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特許7578745機器接続検出機能を備えた電気外科用発電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】機器接続検出機能を備えた電気外科用発電機
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/10 20060101AFI20241029BHJP
   A61B 18/14 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
A61B18/10
A61B18/14
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023054642
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2023152969
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】63/325,945
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】キューネ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】デイクストラ,イェレ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0231656(US,A1)
【文献】特開平09-010223(JP,A)
【文献】特表2011-526157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/08 - A61B18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科用機器(16)に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科用発電機であって、
制御ユニット(10)と、前記電気外科用機器(16)を接続するための出力ソケット(14)への出力接続部を介して供給される高周波交流電圧を生成する高電圧用インバータ(3)とを備え、
前記制御ユニットから前記出力ソケットを絶縁するガルバニックセパレータ(33)が設けられ、
前記出力ソケットに前記電気外科用機器が接続されたことを検出するように構成された検出ユニットが設けられ、
前記検出ユニットは、前記電気外科用機器(16)のプラグインケーブル(15)の静電容量を検出するように構成された静電容量検出器(4)であり、
前記静電容量検出器(4)の前記出力接続部への接続は、前記出力接続部(13)のアクティブ電極用の導体でなされるように構成されている、電気外科用発電機。
【請求項2】
前記検出ユニットは、前記プラグインケーブル(15)を備えた前記電気外科用機器(16)が接続されているか否かの状態を示す信号を生成可能なように更に構成されている、請求項1に記載の電気外科用発電機。
【請求項3】
前記静電容量検出器(4)は、前記プラグインケーブル(15)が接続されていることを示す第1の高静電容量状態と、全くケーブルが接続されていないことを示す第2の低静電容量状態とを検出するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の電気外科用発電機。
【請求項4】
前記静電容量検出器(4)は、前記出力ソケット(14)に配置されて測定回路(7)と相互作用する静電容量ピックアップ部(5)を備え、
前記静電容量ピックアップ部(5)は、測定された静電容量を基準値に対してチェックするように構成されている、請求項1または請求項2に記載の電気外科用発電機。
【請求項5】
前記測定回路(7)は、別個の保護用の直列コンデンサ(6)によって、前記静電容量ピックアップ部(5)から電気的に絶縁されている、請求項4に記載の電気外科用発電機。
【請求項6】
前記直列コンデンサ(6)は、互いに対向し且つ互いに絶縁された2つのプレート(61、62)を備えるプリント回路基板構造(60)として構成されている、請求項5に記載の電気外科用発電機。
【請求項7】
前記測定回路(7)は、前記出力ソケット(14)に接続され、
前記測定回路(7)によって発せられる出力信号は、保護された接続部(19)を介して前記制御ユニット(10)に供給される、請求項4に記載の電気外科用発電機。
【請求項8】
前記測定回路(7)は、直接的な静電容量測定用に構成されている、請求項4に記載の電気外科用発電機。
【請求項9】
前記測定回路(7)は、間接的な静電容量測定用に構成されている、請求項4に記載の電気外科用発電機。
【請求項10】
前記測定回路(7)は、前記出力ソケット(14)における静電容量分漏れ電流を測定するように構成されている、請求項9に記載の電気外科用発電機。
【請求項11】
前記出力接続部(13)に低電圧交流信号が投入され、
前記測定回路(7)は、前記低電圧交流信号を測定するように構成されている、請求項9に記載の電気外科用発電機。
【請求項12】
前記測定回路(7)は、前記出力接続部と前記出力ソケット(14)におけるローカルアースとの間に接続された容量性分圧器(71)を備え、
前記容量性分圧器(71)は、測定対象の低電圧信号を生成する、請求項11に記載の電気外科用発電機。
【請求項13】
前記測定回路(7)にバイアス電圧を供給するために、抵抗分圧器(73)がさらに設けられている、請求項12に記載の電気外科用発電機。
【請求項14】
前記測定回路(7)は、異なる直流利得および交流利得を設定するように構成された演算増幅器(74)を備え、
前記交流利得は、前記直流利得に比べて、少なくとも10倍高い、請求項11に記載の電気外科用発電機。
【請求項15】
前記測定回路(7)は、前記電気外科用発電機の電源のスイッチング周波数を遮断するように構成された遮断フィルタ(76)を備える、請求項に記載の電気外科用発電機。
【請求項16】
前記遮断フィルタ(76)は、ノッチフィルタである、請求項15に記載の電気外科用発電機。
【請求項17】
直接的な静電容量測定用に構成された前記測定回路(7)は、集積回路によって形成されている、請求項8に記載の電気外科用発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科用発電機に関する。本発明の電気外科用発電機は、高周波交流電圧を電気外科用機器に出力するように構成されている。本発明の電気外科用発電機は、制御ユニットと、出力接続部を介して電気外科用機器の接続のための出力ソケットに供給される高周波交流電圧を生成する高電圧用インバータとを備える。
【背景技術】
【0002】
電気外科用発電機は、手術室において広く使用されている。電気外科用発電機は、さまざまな分野の手術においてさまざまな作業のために使用され、電気外科用発電機には、遂行されるべき外科的作業のために特別に設計および構成されたさまざまな種類の機器が接続される。電気外科用発電機を適切かつ安全に作動させるためには、電気外科用機器が接続されたことを発電機が検出することが重要である。一般に、このような検出には2つの種類がある。第1の種類は、機器が完全に接続されている(差し込まれている)かどうかを検出するものである。第2の種類は、接続された機器の種類をさらに認識できるものである。後者は、それ自体にメモリ(記憶部)を有する高度な機器に関して非常に重要である。当該メモリには、その特定の機器を用いてどの電気外科モードが使用され得るかについてのコード化された情報が記憶されている。さらに高機能な機器には、電気外科用発電機との通信のためのインタフェースを有する追加機能用の独自のマイクロコントローラが搭載れることさえある。
【0003】
以上の検出機能は、電気外科用発電機を使用する外科医にとっての安全性と使い勝手を向上させる。機器の接続(差し込み)を検出するために、いくつかのコンセプトが知られている。かなりシンプルな第1のコンセプトは、2つの部分にソケットを分割することである。当該2つの部分は、ケーブルとその端部の導電ピンとを有する機器が接続されると直ちに互いに接続される。第2のコンセプトは、ソケットに隣接して押しボタンを設けることである。この押しボタンは、ピンを有する機器のケーブルが接続される(差し込まれる)たびに、直接的または間接的に押される。第3のコンセプトは、ピンの存在を検知する光バリアを設け、これにより非接触での検知を可能にすることである。第4のコンセプトは、ソケットの裏側に距離センサーを取り付け、ピンを有する機器のケーブルが差し込まれたことを検知することである。以上のコンセプトは、概して機能するが、機器に使用される高電圧を考慮すると相当厳格な絶縁要件を満たさなければならないため複雑である。さらに、以上のコンセプトのほとんどは、摩耗しやすく適切な絶縁がさらに必要な接点を少なくとも1つ追加する必要がある。
【0004】
そこで、本発明の目的は、機器の接続検出が改善された電気外科用発電機を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明による解決策は、独立請求項の特徴に見出される。有利な発展は、従属請求項の主題である。
【0006】
電気外科用機器に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科用発電機であって、制御ユニットと、前記電気外科用機器を接続するための出力ソケットへの出力接続部を介して供給される高周波交流電圧を生成する高電圧用インバータとを備え、前記制御ユニットから前記出力ソケットを絶縁するガルバニックセパレータが設けられ、前記出力ソケットに前記電気外科用機器が接続されたことを検出するように構成された検出ユニットが設けられた電気外科用発電機において、本発明によれば、前記検出ユニットが、前記電気外科用機器のプラグインケーブルの静電容量を検出するように構成された静電容量検出器であることが提供される。
【0007】
本発明の核心は、機器を接続する(差し込む)ことにより、当該機器のケーブルが出力ソケットからアースまでの寄生容量を必然的に形成することである。通常、機器のケーブルの寄生容量のようなものは望ましくない。本発明は、この寄生容量が有用な方法で利用され得ることを認識したものである。ただし、このことは、寄生容量の値が通常小さく機器ごとに異なるという事実により複雑になる。さらに、ケーブル/ソケットと発電機の内部回路との間にガルバニック絶縁が必要なため、寄生容量の正確な測定が複雑になる。この値は通常、約5~30pFの範囲にとどまるため、正確な測定が困難になる。しかしながら、原理的には、バイナリ情報(2進数情報)、すなわち機器ケーブルが接続され(差し込まれ)ているかどうかの情報だけで十分であるため、静電容量の正確な測定は必要ないことが、本発明により理解されるに至った。機器とそのケーブルがソケットに接続されていない場合、ソケットの対応するピンの静電容量は非常に低くなる。ケーブルがソケットに接続されると直ちに、機器とそのケーブルの寄生容量によって静電容量が増加する。すでに述べたように、この値はかなり低く、通常は約5~30pFの範囲である。総静電容量がこのような量だけ上昇するかどうかを判定することによって、本発明は、機器とそのケーブルが接続されていることの定性的な検出を達成する。これにより、非常に簡単でコスト効率の高いケーブルの接続(差し込み)検出が実現される。このことは、出力接続部の電極導体、好ましくはアクティブ電極(活性電極)(AE)におい出力接続部に静電容量検出器(容量性検出器)を接続することによって、さらに促進され得る。このような電極の導体(「電極導体」)への(排他的)接続により、ケーブル/ソケットにおける追加の配線(感知配線)が不要になり、このことが、簡素化とコスト効率にさらに貢献する。
【0008】
まず、使用されるいくつかの用語が、以下で説明される。
【0009】
電気外科用発電機の分野において、「高周波」とは、通常、100kHz~4000kHzの範囲の周波数を指す。
【0010】
「高電圧」とは、通常、最大10kV、好ましくは最大4000Vの電圧を指す。
【0011】
ガルバニックセパレータは、ガルバニック絶縁を提供し、これにより、出力ソケットと、当業者によって通常「二次回路」と呼ばれる発電機の内部回路との間に直流電流が流れることが防止される。ただし、静電容量を介して交流電流が流れることがある。
【0012】
好ましくは、静電容量検出器は、機器のケーブルが接続され(差し込まれ)ていることを示す第1の(高)静電容量状態と、機器のケーブルが接続され(差し込まれ)ていないことを示す第2の(低)静電容量状態という2つの状態のみを検出するように構成されるなど、簡素化され得る。このように簡素化された検出器構成により、静電容量検出器に必要なハードウェアは最小限で済む。
【0013】
好ましくは、静電容量検出器は、出力ソケットに配置された静電容量ピックアップ部(容量性ピックアップ部)と、測定された静電容量を基準値に対して(基準値と比較して)チェックするように構成された測定回路とを備える。静電容量ピックアップ部は、測定対象の信号を測定回路に供給する。これにより、測定回路を、必要に応じてソケットの静電容量ピックアップ部から離して配置することができる。上記の基準値は、測定された静電容量をチェックするための閾値として機能し、これに応じて、ケーブルを備えた機器が接続されている(測定された総静電容量が基準値を超えている)か、又は、接続されていない(測定された総静電容量が前記基準値を下回っている)かというバイナリ情報が得られる。これは、機器が接続されているかどうかの状態を判定するための、かなりシンプルでコスト効率の高い方法である。
【0014】
好ましい実施形態において、測定回路は、静電容量ピックアップ部から電気的に絶縁されている。これにより、適切な絶縁を維持しつつ、測定回路を電気外科用発電機の内部回路に配置することができる。この目的のために、測定回路は、直列に接続された保護用のコンデンサ(直列コンデンサ)によって静電容量ピックアップ部に接続されることが好ましい。上記の保護用の直列コンデンサは、高電圧生成インバータと出力ソケットとの間に存在することが規制により要求されるガルバニック絶縁体として機能する絶縁コンデンサとは別のものである。このような別個の保護用の直列コンデンサを設けることにより、測定回路は、十分に保護されて、電気外科用発電機の(制御ユニットおよび他の内部回路に関連する)いわゆる「二次回路」に配置され得る。これにより、ソケットのピン(及び、該ピンに接続されているケーブルを備えた機器)の静電容量が直列コンデンサ(保護コンデンサ)と直列に接続され、これによって総静電容量が直列コンデンサ(保護コンデンサ)の静電容量に制限される。これにより、適切な保護のために回路の感度が低下する。本発明によれば、バイナリ情報、すなわち、ケーブルを備えた機器が接続されているかどうかだけの情報が必要とされるため、このこと(上記の感度の低下)は完全に許容され得る。
【0015】
好ましくは、直列コンデンサ(保護コンデンサ)は、プリント回路基板(PCB)構造として構成される。このようなPCB構造を採用することにより、直列コンデンサ(保護コンデンサ)を作るために、効率的に閉じられた空間を確保できる。好ましくは、前記PCB構造は、互いに対向して互いに絶縁された2つのプレートを備え、該2つのプレートは、PCBのそれぞれの層によって形成されてもよい。このおかげで、PCB、及び、上記のプレートとして機能するPCBの導電性領域/導電性層以外に、追加の構成要素は不要である。このことは、通常は数ピコファラドの必要な静電容量を生成するには十分である。
【0016】
代替の好ましい実施形態において、測定回路は、特に直接的に、すなわちガルバニック絶縁なしで、換言すれば直流的(ガルバニック的)に、出力ソケットに接続されてもよく、測定回路によって発せられる出力信号は、(ガルバニック絶縁を提供する)保護接続部を介して制御ユニットに供給される。これにより、出力ソケットと測定回路との間のガルバニック絶縁が、(存在し得るとしても)不要になる。しかしながら、出力ソケットのピンは、測定回路に直接接続されることが好ましく、これにより感度が向上する。ただし、測定回路の出力は、安全な方法で制御ユニットに転送される必要があり、このことを達成するために、前記保護接続部が設けられている。保護接続部は、信号の転送は可能であるが、測定回路の電位がフローティングであることを許容することが好ましい接続部である。これにより、ソケットのピンでの高感度の直接測定が実現され、制御ユニットへの測定回路の出力の安全な転送も実現される。この実施形態は、ローカルアース(ローカル接地)と、制御ユニット(または「二次回路」)への保護された通信インタフェースとを有するマイクロコントローラが、対象の出力ソケットに既に設けられている場合に特に有用である。
【0017】
有利には、測定回路は、直接的な静電容量測定用に構成され、好ましくは集積回路によって形成される。このような直接的な測定により、ほとんど労力をかけない効率的な測定が可能になり、これにより、通常、安定した測定結果が得られる。さらに、単一チップ内で直接測定できるように構成された集積回路も利用可能である。これらにより、スペースとコストの点でほとんど労力をかけずに信頼性の高い測定が可能になる。
【0018】
あるいは、測定回路は、間接的な静電容量測定用に構成されてもよい。間接的な測定を使用することにより、別の目的で使用されている既存の信号または回路を使用して、静電容量の所望の測定を行うことができ、これにより、追加の回路の必要性を最小限に抑えることができる。
【0019】
別の好ましい方法では、低電圧交流信号が出力接続部に供給されてもよく、測定回路は、前記低電圧交流信号を測定するように構成されている。これにより、しばしば困難な漏れ電流の測定が、大規模な回路を必要とすることなく効率的な方法でなし得る電圧信号の測定に変換され得る。交流信号を使用することで、交流ドリフトの悪影響が回避され、さらに、しばしば望まれる電位のデカップリングが、コンデンサの使用によって可能になる。
【0020】
好ましくは、測定回路は、出力接続部と出力ソケットにおけるローカルアースとの間に接続された容量性分圧器を備え、前記容量性分圧器は、測定対象の低電圧信号を生成する。このような構成により、出力ソケットにおけるローカルアースとプロテクティブアース(保護接地)(PE)との間の避けられない寄生容量を、所要の測定に役立つツールに変換できる。
【0021】
さらに好ましくは、測定回路にバイアス電圧を供給するために抵抗分圧器が設けられる。このような抵抗分圧器は、容量性分圧器の浮遊電位に効率的な方法でバイアス電圧を供給する。このような固定電位は、特に演算増幅器(オペアンプ)の使用により、その後の信号調整に役立つ。
【0022】
有利には、測定回路は、異なる直流利得および交流利得を設定するように構成された演算増幅器を備え、前記交流利得は、好ましくは実質的に1(ユニティゲイン)に設定される前記直流利得に比べて、少なくとも10倍、好ましくは50倍以上高い。直流利得よりもはるかに高い交流利得を選択することにより、測定の実行に関連する周波数のみが増幅され、これによって、ノイズフロアが低減され、測定の精度が向上する。このことは、電気外科用発電機の電源のスイッチング周波数を遮断するように構成された任意の遮断フィルタ、好ましくはノッチフィルタを設けることによってさらに改善され得る。これにより、電気外科用発電機の電源の悪影響をほとんど努力せずに軽減することができる。これにより、測定のロバスト性が向上し、したがって、ケーブルを備えた機器が接続されているかどうかの本発明の検出の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、有利な例示的な実施形態を参照して、本発明がより詳細に説明される。図面は、次の通りである。
【0024】
図1】電気外科用機器が取り付けられた状態における第1の例示的な実施形態に係る電気外科用発電機を示す。
図2図1の電気外科用発電機の概略機能図を示す。
図3】第2の例示的な実施形態に係る概略機能図の一部を示す。
図4】例示的な実施形態における測定回路およびその接続の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、本発明の第1の例示的な実施形態に係る電気外科用発電機が示されている。参照符号1によって全体的に示される電気外科用発電機は、電気外科用機器16を接続するための出力ソケット14を有するハウジング11を備えている。電気外科用発電機1には、電源ケーブル12’が設けられている。電源ケーブル12’は、電源(電力源)12に接続されてもよい。電源12は、建物内のAC主電源のような電力網(電力供給網)であってもよいし、車両や移動病院における12ボルト又は24ボルトのバッテリのようなオフグリッド電力源であってもよい。さらに、ユーザによる入力のために、ユーザインタフェース9が設けられている。ユーザインタフェース9は、ディスプレイ(表示部)91と、キーボードまたはタッチスクリーン部92とを備えている。ディスプレイ91は、ユーザによる入力と電気外科用発電機1の状態とに関する情報を表示する。ユーザインタフェース9により、ユーザは、制御ユニット10に指示および命令を出すことができる。制御ユニット10は、電気外科用発電機1およびその構成要素(構成部品)の動作を制御する。当該動作には、出力ソケット14から発せられる交流電圧の周波数および電圧と、動作モードとが含まれる。
【0026】
電気外科用機器16は、電気外科用機器16の動作のための高周波交流電圧を供給するために、出力ソケット14に差し込まれ(接続され)るケーブル15を備える。
【0027】
図2は、電気外科用発電機1の内部回路2の概略機能図である。内部回路2は、電源ケーブル12’によって電源12から電気エネルギーが供給される電源ユニット22を備える。電源ユニット22は、数キロボルトの高電圧範囲で高周波交流を生成するように構成されたインバータ3に接続された直流バス(DCバス)23に、電力を供給する。インバータ3の動作は制御ユニット10によって制御され、制御ユニット10は、ユーザが電気外科用発電機1の動作のための指示や命令を出すことができるようにユーザインタフェース9に接続されており、制御ユニット10は、対応する制御信号を生成し、上記の指示や命令に従って内部回路2の関連する構成要素を制御する。
【0028】
インバータ3によって発せられる高周波出力は、電圧を高電圧に昇圧する絶縁変圧器(絶縁トランス)31に印加され、結果として生じる高電圧は、出力接続部13を介して出力ソケット14に送られる。出力接続部13は、通常、2つの導体を備える。一方の導体は中性電極NE用であり、他方の導体はアクティブ電極AE用である。2つの電極NE,AEのうち少なくとも一方の電極の導体、この実施形態ではアクティブ電極AEの導体は、ガルバニック絶縁と出力ソケット14へのあらゆる直流電流の遮断とのための直列コンデンサ33を備える。電気外科用機器16は、そのケーブル15において、出力ソケット14に接続され(差し込まれ)得る。
【0029】
様々な種類の電気外科用機器16が存在し得る。識別を行うために、電気外科用機器16は、電気外科用機器16を識別するデータを含むメモリ17を備えてもよい。これにより、電気外科用発電機1は、出力ソケット14に実際に接続され(差し込まれ)た電気外科用機器16に関して、どの動作モードが使用され得るかを判定することができる。
【0030】
さらに、出力ソケット14に、静電容量検出器4が設けられている。図2には、第1の実施形態に係る静電容量検出器4が示されている。第1の実施形態に係る静電容量検出器4は、測定回路7に信号を供給するピックアップ部5を備えている。ピックアップ部5は、接続部50と保護コンデンサ6とを備えている。接続部50の第1の端部は、アクティブ電極AEの導体に接続され、接続部50の他方の端部である第2の端部は、直列に接続された保護コンデンサ6に接続されている。保護コンデンサ6は、2つのプレート61,62が形成されたプリント回路基板(PCB)60を備えている。この実施形態において、2つのプレート61,62は、プリント回路基板(PCB)60の異なる層、すなわち、最上層と中間層(又は最下層)とにある。プレート61,62の各々は、好ましくは丸みを帯びた、特に円形の形状を有し、2つのプレート61,62は、積み重ねられた構成で配置され、所定の距離だけ互いから離間されている。この実施形態において、2つのプレート61,62間の距離は、プリント回路基板(PCB)60の厚さ(プレートの少なくとも1つに中間層が採用される場合は当該厚さの一部)によって決定される。これにより、2つのプレート61,62は、プリント回路基板(PCB)60上に、かなり平坦でスペース効率の良い方法でコンデンサを形成する。保護コンデンサ6からは、信号線51が測定回路7の入力部につながる。測定回路7は、保護コンデンサ6がガルバニック絶縁(ガルバニック分離)を提供することにより、出力ソケット14から切り離されている。したがって、測定回路7は、電気外科用発電機1の内部回路2に属する。
【0031】
本実施形態における測定回路7は、好ましくは市販されている専用集積回路(例えば、テキサス・インスツルメンツ社のMSP430FR2512IRHL)によって、静電容量を直接測定するように構成されている。測定された静電容量が閾値よりも高い場合、このことにより、電気外科用機器16がケーブル15において出力ソケット14に接続され(差し込まれ)ていることの検出が認識され、対応する信号が信号線70によって制御ユニット10に送出される。
【0032】
このことは、以下の例によって説明され得る。通常、電気外科用機器16のケーブル15は、アースに対して約5.9pFの静電容量を有する。出力ソケット14とそのピンの静電容量は、通常、1~10pFの範囲内である。さらに、直列に接続されている保護コンデンサ6は、数ピコファラド、例えば10pFの静電容量を有する。ケーブル15と保護コンデンサ6の寄生インピーダンスの直列構成により、結果として生じる総静電容量は保護コンデンサ6の静電容量によって制限される。このことは回路の感度を低下させるが、このことは、電気外科用機器16がそのケーブル15において出力ソケット14に接続され(差し込まれ)ているか否かを示す単なるバイナリ情報ではなく、静電容量の正確な測定が必要とされないため、問題にはならない。
【0033】
電気外科用機器16が接続されていない状態において、測定される総静電容量は、例えば、10pFの容量を有する保護コンデンサ6との直列構成において、プロテクティブアース(PE)に対して出力ソケット14のピンでは、5pFと判定され、その結果、総静電容量は3.33pFとなる。逆に、電気外科用機器16とそのケーブル15が出力ソケット14に接続された状態では、アースに対する出力ソケット14のピンとアースに対する電気外科用機器16のケーブル15との加えられた静電容量は10.9pFであり、これもまた10pFの容量を有する保護コンデンサ6と直列構成で結合され、その結果、総静電容量は5.2pFとなる。これは60%近い静電容量の増加であり、適切に設定された閾値(例えば本実施例では4pF)と比較することで容易に検出可能である。直接測定された静電容量が4pFよりも高い場合は、電気外科用機器16がそのケーブル15において出力ソケット14に接続され(差し込まれ)ていることを意味し、4pF以下の場合は接続され(差し込まれ)ていないことを意味する。
【0034】
図3に、第2の例示的な実施形態が部分的に示されている。電気外科用発電機1の全体的な構成は、第1の例示的な実施形態と同じであるが、測定回路7のための静電容量検出器の構成が異なっており、これに関連する電気外科用発電機1の部分が図3に示されている。この第2の例示的な実施形態において、測定回路7は、第1の例示的実施形態の場合と異なり、保護コンデンサ6によって出力ソケット14から切り離されていない。その代わりに、測定回路7は、出力ソケット14のピンに直接接続されている。しかしながら、この場合、測定回路7は、内部回路2から絶縁される必要がある。そのため、測定された静電容量に関する情報信号は、安全な通信インタフェースによって制御ユニット10に転送されなければならない。この通信インタフェースは、ガルバニック絶縁を提供する特別な保護された通信リンク(接続部)19を介して制御ユニット10に接続される出力ソケット14用のローカルマイクロコントローラ18であってもよい。このような装置が既に存在する場合、測定回路7によって測定された静電容量信号は、安全な方法で制御ユニット10に容易に転送され得る。測定回路7が直接接続されることにより、便利でより正確な静電容量の測定が可能になる。ただし、測定回路7が内部回路2に対して浮遊電位であるという欠点がある。
【0035】
図4に、静電容量を間接的に測定するように構成された測定回路7が示されている。出力ソケット14のピンに接続された静電容量の変化を直接測定する代わりに、測定回路7が、ハンドスイッチの押込みを検出するために発生される+12/-12ボルトのトグル電圧87を測定するように設けられている。図4には、電気外科用機器16に対する3極コネクタを有する出力ソケット14の変形例が示されている。図4の右上コーナ部における3本の平行線が示すように、出力ソケット14は、3本のライン(配線)、すなわち、アクティブ電極(AE)用のライン(配線)83、カットモード(CUT)を判定するためのライン(配線)82、及び、血管を封止するための凝固モード(「Coag」)を判定するためのライン(配線)81を備える。カットモードと凝固モードとの間で切り替えるハンドスイッチの状態を判定するために、矩形波列によって象徴される+12/-12ボルトのトグル電圧87が、トグル電圧インジェクタ80によって供給される。
【0036】
このトグル電圧は、アクティブ電極(AE)用のライン83にも存在する。アクティブ電極(AE)用のライン83には、静電容量検出器4のピックアップ部5が接続されている。図4の下部は、測定回路7とそのピックアップ部5を示している。したがって、ピックアップ部5のライン(接続部)50は、測定回路7内に直接配線され、コンデンサC5,C7を備える容量性分圧器71に供給される。ライン(接続部)50は、コンデンサC5に接続され、コンデンサC7は、(図4では、その先端において三角形で記号化された)ローカルアースに接続されている。コンデンサC5,C7は、演算増幅器(オペアンプ)74の正入力部に供給される中点72で接続されている。さらに、供給電圧(電源電圧)(通常は5ボルト)とローカルアースとの間に接続された抵抗分圧器73が設けられている。抵抗分圧器73の中点は、容量性分圧器71の中点72に接続され、これにより、容量性分圧器71の中点72と演算増幅器74の正入力部とにバイアス電圧を供給し、該バイアス電圧は、好ましくは、供給電圧の約50%(例えば、2.5ボルト)に設定される。演算増幅器74には帰還回路75が設けられ、演算増幅器74の出力部と負入力部とに帰還回路75が接続されている。帰還回路75は、演算増幅器74の利得を設定する抵抗器R6,R8,C9を備える。帰還回路75は、異なる直流利得と交流利得を設定するように構成されている。
【0037】
測定回路7に用いられる基本原理は、絶縁された出力ソケット14のアースと内部回路2のアース(「二次アース」)との間に形成される寄生容量88に基づいている。プロテクティブアースPEと二次アースは、参照符号89の要素で象徴されるように、約1ミリオーム(1mΩ)の低いインピーダンス89を介して接続されていると考えられる。これにより、電流ループは少なくとも交流電流に関して閉じられる。
【0038】
さらに、このインピーダンス89を介して、寄生容量の二次アースが、アクティブ電極(AE)83におけるプロテクティブアースに接続される。つまり、+12/-12ボルトのトグル電圧87がトグルする(切り替えられる)たびに、電流が、寄生容量88と容量性分圧器71のコンデンサC5とを通って流れ、容量性分圧器71のコンデンサC7によって比例電圧に変換される。この電圧は、演算増幅器74によって増幅される。演算増幅器74は、好ましくは、バイアス電流が非常に小さいタイプ、特にJFETタイプからなる。帰還回路75は、1(ユニティゲイン)の直流利得と、トグル電圧87によって定義される関連周波数(図示の実施形態では約250Hz)において100というかなり高い交流利得を提供する。これにより、有用な信号の十分な増幅が提供される。さらに、内部回路2のスイッチング周波数によってもたらされるノイズとリップルは、遮断フィルタ76によって除去される。この目的のために、内部回路2用の電源(図示せず)のスイッチング周波数のような高周波を遮断するためのバンドパスフィルタとして機能するように、演算増幅器74と相互作用するコンデンサC10が設けられている。
【0039】
これによりフィルタされた演算増幅器74の出力部からの出力信号は、ライン77を介してアナログ/デジタルコンバータ(ADC)78の入力部に供給され、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)78のデジタル出力信号は、デジタル閾値検出器79に供給される。その閾値は、電気外科用機器16がそのケーブル15において出力ソケット14のアクティブ電極に接続されている場合に出力信号が生成されるように、且つ、電気外科用機器16がそのケーブル15においてアクティブ電極に接続されていないことにより、測定された静電容量が閾値を下回っている場合には信号が生成されないように選択される。これにより得られる信号は、ケーブル15を備えた電気外科用機器16が接続されているか否かの状態を示し、当該信号は、信号線70によって制御ユニット10に供給され、これにより、電気外科用機器16の存在の自動検出が提供される。
【符号の説明】
【0040】
1 電気外科用発電機
3 高電圧用インバータ
4 静電容量検出器
5 静電容量ピックアップ部
6 直列コンデンサ
7 測定回路
10 制御ユニット
13 出力接続部
14 出力ソケット
15 プラグインケーブル
16 電気外科用機器
18 ローカルマイクロコントローラ
19 保護された接続部
33 ガルバニックセパレータ
60 プリント回路基板構造
61,62 プレート
71 容量性分圧器
73 抵抗分圧器
74 演算増幅器
76 遮断フィルタ
図1
図2
図3
図4