(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】除電器
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20241029BHJP
H01T 23/00 20060101ALI20241029BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H05F3/04 J
H01T23/00
H01T19/04
(21)【出願番号】P 2024087691
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】坪田 晋伍
(72)【発明者】
【氏名】梁 世英
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104115351(CN,A)
【文献】特開2016-123769(JP,A)
【文献】特開2013-077469(JP,A)
【文献】特開平11-297491(JP,A)
【文献】実開昭51-039475(JP,U)
【文献】特開2007-220460(JP,A)
【文献】特開2008-135377(JP,A)
【文献】特開2009-163950(JP,A)
【文献】特開2009-163949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
H01T 23/00
H01T 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列方向に列状に配置された複数の電極針に高電圧を印加してイオンを発生させるバータイプの除電器であって、
前記複数の電極針それぞれの先端を針先端方向に向けて、前記複数の電極針を保持するフレームと、
前記フレームに設けられ、前記電極針の側方に位置し、グランドに導通する側面防止部材と、
前記配列方向に列状に配置されて前記フレームに装着され、前記電極針より前記針先端方向に位置し、前記側面防止部材に導通する複数の前面防止部材と、
を備え
、
前記前面防止部材はインナーフレームを有し、前記インナーフレームの内側と前記インナーフレームの外側とが、前記イオンが通過する流路の一部である、除電器。
【請求項2】
前記前面防止部材は、前記フレームに対して着脱可能に装着される、請求項1に記載の除電器。
【請求項3】
前記複数の電極針に含まれる第一電極針と、前記複数の前面防止部材に含まれる第一前面防止部材と、を保持し、前記フレームに対して着脱可能に装着される針キャップ部材を備える、請求項2に記載の除電器。
【請求項4】
前記針キャップ部材が前記フレームに装着された状態で、前記側面防止部材の前記針先端方向の端は、前記第一電極針の先端より前記針先端方向に位置する、請求項3に記載の除電器。
【請求項5】
前記針キャップ部材は、前記第一電極針を側方から囲む流路部材を有し、
前記第一電極針と前記流路部材との間の流路は、当該流路の面積が前記針先端方向に向かって小さくなる絞り込み形状を有する、請求項3に記載の除電器。
【請求項6】
前記前面防止部材は、前記針先端方向から見て、前記第一電極針と重なる位置で開口するメンテナンス開口を有し、
前記メンテナンス開口の径は、前記第一電極針の径よりも大きい、請求項3に記載の除電器。
【請求項7】
前記針キャップ部材は、前記第一電極針から前記針先端方向に設けられた流路を側方から囲む樹脂部材を有し、
前記樹脂部材に囲まれる流路は、当該流路の面積が前記針先端方向に向かって大きくなる広がり形状を有する、請求項3に記載の除電器。
【請求項8】
前記複数の電極針のうち、第一電極針と第二電極針との前記針先端方向に位置する第一前面防止部材を有する第一ユニットと、
前記複数の電極針のうち、第三電極針と第四電極針との前記針先端方向に位置する第二前面防止部材を有する第二ユニットと、
を備え、
前記第一ユニットおよび前記第二ユニットが前記フレームに装着された状態で、前記第一前面防止部材および前記第二前面防止部材は、前記側面防止部材に導通する、請求項1に記載の除電器。
【請求項9】
前記側面防止部材には切り欠き部が設けられ、
前記第一ユニットおよび前記第二ユニットは、前記切り欠き部に係合されることで、前記フレームに装着される、請求項8に記載の除電器。
【請求項10】
前記電極針を側方から囲む流路部材を備え、
前記電極針と前記流路部材との間の流路は、当該流路の面積が前記針先端方向に向かって小さくなる絞り込み形状を有する、請求項1に記載の除電器。
【請求項11】
接地された接地電極から除電器に流入する電荷量を検知する電荷検知部と、
前記電荷検知部により検知された電荷量に基づき前記電極針に印加される電圧を制御する制御部と、
を備える請求項1ないし10のいずれか一項に記載の除電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配列方向に列状に配置された複数の電極針に高電圧を印加してイオンを発生させるバータイプの除電器に関する。
【背景技術】
【0002】
除電器は、電極針に高電圧を印加することで発生したイオンによってワークを除電する。この際、ワークに生じる誘導電圧に起因して、正負のイオンバランスが崩れてしまう場合がある。そこで、特許文献1では、電極針に前側から対向する板状導電部材を設けることで、誘導電圧の発生防止が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、複数の電極針が配列方向に列状に配列されたバータイプの除電器では次のような課題があった。つまり、バータイプの除電器は、電極針の配列方向に長尺となる傾向を有する。これに対して、誘導電圧の発生を防止するための防止部材(特許文献1の板状導電部材)が長尺化すると、個別の電極針について、電極針の清掃や交換をするメンテナンスに手間がかかる、という課題や、防止部材が撓んでしまって、電極針と防止部材との間の距離が不安定になるといった課題があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ワークにおける誘導電圧の発生を防止する防止部材と電極針との間の距離の安定化を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る除電器は、配列方向に列状に配置された複数の電極針に高電圧を印加してイオンを発生させるバータイプの除電器であって、複数の電極針それぞれの先端を針先端方向に向けて、複数の電極針を保持するフレームと、フレームに設けられ、電極針の側方に位置し、グランドに導通する側面防止部材と、配列方向に列状に配置されてフレームに装着され、電極針より針先端方向に位置し、側面防止部材に導通する複数の前面防止部材と、を備える。
【0007】
このように構成された本発明では、電極針より針先端方向に設けられた複数の前面防止部材によって、ワークにおける誘導電圧の発生を防止できる。しかも、複数の前面防止部材を設けることで、各前面防止部材を短尺に形成できる。そのため、前面防止部材の撓みを抑えて、前面防止部材と電極針との間の距離を安定化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、ワークにおける誘導電圧の発生を防止する防止部材と電極針との間の距離の安定化が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るバータイプの除電器の外観構成を示す斜視図。
【
図8】除電器が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図10】
図9のコントローラが実行するイオンバランス制御時の動作の一例を示すフローチャート。
【
図11】本発明に係るバータイプの除電器の変形例の外観構成を示す斜視図。
【
図13】
図11の除電器が備えるキャップユニットを示す斜視図。
【
図14】
図11の除電器が備えるキャップユニットを示す斜視図。
【
図15A】キャップユニットを一対の取付プレートに取り付ける取付手順を示す図。
【
図15B】キャップユニットを一対の取付プレートに取り付ける取付手順を示す図。
【
図15C】キャップユニットを一対の取付プレートに取り付ける取付手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係るバータイプの除電器の外観構成を示す斜視図である。本実施形態では、除電器1の長手方向Dl、幅方向Dwおよび送風方向Dfを示す。ここで、長手方向Dl、幅方向Dwおよび送風方向Dfは互いに直交する。さらに、送風方向Dfの前側Df(+)および後ろ側Dd(-)を示す。ここで、前側Df(+)と後ろ側Dd(-)とは互いに逆を向く。
【0011】
除電器1は、長手方向Dlに長尺なハウジング2を有する。ハウジング2は、送風方向Dfの前側Df(+)に開口するベースカバー21と、ベースカバー21を前側Df(+)から覆うようにベースカバー21に取り付けられるトップカバー25と、ベースカバー21およびトップカバー25の長手方向Dlの両端に取り付けられた一対のサイドカバー29とを有する。ベースカバー21およびトップカバー25のそれぞれは、長手方向Dlに長尺な形状を有する。
【0012】
トップカバー25は、送風方向Dfに垂直なフロントプレート26と、フロントプレート26の幅方向Dwの両端から後ろ側Dd(-)に延設された一対のサイドプレート27とを有し、一対のサイドプレート27の間で開口する。フロントプレート26は、前側Df(+)からベースカバー21に対向し、一対のサイドプレート27は、幅方向Dwからベースカバー21を挟む。
【0013】
また、除電器1は、トップカバー25のフロントプレート26において、長手方向Dlに所定の配列ピッチで配列された複数の針キャップ部材3を備える。
図2は針キャップ部材の前方斜視図であり、
図3は針キャップ部材の後方斜視図であり、
図4は針キャップ部材の分解斜視図であり、
図5ないし
図7は針キャップ部材の部分断面図である。
【0014】
針キャップ部材3は、ベース部4と、ベース部4に前側Df(+)から取り付けられたフロントカバー5と、ベース部4とフロントカバー5との間に配置された導電プレート6とを備える。ベース部4およびフロントカバー5は樹脂製である。
【0015】
図5を用いて空気が通過する流路Fの構造を説明する。ベース部4は、送風方向Dfに延設された貫通孔Hpを側方(長手方向Dlおよび幅方向Dw)から覆う。この貫通孔Hpは、送風方向Dfに向かう空気が通過する流路Fを構成する。すなわち、ベース部4は、送風方向Dfに向かう空気が通過する流路Fを側方から覆う。
【0016】
流路Fは、前側Df(+)の端部に設けられた大径流路Flと、後ろ側Dd(-)の端部に設けられた小径流路Fsと、大径流路Flと小径流路Fsとの間に設けられたテーパー流路Ftとを有する。送風方向Dfに平行な針キャップ部材3の中心軸Cを中心に、大径流路Fl、テーパー流路Ftおよび小径流路Fsは同心円に設けられる。大径流路Flの断面積は、小径流路Fsおよびテーパー流路Ftそれぞれの断面積よりも大きい。また、テーパー流路Ftの断面積は、前側Df(+)に向かうに連れて大きくなる。テーパー流路Ftの前側Df(+)の端の断面積は、大径流路Flの断面積より小さく、テーパー流路Ftの後ろ側Dd(-)の端の断面積は、小径流路Fsの断面積と一致する。ここで、断面積は、送風方向Dfに直交する平面での断面における面積である。
【0017】
ベース部4は、送風方向Dfから見て八角形の外形を有するフランジ部41と、フランジ部41から後ろ側Dd(-)に延設されたロッド部45とを有する。フランジ部41はロッド部45より側方に突出し、ロッド部45は、フランジ部41の中央から後ろ側Dd(-)に突出する。
【0018】
フランジ部41は、フランジフレーム411を有し、貫通孔Hpのうちの前側Df(+)部分である貫通孔Hfがフランジフレーム411を送風方向Dfに貫通する。つまり、フランジフレーム411は、貫通孔Hfを側方から囲む。フランジフレーム411は、前側Df(+)の端に設けられた前端面412と、前端面412より後ろ側Dd(-)に設けられた底面413とを有する。前端面412および底面413はそれぞれ送風方向Dfに垂直な平面である。前側Df(+)からの平面視において、前端面412は大径流路Flを側方から囲み、底面413は、テーパー流路Ftを側方から囲む。
【0019】
フランジフレーム411は、前端面412の内周と底面413の外周との間で送風方向Dfに延設された壁面414を有する。この壁面414が大径流路Flを側方から囲む。さらに、フランジフレーム411は、底面413の内周から後ろ側Dd(-)に向かってテーパー状に設けられたテーパー壁面415を有する。テーパー壁面415の断面積は、後ろ側Dd(-)に向かうに連れて小さくなる。このテーパー壁面415は、テーパー流路Ftの前端部(前側Df(+)の端部)に沿って設けられて、テーパー流路Ftの前端部を側方から囲む。このようにフランジ部41の貫通孔Hfは、大径流路Flと、テーパー流路Ftの前端部を含む。
【0020】
また、フランジフレーム411の前側Df(+)の端には、凸部416と凹部417とが設けられる。凸部416は前側Df(+)に突出し、凹部417は凸部416に対して後ろ側Dd(-)に凹む。凸部416と凹部417とは、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで交互に並ぶ。さらに、フランジ部41は、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい角度を空けてフランジフレーム411に設けられた複数(2個)のネジ挿入孔418を有する。各ネジ挿入孔418は、フランジフレーム411を送風方向Dfに貫通する。また、フランジ部41は、フランジフレーム411を送風方向Dfに貫通する2個の挿入口A41(
図4)が設けられる。挿入口A41は、フランジフレーム411の後ろ側Dd(-)の端面419と底面413との間で送風方向Dfに延設される。
【0021】
ロッド部45は、ロッドフレーム451を有し、貫通孔Hpのうちの後ろ側Dd(-)部分である貫通孔Hrがロッドフレーム451を送風方向Dfに貫通する。つまり、ロッドフレーム451は、貫通孔Hrを側方から囲む。ロッドフレーム451は、貫通孔Hrに対して内側に突出するフランジ452を有し、送風方向Dfからの平面視においてフランジ452の内側に挿入口A452が開口する。
【0022】
ロッドフレーム451は、前側Df(+)端に設けられたテーパー壁面453と、テーパー壁面453より後ろ側Dd(-)に設けられた壁面454とを有する。このテーパー壁面453は、テーパー流路Ftの後端部(後ろ側Dd(-)の端部)に沿って設けられて、テーパー流路Ftの後端部を側方から囲む。また、壁面454は、小径流路Fsを側方から囲む。このようにロッド部45の貫通孔Hrは、テーパー流路Ftの後端部と、小径流路Fsとを側方から囲む。また、壁面454は、小径流路Fsより後ろ側Dd(-)まで延設され、壁面454とフランジ452の前端面(前側Df(+)の端面)との間にはアールが設けられている。
【0023】
また、ロッドフレーム451は、外側(貫通孔Hrの逆側)に突出する複数(4個)の係合突起458を有する。複数の係合突起458は、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで一定の角度を空けて設けられている。
【0024】
針キャップ部材3は、ロッド部45のフランジ452に取り付けられる流路部材31を備える。流路部材31は、前側Df(+)に向かって先細りの形状を有する部材本体311と、部材本体311の後ろ側Dd(-)の端から外側に突出したフランジ312とを有する。部材本体311は、フランジ452の内側の挿入口A452に挿入されて、フランジ452に係合する。また、フランジ312は、フランジ452の後ろ側Dd(-)の端面に後ろ側Dd(-)から当接する。
【0025】
また、流路部材31は、部材本体311およびフランジ312を送風方向Dfに貫通する挿入孔Hnを有する。挿入孔Hnは、前側Df(+)の端部に設けられたテーパー挿入孔Hntと、テーパー挿入孔Hntの後ろ側Dd(-)に設けられた円筒挿入孔Hnlとを有する。テーパー挿入孔Hntの断面積は、前側Df(+)に向かうに連れて小さくなる。テーパー挿入孔Hntの後ろ側Dd(-)の端の断面積は、円筒挿入孔Hnlの断面積と一致する。
【0026】
さらに、針キャップ部材3は電極針33を備える。電極針33は、当該電極針33の先端331が前側Df(+)を向くように挿入孔Hnに挿入され、電極針33の先端331は、流路部材31から前側Df(+)に突出する。電極針33は、先端331から後ろ側Dd(-)に延設された先端部332と、先端部332から後ろ側Dd(-)に延設された円筒部333とを有する。先端部332の断面積は、前側Df(+)に向かうに連れて(換言すれば、先端331に向かうに連れて)小さくなる。先端部332の後ろ側Dd(-)の断面積は、円筒部333の断面積と一致する。
【0027】
挿入孔Hnに対しては送風方向Dfに向かう空気が通過する。つまり、流路部材31の挿入孔Hnの内壁と、挿入孔Hnに挿入される電極針33との間には、流路fとして機能する隙間が形成されており、空気は流路fを送風方向Dfに通過して、流路部材31の前端(前側Df(+)の端)から前側Df(+)に噴射される。また、電極針33には高電圧が印加されて、イオンが電極針33から発生される。このイオンは、流路部材31の前端から噴射されるエアによって、流路Fを前側Df(+)に進行する。
【0028】
フロントカバー5は、前側Df(+)からの平面視において流路Fに重なる開口51を有する。流路Fを前側Df(+)に進むイオンは、この開口51を前側Df(+)に通過して、除電対象(ワーク)に到達する。また、フロントカバー5は、当該平面視において、開口51を側方から囲む環状のカバーフレーム52を有する。カバーフレーム52の後ろ側Dd(-)の端には、凸部521と凹部522とが設けられる。凸部521は後ろ側Dd(-)に突出し、凹部522は凸部521に対して前側Df(+)に凹む。これら凸部521と凹部522とは、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで交互に並ぶ。さらに、カバーフレーム52には、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい間隔を空けて複数のネジカバー524が設けられる。各ネジカバー524には、送風方向Dfに延設されたネジ挿入孔525が設けられ、ネジ挿入孔525は後ろ側Dd(-)に開く。
【0029】
導電プレート6は、金属などの導電性材料によって構成される。導電プレート6には、前側Df(+)からの平面視において流路Fに重なる開口61が設けられる。流路Fを前側Df(+)に進むイオンは、この開口61を前側Df(+)に通過してから、フロントカバー5の開口51を通過する。導電プレート6は、前側Df(+)からの平面視において、開口61を囲む環状のアウターフレーム62と、アウターフレーム62の中央に設けられた環状のインナーフレーム63とを有する。アウターフレーム62およびインナーフレーム63は針キャップ部材3の中心軸Cを中心に同心円状の円形を有し、インナーフレーム63の径は、アウターフレーム62の径よりも小さい。
【0030】
インナーフレーム63の内側で、送風方向Dfに貫通する開口64は、前側Df(+)にイオンが通過する流路として機能する。また、前側Df(+)からの平面視において、インナーフレーム63の開口64は、電極針33の先端331に対向する。開口64は円形を有し、開口64の径は電極針33の径(円筒部333の径)より大きい。電極針33は、開口64の内側において開口64の中央に位置する。この開口64は、電極針33の先端331を清掃する綿棒等のメンテナンス部材を挿入するためのメンテナンス開口として機能する。
【0031】
また、導電プレート6は、インナーフレーム63からアウターフレーム62に放射状に延設された複数の接続フレーム65を有する。複数の接続フレーム65は、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい角度間隔を空けて設けられ、隣接する接続フレーム65の間の開口66は、前側Df(+)にイオンが通過する流路として機能する。さらに、導電プレート6は、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい角度を空けてアウターフレーム62に設けられた複数(4個)のネジ挿入孔67を有する。各ネジ挿入孔67は、アウターフレーム62を送風方向Dfに貫通する。
【0032】
さらに、針キャップ部材3は、金属などの導電性材料で構成される板バネ35を有する。板バネ35は、波打った環状を有するウェイブワッシャー351(ウェイブスプリング)を有し、ウェイブワッシャー351の内側には、開口352が設けられる。ロッド部45が前側Df(+)から開口352に挿入されることで、板バネ35がロッド部45に外側から嵌る。
【0033】
また、板バネ35は、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい角度を空けて設けられた複数(2個)の突出部353を有する。各突出部353は、ウェイブワッシャー351から前側Df(+)に突出する。突出部353は、ウェイブワッシャー351から前側Df(+)に延設された延設片354と、延設片354から外側に延設された係合片355とを有する。さらに、板バネ35は、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい角度を空けてウェイブワッシャー351に設けられた複数(2個)の挿入孔356を有する。各挿入孔356は、ウェイブワッシャー351を送風方向Dfに貫通する。
【0034】
上記の構成の針キャップ部材3は次のようにして組み立てられる。導電プレート6は、フロントカバー5の複数の凸部521の間に嵌め込まれて、フロントカバー5の開口51に後ろ側Dd(-)から対向する。導電プレート6の4個のネジ挿入孔67のうち2個のネジ挿入孔67に2個のネジ37が後ろ側Dd(-)から挿入される。さらに、フロントカバー5に設けられた4個のネジ挿入孔525のうち、2個のネジ挿入孔525に2個のネジ37が後ろ側Dd(-)から締結される。こうして、導電プレート6がフロントカバー5に固定される。
【0035】
また、ベース部4とフロントカバー5との間に導電プレート6が挟まれた状態で、ベース部4がフロントカバー5に後ろ側Dd(-)から取り付けられる。つまり、ベース部4の凸部416は、フロントカバー5の凹部522に後ろ側Dd(-)から嵌り、フロントカバー5の凸部521は、ベース部4の凹部417に前側Df(+)から嵌る。これによって、ベース部4とフロントカバー5とが相互に位置決めされる。
【0036】
さらに、板バネ35の2個の突出部353がベース部4の2個の挿入口A41に後ろ側Dd(-)から挿入されて、各突出部353の係合片355がベース部4の底面413に係合する。つまり、係合片355によって、板バネ35はベース部4に取り付けられる。
【0037】
板バネ35のウェイブワッシャー351は、ベース部4に後ろ側Dd(-)から接触する。そして、2個のネジ38が板バネ35の2個の挿入孔356と、ベース部4の2個のネジ挿入孔418とに後ろ側Dd(-)から挿入されて、導電プレート6の2個のネジ挿入孔67に後ろ側Dd(-)から締結される。この際、ベース部4に接触する板バネ35のウェイブワッシャー351が発生する弾性力に抗して、ネジ38は導電プレート6に締結される。また、2個のネジ38の先端は、フロントカバー5の2個のネジ挿入孔525に後ろ側Dd(-)から挿入される。ネジ38は金属などの導電性材料で構成され、板バネ35および導電プレート6のそれぞれに接触する。これによって、板バネ35と導電プレート6とが電気的に接続されて、互いに導通する。
【0038】
図7に示すように、ハウジング2は、送風方向Dfに開くキャップ取付開口A2が開口し、針キャップ部材3は、前側Df(+)からキャップ取付開口A2に挿入される。フロントカバー5、導電プレート6およびベース部4のフランジ部41がハウジング2より上側に支持されて露出する。ベース部4のロッド部45は、ハウジング2内に収容されて、ハウジング2の一対のベースカバー21がロッド部45に幅方向Dwから対向する。
【0039】
ハウジング2の内部には、キャップサポーター11が収容されている。キャップサポーター11は、ハウジング2によって水平に支持されるベースプレート111と、ベースプレート111から前側Df(+)に延設された円筒形状の側壁112とを有し、側壁112の内側にロッド挿入空間113が設けられる。そして、針キャップ部材3のロッド部45の後ろ側Dd(-)の端部が前側Df(+)からロッド挿入空間113に挿入される。これに対して、キャップサポーター11では、針キャップ部材3の中心軸Cの周りで等しい間隔を空けて複数(4個)の突起114が設けられている。各突起114は、側壁112の前側Df(+)の端から内側に突出する。複数の突起114は、複数の係合突起458に対応して設けられる。各突起114は、対応する係合突起458より前側Df(+)に位置して、前側Df(+)からの平面視において係合突起458に重複する。これによって、ロッド部45がロッド挿入空間113から前側Df(+)に抜け出すのが防止される。また、針キャップ部材3を中心軸Cの周りで回転させることで、前側Df(+)からの平面視において、複数の係合突起458を複数の突起114から退避させることができる。これによって、ロッド部45がロッド挿入空間113から前側Df(+)に抜け出し可能となって、針キャップ部材3をキャップサポーター11から取り外すことができる。つまり、針キャップ部材3は、ハウジング2に対して着脱可能に装着されている。
【0040】
また、除電器1は、電極針33を幅方向Dwから挟むように配置された2個のグランドプレート13(
図1のサイドプレート27に相当)を備える。グランドプレート13は、ハウジング2の表面に設けられる。つまり、2個のグランドプレート13は、幅方向Dwの両側から電極針33に対向する。幅方向Dwからの側面視において、グランドプレート13は、電極針33の全体に重複し、換言すれば、電極針33はグランドプレート13によって隠れる。
【0041】
グランドプレート13は、ベースカバー21の外側においてベースカバー21に沿って設けられる。特に、グランドプレート13は、電極針33の前側Df(+)の端(すなわち、先端331)より前側Df(+)の前端位置P(+)から、電極針33の後ろ側Dd(-)の端(すなわち、後端334)より後ろ側Dd(-)の後端位置P(-)まで、送風方向Dfに延設されている。グランドプレート13は、金属などの導電性材料で構成され、グランドに短絡されている。このグランドプレート13の前側Df(+)の端部は、板バネ35に接触する。こうして、板バネ35は、グランドプレート13によってグランドに短絡される。
【0042】
図8は除電器が備える電気的構成を示すブロック図である。
図8に示すように、除電器1は、電極針33に高電圧を供給する高電圧電源回路16と、高電圧電源回路16を制御するコントローラ17とを備える。
【0043】
高電圧電源回路16は、スイッチング回路161と、高電圧発生回路162とを有し、スイッチング回路161は、高電圧発生回路162への電源供給をオン/オフする。高電圧発生回路162は、一次昇圧回路163と、二次昇圧整流回路164とを有する。一次昇圧回路163は、スイッチング回路161を経由して供給された電源の電圧を昇圧し、二次昇圧整流回路164は、一次昇圧回路163から出力された電圧を昇圧するとともに整流して高電圧を生成する。二次昇圧整流回路164によって生成された高電圧(負側駆動電圧V2)は、電極針33に印加される。
【0044】
高電圧電源回路16は、スイッチング回路165と、高電圧発生回路166とを有し、スイッチング回路165は、高電圧発生回路166への電源供給をオン/オフする。高電圧発生回路166は、一次昇圧回路167と、二次昇圧整流回路168とを有する。一次昇圧回路167は、スイッチング回路165を経由して供給された電源の電圧を昇圧し、二次昇圧整流回路168は、一次昇圧回路167から出力された電圧を昇圧するとともに整流して高電圧を生成する。一次昇圧回路167によって生成された高電圧(正側駆動電圧V1)は、二次昇圧整流回路164を介して電極針33に印加される。
【0045】
コントローラ17は、スイッチング回路161による電源供給のオン/オフを制御するPWM信号SWnと、スイッチング回路165による電源供給のオン/オフを制御するPWM信号SWpとを生成する。コントローラ17は、負側駆動電圧V2と正側駆動電圧V1とが電極針33に交互に印加されるように、PWM信号SWnおよびPWM信号SWpを生成する。かかるコントローラ17は、例えばプロセッサにより構成される。
【0046】
図9はコントローラの内部構成を示すブロック図である。コントローラ17は、目標値記憶部171、174、イオンバランス誤差抽出部172、平均電位算出部173、平均電位誤差抽出部175、駆動制御部176、電圧値調整部177、印加時間調整部178およびPWM信号生成部179を有する。目標値記憶部171はイオンバランスの目標値を保持し、目標値記憶部174は、平均電位V0の目標値を保持する。これらの目標値は、例えばユーザ操作に基づいて設定される。
【0047】
イオンバランス誤差抽出部172は、イオンバランスの検出値Vfと対応する目標値とを比較し、イオンバランスの制御誤差を求めて駆動制御部176へ出力する。具体的には、イオンバランス誤差抽出部172は接地された電極を介して除電器1に流入する電荷を電圧に変換することで検出値Vfを取得する。電圧値調整部177は、イオンバランスの制御誤差に基づいて、電極針33に印加される正側駆動電圧V1の電圧値と負側駆動電圧V2の電圧値とを調整する。平均電位算出部173は、一次昇圧回路163のトランスからグランドに流れる電流を電圧に変換した検出値Vnと、一次昇圧回路167のトランスからグランドに流れる電流を電圧に変換した検出値Vpとを取得する。そして、平均電位算出部173は、検出値Vn、Vpから平均電位V0を求め、平均電位誤差抽出部175へ出力する。平均電位V0は、V0=Vp-Vnにより求められる。
【0048】
平均電位誤差抽出部175は、平均電位算出部173により求められた平均電位V0と対応する目標値とを比較し、平均電位の制御誤差を求めて駆動制御部176へ出力する。印加時間調整部178は、平均電位の制御誤差に基づいて、正側駆動電圧V1の印加時間Tpと負側駆動電圧V2の印加時間Tnとを調整する。
【0049】
駆動制御部176は、イオンバランスおよび平均電位の制御誤差に基づいて、駆動電圧V1、V2の電圧値の調整量と印加時間Tp、Tnの調整量とを制御する。PWM信号生成部179は、電圧値調整部177および印加時間調整部178の出力に基づいて、PWM信号SWp、SWnを生成する。
【0050】
具体的には、イオンバランスおよび平均電位V0がそれぞれ目標値と一致するように、印加時間のデューティ比Ds=Tn/T1と、PWMパルスPp、Pnの各デューティ比Dp=T12/T11とが決定される。その際、駆動制御部176により、平均電位V0が一定に保たれるように、デューティ比Ds、Dpの調整が行われる。
【0051】
図10は
図9のコントローラが実行するイオンバランス制御時の動作の一例を示すフローチャートである。
図10では、イオンバランスの検出値に基づいて、PWMパルスPp、Pnの各デューティ比Dpを調整する処理が示されている。
【0052】
ステップS101では、コントローラ17は、イオンバランスの検出値Vfを取得する。ステップS102では、コントローラ17は、検出値Vfと目標値とを比較する。Vfが目標値よりも大きい場合(ステップS103で「YES」の場合)、コントローラ17は、正イオンを増加させて負イオンの過多を解消するために、PWMパルスPpのデューティ比Dpを大きくするとともに、PWMパルスPnのデューティ比Dpを小さくする(ステップS104)。一方、Vfが目標値よりも小さい場合(ステップS106で「YES」の場合)、コントローラ17は、負イオンを増加させて正イオンの過多を解消するために、PWMパルスPpのデューティ比Dpを小さくするとともに、PWMパルスPnのデューティ比Dpを大きくする(ステップS107)。コントローラ17は、Vfが目標値と一致するまで、ステップS101~S104、S106、S107を繰り返す(ステップS105)。
【0053】
このように構成された除電器1では、電極針33より前側Df(+)(針先端方向)に設けられた複数の針キャップ部材3それぞれの導電プレート6(前面防止部材)によって、ワークにおける誘導電圧の発生を防止できる。しかも、複数の導電プレート6を設けることで、各導電プレート6を幅方向Dwにおいて短尺に形成できる。そのため、個別の電極針33に対してメンテナンスが実行されるとき、対応する導電プレート75が選択的に着脱可能である。また、導電プレート6の撓みを抑えて、導電プレート6と電極針33との間の距離を安定化させることが可能となる。
【0054】
本実施例に開示される除電器1では、導電プレート6が配置されることにより、駆動制御部176による電圧印加の動作周波数に応じて発生するイオンバランスの時間的な変化が低減される。このイオンバランスの時間的な変化をスイング電圧と言い、駆動周期の1周期分の最大値と最小値との差が相当する。このイオンバランスの時間的な変化は動作周波数に応じて発生するため、駆動制御部176の制御によりイオンバランスが一定に保たれたとしても生じうる変化である。本実施例に開示される除電器1では、導電プレート6を配置することにより、スイング電圧が140Vから2Vに低減される実験結果が得られている。
【0055】
また、導電プレート6は、キャップサポーター11によってハウジング2(フレーム)に対して着脱可能に装着される。これによってグランドプレート13(側面防止部材)および導電プレート6のうち、導電プレート6のみを容易に取り外しできる。
【0056】
また、電極針33(第一電極針)と、導電プレート6(第一前面防止部材)と、を保持し、キャップサポーター11によってハウジング2に対して着脱可能に装着される針キャップ部材3が具備される。かかる構成では、導電プレート6と電極針33とを針キャップ部材3によって相互に位置決めして、これらの間の距離を安定化させることができる。
【0057】
また、針キャップ部材3がキャップサポーター11によってハウジング2に装着された状態で、グランドプレート13の前側Df(+)の端は、電極針33の先端331より前側Df(+)に位置する。これによって、グランドプレート13が電極針33の全長を側方から覆って、電極針33が発生する電界が側方に広がるのを抑制できる。
【0058】
また、針キャップ部材3は、電極針33を側方から囲む流路部材31を有する。電極針33と流路部材31との間の流路fは、当該流路fの面積が前側Df(+)に向かって小さくなる絞り込み形状を有する。このような流路部材31を設けることで、流速の速いエアフローを発生させることができる。一般に、除電器の性能を示す指標として、帯電されたワークの電位を一定以下にする除電時間という指標がある。導電プレート6を電極針33の前側Df(+)に設けることにより電極針33から生じるイオンの一部が導電プレート6に吸収されるため、ワークに到達するイオンが低減し除電時間が低下する。また、導電プレート6を前側Df(+)に設けたことによるエアフローの流速が低下すると、所定時間あたりでワークに到達するイオンが低減するため除電時間が低下する。流速の速いエアフローを発生させることにより、除電時間の低下に対応することができる。
【0059】
また、導電プレート6は、前側Df(+)から見て、電極針33と重なる位置で開口する開口64(メンテナンス開口)を有する。開口64の径は電極針33の径よりも大きい。そのため、開口64から挿入した綿棒などのメンテナンス部材によって電極針33にメンテナンスを容易に実行できる。
【0060】
また、針キャップ部材3は、電極針33から前側Df(+)に設けられた流路Fを側方から囲むベース部4(樹脂部材)を有する。ベース部4に囲まれる流路Fは、当該流路Fの面積が前側Df(+)に向かって大きくなる広がり形状を有する。このようにベース部4に広がり形状を持たせることで、流路Fを通るイオンによってベース部4が帯電するのを抑えることができる。
【0061】
また、接地された接地電極から除電器1に流入する電荷量を検知するイオンバランス誤差抽出部172(電荷検知部)が具備されている。そして、コントローラ17(制御部)は、イオンバランス誤差抽出部172により検知された電荷量に基づき電極針33に印加される電圧を制御する。このようなイオンバランスの制御と、導電プレート6とを併用することで、良好なイオンバランスを実現することができる。
【0062】
図11は本発明に係るバータイプの除電器の変形例の外観構成を示す斜視図であり、
図12は
図11の除電器の内部構成を示す斜視図であり、
図13および
図14は
図11の除電器が備えるキャップユニットを示す斜視図である。
図11の除電器7は、幅方向Dwに長尺なハウジング71を備える。ハウジング71は、幅方向Dwに延設されたボトムフレーム711と、ボトムフレーム711の長手方向Dlの両端に設けられた一対のサイドプレート712とを有する。ボトムフレーム711には、長手方向Dlに配列された複数の電極針33が内蔵され、各電極針33の先端331が前側Df(+)を向く。さらに、ボトムフレーム711には、上記と同様に、一対のグランドプレート13が幅方向Dwの両側から電極針33に対向して、幅方向Dwからの側面視において電極針33の全体に重複する。
【0063】
また、除電器7は、幅方向Dwに間隔を空けて配置された一対の取付プレート72を備える。各取付プレート72は、金属などの導電性材料で構成されて、グランドに短絡されている。一対の取付プレート72は、ボトムフレーム711の前側Df(+)の端から前側Df(+)に突出し、ボトムフレーム711の幅方向Dwの両端に位置する。取付プレート72は、長手方向Dlに配列された複数の切り欠き部721を有する。各切り欠き部721は、取付プレート72の前側Df(+)の端から後ろ側Dd(-)に向けて送風方向Dfに延設された導入溝722と、導入溝722の後ろ側Dd(-)の端から長手方向Dlの一方側に延設された係合溝723とを有する。
【0064】
除電器7は、長手方向Dlに配列される複数のキャップユニット73を有する。各キャップユニット73は、一対の取付プレート72に幅方向Dwに架設されて、ボトムフレーム711に前側Df(+)から対向する。各キャップユニット73は、取付プレート72に対して着脱可能に取り付けられる。
【0065】
キャップユニット73は、ユニットフレーム74を有する。ユニットフレーム74は、ボトムフレーム711に前側Df(+)から対向するトップカバー741を有する。トップカバー741では、複数(
図13の例では2個)の開口742が長手方向Dlに配列されて、各開口742は送風方向Dfに開く。また、ユニットフレーム74は、トップカバー741の幅方向Dwの両端から後ろ側Dd(-)に延設される一対のサイドカバー743を有する。一対のサイドカバー743は、一対の取付プレート72に対応して設けられ、各サイドカバー743は、対応する取付プレート72に幅方向Dwの外側から対向する。さらに、ユニットフレーム74は、送風方向Dfに並ぶ複数の係合突起744を有する。
図14の例では、1個のサイドカバー743に対して2個の係合突起744が設けられている。各係合突起744は、サイドカバー743から幅方向Dwの内側(すなわち、取付プレート72の側)に突出する。
【0066】
また、キャップユニット73は、ユニットフレーム74に取り付けられた導電プレート75を有する。導電プレート75は、金属などの導電性材料で構成され、グランドプレート13に短絡される。導電プレート75には、長手方向Dlに配列された複数(
図13の例では2個)の開口751が設けられている。1個の開口751は、前側Df(+)からの平面視においてボトムフレーム711内の1個の電極針33に重なる。したがって、電極針33で発生したイオンは、送風方向Dfの前側Df(+)に進むエアフローに乗って、開口751を前側Df(+)へ通過する。導電プレート75は、前側Df(+)からの平面視において、開口751を囲む環状のアウターフレーム752と、開口751の中央に設けられた環状のインナーフレーム753とを有する。
【0067】
インナーフレーム753の内側には、送風方向Dfに貫通する開口754が設けられる。この開口754は、前側Df(+)にイオンが通過する流路として機能する。また、前側Df(+)からの平面視において、インナーフレーム753の開口754は、電極針33の先端331に対向する。開口754は円形を有し、開口754の径は電極針33の径(円筒部333の径)より大きい。電極針33は、開口754の内側において開口754の中央に位置する。この開口754は、電極針33の先端331を清掃する綿棒等のメンテナンス部材を挿入するためのメンテナンス開口として機能する。
【0068】
また、導電プレート75は、インナーフレーム753からアウターフレーム752に放射状に延設された複数の接続フレーム755を有する。複数の接続フレーム755は、円形の開口751の中心を通って送風方向Dfに平行な中心線の周りで等しい角度間隔を空けて設けられ、隣接する接続フレーム755の間の開口756は、前側Df(+)にイオンが通過する流路として機能する。
【0069】
また、キャップユニット73は、導電プレート75の後ろ側Dd(-)の面に取り付けられた板バネ76を有する。板バネ76は、金属などの導電性材料によって構成される。板バネ76の中央は、ユニットフレーム74のバネ保持部745によって導電プレート75に保持されて、導電プレート75に接触する。板バネ76の両端は、後ろ側Dd(-)に折り曲げられて、導電プレート75から離間する。キャップユニット73が一対の取付プレート72に取り付けられた状態において、板バネ76の両端は、取付プレート72に接触して、グランドに短絡される。その結果、導電プレート75が板バネ76および取付プレート72を介してグランドに短絡される。
【0070】
図15A~
図15Cはキャップユニットを一対の取付プレートに取り付ける取付手順を示す図である。まず、キャップユニット73の係合突起744を、取付プレート72の導入溝722に前側Df(+)から対向させる(
図15A)。続いて、キャップユニット73の係合突起744を、取付プレート72の導入溝722に後ろ側Dd(-)に挿入する(
図15B)。この際、板バネ76が発生する弾性力に抗して、係合突起744が導入溝722に挿入される。最後に、キャップユニット73を長手方向Dlに動かして、キャップユニット73の係合突起744を、取付プレート72の係合溝723に係合させる(
図15C)。こうして、取付プレート72が一対の取付プレート72に取り付けられる。また、これらと逆の手順を実行することで、キャップユニット73を一対の取付プレート72から取り外すことができる。
【0071】
このように構成された除電器7では、電極針33より前側Df(+)(針先端方向)に設けられた複数のキャップユニット73それぞれの導電プレート75(前面防止部材)によって、ワークにおける誘導電圧の発生を防止できる。しかも、複数の導電プレート75を設けることで、各導電プレート75を長手方向Dlにおいて短尺に形成できる。そのため、個別の電極針33に対してメンテナンスが実行されるとき、対応する導電プレート75が選択的に着脱可能である。また、導電プレート75の撓みを抑えて、導電プレート75と電極針33との間の距離を安定化させることが可能となる。
【0072】
また、複数のキャップユニット73(第一ユニット、第二ユニット)が長手方向Dlに配列される。各キャップユニット73は、複数の電極針33(第一電極針、第二電極針、第三電極針、第四電極針)の前側Df(+)に位置する導電プレート75を有する。各キャップユニット73が一対の取付プレート72(フレーム)に装着された状態で、各キャップユニット73の導電プレート75は、取付プレート72(側面防止部材)に導通する。これによって、長手方向Dlにおいて、一つの取付プレート72に対して複数の導電プレート75を設けるように構成して、各導電プレート75を長手方向Dlに短尺化できる。そのため、例えば前側Df(+)が下方を向くような除電器7の使用環境において、導電プレート75の撓みを防止して、導電プレート75と電極針33との間の距離を安定化できる。
【0073】
また、取付プレート72には切り欠き部721が設けられ、キャップユニット73は、切り欠き部721に係合されることで、取付プレート72に装着される。そのため、キャップユニット73を容易に着脱することができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば。電極針33の個数を適宜変更してもよい。
【0075】
また、針キャップ部材3やキャップユニット73を着脱するための具体的構成は、上記の例に限られず、適宜変更できる。
【0076】
また、導電プレート75に設ける開口751の個数は、上記の例に限られず、適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
この発明は、配列方向に列状に配置された複数の電極針に高電圧を印加してイオンを発生させるバータイプの除電器の技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…除電器
Dl…長手方向
Dw…幅方向
Df…送風方向
Df(+)…前側
Dd(-)…後ろ側
2…ハウジング
21…ベースカバー
25…トップカバー
29…サイドカバー
26…フロントプレート
27…サイドプレート
3…針キャップ部材
4…ベース部
5…フロントカバー
6…導電プレート
Hp…貫通孔
F…流路
Fl…大径流路
Fs…小径流路
Ft…テーパー流路
C…中心軸
41…フランジ部
45…ロッド部
411…フランジフレーム
Hf…貫通孔
412…前端面
413…底面
414…壁面
415…テーパー壁面
416…凸部
417…凹部
418…ネジ挿入孔
A41…挿入口
419…端面
451…ロッドフレーム
Hr…貫通孔
452…フランジ
A452…挿入口
453…テーパー壁面
454…壁面
458…係合突起
31…流路部材
311…部材本体
312…フランジ
Hn…挿入孔
Hnt…テーパー挿入孔
Hnl…円筒挿入孔
33…電極針
331…先端
332…先端部
333…円筒部
f…流路
51…開口
52…カバーフレーム
521…凸部
522…凹部
524…ネジカバー
525…ネジ挿入孔
61…開口
62…アウターフレーム
63…インナーフレーム
64…開口
65…接続フレーム
66…開口
67…ネジ挿入孔
35…板バネ
351…ウェイブワッシャー
352…開口
353…突出部
354…延設片
355…係合片
356…挿入孔
37…ネジ
38…ネジ
A2…キャップ取付開口
11…キャップサポーター
111…ベースプレート
112…側壁
113…ロッド挿入空間
114…突起
13…グランドプレート
P(+)…前端位置
334…後端
P(-)…後端位置
16…高電圧電源回路
17…コントローラ
161…スイッチング回路
162…高電圧発生回路
163…一次昇圧回路
164…二次昇圧整流回路
V2…負側駆動電圧
165…スイッチング回路
166…高電圧発生回路
167…一次昇圧回路
168…二次昇圧整流回路
V1…正側駆動電圧
SWn…PWM信号
SWp…PWM信号
171…目標値記憶部
172…イオンバランス誤差抽出部
173…平均電位算出部
175…平均電位誤差抽出部
176…駆動制御部
177…電圧値調整部
178…印加時間調整部
179…PWM信号生成部
174…目標値記憶部
V0…平均電位
Vf…検出値
Vn…検出値
Vp…検出値
Tp…印加時間
Tn…印加時間
Ds…デューティ比
Pp…PWMパルス
Dp…デューティ比
S101…ステップ
S102…ステップ
S103…ステップ
Pn…PWMパルス
S104…ステップ
S106…ステップ
S107…ステップ
S105…ステップ
7…除電器
71…ハウジング
711…ボトムフレーム
712…サイドプレート
72…取付プレート
721…切り欠き部
722…導入溝
723…係合溝
73…キャップユニット
74…ユニットフレーム
741…トップカバー
742…開口
743…サイドカバー
744…係合突起
75…導電プレート
751…開口
752…アウターフレーム
753…インナーフレーム
754…開口
755…接続フレーム
756…開口
76…板バネ
745…バネ保持部
【要約】
【課題】ワークにおける誘導電圧の発生を防止する防止部材と電極針との間の距離の安定化を可能とする。
【解決手段】除電器1では、電極針33より前側Df(+)(針先端方向)に設けられた複数の針キャップ部材3それぞれの導電プレート6(前面防止部材)によって、ワークにおける誘導電圧の発生を防止できる。しかも、複数の導電プレート6を設けることで、各導電プレート6を幅方向Dwにおいて短尺に形成できる。そのため、導電プレート6の撓みを抑えて、導電プレート6と電極針33との間の距離を安定化させることが可能となる。
【選択図】
図5