(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】コーティング層及びイオン伝達層を含む全固体電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241029BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241029BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241029BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2023524198
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 KR2021016035
(87)【国際公開番号】W WO2022098151
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0146810
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0034266
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】スル・チャム・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジン・ハー
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジュン・パク
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096610(JP,A)
【文献】特開2019-021515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62、4/66
H01M10/052、10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池用負極であって、
電気伝導性の金属素材からなる負極集電体と;
前記負極集電体の一面又は両面に付加されており、リチウム親和物質を含むコーティング層と;
前記コーティング層上に位置し、リチウムイオンが移動し得る非晶質炭素を含むイオン伝達層と;
を含
み、
前記リチウム親和物質は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金属、及びCuO、ZnO、CoO及びMnOを含む金属酸化物のうちいずれか一つ以上であり、
前記リチウム親和物質を含むコーティング層が、部分的に負極集電体を露出させるアイランド状のコーティング層である、全固体電池用負極。
【請求項2】
前記イオン伝達層はバインダーをさらに含む、請求項1に記載の全固体電池用負極。
【請求項3】
前記負極集電体上に負極合剤層が形成されていない、請求項1または2に記載の全固体電池用負極。
【請求項4】
前記リチウム親和物質は、
Agである、請求項1から3のいずれか一項に記載の全固体電池用負極。
【請求項5】
前記コーティング層は前記負極集電体の全体面積を基準にして30%以上80%以下の範囲で分布する、請求項1から4のいずれか一項に記載の全固体電池用負極。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項による全固体電池用負極、固体電解質層及び正極を含むリチウム二次電池。
【請求項7】
前記全固体電池用負極は、前記リチウム親和物質が前記コーティング層に分散されており、
前記リチウム親和物質上でリチウムプレーティングが起こる、請求項
6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記全固体電池用負極は、前記負極集電体と対面する前記イオン伝達層の一面でリチウム電着が行われる、請求項
6または
7に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記全固体電池用負極は、前記負極集電体の第1面及び第2面のうち第1面にのみ前記コーティング層及び前記イオン伝達層が形成され、
前記第1面上に正極が配置されるモノセルを含む、請求項
6から
8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記負極集電体上に前記コーティング層が形成され、前記コーティング層上に前記イオン伝達層が形成される、請求項
9に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記全固体電池用負極は、前記負極集電体の第1面及び第2面のそれぞれに前記コーティング層及び前記イオン伝達層が形成され、
前記第1面及び前記第2面のそれぞれに第1正極及び第2正極が配置されるバイセルを含む、請求項
6から
8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記負極集電体上に前記コーティング層が形成され、前記コーティング層上に前記イオン伝達層が形成される、請求項
11に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年11月05日付けの大韓民国特許出願第2020-0146810号及び2021年03月16日付けの大韓民国特許出願第2021-0034266号に基づいた優先権の利益を主張し、該当の大韓民国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、コーティング層及びイオン伝達層を含む全固体電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池に関し、具体的には、負極でリチウムプレーティングが局部的に起こることを防止し、リチウムの電着位置を特定することによって正極と負極との間で短絡が発生することを防止できる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
再利用が可能で、且つ高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減少できるだけでなく、エネルギーの使用による副産物が発生しないので、環境にやさしい特性を有する新たなエネルギー源として注目されている。
【0004】
前記リチウム二次電池は、ウェアラブル(wearable)デバイス又はポータブル(portable)デバイスのみならず、電気自動車などの高出力及び高エネルギー密度を有するデバイスのエネルギー源としても脚光を浴びている。その結果、作動電圧及びエネルギー密度の高いリチウム二次電池に関する研究がさらに活発になっている。
【0005】
リチウム二次電池においては、正極と負極との間にリチウムイオンが移動する過程を通じて充電及び放電が行われるが、負極に移動した一部のリチウムイオンが負極の表面に付着することによってリチウム核を形成し、前記リチウム核は、成長しながら樹枝状の結晶体であるリチウムデンドライトになり得る。
【0006】
負極の表面で形成されて成長したリチウムデンドライトが正極と接触すると、リチウム二次電池の短絡が起こる原因になり得る。これは、リチウム二次電池の寿命を短縮し、安定的な性能を確保するのにも問題になり得る。
【0007】
従来のリチウム二次電池は、このような問題によって黒鉛を負極材として使用しており、これによってエネルギー密度が低くなるという短所を有する。
【0008】
エネルギー密度を高めるために、安定性の高い全固体電池でリチウムを負極活物質として使用することが提案されている。リチウムを負極活物質として使用する方法としては、リチウム又はリチウム合金を負極活物質として使用する方法、又は負極集電体上に負極活物質層を形成していない状態で充電によって負極集電体と固体電解質との界面で析出されるリチウムを活物質として使用する方法がある。
【0009】
リチウムを負極活物質として使用する場合は、充電時に負極側にリチウムが析出され、負極活物質層を形成しない場合は、負極集電体上にリチウムが析出される。このように負極側に析出されたリチウムは、全固体電池が充放電を繰り返すと、固体電解質の隙間を通じてリチウムデンドライトに成長し得る。前記リチウムデンドライトは、電池の短絡又は容量低下の原因になり得る。
【0010】
特許文献1は、リチウムデンドライトが発生することを防止するために、第1リチウム親和層、第2リチウム親和層及びペロブスカイト層で構成された複合層を含む電極を開示する。
【0011】
特許文献1は、電極の表面にリチウム親和層が順次配置される構造を適用することによって、リチウムイオンが前記電極の表面に均一に付着し得るので、リチウムデンドライトの発生を防止できることを開示する。
【0012】
特許文献1は、液体電解液を含むリチウム二次電池の寿命特性の改善を提示しており、リチウム核が生成される電位を低下させることによってリチウムデンドライトが生じることを防止する方法は認識しているが、リチウムが付着する位置を特定できる技術は提示していない。
【0013】
リチウム二次電池において、リチウムイオンが負極の表面のうち一部に局部的にプレーティングされることを防止するだけでなく、リチウム核が形成されたとしても、正極側にリチウムデンドライトが成長することを防止できる技術に対する必要性が高い実情にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、リチウム二次電池、特に、高エネルギー密度を有する全固体電池において、リチウムデンドライトによってリチウム二次電池の性能が低下することを防止し、リチウム二次電池の寿命を延長することによって収率を向上できる全固体電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するための本発明は、全固体電池用負極であって、電気伝導性の金属素材からなる負極集電体と、前記負極集電体の一面又は両面に付加されており、リチウム親和物質(Lithiophillic Material)を含むコーティング層と、前記コーティング層上に位置し、リチウムイオンが移動し得る非晶質炭素を含むイオン伝達層とを含むことができる。
【0017】
前記イオン伝達層は、バインダーをさらに含むことができる。
【0018】
前記負極集電体上に負極合剤層が形成されなくてもよい。
【0019】
前記リチウム親和物質は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金属、及びCuO、ZnO、CoO及びMnOを含む金属酸化物のうちいずれか一つ以上であり得る。
【0020】
前記コーティング層を構成するリチウム親和物質は、ナノ粒子形態であり得るが、金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子が負極集電体上に付着した形態であり得る。
【0021】
また、本発明は、前記全固体電池用負極の製造方法を提供するが、具体的には、(a)負極集電体を準備する段階、(b)前記負極集電体の両面のうち少なくとも一側の外面にリチウム親和物質を含むコーティング層を形成する段階、及び(c)前記コーティング層上にイオン伝達層を形成する段階を含み、前記各段階は順次行われ得る。
【0022】
また、本発明は、前記全固体電池用負極、固体電解質層及び正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0023】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記全固体電池用負極は、前記リチウム親和物質がコーティング層に分散されており、前記リチウム親和物質上でリチウムプレーティング(Li plating)が起こり得る。
【0024】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記全固体電池用負極は、負極集電体と対面するイオン伝達層の一面でリチウム電着が行われ得る。
【0025】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記全固体電池用負極は、負極集電体の第1面及び第2面のうち第1面にのみコーティング層及びイオン伝達層が形成され、前記第1面上に正極が配置されるモノセルを含むことができる。
【0026】
前記モノセルにおいて、前記負極集電体上にコーティング層が形成され、前記コーティング層上に前記イオン伝達層が形成され得る。
【0027】
本発明に係るリチウム二次電池において、前記全固体電池用負極は、負極集電体の第1面及び第2面のそれぞれにコーティング層及びイオン伝達層が形成され、前記第1面及び第2面のそれぞれに第1正極及び第2正極が配置されるバイセルを含むリチウム二次電池である。
【0028】
前記バイセルにおいて、前記負極集電体上にコーティング層が形成され、前記コーティング層上に前記イオン伝達層が形成され得る。
【0029】
また、本発明は、前記課題の解決手段を多様に組み合わせた形態でも提供が可能である。
【発明の効果】
【0030】
以上で説明したように、本発明は、全固体電池用負極集電体上にリチウム親和物質が広く分散されるので、負極に移動したリチウムが広く分布し得る。したがって、負極集電体の表面に局部的にリチウムが付着することによって、リチウム核生成エネルギーが増加することを防止することができる。
【0031】
また、前記リチウム親和物質を含むコーティング層上に非晶質炭素を含むイオン伝達層が形成されるので、リチウムイオンが負極集電体の方向に移動することができ、前記イオン伝達層の負極集電体の方向の一面でリチウムが蒸着するので、リチウムデンドライトが形成されたとしても、前記イオン伝達層を貫通して正極方向に成長することを遅延させることができる。
【0032】
このようにリチウム親和物質を含むコーティング層とイオン伝達層の組み合わせからなる構造により、負極集電体の表面でリチウムの均一な電着を誘導することができる。
【0033】
したがって、このような負極を含む全固体電池においては、寿命が向上し、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る負極を製造する過程を示した模式図である。
【
図2】実施例2で製造された負極のSEM写真である。
【
図3】実施例2で製造された負極断面のSEM写真である。
【
図4】比較例1で製造された負極のSEM写真である。
【
図5】比較例2で製造された負極のSEM写真である。
【
図6】比較例3で製造された負極のSEM写真である。
【
図7】比較例6で製造された負極断面のSEM写真である。
【
図8】比較例7で製造された負極のSEM写真である。
【
図9】比較例8で製造された負極のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好ましい実施例に対する動作原理を詳細に説明するにおいて、関連する公知の機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を必要以上に不明瞭にし得ると判断される場合は、それについての詳細な説明を省略する。
【0036】
また、図面全体にわたって類似する機能及び作用をする部分に対しては、同一の図面符号を使用する。明細書全体において、一つの部分が他の部分と連結されているとしたとき、これは、直接連結されている場合のみならず、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、一つの構成要素を含むことは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0037】
また、構成要素を限定したり付加して具体化する説明は、特別な制限がない限り、全ての発明に適用可能であり、特定の発明に対する説明に限定されない。
【0038】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示されたものは、別途に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0039】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって、「又は」は、別途に言及しない限り、「及び」を含むものである。そのため、「A又はBを含む」は、Aを含むか、Bを含むか、A及びBを含む前記3つの場合を全て意味する。
【0040】
また、全ての数値範囲は、明確に除外するという記載がない限り、両端の値及びその間の全ての中間値を含む。
【0041】
本発明に係る全固体電池用負極は、電気伝導性の金属素材からなる負極集電体と、前記負極集電体の一面又は両面に付加されており、リチウム親和物質を含むコーティング層と、前記コーティング層上に位置し、リチウムイオンが移動し得る非晶質炭素を含むイオン伝達層とを含むことができる。
【0042】
本発明に係る全固体電池用負極は、負極集電体上に負極合剤層を別途に含まない形態である。したがって、本明細書において、負極の表面にコーティング層が形成されるという表現は、負極集電体の表面にコーティング層が形成されるのと同一の意味で使用される。
【0043】
前記負極集電体の種類は、リチウム二次電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記負極集電体としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、その形態としては、表面に微細な凹凸が形成されたり、又は表面に微細な凹凸が形成されていないフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が使用され得る。
【0044】
例えば、硫化物系固体電解質を使用する場合は、銅素材の負極集電体を使用すると硫酸銅が形成され得るが、これを防止するために、ニッケル又はステンレススチール素材の負極集電体を使用することができる。
【0045】
前記負極集電体の厚さは、特に限定されないが、5μm乃至30μmであってもよく、より詳細には、10μm乃至20μmであってもよい。負極集電体の厚さが30μmを超えると、電極の体積当たりの容量が減少するという問題があり、負極集電体の厚さが5μm未満であると、電極の製造時にフォールディング現象が発生し得る。
【0046】
前記コーティング層を構成するリチウム親和物質は、リチウムとの反応性が高い物質であって、前記コーティング層及びイオン伝達層が形成された負極に正極を結合することによって電池セルを製造し、前記電池セルに充放電を行うと、負極に移動したリチウムイオンにおいて、前記コーティング層を構成するリチウム親和物質上でリチウムプレーティング及び電着が起こる。
【0047】
前記コーティング層に含まれるリチウム親和物質は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金属、及びCuO、ZnO、CoO及びMnOを含む金属酸化物のうちいずれか一つ以上であり得る。
【0048】
本発明は、リチウム親和物質が負極集電体の表面上で全体的に分散されているが、部分的に負極集電体が露出するようにリチウム親和物質が凝集し、アイランド状に存在し得る。
【0049】
一つの具体的な例において、前記リチウム親和物質は、前記負極集電体の全体面積を基準にして5%乃至100%の範囲で分布することができ、より詳細には、10%乃至90%の範囲で分布することができ、さらに詳細には、30%乃至80%の範囲で分布することができる。また、さらに詳細には、前記リチウム親和物質は、前記負極集電体の全体面積を基準にして50%乃至70%の範囲で分布することができる。
【0050】
前記リチウム親和物質の面積が負極集電体の全体面積を基準にして5%より小さい場合は、リチウム親和物質の分布面積が狭いので、これによる効果を得ることが難しいという問題があって好ましくない。
【0051】
このように、本発明に係る全固体電池用負極は、前記リチウム親和物質が負極集電体の表面のうち一部にのみ局部的に電着されず、広い範囲に分散されているので、リチウム核生成電位を低下させることができる。すなわち、負極集電体の表面において特定の一部の領域でリチウム核が形成されることを最小化することができる。したがって、負極集電体の表面にリチウムが均一に電着及び成長し、リチウムデンドライトが形成されることを抑制することができる。
【0052】
また、本発明は、コーティング層上にイオン伝達層が形成されているが、前記イオン伝達層を介してリチウムイオンが正極から負極に移動したり、又は負極から再び正極に移動するときに障害にならず、負極に移動するリチウムイオンを負極集電体の方向に伝達することができる。
【0053】
これと関連して、
図1は、本発明に係る負極を製造する過程を模式的に示している。
【0054】
図1を参照すると、負極集電体上にリチウム親和物質(LPM)を含むコーティング層が形成され、前記コーティング層上に非晶質炭素を含むイオン伝達層を形成する。その後、このように製造された負極を固体電解質層及び正極と積層することによって電池を製造し、充放電を行うと、前記イオン伝達層を通過して負極に移動したリチウムイオンがリチウム親和物質上に付着してプレーティングされるが、リチウムが成長したとしても、イオン伝達層を貫通することは不可能になる。
【0055】
すなわち、前記コーティング層にプレーティングされたリチウムが成長する場合、前記イオン伝達層によって成長が阻害されるので、従来にリチウム核が成長したリチウムデンドライトが正極方向に延長され、正極と接触するという問題を防止することができる。
【0056】
本発明に係る全固体電池用負極において、前記イオン伝達層としては、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ポリテトラフルオロエチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。より詳細には、前記イオン伝達層は、カーボンブラックなどの非晶質炭素を含むことができる。
【0057】
前記非晶質炭素は、炭素原子で構成された六角網面が小さく、積層成長がよく発達されずに無秩序な構造を有し、六角網面で構成された各微細結晶子が互いに絡み合っていたり、又は前記各微細結晶子が非晶質相と混合されている構造を有する。その結果、リチウムイオンは、黒鉛層の平面の間に挿入されること以外に、炭素層の欠陥、及び不完全な積層構造によって発生した各空隙と先端面側に挿入され得る。
【0058】
本発明のイオン伝達層は、非晶質炭素を含むが、前記非晶質炭素は、負極集電体側にリチウムイオンを円滑に伝達する。負極集電体と対面する方向のイオン伝達層の外面でリチウムの電着が行われ、これと反対方向のイオン伝達層の外面にはリチウムの電着が行われない。したがって、正極と対面するイオン伝達層の外面にはリチウムデンドライトが発生しなくなるので、リチウム二次電池の寿命特性が向上し得る。
【0059】
その一方で、一般に、負極活物質として使用される天然黒鉛及び人造黒鉛などの結晶質黒鉛でイオン伝達層を形成する場合は、前記結晶質黒鉛内にリチウムが挿入された後、正極と対面する前記イオン伝達層の外面にリチウムが電着する。このようにリチウムが電着しながらリチウムデンドライトに成長し、固体電解質層を通過すると、ショートを誘発するようになる。
【0060】
その結果、本発明のように非晶質炭素を含むイオン伝達層を含む場合、結晶質黒鉛をイオン伝達層として使用する場合と比較したとき、安全性を確保することができる。
【0061】
一つの具体的な例において、前記イオン伝達層を構成する主要成分である各炭素剤の間の結合力を確保できるように、前記イオン伝達層はバインダーをさらに含むことができる。
【0062】
また、前記イオン伝達層は、前記コーティング層及び/又は負極集電体に対する前記イオン伝達層の結合力を向上させるためのバインダーを含むことができる。
【0063】
すなわち、前記バインダーは、前記イオン伝達層の各構成物質の間の結合力を確保するために使用することができ、又は前記イオン伝達層とコーティング層及び/又は負極集電体に対する結合力を確保するために使用することができる。
【0064】
前記バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、及びこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0065】
また、本発明は、前記全固体電池用負極の製造方法を提供するが、具体的には、(a)負極集電体を準備する段階、(b)前記負極集電体の両面のうち少なくとも一側の外面にリチウム親和物質を含むコーティング層を形成する段階、及び(c)前記コーティング層上にイオン伝達層を形成する段階を含み、前記各段階は順次行われ得る。
【0066】
前記コーティング層を構成するリチウム親和物質は、ナノ粒子形態であり得るが、金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子が負極集電体上に付着した形態であり得る。
【0067】
前記負極集電体上にコーティング層を形成する方法及びイオン伝達層を形成する方法は、独立的に、液浸(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)、PVD(Physical Vapor Deposition)及びCVD(Chemical Vapor Deposition)を含むグループのうちいずれか一つ以上によって行われ得る。
【0068】
前記負極集電体上にコーティング層を形成する方法及びイオン伝達層を形成する方法は、乾式コーティング方法で行われ得る。
【0069】
本発明は、前記全固体電池用負極、固体電解質層及び正極を含む電極組立体が電池ケースに収容されたリチウム二次電池を含む。
【0070】
前記正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質を含んでいる正極合剤を塗布した後、乾燥して製造され、前記正極合剤には、必要によって、バインダー、導電材、充填材などが選択的にさらに含まれてもよい。
【0071】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高い導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記正極集電体としては、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。また、正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成することによって正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0072】
前記正極活物質は、電気化学的反応を起こし得る物質であり、下記の化学式1乃至3で表現される正極活物質のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0073】
LiaCo1-xMxO2(1)
LiaMn2-yMyO4(2)
LiaFe1-zMzPO4(3)
前記式において、0.8≦a≦1.2;0≦x≦0.8;0≦y≦0.6、0≦z≦0.5で、
Mは、Ti、Cd、Cu、Cr、Mo、Mg、Al、Ni、Nb、V及びZrからなる群から選ばれる1種以上である。
【0074】
すなわち、前記正極活物質は、化学式1で表される層状構造のリチウム金属酸化物、化学式2で表されるスピネル構造のリチウムマンガン系酸化物、及び化学式3で表されるオリビン構造のリチウム含有リン酸化物で構成された群から選ばれる一つ又は二つ以上の物質を含むことができる。
【0075】
前記層状構造のリチウム金属酸化物としては、その種類において限定されないが、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト-ニッケル酸化物、リチウムコバルト-マンガン酸化物、リチウムマンガン-ニッケル酸化物、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物及びこれらに他の元素が置換又はドーピングされた物質で構成された群から選ばれる一つ又は二つ以上のものを挙げることができる。
【0076】
前記リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物は、Li1+zNibMncCo1-(b+c+d)MdO(2-e)Ae(ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1である。M=Al、Mg、Cr、Ti、Si又はYで、A=F、P又はClである。)で表現され得る。
【0077】
前記スピネル構造のリチウムマンガン系酸化物としても、その種類において限定されないが、例えば、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物及びこれらに他の元素が置換又はドーピングされた物質で構成された群から選ばれる一つ又は二つ以上のものを挙げることができる。
【0078】
また、前記オリビン構造のリチウム含有リン酸塩としても、その種類において限定されないが、例えば、リチウム鉄リン酸化物及びこれに他の元素が置換又はどーピンされたものを挙げることができる。
【0079】
前記他の元素は、Al、Mg、Mn、Ni、Co、Cr、V、Fe及びドーピングされた物質で構成された群から選ばれる一つ又は二つ以上の元素であり得る。
【0080】
前記バインダーは、活物質と導電材などとの結合及び集電体に対する結合を促進する成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1重量%乃至30重量%で添加される。このようなバインダーの例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、及びこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0081】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1重量%乃至30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記導電材としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;エチレンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材、グラフェン及び炭素ナノチューブなどが使用され得る。
【0082】
前記充填材は、電極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、繊維状材料であれば特に限定されなく、例えば、前記充填材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合剤;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0083】
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質又は高分子系固体電解質であり得る。
【0084】
前記硫化物系固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、また、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、電子絶縁性を有することができる。硫化物系固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有することが好ましいが、目的又は場合によって、Li、S及びP以外の他の元素を含むことができる。
【0085】
具体的な硫化物系無機固体電解質として、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-H2S、Li2S-P2S5-H2S-LiCl、Li2S-LiI-P2S5、Li2S-LiI-Li2O-P2S5、Li2S-LiBr-P2S5、Li2SLi2O-P2S5、Li2S-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-P2O5、Li2S-P2S5-SiS2、Li2S-P2S5-SiS2-LiCl、Li2S-P2S5-SnS、Li2S-P2S5-Al2S3、Li2S-GeS2、Li2S-GeS2-ZnS、Li2S-Ga2S3、Li2S-GeS2-Ga2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-GeS2-Sb2S5、Li2S-GeS2-Al2S3、Li2S-SiS2、Li2S-Al2S3、Li2S-SiS2-Al2S3、Li2S-SiS2-P2S5、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-Li4SiO4、Li2S-SiS2-Li3PO4、及びLi10GeP2S12などが使用され得る。
【0086】
硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法として、非晶質化法を使用することができる。前記非晶質化法として、例えば、メカニカルミリング法、溶液法又は溶融急冷法を挙げることができる。これは、常温(25℃)での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるためである。
【0087】
前記酸化物系固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、電子絶縁性を有する化合物であることが好ましい。
【0088】
前記酸化物系固体電解質として、例えば、LixaLayaTiO3〔xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbMbb
mbOnb(Mbbは、Al、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In及びSnのうち少なくとも1種以上の元素であり、xbは、5≦xb≦10を充足し、ybは、1≦yb≦4を充足し、zbは、1≦zb≦4を充足し、mbは、0≦mb≦2を充足し、nbは、5≦nb≦20を充足する。)、LixcBycMcc
zcOnc(Mccは、C、S、Al、Si、Ga、Ge、In及びSnのうち少なくとも1種以上の元素であり、xcは、0≦xc≦5を充足し、ycは、0≦yc≦1を充足し、zcは、0≦zc≦1を充足し、ncは、0≦nc≦6を充足する。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadPmdOnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3-2xe)Mee
xeDeeO(xeは、0以上0.1以下の数を示し、Meeは、2価の金属原子を示す。Deeは、ハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを示す。)、LixfSiyfOzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、LixgSygOzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、Li3BO3-Li2SO4、Li2O-B2O3-P2O5、Li2O-SiO2、Li6BaLa2Ta2O12、Li3PO(4-3/2w)Nw(wは、w<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO4、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO3、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi2P3O12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyhP3-yhO12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLi7La3Zr2O12(LLZ)などを挙げることができる。又は、前記酸化物系固体電解質として、Li、P及びOを含むリン化合物も使用することができ、例えば、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素に置換したLiPON、LiPOD1(D1は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuなどから選ばれた少なくとも1種)などを挙げることができる。又は、前記酸化物系固体電解質として、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaなどから選ばれた少なくとも1種)なども使用することができる。
【0089】
前記高分子系固体電解質は、それぞれ独立的に溶媒化されたリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体高分子電解質であったり、有機溶媒及びリチウム塩を含有した有機電解液を高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質であり得る。
【0090】
例えば、前記固体高分子電解質は、イオン伝導性材質であって、通常、全固体電池の固体電解質材料として使用される高分子材料であれば特に限定されない。前記固体高分子電解質は、例えば、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン誘導体、アルキレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、又はイオン性解離基を含む重合体などを含むことができる。又は、前記固体高分子電解質は、高分子樹脂であって、PEO(polyethyleneoxide)主鎖にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリシロキサン及び/又はホスファゼンなどの無定形高分子を共単量体で共重合させた分枝状共重合体、くし状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂などを含むことができる。
【0091】
前記高分子ゲル電解質は、リチウム塩を含む有機電解液及び高分子樹脂を含むものであって、前記有機電解液は、高分子樹脂の重量を基準にして60重量部~400重量部含むものである。ゲル電解質に適用される高分子は、特定の成分に限定されないが、例えば、ポリビニルクロライド系(Polyvinylchloride、PVC)、ポリメチルメタクリレート(Poly(Methyl methacrylate)、PMMA)系、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidene fluoride、PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン(poly(vinylidene fluoride-hexafluoropropylene:PVDF-HFP)などを含むことができる。
【0092】
前記全固体電池用負極においては、コーティング層に分散されているリチウム親和物質上でリチウムプレーティングが起こり、前記イオン伝達層は、前記リチウムプレーティングによって凝集したリチウムが通過することを遮断することができる。したがって、プレーティングされたリチウムの成長は、前記イオン伝達層と前記コーティング層との間でのみ行われ得る。
【0093】
一つの具体的な例において、前記電極組立体は、一つの正極及び一つの負極を含むモノセル(mono-cell)であり得る。前記リチウム親和物質を含むコーティング層と前記非晶質炭素を含むイオン伝達層とを組み合わせた負極を備えており、リチウムデンドライトが正極側に成長することを防止するための目的を考慮したとき、前記全固体電池用負極においては、負極集電体の長方形の外面である第1面及び第2面のうち第1面にのみコーティング層及びイオン伝達層が形成され、前記第1面上に正極が配置され得る。
【0094】
上記のように負極の第1面にのみコーティング層及びイオン伝達層が形成される負極は、正極の両面のそれぞれに負極が配置されるC型バイセル(bi-cell)である場合にも適用可能であり、前記負極の第1面が正極と対面するように配置され得る。
【0095】
他の一つの具体的な例において、前記電極組立体は、負極の両面のそれぞれに正極が配置されるA型バイセルであり得る。前記リチウム親和物質を含むコーティング層と前記非晶質炭素を含むイオン伝達層とを組み合わせた負極を備えており、リチウムデンドライトが正極側に成長することを防止するための目的を考慮したとき、前記全固体電池用負極においては、負極集電体の長方形の外面である第1面及び第2面のそれぞれにコーティング層及びイオン伝達層が形成され、前記第1面及び第2面のそれぞれに第1正極及び第2正極が配置され得る。
【実施例】
【0096】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは、本発明のさらに容易な理解のためのものであって、本発明の範疇がそれによって限定されることはない。
【0097】
<実施例1>
全固体電池用正極を製造するために、正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、固体電解質としてアルジロダイト(Li6PS5Cl)、導電材としてファーネスブラック、及びバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比で準備し、アニソール(Anisole)に分散及び撹拌することによって正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを14μmの厚さのアルミニウム集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、100℃で12時間真空乾燥することによって正極を製造した。
【0098】
固体電解質層を製造するために、固体電解質としてアルジロダイト(Li6PS5Cl)とバインダーとしてポリテトラフルオロエチレンを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌することによって固体電解質層スラリーを製造した。これをポリエチレンテレフタレート離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することによって固体電解質層を製造した。
【0099】
コーティング層及びイオン伝達層を含む全固体電池用負極を製造するために、10μmの厚さのニッケル集電体上にAgを30nmの大きさでスパッタリングし、Ag層からなるコーティング層を形成した。その後、前記Ag層上にアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンが97:3の重量比で混合されたスラリーをコーティングすることによってイオン伝達層を形成した後で乾燥し、多層構造を有する負極を製造した。
【0100】
前記正極、固体電解質層及び負極を順次積層することによってリチウム二次電池を製造した。
【0101】
<実施例2>
イオン伝達層を製造するためにアセチレンブラックの代わりにファーネスブラックを使用したことを除いては、、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0102】
<比較例1>
負極として、コーティング層及びイオン伝達層を含まなく、ニッケル集電体を単独で使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0103】
<比較例2>
負極として、ニッケル集電体上にAgを30nmの大きさでスパッタリングし、コーティング層のみを形成したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0104】
<比較例3>
負極として、ニッケル集電体上にファーネスブラックとポリフッ化ビニリデンが97:3重量比で混合されたスラリーをコーティングし、イオン伝達層のみを形成したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0105】
<比較例4>
負極として、ニッケル集電体上に人造黒鉛とポリフッ化ビニリデンが97:3の重量比で混合されたスラリーをコーティングし、イオン伝達層のみを形成したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0106】
<比較例5>
イオン伝達層を製造するために天然黒鉛を使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0107】
<比較例6>
イオン伝達層を製造するために人造黒鉛を使用したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いてリチウム二次電池を製造した。
【0108】
<比較例7>
負極として、ファーネスブラックとAgが3:1の重量比で混合された混合物を製造し、前記混合物とポリフッ化ビニリデンが97:3の重量比で構成された混合層をニッケル集電体上に形成したことを除いては、前記実施例1と同一の方法を用いて電池を製造した。
【0109】
<比較例8>
負極として、ニッケル集電体上に前記実施例2で製造されたイオン伝達層を形成し、前記イオン伝達層上にコーティング層を形成したことを除いては、前記実施例2と同一の方法を用いて電池を製造した。
【0110】
<実験例1>
前記実施例1及び実施例2と比較例1乃至比較例8で製造された電池を用いて、60℃で4.25Vまで定電流-定電圧モードで0.05Cで充電し、3.0Vまで0.05Cで放電することによって初期充放電容量及び効率を測定した。このように測定された充電容量、放電容量、充放電効率、及びショート(short)発生率を下記の表1に記載した。
【0111】
【0112】
前記表1を参照すると、各実施例及び各比較例で製造された全てのリチウム二次電池においては、比較例1を除いて、充放電効率は類似する水準で測定された。
【0113】
負極として負極集電体のみを単独で使用した比較例1の場合は、核生成電位(nucleation potential)が高く、リチウムデンドライトの成長を抑制しにくいので、充放電効率が低く表れ、ショート発生率も最も高いことが分かる。
【0114】
負極集電体上にコーティング層のみが形成された比較例2と負極集電体上にイオン伝達層のみが形成された比較例3の場合は、比較例1に比べてショート発生率が大きく減少することを確認することができる。
【0115】
結晶質炭素を使用した比較例4、比較例5、及び比較例6の場合は、非常に高いショート発生率を示す。
【0116】
実施例1及び実施例2のように、集電体上にコーティング層及びイオン伝達層が順次形成された場合は、核生成電位を低下させることができ、リチウムデンドライトがイオン伝達層を貫通して成長できないので、ショートが発生しない。
【0117】
イオン伝達層とコーティング層とが混合された比較例7の場合は、ショート発生率が低く表れたが、下記の実験例2を参考にすると、充放電回数において問題があることが確認される。
【0118】
集電体上にイオン伝達層が形成され、前記イオン伝達層上にコーティング層が形成された比較例8の場合は、ショート発生率が依然として高く測定されるが、これは、イオン伝達層の表面及び/又はコーティング層上にリチウムが析出されるためであると見なされる。
【0119】
このように、イオン伝達層に非晶質炭素を使用する負極を含む場合は、安全性が向上したリチウム二次電池を製造することができる。
【0120】
<実験例2>
前記実施例1と実施例2及び比較例1乃至比較例8で製造された各電池の寿命特性を評価するために、電圧範囲4.2V乃至3.7Vで0.1C充電/0.1C放電の条件で充放電を行った。
【0121】
充放電は、ショートが発生するまで行い、下記の表2には、ショートが発生する直前までのサイクル回数及び容量維持率を記載した。
【0122】
【0123】
前記表2を参照すると、実施例1と実施例2の場合は、400回まで充放電を行うまでショートが発生しなかった。
【0124】
比較例1と比較すると、コーティング層が形成された比較例2とイオン伝達層が形成された比較例3において、充放電回数が増加し、寿命特性が向上したという効果が表れるが、実施例1及び実施例2と比較したとき、依然として低い容量維持率を示している。
【0125】
結晶質炭素を使用した比較例4、比較例5、及び比較例6の場合は、非常に低い充放電回数を示す。
【0126】
イオン伝達層とコーティング層とが混合された混合層を適用した比較例7の場合は、比較例2及び比較例3よりも容量維持率が改善された結果を示し、集電体、イオン伝達層及びコーティング層の順に形成された比較例8の場合は、比較例3よりもショート発生時点が遅延された結果を示しているが、実施例1及び実施例2の電池は、比較例7の電池より2倍以上、比較例8の電池より約8倍以上に寿命特性が向上することが分かる。
【0127】
イオン伝達層に結晶質黒鉛を使用した点のみが異なる比較例5及び比較例6の場合は、著しく低い充放電回数を示すだけでなく、容量維持率が70%~80%と表れる一方で、イオン伝達層に非晶質炭素を使用した実施例1と実施例2の場合は、400回の充放電でも80%以上の容量維持率を示している。
【0128】
したがって、非晶質炭素をイオン伝達層に含む場合は、サイクル特性が向上することを確認することができる。
【0129】
前記実施例2、比較例1乃至3、比較例6乃至8で製造された負極のSEM写真を
図2乃至
図9に示した。
図2は、実施例2で製造された負極のSEM写真で、
図3は、実施例2で製造された負極断面のSEM写真である。
図4、
図5、及び
図6は、それぞれ比較例1、2及び3で製造された負極のSEM写真で、
図7は、比較例6で製造された負極断面のSEM写真である。
図8及び
図9は、それぞれ比較例7及び8で製造された負極のSEM写真である。
【0130】
図2乃至
図9を参照すると、
図2(実施例2)と
図6(比較例3)の負極は、表面にイオン伝達層が形成された状態である。前記イオン伝達層の内部には多くのポア(pore)が形成されているので、リチウムイオンが負極方向に移動可能な形態であることが分かる。実施例2の場合は、コーティング層でのリチウムイオンの分布範囲が広くなり、これによって核生成電位が低くなるので、イオン伝達層を通過したリチウムイオンによってリチウム核が形成されにくく、リチウム核が形成されたとしても、前記イオン伝達層を貫通する程度には成長できない。したがって、0%のショート発生率が表れたと解釈することができる。
【0131】
しかし、コーティング層を含まない比較例3(
図6)の場合は、核生成電位が高く、局部的なリチウム核の成長が起こるので、比較例2(
図5)よりも寿命特性が低く表れる。
【0132】
図4(比較例1)の負極は、ニッケル集電体の表面であって、
図5(比較例2)と
図9(比較例8)は、負極の表面にコーティング層が形成された状態である。前記実験結果から分かるように、比較例8の場合は、比較例2よりもショート発生率が高く、寿命特性も劣悪であることが示される。
【0133】
図8(比較例7)の負極は、表面に混合層が形成された状態であるので、ショート発生率が0%と表れた。しかし、
図8(比較例7)の負極は、コーティング層上にイオン伝達層が形成された実施例1、2と比較したとき、劣悪な寿命特性を示している。
【0134】
図3は、実施例2で製造された負極断面のSEM写真で、
図7は、比較例6で製造された負極断面のSEM写真である。
【0135】
図3を参照すると、実施例2の負極は、ファーネスブラックを含むイオン伝達層で負極集電体(Ni foil)と対面する一側面にリチウムが電着したことを確認することができる。
【0136】
図7を参照すると、比較例6の負極は、人造黒鉛を含むイオン伝達層で負極集電体(Ni foil)と対面する面と反対側の一側面にリチウムが電着したことを確認することができる。
【0137】
すなわち、人造黒鉛などの結晶質黒鉛をイオン伝達層に含む場合は、正極と対面する方向のイオン伝達層の外面にリチウム電着が起こる。したがって、リチウムデンドライトが成長し、固体電解質層を貫通して正極と接触し得るので、短い充放電回数の経過後、ショートが起こるという結果が表れる。
【0138】
その一方で、ファーネスブラックなどの非晶質炭素を含むイオン伝達層を含む場合は、イオン伝達層の外面のうち負極集電体の方向にのみリチウム電着が行われるので、高いサイクル特性及び容量維持率を確保することができ、その結果、性能が向上したリチウム二次電池を提供することができる。
【0139】
本発明の属した分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、コーティング層及びイオン伝達層を含む全固体電池用負極及びこれを含むリチウム二次電池に関するものであって、具体的には、負極でリチウムプレーティングが局部的に起こることを防止し、リチウムの電着位置を特定することによって正極と負極との間で短絡が発生することを防止できる技術に関するものであるので、産業上に利用可能である。