(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】作業支援装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20241029BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A41D13/00 102
(21)【出願番号】P 2022101417
(22)【出願日】2022-06-23
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中原 弘陽
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 晃暉
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-011006(JP,A)
【文献】特開2021-094650(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213235(WO,A1)
【文献】特開2012-213543(JP,A)
【文献】特開2021-049601(JP,A)
【文献】特開2020-189377(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104534(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303950(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111571568(CN,A)
【文献】国際公開第2014/195373(WO,A1)
【文献】特開2020-055685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者(P)が手(Ph)で重量物(W)を掴んで持ち上げ
る作業とその重量物(W)を保持する作業とを補助する作業支援装置であって、
作業者(P)の胴体(Pm)に取付可能な取付部(10)と、作業者(P)の腕(Pa)又は手(Ph)に装着可能な装着部(20)と、その装着部(20)が一端部(40a)に結合されるベルト(40)と、前記取付部(10)に連結されると共に前記ベルト(40)の他端側を巻取り可能な巻取り装置(R)とを備え、
前記巻取り装置(R)は、前記ベルト(40)に対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構(31)と、前記ベルト(40)の前記一端部(40a)を任意の引出し長さまで引き出したときに、更なる引出しを規制するよう該ベルト(40)の引出し位置をロック可能なロック機構(30)とを備え
、
前記ロック機構(30)は、前記ベルト(40)の引出し位置をロックして該ベルト(40)の引出し方向への移動を規制した状態であっても、前記付勢機構(31)の付勢力に基づく前記ベルト(40)の巻取り方向への移動は許容することを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記巻取り装置(R)は、この巻取り装置(R)から引き出された前記ベルト(40)の中間部が作業者(P)の肩(Ps)に摺動可能に掛けられるように、前記取付部(10)を介して作業者(P)の腰部(Pw)に取付けられることを特徴とする、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記ロック機構(30)は、前記作業の開始前及び終了後に、該ロック機構(30)をロック解除させるための解除指令装置(C)に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記解除指令装置(C)は、前記作業の開始前後・終了前後における前記装着部(20)と重量物(W)間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置(51)の検知結果に基づいて、該作業の開始前及び終了後には前記ロック機構(30)を自動でロック解除させる自動式解除指令装置(50)、或いは任意に手動操作可能な解除操作装置(56,54′)への操作入力に基づいて前記ロック機構(30)を随時にロック解除させる手動式解除指令装置(50′)のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項3に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記装着部(20)は、作業者(P)の少なくとも一つの指(Pf)に引っ掛かった状態で該装着部(20)に手(Ph)を通して装着可能な形状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記取付部(10)は、作業者(P)の腰部(Pw)を一周して該腰部(Pw)に保持される腰ベルト(71)を含み、その腰ベルト(71)に前記巻取り装置(R)が連結されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記腰ベルト(71)には、作業者(P)の少なくとも一方の大腿部(Pl)を通すよう該大腿部(Pl)に装着可能な脚ベルト(75)が接続されることを特徴とする、請求項6に記載の作業支援装置。
【請求項8】
前記ベルト(40)は、これの前記他端側から前記一端部(40a)に向かう途中で二股に分かれる分岐部(40j)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の作業支援装置。
【請求項9】
作業者(P)の少なくとも肩(Ps)の上部を覆うように作業者(P)が着用可能な作業用上着(80)を更に備え、前記上着(80)には、前記ベルト(40)の中間部が作業者(P)の肩(Ps)に掛かった状態を維持すべく該ベルト(40)を摺動可能に通すベルトガイド(81f,81r)が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援装置、特に作業者が手で重量物を持ち上げる作業を補助する作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業支援装置は、例えば特許文献1~3にも示されるように従来公知である。これらの特許文献には、補助索条(例えばハーネス、紐状部材、ワイヤ等)の一端部を作業者の腕又は手に装着し、その補助索条から作業者の腕又は手に作業補助のための助勢力を付与できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-524752号公報
【文献】特開2018-149624号公報
【文献】特開2016-129916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業支援装置では、補助索条としてのハーネスの基部を、背中に固定の頑丈な金属フレーム枠で支持しており、またハーネスは、これを巻取り格納する構造ではなく、非作業時においてもハーネス全体が常に露出状態に置かれる。そのため、非作業時の平常動作がハーネスにより阻害される可能性があり、また頑丈な金属フレーム枠の使用で装置が重量増となるので、作業者の負担が増える等の問題もある。
【0005】
また特許文献2の作業支援装置では、補助索条としての紐状部材161,162 の基部が、背中に取付けた頑丈な金属フレーム枠(即ち背中部材110 ・支持部材140 )で支持されており、その金属フレーム枠をアクチュエータ151 で回動させることで上体を起こす動作を支援した結果、紐状部材を介し作業者の手を引き上げるようにして、重量物の持ち上げ支援が行われる。この場合、紐状部材は、これを巻取り格納する構造ではなく、非作業時においても紐状部材や、肩より上まで延びる金属フレーム枠が常に露出状態に置かれる。そのため、非作業時の平常動作が紐状部材や剛体フレームにより阻害される可能性があり、また頑丈な剛体フレーム枠を荷物持上げ用アクチュエータで回動させる関係で装置が重量増となり、作業者の負担が増える問題もある。
【0006】
また特許文献3の作業支援装置では、補助索条としてのワイヤ31の基部を、背中に固定されて頭上部に高く延びる頑丈な剛体アーム部11の上端部を経由して、背中に固定の巻上用モータ13で巻き上げる構造であり、剛体アーム部11の上端部より垂下したワイヤ31の一端部に作業者の手を装着して重量物の持ち上げ支援が行われる。そのため、剛体アーム部11の上端部より長く垂下したワイヤ31により非作業時の平常動作が阻害され、例えば作業者はワイヤに周囲物体が巻き込まれないよう注意して作業する必要があり、また大型の剛体アーム部11や荷物持上げ用モータ13、バッテリ40等の重量物を作業者が支えて作業する必要があり、作業者の負担が増える問題もある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来装置の上記課題を簡単な構造で解決可能な作業支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、作業者が手で重量物を持ち上げる作業とその重量物を保持する作業とを補助する作業支援装置であって、作業者の胴体に取付可能な取付部と、作業者の腕又は手に装着可能な装着部と、その装着部が一端部に結合されるベルトと、前記取付部に連結されると共に前記ベルトの他端側を巻取り可能な巻取り装置とを備え、前記巻取り装置は、前記ベルトに対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構と、前記ベルトの前記一端部を任意の引出し長さまで引き出したときに、更なる引出しを規制するよう該ベルトの引出し位置をロック可能なロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記ベルトの引出し位置をロックして該ベルト)の引出し方向への移動を規制した状態であっても、前記付勢機構の付勢力に基づく前記ベルトの巻取り方向への移動は許容することを第1の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記巻取り装置は、この巻取り装置から引き出された前記ベルトの中間部が作業者の肩に摺動可能に掛けられるように、前記取付部を介して作業者の腰部に取付けられることを第2の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記ロック機構は、前記作業の開始前及び終了後に、該ロック機構をロック解除させるための解除指令装置に接続されることを第3の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第3の特徴に加えて、前記解除指令装置は、前記作業の開始前後・終了前後における前記装着部と重量物間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置の検知結果に基づいて、該作業の開始前及び終了後には前記ロック機構を自動でロック解除させる自動式解除指令装置、或いは任意に手動操作可能な解除操作装置への操作入力に基づいて前記ロック機構を随時にロック解除させる手動式解除指令装置のうちの少なくとも一方を含むことを第4の特徴とする。
【0012】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記装着部は、作業者の少なくとも一つの指に引っ掛かった状態で該装着部に手を通して装着可能な形状であることを第5の特徴とする。
【0013】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記取付部は、作業者の腰部を一周して該腰部に保持される腰ベルトを含み、その腰ベルトに前記巻取り装置が連結されることを第6の特徴とする。
【0014】
また本発明は、第6の特徴に加えて、前記腰ベルトには、作業者の少なくとも一方の大腿部を通すよう該大腿部に装着可能な脚ベルトが接続されることを第7の特徴とする。
【0015】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記ベルトは、これの前記他端側から前記一端部に向かう途中で二股に分かれる分岐部を有することを第8の特徴とする。
【0016】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、作業者の少なくとも肩の上部を覆うように作業者が着用可能な作業用上着を更に備え、前記上着には、前記ベルトの中間部が作業者の肩に掛かった状態を維持すべく該ベルトを摺動可能に通すベルトガイドが設けられることを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の特徴によれば、作業者の胴体に取付可能な取付部と、作業者の腕又は手に装着可能な装着部と、その装着部が一端部に結合されるベルトと、取付部に連結されると共にベルトの他端側を巻取り可能な巻取り装置とを備え、巻取り装置は、ベルトに対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構と、ベルトの一端部を任意の引出し長さまで引き出したときに、更なる引出しを規制するようベルトの引出し位置をロック可能なロック機構とを備え、ロック機構は、ベルトの引出し位置をロックして該ベルトの引出し方向への移動を規制した状態であっても、付勢機構の付勢力に基づくベルトの巻取り方向への移動は許容する。これにより、作業者の胴体に取付けた巻取り装置から引出されるベルト一端部の装着部を作業者の腕又は手に装着した状態で、作業者がベルトを適宜引出して重量物を手で掴む前に、ロック機構をロック作動させてベルトの更なる引出しを制限すれば、作業者は、重量物を手で持ち上げたり保持したりする作業の際に、腕又は手に掛かる負荷の少なくとも一部をベルト及び巻取り装置を通して胴体に移すことができるため、それだけ作業者の負担が軽減されて、作業を支援可能となる。また巻取り装置は、ベルトの引出し長さをロック機構で単に規制するだけの軽量且つ簡単な構成で、上記した作業支援効果を発揮可能であるため、巻取り装置に連係させる大型の剛体フレームや荷物持上げ用アクチュエータは不要となって、コスト節減や作業者の負担軽減に寄与することができる。しかも巻取り装置は、作業中のベルト引出し規制に専ら使用され、ロック機構によりベルトの引出し位置がロックされて該ベルトの引出し方向への移動が規制された状態であっても、付勢機構の付勢力に基づくベルトの巻取り方向への移動は許容されて、作業中は元より作業開始前や作業終了後もベルトを随時巻取り可能であるため、ベルトが非作業時の平常動作を阻害する心配や、ベルトに他の物体が不用意に巻込まれたり巻付いたりする心配もなく、また作業開始前や作業中のベルト長調整も支障なく行うことができる。更に装着部は、ベルトの一端部に結合される為、保管管理も容易で、紛失の心配もない。
【0018】
また第2の特徴によれば、巻取り装置は、これから引き出されたベルトの中間部が作業者の肩に摺動可能に掛けられるように、取付部を介して作業者の腰部に取付けられるので、作業支援の際に巻取り装置が作業者の腰部に支持される一方で、この巻取り装置から引出されるベルトの中間部が作業者の肩上を通り、そのベルトの一端部側を介して作業者の腕又は手を吊持する支持形態となる。これにより、巻取り装置が腰部周辺に在ることで、作業の邪魔になり辛くすることができるばかりか、作業支援時にベルトに作用する重力が作業者の腕のみならず、腰部・肩及びその周辺にも適度に分散してバランスよく受け止められるから、作業者の更なる負担軽減に寄与することができる。
【0019】
また第3の特徴によれば、ロック機構は、作業の開始前及び終了後に、ロック機構をロック解除させるための解除指令装置に接続されるので、作業の開始前及び終了後には、解除指令装置によりロック機構をロック解除させることで、巻取り装置からのベルト引出し長さを任意長さに容易に調整することができる。これにより、作業の開始前及び終了後においては、ベルト一端部の装着部に作業者の腕又は手を着脱する作業や、その腕又は手の装着状態で重量物を手で掴む作業を、巻取り装置に邪魔されずに支障なくスムーズに行うことができる。
【0020】
また第4の特徴によれば、解除指令装置に自動式解除指令装置が含まれる場合には、作業の開始前後・終了前後における装着部と重量物間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置の検知結果に基づいて、自動式解除指令装置が作業の開始前及び終了後においてはロック機構を自動的にロック解除させ、また作業の開始後から終了まではロック機構をロック作動させることができる。また解除指令装置に手動式解除指令装置が含まれる場合には、任意に手動操作可能な解除操作装置への操作入力に基づいてロック機構を随時にロック解除させることができるため、その解除操作装置への操作入力の有無に応じてロック機構を作業の開始前及び終了後においてはロック解除させ、また作業の開始後から終了まではロック作動させることができる。
【0021】
また第5の特徴によれば、装着部は、作業者の少なくとも一つの指に引っ掛かった状態で装着部に手を通して装着可能な形状であるので、作業準備の際に装着部に対し指を引っ掛けた状態で手を通すことで、その手を用いて簡単的確にベルトの引出しを行うことができ、作業効率が高められる。
【0022】
また第6の特徴によれば、取付部は、作業者の腰部を一周して腰部に保持される腰ベルトを含み、その腰ベルトに巻取り装置が連結されるので、重量物を持ち上げたり保持したりする作業の支援を行う際に巻取り装置に加わる反力を、腰ベルトから腰部及びその周辺に広範囲に分散させることができ、腰部の荷重負担が軽減される。しかも腰ベルトにより腹部に適度な圧迫力が与えられることで、腹腔圧を上昇させ、腰椎への負担軽減にも寄与することができる。
【0023】
また第7の特徴によれば、腰ベルトには、作業者の少なくとも一方の大腿部を通すよう大腿部に装着可能な脚ベルトが接続されるので、重量物を持ち上げる際の巻取り装置自体のズリ上がりを抑制でき、同装置を適切な位置で効果的に使用可能となる。
【0024】
また第8の特徴によれば、ベルトは、これの他端側から一端部に向かう途中で二股に分かれる分岐部を有するので、ベルト他端側でのベルト使用本数を削減でき、延いては巻取り装置の設置個数を削減できるから、コスト節減に寄与することができる。
【0025】
また第9の特徴によれば、作業者の少なくとも肩の上部を覆うように作業者が着用可能な作業用上着を更に備え、その上着には、ベルトの中間部が作業者の肩に掛かった状態を維持すべくベルトを摺動可能に通すベルトガイドが設けられるので、このベルトガイドにより、ベルトのスムーズな引出し作業を許容しつつ、ベルトの中間部が作業者の肩に掛かった状態を的確に維持することができ、作業効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る作業支援装置を使用しつつ作業者が重量物を持ち上げた状態を示す正面図
【
図4】巻取り装置の平面図(
図3の4X-4X断面図、
図5の4X矢視図)
【
図5】巻取り装置の一部破断斜視図(
図3及び
図4の5X矢視より見た一部破断斜視図)
【
図6】巻取り装置におけるロック機構及び解除指令装置の要部を示す断面図(
図4の6X-6X断面図)
【
図7】作業者の手と、ベルト一端部の装着部との関係を示すものであって、(A)は手の装着前の状態を、また(B)は装着後の状態をそれぞれ示す
【
図8】支援すべき作業の開始前の待機状態(装着部は手に未装着)を
図2と同側から見た側面図
【
図9】支援すべき作業の準備状態(装着部を手に装着直後)を示す
図8対応側面図
【
図10】支援すべき作業の開始直後の状態(手が重量物を把持)を示す
図8対応側面図
【
図11】支援すべき作業の最中にベルト長調整を行った直後の状態を示す
図8対応側面図
【
図12】支援すべき作業の終了直後の状態(重量物を手放した直後)を示す
図8対応側面図
【
図13】第2実施形態に係る巻取り装置の要部を示す
図6対応断面図であって、特に(A)は第2実施形態を、また(B)は手動式解除指令装置の第1変形例を示す
【
図14】第3実施形態に係る作業支援装置の使用状態を示す
図1対応正面図と
図3対応背面図
【
図15】第4実施形態に係る作業支援装置の使用状態を示す
図1対応正面図と
図3対応背面図
【
図16】脚ベルトのバリエーションを示すものであって、(A)は大腿部に斜めに巻く脚ベルト(第1,第2実施形態)を示し、また(B)は大腿部に略水平に巻く脚ベルトを示す
【
図17】巻取り装置を作業者の腰部側面に配置した第1,第2実施形態の第1変形例を示す斜め後方斜視図
【
図18】巻取り装置を作業者の腰部前面に配置した第1,第2実施形態の第2変形例を示す斜め後方斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づき説明する。
【0028】
先ず、
図1~
図12を参照して、本発明に係る作業支援装置の第1実施形態について説明する。
【0029】
作業支援装置Aは、作業者Pが手Phで重量物Wを持ち上げたり保持したりする作業を補助、支援するためのものであって、それは、作業者Pの胴体Pm(実施形態では腰部Pw)に取付可能な取付部10と、作業者Pの手Phに装着可能な装着部20と、その装着部20が一端部40aに結合されるベルト40と、取付部10に連結されると共にベルト40の他端側を巻取り可能な巻取り装置Rとを備える。
【0030】
前記装着部20は、作業者Pの少なくとも一つの指(実施形態では親指Pf)に引っ掛かった状態で装着部20に手Phを通して装着可能な形状であって、その全体が可撓性を有する丈夫な素材(例えば布材、革材)で構成される。即ち、
図7で明らかなように、装着部20は、前後両端が開放して作業者Pの手Ph(実施形態では指以外の部位)が嵌挿可能な筒状胴部21と、その筒状胴部21の掌側の一側部に連設されて作業者Pの手Phの親指Pfが嵌挿可能な指サック部22とを備える。
【0031】
筒状胴部21の、中心部から見て親指及び人指し指側(即ち腰部Pwから遠い側)に偏位した外側面に、ベルト40の一端部40aが結合(例えば縫着、接着)される。その結合部位は、実施形態に限定されず、例えば、筒状胴部21の、中心部から見て親指及び人指し指から遠い側(即ち腰部Pwと近い側)に偏位した外側面にベルト40の一端部40aを結合してもよく、或いはまた、重量物持ち上げに障害とならない部位であればその他の部位であってもよい。
【0032】
尚、実施形態の各図面においては、手Phの形態が三次元的に複雑である関係で、手Phの部分を模式的に描いている。例えば、親指以外の4つの指は一纏めに簡略して帯板状に描いており、これの関節部のみ複数の凹凸条を付している。
【0033】
而して、筒状胴部21と指サック部22との境界部に、対応する指の付け根部分(実施形態では親指と人指し指との付け根部分)を引っ掛けるようにすれば、装着部20に装着した手Phでベルト40を的確に引出すことができ、作業性が良好である。
【0034】
尚、指サック部22は、親指Pfに加えて/又は代えて他の少なくとも1つの指を嵌挿可能な構造としてもよい。また実施形態では、指サック部22が親指Pf全体を覆うものを例示したが、指サック部22の先端をカットして親指Pfの先部を露出させるようにした変形例の実施も可能である。
【0035】
ところで巻取り装置Rは、取付部10を介して作業者Pの腰部Pwに着脱可能に取付けられるものであって、特に第1実施形態では作業者Pの腰部Pwに巻き付けられる腰ベルト71の後面に左右一対の巻取り装置Rが互いに間隔をおいて装着、固定されている。この場合、上記取付部10は、作業者Pの腰部Pwを一周するよう巻き付いて腰部Pwに保持される腰ベルト71を含み、その腰ベルト71に巻取り装置Rの装置本体Rm(実施形態では後述する連結部材13)が連結される。
【0036】
尚、一般的に腰ベルトを腰部に一周して巻き付け固定する手法は従来周知であるので、実施形態の腰ベルト71を腰部Pwに一周して着脱可能に巻き付け固定する構造についても、図示及び説明は省略する。
【0037】
また前記腰ベルト71には、作業者Pの少なくとも一方(実施形態では両方)の大腿部Plを通すよう大腿部Plに装着可能な脚ベルト75が接続ベルト76および接続具77を介して接続される。その接続構造は、着脱可能な構造でも、或いは着脱不能な構造でもよい。
【0038】
また実施形態の作業支援装置Aは、作業者Pの少なくとも肩Psの上部を覆うように作業者Pが着用可能な作業用上着としてのベスト80を更に含む。このベスト80の前面及び後面には、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を維持すべくベルト40を摺動可能に通す前部ベルトガイド81f及び後部ベルトガイド81rがそれぞれ設けられる。またベスト80の、左右の肩Ps上を覆う部分(即ち引出し・巻取り時のベルト40が直接摺動する部分)には、必要に応じてベルト40が滑り易く丈夫な素材を被着することが望ましい。
【0039】
次に巻取り装置Rについて、
図4~
図6を主として参照して具体的に説明する。各々の巻取り装置Rの装置本体Rmは、ベルト40の幅より僅かに広い間隔をおいて並列する第1,第2ケース11,12と、第1,第2ケース11,12の一端間を一体的に結合する板状の連結部材13とを有して平面視で略コ字状に形成される。第1,第2ケース11,12は、各々が平板状に形成されて互いに平行な内側壁11i,12iと、その内側壁11i,12iに不図示の結合手段を介して着脱可能に結合される平皿状のカバー11c,12cとで各々中空体に構成される。
【0040】
また連結部材13は、これの上下端部が第1,第2ケース11,12よりも上下方向外方に延出しており、その延出部13a,13bには、腰ベルト71に対する連結用孔13hが設けられる。この連結用孔13hに連結軸18(例えば連結用リベット、連結用ボルト)を挿通させ、その連結軸18により、腰ベルト71と延出部13a,13bとの各間を結合する。尚、このような結合構造に代えて、例えば下方の延出部13bを着脱可能な結合具(例えば自動車用シートベルトの結合具と同様の構造)で腰ベルト71に着脱可能に結合してもよい。而して、連結部材13及び腰ベルト71は、前記取付部10を構成している。
【0041】
また実施形態では、上側の延出部13が横向きに屈曲しており、その屈曲部には、巻取り装置Rから引き出されたベルト40を摺動可能に通すスリット状のベルトガイド孔13ahが設けられる。
【0042】
第1,第2ケース11,12の相対向する内側壁11i,12iには、ベルト40の他端部40bが結合され且つベルト40を巻き付け可能なドラム軸14の両端部が回転自在に貫通、支持される。第1ケース11内には、ベルト40に対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構31が配設されており、ベルト40は、これの中間部を作業者Pの肩Ps上に摺動可能に掛けた状態で、上記付勢力に抗して一端部40aを引くことで任意の引出し長さで引出し可能である。
【0043】
付勢機構31は、中心部がドラム軸14の一端に結合された渦巻きばね32を主要部とし、その渦巻きばね32の他端は、第1ケース11の外周部内壁に結合される。そして、この渦巻きばね32の弾発力により、ベルト40に対する巻取り方向(
図5で時計方向、
図6で反時計方向)の回転付勢力が発揮される。
【0044】
また巻取り装置Rは、ベルト40の一端部40aを任意の引出し長さまで引き出したときに、更なる引出しを規制するようベルト40の引出し位置をロック可能なロック機構30を第2ケース12内に備える。このロック機構30は、後述するように、支援すべき作業(例えば重量物Wの持ち上げ又は保持作業)の開始前及び終了後に、ロック機構30をロック解除させるための解除指令装置Cに接続されている。次にロック機構30及び解除指令装置Cについて、順に説明する。尚、以下の本明細書においては、単に「作業」という場合は、特に断りのない限り上記支援すべき作業のことを意味する。
【0045】
ロック機構30は、従来周知のラチェット機構と同様の構造であって、外周に多数のラチェット歯35tを等間隔置きに有してドラム軸14の他端に同心状に結合されたラチェット歯車35と、ラチェット歯35tに係脱可能に係止されるロック爪部36tを先端に有した係止部材36と、係止部材36をラチェット歯35tとの係合方向(
図6で上方)に弾発するラチェットばね37と、係止部材36の軸部36aをラチェット歯35tとの係脱方向(
図6で上下方向)に摺動可能に嵌合、支持すべく第2ケース12の内側壁12iに固定される軸受部材38とを有する。
【0046】
而して、係止部材36は、通常はラチェットばね37の弾発力でラチェット歯35tとの係止位置に保持され、この状態では、ドラム軸14のベルト巻取り方向(
図6で反時計方向)の回転は許容されるがベルト引出し方向(
図6で時計方向)の回転は規制されて、ベルト40の更なる引出しが制限(即ちロック機構30がロック作動)される。
【0047】
一方、解除指令装置Cにより係止部材36が、ラチェット歯35tから離れる係止解除方向(
図6で下方)に引かれると、ロック爪部36tとラチェット歯35tとの係止が解除され(即ちロック機構30をロック解除させ)、その解除に伴いラチェット歯車35、従ってドラム軸14は、引出し方向の回転がフリーとなる。これにより、ベルト40は、付勢機構31の巻取り付勢力に抗して任意の引出し位置まで引出し可能となる。
【0048】
またラチェット歯35tは、係止部材36が前記係止位置に保持される場合でも、ベルト40の一端部40aが巻取り方向に操作されてドラム軸14が
図6で反時計方向に回転するときには、ロック爪部36tがラチェット歯35t上を滑ることでスムーズな巻取りを許容する歯形に形成される。
【0049】
また前記解除指令装置Cは、支援すべき作業の開始前及び終了後に、ロック機構30をロック解除させるためのものであるが、第1実施形態では、該作業の開始前後・終了前後における装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果に基づいて、該作業の開始前及び終了後にはロック機構30を自動でロック解除させる自動式解除指令装置50で構成される。
【0050】
この自動式解除指令装置50は、上記検知装置51と、係止部材36の軸部36aにインナワイヤの一端が結合されたボーデンケーブルよりなる操作索条52と、その操作索条52のインナワイヤの他端に連動連結されて通電時に係止部材36を前記係止解除方向(即ちロック機構30のロック解除方向)に牽引駆動可能な電動式アクチュエータ53と、アクチュエータ53の通電回路を開閉する常開型のスイッチ54と、検知装置51の検知結果に基づいてスイッチ54を開閉制御する制御装置55とを備える。
【0051】
制御装置55は、図示はしないが、随時に(例えば作業支援装置Aの使用時に)オン操作可能な電源スイッチを有すると共に電源(例えばバッテリ)に接続されており、その電源スイッチに対するオン操作により制御装置55が起動状態となる。而して、制御装置55は、これの起動状態において支援すべき作業の開始前・終了後には、このときの検知装置51の検知結果に基づきスイッチ54をオン(従ってアクチュエータ53に通電)することでロック機構30をロック解除させる。一方、前記作業の開始から終了までの間は、このときの検知装置51の検知結果に基づきスイッチ54をオフ(従ってアクチュエータ53を非通電に)することでロック機構30をロック作動させる。
【0052】
検知装置51は、これが特に前記作業の開始前後・終了前後における装着部20と重量物W間の接触面圧の変化を検知するものである場合には、その接触面圧の変化を検知可能な部位(例えば装着部20の筒状胴部21の内側部等)に設置される。検知装置51が特に前記作業の開始前後・終了前後における装着部20と重量物W間の相対距離の変化を検知するものである場合には、その相対距離の変化を検知可能な部位に設置される。
【0053】
次に第1実施形態の作用について、主として
図8~
図12を参照して説明する。
【0054】
図8は、作業支援装置Aを作業者Pにセットした直後の未作業状態を示す。即ち、作業者Pの腰部Pw及び大腿部Plには腰ベルト71及び脚ベルト75がそれぞれ巻き付け、保持されており、また作業者Pの上半身にはベスト80が着用される。そして、巻取り装置Rから延びるベルト40は、ベスト80越しで肩Psの上に掛かり、そこで転向して前方下向きに延びており、そのベルト40の中間部は、ベスト80の後部ベルトガイド81r及び前部ベルトガイド81fを通されている。このとき、ベルト40は初期の引出し位置、即ち待機位置に保持され、従って、ベルト40の一端部40aに固定の装着部20も初期位置(
図8の位置)で待機する。
【0055】
この待機状態より、例えば自動式解除指令装置50の制御装置55を起動させると、検知装置51の検知結果(即ち重量物Wと装着部20との接触面圧が未検知)に基づきスイッチ54がオン状態(従ってアクチュエータ53が通電状態)になることでロック機構30をロック解除させるので、この状態で巻取り装置Rはベルト40の巻取り・引出しが何れもフリーの状態(
図8参照)となる。そこで作業者Pは、
図9に例示したように、ベルト40の一端部40aを適宜引き出して手Phに装着部20を装着する。
【0056】
かくして、ベルト40の中間部を肩Ps上に掛けた状態で、そのベルト40の一端部側を重量物Wの把持に最適の所望の引出し長さまで引出すことができ、その引出し状態で、
図10に例示したように重量物Wを容易に掴むことができる。そして、この重量物Wを掴んだときに重量物Wと装着部20との接触面圧が急増するのを検知装置51が検知すると、その検知結果に基づき制御装置55がスイッチ54をオフ状態(即ちアクチュエータ53を非通電状態)に切替えて、ロック機構30をロック作動させる。
【0057】
これにより、巻取り装置Rがベルト40の更なる引出しを規制し、即ちベルト40の引出し長さが、重量物Wの把持に最適長さに保持されるため、作業者Pは、手Phで重量物Wを掴んでさえすれば、肩Ps上に掛かったベルト40で重量物Wを吊持してその重量を腕Paのみならず肩Psや腰部Pwにも負担させる支持形態となる。従って、この吊持状態のまま作業者Pの上体を起こしたり移動させたりするだけで、重量物Wを持ち上げたり保持したりする作業をより軽快に行うことができる。
【0058】
尚、上記作業の最中においても、巻取り装置Rによるベルト40巻取りは引き続きフリーである。このため、例えば、
図11に例示したように作業者Pが手Phで重量物Wを掴んだまま手Phを随時に任意高さだけ上げる動きが有れば、その上げた分だけベルト40が巻取り装置Rに自動的に巻き取られる(即ちベルト40の引出し長さが短縮側に調整される)が、ロック機構30はロック作動状態のままなので、ベルト40の引出しは引き続き規制される。
【0059】
次いで、前記作業が終了して、作業者Pが
図12に例示したように重量物Wを手放した状態になると、重量物Wと装着部20との接触面圧が急減乃至ゼロとなる。このとき、その状態を検知した検知装置51の検知結果に基づきスイッチ54が再びオン状態(従ってアクチュエータ53が通電状態)になることでロック機構30をロック解除させ、それに伴い、巻取り装置Rはベルト40の巻取り・引出しが何れもフリーとなる。
【0060】
かくして、作業者Pの手Phから装着部20を取り外せば、ベルト40は、巻取り装置Rにより
図8に示す前記待機位置まで自動的に巻取られる。そして、制御装置55を起動停止させると、作業支援装置Aが作動停止する。
【0061】
このように実施形態の作業支援装置Aは、作業者Pの胴体Pwに取付可能な取付部10と、作業者Pの腕Pa又は手Phに装着可能な装着部20と、その装着部20が一端部40aに結合されるベルト40と、取付部10に連結されると共にベルト40の他端側を巻取り可能な巻取り装置Rとを備え、巻取り装置Rは、ベルト40に対し巻取り方向の付勢力を付与する付勢機構31と、ベルト40の一端部を任意の引出し長さまで引き出したときに、更なる引出しを規制するようベルト40の引出し位置をロック可能なロック機構30とを備える。
【0062】
これにより、作業者Pの胴体Pmに取付けた巻取り装置Rから引出されるベルト40の一端部40a即ち装着部20を作業者Pの腕Pa又は手Phに装着した状態で、作業者Pがベルト40を適宜引出して重量物Wを手Phで掴むと共に、ロック機構30をロック作動させてベルト40の更なる引出しを制限すれば、作業者Pは、重量物Wを手Phで持ち上げたり保持したりする作業の際に、腕Pa又は手Phに掛かる負荷の一部をベルト40及び巻取り装置Rを通して胴体Pwに移すことができるため、それだけ作業負担が軽減されて、作業を効果的に補助、支援することができる。
【0063】
また巻取り装置Rは、ベルト40の引出し長さをロック機構30で単に規制するだけの軽量且つ簡単な構成で、上記した作業支援効果を発揮可能であるため、巻取り装置Rに連係させる大型の剛体フレームや荷物持上げ用アクチュエータは不要となって、コスト節減や作業者Pの負担軽減が図られる。しかも巻取り装置Rは、作業中のベルト引出し規制に専ら使用され、ロック機構30によりベルト40の引出し位置がロックされて該ベルト40の引出し方向への移動が規制された状態であっても、付勢機構31の付勢力に基づくベルト40の巻取り方向への移動は許容されて、作業中は元より、作業開始前や作業終了後もベルト40を随時巻取り可能であるため、ベルト40が非作業時の平常動作を阻害する心配や、ベルト40に他の物体が不用意に巻込まれたり巻付いたりする心配もなく、また作業開始前や作業中のベルト長調整も支障なく行うことができる。
【0064】
また特に実施形態の巻取り装置Rは、これから引き出されたベルト40の中間部が作業者Pの肩に摺動可能に掛けられるように、取付部10を介して作業者Pの腰部Pwに取付けられるので、前述の作業支援の際に巻取り装置Rが作業者Pの腰部Pwに連結支持される一方で、この巻取り装置Rから引出されるベルト40の中間部が作業者Pの肩Ps上を通り、そのベルト40の一端部側を介して作業者Pの腕Pa又は手Phを吊持する独特の支持形態となる。これにより、巻取り装置Rが腰部Pw周辺に在ることで、作業の邪魔になり辛くすることができるばかりか、作業支援時にベルト40に作用する重力が、作業者Pの腕Paのみならず腰部Pw・肩Psとその周辺に適度に分散してバランスよく受け止められるから、それだけ作業者Pの負担を軽減することができる。
【0065】
その上、実施形態のロック機構30は、作業の開始前及び終了後にロック機構30をロック解除させるための解除指令装置Cに接続されるので、作業の開始前及び終了後には、解除指令装置によりロック機構30をロック解除させることで、巻取り装置からのベルト40引出し長さを任意長さに容易に調整することができる。これにより、作業の開始前及び終了後においては、ベルト40の一端部40aの装着部20に作業者Pの腕Pa又は手Phを着脱する作業や、その腕Pa又は手Phの装着状態で重量物Wを手Phで掴む作業を、巻取り装置Rに邪魔されずに支障なくスムーズに行うことができる。
【0066】
また実施形態の解除指令装置Cは、自動式解除指令装置50であって、それは、支援すべき作業の開始前後・終了前後における装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果に基づいて、作業の開始前及び終了後にはロック機構30を自動的にロック解除させ、また作業の開始後から終了まではロック機構30をロック作動させる。
【0067】
ところで実施形態の装着部20は、作業者Pの少なくとも一つの指に引っ掛かった状態で装着部20に手Phを通して装着可能な形状である。これにより、作業準備の際に装着部20に対し指(例えば指の付け根)を引っ掛けた状態で手Phを通すことで、その手Phを用いて簡単的確にベルト40の引出しを行うことができ、作業効率が高められる。
【0068】
また実施形態の取付部10は、作業者Pの腰部Pwを一周して腰部Pwに保持される腰ベルト71を含み、その腰ベルト71に巻取り装置Rが連結される。これにより、重量物Wを持ち上げたり保持したりする作業の支援を行う際に巻取り装置Rに掛かる反力を、腰ベルト71から腰部Pw及びその周辺に広範囲に分散させることができるため、腰部Pwの荷重負担が軽減される。しかも腰ベルト71により腹部に適度な圧迫力が与えられることで、腹腔圧を上昇させ、腰椎への負担軽減にも寄与することができる。
【0069】
さらに実施形態の腰ベルト71には、作業者Pの少なくとも一方の大腿部Plを通すよう大腿部Plに装着可能な脚ベルト75が接続されるので、重量物Wを持ち上げる際の巻取り装置R自体のズリ上がりを抑制でき、同装置Rを適切な位置で効果的に使用可能となる。
【0070】
その上、実施形態の作業支援装置Aにおいては、作業者Pの少なくとも肩Psの上部を覆うように作業者Pが着用可能な作業用上着としてのベスト80を備え、そのベスト80には、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を維持すべくベルト40を摺動可能に通すベルトガイド81f,81rが設けられる。これにより、このベルトガイド81f,81rにより、ベルト40のスムーズな引出し作業を許容しつつ、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を的確に維持することができ、作業効率が高められる。
【0071】
ところで
図13には、第2実施形態の要部が示される。第1実施形態では、ロック機構30をロック解除させるための解除指令装置Cが自動式解除指令装置50であるもの(即ち支援すべき作業の開始前後・終了前後における装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能な検知装置51の検知結果に基づいて、該作業の開始前及び終了後にはロック機構30を自動でロック解除させるもの)を示したが、第2実施形態では、解除指令装置Cが手動式解除指令装置50′であるもの(即ち任意に手動操作可能な解除操作装置への操作入力に基づいてロック機構30を随時にロック解除させるもの)とされる。
【0072】
より具体的に説明すると、手動式解除指令装置50′は、
図13(A)で明らかなように、自動式解除指令装置50と同じく、係止部材36の軸部36aにインナワイヤの一端が結合されたボーデンケーブルよりなる操作索条52と、その操作索条52のインナワイヤの他端に連動連結されて通電時に係止部材36を前記係止解除方向(即ちロック機構30のロック解除方向)に牽引駆動可能な電動式アクチュエータ53と、アクチュエータ53の通電回路を開閉するスイッチ54と、スイッチ54を開閉制御する制御装置55とを備えるが、制御装置55は、第1実施形態の検知装置51に代えて、解除操作装置としてのリモコン装置56と連係できるようになっている。
【0073】
尚、リモコン装置56は、これの操作部を作業者Pの手元(例えば装着部20の適所)に設置しておけば、操作性が良好である。またリモコン装置56は、有線又は無線の通信手段で制御装置55と連係可能な構成とすればよい。
【0074】
而して、この手動式解除指令装置50′においては、支援すべき作業の開始前・終了後には、作業者Pがリモコン装置56を解除操作してスイッチ54をオン(従ってアクチュエータ53に通電)することでロック機構30をロック解除させることができる。一方、前記作業の開始から終了までの間は、作業者Pがリモコン装置56を解除オフ操作してスイッチ54をオフ(従ってアクチュエータ53を非通電に)することで、ロック機構30をロック作動させることができる。
【0075】
このように第2実施形態については、第1実施形態とは異なる特徴部分を説明したが、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と基本的に同じである。従って、第2の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の具体的説明は省略する。
【0076】
而して、この第2実施形態においては、ロック機構30をロック解除させるための解除指令装置Cの切換えが、解除操作装置(即ちリモコン装置56)に対する手動操作に基づいて行われる点を除いて、基本的に第1実施形態の前記作用効果と同等の作用効果を達成可能である。
【0077】
また
図13(B)には、手動式解除指令装置50′の第1変形例が示される。この第1変形例は、第2実施形態のリモコン装置56や制御装置55を省略して、スイッチ54′を随時且つ手動で直接開・閉操作することで、アクチュエータ53の通電回路を随時に開・閉することでロック機構30を任意選択的にロック解除・ロック作動できるようにしたものである。この第1変形例では、その手動で直接、開閉操作可能なスイッチ54′が解除操作装置を構成する。
【0078】
また図示はしないが、手動式解除指令装置50′の第2変形例として、上記操作索条52のインナワイヤを随時に手動操作可能な解除操作レバーにより機械的且つ直接的に牽引駆動することでロック機構30をロック解除させるようにしたものも実施可能である。この第2変形例では、制御装置55やアクチュエータ53、スイッチ54,54′の他、電源も省略可能となり、また上記解除操作レバーが解除操作装置として機能する。尚、第2変形例において、解除操作レバーに、これを操作索条52のインナワイヤに対する牽引駆動位置に随時に保持可能な保持機構を付設すれば、解除操作レバーから手を放した状態でも同レバーを任意の期間、上記牽引駆動位置に保持可能となる。
【0079】
而して、手動式解除指令装置50′の上記第1,第2変形例では、任意に手動操作可能な解除操作装置(スイッチ54′,上記解除操作レバー)への操作入力に基づいてロック機構30を随時にロック解除させることができる。即ち、第2実施形態と同様、支援すべき作業の開始前・終了後には、作業者Pが解除操作装置を解除操作することでロック機構30をロック解除させ、一方、前記作業の開始から終了までの間は、解除操作装置を解除オフ操作することでロック機構30をロック作動させることができる。
【0080】
ところで
図14には、第3実施形態に係る作業支援装置Aの使用状態を示す正面図及び背面図が示される。即ち、第1,第2実施形態では、左右一対の巻取り装置R,Rが作業者Pの背面側に間隔をおいて並列配置され、その各々の巻取り装置Rからベルト40が引き出され且つその一端部40aに固定の装着部20が左右の手Phにそれぞれ装着されるのに対し、第3実施形態では、左右何れか一方側の巻取り装置Rだけが設けられており、それから引き出されるベルト40も作業者Pの該一方側の肩Psに掛けて同側の手Phに装着部20を装着するものである。
【0081】
第3実施形態のその他の構成は、第1,第2実施形態と同様であるので、第3実施形態の各構成要素には、第1,第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0082】
而して第3実施形態も、第1,第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成するが、特に第2実施形態では、巻取り装置Rが単一でコスト節減が図られるが、その反面、重量物持ち上げ作業時に作業支援装置Aが発揮する作業者Pへの助勢力が半減するので、持ち上げるべき重量物Wの重量が比較的小さい場合(例えば小荷物を片手で持ち上げる場合)に有効である。
【0083】
また
図15には、第4実施形態に係る作業支援装置Aの使用状態を示す正面図及び背面図が示される。この第4実施形態においても巻取り装置Rは単一とされるが、それから引き出されるベルト40は、これの途中(特に背中側)で二股に分かれる分岐部40jを有する。その分岐部40jにおいて別れた左右一対のベルト40は、第1実施形態と同様、作業者Pの左右の肩Psに掛けられ、さらに左右の手Phに装着部20がそれぞれ装着される。
【0084】
第4実施形態のその他の構成は、第1,第2実施形態と同様であるので、第4実施形態の各構成要素には、第1,第2実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0085】
而して第4実施形態も、第1,第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成するが、特に第4実施形態では、巻取り装置Rが単一で済むばかりか、巻取り装置Rから分岐部40jまでのベルト40の使用量を減らすことができるため、それだけコスト節減が図られる。
【0086】
また
図16には、脚ベルト75のバリエーションが示され、特に(A)は大腿部に斜めに巻く脚ベルト(第1,第2実施形態に相当)を示し、また(B)は大腿部に略水平に巻く脚ベルト75を示す。この(B)の脚ベルト75は、大腿部Plへの巻き方が第1,第2実施形態の脚ベルト75と異なるだけであって、基本的に第1,第2実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
【0087】
更に
図17には、巻取り装置Rを腰部Pwの側面に配置した第1,第2実施形態の第1変形例が示され、また
図18には、巻取り装置Rを腰部Pwの前面に配置した第1,第2実施形態の第2変形例が示される。これら変形例もまた、基本的に第1,第2実施形態と同様の作用効果を達成可能である。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0089】
例えば、前記実施形態では、装着部20が、作業者Pの手Phに装着可能な構造のものを例示したが、本発明では、装着部20が作業者Pの腕Paに装着可能に構成されるものを使用してもよい。
【0090】
また前記実施形態では、巻取り装置Rからのベルト40の引出し操作を作業者P本人が行うようにしたが、作業者Pとは別人が、引出し操作を行い且つ作業者Pの手Ph又は腕Paに装着部20を装着するのを手助けするようにしてもよい。
【0091】
また特に第1実施形態では、解除指令装置Cが、検知装置51の検知結果に基づき作業の開始前・終了後であると判断されるのに応じてロック機構30を自動でロック解除させる自動式解除指令装置50であるものが示され、また第2実施形態では、任意の手動操作可能な解除操作装置(リモコン装置56、スイッチ54′、解除操作レバー等)への操作入力に連動してロック機構30を手動でロック解除させる手動式解除指令装置50′であるものが示されたが、本発明では、解除指令装置Cとして自動式解除指令装置50と手動式解除指令装置50′とが両方とも含まれるものであってもよい。
【0092】
また第1実施形態では、自動式解除指令装置50と連係する検知装置51が、作業の開始前後・終了前後における装着部20と重量物W間の接触面圧又は相対距離の変化を検知可能であって、その検知結果から制御装置55が作業の開始前・終了後であると判断しロック機構30をロック解除させるものを示したが、検知装置51としては、作業の開始前後・終了前後における何等かの作業状態変化を検知できるものであれば実施形態に限定されず、適用可能である。
【0093】
また前記実施形態では、巻取り装置Rの付勢機構31の動力源が渦巻きばね32であって、そのばね力を巻取り付勢力に利用したものを示したが、その付勢機構31の動力源として電動モータを利用してもよい。但し、この場合でも、巻取り装置Rは、単にベルト40の巻取りのみに使用されるものであって、前記特許文献のような頑丈で重い剛体フレームを回動させたり引き上げたりする必要はないから、比較的小出力のモータの使用が可能であり、コスト増を抑制可能である。
【0094】
また前記実施形態では、作業者Pの少なくとも肩Psの上部を覆うように作業者Pが着用可能な作業用上着としてのベスト80を用い、ベスト80に、ベルト40の中間部が作業者Pの肩Psに掛かった状態を維持すべくベルト40を摺動可能に通すベルトガイド81f,81rを設けたものを示したが、この作業用上着としてのベスト80は、本発明の作業支援装置Aに必須のものではなく、例えば、このベスト80を着用せず通常の服装をした作業者Pが、肩Psにベルト40の中間部を摺動可能に直接、掛けるようにしてもよい。或いはまた、ベスト80以外のスタイルの上着(例えばブレザー、シャツ)を本発明の作業用上着として使用して、これの前面及び後面にベルトガイド81f,81rを設けてもよい。
【0095】
また前記実施形態では、巻取り装置Rを、腰ベルト71を含む取付部10を介して作業者Pの腰部Pwに取付けるものを示したが、巻取り装置Rの取付部位は実施形態に限定されず、胴体Pmの、腰部Pw以外の部位(例えば肩Ps、背中等)に巻取り装置Rを取付けるようにしてもよく、特に肩Psに巻取り装置Rを取付ける場合には、この巻取り装置Rから引き出したベルト40の中間部を作業者Pの肩Psに掛ける必要はない。
【符号の説明】
【0096】
A・・・・・作業支援装置
C・・・・・解除指令装置
P・・・・・作業者
Pa,Pf,Ph,Pl・・作業者の腕,指,手,大腿部
Pm,Ps,Pw・・・・・作業者の胴体,肩,腰部
R・・・・・巻取り装置
W・・・・・重量物
10・・・・取付部
20・・・・装着部
30・・・・ロック機構
31・・・・付勢機構
40・・・・ベルト
40a・・・一端部
40j・・・分岐部
50・・・・自動式解除指令装置
50′・・・手動式解除指令装置
51・・・・検知装置
54′・・・解除操作装置としてのスイッチ
56・・・・解除操作装置としてのリモコン装置
71・・・・腰ベルト
75・・・・脚ベルト
80・・・・作業用上着としてのベスト
81f,81r・・ベルトガイドとしての前、後部ベルトガイド