイルス薬、例えば、ヌクレオシド類似体、パクリタキセル及びその誘導体、抗炎症薬/剤、例えば、非ステロイド性抗炎症薬及びコルチコステロイド、コレステロール低下剤及び血圧降下剤を含めた心臓脈管薬、鎮痛剤、ヒスタミンH1、NK1及び5-HT3受容体アンタゴニストを含めた制吐剤、コルチコステロイド及びカンナビノイド、セロトニン取込み阻害剤を含めた抗精神病剤及び抗うつ剤、プロスタグランジン及び誘導体、ワクチン、及び骨改質剤が含まれる。診断用剤は、放射性核種標識化合物、並びにX線、超音波及びMRIコントラスト強調剤を含めたコントラスト剤を含む。栄養素は、ビタミン、コエンザイム、食事補充サプリメントなどを含む。
【0091】
代わりに、長期間の作用が有益である場合、特に適切な活性剤は、急速な分解又は排泄によって通常は体内で短い滞留時間を有するもの、及び乏しい経口バイオアベイラビリティーを有するものを含む。これらは、それらの天然又は修飾された形態の、ペプチド、タンパク質及び核酸をベースとする活性剤、ホルモン及び他の天然の薬剤を含む。本開示の組成物から形成されるデポー組成物の形態のこのような薬剤を投与することによって、薬剤は、速いクリアランス速度を有するにも関わらず、数日、数週間又はそれどころか数カ月まで引き伸ばし得る期間の間、持続性レベルで提供される。これは、同じ期間についての毎日複数回の投薬に対する安定性及び患者の薬剤服用順守の観点から明らかな利点を提供する。一実施形態では、活性剤は、したがって、1日未満、例えば、12時間未満、例えば、6時間未満の生物学的半減期(血流中への侵入によって)を有する。場合によって、これは、1~3時間若しくはそれ未満ほども低くてもよい。適切な薬剤はまた、注射によって達成されるものに関連して乏しい経口バイオアベイラビリティーを有するものであり、活性剤は、また又は代わりに、経口的に投与される組成物中で、20%未満、例えば、2%未満、例えば、0.2%未満、又は0.1%未満のバイオアベイラビリティーを有する。本開示による適切な活性剤は、低温貯蔵、例えば、冷蔵から恩恵を受けるものである。低い温度での貯蔵は、前記活性剤を含む予備製剤の保存寿命を改善させる。本発明の予備製剤は、したがって(例えば、本明細書に記載のように)「冷蔵を必要としている」活性剤を含み得るか、延長された保存寿命(例えば、18カ月超(例えば、24カ月~5年)又は2年超の保管寿命)から恩恵を受け得るか、又は少なくとも1種の揮発性構成要素(例えば、揮発性溶媒、例えば、エタノール)を含有し得る。このような揮発性構成要素は、その貯蔵が冷蔵温度にて起こる場合、貯蔵の間に予備製剤中により確かに保持される。
【0092】
技術的に実行可能である場合、本明細書において開示される活性剤はまた、それらの塩の形態で使用し得る。活性剤の「塩」がここで言及される場合、これは、薬学的に許容される塩を示す。このような塩は当技術分野で周知であり、例えば、塩基の塩化物塩、酢酸塩若しくはパモ酸塩、又は酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミノ塩若しくはアルキルアミノ塩を含む。
【0093】
本開示の組成物と共に製剤化される生理活性剤の量は、機能的用量、及び投与によって形成されるデポー組成物が持続放出を実現する期間によって決まる。典型的には、特定の薬剤のために製剤化される用量は、通常の1日用量に、デポーが放出を実現する日数を乗じたものに概ね相当する。明らかに、この量は、処置の最初における大用量の有害効果を考慮に入れて調整する必要があり、そのためこれは一般に使用される最大用量である。どのような場合でも適切な正確な量は、適切な実験法によって容易に決定される。
【0094】
実施形態では、本開示の組成物は、1種又は複数のペプチド活性剤を含み得る。ペプチド活性剤は、5~90個又は5~60個の天然及び/又は合成アミノ酸(それぞれ独立に、D-又はL-異性体)、特に、5~50個又は5~40個のアミノ酸を含み得る。一実施形態では、活性剤は、45個以下、例えば、30個以下のアミノ酸残基を有するペプチド活性剤である。一実施形態では、ペプチド活性剤は、環状及び/又は拘束性ペプチド活性剤である。環状ペプチド活性剤は、5~80個のアミノ酸、例えば、6~80個又は8~45個又は10~35個のアミノ酸の環サイズを有し得る。
【0095】
ペプチド及びタンパク質をベースとする活性剤は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及びそのフラグメント、アンジオテンシン及びその関連するペプチド、抗体及びそれらのフラグメント、抗原及びそれらのフラグメント、心房性ナトリウム利尿ペプチド、生体付着性ペプチド、ブラジキニン及びそれらの関連するペプチド、カルシトニン及びアミリン及びそれらの関連するペプチドを含めたカルシトニンペプチド、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)を含めた血管作動性腸ペプチド(VIP)、グルカゴン、及びセクレチン、プロオピオメラノコルチン(POMC)ペプチドを含めたオピオイドペプチド、エンケファリンペンタペプチド、プロダイノルフィンペプチド及び関連するペプチド、膵臓ポリペプチド関連ペプチド様ニューロペプチド(NPY)、ペプチドYY(PYY)、膵臓ポリペプチド(PPY)、細胞表面受容体タンパク質フラグメント、化学走性ペプチド、シクロスポリン、サイトカイン、ダイノルフィン及びそれらの関連するペプチド、エンドルフィン及びP-リドトロピンフラグメント、エンケファリン及びそれらの関連するタンパク質、酵素阻害剤、免疫賦活性ペプチド及びポリアミノ酸、フィブロネクチンフラグメント及びそれらの関連するペプチド、胃腸ペプチド、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト及びアンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド1及び2、成長ホルモン放出ペプチド、免疫賦活ペプチド、インスリン及びインスリン様成長因子、インターロイキン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びそれらの関連するペプチド(下記のようなGnRHアゴニストと同等である)、メラノコルチン受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、メラニン細胞刺激ホルモン及びそれらの関連するペプチド、核局在化シグナル関連ペプチド、ニューロテンシン及びそれらの関連するペプチド、神経伝達物質ペプチド、オピオイドペプチド、オキシトシン、バソプレシン及びそれらの関連するペプチド、副甲状腺ホルモン及びそのフラグメント、タンパク質キナーゼ及びそれらの関連するペプチド、ソマトスタチン及びそれらの関連するペプチド、サブスタンスP及びその関連するペプチド、トランスフォーミング成長因子(TGF)及びそれらの関連するペプチド、腫瘍壊死因子フラグメント、毒素及びトキソイド及び機能性ペプチド、例えば、アンジオスタチンを含めた抗がんペプチド、血圧降下ペプチド、抗血液凝固ペプチド、並びに抗微生物ペプチドからなる群から選択される;タンパク質、例えば、免疫グロブリン、アンジオゲニン、骨形態形成タンパク質、ケモカイン、コロニー刺激因子(CSF)、サイトカイン、成長因子、インターフェロン(I型及びII型)、インターロイキン、レプチン、白血病抑制因子、幹細胞因子、トランスフォーミング成長因子並びに腫瘍壊死因子からなる群から選択される、ヒト及び獣医学の薬物を含む。本開示に適した生理活性剤の興味深いクラスは、糖タンパク質ホルモンファミリー(ゴナドトロピン(LH、FSH、hCG)、甲状腺刺激ホルモン(TSH);プロオピオメラノコルチン(POMC)ファミリー、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH);バソプレシン及びオキシトシンを含めた下垂体後葉ホルモン、成長ホルモン(GH)を含めた成長ホルモンファミリー、ヒト絨毛性乳腺刺激ホルモン(hCS)、プロラクチン(PRL)、PP、PYY及びNPYを含めた膵臓ポリペプチドファミリー;メラニン凝集ホルモン(MCH);オレキシン;GLP-1及びGIPを含めた胃腸ホルモン及びペプチド;グレリン及びオベスタチン;レプチン、アディポネクチン、及びレジスチンを含めた脂肪組織ホルモン及びサイトカイン;ナトリウム排泄増加ホルモン;副甲状腺ホルモン(PTH);カルシトニン及びアミリンを伴うカルシトニンファミリー;インスリン、グルカゴン及びソマトスタチンを含めた膵臓ホルモンのものを含めたペプチドホルモンである。上記で記述したペプチドと同様の受容体親和性スペクトルを有するように設計された全ての合成ペプチドはまた、本開示に非常に適している。
【0096】
本開示のデポー組成物のさらなるかなりの利点は、活性剤が、反復投薬の必要性を伴わずに長期間に亘り徐々に放出されることである。組成物は、したがって、患者の薬剤服用順守が困難で信頼できないか、又は投与量レベルが高度に重要である(例えば、気分を変える効果がある活性成分、狭い治療濃度域を伴うそれらの活性成分、及び小児若しくはその生活習慣が信頼のおける投薬計画と相いれない人々に投与されるもの)状況に高度に適しており、且つ反復投薬の不都合が活性成分の利点よりまさり得る「生活習慣」活性成分に高度に適している。この態様が特定の利点を提供する特定のクラスの活性成分は、避妊薬、避妊用ホルモン、特に、小児において使用されるホルモン、例えば、成長ホルモンを含めたホルモン、抗嗜癖剤、並びに服薬遵守が乏しい集団、例えば、統合失調症、アルツハイマー、又はパーキンソン病を患っている患者の処置において使用される薬物、抗うつ剤及び抗痙攣剤を含む。
【0097】
カチオン性ペプチド及びタンパク質は、ある特定の実施形態において特に適している。この実施形態では、ペプチド又はタンパク質は、オクトレオチド、ランレオチド、カルシトニン、オキシトシン、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン7又はインターロイキン8からなる群から選択し得る。他の適切なカチオン性ペプチド又はタンパク質は、pH7超、例えば、pH8超の等電点を有するものである。
【0098】
一態様において、極性活性剤が、組成物中に含まれる。特に適切な極性活性剤は、ペプチド及びタンパク質活性成分、オリゴヌクレオチド、及び上記で列挙したものを含めた小さい水溶性活性成分を含む。この態様において特に興味深いのは、ペプチドであるオクトレオチド及び他のソマトスタチン関連ペプチド、インターフェロンアルファ及びベータ、グルカゴン様ペプチド1及びグルカゴン様ペプチド2受容体アゴニスト、リュープロレリン及び他のGnRHアゴニスト、アバレリックス及び他のGnRHアンタゴニスト、グラニセトロン及びオンダンセトロン及び他の5-HT3受容体アンタゴニストである。
【0099】
GnRH類似体は、本開示の予備製剤に含み得る1つの特定のクラスの活性剤を形成する。GnRH類似体は、ゴナドトロピン放出ホルモン受容体と相互作用して、その生物学的応答である下垂体ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH)の放出を誘発する合成又は半合成の化合物を含む。GnRH類似体は、GnRHのアゴニスト及びアンタゴニストを含む。本開示における使用のための適切なGnRH類似体は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2006/075125号パンフレットにおいて開示されているものを含む。特に適切なGnRH類似体は、国際公開第2006/075125号パンフレットの1頁33行から2頁29行までのセクションにおいて開示されているものを含む。
【0100】
GnRHはペプチドホルモンであるため、典型的なGnRH類似体は、特に、12個若しくはそれ未満のアミノ酸のペプチドである。典型的には、このようなペプチドは、GnRH I、II及び/若しくはIII、並びに/又はここで列挙したものを含めた公知の類似体の1つ又は複数と構造的に関連している。ペプチドは、遺伝コードにおいて示されるそれらの20個のα-アミノ酸から選択されるアミノ酸のみを含有し得るか、又は代わりに、それらの異性体並びに他の天然及び非天然のアミノ酸(一般に、α、β若しくはγアミノ酸)並びにそれらの類似体及び誘導体を含有し得る。特に適切なGnRH類似体は、6~12個のアルファ-アミノ酸の拘束性ペプチドである。
【0101】
一実施形態では、組成物は、ロイプロリド(リュープロレリンとも称される)、ゴセレリン、ヒストレリン、トリプトレリン、ブセレリン、デスロレリン、及びナファレリンからなる群から選択されるゴナドトロピン放出ホルモン受容体アゴニストを含む。本開示の一実施形態では、予備製剤は、ゴセレリンを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0102】
存在する場合、GnRH類似体は一般に、(遊離塩基の量に基づいて)総組成物の0.02~12重量%として製剤化される。典型的な値は、0.1~10%、例えば、0.2~8%、例えば、0.5~6%、例えば、1~5%である。
【0103】
組成物中に含まれるのに適したGnRH類似体の用量、及びしたがって、使用される組成物の容量は、放出速度(例えば、溶媒のタイプ及び使用する量によって制御されるような)並びに放出持続時間、並びに望ましい治療レベル、特定の薬剤の活性、並びに選択した特定の活性成分のクリアランスの速度によって決まる。典型的には、用量毎に0.1~500mgの量は、7~180日間の治療レベルを実現するのに適している。実施形態では、組成物中のGnRH類似体の用量は、1~200mgであり得る。ロイプロリド又はゴセレリンを含む組成物について、レベルは典型的には、(例えば、30~180日の持続時間について)概ね1~120mgである。ロイプロリドの適切な量は、30日~1年に亘る放出のために設計したデポー、例えば、3~6カ月に亘る放出のために設計したデポーについて、注射の間に1日当たり概ね0.02~1mgである。明らかに、活性成分の安定性及び放出速度の直線性は、持続時間に対する充填が直線関係でなくてもよいことを意味する。30日毎に投与するデポーは、例えば、2~30mgのGnRH類似体を有し得る。90日デポーは、6~90mgのGnRH類似体、例えば、本明細書において示すGnRH類似体の1つを有し得る。
【0104】
ソマトスタチン及びソマトスタチン類似体は、本開示の組成物中に含み得る別の特定のクラスの活性剤を形成する。ソマトスタチン(成長ホルモン放出抑制因子、SST)は、動物における広範な分布を伴う、中枢神経系における神経伝達物質として作用し、且ついくつかの組織上に多様なパラクリン/オートクリン調節効果を有する、天然ペプチドホルモンである。2つの生物活性のある生成物であるSST-14及びSST-28は、より高度な種において公知であり、後者は、N末端において伸長しているSST-14の同類物である。SST-14は、重要な結合配列においてII型β-ターンを生じさせるジスルフィド架橋を有する14残基の環状ペプチドホルモンである。
【0105】
本開示において使用するための適切なソマトスタチンは、内因性SST-14及びSST-18、並びにソマトスタチン類似体、例えば、国際公開第2008/152401号パンフレットにおいて開示されているものを含む。SST-14は、ペプチドホルモンであるため、典型的には、ソマトスタチン受容体アゴニストは、特に、14個若しくはそれ未満のアミノ酸のペプチドである。典型的には、このようなペプチドは、例えば、環状であること及び/又は少なくとも1個の分子内架橋を有することによって構造的に拘束されている。アミド、エステル又は特に、ジスルフィド架橋は、高度に適している。一部の実施形態では、ソマトスタチン類似体は、2型βターンを示す。このようなターンは、ソマトスタチンの重要な領域中に存在する。ペプチドは、遺伝コードにおいて示されるそれらの20個のα-アミノ酸から選択されるアミノ酸のみを含有し得るか、又はそれらの異性体並びに他の天然及び非天然のアミノ酸(一般に、α、β若しくはγ、L-若しくはD-アミノ酸)並びにそれらの類似体及び誘導体を含有し得る。
【0106】
本開示の組成物において使用するための特に適切なソマトスタチン類似体は、国際公開第2008/152401号パンフレットの20頁24行から21頁19行までのセクションにおいて開示されているものを含む。一部の実施形態では、組成物は、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチド(SOM230とも称される)、及びそれらの塩からなる群から選択される内因性ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を含み得る。いくつかにおいて、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体は、SST-14又はオクトレオチド、及びそれらの塩である。
【0107】
存在するとき、ソマトスタチン受容体アゴニストは一般に、(遊離塩基の量に基づいて)総組成物の0.1~12重量%として製剤化される。典型的な値は、0.1~10%、例えば、0.5~9%、例えば、1~8%、例えば、1~7%又は2~6%である。
【0108】
組成物中に含まれるのに適したソマトスタチン受容体アゴニストの用量、及びしたがって、使用される組成物の容量は、放出速度(例えば、溶媒のタイプ及び使用する量によって制御されるような)及び放出持続時間、並びに望ましい治療レベル、選択した特定の活性成分の活性及びクリアランスの速度によって決まる。典型的には、用量毎に1~500mg又は5~300mgのソマトスタチン類似体の量は、7~90日間治療レベルを実現するのに適している。オクトレオチドについて、そのレベルは典型的には、(例えば、30~90日の持続時間の間)概ね10~180mgである。典型的には、オクトレオチドの量は、注射の間に1日当たり概ね0.2~3mgである。このように、30日毎に投与されるデポーは、6~90mgを有するか、又は90日デポーは、18~270mgのオクトレオチドを有する。
【0109】
パシレオチドについて、投与量は典型的には、1~24週間の持続時間、例えば、2~16週間の持続時間、例えば、3週間、4週間、8週間、10週間又は12週間について、デポー持続時間の1週間当たり概ね0.05~40mgの量、例えば、1週間の持続時間当たり0.1~20mg(例えば、1週間当たり1~5mg)である。代わりの実施形態では、組成物は、毎週(例えば、7日±1日毎)の投薬のために製剤化し得る。用量毎に0.05~250mgのパシレオチドの総用量は、治療レベルを7日~168日間実現するのに適している。一部の実施形態では、パシレオチドの用量は、0.1~200mg、例えば、0.2~150mg、例えば、0.1~100mg、例えば、20~160mgであり得る。明らかに、活性成分の安定性及び放出速度に対する効果は、持続時間に対する充填が直線関係でなくてもよいことを意味する。30日毎に投与されるデポーは、例えば、0.2~20mgのパシレオチドを有し得るか、又は90日デポーは、30~60mgのパシレオチドを有し得る。
【0110】
別の実施形態では、予備製剤は、内因性ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体ではない活性剤を含む。例えば、ペプチド活性剤は、SST(1)~SST(5)受容体(特に、対応するヒト受容体)のいずれかにおけるアゴニスト又はアンタゴニストとして相互作用しないペプチドであり得る。
【0111】
この代わりの実施形態では、このような予備製剤は、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体活性剤を含有しない。すなわち、前述のセクションにおいて記載したソマトスタチン類似体の範囲内に入らない活性剤が存在する。特に、この実施形態では、予備製剤は、内因性ソマトスタチン、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、バプレオチド又はパシレオチド又はそれらの塩から選択されない活性剤を含み得る。さらに、この実施形態では、内因性ソマトスタチン、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、バプレオチド又はパシレオチドは、予備製剤から完全に排除し得る。一実施形態では、予備製剤は、ソマトスタチン、ソマトスタチン受容体アゴニスト及びソマトスタチン類似体を伴わない。
【0112】
本開示の予備製剤中に含有し得る他の活性剤は、
GnRHアンタゴニスト、例えば、セトロレリクス、ガニレリクス、アバレリックス、デガレリクス;
GLP-1及びその類似体、例えば、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)アミド、リラグルチド、セマグルチド、エキセナチド、及びリキシセナチド(AVE0010);
グルカゴン様ペプチド2アゴニスト(GLP-2)及びその類似体、例えば、GLP-2及びエルシグルチド(ZP1846);
DPPIV阻害剤;ナトリウム/グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤
を含む。
【0113】
本開示に適した他のペプチドは、アンジオペプチン、アンジオテンシンI、II、III、アンチロイキナート、抗炎症性ペプチド2、アプロチニン、ブラジキニン、ボンベシン、カルシトニン、カルシトリオール、コレシストキニン(CCK)、コロニー刺激因子、コルチコトロピン放出因子、C-ペプチド、DDAVP、デルモルフィン由来テトラペプチド(TAPS)、ダイノルフィン、エンドルフィン、エンドスタチン、エンドセリン、エンドセリン-1、エンケファリン、上皮成長因子、エリスロポエチン、線維芽細胞成長因子、卵胞刺激ホルモン、フォリスタチン、フォリトロピン、ガラニン、ガラニン様ペプチド、ガレクチン-1、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、G-CSF、グレリン、グリア由来神経栄養因子、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、肝細胞成長因子、インスリン、インスリン様成長因子-I及びI、インターフェロン、インターロイキン、レプチン、白血病抑制因子、メラノコルチン1、2、3、4、メラニン細胞刺激ホルモンメタスチン、単球化学走性タンパク質-1(MCP-1)、モルフィセプチン、NEP1-40、ニューロペプチドY、ニューロペプチドW、オレキシン-A及びオレキシン-B、オキシトシンp21-Cip1/WAF-1、TAT融合タンパク質、副甲状腺ホルモン、色素上皮由来成長因子(PEDF)、ペプチド、ペプチド、プロレニンハンドル領域、ペプチドYY(3-36)、血小板活性化因子、血小板由来成長因子、プロレニンデカペプチド、プロテグリン-1、PR39、プロラクチン、リラキシン、セクレチン、サブスタンスP、腫瘍壊死因子、ウロコルチン、血管内皮成長因子、血管作動性腸管ペプチド、バソプレシンを含む。
【0114】
オピオイド、例えば、モルヒネ、ヒドロモルホン、及びオキシコドンの短い消失半減期は、これらの薬剤が24時間休みなしの鎮痛を達成するために頻繁に投与されることを必要とし、これによって、これらは長時間作用性放出製剤のための優れた候補となる。フェンタニル及びブプレノルフィンはかなりの初回通過代謝を受け、経口投与後に十分なバイオアベイラビリティーを欠いている。それらの高い効力と共に、フェンタニル及びブプレノルフィンは、本開示の長時間作用性注射デポー組成物のための優れた候補である。スフェンタニル、レミフェンタニル、オキシモルホン、ジモルホン、ジヒドロエトルフィン、ジアセチルモルヒネは、本開示における使用に適した他の強力なオピオイド受容体アゴニストである。
【0115】
ブプレノルフィンはまた、オピオイド嗜癖、並びに場合によってまた、コカイン及びアンフェタミン及びメタンフェタミン嗜癖の維持処置のために使用され、ここで、現在の舌下ブプレノルフィン製剤は、低いバイオアベイラビリティー、高い可変性及び限定された効果持続に難儀しており、特に、朝における予測不可能な用量応答及び離脱症状を伴う課題をもたらす。これらの課題は、本開示の注射デポー組成物を使用することによって効果的に取り組まれ、高い舌下用量の必要性が注射によって利用され、効果が同じ用量について相当により高く、したがって、薬物の誤用を促進する、誤用及び指示違いによる問題と同様である。同様に、オピオイドアンタゴニストは、本開示によって提供するような好都合な注射デポー系を使用して、嗜癖を処置するために使用することができる。本開示と共に使用するための適切なオピエートアンタゴニストは、ナロキソン、ナルメフェン、及びナルトレキソンである。
【0116】
リスペリドン、イロペリドン、パリペリドン、オランザピン、アセナピン、ジプラジドン及びアリピプラゾールを含めた抗精神病剤はまた、患者による改善された処置遵守についての可能性を考慮して、及び長期に亘る安定な血漿レベルを実現することによって、本開示のために高度に適している。同様に、本開示は、認知に悪影響を与える認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病の処置において有用である。適切な活性成分は、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、及びエマンチン、ラサギリン及びプラミペキソールを含む。
【0117】
本開示の予備製剤中に含有し得る活性剤の別の群は、5HT3アンタゴニストである。5HT3アンタゴニストは、第一世代及び第二世代の5HT3アンタゴニストを含む。一実施形態では、予備製剤は、オンダンセトロン、トロピセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、シランセトロン及び/若しくはラモセトロン又はこれらの混合物からなる群から選択される5HT3アンタゴニストを含む。組成物中に含まれるのに適した5HT3アンタゴニストの用量、及びしたがって、使用される予備製剤の容量は、放出速度(例えば、溶媒のタイプ及び使用する量によって制御されるような)及び放出持続時間、並びに望ましい治療レベル、特定の薬剤の活性、並びに選択された特定の活性成分のクリアランスの速度によって決まる。典型的には、用量毎に1~500mgの量は、5~90日間の治療レベルを実現するのに適している。このような量は、用量毎に1~300mgであり得る。グラニセトロンについて、そのレベルは典型的には、(例えば、3~60日の持続時間について)概ね10~180mgである。典型的には、グラニセトロンの量は、30日~1年に亘る放出のために設計されたデポー、例えば、3~6カ月に亘る放出のために設計されたデポーについて、注射の間に1日当たり概ね0.2~3mgである。明らかに、活性成分の安定性及び放出速度の直線性は、持続時間に対する充填が直線関係でなくてもよいことを意味する。30日毎に投与されるデポーは、例えば、2~30mgを有し得るか、又は90日デポーは、6~90mgの活性成分を有する。
【0118】
実施形態では、活性剤は、グラニセトロン、ブプレノルフィン、又はグラニセトロン及びブプレノルフィンの混合物、並びにそれらの塩である。
【0119】
実施形態では、組成物は、ソマトスタチン受容体アゴニストではない少なくとも1種の活性剤を含む。この実施形態では、組成物は、ソマトスタチン受容体アゴニストを完全に伴わなくてもよい。このように、組成物は、(特に、ヒトにおける)SST(1)~SST(5)受容体のいずれかにおけるアゴニスト又はアンタゴニストとして相互作用する活性剤を伴わなくてもよい。
【0120】
他の任意選択の構成要素
一実施形態では、予備製剤は、少なくとも10ppmのEDTAを含む。例えば、アミン、例えば、エタノールアミン及びEDTAを含む適切な予備製剤は、完全な文献が参照により本明細書中に組み込まれている国際公開第2018/060212号パンフレット(特に、18~21頁)に記載されている。予備製剤中にEDTAが存在することを可能とする適当なEDTA塩は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、トリス-ヒドロキシメチルアミン、エチレンジアミン及び/又はセリノールのテトラキス(エタノールアンモニウム)EDTA又はEDTA塩を含む。
【0121】
投与
本開示の予備製剤は一般に、非経口的に、例えば、皮下注射によって投与されるように製剤化される。この投与は一般に血管内の方法ではないが、皮下(s.c.)、腔内又は筋内(i.m.)である。典型的には、投与は注射により、この用語は、本明細書において、製剤が、例えば、針、カテーテル又は針なし(針を伴わない)インジェクターによって皮膚を通過する任意の方法を示すために使用される。
【0122】
好ましい非経口投与は、i.m又はs.c.注射、最も好ましくは、s.c.注射による。本開示の組成物の重要なフィーチャは、毒性又はかなりの局所効果を伴わずに、これがi.m.及びs.c.並びに他の経路の両方によって投与することができることである。これはまた、体腔内投与に適している。深部s.c.注射は、いくつかの現在のデポーのために使用される(深部)i.m.注射より深部でなく、且つ対象にとってより痛くない利点を有し、これが注射の容易さと低リスクの局所的副作用とを合わせるため、この場合技術的に最も適切である。製剤は、皮下及び筋肉内注射の両方によって予測可能な期間に亘り活性剤の持続放出を実現することは本発明者らの驚くべき観察である。これは、したがって、注射の部位が広範に変化することを可能とし、注射の部位における組織深度の綿密な考慮を伴わずに用量が投与されることを可能とする。
【0123】
本開示の全ての態様に適用可能である一実施形態では、本明細書において開示される予備製剤は、典型的には、事前充填されたガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ(例えば、ガラス製シリンジ又はカートリッジ)(ただし、内部表面は、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を伴わない)、製剤を排出するための機械的又は電気的手段(例えば、張力若しくは圧縮下のバネ若しくは他の弾性材料、又はバッテリーを有する電気モーター)、注射を開始するためのトリガー又はスイッチ、及びそれを通って注射が達成される針を含む自動注射装置、例えば、オートインジェクターを用いて投与し得る。本開示の任意の製剤を充填したこのようなオートインジェクターは、さらなる態様を明らかに形成する。
【0124】
本開示の好ましい脂質予備製剤は、特に、in vivoでの水性液体への曝露によって、非ラメラ液晶デポー組成物を提供する。本明細書において使用する場合、用語「非ラメラ」は、通常若しくは逆の液晶相(例えば、立方相若しくは六方相)又はL3相又は任意のこれらの組み合わせを示すために使用される。液晶という用語は、全ての六方液晶相、全ての立方液晶相及び/又は全てのこれらの混合物を示す。六方晶は、本明細書において使用するように、他に特定しない限り、「通常」又は「逆の」六方晶(好ましくは、逆の)を示し、「立方晶」は、任意の立方液晶相を示す。熟練した読者は、本明細書において提供する記載及び実施例、並びに国際公開第2005/117830号パンフレットを参照することによって適当な相挙動を有するそれらの組成物を同定することにおいて困難を有さないが、相挙動についての最も好ましい組成上の領域は、構成要素i):リン脂質の比が、40:60~70:30、好ましくは、45:55~55:45、より好ましくは、40:60~54:46の領域中にある。概ね50:50(例えば、±2)の比が、高度に好ましく、最も好ましくは、概ね50:50であるものである。
【0125】
本開示の予備製剤は、(例えば、本明細書において考察されているように)低粘度のものであることを認識することが重要である。その結果、全ての液晶相は、シリンジ又は同様の注射ディスペンサーによって投与することができるよりも有意に高い粘度を有するため、これらの予備製剤はバルク液晶相中にあってはならない。本開示の予備製剤は、したがって、非液晶状態、例えば、溶液、L2又はL3相、特に、溶液又はL2中にある。L2相は、本明細書を通して使用するように、好ましくは、粘度低減効果を有する5重量%超、好ましくは、7重量%超、最も好ましくは、9重量%超の有機モノアルコール溶媒を含有する「膨張した」L2相である。L2相中にある本開示の予備製剤は、1つの好ましいセットの予備製剤を形成し、これらは一般に、極性溶媒として少なくとも2%の水を含有する。
【0126】
本明細書において使用する場合、用語「低粘度混合物」は、対象へと容易に投与し得、特に、標準的なシリンジ及び針のアレンジを用いて容易に投与し得る混合物を示すために使用される。これは、例えば、1mlの使い捨て注射器から小さいゲージ針を通して分注される能力によって示し得る。好ましくは、低粘度混合物は、19ゲージの針、好ましくは、19ゲージ未満、例えば、22G(22ゲージ)、より好ましくは、23G(任意選択でそれどころか25ゲージ又は27ゲージ又は29ゲージ)の針を通して手による圧力によって分注することができる。特に好ましい実施形態では、低粘度混合物は、標準的な除菌濾過膜、例えば、0.22μmのシリンジフィルターを通過することができる混合物であるべきである。適切な粘度の典型的な範囲は、例えば、25℃にて1~1000mPas又は本明細書において考察されている他の粘度である。粘度の適切な範囲は、25℃にて200~600mPas又は25℃にて300~500mPasを含む。本開示の全ての態様に適用可能である実施形態では、薄肉(TW)、超薄肉(ETW)及び超薄肉(UTW)針が典型的には使用される。適切な針は、22G UTW及び23G TWを含む。
【0127】
本明細書において示すように少量の低粘度有機モノアルコール溶媒を添加することによって、粘度における非常にかなりの変化を実現することができることが観察されてきた。例えば、脂質混合物への5%溶媒のみの添加は、粘度を100分の1に低減させることができ、10%の添加は、粘度を10,000分の1まで低減させ得る。粘度を低下させることにおいてこの非直線的な相乗効果を達成するために、適当に低粘度及び適切な極性の溶媒が用いられることが重要である。このような溶媒は、本明細書の下記に記載されているものを含む。好ましい低粘度の混合物は、他の構成要素の分子性溶液中のペプチド活性剤の分散物を含む分子性溶液を含む。
【0128】
投与によって、本開示の好ましい脂質をベースとする予備製剤は、低粘度混合物から高粘度(一般に、組織接着性)デポー組成物への相構造転移を受ける。一般に、これは、分子混合物、膨張したL2及び/又はL3相から、1種又は複数の(高粘度)液晶相、例えば、通常若しくは逆の六方液晶相若しくは立方液晶相又はこれらの混合物への転移である。さらなる相転移はまた、投与に続いて起こり得る。明らかに、完全な相転移は、本開示が機能することのために必要ではないが、投与された混合物の少なくとも表面層は、液体結晶構造を形成する。一般に、この転移は、投与された製剤の少なくとも表面領域(空気、体表及び/又は体液と直接接触するその部分)について急速である。これは、最も好ましくは、数秒又は数分(例えば、1秒から30分まで、好ましくは、10分まで、より好ましくは、5分若しくはそれ未満)に亘る。組成物の残りは、拡散によって及び/又は表面領域が分散するにつれ、よりゆっくりと液晶相へと相変化し得る。
【0129】
理論に束縛されるものではないが、過剰な水性液体への曝露によって、本開示の予備製剤は、その中に含まれる有機溶媒のいくらか又は全てを失い(例えば、拡散によって)、体の環境(例えば、in vivoでの環境)からの水性液体を取り入れると考えられる。脂質予備製剤について、製剤の少なくとも一部は好ましくは、非ラメラ、特に、液晶相構造を生じさせる。殆どの場合、これらの非ラメラ構造は、高度に粘性であり、in vivoでの環境へと容易に溶解又は分散されない。結果は、体液へと曝露される単に限定された領域を伴うin vivoで生じる一体構造の「デポー」である。さらに、非ラメラ構造は大きな極性領域、無極性領域及び境界領域を有するため、脂質デポーは、活性剤、例えば、ペプチドを可溶化及び安定化し、且つこれらを分解機序から保護することにおいて高度に有効である。予備製剤から形成されるデポー組成物は数日、数週間又は数カ月に亘って徐々に分解するため、活性剤は、組成物から徐々に放出され、且つ/又は拡散する。デポー組成物内の環境は、相対的に保護されているため、本開示の予備製剤は、相対的に低い生物学的半減期を有する活性剤に高度に適している(上記を参照されたい)。
【0130】
予備製剤中に少なくとも10%の極性溶媒(特に、少なくとも5%の水)を組み込むことによって、注射された予備製剤の表面における非ラメラ(例えば、液晶)相への相転移の速度は、水が実質的にないときに有機溶媒を含有する組成物と比べて増進することができると考えられる。このように得られたデポーの性能はしたがって改善し、活性剤の放出に対するさらなる制御が達成される。
【0131】
本開示の製剤によって形成されるデポー系は、分解から活性剤を保護することにおいて高度に有効であり、したがって、持続放出期間を可能とする。このように、本開示の製剤は、5~90日、好ましくは、5~60日、より好ましくは、6~32日毎に1回のみの投与が必要である、ペプチド活性剤のin vivoでのデポーを提供し得る。明らかに、患者の快適さ及び服薬遵守のためにより長い安定な放出期間が望ましく、組成物が自己投与されない場合、医療従事者からより少ない時間を要求する。組成物が自己投与される場合、患者の薬剤服用順守は、毎週(例えば、7日毎、任意選択で、±1日)又は毎月(例えば、28日又は30日毎、任意選択で、±7日)の投与によって助けられてもよく、その結果、投与する必要性を忘れない。
【0132】
本開示のデポー前駆体のかなりの利点は、これらが安定な均一相であることである。すなわち、これらは、相分離を伴わずに室温又は冷蔵庫温度にてかなりの期間(好ましくは、少なくとも6カ月)貯蔵し得る。有利な貯蔵及び容易な投与を提供すると共に、これは、ペプチド活性剤(例えば、ソマトスタチン類似体、例えば、オクトレオチド)の用量が、選択した容量を注射することによって、個々の対象の種、年齢、性別、体重、及び/又は健康状態を参照することにより選択されることを可能とする。
【0133】
このように、本開示は、特に、対象の体重によって、個人に特異的である投薬量を選択することを含む方法を提供する。この用量選択のための手段は、投与容量の選択である。
【0134】
本開示の予備製剤は、それらの最終の「すぐに投与できる」形態で長期貯蔵に対して安定であるという点において高度に有利である。その結果、医療従事者による、又は十分に訓練を受けた医療従事者である必要がなく、且つ複雑な調製物を作製する経験又はスキルを有し得ない患者若しくはそれらの介護人による投与のために、これらは容易に供給し得る。これは、長期のゆっくりと影響を与える疾患、例えば、糖尿病において特に重要である。
【0135】
脂質をベースとする予備製剤中の脂質構成要素の量は典型的には、総製剤の少なくとも40重量%(例えば、40~95重量%、例えば、50~90重量%又は50~80重量%)である。
【0136】
本明細書において使用する場合、用語「寿命の長い沈殿物」及び「目視による沈殿物」は、予備製剤が室温(15~25℃、例えば、25℃)にて、少なくとも15分、例えば、少なくとも30分又は少なくとも1時間(例えば、1~24時間)の期間平衡化されるとき、再溶解されない、予備製剤(例えば、ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ中の脂質をベースとする予備製剤)中の不溶性沈殿物(例えば、粒子)を示すために使用される。用語「冷蔵条件」は、0℃~10℃の温度、例えば、2℃~8℃の温度を示すために使用される。注射用製剤、例えば、非経口製剤、例えば、本明細書に記載のような脂質をベースとする予備製剤は、規制上の要求に直面しており、非経口(例えば、皮下投与)のための製剤中の粒子/沈殿物の存在は政府機関によって規制される。脂質をベースとする予備製剤を含有する本明細書に記載されているガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジは、目視による沈殿物及び/若しくは混濁度を(本質的に)伴わない(透明な液体)と記載され、これは、USP<790>に従って決定し得る。さらに、脂質をベースとする予備製剤を含有する本明細書に開示されているような容器(シリンジ又はカートリッジ)は、USP<788>によって決定すると、6000個以下(NMT)の10μm以上の粒子(沈殿物及び/若しくは混濁度)、及び/又はNMT600個の25μm以上の粒子(沈殿物及び/若しくは混濁度)を含有する。USP<788>によると、粒子は、「注射剤及び非経口注入液中の微粒子状物質は、意図せずに溶液中に存在する気泡以外に可動な溶解していない粒子からなる」として理解され、すなわち、USP<788>は、沈殿物及び/若しくは混濁度の検出、及び定量化に適している。本明細書及び添付の特許請求を通して、USP<788>は、USP<790>に置き換えられるか、又はUSP<790>と併せて使用し得ることを理解すべきである(USP<788>に対するヨーロッパの代替物は、ヨーロッパ薬局方2.9.19である)。容器の試験は、方法1(光遮断試験)を使用して行ってもよく、このような容器が規格範囲外である場合、試験は、方法2(顕微鏡による粒子カウント)を使用して繰り返してもよい。
【0137】
用語「脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジは、目視による沈殿物を本質的に伴わない」、及び澄んでいるという用語が使用され、これは、予備製剤が、対象において非経口、例えば、皮下注射のために許容されると理解される。
【0138】
ジアシルグリセロール組成物の使用
一態様において、本開示は、i)本開示の第1の態様によるジアシルグリセロール組成物、及びii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒を含む、予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させることにおいて、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール組成物の使用を提供する。
【0139】
一実施形態では、使用は、ジアシルグリセロール組成物の使用に関し、本開示の第1の態様によるジアシルグリセロール組成物は、予備製剤中に存在する唯一のジアシルグリセロールであり、すなわち、予備製剤は、本開示の第1の態様によるジアシルグリセロール組成物以外のジアシルグリセロール組成物を実質的に伴わない。
【0140】
生体適合性有機溶媒構成要素ii)は、本開示の第1の態様による予備製剤の構成要素ii)と同じである。本開示の使用における生体適合性有機溶媒構成要素ii)は、したがって、本開示の態様による予備製剤の生体適合性有機溶媒構成要素ii)に関して記載される実施形態のいずれかと同じであり得る。
【0141】
一実施形態では、本開示のジアシルグリセロール組成物の使用は、予備製剤が、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて、少なくとも24時間、例えば、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月(例えば、6カ月~3年)の期間貯蔵されるとき、前記予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させることにおける使用である。このような「低温貯蔵」期間及び条件は、文脈が許与する場合、全ての態様に適用可能である。
【0142】
本明細書において使用する場合、用語「寿命の長い沈殿物」、「沈殿物」、「混濁度」、「乳光」は、予備製剤における変化、例えば、予備製剤が低温貯蔵に続いて、室温(例えば、25℃)にて少なくとも1時間(例えば、1~24時間)の期間平衡化/再調節されるとき、再溶解されない沈殿物を示すために使用される。代替の再調節方法は、投与の前に再調節するのに十分な時間、例えば、1~10分間、体温の助けによって(例えば、人体との接触、例えば、シリンジを手の中で保持することによって)、事前充填されたシリンジを温めること、又は活性剤及び/又は脂質をベースとする製剤へとマイナスの効果をもたらすことがない任意の適切な方法である。投与(注射)の前の再調節はまた、本明細書に記載されている脂質をベースとする組成物を含む事前充填されたシリンジを、概ね45~180°の円弧を通って手中で5~50回(例えば、概ね10~20回)方向転換することが関与することが多い。
【0143】
別の態様において、本開示は、予備製剤が、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて、少なくとも24時間、例えば、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月(例えば、6カ月~3年)の期間貯蔵されたとき、(i)ジアシルグリセロール組成物;及び(ii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒を含む前記予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させるための方法を提供し;前記方法は、本開示の第1の態様によるジアシルグリセロール組成物を有する前記予備製剤を形成させることを含む。特に、記載されている使用は、シリコーン潤滑剤を伴わないガラス製シリンジ、又はガラス製カートリッジと合わせた、本明細書に記載のような予備製剤中である。
【0144】
事前充填されたガラス製シリンジ
一態様において、本開示は、内部表面を有するシリンジバレルを含む、(本明細書における任意の実施形態において記載するような)脂質をベースとする製剤を事前充填された、事前充填されたガラス製シリンジを提供し、脂質をベースとする製剤と常に接触しているシリンジバレルの内部表面の部分は、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を伴わない。脂質をベースとする製剤を事前充填された、事前充填されたガラス製シリンジが、事前塗布された潤滑剤を実質的に伴わない脂質をベースとする組成物と常に接触しているシリンジバレルの内部表面の部分を伴って調製されるとき、冷蔵条件下での貯蔵の後の脂質をベースとする製剤中の寿命の長い沈殿物の形成が防止されることを本発明者らは驚いたことに確立した。事前充填されたガラス製シリンジに代わるものは、例えば、オートインジェクター、例えば、ペンに適した事前充填されたガラス製カートリッジである。
【0145】
本明細書において使用する場合、用語「脂質をベースとする製剤」は、脂質構成要素を含む任意の製剤を意味する。一実施形態では、脂質をベースとする製剤は、ジアシル脂質を含む。一実施形態では、脂質をベースとする製剤は、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロールを含む。一実施形態では、脂質をベースとする製剤は、過剰な水性液体と接触して、少なくとも1種の液晶相構造を形成するか、又は形成することができる。一実施形態では、脂質をベースとする製剤は、本開示の第2の態様による(本明細書における任意の実施形態において記載するような)予備製剤である。
【0146】
一実施形態では、事前充填されたガラス製シリンジは、活性剤を含む脂質をベースとする製剤を含む。一実施形態では、活性剤は、冷蔵を必要としているものである。一実施形態では、活性剤は、ペプチド活性剤、例えば、45個以下、例えば、30個以下のアミノ酸残基を有するペプチド活性剤である。一実施形態では、活性剤は、環状及び/又は拘束性ペプチド活性剤である。一実施形態では、活性剤は、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体、例えば、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、及びバプレオチド、又はそれらの塩からなる群から選択されるソマトスタチン又はソマトスタチン類似体である。一実施形態では、活性剤は、オクトレオチド又はそれらの塩、好ましくは、塩化オクトレオチドである。
【0147】
本明細書において使用する場合、任意の事前塗布された潤滑剤を「実質的に伴わない」表面は、任意の事前塗布された潤滑剤の1面積%未満(例えば、1%又は0.000%)、好ましくは、0.1面積%未満、最も好ましくは、0.01面積%未満までカバーされた表面を指す。
【0148】
一実施形態では、脂質をベースとする製剤と常に接触しているシリンジバレルの内部表面の部分は、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を実質的に伴わない。
【0149】
本開示の事前充填されたガラス製シリンジは、驚くほど低い離脱力を有する。離脱力は、シリンジバレルと反対側のシリンジプランジャーの動きを開始するのに必要とされる力の最大量である。これは、シリンジプランジャー及びシリンジバレルの間の静止摩擦を克服するのに必要とされる力を表し、したがって、組成物を注射するのにどれくらい容易であるかの尺度である。
【0150】
一実施形態では、事前充填されたガラス製シリンジは、35N以下、好ましくは、30N以下、好ましくは、25N以下、好ましくは、20N以下、好ましくは、15N以下、好ましくは、10N以下の離脱力を有する。
【0151】
理論に束縛されるものではないが、脂質をベースとする製剤は、十分な潤滑を実現し、潤滑剤の必要性を伴わずに事前充填されたシリンジが過剰な力を伴わずに操作することを可能とすると考えられる。
【0152】
本明細書において言及する「事前塗布された潤滑剤」は、典型的には、ガラス製シリンジへと塗布されて、それらの滑らかで耐えられるほどに低い摩擦の作動を可能とする任意の潤滑剤である。このような潤滑剤は、当技術分野で周知である。例は、石油をベースとする潤滑剤又はシリコーン潤滑剤を含み得る。
【0153】
薬物製品
本明細書に記載のように、延長放出(持続放出など)の薬物製品を使用した新規な処置オプションが必要とされている。このような薬物製品の一例は、脂質をベースとする予備製剤を含有するガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジであり、ガラス製シリンジの少なくとも内部表面は、脂質をベースとする予備製剤と接触しており、前記内部表面は、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を伴わず、脂質をベースとする予備製剤は、
a)20~80重量%の、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロール;
b)20~80重量%のリン脂質;
c)1~30重量%の溶媒;
d)生理活性剤(例えば、10℃未満の温度での貯蔵を必要とする)
を含み;
ここで、a)及びb)は、脂質をベースとする予備製剤の総脂質含量の少なくとも94重量%であり、脂質をベースとする予備製剤は、10℃以下、例えば、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度での少なくとも1カ月間の貯蔵、及びそれに続く室温での少なくとも1時間の期間の平衡化の後、USP<790>及び/又はUSP<788>に従って決定するように、20℃にて1000mPas未満の粘度を有する透明な液体(例えば、曇り又は混濁度がない)であり、目視による沈殿物を本質的に伴わない。
【0154】
異なる構成要素、例えば、本明細書に記載されているガラス製シリンジ、予備製剤、任意選択のストッパーは、本明細書に記載のような予備製剤を含む薬物製品、すなわち、ガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジへとアセンブルされるとき、活性剤の長期間の貯蔵を可能とし、そのために、十分な長期間の安定性、例えば、少なくとも1年以上を達成し、個々の構成要素が別々では達成できなかったことを可能とするために、低温貯蔵、例えば、凝固点超及び10℃までが必要又は望ましい。延長放出処置のための1種又は複数の活性剤を含有する脂質をベースとする予備製剤の安全及び効率的な投与を実現するために必要とされる、本明細書において開示されている脂質をベースとする予備製剤の複雑さ、ガラス表面との相互作用、及び特に、事前塗布されたシリコーン潤滑剤、注射性(例えば、注射力、離脱力など)などは、特に、沈殿物を伴わず、且つ混濁度及び/又は乳光を伴わない液体予備製剤(活性剤を含めた)を提供する必要性を考慮して難易度が高いことが証明されてきた。本明細書において開示されているガラス製シリンジ又はガラス製カートリッジ、並びに様々な態様及び実施形態は、このように組み合わせて、冷蔵貯蔵に適した薬物製品の提供、及び冷蔵を必要としている活性剤を含む脂質をベースとする長時間作用性処置(例えば、長期間)を提供することを可能としてきた。
【0155】
実施形態のリスト
E1)ジアシルグリセロール組成物であって、少なくとも97.0重量%、例えば、少なくとも97.5重量%、例えば、少なくとも98.0重量%、例えば、少なくとも98.5重量%の、16~20個の炭素原子及び1個又は2個の炭素-炭素二重結合をそれぞれ独立に有する2個の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロールを含む、ジアシルグリセロール組成物。
E2)ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定して、3重量%未満の飽和脂肪酸残基を含む、E1に記載のジアシルグリセロール組成物。
E3)ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定して、2重量%未満、例えば、1重量%未満の飽和脂肪酸残基を含む、E1に記載のジアシルグリセロール組成物。
E4)組成物中の飽和脂肪酸残基の量が、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って計算される、E2又はE3に記載のジアシルグリセロール組成物。
E5)ジアシルグリセロールが、1,2-ジアシルグリセロール及び1,3-ジアシルグリセロールの混合物である、E1~E4に記載のジアシルグリセロール組成物。
E6)1,2-ジアシルグリセロールと1,3-ジアシルグリセロールの異性体比が、5:1~1:5、例えば、4:1~1:4、例えば、1:1.5~1:3.5である、E5に記載のジアシルグリセロール組成物。
E7)ジアシルグリセロールが、ジオレイン酸グリセロールである、E1~E6に記載のジアシルグリセロール組成物。
E8)2重量%以下、例えば、1.5重量%以下、例えば、1重量%以下、例えば、0.5重量%以下のモノアシルグリセロールを含む、E1~E7に記載のジアシルグリセロール組成物。
E9)2.5重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1.5重量%以下のトリアシルグリセロールを含む、E1~E8に記載のジアシルグリセロール組成物。
E10)予備製剤であって、
i)先行する請求項のいずれか一項に記載のジアシルグリセロール組成物;及び
ii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒
を含み;
予備製剤は、過剰な水性液体との接触によって、少なくとも1種の液晶相構造を形成するか、又は形成することができる、予備製剤。
E11)E1~E9のいずれかに記載のジアシルグリセロール組成物が、予備製剤中の唯一のジアシルグリセロールである、E10に記載の予備製剤。
E12)前記少なくとも1種の生体適合性有機溶媒が、生体適合性酸素含有有機溶媒;例えば、エタノール、N-メチルピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、DMSO、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒である、E10又はE11に記載の予備製剤。
E13)少なくとも1種のリン脂質をさらに含む、E10~E12のいずれかに記載の予備製剤。
E14)少なくとも1種のリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、E13に記載の予備製剤。
E15)少なくとも1種のリン脂質が、ホスファチジルコリンを含むか、又はそれからなる、E13又はE14に記載の予備製剤。
E16)ジアシルグリセロールとリン脂質の比が、20:80~80:20、例えば、60:40~40:60の範囲である、E13~E15のいずれかに記載の予備製剤。
E17)生理活性剤をさらに含む、E10~E16のいずれかに記載の予備製剤。
E18)生理活性剤が、冷蔵を必要としているか、又は生理活性剤が、冷蔵が必要である、E17に記載の予備製剤。
E19)生理活性剤が、ペプチド活性剤、例えば、45個以下、例えば、30個以下のアミノ酸残基を有するペプチド活性剤である、E17又はE18に記載の予備製剤。
E20)ペプチド活性剤が、環状及び/又は拘束性ペプチド活性剤である、E19に記載の予備製剤。
E21)生理活性剤が、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体、例えば、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、及びバプレオチド、又はそれらの塩からなる群から選択されるソマトスタチン又はソマトスタチン類似体である、E17~E20に記載の予備製剤。
E22)生理活性剤が、オクトレオチドである、E17~E20に記載の予備製剤。
E23)生理活性剤が、SST-14である、E17~E20に記載の予備製剤。
E24)EDTAのアルキルアンモニウム塩をさらに含む、E10~E23に記載の予備製剤。
E25)(i)E1~E9のいずれかに記載のジアシルグリセロール組成物及び
(ii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒
を含む、予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させることにおける、E1~E9のいずれかに記載のジアシルグリセロール組成物の使用。
E26)予備製剤が、E1~E9のいずれかに記載のジアシルグリセロール組成物以外の任意のジアシルグリセロール組成物を実質的に伴わない、E23に記載の使用。
E27)予備製剤が、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて、少なくとも24時間、例えば、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月の期間貯蔵されるとき、前記予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させるための、E25又はE26に記載の使用。
E28)予備製剤が、室温にて1時間の期間平衡化されるとき、寿命の長い沈殿物が再溶解されない、E25~E27に記載の使用。
E29)予備製剤が、0℃~10℃、例えば、2℃~8℃の温度にて、少なくとも24時間、例えば、少なくとも1カ月、例えば、少なくとも3カ月、例えば、少なくとも6カ月の期間貯蔵されるとき、
(i)ジアシルグリセロール組成物;及び
(ii)少なくとも1種の生体適合性有機溶媒
を含む、前記予備製剤中の寿命の長い沈殿物の形成を防止又は低減させるための方法であって;前記予備製剤をE1~E9のいずれかに記載のジアシルグリセロール組成物で形成させることを含む、方法。
E30)前記予備製剤が、予備製剤中の唯一のジアシルグリセロールとしてE1~E9のいずれかに記載のジアシルグリセロール組成物と共に形成される、E29に記載の方法。
E31)予備製剤が、室温にて1時間の期間平衡化されるとき、寿命の長い沈殿物が再溶解されない、E29又はE30に記載の方法。
E32)ガラスシリンダー及びストッパーを含む事前充填された容器であって、ある容量が、ガラスシリンダー及びストッパーによって境界とされた空間によって画定され、前記容量が、E10~E24に記載の予備製剤で少なくとも部分的に充填されている、容器。
E33)事前充填されたシリンジ又は事前充填されたカートリッジである、E32に記載の事前充填された容器。
E34)内部表面を有するシリンジバレルを含む、脂質をベースとする製剤を事前充填された、事前充填されたガラス製シリンジであって、脂質をベースとする製剤と常に接触しているシリンジバレルの内部表面の部分は、事前塗布された潤滑剤を実質的に伴わない、ガラス製シリンジ。
E35)使用前の脂質をベースとする製剤と常に接触しているシリンジバレルの内部表面の部分が、事前塗布されたシリコーン潤滑剤を実質的に伴わない、E34に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E36)脂質をベースとする製剤が、過剰な水性液体との接触によって、少なくとも1種の液晶相構造を形成するか、又は形成することができる、E34又はE35に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E37)脂質をベースとする製剤が、ジアシル脂質を含む、E34~E36のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E38)脂質をベースとする製剤が、ジアシルグリセロールを含む、E34~E37のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E39)脂質をベースとする製剤が、E1~E9のいずれか一項に記載のジアシルグリセロール組成物を含む、E34~E39のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E40)脂質をベースとする製剤が、生理活性剤をさらに含む、E34~E40のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E41)生理活性剤が、冷蔵を必要としている、E40に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E42)生理活性剤が、ペプチド活性剤、例えば、45個以下、例えば、30個以下のアミノ酸残基を有するペプチド活性剤である、E40又はE41に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E43)ペプチド活性剤が、環状及び/又は拘束性ペプチド活性剤である、E42に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E44)生理活性剤が、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体、例えば、SST-14、SST-28、オクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド、及びバプレオチド、又はそれらの塩からなる群から選択されるソマトスタチン又はソマトスタチン類似体である、E40~E43に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E45)生理活性剤が、オクトレオチド又はそれらの塩、好ましくは、塩化オクトレオチドである、E40~E44に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E46)脂質をベースとする製剤が、E10~E24のいずれか一項に記載の予備製剤である、E40~E45のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E47)35N以下、例えば、30N以下、25N以下、20N以下、15N以下、10N以下又は5N以下の離脱力を有する、E40~E46のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E48)5~25Nの離脱力を有する、E40~E46のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E49)35N以下、例えば、30N以下、25N以下、20N以下、15N以下、10N以下又は5N以下の滑走力を有する、E40~E48のいずれか一項に記載の事前充填されたガラス製シリンジ。
E50)E10~E24のいずれかに記載の予備製剤をそれを必要とする患者に投与する方法であって、予備製剤を含有するシリンジが、投与の前に概ね1時間まで2~8℃にて維持され、室温にて投与の前に概ね1時間平衡化させる、方法。
E51)予備製剤が、投与のときに目に見える混濁度を示さない、E50に記載の方法。
E52)シリンジが、投与の前に1~10分間、体温(例えば、人体との接触によって、例えば、手の中に保持されることによって)にて温められる、E50又はE51に記載の方法。
E53)シリンジが、投与の前に、概ね45~180°の円弧を通って手中で5~50回(例えば、概ね10~20回)方向転換される、E49~E52のいずれかに記載の方法。
E54)前記シリンジが、E34~E48のいずれかに記載の事前充填されたガラス製シリンジである、E49~E53のいずれかに記載の方法。
【0156】
[実施例]
材料
実施例において使用される全ての材料は、商業源から得て、適用可能な場合、薬局方グレードのもの、又は入手可能な最も高い純度グレードのものであった。下記の略語を、実施例を通して使用する:
EtOH エタノール(99.7%、ヨーロッパ薬局方)
GDO ジオレイン酸グリセロール(CrodaからのCithrol GDO HP-SO-(LK))
OCT(Cl) オクトレオチド塩酸塩
PG プロピレングリコール(ヨーロッパ薬局方)
SPC 大豆ホスファチジルコリン(LipoidからのLipoid S100)
【0157】
一般手順
1,3-グリセロールジオレエート(1,3GDO)の調製
【0158】
【0159】
1当量のオレイン酸(99%純度)をジクロロメタンに溶解し、不活性雰囲気(N2)下で約23℃にて保持した。温度を15℃とし、15~20℃にて25分間保持し、1.5当量の塩化オキサリルを滴下で添加した。混合物を不活性雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒及び過剰な塩化オキサリルを除去し、残存する残渣を0.45当量の二量体の1,3-ジヒドロキシプロパン-2-オン、0.5当量のピリジン、0.25当量のDMAPを含有する撹拌し不活性な(N2)ジクロロメタン懸濁液に加えた。反応混合物を20℃下で15時間保持し、その後、形成されたピリジン塩酸塩を濾過によって除去し、ジクロロメタンで洗浄した。合わせた有機物を、5%塩化ナトリウム、5%炭酸ナトリウム、0.1Mの塩酸、その後再び、5%塩化ナトリウムで洗浄した。溶液を乾燥させ、蒸発させ、半固体を得て、メタノールを使用してこれを粉砕し、その後、一晩冷蔵した。集めた固体をイソプロピルエーテル及びメタノールから再結晶化し、2-オキソプロパン-1,3-ジイルジオレエート(98.5%の純度、HPLC)を得た。
【0160】
得られた2-オキソプロパン-1,3-ジイルジオレエートを500mlのテトラヒドロフランに溶解し、20mlの水を加え、それに続いて5℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウムを滴下で添加し、温度を概ね5~10℃に維持した。反応をHPLCによってモニターし、完全な反応の後、水素化ホウ素ナトリウムの添加を停止し、溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル及び水に分配した。水相を酢酸エチルで再採取し、合わせた有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をヘキサンから2回再結晶化し、1,3-グリセロールジオレエート(HPLCによって98.5%の純度)を得た。
【0161】
1,3GDOの異性化
得られた1,3-グリセロールジオレエートを、1,3-グリセロールジオレエートを約75容量%のエタノールで希釈することによって、プロトン性溶媒の存在下で、1,2-及び1,3-グリセロールジオレエートの混合物に変換し、混合物を約70℃へと24時間加熱し、約1.9の比(1,3-GDO/1,2-GDO)に達しさせた。任意選択で、1,3-グリセロールジオレエートを、50%エタノールの存在下で40℃にて4日の間、平衡状態に達しさせた。
【0162】
得られた1,2-及び1,3-グリセロールジオレエートの混合物は、方法C、2.4.22に従って決定するように、98%の純度及び2%(面積)以下(NMT)の不飽和脂肪酸(C18:2、C18:3及びC20:1の合計)を有し、NMT1%(面積)の飽和脂肪酸(C16:0、C18:0及びC20:0の合計)を含有した。GC、ヨーロッパ薬局方9.0(対応するメチルエステルのピーク面積百分率として提示する)による脂肪酸の組成物、すなわち、脂肪酸組成物は、少なくとも98%オレイン酸(18:1)を含んだ。
【0163】
実施例1:ジアシルグリセロール組成物を含む予備製剤の保存安定性
脂質ストックは、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、上記のように調製した1,2-及び1,3-グリセロールジオレエート(GDO)の混合物、エタノール(EtOH)及びプロピレングリコール(PG)を秤量することによって調製し、これを均質となるまで転倒型混合した。最終的な製剤は、脂質ストックを秤量した塩化オクトレオチド(OCT(Cl))粉末に加えることによって調製し、その後、バイアルを窒素でフラッシュし、均質となるまで転倒型混合した。次いで、製剤を3バールの圧力で無菌濾過し、それに続いて、バイアル中に分割し、最終的に窒素でフラッシュした。周囲空気及び温度条件下で使い捨てのピペットを使用して約0.5gの製剤を各シリンジに加えることによって、事前充填されたシリンジの充填を行った。ストッパー(例えば、BD又はWestからの市販のストッパー)を、金属ワイヤーの補助によって設置し、プランジャーロッドを使用してストッパーをその位置に配置し、プランジャーロッドは後で取り外した。シリンジ中の気泡(空気)をできる限り最小化した。次いで、シリンジを人工気象室に入れ、目視検査及びHPLC分析のために試料を特定の時点において採取した。全てのシリンジ、例えば、市販の1mLのガラス製シリンジ、例えば、Gerresheimer、Schott及びBD(Becton,Dickinson and Company)によって市販されているものを、シリコーン油によって事前に潤滑にした。上記のように調製した開示されたGDOの代わりに商業源からのGDO(CrodaからのCithrol GDO HP-SO-(LK))を使用したことを除いて、比較組成物を上記のように調製した。
【0164】
さらに、試料(3~10)を同様の手順を使用して調整したが、他の添加剤を含み、活性剤(塩化オクトレオチド)を任意選択で除外し、表1に含まれている。
【0165】
【0166】
試料は2~8℃、15℃、25℃/60%RH、40℃/75%RHにて冷蔵条件で貯蔵した。
【0167】
試料1~10から、採取物を0日目、1カ月後、3カ月後、6カ月後、12カ月後、及び14カ月後に取り出した。15℃、25℃/60%RH、40℃/75%RHにて貯蔵した試料からの採取物は、試験期間を通してきれいで均質のままであった。2~8℃にて貯蔵した試料からの採取物を、頻繁に凍結し、視覚的に検査し、偏光下で検査した。冷蔵条件で貯蔵した試料の検査からの結果を、表2において提示する。
【0168】
【0169】
冷蔵した採取物の検査によって、通常のGDOを使用して調製した製剤が沈殿物を含有したことが判明し、一度解凍し、且つ/又は試料は、混濁度又は乳光を示した。沈殿物は、ストッパー及びガラス壁の近くに配置された穀物様の結晶に見えた。
【0170】
図1は、偏光中で写真を撮った、5℃にて14カ月貯蔵した試料番号2を事前充填された、事前充填されたシリンジを示す。人工気象室からの採取の0分後、5分後、15分後、及び30分後に写真を撮った。背景において観察される白点は製剤中には存在せず、且つ製剤は室温での15分の平衡化のうちに完全に透明であるように見えたことに留意されたい。
【0171】
2~8℃にて貯蔵した他の試料(3~10)の分析は、沈殿物の存在を示し、これは一般に(しかし必ずしもそうとは限らない)、室温にて数時間以内に再溶解するが、いくつかの試料において沈殿物の量、混濁度及び/又は乳光が残存した。5℃及び15℃にて貯蔵した試料のいくつかは、室温での調節によって1時間の検査において乳光を示した。比較試料において乳光は一般により明白であった。表2は、試料が沈殿物を含有するか、又は他の明らかな理由、例えば、過剰な混濁度のために不合格であったとき、「不合格」を示し、乳光は完全な失敗と考えなかった。このように、実施例1は、冷蔵条件下での貯蔵によってかなりの改善を実現する、ヨーロッパ薬局方9.0、方法C、2.4.22(ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸の組成物)に従って決定するように、少なくとも98%オレイン酸(18:1)の脂肪酸組成物を有するジアシルグリセロールの使用を例示する。いくつかの試料は乳白光を放ち、低温貯蔵、例えば、2~8℃のために有用な一貫した脂質をベースとする製剤を提供するためのさらなる調査を動機づけた。
【0172】
試料番号1及び2からの採取物のHPLC分析は、活性剤が全ての試料についての規格の範囲内であることが明らかになり、最初の含量の90%超が残存したように、活性剤の分解は冷蔵によって遅くなり、より長い保存安定性を示した。
【0173】
実施例2-混濁度及び乳光の調査
混濁度及び/又は乳光が実施例1において調製した試料のいくつかにおいて現れ、冷蔵条件下でガラス製バイアル中に貯蔵された実施例1におけるものと同一の予備製剤を見直ししたが、予備製剤は、目視検査において乳光を示さなかったことが驚いたことに注目された。シリンジとは違って、ガラス製バイアルは、事前塗布された潤滑剤(シリコーン油)を伴わなかった。従来法で、ガラス製シリンジを潤滑剤、例えば、シリコーン油で処理して、許容される注射力を可能とし、例えば、自己投与を許容し、オートインジェクターの適合性(例えば、注射の時間を考慮に入れる)を保証した。再冷蔵条件下での貯蔵に適した許容される脂質をベースとする製剤を開発するために、さらなる調査を行った。
【0174】
活性剤を伴わない下記の予備製剤は、実施例1に記載するように調製し、約0.2mLを事前塗布されたシリコーン油を伴わない1mLのガラス製シリンジ中に充填した。シリンジを、プランジャー、例えば、BD又はWestによって市販されている適切なプランジャーで封鎖した。
【0175】
【0176】
試料を実施例1に記載されているように視覚的に評価し、例えば、試料11~14を16カ月間2~8℃にて貯蔵し、その後視覚的に検査したが、結果を表4、並びに
図4及び5において提示する。
【0177】
【0178】
試料11及び12は、沈殿物を含有し、許容されなかった。試料13は、既に最初の観察において、投与のために許容されると考えられ、一方、試料14は、評価を通して乳光をまだ示した。
【0179】
実施例3-注射のために必要とされる力の決定。
典型的な注射装置は、概ね20~25Nまで力を送達する。製剤、針、容量、注射機序及び注射時間の適切な構成を決定するために、適当な試料を使用して研究を行い得る。ISO11040をベースとする方法が適当である。針の特性決定は、ISO9626:2016に従って行う。
【0180】
シリコーン潤滑剤を伴わない(シリコーン処理されていない)、1mlの脂質制御放出製剤(プラセボ又は活性剤を含有)を含有する事前充填されたシリンジを、100Nのロードセルを有する材料テスター中に入れる。(潤滑にした)プランジャーストッパーを動かすことなくプランジャーロッドを取り付け、「離脱力」測定を損なうことを回避する。針カバーを取り除いた後、試験を特定の期間における正確な用量の送達を実現するように選択したスピードで実行する。プランジャーストッパーがシリンジバレルの肩と接触するまで必要な負荷を時間と共に測定し、この時点で、試験を停止する。離脱力は、0mm~≦5mmの移動範囲における力チャートにおける最大力を使用して決定し、滑走力は、始動期間の終わりとプランジャー移動の終わりの直前までの間の平均力から計算し、代わりに、始動期間の終わりの直後から、プランジャー移動の終わりに直前までの最大力を使用して、滑走力を計算する。
【0181】
脂質制御放出製剤の試験は、このような製剤が、確率されたHagen-Poiseuille理論に密接に忠実であることを明らかにした。この理論において、注射時間は、粘度、針の長さ及び充填容量によって直線的に決まり;注射時間は、シリンジ(バレル)内径の4乗によって決まり、且つ残留力及び針の内径の4乗に反比例している。
【0182】
製剤はHagen-Poiseuille理論に良好に忠実であるため、様々な粘度、送達時間及び針直径のために必要とされる平均送達力(滑走力)を計算することができ、モデルを開発した。開発したモデルに基づいた例を、下記の表において示す。
【0183】
【0184】
100~1000mPasの範囲の様々な粘度についての滑走力と共に注射時間の変動を、
図2a(22G超薄肉)及び
図2b(23G薄肉)に示す。
【0185】
離脱力は、シリンジバレル内のプランジャーストッパーの0mm~≦5mmの範囲の動きにおける最大力として定義した。1mlの脂質制御放出製剤を含有する上述の事前充填されたシリンジについての離脱力は、すなわち、
図3において開示するように推定した滑走力に良好に忠実である離脱力をもたらし、自己投与又はオートインジェクターにおける使用に適していると見なされた。
【0186】
シリコーン潤滑剤を欠いている対応する空のシリンジで比較試験を行った。空気中に注射するのに十分な必要とされる離脱力及び滑走力(すなわち、シリンジプランジャーは必要な距離を移動しなかった)を実現するのに45Nの力は不十分であったため、試験を停止した。ガラス製シリンジをうち砕く危険性のために、より大きな力をかけなかった。離脱力は、ISO11040-4:2015に従って分析し得る(注射剤のためのガラス製バレル)。
【0187】
22G UTW針及び潤滑にしていないストッパーを備えた水を含有するバレルを伴うシリコーン処理されていないシリンジを使用して同様の試験を行った。空気中への完全な注射を達成することを伴わずに、45Nの力に達した。
【0188】
22G UTW針及びシリコーンで潤滑にしたストッパーを使用して、水を充填したシリコーン処理されていないシリンジバレルを使用して試験を繰り返した。結果は、シリコーン処理されていないバレル及びシリコーン処理されているストッパーによる空気中への注射が可能であるが、大きな力が必要とされることを示す。それぞれ、概ね13N、20N及び18N(0.5、1及び5mm/秒のプランジャー移動)の離脱力が得られ、低粘度の水を考慮すれば、これらの値は高いと考えられる。
【0189】
潤滑にしていないシリンジを本明細書において開示されている脂質組成物で充填することは、離脱力及び滑走力の必要条件を満たした。このように、潤滑にするシリコーン油を伴わず、本明細書に開示されているような脂質組成物を充填され、好ましくは、潤滑にしたプランジャーストッパーで封鎖されたシリンジは、室温にて再調節した後、目に見える沈殿物及び/若しくは混濁度、例えば、乳光が起こることを伴わずに長時間の2~8℃での貯蔵を可能とすることが見出された。さらに、このような事前充填されたシリンジは、専用の量の脂質組成物、例えば、0.1~3mlを許容される期間、例えば、3~25秒、例えば、5~20秒、例えば、5~15秒に亘り注射するために過剰な注射力を必要としなかった。プランジャーが製剤を注射することを可能にするのに必要とされる力の例は、5~25N、例えば、8~20nである。本明細書に記載されている事前充填されたシリンジは、このような低温貯蔵(例えば、2~8℃)を必要とする活性剤を含有するシリンジの低温貯蔵を可能とする全体的な目的を満たし、一方、注射性及び製品の適合性(沈殿物なし、及び透明な液体)は、本明細書に記載されている態様及び実施形態によって可能となった。