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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プラズマアブレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20241029BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B18/12
A61M25/09
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022572175
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045862
(87)【国際公開番号】W WO2022138290
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2020216726
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】西尾 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】真柄 隆彰
(72)【発明者】
【氏名】吉武 駿平
(72)【発明者】
【氏名】三原 翔大
(72)【発明者】
【氏名】坂田 賢亮
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189826(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/246037(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマアブレーションシステムであって、
長尺状の外形を有し、先端部に導電性を有する第1電極が形成されたプラズマガイドワイヤと、
長尺状の外形を有し、先端側に導電性を有する第2電極が形成されると共に、内側に前記プラズマガイドワイヤを挿通させるためのルーメンが形成されたカテーテルと、
前記プラズマガイドワイヤ及び前記カテーテルのそれぞれと電気的に接続され、前記第1電極と前記第2電極とに高周波電力を出力するRFジェネレータと、
を備え、
前記プラズマガイドワイヤは、前記第1電極と前記第2電極との間の放電によって生体組織のアブレーションを行うことが可能であり、
前記RFジェネレータは、前記アブレーションにおいて、
放電時電力が50W以上かつ100W以下であり、かつ、
パルス幅は2μsであり、かつ、
デューティ比が7.4%以上かつ40.0%以下にパルス変調された前記高周波電力を出力する、プラズマアブレーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマアブレーションシステムであって、
前記RFジェネレータは、デューティ比が9.1%以上かつ13.0%以下にパルス変調された前記高周波電力を出力する、プラズマアブレーションシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマアブレーションシステムであって、
前記プラズマガイドワイヤの先端荷重は、0.3gf以上かつ20.0gf以下である、プラズマアブレーションシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプラズマアブレーションシステムであって、
前記プラズマガイドワイヤは、前記第1電極に加えてさらに、
導電性を有し、長尺状の外形を有するコアシャフトと、
導電性を有し、前記コアシャフトの先端側の一部分を取り囲んで配置されたコイル体と、
絶縁性を有し、前記コイル体の外周を覆って配置された被覆部と、を備え、
前記第1電極は、前記コアシャフト、前記コイル体、及び前記被覆部の各先端をそれぞれ固定している、プラズマアブレーションシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプラズマアブレーションシステムであって、
前記カテーテルは、前記第2電極に加えてさらに、
導電性を有し、前記カテーテルの基端側に形成されており、前記RFジェネレータと電気的に接続される基端側電極と、
導電性を有し、前記第2電極と前記基端側電極とを電気的に接続する接続部であって、前記カテーテルの肉厚部に埋設されている接続部と、を備える、プラズマアブレーションシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマアブレーションシステムであって、
前記カテーテルは、さらに、素線を網目織りにしたメッシュ形状の補強部であって、前記カテーテルの肉厚部に埋設されている補強部を備える、プラズマアブレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマアブレーションシステム、及び、プラズマガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心臓の拍動リズムに異常をきたす不整脈等の治療方法として、アブレーション治療が知られている。例えば、特許文献1~5には、このようなアブレーション治療において使用可能な、プラズマ流を用いて生体組織(不整脈の原因となっている部分)を切断する装置及びシステムが開示されている。
【0003】
ここで、プラズマ流を用いたアブレーションでは、電極から放出されたエネルギーが生体組織に吸収され、沸点を超えた生体組織が蒸気やプラズマとなって噴出する。このため、アブレーションの際には、電極の周囲において、衝撃波やキャビテーション(液体中の圧力差により生じる気泡)を伴う蒸気層が生じ、周囲の物質が振動することが知られている。この点、特許文献1~5に記載の装置及びシステムでは、エネルギーを放出する電極を、穿刺装置や、プローブ、切断電極、導電性ブレードのような高剛性の部材に設けることで、アブレーション時の振動に耐えうる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9179932号明細書
【文献】特表2006-517843号公報
【文献】米国特許第6135998号明細書
【文献】米国特許第6780178号明細書
【文献】特表2018-524132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、慢性完全閉塞(CTO:Chronic Total Occlusion)のように、血管内が病変部によって閉塞されてしまう場合がある。このような場合に、病変部をアブレーションすることで、CTOの開通を容易に行いたいという要望がある。しかし、特許文献1~5に記載の装置及びシステムでは、電極が設けられた部材(穿刺装置、プローブ、切断電極、導電性ブレード等)の剛性が、ガイドワイヤに比べて高い。このため、特許文献1~5に記載の穿刺装置等を、複雑に湾曲した血管内において病変部まで押し進めることは、安全性の観点から好ましくないという課題があった。なお、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった生体管腔内に対して挿入され、アブレーション治療を行う装置またはシステムの全般に共通する。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、プラズマアブレーションシステムにおいて、安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、プラズマアブレーションシステムが提供される。このプラズマアブレーションシステムは、長尺状の外形を有し、先端部に導電性を有する第1電極が形成されたプラズマガイドワイヤと、長尺状の外形を有し、先端側に導電性を有する第2電極が形成されると共に、内側に前記プラズマガイドワイヤを挿通させるためのルーメンが形成されたカテーテルと、前記プラズマガイドワイヤ及び前記カテーテルのそれぞれと電気的に接続され、前記第1電極と前記第2電極とに高周波電力を出力するRFジェネレータと、を備え、前記プラズマガイドワイヤは、前記第1電極と前記第2電極との間の放電によって生体組織のアブレーションを行うことが可能であり、前記RFジェネレータは、放電時電力が50W以上かつ100W以下であり、かつ、デューティ比が7.4%以上かつ40.0%以下にパルス変調された前記高周波電力を出力する。
【0009】
この構成によれば、プラズマアブレーションシステムは、先端部に導電性を有する第1電極が形成されたプラズマガイドワイヤと、先端側に導電性を有する第2電極が形成されたカテーテルと、を備える。このため、プラズマガイドワイヤをカテーテル内に挿通させた状態で、第1電極と第2電極とに高周波電力を出力することで、第1電極と第2電極との間の放電によって放出されたエネルギーを用いて、生体組織のアブレーションを行うことができる。また、RFジェネレータは、放電時電力が50W以上かつ100W以下であり、かつ、デューティ比が7.4%以上かつ40.0%以下にパルス変調された高周波電力を出力する。このため、例えば、穿刺装置、プローブ、切断電極、導電性ブレードのような従来の構成と比べて、柔軟な(剛性の低い)ガイドワイヤに対して第1電極を設けた場合であっても、アブレーションの際に第1電極の周囲において生じる蒸気層を最小限に留めることができ、周囲の物質の振動に伴うプラズマガイドワイヤ先端部の跳ねを抑制できる。この結果、本構成によれば、プラズマアブレーションシステムにおいて、安全性の向上を図ることができる。
【0010】
(2)上記形態のプラズマアブレーションシステムにおいて、前記RFジェネレータは、デューティ比が9.1%以上かつ13.0%以下にパルス変調された前記高周波電力を出力してもよい。
この構成によれば、RFジェネレータは、デューティ比が9.1%以上かつ13.0%以下にパルス変調された高周波電力を出力する。このため、アブレーション時の蒸気層を最小限にしてプラズマガイドワイヤ先端部の跳ねを抑制しつつ、アブレーションにより形成される穴の大きさや深さを、より大きくできる。
【0011】
(3)上記形態のプラズマアブレーションシステムにおいて、前記プラズマガイドワイヤの先端荷重は、0.3gf以上かつ20.0gf以下であってもよい。
この構成によれば、プラズマガイドワイヤの先端荷重は、0.3gf以上かつ20.0gf以下であるため、プラズマガイドワイヤの先端部を柔軟に構成して、安全性を向上できる。
【0012】
(4)上記形態のプラズマアブレーションシステムにおいて、前記プラズマガイドワイヤは、前記第1電極に加えてさらに、導電性を有し、長尺状の外形を有するコアシャフトと、導電性を有し、前記コアシャフトの先端側の一部分を取り囲んで配置されたコイル体と、絶縁性を有し、前記コイル体の外周を覆って配置された被覆部と、を備え、前記第1電極は、前記コアシャフト、前記コイル体、及び前記被覆部の各先端をそれぞれ固定していてもよい。
この構成によれば、プラズマガイドワイヤは、コアシャフトの先端側の一部分を取り囲んで配置された導電性を有するコイル体を備えるため、コアシャフトの先端側における表皮効果を低減させることができ、コアシャフトの先端側を基端側と比べて細径化できる。また、プラズマガイドワイヤは、コイル体の外周を覆って配置された絶縁性を有する被覆部を備えるため、安全性を向上できる。これらの結果、プラズマガイドワイヤの先端側をより柔軟に構成できると共に、プラズマアブレーションシステムの安全性をより向上できる。
【0013】
(5)上記形態のプラズマアブレーションシステムにおいて、前記カテーテルは、前記第2電極に加えてさらに、導電性を有し、前記カテーテルの基端側に形成されており、前記RFジェネレータと電気的に接続される基端側電極と、導電性を有し、前記第2電極と前記基端側電極とを電気的に接続する接続部であって、前記カテーテルの肉厚部に埋設されている接続部と、を備えてもよい。
この構成によれば、カテーテルは、先端側に形成された第2電極と、基端側に形成された基端側電極とを電気的に接続する接続部であって、カテーテルの肉厚部に埋設されている接続部を備える。このため、接続部がカテーテルの外側または内側に露出している場合と比較して、接続部がカテーテルの外周面に絡みつき操作が阻害されることや、接続部がカテーテルに挿通されたプラズマガイドワイヤに絡みつき操作が阻害されることを抑制できる。この結果、プラズマアブレーションシステムの操作性を向上できる。
【0014】
(6)上記形態のプラズマアブレーションシステムにおいて、前記カテーテルは、さらに、素線を網目織りにしたメッシュ形状の補強部であって、前記カテーテルの肉厚部に埋設されている補強部を備えてもよい。
この構成によれば、カテーテルは、さらに、素線を網目織りにしたメッシュ形状の補強部を備えるため、カテーテルの撓みを抑制して、カテーテルの形状維持性を向上できる。
【0015】
(7)上記形態のプラズマアブレーションシステムにおいて、前記プラズマガイドワイヤの前記第1電極と、前記カテーテルの前記第2電極と、の間の直線距離は、10mm以上、かつ、50mm以下であってもよい。
この構成によれば、プラズマガイドワイヤの第1電極と、カテーテルの第2電極と、の間の直線距離は、10mm以上、かつ、50mm以下であるため、アブレーションにより生体組織に形成される穴の深さを良好な範囲とできる。
【0016】
(8)本発明の一形態によれば、プラズマガイドワイヤが提供される。このプラズマガイドワイヤは、導電性を有し、長尺状の外形を有するコアシャフトと、導電性を有し、前記コアシャフトの先端側の一部分を取り囲んで配置されたコイル体と、絶縁性を有し、前記コイル体の外周を覆って配置された被覆部と、導電性を有し、前記コアシャフト、前記コイル体、及び前記被覆部の各先端をそれぞれ固定している第1電極と、を備え、プラズマガイドワイヤの先端荷重は、0.3gf以上かつ20.0gf以下である。
この構成によれば、プラズマガイドワイヤは、導電性を有するコイル体によって、コアシャフトの先端側における表皮効果を低減させることができるため、コアシャフトの先端側を基端側と比べて細径化でき、プラズマガイドワイヤの先端側を柔軟に構成できる。また、コイル体の外周を覆って配置された絶縁性を有する被覆部によって、安全性を向上できる。これらの結果、本構成によれば、プラズマ流を用いたアブレーションに適したプラズマガイドワイヤを提供できる。
【0017】
(9)上記形態のプラズマガイドワイヤにおいて、前記プラズマガイドワイヤの先端部は、プリシェイプされていてもよい。
この構成によれば、プラズマガイドワイヤの先端部はプリシェイプされているため、プリシェイプされていない場合と比べて、プラズマガイドワイヤの先端部と生体組織とが成す角度を大きくできる。この結果、アブレーションにより生体組織に形成される穴の深さを良好な範囲とできる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、プラズマガイドワイヤ、RFジェネレータ、プラズマガイドワイヤとRFジェネレータとを備えるプラズマアブレーションシステム、これら装置やシステムの製造方法、これら装置やシステムに対して高周波電力を出力する際のRFジェネレータの制御方法、コンピュータプログラムなどの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】プラズマアブレーションシステムの全体構成を示す概略図である。
図2図1のA-A線におけるカテーテルの横断面構成を例示した説明図である。
図3】プラズマガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
図4図2のB-B線におけるコイル体の横断面構成を例示した説明図である。
図5】アブレーションの様子を示す説明図である。
図6】RFジェネレータのパルス変調について説明する図である。
図7】蒸気層の大きさに関する試験結果を示すグラフである。
図8】アブレーションの効果に関する試験方法の説明図である。
図9】アブレーションの効果に関する試験方法の説明図である。
図10】アブレーションの効果に関する試験結果を示すグラフである。
図11】引っ掛かりによる有効性評価試験の方法の説明図である。
図12】引っ掛かりによる有効性評価試験結果を示すグラフである。
図13】アブレーションの効果に関する試験結果と、引っ掛かりによる有効性評価試験結果とを踏まえたパルスインターバルの範囲について説明する図である。
図14】放電時電力に関する試験結果を示す説明図である。
図15】第2実施形態のプラズマガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
図16】電極間距離に関する試験方法の説明図である。
図17】穴の深さの計測方法を示す図である。
図18】電極間距離に関する試験結果を示すグラフである。
図19】電極角度に関する試験方法の説明図である。
図20】電極角度に関する試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1は、プラズマアブレーションシステム100の全体構成を示す概略図である。プラズマアブレーションシステム100は、生体組織をアブレーションすることによって、慢性完全閉塞(CTO:Chronic Total Occlusion)を開通させたり、軽度~中等度の狭窄、有意狭窄、不整脈等を治療したりする目的で使用されるシステムである。プラズマアブレーションシステム100は、プラズマガイドワイヤ1と、カテーテル2と、RFジェネレータ3と、を備えている。以降では、プラズマアブレーションシステム100を、血管内のCTO開通のために用いる場合を例示して説明するが、プラズマアブレーションシステム100は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用できる。
【0021】
図1では、プラズマアブレーションシステム100のうち、プラズマガイドワイヤ1とカテーテル2との中心を通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。図1の例では、軸線Oは、先端側の一部分を除くプラズマガイドワイヤ1の中心と、カテーテル2の中心と、を通る軸とそれぞれ一致している。しかし、軸線Oは、プラズマガイドワイヤ1及びカテーテル2の各中心軸と相違していてもよい。また、図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸はプラズマガイドワイヤ1及びカテーテル2の長手方向に対応し、Y軸はプラズマガイドワイヤ1及びカテーテル2の高さ方向に対応し、Z軸はプラズマガイドワイヤ1及びカテーテル2の幅方向に対応する。図1の左側(-X軸方向)をプラズマガイドワイヤ1、カテーテル2、及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1の右側(+X軸方向)をプラズマガイドワイヤ1、カテーテル2、及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。長手方向(X軸方向)における両端のうち、先端側に位置する一端を「先端」と呼び、基端側に位置する他端を「基端」と呼ぶ。先端及びその近傍を「先端部」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、図1以降においても共通する。
【0022】
プラズマガイドワイヤ1は、長尺状の外形を有しており、先端部に導電性を有する第1電極11が形成されている。プラズマガイドワイヤ1の詳細な構成は、後述する。図1に示すように、プラズマガイドワイヤ1は、カテーテル2のルーメン21L(図2)に挿通した状態で使用される。
【0023】
カテーテル2は、長尺状の外形を有しており、先端側に導電性を有する第2電極23が形成されていると共に、内側にプラズマガイドワイヤ1を挿通させるためのルーメン21Lが形成されている。図1に示すように、本実施形態のカテーテル2は、シャフト部21と、先端チップ22と、第2電極23と、基端側電極24と、ケーブル25とを備える。なお、図1では、他の部材との区別のために、第2電極23と基端側電極24とに斜線のハッチングを付す。
【0024】
図2は、図1のA-A線におけるカテーテル2の横断面構成を例示した説明図である。図2に示すように、シャフト部21は、本体部211と、補強部212と、接続部213とを有している。
【0025】
本体部211は、カテーテル2の肉厚部を構成すると共に、補強部212と接続部213とを絶縁する部材である。本体部211は、両端部が開口した中空の略円筒形状を有している。本体部211の内腔は、プラズマガイドワイヤ1を挿通させるためのルーメン21Lとして機能する。以降、本体部211の基端側の開口を「基端開口21b」とも呼ぶ。なお、本体部211の外径及び長さは任意に決定できる。本体部211の外周面と内周面との少なくとも一方は、親水性樹脂や、疎水性樹脂を用いてコーティングされていてもよい。この場合、本体部211の外周面と内周面とは、それぞれ、種類が異なる樹脂によりコーティングされていてもよく、同一の樹脂によりコーティングされていてもよい。
【0026】
補強部212は、本体部211を補強するための部材である。補強部212は、導電性を有する素線を網目織りにしたメッシュ形状を有している。補強部212は、本体部211の内部において、接続部213よりも内側に埋設されている。このような補強部212を備えることによって、カテーテル2の撓みを抑制して、カテーテル2の形状維持性を向上できる。尚、カテーテル2が補強部212を備えない構成としてもよい。
【0027】
接続部213は、導電性を有しており、第2電極23と基端側電極24とを電気的に接続する。接続部213は、導電性を有する素線をシャフト部21の周方向に沿って螺旋状に巻回したコイル形状を有している。接続部213は、本体部211の内部において、補強部212よりも外側に埋設されている。接続部213の先端部は、第2電極23に電気的に接続されている。接続部213の基端部は、基端側電極24に電気的に接続されている。換言すれば、カテーテル2において、第2電極23、基端側電極24、及び接続部213は、一つの導電体を形成している。なお、接続部213は、1本の素線を単条に巻回して形成される単条コイルであってもよく、複数本の素線を多条に巻回して形成される多条コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を単条に巻回して形成される単条撚線コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を複数用い、各撚線を多条に巻回して形成される多条撚線コイルであってもよい。
【0028】
先端チップ22は、カテーテル2の最も先端側(すなわち、カテーテル2の先端部)に設けられている。先端チップ22は、血管内でのカテーテル2の進行をスムーズにするために、基端側から先端側にかけて縮径した外側形状を有している。先端チップ22には、軸線O方向に先端チップ22を貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、シャフト部21のルーメン21Lと連通している。以降、先端チップ22の貫通孔の先端側の開口を「先端開口21a」とも呼ぶ。なお、先端チップ22の外径及び長さは任意に決定できる。
【0029】
第2電極23は、導電性を有しており、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11との間で放電を生じさせる。第2電極23は、シャフト部21の先端において、シャフト部21の外周面を取り囲むように配置された円環状の部材である。基端側電極24は、導電性を有しており、ケーブル25を介して、RFジェネレータ3の第1端子31と電気的に接続される。基端側電極24は、シャフト部21の基端側の一部分において、シャフト部21の外周面を取り囲むように配置された円環状の部材である。なお、第2電極23及び基端側電極24の長さは任意に決定できる。ケーブル25は、導電性を有する電線である。ケーブル25は、基端側電極24に接続されている。
【0030】
本体部211は、絶縁性を有する任意の材料により形成でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等により形成できる。先端チップ22は、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等の樹脂材料により形成できる。
【0031】
補強部212、接続部213、第2電極23、及び基端側電極24は、それぞれ、導電性を有する限りにおいて任意の材料を用いることができ、例えば、SUS316、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、X線不透過材料である金、白金、タングステンを含む合金等により形成できる。補強部212、接続部213、第2電極23、及び基端側電極24は、同一の材料により形成されていてもよく、それぞれ異なる材料により形成されていてもよい。
【0032】
図3は、プラズマガイドワイヤ1の断面構成を例示した説明図である。図1及び図3に示すように、本実施形態のプラズマガイドワイヤ1は、第1電極11と、コアシャフト14と、コイル体15と、被覆部17と、先端マーカ122と、コネクタ18(図1)と、ケーブル19(図1)とを備える。
【0033】
第1電極11は、導電性を有しており、カテーテル2の第2電極23との間で放電を生じさせる。第1電極11は、プラズマガイドワイヤ1の最も先端側(すなわち、プラズマガイドワイヤ1の先端部)に設けられている。第1電極11は、血管内でのプラズマガイドワイヤ1の進行をスムーズにするために、基端側から先端側にかけて縮径した外側形状を有している。第1電極11は、コアシャフト14の先端と、被覆部17の先端と、コイル体15の先端と、をそれぞれ固定している。第1電極11は、コアシャフト14、及びコイル体15の各先端と、レーザ溶接等により接合されている。
【0034】
コアシャフト14は、導電性を有しており、プラズマガイドワイヤ1の中心軸を構成する部材である。コアシャフト14は、プラズマガイドワイヤ1の長手方向に延びる長尺状の外形を有している。コアシャフト14は、先端から基端に向かって、細径部141と、第1テーパ部142と、第2テーパ部143と、太径部144とを有している。細径部141は、コアシャフト14の外径が最も細い部分であり、先端から基端まで略一定の外径を有する略円柱形状である。第1テーパ部142は、細径部141と第2テーパ部143との間に設けられた部分であり、基端側から先端側にかけて縮径した外側形状を有している。第2テーパ部143は、第1テーパ部142と太径部144との間に設けられた部分であり、基端側から先端側にかけて、第1テーパ部142とは異なる角度で外径が縮径した外側形状を有している。太径部144は、コアシャフト14の外径が最も太い部分であり、先端から基端まで略一定の外径を有する略円柱形状である。太径部144の基端部には、ケーブル19(図1)が電気的に接続されている。
【0035】
図4は、図2のB-B線におけるコイル体15の横断面構成を例示した説明図である。コイル体15は、導電性を有しており、コアシャフト14の先端側の一部分を取り囲んで配置されている。図3の例では、コイル体15は、細径部141の全体と、第1テーパ部142の先端側の一部分と、をそれぞれ取り囲んで配置されている。図4に示すように、コイル体15は、複数本の素線を撚り合せた撚線151を複数用い、各撚線を多条に巻回して形成される多条撚線コイルである。しかし、コイル体15は、1本の素線を単条に巻回して形成される単条コイルであってもよく、複数本の素線を多条に巻回して形成される多条コイルであってもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を単条に巻回して形成される単条撚線コイルであってもよい。
【0036】
コイル体15の先端は、第1電極11によって、コアシャフト14の先端と固定されている。コイル体15の基端は、固定部152によって、コアシャフト14(具体的には、第1テーパ部142)の一部分と固定されている。固定部152は、コイル体15とコアシャフト14とを固定する部材である。固定部152は、銀ロウ、金ロウ等の硬ロウでロウ付けすることにより形成できる。なお、固定部152は、コイル体15とコアシャフト14とをレーザ溶接等によって溶接することで形成してもよい。
【0037】
被覆部17は、外部からコイル体15とコアシャフト14の一部又は全部を絶縁する部材である。被覆部17は、絶縁性を有しており、コイル体15の外周面と、コイル体15よりも基端側に位置するコアシャフト14の外周面と、を覆うようにして配置されている。被覆部17は、先端から基端まで略一定の外径を有する略円柱形状である。被覆部17の先端は、第1電極11によって、コアシャフト14の先端と固定されている。被覆部17の基端部は、コアシャフト14の基端部と接合されている。被覆部17とコアシャフト14との接合には、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤を利用できる。図3に示すように、被覆部17とコアシャフト14との間には、隙間が形成されていてもよい。したがって、被覆部17は先端から基端まで略一定の外径を有する略円筒形状であってもよい。また、被覆部17とコアシャフト14との間には隙間がなく、被覆部17の内周面とコアシャフト14の外周面とが接触していてもよい。
【0038】
先端マーカ122は、絶縁性を有し、かつ、任意の色に着色されており、第1電極11の位置を表す目印として機能する。先端マーカ122は、被覆部17の先端部において、被覆部17の外周面を取り囲むように配置された円環状の部材である。
【0039】
図1に示すように、コネクタ18は、プラズマガイドワイヤ1の最も基端側に設けられており、術者がプラズマガイドワイヤ1を把持する際に用いられる。コネクタ18からは、コアシャフト14に電気的に接続されたケーブル19が延伸している。ケーブル19は、導電性を有する電線である。
【0040】
ここで、本実施形態のプラズマガイドワイヤ1は、先端荷重が、0.3gf以上かつ20.0gf以下である。先端荷重とは、ガイドワイヤを押し付けた際に病変部に加わる最大の力を意味する。プラズマガイドワイヤ1の先端荷重は、精密はかりにプラズマガイドワイヤ1の先端を押し当てた際に測定される重さとできる。
【0041】
第1電極11は、導電性を有する任意の材料により形成でき、例えば、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金等により形成できる。なお、第1電極11は、コアシャフト14の先端部をレーザ等により溶融させることによって形成してもよい。この場合、第1電極11は、コアシャフト14の先端の一部分として形成される(換言すれば、コアシャフト14の先端の一部分が第1電極11として機能する)。
【0042】
コアシャフト14は、導電性を有する任意の材料により形成でき、例えば、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金等により形成できる。コイル体15は、導電性を有する任意の材料により形成でき、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、X線不透過材料である金、白金、タングステンを含む合金等により形成できる。
【0043】
被覆部17、及び先端マーカ122は、絶縁性を有する任意の材料により形成でき、例えば、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等により形成できる。
【0044】
図1に戻り、説明を続ける。RFジェネレータ3は、第1端子31と第2端子32との間に高周波電力を出力する装置である。第1端子31は、第1ケーブル33及び第1ケーブルコネクタ34を介して、カテーテル2に電気的に接続されている。第2端子32は、第2ケーブル35及び第2ケーブルコネクタ36を介して、プラズマガイドワイヤ1に電気的に接続されている。第1ケーブル33及び第2ケーブル35は、導電性を有する電線である。第1ケーブルコネクタ34及び第2ケーブルコネクタ36は、ケーブル同士を物理的かつ電気的に接続するための接続端子である。
【0045】
このため、第1端子31から出力された高周波電力は、第1ケーブル33、第1ケーブルコネクタ34、ケーブル25、基端側電極24、及び接続部213を介して、第2電極23へと伝達される。同様に、第2端子32から出力された高周波電力は、第2ケーブル35、第2ケーブルコネクタ36、ケーブル19、及びコアシャフト14を介して、第1電極11へと伝達される。
【0046】
図5は、アブレーションの様子を示す説明図である。図5(A)は、プラズマガイドワイヤ1及びカテーテル2をCTO200の近傍までデリバリした際の様子を示す。図5(B)は、アブレーションが正しく行われなかった場合の様子を示す。図5(C)は、アブレーションが正しく行われた場合の様子を示す。
【0047】
まず、図5(A)に示すように、術者は、カテーテル2をCTO200の近傍までデリバリした後、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11を、カテーテル2の先端開口21aから突出させ、かつ、CTO200の近傍に位置させた状態で、RFジェネレータ3から高周波電力を出力する。すると、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23との間の電位差に起因して、第1電極11と第2電極23との間にストリーマコロナ放電が発生する。このストリーマコロナ放電によって、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11の近傍にあるCTO200(生体組織)をアブレーションすることができる。
【0048】
ここで、プラズマ流を用いたアブレーションでは、第1電極11から放出されたエネルギーにより、生体組織の周辺環境が励起状態となりプラズマや蒸気が生成され、そのエネルギーによって生体組織が蒸散する。このため、アブレーションの際には、電極の周囲において、衝撃波やキャビテーション(液体中の圧力差により生じる気泡)を伴う蒸気層が生じ、周囲の物質が振動する。上述の通り、本実施形態のプラズマガイドワイヤ1は、先端荷重が、0.3gf以上かつ20.0gf以下であり、柔軟である。このため、RFジェネレータ3から従来のような高周波電力を出力した場合、図5(B)に示すように、プラズマガイドワイヤ1の先端部が、蒸気層VLに伴う振動によって跳ねを生じて、CTO200のアブレーションが正しく行えない。
【0049】
そこで、本実施形態のプラズマアブレーションシステム100では、RFジェネレータ3から出力する高周波電力を、次の放電条件a1または放電条件a2とする。なお、放電条件a1よりも、放電条件a2の方がより好ましい。
(a1)放電時電力が50W以上かつ100W以下であり、かつ、デューティ比が7.4%以上かつ40.0%以下にパルス変調された高周波電力。
(a2)放電時電力が50W以上かつ100W以下であり、かつ、デューティ比が9.1%以上かつ13.0%以下にパルス変調された高周波電力。
そうすれば、図5(C)に示すように、蒸気層VLの大きさを従来と比べて小さくでき、かつ、アブレーションに十分な出力を得ることができる。この結果、図5(C)に示すように、プラズマガイドワイヤ1の先端部の跳ねを抑制でき、CTO200に穴201を形成できる。
【0050】
図6は、RFジェネレータ3のパルス変調について説明する図である。図6では、パルス幅paを2μsとし、パルスインターバルpiを14μsに変調したパルスを1パルスとして、これをn回(nは自然数)繰り返す場合を例示している。本実施形態のRFジェネレータ3は、図6に示すようなACパルスを用いる。以降では、本実施形態のRFジェネレータ3において、上述した放電条件a1,a2で説明した放電時電力と、デューティ比(pa/(pa+pi)×100)を採用することが好ましい理由について説明する。
【0051】
図7は、蒸気層の大きさに関する試験結果を示すグラフである。この試験では、RFジェネレータ3の放電条件を、次に示す放電条件b1~b3とした。
(b1)放電時電圧:700V
(b2)パルス幅pa:2μs
(b3)パルス数:200
そして、放電条件b1~b3のもと、パルスインターバルpiを変化させた際の、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11の様子をハイスピードカメラで撮影し、蒸気層VLの大きさを測定した。なお、蒸気層VLの大きさには、蒸気層VLの直径が最も大きい部分の長さを採用した。図7には、横軸にパルスインターバルpiの値(μs)を表し、縦軸に蒸気層の大きさの値(mm)を表す。図7において、蒸気層の大きさの推移R1に示すように、蒸気層VLの大きさは、パルスインターバルpiが長くなるにつれて、小さくなることがわかる。
【0052】
図8及び図9は、アブレーションの効果に関する試験方法の説明図である。図8(A)は、アブレーション前のプラズマガイドワイヤ1の様子を表す。図8(B)は、アブレーション後のプラズマガイドワイヤ1の様子を表す。図9(A)は、代替モデル300に形成された穴302を上から見た図である。図9(B)は、代替モデル300に形成された穴302の断面図である。
【0053】
まず、ウレタンスポンジからなる生体組織の代替モデル300と、体液を模擬した生理食塩水を準備する。代替モデル300を、生理食塩水に浸した状態で載置する。その後、図8(A)に示すように、カテーテル2の先端開口21aからプラズマガイドワイヤ1の先端側を突出させた状態で、代替モデル300の表面301に対して、第1電極11を接触させる。本実験では、カテーテル2の中心軸Oと、代替モデル300の表面301とが成す角度θを10度とする。また、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23と、の直線距離L1を10mmとする。なお、図示の例では、プラズマガイドワイヤ1の先端側は、プリシェイプされている。
【0054】
この状態で、上述した放電条件b1~b3のもと、パルスインターバルpiを変化させつつ、RFジェネレータ3から高周波電力を出力し、代替モデル300にそれぞれ形成された穴302について調べた。具体的には、代替モデル300に形成された複数の穴302について、それぞれ、穴302の直径HLと穴302の深さHDとを計測した。図9(A)に示すように、穴302の直径HLは、表面301に形成された穴302の直径が最も大きい部分の長さを採用した。図9(B)に示すように、穴302の深さHDは、穴302の深さが最も深い部分における、表面301からの長さを採用した。
【0055】
図10は、アブレーションの効果に関する試験結果を示すグラフである。図10には、図8及び図9で説明した方法によって測定した、穴302の直径HLの推移を破線で表し、穴302の深さHDの推移を実線で表している。図10の縦軸は、穴302の測定値(mm)を表し、横軸はパルスインターバルpiの値(μs)を表す。図10に示すように、パルスインターバルpiが13μs以上、かつ、25μs以下の範囲内では、他の部分と比較して、相対的に穴302の直径HLが大きく、かつ、深さHDが深くなることがわかる。
【0056】
図11は、引っ掛かりによる有効性評価試験の方法の説明図である。図11(A)は、アブレーションの様子を表す。図11(B)は、アブレーションにより形成された穴302に、プラズマガイドワイヤ1の先端部が引っ掛かる場合の様子を表す。図11(C)は、アブレーションにより形成された穴302に、プラズマガイドワイヤ1の先端部が引っ掛からない場合の様子を表す。
【0057】
まず、図8及び図9で説明したと同様の条件(具体的には、角度θ=10度、距離L1=10mm、放電条件b1~b3)のもと、パルスインターバルpiを変化させつつ、RFジェネレータ3から高周波電力を出力し、代替モデル300のアブレーションを行う。その後、図11(B),(C)に示すように、プラズマガイドワイヤ1を左右に移動させて、プラズマガイドワイヤ1の先端部が、代替モデル300に形成された穴302に引っかかるか否かについて評価した。ここで、血管内に挿入されたプラズマガイドワイヤ1は、血流や、手元の細かな振動等の影響を受けて、図11(B),(C)に示すように、先端部が動く場合がある。このような場合に、プラズマガイドワイヤ1の先端部が穴302に引っかかると、先端部の位置ずれを抑制して、CTO200の開通が容易になる。一方、プラズマガイドワイヤ1の先端部が穴302に引っかからない場合は、先端部が位置ずれして、CTO200の開通に手間と時間を要する。このため、図11(B)に示すように、アブレーションにより形成される穴302は、プラズマガイドワイヤ1の先端部が引っ掛かる程度の大きさと深さであることが好ましい。
【0058】
図12は、引っ掛かりによる有効性評価試験結果を示すグラフである。図12には、各パルスインターバルpiごとに、プラズマガイドワイヤ1の先端部の引っ掛かりを生じた場合を「A」とし、引っ掛かりを生じなかった場合を「B」とした有効性の評価結果を表している。図12に示すように、パルスインターバルpiが3μs以上、かつ、25μs以下の範囲内では、角度θ=10度のように、カテーテル2と代替モデル300との成す角度が浅い角度である場合にも引っ掛かりを生じ、CTO200の開通が容易になることがわかる。
【0059】
図13は、アブレーションの効果に関する試験結果と、引っ掛かりによる有効性評価試験結果とを踏まえたパルスインターバルの範囲について説明する図である。引っ掛かりによる有効性評価試験結果により、パルスインターバルpiを3μs以上、かつ、25μs以下の範囲内(図13:破線枠の範囲内)とすれば、有効性が得られることがわかる。また、アブレーションにより形成される穴302の直径HLと深さHDとのバランスから、パルスインターバルpiを13μs以上、かつ、20μs以下の範囲内(図13:実線枠の範囲内)とした場合に、特に有効性が高いことがわかる。ここで、デューティ比は、パルス幅paを、パルス幅paとパルスインターバルpiとを加算したもので除し、100を乗じることで求められる(pa/(pa+pi)×100)。このため、RFジェネレータ3の放電条件について、デューティ比を7.4%以上かつ40.0%以下とすれば、有効性が得られることがわかる(図13:破線枠の範囲内、放電条件a1)。また、RFジェネレータ3の放電条件について、デューティ比が9.1%以上かつ13.0%以下とすれば、特に有効性が高いことがわかる(図13:実線枠の範囲内、放電条件a2)。
【0060】
図14は、放電時電力に関する試験結果を示す説明図である。本試験では、放電条件b1の「放電時電圧」を、400V,600V,800V,1000V,1200Vのそれぞれに変化させつつ、次に示すc1,c2を求めた。この際、放電条件b2,b3は、上述の通り(b2=2μs,b3=200)とし、かつ、パルスインターバルpiは14μsとした。
(c1)形成される蒸気層VLの大きさ。蒸気層VLの大きさは、ハイスピードカメラで撮影した第1電極11の画像において、蒸気層VLの直径が最も大きい部分の長さを採用した。
(c2)抵抗負荷を20オームから5000オームまで変化させた際の電力値。電力値は、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23との間に、抵抗器(20オームから5000オームまでの抵抗器)をそれぞれ接続した状態で、RFジェネレータ3から高周波電力を出力した際の、第1電極11と第2電極23との間に流れる電流をそれぞれ測定することにより求めた。
【0061】
図14(A)は、試験c1の結果を表す。図14(A)には、各電圧(V)ごとの、蒸気層VLの大きさ(mm)を表している。図14(A)に示すように、電圧の大きさと、蒸気層VLの大きさとは比例関係となる。ここで、図13で検討した有効性が得られるパルスインターバルpiの範囲(3μs以上、かつ、25μs以下)と、図7の蒸気層の大きさに関する試験結果から、有効性が得られるパルスインターバルpiの範囲における蒸気層VLの大きさは、0.75mm以上、かつ、2.16mm以下である。そして、図14(A)の試験結果によると、当該範囲(有効性が得られるパルスインターバルpiの範囲における蒸気層VLの大きさの範囲)内となる放電時電圧は、400Vでは低すぎであり、800Vでは高すぎであり、600Vが適当であることがわかる。
【0062】
図14(B)は、試験c2の結果を表す。図14(B)には、各電圧(V)ごとに、抵抗負荷の大きさと電力値との関係を示す曲線を描いている。図14(B)の縦軸は、試験c2により求めた電力値(W)を表し、横軸は、試験c2でそれぞれ採用した抵抗器における抵抗負荷の大きさ(ohms)を表す。生体組織や体液の抵抗は、概ね1000オーム以下である。また、図14(A)の検討結果から、放電時電圧は400Vより高く、800Vより低く、600V前後が適当である。従って、図14(B)において、抵抗負荷が1000オーム以下の範囲における、放電時電圧600Vの曲線(実線)を参照すると、放電時電力は、50W以上かつ100W以下とすることが好ましいことがわかる。
【0063】
以上のように、図7から図14において説明した各試験の結果により、従来のデバイスよりも柔軟なプラズマガイドワイヤ1を備える本実施形態のプラズマアブレーションシステム100では、RFジェネレータ3から出力する高周波電力を、上述した放電条件a1または放電条件a2とすることによって、プラズマガイドワイヤ1の先端部の跳ねを抑制しつつ、アブレーションの効果を得られることがわかる。
【0064】
以上のように、第1実施形態のプラズマアブレーションシステム100は、先端部に導電性を有する第1電極11が形成されたプラズマガイドワイヤ1と、先端側に導電性を有する第2電極23が形成されたカテーテル2と、を備える。このため、プラズマガイドワイヤ1をカテーテル2内に挿通させた状態で、第1電極11と第2電極23とに高周波電力を出力することで、第1電極11と第2電極23との間の放電によって放出されたエネルギーを用いて、CTO200(生体組織)のアブレーションを行うことができる。また、RFジェネレータ3は、放電時電力が50W以上かつ100W以下であり、かつ、デューティ比が7.4%以上かつ40.0%以下にパルス変調された高周波電力を出力する(放電条件a1)。このため、例えば、穿刺装置、プローブ、切断電極、導電性ブレードのような従来の構成と比べて、柔軟な(剛性の低い)ガイドワイヤ1に対して第1電極11を設けた場合であっても、アブレーションの際に第1電極11の周囲において生じる蒸気層VLを最小限に留めることができ、周囲の物質の振動に伴うガイドワイヤ1先端部の跳ねを抑制できる。この結果、本実施形態によれば、プラズマアブレーションシステム100において、安全性の向上を図ることができる。
【0065】
また、RFジェネレータ3は、デューティ比が9.1%以上かつ13.0%以下にパルス変調された高周波電力を出力してもよい(放電条件a2)。そうすれば、アブレーション時の蒸気層VLを最小限にしてプラズマガイドワイヤ1の先端部の跳ねを抑制しつつ、アブレーションにより形成される穴の大きさや深さを、より大きくできる。
【0066】
さらに、第1実施形態のプラズマガイドワイヤ1は、コアシャフト14の先端側の一部分を取り囲んで配置された導電性を有するコイル体15を備えるため、コアシャフト14の先端側における表皮効果を低減させることができ、コアシャフト14の先端側を基端側と比べて細径化できる。また、プラズマガイドワイヤ1は、コイル体15の外周を覆って配置された絶縁性を有する被覆部17を備えるため、安全性を向上できる。これらの結果、プラズマガイドワイヤ1の先端側をより柔軟に構成できると共に、プラズマアブレーションシステム100の安全性をより向上できる。
【0067】
さらに、第1実施形態のプラズマガイドワイヤ1の先端荷重は、0.3gf以上かつ20.0gf以下であるため、プラズマガイドワイヤ1の先端部を柔軟に構成して、安全性を向上できる。これらの結果、第1実施形態によれば、プラズマ流を用いたアブレーションに適したプラズマガイドワイヤ1を提供できる。
【0068】
さらに、第1実施形態のカテーテル2は、先端側に形成された第2電極23と、基端側に形成された基端側電極24とを電気的に接続する接続部213であって、カテーテル2の本体部211(肉厚部)に埋設されている接続部213を備える。このため、接続部213がカテーテル2の外側または内側に露出している場合と比較して、接続部213がカテーテル2の外周面に絡みつき操作が阻害されることや、接続部213がカテーテル2内部のプラズマガイドワイヤ1に絡みつき操作が阻害されることを抑制できる。この結果、プラズマアブレーションシステム100の操作性を向上できる。
【0069】
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態のプラズマガイドワイヤ1Aの断面構成を例示した説明図である。第2実施形態のプラズマアブレーションシステム100は、第1実施形態で説明したプラズマガイドワイヤ1に代えて、図15に示すプラズマガイドワイヤ1Aを備える。プラズマガイドワイヤ1Aは、第1実施形態で説明したコイル体15と、固定部152とを備えていない。
【0070】
このように、プラズマガイドワイヤ1Aの構成は種々の変更が可能であり、コイル体15が省略されてもよい。このような第2実施形態のプラズマガイドワイヤ1Aを備えるプラズマアブレーションシステム100においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態のプラズマガイドワイヤ1Aによれば、コイル体15を有さないため、プラズマガイドワイヤ1Aの先端側を細径化できると共に、プラズマガイドワイヤ1Aを構成する部品の数を少なくして、プラズマガイドワイヤ1Aの製造工数と製造コストを低減できる。
【0071】
<電極間距離及び電極角度に関する評価>
上記実施形態において、図8図10では、アブレーションの効果に関する試験を行い、図11,12では、引っ掛かりによる有効性評価試験を行った。そして、図13では、これら図8図12の試験結果を踏まえたパルスインターバルの範囲について説明した。ここで、図8図10の試験(アブレーションの効果に関する試験)、及び、図11,12の試験(引っ掛かりによる有効性評価試験)では、便宜上、下記条件d1,d2について「距離L1=10mm、角度θ=10度」であると固定した。以降では、これら条件d1,d2に対する評価を行った。
(d1)プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23と、の直線距離L1(以降「電極間距離L1」とも呼ぶ)。
(d2)カテーテル2の中心軸Oと、代替モデル300の表面301とが成す角度θ(以降「電極角度θ」とも呼ぶ)。
【0072】
図16は、電極間距離L1に関する試験方法の説明図である。まず、ウレタンスポンジからなる生体組織の代替モデル300と、体液を模擬した生理食塩水を準備し、代替モデル300を生理食塩水に浸した状態で載置する。その後、図16に示すように、カテーテル2の先端開口21aからプラズマガイドワイヤ1の先端側を突出させた状態で、代替モデル300の表面301に対して、第1電極11を接触させる。この際、サンプル300の表面301に対する第1電極11の押し込み量D1が1mmとなるように、第1電極11を接触させる。押し込み量D1とは、図16に示すように、代替モデル300のうち第1電極11からの力が付加されていない端部近傍の表面301と、代替モデル300のうち第1電極11が接触している部分の表面301と、の間の高さの差を意味する。尚、本実験においても、カテーテル2の中心軸Oと、代替モデル300の表面301とが成す角度(電極角度θ)を10度とし、プラズマガイドワイヤ1の先端側をプリシェイプした。なお、プラズマガイドワイヤ1の先端荷重は、3.5gfとした。
【0073】
また、本実験では、カテーテル2の第2電極23に代替する電極として、リターンワイヤ4のリターン電極41を用いた。本実施形態のプラズマガイドワイヤ1は、上述の通り、先端荷重が0.3gf以上かつ20.0gf以下とされており柔軟である。このため、図16に示す第1電極11と第2電極23との間の距離L1を直接変更して評価した場合、カテーテル2によるサポート力付与(剛性向上)の影響が評価結果に影響する虞がある。そこで、本試験では、カテーテル2の第2電極23に代えて、リターンワイヤ4のリターン電極41を用いて評価を行った。
【0074】
リターンワイヤ4は、導電性を有するコイル体42の先端部に、導電性を有するリターン電極41が設けられている。コイル体42の基端側は、絶縁性樹脂からなる被覆部43により被覆されている。本試験では、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、リターンワイヤ4のリターン電極41との間の直線距離L1aが、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23との間の直線距離L1(すなわち電極間距離L1)と同じであるとみなして評価を行った。具体的には、第1電極11とリターン電極41との間の直線距離L1aを変化させつつ、上述した放電条件b1~b3のもと、RFジェネレータ3から200パルス×60回の高周波電力を出力して、代替モデル300にそれぞれ形成された穴302について調べた。
【0075】
図17は、穴302の深さHDの計測方法を示す図である。図17(A)は、穴302が形成された代替モデル300を示す。図17(B)は、代替モデル300をカットする様子を示す。穴302の深さHDは次のようにして計測する。まず、図17(A)に示すように、穴302が形成された代替モデル300を、穴302の長手方向に沿って、フェザーカッター5を用いて切断する。その後、デジタルマイクロスコープを用いて、代替モデル300の切断片300aまたは300bの一方の断面撮影を行い、断面画像を得る。得られた断面画像を、周知の画像処理ソフトウェア(例えば、ImageJ)を用いて解析することで、穴302の深さHDを計測する。アブレーションにより代替モデル300に形成される穴302は、必ずしも代替モデル300の表面301に対して垂直な方向に最も深く形成されるとは限らず、代替モデル300の表面301に対して傾斜した方向に最も深く形成されることもある。上記計測方法によれば、代替モデル300の表面301に対して垂直な方向の穴302のみならず、代替モデル300の表面301に対して傾斜した穴302についても、その深さHDを正確に計測できる。
【0076】
なお、押し込み量D1を1mmとする点、先端荷重が3.5gfのプラズマガイドワイヤ1を用いる点、RFジェネレータ3から200パルス×60回の高周波電力を出力する点、及び、穴302の深さHDの計測方法については、図8図10の試験(アブレーションの効果に関する試験)、及び、図11,12の試験(引っ掛かりによる有効性評価試験)についても同じとした。
【0077】
図18は、電極間距離L1に関する試験結果を示すグラフである。図18の縦軸は、穴302の深さ(mm)を表し、横軸は電極間距離L1a(すなわち電極間距離L1)を表す。図18のバーRAは、同条件で複数回(本試験では3回)試験を行った際の測定結果の標準偏差の範囲を表し、点CEは標準偏差の範囲の中心点を表す。図18の結果から、電極間距離L1=10mm以上、かつ、30mm以下とすれば、穴302の深さHDをより深くできることがわかる。また、通常の手技で用いられる電極間距離L1の範囲である、L1=10mm以上、かつ、50mm以下では、良好な穴302の深さHDが得られることがわかる。なお、電極間距離L1を10mmよりも小さくした場合も、穴302の深さHDをより深くできることは、図18に示す試験結果から容易に予測できる。しかしながら、本実施形態のカテーテル2では、第2電極23よりも先端側に中心軸O方向の長さが数mm程度の先端チップ22が配置されている。そうすると、実際の手技において、視認性があまり良くないX線透視下で、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11が確実にカテーテル2の先端チップ22から突出していることを視認しながらアブレーションを行う必要があることを鑑みると、電極間距離L1を10mmよりも小さくすることは想定し難い。他方、実際の手技においては、プラズマによるアブレーションを行いながら、プラズマガイドワイヤ1とカテーテル2のどちらか一方ではなく両方を前進させていくため、電極間距離L1を50mmよりも大きくしてアブレーションすることは想定し難い。
【0078】
図19は、電極角度θに関する試験方法の説明図である。まず、ウレタンスポンジからなる生体組織の代替モデル300と、体液を模擬した生理食塩水を準備し、代替モデル300を生理食塩水に浸した状態で載置する。その後、図19に示すように、カテーテル2の先端開口21aからプラズマガイドワイヤ1の先端側を突出させた状態で、代替モデル300の表面301に対して、第1電極11を押し込み量D1が1mmとなるように接触させる。本実験では、先端荷重が3.5gfのプラズマガイドワイヤ1を用い、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23との直線距離L1(電極間距離L1)を10mmとし、プラズマガイドワイヤ1の先端側を45度でプリシェイプした。なお、プリシェイプ角度θ1は、図19に示すように、カテーテル2の中心軸Oと、プラズマガイドワイヤ1の先端部の中心軸O1と、が成す角度である。
【0079】
この状態で、カテーテル2の中心軸Oと、代替モデル300の表面301とが成す角度θ(電極角度θ)を変化させつつ、上述した放電条件b1~b3のもと、RFジェネレータ3から200パルス×60回の高周波電力を出力して、代替モデル300にそれぞれ形成された穴について調べた。穴の深さの計測方法は、図17で説明した方法を用いた。
【0080】
図20は、電極角度θに関する試験結果を示すグラフである。図20の縦軸は、穴の深さ(mm)を表し、横軸は電極角度θを表す。図20では、同条件で3回試験を行った際に得られた結果を、それぞれ黒丸でプロットしている。図20の結果から、電極角度θが大きくなるにつれて穴の深さも深くできるものの、通常の手技で用いられる電極角度θの範囲である、θ=10度以上、かつ、50度以下では、良好な穴の深さが得られることがわかる。なお、電極角度θを10度よりも小さくすることは、プラズマガイドワイヤ1及びカテーテル2が血管内で使用されることを考慮すると、想定し難い。また、電極角度θを50度よりも大きくすることは、一般にプラズマガイドワイヤ1の先端をプリシェイプすることを考慮すると、想定し難い。
【0081】
以上のように、図16図18の試験(電極間距離L1に関する試験)の結果から、通常の手技で使用される電極間距離L1の範囲においては、RFジェネレータ3の放電条件を第1実施形態で説明した放電条件a1または放電条件a2とすることにより、良好な効果が得られることがわかった。具体的には、プラズマガイドワイヤ1の第1電極11と、カテーテル2の第2電極23との間の直線距離L1(電極間距離L1)を、10mm以上、かつ、50mm以下とすれば、プラズマガイドワイヤ1を用いたアブレーションにより生体組織に形成される穴の深さを良好な範囲とできる。
【0082】
また、図19,20の試験(電極角度θに関する試験)の結果から、通常の手技で使用される電極角度θの範囲においては、RFジェネレータ3の放電条件を第1実施形態で説明した放電条件a1または放電条件a2とすることにより、良好な効果が得られることがわかった。ここで、上述の通り、第1,2実施形態のプラズマガイドワイヤ1の先端部はプリシェイプされているため、プリシェイプされていない場合と比べて、プラズマガイドワイヤ1の先端部と生体組織(図19の例では、代替モデル300)とが成す角度θ2を大きくできるため、電極角度θを大きくしたのと同様の効果を得ることができる。この結果、アブレーションにより生体組織に形成される穴の深さを良好な範囲とできる。なお、プラズマガイドワイヤ1の先端部と生体組織とが成す角度θ2は、図19に示すように、プラズマガイドワイヤ1の先端部の中心軸O1と、生体組織の表面(図19の例では、代替モデル300の表面301)とが成す鋭角である。
【0083】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0084】
[変形例1]
上記第1~2実施形態では、プラズマアブレーションシステム100の構成の一例を示した。しかし、プラズマアブレーションシステム100の構成は種々の変更が可能である。例えば、カテーテル2に代えて、第2電極に相当する電極を有するパッド、第2電極に相当する電極を有するガイドワイヤ等の他のデバイスが用いられてもよい。例えば、プラズマアブレーションシステム100は、図示しない他の入出力デバイス(例えば、フットスイッチ、入出力用タッチパネル、操作レバー、操作ボタン)等を含んで構成されてもよい。例えば、プラズマアブレーションシステム100は、図示しない他の検査装置(例えば、CT装置、MRI装置、X線撮像装置、超音波撮像装置等)を含んで構成されてもよい。
【0085】
[変形例2]
上記第1~2実施形態では、プラズマガイドワイヤ1,1Aの構成の一例を示した。しかし、プラズマガイドワイヤ1の構成は種々の変更が可能である。例えば、プラズマガイドワイヤ1の先端荷重は、0.3gf未満であってもよく、20.0gfより大きくてもよい。例えば、上述したコアシャフト14の構成はあくまで一例であり、細径部141、第1テーパ部142、第2テーパ部143、のうちの少なくとも一部分が省略されてもよい。例えば、第1電極11の形状は任意に変更でき、矢じり状、球状、円柱状、多角柱状等の任意の形状とできる。例えば、先端マーカ122や、基端側電極24は、省略されてもよい。
【0086】
[変形例3]
上記第1~2実施形態では、カテーテル2の構成の一例を示した。しかし、カテーテル2の構成は種々の変更が可能である。例えば、図1の例では、カテーテル2は、シャフト部21の先端と基端とに開口を有する、いわゆるOTWタイプ(オーバーザワイヤタイプ)のカテーテルを例示した。しかし、カテーテル2は、デリバリガイドワイヤや、プラズマガイドワイヤ1等のデバイスを、素早く出し入れするためのポート(開口)を有する、いわゆるRxタイプ(ラピッドエクスチェンジタイプ)のカテーテルであってもよい。この場合、ポートは、シャフト部21の先端と基端の間の任意の位置において、外部とルーメン21L内とを連通する貫通孔とできる。また、カテーテル2は、複数のルーメンを有する、マルチルーメンカテーテルとして構成されてもよい。
【0087】
[変形例4]
第1~2実施形態のプラズマガイドワイヤ1,1A、及び、カテーテル2の構成、及び上記変形例1~3のプラズマガイドワイヤ1,1A、及び、カテーテル2の構成は、適宜組み合わせてもよい。
【0088】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,1A…プラズマガイドワイヤ
2…カテーテル
3…RFジェネレータ
4…リターンワイヤ
5…フェザーカッター
11…第1電極
14…コアシャフト
15…コイル体
17…被覆部
18…コネクタ
19…ケーブル
21…シャフト部
22…先端チップ
23…第2電極
24…基端側電極
25…ケーブル
31…第1端子
32…第2端子
33…第1ケーブル
34…第1ケーブルコネクタ
35…第2ケーブル
36…第2ケーブルコネクタ
41…リターン電極
42…コイル体
43…被覆部
100…プラズマアブレーションシステム
122…先端マーカ
123…被覆層
141…細径部
142…第1テーパ部
143…第2テーパ部
144…太径部
151…撚線
152…固定部
200…CTO
201…穴
211…本体部
212…補強部
213…接続部
300…代替モデル
301…表面
302…穴
図1
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