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特許7578826遷移金属化合物、それを含む触媒、およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】遷移金属化合物、それを含む触媒、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20241029BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241029BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07F17/00 CSP
C08F4/6592
C07F7/00 Z
C07F7/00 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023531636
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 KR2021016637
(87)【国際公開番号】W WO2022114635
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0159425
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ウォン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン テホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク ランファ
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンヨン
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-528463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される遷移金属化合物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、lは、それぞれ独立して0~5の整数であり、この際、少なくとも1つは0ではなく、mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数であり、
Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、C6-20アリールアミド、C1-20スルホネート、またはC1-20スルホンアミドであり、
およびRのうち少なくとも1つは、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC1-20アルケニルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニル、置換もしくは非置換のC1-20シクロアルケニルC6-20アリール、および置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20シクロアルケニルの中から選択されるアルケニル基であり、この際、RおよびRのいずれか一方のみがアルケニル基である場合、RおよびRのいずれか他方は、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデンであってもよく、
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、
この際、R~Rは、それぞれ独立して、隣接する基が連結されて置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成してもよい。
【請求項2】
lは、それぞれ1であり、mおよびnは、それぞれ0または1であり、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれハロゲン、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであり、RおよびRは、それぞれ置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニルであり、R~Rは、それぞれ水素、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルである、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項3】
前記化学式1で表される遷移金属化合物は、下記化学式1-1~1-12で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである、請求項2に記載の遷移金属化合物。
[化学式1-1] [化学式1-2]
【化2】
[化学式1-3] [化学式1-4]
【化3】
[化学式1-5] [化学式1-6]
【化4】
[化学式1-7] [化学式1-8]
【化5】
[化学式1-9] [化学式1-10]
【化6】
[化学式1-11] [化学式1-12]
【化7】
前記化学式中、Meはメチルであり、t-Buはt-ブチルである。
【請求項4】
(1a)下記化学式2hで表される化合物と下記化学式3mで表される化合物を反応させて下記化学式4hで表される化合物を得るステップと、(2a)下記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式5mで表される化合物を得るステップと、(3a)下記化学式4hで表される化合物と下記化学式5mで表される化合物を反応させて下記化学式6hで表される化合物を得るステップと、(4a)下記化学式6hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、請求項1における説明と同様である)と反応させて下記化学式6で表される化合物を得るステップと、(5)下記化学式6で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式6mで表される化合物を得るステップと、(6)下記化学式6mで表される化合物と下記化学式7で表される化合物またはその錯体を反応させて下記化学式1hで表される遷移金属化合物を得るステップを含む、請求項1に記載の遷移金属化合物の製造方法。
[化学式2h]
【化8】
[化学式3m]
【化9】
[化学式4h]
【化10】
[化学式5]
【化11】
[化学式5m]
【化12】
[化学式6h]
【化13】
[化学式6]
【化14】
[化学式6m]
【化15】
[化学式7]
M(X
[化学式1h]
【化16】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、請求項1における説明と同様であり、Mtは、リチウム、カリウム、およびナトリウムのいずれか1つであり、YおよびYは、それぞれハロゲン、C1-20スルホネート、またはC1-20スルホンアミドであり、この際、YおよびYのいずれか1つは、RまたはRであってもよく、Xは、ハロゲン、C1-20スルホネート、C1-20スルホンアミド、C6-20アリールC1-20アルキル、またはC1-20アルキルアミドである。
【請求項5】
ステップ(3a)およびステップ(4a)の代わりに、(3b)前記化学式4hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、請求項1における説明と同様である)と反応させて下記化学式4で表される化合物を得るステップと、(4b)下記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得るステップを含む、請求項4に記載の遷移金属化合物の製造方法。
[化学式4]
【化17】
前記化学式中、l、m、およびR~Rは、請求項1における説明と同様である。
【請求項6】
ステップ(1a)~ステップ(4a)の代わりに、(2c)下記化学式2で表される化合物と前記化学式3mで表される化合物を反応させて前記化学式4で表される化合物を得るステップと、(3c)前記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて前記化学式5mで表される化合物を得るステップと、(4c)前記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得るステップを含む、請求項4に記載の遷移金属化合物の製造方法。
[化学式2]
【化18】
前記化学式中、l、R、およびRは、請求項1における説明と同様である。
【請求項7】
またはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、請求項1における説明と同様である)は、RまたはRで置換されたボロン酸、ボロン酸エステル、カリウムトリフルオロボレート(potassium trifluoroborate)、アルキルボラン(alkylborane)、ボリン酸、およびボリン酸エステルの中から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の遷移金属化合物の製造方法。
【請求項8】
前記化学式7で表される化合物は、HfClまたはZrClである、請求項4~6のいずれか一項に記載の遷移金属化合物の製造方法。
【請求項9】
(7a)前記化学式1hで表される化合物を下記化学式8aで表される化合物または下記化学式9で表される化合物と反応させて下記化学式1aで表される化合物を得るステップをさらに含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の遷移金属化合物の製造方法。
[化学式8a]
MgX
[化学式9]
Li
[化学式1a]
【化19】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、請求項1における説明と同様であり、Xは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、Xは、ハロゲンである。
【請求項10】
(7b)前記化学式1hで表される化合物を下記化学式8bで表される化合物と反応させて下記化学式1bで表される化合物を得るステップをさらに含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の遷移金属化合物の製造方法。
[化学式8b]
(RSiX
[化学式1b]
【化20】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、請求項1における説明と同様であり、Rは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、またはC6-20アリールC1-20アルキルであり、Xは、ハロゲンである。
【請求項11】
前記化学式8aで表される化合物がMeMgBrであり、前記化学式9で表される化合物がMeLiである、請求項9に記載の遷移金属化合物の製造方法。
【請求項12】
前記化学式8bで表される化合物が(Me)SiClである、請求項10に記載の遷移金属化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の遷移金属化合物と、助触媒化合物と、を含む、オレフィン重合用触媒。
【請求項14】
前記助触媒化合物は、下記化学式10で表される化合物、下記化学式11で表される化合物、および下記化学式12で表される化合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項13に記載のオレフィン重合用触媒。
[化学式10]
【化21】
[化学式11]
【化22】
[化学式12]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
前記化学式10中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基であり、
前記化学式11中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基であり、
前記化学式12中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-20アリール基であるか、または置換もしくは非置換のC1-20アルキル基である。
【請求項15】
前記化学式10で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項16】
前記化学式11で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項17】
前記化学式12で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、およびトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項18】
遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含む、請求項13に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項19】
前記担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項18に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項20】
前記担体に担持される遷移金属化合物の総量が担体1gを基準として0.001~1mmoleであり、前記担体に担持される助触媒化合物の総量が担体1gを基準として2~15mmoleである、請求項18に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項21】
請求項1~3のいずれか一項に記載の遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担体に担持させるステップを含む、オレフィン重合用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物、それを含むオレフィン重合用触媒、およびそれらの製造方法に関する。具体的に、本発明は、置換されたビスフェニル基を有する炭素ブリッジ(carbon-bridged)のシクロペンタジエニルとフルオレニル(fluorenyl)骨格を有する遷移金属化合物、それを含むオレフィン重合用触媒、並びに当該遷移金属化合物および触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系重合体は、実生活において買い物袋、ビニールハウス、漁網、タバコ包装紙、麺袋、ヨーグルトボトル、電池ケース、自動車バンパー、内装材、靴底、洗濯機などの材料として幅広く用いられている。
【0003】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン-α-オレフィン共重合体のようなポリオレフィン系重合体とこれらの共重合体は、チタン化合物とアルキルアルミニウム化合物とからなるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒のような不均一系触媒により製造されていた。
【0004】
近年、触媒活性が非常に高い均一系触媒であるメタロセン触媒を用いたポリオレフィンの製造方法が研究されている。メタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合した化合物として、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。この際、リガンドの形態と中心金属の種類に応じて様々な分子構造を有する。
【0005】
不均一系触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒は、活性点である金属成分が不活性の固体表面に分散し、活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する1つの化合物であるため、全ての活性点が同一の重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。
【0006】
一般的に、メタロセン触媒は、それ自体だけでは重合触媒としての活性がないため、メチルアルミノキサンなどの助触媒とともに用いられる。助触媒の作用によりメタロセン触媒がカチオンに活性化されるとともに、助触媒がメタロセン触媒に配位していないアニオンとして不飽和のカチオン活性種を安定化させ、各種オレフィン重合に活性を有する触媒系を形成する。
【0007】
このようなメタロセン触媒は、共重合が容易であり、触媒の対称性に応じて重合体の立体構造を調節することができ、それより製造された高分子は、分子量分布が狭く、共単量体の分布が均一であるという利点を有する。
しかし、活性が高く、共重合性がさらに向上し、高分子量樹脂を製造できるオレフィン重合用メタロセン触媒が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、活性が高く、優れた物性を有する樹脂の製造が可能であり、新規な構造を有するオレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびそれを含むオレフィン重合用触媒を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記遷移金属化合物およびそれを含むオレフィン重合用触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するための実施形態によると、下記化学式1で表される遷移金属化合物が提供される。
【0011】
[化学式1]
【化1】
【0012】
前記化学式1中、lは、それぞれ独立して0~5の整数であり、この際、少なくとも1つは0ではなく、mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数であり、
Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、C6-20アリールアミド、C1-20スルホネート、またはC1-20スルホンアミドであり、
およびRのうち少なくとも1つは、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC1-20アルケニルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニル、置換もしくは非置換のC1-20シクロアルケニルC6-20アリール、および置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20シクロアルケニルの中から選択されるアルケニル基であり、この際、RおよびRのいずれか一方のみがアルケニル基である場合、RおよびRのいずれか他方は、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、置換もしくは非置換のC1-20シリルであってもよく、
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、
この際、R~Rは、それぞれ独立して、隣接する基が連結されて置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成してもよい。
【0013】
本発明の具体例において、前記化学式1中、lは、それぞれ1であり、mおよびnは、それぞれ0または1であり、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれハロゲン、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであり、RおよびRは、それぞれ置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニルであり、R~Rは、それぞれ水素、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであってもよい。
【0014】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式1で表される遷移金属化合物は、下記化学式1-1~1-12で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである。
【0015】
[化学式1-1] [化学式1-2]
【化2】
【0016】
[化学式1-3] [化学式1-4]
【化3】
【0017】
[化学式1-5] [化学式1-6]
【化4】
【0018】
[化学式1-7] [化学式1-8]
【化5】
【0019】
[化学式1-9] [化学式1-10]
【化6】
【0020】
[化学式1-11] [化学式1-12]
【化7】
前記化学式中、Meはメチルであり、t-Buはt-ブチルである。
【0021】
本発明の実施形態によると、(1a)下記化学式2hで表される化合物と下記化学式3mで表される化合物を反応させて下記化学式4hで表される化合物を得るステップと、(2a)下記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式5mで表される化合物を得るステップと、(3a)下記化学式4hで表される化合物と下記化学式5mで表される化合物を反応させて下記化学式6hで表される化合物を得るステップと、(4a)下記化学式6hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である)と反応させて下記化学式6で表される化合物を得るステップと、(5)下記化学式6で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式6mで表される化合物を得るステップと、(6)下記化学式6mで表される化合物と下記化学式7で表される化合物またはその錯体を反応させて下記化学式1hで表される遷移金属化合物を得るステップを含む、遷移金属化合物の製造方法が提供される。
【0022】
[化学式2h]
【化8】
【0023】
[化学式3m]
【化9】
【0024】
[化学式4h]
【化10】
【0025】
[化学式5]
【化11】
【0026】
[化学式5m]
【化12】
【0027】
[化学式6h]
【化13】
【0028】
[化学式6]
【化14】
【0029】
[化学式6m]
【化15】
【0030】
[化学式7]
M(X
【0031】
[化学式1h]
【化16】
【0032】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様であり、Mtは、リチウム、カリウム、およびナトリウムのいずれか1つであり、YおよびYは、それぞれハロゲン、C1-20スルホネート、またはC1-20スルホンアミドであり、この際、YおよびYのいずれか1つは、RまたはRであってもよく、Xは、ハロゲン、C1-20スルホネート、C1-20スルホンアミド、C6-20アリールC1-20アルキル、またはC1-20アルキルアミドである。
【0033】
本発明の具体例において、前記遷移金属化合物の製造方法は、ステップ(3a)およびステップ(4a)の代わりに、(3b)前記化学式4hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である)と反応させて下記化学式4で表される化合物を得るステップと、(4b)下記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得るステップを含んでもよい。
【0034】
[化学式4]
【化17】
【0035】
前記化学式中、l、m、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である。
【0036】
本発明の具体例において、前記遷移金属化合物の製造方法は、ステップ(1a)~ステップ(4a)の代わりに、(2c)下記化学式2で表される化合物と前記化学式3mで表される化合物を反応させて前記化学式4で表される化合物を得るステップと、(3c)前記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて前記化学式5mで表される化合物を得るステップと、(4c)前記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得るステップを含んでもよい。
【0037】
[化学式2]
【化18】
【0038】
前記化学式中、l、R、およびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である。
【0039】
本発明の具体例において、RまたはRで置換された有機ボロン化合物は、RまたはRで置換されたボロン酸、ボロン酸エステル、カリウムトリフルオロボレート(potassium trifluoroborate)、アルキルボラン(alkylborane)、ボリン酸、およびボリン酸エステルの中から選択されてもよい。
本発明の具体例において、前記化学式7で表される化合物は、HfClまたはZrClであってもよい。
【0040】
本発明の具体例において、前記遷移金属化合物の製造方法は、(7a)前記化学式1hで表される化合物を下記化学式8aで表される化合物または下記化学式9で表される化合物と反応させて下記化学式1aで表される化合物を得るステップをさらに含んでもよい。
【0041】
[化学式8a]
MgX
【0042】
[化学式9]
Li
【0043】
[化学式1a]
【化19】
【0044】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様であり、Xは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、Xは、ハロゲンである。
【0045】
本発明の具体例において、前記遷移金属化合物の製造方法は、(7b)前記化学式1hで表される化合物を下記化学式8bで表される化合物と反応させて下記化学式1bで表される化合物を得るステップをさらに含んでもよい。
【0046】
[化学式8b]
(RSiX
【0047】
[化学式1b]
【化20】
【0048】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様であり、Rは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、またはC6-20アリールC1-20アルキルであり、Xは、ハロゲンである。
【0049】
本発明の具体例において、前記化学式8aで表される化合物がMeMgBrであり、前記化学式9で表される化合物がMeLiであってもよい。また、前記化学式8bで表される化合物が(Me)SiClであってもよい。
【0050】
本発明の他の目的を達成するための一実施形態によると、前記化学式1で表される遷移金属化合物と、助触媒化合物と、を含む、オレフィン重合用触媒が提供される。
【0051】
本発明のまた他の目的を達成するための一実施形態によると、前記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担体に担持させるステップを含む、オレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0052】
本発明の具体例による遷移金属化合物およびそれを含むオレフィン重合用触媒は、特異な立体構造を有するため、重合体の分子量および共重合性の調節が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
遷移金属化合物
本発明の一具体例によると、下記化学式1で表される遷移金属化合物が提供される。
【0054】
[化学式1]
【化21】
【0055】
前記化学式1中、lは、それぞれ独立して0~5の整数であり、この際、少なくとも1つは0ではなく、mおよびnは、それぞれ独立して0~4の整数である。具体的に、lはそれぞれ0または1であり、この際、少なくとも1つは0ではなく、mおよびnはそれぞれ0または1である。好ましくは、lはそれぞれ1であり、mおよびnはそれぞれ0または1である。
【0056】
Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)である。具体的に、Mは、ハフニウムまたはジルコニウムであってもよい。
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、C6-20アリールアミド、C1-20スルホネート、またはC1-20スルホンアミドである。具体的に、Xは、それぞれハロゲン、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであってもよい。
【0057】
およびRのうち少なくとも1つは、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC1-20アルケニルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニル、置換もしくは非置換のC1-20シクロアルケニルC6-20アリール、および置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20シクロアルケニルの中から選択されるアルケニル基であり、この際、RおよびRのいずれか一方のみがアルケニル基である場合、RおよびRのいずれか他方は、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、置換もしくは非置換のC1-20シリルであってもよい。
【0058】
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、置換もしくは非置換のC1-20シリルである。
また、R~Rは、それぞれ独立して、隣接する基が連結されて置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成してもよい。
【0059】
本発明の具体例において、前記化学式1中、lは、それぞれ1であり、mおよびnは、それぞれ0または1であり、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれハロゲン、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであり、RおよびRは、それぞれ置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニルであり、R~Rは、それぞれ水素、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであってもよい。
【0060】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式1で表される遷移金属化合物は、下記化学式1-1~1-12で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【0061】
[化学式1-1] [化学式1-2]
【化22】
【0062】
[化学式1-3] [化学式1-4]
【化23】
【0063】
[化学式1-5] [化学式1-6]
【化24】
【0064】
[化学式1-7] [化学式1-8]
【化25】
【0065】
[化学式1-9] [化学式1-10]
【化26】
【0066】
[化学式1-11] [化学式1-12]
【化27】
前記化学式中、Meはメチルであり、t-Buはt-ブチルである。
【0067】
遷移金属化合物の製造方法
本発明の実施形態に係る遷移金属化合物は、(1a)下記化学式2hで表される化合物と下記化学式3mで表される化合物を反応させて下記化学式4hで表される化合物を得るステップと、(2a)下記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式5mで表される化合物を得るステップと、(3a)下記化学式4hで表される化合物と下記化学式5mで表される化合物を反応させて下記化学式6hで表される化合物を得るステップと、(4a)下記化学式6hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である)と反応させて下記化学式6で表される化合物を得るステップと、(5)下記化学式6で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式6mで表される化合物を得るステップと、(6)下記化学式6mで表される化合物と下記化学式7で表される化合物またはその錯体を反応させて下記化学式1hで表される遷移金属化合物を得るステップを含む製造方法により製造することができる。
【0068】
[化学式2h]
【化28】
【0069】
[化学式3m]
【化29】
【0070】
[化学式4h]
【化30】
【0071】
[化学式5]
【化31】
【0072】
[化学式5m]
【化32】
【0073】
[化学式6h]
【化33】
【0074】
[化学式6]
【化34】
【0075】
[化学式6m]
【化35】
【0076】
[化学式7]
M(X
【0077】
[化学式1h]
【化36】
【0078】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様であり、Mtは、リチウム、カリウム、およびナトリウムのいずれか1つであり、YおよびYは、それぞれハロゲン、C1-20スルホネート、またはC1-20スルホンアミドであり、この際、YおよびYのいずれか1つは、RまたはRであってもよく、Xは、ハロゲン、C1-20スルホネート、C1-20スルホンアミド、C1-20アリールC1-20アルキル、またはC1-20アルキルアミドである。
【0079】
ステップ(1a)
前記ステップ(1a)において、前記化学式2hで表される化合物と前記化学式3mで表される化合物を反応させて前記化学式4hで表される化合物を得る。
本発明の具体例において、前記化学式中、lはそれぞれ1であり、mは0であり、YおよびYは臭素であってもよい。
【0080】
本発明の具体例において、前記化学式2hで表される化合物と前記化学式3mで表される化合物は、反応前に溶媒に溶解してもよい。ここで、溶媒は、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、およびエチルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。好ましくは、前記溶媒がテトラヒドロフランであってもよい。
【0081】
化学式2hで表される化合物と化学式3mで表される化合物を混合する際の温度は-78℃~30℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は-40℃~10℃であってもよい。最も好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は約-30℃であってもよい。
【0082】
化学式2hで表される化合物と化学式3mで表される化合物を混合した後、-78℃~80℃の温度、好ましくは-40℃~60℃の温度、より好ましくは常温に徐々に上げ、1~24時間、好ましくは1~12時間、より好ましくは1~6時間撹拌下で反応させる。
【0083】
例えば蒸留水を添加して反応を終了させ、生成物を例えばジクロロメタンのような溶媒で抽出し、例えば無水硫酸ナトリウムで水分を除去した後に減圧濃縮する。次いで、生成物を例えばジクロロメタンとメタノールを用いて再結晶し、前記化学式4hで表される化合物を得ることができる。
【0084】
ステップ(2a)
前記ステップ(2a)において、前記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて前記化学式5mで表される化合物を得る。
【0085】
本発明の具体例において、前記化学式中、nは、それぞれ1であり、RおよびRは、それぞれ置換もしくは非置換のC1-20アルキルであってもよい。好ましくは、RおよびRは、それぞれt-ブチルであってもよい。
【0086】
本発明の具体例において、リチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つは、n-ブチルリチウム(n-butyl lithium)、メチルリチウム(methyl lithium)、ナトリウムアミド(sodium amide)、および水酸化カリウム(potassium hydroxide)のうち少なくとも1つを含んでもよい。好ましくは、リチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つがn-ブチルリチウムであってもよい。
【0087】
本発明の具体例において、前記化学式5で表される化合物とリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つは、反応前に溶媒に溶解してもよい。ここで、溶媒は、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、およびエチルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。好ましくは、化学式5で表される化合物はヘキサンとエーテルの混合溶液に、リチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つはヘキサンに溶解してもよい。
【0088】
化学式5で表される化合物とリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つを混合する際の温度は-78℃~30℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は-40℃~10℃であってもよい。最も好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は約-30℃であってもよい。
【0089】
化学式5で表される化合物とリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つを混合した後、-78℃~80℃の温度、好ましくは-40℃~60℃の温度、より好ましくは常温に徐々に上げ、1~48時間、好ましくは12~32時間、より好ましくは18~30時間撹拌下で反応させる。
生成物を減圧濃縮し、真空下で溶媒を除去した後、例えばヘキサンで洗浄し、前記化学式5mで表される化合物を得ることができる。
【0090】
ステップ(3a)
前記ステップ(3a)において、前記化学式4hで表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6hで表される化合物を得る。
【0091】
本発明の具体例において、前記化学式4hで表される化合物と前記化学式5mで表される化合物は、反応前に溶媒に溶解してもよい。ここで、溶媒は、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、およびエチルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。好ましくは、前記溶媒がジエチルエーテルであってもよい。
【0092】
化学式4hで表される化合物と化学式5mで表される化合物を混合する際の温度は-78℃~30℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は-40℃~10℃であってもよい。最も好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は約-30℃であってもよい。
【0093】
化学式4hで表される化合物と化学式5mで表される化合物を混合した後、-78℃~80℃の温度、好ましくは-40℃~60℃の温度、より好ましくは常温に徐々に上げ、1~48時間、好ましくは12~32時間、より好ましくは18~30時間撹拌下で反応させる。次いで、過量の蒸留水を添加し、約10分間撹拌する。
得られたスラリーを濾過し、例えばヘキサンのような溶媒で洗浄し、前記化学式6hで表される化合物を得ることができる。
【0094】
ステップ(4a)
前記ステップ(4a)において、前記化学式6hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物と反応させて前記化学式6で表される化合物を得る。ここで、RおよびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である。
【0095】
本発明の具体例において、有機ボロン化合物に置換されたRおよびRは同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。具体的に、RおよびRは、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニルであってもよい。
【0096】
またはRで置換された有機ボロン化合物は、RまたはRで置換されたボロン酸、ボロン酸エステル、カリウムトリフルオロボレート、アルキルボラン、ボリン酸、およびボリン酸エステルの中から選択されてもよい。
【0097】
本発明の好ましい具体例において、有機ボロン化合物は、RまたはRで置換されたボロン酸として、イソプロペニルボロン酸、ビニルボロン酸、3-メチル-2-ブテン-2イルボロン酸(3-methyl-2-buten-2-ylboronic acid)、1-フェニルビニルボロン酸(1-phenylvinylboronic acid)、シクロペンテン-1-イルボロン酸(cyclopenten-1-ylboronic acid)、および1-シクロヘキセン-1-イルボロン酸(1-cyclohexen-1-yl-boronic acid)のうち少なくとも1つを含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0098】
本発明の具体例において、化学式6hで表される化合物とRまたはRで置換された有機ボロン化合物の反応は、炭酸カリウム、リン酸カリウム、t-ブトキシドカリウム、メトキシドナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、t-ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine)などの塩基性物質と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム(II)アセテート、NaPdCl、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)のような触媒の存在下で行われてもよい。
【0099】
本発明の具体例において、ステップ(4a)の反応は、溶媒中で行われてもよい。ここで、溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフランと水の混合溶媒であってもよい。
【0100】
上述の化合物を溶媒中で混合した後、0℃~120℃の温度、より好ましくは25℃~80℃の温度、最も好ましくは約70℃の温度で、1~24時間、好ましくは1~12時間、より好ましくは1~5時間撹拌下で反応させる。
【0101】
反応完了後、分液漏斗を用いて有機層を集め、減圧濃縮後、例えば無水硫酸ナトリウムで水分を除去する。次いで、生成物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、前記化学式6で表される化合物を得ることができる。
【0102】
ステップ(5)
前記ステップ(5)において、前記化学式6で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて前記化学式6mで表される化合物を得る。
ここで、リチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つは、前記ステップ(2a)における説明と同様である。
【0103】
本発明の具体例において、前記化学式6で表される化合物とリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つは、反応前に溶媒に溶解してもよい。ここで、溶媒は、前記ステップ(2a)における説明と同様である。
【0104】
化学式6で表される化合物とリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つを混合する温度、これらの混合後の反応温度および時間は、前記ステップ(2a)における説明と同様である。
反応終了後、真空下で溶媒を除去し、得られた生成物を例えばヘキサンで洗浄し、前記化学式6mで表される化合物を得ることができる。
【0105】
ステップ(6)
前記ステップ(6)において、前記化学式6mで表される化合物と前記化学式7で表される化合物またはその錯体を反応させて前記化学式1hで表される遷移金属化合物を得る。
【0106】
本発明の具体例において、前記化学式7で表される化合物は、HfClおよびZrClのうち少なくとも1つを含んでもよい。より好ましくは、前記化学式7で表される化合物は、HfClまたはZrClであってもよい。この場合、前記化学式1h中、Xは塩素であってもよい。
【0107】
本発明の具体例において、前記化学式6mで表される化合物と前記化学式7で表される化合物またはその錯体は、反応前に溶媒に溶解してもよい。ここで、溶媒は、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、およびエチルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。好ましくは、前記溶媒がトルエンであってもよい。
【0108】
化学式6mで表される化合物と化学式7で表される化合物またはその錯体を混合する際の温度は-78℃~30℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は-40℃~10℃であってもよい。最も好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は約-30℃であってもよい。
【0109】
化学式6mで表される化合物と化学式7で表される化合物またはその錯体を混合した後、-78℃~80℃の温度、好ましくは-40℃~60℃の温度、より好ましくは常温に徐々に上げ、1~96時間、好ましくは18~78時間、より好ましくは24~72時間撹拌下で反応させる。
生成物を例えばセライト(celite)を通して濾過し、真空下で溶媒を除去し、前記化学式1hで表される遷移金属化合物を得ることができる。
【0110】
本発明の選択的な具体例において、本発明の実施形態に係る遷移金属化合物の製造方法において、前記化学式6で表される化合物は、他の方法により得られてもよい。
【0111】
具体的に、本発明の実施形態に係る遷移金属化合物の製造方法は、ステップ(3a)およびステップ(4a)の代わりに、(3b)前記化学式4hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物(ここで、RおよびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である)と反応させて下記化学式4で表される化合物を得るステップと、(4b)下記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得るステップを含んでもよい。
【0112】
[化学式4]
【化37】
【0113】
前記化学式中、l、m、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である。
【0114】
ステップ(3b)
前記ステップ(3b)において、前記化学式4hで表される化合物をRまたはRで置換された有機ボロン化合物と反応させて前記化学式4で表される化合物を得る。ここで、RまたはRで置換された有機ボロン化合物は、前記ステップ(4a)における説明と同様である。また、化学式4hで表される化合物と有機ボロン化合物の具体的な反応条件は、前記ステップ(4a)と実質的に同様である。
【0115】
ステップ(4b)
前記ステップ(4b)において、前記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得る。ここで、化学式4で表される化合物と化学式5mで表される化合物の具体的な反応条件は、前記ステップ(3a)と実質的に同様である。
【0116】
本発明の選択的な具体例において、本発明の実施形態に係る遷移金属化合物の製造方法において、前記化学式6で表される化合物は、また他の方法により得られてもよい。
【0117】
具体的に、本発明の実施形態に係る遷移金属化合物の製造方法は、ステップ(1a)~ステップ(4a)の代わりに、(2c)下記化学式2で表される化合物と前記化学式3mで表される化合物を反応させて前記化学式4で表される化合物を得るステップと、(3c)前記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて前記化学式5mで表される化合物を得るステップと、(4c)前記化学式4で表される化合物と前記化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得るステップを含んでもよい。
【0118】
[化学式2]
【化38】
【0119】
前記化学式中、l、R、およびRは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様である。
【0120】
ステップ(2c)
前記ステップ(2c)において、前記化学式2で表される化合物と前記化学式3mで表される化合物を反応させて前記化学式4で表される化合物を得る。ここで、前記化学式2で表される化合物と前記化学式3mで表される化合物の具体的な反応条件は、前記ステップ(1a)の反応条件と実質的に同様である。
【0121】
ステップ(3c)
前記ステップ(3c)において、前記化学式5で表される化合物をリチウム化合物、カリウム化合物、およびナトリウム化合物のうち少なくとも1つと反応させて下記化学式5mで表される化合物を得る。ステップ(3c)の具体的な条件は、前記ステップ(2a)と実質的に同様である。
【0122】
ステップ(4c)
前記ステップ(4c)において、前記化学式4で表される化合物と化学式5mで表される化合物を反応させて前記化学式6で表される化合物を得る。ステップ(4c)の具体的な条件は、前記ステップ(3a)と実質的に同様である。
【0123】
本発明の具体例において、前記遷移金属化合物の製造方法は、(7a)前記化学式1hで表される化合物を下記化学式8aで表される化合物または下記化学式9で表される化合物と反応させて下記化学式1aで表される化合物を得るステップをさらに含んでもよい。
【0124】
[化学式8a]
MgX
【0125】
[化学式9]
Li
【0126】
[化学式1a]
【化39】
【0127】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様であり、Xは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、Xは、ハロゲンである。
【0128】
本発明の具体例において、前記遷移金属化合物の製造方法は、(7b)前記化学式1hで表される化合物を下記化学式8bで表される化合物と反応させて下記化学式1bで表される化合物を得るステップをさらに含んでもよい。
【0129】
[化学式8b]
(RSiX
【0130】
[化学式1b]
【化40】
【0131】
前記化学式中、l、m、n、M、およびR~Rは、前記遷移金属化合物の項目における説明と同様であり、Rは、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、またはC6-20アリールC1-20アルキルであり、Xは、ハロゲンである。
【0132】
本発明の具体例において、前記化学式8aで表される化合物がMeMgBrであり、前記化学式9で表される化合物がMeLiであってもよい。また、前記化学式8bで表される化合物が(Me)SiClであってもよい。
【0133】
本発明の具体例において、前記化学式1hで表される化合物と前記化学式8aまたは8bで表される化合物または化学式9で表される化合物は、反応前に溶媒に溶解してもよい。ここで、溶媒は、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、およびエチルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよいが、特にこれらに限定されるものではない。好ましくは、化学式1hで表される化合物はトルエンに、化学式8aまたは8bで表される化合物または化学式9で表される化合物はヘキサンに溶解してもよい。
【0134】
化学式1hで表される化合物と化学式8aまたは8bで表される化合物または化学式9で表される化合物を混合する際の温度は-78℃~30℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は-40℃~10℃であってもよい。最も好ましくは、この2つの化合物を混合する際の温度は約-30℃であってもよい。
【0135】
化学式1hで表される化合物と化学式8aまたは8bで表される化合物または化学式9で表される化合物は、混合後、-78℃~80℃の温度、好ましくは-40℃~60℃の温度、より好ましくは常温に徐々に上げ、1~48時間、好ましくは4~30時間、より好ましくは6~24時間撹拌下で反応させる。
【0136】
反応終了後、真空下で溶媒を除去し、例えばヘキサンに溶解した後、例えばセライト(celite)を通して濾過する。得られた溶液から真空下で溶媒を除去し、前記化学式1aで表される遷移金属化合物を得ることができる。
【0137】
オレフィン重合用触媒
本発明の他の目的を達成するために、下記化学式1で表される遷移金属化合物と、助触媒化合物と、を含む、オレフィン重合用触媒が提供される。
【0138】
[化学式1]
【化41】
【0139】
前記化学式1中、l、m、n、M、X、およびR~Rは、前記遷移金属化合物項目における説明と同様である。
【0140】
本発明の具体例において、前記化学式1中、lは、それぞれ1であり、mおよびnは、それぞれ0または1であり、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれハロゲン、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであり、RおよびRは、それぞれ置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC2-20シクロアルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルケニルであり、R~Rは、それぞれ水素、または置換もしくは非置換のC1-20アルキルであってもよい。
【0141】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式1で表される遷移金属化合物は、下記化学式1-1~1-12で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである。
【0142】
[化学式1-1] [化学式1-2]
【化42】
【0143】
[化学式1-3] [化学式1-4]
【化43】
【0144】
[化学式1-5] [化学式1-6]
【化44】
【0145】
[化学式1-7] [化学式1-8]
【化45】
【0146】
[化学式1-9] [化学式1-10]
【化46】
【0147】
[化学式1-11] [化学式1-12]
【化47】
前記化学式中、Meはメチルであり、t-Buはt-ブチルである。
【0148】
一方、助触媒化合物は、下記化学式10で表される化合物、下記化学式11で表される化合物、および下記化学式12で表される化合物からなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。
【0149】
[化学式10]
【化48】
【0150】
前記化学式10中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素であってもよい。具体的に、Rは、メチル、エチル、n-ブチル、またはイソブチルであってもよい。
【0151】
[化学式11]
【化49】
【0152】
前記化学式11中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基である。具体的に、Dがアルミニウム(Al)である際、R、R、およびRは、それぞれ独立して、メチルまたはイソブチルであってもよく、Dがボロン(B)である際、R、R、およびRは、それぞれペンタフルオロフェニルであってもよい。
【0153】
[化学式12]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0154】
前記化学式12中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-20アリール基であるか、または置換もしくは非置換のC1-20アルキル基である。具体的に、[L-H]は、ジメチルアニリニウムカチオンであってもよく、[Z(A)は、[B(C]-であってもよく、[L]は、[(CC]であってもよい。
【0155】
本発明の具体例において、前記化学式10で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0156】
本発明の具体例において、前記化学式11で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0157】
本発明の具体例において、前記化学式12で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどが挙げられる。
【0158】
本発明の具体例において、オレフィン重合用触媒は、遷移金属化合物を担持する担体をさらに含んでもよい。具体的に、担体は、遷移金属化合物および助触媒化合物の両方を担持してもよい。
【0159】
この際、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含んでもよく、好ましくは、乾燥して表面に水分が除去された、反応性の大きいヒドロキシ基とシロキサン基を有する物質が用いられてもよい。例えば、担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。具体的に、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが担体として用いられてもよく、通常、これらはNaO、KCO、BaSO、およびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有してもよい。また、これらは炭素、ゼオライト、塩化マグネシウムなどを含んでもよい。ただし、担体は、これらに限定されず、遷移金属化合物と助触媒化合物を担持可能であれば特に限定されない。
【0160】
担体は、平均粒度が10~250μmであってもよく、好ましくは、平均粒度が10~150μmであってもよく、より好ましくは20~100μmであってもよい。
【0161】
担体の微細気孔の体積は0.1~10cc/gであってもよく、好ましくは0.5~5cc/gであってもよく、より好ましくは1.0~3.0cc/gであってもよい。
【0162】
担体の比表面積は1~1,000m/gであってもよく、好ましくは100~800m/gであってもよく、より好ましくは200~600m/gであってもよい。
【0163】
好ましい一実施形態において、担体がシリカである場合、シリカは、乾燥温度が常温~900℃であってもよい。乾燥温度は、好ましくは常温~800℃、より好ましくは常温~700℃であってもよい。乾燥温度が常温よりも低い場合には、水分が多すぎるため、表面の水分と助触媒が反応し、900℃を超えると、担体の構造が崩壊し得る。
【0164】
乾燥されたシリカ中のヒドロキシ基の濃度は0.1~5mmole/gであってもよく、好ましくは0.7~4mmole/gであってもよく、より好ましくは1.0~2mmole/gであってもよい。ヒドロキシ基の濃度が0.1mmole/g未満であると、助触媒の担持量が低くなり、5mmole/gを超えると、触媒成分が不活性化する問題が生じ得る。
【0165】
担体に担持される遷移金属化合物の総量は、担体1gを基準として0.001~1mmoleであってもよい。遷移金属化合物と担体との比が上記範囲を満たすと、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0166】
担体に担持される助触媒化合物の総量は、担体1gを基準として2~15mmoleであってもよい。助触媒化合物と担体との比が上記範囲を満たすと、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0167】
担体は、1種または2種以上が用いられてもよい。例えば、1種の担体に遷移金属化合物および助触媒化合物の両方が担持されてもよく、2種以上の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物がそれぞれ担持されてもよい。また、遷移金属化合物および助触媒化合物のいずれか1つのみが担体に担持されてもよい。
【0168】
オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明の他の目的を達成するために、本発明の実施形態に係る遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担体に担持させるステップを含む、オレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
本発明の実施形態に係る遷移金属化合物および助触媒化合物は、前記オレフィン重合用触媒の項目における説明と同様である。
【0169】
本発明の具体例において、遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持する方法として、物理的吸着方法または化学的吸着方法が用いられてもよい。
【0170】
例えば、物理的吸着方法は、遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥する方法、遷移金属化合物と助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥する方法、または遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥することで遷移金属化合物が担持された担体を製造し、これとは別に、助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥することで助触媒化合物が担持された担体を製造した後、これらを混合する方法などであってもよい。
【0171】
化学的吸着方法は、担体の表面に助触媒化合物を先に担持させた後、助触媒化合物に遷移金属化合物を担持させる方法、または担体表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカ表面のヒドロキシ基(-OH))と遷移金属化合物を共有結合させる方法などであってもよい。
【0172】
ここで、遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持させる際に用いられる溶媒は特に限定されない。例えば、溶媒は、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒、アセトン、およびエチルアセテートからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0173】
好ましい一実施形態において、担体に遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持させる過程は、0~100℃の温度、好ましくは室温~90℃の温度で行われてもよい。
【0174】
また、担体に遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持させる過程は、遷移金属化合物および/または助触媒化合物と担体の混合物を1分~24時間、好ましくは5分~15時間十分に撹拌することで行われてもよい。
【0175】
オレフィンの重合
本発明の実施形態に係るオレフィン重合用触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を製造することができる。
【0176】
ここで、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)、またはオレフィン系単量体と共単量体との共重合体(copolymer)であってもよい。
【0177】
本発明の具体例において、オレフィン系単量体は、C2-20α-オレフィン(α-olefin)、C1-20ジオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)、およびC3-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0178】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、または1-ヘキサデセンなどであってもよく、オレフィン系重合体は、上記で例示したオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体であるか、または2種以上含む共重合体であってもよい。
【0179】
例示的な実施形態において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20α-オレフィンが共重合された共重合体であってもよく、エチレンとC4-8α-オレフィンが共重合された共重合体が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0180】
この場合、エチレンの含量は55~99.9重量%であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましい。α-オレフィン系共単量体の含量は0.1~45重量%であることが好ましく、10~40重量%であることがより好ましい。
【0181】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、カチオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0182】
好ましい実施形態として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、またはスラリー重合法などにより製造されてもよい。オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法により製造される場合、使用可能な溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0183】
実施例
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0184】
実施例1:化学式1-1の遷移金属化合物の製造
下記反応式1にまとめた合成手順に従って化学式1-1の遷移金属化合物を製造した。
【0185】
[反応式1]
【化50】
【0186】
ステップ1:6,6-ジ(4-ブロモフェニル)フルベン(6,6-di(4-bromophenyl)fulvene;化学式4-1)の合成
4,4’-ジブロモベンゾフェノン(4,4’-dibromobenzophenone;化学式2-1h)(10g、29mmole)をテトラヒドロフラン(THF)(73.5ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却した後、ナトリウムシクロペンタメチルシクロペンタジエニド(sodium pentamethylcyclopentadienide;NaCp;化学式3-1m)(THF中に2.0M、17.6ml)溶液を徐々に添加した。温度を徐々に常温に上げて3時間撹拌した後、蒸留水(10ml)を添加して反応を終結させた。ジクロロメタンで生成物を抽出し、無水硫酸ナトリウムで水分を除去した後に減圧濃縮した。生成物をジクロロメタンとメタノールで再結晶し、赤色の結晶型固体化合物(化学式4-1)(8.7g、収率75%)を得た。
【0187】
H NMR(300 MHz,CDCl):δ7.52(m,4 H),7.17(m,4 H),6.62(m,2 H),6.23(m,2 H)。
【0188】
ステップ2:3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニルリチウム(3,6-di-tert-butylfluorenyl lithium;化学式5-1m)の合成
3,6-ジ-tert-ブチルフルオレン(3,6-di-tert-butylfluorene;化学式5-1)(8.4g、30mmole)をヘキサン(55ml)とエーテル(75ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却した後、n-ブチルリチウム溶液(ヘキサン中に1.6M、20.8ml)を徐々に添加した。温度を徐々に常温に上げて24時間撹拌した。得られた黄色の溶液を減圧濃縮し、真空下で溶媒を除去した後にヘキサンで洗浄し、黄色の固体化合物(化学式5-1m)(9.6g、収率100%)を得た。
【0189】
ステップ3:化学式6-1h化合物の合成
3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニルリチウム(化学式5-1m)(7.0g、22mmole)をエーテル(30ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却し、6,6-ジ(4-ブロモフェニル)フルベン(化学式4-1)(8.7g、22mmole)をエーテル(120ml)に溶かして-30℃に冷却した溶液を徐々に添加した。温度を徐々に常温に上げて24時間撹拌した後、過量の蒸留水を添加して10分間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、ヘキサンで洗浄し、淡黄色の固体化合物(化学式6-1h)(6.2g、収率42%)を得た。
【0190】
H NMR(300 MHz,CDCl):δ7.60-6.95(m,14 H),6.55-5.30(m,4 H),3.09(br s,2 H),1.36(s,18 H)。
【0191】
ステップ4:化学式6-1化合物の合成
化学式6-1hの化合物(800mg、1.2mmole)、炭酸カリウム(663mg、4.8mmole)、イソプロペニルボロン酸(1.9g、THF中に16重量%)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(69mg、0.06mmole)をTHF(6ml)と蒸留水(6ml)に入れ、70℃で2.5時間撹拌した。分液漏斗を用いて有機層を集めた後に減圧濃縮し、無水硫酸ナトリウムを用いて水分を除去した。生成物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、淡黄色の固体化合物(化学式6-1)(283mg、収率40%)を得た。
【0192】
H NMR(300 MHz,CDCl):δ7.65-7.11(m,14 H),6.50-5.41(m,6 H),5.16(s,2H),3.07(br s,2H),2.24(s,6H),1.46(s,18 H)。
【0193】
ステップ5:化学式6-1m化合物の合成
化学式6-1の化合物(209mg、0.35mmole)をエーテル(3.5ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却し、n-ブチルリチウム溶液(ヘキサン中に1.6M、0.47ml)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて24時間撹拌した後、ヘキサン(3ml)を添加し、真空下で溶媒を除去した。得られた固体化合物をヘキサンで洗浄し、オレンジ色の固体化合物(化学式6-1m)(147mg、収率75%)を得た。
【0194】
ステップ6:化学式1-1h化合物の合成
化学式6-1mの化合物(70mg、0.12mmole)をトルエン(0.8ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却し、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)(37mg、0.12mmole)をトルエン(1.5ml)に溶解させた後に-30℃に冷却した溶液を添加した。温度を常温に徐々に上げて24時間撹拌した。生成物をセライトを通して濾過し、真空下で溶媒を除去し、黄色の固体化合物(化学式1-1h)(78mg、収率66%)を得た。
【0195】
H NMR(300 MHz,C):δ8.29(s,2H),7.68(d,4H,J=9 Hz),7.38-6.82(m,6 H),6.55(m,2H),6.14(m,2H),5.59(m,2H),5.36(s,2H),4.97(s,2H),1.91(s,6H),1.33(s,18H)。
【0196】
ステップ7:化学式1-1化合物の合成
化学式1-1h化合物(78mg、0.077mmole)をトルエン(1.6ml)に溶かした溶液を-30℃に冷却し、MeMgBr溶液(エーテル中に3.0M、0.08ml、0.24mmole)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて19時間撹拌した。真空下で溶媒を除去した後、ヘキサンに溶解させた状態でセライトを通して濾過した。得られた溶液から真空下で溶媒を除去し、黄色の固体(化学式1-1)(53.9mg、収率78%)を得た。
【0197】
H NMR(300 MHz,C):δ8.36(s,2H),7.86(d,2H,J=7.8 Hz),7.75(d,2H,J=8.4 Hz),7.47-6.68(m,6H),6.46(d,2H,J=9.0 Hz),6.12(m,2H),5.52(m,2H),5.34(s,2H),4.95(s,2H),1.90(s,6H),1.33(s,18 H),-1.35(s,6H)。
【0198】
実施例2:化学式1-2の遷移金属化合物の製造
下記反応式2にまとめた合成手順に従って化学式1-2の遷移金属化合物を製造した。
【0199】
[反応式2]
【化51】
前記実施例1のステップ1~ステップ5と同様の方法で化学式6-1mの化合物を得た。
【0200】
ステップ6:化学式1-2h化合物の合成
化学式6-1mの化合物(77mg、0.13mmole)をトルエン(0.6ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却し、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl)(30mg、0.13mmole)をトルエン(2.0ml)に溶解させた後に-30℃に冷却した溶液を添加した。温度を常温に徐々に上げて70時間撹拌した。生成物をセライトを通して濾過し、真空下で溶媒を除去し、黄色の固体化合物(化学式1-2h)(67mg、収率56%)を得た。
【0201】
H NMR(300 MHz,C):δ8.31(s,2H),7.66(m,4H),7.83-6.84(m,6H),6.50(d,2H,J=9 Hz),6.19(m,2H),5.62(m,2H),5.34(s,2H),4.96(m,2H),1.90(s,6H),1.31(s,18 H)。
【0202】
ステップ7:化学式1-2化合物の合成
化学式1-2h化合物(67mg、0.072mmole)をトルエン(1.5ml)に溶かした溶液を-30℃に冷却し、MeMgBr溶液(エーテル中に3.0M、0.075ml、0.23mmole)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて7時間撹拌した。真空下で溶媒を除去した後、ヘキサンに溶解させた状態でセライトを通して濾過した。得られた溶液から真空下で溶媒を除去し、黄色の固体(化学式1-2)(30.6mg、収率79%)を得た。
【0203】
H NMR(300 MHz,C):δ8.37(s,2H),7.84(m,2H),7.72(m,2H),7.41-6.74(m,6H),6.42(d,2H,J=9.3 Hz),6.19(m,2H),5.55(m,2H),5.33(s,2H),4.94(m,2H),1.89(s,6H),1.32(s,18 H),-1.17(s,6H)。
【0204】
実施例3:化学式1-9の遷移金属化合物の製造
下記反応式3にまとめた合成手順に従って化学式1-9の遷移金属化合物を製造した。
【0205】
[反応式3]
【化52】
前記実施例1のステップ1~ステップ3と同様の方法で化学式6-1hの化合物を得た。
【0206】
ステップ4:化学式6-9化合物の合成
化学式6-1hの化合物(300mg、0.45mmole)、炭酸カリウム(249mg、1.8mmole)、シクロペンチルボロン酸(151mg、1.35mmole)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(26mg、0.023mole)をTHF(3ml)と蒸留水(3ml)に入れ、65℃で4.5時間撹拌した。分液漏斗を用いて有機層を集めた後に減圧濃縮し、無水硫酸ナトリウムを用いて水分を除去した。生成物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、淡黄色の固体化合物(化学式6-9)(132mg、収率46%)を得た。
【0207】
H NMR(300 MHz,CDCl):δ7.85-6.96(m,16 H),6.11(m,2 H),5.45(m,2 H),2.65(m,2 H),2.49(m,2 H),1.98(m,2 H),1.30(s,18 H)。
【0208】
ステップ5:化学式6-9m化合物の合成
化学式6-9の化合物(70mg、0.11mmole)をエーテル(2.5ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却し、n-ブチルリチウム溶液(ヘキサン中に1.6M、0.16ml)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて24時間撹拌し、オレンジ色の溶液(6-9m)を得た。
【0209】
ステップ6:化学式1-9h化合物の合成
ステップ5で得られた化学式6-9mの溶液を-30℃に冷却し、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)(35mg、0.11mmole)を添加した。温度を常温に徐々に上げて16時間撹拌した後、真空下で溶媒を除去した。得られた固体化合物をトルエンに溶解させた溶液をセライトを通して濾過し、真空下で溶媒を除去し、黄色の固体化合物(化学式1-9h)(84mg、収率87%)を得た。
【0210】
H NMR(300 MHz,C):δ8.32(m,2 H),7.73(m,2 H),7.42-7.32(m,2 H),7.20-6.88(m,6 H),6.55(d,J=9.3 Hz,2 H),6.17(m,2 H),6.05(m,2 H),5.64(t,J=2.7 Hz,2 H),2.55(m,4 H),2.35(m,4 H),1.83(m,4 H),1.37(s,18 H)。
【0211】
ステップ7:化学式1-9化合物の合成
化学式1-9h化合物(84mg、0.095mmole)をトルエン(1.8ml)に溶かした溶液を-30℃に冷却し、MeMgBr溶液(エーテル中に3.0M、0.10ml、0.30mmole)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて4時間撹拌した。真空下で溶媒を除去した後、トルエンに溶解させた状態でセライトを通して濾過した。得られた溶液から真空下で溶媒を除去し、黄色の固体(化学式1-9)(73.8mg、収率92%)を得た。
【0212】
H NMR(300 MHz,C):δ8.39(m,2 H),7.91(m,2 H),7.79(m,2 H),7.45-6.77(m,6 H),6.56(d,J=9.3 Hz,2 H),6.15(s,2 H),6.02(s,2 H),5.57(s,2 H),2.52(m,4 H),2.35(m,4 H),1.82(m,4 H),1.36(s,18 H),-1.33(s,6 H)。
【0213】
実施例4:化学式1-10の遷移金属化合物の製造
下記反応式4にまとめた合成手順に従って化学式1-10の遷移金属化合物を製造した。
【0214】
[反応式4]
【化53】
前記実施例3のステップ1~ステップ4と同様の方法で化学式6-9の化合物を得た。
【0215】
ステップ5:化学式6-9m化合物の合成
化学式6-9の化合物(60mg、0.093mmole)をエーテル(2.3ml)に溶解させた溶液を-30℃に冷却し、n-ブチルリチウム溶液(ヘキサン中に1.6M、0.13ml)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて24時間撹拌し、オレンジ色の溶液(6-9m)を得た。
【0216】
ステップ6:化学式1-10h化合物の合成
ステップ5で得られた化学式6-9mの溶液を-30℃に冷却し、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl)(22mg、0.093mmole)を添加した。温度を常温に徐々に上げて5.5時間撹拌した後、真空下で溶媒を除去した。得られた固体化合物をトルエンに溶解させた溶液をセライトを通して濾過し、真空下で溶媒を除去し、黄色の固体化合物(化学式1-10h)(83mg、収率99%)を得た。
【0217】
H NMR(300 MHz,C):δ8.34(m,2 H),7.72(m,2 H),7.38(m,2 H),7.29(m,2 H),7.34-6.91(m,4 H),6.58(d,J=9.3 Hz,2 H),6.23(t,J=2.7 Hz,2 H),6.05(m,2 H),5.68(t,J=2.7 Hz,2 H),2.55(m,4 H),2.36(m,4 H),1.83(m,4 H),1.37(s,18 H)。
【0218】
ステップ7:化学式1-10化合物の合成
化学式1-10h化合物(83mg、0.093mmole)をエーテル(1.5ml)に溶かした溶液を-30℃に冷却し、MeMgBr溶液(エーテル中に3.0M、0.10ml、0.30mmole)を徐々に添加した。温度を常温に徐々に上げて14時間撹拌した。真空下で溶媒を除去した後、トルエンとヘキサンを1:1で混合した溶液に溶解させた状態でセライトを通して濾過した。得られた溶液から真空下で溶媒を除去し、黄色の固体(化学式1-10)(67.6mg、収率95%)を得た。
【0219】
H NMR(300 MHz,C):δ8.41(m,2 H),7.91(m,2 H),7.78(m,2 H),7.64-6.83(m,6 H),6.53(m,2 H),6.23(m,2 H),6.03(m,2 H),5.62(m,2 H),2.55(m,4 H),2.36(m,4 H),1.82(m,4 H),1.36(s,18 H),-1.13(s,6 H)。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の具体例による遷移金属化合物およびそれを含むオレフィン重合用触媒は、特異な立体構造を有するため、重合体の物性の調節が可能である。