(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】RTD劣化検出
(51)【国際特許分類】
G01K 15/00 20060101AFI20241029BHJP
G01K 7/18 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01K15/00
G01K7/18 A
(21)【出願番号】P 2022577471
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021036175
(87)【国際公開番号】W WO2021257307
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-02-14
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルッド,ジェイソン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】カーツマン,ケビン・シー
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507757(JP,A)
【文献】特開2008-151601(JP,A)
【文献】特開平02-273902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体温度送信機であって、
RTDに接続可能な複数の端子
であって、前記RTDがプロセス流体温度に応じて抵抗値が変化し、前記RTDが上昇した温度でエネルギー貯蔵特性を発生させる少なくとも一つの材料から構成され、前記エネルギー貯蔵特性が前記プロセス流体温度の測定において誤差を発生させる、端子、
前記複数の端子に動作可能に接続され、前記RTDに励起信号を供給するように構成された励起源、
前記複数の端子に接続された測定装置であって、前記供給された励起信号に対する前記RTDの応答を測定するように構成された前記測定装置、及び、
前記励起源及び前記測定装置に接続された制御装置であって、前記励起信号を前記RTDに供給することによって、RTDの抵抗測定を行い、前記励起信号がRTDに供給されている間に、前記測定装置に前記RTDの応答を測定させる、ように構成された制御装置であり、また、前記励起源に前記励起信号を
停止させ、前記測定装置に前記
停止された励起信号に対するRTDの応答
における放電時定数を測定させ
、前記測定されたRTDの放電時間が、前記RTDの前記少なくとも一つの材料の前記エネルギー貯蔵特性を示す、ことによってRTD
のエネルギー貯蔵の診断を行う、ように構成される前記制御装置、
を含むプロセス流体温度送信機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記
停止された励起信号が前記RTDに供給されている間に得られた前記測定値に基づいてRTD劣化を判定する、ように構成される、請求項1に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項3】
前記制御装置は、励起電流が流れていない間に得られた複数の連続した電圧測定値の間の差に基づいてRTD劣化を判定する、ように構成される、請求項2に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項4】
前記制御装置は、RTDの劣化の指標を提供する、ように構成される、請求項3に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項5】
前記制御装置に接続された通信回路をさらに含み、前記通信回路は、プロセス流体温度出力及び前記RTD劣化の指標を提供する、ように構成される、請求項4に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項6】
前記励起源は、電流源であり、前記測定装置は、電圧測定装置である、請求項1に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記
測定されたRTD
の放電時定数に基づいて、電圧測定パラメータを変更する、ように構成される、請求項6に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項8】
前記電圧測定パラメータは、整定時間である、請求項7に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項9】
前記制御装置は、選択された測定精度を達成するために、前記整定時間を増加させる、ように構成される、請求項
8に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項10】
前記選択された測定精度は、1%である、請求項9に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項11】
前記増加した整定時間は、第1の温度範囲における温度測定に使用され、元の整定時間は、前記第1の温度範囲より低い第2の温度範囲における温度測定に使用される、請求項9に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項12】
前記増加した整定時間を用いて、後続するプロセス温度出力を得る、請求項9に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項13】
RTDの劣化を判定する方法であって、
前記RTDに励起信号を供給するステップ、
前記励起信号を変化させるステップ、
前記励起信号を
停止させた後、前記RTD
の応答を検出し、その前記応答
が前記RTDの電気的エネルギーの
放電を示すステップ、
前記応答を分析し、
前記RTD
のエネルギー貯蔵の劣化を判断するステップ、及び、
前記RTD
のエネルギー貯蔵の劣化を示す出力を提供するステップ、
を含む前記方法。
【請求項14】
前記RTDに前記励起信号を供給するステップ、前記応答を検出するステップ、前記応答を分析するステップ、及び前記出力を提供するステップは、プロセス流体温度送信機によって実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プロセス流体温度送信機であって、
感温素子と、前記感温素子に近接して配置された少なくとも1つの電気的に絶縁する構造を有するRTDであって、前記少なくとも1つの電気的に絶縁する素子は、前記RTDの熱動作範囲内の昇温時にエネルギー貯蔵特性を有するRTD、
前記RTDに動作可能に接続され、前記RTDに励起信号を供給するように構成された励起源、
前記RTDに接続された測定装置であって、前記励起信号に対する前記RTDの応答を測定するように構成された、前記測定装置、及び、
前記励起源及び前記測定装置に接続された制御装置であって、前記励起源に前記励起信号を前記RTDに供給させることによって、RTD抵抗測定を行い、前記励起信号が前記RTDに供給されている間に、前記測定装置に、前記励起信号に対する前記RTDの応答を測定させる、ように構成された前記制御装置であり、また、前記励起源に前記励起信号を
停止させ、前記測定装置に前記
停止した励起信号に対する前記RTDの応答
における電気的エネルギーの放電を測定させ、
前記測定されたRTDの電気的エネルギーの放電が、前記RTDの前記少なくとも1つの電気的に絶縁する構造の前記エネルギー貯蔵特性を示すことによってRTD
のエネルギー貯蔵の診断を行う、ように構成された前記制御装置、
を含むプロセス流体温度送信機。
【請求項16】
前記感温素子は、セラミック本体内に配置された少なくとも1つの白金線のコイルで形成されている、請求項15に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項17】
前記感温素子は、RTDアセンブリの第1の端部に配置され、そこに密封されている相互接続によって、直列に接続された、白金線の複数のコイルで形成される、請求項16に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項18】
前記RTDアセンブリの前記第1の端部及び前記RTDアセンブリの第2の端部は、ガラスで封止される、請求項17に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項19】
前記RTDアセンブリの前記第1の端部及び前記RTDアセンブリの第2の端部は、セメントで封止される、請求項17に記載のプロセス流体温度送信機。
【請求項20】
前記励起源は、電流源であり、前記測定装置は、電圧測定装置である、請求項15に記載のプロセス流体温度送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
プロセス産業では、化学、パルプ、石油、医薬品、食品、その他の流体処理工場内において、固体、スラリー、液体、蒸気、気体などの物質に関連するプロセス変数を監視するために、プロセス変数送信機を使用している。プロセス変数には、圧力、温度、流量、レベル、濁度、密度、濃度、化学組成、その他の特性が含まれる。プロセス流体温度送信機の出力は、プロセス制御ループ又はセグメントを介して制御室に伝達することができるか、又はその出力は、プロセスを監視及び制御できるように、他のプロセス装置に伝達することができる。プロセス流体温度を監視するために、送信機は、抵抗温度装置(RTD:Resistance Temperature Device、又はResistance Temperature Detector:測温抵抗体)のような温度センサーを含むか、又はそれに接続される。
【0002】
RTDは、温度変化に応じて抵抗値が変化する。RTDの抵抗値を測定することにより、温度を計算することができる。このような抵抗測定は、一般的に、RTDに既知の電流を流し、RTDを横切って発生する関連電圧を測定することによって達成される。RTD素子は、一般的に、セラミックなどの絶縁材料で形成されたハウジングの周囲又は内部に配置された白金などの金属素子から構成される。RTDは、絶縁性のコア又はボビンに、金属のエレメントを巻き付けることによって製造することができる。さらに、RTDとしては、エレメントを絶縁基板上にエッチング又は沈着されたものも知られている。場合によっては、セメント又はガラスが、RTDアセンブリの端部の環境シールを提供するために、また、RTDアセンブリに接続するワイヤーのストレインリリーフを提供するために、使用されることがある。周囲の材料は、一般的に、ワイヤーを保護するために使用され、また、電気的に絶縁することも意図されている。
【0003】
RTDは、どんどんとより高温の用途で使用されることが要求されてきているため、追加の誤差源が、そのようなRTDの出力に誤差を生じさせる可能性がある。プロセス流体の温度の測定がより正確になってくるにつれて、高温の用途で発生する可能性があるような、どんどんとより小さくなる誤差の原因を特定し、補償する必要性が高まってきている。このような誤差の低減により、より正確な温度測定を提供でき、その結果、より精密なプロセス制御、効率と安全性の向上、の機会をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
概要
プロセス流体温度送信機は、複数の端子と、励起源(excitation source)と、測定装置と、制御装置と、を含む。複数の端子は、RTDに接続可能である。励起源は、複数の端子に動作可能に接続され、RTDに励起信号(excitation signal)を供給するように構成される。測定装置は、複数の端子に接続され、供給された励起信号に対するRTDの応答を測定するように構成される。制御装置は、励起源及び測定装置に接続される。制御装置は、励起信号をRTDに供給することによってRTDの抵抗の測定を実行し、励起信号がRTDに供給されている間、測定装置にRTDの応答を測定させる、ように構成される。また、制御装置は、励起源に励起信号を変更させ、測定装置に、変更された励起信号に対するRTDの応答を測定させることにより、RTD診断を行うように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の実施形態が特に適用可能なプロセス流体温度送信機の環境を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、プロセス流体温度送信機のシステムブロック図である。
【
図3A】本発明の実施形態が特に適用可能なRTDの概略図である。
【
図4】3種類の動作温度(通常動作温度、400℃、及び600℃)におけるRTDアセンブリの時間経過に伴い変化する誘起電圧を示すチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る、RTDに対する励起信号の除去後に発生する複数の連続した測定値の取得を示すチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る、RTDアセンブリのエネルギー貯蔵効果を検出し、補償する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
高温RTDの用途で観察される誤差の1つの原因は、そのようなRTDを構築するために使用される絶縁材料の変化に関連していると考えられている。例えば、RTD内の絶縁に使用される一般的な建設材料は、高温にさらされると、導電性に、又は少なくとも部分的に導電性に、なることができると考えられている。そのような絶縁材料が一旦破壊されると発生する可能性のある誤差は、現在のところ検出できず、エンドユーザには不明である。本明細書に記載される実施形態では、一般的に、検出及び指標を提供することができる測定スキーム、並びにこの効果を補償するための方法を利用する。本明細書に記載される実施形態では、一般的に、プロセス流体温度送信機に関して記載されるが、本発明の実施形態は、任意の用途における任意の高温RTDに関して実行できることに留意されたい。
【0007】
RTDを高温で、場合によっては600°C以上の温度で、使用する必要性が高まってきている。上記したように、そのようなRTDセンサーを構築するために使用される材料のいくつかは、高温で導電性に、又は少なくとも部分的に導電性になることができ、それらを正確に測定することを困難にするエネルギー貯蔵特性を発達させ始める可能性を有している。この挙動は、RTDの製造に使用される材料が汚染されている場合、600°C以下でも発生する可能性を有している。これは、RTDがそのような高温で校正されない場合、これまで検出できなかった測定誤差が発生する可能性があることになる。ほとんどの場合、極端な温度は、RTDの校正には使用されない。
【0008】
RTDはエネルギー貯蔵動作を発生し、励起電流(excitation current(規定電流))が供給又は除去される場合、RTDを充電又は放電するために必要な期間が、過度の又はそうでなければ延長されて存在することになる。この特性は、抵抗とコンデンサーのネットワーク(実際には、このシステムはより複雑であるが、基本的な関係はそのまま適用される)を使用した1次の時定数としてモデル化できる。温度が上昇すると、時定数は増加し、その結果、誘起電圧は、測定に許される標準的な時間内に、完全に収束(settled out、整定)しない。この問題は、二重(dual)RTD素子センサーを使用し、2つの素子の間に大きな静電容量がある場合には悪化する。一方のRTD素子が測定されると、素子間の静電容量が実質的に充電される。測定が他方のセンサーに切り替わると、「コンデンサー」に保持されていた電圧の極性が反転する。これにより、第2のRTD素子には負の電圧が存在することになり、静電容量の充電時間が長くなる。測定における整定時間(settling time)の遅延が十分に長く設定されていない場合、各RTD素子の測定は、他方のセンサーに影響を与えることになる。本書では、整定時間の遅延は、RTDへの励起電流の供給後、RTDを横切る(across)電圧が許容可能な状態に達するのに必要な時間として定義される。
【0009】
図1は、本発明の実施形態が特に適用可能なプロセス流体温度送信機の環境を示す概略図である。
図1は、プロセス制御ループ16を介して制御室14(電圧源及び抵抗としてモデル化された)に電気的に接続されたプロセス流体温度送信機12を含むプロセス制御システム10を示す。本発明の実施形態の1つの態様としては、高温におけるRTDの材料の絶縁特性の変化によって引き起こされる誤差を除去することである。プロセス温度の出力値は、RTDの測定された抵抗に関連し、送信機12内の回路によって、RTD内のエネルギー貯蔵動作が補償される。
【0010】
図2は、本発明の実施形態に係るプロセス流体送信機12のシステムブロック図である。プロセス流体温度送信機12は、ループ通信機20、複数の端子22、励起源24、測定装置26、及び制御装置28を含む。
【0011】
ループ通信機20は、プロセス制御ループ16(実態の無いように(in phantom)で図示される)に接続可能であり、プロセス制御ループ16を介して通信するよう適応されている。プロセス制御ループ16は、プロセス情報に関連する信号を通過させることが可能な任意の物理的構成である。例えば、プロセス制御ループ16は、2線式、4-20mAのプロセス制御ループであることができる。いくつかのプロセス制御ループの実施形態では、通電レベルは、工場相互承認規格(Factory Mutual Approval Standard)の標題「クラスI、II、及びIII、区分1の危険(分類)な場所、における使用のための本質的に安全な装置及び関連装置(Intrinsically Safe Apparatus and Associated Apparatus for Use in Class I, II, and III, Division 1 Hazardous (Classified) Locations,)」(1988年10月発行)における、クラス番号(Class Number)3610、に規定される本質安全仕様に準拠するためとしても、十分低いレベルである。いくつかのプロセス可変送信機は、必要なすべての電力を、4-20mAのプロセス制御ループから受け取ることができるような、低エネルギーレベルで動作することができる。
【0012】
ループ通信機20は、アナログ通信用の4-20mA通信部を含むことができる。デジタル信号の場合、通信機20は、HART(登録商標)(Highway Addressable Remote Transducer)通信部、FOUNDATION(登録商標)フィールドバス(Fieldbus)通信部、又はその他の任意の適切な部分(section)を含むことができる。一実施形態によれば、ループ通信機20は、IEC62591(WirelessHART)に準拠したものなどの無線プロセス産業標準通信プロトコルに従って通信するように構成される。したがって、ループ通信機20は、1つ以上の選択された既知の方法のプロトコルに従って、プロセス制御ループ16(有線又は無線)を介して、双方向通信を行うように適応されている。
【0013】
図2では、RTD30(実態の無いように(in phantom)で図示される)などの抵抗温度装置に接続された一対の端子22を示している。
図2では一対の端子22が示されるが、任意の適切な数の端子を使用してRTD30に接続することができる。RTD30は、送信機12とは別個のもの(図示されたように)であっても、送信機12内に含まれるものであることもできる。
【0014】
励起源24は、端子22に動作可能に接続され、複数の端子を通して電流などの励起信号を発生させるように適応されている。未知の抵抗に既知の励起信号を通過させることで、RTDの抵抗から、RTDがさらされている温度を示す、関連する応答が発生される。励起源24は、ブロック形式で示され、適切な信号出力を提供する電流源又は電圧源などの、任意の適切な励起源とすることができる。一実施形態では、励起源24は、半導体電流源である。
【0015】
測定装置26は、端子22に接続され、端子22間を横切る励起信号に対するRTDの応答を示す、電圧値などの、応答を測定して、制御装置28に提供する、ように適応されている。測定装置26は、アナログ-デジタル変換器、又は端子22間を横切る電圧を測定することができる任意の他の適切な装置、を含むことができる。そのような測定が、励起源24がRTD30に励起電流を流している間に行われる場合には、測定された応答は、RTD30の抵抗、ひいてはプロセス流体温度に関連することになる。
【0016】
制御装置28は、測定装置26、励起源24、及びループ通信機20に接続される。制御装置28は、励起源24を制御して、端子22を介して、RTDを通過又は横切る励起信号を供給し、測定装置26に、励起信号が供給されている間、端子22間を通過又は横切る応答を測定させる、ように構成される。制御装置28は、励起信号が供給されている間に判定されたRTDの抵抗に基づいて、プロセス温度出力値を判定するように適応されている。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、制御装置28はまた、RTDがエネルギーを貯蔵する程度を判定して、RTDエネルギー貯蔵診断を実行し、さらにRTDのエネルギー貯蔵動作に基づいて、プロセス温度出力を補償する、ようにも構成される。制御装置28は、プロセス制御ループ16を介して通信するために、補償されたプロセス温度出力値を、ループ通信機20に提供するように構成される。
【0018】
制御装置28は、プログラマブルゲートアレイ、マイクロプロセッサ、又は本明細書に記載される高温誘導誤差の影響を低減又は除去することができる任意の他の適切な装置、であることができる。そのような誤差の低減は、数学的に、又は適切な回路を使用して、又はその両方の組み合わせ、によって実行することができる。
【0019】
図3Aは、本発明の実施形態が特に適用可能なRTDを示す概略図である。RTD30は、測定装置26(
図2に関して記載)のような測定装置に接続可能な一対の接続リード線32を備えて示されている。リード線32は、コールドエンドシール36内のRTD導体34に接続する。コールドエンドシール36は、アセンブリの端部に環境シールを提供し、リード線32のための歪み緩和を提供するために、セメント又はガラスで形成することができる。一実施形態では、RTD30は、セラミック本体42内に配置された一対のプラチナコイル38、40を含む。コイル38、40の各々は、絶縁性コアに巻き付けられたワイヤーで形成されている。この絶縁性コアは、セラミック又はガラスのような任意の適切な高温材料で形成することができる。
図3Aに関して説明されている実施形態では白金線を使用しているが、本発明の実施形態は、ニッケル又は銅などの、温度に対して又は温度とともに変化する電気抵抗を有する任意の適切な材料で、実施することができる。
図3Aに示すように、コイル38及び40は、ホットエンドシール48内のホットエンド46に近接して配置された相互接続部44を介して、電気的に接続される。ホットエンドシール48は、コールドエンドシール36と同様に、高温でのシールを提供し、相互接続部44を保護するために、ガラス又はセメントなどの任意の適切な材料で形成することができる。従って、
図3Aに示される実施形態では、コイル38、40は、互いに直列に電気的に接続されている。
【0020】
図3Bは、RTD30のホットエンド48の側面図である。
図3Bは、コイル38及び40並びに相互接続部44が、二重素子RTDアセンブリの1つの素子を提供することを示している。
図3Bに示すように、第2の組のコイル38’及び40’も、セラミック本体42内に設けられ、相互接続部44’を介して、互いに直列に接続されている。
【0021】
ベンチトップ型デジタルマルチメータ、又は
図1及び2に関して記載した温度送信機などの測定装置は、異なる測定機能を有する。これらの測定装置のいずれも、RTDを横切る電圧降下を監視するか、さもなければ測定するために、励起電流を使用する。上記したようなプロセス流体温度送信機は、典型的には、定期的に励起信号をオン/オフさせて、センサーチェックを実行し、測定用のチャンネルを切り替え、及び/又は他の誤差の発生源(EMFのような-RTD内の異種金属の接合部で発生する小型の熱電対など)に対する補償を提供するであろう。
【0022】
図4は、異なる動作温度における高温RTDアセンブリの誘起電圧の測定誤差を例示するチャートである。異なる温度は、特定の温度ではないが、3つの比較的異なる温度が、説明のために示されていることに留意されたい。通常の動作温度(線80で示す)では、誘起電圧は、整定時間82内にゼロまで低下する。しかしながら、動作温度84(通常の動作温度+400℃)では、誘起電圧は、整定時間82の終了時に約50ミリボルトまでしか低下しない。さらに、動作温度86(通常の動作温度+600℃)では、誘起電圧は、整定時間82内に約65ミリボルトまでしか低下しない。測定変換時間88の間の、測定における整定時間の遅延が十分に長くない場合、各センサーの測定は、他のセンサーの測定に影響を与えることになる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、制御装置28は、ソフトウェア、ハードウェア、又はその両方の組み合わせを通じて、いったん励起電流が除去されると、RTDを横切る複数の電圧測定値を得るように構成される。
【0024】
図5は、RTD30に対する励起電流の除去後に発生する、測定値1、2、及び3の取得、を示すチャートである。
図5に示すように、励起電流は、整定時間82の開始時に除去される。いったん励起電流が除去された後に、センサーの複数の測定を行うことによって、センサーがどの程度劣化しているかと、有効な測定を提供するためにどの程度の整定時間が必要であるか、を示すための、放電速度の傾向を判定することが可能となる。劣化が著しい場合、制御装置28は、エンドユーザに対して、指標を提供することもできる。
【0025】
図5に示すように、典型的な整定時間82を越えて、強調表示(highlighted)された3つの測定領域がある。これらの区分(segment)の各々は、その期間にわたる平均の測定値を発生する。図を見て理解されるように、測定1は、測定2よりも大きい平均出力を発生する。同様に、測定2は、測定3よりも大きくなる。各々の線は、温度が上昇するにつれて大きくなる、1次の時定数を意味して(represent)いる。正常に機能しているRTDの電気的特性は、標準的な温度測定送信機で使用される、整定時間を超えることはない。これらの測定値を比較することにより、傾向を特定することができ、RTDがどの程度劣化しているかを予測し、温度送信機が、整定時間82を調整して、過剰な時定数を補償するために、使用できる。この補償により、ユーザーは、正確な測定値を維持し、メンテナンスが必要な場合は、通知されることができる。「時定数」は、一般的に、温度センサーに関して、センサーが、接続されたものの温度に整合する出力を達成するための時間、を測定するものとして説明されることに留意することは有用である。このような時定数は、したがって、励起電流がセンサーに供給されている間に得ることができる。これに対して、
図4及び
図5に関して説明した実施形態では、励起電流を除去した後の、RTDの放電時定数を測定している。図を見て理解されるように、
図5に示される3つの測定は、比較的迅速に連続して行われ、測定1が、約0.017秒から0.033秒に及ぶ測定2の開始時である、約0.017秒のところで終了している。最後に、測定3は、0.033秒から0.050秒までかかっている。なお、測定のための図示された時間は、例示に限られたものであり、本明細書に記載された様々な実施形態に従って、タイミング及び連続する測定の回数を変更することができることに留意されたい。
【0026】
図を見て理解されるように、例えば、劣化していない温度センサーの場合のように、すべての測定値が等しい場合、制御装置28は、誤差が存在せず、整定時間82の調整は必要ない、と判断することができる。しかしながら、複数の測定値が異なる値となって記録され始めると、制御装置28は、RTDの劣化を検出し、そのような劣化の指標を提供することができる。さらに、制御装置28は、許容可能であるか、又は予め選択された閾値以下である、測定値1、2、及び3の間に、差異をもたらす結果となる整定時間82の値を見つけるために、整定時間82を延長することができる。時定数が、設定された閾値によって、予想される整定時間82を超えるとき、制御装置82は、一実施形態においては、温度送信機の精度仕様の範囲外である不正確さを示す指標を発生させるであろう。
【0027】
上記したように、制御装置28は、センサーの劣化の検出に応じて、整定時間を調整することができる。一実施形態では、整定時間の補正は、RTDから励起電流を除去することによって、調整される。これは、理想的には、測定された電圧をゼロにさせるはずである。温度送信機に固有のオフセットが適切に管理されていれば、残りの測定電圧は、誤差と判断される。測定1、2、及び3の間で特定された誤差は、劣化したRTDによって変化した可能性のある新しい時定数を再計算するために、使用することができる。新しい時定数Tauは、以下のように計算することができる。
【0028】
【0029】
この新しい時定数値は、正確な測定を提供し続けるために、所望の誤差閾値を満たす、新しい整定時間を再計算するために使用することができる。新しい整定時間Tsは、以下のように計算することができる。
【0030】
【0031】
上記の式において、Tauは時定数、Tmeasは測定時間、Tsは整定時間、Verror1は測定1による誤差、Verror2は測定2による誤差、Meas_Pcntは測定における許容誤差の割合(percent)である。
【0032】
例えば、
図5に示すように、プロットには3つの測定値が提供されている。測定値1はシーケンスカウンタの最初の測定値であり、測定値2は第2の測定値であり、以下同様に続く。
【0033】
図6は、本発明の実施形態に係る、RTDアセンブリの高温でのエネルギー貯蔵効果を検出し及び補償する方法のフロー図である。方法100は、制御装置28又は別の適切な装置などの制御装置が、RTDアセンブリから励起電流を除去するブロック102で始まる。ブロック102で励起電流が除去されると、プロセス温度送信機、又は他の好適な装置は、ブロック104で示されるように、励起電流がゼロである間に、RTDの電圧応答を判定する。この判定された電圧応答は、ブロック106で示され、
図5に関して上記されているように、複数の連続した測定を使用することによって、得ることができる。しかしながら、ブロック104では、ブロック108で示されるように、RTDの電圧応答を判定するための任意の適切な技法、を用いることができる。例えば、電圧応答が、ゼロ又はある公称電圧、のような適切に低い電圧、まで低下するために必要な時間、を測定することができる。しかしながら、当業者は、電圧応答が、任意の数の適切な方法で判定され得ることを認識するであろう。
【0034】
次に、ブロック110で、RTDの放電挙動が、閾値と比較される。これが行われ得る1つの方法は、ブロック112で示されるように、複数の連続する測定値の間の差を比較することである。しかしながら、ブロック114で示されるように、時定数は、測定されるか、そうでなければ得る、ことができる。放電動作の比較に基づいて、ブロック116では、RTDが何らかの劣化を受けたか否かを判断する。そうでない場合、制御は、終了ブロック118に移行し、そこで診断が終了する。しかし、劣化が検出された場合、制御は、オプションのブロック120に移行し、そこでそのような劣化の指標を提供することができる。このような指標は、プロセス流体温度送信機で、ローカルに提供することができ、又はプロセス通信を介してなどのような、リモート装置に通信することができる。
【0035】
次に、ブロック122において、劣化に対応するために、RTDの整定時間が調整される。このような時間調整は、プロセス流体温度送信機によって、許容誤差の割合が同じかそれ以下などのような、所定の精度が提供され続けることを、保証するように設定することができる。さらに、一実施形態によれば、調整された整定時間は、プロセス流体温度が選択された温度閾値以上である場合、にのみ利用されるように設定することができる。従って、温度がより低い値に戻ったときに、より迅速な測定を提供するために、整定時間をより短い値に戻すことができる。時定数は、温度とともに増加するので、本明細書に記載の実施形態では、動作が特定のRTDの限界に近づいていることを示す指標、を提供することができる。さらに、RTDが以前に評価された特定の温度の点を通過する際に、時間経過に伴う望ましくない変動(drift)を評価することも可能である。RTDの応答を計算し、既知の良い例又は過去の値と比較し、おおよその健康指数(health index)を判定して、RTDを交換する指標として、ユーザーに提供する、ことができる。例えば、時刻T1において、摂氏500℃の温度でのRTDの放電速度を求め、続いて時刻T2において、同じ温度で、同じRTDの放電速度を求めた場合、放電速度の変動は、RTDセンサーの摩耗又は劣化を示すことができる。
【0036】
本発明は好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更を加えることができることを認識するであろう。例えば、励起源、測定装置及び制御装置は、別々の装置として記載されているが、これらの機能の全てが、単一のマイクロ制御装置又は特定用途向け集積回路(ASIC)内で具現化されることができることが明示的に企図されている。