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特許7578693それを作製するための固体粒子を含有する多層溶解性固体物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】それを作製するための固体粒子を含有する多層溶解性固体物品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/06 20060101AFI20241029BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 3/12 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/18 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/34 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/74 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20241029BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241029BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20241029BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241029BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C11D17/06
C11D3/37
C11D3/20
C11D1/66
C11D3/12
C11D3/22
C11D1/72
C11D1/02
C11D3/386
C11D3/395
C11D1/29
C11D1/14
C11D1/28
C11D1/18
C11D1/34
C11D1/74
C11D1/22
C11D3/39
A61K8/81
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/86
A61K8/89
A61K8/36
A61K8/73
A61K8/365
A61K8/41
A61Q5/00
A61Q5/02
B32B5/18
B32B5/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022534392
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2020119952
(87)【国際公開番号】W WO2022073193
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-06-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、カール・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】タン、ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ロバート・ウェイン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】パン、ウェンフゥ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、ケジン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、イーシィァン
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/147211(WO,A1)
【文献】特開平10-204499(JP,A)
【文献】特表2012-501372(JP,A)
【文献】特開昭59-074198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
A61K 8/02
B32B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、前記2つ以上のシートの各々が、前記シートの総重量に対して5重量%~40重量%の水溶性ポリマー及び前記シートの総重量に対して20重量%~90重量%の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、
非水性液体担体と、固体粒子と、増粘剤と、を含むコーティング組成物が、前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在し、
前記非水性液体担体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シリコーン、脂肪酸、香油、非イオン性界面活性剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記増粘剤が、シリカ、粘土、ポリアクリレート増粘剤、ポリアクリルアミド増粘剤、アルギン酸エトキシル化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記固体粒子が、アニオン性界面活性剤、酵素、漂白剤、発泡系、又はこれらの任意の組み合わせを含み、
ただし、前記コーティング組成物が、前記溶解性固体物品のいずれの外面上にも存在しない、溶解性固体物品。
【請求項2】
前記非水性液体担体が、非イオン性界面活性剤であり、及び/又は前記増粘剤が、シリカである、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項3】
前記非水性液体担体が、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)からなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含み、及び、前記増粘剤が、シリカを含む、請求項2に記載の溶解性固体物品。
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤が、アルキル及びアルキルエーテルサルフェート、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホネート、一級又は二級アルカンスルホネート、アルキルスルホサクシネート、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホアセテート、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、キシログルカナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナーゼ、クチナーゼ、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記漂白剤が、有効酸素源、漂白活性化剤、予備形成過酸、漂白触媒、還元漂白剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記発泡系が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、グルタル酸、マロン酸、コハク酸、ホウ酸、安息香酸、オレイン酸、シトラマル酸、3-ケトグルタル酸、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される酸源、並びに炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルカリ源である、請求項に記載の溶解性固体物品。
【請求項5】
前記固体粒子が、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)界面活性剤を含む、請求項に記載の溶解性固体物品。
【請求項6】
前記固体粒子が、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される有効酸素源を含む、請求項に記載の溶解性固体物品。
【請求項7】
前記固体粒子が、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、オキシベンゼンスルホネート、カプロラクタム;五酢酸グルコース(PAG)、ニトリル四級アンモニウム、イミド漂白活性化剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される漂白活性化剤を含む、請求項に記載の溶解性固体物品。
【請求項8】
前記コーティング組成物が、
1)前記コーティング組成物の総重量に対して5重量%~70重量%の前記非水性液体担体、及び/又は
2)前記コーティング組成物の総重量に対して10重量%~80重量%の前記固体粒子、及び/又は
3)前記コーティング組成物の総重量に対して0.05重量%~5重量%の前記増粘剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項9】
前記シートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して重量%~30重量%の前記水溶性ポリマーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項10】
前記シートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して30重量%~80重量%の前記界面活性剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項11】
前記2つ以上のシートが、第1のシート群と第2のシート群とを含み、前記コーティング組成物が、前記第1のシート群のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在するが、前記第2のシート群のいずれの表面上にも存在せず、
前記コーティング組成物が、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される有効酸素源を含み、
前記第2のシート群内の各シートが、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、オキシベンゼンスルホネート、カプロラクタム;五酢酸グルコース(PAG)、ニトリル四級アンモニウム、イミド漂白活性化剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される漂白活性化剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項12】
前記シートの各々が、
・85%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・前記シートの0.5重量%~25重量%の最終水分含有量、及び/又は
・0.6mm~3.5mmの厚さ、及び/又は
・50グラム/m~500グラム/mの坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm~0.5グラム/cmの密度、及び/又は
・0.03m/g~0.25m/gの比表面積、によって特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項13】
布地若しくは硬質表面から微生物を除去すること、及び/又は悪臭防止若しくは低減における、請求項1~12のいずれか一項に記載の溶解性固体物品の使用。
【請求項14】
溶解性固体物品を調製するためのプロセスであって、
1)2つ以上の可撓性多孔質溶解性シート及びコーティング組成物を提供する工程であって、前記2つ以上のシートの各々が、前記シートの総重量に対して5重量%~40重量%の水溶性ポリマー及び前記シートの総重量に対して20重量%~90重量%の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、前記コーティング組成物が、非水性液体担体と、増粘剤と、固体粒子と、を含み、前記増粘剤が、シリカ、粘土、ポリアクリレート増粘剤、ポリアクリルアミド増粘剤、アルギン酸エトキシル化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記非水性液体担体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シリコーン、脂肪酸、香油、非イオン性界面活性剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記固体粒子が、アニオン性界面活性剤、酵素、漂白剤、発泡系、又はこれらの任意の組み合わせを含む、工程と、
2)前記2つ以上のシートからの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に前記コーティング組成物を塗布する工程と、
3)前記2つ以上のシートを積層体に配置して、前記コーティング組成物が前記積層体のいずれの外面上にも存在しないように前記溶解性固体物品を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項15】
前記2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートが、以下の工程:
a)前記水溶性ポリマー及び前記界面活性剤を含む湿潤プレミックスを調製する工程と、
b)前記湿潤プレミックスを通気して、通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、
c)前記通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、
d)前記形成されたシートを乾燥させて、前記2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを作製する工程と、を使用することによって提供される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記工程d)が、5分~300分の期間、70℃~200℃の温度で、前記形成されたシートの前記第1の面から前記第2の面まで低下する温度勾配を形成する加熱方向に沿って行われ、前記加熱方向が、請求項15の工程d)の乾燥時間の半分超にわたって重力方向とは実質的に反対である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記湿潤プレミックスが、40℃及び1s-1で測定されるとき、1,000cps~25,000cpsの粘度を有し、及び/又は前記通気された湿潤プレミックスが、0.05~0.8g/mLの密度を有する、請求項15又は16に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子を含有する多層溶解性固体物品及びそれを作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマー担体又はマトリックス中に界面活性剤及び/又は他の活性成分を含む可撓性溶解性シートは周知である。このようなシートは、水中での溶解時に界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するのに特に有用である。同じ製品カテゴリ内の従来の顆粒又は液体形態と比較して、そのようなシートは、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮され、保管、輸送/運送、運搬、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリ内の固体錠剤形態と比較して、そのようなシートは、より可撓性であり、脆性がより低く、消費者にとってより良好な感覚的魅力を有する。
【0003】
そのようなシートの溶解プロファイルを改善するために、いくつかの研究では、約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(open-celled foam、OCF)構造を有する多孔質シートが開発されている。特に、国際公開第2010077627号は、原材料のプレミックスを激しく通気することと、次いで通気されたプレミックスをバッチ(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成することと、を含む、OCF構造を有するそのような多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。国際公開第2012138820号は、通気された湿潤プレミックスの連続乾燥を、例えば、衝突オーブン(対流式オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)を使用することによって達成することを除いては、国際公開第2010077627号のものと同様のプロセスを開示している。
【0004】
一方、所望の製品機能を達成するのに十分な量の界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するために、多層のそのような可撓性及び溶解性シートを使用することが望ましく、そのような多層を一体型溶解性固体物品に組み立てることが更に望ましく、これはその後、一体型の仕上げた製品として販売され得る。更に、水との接触時の熱安定性又は不活性化によりシートへの加工に好適ではないいくつかの活性成分は、多層物品の層間のコーティング組成物として塗布され得る。多層物品中の層間に塗布される活性成分を含有するそのようなコーティング組成物は、液体形態又は粒子状形態であり得る。しかしながら、シート間にそのようなコーティング組成物を塗布しようとするときに、様々な課題に直面し得る。特に、いくつかの活性成分(例えば、漂白剤、発泡系など)は、固体粒子の形態でのみ存在するが、発泡体の層間にこれらの粒子を組み込むことは、重大な課題を含む。例えば、発泡体シートの層間で粒子を密閉することは技術的に困難であり(すなわち、固体粒子が存在すると、隣接する層間の接触面積が良好な密閉を可能にするには不十分になる場合がある、又はエッジにおける粒子が、その領域での密閉を防止し、製品の側面が開いたままになる場合がある)、使用時に粉末漏れを引き起こす場合があり、消費者にとって望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010077627号
【文献】国際公開第2012138820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、改善された性能を有する固体粒子組成物を含有する多層物品が継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多層可撓性溶解性多孔質シートの隣接する層の一方又は両方の接触面に塗布された、非水性液体担体中に分散された固体粒子を含むコーティング組成物を用いて、改善された性能を有する多層物品を提供する。
【0008】
本発明の発明者らは、固体粒子が、多くの場合、非水性液体担体と適合しないことを見出した。固体粒子は、凝集及び/又は沈降する傾向がある。いくつかのより悪い場合には、相分離が起こる。この問題を解決するために、本発明者らは、非水性液体担体と、増粘剤と、固体粒子と、を含むコーティング組成物を開発した。特に、本発明によるコーティング組成物は、非水性液体担体としての非イオン性界面活性剤と、増粘剤と、固体粒子と、を含む。いくつかの好ましい実施形態では、増粘剤は、シリカ、粘土、ポリアクリレート増粘剤、ポリアクリルアミド増粘剤、キサンタン増粘剤、グアーガム、アルギン酸エトキシル化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0009】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、本発明によるコーティング組成物がコーティング組成物の安定性を著しく改善し得ることを見出した。更に、本発明によるコーティング組成物は、活性成分の安定性の改善、漏れの改善、充填能力の改善、プロセス実現可能性の改善を含むがこれらに限定されない追加の効果をもたらし得る。特に、本発明の発明者らは、驚くべきことに、コーティング組成物中の固体粒子として添加される漂白剤の安定性が著しく改善されることを見出した。このような改善は、多層溶解性固体物品の多孔質構造に空気又は水分が入ることが可能であることを考慮すると、完全に予想外であり、換言すれば、層間の漂白剤は依然として環境物質と接触し得る。
【0010】
一態様では、本発明は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、非水性液体担体と、固体粒子と、増粘剤と、を含むコーティング組成物が、2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在し、ただし、コーティング組成物が、溶解性固体物品のいずれの外面上にも存在しない、溶解性固体物品に関する。好ましくは、固体粒子は、第1の粒子群と第2の粒子群とを含み、第1の粒子群は、有効酸素源を含み、好ましくは、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される有効酸素源を含み、第2の粒子群は、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、オキシベンゼンスルホネート、カプロラクタム;五酢酸グルコース(PAG)、ニトリル四級アンモニウム、イミド漂白活性化剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される漂白活性化剤を含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、3つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品を提供し、当該3つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、第1のコーティング組成物が、3つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在し、第1のコーティング組成物が、第1の非水性液体担体と、増粘剤と、有効酸素源を含む第1の固体粒子群と、を含み、第2のコーティング組成物が、3つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在し、第2のコーティング組成物が、第2の非水性液体担体と、増粘剤と、漂白活性化剤を含む第2の固体粒子群と、を含み、第1の非水性液体担体及び第2の非水性液体担体が、独立して、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シリコーン、脂肪酸、香油、非イオン性界面活性剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、ただし、第1及び第2のコーティング組成物が、同じ表面上になく、溶解性固体物品のいずれの外面上にも存在しない。好ましくは、第1のコーティング組成物は、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)である第1の非水性液体担体が20%~50%と、過炭酸塩又は過ホウ酸塩を含む第1の固体粒子群が30%~70%と、増粘剤が0.1%~1.5%と、を含み得、第2のコーティング組成物は、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)である第2の非水性液体担体が20%~50%と、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)を含む第2の固体粒子群が30%~70%と、増粘剤が0.1%~1.5%と、を含み得る。
【0012】
更なる態様では、本発明は、溶解性固体物品を調製するためのプロセスであって、1)2つ以上の可撓性多孔質溶解性シート及びコーティング組成物を提供する工程であって、当該2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、当該コーティング組成物が、非水性液体担体と、固体粒子と、増粘剤とを含む、工程と、2)当該2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上にコーティング組成物を塗布する工程と、3)2つ以上のシートを積層体に配置して、コーティング組成物が積層体のいずれの外面上にも存在しないように溶解性固体物品を形成する工程と、を含む、プロセスに関する。好ましくは、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートは、以下の工程:a)当該水溶性ポリマー及び当該界面活性剤を含む湿潤プレミックスを調製する工程と、b)当該湿潤プレミックスを通気して、通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、c)当該通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、d)当該形成されたシートを乾燥させて、当該2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを作製する工程と、を使用することによって提供され得る。より好ましくは、工程d)が、5分~300分、好ましくは10分~120分の期間、70℃~200℃、好ましくは90℃~140℃の温度で、形成されたシートの第1の面から第2の面まで低下する温度勾配を形成する加熱方向に沿って行われ得、加熱方向が、乾燥時間の半分超、好ましくは乾燥時間の75%超にわたって重力方向とは実質的に反対である。特に、湿潤プレミックスが、40℃及び1s-1で測定されるとき、1,000cps~25,000cpsの粘度を有し得、及び/又は通気された湿潤プレミックスが、0.05~0.7g/mL、好ましくは0.15g/mL~0.6g/mL、より好ましくは0.2g/mL~0.5g/mL、最も好ましくは0.25g/mL~0.45g/mLの密度を有し得る。
【0013】
更なる態様では、本発明は、細菌を除去すること、及び/又は悪臭防止若しくは低減における、本開示による溶解性固体物品の使用に関する。
【0014】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、増粘剤を含むコーティング組成物が、増粘剤を含まないコーティング組成物と比較して著しく改善された安定性を示すことである。
【0015】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、溶解性固体物品が、効果をもたらすために固体粒子として十分な量の活性成分を含有し得ることである。換言すれば、本開示による溶解性固体物品は、固体粒子を充填するための増強された能力を有する担体を提供する。特に、増粘剤を含むコーティング組成物を含有する溶解性固体物品は、同じ量の固体粒子を充填するときに、増粘剤を含まないコーティング組成物を含有する溶解性固体物品と比較して、より少ない漏れをもたらし得、すなわち、溶解プロファイルと漏れとの間をバランスする。
【0016】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、溶解性固体物品に含有される感湿活性成分(例えば、漂白剤)が、同じ条件下で貯蔵された感湿活性成分単独と比較して、著しく改善された安定性を示すことである。換言すれば、本開示による溶解性固体物品は、感湿活性成分の貯蔵のためのより良好な環境を提供する。
【0017】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、漂白剤(例えば、有効酸素源及び漂白活性化剤)のための申し分のない担体を提供し得ることである。特に、溶解性固体物品中の有効酸素源及び漂白活性化剤は、水又は水分と偶発的に接触するときにそれらの間の早期反応を防止するために、物理的に別個の様式で存在し得る。より具体的には、溶解性固体物品は、改善された溶解速度を有する多層構造に形成され得、有効酸素源及び漂白活性化剤が2つの隣接する層間に別々に塗布され得る(すなわち、有効酸素源は2つの隣接する層間に塗布され、漂白活性化剤は別の2つの隣接する層間に塗布される)。
【0018】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、優れた抗微生物効果を達成し得ることである。特に、本開示による溶解性固体物品は、布地又は硬質表面(例えば、ガラス、木材、金属、セラミックなど)から微生物を著しく除去することができる。本開示の文脈において、微生物を除去することは、微生物を殺傷、失活、排除、及び/又は洗浄することを含むが、これらに限定されない。
【0019】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、優れた悪臭防止又は低減を達成し得ることである。
【0020】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の発明を実施するための形態を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための対流式加熱/乾燥構成を示す。
図2】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するためのマイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。
図3】連続プロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。
図4】本発明の一実施形態による、バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性シートを作製するための底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。
図5】本発明の別の実施形態による、連続プロセスにおける別の可撓性多孔質溶解性シートを作製するための回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。
図6A】回転ドラム式加熱/乾燥構成を採用するプロセスによって作製された、布地ケア活性物質を含有する可撓性多孔質溶解性シートの上面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopic、SEM)画像を示す。
図6B図6Aに示されるシートと同じ布地ケア活性物質を含有するが、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を採用するプロセスによって作製された、代替的な可撓性多孔質溶解性シートの上面のSEM画像を示す。
図7A】本開示による複数の可撓性多孔質シートを有し、漂白剤を含むコーティング組成物が2つの隣接するシート間に塗布される、溶解性固体物品の実施形態の例示的な図を示す。
図7B】本開示による複数の可撓性多孔質シートを有し、有効酸素源を含む第1のコーティング組成物が2つの隣接するシート間に塗布され、漂白活性化剤を含む第2のコーティング組成物が別の2つの隣接するシート間に塗布される、溶解性固体物品の別の実施形態の例示的な図を示す。
図7C】本開示による複数の可撓性多孔質シートを有し、固体物品が、第1のシート群と、第2のシート群と、第1のシート群内の2つの隣接するシート間に塗布される有効酸素源を含むコーティング組成物と、を含む、溶解性固体物品の別の実施形態の例示的な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.定義
本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、物品が、その長手方向に垂直な中心線に沿って90°で曲げられた場合に、破損することなく、又は著しい破壊を伴わずに、応力に耐える物品の能力を意味する。好ましくは、このような物品は、顕著な弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率によって特徴付けられる。
【0023】
本明細書で使用するとき、「溶解性」という用語は、20℃で、かつ大気圧下で、全く撹拌せずに8時間以内に、十分な量の脱イオン水中に完全に又は実質的に溶解して、不溶残留物の残留が5重量%未満である、物品の能力を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「固体」という用語は、物品が制限されずかつ外力が物品に加えられていない場合に、20℃で、かつ大気圧下で、その形状を実質的に保持する(即ち、その形状においていかなる可視変化もない)、物品の能力を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、「シート」という用語は、三次元形状、即ち、厚さ、長さ、及び幅を有する非繊維状構造体を指すが、一方で、長さ対厚さのアスペクト比及び幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約5:1であり、長さ対幅の比は、少なくとも約1:1である。好ましくは、この長さ対厚さのアスペクト比及びこの幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約15:1、最も好ましくは少なくとも約20:1であり、またこの長さ対幅のアスペクト比は、好ましくは少なくとも約1.2:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、最も好ましくは少なくとも約1.618:1である。
【0026】
本明細書で使用するとき、隣接するシートの「接触面」という用語は、隣接するシートが積層体に配置されたときに互いに接触し、それぞれが2つの隣接するシートに由来する、2つの面を指す。例えば、接触面は、2つの隣接するシートが垂直に積層体として配置されている場合の上部シートの下面及び下部シートの上面であり得る。
【0027】
本明細書で使用するとき、「底面」という用語は、通気された湿潤プレミックスのシートが乾燥工程中に配置される支持面に直に接触する、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートの表面を指し、一方、「上面」という用語は、底面とは反対側の当該シートの表面を指す。更に、このような固体シートは、その厚さに沿って、その上面に隣接する上部領域、その底面に隣接する底部領域、及び上部領域と底部領域との間に位置する中間領域を含む3つの領域に分割することができる。上部領域、中間領域、及び底部領域は、厚さが等しく、すなわち、各々が、シートの全厚の約1/3の厚さを有する。
【0028】
本明細書で使用するとき、「最外部シート」という用語は、本発明の多層溶解性固体物品において1つのシートのみに隣接するシートを指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」という用語は、気体、典型的には気体(空気など)を含有し、乾燥プロセス中に発泡構造が崩壊せずに、それにより物理的強度及び固体の凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体相互結合ポリマー含有マトリックスを指す。構造体の相互結合性は、以下に開示される試験3によって測定される連続気泡含有パーセントによって説明され得る。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」とは、目に見える固体を残さずに、又は目に見える分離相を形成せずに、水に完全に溶解する又は分散する、サンプル材料の能力であって、20℃で、かつ大気圧下で、十分な撹拌を伴って、少なくとも約25グラム、好ましくは少なくとも約50グラム、より好ましくは少なくとも約100グラム、最も好ましくは少なくとも約200グラムのそのような材料を1リットル(1L)の脱イオン水中に入れた場合における、能力を指す。
【0031】
本明細書で使用するとき、「通気させる」、「通気させること」、又は「通気」という用語は、機械的及び/又は化学的手段によって液体又はペースト状組成物に気体を導入するプロセスを指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、「加熱方向」という用語は、熱源が物品に熱エネルギーを印加する方向であって、その結果、そのような物品の一方の側から他方の側まで低下する、そのような物品における温度勾配をもたらす方向を指す。例えば、物品の一方の側に位置する熱源が、物品に熱エネルギーを印加して、一方の側から反対側まで減少する温度勾配を発生させる場合、加熱方向は、その後、一方の側から反対側に延在すると見なされる。このような物品の両側又はこのような物品の異なる部分が、そのような物品にわたって観察可能な温度勾配を伴わずに同時に加熱され、その後、加熱は非方向的な様式で行われ、加熱方向は存在しない。
【0033】
本明細書で使用するとき、「実質的に反対側」又は「実質的にオフセットしている」という用語は、それらの間に90°以上のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、「実質的に整列された」又は「実質的な整列」という用語は、それらの間に90°未満のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「一次熱源」という用語は、物体によって吸収される総熱エネルギー(例えば、本発明による通気された湿潤プレミックスのシート)の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超を提供する熱源を指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、「制御された表面温度」という用語は、比較的安定した、すなわち、+/-20%未満の変動、好ましくは+/-10%未満の変動、より好ましくは+/-5%未満の変動を有する表面温度を指す。
【0037】
「本質的に含まない(essentially free of)」又は「本質的に含まない(essentially free from)」)という用語は、示される物質が極めて少量であり、組成物又は製品に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは、そのような組成物又は製品中に分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。示される物質がかかる組成物又は製品に意図的に添加された物質のうちの1つ以上の不純物としてのみ存在するような組成物又は製品が含まれ得る。
【0038】
II.固体シートを作製するためのプロセスの概要
国際公開第2010077627号は、溶解を改善するように機能する約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(OCF)構造を有する多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。具体的には、最初に原材料のプレミックスを形成し、これを激しく通気し、次いでバッチ(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成する。このようなOCF構造は、結果として得られる多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、そのようなシート内には、より厚い気泡壁を有する、視覚的により高密度で、より多孔性の低い底部領域が依然として存在する。このような高密度の底部領域は、シートを通る水の流れに悪影響を及ぼし、それによってシートの全体的な溶解速度に悪影響を及ぼし得る。複数のこのようなシートを一緒に積層して多層構造を形成すると、複数の高密度底部領域の「バリア」効果が特に増強される。
【0039】
国際公開第2012138820号は、通気された湿潤プレミックスの連続乾燥を、例えば、衝突オーブン(対流式オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)を使用することによって達成することを除いては、国際公開第2010077627号のものと同様のプロセスを開示している。このような連続乾燥プロセスによって形成されるOCFシートは、その異なる領域にわたる、改善された細孔構造内の均一性/一貫性によって特徴付けられる。残念ながら、そのようなOCFシートには、比較的小さい細孔開口を有する上面及び比較的小さい細孔を有する上部領域(すなわち、クラスト状の上部領域)などの律速因子が依然として存在し、これは、内部を通過する水の流れに悪影響を及ぼし、その溶解を減速させる可能性がある。
【0040】
上述のプロセスにおける乾燥工程中に、OCF構造は、水蒸発、気泡崩壊、薄膜気泡表面から気泡間のプラトー境界内への介在液体排出(気泡間の開口部を生成して連続気泡を形成する)、及びプレミックスの固化といった同時的な機構の下で形成される。様々な処理条件が、例えば、湿潤プレミックス中の固体含有量、湿潤プレミックスの粘度、重力、及び乾燥温度などのこれらの機構、並びに制御された排液を達成して所望のOCF構造を形成するようにかかる処理条件を均衡化させる必要性に影響し得る。
【0041】
上述の処理条件に加えて、乾燥工程中に使用される熱エネルギーの方向(すなわち、加熱方向)も、得られるOCF構造に顕著な影響を及ぼし得るということは、本発明の発明者らによる驚くべきかつ予想外の発見であった。
【0042】
例えば、乾燥工程中に熱エネルギーが非方向性物質(すなわち、はっきりとした加熱方向がない)に適用される場合、又は乾燥工程の大部分にわたって加熱方向が重力方向と実質的に整列している場合(すなわち、それらの間のオフセット角度が90°未満である場合)、得られる可撓性多孔質溶解性固体シートは、より小さい細孔開口を有しかつその厚さにわたる方向に沿った異なる領域においてより大きな孔径変動を有する上面を有する傾向がある。対照的に、乾燥工程の大部分にわたって、加熱方向が重力方向からオフセットしているとき(すなわち、それらの間に90°以上のオフセット角度で)、得られる固体シートは、より大きい細孔開口を有しかつそのようなシートの厚さにわたる方向に沿った異なる領域において減少した孔径変動を有する上面を有し得る。それに対応して、後者のシートは、そこを流れる水に対して受容性が高く、したがって、前者のシートよりも溶解性が高い。
【0043】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、乾燥工程中の加熱方向と重力方向との間の整列又は誤整列、及びその持続時間は、気泡間の介在液体排出にかなり影響し、これに対応して、固化プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口に影響を及ぼし、非常に異なるOCF構造を有する固体シートをもたらし得ると考えられる。このような違いは、以下の図1図4により明確に示される。
【0044】
図1は、対流式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、成形型10(金属、セラミック、又はTeflon(登録商標)などの任意の好適な材料で作製され得る)を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面12A(すなわち、上部面)と、対向する第2の面12B(すなわち、成形型10の支持面と直接接触しているので底部面)と、を有する、シート12を形成する。このような成形型10を、乾燥工程中に約45~46分間130℃の対流式オーブン内に配置する。対流式オーブンは、シート12を上方から、すなわち、下向きの加熱方向(クロスハッチングの矢印で示されるように)に沿って加熱し、これは、シート12内に第1の面12Aから対向する第2の面12Bまで低下する温度勾配を形成する。下向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるように)と整列し、そのような整列位置は、乾燥時間全体にわたって維持される。乾燥中、重力は液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する一方で、下向きの加熱方向は、上部領域を最初に乾燥させ、底部領域を最後に乾燥させる。その結果、多孔質固体シートが、完全に膨張する可能性を有していなかった気泡によって形成された小さな開口部を有する多数の細孔を含む上面を有して形成される。より小さい細孔開口を有するこのような上面は、シートへの水の浸入に最適ではなく、これは、シートの溶解速度を制限し得る。一方、このようなシートの底部領域は、密度が高くかつ多孔性が低く、完全に膨張した気泡によって形成されるが数の非常に少ないより大きな細孔を有しており、そのような底部領域内の細孔間の気泡壁は、重力によってもたらされる下向きの液体排出を起因として厚い。より少ない細孔及び厚い気泡壁を有するこのような高密度の底部領域は、シートの全体的な溶解速度に対して更なる律速因子である。
【0045】
図2は、マイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、成形型30を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面32A(上部面)と、対向する第2の面32B(底部面)と、を有するシート32を形成する。次いで、このような成形型30を、Industrial Microwave System Inc.(North Carolina)によって提供される低エネルギー密度マイクロ波アプリケータ(図示せず)内に配置し、2.0kWの電力、1フィート/分のベルト速度、及び54.4℃の周囲空気温度で動作させる。成形型30を、乾燥工程中、約12分間、このようなマイクロ波アプリケーション下に放置する。このようなマイクロ波アプリケータは、はっきりとした又は一貫した加熱方向を伴わずに、シート32を内部から加熱する。それに対応して、当該シート32には、温度勾配が形成されない。乾燥中、シート32全体を同時に加熱するか、又はほぼ同時に加熱するが、重力(白い矢印によって示されるように)は、依然として底部領域に向かって液体プレミックスを下向きに排出する。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、マイクロ波式の乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、シート32全体の同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。更に、マイクロ波エネルギーは、シート32内の水を加熱し、そのような水を沸騰させ、不規則な大きさの気泡を発生させ、厚い気泡壁を有する意図しない高密度領域を形成し得る。
【0046】
図3は、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、成形型40を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面42A(上部面)と、対向する第2の面42B(底部面)と、を有するシート42を形成する。次いで、このような成形型40を、国際公開第2012138820号の実施例1、表2に記載されているものと同様の条件下で、連続衝突オーブン(図示せず)内に配置する。このような連続衝突オーブンは、対向するかつオフセットする加熱方向(2つのクロスハッチングの矢印によって示されるように)で、上部及び底部の両方からシート42を加熱する。それに対応して、乾燥中にシート42内には、はっきりとした温度勾配は形成されず、シート42全体が、その上面及び底面の両方からほぼ同時に加熱される。図3に記載のマイクロ波式加熱/乾燥構成と同様に、重力(白い矢印によって示されるように)は、図4のこのような衝突オーブン式加熱/乾燥構成において、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出し続ける。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、その両方向からのシート42のほぼ同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。
【0047】
上述の加熱/乾燥構成(対流式、マイクロ波式又は衝突オーブン式)とは対照的に、本発明は、加熱の方向が、底部領域に向かう重力によって生じる液体の排液を妨害/低減するように(これにより、底部領域における密度を低減し、細孔構造を改善する)、かつ乾燥中に上面付近の気泡が膨張するためにより多くの時間をかけることを可能にするように(これにより、結果として得られるシートの上面にかなり大きな細孔開口を形成する)ように意図的に構成されている、通気された湿潤プレミックスを乾燥させるための加熱/乾燥構成を提供する。これらの両特徴は、シートの全体的な溶解速度を改善するために機能し、したがって望ましい。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態による、可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。具体的には成形型50を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面52A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面52B(すなわち、上部面)と、を有するシート52を形成する。このような成形型50を、乾燥工程中、加熱された表面(図示せず)上、例えば、約125~130℃の制御された表面温度を有する予め加熱されたペルチェプレート上に、約30分間配置する。熱は、成形型50の底部における加熱された表面からその成形型を通って伝導し、シート52を下方から、すなわち、上向きの加熱方向(クロスハッチングの矢印によって示されるように)に沿って加熱し、これは、シート52内に第1の面52A(底部面)から対向する第2の面52B(上部面)まで低下する温度勾配を形成する。このような上向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるように)と反対であり、乾燥時間全体にわたってそのように維持される(すなわち、加熱方向は、乾燥時間のほぼ100%の重力方向とは反対である)。乾燥中、重力は依然として、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する。しかしながら、上向きの加熱方向は、シートを下から上に乾燥させ、底部領域での熱により発生した水蒸気が、上向きに上昇して固化マトリックスから逃れるため、底部領域に向かう下向きの液体排出は、固化マトリックス及び上昇水蒸気によって著しく制限され、「妨害」/低減される。それに対応して、得られる乾燥シートの底部領域は密度が低く、比較的薄い気泡壁を有する多数の細孔を含む。更に、上部領域は、このプロセス中に乾燥される最後の領域であるため、上部領域内の気泡は、膨張するのに十分な時間を有して、得られるシートの上面にかなり大きな開いた細孔を形成し、これは、シートへの水の進入を促進するのに特に有効である。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0049】
図5は、本発明の別の実施形態による、可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。具体的には、供給トラフ60を、通気された湿潤プレミックス61で充填する。加熱された回転可能なシリンダ70(ドラム乾燥機とも称される)を、供給トラフ60の上方に配置する。加熱されたドラム乾燥機70は、約130℃の制御された表面温度によって特徴付けられる円筒状の加熱された外面を有し、これは、時計回り方向(矢印を有する細い曲線によって示されるように)に沿って回転して、供給トラフ60から通気された湿潤プレミックス61を拾い出す。通気された湿潤プレミックス61は、ドラム乾燥機70の円筒状の加熱された外面上に薄いシート62を形成し、通気された湿潤プレミックスのそのようなシート62は、約10~15分間回転されて乾燥させられる。このように形成されたシート62の一貫した厚さを確保するために、通気された湿潤プレミックス61の粘度並びにドラム乾燥機70の回転速度及び表面温度を単に調節することによって、シート62の厚さを制御することが可能であるが、レベリング刃(図示せず)をスラリー拾い出し位置付近に配置してもよい。乾燥されると、シート62は、ドラム回転の終わりに手動で又はスクレーパ72によって拾い出され得る。
【0050】
図5に示すように、通気された湿潤プレミックス61によって形成されたシート62は、加熱されたドラム乾燥機70の加熱された外面に直接接触する第1の面62A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面62B(すなわち、上部面)と、を含む。それに対応して、ドラム乾燥機70からの熱は、外向きの加熱方向に沿ってシート62に伝導し、シート62の第1の面62A(底部面)を最初に加熱し、次いで、対向する第2の面62B(上部面)を加熱する。このような外向きの加熱方向は、シート62内に第1の面62A(底部面)から対向する第2の面62B(上部面)まで低下する温度勾配を形成する。外向きの加熱方向は、非常にはっきりとしたかつ予想可能な経路(図5の複数の外向きに延びたクロスハッチングの矢印によって示されるように)に沿って、ドラム乾燥機70が回転するにつれて、ゆっくりとかつ常に変化する。外向きの加熱方向及び重力方向(白い矢印によって示されるような)の相対的な位置もまた、同様のはっきりとしたかつ予測可能な様式で減速及び常時変化する。乾燥時間の半分未満の間(すなわち、加熱方向が水平の破線の下にあるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°未満のオフセット角度となって重力方向と実質的に整列される。乾燥時間の大部分の間(すなわち、加熱方向が水平の破線と同一であるか、又はそれを超えるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°以上のオフセット角度となって重力方向と反対又は実質的に反対になる。シート62の初期の「開始」コーティング位置に応じて、加熱方向は、乾燥時間の55%超(コーティングがドラム乾燥機70のちょうど底部で始まる場合)、好ましくは乾燥時間の60%超(コーティングが図5に示されるようにドラム乾燥機70のより高い位置で開始する場合)にわたって、重力方向と反対又は実質的に反対になることができる。結果的に、乾燥工程の大部分の間、回転ドラム式加熱/乾燥構成でのこのゆっくりとした回転及び加熱方向の変化は、重力によって引き起こされるシート62内の液体排出を制限及び「妨害」/低減するように依然として機能することができ、その結果、そのように形成されたシートにおけるOCF構造の改善をもたらす。加熱されたドラム乾燥機70によって乾燥されることで得られるシートはまた、多数のより均一なサイズの細孔を有する低密度の底部領域と、比較的大きい細孔開口を有する上面と、によって特徴付けられる。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0051】
上述したように所望の加熱方向(すなわち、重力方向に対して実質的にオフセットされた関係)を採用することに加えて、本発明による、得られるシートにおける最適なOCF構造を達成するために、湿潤プレミックスの粘度及び/又は固体含有量、通気の量及び速度(通気されたプレミックス中の気泡サイズ及び量に影響を及ぼし、それに対応して、固化したシートの孔径/分布/量/特性に影響を及ぼし得る、空気供給ポンプ速度、混合ヘッド速度、空気流量、通気されたプレミックスの密度など)、乾燥温度及び乾燥時間を慎重に調整することが望ましい場合もあり、更に重要であり得る。
【0052】
本発明による可撓性多孔質溶解性シートを作製するためのプロセス、並びにそのようなシートの物理的及び化学的特性のより詳細な説明を、確保したセクションにて提供する。
【0053】
III.固体シートの作製プロセス
本発明は、(a)水又は好適な溶媒中に溶解又は分散された原材料(例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤などの活性成分、及び任意選択的に可塑剤)を含有する、約40℃及び1s-1で測定した約1,000cps~約25,000cpsの粘度によって特徴付けられるプレミックスを形成する工程と、(b)当該プレミックスを(例えば、湿潤スラリーにガスを導入することによって)通気して、通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、(c)当該通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、(d)当該形成されたシートを、当該形成されたシートの第1の面から第2の面まで低下する温度勾配を形成する加熱方向に沿って、1分~60分の乾燥時間にわたって70℃~200℃の温度で乾燥させる工程であって、加熱方向は、乾燥時間の半分を超えて重力方向から実質的にオフセットされ、すなわち、主に「抗重力」加熱方向に沿った加熱下で実施される、工程と、を含む可撓性多孔質溶解性シートを作製するための新しくかつ改善された方法を提供する。このような主に「抗重力」加熱方向は、これらに限定されないが、図4及び図5にそれぞれ示したような、底部伝導式加熱/乾燥構成及び回転ドラム式加熱/乾燥構成を含む、様々な手段によって達成することができる。
【0054】
工程(A):湿潤プレミックスの調製
本発明の湿潤プレミックスは、概して、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び/又は他の有益剤、任意選択的な可塑剤、及び他の任意選択的な成分を含む、対象の固体を、プレミックスタンク内の十分な量の水又は別の溶媒と混合することによって調製される。湿潤プレミックスは、メカニカルミキサーを使用して形成することができる。本明細書で有用なメカニカルミキサーには、ピッチ翼を有するタービン、又はMAXBLENDミキサー(Sumitomo Heavy Industries)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明において、40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps~約25,000cpsの所定の範囲内にあるように、湿潤プレミックスの粘度を調節することが特に重要である。湿潤プレミックスの粘度は、後続の乾燥工程中に通気されたプレミックスの細孔膨張及び細孔開口に著しい影響を及ぼし得、異なる粘度を有する湿潤プレミックスは、非常に異なる発泡構造体の可撓性多孔質溶解性固体シートを形成し得る。一方、湿潤プレミックスが厚すぎる/粘性が高すぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定されるときに約25,000cps超の粘度を有する)場合、このような湿潤プレミックスの通気はより困難になり得る。より重要なことに、後続の乾燥工程中の薄膜気泡面から三次元発泡体のプラトー境界内への介在液体排出は、悪影響を受け得るか、又は著しく制限され得る。乾燥中の介在液体排出は、後続の乾燥工程中に通気された湿潤プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口を可能にするために重要であると考えられる。その結果、そのように形成された可撓性多孔質溶解性固体シートは、著しく小さい細孔及び細孔間のより低い相互結合性(すなわち、開いた細孔よりも「閉じた」細孔の方が多い)を有してもよく、これにより、水がそのようなシートの中へ進入し、そこから退出することを困難にする。一方、湿潤プレミックスが薄すぎる/延びすぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定されるときに約1,000cps未満の粘度を有する)場合、通気された湿潤プレミックスは十分に安定でない場合があり、すなわち、気泡は、通気後及び乾燥前に湿潤プレミックス中で迅速に破裂、崩壊、又は合体し得る。結果として、得られる固体シートは、所望のものに比べて、はるかに多孔性が低く、より高密度であり得る。
【0056】
一実施形態では、湿潤プレミックスの粘度は、40℃及び1秒-1で測定したときに約3,000cps~約24,000cps、好ましくは約5,000cps~約23,000cps、より好ましくは約10,000cps~約20,000cpsの範囲である。プレミックスの粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、ギャップ幅0.054mm、温度40℃、及び剪断速度1.0レシプロカル秒で360秒間測定する。
【0057】
工程(B):湿潤プレミックスの通気
湿潤プレミックスの通気は、引き続き乾燥時に内部にOCF構造を形成するために十分な量の気泡を湿潤プレミックスに導入するために実施される。十分に通気された後、湿潤プレミックスは、非通気の湿潤プレミックス(不注意に閉じ込められた気泡をわずかに含んでもよい)又は不十分に通気された湿潤プレミックス(気泡をいくらか含有し得るが、非常に低い体積割合で及びかなり大きい気泡サイズのものを含んでもよい)の密度より著しく低い密度によって特徴付けられる。好ましくは、通気された湿潤プレミックスは、約0.05g/mL~約0.8g/mL、好ましくは約0.1g/mL~約0.75g/mL、より好ましくは約0.15g/mL~約0.7g/mL、更により好ましくは約0.2g/mL~約0.6g/mL、最も好ましくは約0.25g/mL~約0.5g/mLの範囲の密度を有する。
【0058】
通気は、本発明における物理的又は化学的手段のいずれかによって達成することができる。一実施形態では、それは、例えば、ロータステータミキサー、プラネタリミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スバージャ、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な機械的処理手段を使用することによって、機械的撹拌を通して湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成することができる。別の実施形態では、それは、化学的手段を通して、例えば、発泡系による二酸化炭素(COガス)の形成を含む1つ以上の成分の化学反応を介してインサイチュでガス形成を提供するために化学的発泡剤を使用して達成することができる。
【0059】
特に好ましい実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、マシュマロの製造において食品業界で従来利用されている連続加圧エアレータ又はミキサーを使用することによって、コスト効果的に達成され得ることがわかっている。連続加圧ミキサーは、湿潤プレミックスを均質化する又は通気するように働き、均一な気泡サイズを有する、高度に均一かつ安定した発泡構造物を生じさせ得る。高剪断ロータ/ステータの撹拌ヘッドの固有の設計は、連続気泡発泡体の層において均一な気泡サイズをもたらすことができる。好適な連続加圧エアレータ又はミキサーとしては、Morton泡たて器(Morton Machine Co.,Motherwell,Scotland)、Oakes連続自動ミキサー(E.T.Oakes Corporation,Hauppauge,New York)、Fedco連続ミキサー(Peerless Group,Sidney,Ohio)、Mondo(Haas-Mondomix B.V.,Netherlands)、Aeros(Aeros Industrial Equipment Co.,Ltd.,Guangdong Province,China)、及びPreswhip(Hosokawa Micron Group,Osaka,Japan)が挙げられる。例えば、Aeros A20連続エアレータは、約300~800(好ましくは約400~600)の混合ヘッド速度設定を伴う約300~800(好ましくは約500~700)の供給ポンプ速度設定で、それぞれ約50~150(好ましくは60~130、より好ましくは80~120)の空気流量で動作させることができる。別の例では、Oakes連続自動ミキサーは、約10~30rpm(好ましくは約15~25rpm、より好ましくは約20rpm)の混合ヘッド速度設定で、約10~30リットル/時間(好ましくは約15~25L/時、より好ましくは約19~20L/時間)の空気流量で動作させることができる。
【0060】
別の特定の実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、回転ドラム乾燥機の一部である回転バー、より具体的には、湿潤プレミックスがドラム乾燥機の加熱された外面上にコーティングされて乾燥される前に貯蔵される供給トラフの構成要素を使用することによって達成することができる。回転バーは、典型的には、ドラム乾燥機の加熱された回転ドラム上にコーティングされる前の待機時間中に、湿潤プレミックスを撹拌して、供給トラフ内の相分離又は沈降を防止するために使用される。本発明では、このような回転バーを、約150~約500rpm、好ましくは約200~約400rpm、より好ましくは約250~約350rpmの範囲の回転速度で動作させて、湿潤プレミックスを空気界面で混合し、湿潤プレミックスの所望の通気を達成するのに必要な十分な機械的撹拌を提供することが可能である。
【0061】
上述したように、湿潤プレミックスは、通気プロセス中に高温に維持されて、乾燥中の最適化された通気及び制御された排水のために湿潤プレミックスの粘度を調整することができる。例えば、通気が回転ドラムの回転バーを使用することによって達成されるとき、供給トラフ内の通気された湿潤プレミックスは、典型的には、回転バーによる初期通気中(回転ドラムが静止している間)、約60℃に維持され、次いで、回転ドラムが加熱されて回転を開始するときに約70℃まで加熱される。
【0062】
通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、得られる固体シートのOCF構造内で均一な層を達成するのを助ける。一実施形態では、通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、約5~約100マイクロメートルであり、別の実施形態では、気泡サイズは、約20マイクロメートル~約80マイクロメートルである。気泡サイズの均一性により、得られる固体シートは、一貫した密度を有する。
【0063】
工程(C):シート形成
十分な通気後、通気された湿潤プレミックスは、対向する第1の面及び第2の面を有する1つ以上のシートを形成する。シート形成工程は、例えば、押出成形、キャスト、成型、真空成形、プレス、印刷、コーティングなどによって、任意の好適な様式で実施することができる。より具体的には、通気された湿潤プレミックスは、(i)それを浅いキャビティ若しくはトレー又は特別に設計されたシート型にキャストすることと、(ii)それを乾燥機の連続ベルト又はスクリーン上に押出成形することと、(iii)それを回転ドラム乾燥機の外面上にコーティングすることと、を行うことによってシートに形成することができる。好ましくは、シートが形成される支持面は、金属(例えば、鋼、クロムなど)、TEFLON(登録商標)、ポリカーボネート、NEOPRENE(登録商標)、HDPE、LDPE、ゴム、ガラスなどの、防食で非相互作用及び/又は非粘着性の材料によって形成されるか、又はコーティングされる。
【0064】
好ましくは、通気された湿潤プレミックスの形成されたシートは、0.5mm~4mm、好ましくは0.6mm~3.5mm、より好ましくは0.7mm~3mm、更により好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは0.9mm~1.5mmの範囲の厚さを有する。通気された湿潤プレミックスのそのような形成されたシートの厚さを制御することは、得られる固体シートが所望のOCF構造を有することを確実にするために重要となり得る。形成されたシートが薄すぎる(例えば、厚さが0.5mm未満)場合、通気された湿潤プレミックス中に閉じ込められた気泡の多くが後続の乾燥工程中に膨張して、得られる固体シートの厚さ全体を通って延在する貫通孔を形成する。このような貫通孔は、多すぎる場合、シートの全体的な構造的完全性及び美的外観の両方を著しく損なう場合がある。形成されたシートが厚すぎる場合には、乾燥のためにより長い時間がかかるだけでなく、その厚さに沿って異なる領域(例えば、上部領域、中間領域、及び底部領域)間のより大きな孔径の変動を有する固体シートをもたらすことになる。なぜならば、乾燥時間が長いほど、気泡の破裂/崩壊/合体、液体排出、細孔膨張、細孔開口、水蒸発などによって、より不均衡な力が生じる場合があるからである。更に、比較的薄いシートの多数の層を、所望の洗浄効果又は他の効果をもたらすために、より大きな厚さの三次元構造に組み立てることができ、一方で、迅速に溶解するために十分な細孔構造を提供すると共に、比較的短い乾燥時間内で効率的な乾燥を確実にすることができる。
【0065】
工程(D):抗重力加熱下での乾燥
本発明の重要な特徴は、乾燥時間全体にわたって、又は少なくとも乾燥時間の半分超にわたって、乾燥工程中に抗重力加熱方向を使用することである。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このような抗重力加熱方向は、乾燥工程中に形成されたシートの底部領域に向かう過度の介在液体排出を低減又は妨害することができると考えられる。更に、上面が最後に乾燥されるので、形成されたシートの上面付近の気泡を膨張させ、上面に細孔開口を形成するのにより長い時間を可能にする(湿潤マトリックスが乾燥されると、気泡はもはや膨張しないか、又は表面開口を形成することができないため)。その結果、このような抗重力加熱による乾燥によって形成される固体シートは、より迅速な溶解、及び他の驚くべきかつ予想外の効果を可能にする、改善されたOCF構造によって特徴付けられる。
【0066】
特定の実施形態では、抗重力加熱方向を、図4に示すものと同じ又は類似の伝導式加熱/乾燥構成によって提供する。例えば、通気された湿潤プレミックスは、2つの対向する面を有するシートを形成するために、成形型にキャストされることができる。次いで、成形型を、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度によって特徴付けられる平面状の加熱された表面を有する、ホットプレート又は加熱された移動ベルト又は任意の他の好適な加熱装置上に置くことができる。平面状の加熱された表面から、通気された湿潤プレミックスのシートの底面まで伝導によって熱エネルギーが伝達されることによって、シートの固化は底部領域から始まり、最後に上部領域に到達するように上向きに徐々に移動する。このプロセス中に加熱方向が主に抗重力(すなわち、重力方向から実質的にオフセットしている)であることを確実にするために、加熱された表面は、乾燥中のシートの一次熱源であることが好ましい。任意の他の加熱源が存在する場合、全体的な加熱方向は適宜変化してもよい。より好ましくは、加熱された表面は、乾燥中のシートの唯一の熱源である。
【0067】
別の特定の実施形態では、抗重力加熱方向を、図5に示すものと類似した、ドラム乾燥又はローラ乾燥とも称される回転ドラム式加熱/乾燥構成によって提供する。ドラム乾燥は、比較的低温で、加熱された回転可能なドラム(ローラ又はシリンダとも称される)の外面上の原材料の粘性プレミックスから液体を乾燥させてシート状物品を形成するために使用される接触乾燥方法の1種である。これは、大量の乾燥に特に好適な連続乾燥プロセスである。乾燥は、接触加熱/乾燥を介して比較的低温で実施されるため、通常は高いエネルギー効率を有し、原材料の組成的一体性に悪影響を及ぼさない。
【0068】
ドラム乾燥に使用される加熱された回転可能なシリンダは、例えば蒸気又は電気によって内部で加熱され、所定の回転速度でベースブラケットに取り付けられた電動駆動装置によって回転される。加熱された回転可能なシリンダ又はドラムは、約0.5メートル~約10メートル、好ましくは約1メートル~約5メートル、より好ましくは約1.5メートル~約2メートルの範囲の外径を有することが好ましい。それは、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度を有してもよい。更に、このような加熱された回転可能なシリンダは、約0.005rpm~約0.25rpm、好ましくは約0.05rpm~約0.2rpm、より好ましくは約0.1rpm~約0.18rpmの速度で回転する。
【0069】
本発明における総乾燥時間は、湿潤プレミックス中の配合物量及び固体含有量、乾燥温度、熱エネルギー流量、及び乾燥されるシート材料の厚さに依存する。好ましくは、乾燥時間は、約1分~約60分、好ましくは約2分~約30分、より好ましくは約2~約15分、更により好ましくは約2~約10分、最も好ましくは約2~約5分である。
【0070】
このような乾燥時間中、加熱方向は、乾燥時間の半分超、好ましくは乾燥時間の55%又は60%超(例えば、上述の回転ドラム式加熱/乾燥構成におけるもののように)、より好ましくは乾燥時間の75%超又は更には100%(例えば、上述の底部伝導式加熱/乾燥構成におけるもののように)にわたって重力方向とは実質的に反対となるように配置される。更に、通気された湿潤プレミックスのシートは、第1の加熱方向の下で第1の持続時間にわたって乾燥され、次いで第2の反対側の加熱方向の下で第2の持続時間にわたって乾燥させることができ、第1の加熱方向は、重力方向とは実質的に反対であり、第1の持続時間は、全乾燥時間の51%~99%(例えば、55%、60%、65%、70%~80%、85%、90%、又は95%)のいずれかにある。このような加熱方向の変化は、例えば、長手方向中心軸に沿って回転することができる蛇行形状の細長い加熱ベルトによって、本明細書に図示されていない様々な他の構成によって容易に達成することができる。
【0071】
IV.固体シートの物理的特性
上述の処理工程によって形成された可撓性多孔質可溶性固体シートは、シートへのより容易な水の進入、及び水中におけるシートのより速い溶解を可能にする、改善された細孔構造によって特徴付けられる。このような改善された細孔構造は、主に上述のような様々な処理条件を調節することによって達成され、それらは、比較的独立しているか、又は化学的配合物若しくはそのようなシートの作製に使用される特定の成分によって影響を受けない。
【0072】
一般に、このような固体シートは、(i)以下の試験3によって測定される、約80%~100%、好ましくは約85%~100%、より好ましくは約90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)以下の試験2に記載のMicro-CT法によって測定される、約100μm~約2000μm、好ましくは約150μm~約1000μm、より好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径によって特徴付けられ得る。全体平均孔径は、本発明のOCF構造の多孔度を定義する。連続気泡含有パーセントは、本発明のOCF構造中の細孔間の相互結合性を定義する。OCF構造の相互結合性はまた、国際公開第2010077627号及び同第2012138820号に開示されている星形体積又は構造モデル指数(Structure Model Index、SMI)によっても説明され得る。
【0073】
本発明のこのような固体シートは、対向する上面及び底面を有し、その上面は、以下の試験1に記載のSEM法によって測定される、約100μm超、好ましくは約110μm超、好ましくは約120μm超、より好ましくは約130μm超、最も好ましくは約150μm超の表面平均細孔直径によって特徴付けられてもよい。従来の加熱/乾燥構成(例えば、対流式、マイクロ波式又は衝突オーブン式構成)によって形成された固体シートと比較すると、本発明の改善された加熱/乾燥構成によって形成される固体シートは、その上面での表面平均孔直径が有意に大きい(図6A図6Bに示され、これらは後述の実施例1で詳しく説明される)。これは、特異的に準備された本発明の指向性加熱の下では、通気された湿潤プレミックスの形成されたシートの上面が、最後に乾燥/固化し、上面付近の気泡は、最も長い時間をかけて膨張し、上面により大きな細孔開口を形成することができるからである。
【0074】
また更に、本発明の改善された加熱/乾燥(例えば、回転ドラム式加熱/乾燥)構成によって形成される固体シートは、他の加熱/乾燥構成(例えば、衝突オーブン式)によって形成されたシートと比較して、その厚さ方向に沿った異なる領域間のより均一な孔径分布によって特徴付けられる。具体的には、本発明の固体シートは、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域と、を含み、上部領域、中間領域、及び底部領域は全て同じ厚さを有する。このような固体シートの上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられるが、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率(すなわち、底部対上部平均孔径比)は、約0.6~約1.5、好ましくは約0.7~約1.4、好ましくは約0.8~約1.3、より好ましくは約1~約1.2である。比較すると、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下の実施例1に示すように)1.5超、典型的には約1.7~2.2の底部対上部平均孔径比を有し得る。また、本発明の固体シートは、約0.5~約1.5、好ましくは約0.6~約1.3、より好ましくは約0.8~約1.2、最も好ましくは約0.9~約1.1の底部対中間平均孔径比、並びに約1~約1.5、好ましくは約1~約1.4、より好ましくは約1~約1.2の中間対上部平均孔径比によって特徴付けられてもよい。
【0075】
また更に、本発明の固体シートの上部領域、中間領域、及び底部領域における平均孔径間の相対標準偏差(relative standard deviation、RSTD)は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。対照的に、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下、実施例1に示されるように)20%超、恐らく25%超、又は更には35%超の上部/中間/底部平均孔径間のRSTDを有し得る。
【0076】
好ましくは、本発明の固体シートは、以下の試験2によって測定される、約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚さによって更に特徴付けられる。
【0077】
本発明の固体シートは、少量の水を含んでもよい。好ましくは、それは、以下の試験4によって測定される、固体シートの0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含有量によって特徴付けられる。結果として得られる固体シートにおける適切な最終水分含有量は、シートの所望の可撓性/変形性を確保し、並びに消費者に柔らかな/滑らかな感触を提供することができる。最終水分含有量が低すぎる場合、シートは、脆すぎる、又は剛性が高すぎる場合がある。最終水分含有量が高すぎる場合、シートはべたつきが多すぎる場合があり、その全体的な構造的一体性が損なわれる場合がある。
【0078】
本発明の固体シートは、約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約2mmの範囲の厚さを有し得る。固体シートの厚さは、以下に説明される試験6を使用して測定することができる。乾燥後の固体シートは、全体的な体積膨張を招く細孔膨張に起因して、通気された湿潤プレミックスのシートよりもわずかに厚くてもよい。
【0079】
本発明の固体シートは、以下に説明される試験6によって測定される、約50グラム/m~約500グラム/m、好ましくは約150グラム/m~約450グラム/m、より好ましくは約250グラム/m~約400グラム/mの坪量によって更に特徴付けられてもよい。
【0080】
また更に、本発明の固体シートは、以下の試験7によって測定される、約0.05グラム/cm~約0.5グラム/cm、好ましくは約0.06グラム/cm~約0.4グラム/cm、より好ましくは約0.07グラム/cm~約0.2グラム/cm、最も好ましくは約0.08グラム/cm~約0.15グラム/cmの範囲の密度を有してもよい。本発明の固体シートの密度は、全体的な体積膨張を招く細孔膨張にも起因して、通気された湿潤プレミックスのシートの密度よりも低い。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の固体シートは、約0.06グラム/cm~約0.16グラム/cm、好ましくは約0.07グラム/cm~約0.15グラム/cm、より好ましくは約0.08グラム/cm~約0.145グラム/cmの密度を有してもよい。そのような比較的密度の低いシートを含有する固体物品は、更により改善された漏れ性能を達成し得る。
【0082】
更に、本発明の固体シートは、以下に記載される試験8によって測定される、約0.03m/g~約0.25m/g、好ましくは約0.04m/g~約0.22m/g、より好ましくは0.05m/g~0.2m/g、最も好ましくは0.1m/g~0.18m/gの比表面積によって特徴付けられてもよい。本発明の固体シートの比表面積は、その多孔度を示し得、例えば、比表面積が大きいほど、シートがより多孔質であり、その溶解速度が速くなるといった、その溶解速度に影響を与え得る。
【0083】
好ましい実施形態では、本開示による固体シート及び/又は本開示による溶解性固体物品は、
・85%~100%、好ましくは90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・固体シート物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含有量、及び/又は
・0.6mm~3.5mm、好ましくは0.7mm~3mm、より好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~2mmの厚さ、及び/又は
・約50グラム/m~約500グラム/m、好ましくは約150グラム/m~約450グラム/m、より好ましくは約250グラム/m~約400グラム/mの坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm~0.5グラム/cm、好ましくは0.06グラム/cm~0.4グラム/cm、より好ましくは0.07グラム/cm~0.2グラム/cm、最も好ましくは0.08グラム/cm~0.15グラム/cmの密度、及び/又は
・0.03m/g~0.25m/g、好ましくは0.04m/g~0.22m/g、より好ましくは0.05m/g~0.2m/g、最も好ましくは0.1m/g~0.18m/gの比表面積、によって特徴付けられる。
【0084】
V.固体シートの配合物
1.水溶性ポリマー
上述したように、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートは、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含む湿潤プレミックスによって形成され得る。このような水溶性ポリマーは、結果として得られる固体シートにおいて、フィルム形成剤、構造剤、並びに他の活性成分(例えば、界面活性剤、乳化剤、ビルダー、キレート剤、香料、着色剤など)のための担体として機能し得る。
【0085】
好ましくは、湿潤プレミックスは、プレミックスの約3重量%~約20重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約5重量%~約15重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約7重量%~約10重量%の水溶性ポリマーを含んでもよい。
【0086】
乾燥後、水溶性ポリマーは、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート中に、固体シートの総重量に対して約5重量%~約60重量%、好ましくは約7重量%~約50重量%、より好ましくは約9重量%~約40重量%、最も好ましくは約10重量%~約30重量%の範囲の量、例えば、10重量%、12重量%、15重量%、18重量%、20重量%、25重量%、30重量%、又はそれらの間の任意の範囲で存在することが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート中に存在する水溶性ポリマーの総量は、そのようなシートの総重量に対して25重量%以下である。
【0087】
本発明の実施に好適な水溶性ポリマーは、約5,000~約400,000ダルトン、好ましくは約10,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約15,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約20,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するものを選択されてもよい。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量に、多孔質固体シート内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じたものを加算することによって計算される。本明細書で使用される水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの粘度に影響を与える場合があり、これはひいては、通気工程中の気泡の数及びサイズ、並びに乾燥工程中の細孔膨張/開口結果に影響を与え得る。更に、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの全体的なフィルム形成特性、及びある界面活性剤との適合性/不適合性に影響を及ぼし得る。
【0088】
本発明の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、カプロラクタム、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アクリル酸とメチルアクリレートとのコポリマー、ポリウレタン、ポリカルボン酸、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、マレイン酸/(アクリレート又はメタクリレート)コポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン及びカプロラクタムのコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、アニオン性モノマーと、カチオン性モノマーと両性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む合成ポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0089】
本発明の水溶性ポリマーはまた、カラヤガム、トラガントガム、アラビアゴム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガティガム、乳清タンパク質単離物、及び大豆タンパク質単離物などの例を含む植物起源のもの、グアーガム、ローカストビーンガム、マルメロ種子、及びオオバコ種子を含む種子抽出物、カラギーナン、アルギン酸、及び寒天などの海藻抽出物、果物抽出物(ペクチン)、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、及びデキストランを含む微生物由来のもの;並びにカゼイン、ゼラチン、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン酸ケラチン、アルブミン、コラーゲン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、及びシェラックを含む動物起源のもの、を含む天然起源のポリマーから選択されてもよい。
【0090】
変性された天然ポリマーはまた、本発明において水溶性ポリマーとして使用されてもよい。好適な変性された天然ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ニトロセルロース及び他のセルロースエーテル/エステルのようなセルロース誘導体、並びにヒドロキシプロピルのようなグアー誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本発明の水溶性ポリマーは、デンプンを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「デンプン」という用語は、天然に存在するデンプン又は変性されたデンプンの両方を含む。デンプンの典型的な天然の供給源としては、穀物、塊茎、根、豆果及び果実を挙げることができる。より具体的な天然の供給源としては、トウモロコシ、豆、ポテト、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、アロールート、カンナ、サトウモロコシ、及びそれらのろう質又は高級アミラーゼ種を挙げることができる。天然デンプンは、剪断されたデンプン又は熱抑制されたデンプンなどの物理的に変性されたデンプン、架橋、アセチル化、及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化、並びにヒドロキシプロピル化、リン酸化、並びに無機エステル化、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性及び双極性、並びにこれらのサクシネート及び置換サクシネート誘導体などの化学的に変性されたデンプン、酸化、酵素変換、酸加水分解、熱若しくは酸デキストリン化、熱的及び/又は剪断された生成物によって調製される流動性又は薄い煮沸デンプン、本明細書で有用であり得る熱及び/又は剪断生成物、を含むデンプンに由来する変換生成物、並びに、当該技術分野において既知のアルファ化デンプン、を含んだ変性デンプンを形成するために当該技術分野において既知の任意の変性方法によって変性することができる。
【0092】
本発明の好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。本発明のより好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0093】
本発明の最も好ましい水溶性ポリマーは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールである。市販のポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Texas,USA)からの商品名CELVOLのもの、限定するものではないが、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504、Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)からの商品名Mowiol(登録商標)及びPOVAL(商標)、Lubon Vinylon Co.(Nanjing,China)を含む様々な供給元から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも称される)もの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シートは、このようなシートの総重量に対して約10重量%~約25重量%、より好ましくは約15重量%~約23重量%の、80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量、及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む。
【0094】
上述したようなポリビニルアルコールに加えて、本明細書に記載されたような必須の構造と物理的/化学的特性を備える固体シートを提供するのに役立つ限り、単一のデンプン又はデンプンの組み合わせを、必要とされる水溶性ポリマーの全体の濃度を低減させるような量の充填材料として使用してもよい。しかしながら、デンプンが多すぎると、シートの溶解度及び構造的一体性を含む場合がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、固体シート物品は、固体シートの20%重量%以下、好ましくは0重量%~10%重量%、より好ましくは0重量%~5%重量%、最も好ましくは0重量%~1%重量%のデンプンを含むことが望ましい。
【0095】
2.界面活性剤
上述の水溶性ポリマーに加えて、本発明の固体シートは、界面活性剤を含む。界面活性剤は、本発明の所望のOCF構造を形成するのに十分な量の安定した気泡を生成するために、通気プロセス中に乳化剤として機能し得る。更に、界面活性剤は、所望の洗浄効果を実現するための活性成分として機能し得る。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、固体シートは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤を含む。このような固体シートの所望の用途及び達成すべき所望の消費者利益に応じて、異なる界面活性剤を選択することができる。本発明の1つの効果は、固体シートのOCF構造が、高速溶解を依然として提供しながら、高い界面活性剤含有量を組み込むことを可能にすることである。結果的に、高濃度の洗浄組成物を本発明の固体シートに配合して、消費者に新たなかつ優れた洗浄体験を提供することができる。
【0097】
本明細書で使用する界面活性剤は、慣例的な観念(すなわち、消費者の目を引く泡立ち効果を提供する界面活性剤)及び乳化剤(すなわち、任意の泡立ち性能を提供しないが、主に安定した発泡構造体を作製する際のプロセス助剤として意図されるもの)の両方の界面活性剤を含んでもよい。本明細書で界面活性剤成分として使用される乳化剤の例としては、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪族アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル及び既知の又は別の方法で空気界面を安定化するのに一般的に使われる他の乳化剤が挙げられる。
【0098】
本発明の固体シート中に存在する界面活性剤の総量は、固体シートの総重量に対して約5重量%~約95重量%、好ましくは約30重量%~約90重量%、好ましくは約40重量%~約80重量%、より好ましくは約50重量%~約70重量%の広い範囲、例えば、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又はそれらの間の任意の範囲に及んでもよい。結果的に、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約1重量%~約50重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約2重量%~約40重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約10重量%~約35重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約15重量%~約30重量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0099】
本明細書で使用されるのに好適なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル及びアルキルエーテルサルフェート、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホネート、一級又は二級アルカンスルホネート、アルキルスルホサクシネート、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホアセテート、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
本発明の実施に特に好適なアニオン性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、C~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(linear alkylbenzene sulphonate、LAS)界面活性剤が挙げられる。LAS界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、市販の直鎖アルキルベンゼンをスルホン化することによって容易に入手することができる。本発明で使用することができる例示的なC10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネートとしては、C10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、好ましくは、C11~C18若しくはC11~C14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及び/又はアンモニウム塩が挙げられる。より好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム又はカリウム塩であり、最も好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、すなわち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0101】
LASは優れた洗浄効果をもたらし、洗濯洗剤用途での使用に特に好適である。より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、LASは、主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の総界面活性剤含有量の50重量%超の量で存在し得るものとして使用され得ることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、LASは、固体シート中の主界面活性剤として使用される。LASが本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約10重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の範囲であってもよい。
【0102】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、約0.5~約5、好ましくは約0.8~約4、より好ましくは約1~約3、最も好ましくは約1.5~約2.5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(sodium trideceth sulfates、STS)が挙げられる。トリデセスは、一実施形態では、1分子当たり平均して少なくとも1つのメチル分岐を含む、炭素13個の分岐鎖アルコキシル化炭化水素である。本発明で使用されるSTSとしては、ST(EOxPOy)Sを挙げることができ、EOxは、0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の繰り返し数xを有する繰り返しエチレンオキシド単位を表し、POyは、0~5、好ましくは0~4、より好ましくは0~2の範囲の繰り返し数yを有する繰り返しプロピレンオキシド単位を表す。例えば、約2の重量平均エトキシル化度を有するST2Sなどの材料は、エトキシレートなし、1モルのエトキシレート、3モルのエトキシレートなどを有する有意な量の分子を含んでもよく、エトキシル化の分布は、広い、狭い、又は切断されたものとなり得、それでもなお約2の総重量平均エトキシル化度をもたらすことができることが理解される。STSは、パーソナルクレンジング用途に特に好適であり、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、STSは主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の総界面活性剤含有量の50重量%超の量で存在し得るものとして使用され得ることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、STSは、固体シート中の主界面活性剤として使用される。STSが本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約10重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の範囲であってもよい。
【0103】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、アルキルサルフェートが挙げられる。これら物質は、対応する式:ROSOM(式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである)を有する。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。前述したように、非アルコキシル化C~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)は、フィルム形成性能及び安定性において、低分子量ポリビニルアルコール(例えば、50,000ダルトン以下の重量平均分子量を有するもの)との適合性のために、可溶性固体シートにおいて、特にその中の主な界面活性剤として、好ましい界面活性剤と考えられている。しかしながら、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、他の界面活性剤(例えばLAS及び/又はSTS)が、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の主な界面活性剤として使用され得ることは、本発明の驚くべきかつ予期せぬ発見であった。したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、固体シートの約20重量%以下、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%、最も好ましくは0重量%~約1重量%のASを有する固体シートを提供することが望ましい。
【0104】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、C~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(alkylalkoxy sulfates、AAS)が挙げられる。このカテゴリの中でも、対応する式RO(CO)SOMを有する直鎖又は分岐鎖アルキルエトキシサルフェート(alkylethoxy sulfates、AES)が特に好ましく、式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。
【0105】
本発明の固体シートに含まれ得る非イオン性界面活性剤としては、アルキルアルコキシル化アルコール、アルキルアルコキシル化フェノール、アルキル多糖類(特にアルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド)、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体、アミンオキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない、任意の従来の非イオン性界面活性剤であってよい。好ましい非イオン性界面活性剤は、式R(OCOH(式中、RはC~C18アルキル基又はアルキルフェニル基であり、nは約1~約80である)のものである。特に好ましいのは、Shellから市販されているNEODOL(登録商標)非イオン性界面活性剤などの、約1~約20、好ましくは約5~約15、より好ましくは約7~約10の重量平均エトキシル化度を有するC~C18アルキルエトキシル化アルコールである。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の他の非限定例としては、アルコキシレート単位がエチレンオキシ単位、プロピレンオキシ単位、又はこれらの混合物であり得るC~C12アルキルフェノールアルコキシレート;C12~C18アルコール及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとのC~C12アルキルフェノール縮合物(Pluronic(登録商標)(BASF)など);C14~C22中鎖分岐鎖アルコール(branched alcohol、BA);C14~C22中鎖分岐鎖アルキルアルコキシレート、BAE(式中、xは1~30である);アルキル多糖類、具体的にはアルキルポリグリコシド;ポリヒドロキシ脂肪酸アミド;並びにエーテル末端処理ポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、商標名Lutensol(登録商標)としてBASFから販売されているものも挙げられる。
【0106】
本発明の実施に最も好ましい非イオン性界面活性剤としては、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(alkylalkoxylated alcohols、AA)、より好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコールが挙げられる。AAタイプの非イオン界面活性剤が本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約8重量%~約12重量%の範囲であってもよい。
【0107】
本発明の固体シートでの使用に好適な両性界面活性剤としては、脂肪族二級及び三級アミンの誘導体として広く記載されるものが挙げられ、脂肪族ラジカルは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つは、約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。この定義に該当する化合物の例は、3-ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルアミンをイセチオン酸ナトリウムと反応させることで調製されるもののようなN-アルキルタウリン、及びN-高級アルキルアスパラギン酸である。
【0108】
好適な双極性界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記述されるものが挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分岐鎖であることができ、脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有。そのような好適な双極性界面活性剤は、次式で表すことができる。
【0109】
【化1】
(式中、Rは、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、Rは、約1~約3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子であるとき、1であり、Yが窒素又はリン原子であるとき、2であり、Rは、約1~約4個の炭素原子のアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、及びホスフェート基からなる群から選択されるラジカルである)。
【0110】
カチオン性界面活性剤はまた、本発明において、特に布地柔軟剤及びヘアコンディショナー製品において利用することができる。カチオン性界面活性剤を主界面活性剤として含有する製品を作製する際に使用される場合、このようなカチオン性界面活性剤は、固体シートの総重量に対して約2%~約30%、好ましくは約3%~約20%、より好ましくは約5%~約15%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0111】
カチオン性界面活性剤は、ジアミド活性成分、並びにアミド結合及びエステル結合の混合を有する活性成分を包含するDEQA化合物を含み得る。好ましいDEQA化合物は、典型的には、MDEA(メチルジエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)などのアルカノールアミンを脂肪酸と反応させることによって作製される。このような反応から典型的に得られるいくつかの物質としては、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド又はN,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられ、式中、アシル基は、動物脂、不飽和及び多価不飽和脂肪酸から誘導される。
【0112】
本発明のパーソナルケア組成物での使用に好適な高分子界面活性剤としては、限定するものではないが、エチレンオキシドと脂肪族アルキル残基(fatty alkyl residues)とのブロックコポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、疎水変性ポリアクリレート、疎水変性セルロース、シリコーンポリエーテル、シリコーンコポリオールエステル、ジ四級ポリジメチルシロキサン、及び共修飾されたアミノ/ポリエーテルシリコーンが挙げられる。
【0113】
好ましい実施形態では、界面活性剤は、C~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0114】
3.可塑剤
本発明の好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートは、好ましくは、固体シートの総重量に対して約0.1重量%~約25重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%、最も好ましくは2重量%~12重量%の範囲の量で可塑剤を更に含み得る。それに対応して、このような固体シートを形成するために使用される湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約0.02重量%~約20重量%の可塑剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約0.1重量%~約10重量%の可塑剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約0.5重量%~約5重量%の可塑剤を含み得る。
【0115】
本発明で使用されるのに好適な可塑剤としては、例えば、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。
【0116】
有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に200~600)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール誘導体(プロポキシル化グリセロールなど)、グリシドール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ペンタエリスリトール、尿素、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトール、及び他のモノ-及び多価アルコールなど)、モノ-、ジ-及びオリゴ-糖(フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ固形物、及びデキストリンなど)、アスコルビン酸、ソルベート、エチレンビスホルムアミド、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
好適なポリエステルの例としては、グリセロールトリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
好適なジメチコンコポリオールの例としては、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びPPG-12ジメチコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
可塑剤の特に好ましい例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。
【0121】
4.追加成分
上述の成分、例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び可塑剤に加えて、本発明の固体シートは、その意図される用途に応じて、1つ以上の追加成分を含んでもよい。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、苦味剤並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましい実施形態では、本発明の固体シートは、苦味剤を含んでもよい。
【0122】
本発明の固体シートは、組成物での使用が既知であるか、あるいは有用であるような他の任意選択的な成分を更に含んでもよく、かかる任意選択的な材料は、本明細書に記載の選択された不可欠な材料と互換性があるか、あるいは過度に製品性能を損なわないという条件で含まれる。
【0123】
本発明の固体シートによって形成され得る製品タイプの実施形態の非限定的な例としては、洗濯洗剤製品、布地柔軟製品、手洗浄製品、毛髪シャンプー又は他の毛髪処理製品、ボディクレンジング製品、シェービング調製製品、食器洗浄製品、医薬又は他のスキンケア活性物質を含有するパーソナルケア基材、保湿製品、日焼け止め製品、美容製品又はスキンケア製品、脱臭製品、口腔ケア製品、女性用洗浄製品、ベビーケア製品、芳香剤含有製品などが挙げられる。
【0124】
VI.コーティング組成物の配合物
本開示によるコーティング組成物は、非水性液体担体と、増粘剤と、固体粒子と、を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、20℃及び1s-1で測定されるとき、約1cps~約25,000cps、好ましくは約2cps~約10,000cps、より好ましくは約3cps~約5,000cps、最も好ましくは約1,000cps~約5,000cpsの好ましい粘度を有し得る。粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、0.054mmのギャップ幅、20℃の温度及び360秒にわたる1.0レシプロカル秒の剪断速度で測定する。
【0125】
1.非水性液体担体
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~70重量%、より好ましくは20重量%~50重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、又はそれらの間の任意の範囲の非水性液体担体を含み得る。
【0126】
非水性液体担体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シリコーン、脂肪酸、香油、非イオン性界面活性剤、有機溶媒、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、非水性液体担体は、非イオン性界面活性剤を含み得る。非イオン性界面活性剤は、上記に列挙された任意の適切な非イオン性界面活性剤であり得る。より好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコールを含み得る。別の実施形態では、非水性液体担体は、1000未満、800未満、又は600未満の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールを含み得る。
【0127】
2.増粘剤
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して0.01重量%~30重量%、好ましくは0.05重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%、例えば、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%、6.0重量%、7.0重量%、8.0重量%、9.0重量%、又はそれらの間の任意の範囲の増粘剤シリカを含み得る。
【0128】
特に、増粘剤は、シリカ、粘土、ポリアクリレート増粘剤、ポリアクリルアミド増粘剤、キサンタン増粘剤、グアーガム、アルギン酸エトキシル化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、増粘剤は、シリカを含み得、好ましくはヒュームドシリカ、より好ましくは親水性ヒュームドシリカ(例えば、Aerosil A200)を含み得る。親水性ヒュームドシリカは、シリカの総重量に対して10%未満の残留塩を含み得、水和時に1μm~100μmの粒径分布Dv50を有する膨潤シリカ粒子を形成することができる。特に、本発明で使用されるヒュームドシリカは、約30~約1000m/g、好ましくは約50~約500m/g、例えば、50、100、150、200、250、300、350、400、450m/g、又はそれらの間の任意の範囲のBET表面積を有し得る。
【0129】
3.固体粒子
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、酸化染料化合物、pH調整剤及び/又は緩衝剤、ラジカル捕捉剤、キレート剤、加温活性物質、色指示薬、アニオン性界面活性剤、酵素、漂白剤、発泡系、並びにこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、固体粒子は、80μm~2000μmの好ましい平均粒径を有する。特に、粒子は、90μm~1000μm、好ましくは100μm~700μm、より好ましくは110μm~500μm、最も好ましくは120μm~400μm、例えば、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μm、1200μm、又はそれらの間の任意の範囲の平均粒径を有し得る。
【0130】
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、又はそれらの間の任意の範囲の固体粒子を含み得る。
【0131】
a)酸化染料化合物
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、一次中間体又はカプラーの形態の酸化染料化合物を含み得る。
【0132】
これらの化合物は、当該技術分野において周知であり、芳香族ジアミン、アミノフェノール、芳香族ジオール、及びそれらの誘導体が挙げられる(酸化染料前駆体の代表的であるが、非包括的なリストは、サガリン(Sagarin)の、「化粧品の科学及び技術(Cosmetic Science and Technology)」(インターサイエンス(Interscience)、特別版、第2巻、308~310頁)に見ることができる)。以下に詳述される前駆体は単なる例であり、本明細書の組成物及びプロセスを限定することを意図するものではないことを理解されたい。これらは次のとおりである:1,7-ジヒドロキシナフタレン(1,7-ナフタレンジオール)、1,3-ジアミノベンゼン(m-フェニレンジアミン)、1-メチル-2,5-ジアミノベンゼン(トルエン-2,5-ジアミン)、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,3-ジヒドロキシ-4-クロロベンゼン、(4-クロロレゾルシノール)、1-ヒドロキシ-2-アミノベンゼン、(o-アミノフェノール)、1-ヒドロキシ-3-アミノベンゼン(m-アミノフェノール)、1-ヒドロキシ-4-アミノ-ベンゼン(p-アミノフェノール)、1-ヒドロキシナフタレン(1-ナフトール)、1,5-ジヒドロキシナフタレン(1,5-ナフタレンジオール)、2,7-ジヒドロキシナフタレン(2,7-ナフタレンジオール)、1-ヒドロキシ-2,4-ジアミノベンゼン(4-ジアミノフェノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、1-ヒドロキシ-4-メチルアミノベンゼン(p-メチルアミノフェノール)、6-ヒドロキシベンゾ-モルホリン(ヒドロキシベンゾモルホリン)、1-メチル-2-ヒドロキシ-4-アミノベンゼン(4-アミノ-2-ヒドロキシ-トルエン)、3,4-ジアミノ安息香酸(3,4-ジアミノ安息香酸)、1-メチル-2-ヒドロキシ-4-(2’-ヒドロキシエチル)アミノベンゼン(2-メチル-5-ヒドロキシ-エチルアミノ-フェノール)、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン(1,2,4-トリヒドロキシベンゼン)、1-フェノール-3-メチルピラゾール-5-オン(フェニルメチルピラゾロン)、1-(2’-ヒドロキシエチルオキシ)-2,4-ジアミノベンゼン(2,4-ジアミノフェノキシ-エタノールHCL)、1-ヒドロキシ-3-アミノ-2,4-ジクロロベンゼン(3-アミノ-2,4-ジクロロ-フェノール)、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルベンゼン(2-メチルレゾルシノール)、1-アミノ-4-ビス-(2’-ヒドロキシエチル)アミノベンゼン(N,N-ビス(2-ヒドロキシ-エチル)-p-フェニレン-ジアミン)、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン(HCレッド16)、1-ヒドロキシ-3-メチル-4-アミノベンゼン(4-アミノ-m-クレゾール)、1-ヒドロキシ-2-アミノ-5-メチルベンゼン(6-アミノ-m-クレゾール)、1,3-ビス-(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン(1,3-ビス-(2,4-ジアミノ-フェノキシ)-プロパン)、1-(2’-ヒドロキシエチル)-2,5-ジアミノベンゼン(ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン硫酸塩)、1-メトキシ-2-アミノ-4-(2’-ヒドロキシエチルアミノ)ベンゼン、(2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール)1-ヒドロキシ-2-メチル-5-アミノ-6-クロロベンゼン(5-アミノ-6-クロロ-o-クレゾール)、1-ヒドロキシ-2-アミノ-6-メチルベンゼン(6-アミノ-o-クレゾール)、1-(2’-ヒドロキシエチル)-アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン(ヒドロキシエチル-3,4-メチレンジオキシ-アニリンHCl)、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン(2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン)、3,5-ジアミノ-2,6-ジメトキシピリジン(2,6-ジメトキシ-3,5-ピリジンジアミン)、5,6-ジヒドロキシインドール(,ジヒドロキシ-インドール)、4-アミノ-2-アミノメチルフェノール(2-アミノエチル-p-アミノ-フェノールHCl)、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール(2,4-ジアミノ-5-メチル-フェネトールHCl)、2,4-ジアミノ-5-(2’-ヒドロキシエチルオキシ)トルエン(2,4-ジアミノ-5-メチルフェノキシエタノールHCl)、5-アミノ-4-クロロ-2-メチルフェノール(5-アミノ-4-クロロ-o-クレゾール)、4-アミノ-1-ヒドロキシ-2-(2’-ヒドロキシエチルアミノメチル)ベンゼンヒドロキシエチルアミノメチル-p-アミノフェノールHCl)、4-アミノ-1-ヒドロキシ-2-メトキシメチルベンゼン(2-メトキシメチル-p-アミノフェノールHCl)、1,3-ビス(N(2-ヒドロキシエチル)N(4-アミノ-フェニル)アミノ)-2-プロパノール(ヒドロキシプロピル-ビス-(N-ヒドロキシ-エチル-p-フェニレンジアミン)HCL)、6-ヒドロキシインドール(6-ヒドロキシ-インドール)、2,3-インドリンジオン(イサチン)、3-アミノ-2-メチルアミノ-6-メトキシピリジン(HCブルー7番)、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン-2,4-ジヒドロ-5,2-フェニル-3H-ピラゾール-3-オン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン(2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン)、5-アミノ-サリチル酸、1-メチル-2,6-ビス(2-ヒドロキシ-エチルアミノ)ベンゼン(2,6-ヒドロキシエチルアミノ-トルエン)、4-ヒドロキシ-2,5,6-トリアミノピリミジン(2,5,6-トリアミノ-4-ピリミジノール硫酸塩)、2,2’-[1,2-エタンジイル-ビス-(オキシ-2,1-エタンジイルオキシ)]-ビス-ベンゼン-1,4-ジアミン(PEG-3,2’,2’-ジ-p-フェニレンジアミン)、5,6-ジヒドロキシインドリン(ジヒドロキシインドリン)、N,N-ジメチル-3-ウレイドアニリン(m-ジメチル-アミノ-フェニル尿素)、2,4-ジアミノ-5-フルオロ(fluor)トルエン硫酸塩水和物(4-フルオロ-6-メチル-m-フェニレンジアミン硫酸塩)、及び1-アセトキシ-2-メチルナフタレン(1-ヒドロキシ(HYDROXYY)エチル-4,5-ジアミノピラゾール硫酸塩)。これらは、分子形態又は過酸化物適合性塩の形態で使用することができる。
【0133】
b)pH調整剤及び緩衝剤
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、組成物のpHを約3~約13、いくつかの実施形態では、約8~約12、及び更には約8~約11の範囲内になるように調節するのに十分有効な量のpH調整剤及び/又は緩衝剤を含み得る。本明細書で使用されるのに好適なpH調整剤及び/又は緩衝剤としては、アンモニア、アルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3,-プロパンジオール及びグアニジニウム塩、アルカリ金属及びアンモニウムの水酸化物及び炭酸塩、好ましくは水酸化ナトリウム及び炭酸アンモニウム、並びに無機酸及び無機酸などの酸味料、例えば、リン酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸又は酒石酸、塩酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
c)ラジカル捕捉剤系
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、酸化漂白又は着色プロセス中の毛髪への損傷を低減するのに十分な量のラジカル捕捉剤を含み得る。ラジカル捕捉剤は、好ましくは、アルカリ化剤と同一の種ではないように選択される。好ましいラジカル捕捉剤は、アルカノールアミン、アミノ糖、アミノ酸、及びこれらの混合物のクラスから選択され得、モノエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、1-アミノ-2-プロパノール、1-アミノ-2-ブタノール、1-アミノ-2-ペンタノール、1-アミノ-3-ペンタノール、1-アミノ-4-ペンタノール、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、3-アミノプロパン-1,2-ジオール、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、グリシン、アルギニン、リジン、プロリン、グルタミン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、並びに上記のカリウム、ナトリウム、及びアンモニウム塩、並びにこれらの混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の好ましいラジカル捕捉剤化合物としては、ベンジルアミン、グルタミン酸、イミダゾール、ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、カテコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0135】
d)キレート剤
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、配合成分と相互作用するために利用可能な金属の量を低減するのに十分な量のキレート剤を含み得る。本明細書で使用されるのに好適なキレート剤としては、ジアミン-N,N’-ジポリ酸、モノアミンモノアミド-N,N’-ジポリ酸、並びにN,N’-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-ジ酢酸キレート剤(好ましくはEDDS(エチレンジアミンジコハク酸))、カルボン酸(好ましくはアミノカルボン酸)、ホスホン酸(好ましくはアミノホスホン酸)、並びにポリリン酸(特に直鎖ポリリン酸)、それらの塩及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
e)加温活性物質
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、加温活性物質を含み得る。加温活性物質は、適用中に水と混合されるときに発熱反応(熱生成)を介して熱を放出する発熱剤、又は発熱粉末を含み得る。発熱剤としては、無機塩、グリコール、微粉固体吸着剤材料、及び鉄レドックス系が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、加温活性物質は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない無水無機塩からなる群から選択される。更に別の実施形態では、本発明の加温活性物質は、無水塩化カルシウム、無水塩化マグネシウム、無水硫酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0137】
f)色指示薬
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、色指示薬を含み得る。そのような色指示薬は、指示薬が水と接触したときに視覚的色変化をもたらすのに十分な量で存在することができる。「視覚的色変化」という用語は、単独で、又は黒色光などのエネルギー源の助けを借りて、人間の眼によって検知され得る色変化を指す。本発明の色指示薬は、pH指示薬、光活性顔料、サーモクロマチック顔料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含むことができるが、これらに限定されない。
【0138】
一実施形態では、色の変化は、pH感受性色変化成分である。色指示薬は、ブロモクレゾールグリーン、フェノールフタレイン、σ-クレゾールフタレイン、チモールフタレイン、クマリン、2,3-ジオキシキサントン、クマル酸、6,8-ジニトロ-2,4(1H)キナゾリンジオン、エチル-ビス(2,4-ジメチルフェニル)エタノエート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0139】
g)酵素
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、酵素を含み得る。当該技術分野で既知の任意の酵素をコーティング組成物に使用することができる。好ましい酵素は、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、キシログルカナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナーゼ、クチナーゼ、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0140】
h)漂白剤
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、漂白剤を含み得る。漂白剤は、有効酸素源、漂白活性化剤、予備形成過酸、漂白触媒、還元漂白剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。特に、漂白剤は、好ましくは、80μm~2000μm、好ましくは100μm~1500μm、例えば、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μm、1200μm、又はそれらの間の任意の範囲の平均粒径を有する粒子の形態であり得る。粒径の好ましい範囲は、改善された溶解プロファイル及び/又は改善された漏れ性能をもたらし得る。
【0141】
有効酸素源(AvOx)は、好ましくは、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される過酸化水素源であり得る。有効酸素源は、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、又はこれらの混合塩を含むこれらの任意の混合物などのコーティング成分によって少なくとも部分的にコーティングされ得る、又は更には完全にコーティングされ得る。好適な過炭酸塩は、流動床プロセスによって、又は結晶化プロセスによって調製することができる。好適な過ホウ酸塩としては、過ホウ酸ナトリウム一水和物(PB1)、過ホウ酸ナトリウム四水和物(PB4)、及び発泡過ホウ酸ナトリウムとしても既知の無水過ホウ酸ナトリウムが挙げられる。他の好適なAvOx源としては、オキソンなどの過硫酸塩が挙げられる。別の好適なAvOx供給源は、過酸化水素である。
【0142】
漂白活性化剤は、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED);オキシベンゼンスルホネート、例えば、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)、カプリルアミドノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NACA-OBS)、3,5,5-トリメチルヘキサノイルオキシベンゼンスルホネート(Iso-NOBS)、ドデシルオキシベンゼンスルホネート(LOBS)、及びこれらの任意の混合物;カプロラクタム;五酢酸グルコース(PAG);ニトリル四級アンモニウム;イミド漂白活性化剤、例えば、N-ノナノイル-N-メチルアセトアミド;並びにこれらの任意の混合物からなる群から選択され得る。
【0143】
予備形成過酸は、N,N-フタロイルアミノパーオキシカプロン酸(PAP)であり得る。
【0144】
漂白触媒は、オキサジリジニウム系漂白触媒、遷移金属漂白触媒、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0145】
好適なオキサジリジニウム系漂白触媒は、式:
【0146】
【化2】
(式中、Rは、H、3~24個の炭素を含有する分枝鎖アルキル基、及び1~24個の炭素を含有する直鎖アルキル基からなる群から選択され;Rは、6~18個の炭素を含む分枝鎖アルキル基、又は5~18個の炭素を含む直鎖アルキル基であり得、Rは、2-プロピルヘプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、イソ-ノニル、イソ-デシル、イソ-トリデシル、及びイソ-ペンタデシルからなる群から選択され得;Rは、独立して、H、3~12個の炭素を含む分枝鎖アルキル基、及び1~12個の炭素を含む直鎖アルキル基からなる群から選択され;任意選択的にRは、独立して、H及びメチル基から選択され;nは、0~1の整数である)を有する。
【0147】
遷移金属漂白触媒は、銅、鉄、チタン、ルテニウム、タングステン、モリブデン、及び/又はマンガンのカチオンを含み得る。好適な遷移金属漂白触媒は、マンガン系遷移金属漂白触媒である。
【0148】
還元漂白剤は、亜硫酸ナトリウム及び/又は二酸化チオ尿素(TDO)であり得る。
【0149】
特に、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは10重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、又はそれらの間の任意の範囲の漂白剤を含み得る。より具体的には、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは10重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、若しくはそれらの間の任意の範囲の有効酸素源を含み得、及び/又はコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは10重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、若しくはそれらの間の任意の範囲の漂白活性化剤を含み得る。
【0150】
i)発泡系
本発明によるコーティング組成物に含有される固体粒子は、発泡系を含み得る。当該技術分野で既知の任意の発泡系をコーティング組成物に使用することができる。好ましい発泡系は、水の存在下で互いに反応してガスを生成することができる酸源及びアルカリ源を含む。
【0151】
酸源成分は、任意の有機酸、鉱物酸、若しくは無機酸、又はその誘導体、又はこれらの組み合わせであり得る。好ましくは、酸源成分は有機酸を含む。酸化合物は、好ましくは実質的に無水又は非吸湿性であり、酸は、好ましくは水溶性である。酸源が過剰乾燥されることが好ましい場合がある。
【0152】
好適な酸源成分としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、グルタル酸、マロン酸、コハク酸、ホウ酸、安息香酸、オレイン酸、シトラマル酸、3-ケトグルタル酸、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。クエン酸、マレイン酸、又は酒石酸が特に好ましい。酸源は、塩などのコーティングで更にコーティングされ得る。一実施形態では、酸源としてのクエン酸は、クエン酸ナトリウムでコーティングされ得る。
【0153】
酸源と反応してガスを生成する能力を有する任意のアルカリ源は、粒子中に存在し得、これは、窒素、酸素、及び二酸化炭素ガスを含む当該技術分野で既知の任意のガスであり得る。好ましいものは、炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアルカリ源であり得る。アルカリ源は、好ましくは実質的に無水又は非吸湿性である。アルカリ源が過剰乾燥されることが好ましい場合がある。
【0154】
好ましくは、このガスは二酸化炭素であり、したがって、アルカリ源は、好ましくは炭酸塩源であり、これは当該技術分野で既知の任意の炭酸塩源であり得る。好ましい実施形態では、炭酸塩源は炭酸塩である。好ましい炭酸塩の例は、ナトリウム若しくはカリウムの炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩、並びにこれらの任意の組み合わせ、並びに超微細炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムを含む、アルカリ土類及びアルカリ金属の炭酸塩である。アルカリ金属過炭酸塩もまた、好適な炭酸塩種源であり、これは、1つ以上の他の炭酸塩源と組み合わせて存在し得る。
【0155】
4.追加成分
上記の成分に加えて、本発明のコーティング組成物は、その意図された用途に応じて、1つ以上の追加の成分を含み得る。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、苦味剤並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0156】
特に、コーティング組成物は、軟化剤、シリコーン、乳化剤、酵素、着色剤、増白剤、移染防止剤、堆積助剤、抗菌剤、キレート剤、非フィルム形成ポリマー、泡止め剤、消泡剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含み得る。
【0157】
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して0.0001重量%~99重量%、好ましくは1重量%~95重量%、より好ましくは10重量%~80重量%、例えば、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲の追加の成分を含み得る。
【0158】
VII.複数の固体シート及びコーティング組成物の、コーティング組成物を含有する多層溶解性固体物品への変換
本発明の可撓性溶解性多孔質固体シート物品が形成されると、上述したように、そのようなシートの2つ以上は、漂白剤を含むコーティング組成物を塗布することによって処理され得、次いで組み合わされて、球状、立方体、長方形、楕円形、円筒形、ロッド、シート、花形、扇型、星形、ディスク形状などが挙げられるが、これらに限定されない任意の望ましい三次元形状の溶解性固体物品を形成することができる。シートは、その例として化学的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の任意の手段によって、組み合わされて及び/又は処理してもよい。このような組み合わせ工程及び/又は処理工程は、本明細書において集合的に「変換」プロセスと称され、すなわち、これは、本発明の2つ以上の可撓性溶解性多孔質シートを、コーティング組成物を含有する溶解性固体物品に変換するように機能する。
【0159】
多層固体物品に含有される漂白剤が、同じ条件下で貯蔵された漂白剤単独と比較して、著しく改善された安定性を示すことは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。多層固体物品に含有される漂白剤が、著しく改善された抗微生物効果を示すことは、本発明の別の驚くべきかつ予想外の発見であった。
【0160】
更に、本発明の多層溶解性固体物品は、最大寸法D及び最小寸法z(最大寸法に対して垂直である)によって特徴付けられ得、D/z比(以下、「アスペクト比」とも称される)は、1~約10、好ましくは約1.4~約9、好ましくは約1.5~約8、より好ましくは約2~約7の範囲である。アスペクト比が1である場合、溶解性固体物品は球状の形状を有することに留意されたい。アスペクト比が約1.4である場合、溶解性固体物品は立方体形状を有する。本発明の多層溶解性固体物品は、約3mm超であるが約20cm未満、好ましくは約4mm~約10cm、より好ましくは約5mm~約30mmの最小寸法zを有してもよい。
【0161】
上述の多層溶解性固体物品は、このような可撓性溶解性多孔質シートを2つ以上含んでもよい。例えば、それは、約3~約50、好ましくは約4~約40、更に好ましくは約5~約30、例えば、6、7、8、9、10、15、20、25、30、又はそれらの間の任意の範囲の可撓性溶解性多孔質シートを含んでもよい。本発明に従って作製された可撓性溶解性多孔質シート内の改善されたOCF構造は、多くのシート(例えば、15~40)を一緒に積み重ねることを可能にする一方で、積層体に十分な全体的溶解速度を依然として提供する。
【0162】
本発明の特に好ましい実施形態では、多層溶解性固体物品は、上述の可撓性溶解性多孔質シートの15~40層を含み、約2~約7の範囲のアスペクト比を有する。
【0163】
特に、漂白剤を含有するコーティング組成物は、任意の適切な手段、例えば、噴霧、散布、散粉、コーティング、拡散、浸漬、注入、ローリング、又は更には蒸着によって、多層溶解性固体物品の個々のシートの間に塗布することができる。より具体的には、コーティング組成物は、積層体内の隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布することができる。好ましい実施形態では、個々のシートの周辺付近のカットシール又はエッジシールに対するコーティング組成物の干渉を回避するために、コーティング組成物を、それぞれのシートの塗布面の各々の中央領域に塗布してもよく、これは、好ましくは、そのような隣接するシートの周辺から最大寸法Dの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%の距離だけ離間されている領域として定義される。代替的な好ましい実施形態では、当該コーティング組成物は、それぞれのシートの塗布面全体に塗布され、好ましくは、塗布面積が、塗布面の総面積の少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは98%、最も好ましくは99%を占める。
【0164】
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、固体物品中の任意の隣接するシートのうちの一方又は両方の接触面に塗布され得る。別の好ましい実施形態では、コーティング組成物は、積層体内の中間の2つのシートのうちの一方又は両方の接触面に塗布され得る。更に別の好ましい実施形態では、コーティング組成物は、2つの最外部シートを除く積層体内の任意の2つの隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布され得る。
【0165】
好ましい実施形態では、溶解性固体物品は、1つ以上のシートの第1の群と1つ以上のシートの第2の群とを含み、コーティング組成物は、当該1つ以上のシートの第1の群の少なくとも1つの少なくとも1つの表面に存在するが、当該1つ以上のシートの第2の群のいずれか1つの表面には存在せず、コーティング組成物は、有効酸素源を含み、好ましくは、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過硫酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される有効酸素源を含み、当該1つ以上のシートの第2の群の各シートは、漂白活性化剤を含む、好ましくは、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、オキシベンゼンスルホネート、カプロラクタム;五酢酸グルコース(PAG)、ニトリル四級アンモニウム、イミド漂白活性化剤、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される漂白活性化剤を含む。この場合、有効酸素源は、有効酸素源の安定性が更に改善され得るように、漂白活性化剤から分離される。特に、1つ以上のシートの第1の群は、一緒に積層された、少なくとも2つのシート、好ましくは少なくとも4つのシートを含み得、コーティング組成物が、1つ以上のシートの第1の群内の中間の2つのシートの一方又は両方の接触面上に存在する。更に、1つ以上のシートの第2の群は、1つ以上のシートの第1の群の底部若しくは上部、又は両方に位置し得る。
【0166】
本明細書で使用するとき、「中間の2つのシート」という用語は、一緒に積み重ねられたシートの配列の中間に位置する2つの隣接するシートを意味する。特に、シートの総数が奇数(例えば、7)である場合、中間の2つのシートは、中央に位置するシート及びその2つの隣接するシートのうちのいずれか(例えば、3番目及び4番目のシート又は4番目及び5番目のシート)を含み、シートの総数が偶数(例えば、6)である場合、中間の2つのシートは、中央に位置する2つのシート(例えば、3番目及び4番目のシート)を含む。
【0167】
特に、多層溶解性固体物品中のコーティング組成物の固体シートに対する重量比は、0.1~10、好ましくは0.1~7、より好ましくは0.5~5、最も好ましくは1~3、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、又はそれらの間の任意の範囲であり得る。
【0168】
図7Aは、漂白剤(例えば、過炭酸塩)を含むコーティング組成物82が中間の2つのシート81の間に塗布される、本開示による例示的な多層溶解性固体物品を示す。
【0169】
図7Bは、有効酸素源(例えば、過炭酸塩)を含む第1のコーティング組成物84がシート83とシート85との間に塗布され、漂白活性化剤(例えば、TAED)を含む第2のコーティング組成物86がシート85とシート87との間に塗布される、本開示による別の例示的な多層溶解性固体物品を示す。
【0170】
図7Cは、物品が、第1のシート群89(4枚の固体シート)と、第2のシート群90(合計2枚の固体シート)と、有効酸素源(例えば、過炭酸塩)を含むコーティング組成物88と、を含む、本開示による別の例示的な多層溶解性固体物品を示す。コーティング組成物88は、好ましくは漂白活性化剤を含まない第1のシート群89内の中間の2つのシートの間に塗布される。第2のシート群90は、漂白活性化剤(例えば、TAED)を含み、第1のシート群89の上部及び底部に位置する。
【0171】
試験法
試験1:シート物品の表面平均孔径を決定する走査型電子顕微鏡(SEM)方法
Hitachi TM3000 Tabletop Microscope(S/N:123104-04)を使用して、サンプルのSEM顕微鏡写真を取得する。本発明の固体シート物品のサンプルは、面積約1cm×1cmであり、より大きなシートから切断される。画像を倍率50Xで収集し、ユニットを15kVで動作させる。最低5つの顕微鏡画像を、各サンプルにわたってランダムに選択された位置から収集し、平均孔径が推定される約43.0mmの総分析面積を得る。
【0172】
次いで、SEM顕微鏡写真を、まず、Matlab(登録商標)内の画像解析ツールボックスを使用して処理する。必要に応じて、画像をグレースケールに変換する。所与の画像について、Matlab(登録商標)の「imhist」関数を使用して、単一画素ごとの強度値のヒストグラムを生成する。典型的には、このようなヒストグラムから、細孔内のより明るいシート表面の画素及びより暗い領域の画素に対応する2つの別個の分布が明らかとなる。これら2つの分布のピーク値間の強度値に対応する閾値を選択する。次いで、この閾値よりも低い強度値を有する全ての画素を、0の強度値に設定し、それよりも強度値が高い画素を1に設定し、これによって、2値の白黒画像を生成する。次いで、その2値画像を、ImageJ(https://imagej.nih.gov、バージョン1.52a)を使用して分析し、細孔面積比及び孔径分布の両方を調べる。各画像のスケールバーを使用して、画素/mmスケーリング係数を提供する。分析のために、自動閾値化機能及び分析粒子機能を使用して、各細孔を分離する。分析関数からの出力は、画像全体と細孔面積とに対する面積比及び検出された細孔ごとの細孔周長を含む。
【0173】
平均孔径は、D50として定義され、すなわち、総細孔面積の50%は、D50平均直径以下の水力直径を有する細孔から構成される。
水力直径=‘4細孔面積(m)/細孔周長(m)’
【0174】
これは、全て円形ではない細孔を考慮するために計算された等価直径である。
【0175】
試験2:連続気泡発泡体(OCF)の全体又は領域の平均孔径及び平均気泡壁厚さを決定するためのMicro-Computed Tomographic(μCT)方法
多孔度は、OCFによって占有される全空間に対する空隙空間の比率である。多孔度は、空隙空間を閾値化によって区画化し、全ボクセルに対する空隙ボクセルの比率を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、全空間に対する固体空間の比率であり、SVFは、全ボクセルに対する占有されたボクセルの比率として計算することができる。多孔度及びSVFの両方とも、OCFの高さ方向における孔径分布、又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0176】
OCFの3D構造によって特徴付けるために、高い等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な計測器の一例は、以下の設定で作動するSCANCO Systemモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG,Bruttisellen,Switzerland)である。エネルギーレベル:133μAで45kVp;投影:3000;視野:15mm;積分時間:750ms;平均:5回;及びボクセルサイズ:1画素あたり3μm。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットデータセットを作成し、そこでは、グレーレベルは、X線減衰の変化を反映し、ひいては材料密度に関連する。次いで、ISQファイルを、スケーリング係数を使用して8ビットに変換する。
【0177】
走査されたOCFサンプルを、通常、直径およそ14mmのコアを穿孔することによって調製する。OCFパンチを、低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査用の直径15mmのプラスチック円筒管に取り付ける。取り付けられた切断サンプル全ての体積全体がデータセットに含まれるように、サンプルの走査を取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さいサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出して3Dのデータスラブを作成し、ここで、細孔は、エッジ/境界効果なしに定性的に評価することができる。
【0178】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセット上に実装する。LTM法は、ユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始し、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てる。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又は、ストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようにサイズ決めされた球体でモザイク化する。球体によって囲まれたボクセルに、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットの固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットの固体空間境界)内に適合しかつ割り当てられたボクセルを含む、最大球面の径方向値が割り当てられる。
【0179】
LTMデータ走査から出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、スライスからスライスへの球面直径の変化をOCF深度の関数として推定するために使用することができる。ストラットの厚さを、3Dデータセットとして処理し、平均値は、サブボリュームの全体又は一部について評価することができる。計算及び測定は、Thermo Fisher ScientificのAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworksのMATLAB(登録商標)(R2017a)を使用して行った。
【0180】
試験3:シート物品の連続気泡含有パーセント
連続気泡含有パーセントを、ガス比重瓶法を通して測定する。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するガス置換法を使用する一般的な分析技術である。置換媒体としてヘリウム又は窒素のような不活性ガスが使用される。本発明の固体シート物品のサンプルを既知の体積の計器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次に別の精密な内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0181】
ASTM標準試験方法D2856は、気体比重瓶(air comparison pycnometer)のより古いモデルを使用して連続気泡パーセントを決定するための手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc比重瓶を使用する試験を実施することにより、便利にかつ精密に連続開気泡パーセントを決定することができる。ASTM手順書D2856は、発泡材料の連続気泡比率を決定するための5つの方法(A、B、C、D及びE)について述べている。これらの実験のために、窒素ガスを使用して、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順書の方法Cは、連続気泡パーセントを計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の等式に従って、キャリパー及び標準体積計算を使用して決定される幾何学的体積を、Accupycによって測定される連続気泡体積と単純に比較する。
連続気泡パーセント=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積100
【0182】
これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」において公開されている。
【0183】
試験4:シート物品の最終水分含有量
本発明の固体シート物品の最終水分含有量を、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得る。乾燥したシート物品の最低1gを測定トレー上に置く。次いで、標準プログラムを、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で実行する。
【0184】
試験5:シート物品の厚さ
本発明の可撓性多孔質固体シート物品の厚さを、Mitutoyo Corporation Digital Disk Stand Micrometer Model Number IDS-1012E(Mitutoyo Corporation,965 Corporate Blvd,Aurora,IL,USA 60504)などのマイクロメータ又は隙間ゲージを使用して得る。そのマイクロメータは、直径1インチ、重さ約32グラムのプラテンを有し、約0.09psi(6.32gm/cm)の印加圧力において厚さを測定する。
【0185】
可撓性多孔質固体シート物品の厚さは、プラテンを上げて、シート物品の一部分をプラテンの真下のスタンド上に置き、注意深くプラテンを下げてシート物品に接触させ、プラテンを離し、シート物品の厚さをミリメートル単位で数値表示装置上で測定することにより、測定する。平らでないより堅い基材の場合を除いて、厚さを可能な限り小さい表面圧力において測定するのを確実にするために、シート物品をプラテンの全てのエッジまで十分に延ばすべきである。
【0186】
試験6:シート物品の坪量
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の坪量を、その面積当たりのシート物品の重量(グラム/m)として計算する。その面積は、シート物品の外側エッジに直角の平坦表面上の投影面積として計算される。本発明の固体シート物品は、10cm×10cmの正方形サンプルに切断されているため、その面積は既知である。次いで、このような正方形サンプルの各々を秤量し、次に、得られた重量を100cmの既知の面積で割って、対応する坪量を決定する。
【0187】
不規則な形状の物品に対しては、それが平らな物体である場合、その面積は、したがってそのような物体の外周内で取り囲まれている面積に基づいて計算される。したがって、球状物体に関しては、面積は、平均直径に基づいて3.14×(直径/2)として計算される。したがって、円筒状物体に対しては、面積は、平均直径及び平均長さに基づいて直径×長さとして計算される。不規則な形状の三次元物体に対しては、その面積は、この側部に直角に方向付けられた平坦表面上に投影される最大外側寸法を備える側部に基づいて計算される。このことは、物体の外側寸法を1枚のグラフ用紙に鉛筆で注意深くトレーシングし、次に正方形を近似的に計数し、その正方形の既知の面積を乗算することによるか、又はスケールを含むトレーシングした領域(コントラストのために陰影がつけられている)の写真を撮り、画像分析技術を用いることにより、その面積を算定することによって達成することができる。
【0188】
試験7:シート物品の密度
本発明の可撓性多孔質固体シート物品の密度は、次の等式によって決定される。計算密度=多孔質固体物の坪量/(多孔質固体物の厚さ×1,000)。可撓性多孔質固体物の坪量及び厚みは、本明細書に記載の方法に従って決定される。
【0189】
試験8:シート物品の比表面積
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の比表面積を、ガス吸着技術を介して測定する。表面積は、分子規模の固体サンプルの露出した表面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet、及びTeller)理論は、表面積を決定するのに使用される最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を使用してガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下の工程によって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又はガス流下で熱してサンプルの表面上の汚染物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次にサンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析プロセスの最初の工程は、サンプル管を排気し、次に液体窒素温度でヘリウムガスを使用してサンプル管内の自由空間体積を測定する。次にサンプルを再度排気し、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが特定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集し始める。次にサンプルを、クリプトンガス吸着を備えるASAP2420を使用して分析してもよい。これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」という書籍において公開されている。
【0190】
試験9:シート物品の溶解速度
本発明の溶解性シート又は固体物品の溶解速度は、以下のように測定される。
1.室温(25℃)の脱イオン水400mLを1Lビーカーに加え、次いでビーカーを磁気撹拌板上に置く。
2.長さ23mm及び厚さ10mmを有する磁気撹拌棒を水に入れ、300rpmで回転するように設定する。
3.Mettler Toledo S230導電率メータを1413μS/cmに較正し、プローブを水のビーカー内に配置する。
4.各実験において、サンプルの数は、最低0.2gのサンプルが水に溶解するように選択される。
5.導電率メータ上のデータ記録機能を開始し、サンプルをビーカー内に落下させる。5秒間、ガラスビーカーの直径と同様の直径を有する平坦な鋼板を使用して、水の表面の下にサンプルを浸漬し、それらが表面に浮遊しないようにする。
6.導電率を、定常状態値に達するまで、少なくとも10分間記録する。
7.95%溶解に達するのに必要な時間を計算するために、まず、導電率データから10秒の移動平均を計算する。次いで、この移動平均が最終的な定常状態の導電率値の95%を超える時間を推定し、95%の溶解を達成するのに必要な時間として得る。
【0191】
試験10:コーティング組成物の安定性
全ての成分を250mLのプラスチックビーカーに一緒に添加し、オーバーヘッド撹拌機を使用して1000RPMで1分間混合することによって、コーティング組成物を調製する。次いで、コーティング組成物の安定性を決定するために、バイアルが完全に充填されるまで各配合物を30mLのガラスバイアルに注ぐ。バイアルを密封し、次いで室温下で24時間直立して貯蔵する。24時間後、各バイアルを液固分離について目視検査する。少なくとも5mmの垂直長さを有する液体層が測定される場合、混合物は不安定と見なされる。
【0192】
試験11:コーティング組成物の漏れ
コーティング組成物を添加した後の隣接する固体シート層間のコーティング組成物の漏れを、落下試験を使用することによって評価する。セクションIII:固体シートの作製プロセスの方法に従って調製された、この試験で使用される固体シートを、まず、温度及び湿度がそれぞれ23~24.5℃及び41~45%の相対湿度の範囲に制御された、温度及び湿度が制御された部屋に最低1時間置くことによって調整する。シートは個別に配置され、互いに積層されていない。
【0193】
次いで、ペーパーカッターを利用することによって、発泡体シートの10×10cmの正方形サンプルをより大きいシートから切り取る。10×10cmの正方形の4つ全てのエッジを、ペーパーカッターを利用することによって切断する。より大きなシート積層体の既存のエッジはいずれも、より小さい10×10cmの正方形のエッジとしては使用しない。
【0194】
次いで、コーティング組成物を10×10cmの正方形サンプルのうちの1つの中心に加え、次いで、第2の10×10cmのサンプルを第1のサンプルの上部に配置し、その結果、2つのシート層が向かい合った構成で配向される。試験中にシート積層体に過度の圧力は加えられず、過度の圧力は、シートの0.05mm以上の厚さの変化をもたらす任意の圧力として定義される。10×10cmのサンプルを、ペーパーカッターを使用することによって、より小さい5×5cmのサンプルに更に切断し、コーティング組成物を5×5cmのサンプルの中心に残す。
【0195】
落下試験は、以下のように実施する。プラスチック親指鉗子を利用して、試験サンプル(すなわち、5×5cmのサンプル)1.0メートルを床又は卓上などの固体表面の上に配置する。サンプルは、切断によって露出されたエッジのうちの1つが、固体表面と平行になるように配向される。次いで、サンプルを放出し、落下させる。固体表面に落下した後、2つのシート層のエッジは、コーティング組成物の存在によって分離し得、コーティング組成物の漏れをもたらす。したがって、接着のパーセンテージは、コーティング組成物の漏れ度の特性を示すために、「漏れスコア」として使用することができる。以下の基準に従って、0から5の範囲の「漏れスコア」が各サンプルに割り当てられる。
0-2つのシート層エッジの5%未満が互いに接触している
1-2つのシート層エッジのちょうど5%又は5~25%が互いに接着されている
2-2つのシート層エッジのちょうど25%又は25%~50%が互いに接着されている
3-2つのシート層エッジのちょうど50%又は50%~75%が互いに接着されている
4-2つのシート層エッジのちょうど75%又は75%~95%が互いに接着されている
5-2つのシート層エッジのちょうど95%又は95%超が互いに接着されている
【0196】
各サンプルエッジについて、隣接するシート層間の見かけの分離は、肉眼観察によって識別され、見かけのエッジ分離の長さは、定規を使用することによって測定される。次いで、接着のパーセンテージを以下のように計算する。4つのエッジにわたって合計された見かけのエッジ分離の長さ(センチメートル)/4つのエッジ長さの合計(センチメートル)。落下試験の最低3回の反復測定を、各配合物について実行する。
【0197】
試験12:漂白剤の安定性
固体物品内の漂白剤の安定性を、貯蔵期間後の固体物品中の有効酸素(AvO)のレベルとして決定する。特に、ヨウ素滴定分析によってAvOのレベルを決定する。サンプルを氷酢酸で酸性化し、その後、過剰のヨウ化カリウムを添加する。反応[1])中の過酸化物(H)は、ヨウ化物(I)をヨウ素(I)に定量的に酸化する。ヨウ素[2]は過剰なヨウ化物と錯体を形成して、水溶性三ヨウ化物種(I )を形成する。三ヨウ化物の濃度は、チオ硫酸ナトリウムによる滴定によって決定され[3]、サンプル中の有効酸素の量に比例する。
【0198】
【化3】
【0199】
操作:
1.サンプルの全内容物を1Lメスフラスコに0.001gの精度で秤量する。重量をWgとして記録する。
2.10%酢酸で注意深く希釈する。
3.10%酢酸で体積を調整する。約2時間よく撹拌する。
4.撹拌を維持しながら、10mLを滴定容器にピペットで入れる。次いで、40mLの10%酢酸を容器に添加する。
5.10mLの40%ヨウ化カリウム溶液を滴定容器に添加し、1mLのモリブデン酸試薬を添加して反応を促進する。
6.0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液での滴定を開始する。迅速に滴定する。
7.溶液が無色になり、少なくとも10秒間色がなくなり、到達終点と推測するまで、ゆっくりと滴定する。
8.終点に到達するまでの体積をTmLとして記録する。
計算:
【0200】
【数1】
【0201】
試験13:粘度
液体組成物の粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、0.054mmのギャップ幅、20℃の温度及び360秒にわたる毎秒1.0の剪断速度で測定する。
【0202】
試験14:抗微生物効果
本開示による固体シートの抗微生物効果は、中国軽工業規格(Chinese Light Industry Standard)QB/T2738-2012のシミュレーション方法(抗菌及び静菌効果における毎日の化学製品を評価するための試験方法)に従って測定される。要約すると、模擬洗濯条件下で、微生物を植え付けた布見本のセットを希釈生成物溶液に入れ、撹拌する。特定の接触時間の後、洗浄水及び試験布を個別に定量的に培養して決定する。特に、黄色ブドウ球菌及び大腸菌を試験株として使用する。殺傷効果は以下のように計算される。
殺傷%=(I-II)/I×100
(式中、Iは、対照サンプルのコロニーの平均数であり、
IIは、試験サンプルのコロニーの平均数である)。
【実施例
【0203】
実施例1:異なる加熱/乾燥構成によって作製された固体シート内の異なるOCF構造
以下の表1及び表2に記載の以下の界面活性剤/ポリマー組成物を有する湿潤プレミックスを、それぞれ洗濯ケアシート用及びヘアケアシート用に調製した。
【0204】
【表1】
【0205】
表1に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約14309.8cpsであった。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.25g/cmであった。
【0206】
【表2】
【0207】
表2に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約19254.6cpsであった。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.225g/cmであった。
【0208】
可撓性多孔質溶解性固体シートA及びBは、以下の表3に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Aeros)及び回転ドラム乾燥機を使用して、表1及び表2に記載の上記の湿潤プレミックスから調製した。
【0209】
【表3】
【0210】
可撓性多孔質溶解性固体シートCもまた、以下の表4に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及びホットプレート(底部伝導式加熱を提供する)上に配置された成形型を使用して、表2に記載の上記の湿潤プレミックスから調製した。
【0211】
【表4】
【0212】
更に、可撓性多孔質溶解性固体シートI及びIIは、以下の表5に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及び衝突オーブン上に配置された成形型を使用して、表1及び表2に記載の上記の湿潤プレミックスから調製した。
【0213】
【表5】
【0214】
以下の表6~9は、上記の湿潤プレミックス及び乾燥プロセスから作製された、固体シートA~C及び固体シートI~IIについて測定された様々な物理的パラメータ及び細孔構造を要約する。
【0215】
【表6】
【0216】
【表7】
【0217】
【表8】
【0218】
【表9】
【0219】
上記のデータは、本発明の固体シートが主に連続気泡性であり、回転ドラム乾燥プロセスによって作製された固体シートが100μm超の上面平均孔径を有し、衝突オーブンプロセスによって作製された固体シートはそうではないことを示す。具体的には、図6Aは、シートAの上面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、図6Bは、固体シートIの上面のSEM画像を示す。
【0220】
更に、上記のデータは、回転ドラム乾燥プロセスによって作製された固体シートが、衝突オーブン乾燥プロセスによって作製された固体シートよりも平均孔径の局所的なばらつきが著しく小さく、特に、底部平均孔径の上部平均孔径に対する比が著しく小さいことを示す。
【0221】
実施例2:増粘剤を添加することによって得られた安定したコーティング組成物
液体担体と固体粒子と増粘剤とを含むコーティング組成物、及び液体担体と固体粒子とのみを含むコーティング組成物を調製し、次いで試験10:コーティング組成物の安定性に従って試験した。結果を以下の表に示す。非イオン性界面活性剤を含有する液体担体への増粘剤の添加は、安定したコーティング組成物を首尾よく達成する。
【0222】
【表10】
Jinkeから入手可能な過炭酸ナトリウム(SPC)。
C12~C14エトキシル化アルコール(AE7)。
Evonik Industriesから入手可能なAerosil A200。
Jinkeから入手可能なTAED(96%活性)。
直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、80%活性
ラウレス-3硫酸ナトリウム(AES)と共にアミンオキシド(75.2%AES及び18.8%AO)
【0223】
実施例3:増粘剤を含まないコーティング組成物と比較した増粘剤を含むコーティング組成物の漏れの改善
コーティング組成物を含有する溶解性固体物品を、以下のように調製した。
【0224】
まず、(最小面積1.0×1.0mを有する)大きな固体シートを、セクションIII:固体シートの作製プロセスの方法に従って調製した。
【0225】
具体的には、固体シートの成分及び追加の水を含有する湿潤プレミックスを最初に調製して、約35重量%の総固形分を得た(すなわち、スラリー中の総含水量は約65重量%である)。スラリー調製方法は、以下のとおりであった。
1.まず、水及びグリセリンを一緒にガラスビーカーに加え、オーバーヘッド撹拌機を用いて200rpmで撹拌した。
2.撹拌を継続しながら、次いでポリビニルアルコールを、水及びグリセリンの入ったビーカーにゆっくりと添加し、溶液の発泡又はポリビニルアルコールの凝集が起こらないようにした。
3.次いでビーカーを水浴に入れ、撹拌を続けながら80℃に加熱した。ビーカーは、水の蒸発を軽減するためにクリングリフィルム又は錫箔で被覆し、混合を少なくとも1.0時間継続させた。
4.残りの成分を秤量し、別個のガラスビーカー内に一緒に添加した。スラリー中の65%の総含水量を達成するために必要とされる水の残部もまた、このビーカーに添加した。
5.このビーカーを80℃の水浴に入れ、その内容物を、オーバーヘッド撹拌機を用いて500rpmで少なくとも30分間撹拌した。
6.両方のビーカーで、予め規定された混合時間に到達してから、両方の内容物を一緒に単一のガラスビーカーに加え、続いて500rpmで継続的に撹拌し、温度を少なくとも更に30分間80℃に維持した。
【0226】
次いで、湿潤プレミックスを以下のように通気した。
1.ジャケット付きホッパ(モデルJCABT10)及びA20混合ヘッドからなるAeros A20連続エアレータを、水浴及びポンプを使用して80℃に予熱した。
2.次いで、前に調製したスラリーをホッパに添加した。次いで、エアレータ装置をオンにし、混合ヘッド速度、供給ポンプ速度、及び空気流量をそれぞれ600、500及び100に設定した。
3.通気されたスラリーは、エアレータ出口から回収され、その密度は、既知の体積の密度カップを充填し、通気されたスラリーの質量を計量することによって測定された。上記エアレータ設定では、約0.225g/cmの通気されたスラリー密度が達成された。
【0227】
厚さが約0.8~1.5mmの可撓性及び多孔質固体シートは、以下のように回転ドラム乾燥機プロセスを使用して生成された。
1.回転ドラム乾燥機(ドラム直径約1.5mを有する)を約100℃に予熱する。
2.Aeros A20の出口から回収された通気されたスラリーを、ドラム乾燥機の供給トラフに入れる。
3.入れたらドラム乾燥機の回転を開始し、加熱されたドラム上のスラリー滞留時間が約15分となるように回転速度が設定される。
4.乾燥してから、そのように形成された可撓性及び多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。
【0228】
次いで、固体シートを、41~45%の周囲相対湿度及び23~24.5℃の温度で最低1時間貯蔵した。
【0229】
次いで、ペーパーカッターを利用することによって、固体シートの10×10cmの正方形サンプルをより大きいシートから切り取った。10×10cmの正方形の4つ全てのエッジを、ペーパーカッターを利用することによって切断した。より大きなシート積層体の既存のエッジはいずれも、より小さい10×10cmの正方形のエッジとしては使用しなかった。
【0230】
次いで、コーティング組成物を下記のコーティング方法に従って10×10cmの正方形サンプルのうちの1つの中心に加え、次いで、第2の10×10cmのサンプルを第1のサンプルの上部に配置し、その結果、2つのシート層が向かい合った構成で配向された。試験中にシート積層体に過度の圧力は加えられず、過度の圧力は、シートの0.05mm以上の厚さの変化をもたらす任意の圧力として定義される。10×10cmのサンプルを、ペーパーカッターを使用することによって、より小さい5×5cmのサンプルに更に切断し、コーティング組成物を5×5cmのサンプルの中心に残した。次いで、5×5cmのサンプルを漏れ試験で使用した。
【0231】
コーティング方法は、以下のステップで構成される。特に、成分を混合することによってコーティング組成物を得た。次いで、ピペット又はスプーンを用いて、コーティング組成物の液滴を固体シートの表面上の単一の場所に分配し、コーティング組成物が液体粒子と固体粒子との混合物であり、良好な流動性を有する場合にピペットを使用した。この場所は、常に総発泡体の塊の最中心点であった。固体シートを質量天秤上に置き、質量をゼロに風袋引きした状態で、必要な質量のコーティング組成物に達するまで液滴を連続的に添加した。
【0232】
特に、この実施例で使用される固体シート及びコーティング組成物は、それぞれ表11及び表12に示す成分を含む。サンプル11~17は、同じ固体シートを含むが、異なるコーティング組成物を含む。より具体的には、サンプル14は、サンプル13に添加された過炭酸塩粉末の総質量に等しい1.8グラムの過炭酸塩粉末のみを添加した固体粒子の形態のコーティング組成物を含む。サンプル17は、コーティング組成物を含まない固体シートであった。
【0233】
【表11】
Sigma Aldrichから入手可能な、88%の加水分解レベル及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
【0234】
【表12】
Jinkeから入手可能な過炭酸ナトリウム(SPC)。
C12~C14エトキシル化アルコール(AE7)。
Evonik Industriesから入手可能なAerosil A200。
固体粒子のみ(液体担体又は増粘剤なし)
直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、80%活性
ラウレス-3硫酸ナトリウム(AES)及びアミンオキシド(75.2%AES及び18.8%AO)
コーティング組成物なしで発泡体シートのみ。
【0235】
間にコーティング組成物を含有する発泡体シートの漏れを、試験11:コーティング組成物の漏れに従って試験した。結果を上記表に示し、増粘剤の添加がコーティング組成物の漏れを著しく改善することを示す(5対2又は0)。
【0236】
実施例4:漂白剤を含有する固体物品の抗微生物効果
漂白剤を含有する溶解性固体物品を実施例3と同様に調製し、固体シート及びコーティング組成物はそれぞれ、以下の表に示す配合物を有していた。更に、固体シートの半数をまずヘッド・トゥ・トウ構成に積層し、次いで、コーティング組成物を上部シートの最中心点上に分注し、残りのシートをその上に積層した。固体シートを質量天秤上に置き、質量をゼロに風袋引きした状態で、必要な質量のコーティング組成物に達するまで液滴を連続的に添加した。特に、固体シートの総数は、10であり、下から上までの1枚目~3枚目のシート及び9枚目~10枚目のシートは外側の固体シートであり、その配合を表13aに示し、4枚目~8枚目は内側の固体シートであり、その配合を表13bに示し、コーティング組成物は、下から上までの5枚目と6枚目のシートとの間に塗布される。サンプル18及び19は、同じ固体シートを含むが、異なるコーティング組成物を含む。
【0237】
【表13】
Sigma Aldrichから入手可能な、88%の加水分解レベル及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
【0238】
【表14】
Sigma Aldrichから入手可能な、88%の加水分解レベル及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
【0239】
【表15】
Jinkeから入手可能な過炭酸ナトリウム(SPC)。
C12~C14エトキシル化アルコール(AE7)。
Evonik Industriesから入手可能なAerosil A200。
【0240】
本開示による固体物品の抗微生物効果を試験した。特に、固体物品を、まず水に完全に溶解し、次いで特定の希釈係数に従って希釈した。その後、33の希釈係数を使用して、試験14(すなわち、QBT2738-2012におけるシミュレーション法)に従って、抗微生物効果を決定した。以下の表15に示す結果は、本開示による固体物品が優れた抗微生物効果を達成することを示す。
【0241】
【表16】
【0242】
実施例5:同じ条件下で貯蔵された漂白剤単独と比較した溶解性固体物品に含有されるコーティング組成物中の漂白剤の安定性の改善
コーティング組成物を含有する溶解性固体物品は、コーティング組成物が漂白剤を含んでいた実施例3と同様に調製した。更に、シートの半数をまずヘッド・トゥ・トウ構成に積層し、次いで、コーティング組成物を上部シートの最中心点上に分注し、残りのシートをその上に積層した。2つ以上のコーティング組成物を塗布した場合、一部のシートをまずヘッド・トゥ・トウ構成に積層し、次いで、第1のコーティング組成物を上部シートの最中心点上に分注した。その後、1つ以上のシートを上部に積層し、次いで第2のコーティング組成物を、上部シートの最中心点上に分注した。最後に、残りのシートをその上に積層した。シートは常に、コーティング組成物がシートの底部面に分配されるように配向した。固体シートを質量天秤上に置き、質量をゼロに風袋引きした状態で、必要な質量のコーティング組成物に達するまで液滴を連続的に添加した。
【0243】
固体シート及びコーティング組成物は、それぞれ、以下の表に示す配合を有し、比較例iは、過炭酸塩粒子及びTAED粒子の単純な混合物である。更に、実施例I及びIIの固体シート層の総数は、15であり、第1のコーティング組成物は、下から上までの5枚目と6枚目のシートとの間に塗布され、第2のコーティング組成物は、下から上までの10枚目と11枚目のシートとの間に塗布される。
【0244】
【表17】
Sigma Aldrichから入手可能な、88%の加水分解レベル及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコール。
Evonik製のRewoquat Ci-Deedmac(カチオン性界面活性剤)
Jinkeから入手可能な過炭酸ナトリウム(SPC)。
Evonik Industriesから入手可能なAerosil A200。
Jinkeから入手可能なTAED(96%活性)。
Evonik Industriesから入手可能なAerosil A200。
【0245】
本開示による固体物品に含有される漂白剤の安定性を、試験12に従って試験した。次の表17に示す結果は、固体物品に含有される漂白剤の安定性が、漂白剤単独と比較して著しく改善されていることを示す。
【0246】
【表18】
45ミクロンの厚さのPP小袋に密封し、次いで、45℃、75%RHで3週間貯蔵した。
【0247】
本発明の前に、本開示による固体シートの多孔質構造は、多孔質構造が環境内の多くの水分を吸収し得、水分が漂白剤と反応し得るため、本開示による固体シートの外側で、漂白剤の安定性を損なう、又はせいぜい同様の安定性を維持し得ることが予想されていた。反対に、驚くべきことに、溶解性固体物品に充填された漂白剤の安定性が漂白剤単独と比較して著しく改善されることが、本発明の発明者らによって発見されている。
【0248】
実施例Iの固体シートの内部(すなわち、第1のコーティング組成物と接触している層の最中心でサンプルを得た)及びエッジ(すなわち、固体シートのエッジでサンプルを得た)における水分を、24時間貯蔵した後、試験4に従って試験した(45ミクロンの厚さのPP小袋に密封し、次いで、45℃、75%RHで貯蔵した)。次の表18に示す結果は、固体シートが湿潤環境に配置された24時間後に、固体シートの内部及びエッジにおける水分が実質的に同じであることを示す。したがって、本開示で達成される改善された安定性は、固体シート中の漂白剤が依然として水分と接触し得るため、完全に予想外である。
【0249】
【表19】
【0250】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0251】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとは見なされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとは見なされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0252】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C