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特許7578686再充電可能なエネルギー貯蔵装置を充電及び/又は放電するための方法
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  • 特許-再充電可能なエネルギー貯蔵装置を充電及び/又は放電するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】再充電可能なエネルギー貯蔵装置を充電及び/又は放電するための方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241029BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241029BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241029BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022523460
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 DE2020100922
(87)【国際公開番号】W WO2021083461
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】102019129415.0
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520126446
【氏名又は名称】ベニング・シーエムエス・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター・ヴォルフラム
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-145273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0336624(US,A1)
【文献】特開2005-224024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置(1)を電流(I)で充電及び/又は放電するための方法であって、
前記エネルギー貯蔵装置(1)は、直列に接続されたJ個のバッテリセル(3,4,5,6,7)を有する少なくとも1つのセルブロック(2)を備え、
これらのバッテリセル(3,4,5,6,7)のうちの少なくとも幾つかのバッテリセルが、異なる効率η,1≦N≦Jを有し得て、以下の、
-最初に、前記セルブロック(2)内の全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)が、それらの充電終了電圧に充電され、その後に、前記セルブロック(2)が、その定格静電容量の予め設定されている比率まで放電され、引き続き、少なくとも1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)が、その充電終了電圧に到達するまで、前記セルブロック(2)が充電され、その後に、前記最も低い効率η min を呈するバッテリセル(3,4,5,6,7)が、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)のうちで最も小さいセル電圧U Zmin を有するバッテリセルとして確定されるステップと、
-これらのバッテリセルの合わせられた効率η に対して、η =ηminが成立するように、全ての残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率ηをこの最も低い効率ηminに合わせるステップとを有する当該方法。
【請求項2】
前記セルブロックの充電の終了後に、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対するセル電圧UZ0,Nが算定され、
こうして合わせられた複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η が、前記効率ηminに一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、それぞれの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに差UZ0,N-UZminから算定されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記セル電圧UZ0,N又は前記セル電圧から導き出された効率ηが、記憶されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
エネルギー貯蔵装置(1)を電流(I )で充電及び/又は放電するための方法であって、
前記エネルギー貯蔵装置(1)は、直列に接続されたJ個のバッテリセル(3,4,5,6,7)を有する少なくとも1つのセルブロック(2)を備え、
これらのバッテリセル(3,4,5,6,7)のうちの少なくとも幾つかのバッテリセルが、異なる効率η ,1≦N≦Jを有し得て、以下の、
-前記セルブロック(2)が充電され、当該セルブロック(2)の充電時に、充電電流Iが、少なくとも一回急激に変更され当該充電電流Iの急激な変更の前に、又は当該変更中に、又は当該変更後に、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧が、或る期間内に捕捉され、それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに、差UN,stromsprungが、この期間内に最も大きいセル電圧UN,maxと最も小さいセル電圧UN,minとから、UN,stromsprung=UN,max-UN,minによって生成され前記最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、前記差UN,stromsprungが最も大きい、Ustromsprung,maxを有するバッテリセル(3,4,5,6,7)として確定されるステップと、
-これらのバッテリセルの合わせられた効率η に対して、η =η min が成立するように、全ての残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η をこの最も低い効率η min に合わせるステップとを有する当該方法。
【請求項5】
エネルギー貯蔵装置(1)を電流(I )で充電及び/又は放電するための方法であって、
前記エネルギー貯蔵装置(1)は、直列に接続されたJ個のバッテリセル(3,4,5,6,7)を有する少なくとも1つのセルブロック(2)を備え、
これらのバッテリセル(3,4,5,6,7)のうちの少なくとも幾つかのバッテリセルが、異なる効率η ,1≦N≦Jを有し得て、以下の、
-前記セルブロック(2)が放電され、当該セルブロックの放電時に、放電電流I が、少なくとも一回急激に変更されるステップと、
当該放電電流I の急激な変更の前に、又は当該変更中に、又は当該変更後に、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧が、或る期間内に捕捉されそれぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに、差UN,stromsprungが、この期間内に最も大きいセル電圧UN,maxと最も小さいセル電圧UN,minとから、UN,stromsprung=UN,max-UN,minによって生成され前記最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、前記差UN,stromsprungが最も大きい、Ustromsprung,maxを有するバッテリセル(3,4,5,6,7)として確定されるステップと、
-これらのバッテリセルの合わせられた効率η に対して、η =η min が成立するように、全ての残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η をこの最も低い効率η min に合わせるステップとを有する当該方法。
【請求項6】
こうして合わせられた複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η が、前記効率ηminに一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、それぞれの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)ごとにUstromsprung,maxとUN,stromsprungとの差から算定されることを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項7】
合わせられた複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η が、前記効率ηminに一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、それぞれの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに記憶されることを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
前記最も低い効率ηminを呈する前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の静電容量が、算定されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧が、前記セルブロックの充電後に規則的に測定されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
特定の期間内に、前記セルブロックの充電の直後に、セル電圧UZ,Nが、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対して算定され、充電終了電圧UL,Nと比較され、
1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧UZ,Nが、予め設定されている限界値よりも大きくこのバッテリセルの充電終了電圧UL,Nから外れている場合に、前記バッテリセルの効率を前記効率ηminに合わせるために、該当するバッテリセル(3,4,5,6,7)又は全てのその他のバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが適合されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
最も低い効率η=ηminを呈するバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧UZ,Nが、予め設定されている限界値よりも大きく前記充電終了電圧UL,Nから外れている場合に、前記バッテリセルの効率を前記効率ηminに合わせるために、全てのその他のバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが適合されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
先にη>ηminが成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧UZ,Nが、予め設定されている限界値よりも大きく前記充電終了電圧UL,Nから外れている場合に、電圧差ΔU=UL,N-UZ,Nに対して、ΔU=0が将来的に成立するように、前記効率を減少させるためにこのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、電力Eentnahme,N に減少されることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
先にη>ηminが成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)の場合に、Eentnahme,N =0に減少した場合でも、電圧差ΔU=UL,N-UZ,N>0であることが確認される場合に、このバッテリセル(3,4,5,6,7)は、最も低い効率ηmin を呈するバッテリセルとして規定され、
全てのその他のバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率が、この新しい最も低い効率ηmin に適合されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セルブロック(2)の充電時又は放電時に、充電電流又は放電電流が、少なくとも一回急激に変更され、
前記セル電圧の当該変更から発生する急激な変化が、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対する電圧応答として捕捉され、これらのバッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに互いに比較され、
少なくとも1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対して、前記セル電圧の当該急激な変化が、予め設定されている限界値よりも大きく残りの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の変化から定量的に外れている場合に、1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)又は複数のバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率を前記効率ηminに適合させるために、このバッテリセル(3,4,5,6,7)又はこれらのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが適合されることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
最も低い効率η=ηminを呈する前記バッテリセルの当該急激な変化が、予め設定されている限界値よりも大きく残りの前記バッテリセルのセル電圧の変化から外れている場合に、全ての残りの前記バッテリセルの効率を前記効率ηminに適合させるために、全ての残りの前記バッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが適合されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
先にη>ηminが成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化が、予め設定されている限界値よりも大きく前記残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)の当該急激な変化から外れている場合に、前記充電電流又は放電電流が、将来的に急激な変更されるときに、このバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化が、前記残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化にほぼ一致するように、前記効率を適合させるためにこのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、電力Eentnahme,N に減少されることを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
先にη>ηminが成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)の場合に、Eentnahme,N =0に減少した場合でも、予め設定されている限界値よりも大きい前記充電電流又は放電電流の急激な変更に対する応答としてのこのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化が、前記残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化よりも大きいことが確認される場合に、このバッテリセル(3,4,5,6,7)は、最も低い効率ηmin を呈するバッテリセルとして規定され、
全てのその他のバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率が、この新しい最も低い効率ηmin に適合されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記効率は、接続可能な複数の抵抗Rによって合わせられ、
それぞれのバッテリセルが、接続可能な1つの抵抗を備えることを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
バッテリセル(3,4,5,6,7)とこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗(8,9,10,11,12)とから成るそれぞれの組み合わせに対して、前記効率は、η =ηminであるように、前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の抵抗(8,9,10,11,12)が調整されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記接続可能な抵抗(8,9,10,11,12)は、充電工程又は放電工程の或る期間だけにわたって前記バッテリセル(3,4,5,6,7)に並列に接続されていることを特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
バッテリセル(3,4,5,6,7)とこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗(8,9,10,11,12)とから成るそれぞれの組み合わせに対して、前記効率は、η =ηminであるように、それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対する前記期間の長さが調整されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記効率は、DC-DC変換器によって合わせられ、
それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)が、1つのDC-DC変換器を備え、バッテリセル(3,4,5,6,7)とDC-DC変換器とから成るそれぞれの組み合わせに対して、前記効率は、η=ηminであるように、前記DC-DC変換器が調整されることを特徴とする請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再充電可能なエネルギー貯蔵装置を充電し放電するための方法に関する。この場合、当該エネルギー貯蔵装置は、直列に接続されたJ個のバッテリセルを有する少なくとも1つのセルブロックを備える。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵装置は、バッテリセルと呼ばれる直列又は並列に接続された複数のガルバニ電池を含む。これらのバッテリセルの放電時に、蓄えられた化学エネルギーが、電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは、電源システムに依存する、例えば電気自動車に依存する電気負荷によって使用され得る。さらに、当該電源システムによる電力供給の中断を切り抜けるため、当該エネルギー貯蔵装置の電気エネルギーが、当該電源システムに接続されている電気負荷によって使用され得る。再充電可能な複数のバッテリセルを備えた当該エネルギー貯蔵装置は、新たに使用するために放電後に再び充電される。
【0003】
互いに直列に接続されている複数の再充電可能なバッテリセルから成るエネルギー貯蔵装置(アキュムレータ)の場合、特に当該エネルギー貯蔵装置の寿命にとって、それぞれの個別セルが、当該エネルギー貯蔵装置の充電時に充電されすぎず、当該放電時に放電されすぎず、全てのセルが、可能な限り同じ充電状態を有することが重要である。これは、特に、互いに直列に接続されている複数のリチウムイオンバッテリ、リチウムポリマーバッテリ及び/又は鉄リン酸リチウムバッテリから成るエネルギー貯蔵装置に対して該当する。
【0004】
それ故に、一般に、これらのエネルギー貯蔵装置はそれぞれ、多くの場合にバッテリ管理システムとも呼ばれる装置に接続されている。一方では、当該装置は、電検査装置によって個々のバッテリセルの充電状態を常に監視し、他方では、当該個々のバッテリセルの充電状態が相違する場合に、これらのバッテリセルを均等にすることを試みる。この場合、これらのバッテリセルの充電状態のバランシングとも呼ばれる当該均等化は、受動的なバランシング又は能動的なバランシングによって実行され得る。さらに、既知のバッテリ管理システムの場合、これらのバッテリセルのうちの少なくとも1つのバッテリセルが、満充電にされた時に初めて、当該充電の均等化は開始する。その結果、1つのセルブロックの充電工程の全体が、比較的時間を要する。
【0005】
受動的なバランシングの場合、バッテリセルの充電終了電圧に最初に到達したバッテリセルで、余分なエネルギーが、抵抗を介して熱に変換され、したがって充電工程のために使用されない。
【0006】
これに対して、能動的なバランシングの場合、非常に高いセル電圧を有するバッテリセルから取り出されたエネルギーが、熱エネルギーに変換されるのではなくて、エネルギー貯蔵装置の別のセルを充電するために使用される。しかしながら、当該能動的なバランシングの場合でも、1つのセルブロックの複数のバッテリセルのうちの少なくとも1つのバッテリセルが、その充電終了電圧に到達した時に初めて、当該充電の均等化が開始する。
【0007】
直列に接続された複数のバッテリセルから成る少なくとも1つのセルブロックを有するエネルギー貯蔵装置を、能動的なバランシング又は受動的なバランシングなしに充電し放電するための方法が、独国特許出願公開第102017009850号明細書から公知である。この公知の方法の場合、全てのバッテリセルが同時に、それらの充電終了電圧又は放電終了電圧に到達する。このため、それぞれのバッテリセルの静電容量Cに対する最大充電電流IN;maxの除算に相当する予め設定されているC係数を考慮して、当該バッテリセルに固有の最大充電電流IN;maxが、それぞれのバッテリセルの静電容量Cから算定される。C係数の逆数以下のである予め設定されている時間tの間に、全てのバッテリセルが同時に、これらのバッテリセルにそれぞれ割り当てられた最大充電電流IN;maxで充電される。供給される充電電流Iと1つのバッテリセルの最大充電電流IN;maxとの間の差が補助充電電流として、補助充電装置/補助放電装置によって当該セルブロックから取り出されるか又は当該セルブロックに供給される。当該放電も同様に実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102017009850号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、全てのバッテリセルが同時に充電され、且つこれらのバッテリセルの充電終了電圧に同時に到達され、そして補助充電電流及び補助放電電流が省略され得る、直列に接続された複数のバッテリセルを有するエネルギー貯蔵装置を充電し放電するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の充電及び/又は放電するための方法によって解決される。当該方法は、J個の直列に接続された、異なる効率η(ここで、1≦N≦J)を呈する複数のバッテリを有する少なくとも1つのセルブロックを備えるエネルギー貯蔵装置において、当該セルブロックの最も低い効率ηminを呈するバッテリセルが特定されることを特徴とする。引き続き、全ての残りのバッテリセルの効率が、この最も低い効率ηminに適合される。
【0011】
効率ηは、エネルギー貯蔵装置のセルブロックのN番目のバッテリセルの効率を、有効エネルギーE供給されるエネルギーEとから成る除算として表し、
η=E/E
が成立する。ηは、0~1の値を取り得る。
【0012】
バッテリセルの全ての抵抗と、健全性(SoH)とも呼ばれるバッテリセルの劣化状態とが、当該バッテリセルの効率に影響を及ぼす。
【0013】
供給されるエネルギーEがエネルギー貯蔵装置のセルブロックの全てのバッテリセルに対して等しい場合、最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、有効エネルギーがその他の全てのバッテリセルの有効エネルギーよりも小さいバッテリセルである。これは、該当するバッテリセルの損失がその他のバッテリセルの損失よりも大きいという理由に基づく。これらのバッテリセルの損失は異なるので、エネルギーEが全てのバッテリセルに供給され、且つ充電電流Iが全てのバッテリセルに通電される場合、全てのバッテリセルが、同じ静電容量で充電され得ない。
【0014】
全てのバッテリセルが、それらの充電終了電圧に同時に到達するようにするため、全てのバッテリセルの効率が、効率ηminに合わせられる。その結果、最初から最も低い効率を有するバッテリセルのように、全てのバッテリセルが、同じ損失を有する。これに関連して、当該充電終了電圧は、製造業者によってデータシートに記載された最大許容充電電圧でもよく、又はエネルギー貯蔵装置のオペレータによって規定された、当該製造業者の電圧仕様未満にあり得る電圧でもよい。同じことが、放電終了電圧に対しても成立する。
【0015】
バッテリセルの効率ηが、ηminに合わせられる前に、充電時に最良の効率を呈するバッテリセルが、このバッテリセルの第1充電終了電圧として得られる。これは、セル電圧に基づいて確認される。このバッテリセルは、システムにおける最も高いセル電圧を有する。最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、当該システムにおける最も低いセル電圧を有する。
【0016】
全てのバッテリセルが、ほぼ同時に満充電されていること、すなわちこれらのバッテリセルの最大充電終了電圧に同時に到達することが目的である。しかし、最も低い効率ηminを呈するバッテリセルが、最後にこの電圧に到達するバッテリセルであるので、本発明は、良好な効率を呈するその他のバッテリセルを最も低い効率ηminを呈するバッテリセルに適合することを提唱する。その結果、直列に接続されている全てのバッテリセルが、同一の効率η =ηminを有する。
【0017】
効率の違いをもたらす静電容量は、非常に小さいので、バッテリブロックの全体の効率の深刻な低下は発生しない。
【0018】
好ましくは、個々のバッテリセルのセル電圧が、連続して測定され、検査記憶装置に送信される。このとき、最初に満充電されているバッテリセルが、放電時と引き続く充電時とに、例えば当該検査記憶装置により制御される抵抗の時間制限された接続によってエネルギーを取り出され、これにより、このバッテリセルの効率が、最も低い効率を呈するバッテリセルに実質的に適合される。全てのその他のバッテリセルは、同様に、例えば抵抗によってエネルギーを取り出される。最も低い効率ηminを呈するバッテリセルだけが、エネルギーを取り出されない。
【0019】
それぞれのバッテリセルごとに取り出されるべきエネルギー又は電力Eentnahme,Nは、好ましくは検査記憶装置によって計算される。当該取り出されるべきエネルギー又は電力は、例えば抵抗の時間制限された並列接続によって取り出される。この場合、最良の効率ηを有するバッテリセルは、当該抵抗が最も長く接続され、最も低い効率ηminを呈するバッテリセルの場合の当該抵抗の接続時間は、零に等しい。
【0020】
その次の充電工程では、全てのバッテリセルが、充電終了電圧に同時に到達する。そうでない場合は、全てのバッテリセルが、それらの充電終了電圧に同時に到達するまで、どのバッテリセルが、どのくらいのエネルギーを取り出されなければならないかが新たに計算される。好ましくは、当該方法は、自己学習方式であり、それぞれの満充電時に常に適合される。
【0021】
全てのバッテリセルが、それらの最大の充電終了電圧にほぼ同時に到達する状態が得られると、第1バッテリセルが、その放電終了電圧に到達するまで、好ましくは、セルブロックが、一回放電される。これにより算定された静電容量が、バッテリセルの数で乗算される。この結果は、このセルブロックに対して取り出し可能な最大の静電容量に相当する。
【0022】
この場合、当該セルブロックの全体におけるこのバッテリセルに対する放電深度DoD(Depth of Discharge)が、例えば80%に設定され得て、当該セルブロックは、定格運転で稼働され得る。このとき、バッテリセルが80%よりも大きい放電深度で放電されることは、もはや不可能である。その結果、当該セルブロックは、効率を合わせる当該方法を実行しないときのセルブロックよりも明らかに長い寿命を有する。
【0023】
好ましくは、それぞれの充電工程ごとに、全てのバッテリセルが、同じ時点にそれらの充電終了電圧に到達したか否かが検査される。1つのバッテリセルが、予め設定されている充電終了電圧にならない場合は、このバッテリセルの効率が、経年劣化によって低下している。このバッテリセルは、最も低い効率を呈するバッテリセルであり、したがって全てのその他のバッテリセルが、このバッテリセルに新たに適合されなければならない。低下した効率を呈するバッテリセルが、最も低い効率を呈するバッテリセルとは違う場合は、このバッテリセルの効率が新たに適合されるだけで十分である。当該適合は、例えば、バッテリセルに並列に接続された1つの抵抗の接続時間が減少されることによって達成される。当該バッテリセルが、その他のバッテリセルと一緒にそれらの充電終了電圧に到達するように、当該接続時間を零に減少しても不十分である場合は、このバッテリセルが、最も低い効率を呈するバッテリセルと交換される。したがって、全てのその他のバッテリセルの効率も適合されなければならない。
【0024】
こうして、セルブロックの全体の健全性SoHのための追加のパラメータがさらに得られる。
【0025】
その次のステップでは、セルブロックの最大に取り出される静電容量に関する新しい値が、静電容量を新たに測定することによって算定され得て、放電深度DoDが、当該算定から導き出され得る。
【0026】
最大の充電時間及び放電時間は、全てのバッテリセルに対して同じであり、能動的なバランシング又は受動的なバランシングによる公知の方法の場合よりも明らかに短い。この充電時間又は放電時間を守ると、個々のバッテリセルの過充電又は過放電が回避される。
【0027】
全てのバッテリセルがそれぞれ、これらのそれぞれの静電容量に依存しないで、最大の充電時間後に、これらのバッテリセルのそれぞれの有効静電容量に対して同じ充電状態を有するので、追加の能動的なバランシング又は受動的なバランシングが省略され得る。
【0028】
エネルギー貯蔵装置の放電は、充電と同様に実行される。充電電流の代わりに、放電電流が流れる。電流Iは、充電時の充電電流と放電時の放電電流とを示す。当該区別のため、充電電流は、Iとして示され、放電電流は、I として示されてもよい。
【0029】
本発明の好適な構成によれば、当該効率ηをηminに合わせる前に、最初に、当該セルブロック内の全てのバッテリセルが、それらの充電終了電圧に充電され、その後に、当該セルブロックが、その定格静電容量の予め設定されている比率まで放電され、引き続き、少なくとも1つのバッテリセルが、その充電終了電圧に到達するまで、当該セルブロックが充電される。その後に、当該最も低い効率ηminを呈するバッテリセルが、全てのバッテリセルのうちで最も小さいセル電圧UZminを有するバッテリセルとして確定されることによって、当該最も低い効率ηminを呈するバッテリセルが特定される。
【0030】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該セルブロックの充電の終了後に、全てのバッテリセルに対するセル電圧UZ0,Nが算定される。こうして合わせられた複数の当該バッテリセルの効率η が、当該効率ηminに一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、それぞれの当該バッテリセルごとに差UZ0,N-UZminから算定される。
【0031】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該効率ηをηminに合わせる前に、当該セルブロックが充電され、当該セルブロックの充電時に、充電電流Iが、少なくとも一回急激に変更されることによって、当該最も低い効率ηminを呈するバッテリセルが特定される。当該充電電流Iの急激な変更の前に、又は当該変更中に、又は当該変更後に、全てのバッテリセルのセル電圧が、或る期間内に捕捉される。それぞれのバッテリセルごとに、差UN,stromsprungが、この期間内に最も大きいセル電圧UN,maxと最も小さいセル電圧UN,minとから、UN,stromsprung=UN,max-UN,minによって生成される。これは、当該充電電流の急激な変化に対する電圧応答と呼ばれる。当該最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、当該差UN,stromsprungが最も大きい、Ustromsprung,maxを有するバッテリセルとして確定される。
【0032】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該効率ηをηminに合わせる前に、当該セルブロックが放電され、当該セルブロックの放電時に、放電電流I が、少なくとも一回急激に変更されることによって、当該最も低い効率ηminを呈するバッテリセルが特定される。当該放電電流I の急激な変更の前に、又は当該変更中に、又は当該変更後に、全てのバッテリセルのセル電圧が、或る期間内に捕捉される。それぞれのバッテリセルごとに、差UN,stromsprungが、この期間内に最も大きいセル電圧UN,maxと最も小さいセル電圧UN,minとから、UN,stromsprung=UN,max-UN,minによって生成される。これは、当該放電電流の急激な変化に対する電圧応答と呼ばれる。当該最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、当該差UN,stromsprungが最も大きいバッテリセルとして、Ustromsprung,maxによって確定される。
【0033】
本発明のさらに好適な構成によれば、こうして合わせられた複数の当該バッテリセルの効率η が、当該効率ηminに一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、それぞれの当該バッテリセルごとにUstromsprung,maxとUN,stromsprungとの差から算定される。
【0034】
本発明のさらに好適な構成によれば、合わせられた複数の当該バッテリセルの効率η が、当該効率ηminに一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力Eentnahme,Nが、それぞれの当該バッテリセルごとに記憶される。
【0035】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該セル電圧UZ0,N又は当該セル電圧から導き出された効率ηが記憶される。
【0036】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該最も低い効率ηminを呈する当該バッテリセルの静電容量が、予め設定されている期間内に算定される。
【0037】
本発明のさらに好適な構成によれば、複数の当該バッテリセルのセル電圧が規則的に測定される。
【0038】
本発明のさらに好適な構成によれば、特定の期間内に、当該セルブロックの充電の直後に、セル電圧UZ,Nが、全てのバッテリセルに対して算定され、充電終了電圧UL,Nと比較される。当該最も低い効率η=ηminを呈するバッテリセルのセル電圧UZ,Nが、予め設定されている限界値よりも大きくこのバッテリセルの充電終了電圧UL,Nから外れている場合に、当該バッテリセルの効率を当該効率ηminに合わせるために、全てのその他のバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力が適合される。別の1つのバッテリセルのセル電圧UZ,Nが、予め設定されている限界値よりも大きくこのように外れている場合に、このバッテリセルだけで、このバッテリセルの効率を効率ηminに適合させるためにこのバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力が適合される。これは、該当するバッテリセルの効率ηが、劣化にもかかわらず依然としてηminよりも大きいことが前提条件である。例えば、このバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力を零に減少させることが重要であり、且つ、このバッテリセルが、当該セルブロックのその次の充電時に予め設定されている限界値を超える、セル電圧UZ,Nと充電終了電圧UL,Nとの間の偏差を依然として有する場合に、このバッテリセルは、最も低い効率η=ηmin を呈するバッテリセルにされる。その後に、全てのその他のバッテリセルの効率を効率ηmin に適合するために当該全てのその他のバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力が適合される。この方法は、進行する稼働中に個々のバッテリセルの効率を低下させるために使用される。
【0039】
本発明のさらに好適な構成によれば、セルブロックの充電時に、充電電流Iが、少なくとも一回急激に変更され、当該変更から発生するバッテリセルの電圧応答が互いに比較される。η =ηminであるように、すなわち全てのバッテリセルの電圧応答が、定性的にほぼ等しく、予め設定されている範囲内に存在するように、これらのバッテリセルの効率ηが適合される。これらのバッテリセルのうちの少なくとも1つのバッテリセルの電圧応答が、予め設定されている限界値よりも大きくその他のバッテリセルから外れている場合に、このバッテリセル又は当該その他のバッテリセルの効率が新たに適合される。当該適合は、例えば上記のように適切に実行される。この代わりに、放電電流が、セルブロックの放電時に少なくとも一回急激に変更され、当該変更から発生するこれらのバッテリセルの電圧応答が検査されてもよい。
【0040】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該効率は、接続可能な複数の抵抗Rによって合わせられ、それぞれのバッテリセルが、接続可能な1つの抵抗を備える。
【0041】
本発明のさらに好適な構成によれば、バッテリセルとこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗とから成るそれぞれの組み合わせに対して、当該効率は、η =ηminであるように、当該バッテリセルの抵抗Rが調整される。
【0042】
本発明のさらに好適な構成によれば、接続可能な抵抗が、1つのバッテリセルの充電工程又は放電工程の期間だけにわたって1つのバッテリセルに並列に接続される。該当する抵抗が、充電工程の全体中に又は放電工程の全体中に対応するバッテリセルに対して並列に接続されている。当該並列回路は、当該充電工程又は放電工程の一部に対して中断される。複数のバッテリセルの効率が、並列に接続された抵抗を接続することによって合わせられると、当該複数のバッテリセルの複数の電圧ジャンプ同士の比から、当該複数の抵抗の接続時間が導き出され得る。特に、これらの抵抗の接続時間は、これらのバッテリセルの電圧ジャンプの逆数比に等しく設定され得る。エネルギーが、抵抗によって最も低い効率を呈するバッテリセルから取り出されないが、エネルギーが、並列抵抗によって最も良好な効率を呈するバッテリセルから最も長い期間にわたって取り出される。
【0043】
本発明のさらに好適な構成によれば、バッテリセルとこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗とから成るそれぞれの組み合わせに対して、当該効率は、η =ηminであるように、それぞれのバッテリセルに対する当該期間の長さが調整される。
【0044】
本発明のさらに好適な構成によれば、バッテリセルとこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗とから成るそれぞれの組み合わせに対して、当該効率は、η =ηminであるように、それぞれのバッテリセルに対する当該抵抗の値が調整される。
【0045】
本発明のさらに好適な構成によれば、当該効率は、DC-DC変換器によって合わせられ、それぞれのバッテリセルが、1つのDC-DC変換器を備え、バッテリセルとDC-DC変換器とから成るそれぞれの組み合わせに対して、当該効率が、η=ηminであるように、当該DC-DC変換器は調整される。
【0046】
本発明のさらに好適な構成によれば、セルブロックの充電時に、このセルブロックのそれぞれのバッテリセルが、充電終了電圧に到達すると、付随する電圧が測定される。当該測定される電圧は、互いに比較される。
【0047】
本発明のさらに好適な構成によれば、セルブロックの充電終了電圧に到達時に測定される1つのバッテリセルのセル電圧が、予め設定されている限界値よりも大きく残りのバッテリセルのセル電圧から外れている場合に、このバッテリセルの効率ηが、ηminに適合される。
【0048】
本発明のさらなる利点及び好適な実施の形態では、以下の説明、図面及び特許請求の範囲から読み取り可能である。
【0049】
当該図面には、本発明の対象の実施の形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】エネルギー貯蔵装置の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1には、エネルギー貯蔵装置1の回路図が示されている。エネルギー貯蔵装置1は、例えば建物の電源にエネルギーを供給するために使用され、再生エネルギーを生成するためのシステム(太陽熱発電システム、風力発電システム、バイオマス発電システム等)によって、例えば双方向AC/DC変換器100を介して充放電可能である。当該図示された実施の形態の場合、エネルギー貯蔵装置1は、互いに直列に接続されている再充電可能な複数のセルブロック2を含む。それぞれのバッテリセル3~7は、接続可能な抵抗8,9,10,11,12を装備している。この場合、接続可能な抵抗8は、バッテリセル3に並列に接続されている。同じことが、抵抗9,10,11,12及び4,5,6,7に対して成立する。接続可能は、これらの抵抗が当該セルブロックの充電中又は放電中の時間限定された期間にこれらのバッテリセルに対して並列に接続されていることを意味する。
【0052】
個々のバッテリセル3~7の充電状態又は放電状態を検査するため、検査記憶装置13が設けられている。検査記憶装置13は、対応するデータ線14を介して接続可能な抵抗8~12と双方向AC/DC変換器100との双方に接続されている。
【0053】
以下に、最も低い効率を呈するバッテリセルを特定することと、残りのバッテリセルの効率をこの最も低い効率に合わせることとを説明する。
【0054】
最初に、セルブロック2内の全てのバッテリセル3~7が、これらのバッテリセル3~7の充電終了電圧の到達まで充電される。その後に、セルブロック2が、その定格静電容量の50%に到達するまで、このセルブロック2は放電される。引き続き、これらのバッテリセルのうちの1つのバッテリセルが、その充電終了電圧に最初に到達するまで、当該セルブロックは新たに充電される。この実施の形態では、当該最初に到達するバッテリセルは、バッテリセル5である。このバッテリセル5が、その充電終了電圧に到達する時点に、バッテリセル5のセル電圧と残りのバッテリセル3,4,6,7のセル電圧との間の電圧差が算定される。それらの効率の差が、当該複数の電圧差から推測され得る。バッテリセル5に対して最も大きい電圧差を呈するバッテリセル3,4,6,7が、最も低い効率ηminを呈するバッテリセルとして確定される。この実施の形態では、最も低い効率ηminを呈するバッテリセルは、バッテリセル6である。
【0055】
引き続き、これらの接続可能な抵抗8~12の接続期間が、充電工程と放電工程とに対して算定されることによって、これらのバッテリセル3,4,5,7の効率η(ここで、N∈{3,4,5,7})が、効率ηminに適合される。バッテリセル6の場合、対応する抵抗11は、当該充電工程中と当該放電工程中とに並列接続されない。何故なら、このバッテリセルの効率は、既に当該最も低い効率にあるからである(η=ηmin)。最良の効率を呈するバッテリセル(この場合には、バッテリセル5)の場合、対応する接続可能な抵抗10は、最も長く接続される。
【0056】
接続可能な抵抗8,9,10及び12の当該接続によって、全てのバッテリセル3~7の当該充電時及び当該放電時の損失が等しく、それ故に全てのバッテリセル3~7の効率が、効率ηminに一致することが達成される:
η=η=η=η=η=ηmin
これにより、全てのバッテリセル3~7が、セルブロック2の充電時にそれらの充電終了電圧に同時に到達する。
【0057】
本発明の全ての特徴が、個別でも、互いに任意に組み合わせても、本発明にとって必須な事項である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
エネルギー貯蔵装置(1)を電流(I )で充電及び/又は放電するための方法であって、
前記エネルギー貯蔵装置(1)は、直列に接続されたJ個のバッテリセル(3,4,5,6,7)を有する少なくとも1つのセルブロック(2)を備え、
これらのバッテリセル(3,4,5,6,7)のうちの幾つかのバッテリセルが、異なる効率η ,1≦N≦Jを有し得て、以下の、
-最も低い効率η min を呈するバッテリセル(3,4,5,6,7)を特定するステップと、
-これらのバッテリセルの合わせられた効率η に対して、η =η min が成立するように、全ての残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η をこの最も低い効率η min に合わせるステップとを有する当該方法。
2.
前記効率η をη min に合わせる前に、最初に、前記セルブロック(2)内の全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)が、それらの充電終了電圧に充電され、その後に、前記セルブロック(2)が、その定格静電容量の予め設定されている比率まで放電され、引き続き、少なくとも1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)が、その充電終了電圧に到達するまで、前記セルブロック(2)が充電され、その後に、前記最も低い効率η min を呈するバッテリセル(3,4,5,6,7)が、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)のうちで最も小さいセル電圧U Zmin を有するバッテリセルとして確定されることによって、前記最も低い効率η min を呈するバッテリセル(3,4,5,6,7)が特定される上記1に記載の方法。
3.
前記セルブロックの充電の終了後に、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対するセル電圧U Z0,N が算定され、
こうして合わせられた複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η が、前記効率η min に一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が、それぞれの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに差U Z0,N -U Zmin から算定される上記2に記載の方法。
4.
前記セル電圧U Z0,N 又は前記セル電圧から導き出された効率η が、記憶される上記3に記載の方法。
5.
前記効率η をη min に合わせる前に、前記セルブロック(2)が充電され、当該セルブロック(2)の充電時に、充電電流I が、少なくとも一回急激に変更されることによって、前記最も低い効率η min を呈するバッテリセルが特定され、
当該充電電流I の急激な変更の前に、又は当該変更中に、又は当該変更後に、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧が、或る期間内に捕捉され、
それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに、差U N,stromsprung が、この期間内に最も大きいセル電圧U N,max と最も小さいセル電圧U N,min とから、U N,stromsprung =U N,max -U N,min によって生成され、
前記最も低い効率η min を呈するバッテリセルは、前記差U N,stromsprung が最も大きい、U stromsprung,max を有するバッテリセル(3,4,5,6,7)として確定される上記1に記載の方法。
6.
前記効率η をη min に合わせる前に、前記セルブロック(2)が放電され、当該セルブロックの放電時に、放電電流I が、少なくとも一回急激に変更されることによって、前記最も低い効率η min を呈するバッテリセルが特定され、
当該放電電流I の急激な変更の前に、又は当該変更中に、又は当該変更後に、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧が、或る期間内に捕捉され、
それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに、差U N,stromsprung が、この期間内に最も大きいセル電圧U N,max と最も小さいセル電圧U N,min とから、U N,stromsprung =U N,max -U N,min によって生成され、
前記最も低い効率η min を呈するバッテリセルは、前記差U N,stromsprung が最も大きい、U stromsprung,max を有するバッテリセル(3,4,5,6,7)として確定される上記1に記載の方法。
7.
こうして合わせられた複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η が、前記効率η min に一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が、それぞれの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)ごとにU stromsprung,max とU N,stromsprung との差から算定される上記5又は6に記載の方法。
8.
合わせられた複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の効率η が、前記効率η min に一致するように、充電時又は放電時にそれぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が、それぞれの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに記憶される上記3又は7に記載の方法。
9.
前記最も低い効率η min を呈する前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の静電容量が、算定される上記1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.
複数の前記バッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧が、前記セルブロックの充電後に規則的に測定される上記1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.
特定の期間内に、前記セルブロックの充電の直後に、セル電圧U Z,N が、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対して算定され、充電終了電圧U L,N と比較され、
1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧U Z,N が、予め設定されている限界値よりも大きくこのバッテリセルの充電終了電圧U L,N から外れている場合に、前記バッテリセルの効率を前記効率η min に合わせるために、該当するバッテリセル(3,4,5,6,7)又は全てのその他のバッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が適合される上記1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.
最も低い効率η =η min を呈するバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧U Z,N が、予め設定されている限界値よりも大きく前記充電終了電圧U L,N から外れている場合に、前記バッテリセルの効率を前記効率η min に合わせるために、全てのその他のバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が適合される上記11に記載の方法。
13.
先にη >η min が成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧U Z,N が、予め設定されている限界値よりも大きく前記充電終了電圧U L,N から外れている場合に、電圧差ΔU =U L,N -U Z,N に対して、ΔU =0が将来的に成立するように、前記効率を減少させるためにこのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が、電力E entnahme,N に減少される上記11又は12に記載の方法。
14.
先にη >η min が成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)の場合に、E entnahme,N =0に減少した場合でも、電圧差ΔU =U L,N -U Z,N >0であることが確認される場合に、このバッテリセル(3,4,5,6,7)は、最も低い効率η min を呈するバッテリセルとして規定され、
全てのその他のバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率が、この新しい最も低い効率η min に適合される上記13に記載の方法。
15.
前記セルブロック(2)の充電時又は放電時に、充電電流又は放電電流が、少なくとも一回急激に変更され、
前記セル電圧の当該変更から発生する急激な変化が、全てのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対する電圧応答として捕捉され、これらのバッテリセル(3,4,5,6,7)ごとに互いに比較され、
少なくとも1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対して、前記セル電圧の当該急激な変化が、予め設定されている限界値よりも大きく残りの前記バッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の変化から定量的に外れている場合に、1つのバッテリセル(3,4,5,6,7)又は複数のバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率を前記効率η min に適合させるために、このバッテリセル(3,4,5,6,7)又はこれらのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が適合される上記1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.
最も低い効率η =η min を呈する前記バッテリセルの当該急激な変化が、予め設定されている限界値よりも大きく残りの前記バッテリセルのセル電圧の変化から外れている場合に、全ての残りの前記バッテリセルの効率を前記効率η min に適合させるために、全ての残りの前記バッテリセルから取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が適合される上記15に記載の方法。
17.
先にη >η min が成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化が、予め設定されている限界値よりも大きく前記残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)の当該急激な変化から外れている場合に、前記充電電流又は放電電流が、将来的に急激な変更されるときに、このバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化が、前記残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化にほぼ一致するように、前記効率を適合させるためにこのバッテリセル(3,4,5,6,7)から取り出されるエネルギー又は電力E entnahme,N が、電力E entnahme,N に減少される上記15又は16に記載の方法。
18.
先にη >η min が成立したバッテリセル(3,4,5,6,7)の場合に、E entnahme,N =0に減少した場合でも、予め設定されている限界値よりも大きい前記充電電流又は放電電流の急激な変更に対する応答としてのこのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化が、前記残りのバッテリセル(3,4,5,6,7)のセル電圧の当該急激な変化よりも大きいことが確認される場合に、このバッテリセル(3,4,5,6,7)は、最も低い効率η min を呈するバッテリセルとして規定され、
全てのその他のバッテリセル(3,4,5,6,7)の効率が、この新しい最も低い効率η min に適合される上記17に記載の方法。
19.
前記効率は、接続可能な複数の抵抗R によって合わせられ、
それぞれのバッテリセルが、接続可能な1つの抵抗を備える上記1~18のいずれか1つに記載の方法。
20.
バッテリセル(3,4,5,6,7)とこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗(8,9,10,11,12)とから成るそれぞれの組み合わせに対して、前記効率は、η =η min であるように、前記バッテリセル(3,4,5,6,7)の抵抗(8,9,10,11,12)が調整される上記19に記載の方法。
21.
前記接続可能な抵抗(8,9,10,11,12)は、充電工程又は放電工程の或る期間だけにわたって前記バッテリセル(3,4,5,6,7)に並列に接続されている上記19又は20に記載の方法。
22.
バッテリセル(3,4,5,6,7)とこのバッテリセルに付設された接続可能な抵抗(8,9,10,11,12)とから成るそれぞれの組み合わせに対して、前記効率は、η =η min であるように、それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)に対する前記期間の長さが調整される上記21に記載の方法。
23.
前記効率は、DC-DC変換器によって合わせられ、
それぞれのバッテリセル(3,4,5,6,7)が、1つのDC-DC変換器を備え、バッテリセル(3,4,5,6,7)とDC-DC変換器とから成るそれぞれの組み合わせに対して、前記効率は、η =η min であるように、前記DC-DC変換器が調整される上記1~22のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0058】
1 エネルギー貯蔵装置
2 セルブロック
3 バッテリセル
4 バッテリセル
5 バッテリセル
6 バッテリセル
7 バッテリセル
8 接続可能な抵抗
9 接続可能な抵抗
10 接続可能な抵抗
11 接続可能な抵抗
12 接続可能な抵抗
13 検査記憶装置
14 データ線
100 双方向AC/DC変換器
図1