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▶ 西段 隆美の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】柿ドリンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20241029BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241029BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/00 F
A23L33/105
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022160039
(22)【出願日】2022-10-04
(65)【公開番号】P2024053679
(43)【公開日】2024-04-16
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】321007379
【氏名又は名称】西段 隆美
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西段 隆美
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2003-0069460(KR,A)
【文献】特開2006-288373(JP,A)
【文献】特開2016-060739(JP,A)
【文献】特開平06-276990(JP,A)
【文献】特開平03-183453(JP,A)
【文献】特開2020-002091(JP,A)
【文献】特開昭56-029989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/02
A23L 2/52
A23L 33/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿を、種、ヘタ、及び、皮を含む第1の部分と、第1の部分以外の部分であって、種とヘタとを含まない第2の部分と、に分ける工程と、
前記第1の部分と水とを煮る工程と、
前記第2の部分をピューレ状に潰す工程と、
前記第1の部分を濾す工程と、
前記濾す工程を経た前記第1の部分と、前記潰す工程を経た前記第2の部分とを混ぜる工程と、
を備える柿ドリンクの製造方法。
【請求項2】
前記第1の部分は、柿の葉を含む請求項1に記載の柿ドリンクの製造方法。
【請求項3】
前記混ぜる工程の後、70℃以下の温度で加熱する工程を、更に備える請求項1又は2に記載の柿ドリンクの製造方法。
【請求項4】
前記分ける工程の後、前記煮る工程の前に、前記第1の部分と前記第2の部分とを分けた状態で冷凍保存する保存する工程を、更に備える請求項1又は2に記載の柿ドリンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、柿ドリンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果物及び野菜(以下、果物と野菜とを「果菜」とも称する)から搾汁した果汁を利用した飲料の製造方法に関し、各素材が持つ旨味と高い栄養価を生かすことができるよう、種々の研究・開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トマトを利用した清涼飲用水の製造方法が記載されている。特許文献1の清涼飲料水は、トマトの搾汁液と、クエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウムとを含む。また、特許文献2には、黒酢と柿とを用いた飲料の製造方法が記載されている。特許文献2の飲料は、柿を黒酢に漬け込み、長期保存することで製造される。特許文献2によれば、黒酢に漬け込むことにより、柿に含まれる渋みが除去され、柿と黒酢との相乗効果による栄養価の高い飲料が得られるとされている。
【0004】
特許文献1及び2に記載の飲料は、果菜と、クエン酸ナトリウム又は黒酢といった材料等とを混合することで、飲料の飲みやすさ、味等に改良を加えた清涼飲料水である。
【0005】
また、果菜を用いる飲料の中でも、果汁のみを用いた果汁100%のジュース、とりわけ、生の果菜から搾汁した液をそのまま飲料とした、いわゆる生ジュースと呼ばれるような飲料は、果菜に含まれる高い栄養成分を手軽に摂取することができ、かつ、その果菜の旨味を直に味わうことができることなどから、高い人気がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-84715号公報
【文献】特開2011-36236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、果汁100%の生ジュースは、ジューサーを用いて果菜を圧搾するか、あるいは、ミキサーを用いて果菜を粉砕及び攪拌することで製造され、そのまま提供される。このようなジューサー等を用いた従来の果汁飲料の製造方法の場合、大きな種及びヘタ等は予め除去され果菜の実の部分のみが用いられる。このような製造方法で柿ドリンクが製造される場合、柿のヘタ、種、及び、皮が除去された後、柿の実のみが圧搾又は粉砕されて柿ドリンクが作られる。しかし、柿のヘタ、種、及び、皮、並びにこれらの周辺の実には栄養価の高い成分が含まれているため、これらの部分を除去して実を潰しただけでは、柿の実以外の部分が有する栄養成分を柿ドリンクに十分に含ませることができない。
【0008】
本開示は、以上の課題を解決するためになされたものであり、柿が有するより多くの栄養成分を含ませることができるように改良された柿ドリンクの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る柿ドリンクの製造方法は、柿を、種、ヘタ、及び、皮を含む第1の部分と、第1の部分以外の部分であって、種とヘタとを含まない第2の部分と、に分ける工程と、第1の部分と水とを煮る工程と、第2の部分をピューレ状に潰す工程と、第1の部分を濾す工程と、濾す工程を経た第1の部分と、潰す工程を経た第2の部分とを混ぜる工程と、を備える。
【0010】
本開示に係る柿ドリンクの製造方法において、第1の部分は、柿の葉を含むものであってもよい。また、柿ドリンクの製造方法は、混ぜる工程の後、70℃以下の温度で加熱する工程を、更に備えるものであってもよい。あるいは、柿ドリンクの製造方法は、分ける工程の後、煮る工程の前に、第1の部分と第2の部分とを分けた状態で冷凍保存する保存工程を、更に備えるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の柿ドリンクの製造方法によれば、ヘタ、種、及び、皮を含む第1の部分を煮ることで、殺菌効果が得られると共に、これらの部分が有する栄養成分を十分に煮汁に引き出すことができる。従って、本開示の製造方法によれば、柿が有する栄養成分をより多く含む柿ドリンクを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態.
以下、本実施の形態に係る柿ドリンクの製造方法について説明する。本実施の形態に係る柿ドリンクの製造方法では、まず、柿の下処理が行われる。ここでは熟柿を用いるものとする。下処理では、柿を洗い、第1の部分と、第2の部分とに分ける工程である。
【0013】
ここで、第1の部分は、少なくともヘタ及び種と皮の一部とを有する部分であり、第2の部分は、第1の部分以外の部分であって、ヘタ及び種を含まない、実を主とする部分である。第1の部分には、更に、柿の葉を含めてもよい。柿の皮は、全てむいて第1の部分としてもよいし、一部のみをむいて、その一部を第1の部分としてもよい。また、柿の皮はむかなくてもよい。柿の皮の一部のみをむく場合、あるいは皮をむかない場合、除去したヘタ側に残る皮と、むいた皮は第1の部分に含まれ、実の周りにむかれずに残った柿の皮は、実と共に第2の部分として扱われる。実は、主として第2の部分であるが、ヘタ、種、及び、第1の部分となる皮の周囲に付着している実は、第1の部分として扱われる。従って、第1の部分は、柿の実を含み得る。
【0014】
下処理において、第2の部分の柿の実は、適当な大きさにカットされる。第2の部分の柿の実の好適なカット例としては、4つ切り、あるいは、8つ切りが挙げられる。但し、第2の部分の柿の実は、カットされなくてもよい。なお、柿を洗った後の、分ける工程から第2の部分のカットまでは、柿加工用の調理器具に投入することで、自動的に処理されるようにしてもよい。
【0015】
次に、煮る工程が行われる。煮る工程では、下処理された第1の部分と水とが調理器具に投入され、加熱される。ここでの加熱温度は100℃以上とする。100℃以上とするのは、第1の部分に含まれる栄養成分を十分に水に煮出すためでもあり、殺菌のためでもある。煮る工程で使用される調理器具の種類に限定はなく、普通の鍋、土鍋、圧力鍋、又は、電気鍋、電気圧力鍋等、加熱手段に対して適した調理器具を、適宜、選択することができる。また、加熱手段には限定はないが、例えば、ガスコンロ、電気コンロ、又は、電子レンジ、オーブン等を用いることができる。ここでの加熱時間は、調理器具と加熱手段の火力(又は電力)と、調理する第1の部分及び水の量とに応じて、適宜設定される。例えば、同じ加熱手段で同じ量の柿を加熱する場合でも、調理器具として圧力鍋が用いられる場合には、普通の鍋や土鍋を用いる場合に比べ加熱時間が短くなる。
【0016】
また、第1の部分を煮る工程では熱水抽出法を用いてもよい。この場合具体的に煮る工程は以下の通り行われる。まず、寸胴鍋等の大きな調理器具に湯を沸かす。また第1の部分と水又は湯は別の鍋等の容器に入れる。そして第1の部分を入れた鍋等の容器を、調理器具内の沸かした湯に入れた状態にして、加熱する。これにより第1の部分と水とを直接的に煮る場合と同様に、第1の部分を加熱して栄養成分を抽出することができる。なお、寸胴鍋等の調理器具の湯の加熱は、熱水抽出法により第1の部分を入れた鍋を加熱する間継続的に行ってもよいし、調理器具が保温性を有し、湯の温度を一定の高温に保温可能なものである場合には、第1の部分を煮込む間、調理器具を保温された状態で放置してもよい。
【0017】
加熱が完了した後、第1の部分を含む水は、メッシュ、布巾、笊、又は、濾し器等により濾され、種、ヘタ、皮等の固形物が除去された水分のみが抽出される。ここでは、この抽出された水分を「煮汁」と称する。煮汁には、柿のヘタや種等の第1の部分が有する栄養成分が含まれている。
【0018】
一方、第2の部分に対しては潰す工程が行われる。潰す工程では、第2の部分が、ミキサー等を用いて粉砕又はジューサー等を用いて圧搾され、ピューレ状に加工される。以下では、このピューレ状にされた第2の部分を、単に「ピューレ」と称する。
【0019】
その後、煮汁とピューレとが混ぜ合わされる。その後、混ぜ合わせれた混合液に対して加熱する工程が行われる。加熱する工程での加熱温度は、煮る工程における第1の部分の加熱温度より低く、70℃以下の温度とする。これは柿の実が有する栄養成分の破壊を避けるためである。なお、混合液に対する加熱する工程は行わなくてもよい。つまり100℃程度に加熱された煮汁とピューレとを混ぜるのみであってもよい。また、加熱する工程では、煮汁とは別に、更に水を加えてもよく、必要に応じて砂糖、はちみつ等の甘味を加えてもよい。
【0020】
煮汁とピューレとが混ぜ合わされ後、あるいはこれを加熱する工程が行われた後、混合液を濾す工程が行われる。この濾す工程では、メッシュ、布巾、笊、又は、濾し器等によって混合液が濾される。濾された汁が、柿ドリンクとなる。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態では、ヘタ及び種を含む第1の部分から栄養成分を煮だした煮汁と柿の実のピューレとを混ぜて柿ドリンクを製造することで、柿が有する栄養成分を十分に含む柿ドリンクを製造することができる。
【0022】
よく知られているように、果菜の中でも、特に柿は、β-カロチン、ビタミンC、葉酸、柿タンニン等、様々な栄養成分を豊富に含む果物であり、近年、柿は、健康食品としても高い注目を集めている。これらの栄養成分は、ヘタ付近、種の中、葉、及び、皮、並びにこれらと実との間の部分などにも多く含まれている。また、これらの柿の栄養成分の一部は、加熱によって更に増加するとも言われている。本実施の形態の製造方法によれば、第1の部分を煮ることで、確実に柿が持つ高い栄養成分を煮汁内に抽出することができる。従って、生の実のみを搾汁する場合と比べて、栄養価の高い、あるいは少なくとも栄養価の異なる柿ドリンクを得ることができる。また、第1の部分を加熱することにより、十分に殺菌された柿ドリンクを提供することができる。
【0023】
なお、本実施の形態で説明した柿ドリンクの製造方法は、分ける工程の後、第1の部分を煮る工程の前に、保存する工程を含む構成としてもよい。具体的に、保存する工程を有する場合の柿ドリンクの製造方法は、以下の通りである。
【0024】
まず、保存する工程では、分ける工程で分けられた、第1の部分と第2の部分とを別々分けて冷凍保存する。この際、第2の部分は、先に潰す工程まで行って滑らかなピューレ状にしてもよいし、小さく切る又は荒く潰すなどしてから、冷凍保存してもよい。ここでの保存期間に特に限定はないが、例えば、その果菜の収穫のシーズンの後、次の収穫のシーズンまでの1年弱等とされる。そして、保存前の処理において、第2の部分である実の加工状態、即ち、そのまま、あるいは、より細かく切るか、ピューレ状にすり潰すかは、保存期間等を考慮して適宜、選択してもよい。
【0025】
保存期間の終了後、第1の部分と水とを煮る工程が行われ、加熱後の濾された煮汁と、解凍後の第2の部分とが混ぜ合わされた後、再び加熱される。
【0026】
以上のように、保存する工程を設けることで、年間を通じて、安定的に柿ドリンクを提供することが可能となる。
【0027】
なお、実施の形態では熟柿を用いる場合について説明したが、熟柿とともに青柿を用いてもよい。青柿を用いる場合、青柿の実を含むすべての部分が第1の部分として扱われる。即ち、青柿を用いる場合、青柿は適当な大きさにカットされた後、熟柿のヘタや種等の第1の部分に含められて、煮る工程によって加熱される。そして濾されてできた煮汁が柿ドリンクとして用いられる。これにより、青柿を用いる場合にも、青柿が有する栄養成分を十分に柿ドリンクに含ませることができる。
【0028】
また、本実施の形態における混合液を濾す工程の後、即ち本実施の形態で説明した工程により柿ドリンクの完成した後、更に、柿タンニンを追加するようにしてもよい。柿タンニンの追加は、例えば、柿から柿タンニンを含む栄養成分を抽出した柿エキスを追加することにより追加される。柿エキスはアルコール抽出により生成することができるが、果菜等からの栄養成分の抽出方法は種々に知られており、ここでの詳細な説明は省略する。