(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】真空システムおよびエジェクタを有する車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20241029BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20241029BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20241029BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20241029BHJP
F04F 5/46 20060101ALI20241029BHJP
F04F 5/54 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
F02M25/08 N
F02M25/08 Q
F02M25/08 301P
F02B37/00 302B
F02M26/06 321
F01M13/00 E
F01M13/00 M
F04F5/46 B
F04F5/54
(21)【出願番号】P 2023513081
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021071799
(87)【国際公開番号】W WO2022069099
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】102020125565.9
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591044393
【氏名又は名称】ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル キンティ
(72)【発明者】
【氏名】ウカシュ ガブリス
(72)【発明者】
【氏名】ミハル サダック
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット フォン ブライテンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌシュ スワッコス
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-67043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0256420(US,A1)
【文献】特開2016-125471(JP,A)
【文献】独国実用新案第202013104001(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F02M 35/00
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ライン(3)および排気ライン(4)に接続された内燃機関(2)を有する車両用の真空システム(10)を有する車両駆動装置(1)であって、
前記真空システム(10)が、エジェクタ(11)を備え、
推進剤ライン(12)が、前記エジェクタ(11)の駆動ノズル(20)のノズル流路(21)に開口し、
該ノズル流路(21)が、ノズル開口部(22)を通して前記エジェクタ(11)の混合室(23)内に開口し、
吸引ライン(13)が、前記混合室(23)に開口し、かつ、該混合室(23)が出口側において混合気ライン(14)に直接的または間接的に開口し、
前記混合気ライン(14)が、前記吸気ライン(3)に開口し、
該吸引ライン(13)が、真空消費装置に接続され、
前記駆動ノズル(20)の前記ノズル開口部(22)が、セレーションおよび/または起伏(26)を有するノズルエッジ(25)によって構成され
、
前記吸引ラインの前記混合室への流入方向が、前記ノズル流路と実質的に平行な方向に向いている車両駆動装置(1)。
【請求項2】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、前記駆動ノズル(20)の内側(27)および/または外側(28)に配置されている請求項1に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項3】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、少なくとも実質的に前記ノズル流路(21)の流れ方向を向いている請求項1または請求項2に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項4】
前記推進剤ライン(12)が、前記混合気ライン(14)の流れ方向の下流において、前記吸気ライン(3)、前記内燃機関(2)または前記排気ライン(4)から分岐している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項5】
前記真空消費装置が、真空分配器、アクチュエータ、作動要素および換気キャビティ(5)を含むグループ、特に、エンジンハウジング、クランクケース、トランスミッションハウジングおよび燃料タンクを含む換気キャビティグループから選択される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項6】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、前記ノズル開口部(22)の中心の方向に傾斜するように向けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項7】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、前記混合室(23)内に突出している請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項8】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、正弦波または三角関数形状の構成である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項9】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、少なくとも実質的に2次元の構成である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項10】
前記ノズルエッジ(25)の前記セレーションおよび/または起伏(26)が、3次元の構成である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項11】
前記ノズル開口部(22)に、ノズルチップが配置されていない請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項12】
コンプレッサ(6)が、前記吸気ライン(3)に配置され、
前記混合気ライン(14)が、流れ方向の前記コンプレッサ(6)の上流側において前記吸気ライン(3)に開口し、かつ、
前記推進剤ライン(12)が、流れ方向の前記コンプレッサ(6)の下流側において前記吸気ライン(3)、前記内燃機関(2)または前記排気ライン(4)から分岐している請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の車両駆動装置(1)。
【請求項13】
エアフィルタ(7)が、前記吸気ライン(3)に配置され、
前記混合気ライン(14)が、流れ方向の前記エアフィルタ(7)の下流側において前記吸気ライン(3)に開口し、かつ、
前記推進剤ライン(12)が、流れ方向の前記混合気ライン(14)の開口の下流側において前記吸気ライン(3)、前記内燃機関(2)または前記排気ライン(4)から分岐している請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項14】
インタークーラ(8)が、前記吸気ライン(3)に配置され、
前記混合気ライン(14)が、流れ方向の前記インタークーラ(8)の上流側において前記吸気ライン(3)内に開口し、かつ、
前記推進剤ライン(12)が、流れ方向の前記混合気ライン(14)の開口の下流側かつ前記インタークーラ(8)の上流側において前記吸気ライン(3)から分岐している請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の内燃機関を有する車両用の真空システムを有する車両駆動装置に関するものである。
【0002】
排ガス値を改善するために、自動車工学においては、エンジンハウジング、クランクケース、トランスミッションハウジングおよび燃料タンクを積極的に換気し、そのガスを直接または間接的に浄化装置に供給することが可能である。浄化装置は、フィルタ、触媒コンバータ、および排気部であり、同様にフィルタと触媒コンバータによって最終的に浄化される。ここで、換気は、ジェットポンプ、特にエジェクタによって行うことができる。これは、例えばターボチャージャのような一次ガス流を利用し、エンジンハウジング、クランクケース、トランスミッションハウジングまたは燃料タンクからノズルによって換気ガスを吸引するものである。負圧を発生させる、つまり主に排出作用を持つジェットポンプを、通常エジェクタと呼ぶ。
【背景技術】
【0003】
例えば、ドイツ実用新案公報20 2013 104 001号にさらに記載されているように、負圧または真空は、駆動力として車両内の他のアクチュエータに利用することも可能である。例えば、負圧は、車両用ブレーキの作動中に運転者を補助するために利用することができる。ドイツ実用新案公報20 2013 104 001号によれば、エンジンのインレットマニホールド、真空ポンプ、または正確にはエジェクタが、アクチュエータの負圧源として機能することができる。エジェクタは、特に燃料蒸気または未処理のエンジン排出物を含むことができる作動流体の流路に低圧領域を提供することによって真空を供給する。
【0004】
エジェクタの場合、作動流体は駆動ノズルから混合室に高速で排出される。ここではベルヌーイの法則に基づき、動的な圧力損失が発生する。このため、流れの中の圧力は通常の圧力より低くなる。圧縮性のある推進剤、特にガスや蒸気の場合、速度を最大にするために駆動ノズルはラバルノズルとして構成されることが多く、駆動ジェットは超音速で出ていく。混合室では、作動流体の駆動噴流がここに設置された吸引媒体と接することになる。ノズル出口では、高速の作動流体と低速の吸引流体との境界層で内部摩擦や乱流によるせん断応力が発生する。この応力は勢いの伝達をもたらし、その結果、吸引媒体は加速されて運ばれていく。これは、吸引媒体に圧力損失が発生するためで、その吸引効果を利用して、吸引片を介してさらに吸引媒体を混合室に吸引することができる。混合室の下流にディフューザを接続し、さらに圧力上昇させることもできる。
【0005】
本発明の出発点となるこれらの機能および特徴は、また、個々の場合において、本願発明の技術的に開発された発明に本来備えられるものであってもよい。
【0006】
先行技術では、作動流体と吸引媒体との間の乱流が大きな圧力損失を引き起こし、効率が低くなることが欠点である。ターボチャージャ付きエンジンの場合、ターボ圧縮された圧縮空気のかなりの割合が、エジェクタの作動流体として利用されるために、このように分岐される。したがって、エンジン全体の効率が損なわれる。乱流のさらなる欠点は、結果として体積レベルが高くなることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、騒音の発生が少なく高効率である車両用真空システムを有する車両駆動装置を提供することである。この解決策は、確実に機能し、安価であることを意図している。
【0008】
本発明の主な特徴は、請求項1の特徴部分に明記されている。改良は、請求項2~14の主題を形成する。
【0009】
本発明は、吸気ラインおよび排気ラインに接続された内燃機関を有する車両用の真空システムを有する車両駆動装置に関するものである。真空システムは、エジェクタと、エジェクタの駆動ノズルのノズル流路に開口する推進剤ラインと、を有する。ノズル流路は、ノズル開口を通してエジェクタの混合室に開口している。さらに、吸引ラインが混合室に開口し、かつ、混合室が出口側において混合気ラインに直接的または間接的に開口し、特に、ディフューザを介した間接的な開口となっている。混合気ラインが、次に吸気ラインに開口している。ここで、吸引ラインは、真空消費装置に接続されている。本発明によれば、駆動ノズルのノズル開口部は、セレーションおよび/または起伏を有するノズルエッジによって構成され、吸引ラインの混合室への流入方向が、ノズル流路と実質的に平行な方向に向いている。
【0010】
ここで、セレーションおよび/または起伏が乱流を減少させ、推進剤と吸引媒体との間の気流離脱端が、円形のノズルエッジと比較して延長されていることが有利な点である。これにより、エジェクタの効率が向上し、また、推進剤の処理量がその時点で必要な量に減少した場合には、車両駆動装置の効率も向上する。さらに、乱流の低減により、セレーションや起伏は騒音の発生も抑制する。能動的および受動的なノイズの低減対策は、それほど必要ではなく、さらに、軽量化のために車両の効率を向上させることができる。ここで、混合気ラインは、ノズル流路の流れ方向において、ノズル開口部に対して面一となるように混合室から開口していることが好ましい。ノズル流路は、好ましくは円形の内部断面を有するように構成され、駆動ノズルは、さらに好ましくは、少なくともノズル開口部の領域において、同様に円形の外部断面を有するように構成される。実質的に直線的な側面、例えば、三角関数形状、鋸歯状、矩形状などの形状は、特にセレーションとして理解される。ただし、角に半径を持つものが除外されるわけではない。起伏とは、特に、正弦波などのように、少なくとも実質的に連続した遷移を持つ形状を意味すると理解される。
【0011】
特別な一実施形態によれば、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏が、駆動ノズルの内側および/または外側に配置されている。従って、セレーションおよび/または起伏は内側にのみ向いているが、駆動ノズルは外側に滑らかな表面を有していることが考えられる。また、逆のオプションとして、起伏および/またはセレーションが外側にのみ向いており、駆動ノズルの内側は滑らかであることが考えられる。第3のオプションとしては、セレーションおよび/または起伏を扇状に構成することができ、その結果、それらは内側と外側に向くように構成されている。さらに、セレーションおよび/または起伏のやや放射状の方向は、ノズル流路の流れ方向に向くように構成することもできる。
【0012】
ある好ましい設計の場合、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏が、少なくとも実質的にノズル流路の流れ方向に向いている。ノズル流路が円形の内部断面を有する場合、ノズルエッジの突起もまた実質的に円形である。この設計はそれほど複雑ではなく、比較的安価に製造することができる。
【0013】
車両駆動装置の特別な一実施形態によれば、真空消費装置が、真空分配器、アクチュエータ、作動部材および換気キャビティを含むグループ、特にエンジンハウジング、クランクケース、トランスミッションハウジングおよび燃料タンクを含む換気キャビティグループから選択されるものである。そして、これらの真空消費装置には、負圧が効率的に供給される。
【0014】
車両駆動装置のさらに詳細な一改良においては、推進剤ラインが、混合気ラインの流れ方向の下流において、吸気ライン、内燃機関または排気ラインから分岐している。したがって、推進剤流は、それほど複雑になることなく提供される。
【0015】
ノズル流路は、任意に、ノズル開口部の領域において、少なくとも実質的に円筒形の内壁を有することができる。ここで、セレーションおよび/または起伏は、例えば、少なくとも実質的に流れ方向と平行に延びる。
【0016】
具体的には、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏が、ノズル開口部の中心の方向に、特に0°から35°の間で傾斜するように方向付けられる、一つの改良が好適である。ここでは、いわば、作動流体の流れの外側領域でわずかに櫛歯状になり、吸引媒体の低騒音吸入性能を向上させる。代替案として、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏が、ノズル開口部の中心から離れる方向に、好ましくは0°から60°の間で傾斜するように向けられている、改良も好適である。このオプションは、ラバルノズルとして構成された駆動ノズルと特に良好に組み合わせることができる
【0017】
一変形例では、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏は、特に自由な態様で混合室内に突出している。このようにすることにより、吸引媒体は、セレーションおよび/または起伏の外側において作動流体の流れ方向の乱れなしに、ノズルエッジ上に効率的に流れることができる。
【0018】
さらに、吸引ラインの混合室への流入方向が、少なくともノズル室と実質的に平行な方向に向いている場合には、特に有効な改良の一つである。この場合、吸引媒体は方向転換を行う必要がない。従って、ノズルエッジでの合流時に、個々の流れが直線化されるため、乱流が少なくなる
【0019】
セレーションおよび/または起伏は、特に、周囲にわたって均一または規則的に分布して配置されていることが好ましい。これにより、円周上に均一な乱流がもたらされる。一つの任意設計の変形例では、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏は、正弦波状または三角関数状の構成である。
【0020】
特に、セレーションおよび/または起伏のトラフが、セレーションおよび/または起伏のピークよりも鈍角に構成されていると、乱流低減に関して有利である。
【0021】
一変形例によれば、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏が、少なくとも実質的に2次元の構成であり、好ましくはノズル流路の流れ方向に少なくとも実質的に向いており、その結果、ノズルエッジの突起は少なくとも実質的に円形である。この種の形状は、特にセレーションおよび/または起伏が2次元の切断線または成形線として構成されることによって、比較的安価に製造することができる。
【0022】
別の変形例では、ノズルエッジのセレーションおよび/または起伏が、3次元構成であり、特に、少なくとも実質的にノズル流路の流れ方向を指し、ノズル流路の流れ方向に対して少なくとも実質的に横方向に指し、その結果、ノズルエッジの突起は、起伏または星形の周辺部を有する。その結果、作動流体は内側で直線的に流れ、三次元設計の結果、ノズルエッジの長さは特に長くなる。同様に、駆動ノズルの外周に構成されたセレーションや起伏は、吸引媒体の流入をノズルエッジに直線的に流すことができる。
【0023】
ノズル開口部にノズルチップが配置されていないという選択肢も基本的に存在する。これは、特に、小型の実施形態の場合、自動車においてしばしば十分であるように、構造的に単純に実施することができる。
【0024】
代替案として、特にノズル開口部とノズルチップとの間に環状のギャップが構成されるような態様で、ノズルチップをノズル開口部内に配置することができる。その結果、ノズルエッジの長さと作動流体の体積流量の間の比率を増加させることができる。吸引媒体の混合および運搬は、すなわち、作動流体ジェットの外側の周縁部で実質的に行われる。また、ノズルチップは一種のスリップストリームを発生させ、ノズルエッジの下流で作動流体ジェットの中心部に吸引作用を引き起こし、この吸引作用も吸引媒体を把持する。
【0025】
エジェクタはまた、それ自体、すなわち車両駆動装置の他の部分から分離された、その様々なオプションの実施形態を有する本発明にかかる主題とすることができる。そして、エジェクタは、図中の符号11~29に係るそれぞれの必須または任意の構成要素と、推進剤ラインの代わりとなるエジェクタの推進剤ラインコネクタと、混合気ラインの代わりとなるエジェクタの混合気ラインコネクタと、を含むことができる。
【0026】
車両駆動装置の一つの特別な改良においては、コンプレッサ、特に(排気)ターボチャージャまたはコンプレッサが、吸気ラインに配置され、混合気ラインが、流れ方向のコンプレッサの上流側において吸気ラインに開口し、推進剤ラインが、流れ方向のコンプレッサの下流側において吸気ライン、内燃機関または排気ラインから分岐している。従って、吸気ラインからの背圧が低く、吸引媒体の吸入時の効率が高い。また、コンプレッサ全体の圧力勾配がそのまま作動媒体の供給に利用される。
【0027】
さらに、エアフィルタが吸気ラインに配置され、混合気ラインが、流れ方向のエアフィルタの下流側において吸気ラインに開口し、かつ、推進剤ラインが、流れ方向の混合気ラインの開口の下流側において吸気ライン、内燃機関または排気ラインから分岐している選択肢も存在する。このため、有害なガスやエアロゾルを確実に循環させることができ、また、油などによってエアフィルタを汚染させることもない。
【0028】
さらに、インタークーラが、吸気ラインに配置され、混合気ラインが、流れ方向のインタークーラの上流側において吸気ライン内に開口し、かつ、推進剤ラインが、流れ方向の混合気ラインの開口の下流側かつインタークーラの上流側において吸気ラインから分岐している選択肢も存在する。このようにすれば、インタークーラは作動流体も冷却する必要がなく、内燃機関に導通される残りの空気のみを冷却するため、より小型の構成とすることができる。
【0029】
可能であれば、吸気ラインの流れ方向に、まずエアフィルタ、次にコンプレッサ、そしてこれに隣接してインタークーラを配置した改良が適している。
【0030】
本発明の更なる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲の文言および図面に基づいて例示的な実施形態の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】真空システムを有する車両駆動装置の概略を示す図である。
【
図3a】駆動ノズルのノズルエッジの第1のタイプを通る縦断面を示す図である。
【
図3b】駆動ノズルのノズルエッジの第2のタイプを通る縦断面を示す図である。
【
図4a】駆動ノズルのノズルエッジの第1のタイプの詳細図である。
【
図4b】駆動ノズルのノズルエッジの第2のタイプの詳細図である
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、車両用の真空システム10を有する車両駆動装置1の概略構成図である。この車両駆動装置1は、吸気ライン3および排気ライン4を有する内燃機関2を有している。内燃機関2に向かう流れ方向の吸気ラインには、まずエアフィルタ7、次にコンプレッサ6(即ち本実施例では排ガスターボチャージャ)、次にインタークーラ8、この次にはスロットルバルブ45が配置されている。さらに、車両駆動装置1は、燃料42が貯留されるタンク41を有し、この燃料42の上方に換気キャビティ5が構成されている。また、内燃機関2も、換気キャビティ5を、すなわちクランクケース40に有している。
【0033】
真空システム10は、エジェクタ11を備えている。
図2は、その縦断面としての拡大図である。エジェクタ11の中心的な要素は、混合室23に突出する駆動ノズル20である。推進剤ライン12が、駆動ノズル20のノズル流路21に開口している。ノズル流路21の断面がテーパ状になっているため、推進剤ライン12を流れる作動流体は加速され、最終的にノズル開口部22からエジェクタ11の混合室23に進入する。さらに、混合室23には、吸引ライン13が接続されている。混合気ライン14が、出口側において、ディフューザ24を介して間接的に混合室23に隣接している。ディフューザ24は、個別の部品として構成することもできるし、エジェクタ11の一部として構成してもよい。混合気ライン14は、ノズル流路21の流れ方向においてノズル開口部22と位置合わせされている。これは、少なくとも混合室23またはディフューザ24に隣接する部分にも該当する。
【0034】
駆動ノズルのノズル開口部22は、
図3bに詳細に示されているように、セレーションおよび/または起伏26を有するノズルエッジ25によって構成されている。
図3aは、このタイプのセレーションおよび/または起伏26のない変形例を示している。見て分かるように、ノズルエッジ25のセレーションおよび/または起伏26は正弦波構成であり、特に、それらはノズルエッジ25の円周上に規則的にまたは均一に分布して配置されている。さらに、それらは混合室23の中に自由に突出している(
図2参照)。
【0035】
ノズルエッジ25のセレーションおよび/または起伏26は、作動媒体が駆動ノズル20の内側27でそれらを越えて流れ、吸引流体が外側28で吸引ライン13からそれらを越えて流れるので、駆動ノズル20の内側27と外側28にあるように配置されている。ノズルエッジ25のセレーションおよび/または起伏26は、少なくとも実質的にノズル流路21の流れ方向に向いている。それらは、特に、駆動ノズル20の前方領域における円錐形の外側の側面と位置合わせされる。その結果、ノズルエッジ25のセレーションおよび/または起伏26は、ノズル開口部22の中心の方向に傾斜するように向けられている。
【0036】
本実施例では、ノズルエッジ25のセレーションおよび/または起伏26は、少なくとも実質的に二次元構成であり、それらは、少なくとも実質的にノズル流路21の流れ方向に向いている。その結果、ノズルエッジ25の突起は、少なくとも実質的に円形である。ノズル開口部22の中心の方向へのセレーションおよび/または起伏26の傾斜の結果として、突起は、しかしながら、円形の経路上にわずかな波形を有する。
【0037】
ノズルエッジ25のセレーションおよび/または起伏26は、特に、上述の変形例のように少なくとも実質的にノズル流路21の流れ方向に向いていて、さらに、ノズル流路21の流れ方向に対して少なくとも実質的に横向きになることによって、任意に三次元構成とすることも可能である。その結果、ノズルエッジ25の突起は、明らかに波状または星形の周縁を有する。これは、技術的には、ノズルエッジ25のセレーションまたは起伏カットと、駆動ノズル20の壁、すなわちその内側27および/または外側28における追加の山および谷構造によって実現することができる。図式的に言えば、これは、折り畳まれたフィルタに類似しており、その開口部は、さらにピンキング鋏によってサイズに切断される。
【0038】
第1の変形例では、ノズル開口部22またはノズルエッジ25とノズルチップ29との間に環状ギャップが構成されるように、ノズルチップ29をノズル開口部22(図示せず)内に配置することが可能である。そして、ノズルチップは、ノズル流路21の中央に位置し、ノズル開口部22の領域内まで、好ましくは後者の領域から少しもはみ出さないように延びている。このタイプのノズルチップは、例えば、駆動ノズル20の内側27にウェブによって接続することができる。
【0039】
しかしながら、ここに示す別の変形例では、そのようなノズルチップ29をノズル開口部22に配置しないことも可能である。これにより、ノズル開口部22の出口領域は、ノズルチップのように環状ではなく、全面になる。
【0040】
ノズルエッジ25にセレーションおよび/または起伏26がない場合(
図4a)とある場合(
図4b)における駆動ノズル20の違いは、
図4aおよび
図4bのそれぞれの場合における一つの駆動ノズル20を通る縦断面からも、またわかる。やや平坦な錐体状先端部分から開口する
図3aおよび3bのノズル開口部22とは対照的に、
図4aおよび4bによる変形例は、より尖った構成である。これは、特に、外壁28について当てはまる。内壁は、ノズル開口部22の直前において最小の断面を構成してさえいる。この最小の断面から、ノズル流路21は、すでにノズル開口部22の方向に、わずかではあるが、再び広がっている。
【0041】
そして、
図3bまたは
図4bによる駆動ノズル20を有するエジェクタ10は、混合気ライン14が内燃機関5の吸気ライン3、すなわちエアフィルタ7とコンプレッサ6との間に開口するように、
図1の車両駆動装置1に組み込まれる。推進剤ライン12は、混合気ライン14の流れ方向下流側で吸気ライン3から分岐しており、すなわち、コンプレッサ6とインタークーラ8との間に設けられている。
【0042】
吸引ライン13は、真空消費装置、すなわち真空分配器50に接続されている。真空分配器50から、吸引ライン13の第1の分流13aは、今度はクランクケース40の換気キャビティ5へとつながる。吸引ライン13の第2の分流13bは、真空分配器50から、燃料タンク41の換気キャビティ5に通じている。まず活性炭フィルタ43が、次に、必要に応じて換気キャビティ44を換気する電気的に作動するバルブ44が、第2の分流13bの流れ方向に配置されている。
【0043】
本発明は、上述の実施形態の1つに限定されるものではなく、むしろ多種多様な方法で変更することができる。
【0044】
構造的詳細、空間的配置および方法ステップを含む、特許請求の範囲、説明および図面から明らかなすべての特徴および利点は、それ自体でも非常に多様な組み合わせでも本発明に不可欠となり得るものである。
【符号の説明】
【0045】
1 車両駆動装置
2 内燃機関
3 吸気ライン
4 排気ライン
5 換気キャビティ
6 コンプレッサ
7 エアフィルタ
8 インタークーラ
10 真空システム
11 エジェクタ
12 推進剤ライン
13 吸引ライン
13a クランクケースへの吸引ライン
13b タンクへの吸引ライン
14 混合気ライン
20 駆動ノズル
21 ノズル流路
22 ノズル開口部
23 混合室
24 ディフューザ
25 ノズルエッジ
26 セレーションまたは起伏
27 内側
28 外側
40 クランクケース
41 燃料タンク
42 燃料
43 活性炭フィルタ/オイルセパレータ
44 バルブ
45 スロットルバルブ
50 真空分配器