(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】放射線検査方法、放射線検査装置、放射線検査システム、及び放射線検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20241029BHJP
【FI】
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2022515316
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2021014554
(87)【国際公開番号】W WO2021210442
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020073550
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】大西 達也
(72)【発明者】
【氏名】須山 敏康
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-121579(JP,A)
【文献】特開2012-073056(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
A61B 6/00- 6/58
G06T 1/00- 7/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において前記物品が撮像された第2画像とを取得する第1ステップと、
前記第1画像或いは前記第2画像において前記物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付ける第2ステップと、
前記第1画像および前記第2画像を対数変換し、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び
対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、前記第1画素値と、前記第1画素値に対応する前記第2画素値との関係を近似することにより、前記第1画素値と前記第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する第3ステップと、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値に基づいて、それぞれが、前記第1画像の代表の画素値である第1代表値と、前記第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出する第4ステップと、
前記厚さ補正関数と、算出された前記複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する第5ステップと、
を備え
、
前記第4ステップにおいて、前記複数の代表データのそれぞれは、
一の前記第1画素値が前記第1代表値とされ、当該一の前記第1画素値に対応する一又は複数の前記第2画素値の平均値が前記第2代表値とされることにより、又は、
一の前記第2画素値が前記第2代表値とされ、当該一の前記第2画素値に対応する一又は複数の前記第1画素値の平均値が前記第1代表値とされることにより、算出される、
放射線検査方法。
【請求項2】
第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において前記物品が撮像された第2画像とを取得する第1ステップと、
前記第1画像或いは前記第2画像において前記物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付ける第2ステップと、
前記第1画像および前記第2画像を対数変換し、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、前記第1画素値と、前記第1画素値に対応する前記第2画素値との関係を近似することにより、前記第1画素値と前記第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する第3ステップと、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値に基づいて、それぞれが、前記第1画像の代表の画素値である第1代表値と、前記第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出する第4ステップと、
前記厚さ補正関数と、算出された前記複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する第5ステップと、
を備え、
前記第4ステップにおいて、前記複数の代表データのそれぞれは、
一の前記第1画素値が前記第1代表値とされ、当該一の前記第1画素値に対応する一又は複数の前記第2画素値の中央値が前記第2代表値とされることにより、又は、
一の前記第2画素値が前記第2代表値とされ、当該一の前記第2画素値に対応する一又は複数の前記第1画素値の中央値が前記第1代表値とされることにより、算出される、
放射線検査方法。
【請求項3】
前記第1画素値は、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における前記複数の第1画素のそれぞれの画素値であり、
前記第2画素値は、対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの画素値であり、
前記複数の代表データのそれぞれは、対数変換された前記第1画像の代表の画素値である前記第1代表値と、対数変換された前記第2画像の代表の画素値である前記第2代表値との組合せである、
請求項1
又は2に記載の放射線検査方法。
【請求項4】
前記第3ステップにおいて、前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値を表す複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、前記厚さ補正関数を算出する、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の放射線検査方法。
【請求項5】
前記第3ステップにおいて、前記複数のサンプル点を前記2次元座標上でN次(Nは1以上の自然数)の近似曲線によって近似することにより、前記近似曲線の係数を算出する、
請求項
4に記載の放射線検査方法。
【請求項6】
前記評価係数は、決定係数である、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の放射線検査方法。
【請求項7】
前記評価係数は、相関係数である、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の放射線検査方法。
【請求項8】
前記評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、前記関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力する第6ステップを更に備える、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の放射線検査方法。
【請求項9】
前記第6ステップにおいて、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値において、前記厚さ補正関数を用いて算出されて、前記第1画素値に対応する前記第2画素値と、前記第1画素値に対応する実際の前記第2画素値との距離であるエラー距離を算出し、
前記エラー距離に基づいて、前記第1画像或いは前記第2画像のうち前記厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である非対応領域を判別し、
前記エラー情報として、前記第1画像或いは前記第2画像に前記非対応領域を重畳して出力する、
請求項
8に記載の放射線検査方法。
【請求項10】
前記評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、前記関心領域とは異なる関心領域の選択入力を受け付ける第7ステップを更に備える、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の放射線検査方法。
【請求項11】
前記第3ステップにおいて、前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値を表す複数のサンプル点における外れ値の影響を抑制しつつ、前記複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、前記厚さ補正関数を算出する、
請求項1~1
0のいずれか一項に記載の放射線検査方法。
【請求項12】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において前記物品が撮像された第2画像とを取得し、
前記第1画像或いは前記第2画像において前記物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付け、
前記第1画像および前記第2画像を対数変換し、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び
対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、前記第1画素値と、前記第1画素値に対応する前記第2画素値との関係を近似することにより、前記第1画素値と前記第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出し、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値に基づいて、それぞれが、前記第1画像の代表の画素値である第1代表値と、前記第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出し、
前記厚さ補正関数と、算出された前記複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出
し、
前記複数の代表データのそれぞれは、
一の前記第1画素値が前記第1代表値とされ、当該一の前記第1画素値に対応する一又は複数の前記第2画素値の平均値が前記第2代表値とされることにより、又は、
一の前記第2画素値が前記第2代表値とされ、当該一の前記第2画素値に対応する一又は複数の前記第1画素値の平均値が前記第1代表値とされることにより、算出される、
放射線検査装置。
【請求項13】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において前記物品が撮像された第2画像とを取得し、
前記第1画像或いは前記第2画像において前記物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付け、
前記第1画像および前記第2画像を対数変換し、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、前記第1画素値と、前記第1画素値に対応する前記第2画素値との関係を近似することにより、前記第1画素値と前記第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出し、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値に基づいて、それぞれが、前記第1画像の代表の画素値である第1代表値と、前記第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出し、
前記厚さ補正関数と、算出された前記複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出し、
前記複数の代表データのそれぞれは、
一の前記第1画素値が前記第1代表値とされ、当該一の前記第1画素値に対応する一又は複数の前記第2画素値の中央値が前記第2代表値とされることにより、又は、
一の前記第2画素値が前記第2代表値とされ、当該一の前記第2画素値に対応する一又は複数の前記第1画素値の中央値が前記第1代表値とされることにより、算出される、
放射線検査装置。
【請求項14】
前記第1画素値は、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における前記複数の第1画素のそれぞれの画素値であり、
前記第2画素値は、対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの画素値であり、
前記複数の代表データのそれぞれは、対数変換された前記第1画像の代表の画素値である前記第1代表値と、対数変換された前記第2画像の代表の画素値である前記第2代表値との組合せである、
請求項
12又は13に記載の放射線検査装置。
【請求項15】
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値を表す複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、前記厚さ補正関数を算出する、
請求項
12~14のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項16】
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記複数のサンプル点を前記2次元座標上でN次(Nは1以上の自然数)の近似曲線によって近似することにより、前記近似曲線の係数を算出する、
請求項15に記載の放射線検査装置。
【請求項17】
前記評価係数は、決定係数である、
請求項
12~16のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項18】
前記評価係数は、相関係数である、
請求項
12~16のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項19】
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、前記関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力する、
請求項
12~18のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項20】
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値において、前記厚さ補正関数を用いて算出されて、前記第1画素値に対応する前記第2画素値と、前記第1画素値に対応する実際の前記第2画素値との距離であるエラー距離を算出し、
前記エラー距離に基づいて、前記第1画像或いは前記第2画像のうち前記厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である非対応領域を判別し、
前記エラー情報として、前記第1画像或いは前記第2画像に前記非対応領域を重畳して出力する、
請求項
19に記載の放射線検査装置。
【請求項21】
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、前記関心領域とは異なる関心領域の選択入力を受け付ける、
請求項
12~20のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項22】
前記少なくとも一つのプロセッサは、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値を表す複数のサンプル点における外れ値の影響を抑制しつつ、前記複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、前記厚さ補正関数を算出する、
請求項
12~21のいずれか一項に記載の放射線検査装置。
【請求項23】
請求項
12~22のいずれか一項に記載の放射線検査装置と、
前記第1エネルギー分布を有する放射線、及び前記第2エネルギー分布を有する放射線を前記物品に照射する放射線源と、
前記放射線源から照射され、前記物品を透過し、前記第1エネルギー分布を有する放射線、及び前記放射線源から照射され、前記物品を透過し、前記第2エネルギー分布を有する放射線を検出する検出器と、
を備える、放射線検査システム。
【請求項24】
コンピュータを、
第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において前記物品が撮像された第2画像とを取得する第1ステップ、
前記第1画像或いは前記第2画像において前記物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付ける第2ステップ、
前記第1画像および前記第2画像を対数変換し、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び
対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、前記第1画素値と、前記第1画素値に対応する前記第2画素値との関係を近似することにより、前記第1画素値と前記第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する第3ステップ、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値に基づいて、それぞれが、前記第1画像の代表の画素値である第1代表値と、前記第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出する第4ステップ、及び
前記厚さ補正関数と、算出された前記複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する第5ステップ、として機能させ
、
前記第4ステップにおいて、前記複数の代表データのそれぞれは、
一の前記第1画素値が前記第1代表値とされ、当該一の前記第1画素値に対応する一又は複数の前記第2画素値の平均値が前記第2代表値とされることにより、又は、
一の前記第2画素値が前記第2代表値とされ、当該一の前記第2画素値に対応する一又は複数の前記第1画素値の平均値が前記第1代表値とされることにより、算出される、
放射線検査プログラム。
【請求項25】
コンピュータを、
第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、前記第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において前記物品が撮像された第2画像とを取得する第1ステップ、
前記第1画像或いは前記第2画像において前記物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付ける第2ステップ、
前記第1画像および前記第2画像を対数変換し、対数変換された前記第1画像のうち前記関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び対数変換された前記第2画像のうち前記複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、前記第1画素値と、前記第1画素値に対応する前記第2画素値との関係を近似することにより、前記第1画素値と前記第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する第3ステップ、
前記複数の第1画素のそれぞれの前記第1画素値、及び前記複数の第1画素に対応する前記複数の第2画素のそれぞれの前記第2画素値に基づいて、それぞれが、前記第1画像の代表の画素値である第1代表値と、前記第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出する第4ステップ、及び
前記厚さ補正関数と、算出された前記複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する第5ステップ、として機能させ、
前記第4ステップにおいて、前記複数の代表データのそれぞれは、
一の前記第1画素値が前記第1代表値とされ、当該一の前記第1画素値に対応する一又は複数の前記第2画素値の中央値が前記第2代表値とされることにより、又は、
一の前記第2画素値が前記第2代表値とされ、当該一の前記第2画素値に対応する一又は複数の前記第1画素値の中央値が前記第1代表値とされることにより、算出される、
放射線検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検査方法、放射線検査装置、放射線検査システム、及び放射線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーサブトラクション法を用いてX線画像から試料を検査することが行われている。例えば、下記特許文献1には、エネルギーサブトラクション法を用いて試料が撮像された2枚の画像のいずれかにおいて、除去したい成分に対応する領域を選択し、試料の厚さの影響を消去する補正を施すことにより、撮像された画像から除去したい成分を効果的に除去するX線撮像方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の方法は、画像において除去する成分に対応する領域である関心領域が適切に選択できていることを前提として成立するものである。しかしながら、画像によっては、物品を構成する複数の部品同士の境目が認識しづらい場合がある。その場合、領域の選択状態によって、画像において除去する物質に対応する領域以外の領域も選択入力され、当該物質の厚さの影響を適切に消去することができず、画像から当該物質の像が適切に除去されない場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、関心領域が適切に選択されているか否かを評価することができる放射線検査方法、放射線検査装置、放射線検査プログラム、及び放射線検査システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面の放射線検査方法は、第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第2画像とを取得する第1ステップと、第1画像或いは第2画像において物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付ける第2ステップと、第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係を近似することにより、第1画素値及び第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する第3ステップと、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値に基づいて、それぞれが、第1画像の代表の画素値である第1代表値と、第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出する第4ステップと、厚さ補正関数と、算出された複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する第5ステップと、を備える。
【0007】
あるいは、本開示の他の側面の放射線検査装置は、少なくとも一つのプロセッサを備え、少なくとも一つのプロセッサが、第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第2画像とを取得し、第1画像或いは第2画像において物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付け、第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係を近似することにより、第1画素値及び第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出し、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値に基づいて、それぞれが、第1画像の代表の画素値である第1代表値と、第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出し、厚さ補正関数と、算出された複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する。
【0008】
あるいは、本開示の他の側面の放射線検査システムは、上記放射線検査装置と、第1エネルギー分布を有する放射線、及び第2エネルギー分布を有する放射線を物品に照射する放射線源と、放射線源から照射され、物品を透過し、第1エネルギー分布を有する放射線、及び放射線源から照射され、物品を透過し、第2エネルギー分布を有する放射線を検出する検出器と、を備える。
【0009】
あるいは、本開示の他の側面の放射線検査プログラムは、コンピュータを、第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第1画像と、第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品が撮像された第2画像とを取得する第1ステップ、第1画像或いは第2画像において物品に対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付ける第2ステップ、第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を特定し、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係を近似することにより、第1画素値及び第2画素値との関係を表す関数であって、前記物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する第3ステップ、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値に基づいて、それぞれが、第1画像の代表の画素値である第1代表値と、第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである複数の代表データを算出する第4ステップ、及び、厚さ補正関数と、算出された複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する第5ステップ、として機能させる。
【0010】
上記方法、装置、システム、及びプログラムによれば、第1画像或いは第2画像において関心領域の選択入力が受け付けられ、第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値が特定される。そして、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係を近似することにより、厚さ補正関数が算出され、それぞれが、第1画素値の代表値である第1代表値と、第2画素値の代表値である第2代表値との組合せである複数の代表データが算出される。そして、厚さ補正関数と複数の代表データとの相関に基づいて、評価係数が算出される。これにより、評価係数に基づいて、関心領域が単一の物質に対応しているか否かを評価することができる。よって、上記方法、装置、システム、及びプログラムによれば、関心領域が適切に選択されているか否かを評価することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、関心領域が適切に選択されているか否かを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る放射線検査システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る放射線検査システムを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の放射線検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1の放射線検査装置を含むコンピュータシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図3の選択受付部によって選択入力された関心領域の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3の選択受付部によって選択入力された関心領域の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図5の関心領域に対応するサンプル点及び近似曲線が表されたグラフの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図6の関心領域に対応するサンプル点及び近似曲線が表されたグラフの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図5の関心領域に対応する代表データ及び近似曲線が表されたグラフの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図6の関心領域に対応する代表データ及び近似曲線が表されたグラフの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の放射線検査方法の処理の動作を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2実施形態において出力される画像情報の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の放射線検査方法の処理の動作を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、第3実施形態の放射線検査方法の処理の動作を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第1実施形態の放射線検査装置によって取得された第1画像の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、放射線検査装置によって1次近似することにより算出された近似曲線のグラフである。
【
図19】
図19は、放射線検査装置によって生成されたサブトラクション画像及びサブトラクション画像を閾値処理した異物検出結果画像を示す図である。
【
図20】
図20は、放射線検査装置によって2次近似することにより算出された近似曲線のグラフである。
【
図21】
図21は、放射線検査装置によって生成されたサブトラクション画像及びサブトラクション画像を閾値処理した異物検出結果画像を示す図である。
【
図22】
図22は、第1実施形態の放射線検査装置によって取得された第1画像の一例を示す図である。
【
図23】
図23は、放射線検査装置によって2次近似することにより算出された近似曲線のグラフである。
【
図24】
図24は、放射線検査装置によって生成されたサブトラクション画像及びサブトラクション画像を閾値処理した異物検出結果画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する部分を省略する。
[第1実施形態]
[放射線検査システムの構成]
【0014】
図1に示されるように、放射線検査システム1は、照射器(放射線源)2と、画像取得装置(検出器)3と、放射線検査装置5と、を備えている。
図2に示されるように、放射線検査システム1は、複数のエネルギー分布を有する放射線を照射方向Zに沿って物品Sに照射し、各エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品Sが撮像された複数の画像を取得し、当該複数の画像に基づいて物品Sに含まれる異物検査等を実施する装置である。放射線検査システム1は、物品Sを対象にした異物検査、重量検査、検品検査などを行い、用途としては、食品検査、手荷物検査、基板検査、電池検査、材料検査等が挙げられる。本実施形態では、放射線検査システム1は、X線源からX線を物品Sに照射する。物品Sは、ベルトコンベアBのベルト部B1に載置された状態で、所定の搬送速度で搬送方向Yに搬送される。物品Sとしては、例えば、食肉、魚介類、農作物、菓子等の食品、タイヤ等のゴム製品、樹脂製品、金属製品、鉱物等の資源材料、廃棄物、及び電子部品や電子基板等、様々な物品を挙げることができる。
【0015】
照射器2は、ベルト部B1から所定の間隔をもってベルト部B1よりも上方に配置されている。照射器2は、物品Sに向けて、X線を照射方向Zに照射する装置であって、X線源として機能する。照射器2は、第1エネルギー分布を有する放射線、及び第1エネルギー分布とは異なる第2エネルギー分布を有する放射線を物品Sに照射する。第1エネルギー分布は、例えば、第2エネルギー分布よりも低いエネルギー帯域である。照射器2は、点光源であり、検査方向Xに所定の角度範囲でX線を拡散させるように照射する。検査方向Xは、照射方向Z及び搬送方向Yに直交する方向である。照射器2は、検査方向X(物品Sの幅方向)において物品S全体にX線が照射されるように構成されている。また、照射器2では、物品Sにおいて搬送方向Yにおける物品S全体の長さよりも小さい範囲である分割範囲にX線が照射される。照射器2は、物品SがベルトコンベアBで搬送方向Yに搬送されることにより、搬送方向Yにおいて物品S全体にX線が照射されるように構成されている。
【0016】
画像取得装置3は、照射方向Zにおいてベルト部B1のうち物品Sが載置される部分及び照射器2よりも下方に配置されている。画像取得装置3は、放射線源から照射され、物品Sを透過し、第1エネルギー分布を有する放射線、及び放射線源から照射され、物品Sを透過し、第2エネルギー分布を有する放射線を検出する。そして、画像取得装置3は、所定のエネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品Sが撮像された画像を取得する。画像取得装置3は、第1画像取得部31と、第2画像取得部32と、制御部33と、を有している。
【0017】
第1画像取得部31は、第1エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品Sが撮像された第1画像を取得する。第1画像取得部31は、第1検出部311と、第1画像補正部312と、を含んでいる。
【0018】
第1検出部311は、X線の照射方向Zにおいて上流側に位置している。第1検出部311は、照射器2から照射され且つ物品Sを透過したX線のうち第1エネルギー分布の範囲を検出して、画像データを生成する。ここで、第1検出部311による画像データの生成方法について説明する。第1検出部311は、第1エネルギー分布に対応するシンチレータ層(図示省略)と、第1エネルギー分布に対応するラインセンサ(図示省略)と、を含んでいる。第1エネルギー分布に対応するシンチレータ層は、検査方向Xに沿って延在し、第1エネルギー分布を有するX線の像を光像に変換する。第1エネルギー分布に対応するラインセンサは、検査方向Xに沿って配列された複数の画素を有し、当該シンチレータ層で変換された光像による画像データを生成する。当該ラインセンサで取得される画像データは、当該ラインセンサの画素毎に取得される輝度データの集合体から構成される。
【0019】
第1画像補正部312は、第1検出部311で画素毎に生成された輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された画像データを取得する。第1画像補正部312は、アンプ31aと、A/D変換部31bと、補正回路31cと、出力インターフェイス31dと、を含んでいる。アンプ31aは、第1エネルギー分布を有するX線の像の輝度データを増幅する。A/D変換部31bは、アンプ31aで増幅された第1エネルギー分布を有するX線の像の輝度データをA/D変換する。補正回路31cは、A/D変換部31bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う。出力インターフェイス31dは、補正回路31cで補正された画像データを第1画像として外部に出力する。
【0020】
第2画像取得部32は、第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態において物品Sが撮像された第2画像を取得する。第2画像取得部32は、第2検出部321と、第2画像補正部322と、を含んでいる。
【0021】
第2検出部321は、X線の照射方向Zにおいて第1検出部311よりも下流側に配置されている。第2検出部321は、照射器2から照射され且つ物品S及び第1検出部311を透過したX線のうち第2エネルギー分布の範囲を検出して、画像データを生成する。ここで、第2検出部321による画像データの生成方法について説明する。第2検出部321は、第2エネルギー分布に対応するシンチレータ層(図示省略)と、第2エネルギー分布に対応するラインセンサ(図示省略)と、を含んでいる。第2エネルギー分布に対応するシンチレータ層は、検査方向Xに沿って延在し、第2エネルギー分布を有するX線の像を光像に変換する。第2エネルギー分布に対応するラインセンサは、検査方向Xに沿って配列された複数の画素を有し、当該シンチレータ層で変換された光像による画像データを取得する。当該ラインセンサで取得される画像データは、当該ラインセンサの画素毎に取得される輝度データの集合体から構成される。なお、第1検出部311及び第2検出部321では、1つのセンサにおいて第1検出部311のラインセンサ及び第2検出部321のラインセンサが構成されてもよい。ラインセンサは、搬送方向に複数の画素を有するマルチラインセンサ、TDI(Time Delay Integration)スキャンX線カメラ、及び2次元X線カメラであってもよい。また、シンチレータを用いない直接変換方式のセンサ、及びシンチレータをレンズカップリングによる光学レンズを用いた観察方式のカメラを用いてもよい。複数の放射線源と対応するセンサが複数ある構造でもよい。また、第1検出部311で検出される第1エネルギー分布の範囲と、第2検出部321で検出される第2エネルギー分布の範囲とは、一部において互いに重なっていてもよい。なお、第2検出部321は、X線の照射方向Zにおいて第1検出部311よりも下流側に配置されていると説明したが、第1検出部311と第2検出部321の構成は本実施形態に限られない。例えば、第1検出部311と第2検出部321とは並列(搬送方向Yにおいて上流と下流とに位置するよう)に配置されていてもよい。
【0022】
第2画像補正部322は、第2検出部321で画素毎に生成された輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された画像データを取得する。第2画像補正部322は、アンプ32aと、A/D変換部32bと、補正回路32cと、出力インターフェイス32dと、を含んでいる。アンプ32aは、第2エネルギー分布を有するX線の像の輝度データを増幅する。A/D変換部32bは、アンプ32aで増幅された第2エネルギー分布を有するX線の像の輝度データをA/D変換する。補正回路32cは、A/D変換部32bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う。出力インターフェイス32dは、補正回路32cで補正された輝度データを第2画像として外部に出力する。
【0023】
制御部33は、第1検出部311におけるX線の検出タイミング、及び第2検出部321におけるX線の検出タイミングを制御する。具体的には、制御部33は、物品Sにおける一の分割範囲を透過したX線が第1画像取得部31によっても第2画像取得部32によっても検出されるように、第1検出部311の検出タイミング及び第2検出部321の検出タイミングを制御する。制御部33による検出タイミングの制御により、後述するサブトラクション処理において第1画像と第2画像とに生じる画像ずれが低減される。
【0024】
また、制御部33は、周知のキャリブレーション部材等を用いることによって、物品Sの検査方向Xにおける第1検出部311の各画素と第2検出部321の各画素とが対応するように制御する。第1検出部311の各画素と第2検出部321の各画素との互いに対応する位置は、照射器2が点光源であること、及びX線が放射状に広がることに起因して、検査方向Xにおける両端に近づくほどずれる。そこで、制御部33のキャリブレーション制御により、第1検出部311の各画素と第2検出部321の各画素との位置ずれが補正され、第1画像と第2画像とに生じる画像ずれが低減される。以上の処理によって、第1画像及び第2画像は、第1画像の各画素と第2画像の各画素とが対応するように取得される。
【0025】
放射線検査装置5は、除去したい物質に対応する領域が除去された差分画像を生成するデータ処理装置である。放射線検査装置5は、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス等の演算装置であってよい。放射線検査装置5は、画像取得装置3に相互にデータ通信可能に接続されている。
【0026】
放射線検査装置5は、第1画像或いは第2画像のいずれかにおいて、除去したい物質に対応する領域である関心領域の選択入力を受け付け、物品Sの厚さの影響を消去する補正処理を実行する。そして、放射線検査装置5は、対数変換された第1画像の画素値と、対数変換された第2画像の画素値との差分をとるサブトラクション処理を実行することによって、除去したい物質に対応する領域が除去された差分画像を生成する。そして、放射線検査装置5は、差分画像を後述する出力装置105に含まれるディスプレイ(図示省略)に出力する。
【0027】
また、放射線検査装置5は、差分画像を生成する処理の前に、関心領域が適切に選択されているか否かを評価する処理を実施する。取得された第1画像或いは第2画像によっては、物品Sを構成する複数の部品同士の境目が認識しづらい場合がある。その場合、領域の選択状態によって、第1画像或いは第2画像において除去する物質に対応する領域以外の領域も選択入力され、当該物質の厚さの影響を適切に消去することができず、差分画像から当該物質の像が適切に除去されない場合がある。そこで、放射線検査装置5では、差分画像を生成する処理の前に、関心領域が適切に選択されているか否かを評価する処理が実施されることで、差分画像において除去したい物質の像の適切な除去を図ることができる。なお、以下の説明において、「画像において除去する物質の厚さの影響を消去する」ことを単に、「物質の厚さを消去する」と説明する場合がある。
[放射線検査装置の構成]
【0028】
次に、放射線検査装置5の詳細構成について説明する。
図3に示されるように、放射線検査装置5は、機能的な構成要素として、取得部51と、選択受付部52と、厚さ補正関数算出部53と、代表データ算出部54と、評価係数算出部55と、報知部56と、差分画像生成部57と、記憶部58と、を含んで構成されている。
図4に示されるように、放射線検査装置5を含むコンピュータシステム20は、物理的には、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)101、記録媒体であるRAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、通信モジュール104、出力装置105、及び入力装置106等を含んでいる。上述した放射線検査装置5の各機能部は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に本実施形態にかかる放射線検査プログラムを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで、通信モジュール104、出力装置105、及び入力装置106等を動作させるとともに、RAM102におけるデータの読み出し及び書き込み、並びにROM103からのデータの読み出しを行うことで実現される。すなわち、本実施形態の放射線検査プログラムは、コンピュータシステム20を、取得部51と、選択受付部52と、厚さ補正関数算出部53と、代表データ算出部54と、評価係数算出部55と、報知部56と、差分画像生成部57と、記憶部58と、として機能させる。なお、CPUは、単体のハードウェアでもよく、ソフトプロセッサのようにFPGAのようなプログラマブルロジックの中に実装されたものでもよい。RAMやROMについても、単体のハードウェアでもよく、FPGAのようなプログラマブルロジックの中に内蔵されたものでもよい。
【0029】
以下、放射線検査装置5の各機能部の詳細機能について、
図5及び
図6に示される画像(第1画像,第2画像)P1の具体例を用いて説明する。
【0030】
取得部51は、画像取得装置3から、物品S全体を透過したX線の像である第1画像及び第2画像を取得する。
図5及び
図6に示される画像P1は、第1画像取得部31によって取得された第1画像或いは第2画像の一例である。画像P1には、第1エネルギー分布或いは第2エネルギー分布を有する放射線が照射された状態の物品Sが撮像されている。本具体例における物品Sは、汎用コネクタであって、筐体S1と、複数の端子S2と、を有している。筐体S1は、樹脂からなり、複数のキャビティを含んでいる。各端子S2は、筐体S1の各キャビティに配置されており、金属からなる。各端子S2は、キャビティの一部に配置されている(もしくは、占めている)。
【0031】
選択受付部52は、関心領域の選択入力を受け付ける。関心領域は、第1画像或いは第2画像において物品Sに対応する領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応する領域である。関心領域の選択入力は、例えば、出力装置105に含まれるディスプレイに第1画像或いは第2画像が表示され、放射線検査装置5のユーザによって、入力装置106に含まれるマウス等を介してディスプレイ上で関心領域が選択されることにより行われる。
【0032】
図5に示される例では、画像P1のうち筐体S1の樹脂に対応する領域のみが関心領域Rとして選択されている。つまり、
図5に示される例では、画像P1に表された像のうち厚さの影響を消去する物質(端子S2を除くキャビティ部分を含む樹脂)のみが関心領域Rとして正しく選択されている。この時、関心領域にさまざまな厚さの情報が含まれていることが好適である。一方、
図6に示される例では、画像P1のうち筐体S1の樹脂に対応する領域、及び端子S2が関心領域Rとして選択されている。つまり、
図6に示される例では、画像P1に表された像のうち厚さの影響を消去する物質及び他の物質(金属)が関心領域Rとして選択されており、関心領域Rが正しく選択されていない。
【0033】
厚さ補正関数算出部53、代表データ算出部54、評価係数算出部55、及び報知部56は、放射線検査装置5が実行する処理のうち、関心領域が適切に選択されているか否かを評価する処理を実現する構成要素である。以下、各構成要素の説明とともに、関心領域が適切に選択されているか否かを評価する処理の概要について説明する。
【0034】
厚さ補正関数算出部53は、物質の厚さの影響を消去する厚さ補正関数を算出する。厚さ補正関数は、第1画素値と第2画素値との関係を表した関数である。ここで、厚さ補正関数の算出方法について説明する。まず、厚さ補正関数算出部53は、取得部51によって取得された第1画像及び第2画像を対数変換する。ここで、対数変換は必須ではないが、近似関数を作成するうえでは、対数変換するのが好適である。
【0035】
そして、厚さ補正関数算出部53は、第1画素値及び第2画素値を特定する。第1画素値は、対数変換された第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの画素値である。第2画素値は、対数変換された第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの画素値である。ここでいう複数の第1画素に対応する複数の第2画素とは、第2画像のうち関心領域に対応する領域における各画素を意味する。つまり、厚さ補正関数算出部53は、第1画像及び第2画像を対数変換し、対数変換された第1画像及び第2画像のそれぞれにおいて、関心領域に対応する領域における各画素値を特定する。なお、第1画像及び第2画像の対数変換の処理のタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、取得部51による取得の直後に実施されてもよく、また、例えば、選択受付部52による関心領域の選択受付の後に実施されてもよい。
【0036】
そして、厚さ補正関数算出部53は、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係を近似することにより、厚さ補正関数を算出する。ここでいう第1画素値と第1画素値に対応する第2画素値との関係とは、1つの第1画素の画素値と、当該1つの第1画素に対応する第2画素の画素値との関係を意味する。具体的には、例えば、第1画像の関心領域のうち最上左端部の画素の画素値を第1画素値とした場合、第2画像の関心領域のうち最上左端部の画素の画素値が第1画素値に対応する第2画素値である。
【0037】
本実施形態では、厚さ補正関数算出部53は、例えば最小二乗法を用いて、複数のサンプル点を2次元座標上でN次(Nは1以上の自然数)の近似曲線によって近似することにより近似曲線の係数を算出する。これにより、厚さ補正関数算出部53は、当該近似曲線を表す関数である厚さ補正関数を算出する。複数のサンプル点は、第1画素値及び第2画素値を表す点であって、例えば、第1画素値をX軸とし且つ第2画素値をY軸とした2次元座標上にプロットされた点である。
【0038】
図7に示されるグラフG1は、2次元座標上に、複数のサンプル点D1及び近似曲線C1が表されたグラフである。グラフG1の横軸(X軸)は、第1画素値を示しており、グラフの縦軸(Y軸)は、第2画素値を示している。各サンプル点D1は、
図5に示される関心領域Rに対応して算出されたサンプル点であって、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値とを表している。各サンプル点D1の数は、関心領域Rに対応する第1画像の画素の数(及び第2画像の画素の数)と等しい。近似曲線C1は、複数のサンプル点D1を2次近似することにより算出された2次の厚さ補正関数(y=ax
2+bx+c)の曲線である。
【0039】
図8に示されるグラフG2は、2次元座標上に、複数のサンプル点D2及び近似曲線C2が表されたグラフである。
図7と同様、グラフの横軸(X軸)は、第1画素値を示しており、グラフの縦軸(Y軸)は、第2画素値を示している。各サンプル点D2は、
図6に示される関心領域Rに対応して算出されたサンプル点である。
図8に示されるように、複数のサンプル点D2は、正しく選択された関心領域Rに対応して算出されたサンプル点D1(
図7参照)と比較して、広範囲に分布している。これは、複数のサンプル点D2が、画像P1において樹脂に相当する画素のみならず樹脂以外の部分(
図6における端子S2に相当する部分)の画素から構成される関心領域Rに基づいて算出されているためである。近似曲線C2は、複数のサンプル点D2を2次近似することにより算出された2次の厚さ補正関数(y=ax
2+bx+c)の曲線である。近似曲線C2の曲率は、正しく選択された関心領域Rに対応して算出された厚さ補正関数の近似曲線C1(
図7参照)と比較して大きい。
【0040】
代表データ算出部54は、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値に基づいて、複数の代表データを算出する。代表データは、第1代表値と第2代表値との組み合わせである。第1代表値は、対数変換された第1画像の代表の画素値であって、第2代表値は、対数変換された第2画像の代表の画素値である。本実施形態では、代表データは、一の第1画素値が第1代表値とされ、当該一の第1画素値に対応する一又は複数の第2画素値の平均値が第2代表値とされることにより算出される。具体的には、一の第1画素値が代表値とされ、当該一の第1画素に対応する第2画素値が1つである場合には、当該第2画素値が第2代表値とされる。当該一の第1画素に対応する第2画素値が複数ある場合は、当該第2画素値の平均値が第2代表値とされる。代表データ算出部54は、例えば、0.01ずつ等、所定の間隔で第1画素値(第1代表値)を選択して第2代表値を算出する処理を繰り返すことによって、複数の代表データを算出する。
【0041】
図9に示されるグラフG3は、
図7に示されるグラフG1に対応したグラフであって、2次元座標上に近似曲線C1、及び複数の代表データF1が表されたグラフである。グラフG3の横軸(X軸)は、第1画素値を示しており、グラフG3の縦軸(Y軸)は、第2画素値を示している。各代表データF1は、正しく選択された関心領域R(
図5参照)に対応する各第1画素値である第1代表値と、各第1画素値に対応する第2画素値の平均値である第2代表値との組合せである。
【0042】
図10に示されるグラフG4は、
図8に示されるグラフG2に対応したグラフであって、2次元座標上に近似曲線C2、及び複数の代表データF2が表されたグラフである。グラフG4の横軸(X軸)は、第1画素値を示しており、グラフG4の縦軸(Y軸)は、第2画素値を示している。代表データF2は、正しく選択されていない関心領域R(
図6参照)の各第1画素値である第1代表値と、各第1画素値に対応する第2画素値の平均値である第2代表値との組合せである。
【0043】
評価係数算出部55は、厚さ補正関数と算出された複数の代表データとの相関に基づく評価係数を算出する。本実施形態では、評価係数は、厚さ補正関数及び代表データF1に基づいて算出される決定係数である。決定係数は、すべての代表データF1の残差変動を全変動によって除算した値を1から減算することで算出される。よって、決定係数が1に近いほど、一致度が高いことになる。
図5に示される関心領域が正しく選択された例では、厚さ補正関数及び代表データF1(
図9参照)に基づいて算出される決定係数は、0.988である。一方、
図6に示される関心領域が正しく選択されていない例では、厚さ補正係数及び代表データF2(
図10参照)に基づいて算出される決定係数は、0.889である。つまり、代表データF1と近似曲線C1との一致度は、代表データF2と近似曲線C2との一致度よりも高く、関心領域が正しく選択された場合には、関心領域が正しく選択されていない場合と比較して、高い評価係数が算出される。
【0044】
報知部56は、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力する。評価係数閾値は、関心領域が正しく選択された場合に出力される決定係数の最下限値であって、あらかじめ定められた値である。評価係数閾値は、例えば、0.9に設定されている。一例として、報知部56は、出力装置105に含まれるディスプレイに、選択領域が正しく選択されていない旨を示す文字及び図形の少なくともいずれか一方を含むエラー情報を出力する。
図5に示される関心領域が正しく選択された例では、算出された決定係数は0.988であるため、報知部56は、評価係数が評価係数閾値以下でないと判定し、ディスプレイにエラー情報を出力しない。一方、
図6に示される関心領域が正しく選択されていない例では、算出された決定係数は0.889であるため、報知部56は、評価係数が評価係数閾値以下であると判定し、ディスプレイに、関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力する。
【0045】
なお、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合には、選択受付部52は、関心領域とは異なる関心領域の選択入力を受け付ける。これにより、例えば、放射線検査装置5のユーザによって、入力装置106に含まれるマウス等を介してディスプレイ上で関心領域が再選択されることが可能となる。
【0046】
差分画像生成部57は、放射線検査装置5が実行する処理のうち、物品Sの厚さの影響を消去するサブトラクション処理を実現する構成要素である。以下、差分画像生成部57の機能の説明とともに、物品Sの厚さの影響を消去するサブトラクション処理の概要について説明する。
【0047】
差分画像生成部57は、報知部56が、評価係数が評価係数閾値以下でないと判定した場合、対数変換された第1画像及び第2画像に基づいて、差分画像を生成する。差分画像は、除去したい物質に対応する領域が除去された画像である。差分画像生成部57は、サブトラクション処理を実行することによって、差分画像を生成する。具体的には、差分画像生成部57は、サブトラクション処理として、対数変換された第2画像の各画素値から、対数変換された第1画像の各画素値に厚さ補正関数が適用されることによって算出された値を減算する。もしくは、差分画像生成部57は、対数変換された第1画像の各画素値から、対数変換された第2画像の各画素値に厚さ補正関数が適用されることによって算出された値を減算する。もしくは、差分画像生成部57は、対数変換された第1画像の各画素値に厚さ補正関数が適用されることによって算出された値から、対数変換された第2画像の各画素値を減算する。もしくは、差分画像生成部57は、対数変換された第2画像の各画素値に厚さ補正関数が適用されることによって算出された値から、対数変換された第1画像の各画素値を減算する。これにより、第1画像或いは第2画像において関心領域に対応する物質が除去された画像である差分画像が生成される。そして、差分画像生成部57は、差分画像を出力装置105に含まれるディスプレイ(図示省略)に出力する。
【0048】
図11に示される差分画像P2は、関心領域Rが正しく選択された例(
図5、
図7、及び
図9参照)において差分画像生成部57によって生成された差分画像である。差分画像P2では、筐体S1の樹脂の部分が適切に除去されている。一方、
図12に示される差分画像P3は、関心領域Rが正しく選択されていない例(
図6、
図8、及び
図10参照)において、仮に、評価係数が評価係数閾値以下であっても、差分画像生成部57が差分画像生成処理を実行した場合に生成される差分画像である。差分画像P3では、筐体S1の樹脂の部分が適切に除去されていない。
【0049】
記憶部58は、取得部51によって取得された第1画像及び第2画像、選択受付部52に入力された関心領域を示すデータ、厚さ補正関数算出部53によって算出された厚さ補正関数、代表データ算出部54によって算出された代表データ、評価係数算出部55によって算出された評価係数、差分画像生成部57によって生成された差分画像等を記憶する。
[放射線検査装置の処理]
【0050】
次に、
図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る放射線検査装置5の動作方法(放射線検査装置5で実行される処理)である放射線検査方法を、処理毎に説明する。
図13は、本実施形態に係る放射線検査方法を示すフローチャートである。放射線検査装置5で実行される処理は、例えば、画像取得装置3によって物品Sが検出される毎に実施される。
【0051】
まず、S11において、取得部51によって、画像取得装置3から、第1画像と、第2画像とが取得される(第1ステップ)。
【0052】
次に、S12において、選択受付部52によって、関心領域の選択入力が受け付けられる(第2ステップ)。
【0053】
次に、S13において、厚さ補正関数算出部53によって、厚さ補正関数が算出される(第3ステップ)。具体的には、まず、対数変換された第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び対数変換された第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値が特定される。そして、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を表す複数のサンプル点が、最小二乗法等によって、2次元座標上で2次の近似曲線によって近似されることにより、近似曲線の係数が算出される。これにより、当該近似曲線を表す関数である厚さ補正関数が算出される。
【0054】
次に、S14において、代表データ算出部54によって、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値に基づいて、複数の代表データが算出される(第4ステップ)。代表データは、第1代表値と第2代表値との組合せである。代表データは、代表データ算出部54によって、一の第1画素値が第1代表値とされ、当該一の第1画素値に対応する一又は複数の第2画素値の平均値が第2代表値とされることにより算出される。
【0055】
次に、S15において、評価係数算出部55によって、厚さ補正関数と、算出された複数の代表データとの相関に基づく評価係数が算出される(第5ステップ)。本実施形態では、評価係数は、厚さ補正関数及び算出された複数の代表データに基づいて算出された決定係数である。
【0056】
次に、S16において、報知部56によって、評価係数が評価係数閾値以下であるか否かが判定される。評価係数が評価係数閾値以下であると判定された場合(S16:YES)、S17において、報知部56によって、関心領域の選択入力に関するエラー情報が出力装置105のディスプレイに出力され(第6ステップ)、処理がS12に戻される。そして、S12において、選択受付部52によって、前回の処理のS12において選択された関心領域とは異なる関心領域の選択入力が受け付けられる(第7ステップ)。
【0057】
一方、評価係数が評価係数閾値以下でないと判定された場合(S16:NO)、S18において、差分画像生成部57によって、第1画像或いは第2画像において関心領域に対応する物質が除去された差分画像が生成され、出力装置105のディスプレイに差分画像が表示される。そして、物品Sを対象にした放射線検査処理が終了する。
[作用及び効果]
【0058】
以上説明した放射線検査装置5によれば、第1画像或いは第2画像において関心領域の選択入力が受け付けられ、対数変換された第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び対数変換された第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値が特定される。そして、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係を近似することにより、厚さ補正関数が算出され、それぞれが、第1画素値の代表値である第1代表値と、第2画素値の代表値である第2代表値との組合せである複数の代表データが算出される。そして、厚さ補正関数と複数の代表データとの相関に基づいて、評価係数が算出される。これにより、評価係数に基づいて、関心領域が単一の物質に対応しているか否かを評価することができる。よって、本実施形態によれば、関心領域が適切に選択されているか否かを評価することができる。
【0059】
特に、放射線検査装置5では、厚さ補正関数算出部53によって、第1画像及び第2画像が対数変換され、代表データ算出部54によって、対数変換された第1画像の代表の画素値である第1代表値と、対数変換された第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである代表データが算出される。これにより、第1画素値と第2画素値との関係を表す厚さ補正関数をより適切に算出することができる。
【0060】
第1実施形態では、厚さ補正関数算出部53が、第3ステップにおいて、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を表す複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、厚さ補正関数を算出する。これにより、厚さ補正関数を確実に算出することができる。
【0061】
第1実施形態では、厚さ補正関数算出部53が、第3ステップにおいて、複数のサンプル点を2次元座標上でN次の近似曲線によって近似することにより、近似曲線の係数を算出する。これにより、第1画素値及び第1画素値に対応する第2画素値との対応関係を精度良く表した厚さ補正関数を算出することができるため、信頼性の高い評価係数を算出することが可能となる。
【0062】
第1実施形態では、代表データ算出部54が、第4ステップにおいて、代表データを、一の第1画素値を第1代表値とし、当該一の第1画素値に対応する一又は複数の第2画素値の平均値を第2代表値とすることにより算出する。第1画素値及び第2画素値は、厚さの影響を消去したい物質の画素に対応する画素値である場合だけでなく、第1画像及び第2画像に含まれるノイズを有する画素に対応する画素値である場合もある。第1実施形態では、一又は複数の第1画素値又は第2画素値の平均値を求めることにより、ノイズが評価係数の算出に与える影響を抑制することができるため、精度良く評価係数を算出することができる。
【0063】
第1実施形態では、評価係数は、決定係数である。これにより、信頼性の高い評価係数を算出することができる。
【0064】
第1実施形態では、報知部56が、第6ステップにおいて、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力する。これにより、適切な関心領域の再選択をユーザに促すことができる。
【0065】
第1実施形態では、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、選択受付部52が、第7ステップにおいて、前回の選択受付の処理において選択された関心領域とは異なる関心領域の選択入力を受け付ける。これにより、単一の物質に対応する関心領域をユーザが再選択することができるため、関心領域に対応する物質の像が適切に除去された画像を取得することが可能となる。
[第2実施形態]
[放射線検査装置の構成]
【0066】
次に、第2実施形態の放射線検査装置5について説明する。第2実施形態では、放射線検査装置5が有する報知部56は、出力装置105に含まれるディスプレイにエラー情報を出力する処理として、以下の処理を行う。すなわち、報知部56は、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、エラー情報として、第1画像或いは第2画像に非対応領域を重畳して出力する。非対応領域とは、第1画像或いは第2画像のうち厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である。報知部56は、例えば、関心領域のうちユーザの操作ミス等によって選択された非対応領域を、第1画像或いは第2画像に表示する。
【0067】
以下、報知部56の機能的構成について、第1画素値をX軸とし、第2画素値をY軸とした2次元座標上で2次の近似曲線によって近似する例を用いて説明する。まず、報知部56は、評価係数が評価係数閾値以下である場合、エラー情報を出力する。そして、報知部56は、近似曲線から推定される画素値と、実際の画素値(各サンプル点における画素値)との距離であるエラー距離を算出する。
【0068】
ここで、エラー距離の算出方法について説明する。まず、報知部56は、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値において、厚さ補正関数を用いて、第1画素値に対応する第2画素値と、第1画素値に対応する実際の第2画素値との差分値を特定する。具体的には、報知部56は、一の第1画素値において、近似曲線から推定される第2画素値(近似曲線の式であるy=ax2+bx+cのうちのyの値)と、一の第1画素値に対応する実際の第2画素値との差分値を算出する。そして、報知部56は、当該差分値を2乗し、平方根をとることで、近似曲線から推定される第2画素値と実際の第2画素値とのエラー距離を算出する。
【0069】
そして、報知部56は、エラー距離に基づいて、第1画像或いは第2画像のうち厚さの影響を消去する物質に対応していない非対応領域を判別する。具体的には、報知部56は、エラー距離とエラー閾値を比較することによって、当該一の第1画素値に対応する画素(及び当該一の第1画素値に対応する第2画素値の画素)が厚さの影響を消去する物質に対応しているか否かを判別する。報知部56は、差分値の算出から厚さの影響を消去する物質に対応しているか否かを判定までの処理を、全ての第1画素値に対して実施する。なお、第2画素値をX軸とし、第1画素値をY軸とした場合には、一の第2画素値において、近似曲線から推定される第1画素値と実際の第1画素値とのエラー距離を算出するようにしてもよい。
【0070】
近似曲線の推定による第2画素値と実際の第2画素値との差分値は、小さいほど、一の第1画素値(及び当該一の第1画素値に対応する第2画素値)に対応する画素が厚さの影響を消去する物質に対応している確率が高く、大きいほど、当該画素が厚さの影響を消去する物質に対応している確率が低い。エラー閾値は、当該差分値が、厚さの影響を消去する物質に対応している画素を示す値であるか否かを判別する閾値である。エラー閾値は、あらかじめ定められた値であって、例えば、以下の方法によって算出される。まず、放射線検査装置5の起動時等、物品Sの放射線検査の開始前に、取得部51によって、物品Sの第1画像或いは第2画像が撮像される。そして、選択受付部52によって、関心領域の選択入力が受け付けられる。このとき、ユーザによって、第1画像或いは第2画像において、厚さの影響を消去する物質に対応する領域と、非対応領域とが故意に含まれた関心領域が選択される。そして、ユーザによって、非対応領域に対応する画素におけるエラー距離のみが判別されるようエラー閾値が決定される。エラー閾値の決定方法は、例えば、まず、ユーザによって、エラー閾値の候補である任意の候補閾値が入力装置106を介してコンピュータシステム20に入力される。そして、各第1画素値におけるエラー距離と当該候補閾値との比較に基づいた画像情報(詳細については後述)が、ディスプレイに表示される。画像情報が、非対応領域のみならず厚さの影響を消去する物質に対応する領域を含んで表示している場合には、ユーザによって候補閾値が再入力され上記処理が繰り返される。画像情報が、非対応領域として厚さの影響を消去する物質に対応しない領域のみを表示している場合には、ユーザによって当該候補閾値がエラー閾値として決定される。これにより、適切な候補閾値がエラー閾値として決定される。
【0071】
そして、報知部56は、第1画像或いは第2画像に重畳されて、第1画像或いは第2画像のうち厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である非対応領域が示された画像情報を、エラー情報として出力する。具体的には、報知部56は、エラー距離に対応する画素を、第1画像或いは第2画像に重畳して表示する。
図14に示される画像情報(エラー情報)Iは、第1画像である画像P1(
図5及び
図6参照)に非対応領域Eが重畳された例である。
図14に示される例では、画像P1のうち筐体S1の樹脂(厚さの影響を消去する物質)に対応する領域、及び樹脂に対応していない領域(
図14における端子S2に相当する領域)が関心領域として選択されている。したがって、選択領域のうち厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である端子S2の部分が非対応領域Eとして画像P1に表示された画像情報Iがディスプレイに表示される。非対応領域Eの表示態様の例としては、赤枠に斜線が引かれた領域、赤く塗りつぶされた領域等が挙げられる。
[放射線検査装置の処理]
【0072】
次に、
図15のフローチャートを参照して、本実施形態に係る放射線検査装置5の動作方法(放射線検査装置5で実行される処理)である放射線検査方法を、処理毎に説明する。
図15は、本実施形態に係る放射線検査方法を示すフローチャートである。
【0073】
S21~S27の処理は、
図13に示されるS11~S17の処理と同様である。S21~S27の処理の後、S28において、報知部56によって、各第1画素値において、厚さ補正関数を用いて算出される(言い換えれば、近似曲線から推定される)第2画素値と、実際の第2画素値とのエラー距離が算出される(第6ステップ)。次に、S29において、報知部56によって、各第1画素値におけるエラー距離と、エラー閾値とが比較される。これにより、エラー閾値よりも大きいエラー距離に対応する画素が、厚さの影響を消去する物質に対応していない非対応領域として判別される(第6ステップ)。次に、S30において、報知部56によって、第1画像或いは第2画像に非対応領域が重畳されて示された画像情報が、エラー情報として表示され(出力され)、処理がS22に戻される(第6ステップ)。S31の処理は、
図13に示されるS18の処理と同様である。なお、エラーである旨を報知する処理(S27)と画像情報を表示する処理(S30)とは、同時に実施されてもよい。すなわち、放射線検査方法では、エラーである旨の報知と画像情報の表示とが同時に実施されてもよい。
[作用及び効果]
【0074】
以上説明した第2実施形態の放射線検査装置5では、上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第6ステップにおいて、第2実施形態の放射線検査装置5では、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値において、厚さ補正関数を用いて算出されて、第1画素値に対応する第2画素値と、第1画素値に対応する実際の第2画素値との距離であるエラー距離が算出され、エラー距離に基づいて、第1画像或いは第2画像のうち厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である非対応領域が判別され、エラー情報として、第1画像或いは第2画像に非対応領域が重畳して出力される。これにより、適切な関心領域をユーザに選択させやすくすることができる。すなわち、第2実施形態の放射線検査装置5では、ディスプレイに、エラーである旨のみならず上述した画像情報を表示することによって、ユーザによって適切な関心領域が再選択されるよう支援することができる。
[第3実施形態]
[放射線検査装置の構成]
【0075】
次に、第3実施形態の放射線検査装置5について説明する。第3実施形態では、放射線検査装置5が有する厚さ補正関数算出部53は、以下の処理を行う。すなわち、厚さ補正関数算出部53は、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を表す複数のサンプル点における外れ値の影響を抑制しつつ、複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、厚さ補正関数を算出する。
【0076】
具体的には、本実施形態では、厚さ補正関数算出部53は、ロバスト推定法のうちM推定法を実施することによって、厚さ補正関数を算出する。まず、厚さ補正関数算出部53によって、最小二乗法等が用いられることにより、複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、近似曲線が推定される。そして、厚さ補正関数算出部53は、各第1画素値において、近似曲線により推定された第2画素値と実際の第2画素値との距離に応じて重み付けを実施し、近似曲線を再算出する。具体的には、厚さ補正関数算出部53は、近似曲線により推定された第2画素値と実際の第2画素値との距離が大きいほど、重み付けを小さくする。厚さ補正関数算出部53は、重み付けから近似曲線の再算出までの処理を複数回繰り返す。これにより、複数のサンプル点における外れ値の影響が抑制されて近似曲線が決定され、近似曲線を表す関数である厚さ補正関数が算出される。
[放射線検査装置の処理]
【0077】
次に、
図16のフローチャートを参照して、本実施形態に係る放射線検査装置5の動作方法(放射線検査装置5で実行される処理)である放射線検査方法を、処理毎に説明する。
図16は、本実施形態に係る放射線検査方法を示すフローチャートである。
【0078】
S41,S42の処理は、
図13に示されるS11,S12の処理と同様である。S41,S42の処理の後、S43において、厚さ補正関数算出部53によって、複数のサンプル点における外れ値の影響が抑制されつつ、複数のサンプル点が2次元座標上で近似されることにより、厚さ補正関数が算出される(第3ステップ)。具体的には、厚さ補正関数算出部53によって、上述したロバスト推定法のうちのM推定法を用いることにより、重み付け最小二乗法によって近似曲線の算出を複数回繰り返すことによって、近似曲線が決定される。これにより、近似曲線を表す関数である厚さ補正関数が算出される。S44~S48の処理は、
図13に示されるS14~S18の処理と同様である。
[作用及び効果]
【0079】
以上説明した第3実施形態の放射線検査装置5では、上述した第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態の放射線検査装置5では、第3ステップにおいて、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を表す複数のサンプル点における外れ値の影響を抑制しつつ、複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、厚さ補正関数を算出する。これにより、複数のサンプル点の近似を精度良く実施することができるため、精度良く評価係数を算出することができる。
【0080】
特に、第3実施形態の放射線検査装置5では、複数のサンプル点における外れ値の影響を抑制する手法として、ロバスト推定のうちM推定が用いられる。これにより、複数のサンプル点の高精度な近似を確実に実施することができる。
[変形例]
【0081】
本開示は、上述した各実施形態に限定されない。例えば、複数のサンプル点を近似する近似曲線は、2次に限定されない。例えば、厚さ補正関数算出部53は、複数のサンプル点を2次元座標上でN次(Nは1以上の自然数)の近似曲線によって近似すればよい。すなわち、複数のサンプル点を近似する近似曲線は、3次以上であってもよい。これにより、第1画素値及び第1画素値に対応する第2画素値との対応関係を精度良く表した厚さ補正関数を算出することができるため、信頼性の高い評価係数を算出することが可能となる。また、複数のサンプル点の近似は、1次の近似直線によって実施されてもよい。
【0082】
ここで、第1実施形態の放射線検査装置5による食品である物品Sを対象にした補正処理の結果の一例を示す。
【0083】
図17には、物品Sの第1画像の一例が示されている。処理対象の物品Sは、複数並んだ餃子S3の一部分に、複数のアルミニウム片S4が含められたものである。
図18には、近似曲線C3のグラフが示されている。近似曲線C3は、
図17に示す第1画像上でアルミニウム片S4を含まない餃子S3を含む領域において関心領域Rが選択された場合に、放射線検査装置5によって1次近似することにより算出された曲線である。具体的には、
図18において、(a)部にはサンプル点D3とともに近似曲線C3を示したグラフG5が示され、(b)部には代表データF3とともに近似曲線C3を示したグラフG6が示されている。この場合には、決定係数が0.990と算出され、ある程度高い値となった。また、
図19には、この場合に放射線検査装置5によって生成された差分画像P4、及び差分画像を閾値処理した異物検出結果画像P5が示されている。このように、差分画像P4及び結果画像P5では、ある程度餃子S3の部分の厚さの影響が消去できてアルミニウム片S4の箇所H1が検出できているが、誤検出の箇所H2、及び本来検出すべきであるが検出できていない箇所H3が発生している。特に、餃子S3の厚い部分が差分画像P4において白く映っており、その部分が完全に消去できない傾向にある。
【0084】
図20には、近似曲線C4のグラフが示されている。近似曲線C4は、
図17に示す第1画像上でアルミニウム片S4を含まない餃子S3を含む領域において関心領域Rが選択された場合に放射線検査装置5によって2次近似することにより算出された曲線である。具体的には、
図20において、(a)部にはサンプル点D3とともに近似曲線C4を示したグラフG7が示され、(b)部には代表データF3とともに近似曲線C4を示したグラフG8が示されている。この場合には、決定係数が0.998と算出され、1次近似した場合よりも高い値となった。また、
図21には、この場合に放射線検査装置5によって生成された差分画像P6、及び差分画像を閾値処理した異物検出結果画像P7が示されている。このように、差分画像P6及び結果画像P7では、餃子S3の部分の厚さの影響があらゆる輝度において全体的に消去できており、アルミニウム片S4の箇所H1が全て検出できている。
【0085】
これらの結果により、物品Sの種類によっては、1次近似より2次近似の方が差分画像において厚さの影響をより完全に消去できることが明らかとなった。
【0086】
また、
図22には、
図17と同じ物品Sの第1画像上でアルミニウム片S4を含む領域が誤って関心領域Rとして選択された場合が示されている。
図23には、この場合に放射線検査装置5によって2次近似することにより算出された近似曲線C5のグラフが示されている。具体的には、
図23において、(a)部にはサンプル点D4とともに近似曲線C5を示したグラフG9が示され、(b)部には代表データF4とともに近似曲線C5を示したグラフG10が示されている。この場合には、決定係数が0.988と算出され、関心領域Rが適切でないために適切に領域選択された際の決定係数0.998に対して比較的低い値となった。また、
図24には、この場合に放射線検査装置5によって生成された差分画像P8、及び差分画像を閾値処理した異物検出結果画像P9が示されている。このように、差分画像P8及び結果画像P9では、餃子S3とアルミニウム片S4とが同じ輝度で差分画像が生成されており、アルミニウム片S4の検出が不可能なことが分かる。決定係数の閾値は、対象物によって異なっており、検査対象物により決定係数の閾値を変えるのが望ましいが、閾値の決定方法については前述した通りである。
【0087】
また、上述した各実施形態では、厚さ補正関数算出部53によって、第1画像及び第2画像が対数変換され、代表データ算出部54によって、対数変換された第1画像の代表の画素値である第1代表値と、対数変換された第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せである代表データが算出された。しかしながら、第1画像及び第2画像は、対数変換されなくてもよい。
【0088】
また、上述した各実施形態では、例えば、第1画素値と、第1画素値に対応する第2画素値との関係は、LUT(Look Up Table)に基づいて算出されてもよい。
【0089】
また、例えば、評価係数は、相関係数であってもよい。これによっても、信頼性の高い評価係数を算出することができる。
【0090】
また、例えば、代表データは、一の第2画素値が第2代表値とされ、当該一の第2画素値に対応する一又は複数の第1画素値の平均値が第1代表値とされることにより、算出されてもよい。
【0091】
また、例えば、代表データは、一の第1画素値が第1代表値とされ、当該一の第1画素値に対応する一又は複数の第2画素値の中央値が第2代表値とされることにより、又は、一の第2画素値が第2代表値とされ、当該一の第2画素値に対応する一又は複数の第1画素値の中央値が第1代表値とされることにより、算出されてもよい。一又は複数の第1画素値又は第2画素値の中央値を求めることによっても、ノイズが評価係数の算出に与える影響を抑制することができるため、精度良く評価係数を算出することができる。
【0092】
また、報知部56が表示するエラー情報は、上述した各実施形態の態様に限定されるものではない。また、放射線検査装置5では、関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力しなくてもよい。
【0093】
また、他のロバスト推定の方法によって処理を実施してもよい。他のロバスト推定の方法としては、例えば、RANSAC、最小メジアン法等が挙げられる。
【0094】
また、上述した各放射線検査方法のフローチャート(
図13、
図15及び
図16)に示した各処理は、適宜省略されてもよい。また、各処理の順序は、適宜入れ替えられてもよい。
【0095】
上述した実施形態に係る方法及び装置では、第1画素値は、対数変換された第1画像のうち関心領域に対応する領域における複数の第1画素のそれぞれの画素値であり、第2画素値は、対数変換された第2画像のうち複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの画素値であり、複数の代表データのそれぞれは、対数変換された第1画像の代表の画素値である第1代表値と、対数変換された第2画像の代表の画素値である第2代表値との組合せであってもよい。これにより、第1画素値と第2画素値との関係を表す厚さ補正関数をより適切に算出することができる。
【0096】
上記方法及び装置では、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を表す複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、厚さ補正関数を算出してもよい。これにより、厚さ補正関数を確実に算出することができる。
【0097】
上記方法及び装置では、複数のサンプル点を2次元座標上でN次(Nは1以上の自然数)の近似曲線によって近似することにより、近似曲線の係数を算出してもよい。これにより、第1画素値、及び第1画素値に対応する第2画素値との対応関係を精度良く表した厚さ補正関数を算出することができるため、信頼性の高い評価係数を算出することが可能となる。
【0098】
上記方法及び装置では、複数の代表データのそれぞれは、一の第1画素値が第1代表値とされ、当該一の第1画素値に対応する一又は複数の第2画素値の平均値が第2代表値とされることにより、又は、一の第2画素値が第2代表値とされ、当該一の第2画素値に対応する一又は複数の第1画素値の平均値が第1代表値とされることにより、算出されてもよい。第1画素値及び第2画素値は、厚さの影響を消去したい物質の画素に対応する画素値である場合だけでなく、第1画像及び第2画像に含まれるノイズを有する画素に対応する画素値である場合もある。上記方法及び装置では、一又は複数の第1画素値又は第2画素値の平均値を求めることにより、ノイズが評価係数の算出に与える影響を抑制することができるため、精度良く評価係数を算出することができる。
【0099】
上記方法及び装置では、複数の代表データのそれぞれは、一の第1画素値が第1代表値とされ、当該一の第1画素値に対応する一又は複数の第2画素値の中央値が第2代表値とされることにより、又は、一の第2画素値が第2代表値とされ、当該一の第2画素値に対応する一又は複数の第1画素値の中央値が第1代表値とされることにより、算出されてもよい。第1画素値及び第2画素値は、厚さの影響を消去したい物質の画素に対応する画素値である場合だけでなく、第1画像及び第2画像に含まれるノイズを有する画素に対応する画素値である場合もある。上記方法及び装置では、一又は複数の第1画素値又は第2画素値の中央値を求めることにより、ノイズが評価係数の算出に与える影響を抑制することができるため、精度良く評価係数を算出することができる。
【0100】
上記方法及び装置では、評価係数は、決定係数であってもよい。これにより、信頼性の高い評価係数を算出することができる。
【0101】
上記方法及び装置では、評価係数は、相関係数であってもよい。これにより、信頼性の高い評価係数を算出することができる。
【0102】
上記方法及び装置では、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、関心領域の選択入力に関するエラー情報を出力してもよい。これにより、適切な関心領域の再選択をユーザに促すことができる。
【0103】
上記方法及び装置では、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値において、厚さ補正関数を用いて算出されて、第1画素値に対応する第2画素値と、第1画素値に対応する実際の第2画素値との距離であるエラー距離を算出し、エラー距離に基づいて、第1画像或いは第2画像のうち厚さの影響を消去する物質に対応していない領域である非対応領域を判別し、エラー情報として、第1画像或いは第2画像に非対応領域を重畳して出力してもよい。これにより、適切な関心領域をユーザに選択させやすくすることができる。
【0104】
上記方法及び装置では、評価係数が所定の評価係数閾値以下である場合、関心領域とは異なる関心領域の選択入力を受け付けてもよい。これにより、単一の物質に対応する関心領域をユーザが再選択することができるため、関心領域に対応する物質の像が適切に除去された画像を取得することが可能となる。
【0105】
上記方法及び装置では、複数の第1画素のそれぞれの第1画素値、及び複数の第1画素に対応する複数の第2画素のそれぞれの第2画素値を表す複数のサンプル点における外れ値の影響を抑制しつつ、複数のサンプル点を2次元座標上で近似することにより、厚さ補正関数を算出してもよい。これにより、複数のサンプル点の近似を精度良く実施することができるため、精度良く評価係数を算出することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…放射線検査システム、2…照射器(放射線源)、3…画像取得装置(検出器)、5…放射線検査装置、20…コンピュータシステム、101…CPU(プロセッサ)、C1,C2…近似曲線、D1,D2…サンプル点、E…非対応領域、I…画像情報(エラー情報)、P1…第1画像,第2画像、R…関心領域、S…物品、F1,F2…代表データ。