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特許7578747欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のためのカルバメート化合物の使用
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  • 特許-欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のためのカルバメート化合物の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のためのカルバメート化合物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/41 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20241029BHJP
   C07D 257/04 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
A61K31/41
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61P25/08
C07D257/04
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023061633
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2020544727の分割
【原出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2023085469
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0151248
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511206696
【氏名又は名称】エスケー バイオファーマスティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シン・ヘウォン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-538557(JP,A)
【文献】Epilepsy Research,2013年,Vol.103,pp.2-30
【文献】Epilepsy Research,2009年,Vol.83,pp.1-43
【文献】脳と精神の医学(Brain Science and Mental Disorders),2009年,Vol.20, No.3,pp.237-242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07D
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の下記式(1)
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C-Cアルキル、ハロC-Cアルキル、C-Cチオアルコキシ及びC-Cアルコキシからなる群から選ばれ、
及びAの一方はCHであり、他方はNである。)
で示されるカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む、欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のための医薬であって、
該欠神発作を示すてんかんは、小児欠神てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、ジーボンス症候群(欠神を伴う眼瞼ミオクロニー)、およびファントム欠神を伴う遺伝性全般てんかん、からなる群から選ばれることを特徴とする、医薬。
【請求項2】
及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及びC-Cアルキルからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
式(1)のカルバメート化合物が、下記式(2)
【化2】
で示されるカルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
経口または非経口投与用に製造される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
非経口投与が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、膣内投与、肺内投与、または直腸内投与である、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
式(1)のカルバメート化合物の治療有効量が、遊離形で1日1回の投与に基づいて、50mg~500mgであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
治療有効量の下記式(1)
【化3】
(式中、R及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C-Cアルキル、ハロC-Cアルキル、C-Cチオアルコキシ及びC-Cアルコキシからなる群から選ばれ、
及びAの一方はCHであり、他方はNである。)
で示されるカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含み、さらに薬学的に許容される担体を1種以上含む、
欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のための医薬組成物であって、
該欠神発作を示すてんかんは、小児欠神てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、ジーボンス症候群(欠神を伴う眼瞼ミオクロニー)、およびファントム欠神を伴う遺伝性全般てんかん、からなる群から選ばれることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項8】
及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及びC-Cアルキルからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
式(1)のカルバメート化合物が、下記式(2)
【化4】
で示されるカルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステルであることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
経口または非経口投与用に製造される、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
非経口投与が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、膣内投与、肺内投与、または直腸内投与である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
式(1)のカルバメート化合物の治療有効量が、遊離形で1日1回の投与に基づいて、50mg~500mgであることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
下記式(1)
【化5】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C-Cアルキル、ハロC-Cアルキル、C-Cチオアルコキシ及びC-Cアルコキシからなる群から選ばれ、
及びAの一方はCHであり、他方はNである。)
で示されるカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の、欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のための医薬を製造するための使用であって、
該欠神発作を示すてんかんは、小児欠神てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、ジーボンス症候群(欠神を伴う眼瞼ミオクロニー)、およびファントム欠神を伴う遺伝性全般てんかん、からなる群から選ばれることを特徴とする、使用。
【請求項14】
及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及びC-Cアルキルからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
式(1)のカルバメート化合物が、下記式(2)
【化6】
で示されるカルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステルであることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
医薬が経口または非経口投与用に製造される、請求項13~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
非経口投与が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、膣内投与、肺内投与、または直腸内投与である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
式(1)のカルバメート化合物の治療有効量が、遊離形で1日1回の投与に基づいて、50mg~500mgであることを特徴とする、請求項13~15のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(1)
【化1】
(式中、R、R、A及びRは、本明細書で定義された通りである)で示されるカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を欠神発作(absence seizure)又は欠神発作を示すてんかん(epilepsy)の予防、軽減又は治療のために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞の全体としての一時的及び不規則的な異常な興奮によって引き起こされる全ての症状は、発作(seizure)と呼ばれている。てんかんは、例えば、電解質の不均衡、酸塩基異常、尿毒症、アルコール離脱症、激しい睡眠不足などの発作を惹き起こす可能性のある身体の異常がなくても慢性発作が発生する一連の疾患をいう。2以上の発作場合、持続的な薬物治療が必要であることが知られている。
【0003】
てんかん発作は、臨床症状と脳波記録(electroencephalography、EEG)の所見に基づいて分類される。この分類によれば、てんかん発作は大きく部分発作と全身発作に分けられる。部分発作は、大脳皮質の一部分で始まる神経細胞の過興奮性発作を意味し、全身発作は、両方の大脳半球の広い範囲で始まる発作を意味する。全身発作の種類には、全身性強直間代発作、欠神発作(小発作)、ミオクローヌス発作及び無緊張発作などがあり、部分発作の種類には、単純な部分発作、複雑な部分発作、部分発作に起因する二次性全身発作がある(出典:韓国てんかん学会)。
【0004】
これらのうち、欠神発作(小発作)は、行動を突然中止し、約5~10秒間にわたってぼにやりと見詰めるか、又は頭部を前屈させる症状を特徴としている。時折、目を、または口の周りを僅かに揺らすことが観察されることがある。これらの症状は、息を強く吸うときに発生する特徴がある(出典:韓国てんかん学会)。欠神発作の最も特徴的な2つの特徴は、意識障害の臨床症状と、棘・徐波発射(spike-and-wave discharges、SWD)を示す脳波(EEG)とである。欠神発作の症状を伴うてんかんの種類には、小児欠神てんかん(child absence epilepsy)、ミオクロニー欠神てんかん(epilepsy with myoclonic absence)、若年性欠神てんかん(juvenile absence epilepsy)、若年性ミオクローヌスてんかん(juvenile myoclonic epilepsy)等がある。
【0005】
欠神発作は、定型欠神(typical absence)と非定型欠神(atypical absence)に分けることができる。定型欠神は、発作が通常2~10秒以内に終わり、30秒以上続くことはほとんどない。従って、患者自身が、いわんや他人が、患者にて発作が起きたかどうかを分からない場合がある。発作後、患者は発作があったことに気付かずに、発作の直前に行っていた行動又は状況に戻る。非定型欠神は、意識の喪失、大きく開いた目で見つめる、まぶたの瞬き、唇をなめる、噛む行動、又は指に触れる症状が含まれる。これらの症状の頻度は、思春期の前後に減少することもあるが、ほとんどは大発作を惹き起こす傾向にある。
【0006】
欠神発作の治療の種類には制限がある。バルプロ酸又はエトスクシミドが主に使用され、ラモトリジンも使用できるが、効果が低いことが知られている(非特許文献1)。しかし、カルバマゼピン(carbamazepine)、ビガバトリン(vigabatrin)、チアガビン(tiagabine)、オクスカルバゼピン(oxcarbazepine)、フェニトイン(phenytoin)、フェノバルビタール(phenobarbital)、ガバペンチン(gabapentin)、プレガバリン(pregabalin)等の抗てんかん薬は、欠神発作をかえって悪化させる可能性があるため、欠神発作の患者に使用が禁止されている(非特許文献2、3)。
カルボキサミドジベンザゼピン系薬物は、部分発作の治療に使用されるが、全身発作、特に欠神発作を悪化させることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Glauserら(2010)「Ethosuximide, Valproic Acid, and Lamotrigine in Childhood Absence Epilepsy」, New England Journal of Medicine, 362 (9): 790-9
【文献】「NICE Guidelines」Retrieved November 3, 2014
【文献】Knakeら、(August 8, 1999)「Tiagabine-induced absence status in idiopathic generalized epilepsy」 European Journal of Epilepsy 8 (5): 314-317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんを予防、軽減又は治療するための方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、下記式(1)
【化2】
(式中、R、R、A及びRは、本明細書で定義された通りである)で示されるカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療での使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、治療有効量の下記式(1)
【化3】
(式中、R及びRが、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C-Cアルキル、ハロC-Cアルキル、C-Cチオアルコキシ及びC-Cアルコキシからなる群から選ばれ、A及びAの一方はCHであり、他方はNである。)で示されるカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含む、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のための医薬を提供する。
【0011】
また、本発明は、治療有効量の前記式(1)のカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を含み、さらに薬学的に許容される担体を1種以上含む、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療のための医薬組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、前記式(1)のカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物を治療有効量で治療対象に投与することを含み、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんを予防、軽減又は治療する方法を提供する。
また、本発明は、前記式(1)のカルバメート化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんを予防、軽減又は治療するための使用を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及びC1-Cアルキルからなる群から選ばれる。
一実施形態において、ハロC-Cアルキルは、ペルフルオロアルキルである。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、前記式(1)のカルバメート化合物は、下記式(2)
【化4】
で示されるカルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステルである。
【0015】
化合物を合成する分野における当業者であれば、前記式(1)及び(2)のカルバメート化合物を、既知の化合物又は該化合物より容易に製造できる化合物を使用して簡単に製造することができる。特に、前記式(1)化合物の製造方法は、国際公開特許WO2006/112685A1、WO2010/150946A1及びWO2011/046380A2に詳細に記載されており、それらの内容は出典明示により本明細書に組み込まれる。前記式(1)化合物は、前記文献に記載されているいずれかの方法に従って化学的に合成することができるが、これらの方法は一例であり、必要に応じて単位操作の順序などを選択的に変換してもよい。従って、前記方法は本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0016】
前記式(1)のカルバメート化合物は、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんの予防、軽減又は治療に用いることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記欠神発作は、定型欠神と非定型欠神に大きく分けられる。定型欠神の場合、発作が通常2~10秒以内に終わり、30秒以上続くことはほとんどない。従って、患者自身が、いわんや他人が、患者にて発作が起きたかどうかを分からない場合がある。発作後、患者は発作があったことに気付かずに、発作の直前に行っていた行動又は状況に戻る。非定型欠神は、意識の喪失、大きく開いた目で見つめる、まぶたの瞬き、唇をなめる、噛む行動、又は指に触れれる症状が含まれる。これらの症状の頻度は思春期の前後に減少する可能性があるが、ほとんどは大発作を惹き起こす傾向にある。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、欠神発作を示すてんかんは、小児欠神てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、若年性欠神てんかん、若年性ミオクローヌスてんかん、ジーボンス症候群(欠神を伴う眼瞼ミオクロニー;eyelid myoclonia with absences)、ファントム欠神を伴う遺伝性全般てんかん(genetic generalized epilepsy with phantom absences)、及びレノックス・ガストー症候群(Lennox-Gastaut syndrome)から選ばれる一つ以上であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、欠神発作は、定型欠神又は非定型欠神であってもよい。欠神発作には、EEGの特徴として棘・徐波発射(SWD)を伴う全ての発作が含まれる。
前記式(1)のカルバメート化合物は、棘・徐波発射(SWD)を抑制するそれらの能力により欠神発作又は欠神発作を示すてんかんに適用することができる。
【0020】
前記式(1)のカルバメート化合物の、欠神発作又は欠神発作を示すてんかんに対する効能は、既知のモデルを使用して確認することができる。例えば、GAERS(ストラスブールから由来の遺伝的欠神てんかんのラット(Genetic absence epilepsy rat from Strasbourg))モデルは、遺伝的な特徴により、自発的な棘・徐波発射(SWD)を示し、欠神発作の行動を示すラットの一種であり、欠神発作の治療剤の効能を検証する手段として使用されている(Depaulis et al., The genetic absence epilepsy rat from Strasbourg as a model to decipher the neuronal and network mechanisms of generalized idiopathic epilepsies. J Neurosci Methods, 2016 Feb 15;260:159-74)。
【0021】
この疾患モデルラットでは、SWDは大脳皮質の脳波記録(EEG)を通じて特徴的に観察され、1回に付き約17~25秒間持続し、1時間当り約45~60回発生している。このSWDは欠神発作の行動学的特徴である活動の一時停止とも関連付けられる。GAERSモデルラットでのSWDも、ヒト患者と同様にバルプロエート(valproate)、エトスクシミド(ethosuximide)等によって抑制されることが知られており、多数の薬物は抑制効果を示さないか、一部の薬物はSWDをむしろ悪化させることが知られている(Dedeurwaerdere et al., Fluctuating and constant valproate administration gives equivalent seizure control in rats with genetic and acquired epilepsy. Seizure. 2011 Jan;20(1):72-9; Nehlig et al., Cerebral energy metabolism in rats with genetic absence epilepsy is not correlated with the pharmacological increase or suppression of spike-wave discharges. Brain Res. 1993 Jul 30;618(1):1-8; Wallengren et al., Aggravation of absence seizures by carbamazepine in a genetic rat model does not induce neuronal c-Fos activation. Clin Neuropharmacol. 2005 Mar-Apr;28(2):60-5; Gurbanova et al., Effect of systemic and intracortical administration of phenytoin in two genetic models of absence epilepsy. Br J Pharmacol. 2006 Aug;148(8):1076-82; Vartanian et al., Activity profile of pregabalin in rodent models of epilepsy and ataxia. Epilepsy Res. 2006 Mar;68(3):189-205)。
【0022】
従って、この疾患モデルは、欠神発作に対する効果を予測する上で有用なモデルであると考えられる(Klitgaard et al., Use of epileptic animals for adverse effect testing. Epilepsy Res. 2002 Jun;50(1-2):55-65; van Luijtelaar EL, Drinkenburg WH, van Rijn CM, Coenen AM. Rat models of genetic absence epilepsy: what do EEG spike-wave discharges tell us about drug effects? Methods Find Exp Clin Pharmacol. 2002;24 Suppl D:65-70)。
【0023】
前記疾患の予防、軽減又は治療のための式(1)のカルバメート化合物の投与量は、典型的には、疾患の重症度、治療対象の体重及び代謝状態に応じて変化し得る。個々の患者の「治療有効量」は、前記薬理学的効果、即ち、上記されるような治療効果を達成するのに十分な活性化合物の量を意味する。式(1)化合物の治療有効量は、遊離形態で、ヒトに1日一回投与することに基づいて、50~500mg、50~400mg、50~300mg、100~400mg、100~300mg、50~200mg、又は100~200mgである。
【0024】
本発明の化合物は、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下又は直腸投与などの治療剤の投与に使用される通常の方法で投与することができる。
本発明の一実施形態による医薬又は医薬組成物は、本発明のカルバメート化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる化合物の治療有効量を含むことができる。
【0025】
前記式(1)のカルバメート化合物の薬学的に許容される塩には、例えば、独立して、アセテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビタルトラート、酢酸カルシウム、カンシラート、カーボネート、シトラート、エデタート、エジシラート、エストレート、エシレート、フマレート、グルセプテート、グルコネート、グルタメート、グリコロイルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロゲンカーボネート、ヒドロキシナフトアート、ヨージド、イセチオナート、ラクテート、ラクトビオナート、マレート、マレエート、マンデラート、メシレート、メチルニトラート、メチルスルフェート、ムカート、ナプシラート、ニトラート、パモアート(エンボナート)、パントテナート、ホスフェート/ジホスフェート、ポリガラクツロナート、サリチラート、ステアレート、サブアセテート、スクシナート又はヘミ-スクシナート、スルフェート又はヘミ-スルフェート、タンネート、タルトラート、オキサレート又はヘミ-タルトラート、テオクレート、トリエチオジド、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛などが含まれる。
【0026】
本発明の一実施形態による医薬又は医薬組成物は、経口又は非経口的に投与することができる。非経口投与には、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、膣内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与することができる。経口投与の場合、本発明の一実施形態による医薬組成物は、素錠(非被覆錠剤)として、又は活性剤が被覆されているか、又は胃での分解から保護されるように製剤化することができる。また、前記組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意のディバイスによって投与することができる。投与経路は、治療対象の一般的な条件及び年齢、治療条件の性質及び選ばれる有効成分に応じて変わる。
【0027】
本発明の一実施形態による医薬又は医薬組成物の適した投与量は、製剤方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食餌、投与時間、投与経路、排せつ速度及び反応感受性などの要因によって変わり、通常の熟練技能を有した医師は、所望の治療又は予防に有効な投与量を容易に決定及び処方することができる。一実施形態による前記医薬組成物は、1回以上の投与量で、例えば、一日当たり1回~4回投与することができる。一実施形態による前記医薬組成物は、式(1)の化合物を、遊離形に基づいて、50~500mg、50~400mg、50~300mg、100~400mg、100~300mg、50~200mg、又は100~200mg含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態による医薬又は医薬組成物は、当業者が容易に実施できる方法に従って、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を使用して製剤化することで、単位用量形態で製造されるか、又は多用量容器内に含ませて製造することができる。前記製剤は、油性または水性媒体中の溶液、懸濁液又は乳化液形態、抽出物剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤形態であってもよく、分散剤又は安定化剤を追加的に含むことができる。また、前記医薬組成物は、座薬、スプレー、軟膏、クリーム、ゲル、吸入剤又は皮膚パッチの形態で投与することができる。また、前記医薬組成物は、哺乳類投与のために、さらに好ましくはヒト投与のために製造することができる。
【0029】
薬学的に許容される担体は、固体や液体であってもよく、賦形剤、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、分散剤、吸着剤、界面活性剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、甘味剤、香味剤、滑沢剤、放出調節剤、湿潤剤、安定化剤、懸濁化剤及び潤滑剤から選ばれる1種以上であってもよい。さらに、薬学的に許容される担体は、生理食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食生理塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの混合液から選ぶことができる。
【0030】
一実施形態において、適切な賦形剤(filler)としては、糖(例えば、デキストロース、スクロース、マルトース及びラクトース)、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、エリトリトール及びキシリトール)、デンプン加水分解物(例えば、デキストリン及びマルトデキストリン)、セルロールロス又はセルロース誘導体(例えば、微晶質セルロース)又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
一実施形態において、適切な結合剤には、ポビドン、コポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ガム類、スクロース、デンプン又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態には、適切な防腐剤には、安息香酸、ナトリウムベンゾエート、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クロルブトール、ガレート、ヒドロキシベンゾエート、EDTA又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
一実施形態において、適切な崩壊剤には、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプン、微晶質セルロース又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態において、適切な甘味剤には、スクラロース、サッカリン、ナトリウム又はカリウム又はカルシウムサッカリン、アセスルファムカリウム又はナトリウムシクラメート、マンニトール、フルクトース、スクロース、マルトース又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
一実施形態には、適切な滑沢剤には、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、タルクなどが含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態において、適切な潤滑剤には、長鎖脂肪酸及びその塩、例えば、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸、タルク、グリセリドワックス又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書に使用された用語「予防する」、「予防すること」及び「予防」は、疾患にかかる可能性を減少又は排除することをいう。
本明細書に使用された用語「軽減する」、「軽減すること」及び「軽減」は、疾患及び/又はこれに付随する症状を全部又は一部緩和することをいう。
本明細書に使用された用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患及び/又はこれに付随する症状を全部又は一部除去することをいう。
【0035】
本明細書に使用された用語「対象」は、治療、観察又は実験の態様である動物、好ましくは、哺乳類(例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなど)、最も好ましくはヒトを意味する。
本明細書に使用された用語「治療有効量」は、治療される疾患又は障害の症状を軽減させることを含む、系、動物又はヒトにおける生物学的又は医学的反応を誘導する活性化合物又は医薬製剤の量を意味する。ここで、前記量は、研究者、獣医、医師(内科医)又は他の臨床医によって求められる。
【0036】
本明細書に使用された用語「組成物」は、特定の量の特定成分を含む製品、及び特定量の特定成分の組み合わせから直接又は間接的に生成される任意の製品を含む。
【発明の効果】
【0037】
本発明による医薬及び医薬組成物は、欠神発作及び欠神発作を示すてんかんを効率的に治療及び予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例で使用されたGAERSモデルのベースライン条件で観察された脳波記録(EEG)測定の結果を示す図であり、自発的なSWDが発生していることが分かる。
【0039】
図2】GAERSモデルで脳波記録(EEG)分析を介して生成されたSWDの発生回数に対する陽性対照群として使用されたバルプロエートの影響を分析した結果を示す図であり、150mg/kg、200mg/kgの2つの用量での有効性が分析された。薬物投与直前の20分間のベースライン期間のSWD発生回数と薬物投与後10分から90分までの合計80分におけるSWD発生回数を示した。
【0040】
図3】GAERSモデルで生成されたSWDの発生回数に対する試験化合物の影響をEEG分析を介して分析した結果を示す図であり、5、10、20、30mg/kgの4つの用量における有効性が分析された。試験化合物投与直前の20分間のベースライン期間のSWD発生回数と試験化合物投与後の10分から90分までの合計80分間におけるSWD発生回数を示した。
【0041】
図4】薬物又は試験化合物投与後の10分から70分までの合計60分間のSWDの発生回数を示す図であり、ビヒクル投与群、試験化合物投与群、バルプロエート投与群間の効果の差を確認することができる。
【0042】
図5】GAERSモデルで生成されたSWDの累積持続時間に対する、陽性対照として使用されたバルプロエートの影響を経時的にEEG解析を介して分析した結果を示す図であり、150mg/kg、200mg/kgの2つの用量における有効性が分析された。薬物投与直前の20分間のベースライン期間におけるSWD累積持続時間、及び薬物投与後10分から90分までの20分の単位区間におけるSWD累積持続時間が表示された。
【0043】
図6】GAERSモデルで生成れたSWDの累積持続時間に対する試験化合物の影響を経時的にEEG解析を介して分析した結果を示す図であり、5、10、20、および30mg/kgの4つ用量での有効性が分析された。試験化合物を投与する直前20分間のベースライン期間におけるSWD累積持続期間と試験化合物を投与した後10分から90分までの20分単位区間でのSWD累積持続時間を示した。
【0044】
図7】薬物又は試験化合物を投与した後10分から70分までの合計60分の20分単位区間でのSWDの累積持続時間を示す図であり、ビヒクル投与群、試験化合物投与群、バルプロエート投与群間の効果の差を確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、一つ以上の実施形態を例示することのみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0046】
製造例:カルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステルの製造
カルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステル(試験化合物)を、国際公開番号WO2010/150946号の製造例50に記載された方法に従って製造した。
【0047】
実施例:GAERS(ストラスブールから由来の遺伝的欠神てんかんラット)モデルを使用した欠神発作の予防及び治療の効能試験
GAERSモデルは、遺伝的影響により自発的なSWDを示すラットの1種である。GAERSモデルは、欠神発作の典型的な行動的、電気生理学的、薬理学的特徴を備えており、かくして、約20年間、欠神発作の疾患モデルとして使用されてきた(Depaulis et al., The genetic absence epilepsy rat from Strasbourg as a model to decipher the neuronal and network mechanisms of generalized idiopathic epilepsies. J Neurosci Methods. 2016 Feb 15;260:159-74)。
【0048】
実験動物
5週齢GAERSモデルのラット12匹をフランス、Grenoble Institue of Neurosciencesから入手した。入手後、餌と水への自由なアクセス及び制御された光(午前8時から午後8時まで点灯)の条件下にて21±2℃の温度でラットを飼育し、手術前2カ月間がこの状態を維持した。
【0049】
EEG測定のための電極移植
3カ月齢のGAERSラット12匹にEEG電極を移植した。定位固定移植は、イソフルラン(酸素中濃度2%)麻酔下で行った。ラットを定位固定フレームに固定し、体温を観察しながら手術を行った。角膜の乾燥を防ぐために、眼科用ゲルを使用した。切開部位の毛を切った後、ポビドンで消毒し、切開後、開いた頭蓋骨の両方の半球の前頭骨(frontal)皮質と頭頂(parietal)皮質の位置にドリルを利用して4個の穴を開けた。単極電極をこれらの穴に配置し、EEG記録のために頭蓋骨に固定された雌型コネクタに接続した。次に切開部位を縫合した。手術後、ブプレノルフィンを0.1mg/kgの用量で皮下注射し、麻酔剤を除去し、意識回復するまで観察した。その後、回復のためにラットを1週間にわたってケージに入れた。
【0050】
薬効試験のための動物の選別
電極移植の1週間後、12匹の動物全てに対して1時間の予備EEG測定を行い、SWDの発生を検出するのに適した十分なS/N比を示す10匹を選別した。
【0051】
薬物投与
試験化合物及び陽性対照薬物は投与直前に調製した。前記製造例で製造したカルバミン酸(R)-1-(2-クロロフェニル)-2-テトラゾール-2-イル)エチルエステルを、30%(容量/容量)PEG300(81164-14、Sigma-Aldrich社)、及び陽性対照であるバルプロエート(P4543、Sigma-Aldrich社)を0.9%滅菌生理食塩水(Cooper社、フランス)に溶かした。両薬剤を5mL/kg用量で腹腔内投与した。陰性対照としてのビヒクル投与には30%PEG300を使用した。
【0052】
試験は、クロスオーバー(cross-over)法で行われ、薬物の洗浄のために各投与間に最低71時間の区間を空いていた。第1期試験では、以下の条件を実施した。
-ビヒクル(30%PEG300)
-バルプロエート 200mg/kg
-試験化合物 5mg/kg
-試験化合物 10mg/kg
-試験化合物 20mg/kg
第2期試験では、以下の条件を実施た。
-バルプロエート 150mg/kg
-試験化合物 30mg/kg
【0053】
EEG記録
EEG記録では、10匹のGAERSラットを記録チャンバーに入れ、ワイヤに接続してEEGを記録した。1時間の馴化工程の後、自由に動く動物のEEG記録を行った。ベースライン相として、System Plus Evolution(Micromed)を使用して、薬物投与の20分前に記録を行い、薬物を投与した後に、90分間の記録を行った。記録中、動物は静かな覚醒状態に保持された。
【0054】
EEGデータ分析
記録されたEEGデータを利用して得られたSWDを分析し、全てのデータ分析は盲検法によって行われた。SWDは、20分のベースライン相、及び薬物投与後10分から90分までの合計80分間の期間について分析された。80分を20分区間で分割して分析し、SWDの発生回数と蓄積されたSWD持続時間(SWD累積持続時間)を分析した。
【0055】
統計的分析
結果は平均値±標準誤差として表され、統計分析にはプリズム(グラフパッド)を利用した。SWDの発生回数とSWD累積持続時間を経時的に分析するのに、2元配置分散分析(2-way ANOVA)を使用した。ボンフェローニ一対比較法を使用して、ベースライン期間との比較、ビヒクル投与の陰性対照群との比較、バルプロエート投与の陽性対照群との比較を行った。薬物投与後の1時間の総効果に対して、反復測定値には1元配置分散分析(1-way ANOVA)を使用し、ビヒクル投与の陰性対照群との比較、バルプロエート投与の陽性対照群との比較には、ボンフェローニ一対比較法を使用した。統計的有意性の基準はp<0.05として定義された。
【0056】
試験結果
EEGの記録に使用されたGAERS10匹のラットのうち1匹は、ベースラインで得られたSWDの数が少なく、分析には不適切であり、その1匹のデータは最終分析から除外された。
【0057】
1)SWDの発生回数に対する試験化合物の影響
20分単位区間の測定値に対する2元配置分散分析した結果は以下の通りである。
・陰性対照としてのビヒクル投与群は、いかなる時点でもベースラインと比較して差を示さなかった。
・陽性対照としてのバルプロエート投与群は、バルプロエート投与によりSWD発生回数減少効果があった。150mg/kg投与群は、ビヒクル投与群と比較して、投与後10~30分、30~50分の区間でSWDの発生回数の統計的に有意な減少を示した。さらに、200mg/kg投与群では、投与後の全時間区間(10分~90分間)で陰性対照と比較してSWD発生回数が大幅に減少した。
・10、20、および30mg/kgの用量の試験化合物投与群は、ビヒクル投与群と比較して、SWDの発生回数の有意な減少を示した。10mg/kg用量は投与後30~50分区間で有意性を、20mg/kg用量では30~90分区間で有意性を、30mg/kgでは投与後全区間で有意性を示した。薬効持続時間に関して、試験化合物は、陽性対照としてバルプロエートよりも長い時間持続を示した。
【0058】
薬物投与後1時間の総効果について、1元配置分散分析の結果は、20、および30mg/kgの用量の試験化合物投与群が、ビヒクル投与群と比較してSWD発生回数の有意な減少を示しており、バルプロエート投与群の150、および200mg/kgと同様の効果を示した。
【0059】
2)SWDの累積持続時間に対する試験化合物の影響
20分の単位区間ごとのSWD持続時間の累積値の2元配置分散分析の結果は以下の通りである。
・陰性対照としてのビヒクル投与群は、いかなる時点でもベースラインと比較して差を示さなかった。
・陽性対照群であるバルプロエート投与群は、バルプロエート投与によるSWD累積持続の減少効果を示した。150mg/kg投与群は、投与後、10~30、30~50、50~70分区間で有意な減少を示し、200mg/kg投与群は、投与後の全時間区間(10分~90分間)で陰性対照と比較して有意な減少を示した。
・10、20、および30mg/kgの用量の試験化合物投与群は、ビヒクル投与群と比較してSWDの累積持続時間の有意な減少を示した。10mg/kg用量は、投与後30~50、50~70分区間で有意な減少効果を、20mg/kg用量は30~90分区間で有意な減少効果を、30mg/kgは投与後全区間で有意な減少効果を示した。薬効持続時間に関して、試験化合物は、陽性対照としてバルプロエートよりも長い時間持続を示した。
【0060】
薬物投与後1時間の総効果について、1元配置分散分析の結果は、20、および30mg/kg用量の試験化合物投与群が、ビヒクル投与群と比較してSWD累積持続時間を有意に減少させており、150、および200mg/kg用量のバルプロエート投与群と同様の効果を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7