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特許7578621血液脳関門(BBB)の保護及び修復のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】血液脳関門(BBB)の保護及び修復のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/717 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K31/717
A61K31/715
A61K31/716
A61K31/728
A61P9/00
A61P25/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021570515
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020062081
(87)【国際公開番号】W WO2020239356
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】1905566
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517407279
【氏名又は名称】オルガンズ ティシューズ リジェネレーション リパレーション レムプレースメント - オーティーアール3
(73)【特許権者】
【識別番号】517408209
【氏名又は名称】バリトー デニス
(73)【特許権者】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】515334773
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ カーン ノルマンディ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バリトー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ベルナウディン,ミリアン
(72)【発明者】
【氏名】トゥザニ,オマール
(72)【発明者】
【氏名】トゥタン,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ヘリフ,ヤシーヌ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-521503(JP,A)
【文献】国際公開第2011/019023(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/081713(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207792(WO,A1)
【文献】米国特許第04439450(US,A)
【文献】特表2018-516258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液脳関門の保護、修復及び/又は回復のための薬剤として使用するための医薬組成物であって:
以下の一般式(I)
AaXxYy (I)
(式中:
Aはグルコースを表し、
はR COOR 基を表し、
Yは、以下の式-SO 表し、ここで:
メチル基を表し、 水素原子又はR 21 22 基を表し、ここで、R 21 はアニオンを表し、R 22 はアルカリ金属の群から選択されるカチオンを表し、R は、結合を表し、 は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択されるアルカリ金属を表し、
aはモノマーの数を表し、
xはX基によるモノマーAの置換度を表し、
yはY基によるモノマーAの置換度を表す)の生体適合性ポリマーを含み、
前記モノマー数「a」が、式(I)の前記ポリマーの質量が2,000ダルトン以上となるようなものであり、
前記置換度「x」が10~150%であり、
前記置換度「y」が10~170%である、組成物。
【請求項2】
前記組成物がヒアルロン酸をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Xが、式-CH -COO の基またはカルボキシメチルである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Yが、-SO 基または-SO Na である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記モノマー数「a」が、式(I)の前記ポリマーの質量が20,000~250,000ダルトンとなるようなものである、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
xが40~80%である、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記置換度「y」が120~160%である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記生体適合性ポリマーが、X及びYとは異なる化学官能基Z(複数可)をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記モノマーAの「z」によって表されるZ基による置換度が1~50%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記Z基が、アミノ酸または脂肪酸から選択されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記Z基が、フェニルアラニンまたは酢酸から選択される、請求項8~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記バイオポリマーが、0.1~5mg/kg体重の用量で非経口的に、及び/又は0.1~5mg/kg体重の用量で経口的に、及び/又は0.1~100μg・ml-1 で5~20μlの用量で頭蓋内に、前記血液脳関門の保護及び/又は修復/回復のために投与される、請求項1~1のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
ヒアルロン酸の濃度が1~10mg/mlである、請求項2~1のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
以下の一般式(I):
AaXxYy (I)
(式中:
Aはグルコースを表し、
はR COOR 基を表し、
Yは、以下の式-SO 表し、ここで:
メチル基を表し、 水素原子又はR 21 22 基を表し、ここで、R 21 はアニオンを表し、R 22 はアルカリ金属の群から選択されるカチオンを表し、R は、結合を表し、 は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択されるアルカリ金属を表し、
aはモノマーの数を表し、
xはX基によるモノマーAの置換度を表し、
yはY基によるモノマーAの置換度を表す)の生体適合性ポリマーを含み、
前記モノマー数「a」が、式(I)の前記ポリマーの質量が2,000ダルトン以上となるようなものであり、
前記置換度「x」が10~150%であり、
前記置換度「y」が10~170%である、医薬組成物の、血液脳関門の保護、修復及び/又は回復のための薬剤を製造するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤としてのその適用のため、特に、血液脳関門の保護のためのその使用のための医薬組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、薬剤としてのその適用のため、特に、血液脳関門の修復及び/又は回復のためのその使用のための医薬組成物に関する。
【0003】
本発明は、薬剤としてのその適用のため、特に、血液脳関門の保護及び/又は修復及び/又は回復のためのその使用のための医薬組成物に関する。
【0004】
本発明は、特に、治療、製剤、及び獣医学分野で適用される。
【背景技術】
【0005】
以下の説明では、括弧()内の文献は、文末に掲載されている文献のリストを参照する。
【0006】
血液脳関門(BBB)は、血液脳(hematoencephalic)関門又は血液髄膜(hematomeningeal)関門とも呼ばれ、脳の微小血管における内皮細胞の単層で構成されている。これらの内皮細胞間にはタイトジャンクションがあり、したがって血液コンパートメントと実質コンパートメントとの間の傍細胞及び経細胞交換を制限する。内皮細胞は、基底膜、アストロサイトの足(astrocytic feet)及びペリサイトによって取り囲まれ、したがってBBBを強化する(Sharif et
al.,2018[16])。脳内皮の下にある基底膜は、BBBの動力学に積極的に関与し、3層から構成される。第一の層は、内皮細胞によって合成され、ラミニン4及び5の存在を特徴とする。第二の層は、ラミニン1及びラミニン2の存在を特徴とし、アストロサイトによって合成される。コラーゲンIVの存在を特徴とする第三の層は、前記の二つの層の間でみられ、二つの細胞型によって形成される。これらの3つの層はまた、さまざまな種類のコラーゲン、糖タンパク質及びプロテオグリカン、特に、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)で構成される(Cardoso et al.,2010[4])。
【0007】
基底膜はまた、生理学的状態並びに病的状態でBBBの動的調節に関与する、多くのタンパク質、メタロプロテアーゼ(MMP)及びそれらの阻害剤も含む。
【0008】
BBBは、体循環に存在する因子からニューロンを保護し、良好なシナプス及びニューロンの機能に必要な中枢神経系の内部環境を維持する(Sharif et al.,2018[16])。
【0009】
BBBの変化は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、脳血管障害(CVA)、慢性外傷性脳症などの多くの脳疾患だけでなく、脳感染症でも報告されている(Abdullahi et al.,2018[1];Sweeney et al.,2018[19];Erickson and Banks 2018[5])。BBBは、脳腫瘍の存在下並びに放射線療法の一環としての脳照射の後にも損なわれる(Katherine Elizabeth Warren.,2018[22])。BBBの破壊は、血液、細胞及び微生物病原体由来の神経毒性物質を脳内に流入させ、ニューロン死のいくつかの経路を開始し悪化させ得る炎症性応答及び免疫応答と関連する(Sharif et al., 2018[16])。
【0010】
当該技術分野の現状では、BBB構造の成分、すなわちタイトジャンクション及び細胞受容体を保護すること;又はその透過性の原因、すなわち炎症;酸化;MMPの活性化に対抗することを目的とした治療プロトコル及び/又は戦略がある(Sifat et al.,2017[17])。しかしながら、これらの治療プロトコル及び/又は戦略は、特にBBBの保護に関して、実際の有効性及び/又は著しい治療効果を示さない。
【0011】
BBBを保護するための他の戦略も検討されてきた。例えば、当該技術分野の現状では、BBBに関連する、細胞シグナル伝達経路の分子(デルタ-PKC)(特許出願US20090062208A1);転写因子(HMGB1)(出願WO2018207792A1)、S100Bタンパク質(特許文献CN101632728B)、又はさらには細胞結合(クローディン-5)(特許文献CN105148276B)を標的とする方法を記載した特許文献が存在する。しかしながら、これらの方法及び/又は戦略はいずれも、現在のところ治療又は臨床的応用に至っていない。加えて、当該技術分野の現状では、保護剤として直接作用したり、又はBBBの回復を促進したりする製品は知られていない。言い換えれば、血液脳関門を保護及び/又は修復及び/又は回復できる化合物及び/又は医薬組成物は現在のところない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、例えば、病態並びに/又は例えば脳の化学療法及び/若しくは放射線療法などの治療に起因する、例えば、病巣及び/又は変化からBBBを保護することを可能にする化合物及び/又は組成物を見出すことが、当該技術分野の現状では実際に必要とされている。
【0013】
当該技術分野の現状では、例えば、病態、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、脳血管障害(CVA)後、外傷性脳症、例えば、慢性、脳感染、例えば、髄膜炎、例えば、ウイルス性若しくは細菌性、例えば、脳腫瘍の存在、並びに/又は例えば、脳の化学療法及び/若しくは放射線療法などの治療による変化及び/又は病巣に起因するBBBの変化及び/又は病巣の修復を可能にする化合物及び/又は組成物を見出すことも実際に必要とされている。
【0014】
当該技術分野の現状では、例えば、前述のBBBの病巣及び/又は劣化後の、BBBの機能回復を可能にする化合物及び/又は組成物を見出すことも、実際に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、血液脳関門の、好ましくは機能的な、保護及び/又は修復及び/又は回復のための薬剤として応用又は使用するための医薬組成物を提供することによって、これらの必要性を正確に満たすことであり、前述の組成物は
以下の一般式(I)
AaXxYy (I)
の生体適合性ポリマーを含み、式中:
Aはモノマーを表し、
Xは、RCOOR基、又は-R(C=O)R10を表し、
Yは、以下の式-ROSO、-RNSO、-RSOのうちの一つに対応するO又はN-スルホネート基を表し、ここで:
、R、R及びRは、独立して、脂肪族炭化水素鎖であって、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であって良く、任意選択的に、ベンジルアミン及びベンジルアミンスルホネートを除いて一つ以上の芳香環を含んでもよいものを表し、R、R、R
びRは、独立して、水素原子又はMカチオンを表し、R及びR10は、独立して、結合、脂肪族炭化水素鎖であって、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であってよいものを表し、
aはモノマーの数を表し、
xはX基によるモノマーAの置換度を表し、
yはY基によるモノマーAの置換度を表す。
【0016】
本発明の目的は、血液脳関門の、好ましくは機能的な、保護及び/又は修復及び/又は回復のための薬剤として使用するための医薬組成物を提供することによって、これらの必要性を正確に満たすことであり、前述の組成物は
以下の一般式(I)
AaXxYy (I)
の生体適合性ポリマーを含み、
式中:
Aはモノマーを表し、
Xは、RCOOR基、又は-R(C=O)R10を表し、
Yは、以下の式-ROSO、-RNSO、-RSOのうちの一つに対応するO又はN-スルホネート基を表し、ここで:
、R、R及びRは、独立して、脂肪族炭化水素鎖であって、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であってよく、そして任意選択的に、ベンジルアミン及びベンジルアミンスルホネートを除いて一つ以上の芳香環を含んでもよいものを表し、R、R、R及びRは、独立して、水素原子又はMカチオンを表し、そしてR及びR10は、独立して、結合、脂肪族炭化水素鎖であって、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であってよいものを表し、
aはモノマーの数を表し、
xはX基によるモノマーAの置換度を表し、
yはY基によるモノマーAの置換度を表す。
【発明の効果】
【0017】
有利なことに、本発明者は、本発明による生体適合性ポリマーの使用が、有利にも、血液脳関門(BBB)を強化、増強及び/又は修復することを可能にすることを意外にも実証した。
【0018】
特に、本発明者らは、本発明による生体適合性ポリマーの使用が、有利にも、血液脳関門(BBB)が変化した場合、例えば、原因若しくは起源が何であっても、炎症及び/又は病巣及び/又は当業者に知られている任意の変化を呈する場合に、血液脳関門(BBB)の修復及び/又は増強及び/又は回復を可能にすることを意外にも実証した。
【0019】
本発明者らはまた、驚くべきことに、そして意外なことに、本発明によるポリマーの使用が、有利にも、血液脳関門(BBB)の機能回復を加速し改善することを可能にすることも実証した。加えて、本発明者らは、意外なことに、そして驚くべきことに、BBBの変化が運動機能及び/又は認知機能に影響を及ぼす場合、本発明によるポリマーの使用はまた、運動機能回復及び認知機能回復の加速及び/又は改善も可能にすることを実証した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、虚血性血管障害後の血液脳関門(BBB)の透過性の時間に対する変化を表す;縦座標は透過性に対応し、横座標は時間単位の時間に対応する。
図2図2は、生体適合性ポリマーの構造の一例、例えば、化合物OTR4132の構造を表す。
図3図3は、MRIによって調査した、関心対象の領域におけるBBB透過性の変化を示す棒グラフである。この図中、横座標は、脳虚血後の時間又は日単位の時間:虚血後1時間、3時間、24時間、48時間、及び7日に対応する。得られた値は、平均±標準偏差に対応する。この図中、縦座標は、mmの単位でのBBBの完全性の修飾体積に対応する。生体適合性ポリマー(OTR4132)を含む組成物を投与したラットについて得られた値を白色のバーで表し、対照組成物を投与したラットについて得られた値を黒色のバーで表す。
図4図4は、エバンスブルー染色による脳虚血後のBBBの透過性を示す棒グラフである。この図中、縦座標は、中枢神経系の虚血領域、すなわち、同側又は対側に対する脳組織のエバンスブルーの量をμg/g単位で表す。生体適合性ポリマー(OTR4132)を含む組成物を投与したラットについて得られた値を灰色のバーで表し、対照組成物を投与したラットについて得られた値を黒色のバーで表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中で使用する場合、血液脳関門の保護とは、例えば、血液脳関門の基底膜の構造の改善及び/又は血液脳関門の内皮細胞の刺激及び/又は血液脳関門のタイトジャンクションの増強を意味すると理解される。有利なことに、血液脳関門の保護は、例えば、X線、γ線などのイオン化放射線、同位体化合物、生体異物化合物、様々な毒素、及び病原体などの外部攻撃から後者を保護することなどを可能にする。血液脳関門の保護はまた、中枢神経系の恒常性の維持、例えば、イオンの流れの調節、並びに/又は、特に血液コンパートメントと中枢神経系との間での分子及び細胞の流れの調節を可能にすることができる。これらの流れは、前述の関門が損傷し透過した場合の中枢神経系にとって有害であり得る。
【0022】
本明細書中で使用する場合、血液脳関門の修復は、例えば、病巣、病原体や疾患などの外部からの攻撃、炎症、並びに/又は血液脳関門の構造及び/若しくは機能を変更及び/若しくは修飾し得る当業者に知られている任意の事象に起因して、前述の関門の構造が変更された場合などの、血液脳関門の再構成及び/又は改善を意味すると理解される。これは、例えば、血液脳関門の病巣の治癒の促進、血液脳関門の炎症の減少、血液脳関門の基底膜及び/又は血液脳関門の内皮細胞及び/又は血液脳関門のタイトジャンクションの治癒及び/又は改善であり得る。
【0023】
本明細書中で使用する場合、血液脳関門の回復は、血液脳関門の構造の修復及び/又は再構成、並びに血液脳関門機能、例えば、血液脳関門の透過性及び/又は血液脳関門の任意の生理学的機能の回復/改善を意味すると理解される。
【0024】
本明細書では、モノマーは、例えば、糖、エステル、アルコール、アミノ酸又はヌクレオチドからなる群から選択されるモノマーを意味すると理解される。
【0025】
本発明において、式Iのポリマーの構成要素を構成するモノマーAは、同じであっても、異なっていてもよい。
【0026】
本発明において、モノマーAは、独立して、以下の式:
【化1】

(式中、R11及びR12は、独立して、酸素原子、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であってよい脂肪族炭化水素鎖、独立して一つ以上の酸素及び/又は窒素原子を含むヘテロアリール基、アルデヒド官能基、カルボン酸基、ジオール、置換ジオール、式-R13-(X)n-R14(式中、R13は、C-C脂肪族炭素鎖であって、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であってよいものを表し、Xは、酸素及び窒素から選択されるヘテロ原子を表し、nは、1~4の範囲の整数であり、R14は、水素原子、脂肪族炭化水素鎖であって、任意選択的に分岐及び/又は不飽和であってよいもの、独立して一つ以上の酸素原子及び/又は窒素を含むヘテロアリール基、アルデヒド官能基、カルボン酸基、ジオール、置換ジオールである)の基を表す)
のモノマーであり得る。
【0027】
本発明では、モノマーの組み合わせによって、ポリマー骨格、例えば、核酸又はタンパク質タイプのポリエステル、ポリアルコール、多糖類の性質を有するポリマー骨格を形成することが可能になり得る。
【0028】
本発明では、ポリエステルのうち、例えば、生合成又は化学合成のコポリマー、例えば、脂肪族ポリエステル又は天然起源のもの、例えば、ポリヒドロキシアルカノエートであってよい。
【0029】
本発明において、多糖類及びそれらの誘導体は、細菌、動物、真菌及び/又は植物起源のものであってよい。それらは、例えば、単鎖多糖類、例えば、ポリグルコース、例えば、デキストラン、セルロース、βグルカン、又はより複雑な単位を含む他のモノマー、例えば、キサンタン、例えば、グルコース、マンノース及びグルクロン酸、あるいはまたグルクロナン及びグルコグルクロナンであってよい。
【0030】
本発明において、植物起源の多糖類は、単鎖、例えば、セルロース(グルコース)、ペクチン(ガラクツロン酸)、フカン、デンプン、又はアルギネート(グルロン酸及びマンヌロン酸)などのより複雑なものであってよい。
【0031】
本発明において、真菌起源の多糖類は、例えば、ステログルカンであってよい。
【0032】
本発明において、動物起源の多糖類は、例えば、キチン又はキトサン(グルコサミン)であってよい。
【0033】
本発明において、式Iのポリマーの基本要素を構成するモノマーAは、有利には同一であり得る。
【0034】
本発明において、式Iのポリマーの基本要素を構成するモノマーAは、有利にはグルコースであり得る。
【0035】
式(I)において「a」で定義されるモノマーAの数は、式(I)の前述のポリマーの質量がおよそ2,000~6,000ダルトンとなるようなものであってよく、例えば、これは、少なくとも10のグルコースモノマーに相当する。例えば、式(I)の前述のポリマーの質量は、およそ3,000~6,000ダルトンであってよく、例えば、これは12~20のグルコースモノマーに相当する。
【0036】
式(I)において「a」で定義されるモノマーの数はまた、式(I)の前述のポリマーの質量が約2,500,000ダルトンとなるようなものであってもよい(7,000のグルコースモノマーに相当する)。有利には、式(I)の前述のポリマーの質量は、3,000~250,000ダルトン、例えば3,000~6,000ダルトン、又は、例えば、20,000~250,000ダルトン、又は、例えば、75,000~150,000ダルトンであってよい。
【0037】
本発明では、Xである-RCOOR基において、Rは、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、好ましくはメチル基であってよく、Rは、結合、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、R2122基(ここで、R21はアニオンであり、R22はアルカリ金属の群から選択されるカチオンである)であってよい。
【0038】
好ましくは、X基は、式-RCOOR(式中、Rは、メチル基-CH-であり、Rは、R2122基(ここで、R21はアニオンであり、R22は、アルカリ金属の群から選択されるカチオンである)の基であり、好ましくは、X基は式-CH-COOの基、すなわち、カルボキシメチルである。
【0039】
本発明では、Xである-R(C=O)R10基において、Rは、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、好ましくはメチル基であってよく、R10は、結合、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、ヘキシルであってよい。
【0040】
一般式(I)において「x」で定義される、全てのモノマーAのX基による置換度は、10~150%、40~80%であってよく、好ましくは、50%又は60%程度であってよい。
【0041】
本発明では、以下の式-ROSO、-RNSO、-RSOのうちの一つに対応し、Y基である基において、Rは、結合、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、好ましくはメチル基であってよく、Rは、結合、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、好ましくはメチル基であってよく、Rは、結合、C-Cアルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、好ましくはメチル基であってよく、R、R及びRは、独立して、水素原子又はMカチオンであってよく、例えば、Mはアルカリ金属であってよい。
【0042】
好ましくは、Y基は、式-RSO(式中、R7は結合であり、R8は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択されるアルカリ金属である)の基である。好ましくは、Y基は、-SO 基、-SO Naである。
【0043】
一般式(I)において「y」で定義される、すべてのモノマーAのY基による置換度は、10~170%、30~150%、55~160%、55~85%、120~160%であってよく、好ましくは70、140又は150%程度であってよい。
【0044】
本発明において、上述の置換度の定義は、100%の置換度「x」とは、本発明のポリマーの各モノマーAが統計的にX基を含むことを意味するということである。同様に、100%の置換度「y」とは、本発明のポリマーの各モノマーが統計的にY基を含むことを意味する。100%を超える置換度は、各モノマーが考慮されるタイプの複数の基を統計的に含むという事実を反映し;反対に、100%未満の置換度は、各モノマーが考慮されるタイプの一つ未満の基を統計的に含むという事実を反映する。
【0045】
ポリマーはまた、X及びYとは異なる、Zで示される化学官能基も含み得る。
【0046】
本発明において、Z基は、同じであっても、異なっていてもよく、独立して、アミノ酸、脂肪酸、脂肪アルコール、セラミド、若しくはその誘導体、又はアドレス指定のヌクレオチド配列、抗体、抗体フラグメントからなる群から選択され得る。
【0047】
Z基はまた、同一又は異なる活性剤を表す場合がある。これらは、例えば、治療薬、診断薬、抗炎症薬、抗菌剤、抗生物質、成長因子、酵素、抗酸化剤化合物、ポリフェノール、タンニン、アントシアニン、リコペン、テルペノイド及びレスベラトロールであり得る。本発明において、Z基は、有利には、飽和又は不飽和脂肪酸であり得る。例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、トランス-バクセン酸、リノール酸、リノレライジン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、クルパノドン酸又はドコサヘキサエン酸からなる群から選択される脂肪酸であり得る。好ましくは、脂肪酸は酢酸である。
【0048】
本発明において、Z基は、有利には、アラニン、アスパラギン、芳香族鎖、例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロキシン又はヒスチジンからなる群から選択されるL又はD系のアミノ酸であり得る。好ましくは、アミノ酸はフェニルアラニンである。
【0049】
本発明において、Z基は、抗酸化剤、例えば、ビタミンA、C、E、B9、B6、グルタチオン、セレン、ポリフェノール、例えば、カテキン、例えば、緑茶、フラボノイド、タンニン、アントシアニン、例えば、赤色の果実、リコペン、テルペノイド及びレスベラトロールであり得る。
【0050】
本発明において、Z基は、老化防止化合物、例えば、レチノイド、アラントインであり得る。
【0051】
本発明において、Z基は、抗体、抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメントであり得る。それらは、例えば、抗体及び/又はアドレス指定抗体のフラグメント、例えば、血液脳関門を標的とすることができる抗体及び/又は抗体のフラグメントであり得る。
【0052】
有利なことに、Z基は、ポリマーにさらなる生物学的又は物理化学的特性を与えることができる。例えば、Z基は、前述のポリマーの溶解性又は親油性を増加させ、例えば、より良好な拡散又は組織透過を可能にできる。
【0053】
有利には、Z基は、ポリマーにさらなる生物学的又は物理化学的特性を与えることがで
きる。したがって、本発明のポリマーは、例えば、Z基が抗酸化剤化合物、老化防止化合物から選択される場合、本発明のポリマーは、これらの化合物を有利に運ぶことができ、したがって、付加的及び/又は補完的生物学的効果を提供できる。
【0054】
Zが存在するポリマーは、以下の式II:AaXxYyZz(II)(式中、A、X、Y、a、x、yは上記定義のとおりであり、zはZ基による置換度を表す)に相当し得る。
【0055】
本発明において、「z」で表されるZ基による置換度は、1~50%、10~25%であり得、好ましくは、15、20又は25%に等しい。
【0056】
X、Y及びZ基は、独立してモノマーAに結合され得る、及び/又は独立して互いに結合され得る。X、Y及びZ基のうちの少なくとも一つが独立して、第一のものとは異なるX、Y及びZ基と結合される場合、前述のX、Y又はZ基のうちの一つはモノマーAに結合される。
【0057】
したがって、Z基は、モノマーAに直接共有結合され得るか、又はX及び/若しくはY基に共有結合され得る。
【0058】
本発明において、Z基は、式AaXxYyのポリマーに、共有結合以外の結合、例えば、イオン相互作用を介するなどのイオン結合、親水性結合又は疎水性結合によって共役され得る。本発明のポリマーはしたがってZベクトル化系を構成し得る。
【0059】
本発明において、ポリマーは、例えば、化合物OTR4120、OTR41201、OTR41202、OTR41203、OTR41205、OTR41210 OTR41301、OTR41302、OTR41303、OTR41305、OTR41310、OTR3131からなる群から選択されるポリマーであり得る。
【0060】
本明細書では、ポリマーは、例えば、化合物OTR41201、OTR41202、OTR41203、OTR41205、OTR41210、OTR4120、OTR4122、OTR4125、OTR41301、OTR41302、OTR41303、OTR41305、OTR41310、OTR3131、OTR4132、OTR4135、OTR415からなる群から選択されるポリマーであり得、その特性を以下の表1に記載する。
【表1】

【0061】
本発明において、組成物は、組成物の体積に対して生体適合性ポリマーの重量基準で0.1~100μg/mlの濃度を含み得る。例えば、組成物は、組成物の体積に対して生体適合性ポリマーの重量基準で1~10μg/mlの濃度を含み得る。
【0062】
本発明において、組成物は、その投与にしたがって処方及び/又は適応せることができる。例えば、非経口投与の場合、組成物は、体重1キログラムあたり0.01~5mg、好ましくは体重1キログラムあたり0.1~1.5mgの生体適合性ポリマーの用量を週に1回の投与頻度で送達するために投与され得る。
【0063】
例えば、経口投与の場合、組成物は、体重1キログラムあたり0.1~5mg、好まし
くは0.01~1.5mg/kgの生体適合性ポリマーの用量を毎日又は2週間に1回の投与頻度で送達するために投与することができる。
【0064】
舌下投与の場合、摂取量は、毎日又は週に2回、0.5μg/kg~100μg/kgであり得る。
【0065】
例えば、動脈内投与の場合、生体適合性ポリマーは、組成物の総体積に対して生体適合性ポリマーの重量基準で0.1~100μg/ml、好ましくは1~20mlの濃度であり得る。
【0066】
有利には、組成物及び/又はポリマーが動脈内経路によって投与される場合、投与は、まず脳へ、例えば、内頚動脈への経路で実施され得る。
【0067】
例えば、頭蓋内注射の場合、生体適合性ポリマーは、組成物の総体積に対して生体適合性ポリマーの重量基準で0.1~100μg/ml、好ましくは5~20μlの濃度であり得る。
【0068】
有利には、組成物及び/又はポリマーが頭蓋内経路によって投与される場合、投与は、異なる頭蓋内領域で同時に又は連続して実施され得る。
【0069】
例えば、脳室内又は髄腔内注射の場合、投与される体積は、5μl~2ml、例えば、500μl、例えば2mlで構成され得る。例えば、脳室内又は髄腔内注射の場合、投与される体積は、等容性、例えば、最大2mlであり得る。例えば、投与される体積は、Marks et al.,2008[10],Raffi et al,2014[13]及び/又はBlaney et al,2004[3]に記載されているものであり得る。
【0070】
例えば、ピル又はカプセルの形態で経口投与する場合、生体適合性ポリマーの用量は、体重1キログラムあたり0.0001~5mgであり得る。
【0071】
例えば、ピル又はカプセルの形態で経口投与する場合、摂取は毎日であり得る。
【0072】
本発明によると、生体適合性ポリマーの分子量は、3,000~2,500,000ダルトンの範囲であり得る。
【0073】
例えば、生体適合性ポリマーの分子量は、3,000~6,000ダルトン、6,000~2,500,000ダルトン、好ましくは20,000~250,000ダルトン、例えば、75,000~150,000ダルトンであり得る。
【0074】
有利には、組成物中に存在する生体適合性ポリマーの分子量は、組成物の投与経路および投与頻度にしたがって選択され得る。例えば、動脈内などの血管内経路による注射の場合、生体適合性ポリマーの分子量は、血液脳関門病巣の損傷のレベルに応じて、3,000~200,000ダルトン、好ましくは、3,000~150,000ダルトンであり得る。
【0075】
有利には、組成物中に存在する生体適合性ポリマーの分子量は、血液脳関門の劣化及び/又は状態にしたがって選択され得る。
【0076】
例えば、血液脳関門が、例えば、血液脳関門の高い透過性を誘発する病変に対する著しい構造変化を受ける場合、生体適合性ポリマーの分子量は、3,000~200,000
ダルトン、好ましくは70,000~150,000ダルトンであり得る。
【0077】
有利には、生体適合性ポリマーの分子量は、血液脳関門の漸進的修復後及び/又は漸進的修復にしたがって適応させ得る。例えば、血液脳関門が著しい構造変化を示す場合、生体適合性ポリマーの分子量は、3,000~200,000ダルトン、好ましくは70,000~150,000ダルトンであり得る。その後、使用する分子量を減少させることができ、例えば、3,000~100,000ダルトン、好ましくは10,000~70,000ダルトンであり得る。
【0078】
本発明によると、組成物はヒドロゲルも含み得る。
【0079】
本明細書では、ヒドロゲルは、当業者に知られている任意の好適なヒドロゲルを意味すると理解される。例えば、損傷後の脳空間を満たすために使用される生体適合性ヒドロゲルであるヒアルロン酸又はその誘導体からなる群から選択されるヒドロゲルであり得る。例えば、文献Vladimir A.Kornev et al.:Hydrogel-assisted neuroregeneration approaches towards brain injury therapy:A state-of-the-art review.Computational and Structural Biotechnology Journal 16 j.csbj.2018.10.011[24]及び/又は文献Gopalakrishnan A,Shankarappa SA,Rajanikant GK.Hydrogel Scaffolds:Towards Restitution of lschemic Stroke-lnjured Brain 2019 Feb;10(1):1-18[25]で記載されているヒドロゲルであり得る。
【0080】
本明細書では、組成物は、ヒドロゲルの重量基準で0.1%~5%、好ましくは0.5%~2.5%のヒドロゲル濃度を含み得る。
【0081】
本発明によると、組成物は、ヒアルロン酸及び/又は少なくとも一つのヒドロゲル及び/又はその混合物を含み得る。
【0082】
本明細書では、「ヒアルロン酸」は、当業者に知られている任意のヒアルロン酸、例えば、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンの繰り返し単位から構成される非硫酸化直鎖グリコサミノグリカンを意味すると理解される。例えば、その酸形態又は架橋ヒアルロン酸の塩(ヒアルロン酸塩)の形態のヒアルロン酸(HA)であり得る。HAは、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンの繰り返し単位から構成される非硫酸化直鎖グリコサミノグリカンである(Tammi R.,Agren UM.,Tuhkanen AL.,Tammi M.Hyaluronan metabolism in skin.Progress in Histochemistry & Cytochemistry.29(2):1-81,1994[26])。例えば、5,000~3,000,000ダルトン、好ましくは50,000~2,000,000ダルトンの平均分子量画分を有するヒアルロン酸であり得る。この場合、ヒアルロン酸は、当業者に知られている任意の方法によって得ることができる。これらは、例えば、journal Hyaluronan fragments:an information-rich system(R.Stern et al.,European Journal of Cell Biology 58(2006)699-715[27])で記載されている方法であり得る。また、名称及び/又は分子量が何であれ、市販の天然又は修飾ヒアルロン酸、例えば、Hyactive CPN;Cristalhyal;Nutra HA;Oligo HA;D Factor;Hyaluderm;juvelift;Restylane;Revitacareから選択される市販のヒアルロン酸であり得、このリストは網羅的ではない。また、Contipro(https://www.contipro.com/portfolio/manufacturer-of-anti-ageing-cosmetic-raw-materials/HyActive”)及び/又はGivaudan(https://www.givaudan.com/fragrances/active-beauty/products/cristalhyal%C2%AE-range)によって販売されているヒアルロン酸でもあり得る。
【0083】
本明細書では、組成物は、組成物の総重量に対して0.1~5重量%のヒアルロン酸の濃度を含み得る。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して0.5重量%~2.5重量%のヒアルロン酸の濃度を含み得る。
【0084】
本明細書では、ヒドロゲル組成物は、直接頭蓋内経路による投与のため、局所頭蓋内注射、特に動脈内経路によるもののために処方することができ、組成物は、組成物の総体積に対してヒアルロン酸の重量基準で1~10mg/mlの濃度を含み得る。
【0085】
本明細書では、「医薬組成物」という用語は、当業者に知られている任意の形態の医薬組成物を意味すると理解される。本明細書では、医薬組成物は、例えば、注射剤であり得る。例えば、1mlあたり1マイクログラムから数ミリグラムなどの、当業者に知られている濃度のデキストランなどの賦形剤の存在下、注射可能なグルコース溶液中、生理的血清中の局所又は全身注射用注射剤などであり得る。医薬組成物は、例えば、液体製剤、発泡性経口投与形態、経口粉末、多粒子系、口内分散性投与形態からなる群から選択される経口投与を対象とする薬剤であり得る。
【0086】
例えば、医薬組成物が経口投与用である場合、溶液、シロップ、懸濁液又はエマルションからなる群から選択される液体製剤の形態であり得る。医薬組成物が発泡性経口投与形態の形態である場合、錠剤、顆粒、粉末からなる群から選択される形態であり得る。医薬組成物が経口粉末又は多粒子系の形態である場合、ビーズ、顆粒、ミニ錠剤及び微粒剤からなる群から選択される形態であり得る。医薬組成物が口内分散性投与形態の形態である場合、口内分散性錠剤、凍結乾燥ウェハ、薄膜、チュアブル錠、錠剤、カプセル又は医療用チューインガムからなる群から選択される形態であり得る。
【0087】
本発明によると、医薬組成物は、例えば、口腔錠剤又は舌下錠、ロゼンジ、ドロップ、スプレー用溶液からなる群から選択される、頬側及び/又は舌下などの経口投与用医薬組成物であり得る。
【0088】
本発明によると、医薬組成物は、例えば、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、パッチ及びフォームからなる群から選択される、局所又は経皮投与用医薬組成物であり得る。
【0089】
本発明によると、医薬組成物は、例えば、点鼻薬、鼻腔用スプレー、点鼻粉末剤からなる群から選択される経鼻投与用医薬組成物であり得る。
【0090】
本発明によると、医薬組成物は、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、頭蓋内、髄腔内などの非経口投与用医薬組成物であり得る。好ましくは、医薬組成物は、動脈内及び/又は頭蓋内投与用医薬組成物であり得る。
【0091】
本発明の組成物はまた、少なくとも一つの他の活性成分、特に、例えば、使用するガレヌス製剤に応じて、長時間にわたって、同時、個別、又は交互使用するための、別の治療上活性な成分も含み得る。この他の成分は、例えば、血液脳関門に対する変化及び/又は損傷を有する患者において発症し得る適当な疾患の治療で使用される活性成分であり得る
。それらはまた、当業者に知られている医薬製品、例えば、抗生物質、抗炎症剤、抗凝固剤、神経保護薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、抗うつ薬、抗ウイルス薬であり得る。
【0092】
本発明によると、組成物は、例えば、毎日、1日2回、及び毎週投与され得る。例えば、1日1回、1日2回又はそれ以上の投与であり得る。
【0093】
本発明によると、組成物は、例えば、1日~3か月の期間にわたって、例えば、2カ月間投与され得る。例えば、組成物は、3か月の期間にわたって、毎日の頻度で投与され得る。
【0094】
本発明の目的は、血液脳関門の保護及び/又は修復/回復のための薬剤の製造用の式AaXxYy(I)又はAaXxYyZz(II)の生体適合性ポリマーを含む医薬組成物の使用でもある。
【0095】
生体適合性ポリマーは上記定義のとおりである。
【0096】
この実施形態では、薬剤という用語は、上記定義の医薬組成物を意味すると理解される。
【0097】
有利には、本発明者らは、構造及び/又は機能的レベルの両方で血液脳関門が変更された場合に、生体適合性ポリマーが、意外にも、血液脳関門の修復/再構成の両方を促進することを可能にすることを実証した。加えて、本発明者らは、生体適合性ポリマーが、有利且つ予想外に、血液脳関門の機能回復、特にその透過性の回復を、その修飾及び/又は変化の原因及び/又は起源が何であれ、可能にすることを実証した。
【実施例
【0098】
例示のために提示された添付の図面によって示される以下の実施例を読むと、他の利点も当業者には見てとれる。
【0099】
実施例1:損傷された血液脳関門の治療及び血液脳関門の機能回復のための生体適合性ポリマーの使用
A/生体適合性ポリマーの調製
生体適合性ポリマーであるRGTAの合成は、先行技術で広く記載されており、例えば、「Process for the sulfonation of compounds comprising free hydroxyl(OH)groups or primary or secondary amines」という表題の米国特許第7,396,923号や、書誌文献Yasunori I.et al.,Biomaterials 2011,32:769e776)及びPetit E. et al., Biomacromolecules.2004 Mar-Apr;5(2):445-52[28]にも記載されている。
【0100】
OTR4120が多くの前臨床及び臨床刊行物で説明していることなど、いくつかのRGTAが知られており、また記載されている(RGTA(登録商標)-based matrix therapy-A new branch of regenerative medicine in locomotion.Barritault D,Desgranges P,Meddahi-Pelle A,Denoix JM,Saffar JL.Joint Bone Spine.2017 May;84(3):283-292.DOI:10.1016/j.jbspin.2016.06.012[29]、RGTA or ReGeneraTing Agents mimic heparan sulfate in regenerative medicine:from concept to curing patients Barritault D,Gilbert-Sirieix M,Rice KL,Sineriz F,Papy-Garcia D,Baudouin C, Desgranges P,Zakine G,Saffar JL,van Neck J.Glycoconj J.2017 Jun;34(3):325-338.DOI: 10.1007/s10719-016-9744-5[2]。化合物OTR4131は、Frescaline G. et al.,Tissue Eng Part A 2013 Jul;19(13-14):1641-53.DOI:10.1089/ten.TEA.2012.0377[30])、Randomized controlled trial demonstrates the benefit of RGTA based matrix therapy to treat tendinopathies in racing horses. Jacquet-Guibon S,Dupays AG,Caudry V,Crevier-Denoix N,Leroy S,Sineriz F,Chiappini F,Barritault D,Denoix JM.PLoS One.2018 Mar 9;13(3):e0191796.DOI:10.1371/journal.pone.0191796[31]で記載されているような脂肪酸、すなわち酢酸であるZ基を含む化合物である。他の化合物はまた、特許文献US06689741、US2014301972A1に記載され、ここで、Zはフェニルアラニンなどのアミノ酸(Heparan sulfate proteoglycans mediate internalization and propagation of specific proteopathic seeds.Holmes BB,DeVos SL,Kfoury N,Li M,Jacks R,Yanamandra K,Ouidja MO,Brodsky FM,Marasa J,Bagchi DP,Kotzbauer PT,Miller TM,Papy-Garcia D,Diamond Ml.Proc Natl Acad Sci USA 2013 Aug 13;110(33):E3138-47.DOI:10.1073/pnas.1301440110[32])又は他の疎水性化合物である(Structure-activity studies of heparan mimetic polyanions for anti-prion therapies.Ouidja MO,Petit E,Kerros ME,Ikeda Y,Morin C,Carpentier G,Barritault D,Brugere-Picoux J,Deslys JP,Adjou K, Papy-Garcia D.Biochem Biophys Res Commun.2007 Nov 9; 363 (1):95-100[33])。
【0101】
B/生体適合性ポリマーを用いた血液脳関門の機能回復
本実施例では、本発明による生体適合性ポリマーであるRGTAの、変化後、例えば、脳血管障害(CVA)後のBBBの透過性に対する効果の評価。
【0102】
本実施例では、ラットCVAモデルを使用した。管腔内経路による大脳動脈の閉塞と、それに続く再灌流によって得られた、1時間の脳虚血であった。使用したラットは、平均体重300~350gのオスのSprague Dawleyラットであった。使用したラット数は、1回につき1群あたり4~6匹のラットであった。このモデルでは、BBBの透過性は徐々に増加して、脳虚血の誘発後24~48時間でピークに達することがよく知られている(Garrigue et al.2016[6];Sharif et al.,2018[16])。図1は、Abdullahi et al.,2018で記載されているように使用したモデルにおいて時間による透過性の変化を表す。
【0103】
BBB透過性評価は、異なる時間:脳虚血後1時間、3時間、24時間、48時間、及
び7日で、造影剤Dotarem(登録商標)の注射後にMRIによって実施した。この造影剤は、生理学的条件下でBBBを通過しない。造影剤を大腿静脈から静脈内注射した。注射によって投与された造影剤の量は200μmol/kgであった(Dotarem(登録商標)、Guerbet S.A)。
【0104】
ラット、すなわち1群あたり1回につき4~5匹の動物を、生体適合性ポリマー、すなわち、100,000~150,000Daの分子量のRGTA OTR4132で処置した。図2は前述のポリマーの構造を表す。生体適合性ポリマーOTR4132を脳虚血の1時間後に投与し、0.5mg/kgのOTR4132の濃度を含む投与された組成物体積は尾静脈で300μlであった。
【0105】
ラット、すなわち、1群あたり1回につき4~5匹の動物を、対照溶液、すなわち生理的血清(0.9%NaCl塩溶液)で処置した。対照溶液は、化合物OTR4132を含む組成物と同じ方法で、すなわち、脳虚血の1時間後に投与し、投与した組成物体積は、250μlであり、大腿静脈から投与した。
【0106】
造影剤の透過性及び拡散の観察は、MRIによって得られた画像を観察することによって実施した。観察された中枢神経系の領域は、虚血による影響を受けた大脳半球並びに健常な反対側の半球にあった。得られた画像上の造影剤の拡散の判定は、適切なソフトウェア(ImageJ(商標)(Wayne Rasband,NIMH,Maryland,USA))を用いてMRI分析によって実施した。造影剤の拡散及び/又は血液脳関門の透過性を図3に示す。
【0107】
図3の図表に示すように、造影剤及び対照溶液を投与されたラットは、CVAの24時間後、48時間後及び7日後の血液脳関門の透過性の増加を示す(黒色のバー);これらの結果は、当該技術分野の最新技術で得られた結果と一致する(Garrigue et
al.2016[6])。この図表はまた、生体適合性ポリマーOTR4132でラットを処置することで、RGTAで処置されたラット群において虚血後24時間及び48時間でBBBの透過性を、対照溶液を投与された虚血群のラットと比較して、有意に減少させることが可能になることを明確かつ予想外に示す。特に、結果は、本発明による生体適合性ポリマーを含む組成物で処置されたラットと比較して、対照溶液で処置されたラット間での統計的に有意な差を示した(分散分析とそれに続くTukeyによる事後HSDテスト p<0.05)。
【0108】
図3に示した、得られた結果は、本発明による生体適合性ポリマーを使用すると、CVA後のBBBの完全性を保存することが可能になることを明確に示す。特に、これらの結果は、本発明による生体適合性ポリマーを使用すると、BBBを保護することと、その修復を促進し、そしてBBBの生理学的特性が変更/修飾される場合は、生理学的特性を回復すること及び/又はそれらの変化を減少させることの両方が可能になることを明確に示す。
【0109】
MRIによって得られた結果に加えて、文献Hone et al.,2018[7]で記載されている方法にしたがって脳虚血誘発後にエバンスブルーで染色することによってBBBの透過性を測定した。使用したラットは、平均体重300~350gのオスSprague Dawleyラットであり、実験は、生理学的条件下でBBBを通過しないエバンスブルーを脳虚血の72時間後に2%の濃度で静脈内注射した5匹のラットを含む11匹のラットに対して実施し、注射した体積は、4ml/kg、すなわち、300~350gの体重のラットに対してそれぞれ1.2~1.4mlであった。
【0110】
6匹のラットを分子量100,000~150,000Daの生体適合性ポリマー、す
なわち、RGTA OTR4132を脳虚血の1時間後に投与して処置し、2.22μgのOTR4132の用量を含む投与した組成物の体積は、内頸動脈から動脈内投与した50μlであった。
【0111】
5匹のラットを、化合物OTR4132を含む組成物と同じ方法で、すなわち、脳虚血の1時間後に、内頸動脈から動脈内に50μlの組成物の投与量で投与した対照溶液、すなわち生理的血清(0.9%NaCl塩溶液)で処置した。
【0112】
エバンスブルー投与の30分後、生理食塩水の心臓内注入を動物に対して実施し、脳を摘出し、半球を分離した。次にサンプルをリン酸緩衝塩溶液中で粉砕し、次に60%トリクロロ酢酸の存在下で4℃に置いた。サンプルを次に遠心分離(1,000gで30分間)し、610nmでの分光光度計の読取のために上清を集めた。並行して、エバンスブルーの濃度を上昇させたものを調製した。
【0113】
集めた上清中に存在する組織エバンスブルーを次に610nmで測定する分光光度法で定量した。
【0114】
図4は個体ごとに得られた結果を表す。対照動物群で得られた結果は、反対側の半球と比較した同じ側の半球のBBBの透過性において有意な変化を示す(二元配置分散分析(p群=0.1582;p半球=0.0933;p群*半球=0.0175)、続いてTukey HSD事後テスト p=0.0374)。意外にも、生体適合性ポリマーOTR4132で処置した動物群では、同側半球と反対側の半球との間で差異は観察されなかった(二元配置分散分析(p群=0.1582;p半球=0.0933;p群*半球=0.0175)、続いてTukey HSD事後テスト p=0.9965)。加えて、分析によっても、対照動物と比較して、生体適合性ポリマーOTR4132で処置された動物の同側半球におけるBBBの変化の統計的に有意な減少が示される(二元配置分散分析(p群=0.1582;p半球=0.0933;p群*半球=0.0175)、続いてTukey HSD事後テスト p=0.0439)。
【0115】
この実施例は、式AaXxYy又はAaXxYyZzのポリマーを含む本発明による組成物の例が、有利なことに、BBBの保護及び/又はBBBの生理学的特性の回復を可能にすることを明確に実証している。特に、この実施例は、式AaXxYy又はAaXxYyZzのポリマーを含む本発明による組成物の例が、CVA後のBBBの完全性の保存を可能にすることを明確に実証している。特に、これらの結果は、本発明による生体適合性ポリマーを使用すると、BBBを保護することと、その修復を促進し、そしてBBBの生理学的特性が変更/修飾される場合は、生理学的特性を回復すること及び/又はそれらの変化を減少させることの両方が可能になることを明確に示す。
【0116】
実施例2:変更された血液脳関門の治療及び血液脳関門の機能回復のための生体適合性ポリマーの使用
神経学者によって指摘されるように、血液脳関門を変更させたいくつかのCVAに起因する神経学的障害、特に認知障害に罹っている75歳男性(75kg)を、生体適合性ポリマー、すなわち、化合物OTR4120で、45日にわたり30mlのOTR4120の100μg/ml水溶液の一日摂取量で治療した。投与された用量は75kgにつき3mg/日又は40μg/kg/日であった。投与後、神経学者によって、また担当医師若しくは委託医師や個人の家族によっても認識能力の改善が観察された。
【0117】
もう一人は、重大な記憶障害がある85歳女性であり、特に、読解や個人、特に近親者(家族)を認識することが困難で、書くことができないなどであった。血液脳関門の変化を示唆するハンディキャップ係数でアルツハイマー病と診断されたこの個人(体重約60
kg)を、300μL~100μg/ml又は0.5μgのOTR4120の用量の週2回舌下摂取(0.5μg/kgを週に2回)で治療した。6か月の治療後、この個人は、認知機能、社会的関係、例えば、彼女の周囲、特に近親者や医療関係者との関係の改善を示し、電話、外出、友人との面会、スクラブルゲームを楽しむこと等ができるようになった。これらの改善は、特に血液脳関門の機能の改善及び回復と関連していた。
【0118】
参考文献
【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】
図1
図2
図3
図4