(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】免疫学的測定方法、免疫学的測定用キット及び固相担体試薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20241029BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N33/531 B
G01N33/536 C
(21)【出願番号】P 2023033714
(22)【出願日】2023-03-06
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022036328
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高橋 志郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 隆啓
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-293498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0400674(US,A1)
【文献】特開平09-196922(JP,A)
【文献】特表2021-529838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0287468(US,A1)
【文献】Section7: ELISA,Protocols Book ,abcam,2024年05月29日,pp.59-69,[online], <URL:http://web.archive.org/web/20220302233907/https://docs.abcam.com/pdf/misc/abcam-protocols-book.pdf>,<2022年3月2日付けウェブアーカイブ>, [2024年05月29日検索], インターネット
【文献】Protocols for Blocking Endogenous Peroxidase Activity,LifeSpan BioSciences、Inc.,2024年05月29日,[online], <URL:https://www.lsbio.com/GenericProductDocuments/Vector Labs/Quenching Endogenous Peroxidase Activity.pdf>,<更新日:2017/11/15>, [2024年05月29日検索], インターネット
【文献】An Improved Method for the Inhibition of Endogenous Peroxidase Non-Deleterious to Lymphocyte Surface Markers. Application to Immunoperoxidase Studies on Eosinophil-Rich Tissue Preparations,Histochemical Journal,1987年,Vol.19, No.8,pp.426-430,<DOI: 10.1007/BF01675753>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原及び固相担体(α)の複合体を含有する第1混合物を得る工程、並びに、
前記第1混合物及び標識試薬(C)を用いて前記抗原を測定する工程を含む免疫学的測定方法であって、
前記第1混合物を得る工程が、
前記抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、過酸化水素及び前記固相担体(α)を混合して、前記抗原及び固相担体(α)の複合体を含む第2混合物を得る工程、並びに、
前記第2混合物を得る工程の後に、前記ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程を含
み、
前記ペルオキシダーゼ阻害剤が、4-アミノベンゾヒドラジド、インドール-3-酢酸ヒドラジド、4-フルオロ安息香酸ヒドラジド及び6-ヨード-ピリジン-2-カルボン酸ヒドラジドからなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドラジン誘導体である芳香族化合物、並びに、
サリチルヒドロキサム酸、2-(3,5-ビストリフルオロメチルベンジルアミノ)-6-オキソ-1H-ピリミジン-5-カルボヒドロキサム酸、4-ベンジル-2-ヒドロキシベンゼンカルボヒドロキサム酸、2-(ベンジルアミノ)-6-オキソ-3H-ピリミジン-5-カルボヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、1-ナフトヒドロキサム酸及び2-ナフトヒドロキサム酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキサム酸誘導体である芳香族化合物を含有する、免疫学的測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の免疫学的測定方法に使用する免疫学的測定用キットであって、
固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、前記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、
前記固相担体試薬(A)が、前記固相担体(α)を含有し、
前記固相担体試薬(A)及び前記反応緩衝液(B)の少なくとも一方が、前記ペルオキシダーゼ阻害剤を含有し、
前記固相担体試薬(A)及び前記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が前記過酸化水素を含有するか、又は、
前記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、前記反応緩衝液(B)が、前記触媒及び前記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、前記(β)と前記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である、免疫学的測定用キット。
【請求項3】
請求項1に記載の免疫学的測定方法に使用する免疫学的測定用キットであって、
固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、前記ペルオキシダーゼ阻害剤、前記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、
前記固相担体試薬(A)が、前記固相担体(α)を含有し、
前記固相担体試薬(A)及び前記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が前記過酸化水素を含有するか、又は、
前記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、前記反応緩衝液(B)が、前記触媒及び前記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、前記(β)と前記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である、免疫学的測定用キット。
【請求項4】
前記化学反応が、酸化還元反応であり、前記触媒が、酸化還元酵素であり、前記基質が、前記酸化還元反応において酸化される基質である、請求項2又は3に記載の免疫学的測定用キット。
【請求項5】
前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼであり、前記基質が、グルコースである、請求項4に記載の免疫学的測定用キット。
【請求項6】
前記固相担体(α)が、前記抗原と特異的に結合す
る抗体をその表面に固定化した固相担体(α1)であり、前記標識試薬(C)が、ペルオキシダーゼにより標識され
た標識抗
体を含有する、請求項2又は3に記載の免疫学的測定用キット。
【請求項7】
前記固相担体(α)が、前記抗原と特異的に結合す
る抗体をその表面に固定化した固相担体(α1)であり、前記標識試薬(C)が、ペルオキシダーゼにより標識され
た標識抗原又はその類似物
質を含有する、請求項2又は3に記載の免疫学的測定用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的測定方法、免疫学的測定用キット及び固相担体試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中の生体物質、例えば生体サンプル中のタンパク質等を検出する方法として、生体物質が結合し得る磁性粒子表面に試料中の生体物質を結合させ、検出対象である生体物質以外の不純物を除くために、生体物質が結合した磁性粒子を洗浄後、回収して、上記磁性粒子由来のシグナル(発光量等)を測定する方法が知られている(特許文献1)。
血液中の生体物質(α-フェトプロテイン等)を検出する場合、通常、血液中の血球(赤血球や白血球)を遠心分離により沈殿させ、上清である血清や血漿を試料として使用する。しかし、血球が完全に分離できず、試料中にその一部が混入してしまうと、血球に含まれるペルオキシダーゼに由来するシグナルも検出されてしまう。この場合、検出対象である生体物質の含有量に相当するシグナル強度を超えるシグナルが検出されたり(偽高値)、上記生体物質が存在しなくてもシグナルが検出されたり(偽陽性)する現象が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、試料中の夾雑物(血球等)由来のペルオキシダーゼに起因する偽陽性・偽高値を抑制することができる免疫学的測定方法、免疫学的測定用キット及び固相担体試薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、
抗原及び固相担体(α)の複合体を含有する第1混合物を得る工程、並びに、
上記第1混合物及び標識試薬(C)を用いて上記抗原を測定する工程を含む免疫学的測定方法であって、
上記第1混合物を得る工程が、
上記抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、過酸化水素及び上記固相担体(α)を混合して、上記抗原及び固相担体(α)の複合体を含む第2混合物を得る工程、並びに、
上記第2混合物を得る工程の後に、上記ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程を含む免疫学的測定方法;
本発明の免疫学的測定方法に使用する免疫学的測定用キットであって、
固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、上記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、
上記固相担体試薬(A)が、上記固相担体(α)を含有し、
上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)の少なくとも一方が、前記ペルオキシダーゼ阻害剤を含有し、
上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が前記過酸化水素を含有するか、又は、
上記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、上記反応緩衝液(B)が、上記触媒及び上記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である、免疫学的測定用キット;
本発明の免疫学的測定方法に使用する免疫学的測定用キットであって、
固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、上記ペルオキシダーゼ阻害剤、上記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、
上記固相担体試薬(A)が、上記固相担体(α)を含有し、
上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が前記過酸化水素を含有するか、又は、
上記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、上記反応緩衝液(B)が、上記触媒及び上記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である、免疫学的測定用キット; 並びに
固相担体(α)と、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)とを含有する固相担体試薬(A)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の免疫学的測定方法、免疫学的測定用キット及び固相担体試薬は、夾雑物由来のペルオキシダーゼに起因する偽陽性・偽高値を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の免疫学的測定方法は、後に詳述する通り、
抗原及び固相担体(α)の複合体を含有する第1混合物を得る工程、並びに、
上記第1混合物及び標識試薬(C)を用いて上記抗原を測定する工程を含む免疫学的測定方法であって、
上記第1混合物を得る工程が、
上記抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、過酸化水素及び上記固相担体(α)を混合して、上記抗原及び固相担体(α)の複合体を含む第2混合物を得る工程、並びに、
上記第2混合物を得る工程の後に、上記ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程
を含む。
本発明の免疫学的測定用方法は、例えば、後に詳述する本発明の免疫学的測定用キットを用いて実施することができる。
また、本発明の免疫学的測定用キットは、後述の通り、本発明の免疫学的測定用方法に使用するものであって、
固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、上記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、
上記固相担体試薬(A)が、上記固相担体(α)を含有し、
上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が上記過酸化水素を含有するか、又は、
上記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、上記反応緩衝液(B)が、上記触媒及び上記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能であり、
上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)の少なくとも一方が、さらに上記ペルオキシダーゼ阻害剤を含有する態様(第一の態様)、及び、
固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、上記ペルオキシダーゼ阻害剤、上記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、
上記固相担体試薬(A)が、上記固相担体(α)を含有し、
上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が上記過酸化水素を含有するか、又は、
上記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、上記反応緩衝液(B)が、上記触媒及び上記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である態様(第二の態様)のいずれであってもよい。
まず、固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、標識試薬(C)及び発光試薬(D)等について、説明する。
【0008】
<固相担体試薬(A)>
本発明における固相担体試薬(A)は、固相担体(α)を含有する。
固相担体(α)の材料としては、一般的に免疫学的測定の分野で測定されるものであれば特に限定はされず、例えばガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、磁性粒子、マイクロプレート、ラテックス等が代表的なものとして挙げられる。これらの内、免疫学的測定における測定時間の短縮及び正確性の観点から、磁性粒子を用いることが好ましい。
【0009】
磁性粒子としては、超常磁性金属酸化物を含有するシリカ粒子が好ましく、特許文献1、特開2014-210680号公報及び特開2013-019889号公報等に記載の、シリカのマトリックス中に超常磁性金属酸化物粒子を分散させてなるシリカ粒子(以下、単に「シリカ粒子」とも言う)がより好ましい。
超常磁性とは、外部磁場の存在下で物質の個々の原子磁気モーメントが整列し誘発された一時的な磁場を示し、外部磁場を取り除くと、部分的な整列が損なわれ磁場を示さなくなることをいう。
【0010】
上記シリカ粒子の体積平均粒子径は、1~5μmであることが好ましく、1~3μmであることが更に好ましい。体積平均粒子径が1μm以上であると、固相担体(α)の分離回収を短時間で行える傾向にあり、5μm以下であると、表面積が適度であり、固定化する物質[抗原、抗体等]の結合量を適度にすることができ、結合効率がよい。
【0011】
上記シリカ粒子の体積平均粒子径は、後述の水中油型エマルションを作製する際の混合条件(せん断力等)を調節して水中油型エマルションの粒子径を調整することにより制御することができる。また、シリカ粒子製造時の水洗工程の条件変更や通常の分級等の方法によっても体積平均粒子径を所望の値とすることができる。
なお、本明細書における体積平均粒子径は、任意の200個の粒子について走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7000F」)で観察して測定された粒子径の平均値である。
【0012】
超常磁性金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの合金等の酸化物が挙げられるが、磁界に対する感応性が優れていることから、酸化鉄が特に好ましい。超常磁性金属酸化物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
酸化鉄としては、公知の種々の酸化鉄を用いることができる。
酸化鉄の内、特に化学的な安定性に優れることから、マグネタイト、γ-ヘマタイト、マグネタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄及びγ-ヘマタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、大きな飽和磁化を有し、外部磁場に対する感応性が優れていることから、マグネタイトが更に好ましい。
【0014】
超常磁性金属酸化物の製造方法は、特に限定されないが、Massartにより報告されたものをベースとして水溶性鉄塩及びアンモニアを用いる共沈殿法(R.Massart,IEEE Trans.Magn.1981,17,1247)や水溶性鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた方法により合成することができる。
【0015】
超常磁性金属酸化物粒子は、体積平均粒子径が1~20nmであることが好ましい。体積平均粒子径が1nm以上の場合は合成が比較的容易であり、20nm以下の場合は、シリカのマトリックスに均一に分散させることが容易である。
なお、超常磁性金属酸化物粒子の体積平均粒子径は、超常磁性金属酸化物粒子作製時の金属イオン濃度を調節することにより制御することができる。また、通常の分級等の方法によっても体積平均粒子径を所望の値にすることができる。
【0016】
上記シリカ粒子中の超常磁性金属酸化物の含有量の下限は、シリカ粒子の重量を基準として、60重量%が好ましく、更に好ましくは65重量%であり、上限は95重量%が好ましく、更に好ましくは85重量%である。超常磁性金属酸化物の含有量が60重量%以上であると、得られたシリカ粒子の磁性が十分であり、実際の用途面における分離操作を短時間で行えるので好ましい。また、超常磁性金属酸化物の含有量が95重量%以下であると、シリカ粒子の合成が容易である。
【0017】
上記シリカ粒子は、例えば体積平均粒子径が1~20nmの超常磁性金属酸化物粒子、上記超常磁性金属酸化物粒子の重量に基づいて30~500重量%の(アルキル)アルコキシシラン及び必要に応じて分散剤を含有する分散液と、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を含有する溶液とを混合して水中油型エマルションを形成後、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を行い、超常磁性金属酸化物粒子がシリカマトリックスに包含された磁性粒子の水性分散体を得た後、当該水性分散体を遠心分離及び/又は磁力により固液分離し、水又はメタノール等で洗浄することにより得られる。
また、必要に応じて、更に、上記の操作で得た磁性粒子、(アルキル)アルコキシシラン、水、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を混合し、(アルキル)アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を実施し、コア-シェル構造を有するシリカ粒子としてもよい。
上記及び以下において、(アルキル)アルコキシシランとは、アルキルアルコキシシラン又はアルコキシシランを意味する。(アルキル)アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
上記シリカ粒子は、超常磁性金属酸化物粒子がシリカマトリックスに包含され、シリカ粒子表面での超常磁性金属酸化物の存在量が比較的少ないことから、固定化する物質を粒子表面に多量に固定化することができる。
【0019】
固相担体(α)は、抗原(試料中の測定対象物質)と特異的に結合する物質(抗体)をその表面に固定化した固相担体(α1)であることが好ましい。
【0020】
<抗原>
本発明における抗原としては、一般的に免疫学的測定の分野で測定されるものであれば特に限定はされず、例えば、生体体液(例えば血清、血液、血漿、尿等)、リンパ液、血球及び各種細胞類等の生体由来の試料中に含まれるヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖、ポリヌクレオチド鎖);染色体;核酸(例えばデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)等);ペプチド鎖(例えばC-ペプチド、アンジオテンシンI等);タンパク質〔例えばプロカルシトニン、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンE(IgE)、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンD(IgD)、β2-ミクログロブリン、アルブミン、ヘモグロビン、ミオグロビン、トランスフェリン、プロテインA、C反応性蛋白質(CRP)、フェリチン、トロポニンT(TnT)、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)、これらの分解産物〕;血液凝固関連因子(例えばフィブリノーゲン、フィブリン分解産物、プロトロンビン、トロンビン等);酵素〔例えばアミラーゼ(例えば膵型、唾液腺型、X型等)、アルカリホスファターゼ(例えば肝性、骨性、胎盤性、小腸性等)、酸性ホスファターゼ(例えばPAP等)、γ-グルタミルトランスファラーゼ(例えば腎性、膵性、肝性等)、リパーゼ(例えば膵型、胃型等)、クレアチンキナーゼ(例えばCK-1、CK-2、mCK等)、乳酸脱水素酵素(例えばLDH1~LDH5等)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(例えばASTm、ASTs等)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(例えばALTm、ALTs等)、コリンエステラーゼ(例えばChE1~ChE5等)、ロイシンアミノペプチダーゼ(例えばC-LAP、AA、CAP等)、レニン、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ等〕及びこれら酵素のインヒビター;ホルモン(例えばPTH、TSH、インシュリン、LH、FSH、エストラジオール、プロラクチン等);レセプター(例えばエストロゲン、TSH等に対するレセプター);リガンド(例えばエストロゲン、TSH等);細菌(例えば結核菌、肺炎球菌、ジフテリア菌、髄膜炎菌、淋菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、腸内細菌、大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ等);ウイルス(例えばルベラウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、ATLウイルス、AIDSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ポリオウイルス、EBウイルス、HAV、HBV、HCV、HIV、HTLV等);真菌(例えばカンジダ、クリプトコッカス等);スピロヘータ(例えばレプトスピラ、梅毒トレポネーマ等);クラミジア、マイコプラズマ等の微生物;上記微生物に由来するタンパク質又はペプチド或いは糖鎖抗原;気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等のアレルギーの原因となる各種アレルゲン(例えばハウスダスト;コナヒョウダニ、ヤケヒョウダニ等のダニ類;スギ、ヒノキ、スズメノヒエ、ブタクサ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ライムギ等の花粉;ネコ、イヌ、カニ等の動物;米、卵白等の食物;真菌、昆虫、木材、薬剤、化学物質等に由来するアレルゲン等);脂質(例えばリポタンパク質等);プロテアーゼ(例えばトリプシン、プラスミン、セリンプロテアーゼ等);腫瘍マーカータンパク抗原(例えばPSA、PGI、PGII等);糖鎖抗原〔例えばAFP(例えばL1からL3等)、hCG(hCGファミリー)、トランスフェリン、IgG、サイログロブリン(Tg)、Decay-accelerating-factor(DAF)、癌胎児性抗原(例えばCEA、NCA、NCA-2、NFA等)、CA19-9、PIVKA-II、CA125、前立腺特異抗原、癌細胞が産生する特殊な糖鎖を有する腫瘍マーカー糖鎖抗原、ABO糖鎖抗原等〕;糖鎖(例えばヒアルロン酸、β-グルカン、上記糖鎖抗原等が有する糖鎖等);糖鎖に結合するタンパク質(例えばヒアルロン酸結合タンパク、βグルカン結合タンパク等);リン脂質(例えばカルジオリピン等);リポ多糖(例えばエンドトキシン等);化学物質(例えばT3、T4、FT3、FT4、トリブチルスズ、ノニルフェノール、4-オクチルフェノール、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、ベンゾフェノン、オクタクロロスチレン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等の環境ホルモン);人体に投与・接種される各種薬剤及びこれらの代謝物;アプタマー;核酸結合性物質;これらの抗体等が挙げられる。
【0021】
本発明の効果を十分に発揮できることから、抗原としては、血清や血漿に含まれる物質(サイログロブリン、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体及び癌胎児性抗原等)であることが好ましい。
【0022】
本発明における抗原の類似物質とは、抗原と特異的に結合する物質(抗体)が有する抗原との結合部位と結合し得るもの、言い換えれば、抗原が有する抗体との結合部位を有するもの、更に言い換えれば、抗原と抗体との反応時に共存させると抗原と抗体との反応と競合し得るものであればいずれでもよい。
【0023】
<抗体>
本発明における抗体は、本発明における抗原と特異的に結合する物質である。例えば「抗原」-「抗体」間反応、「糖鎖」-「タンパク質」間反応、「糖鎖」-「レクチン」間反応、「酵素」-「インヒビター」間反応、「タンパク質」-「ペプチド鎖」間反応、「染色体又はヌクレオチド鎖」-「ヌクレオチド鎖」間反応、又は、「ヌクレオチド鎖」-「タンパク質」間反応等の相互反応によって、試料中の抗原(測定対象物質)又はその類似物質と結合するもの等が挙げられる。言い換えると、上記各反応において、結合する物質のいずれか一方が抗原(測定対象物質)又はその類似物質である場合、他方が抗体(抗原と特異的に結合する物質)である。
尚、本発明において用いられる抗体には、パパインやペプシン等の蛋白質分解酵素、或いは化学的分解により生じるFab、F(ab’)2フラグメント等の分解産物も包含される。
【0024】
本発明において、固相担体の表面に抗体を固定化して固相担体(α1)とする方法としては、例えば上記超常磁性金属酸化物を含有するシリカ粒子に、抗体を物理吸着させる方法が挙げられるが、より効率良く抗体を固定化させる観点から、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン及び官能基を有するアルキルアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物をシリカ粒子の表面に結合させ、それらを介して、抗体をシリカ粒子に固定化させるのが好ましく、更に好ましくは官能基(エチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基及びイソシアネート基等)を有するアルキルアルコキシシランを介して固定化させる方法である。
当該有機化合物をシリカ粒子の表面に結合させる方法としては、特に限定されず、特許文献1等に記載の方法が挙げられる。
当該官能基を有するアルキルアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。アルキルアルコキシシランが1分子中に2個以上の異なる官能基を有していてもよい。
【0025】
当該有機化合物を介して抗体をシリカ粒子に固定化させる方法は特に限定されず、公知の方法(特開2014-210680号公報及び特開2013-019889号公報に記載の方法等)等が挙げられる。
【0026】
固相担体試薬(A)は、貯蔵安定性の観点から、固相担体(α)と液状媒体を含有することが好ましい。固相担体試薬(A)中の固相担体(α)の含有量は、固相担体の洗浄性の観点から、0.001~10重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
【0027】
また、上記の液状媒体としては、一般的に免疫学的測定の分野で用いられている、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等の緩衝液等が挙げられる。
【0028】
また、上記の液状媒体は、ゼラチン、ゼラチン以外のタンパク質、血清(マウス血清等)、糖類、界面活性剤、無機塩及びエチレンジアミン四酢酸等を含有してもよい。
ゼラチンとしては、公知のゼラチンが含まれ、分子量及び性状に限定はなく、いかなる動物(ホ乳類、鳥類及び魚類等)から取得したものであってもよい。例えば、コラーゲンを酸又はアルカリによる化学処理後、加熱処理して製造した酸処理ゼラチン及びアルカリ処理ゼラチン等が挙げられる。更にこのゼラチンをアミノ基、イミノ基、カルボキシル基、メルカプト基及び水酸基等の官能基を周知の方法を利用し導入し、化学的に修飾したゼラチン誘導体を用いることもできる。ゼラチンの含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、1~8重量%が好ましく、更に好ましくは2~5重量%である。
【0029】
ゼラチン以外のタンパク質としては、一般的に免疫学的測定の分野で使用されるものであれば特に限定はされず、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン及びスキムミルク等が挙げられる。タンパク質は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。タンパク質の含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~15重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~15重量%である。
また、血清の含有量は、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~15重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~10重量%である。
【0030】
糖類としては、単糖類、二糖類及び多糖類が含まれる。
単糖類としては、トリオース(ケトトリオース等)、テトロース(ケトテトロース等)、ペントース(ケトペントース、アルドペントース及びデオキシ糖類等)、ヘキソース[ケトヘキソース(プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトース等)、アルドヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース及びタロース等)及びデオキシ糖(フコース、フクロース及びラムノース等)等]並びにヘプトース(セドヘプツロース等)等が挙げられる。
二糖類としては、上記単糖類の内、2分子が脱水縮合してグリコシド結合を形成したものが含まれ、具体的には、スクロース、ラクトース、マルトース及びセロビオース等が挙げられる。
多糖類としては、上記単糖類の内、3分子以上が脱水縮合してグリコシド結合を形成したものが含まれ、具体的には、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びヘパリン等が挙げられる。
糖類は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
糖類としては、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、二糖類が好ましく、更に好ましくはスクロース及びラクトースである。
糖類の含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、5~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~20重量%である。
【0031】
界面活性剤としては、後に詳述する標識試薬(C)の説明で例示する界面活性剤等が挙げられ、好ましいものも同様である。また、界面活性剤の含有量は、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
【0032】
無機塩としては、アルカリ金属塩[ハロゲン化物(塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム及びフッ化ナトリウム等)、硫酸塩(硫酸ナトリウム及び硫酸カリウム等)、硝酸塩(硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム等)及びリン酸塩(リン酸ナトリウム及びリン酸カリウム等)]、アルカリ土類金属塩[ハロゲン化物(塩化カルシウム及び塩化マグネシウム等)及び硫酸塩(硫酸マグネシウム等)]等が挙げられる。無機塩は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの内、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
無機塩の含有量は、固相担体試薬(A)の保存安定性の観点から、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0.1~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~1重量%である。
【0033】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)としては、エチレンジアミン四酢酸、その塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム及びエチレンジアミン四酢酸三カリウム等)及び当該塩の水和物等を使用することができる。エチレンジアミン四酢酸、その塩及び当該塩の水和物の含有量は、固相担体試薬(A)の重量を基準として、0~2重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~1重量%である。
【0034】
<反応緩衝液(B)>
本発明における反応緩衝液(B)は、一般的に免疫学的測定の分野で用いられている、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッド緩衝液等の緩衝液を含有する。反応緩衝液(B)のpHは、本発明の効果を阻害しない範囲であればよく、5~9が好ましい。
なお、本明細書において、pHは、JIS K0400-12-10:2000に準拠して測定温度25℃で測定された値である。
また、このような緩衝液中には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、塩(塩化ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸等)、アルブミン(ウシ血清アルブミン等)、グロブリン、タンパク質(カゼイン加水分解物)、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤[後述する標識試薬(C)の説明で例示した界面活性剤等]及び糖類[上記の固相担体試薬(A)の説明で例示した糖類等]等を含有させておいてもよい。
【0035】
本発明の免疫学的測定用キットにおける固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が過酸化水素を含有するか、又は、固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、反応緩衝液(B)が、触媒及び基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である。この場合、固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を混合すると、過酸化水素を含有する混合物が得られる。
過酸化水素により、ペルオキシダーゼ阻害剤の阻害活性が向上することが好ましい。
なお、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)及びもう一方(γ)を、以下、それぞれ「第1の過酸化水素発生成分(β)」及び「第2の過酸化水素発生成分(γ)」とも言う。
【0036】
過酸化水素が生成する化学反応としては、例えば、反応系中に存在する酸素が電子受容体となって過酸化水素を生成する反応が挙げられる。触媒及び基質の組み合わせとしては、当該反応で使用される公知のもの、例えば、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ等の酸化還元酵素とその基質の組み合わせ等が挙げられる。
中でも、貯蔵安定性の観点から、上記化学反応が、酸化還元反応であり、上記触媒が、酸化還元酵素であり、上記基質が、上記酸化還元反応において酸化される基質であることが好ましく、上記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼであり、上記基質が、グルコース(β-D-グルコース等)であることが好ましい。
【0037】
固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)の少なくとも一方が過酸化水素を含有する場合、過酸化水素の含有量(固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)の両方が過酸化水素を含有する場合は、含有量の合計)は、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に限定されないが、反応に供される過酸化水素の合計重量が、反応に供されるペルオキシダーゼ阻害剤の合計重量に基づき、0.05~60000重量%が好ましく、0.9~20000重量%がより好ましい。
【0038】
固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)が、第1の過酸化水素発生成分(β)及び第2の過酸化水素発生成分(γ)をそれぞれ含有する場合、これらの成分の含有量は、本発明の効果が発揮されるために十分な量の過酸化水素を生成できる範囲であれば特に限定されないが、反応に供される触媒の量は、反応に供される基質の重量に基づき、0.005~30000重量%が好ましく、0.005~100重量%がより好ましく、0.5~30重量%が更に好ましい。
また、基質の量は、基質を含有する成分[固相担体試薬(A)又は反応緩衝液(B)]の重量に基づき、0.001~5重量%が好ましく、0.01~3重量%がより好ましい。
【0039】
なお、本発明の免疫学的測定方法では、過酸化水素(又は第1の過酸化水素発生成分(β)と第2の過酸化水素発生成分(γ))を含まない固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を使用することもできるが、その場合、固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を混合する際に過酸化水素(又は第1の過酸化水素発生成分(β)と第2の過酸化水素発生成分(γ))を添加する。
【0040】
第一の態様の免疫学的測定用キットにおける固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が、さらにペルオキシダーゼ阻害剤を含有する。このペルオキシダーゼ阻害剤により、夾雑物由来のペルオキシダーゼの活性が阻害(不活性化)され、当該ペルオキシダーゼに起因する偽陽性・偽高値を抑制することができる。
ペルオキシダーゼ阻害剤は、過酸化水素により阻害活性が向上するものであることが好ましい。
また、第二の態様の免疫学的測定用キットでは、固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)はペルオキシダーゼ阻害剤を含まなくてもよい。固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)がペルオキシダーゼ阻害剤を含まない場合、これらを混合する際にペルオキシダーゼ阻害剤を添加する。
本発明の免疫学的測定方法においても、ペルオキシダーゼ阻害剤を含まない固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を使用する場合、固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を混合する際にペルオキシダーゼ阻害剤を添加する。
【0041】
貯蔵安定性の観点からは、本発明の免疫学的測定用キットにおける固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)のいずれか一方が過酸化水素を含有し、もう一方がペルオキシダーゼ阻害剤を含有することが好ましいが、本発明の効果を発揮できる限り、固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)のいずれか一方が過酸化水素とペルオキシダーゼ阻害剤の両方を含有してもかまわない。
【0042】
ペルオキシダーゼ阻害剤としては、公知のものを使用することができ、ヒドラジン誘導体(ヒドラジドを含む。4-アミノベンゾヒドラジド、フェニルヒドラジン、硫酸ヒドラジン、プロパン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、インドール-3-酢酸ヒドラジド、4-フルオロ安息香酸ヒドラジド、6-ヨード-ピリジン-2-カルボン酸ヒドラジド等)、ヒドロキサム酸誘導体(サリチルヒドロキサム酸、2-シクロヘキシルエタンヒドロキサム酸、アセトヒドロキサム酸、ブチリルヒドロキサム酸、2-(3,5-ビストリフルオロメチルベンジルアミノ)-6-オキソ-1H-ピリミジン-5-カルボヒドロキサム酸、4-ベンジル-2-ヒドロキシベンゼンカルボヒドロキサム酸、2-(ベンジルアミノ)-6-オキソ-3H-ピリミジン-5-カルボヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、1-ナフトヒドロキサム酸、2-ナフトヒドロキサム酸等)、アジ化物(アジ化ナトリウム、ジフェニルリン酸アジド等)、ペルオキシダーゼの活性を阻害することができる芳香族化合物[インドール誘導体(インドール、トリプタミン、セロトニン、メラトニン等)、フラボノイド類(ケルセチン、レスベラトロール、ミリシトシン及びカテキン等)等]、ペルオキシダーゼの活性を阻害することができる複素環式化合物[イソニアジド、チオキサンチン誘導体(2-チオキサンチン、6-チオキサンチン、2-メルカプト-8-フェニル-1,9-ジヒドロ-6H-プリン-6-オン等)等]等が挙げられる。
中でも、擬陽性抑制効果の観点から、ヒドラジン誘導体、ヒドロキサム酸誘導体及び芳香族化合物の内、2つ以上に分類することができるものが好ましく、ヒドラジン誘導体である芳香族化合物(4-アミノベンゾヒドラジド、フェニルヒドラジン、インドール-3-酢酸ヒドラジド、4-フルオロ安息香酸ヒドラジド、6-ヨード-ピリジン-2-カルボン酸ヒドラジド等)、及び、ヒドロキサム酸誘導体である芳香族化合物(サリチルヒドロキサム酸、2-(3,5-ビストリフルオロメチルベンジルアミノ)-6-オキソ-1H-ピリミジン-5-カルボヒドロキサム酸、4-ベンジル-2-ヒドロキシベンゼンカルボヒドロキサム酸、2-(ベンジルアミノ)-6-オキソ-3H-ピリミジン-5-カルボヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、1-ナフトヒドロキサム酸、2-ナフトヒドロキサム酸等)がより好ましい。
これらの中でも、4-アミノベンゾヒドラジド及びサリチルヒドロキサム酸が特に好ましい。
【0043】
反応に供されるペルオキシダーゼ阻害剤の含有量(固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)の両方がペルオキシダーゼ阻害剤を含有する場合は、含有量の合計)は、反応に供される触媒の合計重量に基づき、10~30,000重量%が好ましく、50~15,000重量%がより好ましく、100~12,000重量%が更に好ましく、100~1,500重量%が特に好ましい。
また、更に擬陽性抑制効果を向上させる観点から、ヒドラジン誘導体である芳香族化合物とヒドロキサム酸誘導体である芳香族化合物とを併用する場合は、反応に供されるヒドラジン誘導体である芳香族化合物とヒドロキサム酸誘導体である芳香族化合物との重量比率(ヒドラジン誘導体である芳香族化合物/ヒドロキサム酸誘導体である芳香族化合物)は、0.01~300であることが好ましく、0.01~10であることが更に好ましい。
また、更に擬陽性抑制効果を向上させる観点から、反応に供されるヒドロキサム酸誘導体である芳香族化合物の含有量は、反応に供される触媒の合計重量に基づき、100重量%以下であることが好ましい。
【0044】
なお、固相担体(α)と、第1の過酸化水素発生成分(β)とを含有する固相担体試薬(A)も本発明の一態様である。
擬陽性抑制効果の観点から、第1の過酸化水素発生成分(β)は触媒であることがより好ましく、触媒はグルコースオキシダーゼであることがさらに好ましい。固相担体試薬(A)は、擬陽性抑制効果の観点から、さらにペルオキシダーゼ阻害剤を含有することが特に好ましい。
また、貯蔵安定性の観点からは、第1の過酸化水素発生成分(β)は基質であることがより好ましく、基質はグルコースであることが好ましい。
当該固相担体試薬(A)を本発明の免疫学的測定用キットや免疫学的測定方法に使用することもできる。
【0045】
<標識試薬(C)>
本発明における標識試薬(C)は、標識物質により標識された物質を含む。この標識された物質は、固相担体(α)及び抗原の少なくとも一方と結合し、標識複合体を形成することができる物質である。そのため、得られた標識複合体は標識物質を有する。
当該標識物質により標識された物質としては、標識物質により標識された抗体(標識抗体)又は標識された抗原若しくはその類似物質(標識抗原又はその類似物質)が挙げられる。
固相担体(α)が、抗体をその表面に固定化した固相担体(α1)である場合、標識試薬(C)は、標識抗体を含有するか、標識抗原又はその類似物質を含有することが好ましい。標識試薬(C)が標識抗体を含有する場合は、固相担体(α1)と試料由来の抗原とから形成される複合体と、標識抗体との複合体である標識複合体を形成させる免疫学的測定方法(以下、サンドイッチ法とも言う)に使用することができる。また、標識試薬(C)が標識抗原又はその類似物質を含有する場合は、固相担体(α1)と標識抗原又はその類似物質との複合体である標識複合体を形成させる免疫学的測定方法(以下、第1競合法とも言う)に使用することができる。
【0046】
標識される抗体や、抗原又はその類似物質としては、上述したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0047】
標識するために用いられる標識物質としては、例えば酵素免疫測定法(EIA)において用いられるアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等の酵素類;例えば放射免疫測定法(RIA)において用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H、32P等の放射性同位元素;例えば蛍光免疫測定法(FIA)において用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン又はこれらの誘導体、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性物質;例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質;例えばフェノール、ナフトール、アントラセン又はこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質;例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
これらの内、感度等の観点から、酵素、蛍光性物質が好ましく、更に好ましいのはアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼであり、特に好ましいのはペルオキシダーゼである。
【0048】
標識物質を抗体や抗原又はその類似物質に結合させるには、一般的に免疫学的測定の分野で用いられる方法、例えば公知のEIA、RIA及びFIA等において一般に行われている公知の標識方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等に記載のグルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、マレイミド法又はピリジルジスルフィド法等]等を利用すればよい。
【0049】
標識物質の使用量は、標識物質の種類により異なるため一概には言えないが、ペルオキシダーゼ(以降、PODとも言う)を標識物質として使用する場合には、抗体や抗原又はその類似物質とペルオキシダーゼとを、好ましくは1:1~1:20(更に好ましくは1:1~1:10、特に好ましくは1:1~1:2)のモル比となるように使用すればよく、これらを、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等の通常この分野で用いられている緩衝液中に含有させて用いればよい。緩衝液のpHは、抗原抗体反応を抑制しない範囲であればよく、5~9が好ましい。また、このような緩衝液中には、目的の抗原抗体反応を阻害しないものであれば、例えばアルブミン、グロブリン、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤及び糖類等を含有させておいてもよい。
【0050】
標識試薬(C)中の標識抗体又は標識抗原及びその類似物質の含有量は、感度の観点から、それぞれ0.01~40μg/mLが好ましく、更に好ましくは0.1~20μg/mLである。
【0051】
標識試薬(C)は、上記以外に、タンパク質、界面活性剤及び高分子化合物を含んでいてもよい。
タンパク質としては、一般的に免疫学的測定の分野で測定されるものであれば特に限定はされず、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、スキムミルク等が挙げられる。タンパク質は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。タンパク質の含有量は、感度及び試薬の保存安定性の観点から、標識試薬(C)の重量を基準として、0.001~8重量%が好ましい。
【0052】
界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤等が挙げられるが、界面活性剤としては、非特異的吸着の低減の観点から、水溶性の非イオン性界面活性剤が好ましい。なお、水溶性とは、25℃の水100gに10g溶解することを意味する。
水溶性の非イオン性界面活性剤として、具体的には、HLBが12以上のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルエーテル等)及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル等が挙げられる。
なお、本発明において、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)とは、グリフィン法[「界面活性剤入門」(2007年 三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著)142頁に記載されているグリフィン法。]で測定できるHLBを意味する。
界面活性剤の含有量は、粒子の洗浄性の観点から、標識試薬(C)の重量を基準として、0.001~4重量%であることが好ましい。
【0053】
高分子化合物としては、一般的に免疫学的測定の分野で使用されるものであれば特に限定はされず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、Blockmaster(JSR(株)製)及びLipidure(日油(株)製)が挙げられる。高分子化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。高分子化合物の含有量は、非特異的吸着の抑制の観点から、標識試薬(C)の重量を基準として、高分子化合物の純分が、0.001~3重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5~1重量%である。
【0054】
<発光試薬(D)>
本発明の免疫学的測定方法では、標識複合体を発光させて抗原を検出又は定量するために、発光試薬(D)を用いてもよい。また、本発明の免疫学的測定用キットは、当該発光試薬(D)を含有する。
発光試薬(D)は、上記の標識物質に基づき選択される。標識物質がペルオキシダーゼである場合、発光試薬(D)としては、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体及び化学発光増強剤を必須構成成分とする化学発光試薬第1液と、酸化剤及び水を必須構成成分とする化学発光試薬第2液とを含むものが挙げられる。
【0055】
2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体としては、例えば、特開平2-291299号公報、特開平10-319015号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体及びこれらの混合物等が使用できる。
これらの内、ルミノール、イソルミノール、N-アミノヘキシル-N-エチルイソルミノール(AHEI)、N-アミノブチル-N-エチルイソルミノール(ABEI)及びこれらの金属塩(アルカリ金属塩等)が好ましく、更に好ましいのはルミノール及びその金属塩、特に好ましいのはルミノールのナトリウム塩である。
発光試薬(D)における2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体の含有量は、その種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、0.5~80mMが好ましく、更に好ましくは1.8~40mM、特に好ましくは3.5~21mMである。
【0056】
化学発光増強剤としては、例えば、特開昭59-500252号公報、特開昭59-171839号公報及び特開平2-291299号公報等に記載の公知の化学発光増強剤及びこれらの混合物等が使用できる。これらの内、化学発光増強効果等の観点から、フェノール類が好ましく、更に好ましいのはp-ヨードフェノール、4-(シアノメチルチオ)フェノール及び4-シアノメチルチオ-2-クロロフェノール、特に好ましいのは4-(シアノメチルチオ)フェノールである。
発光試薬(D)における化学発光増強剤の含有量は、その種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、0.1~15mMが好ましく、更に好ましくは0.3~7.0mM、特に好ましくは0.6~3.4mMである。
【0057】
化学発光試薬第1液には、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体及び化学発光増強剤以外に、緩衝液及び/又はキレート剤等を含むことができる。
【0058】
緩衝液としては、例えば、特開平10-319015号公報及び特開2003-279489号公報等に記載の公知の緩衝液等が使用できる。これらの内、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸・1水和物/水酸化ナトリウム緩衝液及びピペラジニル-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)・2水和物/水酸化ナトリウム緩衝液が好ましく、更に好ましいのは3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液及び2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸・1水和物/水酸化ナトリウム緩衝液、特に好ましいのは3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液である。
これらの緩衝液における緩衝剤の含有量は、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、1~500mMが好ましく、更に好ましくは5~300mM、特に好ましくは10~200mMである。
【0059】
キレート剤としては、例えば、特開平9-75099号公報及び特開2003-279489号公報等に記載の公知のキレート剤等が使用できる。
これらの内、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、4配位キレート剤が好ましく、更に好ましいのはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム及びエチレンジアミン四酢酸三カリウム等)並びにトランス-1,2ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、特に好ましいのはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩である。
キレート剤を含有する場合、その含有量は化学発光増強効果及び保存安定性の観点から、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体の重量に基づいて、0.001~4重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~2重量%、特に好ましくは0.05~1重量%である。
【0060】
化学発光試薬第1液は、蛍光強度の観点からはアルカリ性であることが好ましく、pHは、7~11が好ましく、更に好ましくは8~10である。
【0061】
化学発光試薬第1液は、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン誘導体、化学発光増強剤並びに必要により緩衝液及び/又はキレート剤を均一混合することにより容易に得ることができる。
【0062】
化学発光試薬第2液が含有する酸化剤としては、例えば、特開平8-261943号公報及び特開2000-279196号公報等に記載の公知の酸化剤等[無機の過酸化物(過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウム等)、有機過酸化物(過酸化ジアルキル及び過酸化アシル等)、ペルオクソ酸化合物(ペルオクソ硫酸及びペルオクソリン酸等)等]が挙げられる。
これらの内、保存安定性等の観点から、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウムが好ましく、更に好ましいのは過酸化水素である。
【0063】
化学発光試薬第2液における酸化剤の濃度は、その種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果等の観点から、0.5~40mMが好ましく、更に好ましくは1~20mM、特に好ましくは2.5~10mMである。
【0064】
化学発光試薬第2液が含有する水としては、蒸留水、逆浸透水及び脱イオン水等が挙げられる。これらの内、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、蒸留水及び脱イオン水が好ましく、更に好ましいのは脱イオン水である。
【0065】
化学発光試薬第2液は、酸化剤及び水以外にキレート剤等を含むことができる。
キレート剤としては、上記化学発光試薬第1液に含むことができるキレート剤として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
キレート剤を含有する場合、その含有量は、化学発光増強効果及び保存安定性の観点から、酸化剤の重量に基づいて、0.2~100重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~20重量%、特に好ましくは1~10重量%である。
化学発光試薬第2液は、酸化剤、水及び必要によりキレート剤を均一混合することにより容易に得られる。
【0066】
<免疫学的測定方法>
本発明の免疫学的測定方法は、試料中の抗原を検出又は定量する方法として用いることができ、具体的には、文献[例えば、酵素免疫測定法第2版(石川栄治ら編集、医学書院)1982年]記載のサンドイッチ法、競合法及び特開平6-130063号公報記載の免疫学的測定方法等に用いることができる。
【0067】
本発明の免疫学的測定方法では、まず、抗原及び固相担体(α)の複合体を含有する第1混合物を得る。第1混合物を得る工程は、抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、過酸化水素及び固相担体(α)を混合して、抗原及び固相担体(α)の複合体を含む第2混合物を得る工程と、第2混合物を得る工程の後に、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程を含む。
【0068】
第2混合物を得る工程では、抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、過酸化水素及び固相担体(α)の混合順序は特に限定されず、これらを同時に混合しても、2段階以上に分けて混合してもよい。また、過酸化水素は、第1の過酸化水素発生成分(β)及び第2の過酸化水素発生成分(γ)を用いて生成させてもよい。その場合、抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、固相担体(α)、第1の過酸化水素発生成分(β)及び第2の過酸化水素発生成分(γ)の混合順序も特に限定されない。例えば、第1の過酸化水素発生成分(β)及び第2の過酸化水素発生成分(γ)を、それぞれ予め他の成分[固相担体(α)、ペルオキシダーゼ阻害剤及び抗原を含有する試料等]と混合しておいてもよい。
これらの成分を2段階以上に分けて混合する場合として、例えば、以下の混合順序が挙げられる。
(a)抗原を含有する試料と固相担体(α)を混合し、更にペルオキシダーゼ阻害剤と過酸化水素を同時又は順次混合する。
(b)抗原を含有する試料とペルオキシダーゼ阻害剤を混合し、更に固相担体(α)と過酸化水素を同時又は順次混合する。
(c)抗原を含有する試料と過酸化水素を混合し、更に固相担体(α)とペルオキシダーゼ阻害剤を同時又は順次混合する。
(d)固相担体(α)とペルオキシダーゼ阻害剤を混合し、更に抗原を含有する試料と過酸化水素を同時又は順次混合する。
(e)固相担体(α)と過酸化水素を混合し、更に抗原を含有する試料とペルオキシダーゼ阻害剤を同時又は順次混合する。
(f)ペルオキシダーゼ阻害剤と過酸化水素を混合し、更に抗原を含有する試料と固相担体(α)を同時又は順次混合する。
(g)固相担体(α)とペルオキシダーゼ阻害剤と過酸化水素を混合し、更に抗原を含有する試料を混合する。
(h)抗原を含有する試料とペルオキシダーゼ阻害剤と過酸化水素を混合し、更に固相担体(α)を混合する。
(i)固相担体(α)と抗原を含有する試料とペルオキシダーゼ阻害剤を混合し、更に過酸化水素を混合する。
(j)固相担体(α)と抗原を含有する試料と過酸化水素を混合し、更にペルオキシダーゼ阻害剤を混合する。
なお、上記(a)~(f)において、同時混合する場合は、同時混合する成分同士を予め混合した混合物[例えば(a)の場合、ペルオキシダーゼ阻害剤と過酸化水素の混合物]を用いて実施してもよい。
また、過酸化水素の代わりに、上記の通り、第1の過酸化水素発生成分(β)及び第2の過酸化水素発生成分(γ)を用いてもよい。
また、各成分を2回以上に分けて混合してもよい。例えば、上記(d)において、ペルオキシダーゼ阻害剤を2回以上に分けて混合してもよい。すなわち、固相担体(α)とペルオキシダーゼ阻害剤を混合し、その後、更に抗原を含有する試料と過酸化水素を混合する際、更にペルオキシダーゼ阻害剤を追加で混合してもよい。
【0069】
これらの成分を混合することにより、ペルオキシダーゼ阻害剤が、夾雑物由来のペルオキシダーゼを不活性化することができるため、当該ペルオキシダーゼに起因する偽陽性・偽高値を抑制することができる。また、過酸化水素によってペルオキシダーゼ阻害剤の阻害活性を向上させることができる。さらに、試料中の抗原と固相担体(α)とからなる複合体を形成することができる。この場合、固相担体(α)は、抗体をその表面に固定化した固相担体(α1)であることが好ましい。
【0070】
本発明の免疫学的測定用キットを使用する場合、固相担体試薬(A)と反応緩衝液(B)とを混合することにより[ペルオキシダーゼ阻害剤を含まない固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を使用する場合は、固相担体試薬(A)と反応緩衝液(B)の混合と同時に、又は、混合後に、ペルオキシダーゼ阻害剤を混合することにより]、固相担体(α)、ペルオキシダーゼ阻害剤及び過酸化水素の混合物を得ることができる。この際、過酸化水素によってペルオキシダーゼ阻害剤の阻害活性を向上させることができる。
固相担体試薬(A)が固相担体(α)と液状媒体を含有する場合、上澄み液(液状媒体の一部)を除去し、沈殿した固相担体(α)と残りの液状媒体に反応緩衝液(B)を混合してもよい。この場合、定量性の観点から、固相担体試薬(A)に含まれている固相担体(α)の全量が、反応緩衝液(B)と混合されることが好ましい。また、固相担体試薬(A)が過酸化水素若しくは第1の過酸化水素発生成分(β)並びに/又はペルオキシダーゼ阻害剤を含有する場合は、ペルオキシダーゼ阻害剤及び過酸化水素の少なくとも一部が混合物に残留するように上澄み液を除去する必要がある。除去する上澄み液の量は、残留し、反応に供される成分[第1の過酸化水素発生成分(β)、第2の過酸化水素発生成分(γ)及びペルオキシダーゼ阻害剤等]の量が、上記の好ましい比率となるような量とすることが好ましい。また、正確性の観点からは、除去後に残存する液の体積は、反応緩衝液(B)に対して、10%以下であることが好ましい。
上記で得られる混合物中に、更に抗原を含有する試料が混合されているものが、本発明における第2混合物である。第2混合物においては、ペルオキシダーゼ阻害剤が、試料に含まれる夾雑物由来のペルオキシダーゼの活性を阻害する。また、第2混合物を得る操作により、試料中の抗原と固相担体(α)との複合体が得られる。
第2混合物を得る操作においては、もちろん、固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)及び抗原を含有する試料を混合する順序は限定されず、これらを同時に混合してもよく、当該試料を固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)のいずれか一方と混合した後、他方と混合してもよい。もちろん、ペルオキシダーゼ阻害剤を含まない固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)を使用する場合も、固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、ペルオキシダーゼ阻害剤及び抗原を含有する試料の混合順序は限定されない。
なお、第1混合物を得る工程において、第2混合物の温度は、20~50℃であることが好ましく、25~45℃であることがより好ましい。
また、第2混合物を得てから、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程を実施するまでの時間の下限は、30秒以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましい。また、第2混合物を得てから、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程を実施するまでの時間の上限は、特に限定は無いが、24時間以下、1時間以下、30分以下、10分以下、5分以下等が挙げられる。
【0071】
第2混合物を得た後、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する。
標識試薬(C)や標識複合体に含まれる標識物質がペルオキシダーゼである場合、ペルオキシダーゼ阻害剤による標識物質の不活性化を避けるため、標識試薬(C)を使用する前に系中のペルオキシダーゼ阻害剤を除去する必要がある。
ペルオキシダーゼ阻害剤の除去方法としては、B/F分離方法が挙げられる。除去後は残留物を洗浄してもよい。例えば、磁性粒子である固相担体(α1)を使用する場合、試料中の抗原と固相担体(α1)との複合体が形成された後、反応槽の外側から磁石等により磁性粒子を集め、反応液を排出することによりペルオキシダーゼ阻害剤を除去した後、生理食塩水等の洗浄液を添加する。その後、磁石を取り除き、当該磁性粒子を分散させて洗浄する。この操作は1~3回繰り返してもよい。
第2混合物からペルオキシダーゼ阻害剤を除去することにより、第1混合物が得られる。なお、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する際、過酸化水素が除去されてもよい。
【0072】
次に、第1混合物及び標識試薬(C)を用いて抗原を測定する。
例えば、得られた第1混合物に、標識試薬(C)を添加して標識複合体を形成する。その後、標識複合体中の標識物質量を測定し、その結果に基づいて試料中の測定対象物質を検出又は定量する。
標識複合体中の標識物質量の測定方法としては、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)及び化学発光免疫測定法(CLIA及びCLEIA)が挙げられ、短時間での免疫学的測定における感度の観点から好ましいのはEIA、CLIA及びCLEIAであり、更に好ましいのはCLEIAである。
【0073】
例えばサンドイッチ法では、第2混合物を得る工程において、抗原を含む試料と固相担体(α1)とが接触し、固相担体(α1)と試料中の抗原とが結合して複合体が形成される。この後、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去し、標識試薬(C)を添加すると、当該複合体に標識抗体が接触し、固相担体(α1)と抗原と標識抗体との複合体(標識複合体)が形成される。
【0074】
また、第1競合法では、第2混合物を得る工程において、抗原を含む試料と固相担体(α1)とが接触し、一部の固相担体(α1)の抗体と試料中の抗原との複合体が形成する。この後、ペルオキシダーゼ阻害剤を除去し、標識試薬(C)を添加すると、残りの固相担体(α1)の抗体と標識試薬中の標識抗原又はその類似物質が接触し、固相担体(α1)と標識抗原又はその類似物質との複合体(標識複合体)が形成される。
【0075】
次に、例えば発光試薬(D)を用いて標識複合体を発光させることにより抗原を検出又は定量する。
この工程では、まず、例えばB/F分離により、標識複合体の形成に関与しなかった標識抗体又は標識抗原若しくはその類似物質を分離する。サンドイッチ法におけるB/F分離とは、固相担体(α1)、固相担体(α1)と抗原との複合体、及び、標識複合体と、他の成分(標識複合体の形成に関与しなかった標識抗体等)との分離を意味する。第1競合法におけるB/F分離とは、固相担体(α1)、固相担体(α1)と抗原との複合体、及び、標識複合体と、他の成分(標識複合体の形成に関与しなかった標識抗原又はその類似物質等)との分離を意味する。B/F分離は、前述の磁石を利用した分離方法等で行うことができる。
【0076】
続いて、例えば発光試薬(D)を加え、一定時間の化学発光積算量を化学発光計にて測定し、測定値を基に標識物質量を算出する。この場合、予め規定の標識物質含有溶液を試料として、同様の操作により作成した標識物質量と化学発光積算量との関係を示す検量線等を用いることで、容易に標識物質量を算出し得る。この標識物質量をもとに、試料中の抗原を定量することができる。
【0077】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0078】
本開示(1)は、抗原及び固相担体(α)の複合体を含有する第1混合物を得る工程、並びに、上記第1混合物及び標識試薬(C)を用いて上記抗原を測定する工程を含む免疫学的測定方法であって、上記第1混合物を得る工程が、上記抗原を含有する試料、ペルオキシダーゼ阻害剤、過酸化水素及び上記固相担体(α)を混合して、上記抗原及び固相担体(α)の複合体を含む第2混合物を得る工程、並びに、上記第2混合物を得る工程の後に、上記ペルオキシダーゼ阻害剤を除去する工程を含む免疫学的測定方法である。
【0079】
本開示(2)は、本開示(1)に記載の免疫学的測定方法に使用する免疫学的測定用キットであって、固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、上記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、上記固相担体試薬(A)が、上記固相担体(α)を含有し、上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)の少なくとも一方が、上記ペルオキシダーゼ阻害剤を含有し、上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が上記過酸化水素を含有するか、又は、上記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、上記反応緩衝液(B)が、上記触媒及び上記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である、免疫学的測定用キットである。
【0080】
本開示(3)は、本開示(1)に記載の免疫学的測定方法に使用する免疫学的測定用キットであって、固相担体試薬(A)、反応緩衝液(B)、上記ペルオキシダーゼ阻害剤、上記標識試薬(C)及び発光試薬(D)を含み、上記固相担体試薬(A)が、上記固相担体(α)を含有し、上記固相担体試薬(A)及び上記反応緩衝液(B)は、少なくとも一方が上記過酸化水素を含有するか、又は、上記固相担体試薬(A)が、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)を含有し、上記反応緩衝液(B)が、上記触媒及び上記基質のうちのもう一方(γ)を含有し、上記(β)と上記(γ)を混合することにより過酸化水素を発生可能である、免疫学的測定用キットである。
【0081】
本開示(4)は、上記化学反応が、酸化還元反応であり、上記触媒が、酸化還元酵素であり、上記基質が、上記酸化還元反応において酸化される基質である、本開示(2)又は(3)に記載の免疫学的測定用キットである。
【0082】
本開示(5)は、上記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼであり、上記基質が、グルコースである、本開示(4)に記載の免疫学的測定用キットである。
【0083】
本開示(6)は、上記固相担体(α)が、上記抗原と特異的に結合する物質(抗体)をその表面に固定化した固相担体(α1)であり、上記標識試薬(C)が、ペルオキシダーゼにより標識された上記抗体(標識抗体)を含有する、本開示(2)~(5)のいずれかに記載の免疫学的測定用キットである。
【0084】
本開示(7)は、上記固相担体(α)が、上記抗原と特異的に結合する物質(抗体)をその表面に固定化した固相担体(α1)であり、上記標識試薬(C)が、ペルオキシダーゼにより標識された上記抗原又はその類似物質(標識抗原又はその類似物質)を含有する、本開示(2)~(5)のいずれかに記載の免疫学的測定用キットである。
【0085】
本開示(8)は、固相担体(α)と、過酸化水素が生成する化学反応における触媒及び基質のうちのいずれか一方(β)とを含有する固相担体試薬(A)である。
【0086】
本開示(9)は、上記触媒を含有する本開示(8)に記載の固相担体試薬(A)である。
【0087】
本開示(10)は、上記触媒がグルコースオキシダーゼである本開示(9)に記載の固相担体試薬(A)である。
【0088】
本開示(11)は、さらにペルオキシダーゼ阻害剤を含有する、本開示(8)~(10)のいずれかに記載の固相担体試薬(A)である。
【0089】
本開示(12)は、本開示(2)~(7)のいずれかに記載の免疫学的測定用キットを得るための本開示(8)~(11)のいずれかに記載の固相担体試薬(A)である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により、本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において部は重量部を示す。
【0091】
<実施例1>
以下に示す方法により、固相担体試薬(A-1)、反応緩衝液(B-1)、標識試薬(C-1)及び発光試薬(D-1)[ルミノール発光試薬(D1)及び過酸化水素液(D2)]から構成される本発明の免疫学的測定用キット(S-1)を得た。
【0092】
[磁性粒子(PH-1)の作製]
超常磁性金属酸化物粒子の作製
反応容器に塩化鉄(III)6水和物186部、塩化鉄(II)4水和物68部及び水1288部を仕込んで溶解させて50℃に昇温し、撹拌下温度を50~55℃に保持しながら、25重量%アンモニア水280部を1時間かけて滴下し、水中にマグネタイト粒子を得た。得られたマグネタイト粒子に分散剤であるオレイン酸64部を加え、2時間撹拌を継続した。室温に冷却後、デカンテーションにより固液分離して得られたオレイン酸が吸着したマグネタイト粒子を水1000部で洗浄する操作を3回行い、さらにアセトン1000部で洗浄する操作を2回行い、40℃で2日間乾燥させることで、体積平均粒子径が15nmの超常磁性金属酸化物粒子を得た。
【0093】
コア層の作製
得られた超常磁性金属酸化物粒子80部をテトラエトキシシラン240部に加えて分散し、分散液(1)を調製した。
次に、反応容器に水5050部、25重量%アンモニア水溶液3500部、非イオン性界面活性剤(「NSA-17」、三洋化成工業(株)製)400部を加えてクリアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて混合し溶液(2)を得た。50℃に昇温後、クリアミックスの回転数6,000rpmで攪拌しながら、上記分散液(1)を溶液(2)に1時間かけて滴下後、50℃で1時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上清を除き、コア層を得た。
【0094】
磁性粒子の作製
反応容器にコア層80部、脱イオン水2500部、25重量%アンモニア水溶液260部、エタノール2500部、テトラエトキシシラン1200部を加えてクリアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて混合し、クリアミックスの回転数6,000rpmで攪拌しながら2時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上清を除去した。遠心分離後沈殿した粒子に脱イオン水を4000部加えて粒子を再分散させ、磁石を用いて分散した粒子を集め、上清を除く操作を10回行った。
次に、得られた固相に水5000部を加えて粒子を分散させて600rpmで10分間遠心分離後、微粒子の存在する上清を除く操作を20回行い、続いて得られた固相に水5000部を加えて粒子を分散させて300rpmで10分間遠心分離することにより、大きな粒子径の粒子を沈降させて除去することで分級を行った。
さらに、磁石を用いて粒子を集め、上澄み液を除去した。その後、水5000部を加えて粒子を分散させた後に、磁石を用いて粒子を集め、上清を除く操作を10回行い、目的とする体積平均粒子径2.0μmの磁性粒子(PH-1)を得た。得られた磁性粒子(PH-1)中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量を測定した結果、含有量は81重量%であった。
【0095】
[粒子(超常磁性金属酸化物粒子及び磁性粒子)の体積平均粒子径の測定]
走査型電子顕微鏡(型番:JSM-7000F、メーカー名:日本電子株式会社)を用いて、任意の200個の粒子を観察して粒子径を測定し、体積平均粒子径を求めた。
【0096】
[磁性粒子中の超常磁性金属酸化物粒子の含有量の測定]
磁性粒子の任意の20個について、走査型電子顕微鏡(型番JSM-7000F、メーカー名:日本電子株式会社)で観察し、エネルギー分散型X線分光装置(型番INCA Wave/Energy、メーカー名:オックスフォード社)により超常磁性金属酸化物粒子の含有量を測定し、その平均値を含有量Sとした。また、同測定にてシリカの含有量を測定し、その平均値を含有量Tとした。以下の計算式(1)にて、超常磁性金属酸化物粒子の含有量を求めた。
超常磁性金属酸化物粒子の含有量(重量%)=(S)/(S+T)×100・・・(1)
【0097】
[抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2の作製]
抗Tgモノクローナル抗体(マウス)(HyTest社製)10mgを、pH4.0の0.1M酢酸緩衝液2mlに溶解し、0.2mgのペプシンを加えて37℃で3時間インキユベートした。1M炭酸緩衝液(pH9.0)を適量加えて中性(pH:7.0)にして反応を停止させた後、0.2M塩化ナトリウム含有0.02Mリン酸緩衝液(pH7.2)で平衡化したウルトラゲルAcA-44(LKB)カラム(02,OX70cm、シグマアルドリッチ社製)でゲル濾過を行い、続いて5mM EDTA・2Naを含有した0.05Mリン酸緩衝液(pH6.0)で透析し、抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2を得た。
【0098】
[磁性粒子(H-1)含有固相担体試薬(A-1)の作製]
1重量%γ-アミノプロピルトリエトキシシラン含有アセトン溶液40mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に製造した磁性粒子(PH-1)40mgを加え、25℃で1時間反応させ、ネオジウム磁石で磁性粒子を集めた後、液をアスピレーターで吸引除去した。次いで脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌した後、ネオジウム磁石で磁性粒子を集めた後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を5回行った。次いで、この洗浄後の磁性粒子を2重量%グルタルアルデヒド含有水溶液40mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。そして、脱イオン水40mLを加えて蓋をし、ポリスチレン瓶をゆっくりと2回倒置攪拌したのち、ネオジウム磁石で磁性粒子を集めた後、液をアスピレーターで吸引除去して磁性粒子を洗浄した。この洗浄操作を10回行った。
更にこの洗浄後の磁性粒子を、抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2を10μg/mL及びペルオキシダーゼを3.64μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLの入った蓋付きポリエチレン瓶に加え、25℃で1時間反応させた。反応後、ネオジウム磁石で磁性粒子(H-1)を集めた後、抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2及びペルオキシダーゼ含有リン酸緩衝液を除去した。
次に、磁性粒子(H-1)の濃度が0.01重量%になるように、後述の固相担体試薬(A-1)用希釈液で希釈し、磁性粒子(H-1)を含有する固相担体試薬(A-1)を調製した。
なお、以下の方法により、磁性粒子(H-1)にはペルオキシダーゼが結合していることを確認した。この磁性粒子(H-1)は、夾雑物由来のペルオキシダーゼが固相担体(α)に吸着した状態のモデルである。
【0099】
[磁性粒子(H-1)にペルオキシダーゼが結合していることの確認方法]
磁性粒子(H-1)を含有する固相担体試薬(A-1)0.025mLを試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集めた後、試験管中の液をアスピレーターで除いた。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
その後、ルミノール発光試薬(D1)0.07mLと過酸化水素液(D2)0.07mLとを同時に加え、37℃で発光挙動を確認した。
上記の確認試験について、「磁性粒子(H-1)を含有する固相担体試薬(A-1)」に代えて、後述する「磁性粒子(HT-1)を含有する固相担体試薬(AT-1)」で実施し、37℃で発光挙動を確認した。
固相担体試薬(AT-1)を用いた場合はほとんど発光が確認できないのに対して、固相担体試薬(A-1)用いた場合では発光が確認できた。磁性粒子(H-1)には、ペルオキシダーゼが結合しているため、標識試薬(C)を添加せずとも発光するものと考えられる。
【0100】
[固相担体試薬(A-1)用希釈液の作製]
表1-1の「固相担体試薬(A)用希釈液」に記載の成分を、記載の重量割合となるように、10重量%のBSA(牛血清アルブミン)、0.1重量%のナロアクティーCL-100[ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、三洋化成工業(株)製]、0.1重量%のEDTAの塩(エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸二ナトリウム塩二水和物、(株)同仁化学研究所製)、5重量%のマウス血清[コスモ・バイオ(株)製]及び残部の0.02Mリン酸ナトリウム(pH7.0)と混合し、冷蔵(2~10℃)で保存した。
【0101】
[反応緩衝液(B-1)の作製]
表1-1の「反応緩衝液(B)」に記載の各原料を、記載の重量割合となるように、0.05重量%のEDTA、0.5重量%のBSA(牛血清アルブミン)及び残部の0.02Mリン酸ナトリウム(pH7.0)と混合し、これを反応緩衝液(B-1)とした。
【0102】
[標識試薬(C-1)の作製]
抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ウサギ)(アジレント・テクノロジー(株)製)、西洋ワサビ由来POD(東洋紡(株)製)を用い、文献(Yoshitake S. et al., J. Biochem., 92,1413-1424(1982))に記載の方法でPOD標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ウサギ)(F3-1)を調製した。これを0.5重量%の牛血清アルブミン及び界面活性剤として1重量%ナロアクティーCL-100を含有する0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)で、POD標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ウサギ)(F3-1)濃度が100nMとなるように希釈し、標識試薬(C-1)を調製し、冷蔵(2~10℃)で保存した。
【0103】
[ルミノール発光試薬(D1)の調製]
ルミノールのナトリウム塩[シグマアルドリッチ社製]0.7g及び4-(シアノメチルチオ)フェノール0.1gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。さらに、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(10mM、pH=8.6)を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合してルミノール発光試薬(D1)を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0104】
[過酸化水素液(D2)の調製]
過酸化水素[富士フイルム和光純薬(株)製、試薬特級、濃度30重量%]6.6gを1,000mLメスフラスコに仕込んだ。さらに、脱イオン水を溶液の容量が1,000mLになるように仕込み、25℃で均一混合して過酸化水素液(D2)を調製した。測定に用いるまで冷蔵(2~10℃)保存した。
【0105】
<実施例2~27及び参考例1~2>
実施例1における免疫学的測定用キット(S-1)の製造において、固相担体試薬(A-1)及び反応緩衝液(B-1)を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、免疫学的測定用キット(S-2)~(S-27)及び(S’-1)~(S’-2)を得た。
[固相担体試薬(A)]
実施例1の固相担体試薬(A-1)の製造で使用する希釈液の作製において、成分と重量割合を表1-1又は表1-2に記載のとおり変更した以外は、実施例1の通り実施し、固相担体試薬(A-2)~(A-27)及び(A’-1)~(A’-2)を得た。
[反応緩衝液(B)]
実施例1の反応緩衝液(B-1)の作製において、成分と重量割合を表1-1又は表1-2に記載のとおり変更した以外は、実施例1の通り実施し、反応緩衝液(B-2)~(B-27)及び(B’-1)~(B’-2)を得た。
【0106】
<実施例28>
実施例1における免疫学的測定用キット(S-1)の製造において、固相担体試薬(A-1)、反応緩衝液(B-1)及び標識試薬(C-1)を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、免疫学的測定用キット(S-28)を得た。
[固相担体試薬(A)]
実施例1における固相担体試薬(A-1)の作製において、抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2を10μg/mL及びペルオキシダーゼを3.64μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLに代えて、抗CEAモノクローナル抗体[アジレント・テクノロジー(株)製]を10μg/mL及びペルオキシダーゼを3.64μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH=8.7)120mLを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。これにより、抗CEAモノクローナル抗体及びペルオキシダーゼを固定化した磁性粒子(H-2)を含有する固相担体試薬(A-28)を得た。
[反応緩衝液(B)]
実施例1における反応緩衝液(B-1)を、反応緩衝液(B-28)として用いた。
[標識試薬(C)]
実施例1における標識試薬(C-1)の作製において、抗ヒトIgGポリクローナル抗体に代えて、抗CEAモノクローナル抗体[アジレント・テクノロジー(株)製]を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。これにより、POD標識抗CEAモノクローナル抗体(F3-2)濃度が0.5μg/mLに調整された標識試薬(C-2)を得た。
【0107】
<擬陽性抑制率の評価>
実施例1~28で得た免疫学的測定用キット(S-1)~(S-28)又は参考例1~2で得た免疫学的測定用キット(S’-1)~(S’-2)を用いて、以下の方法(サンドイッチ法)で免疫学的測定を実施し、擬陽性抑制率を評価した。
【0108】
免疫学的測定用キットの固相担体試薬(A)をそれぞれ0.025g、試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液の90体積%をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。
次に、試験管に、反応緩衝液(B)0.065gを注入し、試験管中で37℃3分間静置した。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0109】
続いて、各免疫学的測定用キットに対応する標識試薬(C)0.05mLを試験管に注入し、試験管中で37℃3分間反応静置した。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
最後に、ルミノール発光試薬(D1)0.07mLと過酸化水素液(D2)0.07mLとを同時に加え、37℃で45秒間発光反応させ、ルミノール発光試薬(D1)及び過酸化水素液(D2)を添加後43~45秒の平均発光量をルミノメーター(ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」)で測定した。この時の平均発光量を平均発光量(Z1)とした。
【0110】
また、上記の操作において、固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)に代えて、上記の固相担体試薬(A)及び反応緩衝液(B)における触媒と基質(又は過酸化水素)、及び、ペルオキシダーゼ阻害剤を全て添加せずに別途作製したものを用いる以外は同様にして、平均発光量をルミノメーターで測定した。この時の平均発光量を平均発光量(Z2)とした。
1-[平均発光量(Z1)]/[平均発光量(Z2)]の値を算出し、この値を擬陽性抑制率とした。結果を表1-1又は表1-2に示す。
擬陽性抑制率が高いほど、磁性粒子(H)に結合させたペルオキシダーゼに基づく擬陽性を抑制できていることを示す。
【0111】
<検量線作成用の固相担体試薬(AT-1)~(AT-27)及び(AT’-1)~(AT’-2)の製造>
実施例1~27及び参考例1~2における固相担体試薬(A-1)~(A-27)及び(A’-1)~(A’-2)の作製において、抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2を10μg/mL及びペルオキシダーゼを3.64μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLに代えて、抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2を10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH8.7)120mLを用いる以外は、同様に実施して、磁性粒子(HT-1)を含有する固相担体試薬(AT-1)~(AT-27)及び(AT’-1)~(AT’-2)を調製した。
これらは、それぞれ免疫学的測定用キット(S-1)~(S-27)及び(S’-1)~(S’-2)の正確性評価における検量線の作成に使用した。
【0112】
<検量線作成用の固相担体試薬(AT-28)の製造>
実施例28における固相担体試薬(A-28)の作製において、抗CEAモノクローナル抗体[アジレント・テクノロジー(株)製]を10μg/mL及びペルオキシダーゼを3.64μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH=8.7)120mLに代えて、抗CEAモノクローナル抗体[アジレント・テクノロジー(株)製]を10μg/mLの濃度で含む0.02Mリン酸緩衝液(pH=8.7)120mLを用いる以外は、同様に実施して、磁性粒子(HT-2)を含有する固相担体試薬(AT-28)を調製した。
これを、免疫学的測定用キット(S-28)の正確性評価における検量線の作成に使用した。
【0113】
<免疫学的測定用キット(S-1)~(S-27)及び(S’-1)~(S’-2)の正確性の評価>
実施例1~27で得た免疫学的測定用キット(S-1)~(S-27)及び参考例1~2で得た免疫学的測定用キット(S’-1)~(S’-2)を用いて、以下の方法(サンドイッチ法)で免疫学的測定を実施し、正確性を評価した。結果を表1-1又は表1-2に示す。
【0114】
<免疫学的測定方法>
○工程(1)
各免疫学的測定用キットの固相担体試薬(A)0.025gをそれぞれ試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液の90体積%をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。
次に、反応緩衝液(B)0.065gと、測定対象物質であるTg(抗原)の濃度が15ng/mLになるように調整したプール血清0.025mLとを試験管に入れて混合して、試験管中で37℃で3分間反応させ、磁性粒子上の抗Tgモノクローナル抗体F(ab’)2とTgとを結合させ、磁性粒子と抗原との複合体を形成させた。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0115】
○工程(2)
続いて、各免疫学的測定用キットの標識試薬(C)0.05mLをそれぞれ試験管に注入し、試験管中で37℃で3分間反応させ、磁性粒子とTgとPOD標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ウサギ)(F3-1)とからなる標識複合体を形成させた。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0116】
○化学発光・検出工程
最後に、ルミノール発光試薬(D1)0.07mLと過酸化水素液(D2)0.07mLとを同時に加え、37℃で発光反応させ、ルミノール発光試薬(D1)及び過酸化水素液(D2)を添加後43~45秒の一秒当たりの平均発光量をルミノメーター(ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」)で測定した。
【0117】
また、上記工程(1)におけるTgの濃度が15ng/mLになるように調整したプール血清に代えて下記の標準液をそれぞれ用い、また、固相担体試薬(A)として、対応する検量線作成用の固相担体試薬(AT-1)~(AT-27)又は(AT’-1)~(AT’-2)を用いる以外は同様にして、平均発光量をルミノメーターで測定し、発光量とTgの濃度との関係を示す検量線を作製した。得られた検量線から、上記免疫学的測定方法における測定濃度を求めた。結果を表1-1又は表1-2に示す。
標準液:Tgの濃度を0、1、3、10、30、100、300又は1000ng/mLに調整したプール血清
【0118】
<正確性の評価方法>
正確性については、測定濃度と実際の濃度(15ng/mL)との比率から、以下の基準で判定した。
○:(測定濃度/実際の濃度)×100(%)が85~115の範囲内
×:(測定濃度/実際の濃度)×100(%)が85未満又は115より大きい
【0119】
<免疫学的測定用キット(S-28)の正確性の評価>
実施例28で得た免疫学的測定用キット(S-28)を用いて、以下の方法(サンドイッチ法)で免疫学的測定を実施し、正確性を評価した。結果を表1-2に示す。
【0120】
<免疫学的測定方法>
○工程(1)
免疫学的測定用キットの固相担体試薬(A)0.025gを試験管に入れ、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液の90体積%をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。
次に、反応緩衝液(B)0.065gと、測定対象物質であるCEA(抗原)の濃度が7ng/mLになるように調整したプール血清0.025mLとを試験管に入れて混合して、試験管中で37℃で3分間反応させ、磁性粒子上の抗CEAモノクローナル抗体とCEAとを結合させ、磁性粒子と抗原との複合体を形成させた。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0121】
○工程(2)
続いて、各免疫学的測定用キットの標識試薬(C)0.05mLを試験管に注入し、試験管中で37℃で3分間反応させ、磁性粒子とCEAとPOD標識抗CEAモノクローナル抗体(F3-2)とからなる標識複合体を形成させた。
反応後、試験管の外側からネオジウム磁石で磁性粒子を10秒間集め、試験管中の液をアスピレーターで除き、ネオジウム磁石を側面から十分に離した。その後、生理食塩水0.5mLを加えて磁性粒子を分散させた後に再び集め、アスピレーターで液を除く洗浄操作を2回行った。
【0122】
○化学発光・検出工程
最後に、ルミノール発光試薬(D1)0.07mLと過酸化水素液(D2)0.07mLとを同時に加え、37℃で発光反応させ、ルミノール発光試薬(D1)及び過酸化水素液(D2)を添加後43~45秒の一秒当たりの平均発光量をルミノメーター(ベルトールドジャパン社製「Lumat LB9507」)で測定した。
【0123】
また、上記工程(1)において、CEAの濃度が7ng/mLになるように調整したプール血清に代えて下記の標準液を用い、また、固相担体試薬(A)として、対応する検量線作成用の固相担体試薬(AT-28)を用いる以外は同様にして、平均発光量をルミノメーターで測定し、発光量とTgの濃度との関係を示す検量線を作製した。得られた検量線から、上記免疫学的測定方法における測定濃度を求めた。結果を表1-2に示す。
標準液:CEAの濃度を0、5、30、50、100、500又は1000ng/mLに調整したプール血清
【0124】
<正確性の評価方法>
正確性については、測定濃度と実際の濃度(7ng/mL)との比率から、以下の基準で判定した。
○:(測定濃度/実際の濃度)×100(%)が85~115の範囲内
×:(測定濃度/実際の濃度)×100(%)が85未満又は115より大きい
【0125】
【0126】
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の免疫学的測定方法及び免疫学的測定用キットは正確性及び感度に優れることから、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法及び化学発光免疫測定法等の臨床検査に幅広く適用できる。