IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ、コンフォート、アンド、ドライビング、アシスタンスの特許一覧

特許7578832車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法
<>
  • 特許-車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法 図1
  • 特許-車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法 図2
  • 特許-車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法 図3
  • 特許-車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023540102
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 FR2021052465
(87)【国際公開番号】W WO2022144529
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】2014293
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516000549
【氏名又は名称】ヴァレオ、コンフォート、アンド、ドライビング、アシスタンス
【氏名又は名称原語表記】VALEO COMFORT AND DRIVING ASSISTANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー、ドグラン
(72)【発明者】
【氏名】ラオラ、ケトトゥレ
(72)【発明者】
【氏名】ホルダン、ナバルロ
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-245683(JP,A)
【文献】特開2018-005362(JP,A)
【文献】特開2015-219632(JP,A)
【文献】特開2006-040119(JP,A)
【文献】特開2011-028332(JP,A)
【文献】特開2010-273752(JP,A)
【文献】特開2016-218571(JP,A)
【文献】特開2009-018091(JP,A)
【文献】特開2018-049477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0036673(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107428299(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両運転者の危険の知覚を解析するための装置(1)において、
-経時(t)的に運転者の心拍(FC)を測定するように設計される心拍センサ(10)と、
-処理ユニット(40)であって、
a)車両の周囲に存在する危険の表示(D)を受信し、
b)前記心拍センサ(10)によって測定された運転者の心拍(FC)を、前記処理ユニットによる前記表示(D)の受信時に始まる時間間隔にわたって解析し、
c)ステップb)で解析された運転者の心拍が前記時間間隔内に減速段階を含むか含まないかに応じて危険が運転者によって知覚されたか否かを決定する、
ように設計される、処理ユニット(40)と、
を備える装置(1)。
【請求項2】
ステップb)において、前記解析された心拍(FC)は、前記表示(D)の受信から開始して、1秒から5秒の間の持続時間を有する、前記測定が行われる前記時間間隔の心拍(FC)である、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
運転者が見ている方向を検出するように設計されるアイセンサ(30)を更に備え、前記処理ユニット(40)は、ステップb)で解析された運転者の心拍が減速段階を含む場合、及び更に運転者が運転の視野を見ている場合に、ステップc)で危険が運転者によって知覚されたと決定する、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
運転者の呼吸数を測定するように設計される、運転者の呼吸を感知するための呼吸センサ(20)を更に備え、前記処理ユニット(40)は、前記測定された呼吸数に応じてステップb)で解析された運転者の心拍を補正するように設計される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記処理ユニット(40)は、瞬間tにおける運転者の心拍の変動(ΔFC)が前記瞬間tに先行する2つの瞬間における心拍の変動(ΔFC)によって採用された値の平均よりも低い値を有することをステップb)における心拍の前記解析が示す場合に、運転者の心拍が減速段階を含むと決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
運転者の心拍の変動(ΔFC)は、ステップa)で前記表示が前記処理ユニットによって受信される瞬間に前記心拍センサによって測定される運転者の心拍、及び前記心拍センサによって測定される運転者の平均心拍から選択される、基準心拍(FCref)から計算される、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記心拍センサ(10)は、心臓の電気的活動を感知するためのセンサ又は心臓の機械的活動を感知するためのセンサを備え、前記心拍センサ(10)は、ステアリングホイール上に、及び/又は運転者のシート上に、及び/又は運転者のシートベルト上に、及び/又は運転者から離れて配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記処理ユニット(40)は、
d)以下の要素、すなわち、ステップc)で決定された運転者の危険の知覚又は知覚の欠如、運転者によって危険が知覚された瞬間、ステップb)で解析された想定し得る心拍の減速段階の持続時間、ステップb)で解析された想定し得る心拍の減速段階の振幅のうちの少なくとも1つに応じて、運転者に介入するように車両に搭載された運転支援装置(2)に命令する、
べく設計される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記運転支援装置(2)を備え、ステップa)で前記処理ユニットによって受信される前記表示が前記運転支援装置(2)によって送信される、請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記処理ユニット(40)は、運転者を識別するとともに、前記識別に応じて、ステップb)で実施される心拍の前記解析をカスタマイズするように更に設計される、請求項8又は9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記処理ユニット(40)は、前記識別に応じてステップd)における命令をカスタマイズするように更に設計される、請求項10に記載の装置(1)。
【請求項12】
車両運転者の危険の知覚を解析するための方法であって、該方法にしたがって、以下のステップ、すなわち、
前記心拍センサ(10)が、運転者の心拍(FC)を測定するステップと、
前記処理ユニット(40)が、車両の周囲に存在する危険の表示(D)を受信するステップと、
前記処理ユニット(40)が、危険の前記表示(D)の受信時に始まる時間間隔にわたって、測定された運転者の心拍(FC)を解析するステップと、
前記処理ユニット(40)が、解析された運転者の心拍が前記時間間隔内に減速段階を含むか含まないかに応じて運転者によって危険が知覚されたか否かを決定するステップと、
を実施するようにする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における運転支援の技術分野に関する。本発明は、より具体的には、車両運転者の危険の知覚を解析するための装置及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、運転者がその周囲に存在する危険を知覚したかどうかを知ることは困難である。運転者は、例えば、危険であることに気付かずに危険の方向を見たり、逆に、危険を周辺視野でしか見ておらず、直接見ていないで、危険を知覚したりすることがある。また、例えば運転者の視野外にあるために、運転者が危険を全く見ていない可能性もある。
【0003】
車両に設置される運転支援装置は既に知られている。そのような運転支援装置は、それらが設置されている搭載車両の周囲を解析することができ、一般に視覚的、聴覚的、触覚的及び/又は嗅覚的警告の形態で運転者に介入することができ、危険が運転の範囲又は経路に入りやすいことを運転者に警告する。
【0004】
既知の運転支援装置は、それらの警告が運転者に届くことを保証することなく、多数の警告を送信する。しかしながら、運転者が危険を正しく知覚しているかどうかが分からないということは、運転者がこの危険に適切に反応する準備をしているかどうかが分からないことを意味し、適切な安全ソリューションの設計を妨げる。
【0005】
逆に、運転支援装置からの警告が運転者に届くと、運転者は、特に、例えば、運転者がこの危険を既に警告されているため、又は運転者自身がこの危険を既に見て解析しているため、運転者が警告に関連する危険を既に知覚している場合、運転者を混乱させるか、又は煩わしくすると見なす場合がある。したがって、運転者は、運転支援装置からの警告を停止することを、運転者が見ることができない危険を警告されない危険を冒すことをそれが意味する場合であっても、好むことが多い。
【0006】
したがって、例えば、実際に有用であるときにのみ運転者に警告することによって、及び警告が実際に運転者に到達したことを保証することによって、運転支援装置が運転者によってより良好に受け入れられるようにするために、運転支援装置をより関連性の高いものにすることが必要になる。
【発明の概要】
【0007】
これに関連して、本発明は、車両運転者の危険の知覚を解析するための装置を提案し、この装置は、
-経時的に運転者の心拍を測定するように設計された心拍センサと、
-処理ユニットであって、
a)車両の周囲に存在する危険の表示を受信し、
b)心拍センサによって測定された運転者の心拍を、処理ユニットによる表示の受信時に始まる時間間隔にわたって解析し、
c)ステップb)で解析された運転者の心拍が前記時間間隔内に減速段階を含むか含まないかに応じて危険が運転者によって知覚されたか否かを決定する、
ように設計される、処理ユニットと、
を備える。
【0008】
結果として、本発明に係る装置は、処理ユニットが危険に気付いた直後に運転者の心拍を解析することによって運転者が危険に気付いているかどうかを決定できるようにする。より具体的には、本発明に係る装置の処理ユニットは、例えば危険の発生後の3秒で解析が行われる時間間隔中に運転者の心拍が減速段階を含むときに危険が運転者によって知覚されたと見なす。減速段階は、時間間隔全体にわたって(すなわち、ここでは3秒以上にわたって)又は時間間隔の一部のみにわたって(すなわち、ここでは3秒未満の持続時間にわたって)及ぶことができる。研究により、心臓が減速するとそのような心臓減速段階が起こり、脳が受信した情報を処理できることが分かった。脳が受信して処理しなければならない情報の複雑さに応じて、心臓減速段階の持続時間が多かれ少なかれ長くなる場合があり、心臓減速段階は、1秒~5秒の持続時間、特に情報が脳によって受信されてから3秒の持続時間を伴う時間間隔内に少なくとも部分的に含まれる。
【0009】
本発明に係る装置による運転者の危険の知覚の決定は、非常に信頼性が高く迅速であり、運転者を混乱させたり不快にさせたりすることはない。
【0010】
個別に又は任意の技術的に想定し得る組み合わせで解釈される、本発明に係る装置の他の非限定的且つ有利な特徴は、以下の通りである。すなわち、
-ステップb)において、解析された心拍は、表示の受信から開始して、1秒から5秒の間、好ましくは1秒から3秒の間の持続時間を有する、測定が行われる時間間隔の心拍である、
-装置は、運転者が見ている方向を検出するように設計されるアイセンサを備え、処理ユニットは、ステップb)で解析された運転者の心拍が減速段階を含む場合、及び更に運転者が運転の視野を見ている場合に、ステップc)で危険が運転者によって知覚されたと決定する、
-装置は、運転者の呼吸数を測定するように設計される、運転者の呼吸を感知するための呼吸センサを備え、処理ユニットは、前記測定された呼吸数に応じてステップb)で解析された運転者の心拍を補正するように設計される、
-処理ユニットは、瞬間tにおける運転者の心拍の変動が瞬間tに先行する2つの瞬間における心拍の変動(ΔFC)によって採用された値の平均よりも低い値を有することをステップb)における心拍の解析が示す場合に、運転者の心拍が減速段階を含むと決定する、
-運転者の心拍の変動は、ステップa)で表示が処理ユニットによって受信される瞬間に心拍センサによって測定される運転者の心拍、及び心拍センサによって測定される運転者の平均心拍から選択される、基準心拍から計算され、運転者の平均心拍は、好ましくは、危険が全く知覚されないときに測定される。
【0011】
本発明の特に有利な特徴によれば、本発明に係る装置の処理ユニットは、ステップc)で決定された運転者の危険の知覚又は知覚の欠如、運転者によって危険が知覚された瞬間、ステップb)で解析された心拍の減速の想定し得る段階の持続時間、ステップb)で解析された心拍の減速の想定し得る段階の振幅のうちの少なくとも1つに応じて、運転者に介入するように車両に搭載された運転支援装置に命令するステップd)を実施するべく設計される。勿論、運転支援装置に介入を命令するために、処理ユニット40は、前述の要素の少なくとも1つに加えて、ステップa)で受信された危険の表示、特に車両からの危険の距離、及び前記危険の重大度を考慮に入れるように設計される。
【0012】
処理ユニットが「運転支援装置に介入を命令する」という事実は、前記運転支援装置が運転者に介入すべきか否か、いつ運転者に介入すべきか、及びどのように(どのような形態で)運転者に介入すべきかを制御することを意味すると理解されるべきである。特に、運転者が危険に未だ気付いていない場合、運転支援装置は、危険に関して運転者に介入し、その場合、介入は、危険を回避するために想定し得る最良の時間及び最適な形態で行われる。したがって、本発明に係る装置は、車両に搭載された運転支援装置に非常に有用である。
【0013】
運転支援装置が運転者に行う介入は、運転支援装置が運転者に信号を送信すること、信号が場合により運転者に危険を警告することを目的とする警告の形態をとること又は危険に直面する運転者を誘導することを目的とするアドバイスの形態をとること、或いは運転支援装置が例えば運転者に車両の自動運転モードへの切り替え又は車両の遠隔支援運転への切り替えを課すことによって車両を強制的に担当することをオプションとして含む。
【0014】
例えば、運転者が危険を知覚していないと本発明に係る装置が決定する場合、処理ユニットは、運転支援装置が運転者に介入しなければならないことを命令し、この危険を運転者に警告するために送信される警告、及び/又は危険に直面する運転者を誘導するために送信されるアドバイス、及び/又は運転者に課される運転支援の形態を介入がとるべきかどうかを制御する。運転支援装置によって運転者に運転支援が課されるとき、運転支援装置は、危険を回避するために車両の部材が運転支援装置によって直接作動される限り、車両を担当すると考えられる。逆に、運転者が既に危険に気付いていると本発明に係る装置が決定する場合、運転支援装置は、運転者が不要な警告の送信に煩わされないように、この危険に関連する警告を消音する。
【0015】
個別に又は任意の技術的に想定し得る組み合わせで解釈される、本発明に係る装置の他の非限定的で有利な特徴は、以下の通りである。すなわち、
-本発明に係る装置が運転支援装置を備え、ステップa)で前記処理ユニットによって受信される危険の表示が前記運転支援装置によって送信される、
-処理ユニットは、運転者を識別するとともに、前記識別に応じて、ステップb)で実施される心拍の解析をカスタマイズするように更に設計される、
-処理ユニットは、前記識別に応じてステップd)における命令をカスタマイズするように更に設計される。
【0016】
本発明は、最後に、車両運転者の危険の知覚を解析するための方法に関し、該方法にしたがって、以下のステップ、すなわち、
-運転者の心拍を測定するステップと、
-車両の周囲に存在する危険の表示を受信するステップと、
-危険の表示の受信時に始まる時間間隔にわたって、測定される運転者の心拍を解析するステップと、
-解析された運転者の心拍が前記時間間隔内に減速段階を含むか含まないかに応じて運転者によって危険が知覚されたか否かを決定するステップと、
を実施するようにする。
【0017】
更に、本発明の様々な他の特徴は、本発明の非限定的な実施形態を示す図面に関連して与えられる添付の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る、危険の知覚を解析するための装置の概略図である。
図2】2つの異なる運転状況において、1人の同じ運転者に関し、心拍(1分当たりの拍動、すなわちbpm)の経時的(秒、すなわちs)な変動ΔFCの変化を与える2つの曲線FC1及びFC2を示すグラフである。
図3図2の2つの状況における運転者に関する、車両の速度(1時間当たりのキロメートル、すなわちkm/h)の経時的(秒、すなわちs)な変動の変化を与える2つの曲線V1及びV2を示すグラフである。
図4】本発明に係る方法の主要なステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの図において、異なる変形例によって共有される構造的及び/又は機能的要素が同じ参照符号を有し得ることに留意すべきである。
【0020】
図1は、車両運転者の危険の知覚を解析するための装置1の主要な要素を概略的に示す。装置1は、自動車両における危険の知覚を解析するのに特に適している。説明の残りの部分は、このシナリオを詳細に説明する。しかしながら、本発明に係る装置1を使用して、別の種類の車両、例えばボート、航空機、又は列車における危険の知覚を解析することが完全に考えられる。
【0021】
この場合、装置1は自動車両に搭載される。しかしながら、装置が備える要素の少なくとも幾つかが車両から離れていることが完全に考えられる。
【0022】
装置1は、少なくとも、
-経時的に運転者の心拍を測定するように設計される心拍センサ10と、
-処理ユニット40であって、
a)車両の周囲に存在する危険の表示を受信し、
b)心拍センサ10によって測定される運転者の心拍を、ステップa)における処理ユニット40による表示の受信時に始まる時間間隔にわたって解析し、
c)ステップb)で解析される運転者の心拍が前記時間間隔内に減速段階を含むか含まないかに応じて危険が運転者によって知覚されたか否かを決定する、
ように設計される、処理ユニット40と、
を備える。
【0023】
運転者の心拍を感知するためのセンサ10は、車両に搭載される。このセンサは、心臓の電気的活動を感知するためのセンサ及び/又は心臓の機械的活動を感知するためのセンサを備える。
【0024】
第1の例によれば、心拍センサ10は、心臓活動によって生成された電気信号を記録するために、運転者の皮膚と直接接触して配置された、1つ以上の電極の形態の電気活動センサを有する。この第1の例において、心拍センサ10は、例えば、運転者がステアリングホイールに手を置くステアリングホイール上に配置される。
【0025】
他の例によれば、心拍センサ10は、運転者の心臓活動の弾道信号を記録することができる血流カメラ又はレーダの形態の機械的活動センサを有し、弾道信号は、心拍によって生成される機械的活動に直接関連付けられる。この第2の例において、心拍センサ10は、前記運転者と接触する必要なく、運転者の衣服を介して心拍を測定する。心拍センサ10は、例えば、運転者の座席、ステアリングホイールの後ろ(すなわち、ステアリングホイールと車両のウインドシールドとの間)、運転者のシートベルト、又はこれらの位置の組み合わせに配置することができる。
【0026】
第3の例によれば、心拍センサ10は、電気的活動センサと機械的活動センサ(この場合は弾道活動)の両方を有し、これらのセンサは例えば前述の場所のうちの1つ以上に配置される。
【0027】
想定される例とは無関係に、心拍センサ10は、運転者が走行している間に運転者の心拍FCを経時的に記録するように連続的に動作する。心拍センサは、瞬間心拍、すなわち1分間の心拍(1分当たりの拍動数又はbpmで与えられる)を測定する。ここで、心拍センサ10は、一定の間隔、例えば0.5秒(s)ごとに運転者の瞬間心拍FC(t)を与える。勿論、心拍センサは、より短い、場合によっては不規則な間隔で瞬間心拍を与えることができる。その最初の測定を行うことができる前に、心拍センサ10が少なくとも1分間動作したことが好ましい。
【0028】
実際には、運転者の瞬間心拍を与えることができるように、心拍センサ10は、以下のステップを実施する。すなわち、
-心拍センサは、複数の心拍対に関して運転者から来る2つの心拍(又は心拍対)間の持続時間を取得する、
-前記持続時間及び測定された心拍数に基づいて、心拍センサが運転者における心拍を確立する、
-心拍センサは、0.5秒ごとに運転者の心拍を取得するために補間を実行する。
【0029】
処理ユニット40は、それに関する限り、心拍センサ10と通信するように設計される。この場合、処理ユニットは、心拍センサ10によって測定された運転者の心拍を時間の関数として記憶するためのメモリ41を有する。より具体的には、メモリ41は、特にこの例では0.5秒(s)ごとに、心拍センサ10によって行われる各測定時の運転者の瞬間心拍FC(t)を記憶する。
【0030】
ステップa)において、処理ユニット40は、車両の周囲に危険が存在するという表示を受信する。この表示は、自動車両に設置されて処理ユニット40が通信するように設計される運転支援装置2からもたらされる。ここで、運転支援装置2は、本発明に係る装置1に含まれると見なされる。しかしながら、運転支援装置は、依然として装置1の処理ユニット40と通信するように設計されているが、本発明に係る装置1とは別個であることが全体的に考えられる。
【0031】
運転支援装置2は、それ自体公知であるため、詳細な説明は省略する。本質的に、運転支援装置2は、車両内及び/又は車両の外側に配置された複数のセンサを備え、それによって、近くにあるか又は更に離れているかにかかわらず、車両の周囲を探査して、これらの周囲の危険な状況(又は危険)、例えば、車両の前方を通過する可能性が高い歩行者、間違った道を走行している車両、車両の前方の別の車両の急ブレーキ、車両の前方の事故などを決定することができる。
【0032】
運転支援装置2によって検出された危険は、この場合、その重大度及び/又は車両からの距離の関数として規定される。したがって、表示Dは、車両からの危険の重大度(又は危険の程度)及び/又は距離に関する情報を含む。
【0033】
運転支援装置2は、特に、処理ユニット40に表示Dを送信するように設計され、この表示Dにしたがって、処理ユニットが前記危険を決定するとすぐに、車両の周囲に危険が存在すると処理ユニットが決定する。運転支援装置がそのような表示Dを処理ユニット40に送信すると(ステップa)、処理ユニット40は、運転支援装置2から表示Dを受信した瞬間がステップb)の解析のための最初の瞬間、すなわち瞬間t=0sに対応すると決定する。
【0034】
図1に示されるように、運転支援装置2は、特に運転者に警告Aを送信して運転者に危険を警告することによって、運転者に介入することもできる。この警告Aは、可聴(例えば、ビープ音又は口頭通知)、視覚(例えば、ダッシュボードに表示されるメッセージ)、触覚(例えば、ステアリングホイール又は座席で感じる振動)、嗅覚(例えば、車室内に放出された燃焼臭)、又はこれらの様々な形態の組み合わせを使用して、様々な形態で送信され得る。
【0035】
ステップb)において、処理ユニット40は、表示Dの受信の最初の瞬間(t=0s)から開始する時間間隔にわたって心拍センサ10によって測定された運転者の心拍を解析する。好ましくは、ステップb)で解析された心拍FCは、表示Dの受信から開始して、1秒から5秒の間の持続時間、更により好ましくは1秒から3秒の間の持続時間を有する時間間隔で測定されたものである。例えば、時間間隔は、危険の表示Dの受信時に開始し、表示Dの前記受信後3秒にまで及ぶ。
【0036】
この解析を実行するために、この場合の処理ユニット40は、前記心拍解析を実行するように設計された計算機42を備える。この解析は、特に、以下の式にしたがって、所与の瞬間における運転者の心拍の変動ΔFC(t)の計算を含む。
ΔFC(t)=FC(t)-FCref
【0037】
ここで、FC(t)は、瞬間tに心拍センサ10によって測定された運転者の瞬間心拍であり、FCrefは、運転者と関連付けられた基準心拍である。
【0038】
この場合、運転者と関連付けられた基準心拍FCrefは、以下のリスト、すなわち、
-ステップa)で表示Dが処理ユニット40によって受信される瞬間t=0sに心拍センサ10によって測定された運転者の瞬間心拍FC(t=0s)、及び
-運転者の平均心拍
から選択される。
好ましくは、運転者と関連付けられた基準心拍FCrefは、瞬間t=0秒に心拍センサ10によって測定された運転者の瞬間心拍FC(t=0秒)として選択される。
基準心拍が運転者の平均心拍として選択される場合、基準心拍FCrefは、少なくとも1分間の期間、好ましくは周囲に全く危険がない期間にわたる運転者の心拍の測定値から計算機42によって計算される運転者の特定の平均心拍であると考えられる。次いで、運転者の平均心拍は、好ましくは再計算され、処理ユニット10のメモリ41に定期的に再記憶される。運転者の平均心拍が運転者の安静時心拍であると考えることも完全に考えられる。この場合、平均心拍は、本発明に係る装置1を初期化する段階に由来し、その間、運転者の心拍は、停止状態の車両で記録される。
【0039】
実際には、計算機42は、心拍センサ10が瞬間心拍FC(t)を測定したときの最初の瞬間(t=0s)から後の各瞬間tにおける心拍の変動によって採用される値ΔFC(t)を算出する。
【0040】
算出された値から、例えば、心拍の経時的な変動ΔFCの変化を与える曲線をグラフ上に示すことができる。図2は、例えば、2つの異なる運転状況において、1人の同じ運転者に関して、心拍の経時的な変動ΔFCの変化を表す2つの曲線FC1及びFC2を有するグラフを示す。この場合、各曲線FC1,FC2は、瞬間tに示された値に関連する誤差を表すゾーンによって囲まれる。誤差ゾーンは、曲線FC1,FC2ごとにハッチングを付して示される。曲線FC1に関連する第1の状況において、処理ユニット40は、図2に矢印によって記号化された最初の瞬間(t=0s)に、運転者によって運転される車両の経路内で反対方向に走行する車両の表示Dを受信している。曲線FC2に関連する第2の状況において、処理ユニット40は、最初の瞬間(t=0s)に、運転者が運転する車両の経路に発生しやすい危険の表示Dを受信している。
【0041】
ステップc)において、処理ユニット40は、ステップb)の解析に応じて、運転者が危険を知覚したか又は知覚しなかったかを最後に決定する。
【0042】
より具体的には、ステップb)で解析された運転者の心拍が、測定が行われる前記時間間隔内、好ましくは3秒の持続時間の時間間隔[0;3秒]内に減速段階(「心臓減速」とも呼ばれる)を含む場合、処理ユニット40は、運転者が危険を知覚したと決定する。逆に、ステップb)で解析された運転者の心拍が、測定が行われる前記時間間隔内に、好ましくは[0;3秒]に、心臓減速段階を含まない場合、処理ユニット40は、運転者が危険を知覚していないと決定する。
【0043】
心拍が心臓減速段階を含むかどうかを決定するために、処理ユニット40は、ステップb)の解析から生じる運転者の心拍の変動ΔFCが経時的に減少する段階を含むかどうかを調べる。より具体的には、計算機42は、測定が行われる時間間隔内、例えば0秒と3秒との間で、心拍の変動ΔFCによって採用された連続値を比較する。処理ユニット40は、瞬間tにおける心拍の変動ΔFC(t)が、瞬間tに先行する2つの瞬間における心拍の前記変動によって採用された値の算術平均よりも低い値を有する場合、運転者の心拍の変動ΔFCが減少段階を含むと決定する。換言すれば、計算機42は、それぞれの測定瞬間tごとに、その瞬間tに先行する2つの瞬間(t-1)及び(t-2)における心拍の変動により採用された2つの値の算術平均MOYを、以下の式にしたがって算出する。
【数1】
【0044】
次いで、計算機42は、瞬間tにおける心拍の変動によって採用された値ΔFC(t)を前記平均MOYと比較する。瞬間tにおける心拍の変動が平均よりも小さい、すなわちΔFC(t)<MOYである場合、処理ユニット40は、心拍が3つの瞬間t-2、t-1及びtにわたって減速相を含むと決定する。
【0045】
結果として、図2の例において、処理ユニット40は、処理ユニット40が表示Dを受信した後、ここでは0秒から2秒の間に及ぶ間隔内で、心拍の経時的な変動の変化を与える曲線FC1が減少段階を含むと決定する。次いで、処理ユニット40は、第1の状況では、車両が間違った方向に進むことが処理ユニット40による表示Dの受信後の2秒で表す危険性を運転者が知覚したと結論付ける。運転者の知覚は、車両が遠くから間違った方向に進むのを運転者が見たという事実、又は運転支援装置2が処理ユニット40に表示Dを送信したと同時に、運転支援装置2が警告Aによって運転者に警告したという事実に関連付けられ得る。
【0046】
逆に、図2では、曲線FC2は、処理ユニット40が表示Dを受信した後0~5秒の間に及ぶ測定間隔内に減少段階を含まない。処理ユニット40は、第2の状況にある運転者が危険を知覚していないと結論付ける。特に、運転者がこの第2の状況における危険を自分自身で見ていないこと、又は運転者が運転支援装置2によって送信された可能性のある警告Aを知覚していないこと、又は運転支援装置2が警告Aを送信しなかったことが想定し得る。
【0047】
図3は、前述の2つの状況において運転者によって運転される車両に関し、速度の経時的変動ΔVの変化を表す2つの曲線V1及びV2を伴うグラフを示す。この場合、曲線V1,V2はそれぞれ、瞬間tに示された値と関連する誤差を表すゾーンによって囲まれる。誤差ゾーンは、ここでは曲線V1及びV2ごとにハッチングで示される。車両の速度変動は、以下の式によって計算される。
ΔV(t)=V(t)-Vref
【0048】
ここで、V(t)は瞬間tにおける運転者の瞬間速度であり、Vrefは、この場合には初期瞬間(t=0s)における車両の瞬間速度として選択される車両の基準速度である。
【0049】
運転者の危険の知覚に関する本発明に係る装置1の処理ユニット40の結論は、2つの状況において、図3に見ることができる運転者の異なる反応によって確認される。具体的には、運転者は、第1の状況において危険を知覚した後、危険に注意するように運転中の車両を減速させ、それにより、曲線V1は、脳が受信した危険に関する情報を運転者が解析するのに要した2秒後に下方に傾斜する。逆に、曲線V2は、経時的な速度のゼロ変動を示し、これは、運転者が第2の状況において速度を一定に保っていることを意味する。これは、運転者がこの第2の状況においていかなる危険も知覚していないことを確認する。
【0050】
前述の装置1は、あらゆる手段によって互いに組み合わせることができる様々な有利な改善を含むことができる。
【0051】
第1の考えられる有利な改善によれば、装置1は、より高い精度で運転者の心拍を測定することができる。
【0052】
その目的のために、第1の改善に係る装置1は、経時的に運転者の呼吸数を測定するように設計される、運転者の呼吸を感知するための呼吸センサ20を備える。呼吸センサ20は、例えば、ステアリングホイールの後ろで運転者のシートに面して配置される。呼吸センサは、特に心拍センサ10が心臓の機械的活動を感知するためのセンサを有する場合、心拍センサ10と一致することが考えられる。呼吸センサ20は、運転者の瞬間心拍が測定されるときと同じ瞬間に運転者の呼吸数を測定するように心拍センサ10と同期される。呼吸センサ20は、運転者の呼吸数、すなわち、1分の時間間隔内に運転者によって実行される「息を吸う+息を吐く」サイクルの数を測定するように設計される。心拍センサ10と同様に、呼吸数センサ20(又は呼吸周波数センサ)は、好ましくは、その最初の測定を行う前に少なくとも1分間動作しているべきである。
【0053】
この第1の改善によれば、処理ユニット40は、呼吸センサ20と通信して運転者の経時的な呼吸数をメモリ41に記憶するように設計される。より具体的には、メモリ41は、呼吸センサ20によって行われる各測定時の、特にこの例では0.5秒(s)ごとの運転者の呼吸数を記憶する。
【0054】
次いで、処理ユニット40は、その計算機42によって、測定される前記呼吸数に応じて運転者の瞬間心拍FC(t)を補正するように設計される。補正は、心拍センサ10によって測定された心拍のための信号、呼吸センサ20によって測定された呼吸数のための信号を除去することから成り、それにより、運転者の瞬間心拍は、必然的に前記心拍を変動させる運転者の息を吸う及び息を吐くによって影響されない。
【0055】
第2の有利な改善によれば、本発明に係る装置1は、偽陽性の検出を回避するための手段、すなわち、そうでない場合に運転者が危険を知覚したという決定を回避するための手段を備える。
【0056】
より具体的には、本発明に係る装置1は、運転者が見ている方向を検出するように設計されたアイセンサ30を備える。アイセンサ30は、例えば、ステアリングホイールの後ろに配置されたカメラの形態をとる。アイセンサ30は、運転者が運転の視野を見ているかどうか、又は運転者が運転に関連する要素を見ているかどうか、又は運転者を運転からそらす補助要素を見ているかどうかを決定するように設計される。ここで、「運転の視野」とは、運転者が車両を運転しているときに運転者が見ることができる道路を意味すると理解される。「運転に関連する要素」は、例えば、バックミラー、ナビゲーションシステム、又は車両に関する情報を発信することができるダッシュボード(速度、点灯表示灯など)を含む。補助要素は、運転に関与しない車両内に存在する他の全ての要素、例えば運転者の携帯電話、無線局、車両内の乗客を含むと考えられる。例えば、アイセンサ30は、運転者が携帯電話を見るために頭を下げたかどうか、又は運転者が後部ベンチシート上の乗客、又はその隣に座っている乗客を観察するために方向転換したかどうかを検出するように設計されており、その場合、運転者は運転の視野又は運転に関連する要素を見ていない。
【0057】
アイセンサ30は、運転者が危険を知覚したか否か、すなわち運転者が見ている方向を決定するための追加の基準を処理ユニット40が利用できるようにする。この追加の基準は、運転者の心拍が観察された時間間隔内に心臓減速段階を有するという理由のみで運転者が危険を知覚したと処理ユニット40が決定することを回避する。具体的には、運転者の心臓減速は、必ずしも運転の視野における危険の知覚によって引き起こされるのではなく、例えばSMSを読み取ることなどの別の事象によって、又はダッシュボード上に点灯する厄介なインジケータライトによって引き起こされる可能性がある。結果として、アイセンサ30によって、処理ユニット40は、危険が運転者によって知覚されたことを決定するために、2つの基準、すなわち、それらの心拍が減速段階を含むという事実、及びそれらが運転の視野を見ているという事実を利用する。言い換えれば、処理ユニット40は、ステップc)において、ステップb)で解析された運転者の心拍が減速段階を含み、更に運転者が運転の視野を見ている場合、危険が運転者によって知覚されたと決定する。しかしながら、ステップb)で解析された運転者の心拍が減速段階を有さない限り、処理ユニット40は、運転者が見ている方向を確認する必要なく、危険が知覚されなかったと直接結論付ける。
【0058】
結果として、この第2の有利な改善によれば、本発明に係る装置は、心拍の変調の原因を推定することを可能にすることによって、危険性の運転者の知覚の決定においてより正確になり、前記原因は、例えば道路から、又は車室(疑わしい表示灯が点灯される)から、又は運転者の携帯電話で受信されたテキストから生じる可能性がある。
【0059】
第3の有利な改善によれば、装置1の処理ユニット40は、運転支援装置2に命令し、特に運転者に介入すべきかどうか、いつ運転者に介入すべきか、及び運転者にどのように介入すべきかを制御するように設計される。この命令によって、運転支援装置2は、それが運転者に介入するときに運転者をあまり妨害せず、運転支援装置2によって行われる想定し得る運転者への介入は、適切な時間及び適切な形態で行われるため、より関連性が高い。
【0060】
前述したように、この場合の運転支援装置2は、例えば運転者に警告A(可聴形、視覚形、触覚形及び/又は嗅覚形を有する)を送信して、運転支援装置が車両の周囲で検出した危険を警告することによって、運転者に介入することができる。各警告Aが送信される形態は、組み合わされても組み合わされなくてもよい。警告Aの送信は、1回行われてもよく、又は経時的に、例えば規則的な時間間隔で繰り返されてもよい。
【0061】
この場合、運転支援装置2は、運転者へのアドバイスCを送信して運転者の危険への反応を支援することによって運転者に介入することもできる。運転支援装置2が送信するそのようなアドバイスCは、例えば、運転者が減速するのを要求すること、特定の車線に戻ること、路肩に降りることなどである。運転者が危険に最適に反応するように誘導することを目的としたアドバイスCは、一般に、視覚的な形(ダッシュボードに表示)又は聴覚的な形(車室内で話されるアドバイス)で送信される。各アドバイスCを送る形態は、組み合わせてもよいし、組み合わせなくてもよい。アドバイスCの送信は、1回行われてもよく、又は経時的に、例えば一定の時間間隔で繰り返されてもよい。
【0062】
運転支援装置2は、ここでは、運転支援Iを運転者に課すことによって運転者に介入することもできる。そのような運転支援Iは、例えば運転者に遠隔支援運転を課すことによって、又は運転者に車両の自動運転モードに切り替えるよう強制することによって、運転者を運転から解放することにある。結果として、運転装置2によって課される運転支援は、運転者に代わって車両の各部材を担当して作動させる。
【0063】
これに関連して、本発明に係る装置1の処理ユニット40は、ステップd)を実施するように設計されており、その間に運転支援装置2に運転者の介入を命令する。特に、処理ユニット40は、どの時点で、どの形態で、どの頻度で、運転支援装置2が危険を警告するために運転者に警告Aを送信もしくは再送信すべきか、送信もしくは再送信すべきでないか、又はどの時点で、どの形態で、どの頻度で、危険に直面する運転者を誘導するために1つ以上の運転アドバイスCを送信すべきか、又は送信すべきでないか、及び/又はどの時点で、危険を回避するために運転者に運転支援Iを課すべきか、又は課すべきでないかどうか制御する。
【0064】
より具体的には、処理ユニット40は、以下の要素、すなわち、ステップc)で決定された運転者の危険の知覚又は知覚の欠如、運転者によって危険が知覚された瞬間、ステップb)で解析された心拍の減速の可能性のある段階の持続時間、ステップb)で解析された心拍の減速の可能性のある段階の振幅のうちの少なくとも1つに応じて、ステップd)の命令を実施する。
【0065】
ステップb)における心拍の解析は、運転者が危険を知覚したか否かだけでなく、運転者がそれを早期に知覚したか否か、すなわち、例えば間隔[0~3s]の最初の2秒にわたる解析が行われる間隔の開始時に心臓減速がちょうど終了したか否か、又は遅れて、すなわち、例えば間隔[0~3s]の最後の半分の秒にわたる解析が行われる間隔の終了時に心臓減速がちょうど開始したか否かを処理ユニット40が知ることができるようにする。したがって、ステップb)の心拍の解析により、処理ユニット40は、運転支援装置2が運転者と対話する最良の時間を決定することができる。例えば、減少段階の心拍変動の減少率に応じて、処理ユニット40により最良の時間が決定される。より具体的には、減少率が所定の閾値よりも大きい場合(すなわち、減少率が急速である場合)、処理ユニット40は、運転支援装置2に対して介入しないように、又は警告を消音するように命令する。逆に、減少率が前記所定の閾値未満である場合(すなわち、減少率が遅い)、処理ユニット40は、運転者に警告及び/又は助言するために、又は更には運転に介入するために、運転支援装置2に介入するように命令する。実際には、処理ユニット40は、危険の表示Dが受信された後、解析が実行される時間間隔にわたっていかなる心臓減速も明らかにしない場合[0;3秒]、運転支援装置2に運転者に介入するよう命令する。換言すれば、処理ユニット40は、危険の表示Dが受信されてから遅れて、すなわち3秒以上後に心臓減速が開始すること、又はこの表示Dが受信されてから3秒を超えて心臓減速が終了することを解析する場合、運転者に警告及び/又は支援するために運転支援装置2に運転者との介入を命令する。
【0066】
更に、ステップb)における心拍の解析は、処理ユニット40が、危険の知覚が運転者を少し又は多く心配させているかどうかを知ることができるようにする。運転者の心配は、減速が長時間続く場合、及び/又は心拍の変動が大きい場合、すなわち、それが所定の閾値をかなり下回った場合に顕著である。したがって、ステップb)における心拍の解析により、処理ユニット40は、危険がその全ての重大度で知覚されたか否かを決定することができ、これにより、処理ユニット40は、運転支援装置2の制御を改良することができる。
【0067】
勿論、運転支援装置を介入するように制御するために、処理ユニット40は、前述の要素のうちの少なくとも1つに加えて、ステップa)で受信された危険の表示D、特に車両からの危険の距離、及び前記危険の重大度を考慮に入れるように設計される。
【0068】
したがって、第3の改善に係る装置1の処理ユニット40は、危険及びこの危険が運転者によって知覚された方法に関する様々な情報を入力として受信し、運転装置2が運転者にどのように介入すべきかを示す命令を出力として送信するように設計される。したがって、処理ユニット40は、運転者が適切な行動反応を採用することを可能にするために最も適した適切な時間及び形態で運転支援装置2が介入することを保証する。
【0069】
本発明に係る装置1の第4の有利な改善によれば、装置1は、ステップb)における心拍のカスタマイズされた解析、及び/又はステップd)における運転装置2のカスタマイズされた制御を提供するように運転者を識別することができる。
【0070】
より具体的には、本発明に係る装置1は、識別システム50、例えば顔認識システム、又は指紋認識システムを備える。処理ユニット40は、この識別システム50と通信して、運転者を識別し、メモリ内のこの運転者に関する情報を検索するように設計される。
【0071】
次いで、処理ユニット40は、前記識別に応じて、ステップb)で実施される心拍の解析及び/又はステップd)の命令をカスタマイズするように設計される。
【0072】
識別システム50によって、運転支援装置2によって行われる介入は、初心者の運転者と経験豊富な運転者とを区別することができるため、運転者に最も適している。更に、運転支援装置2は、他の形式ではなく特定の形式の警告Aに対する運転者の感受性に応じて、好ましい形式で警告Aを送信することを好む。例えば、運転支援装置は、遠視の運転者に視覚的警告を送信しない。それは、高齢者に一定の緊急性を伴う複合形式で警告を送信するのに対して、経験豊富な運転者には単一形式で警告を送信する。
【0073】
同じ原理によれば、識別システム50によって、運転支援装置2によって送信されるアドバイスCは多かれ少なかれ規範的であり、それが送信される形態も運転者に適合される。運転支援Iはまた、ステアリングホイールにいる運転者に応じて、多かれ少なかれ急速に起動される。
【0074】
更に、識別システム50により、心臓減速度(閾値及び持続時間)を規定するパラメータは、処理ユニット40によるステップb)の解析の精度を高めるように、識別された運転者に応じて適合される。
【0075】
結果として、本発明に係る装置1のおかげで、改善の有無にかかわらず、運転者が危険を正しく知覚しているかどうかが分かり、適切な安全ソリューションを設計することが可能である。更に、本発明に係る装置のおかげで、運転支援装置2は、危険に応じてだけでなく、ハンドルにいる運転者及びこの運転者の心臓反応にも応じて運転者に介入し、その結果、状況及び運転者にとってタイミングが悪い又は不適切な警告又はアドバイスによって車室が汚染されない。これにより、運転支援装置2は、運転者の耐性が向上する。
【0076】
また、本発明は、図4に示すように、車両運転者の危険の知覚を解析するための方法にも関する。
【0077】
本発明の方法によれば、以下のステップ、すなわち、
-運転者の心拍FCを測定するステップ(図4のブロックE1によって表される)と、
-車両の周囲に存在する危険の表示Dを受信するステップ(図4のブロックE2によって表される)と、
-表示Dの受信時に始まる時間間隔にわたって、測定された運転者の心拍FCを解析するステップ(図4のブロックE3によって表される)と、
-解析された運転者の心拍が前記時間間隔内に減速段階を含むか含まないかに応じて、運転者によって危険が知覚されたか否かを決定するステップ(図4のブロックE4によって表される)と、
を実施するようにする。
【0078】
本発明に係る装置1は、例えば、本発明に係る方法を実施するように設計される。表示Dを受信するステップは、前述したステップa)に対応し、運転者の心拍を解析するステップは、前述したステップb)に対応し、運転者が危険を知覚したか否かを決定するステップは、前述したステップc)に対応する。
【0079】
図4に示すように、装置1の処理ユニット40によって表示Dを受信する(図4のブロックE2)と、運転者の瞬間心拍FC(t)の測定値が収集され(図4のブロックE1)、運転者の心拍の解析が実施される(図4のブロックE3)。これを行うために、処理ユニット40は、表示Dが受信された瞬間を初期瞬間t=0sとして確立し、運転者の瞬間心拍FC(t)及び基準心拍FCrefから心拍の変動ΔFC(t)を計算する。この解析に応じて、処理ユニット40は、運転者が危険を知覚したか否かを決定する(図4のブロックE4)。
【0080】
この決定が行われると、処理ユニット40は、任意選択的に(これは図4に破線で示されている)、図4のブロックE5によって表される前述のステップd)を実施することができる。結果として、処理ユニット40は、場合によっては、運転支援装置2に運転者の介入を命令することができる(図4のブロックE5)。この任意選択的なステップ(ブロックE5)は、前述のステップd)に対応する。処理ユニット40による介入A、C、Iの命令は、警告A及び/又はアドバイスCを送信することと、前記警告A及び/又はアドバイスを送信しないこと(例えば、それらを消音することによって)、又は運転者に運転支援Iを課すか課さないこととの両方を含む。この任意選択的なステップ(ブロックE5)は、処理ユニット40が決定ステップ(ブロックE4)において運転者が危険を知覚した(はい)と判断した場合と、運転者が危険を知覚していない(いいえ)と判断した場合の両方で実施される。
【0081】
勿論、添付の特許請求の範囲内で、本発明に対して様々な他の修正を行うことができる。
図1
図2
図3
図4