IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】認証システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/31 20130101AFI20241029BHJP
   G06F 3/04883 20220101ALI20241029BHJP
【FI】
G06F21/31
G06F3/04883
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023086597
(22)【出願日】2023-05-26
(62)【分割の表示】P 2019562765の分割
【原出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2023111933
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】62/611,386
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】掛 晃幸
【審査官】青木 重徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201109(JP,A)
【文献】特開2017-182118(JP,A)
【文献】特表2017-529594(JP,A)
【文献】特開2007-114038(JP,A)
【文献】宇根 正志 ほか,生体認証における生体検知機能について,日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(2005年収録分) [online],日本,日本銀行,2005年12月16日,p. 1-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/31
G06F 3/04883
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンと、前記電子ペンからの信号を受けて前記電子ペンを用いた使用者による署名についての認証を行う電子機器とからなる認証システムであって、
前記電子ペンは、
筒状の筐体の、位置検出センサとインタラクションして位置指示入力するための先端部と、
前記先端部側とは軸心方向において反対側の後端側に、任意の部位に前記電子ペンの後端部が押し当てられたときに、前記押し当てられた部位の色の情報又は画像の情報をピックアップするピックアップ部と、
前記ピックアップ部でピックアップした前記色の情報又は前記画像の情報を、前記電子機器に送信する第1の送信部と、
を備え、
前記電子機器は、
前記位置検出センサと、
前記電子ペンの前記先端部での前記位置指示入力に基づく前記使用者による署名の軌跡情報と、色の情報又は画像の情報との登録を受け付ける登録受付手段と、
前記登録受付手段で受け付けられた前記登録された署名の軌跡情報と前記登録された色の情報又は画像の情報とを対応付けて認証参照用情報として記憶する認証参照用情報記憶部と、
前記電子ペンから送信されてくる前記色の情報又は前記画像の情報を受信する第1の受信部と、
前記位置検出センサを通じて前記電子ペンの前記先端部での位置指示入力を受け付けて、前記位置指示入力に基づく入力軌跡情報を取得する入力軌跡情報取得手段と、
前記第1の受信部で受信した前記色の情報又は前記画像の情報及び前記入力軌跡情報取得手段で取得された前記入力軌跡情報と、前記認証参照用情報記憶部に記憶されている前記認証参照用情報としての前記登録された軌跡情報及び前記登録された色の情報又は画像の情報とを照合して前記署名についての認証の可否を判断する認証可否判断部と、
を備えることを特徴とする認証システム。
【請求項2】
前記電子ペンは、
電子ペン毎に固有の識別情報を記憶する識別情報記憶部と、
前記識別情報記憶部の前記識別情報を前記電子機器に送信する第2の送信部と、
を備え、
前記電子機器は、
前記電子ペンから送信されてくる前記識別情報を受信する第2の受信部を備え、
前記登録受付手段は、前記使用者による署名の軌跡情報と、色の情報又は画像の情報と、前記識別情報との登録を受け付け、
前記認証参照用情報記憶部は、前記登録受付手段で受け付けられた前記登録された署名の軌跡情報と前記登録された色の情報又は画像の情報と前記登録された前記識別情報とを対応付けて認証参照用情報として記憶し、
前記認証可否判断は、前記第1の受信部で受信した前記色の情報又は前記画像の情報、前記入力軌跡情報取得手段で取得した前記入力軌跡情報及び前記第2の受信部で受信した前記識別情報と、前記認証参照用情報記憶部に記憶されている前記認証参照用情報としての前記登録された署名の軌跡情報、前記登録された色の情報又は画像の情報及び前記登録された前記識別情報とを照合して前記署名についての認証の可否を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記認証可否判断は、前記認証参照用情報としての前記登録された色の情報と、前記第1の受信部で受信した前記色の情報との照合を行う第1のステップと、前記認証参照用情報としての前記登録された前記軌跡情報と、前記入力軌跡情報取得手段で取得した前記入力軌跡情報との照合を行う第2のステップとからなり、
前記第1のステップでの照合の結果が認証NGである場合には、前記第2のステップでの照合を行うことなく、前記署名についての認証ができなかったと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項4】
前記認証可否判断は、前記第2の受信部で受信した前記識別情報と、前記認証参照用情報としての前記登録された前記識別情報との照合を行う第1のステップと、前記認証参照用情報としての前記登録された色の情報と、前記第1の受信部で受信した前記色の情報との照合を行う第2のステップと、前記認証参照用情報としての前記登録された前記軌跡情報と、前記入力軌跡情報取得手段で取得した前記入力軌跡情報との照合を行う第3のステップとからなり、
前記第1のステップ及び/又は前記第2のステップでの照合の結果が認証NGである場合には、前記第3のステップでの照合を行うことなく、前記署名についての認証ができなかったと判断する
ことを特徴とする請求項に記載の認証システム。
【請求項5】
前記電子ペンの第1の送信部及び前記第2の送信部は、同一の送信部とされると共に、前記電子機器の第1の受信部及び第2の受信部は、同一の受信部とされている
ことを特徴とする請求項に記載の認証システム。
【請求項6】
前記第1の送信部又は前記第2の送信部と前記第1の受信部又は前記第2の受信部とは、所定の通信規格の無線通信を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の認証システム。
【請求項7】
前記電子機器は、前記位置検出センサを備えていると共に、前記第2の送信部及び前記第2の受信部は、前記電子ペンと前記位置検出センサとのインタラクションにより前記識別情報の送受を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の認証システム。
【請求項8】
前記ピックアップ部は、前記電子ペンの本体部に対して取り外し可能な別体の構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項9】
前記ピックアップ部は、前記電子ペンの本体部に設けられる第1のコネクタと接続される第2のコネクタを備えていて、前記ピックアップ部と前記電子ペンの本体部とは電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項8に記載の認証システム。
【請求項10】
前記第1の送信部は、前記ピックアップ部に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の認証システム。
【請求項11】
前記ピックアップ部は、前記電子ペンの本体部とは取り外し可能な別体の構成とされていると共に、
前記ピックアップ部は、前記電子ペンの本体部に設けられる第1のコネクタと接続される第2のコネクタを備えていて、前記ピックアップ部と前記電子ペンの本体部とは電気的に接続されており、
前記第1の送信部は、前記電子ペンの本体部の、前記位置検出センサとのインタラクションにより情報の送受を行う機能で構成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の認証システム。
【請求項12】
前記ピックアップ部は、開口部を備えると共に、前記開口部の内部には、発光素子と受光素子とが配置されており、
前記開口部側が、平面部に押し当てられて、外光の前記開口部内への進入が遮断される状態となったときには、前記発光素子が発光を開始して、前記押し当てられた前記平面部に対して前記発光素子からの光が照射され、前記平面部からの反射光を前記受光素子が受光し、前記受光素子の出力信号から、前記色の情報又は前記画像の情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項13】
前記開口部には、レンズが配設されている
ことを特徴とする請求項12に記載の認証システム。
【請求項14】
前記レンズは、前記開口部から外方に突出すると共に、外方から押下されたときに、前記電子ペンの軸心方向に前記開口部の内部側に変位可能に配設されており、
前記レンズの前記開口部の内部側への変位に応じてスイッチ状態を変化するスイッチが設けられており、
前記スイッチの前記スイッチ状態の変化に応じて、前記発光素子の点灯制御がなされる
ことを特徴とする請求項13に記載の認証システム。
【請求項15】
前記開口部が前記平面部に押し当てられて、前記開口部への外光の進入の遮断を検知する検知手段を備え、
前記検知手段の検知出力に基づいて、前記発光素子の点灯制御がなされる
ことを特徴とする請求項12に記載の認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ペンを用いた認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)やスマートフォンなどの携帯機器の小型化、薄型化が進むと共に、その表示画面にタッチパネル等の位置検出センサが重畳して設けられて、当該表示画面を通じた操作入力が可能となってきている。そして、その表示画面を通じた操作入力の手段として電子ペンが用いられるようになってきている。
【0003】
ところで、PCやスマートフォンには、多種多様なアプリケーションプログラムがインストールされると共に、多種多様なデータファイルやデータフォルダが記憶されることが多い。そして、その多種多様なアプリケーションプログラムや、データファイルやデータフォルダの中には、使用者がセキュリティを確保(保護)して、許可の無い他者のアクセスを排除したいというものもある。
【0004】
そこで、その要求を満足するものとして、従来から、セキュリティを確保したいものを認証対象として、そのセキュリティを確保するための種々の認証方法及び認証システムが提供されている。
【0005】
一般的に良く用いられる認証方法は、数字、アルファベット、記号などを用いた暗証コードを予め設定登録しておき、その設定登録された暗証コードと、認証時に入力された暗証コードとの照合により認証の可否を判断するようにする方法である。
【0006】
しかし、数字やアルファベット、記号の組み合わせによる暗証コードは、桁数が少ないと他者による解読が比較的容易であるという問題がある。そこで、桁数が多く、且つ、数字やアルファベット、記号を混在させることで、セキュリティを向上させることが行われる。しかし、暗証コードの桁数が多くなると、その入力作業が厄介であると共に、利用者が暗証コードを忘れてしまう恐れがあるという問題があった。
【0007】
この問題点を解消する方法の一つとして、指紋、虹彩、静脈などの生体情報を認証用情報として用いる認証システムが知られている(特許文献1(特開2004‐156265号公報)や特許文献2(特開2010‐250475号公報)等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004‐156265号公報
【文献】特開2010‐250475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、指紋、虹彩、静脈などの生体情報を認証用情報として用いる場合には、使用者の操作は簡単になると共に、多桁の暗証コードを記憶しておく必要がないという利点があるが、それらの生体情報を取得するための特殊なデバイスを必要とし、そのために認証システムが大掛かりのものとなったり、情報処理の負荷が重くなってしまったりすると共に、コスト高となってしまうという問題がある。
【0010】
また、認証用情報としての生体情報を設定登録した者以外は、セキュリティを解除できなくなってしまうので、PCや携帯機器が、生体情報の設定登録者以外には利用できず、かえって不便となる場合もある。
【0011】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした認証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、
電子ペンと、前記電子ペンからの信号を受けて前記電子ペンを用いた使用者による署名についての認証を行う電子機器とからなる認証システムであって、
前記電子ペンは、
筒状の筐体の、位置検出センサとインタラクションして位置指示入力するための先端部と、
前記先端部側とは軸心方向において反対側の後端側に、任意の部位に前記電子ペンの後端部が押し当てられたときに、前記押し当てられた部位の色の情報又は画像の情報をピックアップするピックアップ部と、
前記ピックアップ部でピックアップした前記色の情報又は前記画像の情報を、前記電子機器に送信する第1の送信部と、
を備え、
前記電子機器は、
前記位置検出センサと、
前記電子ペンの前記先端部での前記位置指示入力に基づく前記使用者による署名の軌跡情報と、色の情報又は画像の情報との登録を受け付ける登録受付手段と、
前記登録受付手段で受け付けられた前記登録された署名の軌跡情報と前記登録された色の情報又は画像の情報とを対応付けて認証参照用情報として記憶する認証参照用情報記憶部と、
前記電子ペンから送信されてくる前記色の情報又は前記画像の情報を受信する第1の受信部と、
前記位置検出センサを通じて前記電子ペンの前記先端部での位置指示入力を受け付けて、前記位置指示入力に基づく入力軌跡情報を取得する入力軌跡情報取得手段と、
前記第1の受信部で受信した前記色の情報又は前記画像の情報及び前記入力軌跡情報取得手段で取得された前記入力軌跡情報と、前記認証参照用情報記憶部に記憶されている前記認証参照用情報としての前記登録された軌跡情報及び前記登録された色の情報又は画像の情報とを照合して前記署名についての認証の可否を判断する認証可否判断部と、
を備えることを特徴とする認証システムを提供する。
【0013】
上述の構成の認証システムにおいては、電子ペンの後端部を、任意の部位に押し当てると、ピックアップ部が、その押し当てられた部位の色又は画像をピックアップする。そして、電子ペンの送信部は、ピックアップ部でピックアップされた色の情報又は画像の情報を、電子機器に送信する。
【0014】
電子機器では、位置検出センサを通じて電子ペンの先端部での位置指示入力を受け付けて、その位置指示入力に基づく入力軌跡情報を取得すると共に、電子ペンから送信されてくる色の情報又は画像の情報を受信する。そして、電子機器では、認証可否判断部で、受信した色の情報又は画像の情報及び取得した入力軌跡情報と、認証参照用情報記憶部に記憶されている認証参照用情報としての、登録された色の情報又は画像の情報及び登録された署名の軌跡情報とを照合して署名についての認証の可否を判断する。
【0015】
以上のように、上述の構成の認証システムによれば、電子機器では、電子ペンの後端部にピックアップ部を設け、電子ペンによる位置指示入力に基づく署名の軌跡情報の照合だけでなく、このピックアップ部を任意の部位に押し当てることでピックアップした当該部位の色の情報又は画像の情報を用いて、署名の認証処理がなされる。したがって、署名の認証の確度の向上及び、より高いセキュリティの確保ができる。また、認証用情報は、任意の部位の色又は画像の情報とすることができ、非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明による認証システムの実施形態の構成例の概要を説明するための図である。
図2】この発明による認証システムの第1の実施形態を構成する電子ペンの電子ペン本体部の構成例を示すブロック図である。
図3】この発明による認証システムの第1の実施形態を構成するピックアップ部の構成例を示す図である。
図4図3の例のピックアップ部の一部を説明するための図である。
図5】この発明による認証システムの第1の実施形態を構成する電子機器の構成例を示す図である。
図6】この発明による認証システムの第1の実施形態における電子ペンのピックアップ部の動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図7】この発明による認証システムの第1の実施形態における認証参照用情報記憶部の記憶内容を説明するための図である。
図8】この発明による認証システムの第1の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図9】この発明による認証システムの第1の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図10】この発明による認証システムの第1の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図11】この発明による認証システムの第2の実施形態を構成する電子ペンの電子ペン本体部の構成例を示すブロック図である。
図12】この発明による認証システムの第2の実施形態における電子ペンのピックアップ部の動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図13】この発明による認証システムの第2の実施形態における認証参照用情報記憶部の記憶内容を説明するための図である。
図14】この発明による認証システムの第2の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図15】この発明による認証システムの第2の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図16】この発明による認証システムの第2の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図17】この発明による認証システムの第2の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図18】この発明による認証システムの第3の実施形態を構成する電子ペンの電子ペン本体部の構成例を示すブロック図である。
図19】この発明による認証システムの第3の実施形態における電子ペンのピックアップ部の動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図20】この発明による認証システムの第3の実施形態における電子ペンの電子ペン本体部の動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図21】この発明による認証システムの第4の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図22】この発明による認証システムの第4の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図23】この発明による認証システムの第4の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図24】この発明による認証システムの第4の実施形態における電子機器の動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図25】この発明による認証システムの第4の実施形態における電子機器の動作例を説明するために用いる図である。
図26】この発明による認証システムの第4の実施形態における認証参照用情報記憶部の記憶内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明による認証システム及び電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による認証システムの実施形態の概要を示す図である。この実施形態の認証システムは、電子ペン1と、電子機器2とからなる。この実施形態の電子ペン1は、電子ペン本体部10とピックアップ部11とが結合されて構成されている。
【0019】
電子ペン本体部10は、この例では、電源電圧発生部を備え、静電結合により位置検出用信号を電子機器2のセンサ部に供給する、いわゆるアクティブ静電方式の構成とされている。電源電圧発生部は、後述するように、この例では、電磁誘導方式などにより充電が可能なバッテリーで構成される。なお、バッテリーは、一次電池であっても勿論よい。また、電子ペン本体部10は、アクティブ静電方式の構成に限られるものでは無く、パッシブ静電容量方式でもよいし、電磁誘導方式の構成でもよい。
【0020】
ピックアップ部11は、電子ペン本体部10とは別体のユニット(アダプタ)として電子ペン本体部10に対して取り外し可能に構成されている。ピックアップ部11は、電子ペン本体部10のペン先部10a側とは反対側の軸心方向の後端部10bに、この例では、USB(Universal Serial Bus)接続されて結合されるように構成されている。
【0021】
すなわち、この例では、図1に示すように、電子ペン本体部10の後端部10bには、USBコネクタジャック106が設けられ、一方、ピックアップ部11にはUSBコネクタプラグ111が設けられる。そして、ピックアップ部11のUSBコネクタプラグ111が、電子ペン本体部10のUSBコネクタジャック106に差し込まれることで、電子ペン本体部10とピックアップ部11とが、物理的に、また、電気的に結合される。
【0022】
この実施形態では、ピックアップ部11はバッテリーを備えず、電子ペン本体部10のバッテリーからの電源電圧の供給をUSB接続部を通じて受ける。そして、ピックアップ部11は、認証用情報としてこの例では色の情報をピックアップして、電子機器2に送信する機能を備える。すなわち、電子ペン本体部10の軸心方向が、所定の平面部に対して垂直となる状態で、ピックアップ部11の後端部を、前記所定の平面部の任意の色を呈する部位に押し当てたときに、ピックアップ部11は、後述するように、当該押し当てられている平面部の部位の色をピックアップし、そのピックアップした色の情報を電子機器2に送信するように構成されている。
【0023】
電子機器2は、この例では、図1に示すように、薄型及び小型のパッド型パーソナルコンピュータからなるもので構成されている。電子機器2は、種々のアプリケーションプログラムを備えており、種々の情報処理を行う機能を有すると共に、この例では、電子ペン1とインタラクションする位置検出センサを備え、当該電子ペン1を操作入力デバイスとして用いることができる構成とされている。さらに、電子機器2は、電子ペン1のピックアップ部11から送られてくる色の情報を認証用の情報として、アプリケーションプログラムやデータファイルなどの認証対象のセキュリティ保護をする機能を備えている。
【0024】
<電子ペン本体部10の構成例>
図2は、この実施形態の電子ペン本体部10の構成例を示す図である。電子ペン本体部10は、筒状の筐体101の中空部内に、電源電圧発生部の例としてのバッテリーBTと、信号発生回路102と、IC(Integrated Circuit;集積回路)で構成される制御部103と、筆圧検出部104とを備える。また、導体からなる芯体105が、筐体101の軸心方向のペン先部10a側の開口101aからペン先部10aの先端が突出するように配設されると共に、芯体105の先端側とは反対側が筆圧検出部104に結合されて、電子ペン本体部10の筐体101内に配置されている。
【0025】
更に、筐体101のペン先部10aとは軸心方向に反対側の後端部10bの開口部101bには、この例ではUSBコネクタジャック106が設けられている。USBコネクタジャック106は、USBインターフェース107を通じて制御部103と接続されている。また、バッテリーBTからの電源電圧は、USBインターフェース107及びUSBコネクタジャック106を通じて、このUSBコネクタジャック106に接続されるピックアップ部11に対して供給される。
【0026】
この実施形態の電子ペン本体部10においては、信号発生回路102は、制御部103の制御に従って、位置検出用信号を芯体105に供給する。電子ペン1の電子ペン本体部10の芯体105と電子機器2の位置検出センサとが静電容量結合することで、電子ペン本体部10の芯体105からの信号が電子機器2の位置検出で受信される。
【0027】
すなわち、電子機器2の位置検出センサ上で、電子ペン1の芯体105により位置指示されると、電子ペン本体部10の芯体105と電子機器2の位置検出センサとの静電容量結合によるインタラクションを通じて、芯体105から送出される位置検出用信号が、電子機器2の位置検出センサで受信され、後述するようにして、電子機器2で電子ペン本体部10の芯体105による指示位置(位置検出センサ上の位置座標)が検出される。
【0028】
制御部103は、また、この例では、筆圧検出部104で検出された筆圧値に応じた筆圧情報を生成し、信号発生回路102に供給する。信号発生回路102は、筆圧情報を、位置検出用信号と、例えば時分割多重方式、周波数多重方式、あるいは、その他の信号多重方式により、芯体105に供給して、電子機器2に供給するように構成されている。なお、信号発生回路102は、位置検出用信号をバースト信号として送出すると共に、筆圧情報をデジタル情報として、それをOOK(On-Off Keying)信号やASK(Amplitude Shift Keying)信号に変調して送出するように構成してもよい。
【0029】
<ピックアップ部11の構成例>
図3は、この実施形態のピックアップ部11の構成例を示す図である。図3は、ピックアップ部11の後端部側を下向きに示したもので、図3(A)は、ピックアップ部11の後端部が閉塞されずにフリーの状態であるときを示しており、図3(B)は、ピックアップ部11の後端部が任意の平面部FLに対して押し付けられて、ピックアップ部11の後端部の開口が閉塞された状態であるときを示している。
【0030】
図3(A)及び(B)に示すように、ピックアップ部11は、筒状の筐体112の電子ペン本体部10との結合側の開口部112a側に、この例ではUSBコネクタプラグ111を備える。ピックアップ部11の筐体112の中空部内の、軸心方向において、電子ペン本体部10との結合側とは反対側の後端部の開口部112bには、レンズ113が配設されている。このレンズ113の内側には、このレンズ113をも構成要素として含む色検出構成部が配設されている。さらに、ピックアップ部11の筐体112の中空部内には、プリント基板114に配設されたUSBインターフェース115と、制御部116と、電源回路117と、無線通信部118と、メモリ119とが配設されている。
【0031】
無線通信部118は、この例では、近距離無線通信方式、例えばブルートゥース(登録商標)規格の無線通信部により構成されている。無線通信部118は、このような電波による無線通信手段に限られるものではなく、例えば、赤外線などを用いた光通信手段を用いることもできる。
【0032】
USBインターフェース115は、電子ペン本体部10とピックアップ部11とがUSB接続されているときには、電子ペン本体部10のバッテリーBTからの電源電圧を電源回路117に供給する。電源回路117は、ピックアップ部11の各部用の電源電圧を生成し、制御部116、無線通信部118、メモリ119の各部に電源電圧を供給すると共に、色検出構成部を構成する、発光素子121、受光部122、色検出回路123、押圧検出スイッチ124に電源電圧を供給する。
【0033】
制御部116は、後述するようにして色検出構成部でピックアップされて生成された色の情報を、メモリ119に記憶すると共に、無線通信部118を通じて、電子機器2に送信する制御を行う。また、制御部116は、色検出構成部により色ピックアップの動作を制御する機能も備える。
【0034】
色検出構成部は、この例では、レンズ113の他、発光素子121の例としてのLED(Light Emitting Diode)と、受光部122と、色検出回路123と、押圧検出スイッチ124と、ホルダー部125とを備えて構成されている。
【0035】
図3(A)及び(B)に示すように、受光部122と色検出回路123とは、ユニット化されてケース126内に収納されており、当該ケース126がレンズ113の後側に、当該レンズ113と一緒に移動可能の状態で配設されている。この場合に、ケース126は、受光部122が、レンズ113で集光された光を受光できるような状態で、レンズ113の後ろ側に配設されている。
【0036】
受光部122は、この例では、図4に示すように、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれのみを透過する光フィルタFr,Fg,Fbと、当該光フィルタFr,Fg,Fbのそれぞれを透過した赤色光、緑色光、青色光のそれぞれを受光するフォトトランジスタPTr,PTg,PTbとからなる。そして、フォトトランジスタPTr,PTg,PTbの受光出力信号が、色検出回路123に供給される。
【0037】
色検出回路123は、受光部122のフォトトランジスタPTr,PTg,PTbそれぞれからの、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの受光レベルに応じた受光出力信号から色の情報を生成する。例えば、色検出回路123は、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの受光出力信号を、それぞれの信号レベルに応じた複数ビット、例えばそれぞれ8ビットのデジタル信号Dr,Dg,Dbに変換する。また、受光出力信号から明るさを示す明度の情報(輝度情報)も例えば8ビットのデジタル信号Yとして生成して、デジタル信号Dr,Dg,Dbと共に、色の情報として構成する。この実施形態では、色検出回路123は、デジタル信号Dr,Dg,Db及びYから数式変換して求められるL*a*b*表色系の色の情報を生成する。
【0038】
なお、色検出回路123で生成する色の情報としては、L*a*b*表色系の色の情報に限られる訳ではなく、赤色光、緑色光、青色光の3原色を用いたRGB表色系の色情報としてもよいし、L*u*v*表色系や、その他の表色系の色情報を用いるようにしてもよい。
【0039】
ホルダー部125は、図3に示すように、ピックアップ部11の筐体112の中空部内の後端部側において、軸心方向に移動不可の状態で配設されている。このホルダー部125の中央部には、レンズ113側を開口とする凹部125aが設けられており、その凹部125aの底部には、押圧検出スイッチ124が配設されている。
【0040】
この押圧検出スイッチ124は押圧子124aを備えており、この押圧子124aが押圧されていないときには、押圧検出スイッチ124はオフの状態、押圧子124aが押圧されたときには、オンの状態となるように構成されている。そして、この実施形態では、押圧検出スイッチ124は、その押圧子124aがレンズ113側に突出する状態で、ホルダー部125の凹部125aに配設されている。この押圧検出スイッチ124は、制御部116に接続されており、制御部116は、当該押圧検出スイッチ124のスイッチ状態を監視する機能を備えている。
【0041】
そして、受光部122及び色検出回路123を収納してレンズ113の後側に取り付けられているケース126が、この押圧検出スイッチ124の押圧子124aに対向する状態で設けられている。この場合に、ケース126は、ホルダー部125の凹部125aの内径よりも小さいものとされており、このため、ケース126は、押圧子124aを押圧する方向に移動可能となる。
【0042】
ホルダー部125の凹部125aのレンズ113側の開口の周囲には、この例では複数個の発光素子(LED)121が配置されている。この複数個の発光素子121は、制御部116からの制御信号により、その点灯、消灯が制御されるように構成されている。
【0043】
この例の場合、複数個の発光素子121は、例えばホルダー部125の凹部125aのレンズ113側の開口の周囲に等間隔で配設されている。発光素子121は、色をピックアップするためには1個でもよいが、この例のように構成することで、図3(B)に示すように、ピックアップ部11が、平面部FLに押られたときに、その発光光が、レンズ113を通して平面部FLに照射されて、その平面部FLから反射される光がレンズ113を通じて受光部122の受光面に一様に入射することができるようにされる。
【0044】
そして、この実施形態では、ホルダー部125のレンズ113側の端面と、レンズ113の後側の面との間には、レンズ113を、常に、筐体112の開口部112b側に偏倚させるようにする弾性部材、この例では、コイルバネ127が、図3及び図4に示すように配設されている。
【0045】
したがって、ピックアップ部11は、レンズ113側に押圧力が加わっていない通常の状態では、図3(A)に示すように、コイルバネ127の弾性力によりレンズ113が筐体112の開口部112bの段部112cに押し付けられて、筐体112の開口部112bがレンズ113で閉塞される状態とされる。
【0046】
そして、ピックアップ部11のレンズ113側が、図3(B)に示すように、平面部FLに対して押し当てられたときには、レンズ113は、コイルバネ127の弾性力に抗して、レンズ113がピックアップ部11の筐体112の内部に押し込まれる。すると、このレンズ113のピックアップ部11の筐体112の内部への摺動移動に伴い、ケース126が軸心方向に移動して、押圧検出スイッチ124の押圧子124aを押下する。これにより、押圧検出スイッチ124は、オフ状態からオン状態に状態変化する。
【0047】
ピックアップ部11の制御部116は、押圧検出スイッチ124がオン状態に変化したことを検出して、ピックアップ部11の後端部が平面部FLに押し付けられたことを検知する。そして、制御部116は、この押圧検出スイッチ124のオン状態の検出に基づいて、複数個の発光素子121の全てを、消灯状体から点灯状態に制御する。
【0048】
この場合に、ピックアップ部11の軸心方向が平面部FLに対して垂直の状態で、ピックアップ部11の後端部を平面部FLに押し当てたときには、ピックアップ部11のレンズ113側の開口部112bの円周状先端部が、平面部FLと密着して、ピックアップ部11の開口部112bへの外光の進入が遮断される。したがって、複数個の発光素子121の発光光のみが、ピックアップ部11の後端部の開口部112bから平面部FLに、レンズ113を通じて照射される。つまり、ピックアップ部11の後端部の開口部112bに対応する平面部FLの部位に対して複数個の発光素子121の発光光が照射される。これにより、当該平面部FLの部位からは、当該部位の色に応じた反射光が、レンズ113を通じて受光部122に入射される。
【0049】
なお、ピックアップ部11の筐体112を、弾性変形が可能な樹脂やゴムなどの弾性体で構成しておくことにより、ピックアップ部11の後端部を平面部FLに押し当てたときには、ピックアップ部11のレンズ113側の開口部112bの円周状先端部と、平面部FLとの密着度を上げることができる。あるいは、レンズ113の外周部に嵌合すると共に、レンズ113よりも、筐体112の軸心方向に沿う方向に突出する弾性体リングを、開口部112bに設けておくようにしてもよい。
【0050】
受光部122では、前述したようにして、この例では、その入射光を赤色光成分と、緑色光成分と、青色光成分とに分けて受光し、それぞれの成分の受光レベルに応じた受光出力を色検出回路123に出力される。色検出回路123は、この受光部122からの受光出力から、前述したように、L*a*b*表色系の色の情報を生成する。この色検出回路123で生成された色の情報は、制御部116の制御により、メモリ119に記憶される。そして、制御部116は、メモリ119に記憶した色の情報を、無線通信部118を通じて、電子機器2に送信する。制御部116は、電子機器2との無線通信部118を通じた通信により、色の情報の送信の完了(電子機器2での受信の完了)を確認したら、送信を停止し、メモリ119に記憶されている色の情報を消去する。
【0051】
なお、ピックアップ部11の後端部を平面部FLに押し当てて、押し当てた部位の色をピックアップするとき、できるだけ、ピックアップ部11の開口部112bへの外光の進入を遮断するようにすることが、正確な色のピックアップをする上で好ましい。しかし、ピックアップ部11の後端部を平面部FLに押し当てたときに、軸心方向が平面部FLに対して垂直の状態から若干ずれて、外光が若干、ピックアップ部11の開口部112aから進入したとしても構わない。後述するように、色の情報を用いた認証を行う際に、登録されている色の情報(認証参照用情報)と、ピックアップされた色の情報(被認証用情報)との照合による一致検出により、認証の可否を判断するが、当該一致していると判断する閾値を変更することで、少しくらい異なっていても、両者の色の情報が一致していると判断するようにすることができるからである。
【0052】
<電子機器2の構成例>
電子機器2は、図5に示すように、この例では、電子ペン本体部10と静電結合によりインタラクションして、電子ペン本体部10のペン先部10aにより指示された位置指示入力を検出するための位置検出センサ210を含む位置検出処理部21と、種々の情報処理を行う情報処理部20とを備える。
【0053】
電子機器2の位置検出処理部21では、位置検出センサ210を通じて電子ペン本体部10からの位置検出用信号を受け、電子ペン本体部10のペン先部10aにより指示された位置検出センサ210上の位置を検出する。
【0054】
位置検出センサ210は、第1の導体群と第2の導体群とが絶縁層を介して積層されて形成されたものである。第1の導体群は、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体211Y、211Y、…、211Y(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。また、第2の導体群は、第1の導体211Y、211Y、…、211Yの延在方向に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体212X、212X、…、212X(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0055】
位置検出センサ210と、位置検出処理部21の位置検出制御回路227との間には、入出力インターフェースとされる選択回路221が設けられている。選択回路221は、位置検出制御回路227からの制御信号に基づいて、第1の導体群および第2の導体群の中から、この例では、それぞれ1本の導体を選択するように制御される。
【0056】
位置検出制御回路227からの制御信号により選択回路221で選択された位置検出センサ210の導体から、電子ペン1からの送信信号が位置検出処理部21に入力される。位置検出処理部21においては、電子ペン1からの正弦波信号の変調信号からなる送信信号は、増幅回路222により増幅され、バンドパスフィルタ223に供給されて、正弦波信号の周波数成分のみが抽出される。
【0057】
バンドパスフィルタ223の出力信号は検波回路224によって検波され、その検波出力信号はサンプルホールド回路225で、位置検出制御回路227からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路226によってデジタル値に変換される。AD変換回路226からのデジタルデータは位置検出制御回路227に供給される。位置検出制御回路227は、このデジタルデータから、電子ペン1によって指示された位置検出センサ210上の位置座標を算出する。
【0058】
また、電子ペン1からは、位置検出用信号とは時分割の状態で、筆圧検出部104で検出された筆圧情報が位置検出センサ210に送信される。位置検出処理部21の位置検出制御回路227は、この筆圧情報から筆圧値を検出する。そして、位置検出制御回路227は、検出した電子ペン1によって指示された位置検出センサ210上の位置座標と、筆圧値の情報を、情報処理部20の情報処理制御部200に供給する。
【0059】
情報処理部20は、この例では、情報処理制御部200に対して、1~複数個のアプリケーションプログラムを記憶するアプリ記憶部201と、電子ペン1により位置検出センサ210で入力された文字、記号、数字等からなる文書のファイルやフォルダ、電子ペン1により位置検出センサ210上で描画された図形や絵画などの描画情報のファイルやフォルダを記憶するデータ記憶部202と、表示部203と、無線通信部204と、認証参照用情報記憶部205と、筆記色情報記憶部206とが接続されて構成されている。
【0060】
表示部203は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)で構成されている。無線通信部204は、電子ペン1のピックアップ部11の無線通信部118と通信可能なもので構成され、この例では、ブルートゥース(登録商標)規格の無線通信部により構成されている。
【0061】
認証参照用情報記憶部205には、後述するように、予め、色の情報が認証対象と対応付けられた認証参照用情報が記憶されていると共に、認証要求があった時に、電子ペン1から送られてくる色の情報を、認証参照用情報と比較参照するために記憶するバッファエリアが設けられている。ここで、認証参照用情報とは、予め登録されていて、認証処理を行う際に、認証すべき情報と比較して一致するか否かを判別するために参照する情報のことを言う。
【0062】
筆記色情報記憶部206には、電子ペン1により電子機器2の位置検出センサ210での筆記入力がなされたときに、その筆記色の情報を記憶する。この実施形態では、後述するように、電子ペン1から送られてくる色の情報を、筆記色の情報として記憶する。
【0063】
そして、情報処理制御部200は、この例では、IC(Integrated Circuit;集積回路)からなるマイクロプロセッサで構成されている。情報処理制御部200は、この実施形態では、認証参照用情報の登録処理部2001と、認証可否判断部2002と、表示制御部2003との機能部、その他の機能部を備えており、アプリ記憶部201に記憶されているアプリケーションプログラムを用いて各機能部を実行するように構成されている。
【0064】
登録処理部2001は、アプリ記憶部201の内、認証が取れたときにのみ利用可能とする認証処理が必要なアプリケーションプログラムを指定して、その認証処理のための認証参照用情報を登録して、認証参照用情報記憶部205に格納する処理を行う。認証参照用情報は、この例では、前述した色の情報を用いる。
【0065】
認証可否判断部2002は、登録した認証参照用情報と、電子ペン1から送られてくる色の情報とを比較して、認証の可否を判断する処理を行う。登録した認証参照用情報の色の情報と、電子ペン1から送られてくる被認証用情報の色の情報との一致度が所定の閾値以上であるときには、認証が取れた(認証OK)と判断し、一致度が所定の閾値に満たないときには、認証ができなかった(認証NG)と判断する。
【0066】
この場合に、登録した認証参照用情報の色の情報と、電子ペン1から送られてくる被認証用情報の色の情報との一致度の判定は、2つの色の情報の差分を算出し、その差分が閾値以下であれば、認証OKとし、差分が閾値を超えているときには、認証NGであるとする。色は検出する時間・場所・気温等の外部環境やピックアップ部11の使用状況により若干変化する場合があることを考慮して、この閾値の値は定められる。
【0067】
また、それぞれの色の情報のピックアップに当たって、常に、同じ物から色を採取するとは限らない。例えば、ある場所の、ある物の平面部の白色部分を、“白”として使用者が認識してピックアップ部11でピックアップして認証参照用情報として登録していた場合に、被認証用情報としての“白”を、他の場所あるいは別の物の平面部の白色部分からピックアップ部11でピックアップした場合、両者は、全く同じ“白”とは限らない。そのため、閾値は、物理的一致ではなく、所定の類似範囲であれば、一致と判定することができるように定められる。
【0068】
閾値の設定は、セキュリティの強弱にも用いることができる。すなわち、セキュリティを厳格に(強く)するには、閾値は、登録した認証参照用情報の色の情報と被認証用情報の色の情報との差分が0~微小値の間の値に選定し、セキュリティを比較的弱くする場合には、閾値は、前記差分がある程度大きな値に選定される。すなわち、色の一致度の幅が狭い場合は、完全な一致に近い色しか認められないとして、セキュリティの強い・強固なシステムとすることができる。一方、色の一致度の幅が広い場合は、セキュリティが弱いシステムとすることができる。
【0069】
情報処理制御部200は、この認証可否判断部2002の認証判断結果に基づいて、認証参照用情報に対応付けられている認証対象としての制御動作、すなわち、アプリケーションプログラムを起動するか否かの制御をしたり、ファイルやフォルダの開封してデータの利用を許可するか否かの制御を行ったりするようにする。
【0070】
表示制御部2003は、各アプリケーションプログラムの表示機能を実行して、表示部203の表示画面203D(図1参照)に、表示画像を表示するように制御する。
【0071】
そして、この実施形態においては、電子ペン1による電子機器2の位置検出センサ210上での筆記入力については、筆記色情報記憶部206に記憶されている色の情報を用いて電子ペン1のペン先の筆記跡をカラー表示する。後述するように、この実施形態では、電子機器2に対して、使用者が筆記色の登録の要求をして、電子ペン1のピックアップ部11を用いて色のピックアップ動作をして、色の情報を電子機器2に送信することができるように構成されている。電子機器2は、筆記色の登録の要求に応じて、電子ペン1のピックアップ部11から受信した色の情報を筆記色情報記憶部206に記憶して、その後の、電子ペン1による位置検出センサ210上での筆記入力についての表示色として用いるように構成されている。
【0072】
[電子ペン1と、電子機器2とによる認証及び筆記色に関する処理動作]
次に、電子ペン1と、電子機器2とによる認証に関する処理動作の流れと、電子ペン1による位置検出センサ210上での筆記入力の表示色(筆記色)に関する処理動作の流れの例について説明する。
【0073】
<電子ペン1のピックアップ部11による色の情報のピックアップ動作の説明>
まず、図6のフローチャートを参照しながら、電子ペン1のピックアップ部11における色の情報の取得動作の流れの例について説明する。なお、図6の各ステップの動作は、ピックアップ部11の制御部116が実行するものとして説明する。
【0074】
色の情報のピックアップに当たっては、使用者は、電子ペン1を、図5の中央上部に示したように、ペン先部10a側を上側にした状態で、ピックアップ部11の後端側を、白色、赤色、緑色、青色など、自分がピックアップしたい色を呈している平面部FLの部分に押し付けるようにする。このとき、使用者は、電子ペン1の筐体101の軸心方向が平面部FLにして垂直の状態になるように、ピックアップ部11の後端側を平面部FLに押し付ける。
【0075】
すると、電子ペン1のピックアップ部11では、図3(B)に示したように、ピックアップ部11の後端部のレンズ113が、コイルバネ127の弾性力に抗して内部に押し込まれ、ピックアップ部11の筐体112の後端部の開口部112bの端面が平面部FLに押し付けられて、開口部112b内に、外光が入り込まない状態とされる。そして、レンズ113が、コイルバネ127の弾性力に抗して内部に押し込まれることに伴い、押圧検出スイッチ124がオフ状態からオン状態に変化して、ピックアップ部11による色の情報のピックアップ動作が起動される。
【0076】
すなわち、図6に示すように、電子ペン1のピックアップ部11の制御部116は、押圧検出スイッチ124がオン状態に変化したか否か監視する(ステップS1)。そして、このステップS1で、押圧検出スイッチ124がオン状態に変化したと判別したときには、制御部116は、電源回路117からピックアップ部11内の全ての回路部へ電源電圧を供給するように制御し(ステップS2)、複数個のLED121を全て点灯させると共に、受光部122及び色検出回路123を動作可能の状態にする(ステップS3)。
【0077】
すると、前述したように、ピックアップ部11の後端部の開口部112bに対応する平面部FLに対して複数個のLED121からの発光光が照射され、その反射光が、レンズ113を通じて受光部122で受光される。前述したように、この実施形態では、受光部122では、反射光を、赤色光成分と、緑色光成分と、青色光成分とに分けて受光し、それぞれの成分の受光レベルに応じた受光出力を色検出回路123に出力する。色検出回路123では、受光部122からの受光出力から、この実施形態では、L*a*b*表色系の色の情報を生成する。
【0078】
そこで、ステップS3の次には、制御部116は、色検出回路123で生成された色の情報を取り込んで(ステップS4)、一時、メモリ119に保持する(ステップS5)。そして、制御部116は、メモリ119に一時保持した色の情報を、無線通信部118を通じて電子機器2に送信する(ステップS6)。
【0079】
使用者は、所定時間、例えば数秒~数十秒の間、ピックアップ部11を平面部FLに押し当てる動作をしたら、当該ピックアップ部11を平面部FLに押し当てる動作を解除する。このときの所定時間は、ピックアップ部11で平面部FLから色の情報をピックアップして、電子機器2に送信することができる程度の時間であり、例えば数秒以上とされる。なお、ピックアップ部11の筐体112に、使用者が発光素子121の点灯、非点灯を確認することができるように、状態報知用表示素子例えばLED(Light Emitting Diode)を設けておき、無線通信部118からの色の情報の送信を完了したら、その状態報知用発光素子を点灯させるようにしてもよい。
【0080】
使用者が、電子ペン1のピックアップ部11を平面部FLに押し当てる動作を解除すると、押圧検出スイッチ124はオン状態からオフ状態に変化する。
【0081】
電子ペン1のピックアップ部11の制御部116は、この押圧検出スイッチ124がオン状態からオフ状態に変化するのを監視し(ステップS7)、押圧検出スイッチ124がオン状態からオフ状態に変化したことを判別したときには、メモリ119に記憶していた色の情報は消去し(ステップS8)、電源回路117から各回路への電源電圧の供給状態をスタンバイ状態に戻す(ステップS9)。そして、制御部116は、このステップS9の次には、処理をステップS1に戻し、このステップS1以降の処理を繰り返す。
【0082】
なお、ステップS8におけるメモリ119に記憶されている色の情報の消去は、メモリ119を揮発性メモリで構成すると共に、当該メモリに供給されている電源回路117からの電源電圧の供給を停止するようにすればよい。メモリ119を不揮発性メモリで構成する場合には、制御部116が、色の情報の消去を行うことは言うまでもない。
【0083】
<電子機器2における動作の例>
次に、上述のようにして、電子ペン1のピックアップ部11でピックアップした色の情報を、電子機器2において認証用情報として用いて認証対象について認証を行う動作の例と、筆記色として用いて表示画面に表示する動作について説明する。
【0084】
この実施形態の電子機器2においては、使用者は、色の情報を用いて認証したい対象毎に、認証用として用いる色の情報を予め登録する。登録した色の情報は、認証対象についての認証の可否を判断する場合の認証参照用情報となる。
【0085】
例えば、図7に示すように、アプリケーションプログラムA,B,Cのそれぞれの起動を認証対象として登録すると共に、それぞれの認証対象について別々の色の情報Ca,Cb,Ccを登録し、また、ファイルD,EやフォルダFのそれぞれの開封を認証対象として登録すると共に、それぞれの認証対象について、それぞれ別々の色の情報Cd,Ce,Cfを登録するようにする。図7の例の認証対象と認証参照用情報との対応情報(対応テーブル情報)は、図5に示した認証参照用情報記憶部205に格納されて保持される。
【0086】
認証対象は、図7に示した例に限られるものではないことは言うまでもない。例えば、電子機器2の電源立ち上げ時の動作起動を認証対象として、色の情報による認証がOKになったときに、当該電子機器2の動作を起動させることができるようにしてもよい。
【0087】
なお、図7の例では、認証参照用情報として登録される色の情報は、認証対象毎に異なるものとして示したが、認証対象が異なっても同じ色をピックアップして得た色の情報を用いても良いことは言うまでもない。
【0088】
こうして認証対象についての認証参照用情報の登録が終了すると、電子機器2においては、認証対象についてのセキュリティ機能の実行が開始可能となる。このセキュリティ機能の認証においては、電子機器2は、認証対象を特定し、その特定した認証対象と対応付けられて認証参照用情報記憶部205に記憶されている認証参照用情報である色の情報と、当該認証時(セキュリティ機能の実行時)に電子ペン1のピックアップ部11から送られてくる被認証用情報としての色の情報とを比較照合し、その比較照合結果に基づいて認証の可否を判断する。そして、認証がOKとなった時にのみ、認証対象がアプリケーションプログラムの場合には、その起動が可能となり、認証対象がファイルやフォルダの場合には、それを開いてデータの利用をすることが可能となる。また、認証対象が、例えば電子機器2の電源立ち上げ時の動作起動である場合には、色の情報による認証がOKになったときに、当該電子機器2が動作開始可能となる。
【0089】
セキュリティ機能(認証)の実行の際には、使用者は、電子ペン1のピックアップ部11で、認証参照用情報と比較して認証の可否を判断させるための被認証用情報としての色の情報をピックアップする操作をする。電子ペン1のピックアップ部11は、使用者によるこの操作を受けて、色の情報をピックアップし、電子機器2に送信する。すると、電子機器2では、セキュリティのための認証処理を実行して、認証の可否を判断し、その判断結果に応じて、認証対象の利用の可否を決定する。
【0090】
また、この実施形態の電子機器2は、筆記色の登録ができる機能を有するように構成されている。すなわち、筆記色の登録時には、電子ペン1のピックアップ部11でピックアップされて無線送信されてくる色の情報を取得して筆記色情報記憶部206に保持する。そして、電子ペン1による位置検出センサ210上での筆記入力による筆記跡を、筆記色情報記憶部206に記憶されている色の情報を用いて表示部203の表示画面にカラー表示するようにする。なお、この場合の筆記入力による筆記跡としては、文字や図形のような線画のみではなく、電子ペン1のペン先の種別を電子機器2で指定できるようにしてある場合において、絵画用の絵筆やブラシのようなものによる描画跡をも含むものである。
【0091】
以上説明した電子機器2における動作の流れの例を、図8図10のフローチャートを参照して説明する。なお、図8図10の各ステップの処理は、電子機器2の情報処理制御部200が実行するものとして説明する。
【0092】
情報処理制御部200は、先ず、使用者の入力操作に基づく何らかの処理イベントが発生したか否か判別する(ステップS11)。このステップS11で、何らかの処理イベントが発生したと判別したときには、情報処理制御部200は、まず、その処理イベントは、「認証用登録」であるか否か判別する(ステップS12)。
【0093】
このステップS12で、「認証用登録」であると判別したときには、情報処理制御部200は、ステップS11での処理イベントの発生状況に基づいて認証対象を特定する(ステップS13)。このステップS13では、ステップS11で判別された処理イベントが、例えば、当該処理イベントで指定された、あるいは、その時に実行中のアプリケーションプログラムの起動のための認証参照用情報の登録を意味する指示を含む場合には、認証対象はアプリケーションプログラムの起動とされる。また、処理イベントが、ファイルやフォルダの開封のための認証参照用情報の登録を意味する指示を含む場合には、認証対象はファイルやフォルダの開封となる。
【0094】
次に、情報処理制御部200は、ステップS13で特定した認証対象の情報を保持すると共に、使用者に対して、認証参照用情報としての色の情報のピックアップを促す(ステップS14)。
【0095】
このステップS14での促しに応じた使用者は、図6を用いて説明したように、電子ペン1のピックアップ部11の後端側を、自分が認証参照用情報として用いたい色を呈している平面部FLに押し当てる動作をする。すると、前述したようにして、電子ペン1のピックアップ部11からは、色の情報が無線送信されてくるので、電子機器2では、その色の情報を、無線通信部204を通じて受信する。
【0096】
電子機器2の情報処理制御部200は、ステップS14で色の情報のピックアップを促した後には、この促しに応じた使用者によりピックアップされた色の情報の受信を待つ(ステップS15)。このステップS15で、色の情報の受信を確認したと判別したときには、情報処理制御部200は、ステップS13で特定した認証対象の情報と、受信した色の情報とを、図7に示したように対応付けたテーブル情報として、認証参照用情報記憶部205に記憶する(ステップS16)。そして、情報処理制御部200は、処理をステップS11に戻して、このステップS11以降の処理を繰り返す。
【0097】
ステップS12で、発生した処理イベントは「認証用登録」ではないと判別したときには、情報処理制御部200は、発生した処理イベントは、「認証」を要求しているか否か判別する(ステップS17)。このステップS17では、ステップS11で判別された処理イベントが、認証参照用情報記憶部205に記憶されている認証対象に関するものであって認証を必要とするものであるか否かを判別する。
【0098】
このステップS17で、「認証」が要求されていると判別したときには、情報処理制御部200は、ステップS11で発生した処理イベントと、認証参照用情報記憶部205の記憶情報に基づいて、認証対象を特定する(図9のステップS21)。
【0099】
そして、情報処理制御部200は、特定した認証対象の情報を保持すると共に、使用者に対して、認証を実行するための被認証用情報としての色の情報のピックアップを促す(ステップS22)。
【0100】
このステップS22での促しに応じた使用者は、図6を用いて説明したように、電子ペン1のピックアップ部11の後端側を、自分が指定した認証対象に対して登録した色の情報と同一色の情報を取得すべく、当該登録した色と同一色を呈している平面部FLに押し当てる動作をする。すると、前述したようにして、電子ペン1のピックアップ部11からは、色の情報が無線送信してくるので、電子機器2では、その色の情報を被認証用情報として、無線通信部204を通じて受信する。
【0101】
すなわち、電子機器2の情報処理制御部200は、ステップS22で色の情報のピックアップを促した後には、この促しに応じた使用者によりピックアップされた色の情報の受信を待つ(ステップS23)。このステップS23で、色の情報の受信を確認したと判別したときには、情報処理制御部200は、ステップS23で受信した被認証用情報としての色の情報と、認証参照用情報記憶部205に記憶されている、ステップS21で特定した認証対象と対応付けられて記憶されている認証参照用情報の色の情報とを照合して(ステップS24)、認証がOKであるか否かを判別する(ステップS25)。
【0102】
ステップS24及びステップS25では、認証参照用情報記憶部205に記憶されている色の情報と、ステップS23で受信した色の情報とが一致しているかどうかにより、認証の可否を判断する。すなわち、前述したように、認証参照用情報の色情報と、被認証用情報の色の情報との差分を演算し、その差分が、閾値以下であれば、認証OKと判定し、差分が閾値を超えているときには、認証NGであると判定する。
【0103】
このステップS25で、認証OKではなく、認証がNGであると判別したときには、情報処理制御部200は、認証NGを表示部203の表示画面に表示すると共にアラーム音を放音するなどして使用者に報知する(ステップS26)。そして、このステップS26の次には、情報処理制御部200は、認証のやり直しをするか否かの問い合わせをして、使用者からの回答を判別する(ステップS27)。このステップS27で、やり直しをするという回答を得たと判別したときには、情報処理制御部200は、処理をステップS22に戻し、このステップS22以降の処理を繰り返す。また、ステップS27で、やり直しはしないとの回答を得たと判別したときには、情報処理制御部200は、処理を、図8のステップS11に戻し、このステップS11以降の処理を繰り返す。
【0104】
また、ステップS25で、認証OKであると判別したときには、情報処理制御部200は、セキュリティの保護を解除して、認証対象を許可する(ステップS28)。ステップS28で許可されるのは、認証対象であるアプリケーションプログラムの起動や、認証対象であるファイルやフォルダの開封である。そして、情報処理制御部200は、処理を、図8のステップS11に戻し、このステップS11以降の処理を繰り返す。
【0105】
次に、図8のステップS17で、処理イベントは、「認証」を要求してはいないと判別したときには、情報処理制御部200は、処理イベントは、「筆記色の登録」であるか否か判別する(図10のステップS31)。このステップS31での判別は、ステップS11で発生した処理イベントが、例えば、使用者が、例えば電子ペン1を用いて電子機器2の位置検出センサ210上での筆記入力をしている際に、電子機器2の表示画面に表示されている「筆記色の登録」のアイコンをクリックしたことに基づく処理イベントか否かによりなされる。
【0106】
このステップS31で、「筆記色の登録」ではないと判別したときには、情報処理制御部200は、処理イベントについてのその他の処理を実行し(ステップS32)、その後、処理を図8のステップS11に戻し、このステップS11以降の処理を繰り返す。
【0107】
ステップS31で、処理イベントが「筆記色の登録」であると判別したときには、情報処理制御部200は、使用者に対して、筆記色情報としての色の情報のピックアップを促す(ステップS33)。
【0108】
このステップS33での促しに応じた使用者は、図6を用いて説明したように、電子ペン1のピックアップ部11の後端側を、自分が認証参照用情報として用いたい色を呈している平面部FLに押し当てる動作をする。すると、前述したようにして、電子ペン1のピックアップ部11からは、色の情報が無線送信されてくるので、電子機器2では、その色の情報を、無線通信部204を通じて受信する。
【0109】
電子機器2の情報処理制御部200は、ステップS33で色の情報のピックアップを促した後には、この促しに応じた使用者によりピックアップされた色の情報の受信を監視し(ステップS34)、色の情報を受信したと判別したときには、受信した色の情報を、筆記色情報として、筆記色情報記憶部206に記憶する(ステップS35)。
【0110】
この実施形態では、このステップS35で、筆記色情報を筆記色情報記憶部206に記憶した後には、電子機器2においては、電子ペン1からの筆記入力を位置検出センサ210を通じて受け付けることが可能に構成されている。そこで、使用者は、電子ペン1を、図5の中央に示した、ピックアップ部11の後端部を平面部FLに押し当てた状態から、その左側に示すように、ペン先を、電子機器2の位置検出センサ210の入力領域上に近接あるいは接触させて、筆記入力を行うような状態に変化させる。
【0111】
情報処理制御部200は、ステップS35の次には、位置検出センサ210を通じて電子ペン1から、所定レベル以上の信号を受信したか否かにより、電子ペン1による筆記入力を検出したか否か判別して(ステップS36)、筆記入力を監視する。そして、ステップS36で筆記入力を検出したと判別したときには、情報処理制御部200は、検出した筆記入力の軌跡の座標情報を記憶し(ステップS37)、筆記色情報記憶部206に記憶されている色の情報(筆記色情報)を用いて、筆記入力の軌跡を、表示部203の表示画面にカラー表示する(ステップS38)。
【0112】
次に、情報処理制御部200は、使用者により筆記色の変更要求がなされたか否か判別し(ステップS39)、筆記色の変更要求がなされたと判別したときには、処理をステップS33に戻し、このステップS33以降の処理を繰り返す。また、ステップS39で、使用者により筆記色の変更要求はなされていないと判別したときには、情報処理制御部200は、筆記入力が終了したか否か判別し(ステップS40)、終了していないと判別したときには、処理をステップS36に戻して、このステップS36以降の処理を繰り返す。また、ステップS40で、筆記入力が終了したと判別したときには、情報処理制御部200は、筆記色情報記憶部206に記憶されている筆記色の色の情報を消去し(ステップS41)、その後、処理を図8のステップS11に戻し、このステップS11以降の処理を繰り返す。
【0113】
以上のようにして、上述の第1の実施形態の電子ペンによれば、電子ペン本体部10に結合されたピックアップ部11でピックアップした色の情報を用いて、認証対象についての認証を行うことができる。この場合に、使用者は、電子ペン本体部10の後端側に結合されているピックアップ部11の後端部を、認証に用いたい色を呈している平面部に押し付ける操作をするだけでよいので、使い勝手が良い。
【0114】
そして、認証のためにピックアップ部11でピックアップした色の情報を用いるので、使用者は認証に用いる色を記憶しておけばよい。このため、複数桁の番号や記号等を認証に用いる場合に比べて、認証のための情報を失念してしまう恐れを軽減することができる。また、使用者は、認証のための情報の入力操作としては、認証に用いた色を呈している平面部にピックアップ部11の後端部を押し当てる動作をするだけで良いため、複数桁の番号や記号等を入力する場合のような入力操作ミスが生じ難く、入力操作が容易であるというメリットもある。
【0115】
また、上述の第1の実施形態では、電子ペン1による位置検出センサ210における筆記入力の筆記跡の表示色として、ピックアップ部11でピックアップした色の情報を用いることができる。この場合に、筆記跡の表示色は、ピックアップ部11でピックアップした色の情報をそのまま用いることができるので、使用者が意図する色で筆記跡を表すことができて、便利である。なお、電子機器2に記憶する筆記入力の座標情報に、筆記色情報記憶部206に記憶した色の情報を対応付けて記憶しておくようにしてもよい。
【0116】
なお、上述の実施形態の説明では、電子ペン1のピックアップ部11から送信される色の情報は、記憶部を変えることで、認証参照用情報としての色の情報、被認証用情報としての色の情報、筆記色情報としての色の情報を区別するようにしたが、認証参照用、被認証用、筆記色用のそれぞれを識別するための指標を、付加情報として付加して、それぞれの色の情報を記憶するようにしても勿論よい。
【0117】
また、上述の第1の実施形態の説明では、ピックアップ部11がピックアップした色の情報の電子機器2への送信は、ピックアップ部11が備える無線通信部118から行うようにした。しかし、ピックアップ部11には無線通信部118を設けずに、電子ペン本体部10に無線通信部を設け、電子ペン本体部10の制御部103が、USBインターフェース107を通じてピックアップ部11から色の情報を取得して、電子ペン本体部10に設けた無線通信部を用いて送信するように構成してもよい。
【0118】
また、ピックアップ部11には無線通信部118を設けずに、電子ペン本体部10の制御部103が、USBインターフェース107を通じてピックアップ部11から色の情報を取得して、芯体105を通じて送出する信号に含めて位置検出センサ210に供給するようにして、電子ペン本体部10と位置検出センサ210との間のインタラクションにより電子機器2に送信するようにしてもよい。
【0119】
また、上述の第1の実施形態の説明では、ピックアップ部11は、電子ペン1の電子ペン本体部10とUSB接続されて、電源電圧を電子ペン本体部10から受けるように構成した。しかし、ピックアップ部11の筐体112内にバッテリー(1次電池でも2次電池でもよい)を設けてもよい。その場合に、ピックアップ部11の無線通信部118を通じて色の情報を電子機器2に送信するようにする構成では、ピックアップ部11と電子ペン本体部10とは、電気的に接続する必要はないので、単に結合することができればよい。そして、ピックアップ部11による色の情報のピックアップ時には、ピックアップ部11を電子ペン本体部10から外して、平面部FLに押し付けてピックアップ動作を行わせるようにすることもできる。
【0120】
[上述の実施形態のピックアップ部の変形例]
なお、上述の実施形態のピックアップ部では、ピックアップ部の後端部を平面部に押し当てたときにレンズが押し込まれて移動する構成として、このレンズの移動による押圧を押圧検出スイッチが検出することで、ピックアップ部を起動するようにした。しかし、このような構成に限られるものではない。
【0121】
例えば、ピックアップ部の後端部に、レンズの周縁部から、ピックアップ部の軸心方向の外側に突出するように、シリコンゴムなどの弾性体からなるスカート部を設けておき、ピックアップ部の後端部を平面部に押し当てたときにそのスカート部の端部と平面部とが密着することにより、スカート部により囲まれる部分が外光から遮断されるように構成しておくと共に、フォトトランジスタで外光の有無を検出するように構成する。このようにすれば、ピックアップ部の後端部を平面部に押し当てたときに、スカート部により囲まれる部分が外光から遮断されたことがフォトトランジスタで検出することができるので、このフォトトランジスタの検出出力に基づいて、ピックアップ部を起動して、LEDを点灯させるように構成してもよい。
【0122】
また、ピックアップ部の後端部の筐体部分に、平面部との接触を検出する接触センサや、平面部からの押圧力を検知する圧力センサを設けて、それらの接触センサや圧力センサの検知出力に基づいてピックアップ部を起動させて、LEDを点灯させるように構成してもよい。
【0123】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、認証用情報としては、色の情報のみを用いた。第2の実施形態は、認証システムとしての構成は、第1の実施形態において図1を用いて説明した電子ペンと電子機器とからなるものであるが、認証参照用情報を、色の情報のみでなく電子ペンの識別情報(以下ペンID情報という)を用いることにより、セキュリティをより強くすることができるようにした場合である。
【0124】
この第2の実施形態の認証システムは、第1の実施形態の電子ペン1とはペンID情報の記憶部を備える点が異なる電子ペン1Aと、第1の実施形態の電子機器2とは、認証処理に関する処理機能の構成が異なる電子機器2Aとからなる。
【0125】
第2の実施形態の電子ペン1Aは、電子ペン本体部10A(図11参照)と、ピックアップ部11A(図示は省略)とからなる。この第2の実施形態の電子ペン1Aの電子ペン本体部10Aのハードウエア構成は、図11に示すように、第1の実施形態の電子ペン1とは、制御処理内容が制御部103とは異なる制御部103Aを備えると共に、ペンIDメモリ108が、この制御部103Aに対して接続されている点が異なる。ペンIDメモリ108には、それぞれの電子ペン1Aを識別するためのペンID情報が記憶されている。
【0126】
電子ペン本体部10Aのその他の構成は、図5に示した第1の実施形態の電子ペン1の電子ペン本体部10と同様である。なお、図11において、第1の実施形態の電子ペン1の電子ペン本体部10と同一の部分については、同一参照符号を付してある。
【0127】
そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aのピックアップ部11Aは、図示は省略するが、ハードウエア構成としては、制御内容が第1の実施形態の電子ペン1のピックアップ部11の制御部116とは異なる制御部116A(図示は省略)を備える点を除くと、図3及び図4を用いて説明した第1の実施形態の電子ペン1のピックアップ部11と同様の構成を備える。
【0128】
また、第2の実施形態の電子機器2Aのハードウエア構成は、図5に示した第1の実施形態の電子機器2の情報処理制御部200とは制御処理内容が異なる情報処理制御部200A(図示は省略)を備えると共に、第1の実施形態の電子機器2の認証参照用情報記憶部205とは記憶される認証参照用情報が異なる認証参照用情報記憶部205A(図示は省略)を備える。また、筆記色情報記憶部206とは記憶される筆記色情報が異なる筆記色情報記憶部206A(図示は省略)を備える。第2の実施形態の電子機器2Aのその他の構成は、第1の実施形態の電子機器2と同様である。
【0129】
この第2の実施形態においては、電子ペン1Aのピックアップ部11Aは、ピックアップ部11Aの後端部を平面部FLに押し当てて色の情報をピックアップしたときには、第1の実施形態のピックアップ部11と同様にして、色の情報のピックアップの動作をする。しかし、この第2の実施形態のピックアップ部11Aの制御部116Aは、そのピックアップした色の情報は、即座に電子機器2Aに対して送信することはせずに、一時保持すると共に、ペンID情報の取得要求を電子ペン本体部10Aに対してUSBインターフェース115及びUSBコネクタプラグ111を介して送信する。
【0130】
電子ペン1Aの電子ペン本体部10Aの制御部103Aは、USBコネクタジャック106及びUSBインターフェース107を通じてピックアップ部11AからのペンID情報の取得要求を受けると、ペンIDメモリ108から読み出したペンID情報を、USBインターフェース107及びUSBコネクタジャック106を通じてピックアップ部11Aに送信する。
【0131】
この第2の実施形態のピックアップ部11Aの制御部116Aは、電子ペン本体部10AからペンID情報を取得したら、保持している色の情報と、取得したペンID情報とを、無線通信部118を通じて電子機器2に送信するようにする。
【0132】
この第2の実施形態における電子ペン1Aの動作の流れと、電子機器2Aの動作の流れの例について、フローチャートを参照しながら、さらに説明する。
【0133】
<電子ペン1Aのピックアップ部11Aによる色の情報のピックアップ動作の説明>
まず、図12のフローチャートを参照しながら、電子ペン1Aのピックアップ部11Aにおける色の情報の取得動作の流れの例について説明する。なお、図6の各ステップの動作は、ピックアップ部11Aの制御部116A(図示は省略)が実行するものとして説明する。
【0134】
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいても、図12のステップS51~ステップS55までの動作は、図6のステップS1~ステップS5までの動作と同様である。すなわち、使用者が、電子ペン1Aを、ペン先部10a側を上側にした状態で、ピックアップ部11Aの後端側を、自分がピックアップしたい色を呈している平面部FLの部分に押し付けるようにすると、押圧検出スイッチ124がオフ状態からオン状態に変化して(ステップS51)、ピックアップ部11Aの各部に電源が供給され(ステップS52)、LED121が点灯して(ステップS53)、色の情報の取得動作がなされ(ステップS54)、取得された色の情報はメモリ119に一時保持される(ステップS55)。
【0135】
この第2の実施形態の電子ペン1Aのピックアップ部11Aにおいては、ステップS55の次には、制御部116Aは、電子ペン本体部10Aに対してUSBインターフェース115を通じてペンID情報の取得要求を送り、これに応答して電子ペン本体部10Aから送られてくるペンID情報をUSBインターフェース115を通じて取得する(ステップS56)。
【0136】
次に、制御部116Aは、メモリ119に一時保持した色の情報と、電子ペン本体部10Aから取得したペンID情報とを、無線通信部118を通じて電子機器2に送信する(ステップS57)。
【0137】
そして、電子ペン1Aのピックアップ部11Aの制御部116Aは、使用者が電子ペン1Aの後端側を平面部FLに押し付けていた状態を解除することにより押圧検出スイッチ124がオン状態からオフ状態に変化するのを監視し(ステップS58)、押圧検出スイッチ124がオン状態からオフ状態に変化したことを判別したときには、メモリ119に記憶していた色の情報は消去し(ステップS59)、電源回路117から各回路への電源電圧の供給状態をスタンバイ状態に戻す(ステップS60)。そして、制御部116Aは、このステップS60の次には、処理をステップS51に戻し、このステップS51以降の処理を繰り返す。
【0138】
<電子機器2Aにおける動作の例>
この第2の実施形態の電子機器2Aにおいては、認証対象及び認証参照用情報の登録時には、登録した認証対象毎に、登録した色の情報とペンID情報とが、認証対象についての認証の可否を判断するための認証参照用情報となる。
【0139】
すなわち、第2の実施形態においては、例えば、図13に示すように、アプリケーションプログラムA,B,Cのそれぞれの起動を認証対象として登録すると共に、それぞれの認証対象について別々の色の情報Ca,Cb,Ccと、ペンID情報IDa,IDb,IDcとをそれぞれ対応付けて登録する。また、ファイルD,Eのそれぞれ開封を認証対象として登録すると共に、それぞれの認証対象について、それぞれ別々の色の情報Cd,Ceと、ペンID情報IDd,IDeとをそれぞれ対応付けて登録する。
【0140】
図13の例の認証対象と認証参照用情報との対応情報(対応テーブル情報)は、認証参照用情報記憶部205Aに格納されて保持されるのは、第1の実施形態と同様である。図13の例では、色の情報は、認証対象毎に異なるものとして示したが、認証対象が異なっても同じ色をピックアップして得た色の情報を用いてもよいことは言うまでもない。また、ペンID情報は、認証対象毎に異なるものとして示したが、認証対象が異なっても同じペンID情報を用いてもよいし、認証対象の全てについて同一のペンID情報を用いてもよい。
【0141】
そして、この第2の実施形態においては、電子ペン1Aのピックアップ部11Aから電子機器2Aに送信する情報は、ピックアップした色の情報とペンID情報とのペアとするようにする。電子機器2Aでは、筆記色情報記憶部206に、色の情報とペンID情報とのペアの情報を筆記色の情報として記憶する。
【0142】
また、この第2の実施形態では、電子ペン1Aの制御部103Aは、電子ペン本体部10Aの芯体105から送出する信号にはペンID情報を含むように、信号発生回路102を制御する。ペンID情報は、位置検出用信号や、筆圧情報に対して、時分割多重、周波数多重などの多重方式により、芯体105からの信号に含められる。あるいは、上述と同様に、ペンID情報は、デジタル情報として、OOK信号やASK信号などの変調信号としてもよい。
【0143】
そして、電子機器2Aにおいては、情報処理制御部200Aは、電子ペン1Aの電子ペン本体部10Aの芯体105から送信される信号を受信して、当該信号に含まれているペンID情報と、筆記色情報記憶部206に記憶されているペンID情報とを比較して、両者が一致しているときには、電子ペン1Aの電子ペン本体部10Aの芯体のペン先による筆記入力に基づく筆記跡を、筆記色情報記憶部206に記憶されている色の情報を用いてカラー表示する。また、情報処理制御部200Aは、電子ペン1の電子ペン本体部10Aの芯体105からの信号に付加されているペンID情報と、筆記色情報記憶部206に記憶されているペンID情報とが一致しなかったときには、電子ペン1Aの電子ペン本体部10Aの芯体105のペン先による筆記入力に基づく筆記跡は、デフォルトの色、例えば黒色で表示するようにする。これにより、筆記色情報を登録した電子ペン1Aの筆記入力時のみ、その筆記跡を、登録した色でカラー表示することができる。
【0144】
この第2の実施形態の電子機器2Aにおける動作の流れの例を、図14図17のフローチャートを参照して説明する。なお、図14図17の各ステップの処理は、電子機器2Aの情報処理制御部200Aが実行するものとして説明する。
【0145】
図14のステップS71~ステップS74までの処理は、第1の実施形態における図8のステップS11~ステップS14までの処理と同様であるので、ここでは、説明は省略する。この第2の実施形態では、ステップS74での色の情報のピックアップを促す処理の後には、電子ペン1Aのピックアップ部11Aから、色の情報とペンID情報とが送られてくるので、このステップS74以降の処理が、第1の実施形態とは異なる。
【0146】
すなわち、第2の実施形態の電子機器2Aの情報処理制御部200Aは、電子ペン1Aのピックアップ部11Aから送られてくる色の情報とペンID情報との受信を監視し(ステップS75)、色の情報とペンID情報とを受信したと判別したときには、その受信した色の情報とペンID情報とを、ステップS73で受け付けた認証対象の情報に対応付けて、図13に示したように、認証参照用情報記憶部205Aに記憶する(ステップS76)。
【0147】
このステップS76の次には、情報処理制御部200Aは、処理をステップS71に戻して、このステップS71以降の処理を繰り返す。
【0148】
そして、情報処理制御部200Aは、ステップS72で、発生した処理イベントは「認証用登録」ではないと判別したときには、発生した処理イベントは、「認証」を要求しているか否か判別する(ステップS77)。このステップS77で、「認証」が要求されていると判別したときには、情報処理制御部200Aは、ステップS71で発生した処理イベントと、認証参照用情報記憶部205Aの記憶情報に基づいて、認証対象を特定する(図15のステップS81)。
【0149】
そして、情報処理制御部200Aは、特定した認証対象の情報を保持すると共に、使用者に対して、認証を実行するための被認証用情報としての色の情報のピックアップを促す(ステップS82)。
【0150】
このステップS82での促しに応じて、この第2の実施形態では、電子ペン1Aのピックアップ部11Aからは、色の情報とペンID情報が送られてくるので、情報処理制御部200Aは、当該色の情報とペンID情報の受信を監視し(ステップS83)、受信したと判別したときには、受信した色の情報とペンID情報とのそれぞれについて、認証参照用情報記憶部205に記憶されている認証参照用情報としての色の情報及びペンID情報との照合を行う(ステップS84)。
【0151】
そして、この例では、情報処理制御部200Aは、先ず、認証参照用情報のペンID情報と、被認証用情報のペンID情報とが完全一致したか否かにより、ペンID情報による認証がOKであるか否か判別する(ステップS85)。
【0152】
このステップS85で、認証参照用情報のペンID情報と、被認証用情報のペンID情報とは完全一致ではなく、認証OKではないと判別したときには、情報処理制御部200Aは、認証NGを表示部203の表示画面に表示すると共にアラーム音を放音するなどして使用者に報知する(ステップS86)。
【0153】
そして、このステップS86の次には、情報処理制御部200は、認証のやり直しをするか否かの問い合わせをして、使用者からの回答を判別する(ステップS87)。このステップS87で、やり直しをするという回答を得たと判別したときには、情報処理制御部200Aは、処理をステップS82に戻し、このステップS82以降の処理を繰り返す。また、ステップS87で、やり直しはしないとの回答を得たと判別したときには、情報処理制御部200Aは、処理を、図14のステップS71に戻し、このステップS71以降の処理を繰り返す。
【0154】
そして、ステップS85で、認証参照用情報のペンID情報と、被認証用情報のペンID情報とは完全一致しており、認証OKであると判別したときには、情報処理制御部200Aは、認証参照用情報記憶部205Aに記憶されている色の情報と、ステップS84で受信した色の情報との差分が、閾値以下であるかどうかにより、認証OKであるか否かを判断する(ステップS88)。このステップS88で、認証参照用情報の色の情報と、被認証用情報の色の情報との差分は閾値を超えており、認証OKではないと判別したときには、情報処理制御部200Aは、処理をステップS86に移行して、認証NGを表示部203の表示画面に表示すると共にアラーム音を放音するなどして使用者に報知し、さらに、ステップS87以降の処理を実行する。
【0155】
また、ステップS88で、認証参照用情報の色の情報と、被認証用情報の色の情報との差分は閾値以下であり、認証OKであると判別したときには、すなわち、ペンID情報による認証がOKであり、且つ、色の情報による認証がOKであると判別したときには、情報処理制御部200Aは、認証対象を許可する(ステップS89)。そして、情報処理制御部200Aは、処理を、図14のステップS71に戻し、このステップS71以降の処理を繰り返す。
【0156】
次に、図14のステップS77で、処理イベントは、「認証」を要求してはいないと判別したときには、情報処理制御部200Aは、処理イベントは、「筆記色の登録」であるか否か判別する(図16のステップS91)。この図16のステップS91からステップS93までの処理は、第1の実施形態における図10のステップS31からステップS33までの処理と同様であるので、ここでは、その説明は省略する。
【0157】
この第2の実施形態では、ステップS93での色の情報のピックアップの促しに応じて、使用者が電子ペン1Aのピックアップ部11Aの後端部を平面部FLに押し付けて、色の情報のピックアップ動作をすると、上述したように、ピックアップ部11Aからはピックアップされた色の情報とペンID情報とが無線送信されてくる。
【0158】
そこで、第2の実施形態では、電子機器2Aの情報処理制御部200Aは、ステップS93の後には、電子ペン1Aのピックアップ部11Aからの色の情報とペンID情報との受信を監視し(ステップS94)、色の情報とペンID情報とを受信したと判別したときには、受信した色の情報とペンID情報とを、筆記色情報として、筆記色情報記憶部206Aに記憶する(ステップS95)。
【0159】
この第2の実施形態においても、このステップS95で、筆記色情報を筆記色情報記憶部206Aに記憶した後には、電子機器2Aにおいては、電子ペン1Aからの筆記入力を位置検出センサ210を通じて受け付けることが可能に構成されている。ただし、この第2の実施形態では、上述したように、電子ペン1Aの電子ペン本体部10Aの芯体105からの信号には、位置検出用信号と筆圧検出情報に加えて、ペンID情報が含まれている。
【0160】
情報処理制御部200Aは、ステップS95の次には、位置検出センサ210を通じて電子ペン1Aから、所定レベル以上の信号を受信したか否かにより、電子ペン1Aによる筆記入力を検出したか否か判別して(ステップS96)、筆記入力を監視する。そして、ステップS96で筆記入力を検出したと判別したときには、情報処理制御部200Aは、検出した筆記入力の軌跡の座標情報を記憶する(ステップS97)。
【0161】
次に、情報処理制御部200Aは、筆記入力として受信した信号に含まれているペンID情報と、筆記色情報記憶部206Aに記憶されているペンID情報とを照合して、両者が完全一致しているか否かを判別する(ステップS98)。
【0162】
このステップS98で、筆記入力として受信した信号に含まれているペンID情報と、筆記色情報記憶部206Aに記憶されているペンID情報とが完全一致していると判別したときには、情報処理制御部200Aは、筆記色情報記憶部206Aに記憶されている色の情報を用いて、筆記入力の軌跡を、表示部203の表示画面にカラー表示する(ステップS99)。
【0163】
また、ステップS98で、筆記入力として受信した信号に含まれているペンID情報と、筆記色情報記憶部206Aに記憶されているペンID情報とが一致してはいないと判別したときには、情報処理制御部200Aは、デフォルトの色で、筆記入力の軌跡を、表示部203の表示画面に表示する(ステップS100)。
【0164】
そして、ステップS99、また、ステップS100の次には、情報処理制御部200Aは、使用者により筆記色の変更要求がなされたか否か判別し(図17のステップS111)、筆記色の変更要求がなされたと判別したときには、処理をステップS93に戻し、このステップS93以降の処理を繰り返す。
【0165】
また、ステップS111で、使用者により筆記色の変更要求はなされていないと判別したときには、情報処理制御部200Aは、筆記入力が終了したか否か判別し(ステップS112)、終了していないと判別したときには、処理をステップS96に戻して、このステップS96以降の処理を繰り返す。
【0166】
また、ステップS112で、筆記入力が終了したと判別したときには、情報処理制御部200Aは、筆記色情報を残すかどうかの問い合わせを表示部203の表示画面を通じて、あるいは音声メッセージを通じて行い、使用者からのその問い合わせの回答を判別し(ステップS113)、筆記色情報を残すとの回答を得たときには、処理をステップS71に戻して、このステップS71以降の処理を繰り返す。
【0167】
また、ステップS113で、筆記色情報を残さないとの回答を得たときには、情報処理制御部200Aは、筆記色情報記憶部206Aに記憶されている筆記色情報としての色の情報及びペンID情報を消去する(ステップS114)。そして、情報処理制御部200Aは、処理をステップS71に戻して、このステップS71以降の処理を繰り返す。
【0168】
以上説明したように、第2の実施形態においては、認証用として、色の情報に加えてペンID情報を用いるので、第1の実施形態の色の情報のみを認証用として使用する場合に比較して、セキュリティの強度を高くすることができる。
【0169】
また、第2の実施形態にける筆記色の表示制御においては、電子ペン1Aのピックアップ部11Aでピックアップした色の情報を用いるのは第1の実施形態と同様であるが、ペンID情報と色の情報とを対応付けて筆記色情報としたので、同じペンIDを有する電子ペン1Aによる筆記入力に対してのみ、登録した色の情報を用いて筆記跡を表示することができて便利である。なお、電子機器2Aに記憶する筆記入力の座標情報に、筆記色情報記憶部206Aに記憶した色の情報を対応付けて記憶しておくようにしてもよい。
【0170】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例である。上述の第2の実施形態では、電子機器2Aへの色の情報及びペンID情報の送信は、ピックアップ部11Aが備える無線通信部118から行うようにした。
【0171】
これに対して、第3の実施形態の電子ペン1Bでは、ピックアップ部11B(図示は省略)には無線通信部118は設けずに、図18に示すように、電子ペン本体部10Bに、電子機器2Aと無線通信を行う無線通信部109を設ける。
【0172】
そして、電子ペン本体部10Bの制御部103Bが、USBインターフェース107を通じてピックアップ部11Bから色の情報を取得し、ペンIDメモリ108に記憶されているペンID情報と共に、無線通信部109を通じて、電子機器2Aに送信するように構成する。すなわち、第3の実施形態においては、色の情報とペンID情報との電子機器2Aへの無線送信が、電子ペン本体部10Bからなされる点のみが第2の実施形態とは異なる。
【0173】
図18に示すように、第3の実施形態における電子ペン1Bの電子ペン本体部10Bは、無線通信部109を備えると共に、第2の実施形態とは制御機能が若干異なる制御部103Bを備える。電子ペン本体部10Bのその他の構成は、図11に示した第2の実施形態における電子ペン本体部10Aと同様であり、同一部分には、同一参照符号を付して示している。
【0174】
なお、ピックアップ部11Bのハードウエア構成は、図3に示したピックアップ部11において、無線通信部を除去したものに等しいので、ここでは図示を省略する。
【0175】
また、電子機器2Aにおける処理動作は、第2の実施形態と全く同様にすることができる。すなわち、第3の実施形態においては、第2の実施形態の電子機器2Aは、そのまま用いることができるので、その動作説明も含めてここでは省略する。
【0176】
図19は、この第3の実施形態における電子ペン1Bのピックアップ部11Bにおけるピックアップ動作時の流れの例を示すフローチャートである。また、図20は、この第3の実施形態における電子ペン1Bの電子ペン本体部10Bの色の情報の送信の動作の流れの例を示すフローチャートである。
【0177】
図19において、ステップS121~ステップS125までの処理ステップは、図6のステップS1~ステップS5及び図12のステップS51~ステップS55までの処理ステップと全く同様である。
【0178】
この第3の実施形態では、ステップS125の次には、ピックアップ部11Bの制御部116B(図示は省略)は、ステップS125でピックアップして保持した色の情報を、電子ペン本体部10Bに対して、USBインターフェース115を通じて送信するようにする(ステップS126)。この場合に、ピックアップ部11Bの制御部116Bは、色の情報のUSBインターフェース115を通じた送信情報には、色の情報を電子機器2Aへの無線送信する依頼情報を含めるようにしてもよい。
【0179】
ステップS126の次には、ピックアップ部11Bの制御部116Bは、押圧検出スイッチ124がオン状態からオフ状態に変化するのを監視し(ステップS127)、押圧検出スイッチ124がオン状態からオフ状態に変化したことを判別したときには、メモリ119に記憶保持していた色の情報は消去し(ステップS128)、電源回路117から各回路への電源電圧の供給状態をスタンバイ状態に戻す(ステップS129)。そして、制御部116Bは、このステップS129の次には、処理をステップS121に戻し、このステップS121以降の処理を繰り返す。
【0180】
電子ペン本体部10Bの制御部103Bは、USBインターフェース107を通じてピックアップ部11Bからの色の情報を受信するのを監視し(図20のステップS131)、受信してはいないと判別したときには、その他の処理を行い(ステップS132)、その後、ステップS131に処理を戻す。
【0181】
制御部103Bは、ステップS131で、ピックアップ部11Bからの色の情報を受信したと判別したときには、受信した色の情報を一時保持する(ステップS133)。そして、制御部103Bは、ペンIDメモリ108に記憶しているペンID情報を読み出して、この読み出したペンID情報と、ピックアップ部11Bから取得した色の情報とを無線通信部109を通じて電子機器2Aへの無線送信する(ステップS134)。
【0182】
そして、制御部103Bは、送信が完了したか否か判別し(ステップS135)、送信が完了してはいないと判別したときには、ステップS134に戻って送信処理を継続し、送信が完了したと判別したときには、一時保持しているピックアップ部11Bから取得した色の情報を消去して(ステップS136)、この処理ルーチンを終了する。
【0183】
なお、図20の例では、色の情報と、ペンID情報との無線送信は、ピックアップ部11Bから色の情報を受信したことをトリガとして実行するように説明したが、前述したように、ピックアップ部11Bからの色の情報に、電子機器2Aへの無線送信を依頼する情報が付加されている場合には、その付加されている無線送信を依頼する情報の検知をトリガとして電子機器2Aへの無線送信を実行するようにするものである。
【0184】
この第3の実施形態においても第2の実施形態と同様の効果が得られると共に、ピックアップ部11Bの制御部116Bにおける処理の負荷が小さくなるという効果がある。
【0185】
なお、上述した第2の実施形態及び第3の実施形態では、ピックアップ部11A,11Bには、電子ペン本体部10A,10BのバッテリーBTから電源電圧を供給するようにしたが、ピックアップ部11A,11Bのそれぞれがバッテリーを搭載していても勿論よい。
【0186】
[第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例]
上述した第2の実施形態及び第3の実施形態では、ピックアップ部でピックアップした色の情報とペンID情報とは、対(ペア)として、ピックアップ部11Aの無線通信部118又は電子ペン本体部10Bの無線通信部109を通じて電子機器2Aに送信するようにした。しかし、色の情報は、ピックアップ部11Aの無線通信部118又は電子ペン本体部10Bの無線通信部109を通じて電子機器2Aに送信すると共に、ペンID情報は、電子ペン本体部10A,10Bの芯体105からの信号に含めて、センサ部を通じて電子機器2Aに送信することで、色の情報とペンID情報とを別々のルートで送信するようにしてもよい。
【0187】
また、第2の実施形態及び第3の実施形態では、色の情報とペンID情報とのペアの情報を、無線通信部118または無線通信部109を通じて無線送信するようにしたが、色の情報とペンID情報とのペアの情報を、電子ペン本体部10の芯体105からの信号に含めて、位置検出センサ210を通じて電子機器2Aに送信するようにしてもよい。その場合には、無線通信部118または無線通信部109と、無線通信部204とは設ける必要はない。
【0188】
第2の実施形態及び第3の実施形態の変形例として、認証対象が電子ペンによる筆記入力からなる文書ファイル、画像描画ファイルや、それらのフォルダである場合には、ペンID情報を用いることで、認証対象の事前登録を省略することができる。すなわち、電子ペンによる筆記入力からなる文書ファイル、画像描画ファイルには、電子ペンのペンID情報を対応付けて(付加して)記憶しておく。そして、認証参照用情報として記憶しているペンID情報と同一の文書ファイルやフォルダの場合には、それを認証対象として認定して、色の情報による認証を実行するようにすることができる。ただし、この場合には、文書ファイル、画像描画ファイルや、それらのフォルダ毎に異なる色の情報を設定することはできず、一つのペンID情報について、共通の一つの色の情報による認証となる。
【0189】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第2の実施形態及び第3の実施形態よりも、セキュリティを、さらに厳格化することができるように考慮したもので、使用者により電子ペンが用いられて電子機器に入力されるサイン(署名)を、認証参照用情報として追加するものである。
【0190】
この第4の実施形態を構成する電子ペンは、上述した第2の実施形態の電子ペン1Aまたは第3の実施形態の電子ペン1Bのいずれも用いることができ、どちらを用いてもよい。したがって、この第4の実施形態を構成する電子ペン1A(又は電子ペン1B)における色の情報のピックアップ動作及びペンID情報をも含めた無線送出の動作も、上述した第2の実施形態の電子ペン1Aまたは第3の実施形態の電子ペン1Bと同様である。そこで、ここではその説明は省略する。
【0191】
また、この第4の実施形態を構成する電子機器2C(図示は省略)のハードウエア構成は、上述した第2の実施形態及び第3の実施形態の電子機器2Aのハードウエア構成と同様である。ただし、第4の実施形態の電子機器2Cが備える情報処理制御部200C(図示は省略)は、制御内容が第2の実施形態及び第3の実施形態の電子機器2Aの情報処理制御部200Aとは異なると共に、認証参照用情報記憶部205Cは、記憶する認証参照用情報が第2の実施形態及び第3の実施形態の電子機器2Aの認証参照用情報記憶部205Aとは異なる。
【0192】
以下に、この第4の実施形態の電子機器2Cの情報処理制御部200Cの動作の例を、図21図23のフローチャートを参照して説明する。
【0193】
図21において、ステップS141~ステップS145までの処理は、第2の実施形態で図14について説明したステップS71~ステップS75までの処理と同様であるので、ここでは説明は省略する。
【0194】
第4の実施形態では、ステップS145で、色の情報とペンID情報とを受信したと判別したときには、情報処理制御部200Cは、その受信した色の情報とペンIDとを一時保持する(ステップS146)。
【0195】
次に、情報処理制御部200Cは、表示部203の表示画面203Dに、図25に示すようなサインの入力欄(署名欄)203SGを表示して、電子ペン1A(又は電子ペン1B)による当該入力欄203SGへのサイン入力を促す(図22のステップS151)。
【0196】
この促しに応じて使用者は、電子ペン1A(又は電子ペン1B)により、入力欄203SGにおいて、サイン入力を行う。この場合に、上述したように、電子ペン1A(又は電子ペン1B)の芯体105からは、位置検出用信号及び筆圧情報に加えて、ペンID情報が、例えば時分割信号として送出される。
【0197】
電子機器2Cでは、位置検出センサ210を通じて、この電子ペン1A(又は電子ペン1B)の芯体105から送出される信号を、位置検出処理部21(図5参照)で位置検出制御回路227が検出することで、電子ペン1A(又は電子ペン1B)の芯体105により指示された軌跡の座標(サインの筆記跡情報)を検出すると共に、筆圧情報から筆圧値を算出し、更に、ペンID情報を検出する。そして、位置検出制御回路227は、検出したサインの筆記跡情報と、筆圧値の情報と、ペンID情報とを、情報処理制御部200Cに供給する。
【0198】
情報処理制御部200Cは、位置検出制御回路227からのサインの筆記跡情報と、筆圧値の情報と、ペンID情報とを含むサイン入力を受け付け(ステップS152)、サイン入力に含まれるペンID情報が、ステップS146で保持しているペンID情報とを照合して、両者が同一であるか否か判別する(ステップS153)。
【0199】
このステップS153で、サイン入力に含まれるペンID情報と、ステップS146で保持しているペンID情報とは同一ではないと判別したときには、情報処理制御部200Cは、サイン入力の受付を拒否する(ステップS154)。そして、情報処理制御部200Cは、処理を図21のステップS141に戻して、このステップS141以降の処理を繰り返す。
【0200】
このステップS153及びステップS154の処理は、色の情報をピックアップする操作をした電子ペンと、サイン入力をした電子ペンとが同一であるべきであるので、それを担保するためであり、セキュリティを、より強くすることができると考えられるからである。もっとも、色の情報をピックアップする操作をした電子ペンと、サイン入力をした電子ペンとが異なることは稀であると考えられるので、ステップS153及びステップS154の処理ステップは、省略するようにしてもよい。
【0201】
そして、ステップS153で、サイン入力に含まれるペンID情報と、ステップS146で保持しているペンID情報とは同一であると判別したときには、情報処理制御部200Cは、例えば図25の表示画面203Dの終了ボタンアイコン203ESがクリックされたか否かを判別することにより、サイン入力が終了したか否か判別する(ステップS155)。
【0202】
ステップS155で、サイン入力が終了してはいないと判別したときには、情報処理制御部200Cは、処理をステップS152に戻して、このステップS152以降の処理を繰り返す。また、ステップS155で、サイン入力が終了したと判別したときには、情報処理制御部200Cは、ステップS146で保持していた色の情報とペンID情報と、サイン情報(筆記跡の座標情報)とを、認証対象に対応付けた認証参照用情報を、図26に示すようなテーブル情報として、認証参照用情報記憶部205Cに記憶する(ステップS156)。
【0203】
このステップS156の次には、情報処理制御部200Cは、処理を図21のステップS141に戻して、このステップS141以降の処理を繰り返す。
【0204】
そして、図21におけるステップS147において、ステップS141で発生が判別された処理イベントが認証を要求していると判別したときには、情報処理制御部200Cは、図23のステップS161からの処理を実行する。この図23において、ステップS161からステップS168までの処理ステップは、図15のステップS81からステップS88までの処理ステップと同様であるので、その説明は省略する。
【0205】
そして、図23のステップS168で、ペンIDによる認証OKであり、且つ、色の情報による認証OKであると判別したときには、情報処理制御部200Cは、表示部203の表示画面203Dに、図25に示すようなサインの入力欄(署名欄)203SGを表示して、電子ペン1A(又は電子ペン1B)による当該入力欄203SGへのサイン入力を促す(図22のステップS171)。
【0206】
この促しに応じて使用者は、電子ペン1A(又は電子ペン1B)により、入力欄203SGにおいて、サイン入力を行う。この場合に、上述したように、電子ペン1A(又は電子ペン1B)の芯体105からは、位置検出用信号及び筆圧情報に加えて、ペンID情報が、例えば時分割信号として送出される。
【0207】
電子機器2Cでは、前述したようにして、位置検出処理部21の位置検出制御回路227(図5参照)で、電子ペン1A(又は電子ペン1B)の芯体105により指示された軌跡の座標(サインの筆記跡情報)を検出すると共に、筆圧情報から筆圧値を算出し、更に、ペンID情報を検出する。そして、位置検出制御回路227は、検出したサインの筆記跡情報と、筆圧値の情報と、ペンID情報とを、情報処理制御部200Cに供給する。
【0208】
情報処理制御部200Cは、位置検出制御回路227からのサインの筆記跡情報と、筆圧値の情報と、ペンID情報とを含むサイン入力を受け付け(ステップS172)、サイン入力に含まれるペンID情報が、ステップS162で保持しているペンID情報とを照合して、両者が同一であるか否か判別する(ステップS173)。
【0209】
このステップS173で、ステップS172で受け付けたサイン入力に含まれるペンID情報と、ステップS162で保持しているペンID情報とは同一ではないと判別したときには、情報処理制御部200Cは、処理を図23のステップS166に移行して、認証NGを通知する。その後、情報処理制御部200Cは、処理を図21のステップS141に戻して、このステップS141以降の処理を繰り返す。
【0210】
このステップS173及びステップS174の処理は、色の情報をピックアップする操作をした電子ペンと、サイン入力をした電子ペンとが同一であるべきであるので、それを担保するためであり、セキュリティを、より強くすることができると考えられるからである。もっとも、色の情報をピックアップする操作をした電子ペンと、サイン入力をした電子ペンとが異なることは稀であると考えられるので、ステップS173及びステップS174の処理ステップは、省略するようにしてもよい。
【0211】
そして、ステップS173で、サイン入力に含まれるペンID情報と、ステップS162で保持しているペンID情報とは同一であると判別したときには、情報処理制御部200Cは、例えば図25の表示画面203Dの終了ボタンアイコン203ESがクリックされたか否かを判別することにより、サイン入力が終了したか否か判別する(ステップS174)。
【0212】
ステップS174で、サイン入力が終了してはいないと判別したときには、ステップS172に戻り、サイン入力が終了したと判別したときには、情報処理制御部200Cは、サイン入力情報を保持し(ステップS175)、その保持したサイン入力情報と、認証参照用情報記憶部205Cに記憶されているサイン入力情報とを照合する(ステップS176)。
【0213】
そして、情報処理制御部200Cは、サイン入力情報の照合の結果、サインが一致しているか否かにより、サインによる認証がOKであるか否か判別する(ステップS177)。サインが一致しているか否かは、例えば照合する2つの入力情報の差分が所定の閾値以下であるか否かにより判別し、閾値以下であれば認証OK、閾値より大きいときには認証NGと判別する。この場合、閾値の値が小さいときには、セキュリティが厳格になり、大きいときには、セキュリティは弱くなる。
【0214】
ステップS177で、サインによる認証がNGであると判別したときには、情報処理制御部200Cは、処理を図23のステップS166に移行して、認証NGを通知する。その後、情報処理制御部200Cは、処理を図21のステップS141に戻して、このステップS141以降の処理を繰り返す。
【0215】
また、ステップS177で、サインによる認証がOKであると判別したときには、情報処理制御部200Cは、認証対象を許可して(ステップS178)、その後、処理を図21のステップS141に戻して、このステップS141以降の処理を繰り返す。
【0216】
以上説明した第4の実施形態においては、色の情報による認証と、ペンIDによる認証とに加えて、サインによる認証を行うようにしているので、セキュリティを厳格化することができる。
【0217】
なお、上述の第4の実施形態の説明では、サインを用いる認証を、第2の実施形態または第3の実施形態の認証システムに追加するようにしたが、サインを用いる認証を、第1の実施形態の認証システムに追加するようにしてもよい。すなわち、色の情報による認証と、サインによる認証の両方の認証がOKであるときにのみ、認証対象についてのセキュリティ保護を解除することができるようにしてもよい。
【0218】
[その他の実施形態または変形例]
上述の実施形態では、電子機器は、認証対象と認証参照用情報とを対応付けて記憶するテーブル情報を生成して、当該テーブル情報に基づいて認証管理及び認証制御処理を行うようにしたが、例えばアプリケーションプログラム、ファイルやフォルダなどの認証対象のそれぞれに、セキュリティ管理されている旨の情報を付加すると共に、認証参照用情報を付加しておくようにしてもよい。その場合には、認証対象のアプリケーションプログラムの起動時や認証対象のファイルやフォルダの開封時には、上述と同様の認証処理が自動的に起動されて実行され、認証の可否が判断されるものである。
【0219】
また、上述の第2の実施形態~第4の実施形態の認識システムでは、色の情報のみよりもセキュリティを強固にするために、色の情報と電子ペン1A,1BのペンID情報とを組み合わせるようにしたが、電子ペン本体部10A,10Bとは別体であるピックアップ部11A,11Bに、当該ピックアップ部の識別情報(ピックアップ部のユニットID)を付与すると共に、そのピックアップ部の識別情報を記憶する記憶部を設けて、ペンID情報の代わりに、色の情報と共に、電子機器2に送信するようにしてもよい。この場合にも、電子ペン1A,1Bから電子機器2,2Aへの色の情報と識別情報との送信手段は、ピックアップ部11A,11Bに搭載した無線通信部であってもよいし、電子ペン本体部10A,10Bに搭載した無線通信部であってもよい。また、色の情報と識別情報は、電子ペン本体部10A,10Bの芯体105から送出する信号に含めるようにしてもよい。
【0220】
このように、色の情報と共に送信する識別情報としてピックアップ部のユニットIDを用いる場合において、ピックアップ部11A,11Bに、無線通信部を設けると共に、バッテリーを搭載する場合には、色の情報と、ピックアップ部11A,11Bの識別情報との送信は、電子ペン本体部10A,10Bとは電気的に接続されていなくても可能となる。このため、ピックアップ部11A,11Bと電子ペン本体部10A,10Bとは、上述の例のようなUSB接続などの電気的な接続は、不要となり、単に結合可能に構成されていればよい。
【0221】
以上の実施形態では、電子ペンは、電子ペン本体部とピックアップ部とを別体として、両者を結合する構成とした。しかし、電子ペン本体部とピックアップ部とを別体とするのではなく、電子ペンの筐体内に、電子ペン本体部の機能と、ピックアップ部の機能を設けるように構成した単体の電子ペンの構成としてもよいことは言うまでもない。この場合には、電子ペンの筐体の芯体側とは反対側の後端側に、外部に露出するレンズを備えるピックアップ部の機能部が設けられることになる。
【0222】
なお、以上の実施形態では、認証用として色の情報をピックアップして用いるようにしたので、受光部122は、フォトトランジスタで構成すると共に、色検出回路を設けるようにした。しかし、この発明による認証システムにおいては、色の情報の代わりに、画像情報をピックアップするように構成することもできる。
【0223】
すなわち、その場合には、受光部122を、複数の受光セルが2次元配置されているイメージセンサで構成すると共に、色検出回路の代わりに、イメージセンサの出力から画像を検出する画像検出回路を設けることで、ピックアップ部は、後端部を押し当てた部位の画像をピックアップすることができる。この場合に、画像としては、モノクロ画像に限らず、カラー画像をピックアップすることができることは言うまでもない。
【0224】
また、上述の実施形態の電子ペンの電子ペン本体部は、全て、芯体から信号を送出するアクティブ静電容量方式の電子ペンの構成としたが、位置検出センサ210とインタラクションする電子ペンの方式は、どのようなものであってもよい。すなわち、パッシブ方式の電子ペンであってもよいし、電磁誘導方式の電子ペンであってもよい。電磁誘導方式の電子ペンは、位置検出センサ210からの信号を受信して帰還させるタイプのものであってもよいし、自身が信号発生回路を備えるタイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0225】
1,1A,1B…電子ペン、2,2A,2C…電子機器、10,10A,10B…電子ペン本体部、11,11A,11B…ピックアップ部、113…レンズ、118…無線通信部、121…発光素子、122…受光部、123…色検出回路、124…押圧検出スイッチ、200…情報処理制御部、204…無線通信部、205…認証参照用情報記憶部、210…位置検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26