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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】置換ピラゾール誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/14 20060101AFI20241029BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 3/00 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 3/04 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/06 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/08 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/14 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/22 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/24 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20241029BHJP
   A61P 25/30 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C07D231/14
C07D413/12
A61K31/5377
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/12
A61P25/06
A61P25/08
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/30
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022500840
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069317
(87)【国際公開番号】W WO2021005137
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】19185640.0
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19194896.7
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュプール,ポール
(72)【発明者】
【氏名】トリュサルディ,レネ
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512469(JP,A)
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett.,2007年,Vol.17,pp.5620-5623,Supporting Information (pp.S1-S16)
【文献】Chem. Sci.,2016年,Vol.7,pp.866-880
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するための方法であって、
【化1】

a)ペンタン-3-オン(4)を、
【化2】

塩基の存在下で、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5(式中、RはC~C-アルキルまたはC~C14-アリールである)と反応させる工程;
【化3】

b)(i)酸の存在下でヒドラジン水和物、または(ii)ヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に添加する工程;
c)アルカリ金属水酸化物の水溶液を、工程b)で得られた混合物に添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、酸を添加することによってpH6未満に調整する工程;
を含むことにより、前記5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成し
工程a)~d)は、いかなる中間体も単離することなく実行される、方法。
【請求項2】
工程a)における前記オキサレート5がジアルキルオキサレート(式中、RはC~C-アルキルである)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)における前記オキサレート5がジエチルオキサレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)における前記塩基がナトリウムエトキシドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が0℃から25℃の間で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、(i)塩酸および酢酸からなる群から選択される酸、または(ii)ヒドラジン塩酸塩およびヒドラジン酢酸塩からなる群から選択されるヒドラジン塩が使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、ヒドラジン塩酸塩(N・HCl)およびヒドラジン酢酸塩(N・CHCOOH)からなる群から選択されるヒドラジン塩が、それぞれそのまま、またはin situで形成されて使用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)が0℃から-15℃の間で行われる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)における前記アルカリ金属水酸化物が、LiOH、KOHまたはNaOHである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)における前記アルカリ金属水酸化物がNaOHである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)が0℃から15℃の間で行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程d)において、工程c)で得られた混合物のpHがpH3未満に調整される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)において添加される前記酸が塩酸である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を使用する、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)
【化4】

またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための新規な方法に関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
式Iの化合物は、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、片頭痛、高血圧症、薬物乱用、依存症、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満、脂質異常症、エネルギー消費および同化の障害、体温恒常性の障害および機能不全、睡眠および概日リズムの障害、ならびに心血管障害などの様々な疾患および障害の処置に有用なTAAR1阻害剤である(PCT出願WO2017157873)。
【0003】
WO2017157873は、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を(2S)-2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(2)と反応させて、tert-ブチル(2S)-2-[4-[(5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボニル)アミノ]フェニル]モルホリン-4-カルボキシレート(3)を形成することを含む、式Iの化合物を製造するための方法を開示している。
【化2】
【0004】
(2S)-2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(2)は、例えばPCT出願WO2015086495に記載されているように得ることができる。
【0005】
5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)は、例えばPhilip J.Skinnerら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2007、17、5620~5623に記載されているように得ることができる。
【0006】
マーケティングプロダクトの場合、医薬品を大量かつ医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(「GMP」)に従って製造する必要がある。したがって、高収率で安価で再現性のある合成が最も重要である。
【0007】
Skinnerらに記載されている5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)の合成は、低収率および高い反応温度などのいくつかの欠点を有し、結局のところWO2017157873に記載されている手順による式Iの化合物の工業規模の合成に影響を及ぼす。
【0008】
したがって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための新しい方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法であって、
【化3】

a)ペンタン-3-オン(4)を、
【化4】

塩基の存在下で、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5(式中、RはC~C-アルキルまたはC~C14-アリールである)と反応させる工程;
【化5】

b)(i)酢酸もしくは塩酸などの酸の存在下でヒドラジン水和物、または(ii)ヒドラジン酢酸塩もしくはヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に添加する工程;
c)アルカリ金属水酸化物の水溶液を、工程b)で得られた混合物に添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、酸を添加することによってpH6未満に調整する工程;
を含むことにより、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成し、
【化6】

工程a)~d)は、いかなる中間体も単離することなく実行される、方法を提供する。
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するための方法であって、
【化7】

a)ペンタン-3-オン(4)を、
【化8】

塩基の存在下で、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5(式中、RはC~C-アルキルまたはC~C14-アリールである)と反応させる工程;
【化9】

b)(i)酢酸もしくは塩酸などの酸の存在下でヒドラジン水和物、または(ii)ヒドラジン酢酸塩もしくはヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に添加する工程;
c)アルカリ金属水酸化物の水溶液を、工程b)で得られた混合物に添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、酸を添加することによってpH6未満に調整する工程;
を含むことにより、前記5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成し、
工程a)~d)は、いかなる中間体も単離することなく実行される、方法を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩の製造用の、本明細書に記載の5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)の製造に対するワンポット法の使用を提供する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られる、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または基は、両立しない場合を除き、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、および要約を含む)に開示された特徴の全て、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本発明は、前述のいずれの実施形態の細部にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、および要約を含む)に開示された特徴の任意の新規なものもしくは任意の新規な組合せ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の任意の新規なものもしくは任意の新規な組合せに及ぶ。
【0013】
用語「アルキル」は、1~6個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、または6個の炭素原子の、一価、直鎖または分岐の飽和炭化水素基(「C1~6-アルキル」)を指す。他の実施形態では、アルキル基は、1~3個の炭素原子、例えば1、2、または3個の炭素原子を含む。いくつかの非限定的なアルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、および2,2-ジメチルプロピルが挙げられる。特に好ましいが非限定的なアルキルの例は、エチルである。
【0014】
用語「アリール」は、合計6~14環員(「C6~14-アリール」)、好ましくは、6~12環員、より好ましくは6~10環員を有する単環式、二環式、または三環式の炭素環式環系であり、系の少なくとも1つの環は芳香族である。好ましいが非限定的なアリールの例は、フェニルである。
【0015】
用語「塩基」は、アルコキシド、ヒドリドまたはジアルキルアザニドなどのクライゼン(Claisen)縮合での使用に適した塩基を指す。塩基の特定の例は、ナトリウムまたはカリウムメトキシド、ナトリウムまたはカリウムエトキシド、ナトリウムまたはカリウムtert-ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、およびナトリウムまたはカリウムヒドリドである。好ましい塩基の例は、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、およびカリウムtert-ブトキシドである。特に好ましい塩基の例は、ナトリウムメトキシドである。
【0016】
用語「酸」は、少なくとも1つの酸性プロトンを有する化合物を指す。特定の非限定的な酸の例は、塩酸および酢酸である。
製造方法
本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法であって、
【化10】

5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を、
【化11】

スキーム1に概説されるように製造するためのワンポット法を含む、方法に関する。
【化12】
【0017】
スキーム1
本発明のワンポット法によれば、ペンタン-3-オン(4)と、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5(式中、RはC~C-アルキルまたはC~C14-アリールである)との、好ましくはジエチルオキサレートとの、アルカリ金属アルコキシド、特にナトリウムエトキシドなどの塩基の存在下でのクライゼン縮合により中間体6が得られ、これを酸の存在下でヒドラジン、より詳細にはヒドラジン塩酸塩またはヒドラジン酢酸塩(個々の成分からin situでも形成される)などのヒドラジン塩と反応させて、カルボン酸エステル7が得られる。続いて、カルボン酸エステル7を、LiOH、NaOHまたはKOH、特にNaOHなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を環化工程から得られた反応混合物に直接添加することによってけん化する。5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)は、例えば塩酸水溶液を添加することによって反応混合物を酸性化(pH7未満、特にpH3未満、好ましくはpH=2.0~2.5)することによって最終的に得られる。
【0018】
本明細書に記載の5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するためのワンポット法の驚くべき利点の1つは、例えばPhilip J.Skinnerら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2007、17、5620~5623に開示されている方法よりも高い収率(すなわち、75%対26%)をもたらすことである。
第1の態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法であって、
【化13】

a)ペンタン-3-オン(4)を、
【化14】

塩基の存在下で、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5(式中、RはC~C-アルキルまたはC~C14-アリールである)と反応させる工程;
【化15】

b)(i)酢酸もしくは塩酸などの酸の存在下でヒドラジン水和物、または(ii)ヒドラジン酢酸塩もしくはヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に添加する工程;
c)アルカリ金属水酸化物の水溶液を、工程b)で得られた混合物に添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、酸を添加することによってpH6未満に調整する工程;
を含むことにより、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成し、
【化16】

工程a)~d)は、いかなる中間体も単離することなく実行される、方法を提供する。
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するための方法であって、
【化17】

a)ペンタン-3-オン(4)を、
【化18】

塩基の存在下で、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5(式中、RはC~C-アルキルまたはC~C14-アリールである)と反応させる工程;
【化19】

b)(i)酢酸もしくは塩酸などの酸の存在下でヒドラジン水和物、または(ii)ヒドラジン酢酸塩もしくはヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に添加する工程;
c)アルカリ金属水酸化物の水溶液を、工程b)で得られた混合物に添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、酸を添加することによってpH6未満に調整する工程;
を含むことにより、前記5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成し、
工程a)~d)は、いかなる中間体も単離することなく実行される、方法を提供する。
【0019】
一実施形態では、工程a)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して1当量を超えるペンタン-3-オン(4)を使用する。
【0020】
好ましい実施形態では、工程a)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約1当量~約2当量のペンタン-3-オン(4)を使用する。
【0021】
特に好ましい実施形態では、工程a)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約1当量~約1.5当量、例えば約1.2当量のペンタン-3-オン(4)を使用する。
【0022】
一実施形態では、本発明の方法の工程a)におけるオキサレート5は、ジアルキルオキサレート(式中、RはC~C-アルキルである)である。
【0023】
一実施形態では、本発明の方法の工程a)におけるオキサレート5は、ジエチルオキサレートである。
【0024】
一実施形態では、本発明の方法の工程a)における塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。
【0025】
一実施形態では、本発明の方法の工程a)における塩基は、ナトリウムエトキシドである。
【0026】
一実施形態では、工程a)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約1当量~約2当量の塩基を使用する。
【0027】
好ましい実施形態では、工程a)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約1当量~約1.5当量の塩基を使用する。
【0028】
特に好ましい実施形態では、工程a)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約1当量~約1.1当量の塩基を使用する。
【0029】
一実施形態では、工程a)は、75℃未満、例えば約0℃から約25℃の間で行われる。
【0030】
好ましい実施形態では、工程a)は、約0℃から約10℃の間で行われる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、工程a)は、約0℃から約5℃の間で行われる。
【0032】
一実施形態では、本発明の方法の工程b)において、ヒドラジン塩酸塩(N・HCl)およびヒドラジン酢酸塩(N・CHCOOH)からなる群から選択されるヒドラジン塩は、それぞれそのまま、またはin situで形成されて使用される。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程b)において、ヒドラジン酢酸塩(N・CHCOOH)はそのまま、またはin situで形成されて使用される。
【0034】
一実施形態では、工程b)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約0.95当量~約1.5当量のヒドラジンまたはヒドラジン塩を使用する。
【0035】
好ましい実施形態では、工程b)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約0.95当量~約1.1当量のヒドラジンまたはヒドラジン塩を使用する。
【0036】
特に好ましい実施形態では、工程b)において、ジエステル5に対して1当量未満、例えば約0.95当量のヒドラジンまたはヒドラジン塩を使用する。
【0037】
いくつかの場合では、工程b)において、ジエステル5に対して1当量未満のヒドラジンを使用すると、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)において所望の生成物のヒドラジド誘導体による汚染レベルが有益に低下することが見出された。
【0038】
一実施形態では、工程b)は約5℃未満で行われる。
【0039】
好ましい実施形態では、工程b)は約0℃未満で行われる。
【0040】
特に好ましい実施形態では、工程b)は、約-15℃から約0℃の間で行われる。
【0041】
本発明の方法の一実施形態では、工程c)におけるアルカリ金属水酸化物は、LiOH、KOHまたはNaOHである。
【0042】
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程c)におけるアルカリ金属水酸化物は、NaOHである。
【0043】
一実施形態では、工程c)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約2当量~約4当量のアルカリ金属水酸化物を使用する。
【0044】
好ましい実施形態では、工程c)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約2当量~約3当量のアルカリ金属水酸化物を使用する。
【0045】
特に好ましい実施形態では、工程c)において、ジアルキルまたはジアリールオキサレート5に対して約2.5当量~約2.9当量、例えば約2.85当量のアルカリ金属水酸化物を使用する。
【0046】
一実施形態では、工程c)は、30℃未満、例えば約0℃から約30℃の間で行われる。
【0047】
好ましい実施形態では、工程c)は、約0℃から約20℃の間で行われる。
【0048】
特に好ましい実施形態では、工程c)は、約0℃から約15℃の間で行われる。
【0049】
一実施形態では、工程c)で得られた混合物を高温(例えば、約40℃~約50℃)で長期間(例えば、約10~約20時間)撹拌する。
【0050】
一実施形態では、工程c)は、pHが約12.5以上、例えば約14になるまで、工程b)で得られた混合物にアルカリ金属水酸化物の水溶液を添加することを含む。
【0051】
本発明の方法の一実施形態では、工程d)において、工程c)で得られた混合物のpHを約pH1.5~約pH5に調整する。
【0052】
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程d)において、工程c)で得られた混合物のpHを約pH1.5から約pH3の間に調整する。
【0053】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、工程d)において、工程c)で得られた混合物のpHを約pH2.0から約pH2.5の間に調整する。
【0054】
本発明の方法の一実施形態では、工程d)において添加される酸は塩酸である。
【0055】
一実施形態では、工程d)における酸は、約0℃~約60℃で添加される。
【0056】
好ましい実施形態では、工程d)における酸は、約40℃~約50℃で添加される。
【0057】
特に好ましい実施形態では、工程d)における酸は、約45℃で添加される。
一実施形態では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)もしくはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法、または本明細書に記載の5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するための方法であって、
a)ペンタン-3-オン(4、ジアルキルオキサレート5に対して1当量超)を、
【化20】

塩基(約1当量~約2当量)の存在下で、ジアルキルオキサレート5(式中、RはC~C-アルキル(1.00当量))と、75℃未満、例えば約0℃から約25℃の間で反応させる工程;
【化21】

b)5に対して約0.95当量~約1.5当量の(i)酢酸もしくは塩酸などの酸の存在下でヒドラジン水和物、または(ii)ヒドラジン酢酸塩もしくはヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に約5℃未満で添加する工程;
c)アルカリ金属水酸化物(5に対して約2当量~約4当量)の水溶液を、工程b)で得られた混合物に約30℃未満の温度で添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、約0℃~約60℃で酸を添加することによって約pH1.5~約pH5に調整する工程;
を含むことにより、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成する、方法を提供する。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)もしくはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法、または本明細書に記載の5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するための方法であって、
a)ペンタン-3-オン(4、5に対して約1当量~約2当量)を、
【化22】

塩基(約1当量~約1.5当量)の存在下で、ジアルキルオキサレート5(式中、RはC~C-アルキル(1.00当量))と、約0℃から約10℃の間で反応させる工程(ここで、塩基はアルカリ金属アルコキシドである);
【化23】

b)5に対して約0.95当量~約1.1当量のヒドラジン塩を、工程a)で得られた反応混合物に温度を約0℃未満に維持しながら添加する工程(ここで、ヒドラジン塩はヒドラジン塩酸塩(N・HCl)またはヒドラジン酢酸塩(N・CHCOOH)はそのまま、またはin situで形成される);
c)アルカリ金属水酸化物(5に対して約2当量~約3当量)の水溶液を、工程b)で得られた混合物に約20℃未満の温度で添加する工程(ここで、アルカリ金属水酸化物は、LiOH、KOH、またはNaOHである);および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、約0℃~約60℃で酸を添加することによって約pH1.5から約pH3の間に調整する工程;
を含むことにより、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成する、方法を提供する。
特に好ましい実施形態では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)もしくはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法、または本明細書に記載の5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するための方法であって、
a)ペンタン-3-オン(4、5に対して約1当量~約1.5当量、例えば約1.2当量)を、
【化24】

ナトリウムエトキシドまたはナトリウムメトキシド、好ましくはナトリウムエトキシド(約1.0当量~約1.1当量)の存在下で、ジエチルオキサレート5a(1.00当量)と約0℃~約5℃で反応させる工程;
【化25】

b)5に対して1当量未満、例えば約0.95当量の、そのまままたはin situで形成されたヒドラジン酢酸塩(N・CHCOOH)を、工程a)で得られた反応混合物に温度を約0℃未満に維持しながら添加する工程;
c)NaOHの水溶液(5に対して約2.5当量~約2.9当量、例えば約2.85当量)を、工程b)で得られた混合物に温度を約0℃から約15℃の間で維持しながら添加する工程;および
d)工程c)で得られた混合物のpHを、約40℃~約50℃で塩酸を添加することによって約pH2.0から約pH2.5の間に調整する工程;
を含むことにより、5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を形成する、方法を提供する。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩の製造用の、本明細書に記載の5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)を製造するためのワンポット法の使用を提供する。
【0060】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られる、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式I)またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
実施例
【0061】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解される。しかしながら、特許請求の範囲は、本実施例の範囲に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0062】
特に明記しない限り、全ての反応は保護ガス雰囲気(例えば、アルゴンまたは窒素)下で行った。
【0063】
実施例1
5-エチル-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(1)
3-ペンタノン(93.0g、1.08mol、1.20当量)を、20%エタノール性ナトリウムエトキシド(338g、994mmol、1.10当量)中のジエチルオキサレート(132g、903mmol、1.00当量)の維持された予冷(-5~0°C)溶液に添加した。ラインをエタノール(50mL)ですすいだ。この温度で2時間撹拌した後、反応混合物を約-15°Cに冷却し、酢酸(59.7g、994mmol、1.10当量)中40%水性ヒドラジン(118g、948mmol、1.05当量)の冷(約0℃)溶液を2時間かけて滴加し、反応温度が0℃を超えないようにした。撹拌を1時間続けた。内部温度を0から15℃の間で維持しながら、50%水酸化ナトリウム水溶液(205g、2.57mol、2.85当量)を添加した。溶液を20±5℃で2時間、次いで40±5℃で16時間撹拌し、透明な溶液を形成した。濃(37%)塩酸水溶液(350mL、3.68mol、4.07当量)を45±5℃で添加し、生じた懸濁液を0.5時間撹拌した。有機溶媒の大部分(約475mLのエタノール)を減圧下45±5℃で除去した。水(475mL)を添加し、混合物を45±5℃で1時間撹拌した。沈殿物をフィルタにかけ、水(100mL)で洗浄した。粗生成物を水(650mL)に溶解し、50%水性NaOH(65g)の添加によってpHを7.5~8に調整した。混合物を室温で1時間撹拌した後、セライト(celite)(25g)を添加し、結合した不溶性物質を濾過によって除去した。濾過ケーキを水(150mL)ですすぎ、回収した濾液を加温し、37%HCl水溶液(82mL)の添加によってpH2~2.5に酸性化しながら40~45℃で維持した。得られた懸濁液を40~45℃で1時間撹拌し、フィルタにかけ、残渣を水(200mL)で洗浄した。生成物を水(650mL)中、35~40°Cで1時間もう一度スラリー化して、最後の微量の残留シュウ酸を溶解によって除去した。濾過、水(200mL)での洗浄、乾燥(45℃未満、真空下)の後、表題化合物をオフホワイト色固体として得た(108g、収率78%)。
【0064】
10(154.17)の元素分析。計算値:C:54.54%、H:6.54%、N:18.17%;実測値:C:54.73、H:6.53、N:18.31;含水量(カールフィッシャー(Karl Fisher)滴定):0.1%未満。