(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241029BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241029BHJP
H10K 59/123 20230101ALI20241029BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20241029BHJP
H10K 59/80 20230101ALI20241029BHJP
H10K 59/124 20230101ALI20241029BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20241029BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 612Z
H10K59/123
H10K59/131
H10K59/80
H10K59/124
G02F1/1368
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
(21)【出願番号】P 2023169610
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2022146700の分割
【原出願日】2013-12-20
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2012281865
(32)【優先日】2012-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 博之
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-083738(JP,A)
【文献】特開2010-114213(JP,A)
【文献】特開2011-044699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H10K 59/123
H10K 59/131
H10K 59/80
H10K 59/124
G02F 1/1368
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、
前記トランジスタと電気的に接続される容量素子と、
前記トランジスタと電気的に接続される表示素子と、を有する画素を有する表示装置であって、
第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜と、
前記第1の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第2の導電膜と、
前記第1の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第3の導電膜と、
前記第3の導電膜の上面に接する領域を有する第4の導電膜と、
前記第2の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第5の導電膜と、を有し、
前記第1の酸化物半導体膜及び前記第2の酸化物半導体膜は、それぞれ前記第1の絶縁膜の上面に接する領域を有し、
前記第5の導電膜は、前記第2の導電膜及び前記第3の導電膜と同層に設けられ、
前記第1の酸化物半導体膜は、前記第1の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第1の酸化物半導体膜は、前記トランジスタのチャネル形成領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方としての機能を有し、
前記第3の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方としての機能を有し、
前記第4の導電膜は、前記表示素子の画素電極として機能する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記容量素子の一方の電極として機能する領域を有し、
前記第2の酸化物半導体膜は、前記容量素子の他方の電極として機能する領域を有し、
前記第2の酸化物半導体膜の面積は、前記第1の酸化物半導体膜の面積よりも大きく、
前記第1の酸化物半導体膜は、InとGaとZnとを有し、
前記第2の酸化物半導体膜は、InとGaとZnとを有する表示装置。
【請求項2】
トランジスタと、
前記トランジスタと電気的に接続される容量素子と、
前記トランジスタと電気的に接続される表示素子と、を有する画素を有する表示装置であって、
第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜と、
前記第1の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第2の導電膜と、
前記第1の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第3の導電膜と、
前記第3の導電膜の上面に接する領域を有する第4の導電膜と、
前記第2の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第5の導電膜と、を有し、
前記第1の酸化物半導体膜及び前記第2の酸化物半導体膜は、それぞれ前記第1の絶縁膜の上面に接する領域を有し、
前記第5の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第1の酸化物半導体膜は、前記第1の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第1の酸化物半導体膜は、前記トランジスタのチャネル形成領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方としての機能を有し、
前記第3の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方としての機能を有し、
前記第4の導電膜は、前記表示素子の画素電極として機能する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記容量素子の一方の電極として機能する領域を有し、
前記第2の酸化物半導体膜は、前記容量素子の他方の電極として機能する領域を有し、
前記第2の酸化物半導体膜の面積は、前記第1の酸化物半導体膜の面積よりも大きく、
前記第1の酸化物半導体膜は、InとGaとZnとを有し、
前記第2の酸化物半導体膜は、InとGaとZnとを有する表示装置。
【請求項3】
トランジスタと、
前記トランジスタと電気的に接続される容量素子と、
前記トランジスタと電気的に接続される表示素子と、を有する画素を有する表示装置であって、
第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の第1の酸化物半導体膜及び第2の酸化物半導体膜と、
前記第1の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第2の導電膜と、
前記第1の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第3の導電膜と、
前記第3の導電膜の上面に接する領域を有する第4の導電膜と、
前記第2の酸化物半導体膜の上面に接する領域を有する第5の導電膜と、を有し、
前記第1の酸化物半導体膜及び前記第2の酸化物半導体膜は、それぞれ前記第1の絶縁膜の上面に接する領域を有し、
前記第5の導電膜は、前記第2の導電膜及び前記第3の導電膜と同層に設けられ、
前記第5の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第1の酸化物半導体膜は、前記第1の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第1の酸化物半導体膜は、前記トランジスタのチャネル形成領域を有し、
前記第2の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方としての機能を有し、
前記第3の導電膜は、前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方としての機能を有し、
前記第4の導電膜は、前記表示素子の画素電極として機能する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記容量素子の一方の電極として機能する領域を有し、
前記第2の酸化物半導体膜は、前記容量素子の他方の電極として機能する領域を有し、
前記第2の酸化物半導体膜の面積は、前記第1の酸化物半導体膜の面積よりも大きく、
前記第1の酸化物半導体膜は、InとGaとZnとを有し、
前記第2の酸化物半導体膜は、InとGaとZnとを有する表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の酸化物半導体膜のチャネル形成領域よりも導電率が高い領域を有する表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記表示素子は、有機ELを有する表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
第2の絶縁膜を有し、
前記第2の絶縁膜は、前記第2の導電膜の上方の領域と、前記第3の導電膜の上方の領域と、前記第5の導電膜の上方の領域と、を有し、
前記第2の絶縁膜は、前記第4の導電膜の下方の領域を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物(プロダクト。機械(マシン)、製品(マニュファクチャ)、組成物(コ
ンポジション・オブ・マター)を含む。)、および方法(プロセス。単純方法および生産
方法を含む。)に関する。特に、本発明の一形態は、半導体装置、表示装置、発光装置、
蓄電装置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。特に、本発明の一形態
は、酸化物半導体を有する半導体装置、表示装置、または発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイが広く普及して
きている。フラットパネルディスプレイなどの表示装置において、行方向および列方向に
配設された画素内には、たとえば、スイッチング素子であるトランジスタと、当該トラン
ジスタと電気的に接続された液晶素子と、当該液晶素子と並列に接続された容量素子とが
設けられている。
【0003】
当該トランジスタの半導体膜を構成する半導体材料としては、アモルファス(非晶質)
シリコンまたはポリ(多結晶)シリコンなどのシリコン半導体が汎用されている。
【0004】
また、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体と記す)は、トランジスタの
半導体膜に適用できる半導体材料である。例えば、酸化亜鉛またはIn-Ga-Zn系酸
化物半導体を用いて、トランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1および
特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量素子は一対の電極の間に誘電体膜が設けられており、一対の電極のうち、少なくと
も一方の電極は、トランジスタを構成するゲート電極、ソース電極またはドレイン電極な
ど遮光性を有する導電膜で形成されていることが多い。
【0007】
また、容量素子の容量値を大きくするほど、電界を加えた状況において、液晶素子の液
晶分子の配向を一定に保つことができる期間を長くすることができる。静止画を表示させ
る表示装置において、当該期間を長くできることは、画像データを書き換える回数を低減
することができ、消費電力の低減が望める。
【0008】
容量素子の電荷容量を大きくするためには、容量素子の占有面積を大きくする、具体的
には一対の電極が重畳している面積を大きくするという手段がある。しかしながら、上記
表示装置において、一対の電極が重畳している面積を大きくするために遮光性を有する導
電膜の面積を大きくすると、画素の開口率が低減し、画像の表示品位が低下する。
【0009】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の一態様は、開口率が高く、かつ電荷容量を増大さ
せることが可能な容量素子を有する半導体装置などを提供することを課題の一とする。
【0010】
または、本発明の一態様は、作製工程時に用いるマスクの枚数を減らし、製造コストを
低減した半導体装置などを提供することを課題の一とする。
【0011】
または、本発明の一態様は、オフ電流の低い半導体装置などを提供することを課題とす
る。または、本発明の一態様は、消費電力の低い半導体装置などを提供することを課題と
する。または、本発明の一態様は、目に優しい表示装置などを提供することを課題とする
。または、本発明の一態様は、透明な半導体膜を用いた半導体装置などを提供することを
課題とする。または、本発明の一態様は、信頼性の高い半導体膜を用いた半導体装置など
を提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、不純物濃度の低い半導体膜を
用いた半導体装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、透過率
の高い電極を用いた半導体装置などを提供することを課題とする。または、本発明の一態
様は、ノーマリーオフになりやすい半導体装置などを提供することを課題とする。または
、本発明の一態様は、新規な半導体装置などを提供することを課題とする。なお、これら
の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これ
らの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、
図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項な
どの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、トランジスタと、透光性を有する容量素子とが設けられた半導体装
置である。具体的には、当該容量素子を構成する一対の電極と誘電体膜を、透光性を有す
る材料により形成する。一対の電極のうち一方を、透光性を有する半導体膜に不純物を含
ませて電極として機能させる。また、当該容量素子を構成する一対の電極のうち他方を、
画素電極などの透光性を有する導電膜を用いて形成し、電極として機能させる。さらに、
走査線と、該走査線と平行方向に延伸し、走査線と同一表面上に設けられた容量線とが設
けられている。容量線上、および、トランジスタのソース電極またはドレイン電極を形成
する際に形成することができる導電膜上の絶縁膜に、容量線および該導電膜に達する開口
をそれぞれ同時に形成する。
【0013】
また、本発明の一態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および透光性を有す
る半導体膜を含むトランジスタと、一対の電極の間に誘電体膜が設けられた容量素子と、
トランジスタと電気的に接続された画素電極と、ゲート電極と同一表面上に形成される容
量線と、画素電極と同一表面上に設けられた電極と、ソース電極またはドレイン電極と同
一表面上に形成される導電膜と、を有し、容量素子において、トランジスタの透光性を有
する半導体膜と同一表面上に形成される透光性を有する導電膜が、一対の電極の一方とし
て機能し、画素電極が、一対の電極の他方として機能し、透光性を有する導電膜上に設け
られた絶縁膜が誘電体膜として機能し、容量線は、電極および導電膜を介して、容量素子
の透光性を有する導電膜と電気的に接続され、容量素子の透光性を有する導電膜は、トラ
ンジスタの透光性を有する半導体膜よりも導電率が高い領域を有する半導体装置である。
【0014】
また、透光性を有する半導体膜は、酸化物半導体を用いて形成することができる。酸化
物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV以上と大きく、可視光に対する透過率が大
きいためである。
【0015】
また、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタに安定した電気特性を付与
するためには、たとえば、酸化物半導体膜が含まれる多層膜において、チャネルの形成さ
れる膜中の不純物濃度を低減し、高純度真性化することが有効である。高純度真性化とは
、酸化物半導体膜の不純物濃度を低減し、真性化または実質的に真性にすることをいう。
なお、実質的に真性という場合、酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1017/cm
3未満、好ましくは1×1015/cm3未満、さらに好ましくは1×1013/cm3
未満である。酸化物半導体膜において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外
の金属元素は不純物となる。酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減するためには、近接す
る膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
【0016】
例えば、酸化物半導体膜中でシリコンは、不純物準位を形成する。また、該不純物準位
がトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある。具体的には、酸化
物半導体膜のシリコン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満と
する。なお、トランジスタのゲート絶縁膜としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン
膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜など、シリコンを含む絶縁膜が多く用いられる
ため、酸化物半導体膜のチャネルをゲート絶縁膜と接しない層に形成することが好ましい
。
【0017】
また、酸化物半導体膜中で水素および窒素は、ドナー準位を形成し、キャリア密度を増
大させてしまう。
【0018】
また、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜との界面にチャネルが形成される場合、該界面で
界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。このような観点からも、
酸化物半導体膜のチャネルをゲート絶縁膜と接しない層に形成することが好ましい。
【0019】
トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜から離すためには、例えば、酸化物半導体膜を
含む多層膜とすればよい。例えば、多層膜は、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜および第
2の酸化物膜の積層構造からなり、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜および第2の酸化物
膜の構成元素を同一とし、かつそれぞれの原子数比を異ならせてもよく、この結果、トラ
ンジスタのチャネルとなる酸化物半導体膜をゲート絶縁膜から離すことができる。
【0020】
なお、本明細書等で用いる「チャネル」とは、例えば、キャリアが流れる部分のことを
いい、「チャネル形成領域」とは、例えば、チャネルが形成されうる領域のことをいう。
【0021】
透光性を有する容量素子は、トランジスタの作製工程を利用することで作製できる。容
量素子の一方の電極は、トランジスタの半導体膜を形成する工程を利用でき、容量素子の
誘電体膜は、トランジスタの半導体膜上に設けられる絶縁膜を形成する工程を利用でき、
容量素子の他方の電極は、トランジスタと電気的に接続される画素電極を形成する工程を
利用することができる。
【0022】
容量素子の一方の電極として、トランジスタの半導体膜を形成する工程で形成した半導
体膜を用いる際、該半導体膜の導電率を増大させ、透光性を有する導電膜を形成する。例
えば、水素、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、リン、ヒ素、インジウム、スズ、ア
ンチモンおよび希ガス元素から選ばれた一種以上が半導体膜(のちの透光性を有する導電
膜)に含まれていることが好ましい。なお、上記元素を当該半導体膜に添加する方法とし
ては、イオン注入法またはイオンドーピング法などがあり、当該半導体膜を、上記元素を
含むプラズマに曝すことでも上記元素を添加することができる。この場合、容量素子の一
方の電極である透光性を有する導電膜の導電率は、10S/cm以上1000S/cm以
下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。
【0023】
また、本発明の一態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および透光性を有す
る半導体膜を含むトランジスタと、一対の電極の間に誘電体膜が設けられた容量素子と、
トランジスタと電気的に接続された画素電極と、ゲート電極と同一表面上に形成される容
量線と、画素電極と同一表面上に設けられた電極と、ソース電極またはドレイン電極と同
一表面上に形成される導電膜と、を有し、トランジスタにおいて、透光性を有する半導体
膜上に酸化絶縁膜および窒化絶縁膜が順に積層された絶縁膜が設けられており、容量素子
において、トランジスタの透光性を有する半導体膜と同一表面上に形成される透光性を有
する導電膜が、該絶縁膜の窒化絶縁膜と接すると共に一対の電極の一方として機能し、画
素電極が、一対の電極の他方として機能し、窒化絶縁膜が誘電体膜として機能し、容量線
は、電極および導電膜を介して、容量素子の透光性を有する導電膜と電気的に接続され、
容量素子の透光性を有する導電膜は、トランジスタの透光性を有する半導体膜よりも導電
率が高い領域を有する半導体装置である。
【0024】
なお、容量素子において、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜に窒化絶縁
膜が接する構造とすることで、イオン注入法またはイオンドーピング法など、上記元素を
添加する工程を省略することができ、半導体装置の歩留まりを向上させ、製造コストを低
減することができる。
【0025】
上記構成とすることで、容量素子は透光性を有するため、画素内のトランジスタが形成
される箇所以外の領域に大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高
めつつ、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。この結果、表示品位の優
れた半導体装置を得ることができる。
【0026】
上記半導体装置において、トランジスタの酸化物半導体膜上に設けられる絶縁膜を、酸
化絶縁膜および窒化絶縁膜の積層構造とする場合、該酸化絶縁膜は窒素を透過させにくい
、すなわち窒素に対するバリア性を有していることが好ましい。
【0027】
このようにすることで、トランジスタの半導体膜である酸化物半導体膜に窒素および水
素の一方または双方が拡散することを抑制でき、トランジスタの電気特性変動を抑制する
ことができる。
【0028】
また、本発明の一態様である半導体装置は、トランジスタのゲート電極を含む走査線と
、走査線と平行方向に延伸し、走査線と同一表面上に設けられた容量線とが設けられてい
る。容量素子の一方の電極(透光性を有する導電膜)は、トランジスタのソース電極また
はドレイン電極を形成する際に形成することができる導電膜によって容量線と電気的に接
続されている。
【0029】
さらに、駆動回路部において、容量線上、および、トランジスタのソース電極またはド
レイン電極を形成する際に形成することができる導電膜上の絶縁膜にマスクを形成し、容
量線および該導電膜に達する開口をそれぞれ同時に形成する。形成後、画素電極と同一工
程で容量線および該導電膜と電気的に接続する電極を形成することができる。
【0030】
このようにすることで、容量線上の絶縁膜に開口を設ける工程、およびトランジスタの
ソース電極またはドレイン電極を形成する際に形成することができる導電膜上の絶縁膜に
開口を設ける工程を同一工程で行うことができるため、作製工程時に用いるマスクの枚数
を減らし、製造コストを低減することができる。
【0031】
なお、本発明の一態様である半導体装置を作製する作製方法についても本発明の一態様
に含まれる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様より、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導
体装置を提供することができる。また、作製工程時に用いるマスクの枚数を減らし、製造
コストを低減した半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一態様である半導体装置を説明する図、および画素を説明する回路図。
【
図2】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
【
図3】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
【
図4】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【
図5】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【
図6】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
【
図7】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
【
図8】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【
図9】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【
図10】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
【
図11】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
【
図12】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
【
図13】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
【
図14】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図および上面図。
【
図15】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図。
【
図16】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図。
【
図17】スパッタリング用ターゲットから剥離するスパッタリング粒子の様子を示した模式図。
【
図18】AC電源を用いたスパッタリング時の放電状態を説明する図。
【
図19】帯電しているスパッタリング粒子が被成膜面に到達する様子を示した模式図。
【
図20】実施の形態に係るタッチセンサを説明する図。
【
図21】実施の形態に係るタッチパネルおよび電子機器の構成例を説明する図。
【
図22】実施の形態に係るタッチセンサを備える画素を説明する図。
【
図23】実施の形態に係るタッチセンサおよび画素の動作を説明する図。
【
図24】実施の形態に係る画素の構成を説明する図。
【
図25】スパッタリング用ターゲットの作製方法の一例を示すフロー図。
【
図28】実施の形態に係る表示機能を有する情報処理装置の構成を説明するブロック図。
【
図29】実施の形態に係る表示装置の表示部の構成を説明するブロック図および回路図。
【
図30】参考例のサンプルの波長と透過率の関係を説明する図。
【
図31】酸化物半導体膜のCPM測定結果を示す図。
【
図32】酸化物半導体膜のCPM測定結果を示す図。
【
図36】CAAC-OS膜の断面TEM像およびX線回折スペクトル。
【
図38】CAAC-OS膜の断面TEM像およびX線回折スペクトル。
【
図40】CAAC-OS膜の断面TEM像およびX線回折スペクトル。
【
図42】ナノ結晶酸化物半導体膜の断面TEM像および電子線回折パターン。
【
図43】ナノ結晶酸化物半導体膜の電子線回折パターン。
【
図45】石英ガラス基板の極微電子線回折パターン。
【
図46】ナノ結晶酸化物半導体膜の電子線回折パターン。
【
図48】ナノ結晶酸化物半導体膜の金属酸化物膜のX線回折分析結果。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であ
れば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0035】
以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様の機能を有する部分には同
一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の
機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合
がある。
【0036】
本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化
のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0037】
本明細書などにおいて、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり
、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するた
めの事項として固有の名称を示すものではない。
【0038】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書等では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよい
し、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0039】
本明細書等において、フォトリソグラフィ処理を行った後にエッチング処理を行う場合
は、フォトリソグラフィ処理で形成したマスクは除去するものとする。
【0040】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を
説明する。
【0041】
<半導体装置の構成>
図1(A)に、半導体装置の一例を示す。
図1(A)に示す半導体装置は、画素部10
0と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行または略平行に配
設され、かつ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と、各
々が平行または略平行に配設され、かつ信号線駆動回路106によって電位が制御される
n本の信号線109と、を有する。さらに、画素部100はマトリクス状に配設された複
数の画素101を有する。また、走査線107に沿って、各々が平行または略平行に配設
された容量線115を有する。なお、容量線115は、信号線109に沿って、各々が平
行または略平行に配設されていてもよい。
【0042】
各走査線107は、画素部100においてm行n列に配設された画素101のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素101と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素101のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素10
1に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素101のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素10
1と電気的に接続される。なお、容量線115が、信号線109に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素101のうち、いずれか
の列に配設されたm個の画素101に電気的と接続される。
【0043】
図1(B)は、
図1(A)に示す半導体装置が有する画素101の回路図の一例である
。
図1(B)に示す画素101は、走査線107および信号線109と電気的に接続され
たトランジスタ103と、一方の電極がトランジスタ103のドレイン電極と電気的に接
続され、他方の電極が一定の電位を供給する容量線115と電気的に接続された容量素子
105と、画素電極がトランジスタ103のドレイン電極および容量素子105の一方の
電極に電気的に接続され、画素電極と対向して設けられる電極(対向電極)が対向電位を
供給する配線に電気的に接続された液晶素子108と、を有する。
【0044】
液晶素子108は、トランジスタ103および画素電極が形成される基板と、対向電極
が形成される基板とで挟持される液晶の光学的変調作用によって、光の透過または非透過
を制御する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(縦方向の電
界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、画素電極が形成される基板
において対向電極(共通電極ともいう)が形成される場合、液晶にかかる電界は横方向の
電界となる。
【0045】
次いで、液晶表示装置の画素101の具体的な例について説明する。画素101の上面
図を
図2に示す。なお、
図2においては、対向電極および液晶素子を省略する。
【0046】
図2において、走査線107は、信号線109に略直交する方向(図中左右方向)に延
伸して設けられている。信号線109は、走査線107に略直交する方向(図中上下方向
)に延伸して設けられている。容量線115は、走査線107と平行方向に延伸して設け
られている。なお、走査線107および容量線115は、走査線駆動回路104(
図1(
A)参照)と電気的に接続されており、信号線109は、信号線駆動回路106(
図1(
A)参照)に電気的に接続されている。
【0047】
トランジスタ103は、走査線107および信号線109が交差する領域に設けられて
いる。トランジスタ103は、少なくとも、チャネル形成領域を有する半導体膜111と
、ゲート電極と、ゲート絶縁膜(
図2に図示せず)と、ソース電極と、およびドレイン電
極とを含む。なお、走査線107において、半導体膜111と重畳する領域はトランジス
タ103のゲート電極として機能する。信号線109において、半導体膜111と重畳す
る領域はトランジスタ103のソース電極として機能する。導電膜113において、半導
体膜111と重畳する領域はトランジスタ103のドレイン電極として機能する。このた
め、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極をそれぞれ、走査線107、信号線1
09、および導電膜113と示す場合がある。また、
図2において、走査線107は、上
面形状において端部が半導体膜の端部より外側に位置する。このため、走査線107はバ
ックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタに
含まれる半導体膜111に光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制するこ
とができる。
【0048】
また、酸化物半導体は適切な条件にて処理することでトランジスタのオフ電流を極めて
低減することができるため、本発明の一態様では半導体膜111は酸化物半導体を用いる
。これにより、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0049】
また、酸化物半導体は、青色を呈する光を吸収する傾向があるため、好ましい。青色を
呈する光は、眼の角膜や水晶体で吸収されずに、網膜まで到達するため、長期的な網膜へ
の影響(例えば、加齢黄斑変性など)や、夜中まで青色の光に暴露された際の概日リズム
への悪影響などを及ぼす。このため、酸化物半導体により青色を呈する光を吸収すること
で半導体装置の使用者の目の疲労を低減できる。
【0050】
また、導電膜113は、開口117を通じて透光性を有する導電膜で形成される画素電
極121bと電気的に接続されている。なお、
図2において、画素電極121bはハッチ
ングを省略して図示している。
【0051】
容量素子105は、画素101内の容量線115および信号線109で囲まれる領域に
設けられている。容量素子105は、開口123aおよび開口123bに設けられた電極
121aおよび導電膜125を通じて容量線115と電気的に接続されている。容量素子
105は、透光性を有する酸化物半導体で形成され、導電率を増大させた透光性を有する
導電膜120と、透光性を有する画素電極121bと、誘電体膜として、トランジスタ1
03に含まれ、透光性を有する絶縁膜(
図2に図示せず)とで構成されている。即ち、容
量素子105は透光性を有する。
【0052】
このように導電膜120は透光性を有するため、画素101内に容量素子105を大き
く(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には55%以
上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた半導体
装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶表示装置におい
ては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため、解像度の高い
半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しかしながら、本実
施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画素に設けること
で、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。代表的には
、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上である高解像度の半導体装置
に好適に用いることができる。また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても
、開口率を高めることができるため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用するこ
とができ、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0053】
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの特徴について記載する。酸化物半導体を
用いたトランジスタはnチャネル型トランジスタである。また、酸化物半導体に含まれる
酸素欠損はキャリアを生成することがあり、トランジスタの電気特性および信頼性を低下
させる恐れがある。例えば、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動し、ゲー
ト電圧が0Vの場合にドレイン電流が流れてしまうことがある。このように、ゲート電圧
が0Vの場合にドレイン電流が流れてしまうことをノーマリーオン特性という。なお、ゲ
ート電圧が0Vの場合にドレイン電流が流れていないとみなすことをノーマリーオフ特性
という。
【0054】
そこで、半導体膜111に酸化物半導体を用いる際、半導体膜111である酸化物半導
体膜に含まれる欠陥、代表的には酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。
例えば、磁場の向きを膜面に対して平行に印加した電子スピン共鳴法によるg値=1.9
3のスピン密度(酸化物半導体膜に含まれる欠陥密度に相当する)は、測定器の検出下限
以下まで低減されていることが好ましい。酸化物半導体膜に含まれる欠陥、代表的には酸
素欠損をできる限り低減することで、トランジスタ103がノーマリーオン特性となるこ
とを抑制することができ、半導体装置の電気特性および信頼性を向上させることができる
。
【0055】
トランジスタのしきい値電圧のマイナス方向への変動は酸素欠損だけではなく、酸化物
半導体に含まれる水素(水などの水素化合物を含む)によっても引き起こされることがあ
る。酸化物半導体に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、
酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に欠損(酸素欠損ともいえる)を形成
する。また、水素の一部が酸素と反応することで、キャリアである電子を生成してしまう
。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性
となりやすい。
【0056】
そこで、半導体膜111に酸化物半導体を用いる際、酸化物半導体膜は水素ができる限
り低減されていることが好ましい。具体的には、半導体膜111において、二次イオン質
量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometr
y)により得られる水素濃度を、5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×
1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下
、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
【0057】
また、半導体膜111は、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはア
ルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×101
6atoms/cm3以下にする。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導
体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタ103のオフ電流を増大さ
せることがある。
【0058】
また、半導体膜111である酸化物半導体膜に窒素が含まれていると、キャリアである
電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸
化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化
物半導体膜において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、窒素濃
度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
【0059】
このように、不純物(水素、窒素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属など)をでき
る限り低減させ、高純度化させた酸化物半導体膜を半導体膜111とすることで、トラン
ジスタ103がノーマリーオン特性となることを抑制でき、トランジスタ103のオフ電
流を極めて低減することができる。従って、良好な電気特性に有する半導体装置を作製で
きる。また、信頼性を向上させた半導体装置を作製することができる。
【0060】
なお、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、
いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅Wが1×106μmでチャネル長
Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が
1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以
下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。この場合、トランジ
スタのチャネル幅で除した数値に相当するオフ電流は、100zA/μm以下であること
が分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子
から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った
。当該測定では、上記トランジスタに高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域
に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測
定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、
数十yA/μmという、さらに低いオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度
化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さい。
【0061】
次いで、
図2の一点鎖線A1-A2間、一点鎖線B1-B2間、一点鎖線C1-C2間
、および走査線駆動回路104(
図1(A)参照)に設けられるトランジスタの断面図を
図3に示す。ここでは、走査線駆動回路104の上面図を省略すると共に、走査線駆動回
路104の断面図をD1-D2に示す。なお、ここでは、走査線駆動回路104に設けら
れるトランジスタの断面図を示すが、該トランジスタは信号線駆動回路106にも設ける
ことができる。
【0062】
はじめに、画素101の一点鎖線A1-A2間、一点鎖線B1-B2間、および一点鎖
線C1-C2間の構造について説明する。基板102上に、トランジスタ103のゲート
電極を含む走査線107と、走査線107と同一表面上に設けられている容量線115と
が設けられている。走査線107および容量線115上にゲート絶縁膜127が設けられ
ている。ゲート絶縁膜127の走査線107と重畳する領域上に半導体膜111が設けら
れており、ゲート絶縁膜127上に導電膜120が設けられている。半導体膜111上、
およびゲート絶縁膜127上にトランジスタ103のソース電極を含む信号線109と、
トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113とが設けられている。導電膜12
0上に導電膜125が設けられている。ゲート絶縁膜127上、信号線109上、半導体
膜111上、導電膜113上、導電膜125上、導電膜120上にトランジスタ103の
保護絶縁膜として機能する絶縁膜129、絶縁膜131および絶縁膜133が設けられて
いる。ゲート絶縁膜127、絶縁膜129、絶縁膜131および絶縁膜133には、容量
線115に達する開口123aが設けられており、また、絶縁膜129、絶縁膜131お
よび絶縁膜133には、導電膜125に達する開口123bが設けられており、開口12
3a、開口123b、容量線115上、導電膜125上および絶縁膜133上に電極12
1aが設けられている。絶縁膜129、絶縁膜131および絶縁膜133には導電膜11
3に達する開口117(
図2参照)が設けられており、開口117および絶縁膜133上
に画素電極121bが設けられている。
【0063】
本実施の形態に示す容量素子105は、一対の電極のうち一方の電極が半導体膜111
と同様に形成され、導電率を増大させた導電膜120であり、一対の電極のうち他方の電
極が画素電極121bであり、一対の電極の間に設けられた誘電体膜が絶縁膜129、絶
縁膜131および絶縁膜133である。
【0064】
次に、走査線駆動回路104に設けられるトランジスタの構造について説明する。基板
102上に、トランジスタ623のゲート電極627が設けられている。ゲート電極62
7上にゲート絶縁膜127が設けられている。ゲート絶縁膜127のゲート電極627と
重畳する領域上に半導体膜628が設けられている。半導体膜628上、およびゲート絶
縁膜127上にトランジスタ623のソース電極629およびドレイン電極639が設け
られている。ゲート絶縁膜127上、ソース電極629上、半導体膜628上、およびド
レイン電極639上にトランジスタ623の保護絶縁膜として機能する絶縁膜129、絶
縁膜131および絶縁膜133が設けられている。絶縁膜133上には、導電膜641が
設けられている。
【0065】
なお、基板102と、走査線107、容量線115、ゲート電極627、ゲート絶縁膜
127との間には下地絶縁膜が設けられていてもよい。
【0066】
トランジスタ623において、半導体膜628を介して、ゲート電極627と重なる導
電膜641を設けることで、異なるドレイン電圧において、オン電流の立ち上がりゲート
電圧のばらつきを低減することができる。また、導電膜641と対向する半導体膜628
の面において、ソース電極629およびドレイン電極639の間に流れる電流を制御する
ことが可能であり、異なるトランジスタにおける電気特性のばらつきを低減することがで
きる。また、導電膜641を設けることで、周囲の電界の変化が半導体膜628へ与える
影響を軽減し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。さらには、導電膜64
1の電位を、駆動回路の最低電位(Vss、例えばソース電極629の電位を基準とする
場合、ソース電極629の電位)と同電位またはそれと同等電位とすることで、トランジ
スタのしきい値電圧の変動を低減することが可能であり、トランジスタの信頼性を高める
ことができる。ただし、場合によっては、または、状況に応じて、導電膜641を設けな
いことも可能である。
【0067】
絶縁膜129および絶縁膜131は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ア
ルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属酸化物などの酸化絶
縁材料を用いた、単層構造または積層構造で設けることができる。
【0068】
絶縁膜129の厚さは、5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以
下、好ましくは10nm以上30nm以下とすることができる。絶縁膜131の厚さは、
30nm以上500nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下とすることがで
きる。
【0069】
また、絶縁膜133は、例えば窒化酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、
窒化酸化アルミニウムなどの窒化絶縁材料を用いた、単層構造または積層構造で設けるこ
とができる。
【0070】
絶縁膜133として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けてもよい。当該窒化絶縁膜
としては、例えば、昇温脱離ガス分析(以下、TDS分析とする)によって測定される、
表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理
における水素分子の放出量が、5.0×1021分子/cm3未満であり、好ましくは3
.0×1021分子/cm3未満であり、さらに好ましくは1.0×1021分子/cm
3未満である窒化絶縁膜である。
【0071】
絶縁膜133は、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制する機能を発揮できる厚
さとする。例えば、50nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上150nm以
下、さらに好ましくは50nm以上100nm以下とすることができる。
【0072】
また、トランジスタ103およびトランジスタ623上に窒化絶縁膜である絶縁膜13
3を設けることで、該酸化シリコン膜に含まれる炭素等の不純物が絶縁膜133でブロッ
キングされ、トランジスタ103およびトランジスタ623の半導体膜111および半導
体膜628への不純物の移動が低減されるため、トランジスタの電気特性のばらつきを低
減することが可能である。
【0073】
さらに、絶縁膜129および絶縁膜131の一方または双方は、化学量論的組成を満た
す酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜であることが好ましい。このようにすることで
、当該酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防止するとともに、酸素過剰領域に含まれる当
該酸素を酸化物半導体膜に移動させ、酸素欠損を補填することが可能となる。例えば、T
DS分析によって測定される、表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100
℃以上500℃以下の加熱処理における酸素分子の放出量が、1.0×1018分子/c
m3以上ある酸化絶縁膜を用いることで、当該酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損を補填
することができる。なお、絶縁膜129および絶縁膜131の一方または双方において、
化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域(酸素過剰領域)が部分的に存在している酸
化絶縁膜であってもよく、少なくとも半導体膜111と重畳する領域に酸素過剰領域が存
在することで、当該酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防止するとともに、酸素過剰領域
に含まれる当該酸素を酸化物半導体膜に移動させ、酸素欠損を補填することが可能となる
。
【0074】
絶縁膜131が化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜である
場合、絶縁膜129は、酸素を透過する酸化絶縁膜とすることが好ましい。なお、絶縁膜
129において、外部から絶縁膜129に入った酸素は、全て絶縁膜129を通過して移
動せず、絶縁膜129にとどまる酸素もある。また、あらかじめ絶縁膜129に含まれて
おり、絶縁膜129から外部に移動する酸素もある。そこで、絶縁膜129は酸素の拡散
係数が大きい酸化絶縁膜であることが好ましい。
【0075】
また、絶縁膜129は半導体膜111および半導体膜628である酸化物半導体膜と接
することから、酸素を透過させるだけではなく、半導体膜111との界面準位密度が低く
なる酸化絶縁膜であることが好ましい。例えば、絶縁膜129は絶縁膜131よりも膜中
の欠陥密度が低い酸化絶縁膜であることが好ましい。具体的には、電子スピン共鳴測定に
よるg値=2.001(E´-center)のスピン密度が3.0×1017spin
s/cm3以下、好ましくは5.0×1016spins/cm3以下の酸化絶縁膜であ
る。なお、電子スピン共鳴測定によるg値=2.001のスピン密度は、絶縁膜129に
含まれるダングリングボンドの存在量に対応する。
【0076】
また、絶縁膜129および絶縁膜131の一方または双方が窒素に対するバリア性を有
する絶縁膜であることが好ましい。例えば、緻密な酸化絶縁膜とすることで窒素に対する
バリア性を有することができ、具体的には、25℃において0.5重量%のフッ酸を用い
た場合のエッチング速度が10nm/分以下である酸化絶縁膜とすることが好ましい。
【0077】
なお、絶縁膜129および絶縁膜131の一方または双方を、酸化窒化シリコンまたは
窒化酸化シリコンなど、窒素を含む酸化絶縁膜とする場合、SIMSより得られる窒素濃
度は、SIMS検出下限以上3×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×10
18atoms/cm3以上1×1020atoms/cm3以下とする。このようにす
ることで、トランジスタ103に含まれる半導体膜111への窒素の移動量を少なくする
ことができる。また、このようにすることで、窒素を含む酸化絶縁膜自体の欠陥量を少な
くすることができる。
【0078】
以下に、上記構造の構成要素について詳細を記載する。
【0079】
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、半導体装置の作製工程にお
いて行う熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、
セラミック基板、プラスチック基板などがあり、ガラス基板としては、バリウムホウケイ
酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラ
ス基板を用いるとよい。また、ステンレス合金などの透光性を有していない基板を用いる
こともできる。その場合は、基板表面に絶縁膜を設けることが好ましい。なお、基板10
2として石英基板、サファイア基板、単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、化合物半導
体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることも
できる。
【0080】
走査線107、容量線115、およびゲート電極627は大電流を流すため、金属膜で
形成することが好ましく、代表的には、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングス
テン(W)タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ネ
オジム(Nd)、スカンジウム(Sc)などの金属材料またはこれらを主成分とする合金
材料を用いた、単層構造または積層構造で設ける。
【0081】
走査線107、容量線115、およびゲート電極627の一例としては、シリコンを含
むアルミニウムを用いた単層構造、アルミニウム上にチタンを積層する二層構造、窒化チ
タン上にチタンを積層する二層構造、窒化チタン上にタングステンを積層する二層構造、
窒化タンタル上にタングステンを積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合
金上に銅を積層する二層構造、窒化チタン上に銅を積層し、さらにその上にタングステン
を形成する三層構造などがある。
【0082】
また、走査線107、容量線115、およびゲート電極627の材料として、画素電極
121bに適用可能な透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0083】
さらに、走査線107、容量線115、およびゲート電極627の材料として、窒素を
含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn-Ga-Zn系酸化物や、窒素を含むIn
-Sn系酸化物や、窒素を含むIn-Ga系酸化物や、窒素を含むIn-Zn系酸化物や
、窒素を含むSn系酸化物や、窒素を含むIn系酸化物や、金属窒化膜(InN、SnN
など)を用いることができる。これらの材料は5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有
する。トランジスタ103の半導体膜111に酸化物半導体を用いる場合、走査線107
(トランジスタ103のゲート電極)として窒素を含む金属酸化物を用いることで、トラ
ンジスタ103のしきい値電圧をプラス方向に変動させることができ、所謂ノーマリーオ
フ特性を有するトランジスタを実現できる。例えば、窒素を含むIn-Ga-Zn系酸化
物を用いる場合、少なくとも半導体膜111である酸化物半導体膜より高い窒素濃度、具
体的には窒素濃度が7原子%以上のIn-Ga-Zn系酸化物を用いることができる。
【0084】
走査線107、容量線115、およびゲート電極627において、低抵抗材料であるア
ルミニウムや銅を用いることが好ましい。アルミニウムや銅を用いることで、信号遅延を
低減し、表示品位を高めることができる。なお、アルミニウムは耐熱性が低く、ヒロック
、ウィスカー、あるいはマイグレーションによる不良が発生しやすい。アルミニウムのマ
イグレーションを防ぐため、アルミニウムに、モリブデン、チタン、タングステンなどの
、アルミニウムよりも融点の高い金属材料を積層することが好ましい。また、銅を用いる
場合も、マイグレーションによる不良や銅元素の拡散を防ぐため、モリブデン、チタン、
タングステンなどの、銅よりも融点の高い金属材料を積層することが好ましい。
【0085】
ゲート絶縁膜127は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、
窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金
属酸化物などの絶縁材料を用いた、単層構造または積層構造で設ける。なお、半導体膜1
11である酸化物半導体膜との界面特性を向上させるため、ゲート絶縁膜127において
少なくとも半導体膜111と接する領域は酸化絶縁膜で形成することが好ましい。
【0086】
また、ゲート絶縁膜127に、酸素、水素、水などに対するバリア性を有する絶縁膜を
設けることで、半導体膜111である酸化物半導体膜からの酸素の外部への拡散と、外部
から当該酸化物半導体膜への水素、水等の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等な
どに対するバリア性を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウ
ム膜、酸化ガリウム膜、酸化窒化ガリウム膜、酸化イットリウム膜、酸化窒化イットリウ
ム膜、酸化ハフニウム膜、酸化窒化ハフニウム膜、窒化シリコン膜などがある。
【0087】
また、ゲート絶縁膜127として、ハフニウムシリケート(HfSixOy)、窒素を
有するハフニウムシリケート(HfSixOy)、窒素を有するハフニウムアルミネート
(HfAlxOy)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-k材料を用い
ることでトランジスタ103のゲートリークを低減できる。
【0088】
また、ゲート絶縁膜127は、以下の積層構造とすることが好ましい。第1の窒化シリ
コン膜として、欠陥量が少ない窒化シリコン膜を設け、第1の窒化シリコン膜上に第2の
窒化シリコン膜として、水素脱離量およびアンモニア脱離量の少ない窒化シリコン膜を設
け、第2の窒化シリコン膜上に、上記ゲート絶縁膜127で羅列した酸化絶縁膜のいずれ
かを設けることが好ましい。
【0089】
第2の窒化シリコン膜としては、昇温脱離ガス分析法において、水素分子の脱離量が5
×1021分子/cm3未満、好ましくは3×1021分子/cm3以下、さらに好まし
くは1×1021分子/cm3以下であり、アンモニア分子の脱離量が1×1022分子
/cm3未満、好ましくは5×1021分子/cm3以下、さらに好ましくは1×102
1分子/cm3以下である窒化絶縁膜を用いることが好ましい。上記第1の窒化シリコン
膜および第2の窒化シリコン膜をゲート絶縁膜127の一部として用いることで、ゲート
絶縁膜127として、欠陥量が少なく、かつ水素およびアンモニアの脱離量の少ないゲー
ト絶縁膜を形成することができる。この結果、ゲート絶縁膜127に含まれる水素および
窒素の、半導体膜111への移動量を低減することが可能である。
【0090】
酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体膜およびゲート絶縁膜の界
面またはゲート絶縁膜に捕獲準位(界面準位ともいう)が存在すると、トランジスタのし
きい値電圧の変動、代表的にはしきい値電圧のマイナス方向への変動、およびトランジス
タがオン状態となるときにドレイン電流が一桁変化するのに必要なゲート電圧を示すサブ
スレッショルド係数(S値)の増大の原因となる。この結果、トランジスタごとに電気特
性がばらつくという問題がある。このため、ゲート絶縁膜として、欠陥量の少ない窒化シ
リコン膜を用いることで、また、半導体膜111と接する領域に酸化絶縁膜を設けること
で、しきい値電圧のマイナスシフトを低減すると共に、S値の増大を抑制することができ
る。
【0091】
ゲート絶縁膜127の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以
上300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0092】
半導体膜111および半導体膜628は酸化物半導体膜であり、当該酸化物半導体膜は
、非晶質構造、単結晶構造、または多結晶構造とすることができる。また、導電膜120
も酸化物半導体膜の導電率を増大させて形成している。また、半導体膜111の厚さは、
1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上50nm以下、更に好ましくは1nm
以上30nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とすることである。
【0093】
半導体膜111および半導体膜628に適用可能な酸化物半導体として、エネルギーギ
ャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。こ
のように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタ103
のオフ電流を低減することができる。
【0094】
半導体膜111および半導体膜628に適用可能な酸化物半導体は、少なくともインジ
ウム(In)若しくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を
含むことが好ましい。また、当該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつ
きを減らすため、それらと共に、スタビライザーの一または複数を有することが好ましい
。
【0095】
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、ア
ルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザー
としては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(
Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム
(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビ
ウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが
ある。
【0096】
半導体膜111および半導体膜628に適用できる酸化物半導体としては、例えば、酸
化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二種類の金属を含む酸化物であるIn-Zn系酸化
物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系酸化物、Sn-Mg系酸化
物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三種類の金属を含む酸化物であるIn-
Ga-Zn系酸化物、In-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物、Sn-G
a-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸化物、Sn-Al-Zn系酸化物、In-Hf
-Zn系酸化物、In-Zr-Zn系酸化物、In-Ti-Zn系酸化物、In-Sc-
Zn系酸化物、In-Y-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-Ce-Zn
系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物、In-Sm-Zn系
酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-Zn系酸
化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、In-Er-Zn系酸化
物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In-Lu-Zn系酸化物
、四種類の金属を含む酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物、In-Hf-Ga
-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-Zn系酸化物、
In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用いることができ
る。
【0097】
ここで、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化
物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外
の金属元素が入っていてもよい。
【0098】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される材料を用
いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一の金属元素または
複数の金属元素、若しくは上記のスタビライザーとしての元素を示す。
【0099】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=2:2:1、あるいはI
n:Ga:Zn=3:1:2の原子数比のIn-Ga-Zn系金属酸化物を用いることが
できる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3ある
いはIn:Sn:Zn=2:1:5の原子数比のIn-Sn-Zn系金属酸化物を用いる
とよい。なお、金属酸化物の原子数比は、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス2
0%の変動を含む。
【0100】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性および電気特性(電界効果移動度、
しきい値電圧等)に応じて適切な原子数比のものを用いればよい。また、必要とする半導
体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比
、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。例えば、In-Sn-Zn系
酸化物では比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In-Ga-Z
n系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより、電界効果移動度を上げること
ができる。
【0101】
トランジスタ103のソース電極を含む信号線109、トランジスタ103のドレイン
電極を含む導電膜113、および容量素子105の導電膜120と容量線115とを電気
的に接続する導電膜125、並びにソース電極629およびドレイン電極639は、走査
線107、容量線115、およびゲート電極627に適用できる材料を用いた、単層構造
または積層構造で設ける。
【0102】
電極121a、画素電極121bおよび導電膜641は、インジウム錫酸化物、酸化タ
ングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸
化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜
鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料で
形成される。
【0103】
ここで、本実施の形態に示す画素101に含まれる各構成要素の接続について、
図1(
C)に示す回路図および
図3に示す断面図を用いて説明する。
【0104】
図1(C)は、
図1(A)に示す半導体装置が有する画素101の詳細な回路図の一例
である。
図1(C)および
図3に示すように、トランジスタ103は、ゲート電極を含む
走査線107と、ソース電極を含む信号線109と、ドレイン電極を含む導電膜113と
を有する。
【0105】
容量素子105において、電極121aおよび導電膜125を介して容量線115と接
続する導電膜120が一方の電極として機能する。また、ドレイン電極を含む導電膜11
3に接続する画素電極121bが他方の電極として機能する。また、導電膜120および
画素電極121bの間に設けられる、絶縁膜129、絶縁膜131および絶縁膜133が
誘電体膜として機能する。
【0106】
液晶素子108は、画素電極121b、対向電極154、並びに画素電極121bおよ
び対向電極154の間に設けられる液晶層で構成される。
【0107】
容量素子105において、導電膜120は、半導体膜111と同一の構成にドーパント
を添加して、容量素子105の電極として機能する。なぜなら、画素電極121bをゲー
ト電極、絶縁膜129、絶縁膜131および絶縁膜133をゲート絶縁膜、容量線115
をソース電極またはドレイン電極と機能させることが可能であり、この結果、容量素子1
05をトランジスタと同様に動作させ、導電膜120を導通状態にすることができるから
である。即ち、容量素子105をMOS(Metal Oxide Semicondu
ctor)キャパシタとすることが可能である。MOSキャパシタは、しきい値電圧(V
th)よりも高い電圧がMOSキャパシタを構成する電極の一方(容量素子105におい
ては画素電極121b)に加わると、充電される。また、容量線115に印加する電位を
制御することで導電膜120を導通状態とさせ、導電膜120を容量素子の一方の電極と
して機能させることができる。この場合、容量線115に印加する電位を以下のようにす
る。画素電極121bの電位は、液晶素子108(
図1(C)参照)を動作させるために
、ビデオ信号の中心電位を基準として、プラス方向およびマイナス方向に変動する。容量
素子105(MOSキャパシタ)を常に導通状態にさせておくためには、容量線115の
電位を、常に、画素電極121bに印加する電位よりも容量素子105(MOSキャパシ
タ)のしきい値電圧分以上低くしておく必要がある。ただし、容量素子105において、
一方の電極として機能する導電膜120は、n型であり、導電率が高いために、しきい値
電圧がマイナス方向にシフトする。導電膜120の電位(換言すると、容量線115の電
位)は、容量素子105のしきい値電圧のマイナス方向へのシフト量に応じて、画素電極
121bがとりうる最も低い電位から高くしていくことができる。従って、容量素子10
5のしきい値電圧が大きな負の値を示す場合、容量線115の電位は画素電極121bの
電位よりも高くすることができる。このようにすることで、導電膜120を常に導通状態
とすることが可能であり、容量素子105(MOSキャパシタ)を導通状態とすることが
できる。
【0108】
また、半導体膜111および半導体膜628上に設けられる絶縁膜129を、酸素を透
過させると共に、半導体膜111および半導体膜628との界面準位密度が低くなる酸化
絶縁膜とし、絶縁膜131を、酸素過剰領域を含む酸化絶縁膜または化学量論的組成を満
たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜とすることで、半導体膜111および半導体
膜628である酸化物半導体膜へ酸素を供給することが容易になり、当該酸化物半導体膜
からの酸素の脱離を防止すると共に、絶縁膜131に含まれる当該酸素を酸化物半導体膜
に移動させ、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損を補填することが可能となる。この結果
、トランジスタ103がノーマリーオン特性となることを抑制することができると共に、
容量素子105(MOSキャパシタ)が、常に導通状態とせしめるように、容量線115
に印加する電位を制御することが可能であるため、半導体装置の電気特性および信頼性を
向上させることができる。
【0109】
また、絶縁膜131上に設けられる絶縁膜133として、窒化絶縁膜を用いることで、
外部から水素や水などの不純物が、半導体膜111および導電膜120に侵入することを
抑制できる。さらには、絶縁膜133として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けるこ
とで、トランジスタ103および容量素子105(MOSキャパシタ)の電気特性変動を
抑制することができる。
【0110】
また、画素101内に容量素子105を大きく(大面積に)形成することができる。従
って、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。この結
果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0111】
<半導体装置の作製方法>
次に、上記の半導体装置に示す基板102上に設けられた素子部の作製方法について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0112】
まず、基板102に、走査線107、容量線115、およびゲート電極627を形成し
、走査線107、容量線115、およびゲート電極627を覆うように後にゲート絶縁膜
127に加工される絶縁膜126を形成し、絶縁膜126の走査線107と重畳する領域
に半導体膜111を形成し、後に画素電極121bが形成される領域と重畳するように半
導体膜119を形成する。また、ゲート電極627と重畳する領域に半導体膜628を形
成する(
図4(A)参照)。
【0113】
走査線107、容量線115、およびゲート電極627は、上記列挙した材料を用いて
導電膜を形成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することによ
り形成できる。当該導電膜は、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法な
どの各種成膜方法を用いることができる。なお、当該導電膜の厚さは特に限定されず、形
成する時間や所望の抵抗率などを考慮して決めることができる。当該マスクは、例えばフ
ォトリソグラフィ工程によって形成したレジストマスクとすることができる。また、当該
導電膜の加工はドライエッチングおよびウェットエッチングの一方または双方によって行
うことができる。
【0114】
絶縁膜126は、ゲート絶縁膜127に適用可能な材料を用いて、CVD法またはスパ
ッタリング法などの各種成膜方法を用いて形成することができる。
【0115】
また、ゲート絶縁膜127に酸化ガリウムを適用する場合は、MOCVD(Metal
Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて
絶縁膜126を形成することができる。
【0116】
半導体膜111、半導体膜119、および半導体膜628は、上記列挙した酸化物半導
体を用いて酸化物半導体膜を形成し、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、当該マス
クを用いて加工することにより形成できる。当該酸化物半導体膜は、スパッタリング法、
塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法などを用いて形成することが
できる。また、印刷法を用いることで、素子分離された半導体膜111および半導体膜1
19を絶縁膜126上に直接形成することができる。スパッタリング法で当該酸化物半導
体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源
装置またはDC電源装置などを適宜用いることができる。スパッタリングガスは、希ガス
(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガスおよび酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガ
スおよび酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい。
なお、当該マスクは、例えばフォトリソグラフィ工程によって形成したレジストマスクと
することができる。また、当該酸化物半導体膜の加工はドライエッチングおよびウェット
エッチングの一方または双方によって行うことができる。所望の形状にエッチングできる
よう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、エッチング時間
、温度など)を適宜設定する。
【0117】
半導体膜111、半導体膜119、および半導体膜628を形成した後に加熱処理をし
、半導体膜111、半導体膜119、および半導体膜628である酸化物半導体膜の脱水
素化または脱水化をすることが好ましい。当該加熱処理の温度は、代表的には、150℃
以上基板歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、さらに好ましくは300℃
以上450℃以下とする。なお、当該加熱処理は半導体膜111および半導体膜119に
加工する前の酸化物半導体膜に行ってもよい。
【0118】
当該加熱処理において、加熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体
からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば
、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(
Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid T
hermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンラ
ンプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナト
リウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処
理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置で
ある。
【0119】
当該加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは
1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム
等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素
、水などが含まれないことが好ましい。不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で加
熱してもよい。なお、処理時間は3分乃至24時間とする。
【0120】
なお、基板102と、走査線107および容量線115並びに絶縁膜126(のちのゲ
ート絶縁膜127)との間に下地絶縁膜を設ける場合、当該下地絶縁膜は、酸化シリコン
、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム
、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムなどで形成することがで
きる。なお、下地絶縁膜として、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イ
ットリウム、酸化アルミニウムなどで形成することで、基板102から不純物、代表的に
はアルカリ金属、水、水素などが、半導体膜111、半導体膜119、および半導体膜6
28に拡散することを抑制できる。下地絶縁膜は、スパッタリング法またはCVD法を用
いて形成することができる。
【0121】
次に、半導体膜119にドーパントを添加して導電率が高い導電膜120を形成する(
図4(B)参照)。
【0122】
半導体膜119にドーパントを添加する方法は、半導体膜119以外の領域にマスクを
設けて、当該マスクを用いて、水素、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、リン、ヒ素
、インジウム、スズ、アンチモンおよび希ガス元素から選ばれた一種以上のドーパントを
イオン注入法またはイオンドーピング法などで添加する。また、イオン注入法またはイオ
ンドーピング法の代わりに当該ドーパントを含むプラズマに半導体膜119を曝すことで
、当該ドーパントを添加してもよい。なお、ドーパントを添加した後、加熱処理をおこな
ってもよい。
【0123】
なお、ドーパントを添加する工程は、信号線109、導電膜113、導電膜125、ソ
ース電極629、およびドレイン電極639を形成した後に行ってもよい。その場合、導
電膜120の導電膜125に接する領域にはドーパントは添加されない。
【0124】
なお、酸化物半導体膜および透光性を有する導電膜は共に、In若しくはGaを含む酸
化物半導体膜であるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜と比較して、
透光性を有する導電膜の不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜に含まれる水素濃度
は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3
未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017a
toms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、
透光性を有する導電膜に含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好
ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms
/cm3以上である。また、酸化物半導体膜と比較して、透光性を有する導電膜に含まれ
る水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0125】
また、透光性を有する導電膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が低い。透光性を有する導
電膜の抵抗率が、酸化物半導体膜の抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下で有
ることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好
ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0126】
次に、絶縁膜126上に、トランジスタ103のソース電極を含む信号線109、トラ
ンジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113、導電膜120と容量線115とを電
気的に接続する導電膜125を形成する。また、ソース電極629およびドレイン電極6
39を形成する。
【0127】
信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629、およびドレイン電極
639は、信号線109、導電膜113、導電膜125、およびゲート電極627に適用
できる材料を用いて導電膜を形成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用い
て加工することにより形成できる。当該マスクおよび当該加工は、走査線107、容量線
115、およびゲート電極627と同じようにして行うことができる。
【0128】
次に、半導体膜111、導電膜120および半導体膜628、信号線109、導電膜1
13、導電膜125、ソース電極629、およびドレイン電極639、並びに絶縁膜12
6上に絶縁膜128を形成し、絶縁膜128上に絶縁膜130を形成し、絶縁膜130上
に絶縁膜132を形成する(
図5(A)参照)。なお、絶縁膜128、絶縁膜130およ
び絶縁膜132は連続して形成することが好ましい。このようにすることで、絶縁膜12
8、絶縁膜130および絶縁膜132のそれぞれの界面に不純物が混入することを抑制で
きる。
【0129】
絶縁膜128は、絶縁膜129に適用可能な材料を用いて、CVD法またはスパッタリ
ング法などの各種成膜方法により形成することができる。絶縁膜130は、絶縁膜131
に適用可能な材料を用いて、CVD法またはスパッタリング法などの各種成膜方法により
形成できる。絶縁膜132は、絶縁膜133に適用可能な材料を用いて、CVD法または
スパッタリング法などの各種成膜方法により形成できる。
【0130】
絶縁膜129に半導体膜111との界面準位密度が低くなる酸化絶縁膜を適用する場合
、絶縁膜128は以下の形成条件を用いて形成できる。なお、ここでは当該酸化絶縁膜と
して、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合について記載する。当該
形成条件は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃
以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に保持し、処理室に原料
ガスのシリコンを含む堆積性気体および酸化性気体を導入して処理室内における圧力を2
0Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは40Pa以上200Pa以下とし、処理室
内に設けられた電極に高周波電力を供給する条件である。
【0131】
シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化
シランなどがある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素など
がある。
【0132】
なお、シリコンを含む堆積性気体に対する酸化性気体量を100倍以上とすることで、
絶縁膜128(のちの絶縁膜129)に含まれる水素含有量を低減することが可能である
と共に、絶縁膜128(のちの絶縁膜129)に含まれるダングリングボンドを低減する
ことができる。絶縁膜130(のちの絶縁膜131)から移動する酸素は、絶縁膜128
(のちの絶縁膜129)に含まれるダングリングボンドによって捕獲される場合があるた
め、絶縁膜128(のちの絶縁膜129)に含まれるダングリングボンドが低減されてい
ると、絶縁膜130(のちの絶縁膜131)に含まれる酸素を効率よく半導体膜111へ
移動させ、半導体膜111である酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損を補填することが可
能である。この結果、当該酸化物半導体膜に混入する水素量を低減できると共に酸化物半
導体膜に含まれる酸素欠損を低減させることが可能である。
【0133】
絶縁膜131を上記の酸素過剰領域を含む酸化絶縁膜または化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜とする場合、絶縁膜130は以下の形成条件を用い
て形成できる。なお、ここでは当該酸化絶縁膜として、酸化シリコン膜または酸化窒化シ
リコン膜を形成する場合について記載する。当該形成条件は、プラズマCVD装置の真空
排気された処理室内に載置された基板を180℃以上260℃以下、さらに好ましくは1
80℃以上230℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を
100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、
処理室内に設けられた電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ま
しくは0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する。
【0134】
絶縁膜130の原料ガスは、絶縁膜128に適用できる原料ガスとすることができる。
【0135】
絶縁膜130の形成条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周波電
力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し
、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜130中における酸素含有量が化学量論的組成より
も多くなる。しかしながら、基板温度が、上記温度であると、シリコンと酸素の結合力が
弱いため、加熱により酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よ
りも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を形成することがで
きる。また、イオン注入法等により、酸素を絶縁膜130に添加して酸素含有量を増加さ
せてもよい。また、半導体膜111上に絶縁膜128が設けられている。このため、絶縁
膜130の形成工程において、絶縁膜128が半導体膜111の保護膜となる。この結果
、パワー密度の高い高周波電力を用いて絶縁膜130を形成しても、半導体膜111およ
び半導体膜628へのダメージを抑制できる。
【0136】
また、絶縁膜130は膜厚を大きくすることで加熱によって脱離する酸素の量を多くす
ることができることから、絶縁膜130は絶縁膜128より厚く設けることが好ましい。
絶縁膜128を設けることで絶縁膜130を厚く設ける場合でも被覆性を良好にすること
ができる。
【0137】
絶縁膜133を水素含有量が少ない窒化絶縁膜で設ける場合、絶縁膜132は以下の形
成条件を用いて形成できる。なお、ここでは当該窒化絶縁膜として、窒化シリコン膜を形
成する場合について記載する。当該形成条件は、プラズマCVD装置の真空排気された処
理室内に載置された基板を80℃以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上37
0℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上
250Pa以下とし、好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けら
れた電極に高周波電力を供給する。
【0138】
絶縁膜132の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体、窒素、およびアンモニ
アを用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシ
ラン、トリシラン、フッ化シランなどがある。また、窒素の流量は、アンモニアの流量に
対して5倍以上50倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下とすることが好ましい。な
お、原料ガスとしてアンモニアを用いることで、シリコンを含む堆積性気体および窒素の
分解を促すことができる。これは、アンモニアがプラズマエネルギーや熱エネルギーによ
って解離し、解離することで生じるエネルギーが、シリコンを含む堆積性気体分子の結合
および窒素分子の結合の分解に寄与するためである。このようにすることで、水素含有量
が少なく、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制することが可能な窒化シリコン膜
を形成することができる。
【0139】
少なくとも絶縁膜130を形成した後に加熱処理を行い、絶縁膜128または絶縁膜1
30に含まれる過剰酸素を半導体膜111および半導体膜628に移動させ、半導体膜1
11および半導体膜628である酸化物半導体膜の酸素欠損を補填することが好ましい。
なお、当該加熱処理は、半導体膜111の脱水素化または脱水化を行う加熱処理の詳細を
参照して適宜行うことができる。
【0140】
次に、絶縁膜126、絶縁膜128、絶縁膜130および絶縁膜132の容量線115
と重畳する領域に、容量線115に達する開口123aを、絶縁膜128、絶縁膜130
および絶縁膜132の導電膜125と重畳する領域に、導電膜125に達する開口123
bをそれぞれ形成すると共に、ゲート絶縁膜127、絶縁膜129、絶縁膜131および
絶縁膜133を形成する(
図5(B)参照)。
【0141】
開口123aは、絶縁膜126、絶縁膜128、絶縁膜130および絶縁膜132の容
量線115と重畳する領域の一部が露出されるように、開口123bは、絶縁膜128、
絶縁膜130および絶縁膜132の導電膜125と重畳する領域の一部が露出されるよう
に、マスクを形成し、当該マスクを用いて加工することで形成できる。また、同時に絶縁
膜128、絶縁膜130および絶縁膜132の導電膜113と重畳する領域に、導電膜1
13に達する開口117(
図2参照)を形成する。開口117(
図2参照)は、開口12
3aおよび開口123bと同様にして形成することができる。なお、当該マスクおよび当
該加工は、走査線107、容量線115、およびゲート電極627と同じようにして行う
ことができる。
【0142】
従来では、容量線に達する開口と導電膜(ドレイン電極)に達する開口を分けて作製し
ており、それぞれの開口の作製工程毎にマスクを形成していたが、本実施の形態のような
構成にすることで、絶縁膜128、絶縁膜130および絶縁膜132をエッチングし、導
電膜125に達する開口123bおよび導電膜113に達する開口117を形成した後、
容量線115に達する開口123aを形成するため、引き続き絶縁膜126のエッチング
が行われるが、開口123bおよび開口117では金属である導電膜125および導電膜
113が露出しているため、これ以上エッチングされない。つまり、容量線115に達す
る開口123a、導電膜125に達する開口123bおよび導電膜113に達する開口1
17を同一マスクで形成することができるため、作製工程時に用いるマスクの枚数を減ら
し、製造コストを低減することができる。
【0143】
また、導電膜120が導電膜125を介して、後に形成される電極121aと接続する
ため、開口123bにおいて、導電膜125が導電膜120のエッチング保護膜としても
機能する。このため、開口123bおよび開口117を形成した後、開口123aを形成
する際において、導電膜120のエッチングを防ぐことができる。この結果、歩留まりを
高めることが可能である。
【0144】
最後に、電極121a、画素電極121bおよび導電膜641を形成することで、基板
102に設けられる素子部を作製することができる(
図3参照)。電極121aは、開口
123aおよび開口123bを通じて容量線115および導電膜125に接する導電膜を
形成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することにより形成で
きる。また、画素電極121bは、開口117を通じて導電膜113に接する導電膜を形
成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することにより形成でき
る。なお、当該マスクおよび当該加工は、走査線107および容量線115と同じように
して行うことができる。
【0145】
<変形例1>
本発明の一態様である半導体装置において、容量素子105を構成する一方の電極であ
る導電膜120と容量線115とを電気的に接続する導電膜125の上面形状を、適宜変
更することができる。例えば、当該導電膜120と導電膜125の接触抵抗を低減させる
ために、当該導電膜125を当該導電膜120の外周に沿って接して設けることができる
。なお、導電膜125は、トランジスタ103のソース電極を含む信号線109およびト
ランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113と同じ形成工程で形成されることか
ら遮光性を有する場合があるため、ループ状に形成することが好ましい。
【0146】
<変形例2>
また、上記に示す画素101において、半導体膜が、ゲート絶縁膜とソース電極を含む
信号線109およびドレイン電極を含む導電膜113との間に位置するトランジスタを用
いたが、その代わりに、半導体膜が、ソース電極を含む信号線およびドレイン電極を含む
導電膜と、絶縁膜129の間に位置するトランジスタを用いることができる。
【0147】
<変形例3>
また、上記に示す画素101において、トランジスタとして、チャネルエッチ型のトラ
ンジスタを示したが、その代わりに、チャネル保護型のトランジスタを用いることができ
る。チャネル保護膜を設けることで、半導体膜111の表面は、信号線および導電膜の形
成工程で用いるエッチャントやエッチングガスに曝されず、半導体膜111およびチャネ
ル保護膜の間の不純物を低減できる。この結果、トランジスタのソース電極およびドレイ
ン電極の間に流れるリーク電流を低減することが可能である。
【0148】
<変形例4>
また、上記に示す画素101において、トランジスタとして、1つのゲート電極を有す
るトランジスタを示したが、半導体膜111を介して対向する2つのゲート電極を有する
トランジスタを用いることができる。
【0149】
トランジスタは、本実施の形態で説明したトランジスタ103の絶縁膜133上に、導
電膜を有する。導電膜は、少なくとも半導体膜111のチャネル形成領域と重なる。導電
膜を半導体膜111のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、導電膜の電
位は、信号線109に入力されるビデオ信号の最低電位とすることが好ましい。この結果
、導電膜と対向する半導体膜111の面において、ソース電極およびドレイン電極の間に
流れる電流を制御することが可能であり、トランジスタの電気特性のばらつきを低減する
ことができる。また、導電膜を設けることで、周囲の電界の変化が半導体膜111へ与え
る影響を軽減し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0150】
導電膜は、走査線107、信号線109、画素電極121bなどと同様の材料および方
法により形成することができる。
【0151】
以上より、容量素子の一方の電極として、トランジスタに含まれる半導体膜と同じ形成
工程で形成される半導体膜を用いることで、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容
量素子を有する半導体装置を作製することができる。この結果、表示品位の優れた半導体
装置を得ることができる。
【0152】
また、トランジスタに含まれる半導体膜である酸化物半導体膜は酸素欠損が低減され、
水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好
な電気特性を有する半導体装置となる。
【0153】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0154】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置であり、上記実施の形態と異なる構造
の半導体装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、液晶表示装置を例に
して本発明の一態様である半導体装置を説明する。また、本実施の形態で説明する半導体
装置は、上記実施の形態と比較して、容量素子の構造が異なる。なお、本実施の形態で説
明する半導体装置において、上記実施の形態で説明した半導体装置と同様の構成は、上記
実施の形態を参照することができる。
【0155】
<半導体装置の構成>
本実施の形態で説明する画素201の上面図を
図6に示す。
図6に示した画素201は
、一点鎖線内の領域において、絶縁膜229(図示せず)および絶縁膜231(図示せず
)が設けられていない。また、導電膜220上に、絶縁膜229(図示せず)および絶縁
膜231(図示せず)の端部が位置する。従って、
図6に示した画素201の容量素子2
05は、一方の電極である導電膜220と、他方の電極である画素電極221bと、誘電
体膜である絶縁膜233(図示せず)とで構成されている。
【0156】
次いで、
図6の一点鎖線A1-A2間、一点鎖線B1-B2間、一点鎖線C1-C2間
、および走査線駆動回路104(
図1(A)参照)に設けられるトランジスタの断面図を
図7に示す。ここでは、走査線駆動回路104の上面図を省略すると共に、走査線駆動回
路104の断面図をD1-D2に示す。なお、ここでは、走査線駆動回路104に設けら
れるトランジスタの断面図を示すが、当該トランジスタは信号線駆動回路106に設ける
ことができる。
【0157】
本実施の形態における画素201の断面構造は以下の通りである。基板102上に、ト
ランジスタ103のゲート電極を含む走査線107と、走査線107と同一表面上に設け
られている容量線115とが設けられている。走査線107および容量線115上にゲー
ト絶縁膜227が設けられている。ゲート絶縁膜227の走査線107と重畳する領域上
に半導体膜111が設けられており、ゲート絶縁膜227上に導電膜220が設けられて
いる。半導体膜111上、およびゲート絶縁膜227上にトランジスタ103のソース電
極を含む信号線109と、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113とが設
けられている。導電膜220上に導電膜125が設けられている。ゲート絶縁膜227上
、信号線109上、半導体膜111上、導電膜113上、導電膜125上、導電膜220
上にトランジスタ103の保護絶縁膜として機能する絶縁膜229、絶縁膜231および
絶縁膜233が設けられている。また、少なくとも容量素子205となる領域において、
導電膜220上に絶縁膜233が接して設けられている。ゲート絶縁膜227、絶縁膜2
29、絶縁膜231および絶縁膜233には、容量線115に達する開口223aが設け
られており、また、絶縁膜229、絶縁膜231および絶縁膜233には、導電膜125
に達する開口223bが設けられており、開口223a、開口223b、容量線115上
、導電膜125上および絶縁膜233上に電極221aが設けられている。絶縁膜229
、絶縁膜231および絶縁膜233には導電膜113に達する開口117(
図6参照)が
設けられており、開口117および絶縁膜233上に画素電極221bが設けられている
。なお、基板102と、走査線107および容量線115並びにゲート絶縁膜227との
間には下地絶縁膜が設けられていてもよい。
【0158】
ゲート絶縁膜227が、実施の形態1で説明したゲート絶縁膜127と同様の絶縁膜で
ある。絶縁膜229は、実施の形態1で説明した絶縁膜129と同様の絶縁膜である。絶
縁膜231は、実施の形態1で説明した絶縁膜131と同様の絶縁膜である。絶縁膜23
3は、実施の形態1で説明した絶縁膜133と同様の絶縁膜である。画素電極221bは
、実施の形態1で説明した画素電極121bと同様の画素電極である。
【0159】
本実施の形態における容量素子205のように、一方の電極である導電膜220と他方
の電極である画素電極221bとの間に設けられる誘電体膜を絶縁膜233とすることで
、誘電体膜の厚さを、実施の形態1における容量素子105の誘電体膜に比べて薄くする
ことができる。従って、本実施の形態における容量素子205は、実施の形態1における
容量素子105よりも電荷容量を増大させることができる。
【0160】
また、絶縁膜233は、実施の形態1の絶縁膜133と同様に窒化絶縁膜であることが
好ましい。絶縁膜233は半導体膜119(のちの導電膜220)と接することから、当
該窒化絶縁膜に含まれる窒素、さらには水素を半導体膜119に移動させることができ、
半導体膜119をn型とし、導電率を増大させることができる。また、絶縁膜233を窒
化絶縁膜とし、絶縁膜233が半導体膜119に接した状態で加熱処理を行うことで、当
該窒化絶縁膜に含まれる窒素、さらには水素を半導体膜119に移動させ、導電膜220
を形成することができる。
【0161】
なお、酸化物半導体膜および透光性を有する導電膜は共に、In若しくはGaを含む酸
化物半導体膜であるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜と比較して、
透光性を有する導電膜の不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜に含まれる水素濃度
は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3
未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017a
toms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、
透光性を有する導電膜に含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好
ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms
/cm3以上である。また、酸化物半導体膜と比較して、透光性を有する導電膜に含まれ
る水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0162】
また、透光性を有する導電膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が低い。透光性を有する導
電膜の抵抗率が、酸化物半導体膜の抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下で有
ることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好
ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0163】
また、導電膜220は半導体膜111よりも導電率が高い領域を有する。本構成におい
て、少なくとも導電膜220の絶縁膜233と接する領域はn型であり、半導体膜111
の絶縁膜229と接する領域よりも導電率が高い。
【0164】
本実施の形態における半導体装置において、容量素子205を動作させる方法は、実施
の形態1で記載した容量素子105を動作させる方法と同じように、容量素子205を動
作させる期間において、導電膜220の電位(換言すると、容量線115の電位)を、常
に、画素電極221bの電位よりも容量素子205(MOSキャパシタ)のしきい値電圧
(Vth)分以上低くする。ただし、容量素子205において、一方の電極として機能す
る導電膜220は、n型であり、導電率が高いために、しきい値電圧がマイナス方向にシ
フトする。導電膜220の電位(換言すると、容量線115の電位)は、容量素子205
のしきい値電圧のマイナス方向へのシフト量に応じて、画素電極221bがとりうる最も
低い電位から高くしていくことができる。従って、容量素子205のしきい値電圧が大き
な負の値を示す場合、容量線115の電位は画素電極221bの電位よりも高くすること
ができる。
【0165】
本実施の形態のように、容量素子205の一方の電極である導電膜220をn型とし、
導電率を増大させることで、しきい値電圧をマイナス方向にシフトさせることが可能であ
るため、実施の形態1の容量素子105と比較して、容量素子205を動作させるために
必要な電位の選択幅を広げることができる。従って、本実施の形態は、容量素子205を
動作させる期間において常に安定して容量素子205を動作させることができるため好ま
しい。
【0166】
また、容量素子205に含まれる導電膜220がn型であり、導電率が高いため、容量
素子205の平面面積を縮小しても十分な電荷容量を得ることができる。導電膜220を
構成する酸化物半導体は、可視光の透過率が80乃至90%であるため、導電膜220の
面積を縮小し、画素において導電膜220が形成されない領域を設けることで、バックラ
イトなどの光源から照射される光の透過率を高めることができる。
【0167】
<半導体装置の作製方法>
次いで、本実施の形態に示す基板102上に設けられた素子部の作製方法について、図
8および
図9を用いて説明する。
【0168】
まず、基板102上に、走査線107、容量線115、およびゲート電極627を形成
し、基板102、走査線107、容量線115、およびゲート電極627上にゲート絶縁
膜227に加工される絶縁膜226を形成し、当該絶縁膜上に、半導体膜111、半導体
膜119、および半導体膜628を形成し、絶縁膜226上に、トランジスタ103のソ
ース電極を含む信号線109、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113、
のちに導電膜220と容量線115とを電気的に接続する導電膜125を形成する。また
、導電膜125と同時にソース電極629およびドレイン電極639を形成する。その後
、半導体膜111、半導体膜119(のちに導電膜220)および半導体膜628、信号
線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629、およびドレイン電極639
、並びに絶縁膜226上に絶縁膜228を形成し、絶縁膜228上に絶縁膜230を形成
する。(
図8(A)参照)。なお、ここまでの工程は、実施の形態1を参酌して行うこと
ができる。
【0169】
次に、少なくとも半導体膜119と重畳する絶縁膜230の領域上にマスクを形成し、
当該マスクを用いて絶縁膜228および絶縁膜230を加工して半導体膜119を露出さ
せる(
図8(B)参照)。当該マスクは、フォトリソグラフィ工程により形成したレジス
トマスクを用いることができ、当該加工は、ドライエッチングおよびウェットエッチング
の一方または双方によって行うことができる。
【0170】
次に、半導体膜119を露出させた領域上および絶縁膜230上に絶縁膜232を形成
する(
図9(A)参照)。絶縁膜232は、実施の形態1で説明した絶縁膜132と同様
の絶縁膜である。また、絶縁膜232を形成した後など、絶縁膜232が半導体膜119
に接した状態で加熱処理を行ってもよい。なお、ここまでの工程についても実施の形態1
を参照して行うことができる。
【0171】
また、絶縁膜232は、実施の形態1の絶縁膜132と同様に窒化絶縁膜であることが
好ましい。絶縁膜232は半導体膜119と接することから、窒化絶縁膜に含まれる水素
または/および窒素を半導体膜119に移動させることができ、半導体膜119をn型と
し、導電率を増大させた導電膜220を形成することができる。
【0172】
なお、酸化物半導体膜および透光性を有する導電膜は共に、In若しくはGaを含む酸
化物半導体膜であるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜と比較して、
透光性を有する導電膜の不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜に含まれる水素濃度
は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3
未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017a
toms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、
透光性を有する導電膜に含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好
ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms
/cm3以上である。また、酸化物半導体膜と比較して、透光性を有する導電膜に含まれ
る水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0173】
また、透光性を有する導電膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が低い。透光性を有する導
電膜の抵抗率が、酸化物半導体膜の抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下で有
ることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好
ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0174】
次に、絶縁膜226、絶縁膜228、絶縁膜230および絶縁膜232の容量線115
と重畳する領域に、容量線115に達する開口223aを、絶縁膜228、絶縁膜230
および絶縁膜232の導電膜125と重畳する領域に、導電膜125に達する開口223
bをそれぞれ形成すると共にゲート絶縁膜227、絶縁膜229、絶縁膜231および絶
縁膜233を形成する(
図9(B)参照)。
【0175】
開口223aは、絶縁膜226、絶縁膜228、絶縁膜230および絶縁膜232の容
量線115と重畳する領域の一部が露出されるように、開口223bは、絶縁膜228、
絶縁膜230および絶縁膜232の導電膜125と重畳する領域の一部が露出されるよう
に、マスクを形成し、当該マスクを用いて加工することで形成できる。また、同時に絶縁
膜228、絶縁膜230および絶縁膜232の導電膜113と重畳する領域に、導電膜1
13に達する開口117(
図6参照)を形成する。開口117(
図6参照)は、開口22
3aおよび開口223bと同様にして形成することができる。なお、当該マスクおよび当
該加工は、走査線107、容量線115、およびゲート電極627と同じようにして行う
ことができる。
【0176】
従来では、容量線に達する開口と導電膜(ドレイン電極)に達する開口を分けて作製し
ており、それぞれの開口の作製工程毎にマスクを形成していたが、本実施の形態のような
構成にすることで、絶縁膜228、絶縁膜230および絶縁膜232をエッチングし、導
電膜125に達する開口223bおよび導電膜113に達する開口117を形成した後で
も金属である導電膜125および導電膜113があるためこれ以上エッチングされない。
一方、容量線115上の絶縁膜226はエッチングされ、容量線115に達する開口22
3aが形成される。つまり、容量線115に達する開口223a、導電膜125に達する
開口223bおよび導電膜113に達する開口117を同一マスクで形成することができ
るため、作製工程時に用いるマスクの枚数を減らし、製造コストを低減することができる
。
【0177】
また、導電膜220が導電膜125を介して、後に形成される電極221aと接続する
ため、開口223bにおいて、導電膜125が導電膜220のエッチング保護膜としても
機能する。このため、開口223bおよび開口117を形成した後、開口223aを形成
する際において、導電膜220のエッチングを防ぐことができる。この結果、歩留まりを
高めることが可能である。
【0178】
最後に、電極221a、画素電極221bおよび導電膜641を形成することで、基板
102に設けられる素子部を作製することができる(
図7参照)。なお、ここまでの工程
についても実施の形態1を参照して行うことができる。
【0179】
以上の工程により、本実施の形態における半導体装置を作製することができる。
【0180】
<変形例>
本発明の一態様である半導体装置において、容量素子の構造を適宜変更することができ
る。本構造の具体例について、
図10を用いて説明する。なお、ここでは、
図6および図
7で説明した容量素子205と異なる容量素子245についてのみ説明する。
【0181】
半導体膜119をn型とし、導電率を増大させるために、ゲート絶縁膜227を、窒化
絶縁膜である絶縁膜225と、酸化絶縁膜である絶縁膜226との積層構造とし、少なく
とも半導体膜119が設けられる領域において窒化絶縁膜である絶縁膜225のみを設け
る。このような構造とすることで絶縁膜225である窒化絶縁膜が半導体膜119の下面
と接することになり、半導体膜119をn型とし、導電率を増大させた導電膜220を形
成することができる。この場合、容量素子245の誘電体膜は、絶縁膜129、絶縁膜1
31および絶縁膜133である。なお、絶縁膜225および絶縁膜226は、ゲート絶縁
膜227に適用できる絶縁膜を適宜用いることができ、絶縁膜225は絶縁膜133と同
様の絶縁膜としてもよい。また、本構成とするためには、実施の形態1を参照して適宜、
絶縁膜226を加工すればよい。
図10に示す構造とすることで、絶縁膜129および絶
縁膜131のエッチングを行わないため、半導体膜119の膜厚の減少を防ぐことが可能
であるため、
図6および
図7に示す半導体装置と比較して、歩留まりが向上する。
【0182】
なお、
図10に示す構成において、導電膜220の上面が絶縁膜133と接する構成で
あってもよい。つまり、
図10に示す絶縁膜129および絶縁膜131において、導電膜
220と接する領域が除去されてもよい。この場合、容量素子245の誘電体膜は絶縁膜
133である。導電膜220の上面および下面を窒化絶縁膜と接する構成とすることで、
片面のみ窒化絶縁膜と接する場合よりも効率よく十分に半導体膜をn型とし、導電率を増
大させることができる。
【0183】
なお、酸化物半導体膜および透光性を有する導電膜は共に、In若しくはGaを含む酸
化物半導体膜であるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜と比較して、
透光性を有する導電膜の不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜に含まれる水素濃度
は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3
未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017a
toms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、
透光性を有する導電膜に含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好
ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms
/cm3以上である。また、酸化物半導体膜と比較して、透光性を有する導電膜に含まれ
る水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0184】
以上より、容量素子の一方の電極として、トランジスタに含まれる半導体膜と同じ形成
工程で形成される半導体膜を用いることで、開口率を高めつつ、代表的には55%以上、
好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた容量素子を
有する半導体装置を作製することができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得
ることができる。
【0185】
また、トランジスタに含まれる半導体膜である酸化物半導体膜は酸素欠損が低減され、
水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好
な電気特性を有する半導体装置となる。
【0186】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成およびその変形例と
適宜組み合わせて用いることができる。
【0187】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
および容量素子において、半導体膜である酸化物半導体膜に適用可能な一態様について説
明する。
【0188】
酸化物半導体膜は、単結晶酸化物半導体膜と非単結晶酸化物半導体膜とに大別される。
非単結晶酸化物半導体膜とは、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、多結晶酸
化物半導体膜、CAAC-OS(C Axis Aligned Crystallin
e Oxide Semiconductor)膜などをいう。
【0189】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない
酸化物半導体膜である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造
の酸化物半導体膜が典型である。
【0190】
微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結
晶ともいう。)を含む。従って、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも
原子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よ
りも欠陥準位密度が低いという特徴がある。
【0191】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体
内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも
欠陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行
う。
【0192】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0193】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0194】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0195】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0196】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0197】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0198】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0199】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0200】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0201】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向
性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0202】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変
動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0203】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、C
AAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0204】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置
されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」
とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って
、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0205】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0206】
また、CAAC-OS膜は、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを
用い、スパッタリング法によって成膜することが好ましい。当該スパッタリング用ターゲ
ットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面
から劈開し、a-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子
として剥離することがある。この場合、当該平板状またはペレット状のスパッタリング粒
子が、結晶状態を維持したまま被成膜面に到達することで、CAAC-OS膜を成膜する
ことができる。
【0207】
平板状のスパッタリング粒子は、例えば、a-b面に平行な面の円相当径が3nm以上
10nm以下、厚さ(a-b面に垂直な方向の長さ)が0.7nm以上1nm未満である
。なお、平板状のスパッタリング粒子は、a-b面に平行な面が正三角形または正六角形
であってもよい。ここで、面の円相当径とは、面の面積と等しい正円の直径をいう。
【0208】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0209】
成膜時の基板温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーショ
ンが起こる。具体的には、基板温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以
上500℃以下として成膜する。成膜時の基板温度を高めることで、平板状のスパッタリ
ング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒
子の平らな面が基板に付着する。このとき、スパッタリング粒子が正に帯電することで、
スパッタリング粒子同士が反発しながら基板に付着するため、スパッタリング粒子が偏っ
て不均一に重なることがなく、厚さの均一なCAAC-OS膜を成膜することができる。
【0210】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)
を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点
が-80℃以下、好ましくは-100℃以下、さらに好ましくは-120℃以下である成
膜ガスを用いる。
【0211】
また、スパッタリング法を用いて成膜する場合、吸着型の真空ポンプなどを用いて、膜
を成膜する成膜室内の残留水分を除去することができる。吸着型の真空ポンプとしては、
例えばクライオポンプ、イオンポンプ、またはチタンサブリメーションポンプなどを用い
ることができる。また、コールドトラップを設けたターボ分子ポンプを用いて成膜室内の
残留水分を除去することもできる。上記真空ポンプを用いることにより、不純物を含む排
気の逆流を低減することができる。
【0212】
また、スパッタリング法を用いて成膜する場合、パーティクル数を増大させないために
、インジウムを含むターゲットを用いると好ましい。また、ガリウムの原子数比が比較的
小さい酸化物ターゲットを用いることが好ましい。特に、インジウムを含むターゲットを
用いる場合、ターゲットの導電率を高めることができ、DC放電が容易となるため、大面
積の基板へ対応しやすくなる。従って、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0213】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0214】
CAAC-OS膜を成膜した後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、100
℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下とする。また、加熱処理の時
間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時間以下とする。また、加熱処理は、
不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ましくは、不活性雰囲気で加熱処理を
行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰囲気での加熱処理により、CAAC
-OS膜の不純物濃度を短時間で低減することができる。一方、不活性雰囲気での加熱処
理によりCAAC-OS膜に酸素欠損が生成されることがある。その場合、酸化性雰囲気
での加熱処理によって該酸素欠損を低減することができる。また、加熱処理を行うことで
、CAAC-OS膜の結晶性をさらに高めることができる。なお、加熱処理は1000P
a以下、100Pa以下、10Pa以下または1Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧
下では、CAAC-OS膜の不純物濃度をさらに短時間で低減することができる。
【0215】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn-O化合物ターゲットに
ついて以下に示す。
【0216】
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処
理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-
Ga-Zn系金属酸化物ターゲットとする。なお、当該加圧処理は、冷却(または放冷)
しながら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。なお、X、YおよびZは任意の正
数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZ
nOZ粉末が、InOX:GaOY:ZnOZ=2:2:1、8:4:3、3:1:1、
1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、およびその混合す
るmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0217】
ここで、結晶状態における酸化物半導体(OSと示す。)およびシリコン半導体(Si
と示す。)の対比を表1に示す。なお、酸化物半導体には、In-Ga-Zn系酸化物を
用いる。
【0218】
【0219】
酸化物半導体の結晶状態には、例えば、表1に示すように、非晶質酸化物半導体(a-
OS、a-OS:H)、微結晶酸化物半導体(nc-OS、μc-OS)、多結晶酸化物
半導体(多結晶OS)、連続結晶酸化物半導体(CAAC-OS)、単結晶酸化物半導体
(単結晶OS)などがある。なお、シリコンの結晶状態には、例えば、表1に示すように
、非晶質シリコン(a-Siやa-Si:H)、微結晶シリコン(nc-Si、μc-S
i)、多結晶シリコン(多結晶Si)、連続結晶シリコン(CG(Continuous
Grain)シリコン)、単結晶シリコン(単結晶Si)などがある。
【0220】
各結晶状態における酸化物半導体に対し、ビーム径を10nmφ以下に収束させた電子
線を用いる電子線回折(極微電子線回折)を行うと、以下のような電子線回折パターン(
極微電子線回折パターン)が観測される。非晶質酸化物半導体では、ハローパターン(ハ
ローリングまたはハローとも言われる。)が観測される。微結晶酸化物半導体では、スポ
ットまたは/およびリングパターンが観測される。多結晶酸化物半導体では、スポットが
観測される。連続結晶酸化物半導体では、スポットが観測される。単結晶酸化物半導体で
は、スポットが観測される。
【0221】
なお、極微電子線回折パターンより、微結晶酸化物半導体は、結晶部がナノメートル(
nm)からマイクロメートル(μm)の径であることがわかる。多結晶酸化物半導体は、
結晶部と結晶部との間に粒界を有し、境界が不連続であることがわかる。連続結晶酸化物
半導体は、結晶部と結晶部との間に境界が観測されず、連続的に繋がることがわかる。
【0222】
各結晶状態における酸化物半導体の密度について説明する。非晶質酸化物半導体の密度
は低い。微結晶酸化物半導体の密度は中程度である。連続結晶酸化物半導体の密度は高い
。即ち、連続結晶酸化物半導体の密度は微結晶酸化物半導体の密度より高く、微結晶酸化
物半導体の密度は非晶質酸化物半導体の密度より高い。
【0223】
各結晶状態における酸化物半導体に存在するDOS(density of stat
e)の特徴を説明する。非晶質酸化物半導体はDOSが高い。微結晶酸化物半導体はDO
Sがやや低い。連続結晶酸化物半導体はDOSが低い。単結晶酸化物半導体はDOSが極
めて低い。即ち、単結晶酸化物半導体は連続結晶酸化物半導体よりDOSが低く、連続結
晶酸化物半導体は微結晶酸化物半導体よりDOSが低く、微結晶酸化物半導体は非晶質酸
化物半導体よりDOSが低い。
【0224】
また、CAAC-OS膜は、以下の方法により形成する。
【0225】
まず、第1の酸化物半導体膜を1nm以上10nm未満の厚さで成膜する。第1の酸化
物半導体膜はスパッタリング法を用いて成膜する。具体的には、基板温度を100℃以上
500℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下とし、成膜ガス中の酸素割合を30
体積%以上、好ましくは100体積%として成膜する。
【0226】
次に、加熱処理を行い、第1の酸化物半導体膜を結晶性の高い第1のCAAC-OS膜
とする。加熱処理の温度は、350℃以上740℃以下、好ましくは450℃以上650
℃以下とする。また、加熱処理の時間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時
間以下とする。また、加熱処理は、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ま
しくは、不活性雰囲気で加熱処理を行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰
囲気での加熱処理により、第1の酸化物半導体膜の不純物濃度を短時間で低減することが
できる。一方、不活性雰囲気での加熱処理により第1の酸化物半導体膜に酸素欠損が生成
されることがある。その場合、酸化性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減する
ことができる。なお、加熱処理は1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下また
は1Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧下では、第1の酸化物半導体膜の不純物濃度
をさらに短時間で低減することができる。
【0227】
第1の酸化物半導体膜は、厚さが1nm以上10nm未満であることにより、厚さが1
0nm以上である場合と比べ、加熱処理によって容易に結晶化させることができる。
【0228】
次に、第1の酸化物半導体膜と同じ組成である第2の酸化物半導体膜を10nm以上5
0nm以下の厚さで成膜する。第2の酸化物半導体膜はスパッタリング法を用いて成膜す
る。具体的には、基板温度を100℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上450
℃以下とし、成膜ガス中の酸素割合を30体積%以上、好ましくは100体積%として成
膜する。
【0229】
次に、加熱処理を行い、第2の酸化物半導体膜を第1のCAAC-OS膜から固相成長
させることで、結晶性の高い第2のCAAC-OS膜とする。加熱処理の温度は、350
℃以上740℃以下、好ましくは450℃以上650℃以下とする。また、加熱処理の時
間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時間以下とする。また、加熱処理は、
不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ましくは、不活性雰囲気で加熱処理を
行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰囲気での加熱処理により、第2の酸
化物半導体膜の不純物濃度を短時間で低減することができる。一方、不活性雰囲気での加
熱処理により第2の酸化物半導体膜に酸素欠損が生成されることがある。その場合、酸化
性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減することができる。なお、加熱処理は1
000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下または1Pa以下の減圧下で行ってもよ
い。減圧下では、第2の酸化物半導体膜の不純物濃度をさらに短時間で低減することがで
きる。
【0230】
また、酸化物半導体膜は、複数の酸化物半導体膜が積層された構造でもよい。例えば、
酸化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層として、第1の
酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる原子数比の金属酸化物を用いてもよい
。例えば、第1の酸化物半導体膜に二種類の金属を含む酸化物、三種類の金属を含む酸化
物、四種類の金属を含む酸化物のうち一つを用い、第2の酸化物半導体膜に第1の酸化物
半導体膜と異なる二種類の金属を含む酸化物、三種類の金属を含む酸化物、四種類の金属
を含む酸化物を用いてもよい。
【0231】
酸化物半導体膜を2層構造とし、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成
元素を同一とし、両者の原子数比を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の
原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn
:Ga:Zn=1:1:1としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn
:Ga:Zn=2:1:3とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=
1:3:2としてもよい。なお、各酸化物半導体膜の原子数比は、誤差として上記の原子
数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0232】
この時、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜のうち、ゲート電極に近い側(
チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの原子数比をIn≧Gaとするとよい。また
ゲート電極から遠い側(バックチャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの原子数比を
In<Gaとするとよい。これらの積層構造により、電界効果移動度の高いトランジスタ
を作製することができる。一方、ゲート電極に近い側(チャネル側)の酸化物半導体膜の
InとGaの原子数比をIn<Gaとし、バックチャネル側の酸化物半導体膜のInとG
aの原子数比をIn≧Gaとすることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるし
きい値電圧の変動量を低減することができる。
【0233】
原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2である第1の酸化物半導体膜は、原子数比が
In:Ga:Zn=1:3:2である酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法によっ
て形成できる。基板温度を室温とし、スパッタリングガスにアルゴン、またはアルゴンと
酸素の混合ガスを用いて形成することができる。原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:
2である第2の酸化物半導体膜は、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2である酸化
物ターゲットを用い、第1の酸化物半導体膜と同様にして形成できる。
【0234】
また、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタに安定した電気特性を付与
するためには、たとえば、酸化物半導体膜が含まれる多層膜において、チャネルの形成さ
れる層中の不純物濃度を低減し、高純度真性化することが有効である。高純度真性化とは
、酸化物半導体膜の不純物濃度を低減し、真性化または実質的に真性にすることをいう。
なお、実質的に真性という場合、酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1017cm3
未満、好ましくは1×1015cm3未満、さらに好ましくは1×1013cm3未満で
ある。酸化物半導体膜において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金属
元素は不純物となる。酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中
の不純物濃度も低減することが好ましい。
【0235】
例えば、酸化物半導体膜中でシリコンは、不純物準位を形成する。また、該不純物準位
がトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある。具体的には、酸化
物半導体膜のシリコン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満と
する。なお、トランジスタのゲート絶縁膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、
窒化シリコン、窒化酸化シリコンなど、シリコンを含む絶縁膜が多く用いられるため、酸
化物半導体膜のチャネルをゲート絶縁膜と接しない層に形成することが好ましい。
【0236】
また、酸化物半導体膜中で水素および窒素は、ドナー準位を形成し、キャリア密度を増
大させてしまう。
【0237】
また、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜との界面にチャネルが形成される場合、該界面で
界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。このような観点からも、
酸化物半導体膜のチャネルをゲート絶縁膜と接しない層に形成することが好ましい。
【0238】
トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜から離すためには、例えば、酸化物半導体膜を
含む多層膜とすればよい。例えば、多層膜は、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜および第
2の酸化物膜の積層構造であり、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜および第2の酸化物膜
の構成元素を同一とし、かつそれぞれの原子数比を異ならせてもよく、この結果、トラン
ジスタのチャネルとなる酸化物半導体膜をゲート絶縁膜から離すことができる。
【0239】
また、容量素子において、画素電極から印加される電界によって少なくとも酸化物半導
体膜と同一層で形成された層にキャリアが誘起されるため、電極の一部として機能する。
また、第1の酸化物膜と同一層で形成された層、第2の酸化物膜と同一層で形成された層
も、ゲート絶縁膜などの絶縁膜と比べて十分に高いキャリア密度を有するため、電極の一
部として機能する。
【0240】
ここで、酸化物半導体膜を含む多層膜とする構成について、
図11を用いて説明する。
【0241】
図11に示すトランジスタは、第1の酸化物膜199a、酸化物半導体膜199b、お
よび第2の酸化物膜199cがゲート絶縁膜127側から順に積層されている。
【0242】
第1の酸化物膜199aおよび第2の酸化物膜199cを構成する材料は、InM1x
ZnyOz(x≧1、y>1、z>0、M1=Ga、Hf等)で表記できる材料を用いる
。ただし、第1の酸化物膜199aおよび第2の酸化物膜199cを構成する材料にGa
を含ませる場合、含ませるGaの割合が多い、具体的にはInM1xZnyOzで表記で
きる材料でX=10を超えると成膜時に粉が発生する恐れがあり、不適である。
【0243】
また、酸化物半導体膜199bを構成する材料は、InM2xZnyOz(x≧1、y
≧x、z>0、M2=Ga、Sn等)で表記できる材料を用いる。
【0244】
第1の酸化物膜199aの伝導帯の下端および第2の酸化物膜199cの伝導帯の下端
に比べて酸化物半導体膜199bの伝導帯の下端が真空準位から最も深くなるような井戸
型構造を構成するように、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜、および第2の酸化物膜の材
料を適宜選択する。
【0245】
なお、第1の酸化物膜199a、酸化物半導体膜199bおよび第2の酸化物膜199
cは、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているU字型井戸(U Shape W
ell)とも呼べる。
【0246】
なお、酸化物半導体膜において第14族元素の一つであるシリコンや炭素が拡散すると
、酸素欠損が増加する。このため、シリコンや炭素が酸化物半導体膜に含まれると、酸化
物半導体膜はn型化してしまう。特に、酸化物半導体膜199bに第14族元素が多く混
入しないように、第1の酸化物膜199aおよび第2の酸化物膜199cで、キャリアパ
スとなる酸化物半導体膜199bを挟む、または囲む構成とすることが好ましい。即ち、
第1の酸化物膜199aおよび第2の酸化物膜199cは、シリコン、炭素等の第14族
元素が酸化物半導体膜199bに混入することを防ぐバリア膜とも呼べる。
【0247】
また、第1の酸化物膜199a、酸化物半導体膜199bおよび第2の酸化物膜199
c中で酸素は相互に拡散し、チャネルである酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減すること
ができる。
【0248】
例えば、第1の酸化物膜199aの原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2、In:
Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:6:2またはIn:Ga:Zn=1:
6:10とし、酸化物半導体膜199bの原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし
、第2の酸化物膜199cの原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1としてもよい。な
お、第2の酸化物膜199cは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1である酸化物
ターゲットを用いたスパッタリング法によって形成できる。
【0249】
または、第1の酸化物膜199aを、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2、In
:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:6:2またはIn:Ga:Zn=1
:6:10とし、酸化物半導体膜199bを、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1
またはIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物膜199cを、原子数比がIn
:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:6
:2またはIn:Ga:Zn=1:6:10とした、3層構造としてもよい。
【0250】
第1の酸化物膜199a、酸化物半導体膜199bおよび第2の酸化物膜199cの構
成元素は同一であるため、酸化物半導体膜199bは、第1の酸化物膜199aとの界面
における欠陥準位(トラップ準位)が少ない。詳細には、当該欠陥準位(トラップ準位)
は、ゲート絶縁膜127と第1の酸化物膜199aとの界面における欠陥準位よりも少な
い。このため、上記のように多層膜とすることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験
によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0251】
また、第1の酸化物膜199aの伝導帯の下端および第2の酸化物膜199cの伝導帯
の下端に比べて酸化物半導体膜199bの伝導帯の下端が真空準位から最も浅くなるよう
な井戸型構造を構成するように、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜、および第2の酸化物
膜の材料を適宜選択することで、トランジスタの電界効果移動度を高めることが可能であ
ると共に、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減する
ことができる。
【0252】
また、第1の酸化物膜199a、酸化物半導体膜199bおよび第2の酸化物膜199
cに、結晶性の異なる酸化物半導体を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、
多結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体、およびCAAC-OSを適宜組み合わせた構
成としてもよい。また、第1の酸化物膜199a、酸化物半導体膜199bおよび第2の
酸化物膜199cのいずれか一に非晶質酸化物半導体を適用すると、酸化物半導体膜の内
部応力や外部からの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減され、また、トラ
ンジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0253】
また、少なくともチャネルとなりうる酸化物半導体膜199bはCAAC-OS膜であ
ることが好ましい。また、バックチャネル側の酸化物半導体膜、本実施の形態では、第2
の酸化物膜199cは、アモルファスまたはCAAC-OS膜であることが好ましい。こ
のような構造とすることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の
変動量を低減することができる。
【0254】
ここで、酸化物半導体膜の局在準位について説明する。ここでは、酸化物半導体膜をC
PM(Constant photocurrent method)測定で評価した結
果について説明する。
【0255】
まず、測定試料の構造について説明する。
【0256】
測定試料は、ガラス基板上に設けられた酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に接する
一対の電極と、酸化物半導体膜および一対の電極を覆う絶縁膜と、を有する。
【0257】
次に、測定試料に含まれる酸化物半導体膜の形成方法について説明する。
【0258】
In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲ
ットを用い、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い
、圧力を0.4Paとし、基板温度を室温とし、DC電力を0.5kW印加する条件を用
いたスパッタリング法により、第1の酸化物半導体膜を形成した。なお、第1の酸化物半
導体膜は微結晶酸化物半導体膜である。
【0259】
また、第1の酸化物半導体膜を、450℃の窒素雰囲気で1時間加熱した後、450℃
の酸素雰囲気で1時間加熱することで、第1の酸化物半導体膜に含まれる水素を脱離させ
る処理および第1の酸化物半導体膜に酸素を供給する処理を行い、第2の酸化物半導体膜
を形成した。なお、第2の酸化物半導体膜は微結晶酸化物半導体膜である。
【0260】
次に、第1の酸化物半導体膜を有する測定試料、および第2の酸化物半導体膜を有する
測定試料についてCPM測定を行った。具体的には、酸化物半導体膜に接して設けた一対
の電極間に電圧を印加した状態で光電流値が一定となるように端子間の測定試料面に照射
する光量を調整し、所望の波長の範囲において照射光量から吸収係数を導出した。
【0261】
各測定試料をCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除い
た吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を
図31に示す。
図31において、横軸は吸収
係数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、
図31の縦軸において、酸化物半導体膜
の伝導帯の下端を0eVとし、価電子帯の上端を3.15eVとする。また、
図31にお
いて、各曲線は吸収係数と光エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当する。
【0262】
図31(A)は、第1の酸化物半導体膜を有する測定試料の測定結果であり、欠陥準位
による吸収係数は、5.28×10
-1cm
-1であった。
図31(B)は、第2の酸化
物半導体膜を有する測定試料の測定結果であり、欠陥準位による吸収係数は、1.75×
10
-2cm
-1であった。
【0263】
従って、加熱処理により、酸化物半導体膜に含まれる欠陥を低減することができる。
【0264】
なお、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜に関し、X線反射率法(XR
R(X-ray Reflectometry))を用いた膜密度の測定を行った。第1
の酸化物半導体膜の膜密度は、5.9g/cm3であり、第2の酸化物半導体膜の膜密度
は6.1g/cm3であった。
【0265】
従って、加熱処理により、酸化物半導体膜の膜密度を高めることができる。
【0266】
即ち、酸化物半導体膜において、膜密度が高い程、膜中に含まれる欠陥が少ないことが
わかる。
【0267】
ここで、酸化物半導体膜の局在準位について説明する。ここでは、酸化物半導体膜をC
PM(Constant photocurrent method)測定で評価した結
果について説明する。
【0268】
まず、CPM測定した試料の構造について説明する。
【0269】
測定試料は、ガラス基板上に設けられた酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に接する
一対の電極と、酸化物半導体膜および一対の電極を覆う絶縁膜と、を有する。
【0270】
次に、測定試料に含まれる酸化物半導体膜の形成方法について説明する。
【0271】
In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲ
ットを用い、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い
、圧力を0.4Paとし、基板温度を400℃とし、DC電力を0.5kW印加する条件
を用いたスパッタリング法により、酸化物半導体膜を形成した。次に、450℃の窒素雰
囲気で1時間加熱した後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱して、酸化物半導体膜に含
まれる水素を脱離させる処理および酸化物半導体膜に酸素を供給する処理を行った。なお
、当該酸化物半導体膜はCAAC-OS膜である。
【0272】
次に、酸化物半導体膜を有する測定試料についてCPM測定を行った。具体的には、酸
化物半導体膜に接して設けた第1の電極および第2の電極間に電圧を印加した状態で光電
流値が一定となるように端子間の試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の範囲にお
いて照射光量から吸収係数を導出した。
【0273】
測定試料をCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除いた
吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を
図32に示す。
図32において、横軸は吸収係
数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、
図32の縦軸において、酸化物半導体膜の
伝導帯の下端を0eVとし、価電子帯の上端を3.15eVとする。また、
図32におい
て、各曲線は吸収係数と光エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当する。
【0274】
図32に示す曲線において、欠陥準位による吸収係数は、5.86×10
-4cm
-1
であった。即ち、CAAC-OS膜は、欠陥準位による吸収係数が1×10
-3cm
-1
未満、好ましくは1×10
-4cm
-1未満であり、欠陥準位密度の低い膜である。
【0275】
なお、酸化物半導体膜に関し、X線反射率法(XRR(X-ray Reflecto
metry))を用いた膜密度の測定を行った。酸化物半導体膜の膜密度は、6.3g/
cm3であった。即ち、CAAC-OS膜は、膜密度の高い膜である。
【0276】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0277】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したトランジスタに用いることのできるCA
AC-OS膜の結晶成長のモデルについて、
図17乃至
図19を用いて説明する。
【0278】
図17(A)は、スパッタリング用ターゲット600にイオン601が衝突し、スパッ
タリング粒子602が剥離する様子を示した模式図である。なお、スパッタリング粒子6
02は、六角形の面がa-b面と平行な面である六角柱状であってもよいし、三角柱状で
あってもよい。その場合、六角形または三角形の面と垂直な方向がc軸方向である(
図1
7(B)参照。)。スパッタリング粒子602は、酸化物の種類によっても異なるが、a
-b面と平行な面の直径(円相当径)が1nm以上30nm以下、または1nm以上10
nm以下程度となる。なお、イオン601は、酸素の陽イオンを用いる。また、酸素の陽
イオンに加えて、アルゴンの陽イオンを用いてもよい。なお、アルゴンの陽イオンに代え
て、その他希ガスの陽イオンを用いてもよい。
【0279】
イオン601として酸素の陽イオンを用いることで、成膜時のプラズマダメージを軽減
することができる。従って、イオン601がスパッタリング用ターゲット600の表面に
衝突した際に、スパッタリング用ターゲット600の結晶性が低下すること、または非晶
質化することを抑制できる。
【0280】
剥離されたスパッタリング粒子602は、正に帯電させることが好ましい。ただし、ス
パッタリング粒子602が、正に帯電するタイミングは特に問わない。具体的には、スパ
ッタリング粒子602がプラズマに曝されることで正に帯電する場合がある。または、イ
オン601の衝突時に電荷を受け取ることで正に帯電する場合がある。または、酸素の陽
イオンであるイオン601がスパッタリング粒子602の側面、上面または下面に結合す
ることで正に帯電する場合がある。
【0281】
スパッタリング粒子602は、六角形状の面における角部に正の電荷を有する。六角形
状の面の角部に正の電荷を有することで、正の電荷同士が反発し合い、平板状の形状を維
持することができる。
【0282】
スパッタリング粒子602の六角形状の面における角部が、正の電荷を有するためには
、直流(DC)電源を用いることが好ましい。なお、高周波(RF)電源、交流(AC)
電源を用いることもできる。ただし、RF電源は、大面積の基板へ成膜可能なスパッタリ
ング装置への適用が困難である。また、以下に示す観点からAC電源よりもDC電源が好
ましいと考えられる。
【0283】
AC電源を用いた場合、隣接するターゲットが互いにカソード電位とアノード電位を繰
り返す。
図18(A)に示す期間Aでは、
図18(B1)に示すようにターゲット1がカ
ソードとして機能し、ターゲット2がアノードとして機能する。また、
図18(A)に示
す期間Bでは、
図18(B2)に示すようにターゲット1がアノードとして機能し、ター
ゲット2がカソードとして機能する。期間Aと期間Bとを合わせると、20乃至50μ秒
であり、期間Aと期間Bを一定周期で繰り返している。
【0284】
スパッタリング粒子602は、正に帯電している場合、互いに反発し合うことにより、
平板状の形状を維持することができる。ただし、AC電源を用いた場合、瞬間的に電界が
かからない時間が生じるため、スパッタリング粒子602に帯電していた電荷が消失して
、スパッタリング粒子の構造が崩れてしまうことがある(
図18(C)参照。)。従って
、AC電源を用いるよりも、DC電源を用いる方が好ましいことがわかる。
【0285】
以下に、スパッタリング粒子の被成膜面に堆積する様子を
図19を用いて説明する。な
お、
図19(A)は、基板加熱ありで成膜した場合を示し、
図19(B)は、基板加熱な
しで成膜した場合を示す。
【0286】
図19(A)より、基板加熱している場合、スパッタリング粒子602は被成膜面60
3において、他のスパッタリング粒子602が堆積していない領域に移動し、マイグレー
ションすることで既に堆積している粒子の横に結合することで堆積していく。
【0287】
当該メカニズムによって得られるCAAC-OS膜は、非晶質表面、非晶質絶縁膜表面
、非晶質酸化物膜表面などであっても、高い結晶性を有する。
【0288】
図19(B)より、基板加熱なしの場合、スパッタリング粒子602は被成膜面603
に不規則に降り注ぐ。従って、スパッタリング粒子602が既に他のスパッタリング粒子
602が堆積している領域も含め、無秩序に堆積していく。即ち、堆積して得られる酸化
物膜は厚さが均一でなく、結晶の配向もバラバラになる。このようにして得られた酸化物
膜は、平板状のスパッタリング粒子602が有する結晶性がある程度維持されるため、結
晶部を有する酸化物膜となる。
【0289】
なお、上述したようにスパッタリング粒子602は、例えば、a-b面と平行な面の直
径が1nm以上30nm以下、または1nm以上10nm以下程度であり、成膜された酸
化物膜に含まれる結晶部は、スパッタリング粒子602よりも小さくなることがある。例
えば、10nm以下、または5nm以下の結晶部を有する酸化物膜となることがある。こ
のような結晶部を有する酸化物膜を、ナノ結晶(nc:nano crystallin
e)酸化物膜と呼ぶ。
【0290】
ナノ結晶酸化物膜は、巨視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等である。このため
、測定範囲の広い(例えば、スパッタリング粒子602よりも大きいビーム径を有する)
X線回折(XRD:X-ray diffraction)による分析では配向を示すピ
ークが検出されない場合がある。また、スパッタリング粒子602よりも大きいビーム径
を有する電子線によって得られる電子線回折パターンでは、ハローパターンが観測される
場合がある。この場合、例えば、電子線のビーム径をスパッタリング粒子602より十分
に小さい径としてナノ結晶酸化物膜を測定することで、得られる極微電子線回折パターン
ではスポット(輝点)を観測することができる。
【0291】
ここで、ナノ結晶酸化物半導体膜の電子線回折パターンについて、
図42乃至
図48を
用いて、以下説明を行う。
【0292】
ナノ結晶酸化物半導体膜は、ビーム径が10nmφ以下とした電子線回折(極微電子線
回折)を用いた電子線回折パターンにおいて、非晶質状態を示すハローパターンとも、特
定の面に配向した結晶状態を示す規則性を有するスポットとも異なり、方向性を持たない
スポットが観察される酸化物半導体膜である。
【0293】
図42(A)にナノ結晶酸化物半導体膜の断面TEM(Transmission E
lectron Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、
図42
(B)に
図42(A)のポイント1において極微電子線回折を用いて測定した電子線回折
パターンを、
図42(C)に
図42(A)のポイント2において極微電子線回折を用いて
測定した電子線回折パターンを、
図42(D)に
図42(A)のポイント3において極微
電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンをそれぞれ示す。
【0294】
図42では、ナノ結晶酸化物半導体膜の一例として、In-Ga-Zn系酸化物膜を石
英ガラス基板上に膜厚50nmで成膜した試料を用いる。
図42に示すナノ結晶酸化物半
導体膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲッ
トを用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0
.5kW、基板温度を室温とした。そして、成膜したナノ結晶酸化物半導体膜を100n
m以下(例えば、40nm±10nm)の幅に薄片化し、断面TEM像及び極微電子線回
折による電子線回折パターンを得た。
【0295】
図42(A)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-9000NAR
」)を用い、加速電圧を300kV、倍率200万倍として撮影したナノ結晶酸化物半導
体膜の断面TEM像である。また、
図42(B)乃至
図42(D)は、透過型電子顕微鏡
(日立ハイテクノロジーズ製「HF-2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビー
ム径を約1nmφとして極微電子線回折によって得られた電子線回折パターンである。な
お、ビーム径を約1nmφとした場合の極微電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上1
0nmφ以下である。
【0296】
図42(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜は、極微電子線回折を用いた電子
線回折パターンにおいて、円周状に配置された複数のスポット(輝点)が観察される。換
言すると、ナノ結晶酸化物半導体膜では、円周状(同心円状)に分布した複数のスポット
が観察されるともいえる。または、円周状に分布した複数のスポットが複数の同心円を形
成するともいえる。
【0297】
また、石英ガラス基板との界面近傍である
図42(D)及び、ナノ結晶酸化物半導体膜
の膜厚方向中央部の
図42(C)においても
図42(B)と同様に円周状に分布した複数
のスポットが観察される。
図42(C)において、メインスポットから円周状のスポット
までの距離は、3.88/nmから4.93/nmであった。面間隔に換算すると、0.
203nmから0.257nmである。
【0298】
図42の極微電子線回折パターンより、ナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規則で
あって、且つ、大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であることがわかる。
【0299】
次いで、
図43(A)にナノ結晶酸化物半導体膜の平面TEM像を示す。また、
図43
(B)に
図43(A)において円で囲んだ領域を、制限視野電子線回折を用いて測定した
電子線回折パターンを示す。
【0300】
図43では、ナノ結晶酸化物半導体膜の一例として、In-Ga-Zn系酸化物膜を石
英ガラス基板上に膜厚30nmで成膜した試料を用いる。
図43に示すナノ結晶酸化物半
導体膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲッ
トを用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0
.5kW、基板温度を室温とした。そして、試料を薄片化し、ナノ結晶酸化物半導体膜の
平面TEM像及び制限視野電子線回折による電子線回折パターンを得た。
【0301】
図43(A)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-9000NAR
」)を用い、加速電圧を300kV、倍率50万倍として撮影したナノ結晶酸化物半導体
膜の平面TEM写真である。また、
図43(B)は、制限視野を300nmφとして電子
線回折によって得られた電子線回折パターンである。なお、電子線の広がりを考慮すると
、測定範囲は、300nmφ以上である。
【0302】
図43(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜では、極微電子線回折よりも測定
範囲の広い制限視野電子線回折を用いた電子線回折パターンでは、極微電子線回折によっ
て観察された複数のスポットがみられず、ハローパターンが観察される。
【0303】
次に、
図44に、
図42及び
図43の電子線回折パターンにおける回折強度の分布を概
念的に示す。
図44(A)は、
図42(B)乃至
図42(D)に示す極微電子線回折パタ
ーンにおける回折強度の分布の概念図である。また、
図44(B)は、
図43(B)に示
す制限視野電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図である。また、
図44(
C)は単結晶構造または多結晶構造の電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念
図である。
【0304】
図44において、縦軸はスポットなどの分布を表す電子線回折強度(任意単位)、横軸
はメインスポットからの距離を示す。
【0305】
図44(C)に示す単結晶構造または多結晶構造においては、結晶部が配向する面の面
間隔(d値)に応じた、メインスポットからの特定の距離にスポットがみられる。
【0306】
一方、
図42に示すようにナノ結晶酸化物半導体膜の極微電子線回折パターンで観察さ
れる複数のスポットによって形成された円周状の領域は、比較的大きい幅を有する。よっ
て、
図44(A)は離散的な分布を示す。また、極微電子線回折パターンにおいて、同心
円状の領域間に明確なスポットとならないものの輝度の高い領域が存在することが分かる
。
【0307】
また、
図44(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜の制限視野電子線回折パタ
ーンにおける電子線回折強度分布は、連続的な強度分布を示す。
図44(B)は、
図44
(A)に示す電子線回折強度分布を広範囲で観察した結果と近似可能であるため、複数の
スポットが重なってつながり、連続的な強度分布が得られたものと考察できる。
【0308】
図44(A)乃至
図44(C)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位が不
規則であり、且つ、大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であり、且つ、その結晶部は
、制限視野電子線回折パターンにおいてはスポットが観察されない程度に、極微細である
ことが示唆される。
【0309】
複数のスポットが観察された
図42において、ナノ結晶酸化物半導体膜は50nm以下
である。また電子線のビーム径は1nmφに収束されているため、その測定範囲は5nm
以上10nm以下である。よって、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、50n
m以下であり、例えば、10nm以下、または5nm以下であることが推測される。
【0310】
ここで、
図45に、石英ガラス基板における極微電子線回折パターンを示す。
図45の
測定条件は、
図42(B)乃至
図42(D)に示す電子線回折パターンと同様とした。
【0311】
図45に示すように、非晶質構造を有する石英ガラス基板では、特定のスポットを有さ
ず、メインスポットから輝度が連続的に変化するハローパターンが観測される。このよう
に、非晶質構造を有する膜においては、極微小な領域の電子線回折を行ったとしても、ナ
ノ結晶酸化物半導体膜で観察されるような円周状に分布した複数のスポットが観察されな
い。従って、
図42(B)乃至
図42(D)で観察される円周状に分布した複数のスポッ
トは、ナノ結晶酸化物半導体膜に特有のものであることが確認される。
【0312】
また、
図46に、
図42(A)に示すポイント2に、ビーム径を約1nmφに収束した
電子線を1分間照射した後に、測定を行った電子線回折パターンを示す。
【0313】
図46に示す電子線回折パターンは、
図42(C)に示す電子線回折パターンと同様に
、円周状に分布した複数のスポットが観察され、両者の測定結果に特段の相違点は確認さ
れない。このことは、
図42(C)の電子線回折パターンで確認された結晶部は酸化物半
導体膜の成膜時から存在していることを意味しており、収束した電子線を照射したことで
結晶部が形成されたものではないことを意味する。
【0314】
次に、
図47に、
図42(A)に示す断面TEM像の部分拡大図を示す。
図47(A)
は、
図42(A)のポイント1近傍(ナノ結晶酸化物半導体膜表面)を、倍率800万倍
で観察した断面TEM像である。また、
図47(B)は、
図42(A)のポイント2近傍
(ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向中央部)を、倍率800万倍で観察した断面TEM
像である。
【0315】
図47に示す断面TEM像からは、ナノ結晶酸化物半導体膜において結晶構造が明確に
は確認できない。
【0316】
また、
図42及び
図43の観察に用いた、石英ガラス基板上に本実施の形態のナノ結晶
酸化物半導体膜が成膜された試料をX線回折(XRD:X-Ray Diffracti
on)を用いて分析した。
図48にout-of-plane法を用いてXRDスペクト
ルを測定した結果を示す。
【0317】
図48において、縦軸はX線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角2θ(deg
.)である。なお、XRDスペクトルの測定は、Bruker AXS社製X線回折装置
D-8 ADVANCEを用いた。
【0318】
図48に示すように、2θ=20乃至23°近傍に石英に起因するピークが観察される
ものの、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部に起因するピークは確認できない。
【0319】
図47及び
図48の結果からも、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、極微細
な結晶部であることが示唆される。
【0320】
以上示したように、本実施の形態のナノ結晶酸化物半導体膜では、測定範囲の広いX線
回折(XRD:X-ray diffraction)による分析では配向を示すピーク
が検出されず、また、測定範囲の広い制限視野電子線回折によって得られる電子線回折パ
ターンでは、ハローパターンが観測される。よって、本実施の形態のナノ結晶酸化物半導
体膜は、巨視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等であるといえる。しかしながら、
電子線のビーム径が十分に小さい径(例えば、10nmφ以下)の極微電子線回折によっ
てナノ結晶酸化物半導体膜を測定することで、得られる極微電子線回折パターンではスポ
ット(輝点)を観測することができる。よって、本実施の形態のナノ結晶酸化物半導体膜
は、面方位の不規則な極微な結晶部(例えば、粒径が10nm以下、または5nm以下、
または3nm以下の結晶部)が凝集して形成された膜と推測できる。また、極微細な結晶
部を含有するナノ結晶領域は、ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向の全領域において含ま
れる。
【0321】
なお、被成膜面603は絶縁表面を有すると好ましい。被成膜面603が絶縁表面を有
することにより、被成膜面603に堆積したスパッタリング粒子602から正の電荷が消
失しにくくなる。ただし、スパッタリング粒子602の堆積速度が正の電荷の消失よりも
遅い場合は、被成膜面603が導電性を有していても構わない。また、被成膜面603は
、非晶質表面、非晶質絶縁表面であると好ましい。
【0322】
以上のような方法でスパッタリング用ターゲットを使用することで、厚さが均一であり
、結晶の配向の揃った酸化物膜を成膜することができる。
【0323】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0324】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るスパッタリング用ターゲットについて説明す
る。
【0325】
スパッタリング用ターゲットは、好ましくは相対密度が90%以上、95%以上、また
は99%以上である。
【0326】
スパッタリング用ターゲットは、複数の結晶粒を有する多結晶酸化物を含み、複数の結
晶粒の平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下
である。
【0327】
または、スパッタリング用ターゲットは、複数の結晶粒を有する多結晶酸化物を含み、
複数の結晶粒のうち、粒径が0.4μm以上1μm以下である結晶粒の割合が8%以上、
好ましくは15%以上、さらに好ましくは25%以上である。
【0328】
なお、結晶粒の粒径は、例えば電子後方散乱回折法(EBSD:Electron B
ackscatter Diffraction)によって測定することができる。ここ
で示す結晶粒の粒径は、EBSDにより得られる結晶粒マップから測定した一つの結晶粒
の断面積を、結晶粒を正円形としたときの直径に換算したものである。具体的には、結晶
粒の断面積がSであるとき、結晶粒の半径をrと置き、S=πr2の関係から半径rを算
出し、半径rの2倍を粒径としている。
【0329】
また、スパッタリング用ターゲットに含まれる複数の結晶粒は、劈開面を有する。劈開
面は、例えばa-b面に平行な面である。
【0330】
複数の結晶粒の粒径が小さいことにより、スパッタリング用ターゲットにイオンを衝突
させると、劈開面からスパッタリング粒子が剥離する。剥離したスパッタリング粒子は、
劈開面と平行な上面および下面を有する平板状となる。また、複数の結晶粒の粒径が小さ
いことにより、結晶に歪みが生じ、劈開面から剥離しやすくなる。
【0331】
また、スパッタリング用ターゲットに含まれる複数の結晶粒が六方晶である場合、平板
状のスパッタリング粒子は、内角が120°である概略正六角形の上面および下面を有す
る六角柱状となる。
【0332】
また、スパッタリング粒子は理想的には単結晶であるが、一部がイオンの衝突の影響な
どによって非晶質化していても構わない。
【0333】
このようなスパッタリング用ターゲットに含まれる多結晶酸化物として、In、M(M
はGa、Sn、Hf、Al、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、
Ho、Er、Tm、YbまたはLu)およびZnを含む酸化物を用いればよい。In、M
およびZnを含む酸化物をIn-M-Zn酸化物とも表記する。
【0334】
また、In-M-Zn酸化物に含まれるIn、MおよびZnの原子数比は、化学量論的
組成の近傍となることが好ましい。In-M-Zn酸化物に含まれるIn、MおよびZn
の原子数比が化学量論的組成の近傍となることによって、当該In-M-Zn酸化物の結
晶性を高めることができる。
【0335】
In-M-Zn酸化物において、劈開面はMとZnとが混合されたa-b面と平行な面
であることが多い。
【0336】
図25を用いて、上述したスパッタリング用ターゲットの作製方法を示す。
【0337】
図25(A)では、スパッタリング用ターゲットとなる複数の金属元素を含む酸化物粉
末を作製する。まずは、工程S101にて酸化物粉末を秤量する。
【0338】
ここでは、複数の金属元素を含む酸化物粉末として、In、MおよびZnを含む酸化物
粉末(In-M-Zn酸化物粉末ともいう。)を作製する場合について説明する。具体的
には、原料としてInOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZnOZ酸化物粉末を用
意する。なお、X、YおよびZは任意の正数であり、例えばXは1.5、Yは1.5、Z
は1とすればよい。もちろん、上記の酸化物粉末は一例であり、所望の組成とするために
適宜酸化物粉末を選択すればよい。なお、Mは、Ga、Sn、Hf、Al、La、Ce、
Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuである
。本実施の形態では三種の酸化物粉末を用いた例を示すが、これに限定されない。例えば
、本実施の形態を四種以上の酸化物粉末を用いた場合に適用しても構わないし、一種また
は二種の酸化物粉末を用いた場合に適用しても構わない。
【0339】
次に、InOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZnOZ酸化物粉末を所定のmo
l数比で混合する。
【0340】
所定のmol数比としては、例えば、InOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZ
nOZ酸化物粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、
1:1:2、3:1:4、1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:3:8、1:3:
10、1:3:12、1:6:4、1:6:6、1:6:8、1:6:10、1:6:1
2、1:6:14、1:6:16、1:6:20または3:1:2とする。このようなm
ol数比とすることで、後に結晶性の高い多結晶酸化物を含むスパッタリング用ターゲッ
トを得やすくなる。
【0341】
次に、工程S102にて、所定のmol数比で混合したInOX酸化物粉末、MOY酸
化物粉末およびZnOZ酸化物粉末に対し第1の焼成を行うことでIn-M-Zn酸化物
を得る。
【0342】
なお、第1の焼成は、不活性雰囲気、酸化性雰囲気または減圧雰囲気で行い、温度は4
00℃以上1700℃以下、好ましくは900℃以上1500℃以下とする。第1の焼成
の時間は、例えば3分以上24時間以下、好ましくは30分以上17時間以下、さらに好
ましくは30分以上5時間以下で行えばよい。第1の焼成を前述の条件で行うことで、主
たる反応以外の余分な反応を抑制でき、In-M-Zn酸化物粉末中に含まれる不純物濃
度を低減することができる。そのため、In-M-Zn酸化物粉末の結晶性を高めること
ができる。
【0343】
また、第1の焼成は、温度または/および雰囲気を変えて、複数回行ってもよい。例え
ば、第1の雰囲気にて第1の温度でIn-M-Zn酸化物粉末を保持した後、第2の雰囲
気にて第2の温度で保持しても構わない。具体的には、第1の雰囲気を不活性雰囲気また
は減圧雰囲気として、第2の雰囲気を酸化性雰囲気とすると好ましい。これは、第1の雰
囲気にてIn-M-Zn酸化物粉末に含まれる不純物を低減する際にIn-M-Zn酸化
物中に酸素欠損が生じることがあるためである。そのため、第2の雰囲気にて得られるI
n-M-Zn酸化物中の酸素欠損を低減することが好ましい。In-M-Zn酸化物中の
不純物濃度を低減し、かつ酸素欠損を低減することにより、In-M-Zn酸化物粉末の
結晶性を高めることができる。
【0344】
次に、工程S103にて、In-M-Zn酸化物を粉砕することでIn-M-Zn酸化
物粉末を得る。
【0345】
In-M-Zn酸化物は、a-b面に平行な面の表面構造を多く含む。そのため、得ら
れるIn-M-Zn酸化物粉末は、a-b面に平行な上面および下面を有する平板状の結
晶粒を多く含むことになる。また、In-M-Zn酸化物の結晶は六方晶となることが多
いため、前述の平板状の結晶粒は内角が120°である概略正六角形の面を有する六角柱
状であることが多い。
【0346】
次に、得られたIn-M-Zn酸化物粉末の粒径を工程S104にて確認する。ここで
は、In-M-Zn酸化物粉末の平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さ
らに好ましくは2μm以下となっていることを確認する。なお、工程S104を省略し、
粒径フィルターを用いて、粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好まし
くは2μm以下であるIn-M-Zn酸化物粉末のみを選り分けてもよい。In-M-Z
n酸化物粉末を、粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μ
m以下に選り分けることで、確実にIn-M-Zn酸化物粉末の平均粒径を3μm以下、
好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下とすることができる。
【0347】
工程S104にて、In-M-Zn酸化物粉末の平均粒径が所定の値を超えた場合、工
程S103に戻り、再びIn-M-Zn酸化物粉末を粉砕する。
【0348】
以上のようにして、平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好まし
くは2μm以下であるIn-M-Zn酸化物粉末を得ることができる。なお、平均粒径が
3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であるIn-M-
Zn酸化物粉末を得ることで、後に作製するスパッタリング用ターゲットに含まれる結晶
粒の粒径を小さくすることができる。
【0349】
次に、
図25(B)では、
図25(A)に示すフローチャートで得られたIn-M-Z
n酸化物粉末を用いてスパッタリング用ターゲットを作製する。
【0350】
工程S111にて、In-M-Zn酸化物粉末を型に敷き詰めて成形する。ここで、成
形とは、型に均一な厚さで敷き詰めることをいう。具体的には、型にIn-M-Zn酸化
物粉末を導入し、外部から振動を与えることで成形すればよい。または、型にIn-M-
Zn酸化物粉末を導入し、ローラーなどを用いて均一な厚さに成形すればよい。なお、工
程S111では、In-M-Zn酸化物粉末に水と、分散剤と、バインダとを混合したス
ラリーを成形してもよい。その場合、型にスラリーを流し込んだ後で、型の底面から吸引
することで成形すればよい。その後、吸引後の成形体に対し、乾燥処理を行う。乾燥処理
は自然乾燥により行うと成形体にひびが入りにくいため好ましい。その後、300℃以上
700℃以下の温度で加熱処理することで、自然乾燥では取りきれなかった残留水分など
を除去する。
【0351】
a-b面に平行な上面および下面を有する平板状の結晶粒を多く含むIn-M-Zn酸
化物粉末を型に敷き詰めて成形することで、結晶粒のa-b面と平行な面が上を向いて並
べられる。従って、得られたIn-M-Zn酸化物粉末を敷き詰めて成形することで、a
-b面に平行な面の表面構造の割合を増加させることができる。なお、型は、金属製また
は酸化物製とすればよく、矩形または丸形の上面形状を有する。
【0352】
次に、工程S112にて、In-M-Zn酸化物粉末に対し第1の加圧処理を行う。そ
の後、工程S113にて、第2の焼成を行い、板状In-M-Zn酸化物を得る。第2の
焼成は第1の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。第2の焼成を行うことで、In
-M-Zn酸化物の結晶性を高めることができる。
【0353】
なお、第1の加圧処理は、In-M-Zn酸化物粉末を押し固めることができればよく
、例えば、型と同種で設けられたおもりなどを用いて行えばよい。または、圧縮空気など
を用いて高圧で押し固めてもよい。そのほか、公知の技術を用いて第1の加圧処理を行う
ことができる。なお、第1の加圧処理は、第2の焼成と同時に行っても構わない。
【0354】
第1の加圧処理の後に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理は、化学機械研磨(CM
P:Chemical Mechanical Polishing)処理などを用いれ
ばよい。
【0355】
こうして得られた板状In-M-Zn酸化物は、結晶性の高い多結晶酸化物となる。
【0356】
次に、工程S114にて、得られた板状In-M-Zn酸化物の厚さを確認する。板状
In-M-Zn酸化物が所望の厚さより薄い場合は、工程S111に戻り、板状In-M
-Zn酸化物上にIn-M-Zn酸化物粉末を敷き詰め、成形する。板状In-M-Zn
酸化物が所望の厚さである場合は、当該板状In-M-Zn酸化物を以て、スパッタリン
グ用ターゲットとする。以下は、板状In-M-Zn酸化物が所望の厚さより薄かった場
合について説明する。
【0357】
次に、工程S112にて、板状In-M-Zn酸化物、および板状In-M-Zn酸化
物上のIn-M-Zn酸化物粉末に対し第2の加圧処理を行う。その後、工程S113に
て、第3の焼成を行い、In-M-Zn酸化物粉末の分だけ厚さの増した板状In-M-
Zn酸化物を得る。厚さの増した板状In-M-Zn酸化物は、板状In-M-Zn酸化
物を種結晶として結晶成長させて得られるため、結晶性の高い多結晶酸化物となる。
【0358】
なお、第3の焼成は第2の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。また、第2の加
圧処理は第1の加圧処理と同様の条件および方法で行えばよい。第2の加圧処理は、第3
の焼成と同時に行っても構わない。
【0359】
再び、工程S114にて、得られた板状In-M-Zn酸化物の厚さを確認する。
【0360】
以上の工程によって、結晶の配向性を高めつつ徐々に板状In-M-Zn酸化物を厚く
することができる。
【0361】
この板状In-M-Zn酸化物を厚くする工程をn回(nは自然数)繰り返すことで、
所望の厚さ(t)、例えば2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上20mm以下
の板状In-M-Zn酸化物を得ることができる。当該板状In-M-Zn酸化物を以て
、スパッタリング用ターゲットとする。
【0362】
その後、平坦化処理を行ってもよい。
【0363】
なお、得られたスパッタリング用ターゲットに対し、第4の焼成を行っても構わない。
第4の焼成は第1の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。第4の焼成を行うことで
、さらに結晶性の高い多結晶酸化物を含むスパッタリング用ターゲットを得ることができ
る。
【0364】
以上のようにして、a-b面に平行な劈開面を有し、複数の結晶粒を有する多結晶酸化
物を含み、複数の結晶粒の平均粒径が小さいスパッタリング用ターゲットを作製すること
ができる。
【0365】
なお、このようにして作製したスパッタリング用ターゲットは高密度にすることができ
る。スパッタリング用ターゲットの密度が高いことで、成膜される膜密度も高くできる。
具体的には、スパッタリング用ターゲットの相対密度が90%以上、95%以上、または
99%以上とできる。
【0366】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0367】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に用いることのできるCAAC-OS膜について、
電子線回折パターンの観察結果を説明する。
【0368】
本実施の形態に用いるCAAC-OS膜は、In-Ga-Zn酸化物(In:Ga:Z
n=1:1:1[原子数比])であるターゲット、および酸素を含む成膜ガスを用いたス
パッタリング法で形成したIn-Ga-Zn系酸化物膜である。当該CAAC-OS膜の
作製方法等の詳細な説明は、先の実施の形態を参照することができる。
【0369】
図33にCAAC-OS膜の断面TEM(Transmission Electro
n Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、
図34に
図33のポ
イント1乃至ポイント4において電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンを示す
。
【0370】
図33に示す断面TEM画像は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H-
9000NAR」)を用い、加速電圧を300kV、倍率200万倍で撮影した画像であ
る。また、
図34に示す電子線回折パターンは、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジ
ーズ製「HF-2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビーム径を約1nmφまた
は約50nmφとした電子線回折パターンである。なお、ビーム径が10nmφ以下とし
た電子線回折を、特に極微電子線回折と呼ぶことがある。また、ビーム径を約1nmφと
した場合の電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上10nmφ以下である。
【0371】
図33に示すポイント1(膜表面側)、ポイント2(膜中央)、ポイント3(膜下地側
)における電子線回折パターンが
図34(A)、(B)、(C)にそれぞれ対応しており
、電子ビーム径を約1nmφとした電子線回折パターンである。また、
図33に示すポイ
ント4(膜全体)における電子線回折パターンが
図34(D)であり、電子ビーム径を約
50nmφとした電子線回折パターンである。
【0372】
ポイント1(膜表面側)およびポイント2(膜中央)の電子線回折パターンは、スポッ
ト(輝点)によるパターンの形成が確認できるが、ポイント3(膜下地側)では、ややパ
ターンが崩れている。これは、CAAC-OS膜の膜厚方向において、結晶状態が異なる
ことを示唆している。なお、ポイント4(膜全体)においては、スポット(輝点)による
パターンの形成が確認できることから、膜全体としてはCAAC-OS膜である、または
、CAAC-OS膜を含む膜であるということができる。
【0373】
図35は、
図33におけるポイント1(膜表面側)の近傍の拡大写真である。層間絶縁
膜であるSiON膜との界面までCAAC-OS膜の配向性を示す明瞭な格子像を確認す
ることができる。
【0374】
図36(A)、(B)は、
図33の断面TEM観察に用いたCAAC-OS膜とは異な
るCAAC-OS膜の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。CAAC-OS膜は
様々な形態があり、
図36(B)に示すような2θ=31°近傍に結晶成分を示すピーク
Aが現れる。なお、当該ピークは明瞭に現れない場合もある。
【0375】
図36(A)のCAAC-OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1
nmφ、20nmφ、50nmφ、70nmφとして、電子線回折を行った結果を
図37
(A)、(B)、(C)、(D)に示す。電子線のビーム径が1nmφにおいては、
図3
4(A)、(B)と同様に明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認すること
ができる。電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが
、回折パターンは確認することができ、膜全体としてはCAAC-OS膜である、または
CAAC-OS膜を含む膜であるということができる。
【0376】
図38(A)、(B)は、
図36(A)の断面TEM観察に用いたCAAC-OS膜を
450℃でアニールした後の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。
【0377】
図38(A)のCAAC-OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1
nmφ、20nmφ、50nmφ、70nmφとして、電子線回折を行った結果を
図39
(A)、(B)、(C)、(D)に示す。
図37に示した結果と同様に、電子線のビーム
径が1nmφにおいては、明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認すること
ができる。また、電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭に
なるが、回折パターンは確認することができ、膜全体としてはCAAC-OS膜である、
またはCAAC-OS膜を含む膜であるということができる。
【0378】
図40(A)、(B)は、
図36(A)の断面TEM写真に用いたCAAC-OS膜、
および
図36(A)の断面TEM観察に用いたCAAC-OS膜とは異なるCAAC-O
S膜の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。CAAC-OS膜は様々な形態があ
り、
図40(B)に示すように2θ=31°近傍に結晶成分を示すピークAが現れるとと
もに、スピネル結晶構造に由来するピークBが現れる場合もある。
【0379】
図40(A)のCAAC-OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1
nmφ、20nmφ、50nmφ、90nmφとして、電子線回折を行った結果を
図41
(A)、(B)、(C)、(D)に示す。電子線のビーム径が1nmφにおいては、明瞭
なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認することができる。また、電子線のビー
ム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが、回折パターンは確認す
ることができる。また、ビーム径90nmφでは、より明瞭なスポット(輝点)を確認す
ることができる。したがって、膜全体としてはCAAC-OS膜である、またはCAAC
-OS膜を含む膜であるということができる。
【0380】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0381】
(実施の形態7)
上記実施の形態で一例で示したトランジスタおよび容量素子を用いて表示装置を有する
半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆
動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形
成することができる。本実施の形態では、上記実施の形態で一例を示したトランジスタを
用いた表示装置の例について、
図12乃至
図14を用いて説明する。なお、
図13は、図
12(B)中でM-Nの一点鎖線で示した部位の断面構成を示す断面図である。なお、図
13において、画素部の構造は一部のみ記載している。
【0382】
図12(A)において、第1の基板901上に設けられた画素部902を囲むようにし
て、シール材905が設けられ、第2の基板906によって封止されている。
図12(A
)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは異な
る領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線
駆動回路903、および走査線駆動回路904が実装されている。また、信号線駆動回路
903、走査線駆動回路904、または画素部902に与えられる各種信号および電位は
、FPC(Flexible Printed Circuit)918a、FPC91
8bから供給されている。
【0383】
図12(B)および
図12(C)において、第1の基板901上に設けられた画素部9
02と、走査線駆動回路904とを囲むようにして、シール材905が設けられている。
また画素部902と、走査線駆動回路904の上に第2の基板906が設けられている。
よって画素部902と、走査線駆動回路904とは、第1の基板901とシール材905
と第2の基板906とによって、表示素子と共に封止されている。
図12(B)および図
12(C)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域
とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成され
た信号線駆動回路903が実装されている。
図12(B)および
図12(C)においては
、信号線駆動回路903、走査線駆動回路904、または画素部902に与えられる各種
信号および電位は、FPC918から供給されている。
【0384】
また、
図12(B)および
図12(C)においては、信号線駆動回路903を別途形成
し、第1の基板901に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査
線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回
路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0385】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(C
hip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape
Automated Bonding)方法などを用いることができる。
図12(A)は
、COG方法により信号線駆動回路903、走査線駆動回路904を実装する例であり、
図12(B)は、COG方法により信号線駆動回路903を実装する例であり、
図12(
C)は、TAB方法により信号線駆動回路903を実装する例である。
【0386】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントロー
ラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0387】
なお、本明細書における表示装置とは、画像表示デバイスまたは表示デバイスを指す。
また、表示装置の代わりに光源(照明装置含む)として機能させることができる。また、
コネクター、例えばFPCもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプ
リント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回
路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0388】
また、第1の基板上に設けられた画素部および走査線駆動回路は、トランジスタを複数
有しており、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。
【0389】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子
(発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって
輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro
Luminescence)素子、有機EL素子等が含まれる。また、電子インクなど、
電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
図13に、
表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。
【0390】
図13に示す液晶表示装置は、縦電界方式の液晶表示装置である。液晶表示装置は、接
続端子電極915および端子電極916を有しており、接続端子電極915および端子電
極916はFPC918が有する端子と異方性導電剤919を介して、電気的に接続され
ている。
【0391】
接続端子電極915は、第1の電極930aと同じ導電膜から形成され、端子電極91
6は、トランジスタ910、トランジスタ911のソース電極およびドレイン電極と同じ
導電膜で形成されている。
【0392】
また、第1の基板901上に設けられた画素部902と、走査線駆動回路904は、ト
ランジスタを複数有しており画素部902に含まれるトランジスタ910と、走査線駆動
回路904に含まれるトランジスタ911とを例示している。トランジスタ910および
トランジスタ911上には実施の形態1に示す絶縁膜129、絶縁膜131、および絶縁
膜133に相当する絶縁膜924が設けられている。なお、絶縁膜923は下地膜として
機能する絶縁膜である。
【0393】
本実施の形態では、トランジスタ910として、上記実施の形態1乃至実施の形態3で
示した画素に設けられるトランジスタを適用することができる。また、トランジスタ91
1として、上記実施の形態1乃至実施の形態3で示した走査線駆動回路に設けられるトラ
ンジスタを適用することができる。また、酸化物半導体膜927、絶縁膜924、および
第1の電極930aを用いて、容量素子936を構成する。なお、酸化物半導体膜927
は、電極928および電極930bを介して、容量線929と接続する。電極928は、
トランジスタ910、トランジスタ911のソース電極およびドレイン電極と同じ導電膜
から形成される。電極930bは、第1の電極930aと同じ導電膜から形成される。容
量線929は、トランジスタ910、トランジスタ911のゲート電極と同じ導電膜から
形成される。なお、ここでは、容量素子926として実施の形態1に示した容量素子を使
用した例を記載したが、適宜他の実施の形態に示した容量素子を用いることができる。
【0394】
画素部902に設けられたトランジスタ910は表示素子と電気的に接続し、表示パネ
ルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を
用いることができる。
【0395】
表示素子である液晶素子913は、第1の電極930a、第2の電極931、および液
晶層908を含む。なお、液晶層908を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜9
32、絶縁膜933が設けられている。また、第2の電極931は第2の基板906側に
設けられ、第1の電極930aと第2の電極931とは液晶層908を介して重なる構成
となっている。
【0396】
表示素子に電圧を印加する第1の電極および第2の電極(画素電極、共通電極、対向電
極などともいう)においては、取り出す光の方向、電極が設けられる場所、および電極の
パターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0397】
第1の電極930aおよび第2の電極931は、実施の形態1に示す電極121aおよ
び画素電極121bと同様の材料を適宜用いることができる。
【0398】
また、スペーサ935は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペー
サであり、第1の電極930aと第2の電極931との間隔(セルギャップ)を制御する
ために設けられている。なお、球状のスペーサを用いていてもよい。
【0399】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子
液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これ
らの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カ
イラルネマチック相、等方相等を示す。
【0400】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つ
であり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する
直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改
善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。なお、配向膜
は有機樹脂で構成されており、有機樹脂は水素または水などを含むことから、本発明の一
態様である半導体装置のトランジスタの電気特性を低下させるおそれがある。そこで、液
晶層として、ブルー相を用いることで、有機樹脂を用いずに本発明の一態様である半導体
装置を作製することができ、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【0401】
第1の基板901および第2の基板906はシール材925によって固定されている。
シール材925は、熱硬化樹脂、光硬化樹脂などの有機樹脂を用いることができる。また
、シール材925は、絶縁膜924と接している。なお、シール材925は
図12に示す
シール材905に相当する。
【0402】
シール材925は、絶縁膜924上に設けられている。絶縁膜924の最上層は窒化絶
縁膜であり、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制することが可能である。このた
め、トランジスタ910およびトランジスタ911の電気特性の変動を抑制することがで
きる。
【0403】
また、液晶表示装置において、ブラックマトリクス(遮光膜)、偏光部材、位相差部材
、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板および
位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライト
などを用いてもよい。
【0404】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回
路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0405】
図14に、
図13に示す液晶表示装置において、基板906に設けられた第2の電極9
31と電気的に接続するための共通接続部(パッド部)を、基板901上に形成する例を
示す。
【0406】
共通接続部は、基板901と基板906とを接着するためのシール材と重なる位置に配
置され、シール材に含まれる導電性粒子を介して第2の電極931と電気的に接続される
。または、シール材と重ならない箇所(但し、画素部を除く)に共通接続部を設け、共通
接続部に重なるように導電性粒子を含むペーストをシール材とは別途設けて第2の電極9
31と電気的に接続してもよい。
【0407】
図14(A)は、共通接続部の断面図であり、
図14(B)に示す上面図のI-Jに相
当する。
【0408】
共通電位線975は、ゲート絶縁膜922上に設けられ、
図14に示すトランジスタ9
10のソース電極971またはドレイン電極973と同じ材料および同じ工程で作製され
る。
【0409】
また、共通電位線975は、絶縁膜924で覆われ、絶縁膜924は、共通電位線97
5と重なる位置に複数の開口を有している。この開口は、トランジスタ910のソース電
極971またはドレイン電極973の一方と、第1の電極930aとを接続するコンタク
トホールと同じ工程で作製される。
【0410】
また、共通電位線975および共通電極977が開口において接続する。共通電極97
7は、絶縁膜934上に設けられ、接続端子電極915や、画素部の第1の電極930a
と同じ材料および同じ工程で作製される。
【0411】
このように、画素部902のスイッチング素子の作製工程と共通させて共通接続部を作
製することができる。
【0412】
共通電極977は、シール材に含まれる導電性粒子と接触する電極であり、基板906
の第2の電極931と電気的に接続が行われる。
【0413】
また、
図14(C)に示すように、共通電位線985を、トランジスタ910のゲート
電極と同じ材料、同じ工程で作製してもよい。
【0414】
図14(C)に示す共通接続部において、共通電位線985は、ゲート絶縁膜922お
よび絶縁膜924の下層に設けられ、ゲート絶縁膜922および絶縁膜924は、共通電
位線985と重なる位置に複数の開口を有する。該開口は、トランジスタ910のソース
電極971またはドレイン電極973の一方と第1の電極930aとを接続するコンタク
トホールと同じ工程で絶縁膜924をエッチングした後、さらにゲート絶縁膜922を選
択的にエッチングすることで形成される。
【0415】
また、共通電位線985および共通電極987が開口において接続する。共通電極98
7は、絶縁膜924上に設けられ、接続端子電極915や、画素部の第1の電極930a
と同じ材料および同じ工程で作製される。
【0416】
以上より、上記実施の形態で示したトランジスタおよび容量素子を適用することで、開
口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導体装置を提供することがで
きる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0417】
また、トランジスタに含まれる半導体膜である酸化物半導体膜は酸素欠損が低減され、
水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好
な電気特性を有する半導体装置となる。
【0418】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0419】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用することのできる、ヒューマン
インターフェースについて説明する。特に、被検知体の近接または接触を検知可能なセン
サ(以降、タッチセンサと呼ぶ)の構成例について説明する。
【0420】
タッチセンサとしては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性方式、赤外線方式、光学
方式など、様々な方式を用いることができる。
【0421】
静電容量方式のタッチセンサとしては、代表的には表面型静電容量方式、投影型静電容
量方式などがある。また、投影型静電容量方式としては、主に駆動方法の違いから、自己
容量方式、相互容量方式などがある。ここで、相互容量方式を用いると、同時に多点を検
出すること(多点検出(マルチタッチ)ともいう)が可能となるため好ましい。
【0422】
ここではタッチセンサについて詳細に説明するが、このほかに、カメラ(赤外線カメラ
を含む)等により、被検知体(例えば指や手など)の動作(ジェスチャ)や、使用者の視
点動作などを検知することのできるセンサを、ヒューマンインターフェースとして用いる
こともできる。
【0423】
[センサの検知方法の例]
図20(A)、(B)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示す模式図と、入出力
波形の模式図である。タッチセンサは一対の電極を備えた容量を有する。一対の電極のう
ち一方の電極に入力電圧が入力される。また、他方の電極に流れる電流(または、他方の
電極の電位)を検出する検出回路を備える。
【0424】
例えば
図20(A)に示すように、入力電圧の波形として矩形波を用いた場合、出力電
流波形として鋭いピークを有する波形が検出される。
【0425】
また
図20(B)に示すように、伝導性を有する被検知体が容量に近接または接触した
場合、電極間の容量値が減少するため、これに応じて出力の電流値が減少する。
【0426】
このように、入力電圧に対する出力電流(または電位)の変化を用いて、容量の変化を
検出することにより、被検知体の近接、または接触を検知することができる。
【0427】
[タッチセンサの構成例]
図20(C)は、マトリクス状に配置された複数の容量を備えるタッチセンサの構成例
を示す。
【0428】
タッチセンサは、X方向(紙面横方向)に延在する複数の配線と、これら複数の配線と
交差し、Y方向(紙面縦方向)に延在する複数の配線とを有する。交差する2つの配線間
には容量が形成される。
【0429】
また、X方向に延在する配線には、入力電圧または共通電位(接地電位、基準電位を含
む)のいずれか一方が入力される。また、Y方向に延在する配線には、検出回路(例えば
、ソースメータ、センスアンプなど)が電気的に接続され、当該配線に流れる電流(また
は電位)を検出することができる。
【0430】
タッチセンサは、X方向に延在する複数の配線に対して順に入力電圧が入力されるよう
に走査し、Y方向に延在する配線に流れる電流(または電位)の変化を検出することで、
被検知体の2次元的なセンシングが可能となる。
【0431】
[タッチパネルの構成例]
以下では、複数の画素を有する表示部とタッチセンサを備えるタッチパネルの構成例と
、該タッチパネルを電子機器に組み込む場合の例について説明する。
【0432】
図21(A)は、タッチパネルを備える電子機器の断面概略図である。
【0433】
電子機器3530は、筐体3531と、該筐体3531内に少なくともタッチパネル3
532、バッテリー3533、制御部3534を有する。またタッチパネル3532は制
御部3534と配線3535を介して電気的に接続される。制御部3534により表示部
への画像の表示やタッチセンサのセンシングの動作が制御される。またバッテリー353
3は制御部3534と配線3536を介して電気的に接続され、制御部3534に電力を
供給することができる。
【0434】
タッチパネル3532はその表示面側が外側に露出するように設けられる。タッチパネ
ル3532の露出した面に画像を表示すると共に、接触または近接する被検知体を検知す
ることができる。
【0435】
図21(B)乃至
図21(E)に、タッチパネルの構成例を示す。
【0436】
図21(B)に示すタッチパネル3532は、第1の基板3541と第2の基板354
3の間に表示部3542を備える表示パネル3540と、タッチセンサ3544を備える
第3の基板3545と、保護基板3546と、を備える。
【0437】
表示パネル3540としては、液晶素子、有機EL(Electro Lumines
cence)素子が適用された表示装置や、電子ペーパ等、様々な表示装置を適用できる
。なおタッチパネル3532は、表示パネル3540の構成に応じて、バックライトや偏
光板等を別途備えていてもよい。
【0438】
保護基板3546の一方の面に被検知体が接触または近接するため、少なくともその表
面は、機械的強度が高められていることが好ましい。例えばイオン交換法や風冷強化法等
により物理的、または化学的な処理が施され、その表面に圧縮応力を加えた強化ガラスを
保護基板3546に用いることができる。または、表面がコーティングされたプラスチッ
ク等の可撓性基板を用いることもできる。なお、保護基板3546上に保護フィルムや光
学フィルムを設けてもよい。
【0439】
タッチセンサ3544は、第3の基板3545の少なくとも一方の面に設けられる。ま
たは、タッチセンサ3544を構成する一対の電極を第3の基板3545の両面に形成し
てもよい。また、タッチパネルの薄型化のため、第3の基板3545として可撓性のフィ
ルムを用いてもよい。また、タッチセンサ3544は、一対の基板(フィルムを含む)に
挟持された構成としてもよい。
【0440】
図21(B)では、保護基板3546とタッチセンサ3544を備える第3の基板35
45とが接着層3547で接着されている構成を示しているが、必ずしもこれらは接着さ
れていなくてもよい。また、第3の基板3545と表示パネル3540とを接着層354
7により接着する構成としてもよい。
【0441】
図21(B)に示すタッチパネル3532は、表示パネルと、タッチセンサを備える基
板とが独立して設けられている。このような構成を有するタッチパネルを外付け型のタッ
チパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチセンサを備
える基板とをそれぞれ別途作製し、これらを重ねることで表示パネルにタッチセンサの機
能を付加することができるため、特別な作製工程を経ることなく容易にタッチパネルを作
製することができる。
【0442】
図21(C)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が第2の基板35
43の保護基板3546側の面に設けられている。このような構成を有するタッチパネル
をオンセル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板
の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化および軽量化を実現できる。
【0443】
図21(D)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が保護基板354
6の一方の面に設けられている。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチ
センサをそれぞれ別途作製することができるため、容易にタッチパネルを作製することが
できる。さらに、必要な基板の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化および軽量
化を実現できる。
【0444】
図21(E)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が表示パネル35
40の一対の基板の内側に設けられている。このような構成を有するタッチパネルをイン
セル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板の枚数
を低減できるため、タッチパネルの薄型化および軽量化を実現できる。このようなタッチ
パネルは、例えば、表示部3542が備えるトランジスタや配線、電極などにより第1の
基板3541上または第2の基板3543上にタッチセンサとして機能する回路を作り込
むことにより実現できる。また、光学式のタッチセンサを用いる場合には、光電変換素子
を備える構成としてもよい。
【0445】
[インセル型のタッチパネルの構成例]
以下では、複数の画素を有する表示部にタッチセンサを組み込んだタッチパネルの構成
例について説明する。ここでは、画素に設けられる表示素子として、液晶素子を適用した
例を示す。
【0446】
図22(A)は、本構成例で例示するタッチパネルの表示部に設けられる画素回路の一
部における等価回路図である。
【0447】
一つの画素は少なくともトランジスタ3503と液晶素子3504を有する。またトラ
ンジスタ3503のゲートに配線3501が、ソースまたはドレインの一方には配線35
02が、それぞれ電気的に接続されている。
【0448】
画素回路は、X方向に延在する複数の配線(例えば、配線3510_1、配線3510
_2)と、Y方向に延在する複数の配線(例えば、配線3511)を有し、これらは互い
に交差して設けられ、その間に容量が形成される。
【0449】
また、画素回路に設けられる画素のうち、一部の隣接する複数の画素は、それぞれに設
けられる液晶素子の一方の電極が電気的に接続され、一つのブロックを形成する。当該ブ
ロックは、島状のブロック(例えば、ブロック3515_1、ブロック3515_2)と
、Y方向に延在するライン状のブロック(例えば、ブロック3516)の、2種類に分類
される。なお、
図22(A)では、画素回路の一部のみを示しているが、実際にはこれら
2種類のブロックがX方向およびY方向に繰り返し配置される。
【0450】
X方向に延在する配線3510_1(または配線3510_2)は、島状のブロック3
515_1(またはブロック3515_2)と電気的に接続される。なお、図示しないが
、X方向に延在する配線3510_1は、ライン状のブロックを介してX方向に沿って不
連続に配置される複数の島状のブロック3515_1を電気的に接続する。また、Y方向
に延在する配線3511は、ライン状のブロック3516と電気的に接続される。
【0451】
図22(B)は、X方向に延在する複数の配線3510と、Y方向に延在する複数の配
線3511の接続構成を示した等価回路図である。X方向に延在する配線3510の各々
には、入力電圧または共通電位を入力することができる。また、Y方向に延在する配線3
511の各々には接地電位を入力する、または配線3511と検出回路と電気的に接続す
ることができる。
【0452】
[タッチパネルの動作例]
以下、
図23を用いて、上述したタッチパネルの動作について説明する。
【0453】
図23(A)に示すように1フレーム期間を、書き込み期間と検知期間とに分ける。書
き込み期間は画素への画像データの書き込みを行う期間であり、配線3510(ゲート線
ともいう)が順次選択される。一方、検知期間は、タッチセンサによるセンシングを行う
期間であり、X方向に延在する配線3510が順次選択され、入力電圧が入力される。
【0454】
図23(B)は、書き込み期間における等価回路図である。書き込み期間では、X方向
に延在する配線3510と、Y方向に延在する配線3511の両方に、共通電位が入力さ
れる。
【0455】
図23(C)は、検知期間のある時点における等価回路図である。検知期間では、Y方
向に延在する配線3511の各々は、検出回路と電気的に接続する。また、X方向に延在
する配線3510のうち、選択されたものには入力電圧が入力され、それ以外のものには
共通電位が入力される。
【0456】
このように、画像の書き込み期間とタッチセンサによるセンシングを行う期間とを、独
立して設けることが好ましい。これにより、画素の書き込み時のノイズに起因するタッチ
センサの感度の低下を抑制することができる。
【0457】
[画素構成例]
以下では、上記タッチパネルに用いることのできる画素の構成例について説明する。
【0458】
図24(A)は、FFS(Fringe Field Switching)モードが
適用された画素の一部を示す断面概略図である。
【0459】
画素は、トランジスタ3521と、電極3522と、電極3523と、液晶3524と
、カラーフィルタ3525と、を備える。開口部を有する電極3523はトランジスタ3
521のソースまたはドレインの一方に電気的に接続される。また、電極3523は絶縁
層を介して電極3522上に設けられる。電極3523と電極3522は、それぞれ液晶
素子の一方の電極として機能し、これらの間に電圧を印加することにより、液晶の配向を
制御することができる。
【0460】
例えば電極3522を、上述の配線3510または配線3511に電気的に接続するこ
とにより、上述したタッチパネルの画素を構成することができる。
【0461】
なお、電極3522を電極3523上に設けることもできる。その場合は電極3522
を、開口部を有する形状とし、絶縁層を介して電極3523上に設ければよい。
【0462】
図24(B)は、IPS(In-Plane-Switching)モードが適用され
た画素の一部を示す断面概略図である。
【0463】
画素に設けられる電極3523と電極3522はいずれも櫛歯状の形状を有し、互いに
かみ合うように、且つ離間して同一平面上に設けられている。
【0464】
例えば電極3522を、上述の配線3510または配線3511に電気的に接続するこ
とにより、上述したタッチパネルの画素を構成することができる。
【0465】
図24(C)は、VA(Vertical Alignment)モードが適用された
画素の一部を示す断面概略図である。
【0466】
電極3522は、液晶3524を介して電極3523と対向するように設けられている
。また電極3522と重ねて配線3526が設けられている。配線3526は、例えば、
図24(C)に示す画素が属するブロックとは異なるブロック間を電気的に接続するため
に設けることができる。
【0467】
例えば電極3522を、上述の配線3510または配線3511に電気的に接続するこ
とにより、上述したタッチパネルの画素を構成することができる。
【0468】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施するこ
とができる。
【0469】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の一例で示したトランジスタを用いた情報処理装置
の構成について、図面を参照しながら説明する。
【0470】
具体的には、画素を選択するG信号を30Hz(1秒間に30回)以上の頻度、好まし
くは60Hz(1秒間に60回)以上960Hz(1秒間に960回)未満の頻度で出力
する第1のモードと、11.6μHz(1日に1回)以上0.1Hz(1秒間に0.1回
)未満の頻度、好ましくは0.28mHz(1時間に1回)以上1Hz(1秒間に1回)
未満の頻度で出力する第2のモードを備える情報処理装置について説明する。
【0471】
この情報処理装置を用いて静止画を表示すると、リフレッシュレートを1Hz未満、好
ましくは0.2Hz以下とすることができ、使用者の目にやさしい表示、使用者の目の疲
労を軽減する表示、使用者の目に負担を与えない表示をすることができる。また、表示部
に表示する画像の性質に応じて最適な頻度で表示画像をリフレッシュすることができる。
具体的には、動画をなめらかに表示する場合に比べて、リフレッシュを低い頻度で行うこ
とにより、フリッカーの少ない静止画を表示することができる。加えて、消費電力を低減
する効果も奏する。
【0472】
【0473】
【0474】
<目の疲労について>
ここで目の疲労について説明する。目の疲労には、神経系の疲労と筋肉系の疲労の2種
類がある。
【0475】
神経系の疲労は、表示部が発する光や点滅画面を長時間見続けることで、その明るさが
、眼の網膜、神経または脳を刺激して疲れさせるものである。蛍光灯や従来の表示装置の
表示部が小刻みに明滅する現象をフリッカーというが、このようなフリッカーは神経系の
疲労を引き起こす。
【0476】
筋肉系の疲労は、ピント調節のときに使用する毛様体の筋肉を酷使することにより疲れ
させるものである。
【0477】
図26(A)に、従来の表示部の表示を表す模式図を示す。従来の表示部の表示では、
1秒間に60回の画像の書き換えが行われている。このような画面を長時間見続けること
により、使用者の眼の網膜、神経または脳を刺激して目の疲労が引き起こされるおそれが
あった。
【0478】
図26(B)に、本実施の形態で説明する情報処理装置の表示を表す模式図を示す。本
実施の形態で説明する情報処理装置は、画素を選択するG信号を出力する頻度を変えるこ
とができる。特に、オフ電流が極めて小さいトランジスタを表示部の画素部に用いること
により、フリッカーの発生を抑制しつつ、フレーム周波数を下げることができる。例えば
、5秒間に1回の画像の書き換えが可能となるため、同じ画像を見ることが可能となり、
使用者に視認される画面のちらつきが低減される。これにより、使用者の眼の網膜、神経
または脳の刺激が低減され、神経系の疲労が軽減される。
【0479】
なお、オフ電流が極めて小さいトランジスタとしては、例えば酸化物半導体を用いたト
ランジスタ、特に、CAAC-OS膜を用いたトランジスタが好適である。
【0480】
また、
図27(A)に示すように、1画素のサイズが大きい場合(例えば精細度が15
0ppi未満の場合)、表示部に表示された文字はぼやけてしまう。表示部に表示された
ぼやけた文字を長時間見続けると、毛様体の筋肉が、絶えずピントを合わせようと動いて
いるにもかかわらず、ピントが合わせづらい状態がつづくことになり、目に負担をかけて
しまうおそれがあった。
【0481】
これに対し、
図27(B)に示すように、本発明の一態様にかかる表示装置では、1画
素のサイズが小さく、精細度が150ppi好ましくは200ppi以上の高精細な表示
が可能となるため、緻密で滑らかな表示とすることができる。これにより、毛様体の筋肉
が、ピントを合わせやすくなるため、使用者の筋肉系の疲労が軽減される。なお、精細度
は画素密度(ppi:pixel per inch)を用いて表現することができる。
画素密度は、1インチあたりの画素の数である。また、画素は画像を構成する単位である
。
【0482】
なお、目の疲労を定量的に測定する方法が検討されている。例えば、神経系の疲労の評
価指標としては、臨界融合周波数(CFF:Critical Flicker(Fus
ion) Frequency)などが知られている。また、筋肉系の疲労の評価指標と
しては、調節時間や調節近点距離などが知られている。
【0483】
そのほか、目の疲労を評価する方法として、脳波測定、サーモグラフィ法、瞬きの回数
の測定、涙液量の評価、瞳孔の収縮反応速度の評価や、自覚症状を調査するためのアンケ
ート等がある。
【0484】
本実施の形態で説明する表示機能を有する情報処理装置605は、表示装置640、演
算装置620並びに入力手段500を有する(
図28参照)。
【0485】
<1.表示装置640の構成>
表示装置640は、表示部630および制御部610を有する(
図28参照)。一次画
像信号625_Vおよび一次制御信号625_Cが表示装置640に供給され得る。表示
装置640は、画像情報を表示部630に表示できる。
【0486】
一次画像信号625_Vは、画像の階調情報(輝度情報ともいえる)の他、例えば色度
情報等を含む。
【0487】
一次制御信号625_Cは、例えば表示装置640の走査動作のタイミング等を制御す
るための信号などを含む。
【0488】
なお、電源電位等は表示装置640の制御部610および表示部630に供給される。
【0489】
[1.1制御部610]
制御部610は、表示部630を制御する機能を有する。例えば、二次画像信号615
_Vおよび/または二次制御信号615_C等を生成する。
【0490】
例えば、制御部610が極性決定回路を備える構成としてもよい。極性決定回路は、信
号の極性をフレーム毎に反転できる。
【0491】
極性決定回路は、二次画像信号615_Vの極性を反転するタイミングを通知し、当該
タイミングに従って、制御部610が二次画像信号615_Vの極性を反転する機能を備
える構成としてもよい。なお、二次画像信号615_Vの極性を、制御部610内におい
て反転してもよいし、制御部610からの命令に従って、表示部630内において反転し
てもよい。
【0492】
また、極性決定回路がカウンタと信号生成回路を有し、同期信号を用いて二次画像信号
615_Vの極性を反転させるタイミングを定める機能を有してもよい。
【0493】
なお、カウンタは、水平同期信号のパルスを用いてフレーム期間の数を数える機能を有
する。また、信号生成回路は、二次画像信号615_Vの極性を反転させるタイミングを
、制御部610に通知する機能を有する。これにより、カウンタにおいて得られたフレー
ム期間の数の情報を用いて、連続する複数フレーム期間ごとに二次画像信号615_Vの
極性を反転することができる。
【0494】
[1.1.1二次画像信号]
二次画像信号615_Vには、画像情報を含めることができる。
【0495】
例えば、制御部610は、二次画像信号615_Vを一次画像信号625_Vから生成
し、当該二次画像信号615_Vを出力してもよい。
【0496】
また、制御部610は、一次画像信号625_Vと基準電位Vscの差を振れ幅とし、
極性がフレーム毎に反転する信号を二次画像信号615_Vとして生成してもよい。
【0497】
[1.1.2二次制御信号]
二次制御信号615_Cには、表示部630の第1の駆動回路(G駆動回路632とも
いう)を制御するための信号または第2の駆動回路(S駆動回路633ともいう)を制御
するための信号を含めることができる。
【0498】
例えば、制御部610が、垂直同期信号、水平同期信号などの同期信号を含む一次制御
信号625_Cから二次制御信号615_Cを生成してもよい。
【0499】
二次制御信号615_Cは、例えばスタートパルス信号SP、ラッチ信号LP、パルス
幅制御信号PWC、クロック信号CKなどを含む。
【0500】
具体的には、二次制御信号615_Cには、S駆動回路633の動作を制御するS駆動
回路用のスタートパルス信号SP、S駆動回路用のクロック信号CK、ラッチ信号LPな
どを含めることができる。また、G駆動回路632の動作を制御するG駆動回路用のスタ
ートパルス信号SP、G駆動回路用のクロック信号CK、パルス幅制御信号PWCなどを
含めることができる。
【0501】
[1.2表示部630の構成]
表示部630は、画素部631、第1の駆動回路(G駆動回路632ともいう)並びに
第2の駆動回路(S駆動回路633ともいう)を有する。
【0502】
画素部631は、表示光に420nmより短い波長の光を含まず且つ150ppi以上
の精細度で設けられた複数の画素631pおよび当該複数の画素631pを接続する配線
を有する。それぞれの画素631pは、走査線Gの少なくとも一つと接続され、信号線S
の少なくとも一つと接続されている。なお、配線の種類およびその数は、画素631pの
構成、数および配置に依存する。
【0503】
例えば、画素631pが、x列×y行のマトリクス状に画素部631に配置されている
場合、信号線S1乃至信号線Sx並びに走査線G1乃至走査線Gyを、画素部631内に
配置する(
図29(A-1)参照)。複数の走査線(G1乃至Gy)はG信号を行毎に供
給することができる。複数の信号線(S1乃至Sx)は複数の画素にS信号を供給するこ
とができる。
【0504】
G駆動回路632は、G信号632_Gの供給を制御して、走査線Gを選択できる(図
28参照)。
【0505】
例えば、画素部631を複数の領域(具体的には第1領域631a、第2領域631b
および第3領域631c)に分割して駆動してもよい(
図29(A-2)参照)。
【0506】
各領域には、複数の画素631p、当該画素631pを行毎に選択するための複数の走
査線G並びに選択された画素631pにS信号633_Sを供給するための複数の信号線
Sを設けることができる。
【0507】
また、複数のG駆動回路(具体的には第1G駆動回路632a、第2G駆動回路632
bおよび第3G駆動回路632c)を設けてもよい。
【0508】
G駆動回路は、G信号632_Gの供給を制御して、各領域に設けられた走査線G(具
体的には第1G駆動回路632aは走査線G1乃至Gj、第2G駆動回路632bは走査
線Gj+1乃至G2jおよび第3G駆動回路632cは走査線G2j+1乃至Gy)を選
択できる。
【0509】
[1.2.1G駆動回路]
G駆動回路は、画素回路634を選択する第1の駆動信号(G信号ともいう)632_
Gを画素回路634に出力する。G駆動回路632は、各走査線を選択するG信号632
_Gを各走査線に30Hz(1秒間に30回)以上の頻度、好ましくは60Hz(1秒間
に60回)以上960Hz(1秒間に960回)未満の頻度で出力する第1のモードと、
11.6μHz(1日に1回)以上0.1Hz(1秒間に0.1回)未満の頻度、好まし
くは0.28mHz(1時間に1回)以上1Hz(1秒間に1回)未満の頻度で出力する
第2のモードを備える。
【0510】
G駆動回路632は、第1のモードと第2のモードを切り替えて動作することができる
。例えば、モード切り替え信号を含む二次制御信号615_Cまたは二次制御信号615
_Cに含まれるG駆動回路用のスタートパルス信号を用いて、G駆動回路632の第1の
モードと第2のモードを切り替えることができる。具体的には、制御部610が出力する
G駆動回路用のスタートパルス信号の出力頻度を制御してもよい。
【0511】
G信号632_GはG駆動回路632により生成される。G信号632_Gは行毎に画
素631pに出力され、画素631pは行毎に選択される。
【0512】
[1.2.2S駆動回路]
表示部630はS駆動回路633を有していても良い。S駆動回路は、第2の駆動信号
(S信号633_Sともいう)を二次画像信号615_Vから生成し、当該S信号633
_Sの信号線S(具体的にはS1乃至Sx)への供給を制御する。
【0513】
S信号633_Sは画像の階調情報等を含む。S信号633_SはG信号632_Gに
選択された画素631pに供給される。
【0514】
[1.2.3画素部631の構成の詳細]
画素部631は、複数の画素631pを有する。
【0515】
画素631pは、表示素子635と当該表示素子635を含む画素回路634を備える
(
図28参照)。
【0516】
画素回路634は供給されるS信号633_Sを保持し、表示素子635に画像情報の
一部を表示する。なお、表示素子635の種類または駆動方法に応じた構成を選択して画
素回路634に用いることができる。
【0517】
[1.2.3.1画素回路]
画素回路634の一例として、液晶素子635LCを表示素子635に適用する構成を
図29(B-1)に示す。
【0518】
画素回路634は、G信号632_Gが入力されるゲート電極と、S信号が入力される
第1の電極とを備えるトランジスタ634tと、トランジスタ634tの第2の電極に電
気的に接続される第1の電極と、共通電位が供給される第2の電極を備える液晶素子63
5LCと、を具備する。
【0519】
画素回路634は、S信号633_Sの表示素子635への供給を制御するトランジス
タ634tを有する。
【0520】
トランジスタ634tのゲートは、走査線G1から走査線Gyのいずれか1つに接続さ
れている。トランジスタ634tのソースおよびドレインの一方は、信号線S1から信号
線Sxのいずれか1つに接続され、トランジスタ634tのソースおよびドレインの他方
は、表示素子635の第1電極に接続されている。
【0521】
画素631pはトランジスタ634tをS信号633_Sの画素631pへの入力を制
御するスイッチング素子として用いる。また、複数のトランジスタを一のスイッチング素
子として画素631pに用いてもよい。上記複数のトランジスタを並列に接続して一のス
イッチング素子として用いてもよいし、直列に接続して用いても、直列と並列が組み合わ
された接続を用いてもよい。
【0522】
画素631pは、必要に応じて液晶素子635LCの第1電極と第2電極間の電圧を保
持するための容量素子634cの他、トランジスタ、ダイオード、抵抗素子、容量素子、
インダクタなどのその他の回路素子を有していても良い。表示素子635の第2電極には
、所定の共通電位Vcomが与えられている。
【0523】
容量素子634cの容量は適宜調整すればよい。例えば、後述する第2のモードにおい
て、S信号633_Sを比較的長い期間(具体的には、1/60sec以上)保持する場
合には、容量素子634cを設ける。また、容量素子634c以外の構成を用いて、画素
回路634の容量を調節してもよい。例えば、液晶素子635LCの第1の電極と第2の
電極を重ねて設ける構成により、実質的に容量素子を形成してもよい。
【0524】
画素回路の他の一例として、EL素子635ELを表示素子635に適用する構成を図
29(B-2)に示す。
【0525】
画素回路634ELは、G信号632_Gが入力されるゲート電極と、S信号が入力さ
れる第1の電極と、容量素子634cの第1の電極と電気的に接続される第2の電極と、
を有する第1のトランジスタ634t_1を有する。また、第1のトランジスタ634t
_1の第2の電極に電気的に接続されるゲート電極と、容量素子634cの第2の電極と
電気的に接続される第1の電極と、EL素子635ELの第1の電極と電気的に接続され
る第2の電極と、を有する第2のトランジスタ634t_2を有する。また、容量素子6
34cの第2の電極と、第2のトランジスタ634t_2の第1の電極には、電源電位が
供給され、EL素子635ELの第2の電極には、共通電位が供給される。なお、電源電
位と共通電位の電位差は、EL素子635ELの発光開始電圧よりも大きい。
【0526】
[1.2.3.2トランジスタ]
画素回路634において、トランジスタ634tは、信号線Sの電位を表示素子635
の第1電極に与えるか否かを制御する。
【0527】
なお、本発明の一態様の表示装置に好適なトランジスタとして酸化物半導体を用いたト
ランジスタを適用することができる。酸化物半導体を用いたトランジスタの詳細について
は、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0528】
酸化物半導体膜が適用されたトランジスタは、オフ状態でのソースとドレイン間のリー
ク電流(オフ電流)を、従来のシリコンを用いたトランジスタと比較して極めて低いもの
とすることができる。オフ電流が極めて小さいトランジスタを表示部の画素部に用いるこ
とにより、フリッカーの発生を抑制しつつ、フレーム周波数を下げることができる。
【0529】
[1.2.3.3表示素子]
表示素子635は液晶素子635LCに限られず、例えば電圧を加えることでエレクト
ロルミネッセンス(Electroluminescence)が発生するOLED素子
や、電気泳動を用いる電子インクなど、さまざまな表示素子を適用できる。
【0530】
例えば、液晶素子635LCの偏光の透過率は、S信号633_Sの電位により制御す
ることができ、これにより階調を表示することができる。
【0531】
[1.2.4光供給部]
例えば、透過型の液晶素子を表示素子635に適用する場合、光供給部650を表示部
630に設けることができる。光供給部650は光源を有する。制御部610は、光供給
部650が有する光源の駆動を制御する。液晶素子が設けられた画素部631に光を供給
し、バックライトとして機能する。
【0532】
光供給部650の光源としては、冷陰極蛍光ランプ、発光ダイオード(LED)、OL
ED素子などを用いることができる。
【0533】
特に、光源が発する青色の光の強度を他の色の光の強度より弱めた構成が好ましい。光
源が発する光に含まれる青色を呈する光は、眼の角膜や水晶体で吸収されずに、網膜まで
到達するため、長期的な網膜への影響(例えば、加齢黄斑変性など)や、夜中まで青色の
光に暴露された際の概日リズム(サーカディアン・リズム:Circadian rhy
thm)への悪影響などを低減できる。具体的には、400nm以下、好ましくは420
nm以下、より好ましくは440nm以下の波長を有する光(UVAともいう)を含まな
い光源が好ましい。
【0534】
<2.演算装置>
演算装置620は、一次画像信号625_Vおよびモード切り替え信号を含む一次制御
信号625_Cを生成する。
【0535】
[モード切り替え信号を含む一次制御信号の例1]
モード切り替え信号は、例えば、情報処理装置605の使用者の命令により生成しても
よい。
【0536】
情報処理装置605の使用者は、入力手段500を用いて表示を切り替える命令をする
ことができる。画像切り替え信号500_Cが演算装置620に供給され、演算装置62
0がモード切り替え信号を含む一次制御信号625_Cを出力するように構成して良い。
【0537】
モード切り替え信号を含む一次制御信号625_Cが、表示装置640の制御部610
に供給され、制御部がモード切り替え信号を含む一次制御信号625_Cを出力する。
【0538】
例えば、第2のモードから第1のモードに切り替えるモード切り替え信号を含む一次制
御信号625_Cが、G駆動回路632に供給されると、G駆動回路632は第2のモー
ドから第1のモードに切り替わる。そして、G駆動回路632はG信号を1フレーム分以
上出力し、その後第2のモードに切り替わる。
【0539】
具体的には、入力手段500がページめくり動作を検知した場合に、画像切り替え信号
500_Cを演算装置620に出力するように構成してもよい。
【0540】
演算装置620は、ページめくり動作を含む一次画像信号625_Vを生成し、当該一
次画像信号625_Vと共にモード切り替え信号を含む一次制御信号625_Cを出力す
る。
【0541】
当該一次画像信号625_Vと当該一次制御信号625_Cが供給された制御部610
は、モード切り替え信号を含む二次制御信号615_Cと、ページめくり動作を含む二次
画像信号615_Vを供給する。
【0542】
モード切り替え信号を含む二次制御信号615_Cが供給されたG駆動回路632は、
第2のモードから第1のモードに切り替わり、高い頻度でG信号632_Gを出力する。
【0543】
ページめくり動作を含む二次画像信号615_Vが供給されたS駆動回路633は、当
該二次画像信号615_Vから生成したS信号633_Sを画素回路634に出力する。
【0544】
これにより、画素631pは、ページめくり動作を含む多数のフレーム画像を高い頻度
で書き換えることができる。その結果、ページめくり動作を含む二次画像信号615_V
をなめらかに表示できる。
【0545】
[モード切り替え信号を含む一次制御信号の例2]
演算装置620が、表示部630に出力する一次画像信号625_Vが動画像か静止画
像かを判別し、その判別結果に応じてモード切り替え信号を含む一次制御信号625_C
を出力するように構成して良い。
【0546】
具体的には、一次画像信号625_Vが動画像である場合において、当該演算装置62
0が第1のモードを選択する切り替え信号を出力し、静止画像である場合において、当該
演算装置620が第2のモードを選択する切り替え信号を出力する構成としてもよい。
【0547】
なお、動画像が静止画像かを判別する方法としては、一次画像信号625_Vに含まれ
る一のフレームとその前後のフレームの信号の差分が、あらかじめ定められた差分より大
きいときに動画像と、それ以下のとき静止画像と、判別すればよい。
【0548】
制御部610が、G駆動回路の動作モードを一のモードから他のモードに切り替えると
き(例えば、第2のモードから第1のモードに切り替えるとき)G駆動回路は、G信号6
32_Gを1回以上の所定の回数出力した後に、他のモードに切り替わる構成としてもよ
い。
【0549】
<3.入力手段>
入力手段500としては、タッチパネル、タッチパッド、マウス、ジョイスティック、
トラックボール、データグローブ、撮像装置などを用いることができる。演算装置620
は、入力手段500から入力される電気信号と表示部の座標を関連づけることができる。
これにより、使用する者が表示部に表示される情報を処理するための命令を入力すること
ができる。
【0550】
使用する者が入力手段500から入力する情報としては、例えば表示部に表示される画
像の表示位置を変えるためにドラッグする命令、表示されている画像を送り次の画像を表
示するためにスワイプする命令、帯状の画像を順に送るためにスクロールする命令、特定
の画像を選択する命令、画像を表示する大きさを変化するためにピンチ・イン、ピンチ・
アウトする命令の他、手書き文字入力する命令などを挙げることができる。
【0551】
なお、照度は、単位面積の被照面に単位時間あたりに入射される、目の分光感度が加味
された光の量である。
【0552】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0553】
(実施の形態10)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用する
ことができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信
機ともいう。)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ
、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置
、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機
器の一例を
図15に示す。
【0554】
図15(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は
、筐体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示
することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を
示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0555】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能で
ある。それゆえ、表示部9003の表示品位を高くすることができる。
【0556】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003
に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力する
ことができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、
画面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、イメー
ジセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ入力機能を持たせ
ることができる。
【0557】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して
垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、
大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブル
に表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0558】
図15(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100
は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表
示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持し
た構成を示している。
【0559】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリ
モコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キ
ー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示さ
れる映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作
機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0560】
図15(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。
テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、
さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一
方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など
)の情報通信を行うことも可能である。
【0561】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、表示部9107に用
いることが可能である。それゆえ、テレビジョン装置の表示品位を向上させることができ
る。
【0562】
図15(C)はコンピュータ9200であり、本体9201、筐体9202、表示部9
203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス920
6などを含む。
【0563】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能で
ある。それゆえ、コンピュータ9200の表示品位を向上させることができる。
【0564】
表示部9203は、タッチ入力機能を有しており、コンピュータ9200の表示部92
03に表示された表示ボタンを指などで触れることで、画面操作や、情報を入力すること
ができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、画面
操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、実施の形態
5に示したイメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9203にタッチ
入力機能を持たせることができる。
【0565】
図16(A)および
図16(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図16(
A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表
示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力
モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0566】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631b
に用いることが可能である。それゆえ、タブレット端末の表示品位を向上させることがで
きる。
【0567】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示さ
れた操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部96
31aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領
域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部96
31aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9
631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表
示画面として用いることができる。
【0568】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボー
ド表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれること
で表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0569】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時に
タッチ入力することもできる。
【0570】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向き
を切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外
光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セ
ンサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置
を内蔵させてもよい。
【0571】
また、
図16(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
【0572】
図16(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9
633、充放電制御回路9634を有する。なお、
図16(B)では充放電制御回路96
34の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成につい
て示している。
【0573】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0574】
また、この他にも
図16(A)および
図16(B)に示したタブレット型端末は、様々
な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時
刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集する
タッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を
有することができる。
【0575】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は
、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的
に行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチ
ウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0576】
また、
図16(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について
図16
(C)にブロック図を示し説明する。
図16(C)には、太陽電池9633、バッテリー
9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW
3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ96
36、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3が、
図16(B)に示す
充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0577】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明す
る。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようD
CDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作
に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバー
タ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表
示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2を
オンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0578】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず
、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による
バッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を
送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また、他の充電手段を組み合わせて行
う構成としてもよい。
【0579】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【0580】
[実施例]
本実施例では、容量素子を構成する一対の電極のうち一方を、透光性を有する半導体膜
に不純物を含ませた電極を用い、表示させた。表示された画像を
図49に示す。
【0581】
図49より、透光性を有する半導体膜に不純物を含ませた電極を有する容量素子を用い
ても表示できることが確認できた。
【0582】
[参考例]
酸化物半導体が青色を呈する光を吸収することを確かめるために、波長と透過率の関係
を示す。
【0583】
サンプル1は、窒化シリコン膜400nmと、窒化シリコン膜上の酸化窒化シリコン膜
50nmと、酸化窒化シリコン膜上のIn-Ga-Zn系酸化物膜35nmと、In-G
a-Zn系酸化物膜上の窒化シリコン膜100nmと、窒化シリコン膜上の酸化シリコン
とインジウム錫酸化物の化合物を100nmと、を有する。
【0584】
サンプル2は、窒化シリコン膜400nmと、窒化シリコン膜上のIn-Ga-Zn系
酸化物膜35nmと、In-Ga-Zn系酸化物膜上の酸化シリコン膜を450nmと、
酸化シリコン膜上の窒化シリコン膜100nmと、窒化シリコン膜上の酸化シリコンとイ
ンジウム錫酸化物の化合物を100nmと、を有する。
【0585】
サンプル3は、窒化シリコン膜400nmと、窒化シリコン膜上の酸化窒化シリコン膜
50nmと、酸化窒化シリコン膜上のIn-Ga-Zn系酸化物膜35nmと、In-G
a-Zn系酸化物膜上の酸化シリコン膜を450nmと、酸化シリコン膜上の窒化シリコ
ン膜100nmと、窒化シリコン膜上の酸化シリコンとインジウム錫酸化物の化合物を1
00nmと、を有する。
【0586】
ここで、
図30に波長と透過率の関係を示す。図中の実線はサンプル1、点線はサンプ
ル2、一点鎖線はサンプル3を示す。
図30に示すように、全サンプルにおいて波長が4
00nm乃至460nmの領域において、他の可視光領域に比べ、透過率が低減している
ことが確認された。透過率が低減していることにより、サンプルが、400nm乃至46
0nmの領域の光を吸収していることが示唆された。
【符号の説明】
【0587】
100 画素部
101 画素
102 基板
103 トランジスタ
104 走査線駆動回路
105 容量素子
106 信号線駆動回路
107 走査線
108 液晶素子
109 信号線
111 半導体膜
113 導電膜
115 容量線
117 開口
119 半導体膜
120 導電膜
121a 電極
121b 画素電極
123a 開口
123b 開口
125 導電膜
126 絶縁膜
127 ゲート絶縁膜
128 絶縁膜
129 絶縁膜
130 絶縁膜
131 絶縁膜
132 絶縁膜
133 絶縁膜
154 対向電極
199a 第1の酸化物膜
199b 酸化物半導体膜
199c 第2の酸化物膜
201 画素
205 容量素子
220 導電膜
221a 電極
221b 画素電極
223a 開口
223b 開口
225 絶縁膜
226 絶縁膜
227 ゲート絶縁膜
228 絶縁膜
229 絶縁膜
230 絶縁膜
231 絶縁膜
232 絶縁膜
233 絶縁膜
245 容量素子
500 入力手段
500_C 信号
600 スパッタリング用ターゲット
601 イオン
602 スパッタリング粒子
603 被成膜面
605 情報処理装置
610 制御部
615_C 二次制御信号
615_V 二次画像信号
620 演算装置
623 トランジスタ
625_C 一次制御信号
625_V 一次画像信号
627 ゲート電極
628 半導体膜
629 ソース電極
630 表示部
631 画素部
631a 領域
631b 領域
631c 領域
631p 画素
632 G駆動回路
632_G G信号
632a G駆動回路
632b G駆動回路
632c G駆動回路
633 S駆動回路
633_S S信号
634 画素回路
634c 容量素子
634EL 画素回路
634t トランジスタ
634t_1 トランジスタ
634t_2 トランジスタ
635 表示素子
635EL EL素子
635LC 液晶素子
639 ドレイン電極
640 表示装置
641 導電膜
901 基板
902 画素部
903 信号線駆動回路
904 走査線駆動回路
905 シール材
906 基板
908 液晶層
910 トランジスタ
911 トランジスタ
913 液晶素子
915 接続端子電極
916 端子電極
918 FPC
918a FPC
918b FPC
919 異方性導電剤
922 ゲート絶縁膜
923 絶縁膜
924 絶縁膜
925 シール材
926 容量素子
927 酸化物半導体膜
928 電極
929 容量線
930a 第1の電極
930b 電極
931 第2の電極
932 絶縁膜
933 絶縁膜
934 絶縁膜
935 スペーサ
936 容量素子
971 ソース電極
973 ドレイン電極
975 共通電位線
977 共通電極
985 共通電位線
987 共通電極
3501 配線
3502 配線
3503 トランジスタ
3504 液晶素子
3510 配線
3510_1 配線
3510_2 配線
3511 配線
3515_1 ブロック
3515_2 ブロック
3516 ブロック
3521 トランジスタ
3522 電極
3523 電極
3524 液晶
3525 カラーフィルタ
3526 配線
3530 電子機器
3531 筐体
3532 タッチパネル
3533 バッテリー
3534 制御部
3535 配線
3536 配線
3540 表示パネル
3541 基板
3542 表示部
3543 基板
3544 タッチセンサ
3545 基板
3546 保護基板
3547 接着層
9000 テーブル
9001 筐体
9002 脚部
9003 表示部
9004 表示ボタン
9005 電源コード
9033 留め具
9034 スイッチ
9035 電源スイッチ
9036 スイッチ
9038 操作スイッチ
9100 テレビジョン装置
9101 筐体
9103 表示部
9105 スタンド
9107 表示部
9109 操作キー
9110 リモコン操作機
9200 コンピュータ
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a 領域
9632b 領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9637 コンバータ
9638 操作キー
9639 ボタン