(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】プローブ針用のストリップ形状の複合材料
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20241029BHJP
C22C 5/04 20060101ALI20241029BHJP
C22C 5/06 20060101ALI20241029BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20241029BHJP
C22F 1/08 20060101ALI20241029BHJP
C22F 1/14 20060101ALI20241029BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241029BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
G01R1/067 Z
C22C5/04
C22C5/06 C
C22C9/00
C22F1/08 B
C22F1/14
G01R1/073 D
H01L21/66 B
C22F1/00 603
C22F1/00 622
C22F1/00 623
C22F1/00 627
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 661A
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 694A
(21)【出願番号】P 2023114117
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-07-12
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フェッカー,ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】スハーマン,マーク
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-159997(JP,A)
【文献】特表2005-504962(JP,A)
【文献】特開2019-113418(JP,A)
【文献】特開2021-124499(JP,A)
【文献】特表2018-501490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073、
31/26
H01L 21/66
C22C 5/00-9/00
C22F 1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の電子試験のためのプローブ針を製造するための複合材料であって、前記複合材料が、ストリップ形状であり、2つの相互に平行な主表面(4、5、14、15、24、25)によって画定され、前記複合材料が、前記平行な主表面(4、5、14、15、24、25)に対して垂直に積層され、内側コア層(1、11、21)と2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)とを含むサンドイッチ構造を有し、前記内側コア層(1、11、21)が、前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)の間に配置され、前記内側コア層(1、11、21)が、2つの対向する面で前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)にしっかりと接続され、前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)が、前記平行な主表面(4、5、14、15、24、25)を形成し、前記内側コア層(1、11、21)が、少なくとも30重量%のパラジウムを含むパラジウム合金、又は少なくとも30重量%の白金を含む白金合金からなり、前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)の
両方が、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金、又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金
からなり、又は
前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)の一方が少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合
金からなり、
他方が少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合
金からなる、複合材料。
【請求項2】
前記内側コア層(1、11、21)が、前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)に直接接続される、並びに/又は、
前記複合材料が、前記内側コア層(1、11、21)及び前記外側カバー層(2、3、12、13、22、23)からなることを特徴とする、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)が、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅合金からな
ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記内側コア層(1、11、21)が、少なくとも30重量%のパラジウムを含有するパラジウム合金からな
ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記複合材料が、前記2つの外側カバー層(2、3、12、13、22、23)のうちの一方において、室温で4点測定法によって測定して、少なくとも35%IACS(20.3 10
6S/m
)の導電率を有する、及び/又は、
前記複合材料が、前記2つの
外側カバー層(2、3、12、13、22、23)において、室温で、少なくとも17
0のビッカース硬度HV0.05を有する、及び/又は、
前記複合材料が、室温で、少なくとも1000MP
aの、前記内側コア層(1、11、21)の平面に平行な引張強度を有する、及び/又は、
前記複合材料が、室温で、少なくとも950MP
aの、前記内側コア層(1、11、21)の平面に平行な降伏強度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項6】
前記析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金が、少なくとも98重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅-クロム合
金であるか、又は、
前記析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金が、少なくとも99重量%の銅を含む析出硬化銅-クロム-チタン合
金であるか、又は、
前記析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金が、少なくとも98重量%の銅を含む析出硬化銅-クロム-銀合
金であるか、又は、
前記析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金が、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅-銀合
金である、並びに/又は、
前記析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金が、少なくとも70重量%の銀を含む銀-銅合
金である、並びに/又は、
前記パラジウム合金が、主成分としてパラジウムを含むパラジウム-銅-銀合金であって、パラジウムの銅に対する重量比が少なくとも1.05かつ最大1.6であり、パラジウムの銀に対する重量比が少なくとも3かつ最大6であり、1重量%を超え、最大6重量%までのルテニウム、ロジウム、若しくはルテニウム及びロジウム、並びに残部として、パラジウム、銅及び銀、及び不純物を含む最大1重量%の他の金属元
素を含有する、パラジウム-銅-銀合金であるか、又は、
前記パラジウム合金が、パラジウム-銀-銅-白金合
金であるか、又は、
前記パラジウム合金が、パラジウム-銅-銀-ルテニウム合
金であるか、又は、
前記パラジウム合金が、パラジウム-銅-銀-ロジウム合
金であるか、又は、
前記パラジウム合金が、パラジウム-銅-銀合
金であるか、又は、
前記パラジウム合金が、パラジウム-銀-銅合
金であるか、又は、
前記白金合金が、白金-ニッケル合
金であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項7】
前記析出硬化及び/又は分散硬化銅合金が、2重量%までの析出物及び/又は分散質を含み
、前記析出物及び/又は前記分散質が、少なくとも95重量%までの、クロム、チタン、ケイ素、鉄、酸素、ジルコニウム及び銀からなるリストから選択される元素のうちの少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項8】
前記内側コア層(1、11、21)が、前記析出硬化及び/若しくは分散硬化パラジウム合金、又は析出硬化及び/若しくは分散硬化白金合金からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の複合材料のストリップからなるプローブ針又はボンディングストリップ。
【請求項10】
前記プローブ針が、前記内側コア層(1、11、21)の材料からなる先端部を有することを特徴とする、請求項9に記載のプローブ針。
【請求項11】
互いに隣接して配置された、複数の請求項9に記載のプローブ針を有するプローブ針アレイ。
【請求項12】
電気接点を試験するため、又は電気的接触のため、又は摺動接点を生成するための、請求項1又は2に記載の複合材料の使用。
【請求項13】
2つの金属合金でできた複合材料を製造する方法であって、前記複合材料が、半導体素子の電子試験のためのプローブ針の製造に適しており、そのために提供され、前記方法が、以下の時系列的に連続するステップ:
A)少なくとも30重量%のパラジウムを含むパラジウム合金又は少なくとも30重量%の白金を含む白金合金の第1のストリップと、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金の第2のストリップと、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金の第3のストリップとを提供するステップと、
B)前記第1のストリップを前記第2のストリップと前記第3のストリップとの間に配置し、前記第1のストリップを前記第2のストリップ及び前記第3のストリップに押し当てるステップと、
C)互いに押し当てられた前記ストリップを圧延接合することによって、前記第1のストリップを前記第2のストリップ及び前記第3のストリップに接続するステップであって、前記圧延接合は、前記第1のストリップ、前記第2のストリップ及び前記第3のストリップの材料から連続したストリップ形状の複合材料を製造する、接続するステップと、によって特徴付けられる、方法。
【請求項14】
ステップC)の後に、
D)ステップC)で製造された複合体を温度処理するステップであって、前記第1のストリップの材料が、前記温度処理中に析出硬化及び/又は分散硬化される、温度処理するステップ、が行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の複合材料が前記方法によって製造される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の電子試験のためのプローブ針を打ち抜くか又は切断することができるストリップ形状のサンドイッチ状積層複合材料、並びにこのようなストリップ形状のサンドイッチ状積層複合材料から製造された又はこれを使用して製造されたプローブ針、ボンディングストリップ及びプローブ針アレイに関する。
【0002】
本発明はまた、ストリップからの2つの異なる材料からそのようなストリップ形状のサンドイッチ状積層複合材料を製造する方法に関する。
【0003】
プローブ針に加えて、プローブ針と同じ物理的特性の恩恵を受けるボンディングストリップ又はボンディングワイヤも、複合材料から作製することができる。ボンディングストリップは、ストリップ形状のボンディングワイヤである。
【0004】
チップ製造中、加工後、ウェハは、切断されていない状態で集積回路(IC)の機能を試験するためにプローブ針と直接接触される。この場合、個々のチップの構造化の後、プローブ針のアレイで半導体ウェハを機能性について試験する。プローブ針は、ウェハの設計に適合した試験カード(プローブカード)に固定される。試験プロセスでは、ウェハがプローブ針に押し付けられ、プローブ針とICのパッドとの間の接触が確立される。次に、接触、高電流密度での電気的特徴、及び温度変化中の電気的挙動などの様々なパラメータが試験される。
【0005】
したがって、プローブ針は、パワーエレクトロニクスの製造、電気接点の品質を試験するためのチップ及び他の電気回路の接触において使用される(例えば、米国特許出願公開第2014/0266278(A1)号及び米国特許出願公開第2010/0194415(A1)号を参照)。
【0006】
パワーエレクトロニクスにおけるプローブ針又はボンディングストリップなどの用途はまた、高い導電率に加えて高い機械的強度及び硬度を必要とする。更に、温度耐性又は耐熱性も非常に重要である。
【0007】
良好なプローブ針の重要なパラメータは、パワーエレクトロニクス用のICの試験中に高い電流を伝送しなければならないため、高い導電率、及びメンテナンス間隔を短く保つための高い硬度である。更に、プローブ針及びボンディングストリップは、良好なばね特性をもたらす低い弾性率(mE)及び高い降伏強度(Rp0.2)の恩恵を受ける。高い熱伝導率は、熱エネルギーの良好な放散をもたらし、したがって、熱による電気抵抗の更なる上昇を可能な限り低くする。適切な硬度、弾性率及び降伏強度は、第1にメンテナンス間隔を短く保つために、第2にプローブ針の良好なばね特性を実現するために必要である。
【0008】
純銅の導電率(100%IACS=58.1×106S/m)は、導電率を決定するための基準として役立つ。しかしながら、純銅(Cu)及び純銀(Ag)は、延性が著しく高く、使用中にプローブ針が変形するため、これらの目的に使用することができない。
【0009】
パワーエレクトロニクスにおけるプローブ針又はボンディングストリップなどの用途はまた、高い導電率に加えて高い機械的強度及び硬度を必要とする。この場合、温度耐性又は耐熱性も非常に重要である。
【0010】
プローブ針用の材料として、析出硬化銅合金、ロジウム合金(Rh合金)又はパラジウム合金(Pd合金)が現在使用されており、これらは、チル鋳造、溶体化焼鈍、析出熱処理及び圧延によって加工されて、55μm未満の厚さを有する薄いストリップを形成する。
【0011】
金パッド上での使用に関して、Deringer Ney社のPaliney(登録商標)H3C又はAdvanced Probing社のNewTec(登録商標)などのパラジウム合金が知られている。プローブ針用の典型的な材料は、10重量%の金及び10重量%の白金を含有することができる析出硬化パラジウム-銀合金であり、例えば、Paliney(登録商標)7、Hera 6321、及びHera 648の製品名で市販されている。米国特許出願公開第2014/377129(A1)号及び米国特許第5833774(A)号は、電気用途のための硬化Ag-Pd-Cu合金を開示している。これらの合金は、400~500HVの高い硬度を有する。しかしながら、9~12%IACSでは、導電率はかなり低い。プローブ針の場合、高い導電率は重要な要素である。
【0012】
アルミニウムパッド上での試験に関して、タングステン、炭化タングステン、パラジウム-銅-銀合金、及びタングステンレニウムの材料でできたプローブ針が広く使用されている。後者は特に硬く、アルミニウムパッドは金パッドよりも頑強であり、硬い針での試験に金パッドよりも良好に耐えることができる。これらのプローブ針はまた、非常に高い導電率を有していない。CuAg7などのより高い導電率を有する合金は、パラジウム-銀合金又はパラジウム-銅-銀合金よりも硬度が低く(約320HV1)、耐熱性が低い。
【0013】
更に、プローブ針用のPtNi30合金が市販されている。米国特許出願公開第2010/0239453(A1)号及び欧州特許第2248920(A1)号は、プローブ針の製造のための低ドープイリジウム合金を開示している。
【0014】
米国特許出願公開第2006/0197542(A1)号は、プローブ針を製造するための白金ベース合金を開示している。この合金は、金パッド上に配置されたラッカー層によって良好な接点を生成することができるように、300HV~500HVの高い硬度を有する。
【0015】
原理的に適切なパラジウム-銅-銀合金は、米国特許第1913423(A)号及び英国特許出願公開第354216(A)号から既に知られている。パラジウム-銅-銀合金は、超格子を有する構造を形成することができ、これは、合金の導電率及び機械的安定性の改善につながる。このとき、格子内の原子は、もはやランダムに分布しておらず、周期的な構造、すなわち超格子内に配列されている。結果として、350HV1を超える硬度(9.81N(1キロポンド)の試験荷重でのDIN EN ISO 6507-1:2018から-4:2018に従ったビッカース硬度試験)、19.5%IACSを超える導電率、及び1500MPaまでの破壊強度が可能となる。欧州特許出願公開第3,960,890(A1)号から知られているパラジウム-銅-銀-ルテニウム/ロジウム合金及び先行技術から知られている白金ベース合金などのパラジウム合金は、高温においても非常に良好な機械的特性を有するが、導電率及び熱伝導率は、銅及び銅合金と比較して良好ではない。
【0016】
しかしながら、PtNi合金(白金-ニッケル合金)又はロジウム(Rh)もプローブ針製造用フィルムの材料として使用されている。導電率、熱伝導率、引張強度及び硬度の間で可能な限り最良の妥協点を示すこのような金属又は合金の場合、可能な最大導電率は5%~30%IACSであり、したがって銅と比較してかなり低い。
【0017】
米国特許第10385424(B2)号は、5重量%までのレニウムを追加的に含有するパラジウム-銅-銀合金を開示している。このパラジウム-銅-銀合金は、Paliney(登録商標)25の製品名で市販されている。このようにして、導電率を著しく増加させることができ、19.5%IACSを超える値に達する。しかしながら、ここでは、レニウムは、3180℃という非常に高い融点を有し、したがって、他の金属と複雑に合金化させなければならないという欠点がある。
【0018】
国際公開第2016/009293(A1)号は、先端部がプローブ針の前側に配置されたプローブ針を提案しており、この先端部は機械的に硬い第1の材料からなり、プローブ針の残りの部分は高い導電率を有する第2の材料からなる。同様のプローブ針は、米国特許出願公開第2013/0099813(A1)号、米国特許出願公開第2016/0252547(A1)号、欧州特許出願公開第2060921(A1)号及び米国特許出願公開第2012/0286816(A1)号からも知られている。米国特許出願公開第2019/0101569(A1)号は、そのような先端部を備える被覆ワイヤを提案しており、先端部は、被覆ワイヤのワイヤコアにのみ固定されている。この場合、被覆ワイヤは、単一のコーティングを有するワイヤコアを有するべきである。ここでは、プローブ針がもはやその長さにわたって均一な物理的特性を有しておらず、導電率及び熱伝導率だけでなく引張強度も、2つの材料間の接合に非常に大きく依存するという欠点がある。更に、1つの領域における低い導電率を別の領域における高い導電率によって単純に補償することはできない。それは、電気抵抗器の直列回路の場合のように、電流は両方の領域を通過しなければならないためである。
【0019】
プローブ針又はボンディングワイヤを製造するための複合ワイヤとして、例えば、連続圧延プロセスによって、又はガルバニックコーティングを用いて、被覆ワイヤ又は二重ワイヤとして知られているものとして製造することができる、全周がコーティングされたワイヤを使用することが可能である。例えば、これらは、内部に、貴金属合金(例えばHera238)でコーティングされた、例えばCuBe2などのCu合金の非貴金属を有することができ、それにより、独国特許出願公開第102019130522(A1)号に記載されているように、スリップリング伝送装置における摺動接点又はマイクロスイッチにおけるスイッチング接点の場合の接点技術における用途に使用することもできる。
【0020】
プローブ針の導電率を改善するために、現在、パラジウム合金上に純銅もガルバニック堆積されている。プローブ針としての被覆ワイヤを製造するためのロジウムベース合金のガルバニックコーティングは、欧州特許第3862759(B1)号から知られている。更なるコーティングされたプローブ針は、国際公開第2016/107729(A1)号、米国特許出願公開第2017/0307657(A1)号及び米国特許出願公開第2014/0176172(A1)号から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ここでは、純銅が低い硬度及び耐熱性、並びに乏しいばね特性を有するに過ぎず、その結果、パラジウム合金及び銅からこのようにして製造された複合材料の機械的特性が悪影響を受けるという欠点がある。
【0022】
したがって、複合材料及びそれから製造されたプローブ針又はボンディングストリップの機械的特性を同時に劣化させることなく、又はその劣化を低減させて、導電率の改善を達成することができるように、ガルバニックコーティングされたパラジウム合金を改善することが望ましい。
【0023】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服することである。特に、半導体素子の電子試験のためのプローブ針を(具体的には打ち抜き又は切断によって)製造するための複合材料、及びそのような複合材料を製造する方法が見出されるべきであり、複合材料は、パラジウム合金と比較して改善された導電率を有し、機械的特性、特に引張強度及び熱間引張強度、並びに好ましくは硬度も、純銅でガルバニックコーティングされたパラジウム合金の場合のように、このプロセスにおいて劣化しない。複合材料及び方法は、簡単かつ安価に実現でき、大量生産に適しているべきである。プローブ針及びボンディングストリップは、可能な限り簡単かつ費用効果の高い方法で複合材料から製造することができなければならず、プローブ針の先端部は、好ましくは硬質のパラジウム合金又は白金合金からなることが意図される。更に、複合材料は、可能な限り機械的に安定した複合材料の材料間接合を有するべきである。
【0024】
本発明の目的は、請求項1に記載の複合材料、請求項9に記載のプローブ針又はボンディングストリップ、請求項11に記載のプローブ針アレイ、請求項12に記載の複合体、プローブ針又はプローブ針アレイの使用、及び請求項13に記載の方法によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項2~8、10、14及び15に開示されている。
【0025】
本発明の目的は、半導体素子の電子試験のためのプローブ針を製造するための複合材料であって、複合材料が、ストリップ形状であり、2つの相互に平行な主表面によって画定され、複合材料が、平行な主表面に対して垂直に積層され、内側コア層と2つの外側カバー層とを含むサンドイッチ構造を有し、内側コア層が、2つの外側カバー層の間に配置され、内側コア層が、2つの対向する面で2つの外側カバー層にしっかりと接続され、2つの外側カバー層が、平行な主表面を形成し、内側コア層が、少なくとも30重量%のパラジウムを含むパラジウム合金、又は少なくとも30重量%の白金を含む白金合金からなり、2つの外側カバー層が、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金、又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金、又は少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金と少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金とからなる、複合材料によって達成される。
【0026】
析出硬化銅合金及び銀合金は、高い硬度及び引張強度をもたらす。
【0027】
分散硬化銅合金及び銀合金は、高温においても高い硬度及び引張強度をもたらす。
【0028】
析出硬化及び/又は分散硬化銅合金並びに析出硬化及び/又は分散硬化銀合金は、析出硬化及び分散硬化の両方であってもよい。
【0029】
合金の析出硬化の場合、合金における析出は、温度処理から生じる。合金の分散硬化の場合、分散質は合金中に分布している。分散質は、凝固前に溶融物中に粒子として分布させることができる。このような分散質は、多くの場合酸化物又はホウ化物であり、本発明によれば、好ましくは金属酸化物である。
【0030】
平行な主表面は、ストリップ形状の複合材料の最大表面を形成する。平行な主表面は、好ましくは、ストリップ形状の複合材料の表面の少なくとも50%を形成し、特に好ましくは、平行な主表面は、ストリップ形状の複合材料の表面の少なくとも90%を形成し、非常に特に好ましくは、平行な主表面は、ストリップ形状の複合材料の表面の少なくとも99%を形成する。
【0031】
ストリップ形状の複合材料は、好ましくは、一次近似又は良好な近似において、平坦な直方体の形状である。
【0032】
2つの外側カバー層は、異なる銅合金又は銀合金からなることができる。また、2つの外側カバー層の一方が銅合金からなり、2つの外側カバー層の他方が銀合金からなることも可能である。しかしながら、本発明によれば、2つの外側カバー層は、同じ銅合金又は銀合金、特に好ましくは同じ銅合金からなることが好ましい。
【0033】
互いに平行な主表面は、数学的な意味で完全に平行な又は面平行な表面を形成する必要はない。互いに平行な主表面が互いに対して最大5°の角度まで傾斜している場合、十分である。好ましくは、互いに平行な主表面は、互いに対して最大1°の角度で傾斜している。
【0034】
互いに平行な主表面は、好ましくは面平行でもある。
【0035】
好ましくは、互いに平行な主表面は平面である。ここでも、平面は、原子範囲に対して平坦な表面を意味するのではなく、圧延中に生成されるような平面を意味する。
【0036】
プローブ針及びボンディングストリップは、ストリップ形状の複合材料から、複合材料のストリップを平行な主表面に対して垂直に切断することによって、又は平行な主表面に対して斜めに切断することによっても、製造することができる。更に、針の一方の端部は、好ましくは、内側コア層の材料がプローブ針の先端部を形成するように、尖らせることができる。次に、この先端部を使用して、先端部を検査対象の半導体表面に押し付け、プローブ針を介して導電率を測定することによって、半導体構造をその導電率に関して試験することができる。
【0037】
本発明の場合、不純物とは、関与する全ての元素の合成によって生じる不純物を意味すると理解される。
【0038】
材料がプローブ針として使用することができる場合、その材料はボンディングストリップ又はボンディングワイヤとしての使用にも適している。
【0039】
内側コア層及び2つの外側カバー層は、好ましくは金属である。
【0040】
析出硬化及び分散硬化銅合金及び銀合金は、高温(約300℃)においても、複合材料の高い硬度及び引張強度をもたらす。
【0041】
好ましくは、内側コア層が2つの外側カバー層に接合される、特に圧延接合によって接合されるようにすることができる。
【0042】
ストリップ形状の複合材料が、最大300μmの厚さを有する、好ましくは最大100μmの厚さを有するようにすることができる。
【0043】
複合材料の厚さは、2つの外側カバー層の外面によって形成される2つの主平面間の距離に対応する。
【0044】
より厚い複合材料は、追加の圧延を行わない場合、複合材料を切断するか又は打ち抜くことによってプローブ針として容易に使用することができない。
【0045】
更に、内側コア層の厚さが、2つの外側カバー層の厚さに少なくとも等しい、好ましくは2つの外側カバー層の厚さの少なくとも2倍の厚さとなるようにすることができる。
【0046】
内側コア層の厚さが、2つの外側カバー層の厚さの最大10倍の厚さ、好ましくは2つの外側カバー層の厚さの最大5倍の厚さ、特に好ましくは2つの外側カバー層の厚さの最大3倍の厚さとなるようにすることもできる。
【0047】
これにより、複合体の物理的特性がカバー層及びコア層の材料によって一緒に決定されることを確実にする。
【0048】
内側コア層が、2つの外側カバー層に直接接続されるようにすることができる。
【0049】
これは、接着層及び/又は拡散保護層などの更なる層が、内側コア層と2つの外側カバー層との間に配置されないことを意味する。
【0050】
この手段は、複合材料の製造を容易かつ費用効果の高いものにする。本発明の方法による本発明の複合材料の製造において、追加の中間層は必要とされないことが見出された。拡散層は、圧延接合中及びその後の熱処理中に、内側コア層と2つの外側カバー層との間に生じ得る。これは、本発明の意味における別個の(更なる)層ではなく、内側コア層と2つの外側カバー層との間の境界面の領域における接続と見なされる。
【0051】
更に、複合材料が内側コア層及び外側カバー層からなるようにすることができる。
【0052】
これは、複合材料が任意の更なる層も部分も必要としないことを明らかにする。結果として、複合材料は製造の費用効果が高い。
【0053】
あるいは、例えば、2つの外側カバー層を主表面上にコーティングすることができる、又はプローブ針の電気的接触のために複合材料の縁部に材料を適用することができる。
【0054】
2つの外側カバー層が、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅合金、好ましくは少なくとも97重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅合金、特に好ましくは少なくとも99重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅合金からなるようにすることもできる。
【0055】
高い銅含有量を有する析出硬化及び分散硬化銅合金は、高い銅含有量を有する銅合金のために比較的高い硬度及び引張強度と共に高い導電率を有するので、プローブ針の製造に特に良好に適している。
【0056】
好ましくは、内側コア層が、少なくとも30重量%のパラジウムを含有するパラジウム合金、好ましくは少なくとも35重量%のパラジウムを含有するパラジウム合金、特に好ましくは欧州特許出願公開第3960890(A1)号に記載のパラジウム-銅-銀合金からなるようにすることもできる。
【0057】
好ましくは、内側コア層は、少なくとも35重量%のパラジウム、少なくとも20重量%の銅及び少なくとも20重量%の銀を含有するパラジウム-銅-銀合金、特に好ましくは、31重量%の銅及び29重量%の銀、6重量%までの、ロジウム、ルテニウム及びレニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素、並びに不純物を含む残りのパラジウムを含有するパラジウム-銅-銀合金からなる。
【0058】
特に好ましくは、内側コア層は、欧州特許出願公開第3960890(A1)号に記載のパラジウム-銅-銀合金からなる。この場合、特に好ましいパラジウム-銅-銀合金は、欧州特許出願公開第3960890(A1)号の段落[0013]に記載されている。非常に特に好ましい実施形態は、欧州特許出願公開第3960890(A1)号の段落[0021]~[0048]及び[0067]に記載されている。
【0059】
このようなパラジウム合金は、複合材料並びにそれから製造されるプローブ針及びボンディングストリップの特に高い引張強度及び耐熱性をもたらす。
【0060】
複合材料が、2つの外側カバー層のうちの一方において、室温で4点測定法を使用して測定して、少なくとも35%IACS(20.3 106S/m)、好ましくは少なくとも40%IACS(23.2 106S/m)、特に好ましくは少なくとも45%IACS(26.1 106S/m)の導電率を有するようにすることもできる。
【0061】
更に、複合材料が、2つのカバー層において、室温で、少なくとも170、好ましくは少なくとも190、特に好ましくは少なくとも196のビッカース硬度HV0.05を有するようにすることができる。
【0062】
更に、複合材料が、室温で、少なくとも1000MPa、好ましくは少なくとも1100MPaの、内側コア層の平面に平行な引張強度を有するようにすることができる。
【0063】
複合材料が、室温で、少なくとも950MPa、好ましくは少なくとも1050MPaの、内側コア層の平面に平行な降伏強度を有するようにすることもできる。
【0064】
複合材料のこれらの物理的特性は、本発明による複合材料を用いて実現することができ、それから製造されるプローブ針及びボンディングストリップに有利な材料特性をもたらす。特に、これらの物理的特性の組合せは、プローブ針及びボンディングストリップに非常に良好な特性をもたらす。特に、高い導電率と高い引張強度との組合せは、プローブ針及びボンディングストリップに有利である。
【0065】
導電率は、Burster Resistomat 2316を使用して、規定された長さにおける試験対象物上の電圧降下の4極測定によって決定することができる。測定は、縁部長さ5mm以上、厚さ55μm、及び測定電流10mAの領域を有する複合材料の主表面に対して行う。
【0066】
更に、複合材料が、室温で、少なくとも1000MPa、好ましくは少なくとも1150MPa、特に好ましくは1300MPaの0.2%降伏点Rp0.2(弾性限界)を有するようにすることができる。
【0067】
これらの機械的及び電気的特性、特にそれらの組合せは、複合材料が、プローブ針又はボンディングストリップとしてこれを使用することができるように、特に良好な弾性特性及び高い導電率を有することを確実にする。
【0068】
0.2%降伏点Rp0.2は、Zwick引張試験機Z250を使用して決定することができる。引張試験は、50μmの厚さ及び13mmの幅を有する複合材料に対して行うことができ、本明細書に基づくものである。降伏強度Rp0.2に対する試験速度は1mm/minである。
【0069】
更に、析出硬化及び/又は分散硬化銅合金が、少なくとも98重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅-クロム合金、特に、少なくとも0.5重量%かつ最大1.2重量%のクロムを含み、少なくとも0.03重量%から最大0.3重量%のジルコニウム、及び不純物を含む残りの銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化CuCr1Zr合金となるようにすることができる。
【0070】
析出硬化及び/又は分散硬化銅合金が、少なくとも99重量%の銅を含む析出硬化銅-クロム-チタン合金、特に、0.3重量%のクロム、0.1重量%のチタン、0.02重量%のSi、及び不純物を含む残りの銅を含む析出硬化銅-クロム-チタン-ケイ素合金となるようにすることもできる。
【0071】
更に、析出硬化及び/又は分散硬化銅合金が、少なくとも98重量%の銅を含む析出硬化銅-クロム-銀合金、特に、0.5重量%のクロム、0.2重量%の銀、0.08重量%の鉄、0.06重量%のチタン、0.03重量%のケイ素、及び不純物を含む残りの銅を含む析出硬化銅-クロム-銀-鉄-チタン-ケイ素合金となるようにすることができる。
【0072】
これらの銅合金は、本発明によれば特に好ましい。
【0073】
更に、析出硬化及び/又は分散硬化銅合金が、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅-銀合金、特に、少なくとも3重量%の銀から最大7重量%の銀、及び不純物を含む残りの銅、又は不純物を含み、0重量%から最大2重量%の酸化分散質を含む残りの銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅-銀合金となるようにすることができる。
【0074】
3重量%の銀を含むそのような銅合金(CuAg3)は、本発明によれば特に好ましい。
【0075】
更に、析出硬化及び/又は分散硬化銀合金が、少なくとも70重量%の銀を含む銀-銅合金、好ましくは少なくとも9重量%の銅かつ最大29重量%の銅及び不純物を含む残りの銀を含む銀-銅合金、特に好ましくは10重量%の銅及び不純物を含む残りの銀を含む銀-銅合金、又は28重量%の銅及び不純物を含む残りの銀を含む銀-銅合金となるようにすることができる。
【0076】
パラジウム合金が、主成分としてパラジウムを含むパラジウム-銅-銀合金であって、パラジウムの銅に対する重量比が少なくとも1.05かつ最大1.6であり、パラジウムの銀に対する重量比が少なくとも3かつ最大6であり、1重量%を超え、最大6重量%までのルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、並びに残部として、パラジウム、銅及び銀、及び不純物を含む最大1重量%の他の金属元素、好ましくは0.3重量%未満のイリジウムを含有する、パラジウム-銅-銀合金となるようにすることもできる。
【0077】
このパラジウム-銅-銀合金は、本発明によれば特に好ましい。
【0078】
パラジウムの銅に対する重量比が少なくとも1.05かつ最大1.6であることは、パラジウムが、パラジウム-銅-銀合金に含有される銅の重量の少なくとも105%かつ最大160%の重量でパラジウム-銅-銀合金に含有されることを意味する。
【0079】
したがって、パラジウムの銀に対する重量比が少なくとも3かつ最大6であることは、パラジウムが、パラジウム-銅-銀合金に含有される銀の重量の少なくとも3倍かつ最大6倍の重量でパラジウム-銅-銀合金に含有されることを意味する。
【0080】
更に、パラジウム合金が、パラジウム-銀-銅-白金合金、特に、38重量%の銀、15重量%の銅、1.5重量%の白金、1重量%の亜鉛、0.5重量%の金、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銀-銅-白金-亜鉛-金合金、又は30重量%の銀、14重量%の銅、10重量%の白金、10重量%の金、1重量%の亜鉛、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銅-白金-金-亜鉛合金となるようにすることができる。
【0081】
パラジウム合金が、パラジウム-銅-銀-ルテニウム合金、特に、36.5重量%の銅、10.5重量%の銀、1.5重量%のルテニウム、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銅-銀-ルテニウム合金、又は36.5重量%の銅、10.5重量%の銀、1.1重量%のルテニウム、0.4重量%のレニウム、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銅-銀-ルテニウム-レニウム合金となるようにすることもできる。
【0082】
更に、パラジウム合金が、パラジウム-銅-銀-ロジウム合金、特に、36.5重量%の銅、10.5重量%の銀、1.5重量%のロジウム、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銅-銀-ロジウム合金となるようにすることができる。
【0083】
更に、パラジウム合金が、パラジウム-銅-銀合金、特に、31重量%の銅、29重量%の銀、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銅-銀合金となるようにすることができる。
【0084】
更に、パラジウム合金が、パラジウム-銀-銅合金、特に、38重量%の銀、15重量%の銅、及び不純物を含む残りのパラジウムを含むパラジウム-銀-銅合金となるようにすることができる。
【0085】
白金合金が、白金-ニッケル合金、好ましくは少なくとも3重量%かつ最大10重量%のニッケル、及び不純物を含む残りの白金を含む白金-ニッケル合金、特に好ましくは5重量%のニッケル、及び不純物を含む残りの白金を含む白金-ニッケル合金となるようにすることもできる。
【0086】
前述の合金では、合金中で最も高い重量割合を有する元素が常に最初に言及される。好ましくは、合金中で2番目に高い重量割合を有する元素が、好ましくは2番目に言及される。特に好ましくは、合金中で3番目に高い重量割合を有する元素が3番目に言及される。非常に特に好ましくは、言及された合金の場合、言及された合金成分は、それらの重量割合に従った順番で順序付けられる。
【0087】
本発明の場合、主成分とは、主に、すなわち、量に関して、最大の成分である元素(この場合、パラジウム、白金、銅又は銀)を意味すると理解され、すなわち、例えば、パラジウム-銅-銀合金には、銅又は銀よりも多くのパラジウムが含有される。
【0088】
これらの合金は、本発明による複合材料を製造するのに特に良好に適している。
【0089】
析出硬化及び/又は分散硬化銅合金が、2重量%までの析出物及び/又は分散質を含み、好ましくは1重量%までの析出物及び/又は分散質を含み、析出物及び/又は分散質が、少なくとも95重量%までの、クロム、チタン、ケイ素、鉄、酸素、ジルコニウム及び銀からなるリストから選択される元素のうちの少なくとも1つからなるようにすることができる。
【0090】
この少量の析出物及び/又は分散質は、銅合金、及び該当する場合は更に銀合金の硬度を、導電率を著しく低減することなく改善するのに十分である。
【0091】
析出物及び/又は分散質の割合は、析出物及び/又は分散質の、銅合金の総面積に対する表面比に関して、走査型電子顕微鏡又は更には光学顕微鏡によって銅合金の断面を評価することによって決定することができ、この目的のために、析出物及び/又は分散質並びにそれらを囲むマトリックスの密度を考慮する必要がある。密度は、例えば、エネルギー分散型若しくは波長分散型X線分析(EDX若しくはWDX)による、又は蛍光X線による組成分析に基づいて決定することができる。
【0092】
析出硬化及び/又は分散硬化銀合金が、2重量%までの析出物及び/又は分散質、好ましくは1重量%までの析出物及び/又は分散質を含み、析出物及び/又は分散質が、少なくとも95重量%の、クロム、チタン、ケイ素、鉄、酸素、ジルコニウム及び銅からなるリストから選択される元素のうちの少なくとも1つからなるようにすることができる。
【0093】
更に、内側コア層が、析出硬化及び/若しくは分散硬化パラジウム合金、又は析出硬化及び/若しくは分散硬化白金合金からなるようにすることができる。
【0094】
これにより、複合材料の引張強度及びそれから製造されるプローブ針の針先端部の安定性が改善される。好ましくは、内側コア層は、析出硬化及び/又は分散硬化パラジウム合金からなる。
【0095】
本発明が基づく目的は、上述の複合材料のストリップからなるプローブ針又はボンディングストリップによっても達成される。
【0096】
プローブ針及びボンディングストリップは、複合材料の有利な物理的特性の恩恵を受ける。
【0097】
この場合、プローブ針が、内側コア層の材料からなる先端部を有するようにすることができる。
【0098】
これにより、プローブ針の高い安定性が達成される。したがって、この先端部を備えるプローブ針は、交換又は非常に頻繁な調整を必要とせずに、非常に頻繁に使用することができる。
【0099】
本発明が基づく目的は、更に、互いに隣接して配置された複数の前述のプローブ針を備えるプローブ針アレイによって達成される。
【0100】
本発明が基づく目的は、電気接点を試験するため、又は電気的接触のため、又は摺動接点を生成するための、上述の複合材料、又は上述のプローブ針、又は上述のプローブ針アレイの使用によっても達成される。
【0101】
本発明が基づく目的は、更に、2つの金属合金から複合材料を製造する方法であって、複合材料が、半導体素子の電子試験のためのプローブ針の製造に適しており、そのために提供され、方法が、以下の時系列的に連続するステップ:
A)少なくとも30重量%のパラジウムを含むパラジウム合金又は少なくとも30重量%の白金を含む白金合金の第1のストリップと、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金の第2のストリップと、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金の第3のストリップとを提供するステップと、
B)第1のストリップを第2のストリップと第3のストリップとの間に配置し、第1のストリップを第2のストリップ及び第3のストリップに押し当てるステップと、
C)互いに押し当てられたストリップを圧延接合することによって、第1のストリップを第2のストリップ及び第3のストリップに接続するステップであって、圧延接合は、第1のストリップ、第2のストリップ及び第3のストリップの材料から連続したストリップ形状の複合材料を製造する、接続するステップと、によって特徴付けられる、方法によって達成される。
【0102】
好ましくは、圧延接合中に、第1のストリップ、第2のストリップ、及び第3のストリップの厚さが低減される。
【0103】
圧延接合は複数のステップで行われてもよく、複合体の厚さは各ステップで低減される。
【0104】
本発明による方法において、ステップC)の後に、
D)ステップC)で製造された複合体を温度処理するステップであって、第1のストリップの材料が、温度処理中に析出硬化及び/又は分散硬化される、温度処理するステップ、が行われるようにすることができる。
【0105】
下流の温度処理の結果として、ストリップは、ローラによって予め互いに良好に接続することができる。
【0106】
更に、上述の複合材料が本方法によって製造されるか、又は上述の少なくとも1つのプローブ針若しくは上述の少なくとも1つのボンディングストリップが、複合材料を切断するか若しくは打ち抜くことによって本方法によって製造される、好ましくは、上述の複数のプローブ針若しくはボンディングストリップが、切断若しくは打ち抜きによって本方法によって製造されるようにすることができる。
【0107】
本発明は、純銅又は純銀でコーティングされたパラジウム合金又は白金合金と比較して、引張強度及び耐熱性並びに硬度に関する機械的特性が改善されているが、同時に、純粋な硬質のパラジウム合金又は白金合金と比較して導電率の著しい増加が達成されているサンドイッチ状かつストリップ形状の複合材料を製造するために、中実かつ硬質のパラジウム合金又は白金合金の層の両面を、より高い導電率を有する析出硬化銅合金及び/又は銀合金でコーティングすることができるという驚くべき発見に基づく。驚くべきことに、本発明の文脈において、析出硬化銅合金及び/又は銀合金を用いたそのようなコーティングは、圧延接合法を用いて実現することができ、ガルバニックコーティングを用いて製造することが不可能であり得ることが見出された。本発明はまた、コア層及び2つの外側カバー層が同様の硬度である場合、圧延接合によってコア層と2つの外側カバー層とを互いに良好に接合することができるという知見に基づく。
【0108】
配線材料又はプローブ針用の銅及びパラジウム合金からなる本発明による好ましい複合材料は、銅合金の有用な特性(高い導電率)とパラジウム合金の有用な特性(高い耐熱性及び良好なばね特性)とを有利に組み合わせる。これにより、既存のパラジウム合金(Hera 6321(登録商標)又はPaliney H3C(登録商標))よりも良好な導電率を有し、CuAg7よりも良好な耐熱性及び全硬度を有する材料が得られる。使用される銅合金は、純銅の約80%の導電率で、純銅の4倍の強度を有し、したがって、著しく良好な全体特性を有する。圧延接合中に使用されるこれらの合金は、概して純粋な金属及びいくつかの選択された合金に限定されるガルバニックプロセスを使用しては堆積させることができない。
【0109】
有利な特性の組合せを達成するために、異なる金属及び貴金属の複数の異なる層をガルバニックに適用することもできる。しかしながら、この方法では析出硬化合金を堆積させることができず、このことがプロセスを非常に複雑にする。最終熱処理の間に、拡散の危険性もあり、これは混晶形成に起因して導電率に悪影響を及ぼす。
【0110】
銅でガルバニックコーティングされたパラジウム合金を更なる圧延によって加工硬化することも考えられる。しかしながら、銅及びパラジウム合金は著しく異なる硬度を有し、不均一な変形をもたらすので、ここでは一貫した特性は期待されない。
【0111】
本発明の更なる実施形態は、4つの概略図を参照して以下に説明されるが、それによって本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】
図1は、本発明による複合材料の詳細の概略断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1による本発明による複合材料の詳細の概略斜視断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明による複合材料の研磨された断面の光学顕微鏡写真を示す。
【
図4】
図4は、本発明による更なる複合材料の研磨された断面の光学顕微鏡写真を示す。
【
図5】
図5は、本発明による方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0113】
図1及び
図2は、本発明による複合材料の概略断面図を示す。断面領域は斜線で示されている。
【0114】
複合材料は、内側コア層1及び2つの外側カバー層2、3を有する。
【0115】
内側コア層1は、少なくとも30重量%のパラジウムを含むパラジウム合金、又は少なくとも30重量%の白金を含む白金合金からなる。2つの外側カバー層2、3の各々は、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金、又は少なくとも70重量%の銀を含む析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金からなることができる。
【0116】
好ましくは、内側コア層1は、欧州特許出願公開第3960890(A1)号に記載されているようなパラジウム合金からなる。
【0117】
2つの外側カバー層2、3は、好ましくは、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅合金、特に好ましくは、少なくとも98重量%の銅を含む析出硬化銅合金からなる。
【0118】
内側コア層1及び2つの外側カバー層2、3は、互いにしっかりと接続され、それぞれの材料のストリップを圧延接合することによって互いに直接接合され得る。
【0119】
複合材料は、カバー層2、3の外向きの表面によって形成される2つの対向する主表面4、5を有する。主表面4、5は、互いに面平行に配置することができる。複合材料は、良好な近似で平坦な直方体を形成することができ、主表面4、5は、好ましくは、一体化した複合材料の全ての他の面よりも大きい。
【0120】
内側コア層1及び2つの外側カバー層2、3は、境界面6、7を介して互いに接合される。境界面6、7の領域において、2つの外側カバー層2、3及び内側コア層1の材料の混合が起こり得る。
【0121】
例えば、本発明による複合材料は以下のようにして製造することができる。
【0122】
上部及び下部の析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金及び/又は析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金、並びに中間部の白金合金又はパラジウム合金(特にパラジウム超格子)を含む3つの金属シートから構成されるサンドイッチを、およそ60~75%のパス減少を有するロールパスで一緒に圧延し、これらの3つの金属シートを冷間溶接し、複合体を形成する。この場合、材料の硬度は非常に類似しており、これは、硬化状態の析出硬化及び/若しくは分散硬化銅合金並びに/又は析出硬化及び/若しくは分散硬化銀合金が、パラジウム合金又は白金合金(特に欧州特許出願公開第3960890(A1)号に記載のパラジウム超格子合金)と共に溶体化焼鈍状態で圧延されるという点で達成される。30~60μmの所望の厚さに圧延した後、白金合金又はパラジウム合金の硬度及び導電率は、(好ましくは真空下又は保護ガス下で)380℃で5分間の調整焼鈍によって調整される。この場合、銅合金及び/又は銀合金の機械的及び電気的特性に悪影響を及ぼすことなく、パラジウム合金又は白金合金の導電率及び強度が大幅に増加する(欧州特許出願公開第3960890(A1)号に記載のパラジウム超格子を参照)。パラジウム合金は、同様に、欧州特許出願公開第3960890(A1)号に記載の方法と同様に製造することができる。
【0123】
比較測定を実施するために、36.5重量%の銅、10.5重量%の銀、1.5重量%のルテニウム、及び0.1重量%未満の不純物を含む残りのパラジウムの組成を有し、欧州特許出願公開第3960890(A1)号に従って製造されたパラジウム合金のシートと、0.3重量%のクロム、0.1重量%のチタン、0.02重量%のケイ素、及び残りの銅を含む析出硬化銅合金Wieland-K75(C18070)の2つのシートとを一緒に圧延した。続いて、複合体を54μmの厚さに圧延した。
【0124】
このようにして製造された本発明による2つの複合材料を、ストリップ形状の複合材料の断面の光学顕微鏡写真として
図3及び
図4に示す。写真は、Leica DM 6光学顕微鏡を使用して入射光で作成した。この目的のために、複合材料をエポキシ樹脂に埋め込み、圧延面に対して垂直に研削及び研磨した。エポキシ樹脂は、
図3及び
図4では黒く見え、複合材料の一部ではない。
【0125】
したがって、
図3に示される複合材料Aは、36.5重量%の銅、10.5重量%の銀、1.5重量%のルテニウム、及び0.1重量%未満の不純物を含む残りのパラジウムの組成を有するパラジウム合金でできた内側コア層11を有する。コア層11は、両面を、0.3重量%のクロム、0.1重量%のチタン、0.02重量%のケイ素、及び残りの銅を含む析出硬化銅合金Wieland-K75(C18070)の2つの外側カバー層12、13によって囲まれている。2つの外側カバー層12、13は、複合材料Aの表面の大部分を形成するそれぞれの主表面14、15によって複合材料Aを画定する。圧延によって、内側コア層11及び2つの外側カバー層12、13は、互いに接合され、しっかりと接続される。中間層は存在しない。内側コア層11及び2つの外側カバー層12、13は、境界面16、17を介して互いに接合されている。境界面16、17の領域において、2つの外側カバー層12、13及び内側コア層11の材料の混合が起こり得る。
【0126】
図4に示される複合材料Bは、同様に、36.5重量%の銅、10.5重量%の銀、1.5重量%のルテニウム、及び0.1重量%未満の不純物を含む残りのパラジウムの組成を有するパラジウム合金でできた内側コア層21を有する。コア層21は両面を、0.3重量%のクロム、0.1重量%のチタン、0.02重量%のケイ素及び残りの銅を含む析出硬化銅合金Wieland-K75(C18070)の2つの外側カバー層22、23によって囲まれている。2つの外側カバー層22、23は、複合材料Bの表面の大部分を形成するそれぞれの主表面24、25によって複合材料Bを画定する。圧延によって、内側コア層21及び2つの外側カバー層22、23は、互いに接合され、しっかりと接続される。ここでも中間層は存在しない。内側コア層21及び2つの外側カバー層22、23は、境界面26、27を介して互いに接合されている。境界面26、27の領域において、2つの外側カバー層22、23及び内側コア層21の材料の混合が起こり得る。
【0127】
続いて、析出硬化銅合金によって形成された複合材料A及びBの主表面14、15、24、25のうちの1つにおいて、4点測定によって導電率を決定した。4点測定法(4点測定又は4チップ測定とも呼ばれる)とは、シート抵抗、すなわち表面又は薄層の電気抵抗を決定する方法である。この方法では、4つの測定チップを一列に箔の表面上に配置し、既知の電流を2つの外側測定チップに流し、電位差、すなわち2つの内側測定チップ間の電圧をこれらの2つの内側測定チップによって測定する。この方法は4導体測定の原理に基づいているので、測定チップと表面との間の境界抵抗とはほとんど無関係である(トムソンブリッジ原理)。隣接する測定チップは、それぞれ同じ距離を有する。シート抵抗Rは、測定された電圧U及び電流Iから次式に従って得られる:
【0128】
【0129】
シート抵抗Rから層材料の比抵抗ρを計算するために、シート抵抗に箔の厚さd(層厚さ)を乗算する:
ρ=dR
【0130】
導電率は、比抵抗の逆数から得られる。
【0131】
硬度(HV0.05-試験荷重0.4905N(0.05キロポンド)でのDIN EN ISO 6507-1:2018から-4:2018に従ったビッカース硬度試験)、強度を引張試験によって試験した。
【0132】
図3及び
図4に示す複合材料A及びBを製造し、調査した。
【0133】
比較のために、39重量%のPd、31重量%のCu、29重量%のAg、0.9重量%のZn及び0.1重量%のBの組成を有する製品名Hera 6321を有するパラジウム-銅-銀合金も調査した。
【0134】
【0135】
複合材料A及びBの測定は、厚さ54μmのシートで行った。Hera-6321合金は、厚さ54μmのシートで測定した。
【0136】
本発明による方法の手順を、
図1及び
図2と共に
図5を参照して以下に説明する。
【0137】
第1の作業ステップ101において、少なくとも30重量%のパラジウムを含むパラジウム合金でできたストリップと、少なくとも90重量%の銅を含む析出硬化及び/又は分散硬化銅合金の2つのストリップとを提供又は製造することができる。
【0138】
第2の作業ステップ102において、パラジウム合金のストリップを銅合金のストリップの間に置くことができる。
【0139】
第3の作業ステップ103において、ストリップを、圧延接合によって互いに接合することができ、ストリップの厚さは、圧延接合中に低減される。
【0140】
任意選択の第4の作業ステップ104において、このようにして製造された複合体の厚さを、1つ又は複数のステップでの更なる圧延によって、目標厚さ(例えば50μm)まで低減させることができる。
【0141】
第5の作業ステップ105において、パラジウム合金の中間コア層1の所望の硬度を調整するために、このようにして製造された複合体を調整焼鈍(例えば、380℃で5分間)することができる。
【0142】
任意選択の第6の作業ステップ106において、複合材料をストリップに切断するか又は打ち抜くことができる。
【0143】
続いて、第7の作業ステップ107において、プローブ針又はボンディングストリップの最終的な製造を任意選択的に行うことができる。この目的のために、例えば、ストリップのコア層1をプローブ針の先端部として機械加工することができる。
【0144】
上記の説明、並びに特許請求の範囲、図面、及び実施形態に開示されている本発明の特徴は、個別及び任意の所望の組合せの両方で、その様々な実施形態で本発明を実施するために不可欠であり得る。
【0145】
符号の説明
1、11、21 内側コア層
1、11、21 外側カバー層
3、13、23 外側カバー層
4、14、24 主表面
5、15、25 主表面
6、16、26 境界面
7、17、27 境界面
101 第1の作業ステップ
102 第2の作業ステップ
103 第3の作業ステップ
104 第4の作業ステップ
105 第5の作業ステップ
106 第6の作業ステップ
107 第7の作業ステップ