(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】アンテナアレイ、装置、および無線通信デバイス
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20241029BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q23/00
(21)【出願番号】P 2023519554
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2020118586
(87)【国際公開番号】W WO2022061937
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】彭 杰
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲偉▼▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】姚 阿▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 悦
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186337(JP,A)
【文献】特表2019-503621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358866(US,A1)
【文献】国際公開第2019/187872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナアレイであって、
複数のサブアレイであって、給電点および少なくとも1つの放射素子が各サブアレイ上に配置され、
前記給電点は、前記サブアレイ上で前記少なくとも1つの放射素子の外側に配置され、前記複数のサブアレイが第1の方向および第2の方向に配列され、前記第1の方向は前記第2の方向に垂直であり、前記複数のサブアレイの前記給電点が前記第1の方向において同じ直線上に位置し、前記複数のサブアレイの前記給電点が前記第2の方向において同じ直線上に位置し、前記第1の方向では、同じ直線上にある給電点が属するサブアレイが同じ行に位置し、前記第2の方向では、同じ直線上にある給電点が属するサブアレイが同じ列に位置する、複数のサブアレイを含み、
各サブアレイが位相中心を有し、前記アンテナアレイにおける
、前記給電点が同じ直線上に位置するサブアレイの少なくとも1つの行におけるサブアレイの位相中心は同じ直線上になく、かつ/または前記アンテナアレイにおける
、前記給電点が同じ直線上に位置するサブアレイの少なくとも1つの列におけるサブアレイの位相中心は同じ直線上にない、アンテナアレイ。
【請求項2】
前記アンテナアレイがN個のサブアレイを含み、前記N個のサブアレイの各々に同じ数の放射素子が配置され、前記N個のサブアレイのうちの少なくとも1つが有する給電点は、前記N個のサブアレイのうちの別のサブアレイが有する給電点とは異なり、Nは2以上の整数である、請求項1に記載のアンテナアレイ。
【請求項3】
前記アンテナアレイが、少なくとも2つのタイプの同一タイプのサブアレイを含み、前記同一タイプのサブアレイの1つのタイプのサブアレイには同じ数の放射素子が配置される、請求項1または2に記載のアンテナアレイ。
【請求項4】
前記アンテナアレイが少なくとも1つの第1のサブアレイを含み、少なくとも2つの放射素子が前記第1のサブアレイ上に配置され、前記少なくとも2つの放射素子が直線状に配置され、
前記第1のサブアレイの給電点が、前記2つの放射素子の間に位置し、または
前記第1のサブアレイの前記給電点が、前記第1のサブアレイの端部の放射素子の、残りの放射素子から離れた側に位置する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項5】
前記アンテナアレイが少なくとも1つの第2のサブアレイを含み、1つの放射素子が前記第2のサブアレイ上に配置され、前記第2のサブアレイの給電点が前記放射素子の横に位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項6】
前記第1の方向において、2つの隣接するサブアレイごとの給電点間の間隔が等しく、および/または前記第2の方向において、2つの隣接するサブアレイごとの給電点間の間隔が等しい、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項7】
前記アンテナアレイがダミー素子を含み、前記ダミー素子が非給電放射素子である、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナアレイと、
給電ケーブルと、
回路ベアリング板であって、前記給電ケーブルが、前記アンテナアレイにおけるサブアレイに給電するように構成され、前記アンテナアレイおよび前記給電ケーブルが、前記回路ベアリング板上に配置される、回路ベアリング板と
を含む、装置。
【請求項9】
少なくとも1つの無線周波数集積回路チップであって、前記無線周波数集積回路チップが、前記回路ベアリング板上に配置され、前記無線周波数集積回路チップが、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを含み、前記少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルが、前記給電ケーブルを介して前記アンテナアレイにおける少なくとも2つのサブアレイにそれぞれ給電するように構成され、前記無線周波数送受信チャネルが、前記サブアレイに1対1で接続される、少なくとも1つの無線周波数集積回路チップ
をさらに含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が電力分配器/電力合成器と前記少なくとも2つの無線周波数集積回路チップとを含み、前記電力分配器/電力合成器が少なくとも2つの電力分配線を介して前記少なくとも2つの無線周波数集積回路チップに別々に接続され、前記少なくとも2つの電力分配線が同じ長さを有し、前記電力分配線が前記無線周波数集積回路チップに1対1で接続される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記回路ベアリング板がパッケージ基板であり、
前記装置が、
プリント回路板であって、前記パッケージ基板が、前記プリント回路板上に配置され、前記プリント回路板に接続され、前記電力分配器/電力合成器が、前記プリント回路板上に配置される、プリント回路板をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記回路ベアリング板がプリント回路板であり、
前記電力分配器/電力合成器が前記プリント回路板上に配置される、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナアレイと、
給電ケーブルと、
少なくとも1つの無線周波数集積回路チップであって、前記アンテナアレイおよび前記給電ケーブルが、前記無線周波数集積回路チップのパッケージング層上に配置され、前記無線周波数集積回路チップが、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを含み、前記少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルが、前記給電ケーブルを介して前記アンテナアレイにおける少なくとも2つのサブアレイにそれぞれ給電するように構成され、前記無線周波数送受信チャネルが、前記サブアレイに1対1で接続される、少なくとも1つの無線周波数集積回路チップと
を含む、装置。
【請求項14】
前記装置が電力分配器/電力合成器と少なくとも2つの無線周波数集積回路チップとを含み、
前記電力分配器/電力合成器が少なくとも2つの電力分配線を介して前記少なくとも2つの無線周波数集積回路チップに別々に接続され、前記少なくとも2つの電力分配線が同じ長さを有し、前記電力分配線が前記無線周波数集積回路チップに1対1で接続される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置が、
プリント回路板であって、前記無線周波数集積回路チップと前記電力分配器/電力合成器の両方が前記プリント回路板上に配置される、プリント回路板をさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナアレイ、または請求項8から15のいずれか一項に記載の装置
を含む、無線通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アンテナ技術の分野、特に、アンテナアレイ、装置、および無線通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の放射素子がアレイ状に配置されてアンテナアレイを構成する。各放射素子は、アレイ素子(Array Element)と呼ばれることもある。
【0003】
一般に、放射素子の位相を制御するために移相器が用いられる。アンテナアレイにおける放射素子の数が多い場合、複数の移相器が必要となる。移相器の数を低減し、制御回路を簡素化するために、通常、いくつかの放射素子が1つの移相器を共有し、1つの移相器を共有する複数の放射素子が1つのサブアレイを形成する。
【0004】
図1は、アンテナアレイを示す。各黒点は、1つの放射素子を表す。アンテナアレイは、(X軸に沿った)24個×(Y軸に沿った)32個の放射素子を含む。アンテナアレイの各列は、2素子サブアレイ、4素子サブアレイ、6素子サブアレイ、および8素子サブアレイを含む、Y軸に沿った8つのサブアレイを有する。2素子サブアレイは1つの移相器が2つの放射素子を制御することを示し、4素子サブアレイは1つの移相器が4つの放射素子を制御することを示し、6素子サブアレイは1つの移相器が6つの放射素子を制御することを示し、8素子サブアレイは1つの移相器が8つの放射素子を制御することを示す。
【0005】
図2は、
図1のアンテナアレイにおけるサブアレイと無線周波数集積回路(Radio Frequency Integrated Circuit、RFIC)チップとの間の接続の概略図である。例えば、
図2は、第1のRFICチップ01、第2のRFICチップ02、第3のRFICチップ03、および第4のRFICチップ04を示す。RFICチップは、対応するサブアレイに接続される。各サブアレイは、RFICチップに接続された給電点Mを有する。
図1に示されるアンテナアレイは、より多くの無線周波数集積回路チップにさらに接続されてもよく、
図2におけるチップの数およびチップの位置は単なる例であることに留意されたい。
【0006】
一例として、第1のRFICチップが用いられる。
図3において、第1のRFICチップ01は、8つの無線周波数送受信チャネルを有し、8つの無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブルを介して1対1で8つのサブアレイに接続される。例えば、
図3に示されるように、第1のRFICチップ内の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル05を介してアンテナアレイにおけるサブアレイの給電点Mに接続される。第2のRFICチップ02、第3のRFICチップ03、および第4のRFICチップ04と、対応するサブアレイの給電点との間の接続関係は、
図3に示されるものと同様である。
【0007】
図3から、RFICチップを複数のサブアレイの給電点に接続するための給電ケーブルの長さは一貫していないことが分かる。いくつかの給電ケーブルは長く、いくつかの給電ケーブルは短い。同じRFICチップに接続される給電ケーブルの長さが異なるので、信号伝送遅延も異なる。その結果、複数のサブアレイの信号の位相が異なり、アンテナアレイのビームフォーミング効果が達成されることができず、アンテナアレイの広帯域性能が低下する。既存の位相較正補償は、狭帯域較正効果のみを保証することができ、広帯域の場合、ビームフォーミング効果が不十分である。加えて、
図2に示されるように、RFICチップは不規則な位置に配置されているため、RFICチップに電力分配器/電力合成器を接続するための電力分配線の長さが異なる。これにより、電力分配線の設計が困難になり、アンテナアレイの広帯域性能がさらに低下する。また、
図2に示される複数のRFICチップは不規則に配置されているため、アンテナアレイが配置されたアンテナモジュールにおいてRFICチップが放熱する熱が不均等に分配される。この場合、アンテナモジュールの異なる位置の温度が異なり、異なる位置の給電ケーブルの熱膨張量も異なり、給電ケーブルの異なる熱膨張量もサブアレイの信号の位相に影響を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の実施形態は、RFICチップとアンテナアレイにおけるサブアレイの給電点との間の給電ケーブルの長さを基本的に等しくすることによって、アンテナアレイの広帯域性能を改善するためのアンテナアレイ、装置、および無線通信デバイスを提供する。
【0009】
前述の目的を達成するために、本出願の実施形態では以下の技術的解決策が用いられる。
【0010】
第1の態様によれば、本出願はアンテナアレイを提供する。アンテナアレイは、
複数のサブアレイであって、給電点および少なくとも1つの放射素子が各サブアレイ上に配置され、複数のサブアレイが第1の方向および第2の方向に配列され、第1の方向は第2の方向に垂直であり、複数のサブアレイの給電点が第1の方向において同じ直線上に位置し、複数のサブアレイの給電点が第2の方向において同じ直線上に位置し、第1の方向では、同じ直線上にある給電点が属するサブアレイが同じ行に位置し、第2の方向では、同じ直線上にある給電点が属するサブアレイが同じ列に位置する、複数のサブアレイを含む。
【0011】
各サブアレイは位相中心を有し、アンテナアレイにおけるサブアレイの少なくとも1つの行におけるサブアレイの位相中心は同じ直線上になく、かつ/またはアンテナアレイにおけるサブアレイの少なくとも1つの列におけるサブアレイの位相中心は同じ直線上にない。
【0012】
本出願の本実施形態で提供されるアンテナアレイによれば、アンテナアレイの給電点が規則的に配置されるように、任意の行のサブアレイの給電点が同じ直線上に位置し、任意の列のサブアレイの給電点が同じ直線上に位置する。少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを有する無線周波数集積回路チップが少なくとも2つの給電ケーブルを介して少なくとも2つのサブアレイの給電点に1対1で接続される場合、2つの給電ケーブルごとの長さは基本的に等しい。これは、同じ無線周波数集積回路チップに接続された異なる長さの複数の給電ケーブルによって引き起こされる複数のサブアレイの異なる位相を回避する。
【0013】
加えて、少なくとも1つの行における複数の位相中心は、同じ直線上に位置せず、かつ/または少なくとも1つの列における複数の位相中心は、同じ直線上に位置しない。換言すれば、アンテナアレイの位相中心は不規則に配置されている。このようにして、位相中心の不規則な配置は、アンテナアレイのグレーティングローブのエネルギーを複数の角度に分散させることができる。これにより、グレーティングローブ抑制を効果的に高め、アンテナアレイの利得を高めることができる。
【0014】
したがって、本出願の本実施形態で提供されるアンテナアレイは、グレーティングローブ抑制を効果的に高め、アンテナアレイの利得を向上させながら、RFICチップとサブアレイとの間の等長相互接続をさらに実装することができる。
【0015】
第1の態様の可能な実装形態では、アンテナアレイはN個のサブアレイを含み、N個のサブアレイの各々に同じ数の放射素子が配置され、N個のサブアレイのうちの少なくとも1つが有する給電点は、N個のサブアレイのうちの別のサブアレイが有する給電点とは異なり、Nは2以上の整数である。放射素子の数が同じであるサブアレイの異なる給電点を設定することによって、給電点の規則的な配置が実装されることができる。
【0016】
第1の態様の可能な実装形態では、アンテナアレイは、少なくとも2つのタイプの同一タイプのサブアレイを含み、同一タイプのサブアレイの1つのタイプのサブアレイには同じ数の放射素子が配置される。換言すれば、アンテナアレイは、2つの放射素子を有するサブアレイを含んでもよく、または3つの放射素子を有するサブアレイを含んでもよく、またはより多くの放射素子を有するサブアレイを含んでもよい。
【0017】
第1の態様の可能な実装形態では、アンテナアレイは少なくとも1つの第1のサブアレイを含み、少なくとも2つの放射素子は第1のサブアレイ上に配置され、少なくとも2つの放射素子は直線状に配置される。第1のサブアレイの給電点は、2つの隣接する放射素子の間に位置する。すなわち、第1のサブアレイの給電点は、第1のサブアレイの端部に位置する放射素子の、残りの放射素子から離れた側に位置する。換言すれば、サブアレイの少なくとも2つの放射素子が存在する場合、給電点に関して複数のケースが存在する。具体的な実装中に、アンテナアレイ全体の給電点のレイアウトに基づいて選択が実行され得る。
【0018】
第1の態様の可能な実装形態では、アンテナアレイは少なくとも1つの第2のサブアレイを含み、放射素子は第2のサブアレイ上に配置され、第2のサブアレイの給電点は放射素子の横に位置する。
【0019】
第1の態様の可能な実装形態では、第1の方向において、2つの隣接するサブアレイごとの給電点間の間隔は等しく、および/または第2の方向において、2つの隣接するサブアレイごとの給電点間の間隔は等しい。このようにして、給電点を配置すると便利である。
【0020】
第1の態様の可能な実装形態では、アンテナアレイはダミー素子を含み、ダミー素子は非給電放射素子である。アンテナアレイの給電点が規則的に配置されるようにするために、いくつかの場合において、放射素子が配置されないグリッドを2つの隣接するサブアレイ間に形成する必要がある。グリッド内にダミー素子を配置することにより、サブアレイのパターンを一貫した状態に保つことができる。これにより、無線通信デバイスの通信能力が向上する。
【0021】
第1の態様の可能な実装形態では、放射素子は、マイクロストリップパッチアンテナ、対称発振器、開放導波路アンテナ、ヘリカルアンテナなどである。
【0022】
第1の態様の可能な実装形態では、放射素子は二重偏波であってもよく、または単一偏波であってもよい。
【0023】
第1の態様の可能な実装形態では、偏波モードは、±45°偏波、垂直偏波もしくは水平偏波、または右円偏波もしくは左円偏波であってもよい。
【0024】
第1の態様の可能な実装態様では、サブアレイの給電ケーブルは、T型電力分配線、ウィルキンソン電力分配線、または直列給電電力分配線である。
【0025】
第2の態様によれば、本出願は装置を提供する。本装置は、
第1の態様または第1の態様の実装形態のいずれか1つによるアンテナアレイと、
給電ケーブルと、
回路ベアリング板であって、給電ケーブルは、アンテナアレイにおけるサブアレイに給電するように構成され、アンテナアレイおよび給電ケーブルは、回路ベアリング板上に配置される、回路ベアリング板とを含む。
【0026】
本出願の本実施形態で提供される装置は、第1の態様の任意の実装形態におけるアンテナアレイを含む。アンテナアレイの給電点が規則的に配置されているので、複数の無線周波数送受信チャネルを有する無線周波数集積回路チップが複数の給電ケーブルを介して複数のサブアレイの給電点に1対1で接続される場合、2つの給電ケーブルごとの長さは基本的に等しい。これは、同じ無線周波数集積回路チップに接続された異なる長さの複数の給電ケーブルによって引き起こされる複数のサブアレイの異なる位相を回避する。
【0027】
加えて、アンテナアレイにおけるサブアレイの位相中心は不規則に配置されているため、位相中心の不規則な配置は、アンテナアレイのグレーティングローブのエネルギーを複数の角度に分散させる。これにより、グレーティングローブ抑制を効果的に高め、外部システムへの干渉を低減し、アンテナ利得をある程度向上させることができる。
【0028】
第2の態様の可能な実装形態では、装置は、少なくとも1つの無線周波数集積回路チップをさらに含む。無線周波数集積回路チップは、回路ベアリング板上に配置される。無線周波数集積回路チップは、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを含み、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブルを介してアンテナアレイにおける少なくとも2つのサブアレイにそれぞれ給電するように構成され、無線周波数送受信チャネルは、サブアレイに1対1で接続される。
【0029】
第2の態様の可能な実装形態では、アンテナモジュールは、電力分配器/電力合成器と、少なくとも2つの無線周波数集積回路チップとを含む。電力分配器/電力合成器は、少なくとも2つの電力分配線を介して少なくとも2つの無線周波数集積回路チップに別々に接続され、少なくとも2つの電力分配線は同じ長さを有し、電力分配線は、無線周波数集積回路チップに1対1で接続される。電力分配器/電力合成器とRFICチップとの間の等しい長さの電力分配線の設計は、電力分配器/電力合成器から異なるサブアレイまでの遅延間の差をさらに低減する。これにより、広帯域性能がさらに向上する。
【0030】
第2の態様の可能な実装形態では、回路ベアリング板はパッケージ基板である。アンテナモジュールは、プリント回路板をさらに含む。パッケージ基板は、プリント回路板上に配置され、プリント回路基板に接続され、電力分配器/電力合成器は、プリント回路板上に配置される。一般に、デジタル-アナログ変換モジュールおよびデジタル信号処理モジュールは、プリント回路板上にさらに配置される。デジタル信号処理モジュールはデジタル-アナログ変換モジュールに接続され、デジタル-アナログ変換モジュールは電力分配器/電力合成器に接続される。アンテナアレイはパッケージ基板上に配置され、無線周波数集積回路チップもパッケージ基板上に配置される。次いで、アンテナアレイ、パッケージ基板、および無線周波数集積回路チップは、全体としてパッケージ化され、プリント回路板に接続されて、アンテナインパッケージ(Antenna-In-Package、AIP)を形成する。
【0031】
第2の態様の可能な実装形態では、回路ベアリング板はプリント回路板である。電力分配器/電力合成器はプリント回路板上に配置される。一般に、デジタル-アナログ変換モジュールおよびデジタル信号処理モジュールは、プリント回路板上にさらに配置される。デジタル信号処理モジュールはデジタル-アナログ変換モジュールに接続され、デジタル-アナログ変換モジュールは電力分配器/電力合成器に接続される。アンテナアレイ、無線周波数集積回路チップ、デジタルアナログ変換モジュール、およびデジタル信号処理モジュールはすべて、プリント回路板上に配置され、アンテナオンボード(Antenna-on-Board、AOB)を形成する。
【0032】
第2の態様の可能な実装形態では、装置はヒートシンクをさらに含み、ヒートシンクは無線周波数集積回路チップの熱を放熱することができる。無線周波数集積回路チップの性能を向上させるために、ヒートシンクを用いて無線周波数集積回路チップに放熱が行われる。
【0033】
第3の態様によれば、本出願は装置を提供する。本装置は、
第1の態様によるアンテナアレイと、
給電ケーブルと、
少なくとも1つの無線周波数集積回路チップであって、アンテナアレイおよび給電ケーブルは、無線周波数集積回路チップのパッケージング層上に配置され、無線周波数集積回路チップは、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを含み、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブルを介してアンテナアレイにおける少なくとも2つのサブアレイにそれぞれ給電するように構成され、無線周波数送受信チャネルは、サブアレイに1対1で接続される、少なくとも1つの無線周波数集積回路チップとを含む。
【0034】
本出願の本実施形態で提供される装置では、給電ケーブルおよびアンテナアレイは、無線周波数集積回路チップ上に配置され、アンテナアレイは、第1の態様の任意の実装形態におけるアンテナアレイである。したがって、本出願の本実施形態で提供されるアンテナモジュールおよび前述の技術的解決策におけるアンテナアレイは、同じ技術的問題を解決し、同じ期待される効果を達成することができる。
【0035】
第3の態様の可能な実装形態では、装置は、電力分配器/電力合成器と、少なくとも2つの無線周波数集積回路チップとを含む。電力分配器/電力合成器は、少なくとも2つの電力分配線を介して少なくとも2つの無線周波数集積回路チップに別々に接続され、少なくとも2つの電力分配線は同じ長さを有し、電力分配線は、無線周波数集積回路チップに1対1で接続される。電力分配器/電力合成器と無線周波数集積回路チップとの間の等しい長さの電力分配線の設計は、電力分配器/電力合成器から異なるサブアレイまでの遅延間の差をさらに低減する。これにより、広帯域性能がさらに向上する。
【0036】
第3の態様の可能な実装形態では、装置はプリント回路板をさらに含み、無線周波数集積回路チップと電力分配器/電力合成器の両方がプリント回路板上に配置される。一般に、デジタル-アナログ変換モジュールおよびデジタル信号処理モジュールは、プリント回路板上にさらに配置される。デジタル信号処理モジュールはデジタル-アナログ変換モジュールに接続され、デジタル-アナログ変換モジュールは電力分配器/電力合成器に接続される。換言すれば、アンテナアレイは、無線周波数集積回路チップ上に直接配置され、プリント回路板に接続されて、アンテナオンチップ(Antenna-On-Chip、AOC)を形成する。
【0037】
第4の態様によれば、本出願は、第1の態様の任意の実装形態におけるアンテナアレイ、または第2の態様もしくは第3の態様の任意の実装形態における装置を含む無線通信デバイスをさらに提供する。
【0038】
本出願の本実施形態で提供される無線通信デバイスは、前述の実施形態で提供されるアンテナアレイを含む。したがって、本出願の本実施形態で提供される無線通信デバイスおよび前述の技術的解決策におけるアンテナアレイは、同じ技術的問題を解決し、同じ期待される効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】現在の技術におけるアンテナアレイの構造の概略図である。
【
図2】
図1のアンテナアレイにおけるサブアレイとRFICチップとの間の接続の概略図である。
【
図3】
図2の第1のRFICチップと給電点との間の接続関係の概略図である。
【
図4】本出願の一実施形態によるアンテナモジュールの構造の概略図である。
【
図5】本出願の一実施形態によるアンテナモジュールの構造の概略図である。
【
図6】本出願の一実施形態によるアンテナモジュールの構造の概略図である。
【
図7】本出願の一実施形態によるアンテナアレイの構造の概略図である。
【
図8】
図7のアンテナアレイの給電点の配置図である。
【
図9】
図8のアンテナアレイのいくつかの給電点とRFICチップとの間の接続関係の概略図である。
【
図10】1つのRFICチップと給電点との間の接続関係の概略図である。
【
図11】複数のRFICチップと電力分配器/電力合成器との間の接続関係の概略図である。
【
図12】
図7のアンテナアレイの位相中心の配置図である。
【
図13】本出願の一実施形態によるアンテナアレイの構造の概略図である。
【
図15】
図14のアンテナアレイのいくつかの給電点とRFICチップとの間の接続関係の概略図である。
【
図16】1つのRFICチップと給電点との間の接続関係の概略図である。
【
図17】複数のRFICチップと電力分配器/電力合成器との間の接続関係の概略図である。
【
図19】本出願の一実施形態による、アンテナアレイおよび既存のアンテナアレイのグレーティングローブ抑制の曲線の比較図である。
【
図20】本出願の一実施形態による、アンテナアレイおよび既存のアンテナアレイの垂直走査エンベロープ利得の曲線の比較図である。
【
図21】本出願の一実施形態によるアンテナアレイのいくつかのサブアレイのレイアウトの概略図である。
【
図22】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける1つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図23a】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける2つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図23b】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける2つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図23c】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける2つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図24a】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける3つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図24b】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける3つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図24c】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける3つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図24d】本出願の一実施形態によるアンテナアレイにおける3つの放射素子を含むサブアレイの給電点のレイアウトの概略図である。
【
図25】本出願の一実施形態によるアンテナアレイの構造の概略図である。
【
図26】本出願の一実施形態によるアンテナアレイの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
無線基地局などのデータ通信速度が速い無線通信デバイスでは、第5世代移動通信(5th Generation Mobile Networks、5G)において、ミリ波帯が含まれるようになってきている。このようにして、5G高周波基地局と衛星の共存のためのプロトコル要件を満たしながら、アンテナアレイ性能にはより高い要件が課される。例えば、アンテナアレイのグレーティングローブ(Grating lobes)抑制はさらに強化される必要があり、アンテナアレイの走査パターン利得エンベロープをより良好にする必要がある。
【0041】
無線通信デバイスでは、アンテナアレイは複数の異なるベアラ方式を有する。例えば、
図4、
図5、および
図6は、3つの異なるベアラ方式を示す。
【0042】
図4を参照すると、アンテナアレイ1が回路ベアリング板4上に配置され、給電ケーブル05も回路ベアリング板4上に配置される。給電ケーブル05は、回路ベアリング板上に敷設された金属ケーブルであってもよい。この構成の回路ベアリング板4は、パッケージ基板(substrate)である。例えば、パッケージ基板は、再配線(redistribution layer、RDL)、またはコア層のないコアレス基板(Coreless基板)であってもよい。
【0043】
アンテナアレイ1および給電ケーブル05が配置されたパッケージ基板には、接続構造10を用いてRFICチップ3が接続されている。次いで、RFICチップ3が配置されたパッケージ基板は、接続構造10を用いてプリント回路板(printed circuit board、PCB)6に接続される。このような構造は、アンテナインパッケージ(Antenna-In-Package、AIP)と呼ばれることがある。
【0044】
図5を参照すると、アンテナアレイ1および給電ケーブル05の両方がRFICチップ3上に配置され、アンテナアレイ1および給電ケーブル05が配置されたRFICチップ3は、接続構造を用いてPCB 6上に配置され、PCB 6に接続される。このような構造は、アンテナオンパッケージ(Antenna-On-Chip、AOC)と呼ばれることがある。
【0045】
図6を参照すると、アンテナアレイ1が回路ベアリング板上に配置され、給電ケーブル05も回路ベアリング板上に配置される。この構造における回路ベアリング板は、PCB 6である。RFICチップ3は、接続構造を用いてPCB 6に接続されている。このような構造は、アンテナオンボード(Antenna-on-Board、AOB)と呼ばれることがある。
【0046】
接続構造10は、ボールグリッドアレイ(ball grid array、BGA)であってもよい。もちろん、別の接続構造も選択されてもよい。
【0047】
AIP、AOC、またはAOBは、ヒートシンク8をさらに含む。AIPでは、ヒートシンク8は、PCB 6およびRFICチップ3によって発される熱を放熱するために、PCB 6およびRFICチップ3に近接して配置される。AOCでは、ヒートシンク8はPCB 6に近接して配置され、チャネル7がPCB 6を通過する。このようにして、RFICチップ3に対しても放熱を行うことができる。AOBでは、ヒートシンク8はRFICチップ3に近接して配置される。ヒートシンクの構造およびレイアウト方法は、本出願では特に限定されない。
【0048】
AIP、AOC、またはAOBでは、デジタル-アナログ変換モジュール、デジタル信号処理モジュール、および電力分配器/電力合成器がPCB 6上に配置される。デジタル信号処理モジュールはデジタル-アナログ変換モジュールに接続され、デジタル-アナログ変換モジュールは電力分配器/電力合成器に接続され、電力分配器/電力合成器は電力分配線を介してRFICチップに接続される。電力分配線はまた、金属ケーブルであってもよい。任意選択の実装形態では、PCB 6上の金属ケーブルを使用して、デジタル信号処理モジュールとデジタル-アナログ変換モジュールとを接続し、デジタル-アナログ変換モジュールと電力分配器/電力合成器とを接続することができる。
【0049】
アンテナアレイは、アナログアクティブフェーズドアレイに適用されてもよいし、デジタルアクティブフェーズドアレイに適用されてもよい。
【0050】
上記では、アンテナアレイを支持するための3つの装置のみが記載されている。加えて、アンテナアレイは、別の装置内に代替的に配置されてもよい。当該装置については本出願では特に限定されない。
【0051】
本出願におけるアンテナアレイは複数のサブアレイ(Subarray)を含み、各サブアレイは少なくとも1つの放射素子を含み、複数のサブアレイは第1の方向および第2の方向に配列される。第1の方向は第2の方向に対して垂直である。換言すれば、複数のサブアレイは、アンテナアレイを形成するために水平および垂直に配置される。
【0052】
前述の3つの構造では、電力分配器/電力合成器は、少なくとも2つの電力分配線を介して少なくとも2つのRFICチップ3に接続される。加えて、1つのRFICチップ3は少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを含み、具体的には、1つのRFICチップ3は少なくとも2つの無線周波数送受信ポートを有する。換言すれば、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップ3は、少なくとも2つの給電ケーブルを介して少なくとも2つのサブアレイに1対1で給電し、その結果、サブアレイが信号を送受信する。
【0053】
電力分配器/電力合成器とサブアレイとの間の伝送経路は、電力分配線経路だけでなく給電経路も含むと理解されてもよい。1つの電力分配器/電力合成器と複数のサブアレイとの間の伝送経路が異なる場合、遅延は異なり、複数のサブアレイの位相は異なる。このようにして、アンテナアレイの広帯域性能が低下する。
【0054】
異なるサブアレイ間の遅延差をさらに低減し、広帯域性能をさらに改善するために、本出願の一実施形態はアンテナアレイを提供する。アンテナアレイは、AIP、AOC、またはAOBに適用されてもよく、もちろん、アンテナアレイを含む別の装置に代替的に適用されてもよい。
【0055】
以下では、アンテナアレイ1について詳細に説明する。
【0056】
図7は、アンテナアレイ1の構成図である。アンテナアレイ1における放射素子11は複数のサブアレイを形成し(例えば、
図7の1Aは1つのサブアレイを表す)、複数のサブアレイはアンテナアレイを形成する。
【0057】
図7に示されるように、サブアレイ1Aは、2つの放射素子を含む。同じ数の放射素子を含むサブアレイは、同一タイプのサブアレイであってもよい。実際には、サブアレイ内に別の数の放射素子が存在してもよい。例えば、
図13に示されるサブアレイ1Bは、3つの放射素子を含む。任意の数の放射素子を含むサブアレイは、本出願の保護範囲内に入るものとする。
【0058】
各サブアレイは給電点Mを有する。例えば、アンテナアレイが少なくとも3つのサブアレイを含む場合、
図8に示されるように、少なくとも3つの給電点Mがある。
【0059】
放射素子の偏波モードは、本出願では限定されないことに留意されたい。
図7は、±45°偏波の二重偏波アンテナを示す。放射素子は代替的に単一偏波アンテナであってもよく、偏波モードは代替的に水平偏波もしくは垂直偏波、または左円偏波もしくは右円偏波であってもよい。
【0060】
本出願の本実施形態で提供されるアンテナアレイにおける給電点Mの配置は、以下の条件を満たす。
【0061】
複数のサブアレイの給電点Mは、第1の方向Xの少なくとも1つの直線上に位置し、複数のサブアレイの給電点Mはまた、第2の方向Yの少なくとも1つの直線上に位置する。
【0062】
第1の方向Xにおいて、同じ直線上に位置する複数の給電点Mが属する複数のサブアレイは、同じ行に位置する。第2の方向Yにおいて、同じ直線上に位置する複数の給電点Mが属する複数のサブアレイは、同じ列に位置する。
【0063】
このようにして、
図8を参照すると、アンテナアレイの給電点が規則的に配置されるように、サブアレイの各行の複数の給電点が直線に沿って配置され、サブアレイの各列の複数の給電点も直線に沿って配置される。
【0064】
加えて、給電点の配置をさらに助けるために、各行における2つの隣接する給電点間の間隔は等しい。
図8から、サブアレイの第1の行における2つの隣接する給電点ごとの間の間隔はdであり、サブアレイの第3の行における2つの隣接する給電点ごとの間の間隔もdであることが分かる。あるいは、各列における2つの隣接する給電点ごとの間の間隔は等しい。あるいは、任意の列の2つの隣接する給電点ごとの間の間隔は等しく、任意の行の2つの隣接する給電点ごとの間の間隔は等しい。
【0065】
アンテナアレイの給電点が規則的に配置され、少なくとも2つの無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップが少なくとも2つの給電ケーブルを介して少なくとも2つの給電点に1対1で接続される場合、同じRFICチップに接続される複数の給電ケーブルの長さは基本的に等しくてもよく、すなわち給電経路は同じである。したがって、同じRFICチップに接続された複数のサブアレイ間の遅延差が低減され、その結果、複数のサブアレイの位相は基本的に同じになる。
【0066】
例えば、
図9および
図10に示されるように、第1のRFICチップ31は、8つの無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップである。第1のRFICチップ31は、サブアレイ1A1、サブアレイ1A2、サブアレイ1A3、サブアレイ1A4、サブアレイ1A5、サブアレイ1A6、サブアレイ1A7、およびサブアレイ1A8に接続されている。具体的には、第1のRFICチップ31の第1の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル051を介してサブアレイ1A1と相互接続される。第1のRFICチップ31の第2の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル052を介してサブアレイ1A2と相互接続される。第1のRFICチップ31の第3の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル053を介してサブアレイ1A3と相互接続される。第1のRFICチップ31の第4の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル054を介してサブアレイ1A4と相互接続される。第1のRFICチップ31の第5の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル055を介してサブアレイ1A5と相互接続される。第1のRFICチップ31の第6の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル056を介してサブアレイ1A6と相互接続される。第1のRFICチップ31の第7の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル057を介してサブアレイ1A7と相互接続される。第1のRFICチップ31の第8の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル058を介してサブアレイ1A8と相互接続される。
【0067】
本出願では、8つの無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップのみが一実施形態として使用されることに留意されたい。あるいは、別の数の無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップが使用されてもよい。
【0068】
図10から、給電ケーブル051、給電ケーブル052、給電ケーブル053、給電ケーブル054、給電ケーブル055、給電ケーブル056、給電ケーブル057、および給電ケーブル058の長さは、基本的に等しいことが分かる。給電ケーブルの長さが等しい場合、アンテナアレイの広帯域性能を向上させるために、サブアレイ1A1、サブアレイ1A2、サブアレイ1A3、サブアレイ1A4、サブアレイ1A5、サブアレイ1A6、サブアレイ1A7、およびサブアレイ1A8の位相は同じであってもよい。
【0069】
アンテナアレイの給電点が規則的に配置されている場合、装置内の複数のRFICチップの配置も規則的であり、1つの電力分配器/電力合成器と少なくとも2つのRFICチップとの間の少なくとも2つの電力分配線の長さは基本的に等しい。これは、電力分配線の設計上の困難性を単純化する。特に、1つの電力分配器/電力合成器と少なくとも2つのRFICチップとの間の電力分配線経路は基本的に同じである。このようにして、サブアレイ間の遅延差がさらに低減され、広帯域性能がさらに改善される。
【0070】
例えば、
図11に示されるように、第1のRFICチップ31、第2のRFICチップ32、第3のRFICチップ33、および第4のRFICチップ34は、いずれも8つの無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップである。電力分配器/電力合成器5は、電力分配線9を介して、第1のRFICチップ31、第2のRFICチップ32、第3のRFICチップ33、および第4のRFICチップ34に別々に接続される。
【0071】
図11から、第1のRFICチップ31、第2のRFICチップ32、第3のRFICチップ33、および第4のRFICチップ34は規則的に配置されており、電力分配線9の長さは基本的に等しいことが分かる。
【0072】
アンテナアレイの給電点が規則的に配置されている場合、
図9から、第1のRFICチップ31、第2のRFICチップ32、第3のRFICチップ33および第4のRFICチップ34は規則的に配置されており、これらRFICチップの放熱も均等に分配されていることが分かる。これは、RFICチップの高い局所温度または低い局所温度を回避し、無線通信デバイス全体の性能への影響を回避する。
【0073】
前述の技術的効果分析は、いくつかのRFICチップおよびいくつかのサブアレイのみを使用して実行され、他のRFICチップおよび他のサブアレイによって生成される技術的効果は、前述の技術的効果と同じであることに留意されたい。
【0074】
前述の説明に基づいて、1つの電力分配器/電力合成器5と少なくとも2つのRFICチップ3との間の少なくとも2つの電力分配線の長さは基本的に等しく、1つのRFICチップ3と少なくとも2つのサブアレイとの間の給電ケーブルの長さは基本的に等しい。このようにして、1つの電力分配器/電力合成器5と少なくとも2つのサブアレイとの間の伝送経路の長さは基本的に等しい。したがって、現在の技術と比較して、異なるサブアレイ間の遅延差は明らかに低減され、異なるサブアレイの位相は基本的に同じである。これにより、アンテナアレイの広帯域性能が向上する。
【0075】
図12に示されるように、各サブアレイは位相中心(Phase Center)Nを有する。例えば、アンテナアレイが少なくとも3つのサブアレイを含む場合、少なくとも3つの位相中心Nがある。
【0076】
サブアレイによって放射された電磁波がサブアレイを特定の距離だけ離れた後、電磁波の一定の位相面はほぼ球であり、球の球中心はサブアレイの位相中心であるか、または球中心の周りの領域はサブアレイの位相中心と見なされることに留意されたい。実際には、平面サブアレイの場合、平面サブアレイの位相中心は平面サブアレイの幾何学的中心と一致し、幾何学的中心は、ほぼ球であり、サブアレイによって放射される電磁波の、位相平面の幾何学的中心であると通常考えられ得る。
【0077】
本出願の本実施形態で提供されるアンテナアレイにおける位相中心Nの配置は、以下の条件を満たす。
【0078】
1.少なくとも1つの行における複数の位相中心は、同じ直線上に位置しない。
【0079】
図12に示されるアンテナアレイでは、第1の行の複数の位相中心は直線状に配置されているが、第2の行の複数の位相中心は屈曲線状に配置されている。換言すれば、第2の行の位相中心において、互い違いの現象が発生している。
【0080】
2.少なくとも1つの列における複数の位相中心は、同じ直線上に位置しない。
【0081】
3.少なくとも1つの行における複数の位相中心は、同じ直線上に位置せず、かつ少なくとも1つの列における複数の位相中心は、同じ直線上に位置しない。
【0082】
アンテナアレイの位相中心が前述の条件のいずれか1つを満たすとき、アンテナアレイの位相中心は不規則に配置されると考えられる。
【0083】
位相中心の不規則な配置は、アンテナアレイの走査中にグレーティングローブ(Grating lobes)のエネルギーがもはやいくつかの角度で重畳されず、複数の角度で分散されるケースを引き起こす可能性がある。したがって、アンテナアレイのグレーティングローブ抑制能力が大幅に改善され得る。
【0084】
図13は、別のアンテナアレイの構成図である。アンテナアレイは、2つの放射素子11を有するサブアレイ1Aを含み、3つの放射素子11を有するサブアレイ1Bをさらに含む。
【0085】
図14を参照すると、アンテナアレイにおける給電点Mはまた、サブアレイの各行における複数のサブアレイの給電点が直線状に配置され、サブアレイの各列における複数のサブアレイの給電点も直線状に配置されるという条件を満たす。このようにして、アンテナアレイの給電点は規則的に配置される。例えば、第1の行の複数のサブアレイの給電点と、第1の行に隣接する第2の行の複数のサブアレイの給電点とが直線状に配置される。第1の列の複数のサブアレイの給電点と、第1の列に隣接する第2の列の複数のサブアレイの給電点も直線状に配置されている。
【0086】
図15および
図16に示されるように、第5のRFICチップ35は、6つの無線周波数送受信チャネルを有するRFICチップである。第5のRFICチップ35は、サブアレイ1B1、サブアレイ1B2、サブアレイ1B3、サブアレイ1B4、サブアレイ1B5、およびサブアレイ1B6に接続されている。具体的には、第5のRFICチップ35の第1の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル059を介してサブアレイ1B1と相互接続される。第5のRFICチップ35の第2の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル0510を介してサブアレイ1B2と相互接続される。第5のRFICチップ35の第3の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル0511を介してサブアレイ1B3と相互接続される。第5のRFICチップ35の第4の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル0512を介してサブアレイ1B4と相互接続される。第5のRFICチップ35の第5の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル0513を介してサブアレイ1B5と相互接続される。第5のRFICチップ35の第6の無線周波数送受信チャネルは、給電ケーブル0514を介してサブアレイ1B6と相互接続される。
【0087】
図16から、給電ケーブル059から給電ケーブル0514までの長さは基本的に等しいことが分かる。給電ケーブルの長さが等しい場合、アンテナアレイの広帯域性能を向上させるために、サブアレイ1B1、サブアレイ1B2、サブアレイ1B3、サブアレイ1B4、サブアレイ1B5、およびサブアレイ1B6の位相は基本的に同じであってもよい。
【0088】
図17は、4つのRFICチップと電力分配器/電力合成器5との間の接続関係を示している。4つのRFICチップは、それぞれ、第5のRFICチップ35、第6のRFICチップ36、第7のRFICチップ37、および第8のRFICチップ38である。
【0089】
図17から、第5のRFICチップ35、第6のRFICチップ36、第7のRFICチップ37、および第8のRFICチップ38は規則的に配置され、電力分配器/電力合成器と4つのRFICチップとの間の電力分配線の長さは基本的に等しいことが分かる。
【0090】
図18に示されるように、アンテナアレイの位相中心Nは不規則に配置されている。例えば、第1の行の複数のサブアレイの位相中心は屈曲線を形成し、第2の行の複数のサブアレイの位相中心も屈曲線を形成する。このように、位相中心の不規則な配置は、アンテナアレイの走査中にグレーティングローブのエネルギーがもはやいくつかの角度で重畳されず、複数の角度で分散されるケースを引き起こす可能性がある。したがって、アンテナアレイのグレーティングローブ抑制能力が大幅に改善され得る。
【0091】
図19は、本出願によるアンテナアレイおよび既存のアンテナアレイのグレーティングローブ抑制の曲線の比較図である。曲線(1)は、本出願の本実施形態で提供されるアンテナアレイがY軸(垂直次元)に沿って走査されるときに得られるグレーティングローブ抑制の曲線であり、曲線(2)は、現在の技術においてアンテナアレイがY軸(垂直次元)に沿って走査されるときに得られるグレーティングローブ抑制の曲線である。曲線(1)および曲線(2)から、-20°~20°の垂直走査角の範囲では、本出願におけるグレーティングローブ抑制は、既存のグレーティングローブ抑制より明らかに高いことが明らかに分かる。
【0092】
図20は、本出願によるアンテナアレイおよび既存のアンテナアレイの垂直走査エンベロープ利得の曲線の比較図である。この図において、曲線(11)は、本出願において提供されるアンテナアレイのY軸(垂直次元)に沿ったビーム走査パターンのエンベロープ利得曲線であり、曲線(12)は、既存のアンテナアレイのY軸(垂直次元)に沿ったビーム走査パターンのエンベロープ利得曲線である。本出願におけるアンテナアレイの利得は、-30°~-10°の範囲および10°~30°の範囲の両方において既存のアンテナアレイの利得よりも良好であるが、利得は基本的に-10°~10°の範囲で同等であることが分かる。加えて、ビーム走査能力は、10 dBグレーティングローブ抑制によって定義される。
図21を参照されたい。既存のアンテナアレイ走査能力は、-10°~10°の範囲である。本出願では、走査能力は±20°より大きい範囲にあり、実際の能力は約±30°に達する可能性がある。
図20では、一例としてY方向のビーム走査が用いられているが、X方向についても同様の技術的効果がある。
【0093】
任意選択の実装形態では、放射素子は、グリッド内に均等に分配されることに限定されない。具体的には、
図21に示されるように、同一列に、放射素子11a、放射素子11b、放射素子11cが順に配置されている。隣接する放射素子11a、11b間の間隔はd1であり、隣接する放射素子11b、11c間の間隔はd2である。ここで、d1とd2は同じであってもよく、あるいは、d1とd2との差の絶対値は、アンテナアレイの周波数帯域に対応する波長の1/4以下であってもよい。
【0094】
任意選択の実装形態では、第1の方向における複数のサブアレイの給電点は、特定の程度の互い違いを許容することができ、完全に同じ直線上にあることに限定されない。同様に、第2の方向における複数のサブアレイの給電点は、特定の程度の互い違いを許容することができ、完全に同じ直線上にあることに限定されない。
図21に示されるように、給電点M1、給電点M2および給電点M3は、第1の方向に配列されており、給電点M2および給電点M3は、互い違いになっており、互い違いの距離d3は、アンテナアレイの周波数帯域に対応する波長の1/4以下である。2つの隣接する給電点が互い違いになっており、互い違いの距離がアンテナアレイの周波数帯域に対応する波長の1/4以下ある場合、等しい長さの給電ケーブルおよび等しい分割線の設計に対する影響は非常に小さく、アンテナアレイの広帯域性能は依然として改善されることができる。
【0095】
上述のように、アンテナアレイでは、給電点が不規則に配置されている。換言すれば、同一タイプのサブアレイでは、給電点に関して複数のケースが存在する。以下では、一実施形態を使用して、不規則な配置を実施するために給電点を設定する具体的な方法について説明する。
【0096】
図22は、1つのみの放射素子11を含むサブアレイを示す。サブアレイにおいて、給電点Mは放射素子11の横に位置する。
【0097】
図23a、
図23b、および
図23cはそれぞれ、2つの放射素子を含むサブアレイにおける給電点の配置方法を示す。2つの放射素子はそれぞれ、第1の放射素子111および第2の放射素子112である。
【0098】
第1の配置方法:
図23aを参照されたい。給電点Mは、第1の放射素子111と第2の放射素子112との間に位置する。
【0099】
第2の配置方法:
図23bを参照されたい。給電点Mは、第1の放射素子111の、第2の放射素子112から離れた側に位置する。
【0100】
第3の配置方法:
図23cを参照されたい。給電点Mは、第2の放射素子112の、第1の放射素子111から離れた側に位置する。
【0101】
加えて、給電点Mは、代替的に、第1の放射素子111の下方または第2の放射素子112の下方にあってもよい。
【0102】
確かに、アンテナアレイが2つの放射素子を有するサブアレイを含む場合、給電点は、前述の配置位置を含むが、これらの配置位置に限定されない。
【0103】
図24a、
図24b、
図24c、および
図24dはそれぞれ、3つの放射素子を含むサブアレイにおける給電点の配置方法を示す。3つの放射素子はそれぞれ、第1の放射素子111、第2の放射素子112、および第3の放射素子である。
【0104】
第1の配置方法:
図24aを参照されたい。給電点Mは、第1の放射素子111の、第2の放射素子112から離れた側に位置する。
【0105】
第2の配置方法:
図24bを参照されたい。給電点Mは、第1の放射素子111と第2の放射素子112との間に位置する。
【0106】
第3の配置方法:
図24cを参照されたい。給電点Mは、第2の放射素子112と第3の放射素子113との間に位置する。
【0107】
第4の配置方法:
図24dを参照されたい。給電点Mは、第3の放射素子113の、第2の放射素子112から離れた側に位置する。
【0108】
加えて、給電点Mは、代替的に、第1の放射素子111の下方、第2の放射素子112の下方、または第3の放射素子113の下方にあってもよい。
【0109】
同様に、アンテナアレイが3つの放射素子を有するサブアレイを含む場合、給電点は、前述の配置位置を含むが、これらの配置位置に限定されない。
【0110】
アンテナアレイがより多くの放射素子を有するサブアレイを含む場合、給電点Mの具体的な配置方法は前述の配置例と同様である。
【0111】
アンテナアレイが少なくとも2つの放射素子を有するサブアレイを含むとき、給電点は、2つの隣接する放射素子の間に位置するか、または給電点は、端部の放射素子の、残りの放射素子から離れた側に位置するか、または給電点は、サブアレイ内のすべての放射素子の下方に位置すると理解されてもよい。
【0112】
位相中心の不規則な配置および給電点の規則的な配置を実施するために、いくつかの行およびいくつかの列における2つの隣接するサブアレイの間に空きグリッドがある。
図14に示されるように、ダミー素子(Dummy Element)2が空きグリッドに配置される。ダミー素子は、非給電放射素子である。
【0113】
ダミー素子を配置することにより、アンテナアレイのすべてのサブアレイの周囲環境を一致させることができ、その結果、すべてのサブアレイのパターンが基本的に一致し、最終的に、アンテナアレイの通信能力が改善される。
【0114】
本出願で提供されるアンテナアレイによって形成される二次元形状は、
図7および
図13において提供される矩形アレイであってもよく、または
図25に示される円に近い形状であってもよく、または多角形(例えば、
図26に示される六角形)であってもよい。
【0115】
本明細書の説明では、説明された特定の特徴、構造、材料、または特性は、実施形態または実施例のうちの任意の1つ以上において、適切な方法で組み合わされてもよい。
【0116】
本明細書の説明において、「複数の」とは「2つ以上の」を意味する。例えば、「複数のサブアレイ」は3つ以上のサブアレイを含むことができ、「複数の無線周波数送受信チャネル」は2つ以上の無線周波数送受信チャネルを含むことができ、「複数のRFICチップ」は2つ以上のRFICチップを含むことができる、などである。
【0117】
前述の説明は、本発明の具体的な実装形態にすぎず、本発明の保護範囲を限定することは意図されていない。本発明に開示されている技術的範囲内で当業者によって容易に考え出されるいかなる変形または置換も、本発明の保護範囲内にあるものとする。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0118】
01 第1のRFICチップ
02 第2のRFICチップ
03 第3のRFICチップ
04 第4のRFICチップ
05 給電ケーブル
1 アンテナアレイ
1A サブアレイ
1B サブアレイ
11 放射素子
111 第1の放射素子
112 第2の放射素子
113 第3の放射素子
M 給電点
N 位相中心
2 ダミー素子
3 RFICチップ
31 第1のRFICチップ
32 第2のRFICチップ
33 第3のRFICチップ
34 第4のRFICチップ
35 第5のRFICチップ
36 第6のRFICチップ
37 第7のRFICチップ
38 第8のRFICチップ
4 回路ベアリング板
5 電力分配器/電力合成器
6 プリント回路板
7 チャネル
8 ヒートシンク
9 電力分配線
10 接続構造