(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】電池ベースのエネルギー貯蔵システムにおける熱伝播を軽減するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20241029BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241029BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
(21)【出願番号】P 2023558786
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022073372
(87)【国際公開番号】W WO2023279096
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2024-06-27
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン エバンズ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド バウア
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ グールド
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン デクラフト
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ミハルシク
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヨンギュ
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/186495(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0163303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/651
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料であって、前記多層材料が、
絶縁層を含むコア部であって、前記絶縁層が、前記絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で、大気圧において、2psiの圧縮負荷下で、ASTM C518規格に従って測定した場合に約50mW/m・K未満、及び、600℃で、大気圧において、2psiの圧縮負荷下で、ASTM C518規格に従って測定した場合に約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する、前記コア部と、
前記コア部の外側に配置された外部であって、前記外部が熱伝導層を含み、前記熱伝導層が、前記熱伝導層の面内寸法に沿って、37.5℃で、大気圧において、2psiの圧縮負荷下で、ASTM C518規格に従って測定した場合に少なくとも約200mW/m・Kの熱伝導率を有する、前記外部と、
を含み、
前記熱伝導層が実質的にL字型であり、前記L字型熱伝導層の垂直部分が前記絶縁層から間隔をおいて配置されるようにしてあり、前記L字型熱伝導層の水平部分が前記絶縁層と接触している、多層材料。
【請求項2】
前記熱伝導層が前記絶縁層と接触している、請求項1に記載の多層材料。
【請求項3】
前記熱伝導層が、前記絶縁層の両側の第1の伝導層と第2の伝導層とに分割されており、前記第1の伝導層及び前記第2の伝導層が前記絶縁層と接触している、請求項1に記載の多層材料。
【請求項4】
前記熱伝導層が、金属、炭素、導電性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの層を含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項5】
前記熱伝導層が、アルミニウム、銅、またはスチールを含む金属を含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項6】
前記熱伝導層が、前記
外部の外層である、請求項1に記載の多層材料。
【請求項7】
前記熱伝導層が、メッシュ、シート、有孔シート、ホイル、及び穿孔ホイルから成るグループから選択された形態である、請求項1に記載の多層材料。
【請求項8】
前記絶縁層が、雲母、セラミック、無機繊維綿、樹脂、または無機発泡体を含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項9】
前記絶縁層がエアロゲルを含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項10】
前記エアロゲルが補強材を含む、請求項9に記載の多層材料。
【請求項11】
前記補強材が、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維を含む、請求項10に記載の多層材料。
【請求項12】
前記繊維が、別々の繊維、織布材料、ドライレイド不織布材料、ウエットレイド不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、フェルト、及び/またはそれらの組み合わせの形態である、請求項11に記載の多層材料。
【請求項13】
前記無機繊維が、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の多層材料。
【請求項14】
前記エアロゲルがシリカ系エアロゲルを含む、請求項9に記載の多層材料。
【請求項15】
前記エアロゲルが1つ以上の添加剤を含み、前記1つ以上の添加剤が、前記エアロゲル
の約5~20重量パーセント
の量で存在する、請求項9に記載の多層材料。
【請求項16】
前記1つ以上の添加剤が、前記エアロゲル
の約10~20重量パーセント
の量で存在する、請求項15に記載の多層材料。
【請求項17】
前記1つ以上の添加剤が防火等級添加剤を含む、請求項15に記載の多層材料。
【請求項18】
前記1つ以上の添加剤が、B
4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag
2O、Bi
2O
3、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、鉄チタン酸化物、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、鉄チタン酸化物(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物から選択された乳白剤を含む、請求項15に記載の多層材料。
【請求項19】
前記1つ以上の添加剤が、炭化ケイ素を含む乳白剤を含む、請求項15に記載の多層材料。
【請求項20】
前記1つ以上の添加剤が、防火等級添加剤及び乳白剤の組み合わせを含む、請求項15に記載の多層材料。
【請求項21】
前記エアロゲルが、2psiの圧縮力で、ASTM C167規格に従って測定した場合に約0.25g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、請求項9に記載の多層材料。
【請求項22】
前記エアロゲルが、3点曲げ試験により測定した場合に約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する、請求項9に記載の多層材料。
【請求項23】
前記エアロゲルが圧縮抵抗を示し、25%ひずみの前記圧縮抵抗が約40kPa~約180kPaの間である、請求項9に記載の多層材料。
【請求項24】
前記熱伝導層の一部分と前記絶縁層との間に配置された熱容量層をさらに含み、前記熱容量層が、少なくとも約0.2J/(g・
℃)の
比熱容量を有する、請求項1に記載の多層材料。
【請求項25】
前記熱容量層が相変化材料を含む、請求項24に記載の多層材料。
【請求項26】
前記熱容量層が、アルミニウム、チタン、ニッケル、スチール、または鉄を含む金属を含む、請求項24に記載の多層材料。
【請求項27】
前記熱伝導層の一部分と前記絶縁層との間に配置された犠牲材料層をさらに含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項28】
前記犠牲材料層が、シロキサン、ポリオレフィン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、セルロースアセテート、及びポリスチレンから成るグループから選択された材料を含む、請求項27に記載の多層材料。
【請求項29】
前記犠牲材料層が、発泡体の形態である、請求項27に記載の多層材料。
【請求項30】
前記犠牲材料層の化学分解の開始温度が、熱重量分析を使用して測定した場合に約200℃~約400℃の範囲である、請求項27に記載の多層材料。
【請求項31】
前記熱伝導層と前記絶縁層との間に配置された封入層をさらに含む、請求項1に記載の多層材料。
【請求項32】
前記封入材料層が、1つ以上のポリマー層を含む、請求項31に記載の多層材料。
【請求項33】
前記多層材料が、非圧縮状態で約2mm~約10mmの間の平均厚さを有する、請求項1に記載の多層材料。
【請求項34】
前記熱伝導層が実質的にL字型であり、前記L字型熱伝導層の垂直部分が前記絶縁層から間隔をおいて配置されるようにしてあり、前記L字型熱伝導層の水平部分が前記絶縁層と接触しており、封入材料層、犠牲材料層、及び熱容量層のうちの1つ以上が、前記L字型熱伝導層の前記垂直部分と前記絶縁層との間に配置される、請求項1~33のいずれか1項に記載の多層材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月2日に出願され、「Materials,Systems,and Methods for Mitigation of Electrical Energy Storage Thermal Events」と題された米国仮特許出願第63/218,205号、2022年3月26日に出願され、「Systems and Methods for Mitigating Thermal Propagation in Battery-Based Energy Storage Systems」と題された米国仮特許出願第63/324,060号、及び2022年3月28日に出願され、「Systems and Methods for Mitigating Thermal Propagation in Battery-Based Energy Storage Systems」と題された米国仮特許出願第63/324,522号に対する優先権を主張するものであり、これらの各米国仮特許出願の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、エネルギー貯蔵システムにおける熱暴走の問題等の熱イベントを軽減するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、電池ベースのエネルギー貯蔵システムの一部分が熱イベント(例えば、熱暴走)を受けた後に、隣接するセル、モジュール、またはパックで熱伝播が発生するのを防止するためのシステム、方法、及び技法を提供する。本開示は、さらに、熱伝播を軽減するための本技術による熱バリア材料の量(例えば、厚さ、体積など)を含む、1つ以上の電池セルを有する電池モジュールまたは電池パック、ならびにそれらの電池モジュールまたは電池パックを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池等の再充電可能電池について、動力駆動のエネルギー貯蔵システムで広い用途があることが発見されている。リチウムイオン電池(LIB)は、携帯電話、タブレット、ラップトップ、電動工具等のポータブル電子デバイスを給電する際に広く使用され、そして、従来の電池と比較して、その高い作動電圧、低いメモリ効果、及び高エネルギー密度のため、電気自動車等の他の高電流のデバイスを給電する際にも広く使用されている。しかしながら、再充電可能電池が過充電され(設計電圧を超えて充電される)、過放電され、高温及び高圧で動作するとき、または高温及び高圧に曝されるとき等、LIBは「過酷状態」の下で突発故障の影響を受けやすいので、安全上の懸念がある。結果として、LIBの設計範囲外の状態に曝されるとき急速な自己発熱または熱暴走イベントによってLIBが故障し得るため、狭い動作温度範囲及び充電/放出速度はLIBの使用上の制限がある。
【0004】
図1に示されるように、LIBの電気化学セルは、主に、正の電極、負の電極、リチウムイオンを導電することが可能である電解質、正の電極及び負の電極を分離するセパレータ、ならびに電流コレクタから成る。LiCoO
2、LiFePO
4、LiMn
2O
4、Li
2TiO
3、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2(NCA)、及びLiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(NMC)は、Liイオン電池で広く使用されている6つのタイプのカソード材料である。これらの6種類の電池が、現在の電池市場のマーケットシェアの大部分を占めている。電解質は、特有の溶媒(主に、エチレンカーボネート(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)を含む)で溶解されたリチウム塩から成る。リチウム塩は、一般的に、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiBOB等から選択される。セパレータ材は、概して、ポリオレフィン系樹脂材料である。ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)の微多孔膜は、通常、商業用リチウムイオン電池でセパレータとして使用される。アルミニウムホイルは、通常、正の電極用の電流コレクタ及び負の電極用の銅はくとして使用される。硬質炭素、カーボンナノチューブ、及びグラフェンを含む炭素系材料は、現在、商業用リチウムイオン電池のほとんどの負の電極の主要な選択肢となっている。また、チタン系酸化物、合金/脱合金材料、及び変換材料等の他の新規の負の電極材料も調査されており、これは良好な熱的性能及び電気化学的性能を示している。
【0005】
正常状態でのLIBの動作
正常動作では、リチウムイオンは、電解質及びセパレータを通る一方の電極から他の電極への拡散及びマイグレーションによって移動する。
【0006】
LIBの充電により、電解質溶液中のリチウムイオンが、カソードからセパレータを通って、リチウムイオン自体がアノードに挿入するようにマイグレーションさせる(
図2)。また荷電平衡電子はアノードに移動するが、充電器の外部回路を通って進む。放電されると、逆流プロセスが発生し、電子は電力が供給されているデバイスを通って流れる(
図2)。このプロセス中、3つの主要なメカニズムによってセル内で発熱する。第1のメカニズムは、リチオ化プロセス(放電)及び脱リチウムプロセス(充電プロセス)の間に発生するレドックス反応と関連付けられたエントロピー変化によって生じる可逆熱である。また、可逆熱はエントロピー熱とも呼ばれる。第2のメカニズムは、セルの過電圧によって生じる電極分極と関連付けられた不可逆熱である。最後に、抵抗損と関連付けられた不可逆熱が存在し、これはジュール加熱と呼ばれる。ジュール加熱は、セル内のリチウムイオン及び電子の移動に起因している。正常状態で、自己発熱は非常に少なく、一般的に重要度が低く、容易に、良好な電池設計または電池温度管理システムによって放散できる。しかしながら、過酷状態で、熱暴走を生じさせるいくつかの副反応が発生する可能性がある。熱暴走の原因を理解することで、LIBの安全性及び信頼度を改善させるための機能材料の設計を導くことができる。
【0007】
熱暴走及び熱暴走伝播の概要
取り出しできる熱よりも多くの熱が発生する点まで内部の反応速度が増加するとき、熱暴走は発生し得、反応速度及び発熱の両方のさらなる増加をもたらす。熱暴走中、高温は、電池の発熱反応の連鎖を誘発し、電池の温度が急増する。多くの場合、熱暴走が一方の電池セルで発生するとき、発生した熱は、熱暴走を受けるセルに密接してセルを速く加熱させる。熱暴走反応に追加される各セルは、反応を継続させる追加エネルギーを封じ込め、電池パック内で熱暴走伝播を生じさせ(
図3)、最終的に、火事または爆発が生じる大事故をもたらす。熱伝達経路の迅速な熱放散及び効果的なブロックは、熱暴走伝播によって生じる危険性を減らす効果的な対策であり得る。
【0008】
熱暴走の誘起-過酷状態
熱暴走は、機械暴走、電気暴走、及び熱暴走を含む様々な種類の暴走によって誘発される可能性がある(
図3)。暴走の各タイプは、昇温をもたらす電池の内部短絡(ISC)を誘起し得る。過酷状態は外部または内部で開始できる。例えば、サービスにより誘起されたストレス、劣化、設計上のエラー、例えば、セル間隔、セル相互接続スタイル、セルフォームファクター等の構成パラメータ、製造、動作、及びメンテナンスは、様々な種類の暴走を生じさせる可能性がある内部要因である。外部要因は、セルの落下から、またはセルの貫入等から、LIBに対する損害または損傷を含む。
【0009】
機械暴走
機械暴走は、主に、機械力によって生じ、通常、衝突、粉砕、貫入、及び曲げを含む深刻な自動車事故等の外部要因により発生する。電池または電池パックは衝突で衝撃を受ける、または巻き込まれるとき、セパレータの断裂及び可燃性電解質の漏出を含む電池内側の潜在的な損傷が発生し得、ISCが開始し、次に、熱暴走をもたらす。かけられた力によって生じる破壊的変形及び変位は、機械暴走の2つの一般的な特徴である。電池パックの変形は、車の衝突事故中に可能性が十分にある。電気自動車に搭載された電池パックのレイアウトは、電池パックの衝突応答に影響を与える。電池パックの変形は危険な影響をもたらし得る。電池セパレータは引き裂かれ得、内部短絡(ISC)が発生する。可燃性の電解質は漏出し、潜在的に結果として火事を生じさせる。貫入は、車両衝突事故中に発生し得る別の一般的な現象である。粉砕状態を比較すると、貫入が開始するとき、激しいISCを瞬時に誘発できる。機械的破壊及び電気的短絡は同時に発生し、貫入の過酷状態は、単純な機械暴走または電気暴走よりもさらに深刻になる場合もある。
【0010】
電気暴走
電気暴走は、主に、LIBの内部短絡または外部短絡、過充電、及び過放電を含む。
【0011】
内部短絡は、過酷状態の90%を超える割合で発生する。大まかに説明すると、電池セパレータの故障により、カソード及びアノードが相互にぶつかるとき、内部短絡が発生する。内部短絡は、(1)セパレータが貫入または粉砕によって故障されるときの機械暴走、(2)デンドライト成長によってセパレータが貫入するときの電気暴走(
図4)、及び(3)セパレータが高温で圧壊するときの熱暴走、によって生じる可能性がある。
【0012】
電圧差がある電極が導体によって接続されるとき、外部短絡は形成される。電池パックの外部短絡は、車の衝突事故中の変形、浸水、導体による汚染、またはメンテナンス中の電気ショック等によって生じる可能性がある。貫入を比較すると、概して、外部短絡の回路上に放出された熱はセルを加熱しない。外部短絡は、電池で大電流及び高い発熱を生じさせる可能性があり、これは、主に、オームの法則に従う発熱によって生じる。温度が約70℃を超え始めると、セルは断裂し始める。結果として、排出及び電解質漏出を誘発し得る。
【0013】
過充電は、その設計電圧を越えて電池を充電するものと定義できる。過充電は、アノード上のLi金属の堆積を含む一連の問題点を引き起こす可能性があり、そして電池の電気化学的性能及び安全性に深刻に影響を与える、特有の高電流密度、活発な充電プロファイル等と、酸素を放出するカソード材料の分解と、そして、熱及びガス状生成物(H2,炭化水素,CO等)を放出する有機電解質の分解と、によって誘発され得る。過充電プロセスは3つの段階に分割できる。第1の段階では、(1)電圧及び温度は影響を受けなく、実質的に不変のままである。第2の段階では、(2)リチウムデンドライト堆積は電圧プラットフォームで発生する。そして、第3の段階では、(3)熱及びガスが生成されると、電圧が劇的に低下し、電池で熱暴走が生じる。
【0014】
過放電は、別の可能性がある電気過酷状態である。概して、電池パック内の複数のセルの電圧の不一致は避けられない。したがって、電池管理システムがいずれかの単一セルの電圧を監視できなくなると、最低電圧を伴うセルは過放電される。過放電暴走のメカニズムは他のメカニズムと異なり、潜在的危険性が軽視され得る。電池パックで最低電圧を伴うセルは、過放電中に直列に接続された他のセルによって、強制的に放出される可能性がある。強制的な放出中、極は逆になり、セルの電圧は負になり、過放電セルで異常発熱をもたらす。
【0015】
熱暴走
熱暴走は、一般的に、過熱によって誘発される。リチウムイオン電池の過熱は、機械暴走、電気暴走、及びコネクタの接触損失によって生じ得る。一般的に、正常の動作温度で、LIBが安定される。しかしながら、特定の温度を上回ると、LIBの安定性は予測不可能になり、そして、昇温において、電池ケース内の化学反応は、電池ケース内の内圧の増加をもたらすガスを生成する。これらのガスは、さらにカソードと反応する可能性があり、より多くの熱を放出し、酸素の存在下で電解質を発火させる可能性がある温度を電池の内部でまたは電池に隣接して生成する。電解質が燃焼するとき、酸素が生成され、さらに燃焼が激しくなる。ある時点において、電池ケース内の圧力の上昇は、電池ケースの断裂をもたらす。漏出ガスは点火し、燃焼し得る。
【0016】
機械過酷状態、電気過酷状態、及び熱過酷状態によって生じる熱暴走は、連続的な発熱を誘起し得、結果として、電池の内側で温度が上昇する。一連の連鎖反応は、温度が増加するにつれて、異なる段階で発生し得る。熱暴走は、例えば物理ブロセス及び/または化学プロセスの連鎖反応のメカニズムに従い、それらのプロセス中、電池構成要素材料の分解反応は次々に発生する(
図3)。
【0017】
熱暴走中の連鎖反応の概要
これらの物理及び/または化学物質プロセスの進化を理解することは、LIBの熱暴走のための軽減対策を開発するのを助ける。LIBは、状態I:低温(<0℃)、状態II:正常温度(0~90℃)、及び状態III:高温(>90℃)を含む、異なる温度状態またはレジームで熱暴走に対する異なる誘起をもたらし得る(
図5)。
【0018】
状態Iでは、低温では電気化学反応速度の低下をもたらすため、LIBは効率的に動作できない。低温において、電極材料の活性及び電解質中のリチウムイオン拡散速度の低下の結果として、電池性能は劇的に低下する。低温における化学反応が減速した結果は、不要なLi堆積、めっき、及びデンドライト成長を含む。デンドライトは、電池のリチウムめっき上に形成される可能性がある木のような構造である。デンドライトは、電池のセパレータ、そして電池のアノードとカソードとの間に多孔質プラスチック膜に速く浸透する可能性がある(
図4)。セル内のLi堆積及びデンドライト成長は、低温における熱暴走を誘起するための主要な要因と見なされる。理論に縛られることを望まないで、不要なLi堆積及びデンドライトが、電池でISCが生じ得、熱暴走をもたらすことが考えられる。
【0019】
状態II(正常温度の動作)では、発熱は、熱暴走プロセスで生成された熱と比較して最小になる。この動作状態中の発熱は、主に、固体及び液相のLiイオン拡散、固液界面における電気化学反応、及び副反応によって生じる。発熱は、電池の内側で温度上昇及び温度差を生じさせる可能性があり、これらの温度差は、リチウムイオン電池の寿命及び安全性に影響を与え得る。段階IIの間、電池が過充電されること、過度温度への露出、誤配線による外部短絡、またはセル欠陥による内部短絡等の上述した少なくとも1つの内部または外部の誘起の結果として、初期の過熱が発生する可能性がある。初期の過熱が開始するとき、温度が90℃に向かって上昇するにつれて、電池動作は正常状態から異常状態に変化する。温度が40℃よりも高くなると、リチウムイオン電池の寿命は、副反応が速まるため短縮し得、温度が約90℃以上になると、固体電解質相間界面(SEI)膜の分解を誘発する可能性があり、これは熱暴走の開始として定義される。SEIは、充電サイクルうちの最初の数個のサイクル中、リチウムイオン電池のアノード上に生成される。SEIはアノード表面上にパッシベーション層を提供し、パッシベーション層は、さらなる電解質分解を阻止し、多くの用途に必要な長いカレンダー寿命をもたらす。SEIの初期分解は、熱暴走の全プロセス中に発生する最初の副反応と見なされる。SEIの初期分解は80~120℃で発生し、約100℃にピークが示される。開始温度は、SEIの分解が57℃と同じくらいの低い温度から開始する場合があると報告されたWang et al.(Thermochim.Acta 437(2005)12-16)のように、80℃よりも低くなる可能性がある。
【0020】
SEIの分解
段階IIIが開始すると、内部温度は速く上昇しSEI膜の分解をもたらす。SEI層は、主に、安定成分(LiF及びLi2CO3等)及び準安定成分(ポリマー、ROCO2Li、(CH2OCO2Li)2、及びROLi等)から成る。しかしながら、準安定成分は、大体90℃を超える温度で発熱分解でき、可燃性ガス及び酸素を放出する。SEI膜の分解は熱暴走が開始し、その後、一連の発熱反応が誘発されると考えられる。
【0021】
SEIの分解が生じる場合、温度が上昇し、アノードのリチウム金属またはインターカレートされたリチウムは、電解質中の有機溶媒と反応し、可燃性炭化水素ガス(エタン、メタン等)を放出する。これは、温度上昇をさらに活発にする発熱反応である。
【0022】
セパレータの分解
T(温度)>約130℃のとき、ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)のセパレータが融解し始め、さらに、状況が悪化し、カソードとアノードとの間に短絡が生じる。PE/PPセパレータの融解は熱吸着プロセスであるが、セパレータの融解によって生じるISCにより、熱暴走プロセスがさらに悪化する。
【0023】
電解質のガス放射及び分解
T(温度)>約180℃になると、ISCによって生成された熱は、リチウム金属酸化物カソード材料の分解が生じさせ、酸素の放出をもたらす。また、カソードの故障はより高い発熱が生じ、さらに温度及び圧力が増加し、結果として、さらに反応が加速する。次に、熱蓄積及びガス放出(酸素及び可燃性ガス)は、リチウムイオン電池の燃焼及び爆発を誘起する。
【0024】
熱暴走プロセスでは、ISCによって生じる発熱はわずか2%であり、SEI層の分解、電解質の分解等を含む化学反応による発熱は98%である。カソードとアノードとの間の急速な酸化還元反応によって生じる発熱の最大の割合が約48%である一方、アノード、カソード、及び電解質における他の化学反応の発熱ははるかに小さい。最小発熱はSEI膜の分解である。
【0025】
熱暴走に対する軽減対策の必要性
電池熱暴走をもたらすメカニズムの理解に基づいて、電池構成要素の合理的設計により安全上の危険性を減らす目標で、多くのアプローチが検討されている。そのようなカスケード熱暴走イベントが発生することを防止するために、一般的に、LIBは、貯蔵されるエネルギーを十分に低く維持すること、または電池モジュールもしくは電池パックの内部のセルの間の十分な絶縁材料を利用すること、または隣接セルで発生し得る熱イベントからセルを絶縁すること、あるいはそれらの組み合わせ、のいずれか一方で設計される。前者は、そのようなデバイスに潜在的に貯蔵され得るエネルギー量を厳密に制限する。後者は、クローズセルを設置できる方式を制限することによって、有効エネルギー密度が制限される。LIBの熱暴走の可能性を軽減するための効果的な絶縁及び熱放散対策が必要である。
【0026】
LIB用に使用される現在の熱放散手段
現在、エネルギー密度を最大限にする一方、カスケード熱暴走を防ぐように用心するために、いくつかの異なる手段が利用されている。1つのアプローチとして、セルの間に、またはセルのクラスターの間に十分な絶縁量を取り込むことがある。このアプローチは、概して、安全的な利点から望まれることが考えられる。しかしながら、このアプローチでは、必要な絶縁体の体積と組み合わされた熱を封じ込める絶縁材料の能力から、実現できるエネルギー密度の上限が決定される。別のアプローチは、相変化材料を使用することによって行われる。これらの材料は、特定の昇温に達すると、吸熱相変化を受ける。吸熱相変化は、生成されている熱の一部を吸収し、ひいては、局所領域を冷却する。一般的に、電気ストレージデバイスに関して、これらの相変化材料は、例えば、ワックス及び脂肪酸等の炭化水素材料に依存する。これらのシステムは冷却において効果的であるが、システム自体に可燃性があり、ひいては、ストレージデバイス内で点火が発生すると、熱暴走を防止するのに有益でない。膨張材料を取り入れることは、カスケード熱暴走を防止するための別の対策である。これらの材料は規定温度を上回ると拡張し、軽量になるように設計される炭化物を生成し、必要なとき、断熱を提供する。これらの材料は、絶縁の利点をもたらすのに効果的である可能性があるが、材料の拡張について、ストレージデバイスの設計を考慮する必要がある。
【0027】
LIBのシステムの機械的要求を満たす新規の熱バリアの必要性
充電中及び放電中にアノード及びカソードの膨張は、セルの寸法の(膨張)変化をもたらす可能性がある。例えば、シリコンは、インターカレーション中に一般的な最大300%の体積変化をもたらし、グラファイトは、約10%の体積膨張をもたらす。この変化は、正確なセル化学反応に依存する大きさがある、可逆成分及び不可逆成分の両方をもたらす。セル厚の可逆変化は、セルの充電状態(SOC)だけに依存し、2%よりも大きい厚さの増加をもたらす可能性がある。セルの不可逆膨張はセルの内側に圧力の増加と関連付けられ、SEIの形成によって生じる。この変化の最大の要因は、SEIが最初に形成されるとき、第1の充電サイクル中に発生するが、セルの寿命中に膨張が継続する。
【0028】
熱暴走の問題を防止する好ましい熱特性を保有する新規材料を作成するために広範囲の研究が行われているが、それらの材料の機械特性は、その重要性があるにもかかわらず、多くの注意が払われていない。例えば、セルの寿命中に継続するセルの膨張に適応するために圧縮変形に対する抵抗を提供できる電池モジュールまたは電池パック内のセルの間に使用される効果的な熱バリアが必要である。加えて、電池モジュールの初期の組立中、1MPa以下の比較的に低負荷は、一般的に、セルの間の材料に加えられる。電池モジュールまたは電池パックの内部のセルが、充電/放電サイクル中に拡張または膨張するとき、最大約5MPaの負荷はセルの間の材料に加えられ得る。したがって、材料の圧縮率、圧縮弾力性、及びコンプライアンス、例えば、セルの間の熱バリアは重要な特性である。
【0029】
したがって、熱暴走状態下での効果的な断熱、及び正常状態下での効果的な熱放散を提供するために、LIBシステムの機械的要求を満たす新規の熱バリアが必要とされる。
【発明の概要】
【0030】
本開示の目的は、再充電可能電池システム、例えばリチウムイオン電池の熱伝播を防止または軽減するために、上述した先行の方法及びシステムの少なくとも1つの不利点を未然に防ぎまたは減らすことである。本開示は、圧縮可能熱バリアを含む方法及びシステムを提供する。本開示の圧縮可能熱バリアは、エネルギー源の一部分が熱イベントを受けたときに、隣接するセル、モジュール、及び/またはパックの間での熱伝播を防止する大きさに作られている。
【0031】
本開示の文脈において、熱伝播の軽減は、損傷セル(すなわち、臨界温度を超える熱イベントを受けたセル)に隣接したセルが熱暴走を受けないことを意味する。すなわち、損傷セルに隣接したセルが、損傷セルから放散される熱から遮蔽される。この遮蔽またはバリアのおかげで、隣接したセル内の温度が臨界温度を超えることはなく、したがって損傷セルに隣接したセルが熱暴走に追い込まれることはない。
【0032】
特に、本開示の目的は、所定の大きさの熱バリア材料を用いて熱伝播を軽減する方法及びシステムを提供することである。これらの方法及びシステムは、個々のセルの面エネルギー密度(すなわち、隣接したセルにエネルギーを伝達することが可能な領域にわたるセルに貯蔵されたエネルギー)の理解に基づいている。所定の大きさ(例えば、厚さ)は、セルの面エネルギー密度の要求を満たすように調整される。いくつかの実施形態では、所定の厚さは、熱的に損傷したセルからの熱伝播が、隣接した任意のセルに到達するのを防止する。ある実施形態では、所定の厚さは、その圧縮時の厚さ(すなわち、動作中に2つの隣接セル間で圧縮された厚さ)が、損傷セルから隣接したセルへの熱伝播を防止するように選択される。通常は、圧縮可能熱バリアは、この熱伝播保護を長期間にわたって提供する。例えば、損傷セルが損なわれている全期間にわたって(すなわち、損傷セルの全燃焼イベントの間)である。ある実施形態では、圧縮可能熱バリアの厚さは、特定期間の保護、例えば、25分、30分、1時間、2時間、3時間、5時間、24時間の保護を提供するように選択される。ある実施形態では、隣接したセル/モジュール/パックなどの間に配置される圧縮可能熱バリアの厚さは、非圧縮状態で、1.5mm~約7mmの範囲の所定の大きさ(例えば、厚さ)を有する。いくつかの実施形態では、隣接したセル/モジュール/パックなどの間に配置される圧縮可能熱バリアの厚さは、非圧縮状態で、2mm~約6mmの範囲の所定の大きさ(例えば、厚さ)を有する。圧縮可能熱バリアの厚さは、圧縮されると、非圧縮状態と比較して、減少する。典型的な圧縮時の厚さは、約0.8mm~6mmの範囲である。いくつかの実施形態では、圧縮時の厚さは、約1.0mm、約1.25mm、約1.5mm、約1.75mm、または約2.0mmである。
【0033】
本開示の別の目的は、1つのセルの熱暴走による熱損傷から電池パックを保護し、電池パックの安全設計を確保し得る、本開示によるシステム及び方法を用いる電池モジュールまたは電池パックを提供することである。
【0034】
1つの全体的な態様では、本開示は、動力電池の熱放散性能及び熱暴走保護性能を同時に改善するために使用される電池モジュール及び電池パックを提供することを目標とする。
図6を参照すると、動力駆動式エネルギー貯蔵システムでは、いくつかのセル100が電池モジュール200を形成するために、事前に選択された構成(例えば、並行に、直列に、または組み合わせて)で一緒にパックされることが一般的である。そのようないくつかの電池モジュールは、さらに、当技術分野で既知の様々な電池パック300を形成するように組み合わされ得るまたは接合され得る。動作中及び放電中、そのようなセル、電池モジュール、または電池パックは、通常、それから生じる性能に著しく悪影響を与える可能性がある熱量を生成または発生する。したがって、そのようなセル、または結果として生じる電池モジュールもしくは電池パックによって、所望または最適な性能を維持するために、一般的に、適正に狭い規定範囲内でそのようなセル、電池モジュール、または電池パックの温度を維持することは重要である。本開示の目標は、最適範囲内のそのようなセル、電池モジュール、または電池パックの温度を維持することである。
【0035】
規定範囲内にセルの温度を維持することに加えて、また、セルの構造的完全性を維持する目的もある。セル内の材料は、電池の動作中に体積の変化に適応する柔軟性及び復元力の両方があることが必要である。いくつかの実施形態では、方法及びシステムは、熱イベントの後または最中に構造的完全性を維持するために、その方法及びシステムに組み込まれる難燃性または耐火性の材料を含む。
【0036】
本方法及びシステムの実施形態では、圧縮可能熱バリアは、絶縁材料の単層として提供される。実施形態では、絶縁材料はエアロゲルの形態である。ある実施形態では、エアロゲルは、複合材料で形成されることがある。いくつかの実施形態では、エアロゲルは添加剤を含むことがある。通常は、絶縁材料は圧縮可能である。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態は、隣接セル間に配置された単層の熱バリアを特徴としているが、本開示は単層材料に限定されない。例えば、いくつかの実施形態は、電池モジュールまたは電池パックにおける熱伝播の問題を解決すること、及び1つのセルが熱暴走をもたらすとき、熱伝播を停止しまたは軽減することのために、電気エネルギー貯蔵システムで熱バリアとして使用するための多層材料を特徴としている。本開示の多層材料の固有の構成は、セルの間の熱伝播の問題点を解決するのを助けることができる。一般に、多層熱バリアは、絶縁材料の1つ以上の層を含む。熱伝播を軽減するために本開示に従って調整されるのは、絶縁層の大きさまたは量である。
【0038】
一態様では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するために本明細書に提供される多層材料は、その最大表面に垂直な方向に交互に積み重なる、少なくとも1つの絶縁層及び少なくとも1つの熱容量層の層状集合を含むコア部と、コア部の外側に配置された外部であって、圧縮可能パッドを含む少なくとも1つの犠牲材料層と、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせから選択された少なくとも1つの封入材料層とを含む、外部と、を含む。理論に縛られることを望むものではないが、多層材料を含む熱バリアの所定の大きさを選択する際に、その熱伝播を防止するために選択される大きさは、多層材料の絶縁層(複数可)の厚さに採り入れられることが考えられる。
【0039】
1つ以上の実施形態では、上記の態様のいずれかに従った多層材料は、非圧縮状態で約2mm~約10mmの範囲の平均厚さを有する。いくつかの実施形態では、多層材料内の絶縁層の厚さは、非圧縮状態で約1mm~約7mmの範囲の厚さを有する。ある実施形態では、多層材料の絶縁層は、非圧縮状態で1.5mm~約5mmの範囲の所定の大きさ(例えば、厚さ)を有する。圧縮状態では、絶縁層は、例えば、約1.25mmまたは約1.5mmなど、約0.75mm~約2.5mmの厚さを有し得る。
【0040】
上記の態様、方法、及びシステムの実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、絶縁層(複数可)(熱バリアに多層材料が使用される場合)または単層熱バリアは、エアロゲルを含み、場合によっては補強材をさらに含む。いくつかの実施形態では、補強材は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維である。いくつかの実施形態では、繊維は、別々の繊維、織布材料、ドライレイド不織布材料、ウエットレイド不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、フェルト、及び/またはそれらの組み合わせの形態である。いくつかの実施形態では、無機繊維は、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、またはそれらの組み合わせから選択される。1つ以上の実施形態では、エアロゲルは、シリカ系エアロゲルを含む。1つ以上の実施形態では、エアロゲルは1つ以上の添加剤を含み、添加剤は、エアロゲルの少なくとも約5~40重量パーセントのレベルで、好ましくは、エアロゲルの少なくとも約5~20重量パーセントレベルで、より好ましくは、エアロゲルの少なくとも約10~20重量パーセントレベルで存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は防火等級添加剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は、B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi2O3、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、鉄チタン酸化物、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、鉄チタン酸化物(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物から選択された乳白剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は炭化ケイ素を含む乳白剤を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の添加剤は防火等級添加剤及び乳白剤の組み合わせを含む。1つ以上の実施形態では、エアロゲルは約0.25g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する。1つ以上の実施形態では、エアロゲルは、モノリス、ビーズ、粒子、顆粒、粉末、薄膜、シート、またはそれらの組み合わせの形態である。
【0041】
別の実施形態では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料は、絶縁層を含むコア部であって、絶縁層が、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する、コア部と、コア部の外側に配置された外部であって、外部が熱伝導層を含み、熱伝導層が、該熱伝導層の面内寸法に沿って、少なくとも約200mW/m・Kの熱伝導率を有する、外部と、を含む。
【0042】
実施形態では、熱伝導層が、絶縁層の両側の第1の伝導層と第2の伝導層とに分割されており、第1の伝導層及び第2の伝導層が絶縁層と接触している。特定の実施形態では、熱伝導層が実質的にL字型であり、L字型熱伝導層の垂直部分が絶縁層から間隔をおいて配置されるようにしてある。L字型熱伝導層の水平部分は、絶縁層と接触している。封入材料層、犠牲材料層、及び熱容量層のうちの1つ以上が、L字型熱伝導層の垂直部分と絶縁層との間に配置され得る。
【0043】
実施形態では、電池モジュールは、第1の表面を有する第1の電池セルと、第2の表面を有する第2の電池セルであって、第2の表面が第1の表面に対して対向する、第2の電池セルと、絶縁層を含むコア部と、コア部の外側に配置された外部とを有する多層材料であって、外部が熱伝導層を含む、多層材料と、を含む。電池モジュールは、第1の電池セル、第2の電池セル、及び多層材料の熱伝導層と接触する熱交換システムをさらに含む。実施形態では、多層材料は、対向する第1の表面及び第2の表面の表面積の少なくとも約80%を覆う。一実施形態では、多層材料の絶縁層が、熱交換システム内に延在する。
【0044】
多層材料の熱伝導層は、熱交換システム、及び電池セルの1つと熱連通する。多層材料と電池セルとの間の熱連通は、熱伝導性材料を電池セルの表面に接触させて設置することによって達成され得る。この構成により、電池セルによって生成された熱が、熱伝導層を介して熱交換システムに引き込まれることが可能になる。
【0045】
熱暴走を受けている電池セルからの熱伝播は、電池セル間に適切な多層材料を設置することによって抑制され、または最小限に抑えられることが可能である。実施形態では、多層材料は、少なくとも0.01の熱抵抗係数を有する。熱抵抗係数は、多層材料の熱抵抗の、電池モジュール内の電池セルの面エネルギー密度に対する比である。電池セルアレイの面エネルギー密度は、アレイ内の全セルの総エネルギー密度の、アレイの外部表面に対する比である。多層材料はまた、少なくとも約0.3の厚さ係数を有し得る。厚さ係数は、多層材料の厚さの、電池セルの面エネルギー密度に対する比である。
【0046】
実施形態では、エネルギー貯蔵システムの設計方法は、1つ以上の電池セル(複数可)を組み立ててアレイを形成することと、アレイの面エネルギー密度を計算することと、アレイの面エネルギー密度に従って、エネルギー貯蔵システムが、少なくとも約0.01の熱抵抗係数、及び少なくとも約0.3の厚さ係数を有するように、多層材料の熱抵抗及び圧縮時の厚さを選択することと、アレイ内に及び/またはアレイの周囲に多層材料を配置することと、を含む。一実施形態では、アレイのセル面積エネルギー密度が既知である。暴走伝播を抑制できる多層材料の圧縮時の厚さを選択することは、この実施形態では、多層材料の熱抵抗係数を計算することと、熱伝播マップから、多層材料の最小の圧縮時の厚さを読み取ることと、最小の圧縮時の厚さよりも大きい圧縮時の厚さを選択することと、を含む。同様に、熱抵抗及び圧縮時の厚さを選択することはまた、アレイの電池セル間に設置することができる多層材料の厚さ係数を計算することと、熱伝播マップから、多層材料の最小熱抵抗を読み取ることと、最小熱抵抗よりも大きい多層材料の熱抵抗を選択することとによって達成され得る。
【0047】
別の態様では、本明細書に提供されるデバイスまたは車両は、上記の態様のいずれか1つに従った電池モジュールまたは電池パックを含む。いくつかの実施形態では、該デバイスは、ラップトップコンピューター、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、ディスプレイパネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピューター、軍用ポータブルコンピューター、軍用電話、レーザー測距器、デジタル通信デバイス、機密情報収集センサー、電子統合型衣料品、暗視機器、電動工具、電卓、無線、リモート制御機器、GPSデバイス、ハンドヘルドテレビ及びポータブルテレビ、カースターター、懐中電灯、音響デバイス、ポータブル加熱デバイス、ポータブル電気掃除機、またはポータブル医療ツールである。いくつかの実施形態では、車両は電気自動車である。
【0048】
本明細書に説明される方法及びシステムは、既存の熱暴走軽減対策に勝る1つ以上の利点をもたらす可能性がある。本明細書に説明される多層材料は、電池モジュールまたは電池パックのエネルギー密度に著しく影響を与えることなく、セルの熱伝播、また組み立てコストを最小にする、またはなくすことができる。本開示のシステム及び方法のいくつかの実施形態は、セルの耐用期間中に継続するセルの膨張に適応する圧縮率、圧縮弾力性、及びコンプライアンスに関する好ましい特性を提供できる一方、正常動作状態下で及び熱暴走状態下で好ましい熱特性を保有する。本明細書に説明される方法及びシステムのある実施形態は、耐久性があり、扱うのが容易であり、使用される材料の厚さ及び重量を最小にしながら熱伝播及び火災伝播に対する好ましい抵抗があり、また、圧縮率、圧縮弾力性、及び/またはコンプライアンスに関する好ましい特性も有する。
【0049】
したがって、一般的な用語で本開示に説明されるが、ここで、必ずしも縮尺通りに描かれていない添付図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】Liイオン電池の電気化学セルの概略図である。
【
図2】Liイオン電池の充放電プロセスの概略図である。
【
図3】電池モジュール内の熱暴走過酷状態及び熱暴走伝播プロセスを概略的に示す。
【
図4】電池のリチウムめっき上のデンドライト成長の概略図である。
【
図5】熱暴走プロセスにもたらす3つの段階を概略的に示す。
【
図6】電池セル、電池モジュール、及び電池パックを概略的に示す。
【
図7A】トリガーセル(すなわち、熱暴走を受けているセル)から隣接するセルへの熱伝播を防止する方法の実施形態を概略的に示す。
【
図7B】本明細書に開示される実施形態による熱バリアの熱伝播機能を試験するための試験セットアップの正面図である。
【
図8】
図7Bに示すセットアップを使用して試験されたトリガーセル(すなわち、熱暴走を受けているセル)対隣接セルの温度を示すグラフである。
【
図9A】
図7Bに示すセットアップで試験された、トリガーセルと隣接セルとの間の異なる熱バリア厚さを有するいくつかのセルの結果をグラフで示す。
【
図9B】
図7Bに示すセットアップで試験された、トリガーセルと隣接セルとの間の異なる熱バリア厚さを有するいくつかのセルの結果をグラフで示す。
【
図9C】
図7Bに示すセットアップを使用して試験された、いくつかの異なる角柱セル及びパウチセルのパラメータを提供する表である。
【
図10】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図11】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図12A】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図12B】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図12C】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図12D】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図12E】本明細書に開示される特定の実施形態による、多層材料を概略的に示す。
【
図13】コア絶縁層を有する多層材料を概略的に示す。
【
図14】電池セルモジュールの製造方法を概説するフローチャートである。
【
図15】多層材料によって保護された複数の電池セルを有する電池モジュールまたは電池パックを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明では、その一部を形成し、実例として、本開示が実施され得る特定の実施形態が示される添付図への参照がなされる。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、構造的変化がなされ得ることを理解されたい。
【0052】
一般に、本技術は、エネルギー貯蔵システムにおける熱暴走の問題等の熱イベントを軽減するためのシステム及び方法を対象とする。具体的には、本技術は、電池ベースのエネルギー貯蔵システムの一部分が熱イベント(例えば、熱暴走)を受けた後に、隣接するセル、モジュール、またはパックで熱伝播が発生するのを防止するためのシステム、方法、及び技法を提供する。本開示は、さらに、熱伝播を軽減するための本技術による熱バリア材料の量(例えば、厚さ、体積など)を含む、1つ以上の電池セルを有する電池モジュールまたは電池パック、ならびにそれらの電池モジュールまたは電池パックを含むシステムに関する。
【0053】
図7Aは、本技術による隣接セル間の熱伝播を防止する方法を示す。
図7Aは、エネルギー貯蔵システム内のトリガーセル(すなわち、熱的に損傷したセル)を示す。トリガーセルは、隣接する2つのセルの間に挟着されている。隣接するセルは、トリガーセルによって放出される熱によりまだ損傷を受けていない。隣接する各セルとトリガーセルとの間には、熱バリア材料が挟着されている。エネルギー貯蔵システムの使用中、熱バリア材料(
図7AではC2Cバリアとラベル表示されている)は、圧縮され、隣接するセルとトリガーセルとの間のセル間の面を覆う。通常は、エネルギー貯蔵システムには、全てのセルと熱的に接触する冷却プレートが設けられている。
図7Aの冷却プレートは、貯蔵システムの底部に表示されている。セル間の熱伝播を防ぐために、電気化学容量がE
*であり、総放熱電位が5E
*のトリガーセルに対して、4つの一次エネルギーの流れが考慮される。第一に、(1)トリガーセルから隣接セルへの伝導が対処されなければならない。
図7Aに示すように、トリガーセルの各面を通る約0.15E
*が対処されるべきである。第二に、(2)冷却プレートへの伝導により、トリガーセルから放出された熱の一部が除去される。冷却プレートから吸収される熱の量は、使用される冷却プレートの種類によって決まり、能動冷却の適用に伴って、より多くの量の熱が除去される。第三に、(3)トリガーセルから排出される固体、液体、及び/またはガスとして、いくらかの熱が放出されることになる。この熱は、エネルギー貯蔵システムの上部スペースに排出される。最後に、(4)トリガーセルが燃焼したとなれば、放熱量は酸素の有無と化学分解経路とによって決まる。熱伝播に対処して、トリガーセルの放熱から隣接セルが損傷を受けないように最長の保護を提供するには、トリガーセルからの熱伝導と、排出されるガス及び材料の管理との両方が対処されるべきである。トリガーセルと隣接セルとの間の伝導の問題に対処する際に、本技術による熱バリア材料は、優れた機械的特性及び熱的特性を提供する。つまり、熱バリア材料は、セル間の界面で生ずる2つの重要な態様を管理する。第一に、熱バリア材料は、疲労または圧縮永久ひずみを最小限に抑えながら機械的エネルギー(高応力及び大ひずみ)を吸収するので、セルの膨張及びガス抜きを可能にする。第二に、熱バリア材料は、圧縮されたときでも1000℃以上(最大1400℃)の温度に耐えることができるため、熱伝播の遅延または防止を可能にする。
【0054】
隣接セル間の熱バリア材料は、圧縮可能であるとともに、エネルギー貯蔵システムの動作中に体積変動を吸収できることが望ましい。本開示の目的は、圧縮可能な熱バリアを提供するばかりでなく、損傷セル(例えば、熱暴走における燃焼セル)から隣接セルへの熱伝播を軽減できる熱バリアを提供することでもある。熱伝播を軽減するために、隣接する(すなわち、まだ損傷を受けていない)セルは、熱暴走が起こる臨界温度を超えることができない。そうするために、本技術は、セルのセル面エネルギー密度に基づいて、その圧縮可能熱バリアの大きさを調整する。本明細書で使用するとき、セル面エネルギー密度は、セルのアレイの外部表面に対するアレイ内の全てのセルの総エネルギー密度をセルの熱伝達面の面積で割った比として定義される。理論に束縛されるものではないが、特定のセルの面エネルギー密度に関連して熱バリアの圧縮時の厚さを調整することにより、保護を達成できることが考えられる。さらに、熱バリアの圧縮時の厚さと面エネルギー密度との間の線形関係を利用して、(非圧縮状態の)圧縮可能熱バリアの所望の量/厚さを決定できることが考えられる。
【0055】
面エネルギー密度と厚さとの関係を決定するために、試験セットアップを設計して組み上げた。試験セットアップを
図7Bに示す。試験セットアップは、トリガーセル(すなわち、試験中に損傷を受けることになるセル)と隣接セルとを共に圧縮する2つのクランプ面を含む。2つのセルの間には熱バリアが挟着されている。
図7Bは、試験前、すなわち非圧縮状態の画像である。トリガーセルと隣接セルとの間に挟着されている図示の熱バリアは、2.35mmの厚さを有する。他の厚さも可能である。厚さ2.35mmの熱バリアの2倍、3倍、及び4倍の厚さを含む。そして、異なる試験で、熱バリアの厚さを評価することができる。
【0056】
図7Bの実施形態におけるトリガーセル及び隣接セルのそれぞれは、角柱セルであり、それぞれが62Ahの貯蔵容量を有する。試験を開始するには、クランプ面を互いに押し付けてセル面に圧力を与える。
図8を参照すると、厚さ4.7mmの熱バリア(すなわち、
図7Bに示す2.35mmの厚さの2倍)の試験では、560kPaのセル面圧力が生成される。
図8の右側に見ることができるように、このセル面圧力は、トリガーセルが熱イベントの第1の段階を受け始めるまで、比較的安定している。トリガーセルの電圧が低下すると、トリガーセルに極端な温度変化が発生するまでは、最初のうち、セル面の圧力が上昇する。この極端な温度変化は、燃焼イベント(すなわち、火炎発生、及びトリガーセルからの漏れ)に対応すると考えられる。この燃焼イベントは、時間ゼロで発生するものとして時間スケール上に記され、トリガーセルの活発な熱暴走の始まりを示す。
【0057】
次の数分間の試験にわたって、トリガーセルは熱暴走を受けることになる。ただし、厚さ4.7mmの熱バリア(非圧縮状態での厚さ測定)が、隣接セルを熱の放散から保護して、隣接セルが臨界温度(すなわち、時間0分でのトリガーセルの温度)を超えるのを防ぐ。
【0058】
トリガーセルからの放散熱から隣接セルを保護することにより、(隣接セルに近接している)トリガーセルが熱暴走しているにもかかわらず、隣接セルは臨界温度未満にとどまる。結果として、厚さ4.7mmの非圧縮熱バリア(エアロゲルで形成される)が、それぞれが62Ahの貯蔵エネルギー容量を有する2つの角柱セル間の熱伝播を軽減しまたは防止する。
【0059】
図8で説明された例で使用される多層材料は、熱伝導層、熱吸収層、耐熱層、及び熱遮断層を含む。これらの各層は、隣接した電池セルから生成された熱を遮りまたは除去する。ただし、いくつかの層は、暴走プロセスのある段階で異なる役割を果たす。第1の段階では、電池は標準動作条件のもとに動作しており、外側の加熱伝導層(熱伝導層)は、隣接電池から熱を取り出し、その熱を熱交換要素へ向かわせる。暴走プロセスの段階2では、電池セルの温度が(90℃よりも上の温度へ)大きく上昇し始め、それによって電池セルに故障が引き起こされ始める。熱の一部は、熱伝導層によって、例えば、熱交換要素に運ばれ続ける。電池セルによって生成された余分な熱は、熱吸収層(熱容量層)によって吸収される。暴走プロセスが継続すると、急激な温度上昇が最初の2つの減熱システム(熱伝導層及び熱容量層)の能力を超える。その後、熱は耐熱層(犠牲層)に到達し、この層は、層が分解するときに暴走セルによって生成された熱の一部を吸収する。暴走した電池セルからの熱が他のセルに到達するのを防ぐための最後の層は絶縁層である。これらの最初の3つの層を通過した後に、熱は十分に放散されているので、絶縁層によって熱が隣接電池に到達するのを防ぐことができる。
図8に示すように、隣接する電池セルの温度は、多層バリアによって100℃以下に保たれる。
【0060】
図9を参照すると、
図7Bに示す試験セットアップを使い4つの試験サンプルを試験して、結果及び性能マップを生成した。試験サンプルAAI T1及びAAI T3の非圧縮時の厚さは2.35mmであった。その一方で、試験サンプルAAI T2及びAAI T4の非圧縮時の厚さは4.70mm(T1及びT3の2倍)であった。試験サンプルAAI T1に対して加えられた、または生成されたセル面圧力(CFP)は275kPa、AAI T2に対しては275kPa、AAI T3に対しては580kPa、AAI T4に対しては560kPaであった。これらのサンプルの面エネルギー密度(kAh/m
2)は、約2kAh/m
2であった。
【0061】
図9は、圧縮力(すなわち、セル面圧力)が300kPa未満(具体的には275kPa)であるとき、
図7Bに示す2つのセルの間の熱バリアの厚さ2.35mmまたは4.70mmが、セル間の熱伝播を軽減する/防止するのに十分であることを示す。実際のところ、隣接するセルに与えられた遅延または保護は、トリガーセルの熱イベントが終了に至るまで(すなわち、トリガーセルから全ての熱が放散された後、燃焼が終了するまで)継続した。セル面の圧力が2倍以上(すなわち、560kPa以上)に増加したときに、非圧縮時の厚さの熱バリアが試験される。厚さ2.35mmを有するAAI T3サンプルでは、隣接セルへの熱伝播が多少軽減される(遅延は28分)。熱バリア(すなわち、試験サンプルAAI T4)の厚さを2倍の4.70mmにすることにより、隣接セルへの熱伝播の防止を達成した。
【0062】
様々なセルのタイプ及び構成について、様々な圧縮条件下で様々な厚さの熱バリアを試験することにより、性能マップを生成した。
図9Aの右側に表示される性能マップ内の破線は、面エネルギー密度とバリアの圧縮時の厚さとの間の関係を示す。明らかに、セル面に加えられる/生成される圧縮が大きくなると、熱バリア材料の圧縮時の厚さが減少する。この情報を使用して、非圧縮状態の熱バリアの所定の大きさ(すなわち)厚さを選択することができる。
【0063】
図9Bは、熱抵抗とセルの面エネルギー密度との関係、及び圧縮時の厚さとセルの面エネルギー密度との関係を示す熱伝播マップを図示する。これらの3つの変数のうちの1つが与えられることで、他の2つの特性の値は、熱伝播マップを使用して決定することができる。多くの状況では、電力が供給されるシステムのエネルギー需要に起因して、セルの面エネルギー密度が分かっている。既知のセル面密度に基づいて、電池セルが熱暴走に陥ったときに、伝播のリスクを抑制し、または最小限に抑えるバリアが確実に使用されるように、多層材料を選択することができる。他の状況では、多層材料が、既に、事前に選択されている場合がある。この他の状況では、材料の既知の熱抵抗に基づいて、伝播が確実に抑制され、または最小限に抑えられるように、セルの面エネルギー密度を選択することができる。
【0064】
図9Bの熱伝播マップを生成するために使用した特定の例では、エアロゲル材料を使用した。この例では、上部の(破線の転移線の上の)より明るい陰影の領域は、暴走伝播が全く発生しない、またはわずかしか発生しないはずの領域である。一般に、熱伝播マップは、少なくとも約0.01の熱抵抗係数、及び少なくとも約0.3の厚さ係数が、最大約14kWh/m
2までのセル面エネルギー密度に対して暴走電池セルの伝播を抑制するのに、または最小限に抑えるのに、効果的であろうことを示す。より高いセル面密度に対しての最適パラメータを決定するために、熱伝播マップの外挿を使用することができる。厚さ係数は、本明細書では、多層材料の厚さの、アレイの面エネルギー密度に対する比として定義される。熱抵抗係数は、本明細書では、多層材料の熱抵抗の、アレイの面エネルギー密度に対する比として定義される。
【0065】
図14は、電池セルまたは電池モジュールの絶縁システムを設計するためのプロセスを概説するフローチャート100を示す。ステップ110では、1つ以上の電池セルまたは電池モジュールが、電池セル/モジュールのそれぞれの間にいくつかのギャップを有するアレイに組み立てられる。ステップ120では、アレイの面エネルギー密度が計算される。次に、ステップ130で、面エネルギー密度を使用して、多層材料の熱抵抗及び圧縮時の厚さを決定することができる。熱抵抗及び圧縮時の厚さは、暴走電池セル/モジュールからの熱伝播を抑制するように、または最小限に抑えるように、選択される。
【0066】
ステップ130は、2つのサブステップに分割され得る。一実施形態では、ステップ130の左側に示すように、多層材料の熱抵抗係数が決定される。次に、多層材料の熱抵抗係数が、アレイの面エネルギー密度と組み合わせて、使用されて、熱暴走伝播を抑制するのに必要とされる、または最小限に抑えるのに必要とされる多層材料の厚さが決定される。暴走伝播を抑制できる多層材料の圧縮時の厚さの選択は、
図9Bに示すような熱伝播マップから、多層材料の最小の圧縮時の厚さを読み取ることによって行われ得る。次いで、決定された厚さを有する多層材料がアレイ内に配置される。
【0067】
代替実施形態では、ステップ130は、アレイの電池セル間に設置することができる多層材料の厚さ係数を決定することによって実行され得る。決定された厚さ係数を使用して、熱暴走伝播を抑制するのに必要とされる、または最小限に抑えるのに必要とされる多層材料の熱抵抗が決定され得る。一実施形態では、多層材料の最小熱抵抗は、
図9Bに示すような熱伝播マップから決定され得る。多層材料の熱抵抗は、熱暴走伝播を抑制するのに必要とされる、または最小限に抑えるのに必要とされる多層材料の最小熱抵抗よりも大きい多層材料の熱抵抗を決定することによって選択される。次いで、決定された熱抵抗を有する多層材料がアレイ内に配置される。
【0068】
一実施形態では、多層材料をアレイ内及び/またはアレイの周囲に配置することは、多層材料をアレイとは別に形成することと、多層材料をアレイの電池セルの隣に挿入することとを含む。別の実施形態では、多層材料をアレイ内及び/またはアレイの周囲に配置することは、多層材料をアレイ内及び/またはアレイの周囲に、その場で直接、形成することを含む。多層材料は、アレイ内及び/またはアレイの周囲に、多層材料の噴霧、コーティング、堆積、または充填を行うことによって、その場で形成することができる。
【0069】
図15は、熱伝播を抑制するために、または最小限に抑えるために使用できる電池セル及び多層材料の様々な構成を図示する。第1の構成では、各電池セル/モジュールが多層材料によって個別に囲まれるように、多層材料が個々の電池セルまたは電池モジュールの間に設置される。第2の構成では、複数の電池セル/モジュールが互いに接触している。セルの間にバリアなしで互いに隣接して積み重ねることができるセルの数は、組み合わされた積み重ねたセルの面エネルギー密度と、バリアの特性(熱抵抗など)とに基づいており、すなわち、
図14に示す方法に基づいている。多層材料は、電池セル/モジュールのグループを囲んで、囲まれたセルのいずれかからの熱暴走伝播を抑制するか、または最小限に抑える。第2の構成は、本明細書に記載されている多層材料などの熱バリアに利用可能なスペースがあまりない高密度エネルギーシステムに有用であり得る。第3の構成では、多層材料は、電池セル/モジュールの1つを保護するために使用される多層材料が、隣接する電池セル/モジュールを保護するためにも使用されるように、電池セル/モジュールのそれぞれの間に配置される。
【0070】
図9Cを参照すると、図示されている表は、異なる製造業者によって製造された多数の角柱セル及びパウチセルの様々なパラメータと面エネルギー密度の計算値とを提供する。面エネルギー密度の計算値をセル間に向けられた圧縮と共に利用することで、熱バリア材料の厚さを選択することができる。
【0071】
図9A及び
図9Bを生成する際に使用される熱バリアは、Aspen Aerogels,Inc.,Northborough,MAから入手できるエアロゲル材料で形成される。使用される特定の材料は、商品名PyroThin(登録商標)で販売されており、薄く、軽量な、高温熱絶縁材料である。理論に束縛されることを望むものではないが、Aspen Aerogels,Inc.のエアロゲルは、少なくとも3つの理由で有利である。第一に、この特定のエアロゲル材料には復元力がある。荷重及び除荷のイベント中の圧縮応力と圧縮ひずみとを比較すると、最小限のヒステリシスのみが観察される。すなわち、このエアロゲル材料には復元力がある。シリカポリマー長鎖が多量の弾性ナノスプリングとして共に作用し、疲労または圧縮永久ひずみを最小限に抑えて機械的エネルギーを吸収する復元力のある圧縮パッドを作り出すと考えられている。Aspen Aerogels,Inc.は、PyroThin(登録商標)商品名に関連して販売される強化されたMグレードの材料を製造し、販売している。Mグレードの材料は、圧縮永久ひずみ(≦5%)に抵抗し、疲労を受けにくいことが知られている。この特定の材料のもう1つの利点は、1400℃以上の温度を含む高温に耐えられる能力である。一般に、この特定のエアロゲル材料は、1000℃の温度での火炎の直接接触に10分間以上にわたって耐えることができる。つまり、直火に10分間かけた後でも、エアロゲル材料は燃焼せず、または崩壊し始めることすらなかった。この無機繊維を含むシリカ系エアロゲルは、その熱特性に関しては調整可能である。結果として、エアロゲル材料の温度抵抗をセルの挙動に適合させるように調整することができる。Aspen Aerogels,Inc.のシリカ系エアロゲルは、圧縮された場合でも有益な熱伝導特性を提供し、結果的に、本技術による熱バリア材料として使用するのに有利である。理論に束縛されることを望むものではないが、エアロゲルは、熱的利点を提供するために、閉じ込められた空気に依存することはないと考えられる。結果として、エアロゲル材料は、圧縮されたときでも、その熱伝導特性を維持する。このことは、これらの利点を本技術によるシステムに与えてくれる熱バリア材料を、より薄いバリア、より軽いパック、及びより広範なセルの範囲に提供することができることを意味する。
【0072】
本技術は、単なる単層材料ではない熱バリア材料に適用することもできる。例えば、本技術では、セル間に配置される熱バリアが、多層構成を有してもよい。この多層構成は、セル間の熱伝播を防止する大きさに作られた1つ以上の絶縁層(複数可)を含む。つまり、熱バリアは、多層構成の中に多種多様な層を含むが、非圧縮状態の絶縁層(複数可)の厚さは、単層の実施形態に関して説明した方法及びシステムを使用して、面エネルギー密度の知識を持って選択される。
【0073】
多層を含む熱バリアは、機械的強度、膨張層、及び材料の封入などの付加的な利益を追加する可能性がある。多層材料に対する以下の説明は、単層の実施形態と置き換えて、またはシステムを補完するものとして単層の熱バリアに加えて、本技術において使用され得る。例えば、システムによっては、ある場所には単層の熱バリアを含み、他の場所には多層の熱バリアを含むことがある。つまり、ある隣接セル間には単層の熱バリアが設けられ、一方、他の隣接セル間には多層の熱バリアが設けられる。いくつかの実施形態では、単層熱バリアが隣接セル間に設けられ、多層材料がエネルギーシステムの縁部または面の周囲に熱バリアとして用いられる。
【0074】
本技術では、エネルギー貯蔵システムにおける熱暴走の問題を管理するために、多層材料、及びかかる多層材料を含むシステムが使用され得る。例示的な実施形態は、少なくとも1つの絶縁層、少なくとも1つの圧縮可能パッド、及びオプションの1つ以上の層を含む多層材料を含む。オプションの1つ以上の層は、好ましい熱放散特性を有し、好ましい耐火特性、難燃特性、及び/または摩耗抵抗特性を有し、熱バリアとして使用するための好ましい性能を有する。本開示は、さらに、1つ以上の電池セルと、電池セルと熱連通して設置された多層熱バリア材料とを伴う電池モジュールまたは電池パックに関する。
【0075】
本明細書に開示される多層材料の1つ以上の絶縁層は、エアロゲル組成物または補強エアロゲル組成物を含み得る。エアロゲル材料は、他の一般的なタイプの断熱材、例えば、発泡体、繊維ガラス等の約2~6倍の熱抵抗を保有することが知られている。エアロゲルは、実質的に、断熱材の厚さを増加させることなく、または追加重量を追加しないで、効果的な遮蔽及び断熱を向上させることができる。エアロゲルは、低密度、オープンセル構造、大きい表面積、及びナノメートルスケール細孔径を有する構造分類であることが知られている。
【0076】
本開示の実施形態に従った多層材料、及びエアロゲル組成物を含む多層材料は、圧縮率、圧縮弾力性、及びコンプライアンスに関する好ましい特性を提供する。電池モジュール内のセルの間で熱バリアとして使用されるとき、多層材料は、電池の充電/放電サイクル中、活物質の劣化及び膨張に起因して、セルの拡張に適応する圧縮変形に対する抵抗をもたらす可能性がある。
【0077】
本開示は、また、電池セル上または電池モジュール上に配置される、例えば、少なくとも1つの電池セルの表面上、または電池モジュールの表面上に配置される、本明細書に開示される実施形態に従った少なくとも1つの電池セル及び多層材料を含む電池モジュールまたは電池パックを提供する。例えば、電池モジュールまたは電池パックは、内面及び外面を有する。特定の実施形態では、多層材料は、電池モジュールまたは電池パックの内面上にある。特定の実施形態では、多層材料は、電池モジュールまたは電池パックの外面上にある。
【0078】
本開示の多層材料は、熱的に及び/または機械的に好ましい特性を有する2つ以上の層が特定の方法で配置される様々な固有の構成を有し得る。
図10は、本明細書に開示される実施形態による、例示的な多層材料400を示す。一実施形態では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料400は、最大表面に垂直な方向に交互に積み重ねられた絶縁層470及び480と熱容量層430、440、及び/または450との層状集合を含むコア部700と、コア部700の外側に配置された外部600であって、外部600がそれぞれ圧縮可能パッドを含む犠牲材料層を有する、外部600とを含む。圧縮可能パッド410/460は、約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する。封入材料層420は、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせから選択される。熱容量層430、440、及び450は、少なくとも約200J/(kg・K)の比熱容量を有する。絶縁層470及び480は、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、絶縁層470及び480は同じ材料から作られている。いくつかの実施形態では、絶縁層470及び480は、異なる熱特性及び/または機械特性を有する異なる材料から作られている。いくつかの実施形態では、熱容量層430、440、及び450は同じ材料から作られている。いくつかの実施形態では、熱容量層430、440、及び450は、異なる熱特性及び/または機械特性を有する異なる材料から作られている。また、圧縮可能パッド410及び460は、異なる材料または同じ材料から作ることができる。
【0080】
図11は、本明細書に開示される実施形態による多層材料500を示す。一実施形態では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料500は、最大表面に垂直な方向に交互に積み重ねられた絶縁層470及び480と熱伝導層530、540、及び550との層状集合を含むコア部700を含む。外部600は、コア部700の外側に配置される。外部600はそれぞれ、圧縮可能パッドを含む犠牲材料層を有する。圧縮可能パッド410/460は、約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する。封入材料層420は、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせから選択される。熱伝導層530、540、及び550は、該熱伝導層の面内寸法に沿って、少なくとも約200mW/m・Kの熱伝導率を有する。絶縁層470及び/または480は、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、熱伝導層530、540、及び550は同じ材料から作られている。いくつかの実施形態では、熱伝導層530、440、及び550は、異なる熱特性及び/または機械特性を有する異なる材料から作られている。
【0082】
いくつかの実施形態では、
図10及び
図11に示されるように、封入材料層420は、コア部700と、少なくとも1つの圧縮可能パッド410及び/または460を有する犠牲材料層との間に挟着される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧縮可能パッド410及び/または460を有する犠牲材料層は、コア部700と封入材料層420との間に挟着される。
【0083】
本明細書に開示される実施形態に従った多層材料は、非圧縮状態で約2mm~約10mmの範囲の平均厚さを有し得る。多層材料の平均厚さは、電池モジュールの初期組み立て中にセルの間の材料に加えられた荷重等、例えば1MPa以下の外部の機械的荷重に曝されると減少し得る。
【0084】
図12Aに示される多層材料の例示的な構成では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料800は、約1MPa~約12MPa(例えば、1.5MPa、2MPa、4MPa、5MPa、6MPa、8MPa、9MPa、10MPa、11MPa、11.5MPa)の圧縮係数を有する圧縮可能パッド410を備えるコア層と、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する、2つの絶縁層470及び絶縁層480とを含む。コア層は、2つの絶縁層470及び絶縁層480によって挟着され、多層材料は、オプションで、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された封入材料420に封入される。
【0085】
図12Bに示される多層材料の例示的な構成では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料810は、約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する圧縮可能パッド410と、2つの熱伝導層530及び540とを含むコア層を含む。多層材料801はまた、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する、2つの絶縁層470及び絶縁層480を有し、コア層は、2つの絶縁層470及び絶縁層480によって挟着され、少なくとも1つの熱伝導層は、少なくとも約200mW/m・Kの面内の熱伝導率を有し、多層材料は、オプションで、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された封入材料420に封入される。
【0086】
図12Cに示す例示的な実施形態では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料820は、約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する圧縮可能パッド410と、2つの熱容量層430及び440とを含むコア層を含む。コア層は、絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する2つの絶縁層470及び480によって挟着されている。熱容量層は、少なくとも約200J/(kg・K)の比熱容量を有する。多層材料は、オプションで、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された封入材料420に封入される。
【0087】
図12Dに示す例示的な実施形態では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料830は、約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する圧縮可能パッド410と、2つの熱容量層430及び440とを有するコア層を含む。2つの絶縁層470及び480が、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有しており、コア層を挟着する。熱容量層は、少なくとも約200J/(kg・K)の比熱容量を有する。多層材料830は、各絶縁層470及び480の外面上に配置された2つの追加の熱容量層435及び445をさらに含む。多層材料は、オプションで、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された封入材料420に封入される。
【0088】
図12Eに示される多層材料の例示的な構成では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料840は、それぞれが約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する2つの圧縮可能パッド410及び460と、1つの熱容量層430とを含むコア層を含む。2つの絶縁層470及び480が、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有しており、コア層を挟着する。熱容量層は、少なくとも約200J/(kg・K)の比熱容量を有する。多層材料は、オプションで、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された封入材料420に封入される。熱容量層430は、2つの圧縮可能パッド410及び460によって挟着されている。
【0089】
図13に示される多層材料の例示的な構成では、電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料900は、絶縁層470と、熱伝導層530及び540を含む外部とを含むコア層を含む。図示の実施形態では、熱伝導層530及び540は、実質的にL字型である。L字型熱伝導層の垂直部分は、絶縁層から間隔をおいて配置される。使用中、L字型熱伝導層の垂直部分は、電池セルまたは電池モジュール(570、575、580)と熱的に接触するか、または物理的に接触する。L字型熱伝導層の水平部分は、絶縁層470及び熱伝達要素590と接触する。L字型熱伝導層を使用することで、熱伝導層と電池セルまたは電池モジュール及び任意の熱伝達要素との接触表面積が増加する。使用中、電池セルまたは電池モジュールの1つ以上からの熱は、熱伝導層を通って熱伝達要素590に伝導される。したがって、電池セルまたは電池モジュールからの熱は、熱伝達要素によって除去される。熱伝達要素は、冷却プレートであってもよい。例示的な冷却プレートは、使用中に熱伝達要素から熱を除去する流体伝達(液体または気体)を含む。
【0090】
実施形態では、封入層(420、425)、犠牲材料層(510、515)、及び熱容量層(430、435)のうちの1つ以上が、
図13に示すように、L字型熱伝導層530、540の垂直部分と絶縁層470との間に配置される。犠牲層510は、約1MPa~約12MPaの圧縮係数を有する圧縮可能パッドを含むことがある。絶縁層470は、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する。熱容量層(430、435)は、少なくとも約200J/(kg・K)の比熱容量を有する。絶縁層は、オプションで、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された封入材料420に封入される。いくつかの実施形態では、封入層は、金属層を含むことがある。
【0091】
使用中、層のそれぞれは、暴走セルからの熱が他のセルを加熱するのを防ぐバリアとして機能することになる。熱容量層は、暴走セルの初期熱を吸収するようになる。熱容量層を通過した熱は犠牲層に達し、この犠牲層は層が分解するときに熱を吸収するようになる。最後に、封入層は、絶縁層に衝突する粒子状物質の量を減らすバリアとしても機能することになる。実施形態では、絶縁バリアは、少なくとも部分的に熱交換要素590内に延在する。熱交換要素内に絶縁層を設置することは、熱暴走を受けている電池セルまたは電池モジュールからの熱の伝達を低減させるのに効果的である。例えば、いくつかの実施形態では、熱暴走イベントによる熱が、熱交換要素による冷却効果を圧倒することになる。その場合、暴走したセルまたはモジュールからの熱は、熱交換要素を介して、他の電池セルまたは電池モジュールに伝導される可能性がある。熱交換要素内に延在する絶縁バリアの部分は、隣接する電池セルまたは電池モジュールに熱が到達するのを抑制する。
【0092】
断熱層
本明細書に説明される多層材料の絶縁層は、小さな空間で発熱部からの熱流を確実に制御することに関与し、電子技術、工業技術、及び自動車技術の分野のそのような製品の火災伝播に対する安全及び予防を提供する。圧縮の特性が優れている断熱層は、これらの必要性に対処する際に有用であり得る。本開示の多くの実施形態では、絶縁層は、また、層自体だけで、または多層材料の他の層と組み合わせて、のいずれか一方で、炎/火災偏向層としても機能する。例えば、絶縁層、例えば金属または雲母の層等の不燃層と組み合わされたエアロゲル層は、炎及び/または高温ガスからの、同様に、熱暴走イベント中にLIBから押し出され得る材料等の粒子材料が混入された炎/高温ガスからの下層の保護を提供できる。別の例を挙げると、絶縁層自体は、炎及び/または高温ガスに耐性があり、同様に粒子材料が混入した炎/高温ガスに耐性があり得る。雲母、細孔性シリカ、エアロゲル等の絶縁層は、不燃層と組み合わせて、炎/火偏向層として機能できる。本明細書の実施形態に開示される層等のエアロゲルを含む絶縁層は、耐久性があり、扱うのが容易であり、使用される材料の厚さ及び重量を最小にしながら、熱伝播及び火災伝播に対する好ましい抵抗があり、また、圧縮率、圧縮弾力性、及びコンプライアンスに関する好ましい特性も有する。
【0093】
エアロゲルはオープンセルを伴う多孔質材の等級であり、細孔の対応する網状組織が骨格内で統合された、相互接続構造の骨格と、空気等のガスから主に成る細孔の網状組織内の間隙相とを含む。エアロゲルは、一般的に、低密度、高気孔率、大きい表面積、及び小細孔径を特徴とする。エアロゲルは、その物理的特性及び構造的特性によって、他の多孔質材と区別できる。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の多層材料の絶縁層はエアロゲルを含む。いくつかの実施形態では、絶縁層は、さらに、雲母、細孔性シリカ、セラミック繊維、ミネラルウール、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された材料を含み得る。場合によっては、絶縁層はエアロゲルが不足する。いくつかの実施形態では、絶縁層は、雲母、細孔性シリカ、セラミック繊維、ミネラルウール、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された材料を含み得る。
【0095】
特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、該絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃において、約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の熱伝導率を有する。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、該絶縁層の厚さ寸法を通して、600℃において、約60mW/mK以下、約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の熱伝導率を有する。
【0096】
本開示の絶縁層、例えばエアロゲルを含む絶縁層は、最大約5MPaの荷重がかかるとき、熱伝導率(通常、mW/m・kの単位で測定される)のわずかな量を保持できる、または増加できる。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、該絶縁層の厚さ寸法を通して、最大約5MPaの荷重がかかるとき、25℃において、約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の熱伝導率を有する。エアロゲル絶縁層が受ける荷重の結果として、エアロゲル絶縁層の厚さは減り得る。例えば、エアロゲル絶縁層の厚さは、約0.50MPa~5MPaの範囲で荷重がかかるとき、50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲で減り得る。厚さが減るにつれて、エアロゲルを含む絶縁層の熱抵抗が減り得るが、熱伝導率は、わずかな量だけ、保持できる、または増加できる。
【0097】
特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約750cal/g以下、約717cal/g以下、約700cal/g以下、約650cal/g以下、約600cal/g以下、約575cal/g以下、約550cal/g以下、約500cal/g以下、約450cal/g以下、約400cal/g以下、約350cal/g以下、約300cal/g以下、約250cal/g以下、約200cal/g以下、約150cal/g以下、約100cal/g以下、約50cal/g以下、約25cal/g以下、約10cal/g以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の燃焼熱を有し得る。別の絶縁層に対して燃焼熱が改善された絶縁層は、参照絶縁層と比べて低い燃焼熱の値を有する。本開示の特定の実施形態では、絶縁層のHOCは、防火等級添加剤を絶縁層に混和することによって改善される。
【0098】
特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約300℃以上、約320℃以上、約340℃以上、約360℃以上、約380℃以上、約400℃以上、約420℃以上、約440℃以上、約460℃以上、約480℃以上、約500℃以上、約515℃以上、約550℃以上、約600℃以上、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲で熱分解の開始温度を有する。本明細書の文脈内で、例えば、第2の組成物の熱分解の開始温度よりも高い熱分解の開始温度を有する第1の組成物について、第2の組成物よりも第1の組成物のほうが改善することが考えられるであろう。1つ以上の防火等級添加剤を追加するとき、任意の防火等級添加剤を含まない組成物と比較して、組成物または材料の熱分解の開始温度が増加することが本明細書で想到される。
【0099】
「曲げ弾性率」または「弾性の曲げ係数」という用語は、3点曲げ試験として知られているサンプルの長いエッジに対して垂直に力が加わるとき、曲げに対する材料剛性/抵抗の測定値である。曲げ弾性率は材料が曲がる能力を示す。曲げ弾性率は、応力ひずみ曲線の初期直線部の傾きによって表され、応力の変化を対応するひずみの変化で割ることによって計算される。したがって、応力とひずみとの比は曲げ弾性率の測定値である。曲げ弾性率の国際標準単位は、パスカル(PaまたはN/m2またはm-l・kg・s-2)である。使用される実用単位はメガパスカル(MPaまたはN/mm2)またはギガパスカル(GPaまたはkN/mm2)である。米国慣用単位では、それは平方インチ当たり(psi)のポンド(力)として表される。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、約8MPa以下、約7MPa以下、約6MPa以下、約5MPa以下、約4MPa以下、約3MPa以下の曲げ弾性率を有する。好ましくは、本開示の絶縁層、例えばエアロゲルは、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する。
【0100】
上記に説明したように、セルの間のまたは電池モジュール及び電池パックの間の材料の圧縮特性及び弾力特性は、そのライフサイクル中にセルの膨張に適応するために重要である。特定の実施形態では、絶縁層、または絶縁層を含む多層材料は、(i)その元の厚さまたは非圧縮時の厚さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも80%圧縮可能であり、(ii)数秒間の圧縮後、絶縁層が、その元の厚さまたは非圧縮時の厚さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%に戻るほど十分に復元力がある。
【0101】
特定の実施形態では、絶縁層(例えば、エアロゲルを含む層)、絶縁層を含む多層材料の圧縮可能構成要素、または多層材料の圧縮係数は、全体として、約1MPa、約2MPa、約3MPa、約4MPa、約5MPa、約6MPa、約7MPa、約8MPa、約9MPa、約10MPa、約11MPa、約12MPa、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲である。
【0102】
エアロゲル
本発明のエアロゲルは、有機、無機、またはそれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、エアロゲルはシリカ系エアロゲルを含む。エアロゲルを含む多層材料の絶縁層はさらに補強材を含む。補強材は、弾力性、順応性、または構造的安定性をエアロゲル材料に提供する任意の材料であり得る。周知の補強材の例は、限定ではないが、オープンセル型マクロポーラスの骨格補強材、クローズドセル型マクロポーラス骨格補強材、オープンセル膜、ハニカム補強材、ポリマー補強材、ならびに別々の繊維、織布材料、不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、及びフェルト等の繊維補強材を含む。
【0103】
補強材は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択できる。無機繊維は、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、補強材は、複数の層がある材料を含む補強材を含み得る。例えば、複数の層がある材料は一緒に結合できる。例示的な実施形態では、複数の層のうちの少なくとも1つは第1の材料を含み得、複数の層のうちの少なくとも1つの他の層は第2の材料を含み得る。第1の材料及び第2の材料は、同じまたは異なる材料特性を有し得る。例えば、第1の材料は第2の材料よりも圧縮可能であり得る。別の例を挙げると、第1の材料はクローズドセルを含み得、第2の材料はオープンセルを含み得る。
【0105】
エアロゲルは、通常、相互接続オリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子から成る相互接続構造の骨格として説明される。エアロゲル骨格は、無機前駆体材料(シリカ系エアロゲルを生成する際に使用される前駆体等)、有機前駆体材料(炭素系エアロゲルを生成する際に使用されるそのような前駆体)、ハイブリッド無機/有機前駆体材料、及びそれらの組み合わせを含む様々な前駆体材料から作られ得る。本開示の文脈内で、「アマルガムエアロゲル」という用語は、2つ以上の異なるゲル前駆体の組み合わせから生成されたエアロゲルを指す。対応する前駆体は「アマルガム前駆体」と呼ばれる。
【0106】
無機エアロゲル
無機エアロゲルは、概して、金属酸化物または金属アルコキシド材料から形成される。金属酸化物または金属アルコキシド材料は、酸化物を形成できるいずれかの金属の酸化物またはアルコキシドに基づき得る。そのような金属は、限定ではないが、シリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、セリウム等を含む。無機シリカエアロゲルは、従来、シリカ系アルコキシド(テトラエトキシシラン等)の加水分解及び凝縮によって作られている、またはケイ酸もしくは水ガラスのゲル化によって作られている。シリカ系エアロゲル合成のための他の関連の無機前駆体材料は金属ケイ酸塩を含み、金属ケイ酸塩として、限定ではないが、ケイ酸ナトリウムもしくはケイ酸カリウム、アルコキシラン、部分加水分解アルコキシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、部分加水分解TEOS、TEOSの縮合ポリマー、テトラメトキシシラン(TMOS)、部分加水分解TMOS、TMOSの縮合ポリマー、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシランの部分加水分解ポリマー及び/または縮合ポリマー、ポリエチルシリケート、部分加水分解ポリエチルシリケート、モノマー型アルキルアルコキシシラン、ビストリアルコキシアルキルもしくはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0107】
本開示の特定の実施形態では、SilbondH-5(SBH5,Silbond Corp)等の予備加水分解TEOSは、水/シリカ比が約1.9~2で加水分解され、これは、市販品として使用され得る、またはゲル化プロセスに混和する前にさらに加水分解され得る。ポリエチルシリケート(Silbond40)またはポリメチルシリケート等の部分加水分解TEOSまたはTMOSは、また、市販品として使用され得る、または、ゲル化プロセスに混和される前に、さらに加水分解され得る。
【0108】
無機エアロゲルは、また、アルキル金属アルコキシド、シクロアルキル金属アルコキシド、及びアリール金属アルコキシド等の少なくとも1つの疎水基を含むゲル前駆体を含み得、これは、安定性及び疎水性等のゲルの特定の特性を付与または改善できる。無機シリカエアロゲルは、具体的には、アルキルシランまたはアリールシラン等の疎水性前駆体を含み得る。疎水性ゲル前駆体は、ゲル材料の骨格を形成するために1次前駆体材料として使用され得る。しかしながら、疎水性ゲル前駆体は、より一般的に、アマルガムエアロゲルの形成において、単純金属アルコキシドと組み合わせて共前駆体として使用される。シリカ系エアロゲル合成用の疎水性無機前駆体材料は、限定ではないが、トリメチルメトキシシラン(TMS)、ジメチルジメトキシシラン(DMS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等を含む。上記の前駆体のいずれかのうちの任意の誘導体が使用され得、具体的には、他の化学基の特定のポリマーは、上記の前駆体のうちの1つ以に追加され得る、または架橋結合され得る。
【0109】
また、エアロゲルは、疎水性を付与または改善するように処置され得る。疎水処理は、ゾルゲル溶液、液体抽出前のウェットゲルに適用できる、または液体抽出に続いてエアロゲルに適用できる。疎水処理は、特に一般的に、シリカエアロゲル等の金属酸化物エアロゲルの生成物である。ゲルの疎水処理の例は、具体的には、シリカウェットゲルを処置することに関連して、さらに詳細に下記に説明される。しかしながら、本明細書に提供される具体例及び実例は、本開示の範囲をいずれかの特定のタイプの疎水処理またはエアロゲル基材に制限することが意図されない。本開示は、当業者に既知のいずれかのゲルまたはエアロゲルを含み、同様に、ウェットゲル形成または乾燥エアロゲル形成のいずれか一方でエアロゲルの疎水処理の関連方法を含み得る。
【0110】
疎水処理は、シリカゲルの骨格上に存在するシラノール基(Si-OH)等のゲル上のヒドロキシ部分を、疎水化剤の官能基と反応させることによって実行される。結果として生じる反応は、シラノール基及び疎水化剤を、シリカゲルの骨格上の疎水基に変換する。疎水化剤化合物は、以下の反応に従って、ゲル上のヒドロキシル基と反応できる。RNMX4-N(疎水化剤)+MOH(シラノール)→MOMRN(疎水基)+HX。疎水処理は、シリカゲルの外側マクロ表面上と、ゲルの多孔質網状組織内の内部細孔表面上との両方で行うことができる。
【0111】
ゲルは、疎水化剤及びオプションの疎水処理溶媒の混合物に浸すことができ、それらは、疎水化剤が溶解性であり、また、ウェットゲルのゲル溶媒との混和性もある。メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、及びヘキサン等の溶媒を含む広範囲の疎水処理溶媒を使用できる。また、液体またはガス状の疎水化剤は、ゲルと直接接触され、疎水性が付与され得る。
【0112】
疎水処理プロセスは、疎水化剤がウェットゲルに浸透するのを助ける混合または攪拌を含み得る。疎水処理プロセスは、また、温度及びpH等の他の条件を変え、さらに、処理反応を高めて最適化することを含み得る。反応が完了した後、ウェットゲルを洗い、未反応化合物及び反応による副産物を除去する。
【0113】
エアロゲルの疎水処理用の疎水化剤は、概して、以下の式の化合物である。RNMX4-N、ここで、Mは金属であり、RはCH3、CH2CH3、C6H6、または同様の疎水性アルキル、シクロアルキル、もしくはアリール部分等の疎水基であり、そしてXはハロゲンであり、通常Clである。疎水化剤の具体例は、限定ではないが、トリメチルクロロシラン(TMCS)、トリエチルクロロシラン(TECS)、トリフェニルクロロシラン(TPCS)、ジメチルクロロシラン(DMCS)、ジメチルジクロロシラン(DMDCS)等を含む。また、疎水化剤は以下の式であり得る。Y(R3M)2、ここで、Mは金属であり、YはNHまたはO等の架橋基であり、そしてRは、CH3、CH2CH3、C6H6、または同様の疎水性アルキル、シクロアルキル、またはアリール部分等の疎水基である。そのような疎水化剤の具体例は、限定ではないが、ヘキサメチルジシラザン[HMDZ]及びヘキサメチルジシロキサン[HMDSO]を含む。疎水化剤はさらに以下の化合物を含み得る。RNMV4-N、ここで、Vは、ハロゲン以外の反応性基または脱離基である。そのような疎水化剤の具体例は、限定ではないが、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランを含む。
【0114】
本開示の疎水処理は、また、ゲルの液体の除去、交換、または乾燥の間に行われ得る。特有の実施形態では、疎水処理は、超臨界流体環境(限定ではないが、超臨界二酸化炭素等)で行われ得、乾燥ステップまたは抽出ステップと組み合わされ得る。
【0115】
有機エアロゲル
有機エアロゲルは、概して、炭素系ポリマー前駆体から形成される。そのようなポリマー材料は、限定ではないが、レゾルシノールホルムアルデヒド(RF)、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリレートオリゴマー、ポリオキシアルキレン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリブタジアン、トリアルコキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフルフラール、メラミンホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノールフルフラール、ポリエーテル、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリヒドロキシベンゼ、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、様々なエポキシ、寒天、アガロース、キトサン、及びそれらの組み合わせを含む。一例として、有機RFエアロゲルは、一般的に、アルカリ状態でホルムアルデヒドとのレゾルシノールまたはメラミンのゾル-ゲル重合から作られている。
【0116】
有機/無機ハイブリッドエアロゲル
有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に、有機修飾シリカ(「オルモシル」)エアロゲルから成る。これらのオルモシル材料は、シリカネットワークに共有結合される有機物成分を含む。オルモシルは、一般的に、従来のアルコキシド前駆体Y(OX)4を用いる、有機修飾シラン、R--Si(OX)3の加水分解及び凝縮によって形成される。これらの公式では、Xは例えばCH3、C2H5、C3H7、C4H9を表し得、Yは例えばSi、Ti、Zr、またはAlを表し得、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、メタクリレート、アクリレート、ビニル、エポキシド等のいずれかの有機フラグメントであり得る。オルモシルエアロゲルの有機物成分は、また、シリカネットワーク全体にわたって分散され得る、またはシリカネットワークに化学結合され得る。
【0117】
特定の実施形態では、本開示のエアロゲルは、好ましくはオリゴマー等の予備重合されたシリカ前駆体から主に形成された無機シリカエアロゲル、またはアルコール溶媒のケイ素アルコキシドから形成された加水分解されたケイ酸エステルである。特定の実施形態では、そのような予備重合されたシリカ前駆体または加水分解されたケイ酸エステルは、その場で、アルコキシシランまたは水ガラス等の他の前駆体またはケイ酸エステルから形成され得る。しかしながら、本開示は、全体として、当業者に既知のいずれかの他のエアロゲル組成物を用いて実践され得、いずれか1つの前駆体材料、または前駆体材料のアマルガム混合物に限定されない。
【0118】
マクロ孔
上記に説明したように、本開示の実施形態に従ったエアロゲル組成物は、マクロ孔を含むエアロゲル骨格を含み得る。動作のいずれかの特定の理論に縛られることなく、エアロゲル骨格内のマクロ孔の存在は、エアロゲル組成物、例えば補強エアロゲル組成物の圧縮が可能になり得、それと同時に、熱特性を維持する、またはさらに熱特性を改善する、例えば、熱伝導率が減る。例えば、マクロ孔は、組成物の圧縮によって、変形し得る、粉砕し得る、またはそうでなければサイズが減り得、それによって、荷重がかかるとき、組成物の厚さを減らすことが可能になる。しかしながら、マクロ孔が変形するにつれて、それらは効果的により小さい細孔になる。結果として、マクロ孔が変形するにつれて、エアロゲル骨格内の熱伝達用経路はより蛇行する可能性があり、それによって、熱特性を改善する、例えば、熱伝導率が減る。本開示の文脈内で、「メソ細孔」は、平均細孔径が約2nm~約50nmの範囲である細孔である。エアロゲル骨格は一般的にメソポーラス(すなわち、主に、約2nm~約50nmの範囲にわたる平均直径を伴う細孔を含む)である。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル組成物のエアロゲル骨格はマクロ孔を含み得る。本開示の文脈内で、「マクロ孔」は、平均細孔径が約50nmよりも大きい細孔である。エアロゲル骨格はマクロ孔及びメソ細孔の両方を含み得る。例えば、エアロゲル骨格の細孔容積の少なくとも10%はマクロ孔で構成でき、エアロゲル骨格の細孔容積の少なくとも5%はマクロ孔で構成でき、エアロゲル骨格の細孔容積の少なくとも75%はマクロ孔で構成でき、エアロゲル骨格の細孔容積の少なくとも95%はマクロ孔で構成でき、またはエアロゲル骨格の細孔容積の100%はマクロ孔で構成できる。いくつかの特定の実施形態では、エアロゲル骨格がマクロポーラスエアロゲル骨格であり得るため、その細孔容積の大部分はマクロ孔で構成される。場合によっては、マクロポーラスエアロゲル骨格は、また、ミクロ細孔及び/またはメソ細孔を含み得る。いくつかの実施形態では、エアロゲル骨格の細孔の平均細孔径(直径)は、50nmよりも大きくなり、50nm~5000nm、250nm~2000nm、500nm~2000nm、500nm~1400nm、または1200nmである可能性がある。特定の実施形態では、平均細孔径の直径は、50nmよりも大きくなり、50nm~1000nm、好ましくは100nm~800nm、より好ましくは250nm~750nmである可能性がある。
【0119】
同質及び異質の細孔径の分布
【0120】
いくつかの実施形態では、エアロゲル骨格内の細孔径の変化は、エアロゲル骨格を通して同質に分布できる。例えば、平均細孔径は、エアロゲル骨格全体にわたって実質的に同じある可能性がある。
【0121】
他の実施形態では、エアロゲル骨格内の細孔径の変化は、エアロゲル骨格を通して異質に分布できる。例えば、平均細孔径は、エアロゲル骨格の特定の領域で異なる可能性がある。いくつかの例示的な実施形態では、平均細孔径は、エアロゲル骨格の上面、下面、または上側及び下面の両方の領域でより大きくなる可能性がある。例えば、マクロ孔が組成物内で分布できることにより、マクロ孔とメソ細孔との比は、下面よりも上面でさらに大きくなる、上面よりも下面でさらに大きくなる、または、上面と下面との間の中間領域よりも、上側及び下面の両方でさらに大きくなる。別の例を挙げると、マクロ孔が組成物内で分布できることにより、マクロ孔とメソ細孔との比は、下面の近くよりも上面の近くでさらに大きくなる、上面の近くよりも下面の近くでさらに大きくなる、または、上面と下面との間の中間領域よりも、上側及び下面の両方の近くでさらに大きくなる。他の実施形態では、平均細孔径は、エアロゲル骨格の上側と下面との間の中間領域でより大きくなる可能性がある。
【0122】
マクロ孔形成
マクロ孔は、エアロゲル組成物の生成中に形成できる。例えば、マクロ孔の形成は、ゲル組成物への遷移中にゲル前駆体材料に誘起できる。いくつかの実施形態では、例えばゲル前駆体溶液のスピノーダル分解を誘起することによって、マクロ孔の形成ができる。別の例を挙げると、マクロ孔の形成は、1つ以上の発泡剤を追加することによって誘起できる。
【0123】
結果として生じるエアロゲル骨格に存在するマクロ孔は、メソ細孔及び/またはミクロ細孔と比較して、マクロ孔の形成に有利に働く処理条件を選択することによって形成できる。以下の変数のいずれか1つ、いずれかの組み合わせ、または全てを実施することによって、マクロ孔の量を調整できる。変数として、(1)重合用溶媒、(2)重合温度、(3)ポリマー分子量、(4)分子量分布、(5)共重合体組成、(6)分岐量、(7)架橋結合の量、(8)分岐方法、(9)架橋結合法、(10)ゲルの形成に使用される方法、(11)ゲルを形成するために使用される触媒のタイプ、(12)ゲルを形成するために使用される触媒の化学組成、(13)ゲルを形成するために使用される触媒の量、(14)ゲル形成の温度、(15)ゲル形成中の材料にわたって流れるガスのタイプ、(16)ゲル形成中に材料にわたって流れるガスの流速、(17)ゲル形成中の大気圧、(18)ゲル形成中の溶解ガスの除去、(19)ゲル形成中の樹脂の固体添加剤の存在、(20)ゲル形成プロセスの時間、(21)ゲル形成のために使用される基材、(22)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される1つの溶媒または複数の溶媒のタイプ、(23)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される1つの溶媒または複数の溶媒の組成、(24)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される時間、(25)溶媒交換プロセスの各ステップの一部の滞在時間、(26)溶媒交換での溶媒の流動速度、(27)溶媒交換での溶媒の流動のタイプ、(28)溶媒交換での溶媒の攪拌速度、(29)溶媒交換プロセスの各ステップで使用される温度、(30)溶媒交換での溶媒の体積と、ある部分の体積との比、(31)乾燥方法、(32)乾燥プロセスにおける各ステップの温度、(33)乾燥プロセスの各ステップでの圧力、(34)乾燥プロセスの各ステップで使用されるガスの組成物、(35)乾燥プロセスの各ステップ中のガス流の速度、(36)乾燥プロセスの各ステップ中のガスの温度、(37)乾燥プロセスの各ステップ中の部分の温度、(38)乾燥プロセスの各ステップ中の部分の周りにある筐体の存在、(39)乾燥中の部分の周囲の筐体のタイプ、及び/または(40)乾燥プロセスの各ステップで使用される溶媒、が挙げられる。多官能アミン及びジアミン化合物は、固体として1つ以上の部分で別々にまたは一緒に追加され、純粋であり得る、または適切な溶媒で溶解され得る。他の態様では、エアロゲルを作成する方法は、(a)多官能アミン化合物及び少なくとも1つのジアミン化合物を溶媒に提供し、溶液を形成するステップと、(b)分岐ポリマーマトリクス溶液を形成するのに十分な状態で、少なくとも1つのジアンヒドリド化合物を、ステップ(a)の溶液に提供するステップであって、分岐ポリマーマトリクスは溶液中で可溶化される、提供するステップと、(c)分岐ポリマーマトリクス溶液を、オープンセル構造を有するエアロゲルを形成するのに十分な状態に曝すステップと、を含み得る。結果として生じるエアロゲル骨格に存在するマクロ孔は、上記に記した方式で形成できる。好ましい非限定の一態様では、より小さいメソ細孔及びミクロ細孔と比較して、マクロ孔の形成は、主に、ゲル形成中のポリマー/溶媒のダイナミクスを制御することによって制御できる。
【0124】
上記に説明したように、本開示の実施形態に従ったエアロゲル組成物は、マエアロゲル骨格及び補強材を含み得、補強材の少なくとも一部はエアロゲルを含有しない。例えば、エアロゲル骨格は、補強材の厚さを通って部分的に延在できる。そのような実施形態では、補強材、例えばOCMF、繊維、またはそれらの組み合わせの部分はエアロゲル材料を含み得、ある部分はエアロゲルがない可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、エアロゲルは、補強材の厚さの約90%を通って、補強材の厚さの約50%~約90%の範囲を通って、補強材の厚さの約10%~約50%の範囲を通って、または補強材の厚さの約10%を通って延在する。
【0125】
任意の特定の動作理論に縛られることなく、補強材の少なくとも一部がエアロゲルを含有しないエアロゲル組成物は、圧縮率、圧縮弾力性、及びコンプライアンスの好ましい特性を提供できる。例えば、補強材の特性は、十分な補強を提供し、エアロゲルを含有する領域の熱特性をサポートするために選択され、また、エアロゲルがない領域で十分な圧縮率、圧縮弾力性、及び/またはコンプライアンスを提供するためにも選択できる。補強エアロゲル組成物のエアロゲル含有部は、所望の熱伝導率、例えば約25mW/m*K未満の熱伝導率を提供できる一方、エアロゲルがない補強部は、所望の物理的特性、例えば所望の圧縮率を提供または改善し得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、補強材の少なくとも一部がエアロゲルを含有していない補強エアロゲル組成物は、本明細書に開示される方法を使用して形成でき、補強材は、前駆体溶液で補強材を部分的に充填するのに十分な量の前駆体溶液と組み合わされる。例えば、前駆体の体積が補強材の体積未満である可能性があるため、前駆体は補強部だけを部分的に通って延在する。上記に説明したように、乾燥したとき、結果として生じる補強エアロゲル組成物は、補強材の全厚よりも小さい範囲を通って延在するエアロゲル骨格を含む。他の実施形態では、補強材の少なくとも一部がエアロゲルを含有していない補強エアロゲル組成物は、表面エアロゲル層を補強エアロゲル組成物から除去することによって形成できる。
【0127】
いくつかの実施形態では、補強材の少なくとも一部がエアロゲルを含有していない補強エアロゲル組成物は、補強部の厚さを通って混合する特性を有する補強材を使用して形成できる。例えば、補強部は複数の層を含み得、各層は、様々な特性、例えば、平均細孔/セルの大きさの差異、材料組成、クローズドセル、オープンセル、表面処理、またはそれらの組み合わせを有する。複数の層は、例えば、接着剤を使用して、フレームボンディングによって、または本明細書に説明されるもの等の他の適切な方法または機構によって、相互に結合できる。補強材の異なる特性は、層を通るエアロゲルの分布の変化をもたらす可能性がある。例えば、補強材のオープンセル部はエアロゲル骨格を含み得る一方、クローズドセル部は実質的にエアロゲルがないままになる。同様に、補強材またはその層の他の材料特性により、補強部のエアロゲル内の分布、ひいては補強エアロゲル組成物内の分布を判定できる。
【0128】
いくつかの例示的な実施形態では、補強材の少なくとも一部がエアロゲルを含有していない補強エアロゲル組成物は、本明細書に開示される方法を使用して形成でき、補強材の特性、または補強材の層の特性により、前駆体溶液で補強材の部分的な充填を提供するように、例えば被覆プロセス中、材料または層を充填する前駆体溶液の量を制御またはそれに影響を与える。例えば、補強部の一方の層はオープンセルを有し得、補強部の別の層はクローズドセルを有し得る。前駆体溶液がそのような補強部と組み合わされるとき、ゲル前駆体溶液が層のオープンセルに浸潤できる一方、実質的に他の層のクローズドセルに浸潤しない。そのような組成物が乾燥するとき、結果として生じる補強エアロゲル組成物は、エアロゲルを含有しない一方の部分、例えばクローズドセル層を含み得る一方、別の部分、例えばオープンセル層はエアロゲルを含有する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される添加剤(例えば、吸熱添加剤、不透明添加剤、防火等級添加剤、または他の添加剤)は、補強エアロゲル組成物内に不均一に分散できる。例えば、添加材料は、エアロゲル組成物の厚さを通って、またはエアロゲル組成物の長さ及び/もしくは幅に沿って変わる可能性がある。例えば、添加剤はエアロゲル組成物の一方の側面に蓄積できる。いくつかの実施形態では、添加材料(複数可)は、エアロゲル合成物の1つの層で集結できる、または、本質的に合成物に隣接するまたはそれに取り付けられた添加剤から成る別々の層として提供できる。例えば、熱制御部材は、本質的に、石膏、重曹、マグネシア系セメント等の吸熱材から成る層を含み得る。さらなる例示的な実施形態では、エアロゲル組成物は、また、組成物内で、または表皮層として、のいずれか一方で、追加材料の少なくとも1つの層を含み得る。例えば、層は、ポリマーシート、金属シート、線維シート、高配向グラファイト材料(例えば熱分解グラファイトシート)、及びファブリックシートから成るグループから選択された層であり得る。いくつかの実施形態では、表皮層は、例えば、エアロゾル接着剤、ウレタン系接着剤、アクリレート接着剤、ホットメルト接着剤、エポキシ、ゴム樹脂接着剤、ポリウレタン合成物接着剤、及びそれらの組み合わせから成るものから選択された接着機構によって、組成物に取り付けできる。いくつかの実施形態では、表皮層は、非接着機構によって組成物に取り付けでき、例えば、フレームボンディング、ニードリング、スティッチ、シールバッグ、リベット、ボタン、クランプ、ラップ、ブレース、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された機構によって取り付けられる。いくつかの実施形態では、前述の接着機構及び非粘着機構のいずれかの組み合わせを使用して、表皮層を組成物に取り付けできる。
【0130】
粉末エアロゲル組成物
本明細書に説明されるように、エアロゲル組成物または合成物は、エアロゲルの微粒子、粒子、顆粒、ビーズ、または粉末を、接着剤等の結合剤、樹脂、セメント、発泡体、ポリマー、または同様の固体材料もしくは凝固材料と併せて、固体材料または半固体材料に混和する材料を含み得る。例えば、エアロゲル組成物は、補強材、エアロゲル粒子、及びオプションで結合剤を含み得る。例示的な実施形態では、エアロゲル粒子及び少なくとも1つのタイプの湿潤剤を含むスラリーを提供できる。例えば、エアロゲル粒子は、界面活性剤または分散剤等の少なくとも1つの湿潤剤でコーティングできる、または湿潤できる。エアロゲル粒子は、十分に湿潤できる、部分的に湿潤できる(例えば、表面湿潤)、またはスラリー中に存在できる。好ましい湿潤剤は揮発することが可能であり、疎水性エアロゲル粒子の疎水性の適切な回復を可能にする。湿潤剤がエアロゲル粒子の表面上にあるままである場合、残りの湿潤剤は、複合材料の全体的な熱伝導率に寄与する可能性がある。したがって、好ましい湿潤剤は、分解または他の手段を用いるまたは用いない揮発等によって、取り外し可能であるものである。概して、エアロゲルと互換性がある任意の湿潤剤を使用できる。
【0131】
湿潤剤
湿潤剤でコーティングされたスラリーまたはエアロゲルは、疎水性エアロゲルを、他の含水流体、スラリー、接着剤、結合剤材料等の様々な材料に容易に混和する方法に有用である可能性があり、これは、オプションで、固体材料、繊維、金属繊維、別々の繊維、織布材料、不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、フェルト、及びそれらの組み合わせを形成するために硬化できる。少なくとも1つの湿潤剤で湿潤されたエアロゲル、または少なくとも1つの湿潤剤を伴うエアロゲルを含むスラリーは、疎水性エアロゲルの容易な導入及び均一な分布を可能にする。米国特許第9,399,864号、米国特許第8,021,583号、米国特許第7,635,411号、及び米国特許第5,399,422号(それらの特許のそれぞれは全体として本明細書に参照により組み込まれる)で説明されるもの等のウェットレイドプロセスでは、水性スラリーを使用して、エアロゲル粒子、繊維、及び他の添加剤を分散する。次に、スラリーは、エアロゲル粒子、繊維、及び添加剤の層を形成するために脱水でき、それらの層は、乾燥し、オプションで、エアロゲル合成物を生成するためにカレンダー仕上げできる。
【0132】
エアロゲル粒子及び添加剤
他の実施形態では、エアロゲル組成物は、エアロゲル粒子、少なくとも1つの無機マトリクス材料を含み、オプションで、繊維、補助材料、添加剤、及びさらなる無機結合剤も含み得る。無機マトリクス材料は、いくつかの実施形態では、フィロケイ酸塩、例えば、カオリン、クレイ、もしくはベントナイト等の自然発生のフィロケイ酸塩、マガダイトもしくはケニヤイト等の合成フィロケイ酸塩等、またはこれらの混合物を含み得る。フィロケイ酸塩は燃やされ得る、または燃やされない場合があり、例えば、材料を乾燥し、結晶水を除く。無機マトリクス材料は、また、いくつかの実施形態では、フィロケイ酸塩と組み合わされた、セメント、石灰、石膏、またはそれらの適切な混合物等の無機結合剤も含み得る。また、無機マトリクス材料は、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される防火等級添加剤、乳白剤、またはそれらの組み合わせ等の他の無機添加剤も含み得る。無機マトリクス材料を含むエアロゲル組成物及びその例示的なプロセスは、米国特許第6,143,400号、米国特許第6,083,619号に開示されている(それらの特許のそれぞれは全体として本明細書に参照により組み込まれる)。いくつかの実施形態では、エアロゲル組成物は、織布材料、不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、フェルト、及びそれらの組み合わせの上にコーティングされた、またはそれらの中で吸収されたエアロゲル粒子を含み得る。接着剤結合剤は組成物に含まれ得る。また、本明細書に開示されるような防火等級添加剤、乳白剤、またはそれらの組み合わせ等の添加剤も含み得る。ファブリック上にコーティングされた、またはファブリックに吸収されたエアロゲル組成物及びその例示的なプロセスは、米国特許公開第2019/0264381A1号に開示されている(その特許は全体として本明細書に参照により組み込まれる)。
【0133】
本明細書に説明されるように、エアロゲル合成物は、面材料の補強層等他の材料に積層または対面できる。一実施形態では、本開示は、補強エアロゲル組成物を含む少なくとも1つの基層と、少なくとも1つの表皮層とを含む多層ラミネートを提供する。一実施形態では、表皮層は補強材を含む。一実施形態では、補強エアロゲル組成物は繊維補強層またはオープンセル型発泡体補強層で補強される。一実施形態では、本開示は、補強エアロゲル組成物を含む基層と、補強材を含む少なくとも2つの表皮層とを含む多層ラミネートを提供し、2つの表皮層は基層の反対面上にある。例えば、米国特許出願第2007/0173157号に説明されている方法及び材料に従って、多層エアロゲルラミネート合成物を生成できる。
【0134】
表皮層は、柔軟性の改善または表面の粉化の減少等、特有の特徴を最終合成構造に提供する助けをする材料を含み得る。面材料は硬質または柔軟であり得る。面材料は伝導層または反射ホイルを含み得る。例えば、面材料は金属材料または金属化材料を含み得る。面材料は不織布材料を含み得る。表皮層は、合成構造の表面上に配置できる、または合成構造を形成する補強エアロゲル合成物、例えば熱制御部材の表面上に配置できる。表皮層は、合成構造の周りに、または合成構造を形成する補強エアロゲル合成物、例えば熱制御部材の周りに連続的なコーティングまたはバッグを形成できる。いくつかの実施形態では、1つの表皮層または複数の表皮層は、合成構造、または合成構造を形成する補強エアロゲル合成物を封入できる。
【0135】
一実施形態では、表皮層は合成構造の周囲にポリマーシートを含み、より具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミドを含むポリマー材料、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチルペンタン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(l-ブテン)、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルフルオリド、ポリビニルアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルフォン、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリウンデカノアミド、ポリイミド、またはそれらの組み合わせ等のポリマーを含む。一実施形態では、ポリマーシートは、発泡ポリマー材料、より具体的には、PTFE(ePTFE)、発泡ポリプロピレン(ePP)、発泡ポリエチレン(ePE)、発泡スチロール(ePS)、またはそれらの組み合わせを含む発泡ポリマー材料を含み、または本質的にその材料から成る。1つの好ましい実施形態では、面材料は本質的に発泡ポリマー材料から成る。一実施形態では、ポリマーシートは、0.1μm~210μm、0.1μm~115μm、0.1μm~15μm、または0.1μm~0.6μmの範囲にわたる細孔径を特徴とする微小孔ポリマー材料を含む、または本質的にその材料から成る。
【0136】
一実施形態では、表皮層材料はフッ素ポリマー材料を含む、または本質的にその材料から成る。本開示の文脈内で、「フッ素ポリマー」または「フッ素ポリマー材料」という用語は、主にポリマーフルオロカーボンを含む材料を指す。適切なフッ素ポリマー表皮層材料は、限定ではないが、米国特許第5,814,405号に説明されている微小孔PTFEと、Gore-Tex(登録商標)(W.L.Goreから市販されている)等の発泡PTFE(ePTFE)と、を含む、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、及びそれらの組み合わせを含む。1つの好ましい実施形態では、面材料は本質的にフルオロポリマー材料から成る。1つの好ましい実施形態では、面材料は本質的に発泡PTFE(ePTFE)材料から成る。
【0137】
一実施形態では、表皮層材料は非フッ素ポリマー材料を含む、または本質的にその材料から成る。本開示の文脈内で、「非フッ素ポリマー」または「非フッ素ポリマー材料」という用語は、フルオロポリマー材料を含まない材料を指す。適切な非フッ素ポリマー表皮層材料は、限定ではないが、アルミ蒸着マイラー、Tyvek(登録商標)(DuPontから市販されている)等の低密度ポリエチレン、ゴムまたはゴム合成物、不織布材料、スパンデックス、ナイロン、ライクラ、またはエラステイン等の弾性繊維、及びそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、面材料は柔軟な面材料である。
【0138】
いくつかの実施形態では、表皮層材料は、最大約100℃、最大約120℃、または最大約150℃の最大使用温度を有する材料等の自動車用樹脂及びポリマーを含み得る。例えば、表皮層材料は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネートABS、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、PVC、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、本明細書に開示される実施形態に従ったエアロゲル合成物及び熱制御部材は、自動車用樹脂または自動車用ポリマーの層、金属層または金属化層、及びエアロゲル層を含み得る。
【0139】
表皮層は、無機面材料または有機面材料を、基層の補強材に固定するのに適切な接着剤を使用することによって基層に取り付けできる。本開示で使用できる接着剤の例は、限定ではないが、セメント系接着剤、ケイ酸ナトリウム、ラテックス、粘着剤、シリコン、ポリスチレン、エアロゾル系接着剤、ウレタン、アクリル酸系接着剤、ホットメルト結合システム、3Mから市販されている結合システム、エポキシ樹脂、ゴム樹脂接着剤、米国特許第4,532,316号に説明されている接着剤等のポリウレタン系接着剤の混合物を含む。
【0140】
また、表皮層は、無機面材料または有機面材料を、基層の補強材に固定するのに適切な非接着剤または技術を使用することによっても基層に取り付けできる。本開示に使用できる非粘着剤材料または技術の例は、限定ではないが、熱融着、超音波ステッチング、RFシーリング、スティッチまたはスレッディング、ニードリング、密封バッグ、リベットまたはボタン、クランプ、ラップ、または他の非粘着剤ラミネーション材料を含む。
【0141】
表皮層は、エアロゲル複合材料の生成の任意の段階で、基層に取り付けできる。一実施形態では、表皮層は、ゾルゲル溶液を基礎補強材に注入した後に、ただしゲル化前に、基層に取り付けられる。別の実施形態では、表皮層は、ゾルゲル溶液を基礎補強材に注入した後に、また後続のゲル化後に、ただしゲル材料が劣化または乾燥する前に、基層に取り付けられる。さらに別の実施形態では、表皮層は、ゲル材料がエイジングまたは乾燥した後に、基層に取り付けられる。好ましい実施形態では、表皮層は、ゾルゲル溶液を基礎補強材に注入する前に、基層に取り付けられる。表皮層は固体であり、流体が浸透不可能であり得る。表皮層は多孔性であり、流体が浸透可能であり得る。好ましい実施形態では、表皮層は多孔性であり、流体が浸透可能であり、流体が面材料を通って拡散することを可能にするくらい十分に大きい直径を伴う細孔または穴を含む。別の好ましい実施形態では、表皮層は、ゾルゲル溶液を基礎補強材に注入する前に、基層の補強材に取り付けられ、表皮層は多孔性であり、流体が浸透可能であり、流体が面材料を通って拡散することを可能にするくらい十分に大きい直径を伴う細孔または穴を含む。さらに別の好ましい実施形態では、表皮層は、ゾルゲル溶液を発泡補強材に注入する前に、オープンセル型発泡補強材に取り付けられ、表皮層は多孔性であり、流体が浸透可能であり、流体が面材料を通って拡散することを可能にするくらい十分に大きい直径を伴う細孔または穴を含む。
【0142】
乳白剤
エアロゲル組成物は、熱伝達の放射成分を減らす乳白剤を含み得る。ゲル形成の前の任意の時点で、不透明化合物またはその前駆体は、ゲル前駆体を含む混合物に分散され得る。不透明化合物の例は、限定ではないが、炭化ホウ素(B4C)、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi2O3、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化チタン鉄、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、炭化物(SiC、TiC、またはWC盗等)、またはそれらの混合物を含む。不透明化合物の前駆体の例は、限定ではないが、TiOSO4またはTiOCl2を含む。いくつかの実施形態では、添加剤として使用される不透明化合物について、炭化ケイ素のひげ結晶または繊維を除外できる。エアロゲル組成物が電気デバイスでの使用で意図されるとき、例えばバリア層として電池での使用、または他の関連の用途で意図されるとき、乳白剤を含む組成物は、高容量及び高い表面抵抗率を伴う高い絶縁耐力を望みどおりに保有できる。そのような実施形態では、乳白剤として使用される炭素添加剤は、非導電性であり得る、または電気伝導性を減らすように改良され得る。例えば、乳白剤は、電気伝導性を減らすために表面酸化できる。いくつかの実施形態では、固有の電気伝導性を伴う炭素添加剤は、電気デバイスでの使用が意図されるエアロゲル組成物中で乳白剤として使用できる。そのような実施形態では、導電性炭素添加剤は、電気デバイスに使用される適切な絶縁耐力を組成物に提供するように、浸透閾値を下回る濃度で使用できる。
【0143】
防火等級添加剤
エアロゲル組成物は、1つ以上の防火等級添加剤を含み得る。本開示の文脈内で、「防火等級添加剤」という用語は、火に対する反応に関連して、吸熱効果をもたらし、エアロゲル組成物に混和できる材料を指す。さらに、特定の実施形態では、防火等級添加剤は、防火等級添加剤が存在するエアロゲル組成物の熱分解(Td)の開始温度に対して100℃よりも大きくならない吸熱分解(ED)の開始温度を有し、また、特定の実施形態では、防火等級添加剤が存在するエアロゲル組成物のTdに対して50℃よりも低くならないEDの開始温度を有する。言い換えれば、防火等級添加剤のEDは、(T
d-50℃)~(T
d+100℃)の範囲を有する。
【数1】
【0144】
ゾル(例えば、先行技術で理解されるような様々な方法で、ケイ酸アルキルまたは水ガラスから調合されたシリカゾル)との混和または混合よりも前に、混和または混合と同時に、またはさらに混和または混合に続いて、防火等級添加剤は、エタノールと、オプションで最大で体積比10%の水とを含む媒体と混合できる、またはそうでなければ、その媒体中で分散できる。混合物は、媒体中に添加剤の実質的に均一分散を実現するために、必要に応じて混合され得る及び/または攪拌され得る。理論に縛られることなく、先述のクレイ及び他の防火等級添加剤の水和形態を利用することで、追加の吸熱効果をもたらす。例えば、ハロイサイトクレイ(Applied Minerals,Inc.から商品名DRAGONITEで、またはImerysから単にHalloysiteとして、市販されている製品)、カオリナイトクレイは、水和形態で、昇温で水和水を放出すること(ガス希釈)によって、吸熱効果をもたらすアルミニウムシリケートクレイである。別の例として、水和形態の炭素は、加熱温度で、または昇温で二酸化炭素を放出できる。
【0145】
本開示の文脈内で、「脱水熱」という用語は、昇温に曝されていないとき水和形態の材料から水を蒸発させるために(該当する場合、ジヒドロキシル化のためにも)必要な熱量を意味する。脱水熱は、一般的に、単位重量に基づいて表される。
【0146】
特定の実施形態では、本開示の防火等級添加剤は、約100℃以上、約130℃以上、約200℃以上、約230℃以上、約240℃以上、約330℃以上、350℃以上、約400℃以上、約415℃以上、約425℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の熱分解の温度の開始温度を有する。特定の実施形態では、本開示の防火等級添加剤は、約440℃または570℃の熱分解の開始温度を有する。特定の実施形態では、本開示の防火等級添加剤は、防火等級添加剤が混和されるエアロゲル組成物(防火等級添加剤がない)のTdに対して大体50℃よりも大きくならない、よりも大きくならない、大体40℃よりも大きくならない、大体30℃よりも大きくならない、大体20℃よりも大きくならない、大体10℃よりも大きくならない、大体5℃よりも大きくならない、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の熱分解の開始温度を有する。
【0147】
本開示の防火等級添加剤は、限定ではないが、以下のクレイ材料を含む。クレイ材料として、フィロケイ酸塩クレイ(イライト等)、カオリンまたはカオリナイト(ケイ酸アルミニウム;Al2Si2O5(OH)4)、メタカオリン、ハロイサイト(ケイ酸アルミニウム;Al2Si2O5(OH)4)、エンデライト(ケイ酸アルミニウム;Al2Si2O5(OH)4)、雲母(シリカミネラル)、ダイアスポア(水酸化酸化アルミニウム;α-AlO(OH))、ギブサイト(水酸化アルミニウム)、ベーマイト(水酸化酸化アルミニウム;γ-AlO(OH))、モンモリロナイト、バイデライト、パイロフィライト(ケイ酸アルミニウム;Al2Si4O10(OH)2)、ノントロナイト、ブラバイサイト、スメクタイト、レバリエライト、レクトライト、セラドナイト、アタパルジャイト、クロロパール、ボルコンスコアイト、アロフェン、レースウィナイト、ディルナイト、セベライト、ミロサイト、コリライト、シモライト、ニュートナイト、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、水酸化マグネシウム(または二水酸化マグネシウム、「MDH」)、アルミナ三水和物(「ATH」)、石膏(硫酸カルシウム二水和物;CaSO4・2H2O)、バリントナイト(MgCO3・2H2O)、ネスケホナイト(MgCO3・3H2O)、ランスフォルダイト(MgCO3・5H2O)、水苦土石(水和炭酸マグネシウム;Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O)、限定ではないがドロマイト及びリチウム炭素等の他の炭素、が挙げられる。本開示の特定の実施形態では、いくつかのクレイ材料の中でも、少なくとも部分的な層状構造を有するクレイ材料を使用する。本開示の特定の実施形態では、エアロゲル組成物中の防火等級添加剤としてのクレイ材料は、水和形態等の少なくとも一部の水を有する。添加剤は、水和結晶形態であり得る、または本開示の組成物の製造/処理で水和した状態になり得る。特定の実施形態では、防火等級添加剤は、また、化学組成で変化しないで熱を吸収する低融点添加剤も含む。この等級の例として、不活性ガラスビーズ等の低融点ガラスが挙げられる。本開示の組成物に有用であり得る他の添加剤は、限定ではないが、珪灰石(ケイ酸カルシウム)及び二酸化チタン(TiO2)を含む。特定の実施形態では、他の添加剤は、限定ではないが二酸化チタンまたは炭化ケイ素等の赤外線乳白剤、限定ではないが低融点ガラスフリット、ケイ酸カルシウム等のセラミファイアー、または限定ではないがリン酸塩及び硫酸塩等のチャー形成剤を含み得る。特定の実施形態では、添加剤は、添加剤が均一に分布し、そして製品性能に変化を生じさせるように大量に凝集しないことを確実にする技術等の特殊処理の検討が必要になり得る。処理技術は、追加の静的ミキサー及び動的ミキサー、安定剤、プロセス状態の調整、及び当技術分野で他の既知のものを含み得る。
【0148】
添加剤の量
本明細書に開示されるエアロゲル組成物中の添加剤の量は、組成物の所望の特性に依存し得る。ゾルゲル組成物の調合及び処理の間に使用される添加剤の量は、一般的に、ゾルのシリカ含量に対する重量パーセントと呼ばれる。ゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して重量が、約5wt%~約70wt%で変わり得る。特定の実施形態では、ゾル中の添加剤の量はシリカ含量に対して10wt%~60wt%であり、特定の好ましい実施形態であり、その量は、シリカ含量に対して20wt%~40wt%である。例示的な実施形態では、シリカ含量に対するゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して、約5%~約20%、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約20%、約30wt%~約50wt%、約35wt%~約45wt%、または約35wt%~約40wt%の範囲である。いくつかの実施形態では、ゾル中の添加剤の量は、シリカ含量に対して少なくとも約10wt%である、またはシリカ含量に対して約10wt%である。いくつかの実施形態では、添加剤の量はシリカ含量に対して約5wt%~約15wt%の範囲である。特定の実施形態では、添加剤は2つ以上のタイプであり得る。1つ以上の防火等級添加剤は、また、最終的なエアロゲル組成物中にも存在し得る。ケイ酸アルミニウムの防火等級添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、添加剤は、シリカ含量に対して約60~70wt%でエアロゲル組成物中に存在する。例えば、カオリン等のケイ酸アルミニウムの防火等級添加剤、またはカオリン等のケイ酸アルミニウム防火等級添加剤及びアルミナ三水和物(「ATH」)の組み合わせを含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、シリカ含量に対して約30~40wt%である。別の例を挙げると、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、シリカ含量に対して約30~40wt%、例えば35wt%である。別の例を挙げると、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、シリカ含量に対して約5~15wt%、例えば10wt%である。
【0149】
最終的な補強エアロゲル組成物に言及するとき、添加剤の量は、一般的に、最終的な補強エアロゲル組成物の重量パーセントと呼ばれる。最終的な補強エアロゲル組成物中の添加剤の量は、補強エアロゲル組成物の重量に対して、約1%~約50%、約1%~約25%、または約10%~約25%で変わり得る。例示的な実施形態では、最終的な補強エアロゲル組成物中の添加剤の量は、補強エアロゲル組成物の重量に対して、約10%~約20%の範囲である。例示的な実施形態では、最終的な補強エアロゲル組成物中の添加剤の量は、組成物の重量パーセントとして、約1%、約2%約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、または前述の割合のいずれかの間の範囲内にある。特定の実施形態では、最終的な補強エアロゲル組成物中の添加剤の量は、補強エアロゲル組成物の重量に対して約15%である。特定の実施形態では、最終的な補強エアロゲル組成物中の添加剤の量は、補強エアロゲル組成物の重量に対して約13%である。例えば、炭化ケイ素等の添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、補強エアロゲル組成物の重量に対して約10~20wt%、例えば約15wt%である。別の例を挙げると、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、補強エアロゲル組成物の重量に対して約3~5wt%、例えば約4wt%である。
【0150】
防火等級添加剤の熱分解の開始温度
特定の実施形態では、防火等級添加剤は、その熱分解の開始温度に基づいて、分類またはグループ化できる。例えば、防火等級添加剤は、約200℃未満、約400℃未満、または約400℃よりも大きい熱分解の開始温度を有するものとして、分類またはグループ化できる。例えば、約200℃未満の熱分解の開始温度を有する添加剤は、重曹(NaHCO3)、ネスケホン石(MgCO3・3H2O)、及び石膏(硫酸カルシウム二水塩;CaSO4・2H2O)を含む。別の例を挙げると、約400℃未満の熱分解の開始温度を有する添加剤は、アルミナ三水和物(「ATH」)、水苦土石(水和マグネシウム炭素;Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O)、及び水酸化マグネシウム(または二水酸化マグネシウム、「MDH」)を含む。別の例を挙げると、約400℃未満の熱分解の開始温度を有する添加剤は、ハロイサイト(ケイ酸アルミニウム;Al2Si2O5(OH)4)、カオリンまたはカオリナイト(ケイ酸アルミニウム;Al2Si2O5(OH)4)、ベーマイト(水酸化酸化アルミニウム;γ-AlO(OH))、または高温相変化材料(PCM)を含む。
【0151】
本開示の特定の実施形態では、クレイ材料、例えばハロイサイトまたはカオリナイト等のアルミノケイ酸塩クレイは、エアロゲル組成物中の添加剤として、脱水型であり、例えば、メタハロイサイトまたはメタカオリンである。本開示の組成物に有用であり得る他の添加剤は、限定ではないが、珪灰石(ケイ酸カルシウム)及び二酸化チタン(TiO2)を含む。特定の実施形態では、他の添加剤は、限定ではないが二酸化チタンまたは炭化ケイ素等の赤外線乳白剤、限定ではないが低融点ガラスフリット、ケイ酸カルシウム等のセラミファイアー、または限定ではないがリン酸塩及び硫酸塩等のチャー形成剤を含み得る。特定の実施形態では、添加剤は、添加剤が均一に分布し、そして製品性能に変化を生じさせるように大量に凝集しないことを確実にする技術等の特殊処理の検討が必要になり得る。処理技術は、追加の静的ミキサー及び動的ミキサー、安定剤、プロセス状態の調整、及び当技術分野で他の既知のものを含み得る。1つ以上の防火等級添加剤は、また、最終的なエアロゲル組成物中にも存在し得る。
【0152】
特定の実施形態では、添加剤の含有物、例えば、本開示のエアロゲル材料及び組成物中のハロイサイトまたはカオリン等のアルミノケイ酸塩クレイ系材料は、高温収縮特性の改善をもたらす可能性がある。例示的な高温収縮の試験方法は、「Standard Test Method for Linear Shrinkage of Preformed High-Temperature Thermal Insulation Subjected to Soaking Heat」(ASTM C356,ASTM International,West Conshohocken,PA)である。そのような試験では、「熱ソーク」と呼ばれる材料は、最大60分の期間中、1000℃よりも大きい温度に曝される。特定の例示的な実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約6%以下、約5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の高温収縮、すなわち、線収縮、幅収縮、厚さ収縮、または寸法収縮のいずれかの組み合わせを有し得る。
【0153】
いくつかの例示的な実施形態では、前駆体反応に触媒作用を及ぼすために使用される特定の塩基性触媒は、エアロゲル組成物中の微量レベルの他のアルカリ金属を生じさせる可能性がある。エアロゲル材料の微量レベル、例えばアルカリ、例えば、ナトリウムまたはカリウムの100~500ppmは、高温収縮及び熱耐久性に悪影響をもたらす可能性がある。しかしながら、いずれかの特定のメカニズムまたは理論に縛られることなく、ハロイサイトまたはカオリン等のアルミノケイ酸塩クレイ系材料は、放出されるアルカリ、例えばナトリウムまたはカリウムを隔離でき、それによって、収縮及び熱耐久性に対するアルカリの影響を減らす、またはなくす。本開示の特定の実施形態では、アルミノケイ酸塩クレイ材料は脱水型であり、例えばメタハロイサイトまたはメタカオリンである。例えば、シリカ含量に対して約0.5wt%よりも大きいメタカオリンまたはメタハロイサイトの量を含むエアロゲル材料または組成物は、熱収縮及び熱耐久性を著しく減らすことができる。例示的な実施形態では、エアロゲル材料または組成物は、シリカ含量に対して約0.5wt%~約3.0wt%の範囲のメタカオリンまたはメタハロイサイトの量を含み得る。
【0154】
封入層または封入材料層
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層材料のコア部は、または多層材料は封入層によって封入され得る。例えば、封入層は、多層材料を囲む材料の単数の層もしくは複数の層、及び/または多層材料を囲む材料のコーティング、及び/または多層材料のコア部を含み得る。例えば、封入層は、薄膜、層、エンベロープ、またはコーティングを含み得る。封入部材は、合成構造、または合成構造を形成する補強エアロゲル合成物を包囲するのに適切ないずれかの材料から作ることができる。例えば、封入部材は、合成構造から落ちたほこりまたは粒子材料の生成を減らすことができる、またはなくすことができる。封入材料層は、ポリマー、エラストマー、またはそれらの組み合わせから選択できる。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ゴム、及びナイロン等の適切なポリマーの例は、システム全体にわたる平面の熱伝導率を下げる影響をもたらす非常に低い熱伝導率(1W/m未満)を有する。一実施形態では、封入層はポリエチレンテレフタレート層を含む。
【0155】
封入層は、パネルの内外に空気が流れることを可能にする少なくとも1つの通気口を含み得る。封入部材は、粒子状物質をろ過する少なくとも1つのフィルターを含み得る。例示的な実施形態では、封入層は、パネルの内外に空気が流れることを可能にする通気口と、粒子状物質を封入部材内に維持したままにする、通気口の上にある微粒子フィルターと、を含む。別の実施形態では、封入層は、少なくとも1つの通気口及び少なくとも1つの微粒子フィルターを含むエッジシールを含む。さらなる実施形態では、封入層は少なくとも1つの通気口及び少なくとも1つの微粒子フィルターを含むエッジシールを含み、エッジシールの通気口は封入部材エッジの内外に空気が流れることを可能にし、フィルターは気流中の粒子状物質を捕らえて保持し、粒子状物質による封入層の外側の空気汚染を防止する。
【0156】
熱キャパシタンス層
例示的な実施形態では、多層材料は、熱キャパシタンスを提供する材料または材料の層(すなわち、熱容量材料)を含み得、例えば、少なくとも約0.2J/(g・℃)の比熱容量を有する材料を含む。いくつかの実施形態では、熱キャパシタンスを提供する材料は、少なくとも約0.5J/(g・℃)の比熱容量を有する。例えば、熱容量を提供する材料は、アルミニウム、チタン、ニッケル、スチール、鉄、またはそれらの組み合わせ等の金属を含み得る。いくつかの実施形態では、多層材料は、熱キャパシタンスを提供する材料の層またはコーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、多層材料は、多層材料の層内に、例えばエアロゲル組成物の層内に配置された熱キャパシタンスを提供する材料の粒子を含み得る。特定の実施形態では、多層材料は、エアロゲル組成物に隣接して配置された熱キャパシタンスを提供する材料の少なくとも1つの層を含み得る。特定の実施形態では、多層材料は、エアロゲル組成物の複数の層のうちの少なくとも2つの間に配置された熱キャパシタンスを提供する材料の少なくとも1つの層を含み得る。例示的な実施形態では、多層材料は熱伝導及び熱容量材料の両方を含み得る。
【0157】
例えば、多層材料は、熱キャパシタンス及び熱伝導率の両方を提供する材料を含み得、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、スチール、鉄、またはそれらの組み合わせ等の金属を含む。別の例を挙げると、多層材料は、熱キャパシタンス、熱伝導率、またはそれらの組み合わせのいずれかをそれぞれが提供する、1つ以上の異なる材料、または材料の層を含み得、例えば、金属を含む層及び熱伝導ポリマーを含む層を含む。好ましくは、熱伝導層は、少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも600℃、さらにより好ましくは少なくとも1000℃、さらに一層より好ましくは少なくとも1500℃の融解温度を有する。
【0158】
いくつかの実施形態では、熱容量材料は相変化材料から選択できる。相変化材料はエネルギー貯蔵システムで様々な用途に適切であり、そして、材料は、相変化中に比較的高い熱キャパシタンスを有するはずだけでなく、比較的低コストで、自立的であるはずであり、すなわち、デバイス、例えばパッケージ化されている電池モジュールの動作温度範囲にわたって、いずれかのシールまたは特殊な封じ込めが必要ではないことを認識できる。エネルギー貯蔵の用途に関する望ましい追加の特性は、発熱構成要素から離れるように熱を速く移送する高熱伝導率と、相変化が発生する温度をカスタマイズ能力とを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、熱容量材料は、面内寸法に沿って、少なくとも約200mW/m・Kの熱伝導率を有する。
【0160】
熱伝導層
本明細書に開示される熱伝導層は、高熱負荷下で耐久性をさらに改善する多層材料x-y平面の全体にわたって熱を急速に放散する能力が著しく高まることを示すことが発見されている。高熱伝導材料の例は、炭素繊維、グラファイト、炭化ケイ素、金属を含み、金属は、限定ではないが、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等、同様に、それらの組み合わせを含む。
【0161】
例示的な実施形態では、多層材料は、熱伝導材料、または熱伝導率を提供する材料の層を含み得る。本開示の熱伝導層は、電池モジュールまたは電池パックの内部の局所的熱負荷から離れて熱を放散するのを助ける。例えば、熱伝導層は、面内寸法に沿って、少なくとも約200mW/m・Kの熱伝導率を有し得る。熱伝導材料は、金属、炭素、導電性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの層を含み得る。
【0162】
上記の態様のいくつかの実施形態では、多層材料は1つ以上の熱伝導層を含み得、すなわち、多層材料は、50W/mKよりも大きい、より好ましくは100W/mKよりも大きい、さらにより好ましくは200W/mKよりも大きい(全て、25℃で測定された値である)熱伝導率がある。例えば、多層材料は、熱伝導材料を含む少なくとも1つの層を含み得、例えば、金属、炭素、熱伝導ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む層を含む。これらの実施形態に関連して使用される場合、熱伝導材料は、絶縁材料、例えばエアロゲル組成物の値よりも大きい熱伝導率を有する材料を指す。特定の実施形態では、熱伝導材料は、エアロゲル組成物の値よりも少なくとも約1桁分大きい熱伝導率を有する。いくつかの実施形態では、多層材料はエアロゲル組成物の複数の層を含み得る。特定の実施形態では、多層材料は、エアロゲル組成物に隣接して配置された導電材料の少なくとも1つの層を含み得る。特定の実施形態では、多層材料は、エアロゲル組成物の複数の層のうちの少なくとも2つの間に配置された導電材料の少なくとも1つの層を含み得る。いくつかの実施形態では、多層材料は、多層材料の層内に、例えばエアロゲル組成物の層内に配置された導電材料の粒子を含み得る。
【0163】
熱の分布及び除去を補助するために、少なくとも1つの実施形態では、熱伝導層はヒートシンクに結合される。様々なヒートシンクのタイプ及び構成があるのと同様に、ヒートシンクを熱伝導層に結合するための異なる技術があることと、本開示は、ヒートシンク/結合技術のいずれかの1つのタイプの使用に限定されないことと、が認識される。例えば、本明細書に開示される多層材料の少なくとも1つの熱伝導層は、冷却システムの冷却プレートまたは冷却チャネル等、電池モジュールまたは電池パックの冷却システムの要素と熱連通できる。別の例を挙げると、本明細書に開示される多層材料の少なくとも1つの熱伝導層は、パック、モジュール、もしくはシステムの壁等、ヒートシンクとして機能できる、電池パック、電池モジュール、もしくは電池システムの他の要素と熱連通できる、または電池セルの間に配置された多層材料の他の要素と熱連通できる。本明細書により詳細に説明されるように、多層材料の熱伝導層と電池システム内のヒートシンク要素との間の熱連通は、多層材料に隣接する単数のセルまたは複数のセルからヒートシンクまで過剰熱を除去することが可能になり得、それによって、例えば、過剰熱を生成し得る熱イベントの影響、重症度、または伝播が減る。
【0164】
好ましくは、熱伝導層は、少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも600℃、さらにより好ましくは少なくとも1000℃、さらに一層より好ましくは少なくとも1500℃の融解温度を有する。
【0165】
熱伝導層の厚さは、組成物、圧縮パッド等の多層の他の要素の特性、多層材料に含まれる熱伝導の数、及び組成物の様々な要因に依存し得る。機能的に述べると、熱伝導層は、所望の面内の熱伝導率を提供するのに十分に厚くするべきである。
【0166】
いくつかの実施形態では、熱伝導材料、例えば、熱分解グラファイトシート(PGS)は、約0.010mm、0.025mm、0.05mm、0.07mm、0.10mm、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の厚さと、約600~約1950W/mKの範囲の面内の熱伝導率とを有し得る。いくつかの実施形態では、熱伝導材料、例えば金属板は、約0.05mm、約0.07mm、約0.10mm、約0.20mm、約0.25mm、約0.30mm、約0.5mm、約0.75mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の厚さを有し得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、熱伝導材料は相変化材料から選択できる。
【0168】
いくつかの実施形態では、そのような層の間に均一に及び一貫して熱伝導を確実にするために、多層材料の層の間に熱ペーストを使用できる。本明細書に使用される場合、熱ペーストは、熱化合物、熱グリース、熱伝導材料(TIM)、熱ゲル、熱ペースト、ヒートシンク化合物、及びヒートシンクペーストとしても知られている様々な材料を指す。例えば、熱ペーストの層は、エアロゲル組成物と、いずれかの他の層との間に配置できる。他の層として、熱伝導材料もしくは熱容量材料を含む単一の層もしくは複数の層、単一の表皮層もしくは複数の表皮層、または封入層等が挙げられる。
【0169】
犠牲材料層
例示的な実施形態では、多層材料は、犠牲材料、または犠牲材料の層を含み得る。本開示の文脈内で、「犠牲材料」または「犠牲層」という用語は、層が受けた機械的、熱的、化学的、及び/または電磁気的な状態に反応して、犠牲になる、または少なくとも部分的に除去することが意図される材料または層を指す。例えば、犠牲材料または犠牲層は、電池の熱暴走イベントの前または間に発生する温度等の高温に曝されるとき分解できる。いくつかの実施形態では、犠牲材料層は、外部表面上に配置できる。例えば、多層材料のコア部の外面、または多層材料の外部表面、例えば多層材料の外面の上に配置される。
【0170】
例示的な実施形態では、本開示の犠牲材料または層は、約1MPa、約2MPa、約3MPa、約4MPa、約5MPa、約6MPa、約7MPa、約8MPa、約9MPa、約10MPa、約11MPa、約12MPa、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の圧縮係数を有する圧縮可能パッドを含み得る。犠牲材料層は、シロキサン、ポリオレフィン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、セルロースアセテート、及びポリスチレンから成るグループから選択できる。いくつかの場合、材料層は発泡体の形態である。いくつかの実施形態では、圧縮可能パッドまたは発泡体は、機械的負荷(繰返し負荷がかけられる等)への露出により摩耗する可能性がある。いくつかの実施形態では、圧縮可能パッドまたは発泡体は、異常な機械的イベント、化学的イベント及び/または熱イベントへの露出後に分解する。
【0171】
いくつかの実施形態では、犠牲材料層の化学分解の開始温度は約200℃~約400℃の範囲である。
【0172】
本明細書に開示される実施形態で圧縮可能パッドとして使用するための適切な発泡体は、約1.0g/cc以下、約0.90g/cc以下、約約0.80g/cc以下、約0.70g/cc以下、約0.60g/cc以下、約0.50g/cc以下、約0.40g/cc以下、約0.30g/cc以下、約0.20g/cc以下、約0.16g/cc、約0.10g/cc以下、約0.08g/cc以下、もしくは、これらの値のうちのいずれか2つの間の範囲よりも低い密度を有する、ならびに/または発泡体の合計体積に基づいて、少なくとも約20~約99%の空隙体積含量、具体的には約30%以上の空隙体積含量を有する。例示的な実施形態では、発泡体は、約0.08g/cc~約0.50g/ccの密度、約27kPa~約55kPaで25%の圧縮力偏向(CFD)、及び約10%未満、具体的には5%未満で約70℃に設定された圧縮力を有する。CFDは、ASTMD1056に従って、元の厚さの25%までサンプルを圧縮するのに必要なkPaの力を計算することによって測定される。
【0173】
発泡体に使用されるポリマーは、様々な種類の熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の混合物、または熱硬化性樹脂から選択できる。使用できる熱可塑性樹脂の例は、ポリアセタール、ポリアクリル、スチレンアクリロニトリル、ポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(限定ではないが、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12,ナイロン11、またはナイロン12等)、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン体等、または前述の熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。
【0174】
ポリマー発泡体で使用できる熱可塑性樹脂の混合物の例は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン/ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ナイロン、ポリスルホン/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリカーボネート/熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマーアロイ、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、スチレン-無水マレイン酸/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルスルホン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリアセタール、エチレンプロピレンゴム(EPR)等、または前述の混合物の少なくとも1つを含む組み合わせを含む。
【0175】
ポリマー発泡体で使用できるポリマー熱硬化性樹脂の例は、ポリウレタン、エポキシ、フェノール、ポリエステル、ポリアミド、シリコン等、または前述の熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。熱硬化性樹脂の混合物、及び熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を使用できる。
【0176】
多層材料
上記に説明したように、本開示の実施形態に従った多層材料は、圧縮率、圧縮弾力性、及びコンプライアンスに関する好ましい特性を提供する。電池モジュール内のセルの間で熱絶縁体として使用されるとき、エアロゲル組成物を使用して形成された断熱シートは、電池の充電/放電サイクル中、活物質の劣化及び膨張に起因して、セルの拡張に適応する圧縮変形に対する抵抗をもたらす可能性がある。電池モジュールの初期の組立中、1MPa以下の比較的に低負荷は、一般的に、熱絶縁体、例えば本明細書に開示される多層材料に加えられる。使用中、例えば、電池モジュール内のセルが、充電/放電サイクル中に拡張または膨張するとき、最大約5MPaの負荷は、本明細書に開示される多層材料に加えられ得る。
【0177】
例示的な態様では、本開示は、多層材料が約25kPaで約25%未満の圧縮率を示す多層材料を提供する。オプションで、圧縮解放されると、多層材料は、その元の厚さの少なくとも約80%,75%,65%,60%、または50%に戻るのに十分に復元力がある可能性がある。いくつかの実施形態では、多層材料は、約25kPa~約35kPaの範囲において約25%未満の圧縮率、好ましくは約50kPaで約50%未満の圧縮率を示す。いくつかの実施形態では、多層材料は、約50kPaで約25%~約50%の範囲の圧縮率を示す。例示的な実施形態では、多層材料は、約245kPaで約80%未満の圧縮率、例えば、約235kPaで約70%未満の圧縮率を示す。例示的な実施形態では、多層材料は、約345kPaで約70%未満の圧縮率を示す。補強エアロゲル組成物を含む多層材料の熱伝導率は、好ましくは、多層材料が圧縮されるとき、約25mW/m*K未満で維持される。
【0178】
本明細書に説明されるように、多層材料は、絶縁層、熱伝導層、熱容量層、封入材料層、摩耗抵抗層、耐火層/難燃層、熱反射層、圧縮可能層、例えば、圧縮可能パッド、犠牲層、またはそれらの組み合わせ等の複数の層の材料を含み得る。多層材料の層の組み合わせ及び構成は、所望の特性の組み合わせ、例えば、圧縮率、弾力性、熱的性能、火反応、及び他の特性を取得するために選択できる。いくつかの実施形態では、多層材料は、補強エアロゲル組成物の少なくとも2つの層の間に配置された少なくとも1つの圧縮可能パッドを含む。例えば、圧縮可能パッドは、ポリオレフィン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、セルロースアセテート、またはポリスチレン等の発泡体または他の圧縮可能材料であり得る。特定の実施形態では、多層材料は、また、熱伝導層または熱容量層の少なくとも1つの層と、補強エアロゲル組成物の複数の層のうちの少なくとも1つとを含み得る。熱伝導材料または熱容量材料は、多層材料内で熱を吸収及び/または分散できる。いくつかの実施形態では、多層材料は、さらに、熱反射層を含み得る。例えば、熱反射層は金属箔または金属シートを含み得る。
【0179】
いくつかの層を含む多層材料の実施形態では、層は、例えば、エアロゾル接着剤、ウレタン系接着剤、アクリレート接着剤、ホットメルト接着剤、エポキシ、ゴム樹脂接着剤、ポリウレタン合成物接着剤、及びそれらの組み合わせから成るものから選択された接着機構によって、他の層に取り付けできる。いくつかの実施形態では、層は、非接着機構によって取り付けでき、例えば、フレームボンディング、ニードリング、スティッチ、シールバッグ、リベット、ボタン、クランプ、ラップ、ブレース、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された機構によって取り付けられる。いくつかの実施形態では、前述の接着機構及び非粘着機構のいずれかの組み合わせを使用して、複数の層を一緒に取り付けできる。
【0180】
多層材料の最終製品
本開示の実施形態に従った多層材料を様々な最終製品に形成できる。最も単純な構成では、多層材料はシートの形態であり得る。シートは、例えば圧延品として、連続的または半連続的に形成できる、または、所望のサイズ及び形状のシートは、大きいシートから切断できる、またはそうでなければ形成できる。シート材料を使用して、電池セルの間で熱バリアを形成できる。他の構成では、補強エアロゲル組成物は、例えば電池のパウチセルを封じ込めるためにパウチに形成できる、または、円筒形電池セルを封じ込めるためにシリンダーに形成できる。
【0181】
本開示の多層材料は、パネリング、パイププリフォーム、ハーフシェルプリフォーム、エルボ、ジョイント、パウチ、シリンダー、ならびに工業用途及び商業用途に対する絶縁材料の適用に通常必要な他の形状を含む、様々な3次元形態に成形され得る。
【0182】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容が明らかに他の意味が示される場合を除き、複数形の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される「または(or)」という用語は、概して、文脈上明らかに他の意味が示される場合を除き、「及び/または(and/or)」を含む意味で利用される。
【0183】
本明細書に使用される「約(about)」は、「大体」または「ほぼ」を意味し、記載された数値または範囲に関連して、数値の±5%を意味する。ある実施形態では、「約(about)」という用語は、数値の有効数字に従って、従来の四捨五入を含み得る。加えて、『約「x」~「y」』という語句は、『約「x」~約「y」』を含む。
【0184】
本明細書に使用される「組成物」及び「合成物」という用語は、言い換え可能に使用される。
【0185】
本明細書に使用される「圧縮可能パッド」及び「圧縮可能層」という用語は、言い換え可能に使用される。
【0186】
本開示の文脈内で、「エアロゲル」、「エアロゲル材料」、または「エアロゲルマトリクス」という用語はゲルを指し、ゲルは、相互接続された細孔の対応する網状組織が骨格内に統合された、相互接続構造の骨格を含み、分散隙間媒体として空気等のガスを封じ込め、そして、ゲルは、以下の(a)~(c)のエアロゲルに起因する以下の物理的特性及び構造的特性(窒素ポロシメトリー試験に従った特性)を特徴とする:(a)約2nm~約100nmの範囲にわたる平均孔径、(b)少なくとも80%以上の気孔率、及び(c)約100m2/g以上の表面積。
【0187】
したがって、本開示のエアロゲル材料は、前述の段落に記載された定義した要素を満足するいずれかのエアロゲルまたは他のオープンセル型材料を含み、それ以外の場合、キセロゲル、クライオゲル、アンビゲル、微小孔材料等として分類できる材料を含む。
【0188】
また、エアロゲル材料は、さらに、(d)約2.0mL/g以上、特に約3.0mL/g以上の細孔容積、(e)約0.50g/cc以下、特に約0.3g/cc以下、さらに特に約0.25g/cc以下の密度、及び(f)2~50nmの孔径を有する細孔を含む全細孔容積の少なくとも50%を含む追加の物理的特性を特徴とし得る(しかし、下記により詳細に説明されるように、本明細書に開示される実施形態は、50nmよりも大きい孔径を有する細孔を含むエアロゲル骨格及び組成物を含む)。しかしながら、これらの追加特性を満たすために、エアロゲル材料として化合物の特性評価が必要ではない。
【0189】
本開示の文脈内で、「エアロゲル組成物」という用語は、合成物の構成要素としてエアロゲル材料を含むいずれかの複合材料を指す。エアロゲル組成物の例は、限定ではないが、繊維補強エアロゲル合成物と、乳白剤等の添加元素を含むエアロゲル合成物と、オープンセル型マクロポーラス骨格によって補強されたエアロゲル合成物と、エアロゲル-ポリマー合成物と、エアロゲルの微粒子、粒子、顆粒、ビーズ、または粉末を、結合剤、樹脂、セメント、発泡体、ポリマー、または同様の固体材料と併せて、固体材料または半固体材料に混和する、合成物材料と、を含む。エアロゲル組成物は、概して、本明細書に開示される様々なゲル材料から、溶媒の除去後に取得される。したがって、エアロゲル組成物は、さらに、追加の処理または処置を受け得る。また、様々なゲル材料は、溶媒除去(または、液体抽出または液体乾燥)を受ける前に、当技術分野で既知の、または有用な他の追加の処理または処置を受け得る。
【0190】
本開示のエアロゲル組成物は、補強エアロゲル組成物を含み得る。本開示の文脈内で、「補強エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内の補強相を含むエアロゲル組成物を指し、補強相はエアロゲル骨格自体の一部ではない。
【0191】
本開示の文脈内で、「繊維補強エアロゲル組成物」という用語は、補強相として繊維補強材を含む補強エアロゲル組成物を指す。繊維補強材の例は、限定ではないが、別々の繊維、織布材料、ドライレイド不織布材料、ウエットレイド不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、フェルト、及び/またはそれらの組み合わせを含む。
【0192】
繊維補強材は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択できる。繊維補強材は、以下の材料を含む様々な材料を含み得る。材料は、限定ではないが、ポリエステル;ポリオレフィンテレフタレート;ポリ(エチレン)ナフタレート;ポリカーボネート(例えば、レーヨン、ナイロン);綿(例えば、DuPont社製ライクラ);カーボン(例えば、グラファイト);ポリアクリロニトリル(PAN);酸化PAN、未炭化熱処理PAN(SGL carbon社製のもの等);ガラスまたはグラスファイバー系材料(Sガラス、901ガラス、902ガラス、475ガラス、Eガラス等);石英等のシリカ系ファイバー(例えば、Saint-Gobain社製のQuartzel);Q-フェルト(Johns Manville社製)、サフィル(Saffil社製)、デュラブランケット(Unifrax社製)、及び他のシリカ繊維、デュラバック(Carborundum社製)、ケブラー、ノーメックス、ソンテラ(全て、DuPont社製)、コーネックス(Taijin社製)等のポリアラミド繊維;タイベック(DuPont社製)、ダイニーマ(DSM社製)、スペクトラ(Honeywell社製)等のポリオレフィン;タイパー、ザバーン(両方とも、DuPont社製)等のその他のポリプロピレン繊維;テフロン(DuPont社製)、Goretex(W.L.GORE社製)という商品名を持つPTFE等のフッ素ポリマー;ニカロン(COI Ceramics社製)等の炭化ケイ素繊維;ネクステル(3M社製)等のセラミック繊維;アクリルポリマー;ウール、シルク、麻、皮革、スエード等の繊維;PBO-ザイロン繊維(Tyobo社製)、Vectan(Hoechst社製)、Cambrelle繊維(DuPont社製)等の液晶材料;ポリウレタン、ポリアミド、木質繊維、ボロン、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼繊維、及びPEEK、PES、PEI、PEK、PPS等の他の熱可塑性プラスチック、が挙げられる。ガラスまたは繊維ガラス系繊維補強材は、1つ以上の技術を使用して製造され得る。特定の実施形態では、カーディング及びクロスラッピングまたはエアレイドプロセスを使用して、それらの材料を作るのが望ましい。例示的な実施形態では、カーディング及びクロスラッピングされたガラスまたは繊維ガラス系繊維補強材は、エアレイド材料に勝る特定の利点をもたらす。例えば、カーディング及びクロスラッピングされたガラスまたは繊維ガラス系繊維補強材は、補強材の所与の基本重量に対する一貫した材料厚を提供できる。特定の追加の実施形態では、最終的なエアロゲル組成物の機械特性及び他の特性を高めるために、z方向に繊維を織り合わせる必要があり、繊維補強材をさらにニードル加工するのが望ましい。
【0193】
本開示の文脈内で、「熱暴走」への言及は、概して、様々な動作要因によるセル温度及び圧力の突然の増加、急速な増加を指し、熱暴走は、さらには、関連のモジュール全体にわたって過度温度の伝播をもたらす可能性がある。そのようなシステムで熱暴走の潜在的な原因は、例えば、セルの欠陥及び/または短絡(内部及び外部の両方)、過充電、事故のイベント等のセルの絶縁破壊または断裂等、及び過度周辺温度(例えば、一般的に55℃よりも大きい温度)を含み得る。通常の使用では、内部抵抗の結果として、セルは加熱する。通常の電力/電流の負荷及び周囲動作状態において、ほとんどのLiイオンのセル内の温度は、20℃~55℃の範囲にとどまるように比較的容易に制御できる。しかしながら、高いセル/周辺温度における高電力の引き出し、同様に個々のセルの欠陥等の負担のかかる状態では、局所発熱が急に増加し得る。特に、臨界温度を上回ると、セル内の発熱化学反応は活性化する。さらに、一般的に、化学的発熱により、温度が急激に増加する。結果として、発熱は利用可能な熱放散よりもはるかに大きい。熱暴走により、セルの通気口及び内部の温度が200℃を超える可能性がある。
【0194】
本開示の文脈内で、「発泡体」という用語は、対応する網状組織または細孔の集合が骨格内で統合される、実質的に均一な組成物の相互接続ポリマー構造の骨格を含む材料を指し、発泡体は、ある割合のガスが気泡の形態で液体中または樹脂発泡体材料中に分散することによって形成され、その結果、気泡は、発泡体材料が固体構造を凝固するとき、細孔として保持される。概して、様々な種類のプロセスを使用して、発泡体を作ることができる。これは、例えば、米国特許第6,147,134号、第5,889,071号、第6,187,831号、及び第5,229,429号を参照されたい。したがって、本開示の発泡体材料は、この段落で記載された定義した要素を満足するいずれかの材料を含み、それ以外の場合、OCMF材料、マクロポーラス材料等として分類できる化合物を含む。本開示で定義される発泡体は、熱可塑性、エラストマー、及び熱硬化性樹脂(デュロマー)のタイプであり得る。
【0195】
本開示の文脈内で、「柔軟性のある」及び「柔軟性」という用語は、マクロ構造の故障がなく、材料または組成物が曲がるまたは屈曲する能力を指す。本開示の絶縁層は、巨視的故障がなく、少なくとも5°、少なくとも25°、少なくとも45°、少なくとも65°、もしくは少なくとも85°で曲がることが可能である、及び/または巨視的故障がなく、4フィート未満、2フィート未満、1フィート未満、6インチ未満、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、もしくはUインチ未満の曲げ半径を有する。同様に、「高い柔軟性がある」または「高い柔軟性」という用語は、巨視的故障がなく、少なくとも90°まで曲がることが可能である材料、及び/またはUインチ未満の曲げ半径を有する材料を指す。さらに、「分類された柔軟性」及び「柔軟性として分類される」という用語は、ASTM C1101(ASTM International,West Conshohocken,PA)に従って、柔軟性があるとして分類できる材料または組成物を指す。
【0196】
本開示の絶縁層は、柔軟性があり得る、より高度な柔軟性があり得る、及び/または分類された柔軟性があり得る。また、本開示のエアロゲル組成物はドレープ可能でもあり得る。本開示の文脈内で、「ドレープ可能」及び「ドレープ能力」という用語は、巨視的故障がなく、約4インチ以下の曲率半径がある材料が90°以上曲がるまたは屈曲する能力を指す。本開示の特定の実施形態に従った絶縁層は、組成物が非剛性であるように柔軟性があり、そして、組成物は、3次元の表面または物体に適用及び適合し得る、または設置もしくは適用を簡素にするために様々な形状及び構成にプレフォームされ得る。
【0197】
本開示の文脈内で、「添加剤」または「添加元素」という用語は、エアロゲル生成の前、最中、または後に、エアロゲル組成物に追加され得る材料を指す。添加剤を追加して、エアロゲルの望ましい特性を変質もしくは改善し得る、またはエアロゲルの望ましくない特性を弱め得る。一般的に、添加剤はエアロゲル材料に追加され、これは、前駆体液体へのゲル化前、遷移状態材料へのゲル化中、または固体材料もしくは半固体材料へのゲル化後、のいずれか一方で行われる。
【0198】
添加剤の例は、限定ではないが、マイクロファイバー、充填剤、補強剤、安定剤、増粘剤、弾性化合物、乳白剤、着色化合物または顔料化合物、放射線吸収化合物、放射線反射化合物、防火等級添加剤、腐食防止剤、熱伝導成分、熱キャパシタンスを提供する成分、相変化材料、pH調整剤、レドックス調整剤、HCN緩和剤、オフガス緩和剤、導電性化合物、誘電性化合物、磁性化合物、レーダー遮断成分、硬化剤、収縮防止剤、及び当業者に既知の他のエアロゲル添加剤を含む。いくつかの実施形態では、熱容量を提供する成分は、少なくとも約0.3J/(g・℃)の比熱容量を有する材料を含み得る。いくつかの実施形態では、熱キャパシタンスを提供する材料は、少なくとも約0.5J/(g・℃)の比熱容量を有する。例えば、熱容量を提供する材料は、アルミニウム、チタン、ニッケル、スチール、鉄、またはそれらの組み合わせ等の金属を含み得る。いくつかの実施形態では、多層材料は、熱キャパシタンスを提供する材料の1つ以上の層またはコーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、多層材料は、エアロゲル組成物を含む1つ以上の絶縁層内に配置された熱キャパシタンスを提供する材料の粒子を含み得る。
【0199】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるエアロゲル組成物、補強エアロゲル組成物、及び多層材料は、高温イベント中に行うことができ、例えば、本明細書に開示されるような高温イベント中、熱保護を提供できる。高温イベントは、少なくとも2秒間で少なくとも約1cm2のエリアにわたって、少なくとも約25kW/m2、少なくとも約30kW/m2、少なくとも約35kW/m2、または少なくとも約40kW/m2の熱流束の持続を特徴とする。約40kW/m2の熱流束は、一般的な火から生じる熱流束と関連付けられている(Behavior of Charring Solids under Fire-Level Heat Fluxes;Milosavljevic,I.,Suuberg,E.M.;NISTIR 5499;September 1994)。特殊な場合、高温イベントは、少なくとも1分の期間中、少なくとも約10cm2のエリアにわたって約40kW/mの熱流束である。
【0200】
本開示の文脈内で、「熱伝導率」及び「TC」という用語は、2つの表面の間で温度差がある材料または組成物のいずれかの側の2つの表面の間に熱を伝達する材料または組成物の能力の測定値を指す。熱伝導率は、具体的には、単位時間毎に及び単位表面積毎に伝達された熱エネルギーを温度差で割ったものとして測定される。通常、SI単位でmW/m*K(ミリワット/メートル*ケルビン)として記録される。材料の熱伝導率は、当技術分野で既知の以下の試験方法によって判定され得る。試験方法は、限定ではないが、Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus(ASTM C518,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Test Method for Steady-State Heat Flux Measurements and Thermal Transmission Properties by Means of the Guarded-Hot-Plate Apparatus(ASTM C177,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Test Method for Steady-State Heat Transfer Properties of Pipe Insulation(ASTM C335,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Thin Heater Thermal Conductivity Test(ASTM C1114,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Standard Test Method for Thermal Transmission Properties of Thermally Conductive Electrical Insulation Materials(ASTM D5470,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods(EN 12667,British Standards Institution,United Kingdom)、またはDetermination of steady-state thermal resistance and related properties-Guarded hot plate apparatus(ISO 8203,International Organization for Standardization,Switzerland)を含む。場合によって異なる結果をもたらす異なる方法により、本開示の文脈内で、明示的に別段の定めをした場合を除き、熱伝導率の測定値は、周囲環境の大気圧で約37.5℃の温度で、また約2psiの圧縮負荷がかかるとき、ASTM C518規格(Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus)に従って取得されることを理解されたい。ASTM C518のとおり報告された測定値は、一般的に、圧縮負荷に対するいずれかの関連の調整でEN12667のとおり行われた測定値のいずれかと十分に相関関係がある。
【0201】
また、熱伝導率の測定値は、圧縮時の大気圧において約10℃の温度で獲得できる。10℃における熱伝導率の測定値は、概して、37.5℃における対応する熱伝導率の測定値よりも低い0.5~0.7mW/mKである。特定の実施形態では、本開示の絶縁層は、10℃において、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の熱伝導率を有する。
【0202】
本開示の文脈内で、「密度」という用語は、材料または組成物の単位体積毎の質量の測定値を指す。「密度」という用語は、概して、材料の見掛け密度を指し、同様に、組成物のかさ密度を指す。密度は、一般的に、kg/m3またはg/ccとして記録される。材料または組成物の密度、例えばエアロゲルの密度は、当技術分野で既知の以下の方法によって判定され得る。方法は、限定ではないが、Standard Test Method for Dimensions and Density of Preformed Block and Board-Type Thermal Insulation(ASTM C303,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations(ASTM C167,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Determination of the apparent density of preformed pipe insulation(EN 13470,British Standards Institution,United Kingdom)、またはDetermination of the apparent density of preformed pipe insulation(ISO 18098,International Organization for Standardization,Switzerland)を含む。場合によって異なる結果をもたらす異なる方法により、本開示の文脈内で、密度の測定値は、特に記載がない限り、2psiの圧縮力で、厚さ測定のために、ASTM C167規格(Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations)に従って得られることを理解されたい。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約1.0g/cc以下、約0.90g/cc以下、約0.80g/cc以下、約0.70g/cc以下、約0.60g/cc以下、約0.50g/cc以下、約0.40g/cc以下、約0.30g/cc以下、約0.25g/cc以下、約0.20g/cc以下、約0.18g/cc以下、約0.16g/cc以下、約0.14g/cc以下、約0.12g/cc以下、約0.10g/cc以下、約0.05g/cc以下、約0.01g/cc以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の密度を有する。
【0203】
エアロゲル材料または組成物の疎水性は、水蒸気摂取量に関して表すことができる。本開示の文脈内で、「水蒸気摂取量」という用語は、水蒸気を吸収するエアロゲル材料または組成物の潜在力の測定値を指す。水蒸気摂取量は、特定の測定条件で水蒸気に曝されるとき、エアロゲル材料または組成物が吸収する、またはそうでなければ保持する水のパーセント(重量)として表すことができる。エアロゲル材料または組成物の水蒸気摂取量は、当技術分野で既知の方法によって判定され得る。既知の方法は、限定ではないが、Standard Test Method for Determining the Water Vapor Sorption of Unfaced Mineral Fiber Insulation(ASTM C1104,ASTM International,West Conshohocken,PA)、Thermal insulating products for building applications、Determination of long term water absorption by diffusion(EN 12088,British Standards Institution,United Kingdom)を含む。場合によって異なる結果をもたらす異なる方法により、本開示の文脈内で、水蒸気摂取量の測定値は、特に記載がない限り、周囲圧力下で24時間(ASTM C1104規格に従って96時間から修正した)にわたって49℃及び湿度95%で、ASTM C1104規格(Standard Test Method for Determining the Water Vapor Sorption of Unfaced Mineral Fiber Insulation)に従って得られることを理解されたい。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または組成物は、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、約8wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.1wt%以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の水蒸気摂取量を有し得る。別のエアロゲル材料または組成物と比べて水蒸気摂取量が改善されているエアロゲル材料または組成物は、基準のエアロゲル材料または組成物と比べて、水蒸気の摂取量/保有量の割合が低くなる。
【0204】
エアロゲル材料または組成物の疎水性は、材料の表面との界面で水滴の平衡接触角を測定することによって表すことができる。本開示のエアロゲル材料または組成物は、約90°以上、約120°以上、約130°以上、約140°以上、約150°以上、約160°以上、約170°以上、約175°以上、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の水接触角を有し得る。
【0205】
本開示の文脈内で、「燃焼熱」、「HOC」、及び「ΔHC」という用語は、材料または組成物の燃焼または発熱分解で放出された熱エネルギー量の測定値を指す。燃焼熱は、一般的に、エアロゲル材料または組成物のグラム毎に放出された熱エネルギーのカロリー(cal/g)の単位で、または材料もしくは組成物のキログラム毎に放出された熱エネルギーのメガジュール(MJ/kg)の単位で記録される。材料または組成物の燃焼熱は、当技術分野で既知の方法によって判定され得る、限定ではないが、Reaction to fire tests for products-Determination of the gross heat of combustion(calorific value)(EN ISO 1716,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)を含む。本開示の文脈内で、燃焼熱の測定値は、特に記載がない限り、EN ISO1716規格(Reaction to fire tests for products-Determination of the gross heat of combustion(calorific value))に従って獲得される。
【0206】
本開示の文脈内で、全ての熱分析及び関連の定義は、空気が周囲圧力で、25℃で開始し、毎分20℃の速度で最大1000℃まで上昇する条件で行われた測定値が参照されている。したがって、熱分解の開始温度、放熱のピーク温度、熱吸収のピーク温度等を測定及び計算する際に、これらのパラメータのいずれかの変化を考慮する必要がある(または、これらの条件下で再度行う必要がある)。
【0207】
本開示の文脈内で、「熱分解の開始温度」及び「TD」という用語は、有機材料の分解からの急速な発熱反応が材料または組成物の中に現れる環境熱の最低温度の測定値を指す。熱重量分析(TGA)を使用して、材料または組成物の中の有機材料の熱分解の開始温度を測定し得る。材料のTGA曲線は、周囲温度の増加に材料が曝されるときの材料の重量損失(%質量)を示し、したがって熱分解を示す。材料の熱分解の開始温度は以下のTGA曲線の接線の交点:TGA曲線の基線に接する直線、及び、有機材料の分解に関する急速な発熱分解イベント中の最大傾斜点でTGA曲線に接する直線と相関関係があり得る。本開示の文脈内で、有機材料の熱分解の開始温度の測定値は、特に記載がない限り、この段落で提供されるようなTGA分析を使用して獲得される。
【0208】
また、示差走査熱量測定(DSC)分析を使用して、材料の熱分解の開始温度を測定し得る。材料のDSC曲線は、材料が周囲温度の漸増に曝されるとき、材料によって放出された熱エネルギー(mW/mg)を示す。材料の熱分解の開始温度は、ΔmW/mg(熱エネルギー出力の変化)が最大で増加するDSC曲線の点と相関関係があり得、したがって、DSC曲線はエアロゲル材料からの発熱生成量を示す。本開示の文脈内で、DSC、TGA、またはそれら両方を使用する熱分解の開始温度の測定値は、特に明確に記載しない限り、前述の段落でさらに定義された20℃/分の温度上昇速度を使用して得られる。DSC及びTGAは、それぞれ、この熱分解の開始温度と同様の値を提供し、何回も、試験が同時に実行されることにより、試験結果はDSC及びTGAの両方から取得される。
【0209】
本開示の文脈内で、「吸熱分解の開始温度」及び「TED」という用語は、分解または脱水からの吸熱反応が材料または組成物の中に現れる環境熱の最低温度の測定値を指す。熱重量分析(TGA)を使用して、材料または組成物の中の吸熱分解の開始温度を測定し得る。材料のTGA曲線は、周囲温度の増加に材料が曝されるときの材料の重量損失(%質量)を示す。材料の熱分解の開始温度は以下のTGA曲線の接線の交点:TGA曲線の基線に接する直線、及び、材料の急速な吸熱分解または脱水の期間中の最大傾斜点でTGA曲線に接する直線と相関関係があり得る。本開示の文脈内で、材料または組成物の吸熱分解の開始温度の測定値は、特に記載がない限り、この段落で提供されるようなTGA分析を使用して獲得される。
【0210】
本開示の文脈内で、「炉温上昇」及び「ΔTR」という用語は、熱分解状態下での材料または組成物の最大温度(TMAX)を、熱分解状態(通常、最終温度またはTFIN)のその材料または組成物の基準温度と比べた差の測定値を指す。炉温上昇は、一般的に、セ氏温度または℃の単位で記録される。材料または組成物の炉温上昇は、限定ではないが、Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test(EN ISO 1182,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)を含む、当技術分野で既知の方法によって判定され得る。本開示の文脈内で、炉温上昇の測定値は、特に記載がない限り、EN ISO 1182規格(Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test)と同等の条件に従って得られる。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル組成物は、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約45℃以下、約40℃以下、約38℃以下、約36℃以下、約34℃以下、約32℃以下、約30℃以下、約28℃以下、約26℃以下、約24℃以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の炉温上昇をもたらし得る。昇温での組成物の安定性の状況の範囲内で、例えば、第2の組成物の炉温上昇よりも低い炉温上昇を有する第1の組成物について、第2の組成物よりも第1の組成物のほうが改善することが考えられるであろう。本明細書では、組成物と比較して、1つ以上の防火等級添加剤を追加するとき、組成物の炉温上昇は減ることが想到される。
【0211】
本開示の文脈内で、「火炎時間」及び「TFLAME」という用語は、熱分解状態下での材料または組成物の火炎の持続時間の測定値を指し、「火炎時間の持続時間」は、5秒以上続く検査サンプルの可視部のいずれかの部分での火炎の存続時間である。火炎時間は、一般的に、秒または分の単位で記録される。材料または組成物の火炎時間は、限定ではないが、Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test(EN ISO 1182,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)を含む、当技術分野で既知の方法によって判定され得る。本開示の文脈内で、火炎時間の測定値は、特に記載がない限り、EN ISO1182規格(Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test)と同等の条件に従って得られる。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル組成物は、約30秒以下、約25秒以下、約20秒以下、約15秒以下、約10秒以下、約5秒以下、約2秒以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の火炎時間を有する。本明細書の文脈内で、例えば、第2の組成物の火炎時間よりも短い火炎時間を有する第1の組成物について、第2の組成物よりも第1の組成物のほうが改善することが考えられるであろう。本明細書では、いずれかの防火等級添加剤を含まない組成物と比較して、1つ以上の防火等級添加剤を追加するとき、組成物の火炎時間は短縮されることが想到される。
【0212】
本開示の文脈内で、「質量損失」及び「ΔM」という用語は、熱分解状態下で、損失するまたは焼却される材料、組成物、または合成物の量の測定値を指す。質量損失は、一般的に、重量パーセントまたはwt%単位で記録される。材料、組成物、または合成物の質量損失は、限定ではないが、Reaction to fire tests for building and transport products:Noncombustibility test(EN ISO 1182,International Organization for Standardization,Switzerland;EN adopted)を含む、当技術分野で既知の方法によって判定され得る。本開示の文脈内で、質量損失の測定値は、特に記載がない限り、EN ISO1182規格(Reaction to fire tests for building and transport products:Non-combustibility test)と同等の条件に従って得られる。特定の実施形態では、本開示の絶縁層またはエアロゲル組成物は、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約28%以下、約26%以下、約24%以下、約22%以下、約20%以下、約18%以下、約16%以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の質量損失を有し得る。本明細書の文脈内で、例えば、第2の組成物の質量損失よりも小さい質量損失を有する第1の組成物について、第2の組成物よりも第1の組成物のほうが改善することが考えられるであろう。本明細書では、いずれかの防火等級添加剤を含まない組成物と比較して、1つ以上の防火等級添加剤を追加するとき、組成物の質量損失は減ることが想到される。
【0213】
本開示の文脈内で、「放熱のピーク温度」という用語は、分解からの発熱放熱が最大である環境熱の温度の測定値を指す。TGA分析、示差走査熱量測定(DSC)、またはそれらの組み合わせを使用して、材料または組成物の放熱のピーク温度を測定し得る。DSC及びTGAは、それぞれ、放熱のピーク温度の同様の値を提供するであろう。そして、何回も、試験は同時に実行されることにより、結果はDSC及びTGAの両方から取得される。一般的なDSC分析では、熱流は昇温に対してプロットされ、放熱のピーク温度は、そのような曲線の最高ピークが発生する温度である。本開示の文脈内で、材料または組成物の放熱のピーク温度の測定値は、特に記載がない限り、この段落で提供されるようなTGA分析を使用して得られる。
【0214】
吸熱材料に関連して、「熱吸収のピーク温度」という用語は、分解からの吸熱の熱吸収が最大である環境熱の温度の測定値を指す。TGA分析、示差走査熱量測定(DSC)、またはそれらの組み合わせを使用して、材料または組成物の熱吸収のピーク温度を測定し得る。一般的なDSC分析では、熱流は昇温に対してプロットされ、熱吸収のピーク温度は、そのような曲線の最低ピークが発生する温度である。本開示の文脈内で、材料または組成物の熱吸収のピーク温度の測定値は、特に記載がない限り、この段落で提供されるようなTGA分析を使用して得られる。
【0215】
本開示の文脈内で、「低可燃性」及び「低可燃性の」という用語は、以下、i)50℃以下の炉温上昇、ii)20秒以下の火炎時間、及びiii)50wt%以下の質量損失、の特性の組み合わせを満たす材料または組成物を指す。本開示の文脈内で、「不燃性」及び「不燃性の」という用語は、以下、i)40℃以下の炉温上昇、ii)2秒以下の火炎時間、及びiii)30wt%以下の質量損失、の特性の組み合わせを満たす材料または組成物を指す。本明細書に説明されるように、組成物の可燃性(例えば、炉温上昇、火炎時間、及び質量損失の組み合わせ)が1つ以上の防火等級添加剤の含有物に応じて減ることが想到される。
【0216】
本開示の文脈内で、「低燃焼性」及び「低燃焼性の」という用語は、3MJ/kg以下の燃焼熱(HOC)の合計を有する低可燃性の材料または組成物を指す。本開示の文脈内で、「不燃焼性」及び「不燃焼性の」という用語は、2MJ/kg以下の燃焼熱(HOC)を有する不燃焼性の材料または組成物を指す。本明細書に説明されるように、組成物のHOCが1つ以上の防火等級添加剤の含有物に応じて減ることが想到される。
【0217】
本開示の文脈内で、「疎水性結合シリコン」という用語は、シリコン原子に共有結合された少なくとも1つの疎水基を含むゲルまたはエアロゲルの骨格内のシリコン原子を指す。疎水性結合シリコンの例は、限定ではないが、少なくとも1つの疎水基(MTESまたはDMDS等)を含むゲル前駆体から形成されるゲル骨格内のシリカ基のシリコン原子を含む。疎水性結合シリコンは、また、限定ではないが、追加の疎水基を組成物に混和することによって、疎水性を付与または改善するために、疎水化剤(HMDZ等)で処置されるゲル骨格またはゲルの表面上にシリコン原子を含み得る。本開示の疎水基は、限定ではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、オクチル基、フェニル基、または当業者に既知の他の置換もしくは非置換の疎水性有機基を含む。本開示の文脈内で、「疎水基」、「疎水性有機材料」、及び「疎水性有機含量」という用語について、具体的には、有機溶媒とシラノール基との反応生成物であるゲル材料の骨格上の易加水分解性有機シリコン結合アルコキシ基が除外される。そのような除外された基は、NMR分析によって、この疎水性有機含量と区別可能である。CP/MAS29Si Solid State NMR等のNMR分光法を使用して、エアロゲルに封じ込められた疎水性結合シリコンの量を分析できる。エアロゲルのNMR分析は、M型疎水性結合シリコン(TMS誘導体等の単官能性シリカ)、D型疎水性結合シリコン(DMDS誘導体等の二官能性シリカ)、T型疎水性結合シリコン(MTES誘導体等の三官能性シリカ)、及びQ型シリコン(TEOS誘導体等の四官能性シリカ)の特性評価及び関連の定量化を可能にする。また、NMR分析を使用して、特定のタイプの疎水性結合シリコンをサブタイプにカテゴリー化すること(T型疎水性シリコンをT1種、T2種、及びT3種にカテゴリー化すること等)が可能になることによって、エアロゲルに含有された疎水性シリコンの結合化学も分析できる。シリカ材料のNMR分析に関する具体的詳細は、Geppi et al.による論文「Applications of Solid-State NMR to the Study of Organic/Inorganic Multicomponent Materials」(Appl.Spec.Rev.(2008),44-1:1-89)、具体的には7~9ページで見つけることができ、これは、本明細書によって、具体的に引用したページに従って参照によって組み込まれる。
【0218】
CP/MAS29SiNMRでの疎水性結合シリコンの特性評価は、以下の化学シフトのピークに基づいて分析できる。M1(30~10ppm);D1(10~-10ppm)、D2(-10~-20ppm);T1(-30~-40ppm)、T2(-40~-50ppm)、T3(-50~-70ppm);Q2(-70~-85ppm)、Q3(-85~-95ppm)、Q4(-95~-110ppm)。これらの化学シフトピークは概算及び例示的であり、制限または限定することが意図されない。材料内の様々なシリコン種に起因する正確な化学シフトピークは、材料の特有の化学成分に依存する可能性があり、概して、当業者はルーチンの実験及び分析によって解読できる。
【0219】
本開示の文脈内で、「疎水性有機含量」または「疎水性物質含量」または「疎水性含量」という用語は、エアロゲル材料または組成物の骨格に結合された疎水性有機材料の量を指す。エアロゲル材料または組成物の疎水性有機含量は、エアロゲル材料または組成物の材料の総量と比べた、エアロゲル骨格上の疎水性有機材料の量の重量パーセントとして表すことができる。疎水性有機含量は、エアロゲル材料または組成物を生成する際に使用される材料の性質及び関連の濃度に基づいて、当業者によって計算できる。また、好ましくは酸素雰囲気で対象材料の熱重量分析(TGA)を使用して、疎水性有機含量を測定できる(但し、代替のガス環境下のTGAも有用である)。具体的には、エアロゲルの疎水性有機材料の割合は、TGA分析中に燃焼熱温度に曝されるとき、疎水性エアロゲル材料または組成物の重量損失の割合と相関関係があり得、TGA分析中、水分の損失、残りの溶媒の損失、及び易加水分解性アルコキシ基の損失に対して調整が行われる。示差走査熱量測定、元素分析(特に炭素)、クロマトグラフの技術、核磁気共鳴スペクトル、及び当業者に既知の他の分析技術等の他の代替の技術を使用して、本開示のエアロゲル組成物の疎水性含量を測定及び判定し得る。場合によっては、既知の技術の組み合わせは、本開示のエアロゲル組成物の疎水性含量を判定する際に有用または必要であり得る。
【0220】
本開示のエアロゲル材料または組成物は、50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下、8wt%以下、6wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲の疎水性有機含量を有し得る。
【0221】
「燃料含量」という用語は、エアロゲル材料または組成物の可燃物の総量を指し、燃料含量は、TGA分析中またはTG-DSC分析中に燃焼熱温度に曝されるとき、エアロゲル材料または組成物の重量損失の合計割合と相関関係があり得、水分の損失に対して調整が行われる。エアロゲル材料または組成物の燃料含量は、疎水性有機含量、ならびに他の可燃性残留アルコール溶媒、充填材、補強材、及び易加水分解性アルコキシ基を含み得る。
【0222】
本開示の文脈内で、「オルモシル」という用語は、前述の材料を含み、同様に「オルモセラ」と呼ばれることもある他の有機修飾材料も含む。オルモシルは、多くの場合、例えばゾルゲルプロセスを通して、オルモシル膜が基材上に被覆されるコーティングとして使用される。本開示の他の有機無機ハイブリッドエアロゲルの例は、限定ではないが、シリカ-ポリエーテル、シリカ-PMMA、シリカ-キトサン、炭化物、窒化物、ならびに化合物を形成する前述の有機無機エアロゲルの他の組み合わせを含む。公開されている米国特許出願第20050192367号(段落[0022]-[0038]及び[0044]-[0058])は、そのようなハイブリッド有機無機材料の教示を含み、本明細書によって、個々に引用したセクション及び段落に従った参照により組み込まれる。
【0223】
電池モジュールまたは電池パックの内部での多層材料の使用
リチウムイオン電池(LIB)は、従来の電池と比較して、その高い作動電圧、低いメモリ効果、及び高エネルギー密度のため、最も重要なエネルギー貯蔵技術のうちの1つであると考えられる。しかしながら、安全上の懸念は、LIBの大規模利用を妨げる障壁がかなりある。過酷状態下では、発熱反応は、後続の危険反応を誘発する可能性がある放熱をもたらし得る。過酷状態のセルからの放熱が連鎖反応を活性化する可能性があるとき状況が悪化し、突発的な熱暴走が生じる。
【0224】
LIBのエネルギー密度の継続的な改善により、電気デバイス、例えば電気自動車の開発に関して、その安全性を高めることがますます急を要するようになっている。安全性の問題の背後にあるメカニズムは、異なる電池化学反応ごとに変わる。本技術は、好ましい熱特性及び機械特性を取得するために、多層材料を調製することと、その調製した材料に対応する構成に注目している。本技術の多層材料は、正常状態下で、同様に熱暴走状態下で、効果的な熱放散対策を提供する一方、正常動作モード下でLIBの安定性(例えば、加えられた圧縮応力に耐えること)を確実にする。
【0225】
本明細書に開示される多層材料は、任意の構成の電池の電池セルまたは電池構成要素、例えばパウチセル、円筒形セル、プリズムセル、同様に、そのような任意のセルを組み込むまたは含むパック及びモジュールを分離、絶縁、及び保護するのに有用である。本明細書に開示される多層材料は、再充電可能電池、例えば、リチウムイオン電池、ソリッドステート電池、及びいずれかの他のエネルギー貯蔵デバイス、または分離、絶縁、及び保護を必要とする技術で有用である。
【0226】
冷却システム等のパッシブデバイスは、電池モジュールまたは電池パックの内部の本開示の多層材料と併せて使用され得る。
【0227】
電池パックの本開示の様々な実施形態による多層材料は、単一の電池セル、または電池セルのモジュールを熱的に相互に分離するために、該単一の電池セルの複数のもの、または電池セルのモジュールを含む。
本発明に関連する発明の実施形態の一部を以下に示す。
[実施形態1]
電気エネルギー貯蔵システムの熱バリアとして使用するための多層材料であって、前記多層材料が、
絶縁層を含むコア部であって、前記絶縁層が、前記絶縁層の厚さ寸法を通して、25℃で約50mW/m・K未満及び600℃で約60mW/m・K未満の熱伝導率を有する、前記コア部と、
前記コア部の外側に配置された外部であって、前記外部が熱伝導層を含み、前記熱伝導層が、前記熱伝導層の面内寸法に沿って、少なくとも約200mW/m・Kの熱伝導率を有する、前記外部と、
を含む、前記多層材料。
[実施形態2]
前記熱伝導層が前記絶縁層と接触している、実施形態1に記載の多層材料。
[実施形態3]
前記熱伝導層が実質的にL字型であり、前記L字型熱伝導層の垂直部分が前記絶縁層から間隔をおいて配置されるようにしてあり、前記L字型熱伝導層の水平部分が前記絶縁層と接触している、実施形態1または実施形態2に記載の多層材料。
[実施形態4]
前記熱伝導層が、前記絶縁層の両側の第1の伝導層と第2の伝導層とに分割されており、前記第1の伝導層及び前記第2の伝導層が前記絶縁層と接触している、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態5]
前記熱伝導層が、金属、炭素、導電性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの層を含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態6]
前記熱伝導層が、アルミニウム、銅、またはスチールを含む金属を含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態7]
前記熱伝導層が、前記多層材料の外層である、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態8]
前記熱伝導層が、メッシュ、シート、有孔シート、ホイル、及び穿孔ホイルから成るグループから選択された形態である、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態9]
前記絶縁層が、雲母、セラミック、無機繊維綿、樹脂、または無機発泡体を含む、先行実施形態のいずれかに記載の多層材料。
[実施形態10]
前記絶縁層がエアロゲルを含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態11]
前記エアロゲルが補強材を含む、実施形態10に記載の多層材料。
[実施形態12]
前記補強材が、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択された繊維を含む、実施形態11に記載の多層材料。
[実施形態13]
前記繊維が、別々の繊維、織布材料、ドライレイド不織布材料、ウエットレイド不織布材料、ニードルパンチ不織布、中綿、ウェブ、マット、フェルト、及び/またはそれらの組み合わせの形態である、実施形態12に記載の多層材料。
[実施形態14]
前記無機繊維が、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態12または実施形態13に記載の多層材料。
[実施形態15]
前記エアロゲルがシリカ系エアロゲルを含む、実施形態10~14のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態16]
前記エアロゲルが1つ以上の添加剤を含み、前記1つ以上の添加剤が、前記エアロゲルの少なくとも約5~20重量パーセントレベルで存在する、実施形態10~15のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態17]
前記1つ以上の添加剤が、前記エアロゲルの少なくとも約10~20重量パーセントレベルで存在する、実施形態16に記載の多層材料。
[実施形態18]
前記1つ以上の添加剤が防火等級添加剤を含む、実施形態16または実施形態17に記載の多層材料。
[実施形態19]
前記1つ以上の添加剤が、B
4
C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag
2
O、Bi
2
O
3
、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、鉄チタン酸化物、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、鉄チタン酸化物(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物から選択された乳白剤を含む、実施形態16または実施形態17に記載の多層材料。
[実施形態20]
前記1つ以上の添加剤が、炭化ケイ素を含む乳白剤を含む、実施形態16に記載の多層材料。
[実施形態21]
前記1つ以上の添加剤が、防火等級添加剤及び乳白剤の組み合わせを含む、実施形態16に記載の多層材料。
[実施形態22]
前記エアロゲルが、約0.25g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、実施形態10~21のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態23]
前記エアロゲルが、約2MPa~約8MPaの曲げ弾性率を有する、実施形態10~22のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態24]
前記エアロゲルが圧縮抵抗を示し、25%ひずみの前記圧縮抵抗が約40kPa~約180kPaの間である、実施形態10~23のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態25]
前記熱伝導層の一部分と前記絶縁層との間に配置された熱容量層をさらに含み、前記熱容量層が、少なくとも約0.2J/(g・C)の特有の熱容量を有する、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態26]
前記熱容量層が相変化材料を含む、実施形態25に記載の多層材料。
[実施形態27]
前記熱容量層が、アルミニウム、チタン、ニッケル、スチール、または鉄を含む金属を含む、実施形態25に記載の多層材料。
[実施形態28]
前記熱伝導層の一部分と前記絶縁層との間に配置された犠牲材料層をさらに含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態29]
前記犠牲材料層が、シロキサン、ポリオレフィン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、セルロースアセテート、及びポリスチレンから成るグループから選択された材料を含む、実施形態28に記載の多層材料。
[実施形態30]
前記犠牲材料層が、発泡体の形態である、実施形態28または実施形態29に記載の多層材料。
[実施形態31]
前記犠牲材料層の化学分解の開始温度が、約200℃~約400℃の範囲である、実施形態28~30に記載の多層材料。
[実施形態32]
前記熱伝導層と前記絶縁層との間に配置された封入層をさらに含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態33]
前記封入材料層が、1つ以上のポリマー層を含む、実施形態32に記載の多層材料。
[実施形態34]
前記多層材料が、非圧縮状態で約2mm~約10mmの間の平均厚さを有する、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態35]
前記熱伝導層が実質的にL字型であり、前記L字型熱伝導層の垂直部分が前記絶縁層から間隔をおいて配置されるようにしてあり、前記L字型熱伝導層の水平部分が前記絶縁層と接触しており、封入材料層、犠牲材料層、及び熱容量層のうちの1つ以上が、前記L字型熱伝導層の前記垂直部分と前記絶縁層との間に配置される、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料。
[実施形態36]
前記多層材料が、少なくとも約0.02K/Wの熱抵抗率を有する、先行実施形態のいずれかに記載の多層材料。
[実施形態37]
複数の単電池セルまたは複数の電池セルモジュールを含む電池パックにおける、前記単電池セルまたは前記電池セルモジュールを熱的に互いに分離するための、先行実施形態のいずれか1項に記載の多層材料の使用。
[実施形態38]
前記電池の一部分の1つ以上の電池セルまたは電池セルモジュールで発生する暴走イベントが、前記暴走イベントが発生する前記電池の部分から、実施形態1~36のいずれか1項に記載の多層材料によって分離されている前記電池の前記部分の電池セルまたは電池モジュールに損傷を与えない、実施形態37に記載の使用。
[実施形態39]
第1の表面を有する第1の電池セルと、
第2の表面を有する第2の電池セルであって、前記第2の表面が前記第1の表面に対向する、前記第2の電池セルと、
前記第1の表面と前記第2の表面との間に配置された、実施形態1~36のいずれか1項に記載の多層材料と、
前記第1の電池セル、前記第2の電池セル、及び前記多層材料の前記熱伝導層と接触する熱交換システムと、
を含む、電池モジュール。
[実施形態40]
実施形態1~34のいずれか1項に記載の多層材料が、前記対向する第1の表面及び第2の表面の表面積の少なくとも約80%を覆う、実施形態39に記載の電池モジュール。
[実施形態41]
前記多層材料の前記絶縁層が、前記熱交換システム内に延在する、実施形態39または実施形態40に記載の電池モジュール。
[実施形態42]
前記多層材料の前記熱伝導層が、前記熱交換システムと熱連通する、実施形態39~41のいずれか1項に記載の電池モジュール。
[実施形態43]
前記多層材料の前記熱伝導層が、前記第1の電池セル及び/または前記第2の電池セルと熱連通する、実施形態39~42のいずれか1項に記載の電池モジュール。
[実施形態44]
前記多層材料の前記熱伝導層が、前記第1の電池セル及び/または前記第2の電池セルと接触している、実施形態43に記載の電池モジュール。
[実施形態45]
前記電池モジュールが、少なくとも0.01の熱抵抗係数を有しており、前記熱抵抗係数が、前記多層材料の熱抵抗の、前記電池モジュール内の前記電池セルの面エネルギー密度に対する比であり、前記アレイの前記面エネルギー密度が、前記アレイ内の全セルの総エネルギー密度の、前記アレイの外部表面に対する比である、実施形態39~44のいずれか1項に記載の電池モジュール。
[実施形態46]
前記多層材料が、少なくとも約0.3の厚さ係数を有しており、前記厚さ係数が、前記多層材料の厚さの、前記電池セルの面エネルギー密度に対する比である、実施形態39~45のいずれか1項に記載の電池モジュール。
[実施形態47]
複数のモジュールと、隣接モジュール間に配置された1つ以上のスペーサーとを含み、前記1つ以上のスペーサーが、実施形態1~36のいずれか1項に記載の多層材料を含む、電池パック。
[実施形態48]
前記複数のモジュールのうちの少なくとも1つが、実施形態39~46のいずれか1項に記載の電池モジュールである、実施形態47に記載の電池パック。
[実施形態49]
前記多層材料の前記絶縁バリアが、前記冷却システム内に延在する、実施形態47または実施形態48に記載の電池パック。
[実施形態50]
前記多層材料の前記熱伝導層が、前記冷却システムと熱連通する、実施形態47~49のいずれか1項に記載の電池パック。
[実施形態51]
実施形態47~50のいずれか1項に記載の電池パックを含む、デバイスまたは車両。
[実施形態52]
前記デバイスが、ラップトップコンピューター、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、ディスプレイパネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピューター、軍用ポータブルコンピューター、軍用電話、レーザー測距器、デジタル通信デバイス、機密情報収集センサー、電子統合型衣料品、暗視機器、電動工具、電卓、無線、リモート制御機器、GPSデバイス、ハンドヘルドテレビ及びポータブルテレビ、カースターター、懐中電灯、音響デバイス、ポータブル加熱デバイス、ポータブル電気掃除機、またはポータブル医療ツールである、実施形態51に記載のデバイス。
[実施形態53]
前記車両が電気自動車である、実施形態51に記載の車両。
[実施形態54]
エネルギー貯蔵システムの設計方法であって、
1つ以上の電池セル(複数可)を組み立ててアレイを形成することと、
前記アレイの面エネルギー密度を計算することであって、前記アレイの前記面エネルギー密度が、前記アレイ内の全セルの総エネルギー密度の、前記アレイの外部表面に対する比である、前記計算することと、
前記アレイの前記面エネルギー密度に従って、前記エネルギー貯蔵システムが、少なくとも約0.01の熱抵抗係数、及び少なくとも約0.3の厚さ係数を有するように、多層材料の熱抵抗及び圧縮時の厚さを選択することであって、前記厚さ係数が、前記多層材料の厚さの、前記アレイの前記面エネルギー密度に対する比であり、前記熱抵抗係数が、前記多層材料の熱抵抗の、前記アレイの前記面エネルギー密度に対する比である、前記選択することと、
前記アレイ内に及び/または前記アレイの周囲に前記多層材料を配置することと、
を含む、前記方法。
[実施形態55]
前記熱抵抗及び前記圧縮時の厚さを選択することが、
前記多層材料の熱抵抗係数を計算することと、
熱伝播マップから、前記多層材料の最小の圧縮時の厚さを読み取ることと、
前記最小の圧縮時の厚さよりも大きい圧縮時の厚さを選択することと、
を含む、実施形態54に記載の方法。
[実施形態56]
前記熱抵抗及び前記圧縮時の厚さを選択することが、
前記アレイの各電池セルの厚さ係数を計算することと、
熱伝播マップから、前記多層材料の最小熱抵抗を読み取ることと、
前記最小熱抵抗よりも大きい前記多層材料の熱抵抗を選択することと、
を含む、実施形態54または実施形態55に記載の方法。
[実施形態57]
前記多層材料を配置することが、
前記多層材料を前記アレイとは別に形成することと、
前記多層材料を前記アレイの電池セルの隣に挿入することと、
を含む、実施形態54~56のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態58]
前記多層材料を配置することが、前記多層材料を前記アレイ内及び/または前記アレイの周囲に、その場で直接、形成することを含む、実施形態54~57のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態59]
前記多層材料を配置することが、前記アレイ内及び/または前記アレイの周囲に、前記多層材料の噴霧、コーティング、堆積、または充填を行うことを含む、実施形態58に記載の方法。