(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】コア線分離装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H02G1/14
(21)【出願番号】P 2022563695
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021040964
(87)【国際公開番号】W WO2022107628
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020191051
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】白井 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122100(JP,A)
【文献】特開2016-123215(JP,A)
【文献】実開昭56-100022(JP,U)
【文献】特開平11-155211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 1/12
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ被覆から露出したドレイン線と複数のコア線とを含む多芯ケーブルを保持する保持装置と、
前記ドレイン線と前記複数のコア線とを分離する分離部材と、
前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルの軸線方向と交差する移動方向に前記分離部材を移動させる移動装置と、を備え、
前記分離部材は、前記分離部材が前記移動方向に移動するときに前記ドレイン線に引っ掛からずかつ前記複数のコア線に引っ掛かる引っ掛け部を有している、
コア線分離装置。
【請求項2】
前記引っ掛け部は、前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記移動方向の逆方向に位置しており、前記分離部材が前記移動方向に移動するとき、前記多芯ケーブルの軸線方向および前記移動方向に直交する方向である直交方向視において、前記多芯ケーブルの軸線を横切るように移動する、
請求項1に記載のコア線分離装置。
【請求項3】
前記引っ掛け部は、前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記移動方向の逆方向に位置しており、前記分離部材が前記移動方向に移動するときには、前記移動方向視において、前記複数のコア線の少なくとも一部と重なるとともに前記ドレイン線と離れている、
請求項1または2に記載のコア線分離装置。
【請求項4】
前記多芯ケーブルの軸線方向および前記移動方向に直交する方向を直交方向、前記直交方向のうちの一方を第1の直交方向、前記直交方向のうちの他方
であって前記第1の直交方向の逆方向を第2の直交方向とするとき、
前記保持装置は、前記ドレイン線よりも前記第1の直交方向および前記第2の直交方向にそれぞれ前記複数のコア線の一部が位置するように前記多芯ケーブルを保持しており、
前記引っ掛け部は、
前記保持装置に保持された前記ドレイン線よりも前記第1の直交方向に位置する第1引っ掛け部と、
前記保持装置に保持された前記ドレイン線よりも前記第2の直交方向に位置する第2引っ掛け部と、を備えている、
請求項1~3のいずれか一つに記載のコア線分離装置。
【請求項5】
前記分離部材は、前記第1引っ掛け部および前記第2引っ掛け部を前記直交方向に移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記第1引っ掛け部を前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記第1の直交方向に退避させること、および、前記第2引っ掛け部を前記複数のコア線よりも前記第2の直交方向に退避させることが可能に構成されている、
請求項4に記載のコア線分離装置。
【請求項6】
前記分離部材は、
前記第1引っ掛け部よりも前記第1の直交方向に設けられ、前記直交方向視において前記保持装置に保持された前記複数のコア線を横切るように延びる第1アームと、
前記第2引っ掛け部よりも前記第2の直交方向に設けられ、前記直交方向視において前記保持装置に保持された前記複数のコア線を横切るように延びる第2アームと、をさらに備えている、
請求項4または5に記載のコア線分離装置。
【請求項7】
前記分離部材は、前記第1アームおよび前記第2アームのうちの少なくとも一方を前記直交方向に移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記第1アームおよび前記第2アームのうちの少なくとも一方を移動させて、前記第1アームと前記第2アームとに前記複数のコア線を挟持させることが可能に構成されている、
請求項6に記載のコア線分離装置。
【請求項8】
前記分離部材は、前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記移動方向に位置する規制部を備えている、
請求項1~7のいずれか一つに記載のコア線分離装置。
【請求項9】
前記ドレイン線および前記複数のコア線は、前記多芯ケーブルの先端部において前記被覆から露出しており、
前記移動方向は、前記多芯ケーブルの先端側に向かうほど前記多芯ケーブルの軸線から離れるように前記多芯ケーブルの軸線方向に対して斜交した方向である、
請求項1~8のいずれか一つに記載のコア線分離装置。
【請求項10】
前記引っ掛け部は、前記分離部材が前記移動方向に移動されるときに前記複数のコア線に接触する接触面を有し、
前記接触面は、前記多芯ケーブルの先端側に向かうほど前記多芯ケーブルの軸線から離れるように前記多芯ケーブルの軸線方向に対して斜交した方向に延びている、
請求項9に記載のコア線分離装置。
【請求項11】
前記引っ掛け部は、前記分離部材が前記移動方向に移動するとき、前記複数のコア線のうちの前記被覆との境界部に最初に引っ掛かる、
請求項1~10のいずれか一つに記載のコア線分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア線分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
従来から、ドレイン線と複数のコア線とが被覆によって覆われた多芯ケーブルが知られている。一般的に、ドレイン線とコア線とは、このような多芯ケーブルの先端部の被覆を剥いた後、別々に処理される。例えば特許文献1には、被覆が剥かれた多芯ケーブルの端末からコア線とドレイン線とを引き出し、その後、ドレイン線に対してコア線とは別の処理を行う方法が開示されている。特許文献1の開示によれば、ドレイン線はコア線と分離された後、熱収縮チューブに挿通され、纏められる。ドレイン線には、その後、さらに他の止水処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上記したようなドレイン線とコア線との分離作業は、従来は手作業で行われていた。この分離作業をコア線分離装置により自動で行うことができれば、線処理の効率が向上する。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、多芯ケーブルのドレイン線と複数のコア線とを分離することができるコア線分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコア線分離装置は、それぞれ被覆から露出したドレイン線と複数のコア線とを含む多芯ケーブルを保持する保持装置と、前記ドレイン線と前記複数のコア線とを分離する分離部材と、前記保持装置に保持された前記多芯ケーブルの軸線方向と交差する移動方向に前記分離部材を移動させる移動装置と、を備えている。前記分離部材は、前記分離部材が前記移動方向に移動するときに前記ドレイン線に引っ掛からずかつ前記複数のコア線に引っ掛かる引っ掛け部を有している。
【0007】
上記コア線分離装置によれば、分離部材が移動装置によって移動される際、複数のコア線は、分離部材の引っ掛け部に引っ掛けられる。複数のコア線が分離部材に引っ掛けられ、かつ、分離部材が移動することにより、複数のコア線は曲げられる。一方で、ドレイン線には分離部材が引っ掛けられないため、ドレイン線は曲げられない。その結果、多芯ケーブルのドレイン線と複数のコア線とを分離することができる。
【0008】
前記引っ掛け部は、前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記移動方向の逆方向に位置している。前記引っ掛け部は、前記分離部材が前記移動方向に移動するとき、前記多芯ケーブルの軸線方向および前記移動方向に直交する方向である直交方向視において、前記多芯ケーブルの軸線を横切るように移動する。
【0009】
上記コア線分離装置によれば、分離部材は、移動方向に移動するとき、直交方向視において、多芯ケーブルの軸線を横切るように移動する。そのとき、引っ掛け部は、複数のコア線よりも移動方向の逆方向に位置している。そのため、分離部材を移動方向に移動させることにより、引っ掛け部をコア線に引っ掛けることができる。
【0010】
前記引っ掛け部は、前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記移動方向の逆方向に位置しており、前記分離部材が前記移動方向に移動するときには、前記移動方向視において、前記複数のコア線の少なくとも一部と重なるとともに前記ドレイン線と離れている。
【0011】
上記コア線分離装置によれば、引っ掛け部は、移動方向視において、複数のコア線の少なくとも一部と重なっている。そのため、分離部材を移動方向に移動させることにより、引っ掛け部をコア線に引っ掛けることができる。また、引っ掛け部は、移動方向視において、ドレイン線とは離れている。そのため、分離部材を移動方向に移動させても、引っ掛け部はドレイン線には引っ掛からない。
【0012】
本発明に係るコア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記多芯ケーブルの軸線方向および前記移動方向に直交する方向を直交方向、前記直交方向のうちの一方を第1の直交方向、前記直交方向のうちの他方を第2の直交方向とするとき、前記保持装置は、前記ドレイン線よりも前記第1の直交方向および前記第2の直交方向にそれぞれ前記複数のコア線の一部が位置するように前記多芯ケーブルを保持している。前記引っ掛け部は、前記保持装置に保持された前記ドレイン線よりも前記第1の直交方向に位置する第1引っ掛け部と、前記保持装置に保持された前記ドレイン線よりも前記第2の直交方向に位置する第2引っ掛け部と、を備えている。
【0013】
上記コア線分離装置によれば、ドレイン線よりも第1の直交方向に配置されたコア線および第2の直交方向に配置されたコア線を、それぞれ第1引っ掛け部および第2引っ掛け部によって引っ掛けることができる。そのため、複数のコア線をドレイン線から効率良く分離することができる。
【0014】
上記コア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記分離部材は、前記第1引っ掛け部および前記第2引っ掛け部を前記直交方向に移動させる駆動部をさらに備えている。前記駆動部は、前記第1引っ掛け部を前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記第1の直交方向に退避させること、および、前記第2引っ掛け部を前記複数のコア線よりも前記第2の直交方向に退避させることが可能に構成されている。
【0015】
上記コア線分離装置によれば、駆動部によって第1引っ掛け部および第2引っ掛け部を直交方向に移動させることにより、コア線よりも直交方向の外方に第1引っ掛け部および第2引っ掛け部を退避させることができる。そのため、次の多芯ケーブルのドレイン線とコア線とを分離するために分離部材を元の位置に戻すときに、次の多芯ケーブルのコア線およびドレイン線に第1引っ掛け部および第2引っ掛け部が接触することを回避できる。
【0016】
上記コア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記分離部材は、第1アームと、第2アームと、をさらに備えている。前記第1アームは、前記第1引っ掛け部よりも前記第1の直交方向に設けられ、前記直交方向視において前記保持装置に保持された前記複数のコア線を横切るように延びている。前記第2アームは、前記第2引っ掛け部よりも前記第2の直交方向に設けられ、前記直交方向視において前記保持装置に保持された前記複数のコア線を横切るように延びている。
【0017】
上記コア線分離装置によれば、第1アームと第2アームとは、コア線を直交方向の外方から挟んでいる。そのため、分離部材を移動方向に移動させたときにコア線が直交方向の外方に逃げて曲げられない不具合を抑制することができる。
【0018】
上記コア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記分離部材は、前記第1アームおよび前記第2アームのうちの少なくとも一方を前記直交方向に移動させる駆動部をさらに備えている。前記駆動部は、前記第1アームおよび前記第2アームのうちの少なくとも一方を移動させて、前記第1アームと前記第2アームとに前記複数のコア線を挟持させることが可能に構成されている。
【0019】
上記コア線分離装置によれば、駆動部によって第1アームおよび第2アームを直交方向の内方に移動させることにより、第1アームおよび第2アームにコア線を挟持させることができる。これにより、分離部材が移動する際にコア線が第1アームおよび第2アームによってしごかれる。そのため、コア線の癖を矯正しながらコア線を分離することができる。
【0020】
上記コア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記分離部材は、前記保持装置に保持された前記複数のコア線よりも前記移動方向に位置する規制部を備えている。
【0021】
上記コア線分離装置によれば、規制部により、分離部材を移動方向に移動させるときに複数のコア線が移動方向に逃げることが規制される。そのため、コア線の分離を安定して行うことができる。
【0022】
本発明に係るコア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記ドレイン線および前記複数のコア線は、前記多芯ケーブルの先端部において前記被覆から露出している。前記移動方向は、前記多芯ケーブルの先端側に向かうほど前記多芯ケーブルの軸線から離れるように前記多芯ケーブルの軸線方向に対して斜交した方向である。
【0023】
本願発明者の知見によれば、複数のコア線を上記したようなコア線分離装置で曲げる場合には、曲げ角度を90度よりも小さくすると、良好に曲げることができる。上記コア線分離装置によれば、複数のコア線は、多芯ケーブルの先端側に向かうほど多芯ケーブルの軸線から離れるように多芯ケーブルの軸線方向に対して斜交する方向に曲げられる。言い換えれば、複数のコア線は、多芯ケーブルの軸線方向から90度よりも小さい角度だけ曲げられる。そのため、複数のコア線を良好に曲げることができる。
【0024】
上記コア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記引っ掛け部は、前記分離部材が前記移動方向に移動されるときに前記複数のコア線に接触する接触面を有している。前記接触面は、前記多芯ケーブルの先端側に向かうほど前記多芯ケーブルの軸線から離れるように前記多芯ケーブルの軸線方向に対して斜交した方向に延びている。
【0025】
上記コア線分離装置によれば、コア線に接触する接触面の伸長方向と分離部材の移動方向とがなす角度が小さくなり、接触面の伸長方向が分離部材の移動方向と平行に近くなる。そのため、複数のコア線をよりスムーズに接触面に沿わせることができる。その結果、複数のコア線をよりスムーズに曲げることができる。
【0026】
上記コア線分離装置の好ましい一態様によれば、前記引っ掛け部は、前記分離部材が前記移動方向に移動するとき、前記複数のコア線のうちの前記被覆との境界部に最初に引っ掛かる。
【0027】
上記コア線分離装置によれば、コア線の根元部分である境界部が引っ掛け部によって最初に引っ掛けられるため、コア線の概ね全体をドレイン線と分離することが確実にできる。なお、引っ掛け部は、複数のコア線のうちの被覆との境界部に最初に引っ掛かればよく、その後は境界部に引っ掛かり続けても、コア線の他の場所に移動してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るコア線分離装置によれば、多芯ケーブルのドレイン線と複数のコア線とを分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】第1実施形態に係るコア線分離装置の左側面図である。
【
図5】クランプが第2位置に位置した状態のコア線分離装置を示す左側面図である。
【
図7】複数のコア線を挟持した状態のクランプを示す正面図である。
【
図8】第2実施形態に係るコア線分離装置の左側面図である。
【
図9】第3実施形態に係るコア線分離装置の左側面図である。
【
図10】他の実施形態に係る分離部材を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。まず、ここでの線処理の対象である多芯ケーブル1について
図1を参照しながら説明する。
図1は、一例に係る多芯ケーブル1の模式的な断面図である。
図1に示すように、多芯ケーブル1は、ドレイン線2と複数のコア線3とシールド4とが被覆5によって覆われた電線である。複数のコア線3は、例えば、電気信号を伝達する信号線として使用される。複数のコア線3は、それぞれ、芯線3aと芯線3aを覆う絶縁体の被覆3bとを有している。シールド4は、コア線3を外部のノイズから遮蔽する導体である。シールド4は、複数のコア線3の外側を覆っている。ドレイン線2は、シールド4に電気的に接続されている。ドレイン線2は接地され、これによりシールド4が接地される。ドレイン線2は、複数の細い導体素線からなり、絶縁体による被覆はされていない。図示は省略するが、複数のコア線3とドレイン線2とはシールド4の内部において撚り合わされている。シールド4は、絶縁体の被覆5によって覆われている。なお、コア線3の本数は特に限定されない。
【0031】
本実施形態に係るコア線分離装置10(
図2参照)に装着される前に、多芯ケーブル1に対しては、先端部の被覆5を剥く処理と、撚り合わされた複数のコア線3およびドレイン線2の撚りをほどく処理とが行われる。ただし、ここでは、先端部の被覆5は、ドレイン線2および複数のコア線3から完全には抜かれず、ドレイン線2および複数のコア線3の先端部が挿通されたままになっている(
図2参照)。これは、撚りをほどかれたドレイン線2および複数のコア線3が広がるのを抑制するためである。以下では、ドレイン線2および複数のコア線3に差し込まれたままになっている先端部の被覆5を、必要に応じ符号5aで示す。コア線分離装置10には、上記処理が行われた後の多芯ケーブル1が装着される。なお、多芯ケーブル1は、ドレイン線2の少なくとも一部と複数のコア線3の少なくとも各一部とが露出するように被覆5が剥かれていればよく、被覆5からドレイン線2およびコア線3が露出する部分は多芯ケーブル1の先端部には限定されない。また、先端部の被覆5aは、複数のコア線3から完全に抜かれてもよい。以下では、特に断らない限り、被覆5からのドレイン線2の露出部分を単にドレイン線2と呼び、被覆5からの複数のコア線3の各露出部分を単にコア線3と呼ぶこととする。
【0032】
図2は、第1実施形態に係るコア線分離装置10の左側面図である。
図3は、コア線分離装置10の正面図である。以下の説明では、
図2の紙面右方をコア線分離装置10の前方側とする。前方から見たコア線分離装置10の左方、右方、上方、下方をそれぞれ左方、右方、上方、下方とする。前後方向、左右方向、および上下方向は互いに直交している。以下の図において、前方、後方、左方、右方、上方、下方は、それぞれF、Rr、L、R、U、Dで表す。ただし、以下の説明における各方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
図2および
図3に示すように、コア線分離装置10は、保持装置20と、クランプ30と、移動装置40と、図示しない制御装置と、を備えている。保持装置20は、多芯ケーブル1を所定の向きおよび位置に保持する。クランプ30は、ドレイン線2と複数のコア線3とを分離する分離部材の一例である。移動装置40は、クランプ30を移動させる装置である。コア線分離装置10は、複数のコア線3を引っ掛けたクランプ30を移動装置40によって移動することにより、複数のコア線3を曲げるように構成されている。複数のコア線3は、曲げられることによりドレイン線2から分離する。
【0034】
保持装置20は、被覆5の一部が剥かれた多芯ケーブル1を所定の方向に沿って保持する。上記所定の方向は、ここでは、
図2に示すように前後方向である。保持装置20に保持された多芯ケーブル1は、前後方向に延びている。多芯ケーブル1は、前方側の先端部の被覆5が剥かれている。保持装置20は、多芯ケーブル1の被覆5が残留している部分を保持している。保持装置20は、ドレイン線2の露出部分および複数のコア線3の各露出部分よりも後方において多芯ケーブル1を保持している。多芯ケーブル1が保持装置20によって保持された状態では、ドレイン線2および複数のコア線3の露出部分は、保持装置20よりも前方の空中に保持され、概ね前後方向に延びる。以下では、前後方向のことを多芯ケーブル1の軸線方向X、または単にX方向とも呼ぶ。また、以下では、前方のことをX1方向とも呼び、後方のことをX2方向とも呼ぶ。
【0035】
保持装置20は、クランプ爪21と、クランプ爪21を動かす保持アクチュエータ22とを備えている。保持アクチュエータ22は、例えば、エアシリンダである。多芯ケーブル1は、保持アクチュエータ22によって多芯ケーブル1の径方向に移動されるクランプ爪により把持され、または開放される。ただし、保持装置20の構成は特に限定されない。
【0036】
保持装置20は、周方向に関して予め定められた向きで多芯ケーブル1を保持している。詳しくは、
図3に示すように、保持装置20は、前後方向視においてドレイン線2が0時の位置にくるような向きで多芯ケーブル1を保持している(
図1も同じ向きで図示しているため、
図1も参照)。この多芯ケーブル1の向きは、作業者の目視によって調整されたものであってもよく、多芯ケーブル1の向きを調整する装置によって調整されたものであってもよい。多芯ケーブル1の向きを調整する装置は、例えば、ドレイン線2の位置を検知するカメラと、多芯ケーブル1を軸線周りに回転させる機構とを備えていてもよい。多芯ケーブル1は、多芯ケーブル1の向きを調整する装置から保持装置20まで自動搬送され、保持装置20により自動で保持されてもよい。
【0037】
クランプ30は、保持装置20よりも前方(X1方向)に設けられている。
図4は、クランプ30の斜視図である。
図4に示すように、クランプ30は、第1クランプアーム31と、第2クランプアーム32と、第1アーム支持部材33と、第2アーム支持部材34と、ガイド部材35と、駆動部36と、を備えている。第1クランプアーム31および第2クランプアーム32は、複数のコア線3に接触する部材である。第1クランプアーム31は、第1アーム支持部材33に支持されている。第2クランプアーム32は、第2アーム支持部材34に支持されている。ガイド部材35は、第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34を左右方向に摺動可能に支持している。駆動部36は、第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34を介して、第1クランプアーム31および第2クランプアーム32を左右方向に移動させるように構成されている。
【0038】
図4に示すように、第1クランプアーム31は、第1アーム31aと、第1爪部31bとを備えている。第1アーム31aは、水平面に対して斜交するように延びている。詳しくは、第1アーム31aは、左右方向視において、前方(多芯ケーブル1の先端側であるX1方向)に向かうほど上方に向かうように軸線方向Xに対して斜交している。第1アーム31aは、
図4に示すように、左右方向にも延びている。第1アーム31aは、平板状に構成されている。
図4に示すように、第1アーム31aの右方(クランプ30の内方)側の側面には、第1曲線部31a1が設けられている。第1曲線部31a1は、右方側(クランプ30の内方)に向かって突起した円弧状の断面を有し、第1アーム31aの伸長方向に延びている。
【0039】
第1爪部31bは、第1アーム31aから右方(クランプ30の内方)に向かって突出している。第1アーム31aは、第1爪部31bよりも左方に設けられている。第1アーム31aは、第1爪部31bの左方側の端部に接続されている。第1爪部31bは、クランプ30が後述する移動方向B1に移動されるときに複数のコア線3に接触する第1接触面31b1を有している。第1接触面31b1は、ここでは、第1爪部31bの下面である。第1接触面31b1は、前方(多芯ケーブル1の先端側であるX1方向)に向かうほど多芯ケーブル1の軸心から離れる(ここでは、下方に向かう)ように軸線方向Xに対して斜交するA方向(
図2参照、なお、
図2では第1接触面31b1は図示省略)に延びている。ここでは、第1アーム31aの伸長方向とA方向とは直交している。
図4に示すように、第1接触面31b1は、左右方向にも延びている。
【0040】
第1クランプアーム31は、第1爪部31bおよび第1アーム31aよりも先に延びた先端部を有している。第1クランプアーム31の先端の右方(クランプ30の内方)側の隅には、
図4に示すように、略三角形の第1面取り31cが設けられている。第1面取り31cにより、第1クランプアーム31の先端部は、先端に近づくほど左右方向の長さが小さくなっている。
【0041】
第2クランプアーム32は、第1クランプアーム31と左右方向に並んでいる。第2クランプアーム32は、第1クランプアーム31よりも右方に設けられている。第2クランプアーム32は、クランプ30の左右方向の中心線を基準として、第1クランプアーム31と概ね対称に構成されている。第2クランプアーム32は、第2アーム32aと、第2爪部32bとを備えている。第2アーム32aは、左右方向視において、前方(X1方向)に向かうほど上方に向かうように軸線方向Xに対して斜交する方向に延びている。第2アーム32aは、左右方向視において第1アーム31aと平行かつ同じ位置に、すなわち左右方向視において重なるように設けられている。第2アーム32aの左方側の側面には、第1曲線部31a1と左右対称に構成された第2曲線部32a1が設けられている。
【0042】
第2爪部32bは、第2アーム32aから左方(クランプ30の内方)に向かって突出している。第2アーム32aは、第2爪部32bよりも右方に設けられている。第2アーム32aは、第2爪部32bの右方側の端部に接続されている。第2爪部32bの第2接触面32b1も、
図2のA方向および左右方向に延びている。第2クランプアーム32の先端の左方(クランプ30の内方)側の隅には、略三角形の第2面取り32cが設けられている。第1面取り31cおよび第2面取り32cが向かい合うエリアでは、左右方向に関する第1クランプアーム31と第2クランプアーム32との間の距離は、第1クランプアーム31および第2クランプアーム32の先端部に近づくほど大きく、第1爪部31bおよび第2爪部32bに近づくほど小さくなっている。
【0043】
図4に示すように、第1クランプアーム31には、第2クランプアーム32の方に向かって右方に延びる第1規制バー31dが設けられている。第1規制バー31dは、第2クランプアーム32に形成された段差に当接している。同様に、第2クランプアーム32には、第1クランプアーム31の方に向かって左方に延び、第1クランプアーム31に形成された段差に当接する第2規制バー32d(
図3参照)が設けられている。第1規制バー31dおよび第2規制バー32dは、第1アーム31aと第2アーム32aとの間の空間の下方側の境界を区画している。なお、第1規制バー31dが第2クランプアーム32に形成された段差に当接し、第2規制バー32dが第1クランプアーム31に形成された段差に当接することにより、クランプ30の組立時に、第1クランプアーム31および第2クランプアーム32の上下方向の位置が揃うようになっている。
【0044】
図4に示すように、第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34は、それぞれ、第1クランプアーム31および第2クランプアーム32を下方から支持している。第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34は、ここではそれぞれ2つの部品を結合することによって形成されている。ただし、第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34は、それぞれ一つの部品によって構成されていてもよい。
【0045】
ガイド部材35は、第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34を左右方向に摺動可能に支持している。ガイド部材35は、左右方向に延びるガイド溝35aを備えている。第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34は、ガイド溝35aに摺動可能に係合している。ガイド部材35は、第1アーム支持部材33、および、第1クランプアーム31の第1アーム31aよりも下方の部分を介して、第1アーム31aを左右方向に摺動可能に支持している。ガイド部材35は、同様に、第2アーム支持部材34、および、第2クランプアーム32の第2アーム32aよりも下方の部分を介して、第2アーム32aを左右方向に摺動可能に支持している。
【0046】
駆動部36は、第1アーム31aおよび第2アーム32aをガイド部材35に沿って左右方向に移動させる。駆動部36は、第1アーム31aおよび第2アーム32aとともに、第1爪部31bおよび第2爪部32bも左右方向に移動させる。駆動部36は、クランプアクチュエータ36aと、図示しない一対のリンク部材とを備えている。クランプアクチュエータ36aは、例えば、エアシリンダである。一対のリンク部材のうちの一方は、クランプアクチュエータ36aの伸縮するロッド(図示せず)と第1アーム支持部材33とに接続されている。一対のリンク部材のうちの他方は、クランプアクチュエータ36aのロッドと第2アーム支持部材34とに接続されている。クランプアクチュエータ36aのロッドが伸縮することにより、リンク部材を介してロッドに接続された第1アーム支持部材33および第2アーム支持部材34がガイド部材35に沿って左右方向に移動する。これにより、第1アーム31aおよび第2アーム32aが左右方向に移動する。ただし、駆動部36の構成は特に限定されない。駆動部36は、例えば、電動モータとボールねじとを備えていてもよい。
【0047】
駆動部36は、ここでは、第1クランプアーム31と第2クランプアーム32とを連動して動かすように構成されている。駆動部36の一対のリンク部材は、ここでは、左右対称に構成されている。そのため、駆動部36は、第1クランプアーム31を左方または右方にある距離だけ移動させるとき、同時に第2クランプアーム32を右方または左方に同じ距離だけ移動させる。第1クランプアーム31と第2クランプアーム32とは、クランプ30の左右方向の中心線を基準として対称的に離反するか、または接近するように移動する。ただし、駆動部36は、第1クランプアーム31と第2クランプアーム32とを独立に動かすことができるように構成されていてもよい。以下では、第1クランプアーム31と第2クランプアーム32とを接近させる動作を「クランプ30を閉じる」とも呼び、第1クランプアーム31と第2クランプアーム32とを離反させる動作を「クランプ30を開く」とも呼ぶ。また、第1クランプアーム31と第2クランプアーム32とが最も離れた状態を「クランプ30の開状態」とも呼ぶ。
【0048】
移動装置40は、クランプ30を保持して移動させるように構成されている。
図5は、クランプ30が可動範囲の下端に位置した状態のコア線分離装置10を示す左側面図である。なお、
図2は、クランプ30が可動範囲の上端に位置した状態のコア線分離装置10を示している。以下、
図2に示すクランプ30の上端位置を第1位置P1とも呼び、
図5に示すクランプ30の下端位置を第2位置P2とも呼ぶこととする。移動装置40は、第1位置P1と第2位置P2との間でクランプ30を移動させるように構成されている。第1位置P1は、分離される前の複数のコア線3よりも上方に第1爪部31bおよび第2爪部32bが位置するようなクランプ30の位置である。第2位置P2は、分離される前の複数のコア線3よりも下方に第1爪部31bおよび第2爪部32bが位置するようなクランプ30の位置である。
【0049】
第2位置P2は、ここでは、第1位置P1よりも前方(多芯ケーブル1の先端部の方向であるX1方向)かつ下方に設定されている。
図5に示すように、移動装置40は、多芯ケーブル1の軸線方向Xに交差する方向にクランプ30を移動させる。詳しくは、移動装置40は、多芯ケーブル1の先端側(ここでは前方)に向かうほど多芯ケーブル1の軸線から離れる(ここでは、下方に向かう)ように軸線方向Xに対して斜交する方向(以下、B方向)にクランプ30を移動させる。B方向は、ここでは、A方向よりもやや鉛直に近い方向である。なお、以下では、B方向のうち第1位置P1から第2位置P2に向かう方向をB1方向とも呼び、第2位置P2から第1位置P1に向かう方向をB2方向とも呼ぶ。B1方向は、クランプ30がコア線3を分離する際に、移動装置40によって移動される方向である。
図2、
図3、および
図5に示すように、移動装置40は、B方向に延びるガイドレール41と、スライドベース42と、移動アクチュエータ43と、を備えている。スライドベース42は、B方向に摺動可能にガイドレール41に係合するとともに、クランプ30を支持している。移動アクチュエータ43は、スライドベース42に連結され、ガイドレール41に沿ってスライドベース42を移動させる。これにより、クランプ30がB方向に移動する。移動アクチュエータ43は、ここでは、エアシリンダである。ただし、移動装置40の構成は特に限定されない。
【0050】
コア線分離装置10は、各部の動作を制御する制御装置を備えている。制御装置は、保持アクチュエータ22と、クランプアクチュエータ36aと、移動アクチュエータ43とに接続され、それらの動作を制御している。制御装置の構成は特に限定されない。制御装置は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置は、例えば、プログラマブルコントローラやコンピュータなどであってもよい。制御装置による各部の動作制御については、以下のコア線3の分離プロセスの説明の中で説明する。
【0051】
[コア線分離プロセス]
以下では、コア線分離装置10によるコア線3の分離プロセスの一例について説明する。
【0052】
[多芯ケーブルの保持]
まず、保持装置20にセットされた状態の多芯ケーブル1について説明する。
図6は、多芯ケーブル1がセットされた状態の保持装置20およびクランプ30の正面図である。
図6に示すように、保持装置20は、ドレイン線2よりも左方および右方にそれぞれ複数のコア線3の一部が位置するように多芯ケーブル1を保持する。保持装置20は、ここでは、前後方向視において0時の方向にドレイン線2が位置するような向きで多芯ケーブル1を保持する。そのため、複数のコア線3は、ドレイン線2の左方および右方に分散配置される。多芯ケーブル1は、作業者により、上記したような向きで保持装置20にセットされてもよい。あるいは、多芯ケーブル1は、多芯ケーブル1を搬送する自動装置により、上記のように保持装置20にセットされてもよい。
【0053】
なお、以下では、左右方向のことを多芯ケーブル1の幅方向Y、または単にY方向とも呼ぶ。そのうち左方をY1方向、右方をY2方向とも表す。多芯ケーブル1の幅方向Yは、多芯ケーブル1の軸線方向Xおよびクランプ30の移動方向B1に直交する方向である。また、以下では、上下方向を符号Zでも表し、そのうち下方をZ1方向、上方をZ2方向とも呼ぶこととする。上下方向Zは、多芯ケーブル1の軸線方向Xおよび幅方向Yに直交する方向である。
【0054】
[クランプアームの移動]
クランプ30は、ここに説明するプロセスの開始時点では第2位置P2(
図5参照)に位置付けられ、開状態とされている。ここから、コア線分離装置10は、移動装置40を駆動させてクランプ30を第1位置P1(
図2参照)に移動させる。
図6は、第1位置P1に位置するとともに開状態のクランプ30を図示している。
図6に示すように、クランプ30の開状態では、第1爪部31bは、複数のコア線3よりもY1方向に位置している。このとき、第1爪部31bよりもさらにY1方向に設けられた第1アーム31aも、複数のコア線3よりもY1方向に位置している。また、クランプ30の開状態では、第2爪部32bは、複数のコア線3よりもY2方向に位置している。このとき、第2爪部32bよりもさらにY2方向に設けられた第2アーム32aも、複数のコア線3よりもY2方向に位置している。クランプ30の開状態では、第1爪部31b、第2爪部32b、第1アーム31a、および第2アーム32aはいずれも、複数のコア線3よりもY方向の外方に位置している。言い換えると、クランプ30の開状態では、複数のコア線3は、第1爪部31bおよび第2爪部32bよりもY方向の内方に位置している。なお、
図6に示すように、ドレイン線2も、第1爪部31bおよび第2爪部32bよりもY方向の内方に位置している。クランプ30は、第2位置P2から第1位置P1に移動される際に開状態であるため、ドレイン線2および複数のコア線3に接触しない。
【0055】
クランプ30には、複数のコア線3の一部または全部がクランプ30が開状態における第1爪部31bおよび第2爪部32bよりもY方向外方に位置付けられていた場合のために、第1面取り31cおよび第2面取り32cが設けられている。クランプ30がB2方向に移動されると、第1爪部31bおよび第2爪部32bよりもY方向外方に位置するコア線3は、第1面取り31cまたは第2面取り32cに当接する。このようなコア線3は、第1面取り31cまたは第2面取り32cの傾斜に沿って第1クランプアーム31と第2クランプアーム32との間に誘導される。
【0056】
図6に示すように、クランプ30を第1位置P1に位置付けると、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、保持装置20に保持された複数のコア線3よりもB2方向に位置する。また、
図2に示すように、クランプ30を第1位置P1に位置付けると、第1アーム31aは、Y方向視において複数のコア線3を横切るように配置される。第2アーム32aも同様に、クランプ30を第1位置P1に位置付けると、Y方向視において複数のコア線3を横切るように配置される。
図6に示すように、複数のコア線3は、第1アーム31aと第2アーム32aとの間であって、第1爪部31bおよび第2爪部32bよりもZ1方向のエリア(以下、クランプ30の挟持エリアと言う)に収容される。このとき、第1アーム31aおよび第2アーム32aよりもB1方向に設けられた第1規制バー31d(
図4参照)および第2規制バー32dは、保持装置20に保持された複数のコア線3よりもB1方向に位置している。かつ、第1規制バー31dおよび第2規制バー32dは、B方向視において、複数のコア線3の一部と重なっている。第1規制バー31dおよび第2規制バー32dは、クランプ30の挟持エリアのB1方向側の境界を区画している。このとき、ドレイン線2は、第1爪部31bと第2爪部32bとの間に位置している。
【0057】
また、
図2に示すように、クランプ30を第1位置P1に移動させると、第1爪部31bおよび第2爪部32b(
図6参照)は、複数のコア線3のうちの被覆5との境界部3cの上方に移動する。ここで、複数のコア線3の被覆5との境界部3cとは、例えば、露出したコア線3の3分の1よりも被覆5側の部分を意味する。さらに好ましくは、境界部3cは、露出したコア線3の5分の1よりも被覆5側の部分である。
【0058】
[コア線の挟持]
次のステップでは、クランプ30が閉じられる。このとき、第1クランプアーム31はY2方向に、第2クランプアーム32はY1方向に移動する。
図7は、複数のコア線3を挟持した状態のクランプ30を示す正面図である。
図7に示すように、クランプ30が閉じられると、複数のコア線3は、第1アーム31aと第2アーム32aとによって挟持される。さらに詳しくは、複数のコア線3は、第1アーム31aおよび第2アーム32aのうち、断面が円弧状に構成された第1曲線部31a1および第2曲線部32a1によって挟持される。断面円弧状の第1曲線部31a1および第2曲線部32a1にはエッジがないため、これによって、クランプ30による挟持によりコア線3に傷がつくことが抑制されている。複数のコア線3がクランプ30によって挟持された状態では、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、多芯ケーブル1の幅方向Yに関して、複数のコア線3と重なるような位置に位置付けられる。B方向視では、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、複数のコア線3の一部と重なっている。第1アーム31aと第2アーム32aとがコア線3を挟持する力は、クランプ30が移動装置40によって移動されると第1アーム31aおよび第2アーム32aに対してコア線3が滑る程度の力である。
【0059】
図7に示すように、ドレイン線2は、このとき、複数のコア線3よりもクランプ30のY方向の中心側に位置しているために、クランプ30によって挟持されない。さらに、ドレイン線2は、第1爪部31bと第2爪部32bよりもさらにY方向の中心側に位置している。クランプ30が複数のコア線3を挟持した状態であっても、第1爪部31bは、ドレイン線2よりもY1方向(Y方向外方)に位置している。また、第2爪部32bは、ドレイン線2よりもY2方向(Y方向外方)に位置している。
【0060】
[被覆の抜き取り]
次のステップでは、ドレイン線2および複数のコア線3の先端部から抜かれないままになっていた被覆5aが、ドレイン線2および複数のコア線3から抜き取られる。この抜き取りは、被覆5aを抜き取るように構成された自動装置によって行われてもよく、作業者によって行われてもよい。ドレイン線2および複数のコア線3を広がらないように保持し、クランプ30の挟持エリア内に収容しやすくしていた被覆5aは、ここで多芯ケーブル1から離脱する。
【0061】
[コア線の分離]
次のステップでは、移動装置40により、クランプ30が第2位置P2に移動される。このとき、クランプ30は、第1爪部31bおよび第2爪部32bが保持装置20に保持されたドレイン線2に引っ掛からず、かつ、複数のコア線3に引っ掛かるように移動する。第1爪部31bおよび第2爪部32bは、保持装置20に保持された複数のコア線3よりもB2方向に位置しており、クランプ30がB1方向に移動するとき、Y方向視において、多芯ケーブル1の軸線を横切るように移動する。第1爪部31bおよび第2爪部32bは、クランプ30がB1方向に移動するときには、B1方向視において、複数のコア線(3)の一部と重なっている。これにより、第1爪部31bおよび第2爪部32bに複数のコア線3が引っ掛けられる。
【0062】
図7から理解されるように、クランプ30がB1方向に移動されると、複数のコア線3は、第1爪部31bの第1接触面31b1または第2爪部32bの第2接触面32b1に当てつき、第1爪部31bまたは第2爪部32bに引っ掛けられる。第1爪部31bおよび第2爪部32bは、クランプ30がB1方向に移動するとき、複数のコア線3の境界部3c(
図2参照)に最初に引っ掛かる。第1接触面31b1および第2接触面32b1は、クランプ30がB1方向に移動されるのに伴いB1方向に平行移動する。これにより、第1接触面31b1および第2接触面32b1に当てついた複数のコア線3は、第1接触面31b1および第2接触面32b1に倣ってB方向に折り曲げられる。かかるコア線3の曲げが行われている間、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、複数のコア線3よりもB2方向に位置している。これにより、コア線3の曲げ作業の間、第1接触面31b1および第2接触面32b1に複数のコア線3が当てつき続ける。第1爪部31bおよび第2爪部32bに引っ掛けられるコア線3の部分は、クランプ30の移動につれてコア線3の先端側に向かって移動する。
【0063】
コア線3の曲げが行われている間、第1アーム31aおよび第2アーム32aは、Y方向視において複数のコア線3と交差している。これにより、複数のコア線3がY方向の外方に逃げることが抑制される。また、クランプ30の挟持エリアのB1方向側の境界を区画する第1規制バー31dおよび第2規制バー32dにより、複数のコア線3がB1方向に逃げることが抑制される。
【0064】
一方、ドレイン線2は、第1爪部31bおよび第2爪部32bよりもY方向の内方に位置しているため、クランプ30の移動からは取り残される。ドレイン線2は、クランプ30がB2方向に移動すると、第1爪部31bと第2爪部32bとの間の隙間からクランプ30の挟持エリアの外部に逃げる。その結果、ドレイン線2と複数のコア線3とが分離される。
【0065】
なお、上記したプロセスは好適な一例に過ぎず、コア線3の分離プロセスは上記したものに限定されない。例えば、保持装置20による多芯ケーブル1の保持は、クランプ30が第1位置P1に位置し、開状態のときに行われてもよい。
【0066】
[第1実施形態の作用効果]
以下、本実施形態に係るコア線分離装置10が奏する作用効果について説明する。
【0067】
本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、保持装置20は、ドレイン線2よりもY方向の外方(Y1方向およびY2方向)に複数のコア線3の一部が位置するような向きで多芯ケーブル1を保持している。また、コア線3の分離時には、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、それぞれ、B方向視において複数のコア線3の一部と重なるとともにドレイン線2とは離れた位置に位置する。より具体的には、コア線3の分離時には、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、それぞれ、ドレイン線2よりもY方向の外方(Y1方向およびY2方向)であって、複数のコア線3のY方向の最外部よりも内方に位置する。そのため、移動装置40によってクランプ30がB1方向に移動されると、複数のコア線3は第1爪部31bおよび第2爪部32bに引っ掛けられ、ドレイン線2は、第1爪部31bおよび第2爪部32bに引っ掛けられない。クランプ30がコア線3に引っ掛けられ、かつ、クランプ30がB1方向に移動することにより、複数のコア線3は曲げられる。一方、ドレイン線2は、クランプ30の移動によっても曲げられない。その結果、多芯ケーブル1のドレイン線2と複数のコア線3とを分離することができる。
【0068】
かつ、本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、ドレイン線2のY1方向およびY2方向に分散配置されたコア線3を、それぞれ第1爪部31bおよび第2爪部32bによって引っ掛けることができる。そのため、複数のコア線3をドレイン線2から効率良く分離することができる。
【0069】
本実施形態に係るコア線分離装置10は、ドレイン線2ではなく複数のコア線3を曲げることにより、ドレイン線2と複数のコア線3とを分離する。多芯ケーブル1においては、各コア線3は芯線3aが被覆3bに覆われた構造を有している。それに対し、ドレイン線2は、複数の導体素線からなっており、被覆に覆われていない。そのため、ドレイン線2を動かそうとすると、ドレイン線2を構成する複数の導体素線がばらばらになり、後の処理に支障が生じるおそれがある。本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、ドレイン線2ではなく複数のコア線3を曲げることによりドレイン線2と複数のコア線3とを分離する。そのため、分離作業においてドレイン線2を構成する複数の導体素線がばらばらになる危険を低減できる。
【0070】
また、本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、クランプ30は、第1アーム31aおよび第2アーム32aを備えている。第1アーム31aは、第1爪部31bよりもY方向外方に設けられ、Y方向視において複数のコア線3を横切るように延びている。第2アーム32aは、第2爪部32bよりもY方向外方に設けられ、Y方向視において複数のコア線3を横切るように延びている。第1アーム31aと第2アーム32aとは、複数のコア線3をY方向の外方から挟んでいる。そのため、クランプ30を第2位置P2に向かって移動させたときに複数のコア線3がY方向の外方に逃げてうまく曲げられない不具合を抑制することができる。
【0071】
本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、クランプ30は、保持装置20に保持された複数のコア線3よりもB1方向に位置する第1規制バー31dおよび第2規制バー32dを備えている。第1規制バー31dおよび第2規制バー32dは、クランプ30をB1方向に移動させたときに複数のコア線3がB1方向に逃げるのを規制している。第1規制バー31dおよび第2規制バー32dにより、コア線3をB1方向に安定して曲げることができる。
【0072】
本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、クランプ30は、第1アーム31aおよび第2アーム32aをY方向に移動させる駆動部36を備えている。駆動部36は、第1アーム31aおよび第2アーム32aをY方向に移動させ、第1アーム31aと第2アーム32aとによって複数のコア線3を挟持することが可能に構成されている。クランプ30が複数のコア線3を挟持した状態で移動装置40によって移動されると、コア線3が第1アーム31aおよび第2アーム32aによってしごかれる。そのため、コア線3の癖を矯正しながらコア線3を分離することができる。また、第1規制バー31dおよび第2規制バー32dも、クランプ30をB1方向に移動させたときに複数のコア線3がB1方向に逃げるのを規制することにより、コア線3を安定してしごくことに貢献している。なお、複数のコア線3を挟持するという点から言えば、駆動部36は、第1アーム31aおよび第2アーム32aのうちのいずれか一方をY方向に移動させるように構成されていてもよく、両方をY方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0073】
また、駆動部36は、第1爪部31bを複数のコア線3よりもY方向の外方に退避させること、および、第2爪部32bを複数のコア線3よりもY方向の外方に退避させることが可能なように構成されている。そのため、クランプ30を第2位置P2から第1位置P1に戻すときに、次の多芯ケーブル1のコア線3およびドレイン線2に第1爪部31bおよび第2爪部32bが接触することを回避できる。
【0074】
本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、クランプ30の移動方向であるB1方向は、多芯ケーブル1の先端側に向かうほど多芯ケーブル1の軸線から離れるように多芯ケーブル1の軸線方向(X方向)に対して斜交した方向に設定されている。本願発明者の知見によれば、上記したようなコア線分離装置でコア線3を曲げる場合には、曲げ角度は90度よりも小さい方がよい。曲げ角度が90度よりも小さい場合に、コア線3を特に良好に曲げることができる。本実施形態に係るコア線分離装置10は、コア線3の曲げ角度を90度よりも小さくするように構成されているため、複数のコア線3を良好に曲げることができる。
【0075】
本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、爪部31b、32bの接触面31b1、32b1は、多芯ケーブル1の先端側に向かうほど多芯ケーブル1の軸線から離れるように多芯ケーブル1の軸線方向(X方向)に対して斜交したA方向に延びている。かかる構成によれば、接触面31b1、32b1の伸長方向であるA方向と、クランプ30の移動方向であるB1方向との間の角度が小さくなる。言い換えると、接触面31b1、32b1の伸長方向とクランプ30の移動方向とが平行に近くなる。そのため、クランプ30を移動するときに複数のコア線3をスムーズに接触面31b1、32b1に沿わせることができる。その結果、複数のコア線3をスムーズに曲げることができる。
【0076】
本実施形態に係るコア線分離装置10によれば、第1爪部31bおよび第2爪部32bは、クランプ30がB1方向に移動するとき、複数のコア線3のうち、被覆5との境界部3cに最初に引っ掛かる。コア線3の根元部分である境界部3cを第1爪部31bおよび第2爪部32bによって最初に引っ掛けることにより、コア線3の概ね全体をドレイン線2と分離することが確実にできる。また、境界部3cは、複数のコア線3が比較的まとまっている箇所である。そのため、境界部3cを第1爪部31bおよび第2爪部32bで引っ掛けることにより、複数のコア線3を良好に曲げることができる。
【0077】
[第2実施形態]
第2実施形態では、移動装置およびクランプアームの構成が第1実施形態と異なる。第2実施形態に係るコア線分離装置のそれ以外の構成は、第1実施形態に係るコア線分離装置10と基本的に共通である。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の機能を奏する部材には、第1実施形態と共通の符号を付すものとする。また、重複する説明は、適宜省略または簡潔化する。方向についても第1実施形態と共通とする。なお、後述する第3実施形態および他の実施形態の説明についても同様である。
【0078】
図8は、第2実施形態に係るコア線分離装置10の左側面図である。
図8に示すように、本実施形態に係るコア線分離装置10は、第1実施形態と共通の保持装置20を備えている。クランプ130は、ここでは、多芯ケーブル1の軸線方向に略直交する方向に延びるアーム131を備えている。爪部132の接触面132aは、多芯ケーブル1の軸線方向に略平行に延びている。
【0079】
移動装置140は、ここでは、ブラケット141と、複数のリンク部材142と、エアシリンダ143とを備えている。ブラケット141は、クランプ130を支持している。リンク部材142は平板状に構成され、両端に回転軸142a、142bが設けられている。一端の回転軸142aは、ブラケット141の側面に接続されている。リンク部材142は、ブラケット141に対して回転軸142a周りに回転可能に構成されている。リンク部材142の他端の回転軸142bは、コア線分離装置10のフレーム11に接続されている。リンク部材142は、フレーム11に対して回転軸142b周りに回転可能に構成されている。そのため、回転軸142bを軸としてブラケット141をフレーム11に対して回動させることができるとともに、回転軸142aの効果により回動中もブラケット141の姿勢を一定に保つことができる。
【0080】
エアシリンダ143は、リンク部材142に支持されたブラケット141を略上下方向に移動させる。エアシリンダ143は、伸縮するロッド143aを備えている。エアシリンダ143は、ロッド143aの伸縮方向が略上下方向となるように設けられている。ロッド143aの先端部には、回転軸143cを有するジョイント143bが設けられている。回転軸143cは、ブラケット141に接続されている。エアシリンダ143のロッド143aとは逆側の端部は、フレーム11に揺動可能に支持されている。
【0081】
図8の実線で示したブラケット141、リンク部材142、およびジョイント143bは、ロッド143aが伸びた状態のブラケット141、リンク部材142、およびジョイント143bを表している。ロッド143aが縮んだ状態のブラケット141、リンク部材142、およびジョイント143bは、2点鎖線で示されている。
図8の実線および2点鎖線のブラケット141の図に示すように、エアシリンダ143が伸縮すると、ブラケット141は、概ね上下方向に移動する。その際、ブラケット141の姿勢は概ね維持される。そのため、エアシリンダ143の伸縮によるブラケット141の動きは、ほぼ上下方向への平行移動となる。よって、ブラケット141に支持されたクランプ130も、上下方向にほぼ平行移動する。
【0082】
本実施形態では、クランプ130を第1位置P1(実線)から第2位置P2(2点鎖線)に移動させることにより、コア線3を下方に向かって曲げることができる。このように、移動装置140は、リンク部材142を利用してクランプ130を略並行移動させてもよい。また、移動装置140は、クランプ130を多芯ケーブル1の軸線方向に直交または略直交する方向に移動させてもよい。クランプ130の接触面132aは、多芯ケーブル1の軸線方向に略平行に延びていてもよい。
【0083】
なお、上記では、クランプ130を多芯ケーブル1の軸線方向に略直交する方向に移動させたが、クランプ130は、多芯ケーブル1の軸線方向に斜交する方向に移動されてもよい。
【0084】
[第3実施形態]
第3実施形態では、移動装置の構成が第1実施形態および第2実施形態と異なる。
図9は、第3実施形態に係るコア線分離装置10の左側面図である。
図9に示すように、本実施形態に係るコア線分離装置10は、第1実施形態および第2実施形態と共通の保持装置20を備えている。また、本実施形態に係るコア線分離装置10は、第2実施形態と同様のクランプ230を備えている。
【0085】
移動装置240は、ここでは、ブラケット241と、エアシリンダ242とを備えている。ブラケット241は、クランプ230を支持している。ブラケット241の下部には、回転軸241aが設けられている。回転軸241aは、コア線分離装置10のフレーム11に接続されている。ブラケット241は、フレーム11に対して回転軸241a周りに回転可能に構成されている。
【0086】
エアシリンダ242は、ブラケット241を回転軸241a周りに回動させる。エアシリンダ242は、伸縮するロッド242aを備えている。エアシリンダ242は、ロッド242aの伸縮方向が略上下方向となるように設けられている。ロッド242aの先端部には、回転軸242cを有するジョイント242bが設けられている。回転軸242cは、ブラケット241に接続されている。エアシリンダ242のロッド242aとは逆側の端部は、フレーム11に揺動可能に支持されている。
【0087】
図9の実線で示したクランプ230は、ロッド242aが伸びた状態のクランプ230を表している。ロッド242aが縮んだ状態のクランプ230は、2点鎖線で示されている。
図9の実線および2点鎖線のクランプ230の図に示すように、エアシリンダ242が伸縮すると、クランプ230は、ブラケット241とともに回転軸241a周りに回動する。
【0088】
本実施形態では、クランプ230を第1位置P1(実線)から第2位置P2(2点鎖線)に移動させることにより、コア線3を下方に向かって曲げることができる。このように、移動装置240は、クランプ230を平行移動させなくてもよい。移動装置240は、コア線3の曲げ方向に直交する方向に延びる回転軸周りにクランプ230を回転移動させるように構成されていてもよい。クランプ230が移動装置240によって移動される移動方向は、多芯ケーブル1の軸線方向と交差する方向であるが、本実施形態に示すように、多芯ケーブル1の軸線方向と交差する方向には、回動運動の際の移動方向のような刻々変化する方向も含まれる。
【0089】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明した。ただし、上記実施形態は例示に過ぎず、他にも種々の実施形態が可能である。以下、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0090】
他の1つの好適な実施形態では、ドレイン線と複数のコア線とを分離する分離部材は、コア線に引っ掛かる1つの引っ掛け部だけを有していてもよい。さらには、分離部材は、コア線の側方に位置するアームや、引っ掛け部を移動させる駆動部を備えなくてもよい。
図10は、他の実施形態に係る分離部材330を模式的に示す図である。
図10のX方向は多芯ケーブル1の軸線方向を表し、Y方向は多芯ケーブル1の幅方向を表している。Z1方向はX方向視におけるコア線3の曲げ方向を表している。Z1方向はX方向視における分離部材330の移動方向でもある。なお、
図10に示すように、Z1方向とその逆方向であるZ2方向を総称してZ方向と表す。
【0091】
図10に示すように、ここに示す実施形態では、分離部材330は、Z方向に延びる棒状に構成されている。ただし、分離部材330の形状は特に限定されない。分離部材330のZ1方向を向いた面は、引っ掛け部(接触面)331を構成している。ただし、引っ掛け部331の向きは限定されない。
図10に示すように、引っ掛け部331は、保持装置(図示せず)によって保持された複数のコア線3よりもZ2方向に位置している。かつ、引っ掛け部331は、分離部材330の移動方向であるZ1方向視において、複数のコア線3の少なくとも一部と重なるように設けられている。そのため、引っ掛け部331は、Z1方向に移動されると、複数のコア線3に当接する。引っ掛け部331は、分離部材330の移動方向であるZ1方向視において、ドレイン線2から離れている。詳しくは、引っ掛け部331は、ドレイン線2よりもY方向の外方に位置している。分離部材330は、Z1方向に移動されても引っ掛け部331がドレイン線2に当接せず、ドレイン線2の側方を通過するように構成されている。分離部材330は、曲げる前の複数のコア線3よりもZ2方向の第1位置P1と、第1位置P1よりもZ1方向に設定された第2位置P2との間で移動される。
【0092】
図示は省略するが、分離部材330がZ1方向に移動するときに、引っ掛け部331がドレイン線2に引っ掛からず、かつ、複数のコア線3に引っ掛かることにより、複数のコア線3はZ1方向に曲げられ、ドレイン線2は曲げられずに取り残される。これにより、ドレイン線2とコア線3とを分離することができる。
【0093】
ここでは、引っ掛け部331は、複数のコア線3よりも移動方向Z1の逆方向であるZ2方向に位置しており、分離部材330がZ1方向に移動するとき、Y方向視において、多芯ケーブル1の軸線を横切るように移動する。そのため、分離部材330を移動方向Z1に移動させることにより、引っ掛け部331をコア線3に引っ掛けることができる。
【0094】
さらに、引っ掛け部331は、分離部材330がZ1方向に移動するときには、Z1方向視において、複数のコア線3の少なくとも一部と重なっている。そのため、分離部材330を移動方向Z1に移動させることにより、引っ掛け部331をコア線3に引っ掛けることができる。また、引っ掛け部331は、分離部材330がZ1方向に移動するときには、Z1方向視において、ドレイン線2から離れている。そのため、分離部材330を移動方向Z1に移動させても、ドレイン線2は引っ掛け部331に引っ掛からず、曲げられない。
【0095】
なお、ここでは、分離部材330は、Z1方向に直線的に移動されるが、分離部材330の移動経路は直線状の経路に限定されない。分離部材330の移動経路は、引っ掛け部331がドレイン線2に引っ掛からず、かつ、複数のコア線3に引っ掛かるような移動経路であればよく、それ以上限定されない。例えば、分離部材330の移動経路は、曲線状であってもよい。
【0096】
その他、特に言及されない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。例えば上記した実施形態では、多芯ケーブルの軸線方向の引っ掛け部の長さは短かく構成されていたが、長くてもよい。例えば、多芯ケーブルの軸線方向の引っ掛け部の長さは、保持装置よりも先端側の多芯ケーブルの長さの半分以上であってもよい。かかる引っ掛け部は、第3実施形態のように分離部材を回動軸周りに回動させる移動装置と組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 多芯ケーブル
2 ドレイン線
3 コア線
10 コア線分離装置
20 保持装置
30 クランプ(分離部材)
31 第1クランプアーム
31a 第1アーム
31b 第1爪部(第1引っ掛け部)
31b1 第1接触面
31d 第1規制バー(規制部)
32 第2クランプアーム
32a 第2アーム
32b 第2爪部(第2引っ掛け部)
32b1 第2接触面
32d 第2規制バー(規制部)
36 駆動部
40 移動装置