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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023186893
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】人見 基久
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112054696(CN,A)
【文献】特開2014-075943(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、
4つのスイッチを上下アームとして2つの端子との間にそれぞれ並列に接続された第1レグと第2レグと、前記第1レグと前記第2レグのそれぞれにおいて上下アームを接続するフライングキャパシタと、を有し、それぞれ前記トランスの前記1次巻線側及び前記トランスの前記2次巻線側に接続される2つのスイッチング回路と、
前記トランスの前記1次巻線側又は前記2次巻線側で、前記第1レグの上下アームの接続点側と前記第2レグの上下アームの接続点側との間に前記1次巻線 又は前記2次巻線を介して接続されるインダクタンス手段と、
前記スイッチング回路のスイッチング制御を行う制御回路と
を備え、
それぞれの前記スイッチは、逆並列ダイオードと並列コンデンサとがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子を直列に接続し、前記2つの端子の一方側の前記スイッチ素子に並列に追加コンデンサを接続すること、及び
前記フライングキャパシタは、前記スイッチ素子の接続点同士を接続すること
を特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記2つの端子側から入力される直流を交流に変換して前記トランスへ出力する側の前記スイッチング回路に対し、前記第1又は第2レグの上アームのスイッチと前記第2又は第1レグの下アームのスイッチとを組にして交互にオンオフさせるオンオフ制御を行うこと、及び
前記オンオフ制御を行うにあたり、それぞれの前記組において、
前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子のオンオフ動作を同期させ、前記追加コンデンサが並列しない前記スイッチ素子のオンオフ動作を同期させること、
前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子を先にオフさせること、且つ
一方の前記組に含まれる前記追加コンデンサが並列しない前記スイッチ素子がオフして固定時間が経過した後に他方の前記組に含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子をオンすること
を特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記トランス側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子から出力する側の前記スイッチング回路に対し、前記第1又は第2レグの上アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子とを組にして交互にオンオフさせる整流動作を行うこと
を特徴とする請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記2つの端子側から入力される直流を交流に変換して前記トランスへ出力する側の前記スイッチング回路の前記オンオフ動作の位相と前記トランス側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子から出力する側の前記スイッチング回路の前記整流動作の位相をずらす位相シフト制御を行うことで、
他方の前記スイッチング回路の前記2つの端子間側から出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は一方の前記スイッチング回路の前記2つの端子間側から入力される電圧、電流又は電力の検出値を目標値に近づけることを特徴とする請求項3に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記位相シフトの最小シフト量は、
前記2つの端子側から入力される直流を交流に変換して前記トランスへ出力する側の前記スイッチング回路において、前記第1又は第2レグの上アームのスイッチと前記第2又は第1レグの下アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子がオンとなったときに、
前記トランス側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子から出力する側の前記スイッチング回路の、前記第2又は第1レグの上アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子と前記第1又は第2レグの下アームのスイッチ に含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子をオンする前記位相のときであること
を特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記制御回路は、前記検出値を前記目標値に近づけるように、前記位相シフト制御にて(1)と(2)とも、及び(3)と(4)ともオンとなる時間を調整することを特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
(1)前記2つの端子側から入力される直流を交流に変換して前記トランスへ出力する側の前記スイッチング回路の、前記第1レグの上アームのスイッチと前記第2レグの下アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子、
(2)前記トランス側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子から出力する側の前記スイッチング回路の、前記第1レグの上アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子と前記第2レグの下アームのスイッチ に含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子 、
(3)前記2つの端子側から入力される直流を交流に変換して前記トランスへ出力する側の前記スイッチング回路の、前記第1レグの下アームのスイッチと前記第2レグの上アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子、
(4)前記トランス側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子から出力する側の前記スイッチング回路の、前記第1レグの下アームのスイッチに含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子と前記第2レグの上アームのスイッチ に含まれる前記追加コンデンサが並列する前記スイッチ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向に入出力可能なDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲な入出力電圧電流に対応でき、スイッチング損失を低減したコンバータ及び双方向コンバータが知られている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-075943号公報
【文献】特開2014-075944号公報
【文献】特開2014-124050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載されるDC/DCコンバータは、トランスの1次側のスイッチ素子に入力電圧、2次側のスイッチ素子に出力電圧が印加される。このため、高い電圧(例えば、1000~1500V、あるいはそれ以上の電圧)を入出力する場合、高耐圧なスイッチ素子を使用することになる。しかし、高耐圧なスイッチ素子はオン抵抗が大きく、高耐圧なスイッチ素子でDC/DCコンバータを構成すれば動作時の損失が大きいという課題がある。また、現在市販されているスイッチ素子の耐圧にも限界があり、それより高い入出力電圧を扱うことができるDC/DCコンバータを設計することが困難という課題もある。
【0005】
上記課題に対し、スイッチ素子を直列に接続して印加電圧を分担することも考えられる。しかし、スイッチングのタイミングにズレが生じると耐圧を超える電圧がスイッチ素子に印加され、故障する可能性がある。つまり、スイッチ素子を直列に接続して分圧した場合、スイッチングの制御が困難という課題が発生する。
【0006】
以上のように、特許文献1及び2に開示されるDC/DCコンバータには、高電圧を入出力することが困難という課題があった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、オン抵抗の大きな耐圧の高いスイッチ素子を使用することなく、スイッチ素子の耐圧より入出力電圧を高くでき、且つ精密なスイッチング制御が不要であるDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るDC/DCコンバータは、スイッチ素子を直列に接続して入出力電圧を分圧するとともに、フライングキャパシタ方式を採用することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係るDC/DCコンバータは、
1次巻線と2次巻線とを有するトランス(11)と、
4つのスイッチ(Sx:x=1-4)を上下アームとして2つの端子(Ter1&Ter2)との間にそれぞれ並列に接続された第1レグ(12)と第2レグ(13)と、前記第1レグ(12)と前記第2レグ(13)のそれぞれにおいて上下アームを接続するフライングキャパシタ(FC1,FC2)と、を有し、それぞれ前記トランスの前記1次巻線(11a)側及び前記トランスの前記2次巻線(11b)側に接続される2つのスイッチング回路(1&2)と、
前記トランスの前記1次巻線(11a)側又は前記2次巻線(11b)側で、前記第1レグ(12)の上下アームの接続点側と前記第2レグ(13)の上下アームの接続点側との間に前記1次巻線(11a) 又は前記2次巻線(11b)を介して接続されるインダクタンス手段(L)と、
前記スイッチング回路(1&2)のスイッチング制御を行う制御回路(3)と
を備え、
それぞれの前記スイッチ(Sx)は、逆並列ダイオード(Dxa,Dxb)と並列コンデンサ(Cxa,Cxb)とがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子(Qxa,Qxb)を直列に接続し、前記2つの端子の一方(Ter1/Ter2)側の前記スイッチ素子(Qxa/Qxb)に並列に追加コンデンサ(Cxp)を接続すること、及び
前記フライングキャパシタ(FC1,FC2)は、前記スイッチ素子(Qxa,Qxb)の接続点同士を接続すること
を特徴とする。
【0009】
本発明に係るDC/DCコンバータは、特許文献1及び2に記載されるDC/DCコンバータの回路の各スイッチ素子を、2つのスイッチ素子を直列接続させたスイッチに置換するとともに、フライングキャパシタ方式を採用している。このため、本DC/DCコンバータは、各スイッチ素子に印加される電圧を1次側では入力電圧の約半分、2次側では出力電圧の約半分に抑えることができ、オン抵抗が大きい耐圧の高いスイッチ素子を使用することなく、スイッチ素子の耐圧より高い入出力電圧を扱うことができる。
【0010】
また、本DC/DCコンバータの動作は、特許文献1及び2に記載されるDC/DCコンバータの動作と基本的には同じなので、特許文献1及び2に記載されるDC/DCコンバータと同等のスイッチング制御を行えばよい。
【0011】
従って、本発明は、オン抵抗の大きな耐圧の高いスイッチ素子を使用することなく、スイッチ素子の耐圧より入出力電圧を高くでき、且つ精密なスイッチング制御が不要であるDC/DCコンバータを提供することができる。
また、本DC/DCコンバータの動作は、特許文献1及び2に記載されるDC/DCコンバータの動作と基本的には同じなので、広範囲な入出力電圧電流範囲においてZVSを可能とし、スイッチング損失を削減した高効率な双方向動作を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、オン抵抗の大きな耐圧の高いスイッチ素子を使用することなく、スイッチ素子の耐圧より入出力電圧を高くでき、且つ精密なスイッチング制御が不要であるDC/DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るDC/DCコンバータの構成図である。
図2】本発明に係るDC/DCコンバータにおけるスイッチングのタイミングを説明する図である。
図3】本発明に係るDC/DCコンバータにおけるスイッチングのタイミングとインダクタンス手段に流れる電流との関係を説明する図である。
図4】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図5】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図6】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図7】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図8】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図9】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図10】本発明に係るDC/DCコンバータにおけるスイッチングのタイミングを説明する図である。
図11】本発明に係るDC/DCコンバータにおけるスイッチングのタイミングとインダクタンス手段に流れる電流との関係を説明する図である。
図12】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図13】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図14】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図15】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図16】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
図17】本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本実施形態のDC/DCコンバータの構成図を説明する図である。本DC/DCコンバータは、
1次巻線と2次巻線とを有するトランス(11)と、
4つのスイッチ(Sx:x=1~4)を上下アームとして2つの端子(Ter1&Ter2)との間にそれぞれ並列に接続された第1レグ(12)と第2レグ(13)と、前記第1レグ(12)と前記第2レグ(13)のそれぞれにおいて上下アームを接続するフライングキャパシタ(FC1,FC2)と、を有し、それぞれ前記トランスの前記1次巻線(11a)側及び前記トランスの前記2次巻線(11b)側に接続される2つのスイッチング回路(1&2)と、
前記トランスの前記1次巻線(11a)側又は前記2次巻線(11b)側で、前記第1レグ(12)の上下アームの接続点側と前記第2レグ(13)の上下アームの接続点側との間に前記1次巻線(11a)又は前記2次巻線(11b)を介して接続されるインダクタンス手段(L)と、
前記スイッチング回路(1&2)のスイッチング制御を行う制御回路(3)と
を備え、
それぞれの前記スイッチ(Sx)は、逆並列ダイオード(Dxa,Dxb)と並列コンデンサ(Cxa,Cxb)とがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子(Qxa,Qxb)を直列に接続し、前記2つの端子の一方(Ter1/Ter2)側の前記スイッチ素子(Qxa/Qxb)に並列に追加コンデンサ(Cxp)を接続すること、及び
前記フライングキャパシタ(FC1,FC2)は、前記スイッチ素子(Qxa,Qxb)の接続点同士を接続すること
を特徴とする。
【0016】
各スイッチ素子(Qxa,Qxb:x=1~4)には、逆並列ダイオード(Dxa,Dxb)と並列コンデンサ(Cxa,Cxb)とがそれぞれ並列に接続されている。ここで、各スイッチ素子、各ダイオード、各コンデンサの定数や各スイッチ素子を駆動する信号のパルス幅などにばらつきが無いものとする。
【0017】
なお、本発明においては、スイッチ素子(Qxa、Qxb)に並列に接続された逆並列ダイオード(Dxa、Dxb)は、スイッチ素子の内蔵ダイオードを用いてもよく、スイッチ素子とは別に外付けされたダイオードを用いてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。同様に、スイッチ素子(Qxa、Qxb)に並列に接続された並列コンデンサ(Cxa、Cxb)は、スイッチ素子の寄生容量を用いてもよく、スイッチ素子とは別に外付けされたコンデンサを用いてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
逆並列ダイオード(Dxa,Dxb)と並列コンデンサ(Cxa,Cxb)とが並列に接続されているスイッチ素子QxaとQxbとを直列に接続した構成をスイッチSxとする。なお、スイッチSxに含まれる直列するスイッチ素子は、端子Ter1側をスイッチ素子Qxa、端子Ter2側をスイッチ素子Qxbとして説明する。
【0019】
フライングキャパシタは、1つのスイッチSxを構成する2つのスイッチ素子(Qxa、Qxb)の接続点と、同一レグにある他のスイッチSxを構成する2つのスイッチ素子(Qxa、Qxb)の接続点とを接続する。
フライングキャパシタ(FC1、FC2)の静電容量は、電圧がスイッチング周期間で一定と見なせるほどに十分に大きい値とする。ここで、スイッチング回路1のフライングキャパシタ(FC1,FC2)の電圧は入力電圧Vinの1/2、スイッチング回路2のフライングキャパシタ(FC1(FC4),FC2(FC3))の電圧は出力電圧Voの1/2になっているとする。
【0020】
制御回路3は、スイッチ素子Q1bとQ4bを同期させ、スイッチ素子Q2bとQ3bを同期させ、スイッチ素子Q1aとQ4aを同期させ、スイッチ素子Q2aとQ3aを同期させて動作させる。このため、以降の説明において、スイッチ素子Q1bとQ4bをペアスイッチPS1、スイッチ素子Q2bとQ3bをペアスイッチPS2、スイッチ素子Q2aとQ3aをペアスイッチPS3、スイッチ素子Q1aとQ4aをペアスイッチPS4として説明する。
【0021】
本DC/DCコンバータは、トランス11と、トランス11の1次巻線11a側に接続されるスイッチング回路1と、トランス11の2次巻線11b側に接続されるスイッチング回路2と、インダクタンス手段Lと、制御回路3とを備える。このDC/DCコンバータは、第1端子Ter1及び第2端子Ter2側から入力される直流を交流に変換させてスイッチング回路1から出力し、トランス11を介してスイッチング回路2で交流を直流に変換して出力側の第3端子Ter3、第4端子Ter4側へ電力を供給する。
【0022】
スイッチング回路1は、スイッチ(S1-S4)を上下アームとして2つの端子(Ter1&Ter2)との間にそれぞれ並列に接続された第1レグ(12)と第2レグ(13)と、スイッチ素子Qxaのそれぞれ、又はスイッチ素子Qxbのそれぞれに並列に接続される追加コンデンサCxpと、を有する。
【0023】
第1端子Ter1、第2端子Ter2には外付けされる電源からの電力が入力される。第1端子Ter1、第2端子Ter2の間にはコンデンサ16が接続され、直流電圧となる(直流電圧が第1端子Ter1、第2端子Ter2の間に入力される)。さらに第1端子Ter1、第2端子Ter2間にスイッチング回路1が接続され、スイッチング回路1は、第1レグ12及び第2レグ13の上下アームをスイッチS1~S4で構成したフルブリッジの回路となっている。また、検出手段19は、第1端子Ter1、第2端子Ter2間の電圧、あるいは第1端子Ter1、第2端子Ter2を介してスイッチング回路1に入出力する電流又は電力を検出する。
【0024】
スイッチング回路1のブリッジ接続回路内で、各レグのスイッチの接続点(スイッチS1とS2の接続点、スイッチS3とS4の接続点)には、トランス11の1次巻線11aが接続される。
【0025】
なお、以下の説明においては検出対象を電圧として説明しているが、本発明は電圧に限らず、電流や電力を検出しても同様に動作し、同様の効果を得られる。
【0026】
本実施形態の図1の回路構成では、第1レグ12、第2レグ13は、第1端子と第2端子との間にそれぞれ並列に接続される。第1レグ12は、スイッチS1、S2を上下アームとし、第2レグ13は、スイッチS3、S4を上下アームとする。スイッチS1~S4は、それぞれスイッチ素子Q1aとQ1b、Q2aとQ2b、Q3aとQ3b、Q4aとQ4bをそれぞれ直列に接続したものである。
フライングキャパシタFC1は、スイッチ素子Q1aとQ1bの接続点とスイッチ素子Q2aとQ2bの接続点とを接続し、フライングキャパシタFC2は、スイッチ素子Q3aとQ3bの接続点とスイッチ素子Q4aとQ4bの接続点とを接続する。
【0027】
追加コンデンサCxpは、組となるスイッチング回路1のペアスイッチPS1とPS4又はPS2とPS3のうち先にオフさせるペアスイッチのスイッチ素子に並列に接続される。図1では、追加コンデンサCxpを、先にオフさせるペアスイッチ(PS3、PS4)の各スイッチ素子Qxaにそれぞれ並列に接続している。
【0028】
スイッチング回路2は、トランス11を挟み、スイッチング回路1をミラーに映したような回路構成である。ただし、説明容易のため、スイッチング回路1とは異なる符号を付して説明することがある。つまり、
第1端子Ter1、第2端子Ter2をそれぞれ第3端子Ter3、第4端子Ter4、
スイッチ素子(Q1a、Q1b)、逆並列ダイオード(D1a、D1b)、並列コンデンサ(C1a、C1b)をそれぞれ(Q7a、Q7b)、(D7a、D7b)、(C7a、C7b)、
スイッチ素子(Q2a、Q2b)、逆並列ダイオード(D2a、D2b)、並列コンデンサ(C2a、C2b)をそれぞれ(Q8a、Q8b)、(D8a、D8b)、(C8a、C8b)、
スイッチ素子(Q3a、Q3b)、逆並列ダイオード(D3a、D3b)、並列コンデンサ(C3a、C3b)をそれぞれ(Q5a、Q5b)、(D5a、D5b)、(C5a、C5b)、
スイッチ素子(Q4a、Q4b)、逆並列ダイオード(D4a、D4b)、並列コンデンサ(C4a、C4b)をそれぞれ(Q6a、Q6b)、(D6aD6b)、(C6a、C6b)、
フライングキャパシタ(FC1、FC2)をそれぞれ(FC4、FC3)、
追加コンデンサ(C1p、C2p、C3p、C4p)をそれぞれ(C7p、C8p、C5p、C6p)。
また、スイッチ素子Q5aとQ8aをペアスイッチPS5、スイッチ素子Q6aとQ7aをペアスイッチPS6、スイッチ素子Q6bとQ7bをペアスイッチPS7、スイッチ素子Q5bとQ8bをペアスイッチPS8として説明することがある。
【0029】
また、第3端子Ter3、第4端子Ter4の間にはコンデンサ17が接続され、直流電圧となる(直流電圧が第3端子Ter3、第4端子Ter4の間に出力される)。さらに第3端子Ter3、第4端子Ter4間にスイッチング回路2が接続され、スイッチング回路2は、第1レグ25及び第2レグ24の上下アームをスイッチS5~S8で構成したフルブリッジの回路となっている。また、検出手段18は、第3端子Ter3、第4端子Ter4間の電圧、あるいは第3端子Ter3、第4端子Ter4を介してスイッチング回路2に入出力する電流又は電力を検出する。
【0030】
スイッチング回路2のブリッジ接続回路内で、各レグのスイッチの接続点(スイッチS5とS6の接続点、スイッチS7とS8の接続点)には、トランス11の2次巻線11bが接続される。
【0031】
インダクタンス手段Lは、第1レグ12の上下アームの接続点側と第2レグ13の上下アームの接続点側とにトランス11の1次巻線11aを介して接続される。このインダクタンス手段Lは、スイッチング回路2側においてトランス11の2次巻線11bを介して接続させてもよい。また、図1では、インダクタンス手段Lの一端が第1レグ12の上下アームの接続点側に、他端がトランス11の1次巻線11a側に接続されるが、インダクタンス手段Lの一端を第2レグ13の上下アームの接続点側に、他端をトランス11の1次巻線11a側に接続させてもよい。インダクタンス手段Lが2次巻線11bを介して接続される場合も同様である。
【0032】
制御回路3は、各スイッチング回路(1、2)のスイッチSxにそれぞれ駆動信号を与えて、各スイッチのオンオフ制御をする。まず、ゼロボルトスイッチング(ZVS)制御について説明する。
前記制御回路(3)は、
前記2つの端子(Ter1&Ter2)側から入力される直流を交流に変換して前記トランス(11)へ出力する側の前記スイッチング回路(1/2)に対し、前記第1又は第2レグの上アームのスイッチ(S1/3)と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチ(S4/2)とを組にして交互にオンオフさせるオンオフ制御を行うこと、及び
前記オンオフ制御を行うにあたり、それぞれの前記組において、
前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa)のオンオフ動作を同期させ、前記追加コンデンサ(Cxp)が並列しない前記スイッチ素子(Qxb)のオンオフ動作を同期させること、
前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa)を先にオフさせること、且つ
一方の前記組に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列しない前記スイッチ素子(Qxb)がオフして固定時間(Td)が経過した後に他方の前記組に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa)をオンすること
を特徴とする。
【0033】
図1のDC/DCコンバータは、ペアスイッチPS1又はPS3とペアスイッチPS4又はPS2とがそれぞれ一組となって交互にオンオフする。組となるスイッチング回路1のペアスイッチ(PS1、PS4)のうち、ペアスイッチPS4又はPS1を先にオフさせて、その後に、ペアスイッチPS1又はPS4を後からオフさせる。同様に、他方の組となるスイッチング回路1のペアスイッチ(PS2、PS3)のうち、ペアスイッチPS3又はPS2を先にオフさせて、その後に、ペアスイッチPS2又はPS3を後からオフさせる。
【0034】
スイッチング回路1が第1端子Ter1及び第2端子Ter2から入力される直流を変換した交流はトランス11を介してスイッチング回路2に入力される。スイッチング回路2は、この交流を直流に整流して第3端子Ter3、第4端子Ter4へ出力する。つまり、制御回路(3)は、前記トランス(11)側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子(Ter3&Ter4)から出力する側の前記スイッチング回路(2/1)に対し、前記第1又は第2レグの上アームのスイッチ(S1,3)に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa)と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチ(S4,2) に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa)とを組にして交互にオンオフさせる整流動作を行う。
【0035】
第1端子Ter1及び第2端子Ter2側から入力される直流を交流に変換させてスイッチング回路1から出力し、トランス11を介してスイッチング回路2で交流を直流に変換して出力側の第3端子Ter3、第4端子Ter4側へ電力を供給するようにスイッチング回路(1、2)を動作させる制御を「エネルギー遷移スイッチング制御」と呼ぶ。
【0036】
このエネルギー遷移スイッチング制御について説明する。エネルギー遷移スイッチング制御は、ペアスイッチ(PS5、PS6)をオンオフさせるタイミングの位相をずらすことでなされる。
前記制御回路(3)は、
前記2つの端子(Ter1&Ter2)側から入力される直流を交流に変換して前記トランス(11)へ出力する側の前記スイッチング回路(1/2)の前記オンオフ動作の位相と前記トランス(11)側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子(Ter3&Ter4)から出力する側の前記スイッチング回路(2/1)の前記整流動作の位相をずらす位相シフト制御を行うことで、
他方の前記スイッチング回路(2/1)の前記2つの端子(Ter3&Ter4)間側から出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は一方の前記スイッチング回路(1/2)の前記2つの端子(Ter1&Ter2)間側から入力される電圧、電流又は電力の検出値を目標値に近づけることを特徴とする。
【0037】
図1に示したスイッチング回路2の検出手段18は、第3端子Ter3及び第4端子Ter4間に出力されるスイッチング回路2の出力電圧を検出する。この出力電圧検出値は制御回路3に入力される。制御回路3は、出力電圧検出値にもとづいてスイッチング回路1のペアスイッチ(PS1~PS4)及びスイッチング回路2のペアスイッチ(PS5、PS6)をオンオフさせて、スイッチング回路2の出力電圧を制御する。例えば、制御回路3は、出力電圧検出値を負荷条件に応じた目標電圧値に近づけるようにスイッチング回路1のペアスイッチ(PS1~PS4)及びスイッチング回路2のペアスイッチ(PS5、PS6)のパルス幅や周波数等を変調させるパルス制御を行う。スイッチング回路2の検出手段18は、例えば出力側に抵抗を接続し、この抵抗に印加される電圧を検出する。
【0038】
制御回路3は、第3端子Ter3及び第4端子Ter4側間に出力される出力電圧を第1端子Ter1及び第2端子Ter2側間から入力する入力電圧より高くさせる動作(昇圧動作)の場合に、スイッチング回路2のペアスイッチPS5又はPS6に与える駆動信号のパルス制御によって、第1端子Ter1及び第2端子Ter2側からインダクタンス手段Lに蓄積させるエネルギー量を制御する。この場合は、組となるスイッチング回路1のペアスイッチPS1とPS4同士又はペアスイッチPS2とPS3同士がオン状態にある期間に、スイッチング回路2のペアスイッチPS6又はPS5をオン状態にさせることで、トランス11の2次巻線11b側を短絡状態にする(図12から図16の期間aからeの状態)。これにより、第1端子Ter1及び第2端子Ter2側から入力されるエネルギーをインダクタンス手段Lに蓄積させる。次に、組となるスイッチング回路1のペアスイッチPS1とPS4同士又はペアスイッチPS2とPS3同士がオン状態を継続している期間に、スイッチング回路2のペアスイッチPS6又はPS5をオフ状態とさせる。これにより、インダクタンス手段Lに蓄積させていたエネルギーが第3端子Ter3、第4端子Ter4側に供給される(図17の期間fの状態)。
【0039】
また、制御回路3は、第3端子Ter3及び第4端子Ter4側間に出力される出力電圧を第1端子Ter1及び第2端子Ter2側間から入力する入力電圧より低くさせる動作(降圧動作)の場合に、スイッチング回路1のスイッチをパルス制御し、かつスイッチング回路2のペアスイッチ(PS5、PS6)を順方向に導通しないように動作をさせる。具体的には、制御回路3は、組となるスイッチング回路1のペアスイッチPS1とPS4同士又はペアスイッチPS2とPS3同士がオン状態にある期間に、第1端子Ter1及び第2端子Ter2側から入力されるエネルギーをインダクタンス手段Lを介して、第3端子Ter3及び第4端子Ter4側に供給させるようにスイッチング回路1のスイッチをパルス制御し、かつスイッチング回路2のペアスイッチ(PS5、PS6)を順方向に導通しないように動作をさせる。この動作では、制御回路3は、スイッチング回路2のスイッチS5及びS6を順方向に導通させないため、スイッチング回路2のブリッジ接続回路は、逆並列ダイオード(Dya、Dyb:y=5~8)が導通するフルブリッジの整流回路(DyaとDybのセットを一つのダイオードとするフルブリッジの整流回路)として機能する。
【0040】
なお、駆動信号については、スイッチング回路1のスイッチ、スイッチング回路2のスイッチをオンさせるための駆動信号をオン信号、オフさせるための駆動信号をオフ信号として下記の動作で説明する。駆動信号としては、電圧、電流などを用いる。また、オン信号、オフ信号等は、オン、オフの期間ずっと信号を与えるものであっても、トリガーとして短い時間の信号を与えるものであってもよく、特に限定されるものではない。
【0041】
次に、本DC/DCコンバータの動作(ZVS制御とエネルギー遷移スイッチング制御)の一例について説明する。なお、本実施形態では、スイッチング回路2のペアスイッチ(PS7、PS8)は常にオフである。
【0042】
(降圧動作)
まず、降圧動作について説明する。降圧動作とは、第3端子Ter3及び第4端子Ter4側間に出力される電圧Voを第1端子Ter1及び第2端子Ter2側間に入力される電圧Vinより低くする動作である。
図2は、降圧動作におけるスイッチング回路1のペアスイッチ(PS1~PS4)及びスイッチング回路2のペアスイッチ(PS5~PS8)の駆動信号の一例を示す波形図である。ペアスイッチ(PS3、PS4)のオン時間をT1、ペアスイッチ(PS5、PS6)のオン時間をT2としている。降圧動作では、ペアスイッチ(PS5,PS6)の位相シフト量を最小としておく。なお、位相シフト量を最小とは、位相を最も左に移動させたときのことであり、図2の場合、ペアスイッチPS4がオンした直後にペアスイッチPS5をオンするような位相状態を指す。
【0043】
前記位相シフトの最小シフト量は、
前記2つの端子(Ter1&Ter2)側から入力される直流を交流に変換して前記トランス(11)へ出力する側の前記スイッチング回路(1/2)において、前記第1又は第2レグの上アームのスイッチ(S1/3)と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチ(S4/2)に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa:x=1,4/3,2)がオンとなったときに、
前記トランス(11)側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子(Ter3&Ter4)から出力する側の前記スイッチング回路(2/1)の、前記第2又は第1レグの上アームのスイッチ(S3[S5]/S1[S7])に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Q3a[Q5a]/Q1a[Q7a])と前記第1又は第2レグの下アームのスイッチ(S2[S8]/S4[S6]) に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Q2a[Q8a]/Q4a[Q6a])をオンする前記位相のときである。
【0044】
図3は、スイッチング回路(1、2)の各ペアスイッチのオンオフタイミング(駆動信号)とトランス11の励磁電流との関係を1周期(Tt)分だけ示した波形図の一例である。図4から図9は、1の半周期における各期間で流れる電流を示した回路図である。
【0045】
[期間a]図4参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路1において、ペアスイッチPS3(スイッチ素子Q2a、Q3a)がオフした後、インダクタンス手段Lの電流は、スイッチ素子(Q1b、Q4b)の逆並列ダイオードと、フライングキャパシタ(FC1、FC2)と、オン状態のペアスイッチPS2(スイッチ素子Q2b、Q3b)を通って流れる。この時、スイッチ素子Q2aにはフライングキャパシタFC1の電圧(Vinの1/2)が印加され、スイッチ素子Q1aにはVinとFC1の電圧の差(Vinの1/2)が印加される。同様にスイッチ素子(Q4a、Q3a)にもVinの1/2の電圧が印加される。
また、スイッチング回路2において、図の経路で電流が流れており、スイッチング回路1と同様に各スイッチ素子にVoの1/2の電圧が印加される。
【0046】
[期間b]図5参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路2において、スイッチ素子(Q6b、Q7b)の逆並列ダイオードに流れる電流がゼロ以下まで低下して当該逆並列ダイオードが遮断すると、トランス11の励磁電流が図5に示される経路で流れる。この時、スイッチ素子(Q6b、Q7b)の電圧はVoの1/2となる。
【0047】
[期間c]図6参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路2において、ペアスイッチPS6(スイッチ素子Q6a、Q7a)がオフした後、スイッチ素子(Q6a、Q7a)の並列コンデンサ及び追加コンデンサ(C6p、C7p)とインダクタンス手段Lとの共振によって、インダクタンス手段Lの電流が増加するため、スイッチング回路1において、スイッチ素子(Q1a、Q4a)のZVSに必要な励磁電流を確保しやすくなる(特許文献3参照。)。
【0048】
[期間d,e]図7及び図8参照。電流の流れを矢印で示している。
ペアスイッチPS2(スイッチ素子Q2b、Q3b)がオフすると、図7に示すように電流が流れ、スイッチ素子(Q2b、Q3b)の並列コンデンサが充電され電圧が上昇すると同時に、スイッチ素子(Q1a、Q4a)の並列コンデンサ及び追加コンデンサ(C1p、C4p)が放電され、スイッチ素子(Q1a、Q4a)の電圧が低下する。ここで、期間cの終了時に十分な大きさの電流(インダクタンス手段Lの電流)が確保されていると、電圧がゼロまで到達し、スイッチ素子(Q1a、Q4a)の逆並列ダイオードが導通する(図8参照)。また、スイッチ素子(Q2b、Q3b)の電圧もVinの1/2となる。
なお、インダクタンス手段Lの電流によって、スイッチ素子(Q1a、Q4a)の並列コンデンサ及び追加コンデンサ(C1p、C4p)が放電され、スイッチ素子(Q1a、Q4a)の電圧がゼロとなるようにペアスイッチ(PS2とPS4、又はPS1とPS3)をオフさせる期間Tdを設ける必要がある。つまり、期間Tdは、ペアスイッチPS2がオフした後、ペアスイッチPS4がオンするまでの期間、及びペアスイッチPS1がオフした後、ペアスイッチPS3がオンするまでの期間である。
スイッチ素子(Q1b,Q4b)の逆並列ダイオードが導通している期間(a~e)にペアスイッチPS1(スイッチ素子Q1b,Q4b)をオンさせることでZVSを達成する。
【0049】
[期間f]図9参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路1において、スイッチ素子(Q1a、Q4a)の逆並列ダイオードが導通しているタイミングでペアスイッチPS4(スイッチ素子Q1a、Q4a)をオンさせることで、ZVSを達成する。また、スイッチング回路2において、スイッチ素子(Q5a、Q8a)の逆並列ダイオード(D5a、D8a)が導通している期間にペアスイッチPS5(スイッチ素子Q5a、Q8a)をオンさせることでZVSを達成する(図3に示すように、期間fの途中でペアスイッチPS5がオンとなる。)。
ペアスイッチPS4(スイッチ素子Q1a、Q4a)がオフする際の電流値が大きくなるが、追加コンデンサ(C1p、C4p)を追加しているため、オフ後の電圧上昇が緩やかになり、スイッチング損失が減少する。
【0050】
また、他の半周期における各期間で流れる電流も同様である。
【0051】
このように、全てのスイッチ素子がZVSでオン可能となっている。また、スイッチング回路1の全てのスイッチ素子に印加される電圧が入力電圧Vinの1/2となり、スイッチング回路2の全てのスイッチ素子に印加される電圧が出力電圧Voの1/2となる。このため、VinやVoの電圧が高くてもスイッチ素子に求められる耐圧を低減することができる。また、各スイッチ素子のスイッチングのタイミングに差がある場合、スイッチ素子に印加される電圧は入出力電圧の1/2を超えるが、通常、タイミングの差は僅かであり、スイッチ素子に印加される電圧の差も僅かになるため、スイッチ素子の耐圧を超えることは無い。
【0052】
(昇圧動作)
次に、昇圧動作について説明する。降圧動作とは、第3端子Ter3及び第4端子Ter4側間に出力される電圧Voを第1端子Ter1及び第2端子Ter2側間に入力される電圧Vinより高くする動作である。
図10は、昇圧動作におけるスイッチング回路1のペアスイッチ(PS1~PS4)及びスイッチング回路2のペアスイッチ(PS5~PS8)の駆動信号の一例を示す波形図である。ペアスイッチ(PS3、PS4)のオン時間をT1、ペアスイッチ(PS5、PS6)のオン時間をT2としている。昇圧動作では、ペアスイッチ(PS5,PS6)の位相シフト量及びオン時間T2を調整することでペアスイッチ(PS3とPS5、PS4とPS6)の重複時間Tpを調整する。
【0053】
前記制御回路(3)は、前記検出値を前記目標値に近づけるように、前記位相シフト制御にて(1)と(2)とも、及び(3)と(4)ともオンとなる時間を調整することを特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
(1)前記2つの端子(Ter1&Ter2)側から入力される直流を交流に変換して前記トランス(11)へ出力する側の前記スイッチング回路(1/2)の、前記第1レグの上アームのスイッチ(S1)と前記第2レグの下アームのスイッチ(S4)に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa:x=1,4)、
(2)前記トランス(11)側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子(Ter3&Ter4)から出力する側の前記スイッチング回路(2/1)の、前記第1レグの上アームのスイッチ(S1[S7])に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Q1a[Q7a])と前記第2レグの下アームのスイッチ(S4[S6]) に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Q4a[Q6a]) 、
(3)前記2つの端子(Ter1&Ter2)側から入力される直流を交流に変換して前記トランス(11)へ出力する側の前記スイッチング回路(1/2)の、前記第1レグの下アームのスイッチ(S2)と前記第2レグの上アームのスイッチ(S3)に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Qxa:x=2,3)、
(4)前記トランス(11)側から入力される交流を直流に変換して前記2つの端子(Ter3&Ter4)から出力する側の前記スイッチング回路(2/1)の、前記第1レグの下アームのスイッチ(S2[S8])に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Q2a[Q8a])と前記第2レグの上アームのスイッチ(S3[S5]) に含まれる前記追加コンデンサ(Cxp)が並列する前記スイッチ素子(Q3a[Q5a])。
【0054】
より具体的に説明する。
制御回路3は、スイッチング回路1の検出手段19が検出した2つの端子(Ter1及びTer2)への入力電圧を監視し、組となるペアスイッチ(PS1とPS4/PS3とPS2)とペアスイッチ(PS6/PS5)がオン状態にあるエネルギー遷移期間Tpを調整するエネルギー遷移スイッチング制御を行う。
【0055】
例えば、前記制御回路(3)は、
2つの端子(Ter3、Ter4)間側から出力させる電圧Voを2つの端子(Ter1、Ter2)間側から入力される電圧Vinより高くする場合、前記エネルギー遷移スイッチング制御として、
エネルギー遷移期間Tpが長くなるように、ペアスイッチ(PS6/PS5)がオン/オフする周期の位相をずらす位相制御、さらにペアスイッチ(PS6/PS5)がオンする時間T2を調整する時間制御を行う。
【0056】
具体的には、制御回路3は、ペアスイッチ(PS5、PS6)の位相を遅らせ(図面上右側へずらす)、ペアスイッチ(PS1、PS4及びPS6)が同時にオン、ペアスイッチ(PS2、PS3及びPS5)が同時にオンする時間Tpを長くするように位相制御を行う。ここで、ペアスイッチ(PS5、PS6)の位相制御は、ペアスイッチ(PS2、PS3又はPS1、PS4)がオンになる時刻まで遅らせることが可能である。
【0057】
ペアスイッチ(PS5、PS6)の位相を最大限まで遅らせた後、それでもなお出力電圧Voなどが目標値に不足していることを検知すると、制御回路3は、ペアスイッチ(PS5、PS6)をオンする時間T2を延長し、時間Tpを長くする時間制御を行う。
【0058】
このように、エネルギー遷移スイッチング制御では、位相制御や時間制御で時間Tpを長くすることでインダクタンス手段Lに蓄積するエネルギーを増加させてスイッチング回路1からスイッチング回路2へ遷移させ、出力電圧Voを入力電圧Vinより高くする。
【0059】
図11は、スイッチング回路(1、2)の各ペアスイッチのオンオフタイミング(駆動信号)とトランス11の励磁電流との関係を1周期(Tt)分だけ示した波形図の一例である。図12から図17は、1の半周期における各期間で流れる電流を示した回路図である。
【0060】
[期間a]図12参照。電流の流れを矢印で示している。
電流の流れは降圧動作の期間aと同じである。
[期間b]図13参照。電流の流れを矢印で示している。
電流の流れは降圧動作の期間bと同じである。
[期間c,d]図14及び図15参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路1の電流の流れは降圧動作の期間d、eと同じである。スイッチング回路2は、スイッチ素子(Q6a、Q7a)がオンしているため、電流は並列コンデンサ(C6a、C7a)と追加コンデンサ(C6p、C7p)を経由せず、スイッチ素子(Q6a、Q7a)を流れる。この期間もスイッチング回路2の各スイッチに印加される電圧はVoの1/2となる。
【0061】
[期間e]図16参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路1の電流の流れは降圧動作の期間fと同じである。スイッチ素子(Q1a、Q4a)の並列ダイオード(D1a,D4a)が導通しているタイミングでスイッチ素子(Q1a、Q4a)をオンさせることでZVSを達成する。スイッチング回路2は、スイッチ素子(Q6a、Q7a)がオンしているため、電流は並列コンデンサ(C6a、C7a)と追加コンデンサ(C6p、C7p)を経由せず、スイッチ素子(Q6a、Q7a)を流れる。この期間もスイッチング回路2の各スイッチに印加される電圧はVoの1/2となる。
また、スイッチ素子(Q6a、Q7a)がオフする際の電流値は大きくなるが、追加コンデンサ(C6p、C7p)が並列しているため、オフ後の電圧上昇が緩やかになり、スイッチング損失が減少する。
[期間f]図17参照。電流の流れを矢印で示している。
スイッチング回路1の電流の流れは降圧動作の期間fと同じである。スイッチ素子(Q1a、Q4a)がオフする際に追加コンデンサ(C1p、C4p)の存在によりスイッチング損失が減少することも同じである。
スイッチング回路2の電流の流れも降圧動作時の期間fと同様である。また、スイッチ素子(Q5a、Q8a)の逆並列ダイオード(D5a、D8a)が導通している間にペアスイッチPS5(スイッチ素子Q5a、Q8a)をオンさせることでZVSを達成する(図11に示すように、期間fの途中でペアスイッチPS5がオンとなる。)。
【0062】
また、他の半周期における各期間で流れる電流も同様である。
【0063】
昇圧動作においても、降圧動作と同様に全てのスイッチ素子がZVSでオン可能となっている。また、スイッチング回路1の全てのスイッチ素子に印加される電圧が入力電圧Vinの1/2となり、スイッチング回路2の全てのスイッチ素子に印加される電圧が出力電圧Voの1/2となる。VinやVoの電圧が高くてもスイッチ素子に求められる耐圧を低減することができる。
【0064】
(実施形態2)
図1で説明したDC/DCコンバータ回路は、トランス11を挟み、スイッチング回路2とスイッチング回路1とがミラーに映したように回路構成が対称であるので、双方向DC/DCコンバータとしても機能する。つまり、制御回路3がペアスイッチ(PS1~PS6)を実施形態1で説明したように動作させれば入力側(第1端子Ter1、第2端子Ter2)から出力側(第3端子Ter3、第4端子Ter4)へ(図1のX方向へ)電力を移動でき、入力側が第3端子Ter3、第4端子Ter4、出力側が第1端子Ter1、第2端子Ter2となるように、ペアスイッチ(PS3~PS8)を実施形態1で説明したように動作させれば入力側(第3端子Ter3、第4端子Ter4)から出力側(第1端子Ter1、第2端子Ter2)へ電力を移動できる。
【0065】
本発明では、上述の説明において、励磁電流を適切な大きさにするためにトランス11の1次巻線又は2次巻線に並列に設けられるインダクタンス成分も上述のトランスの励磁インダクタンスに含まれる。また、上述の説明において、トランス11の励磁インダクタンスとこれに並列に設けられるインダクタンス成分とによる合成インダクタンスによって流れる電流も上述の励磁電流に含まれる。トランスの励磁インダクタンスは、トランスの構造において、例えば、コアのギャップ幅、巻線の巻数量、コアの材質などによって調整することができる。
【0066】
上記の第1、第2の実施形態では、制御回路3は、スイッチング回路2の検出手段18、スイッチング回路1の検出手段19によって検出された電圧値が目標値に近づくようにしているが、用いる検出値は出力電流値や出力電力の他にこれらの組み合わせであってもよい。同様に入力側の電圧、電流又は電力の検出値が目標値に近づくようにしてもよい。なお、一般的に、電力の検出値としては、検出された電圧及び電流を乗算した演算値を用いる。上述の出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は入力される電圧、電流又は電力の検出値には、これらの値にある係数を乗除算したり、ある値を加減算等したりといった演算をして得られた値も含まれる。
【0067】
本発明は、トランスの1次巻線又は2次巻線側に接続されるインダクタンス手段を用いて、出力側のスイッチング回路2又はスイッチング回路1のペアスイッチをオンオフさせる動作と出力側のスイッチング回路2又はスイッチング回路1を整流回路として機能させる動作とを実現させることで広範囲な入出力電圧電流に対応させることができる。また、電流が流れている状態でペアスイッチをオフさせたときに発生するスイッチング損失を低減することができ、組となるスイッチング回路1のペアスイッチのうちの一方を後からオフさせたときに発生するスイッチング損失を低減することができる。さらに、ZVSを実現させることでスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0068】
(他の実施形態)
本発明の電気回路において、接続点とは電気的に接続されて同電位にある部位を言い、物理的に接続された点を言うものではない。また、本発明のDC/DCコンバータ及び双方向DC/DCコンバータにおける各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。
【0069】
より具体的には、例えば、半導体素子として記号により例示したものなどは、これら特定の電気素子には限定されず、同様の機能または作用を有する単一の電気素子あるいは複数の電気素子を含む電気回路として構成することができ、これらすべての変形は、本発明の範囲に包含される。同様に、ダイオード、コンデンサ、スイッチをはじめとする各回路素子の数や配置関係などについても、当業者が適宜設計変更したものは本発明の範囲に包含される。
【0070】
(効果)
本DC/DCコンバータは、入出力電圧に対してオン抵抗値の小さな低い耐圧のスイッチ素子を使用でき、導通損失を削減できる。また、本DC/DCコンバータは、広範囲の入出力条件で全てのスイッチ素子をZVSでオンさせることが可能なため、スイッチング損失の削減も可能である。このように、本発明は、高い入出力電圧においても、高効率な双方向DC/DCコンバータを提供できる。また、各スイッチ素子のスイッチングのタイミングに差がある場合、スイッチ素子に印加される電圧は入出力電圧の1/2を超えるが、通常、タイミングの差は僅かであり、スイッチ素子に印加される電圧の差も僅かになるため、スイッチ素子の耐圧を超えることは無い。
【符号の説明】
【0071】
Ter1:第1端子
Ter2:第2端子
Ter3:第3端子
Ter4:第4端子
1:スイッチング回路
2:スイッチング回路
3:制御回路
11:トランス
11a:一次巻線
11b:二次巻線
12:第1レグ
13:第2レグ
24:第3レグ
25:第4レグ
16、17:コンデンサ
18、19:検出手段
Sx(x=1~8):スイッチ
Qxa、Qxb(x=1~8):スイッチ素子
PSx(x=1~8):ペアスイッチ
Dxa、Dxb(x=1~8):逆並列ダイオード
Cxa、Cxb(x=1~8):並列コンデンサ
Cxp(x=1~8):追加コンデンサ
FC1~FC4:フライングキャパシタ
L:インダクタンス手段
【要約】
【課題】オン抵抗の大きな耐圧の高いスイッチ素子を使用することなく、スイッチ素子の耐圧より入出力電圧を高くでき、且つ精密なスイッチング制御が不要であるDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るDC/DCコンバータは、2つの端子(Ter1、Ter2)とトランス11間に、4つのスイッチ(Sx:x=1~4)で構成したフルブリッジのスイッチング回路が接続され、スイッチング回路の各レグ(12、13)のそれぞれにおいて上下アームをフライングキャパシタ(FC1,FC2)で接続し、各スイッチは、2つのスイッチ素子(Qxa,Qxb)を直列に接続したものであり、前記フライングキャパシタ(FC1,FC2)は、前記スイッチ素子(Qxa,Qxb)の接続点同士を接続している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17