(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】不動産取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20241030BHJP
G06Q 20/38 20120101ALI20241030BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q20/38 310
(21)【出願番号】P 2022108180
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518279303
【氏名又は名称】ショウタイム24株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健
(72)【発明者】
【氏名】打山 誠彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰久
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-358351(JP,A)
【文献】特開2002-023628(JP,A)
【文献】特開2019-040621(JP,A)
【文献】特許第6288660(JP,B1)
【文献】特開2020-123236(JP,A)
【文献】株式会社chaintope,ブロックチェーンがひらく「あたらしい経済」 NEW ECONOMY,株式会社幻冬舎 見城 徹,p.73-74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産の売買の履歴をブロックチェーン上に記録していく不動産取引システムであって、
取引対象となる不動産に対応するNFTを発行するNFT発行手段と、
前記不動産の取引のための決済を実行していく決済手段と、
前記決済を含む前記不動産の取引をブロックチェーンによって記録していく記録手段と、
前記不動産の売買が成立した場合に、前記NFTを売主から買主に移転するNFT移転手段と
、
前記不動産の売買が成立した場合に、専門家への移転手続を依頼する移転手続依頼手段とを備え、
前記NFT移転手段は、専門家による移転手続が完了した際に、前記NFTを前記売主から前記買主に移転し、
さらに、
信用提供者からの信用提供を前記不動産取引システムの運営を行うDAOのウォレットにプールするための信用提供プール手段を備え、
前記移転手続依頼手段は、信用提供が満額に達した場合に、取引が成立したとして、専門家への手続を依頼することを特徴とする、不動産取引システム。
【請求項2】
前記決済手段は、前記NFT移転手段によって、前記NFTを前記売主から前記買主に移転するのに合わせて、DAOのウォレットにプールされている信用提供を、前記売主に支払うことを特徴とする、請求項
1に記載の不動産取引システム。
【請求項3】
さらに、
前記不動産の買主に対して、頭金デポジットを要求する頭金要求手段と、
頭金が送金されてきたら、前記不動産取引システムの運営を行うDAOのウォレットにプールするための頭金プール手段とを備えることを特徴とする、請求項
2に記載の不動産取引システム。
【請求項4】
さらに、前記不動産の売主に対して、違約金デポジットを要求する違約金要求手段と、
違約金が送金されてきたら、前記不動産取引システムの運営を行うDAOのウォレットにプールするための違約金プール手段とを備えることを特徴とする、請求項
3に記載の不動産取引システム。
【請求項5】
さらに、前記不動産取引システムは、前記不動産の買主に対して、資金を貸し付けるファイナンス手段を備えることを特徴とする、請求項
4に記載の不動産取引システム。
【請求項6】
さらに、前記不動産の買主が前記信用提供者に対して、ローンの支払を実行するローン支払手段を備えることを特徴とする、請求項
5に記載の不動産取引システム。
【請求項7】
さらに、前記ローンの支払が実行されなかった場合に、専門家に対して、法的措置をとるように依頼する法的措置依頼手段とを備えることを特徴とする、請求項
6に記載の不動産取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不動産取引のためのシステムに関し、より特定的には、ブロックチェーンを用いた不動産取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1ないし3には、不動産取引にブロックチェーンを用いることが記載されている。不動産取引にブロックチェーンを用いることで、不動産取引の売買の記録をブロックチェーン上に記録することで、改ざんを防止できる。また、売主と買主が直接取引をすることも可能となるので、仲介業者と排除することができ、取引コストを少なくすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】瀧澤龍哉著 「ブロックチェーンでできる30のこと」106頁~109頁 幻冬舎 2021年
【文献】赤羽喜治編著 「ブロックチェーン 仕組みと理論 増補改訂版」80頁 リックテレコム 2019年
【文献】コンセンサス・ベイス株式会社著 「図解即戦力 ブロックチェーンのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書」176頁 技術評論社 2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、不動産取引をブロックチェーンに記録することまでは考慮されていたが、決済や資金のファイナンスを含めた不動産取引全体にまで、考慮されたシステムは提案されていなかった。
【0005】
それゆえ、本発明は、ブロックチェーンを用いて不動産取引を記録すると共に、決済機能を備えた不動産取引システムを提供することを目的とする。さらに、ファイナンス機能を備えた不動産取引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、不動産の売買の履歴をブロックチェーン上に記録していく不動産取引システムであって、取引対象となる不動産に対応するNFTを発行するNFT発行手段と、不動産の取引のための決済を実行していく決済手段と、決済を含む不動産の取引をブロックチェーンによって記録していく記録手段と、不動産の売買が成立した場合に、NFTを売主から買主に移転するNFT移転手段とを備える。
【0007】
不動産取引システムは、不動産の売買が成立した場合に、専門家への移転手続を依頼する移転手続依頼手段をさらに備える。
【0008】
NFT移転手段は、専門家による移転手続が完了した際に、NFTを売主から買主に移転する。
【0009】
不動産取引システムは、さらに、信用提供者からの信用提供を不動産取引システムの運営を行うDAOのウォレットにプールするための信用提供プール手段と、移転手続依頼手段は、信用提供が満額に達した場合に、取引が成立したとして、専門家への手続を依頼する。
【0010】
決済手段は、NFT移転手段によって、NFTを売主から買主に移転するのに合わせて、DAOのウォレットにプールされている信用提供を、売主に支払う。
【0011】
不動産取引システムは、さらに、不動産の買主に対して、頭金デポジットを要求する頭金要求手段と、頭金が送金されてきたら、不動産取引システムの運営を行うDAOのウォレットにプールするための頭金プール手段とを備える。
【0012】
不動産取引システムは、さらに、不動産の売主に対して、違約金デポジットを要求する違約金要求手段と、違約金が送金されてきたら、不動産取引システムの運営を行うDAOのウォレットにプールするための違約金プール手段とを備える。
【0013】
さらに、不動産取引システムは、不動産の買主に対して、資金を貸し付けるファイナンス手段を備える。
【0014】
不動産取引システムは、さらに、不動産の買主が信用提供者に対して、ローンの支払を実行するローン支払手段を備える。
【0015】
不動産取引システムは、さらに、ローンの支払が実行されなかった場合に、専門家に対して、法的措置をとるように依頼する法的措置依頼手段とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブロックチェーンを用いて不動産取引を記録すると共に、決済機能を備えた不動産取引システムが提供されることとなる。さらに、ファイナンス機能を備えた不動産取引システムが提供されることとなる。
【0017】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における不動産取引システム全体の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、取引対象となる不動産のNFTの登録から信用提供者募集の開始までの不動産取引システムにおける動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、信用提供から取引成立、専門家への移転手続指示までの不動産取引システムにおける動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、登記の完了からNFTの移転までの不動産取引システムにおける動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、買主への不動産の移転後のローンの支払及びローンの支払が行われなかった場合の不動産取引システムにおける動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、不動産取引システムは、インターネット等のネットワーク1と、スマートコントラクト2と、決済システム3と、不動産売買掲載用サイト4と、買主端末5と、信用提供者端末6と、売主端末7とを備える。
【0020】
スマートコントラクト2は、ブロックチェーン上で実現されているプログラムであり、予め設定されたルールに従って、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)、もしくはブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプログラムである。
【0021】
ここでは、決済システム3として、スマートコントラクト2が動いているブロックチェーン上の仮想通貨(暗号資産)を送金及び受領することができるシステムを用いている。ただし、決済システム3としては、どのようなシステムを用いてもよい。たとえば、電子マネーによる決済システムが用いられてもよいし、クレジットカードによる決済システムが用いられてもよいし、口座振替による決済システムが用いられてもよいし、二次元バーコードの決済システムが用いられてもよいし、その他、あらゆる決済システムを用いることが可能である。
【0022】
たとえば、不動産取引システムにおけるDAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)の議決権は、イーサリアムのERC20で実現可能である。また、NFTは、イーサリアムのERC721で実現可能である。また、電子マネーによる決済は、イーサリアムのERC20で実現可能である。
【0023】
不動産売買掲載用サイト4は、不動産の売主、買主、及び信用提供者をマッチングするための不動産売買掲載サイトを提供するコンピュータ装置である。
【0024】
買主端末5は、不動産取引アプリを実行可能なコンピュータ装置である。不動産取引アプリは、
図2ないし
図5に示す動作を実現可能なプログラムである。不動産取引アプリは、買主端末5にインストールされてもよいし、WEBアプリとして実現されてもよい。不動産の買主は、買主端末5を用いる。その際、買主として、不動産取引アプリにログインすることで、買主端末5は、買主のために必要な処理を実行するようにすると良いが、限定されるものではなく、種々の方法を採用し得る。
【0025】
信用提供者とは、買主に対して、お金を貸す者である。信用提供者端末6は、不動産取引アプリを実行可能なコンピュータ装置である。不動産取引アプリは、
図2ないし
図5に示す動作を実現可能なプログラムである。不動産取引アプリは、信用提供者端末6にインストールされてもよいし、WEBアプリとして実現されてもよい。信用提供者は、信用金庫端末6を用いる。その際、信用提供者として、不動産取引アプリにログインすることで、信用提供者端末6は、売主のために必要な処理を実行するようにすると良いが、限定されるものではなく、種々の方法を採用し得る。
【0026】
売主端末7は、不動産取引アプリを実行可能なコンピュータ装置である。不動産取引アプリは、
図2ないし
図5に示す動作を実現可能なプログラムである。不動産取引アプリは、売主端末7にインストールされてもよいし、WEBアプリとして実現されてもよい。不動産の売主は、売主端末7を用いる。その際、売主として、不動産取引アプリにログインすることで、売主端末7は、売主のために必要な処理を実行するようにすると良いが、限定されるものではなく、種々の方法を採用し得る。
【0027】
不動産取引システムにおいて必要な概略機能は以下のとおりである。
1.C2C(Consumer to Consumer)のマッチングサイト(不動産掲載サイト)
2.NFT(non-fungible token)の作成機能。ここで、NFTは、取引対象となる不動産をデジタルデータ化したものである。
3.NFTのブロックチェーンでの取引機能。
4.DAOでのNFTの管理機能。
5.DAOが手配する現行法への対応機能。主に登記、抵当権の設定。
6.ローンの返済機能。
7.登場するトークンは4つである。(1)DAOの議決権、(2)NFT、(3)手数料払い用の電子マネー等、(4)その他
【0028】
不動産取引システムにおける概略動作は以下のとおりである。
1.売主が売却対象の不動産をマッチングサイトに掲載し、NFTの作成をDAOに依頼する。
2.DAOが、NFTを作成する。
3.買主は、マッチングサイトで気になった不動産及びそのNFTの購入意思表示を行う。デポジットを投入する。たとえば、デポジットは仮想通貨とするとよいが限定されない。
4.売主が取引開始を承認する。
5.残金の支払。自己資金がなければ買主は、ローンを作成する。ローンの作成に当っては、信用提供者からの信用提供があることで実現される。信用は仮想通貨で提供されるとよいが限定されない。
6.DAOや専門家への手数料は法定通貨払いとしてもよいし、電子マネーで支払ってもよいし、仮想通貨で支払ってもよい。
7.DAOが取引を承認する。資金がプールされたことを確認して司法書士等現実世界の手続きを手配する。
8.取引完了後、NFTと売上金を交換。売上金が売主に、NFTが買主に移転。その際、DAOが承認する。
9.買主から信用提供者へのローンの完済までをDAOが管理する。不渡りがあれば法的手段として抵当権を発動する。
【0029】
以上を踏まえて、不動産取引システムの全体の動作フローを
図2ないし
図5を参照しながら説明していく。
図2において、売主は、売主端末7の不動産取引アプリを利用して、NFTの発行を、DAOのスマートコントラクト2に申請する(S701)。スマートコントラクト2は、NFTの発行審査を行う(S201)。発行審査は、議決権を有するDAOのメンバーによって、スマートコントラクト2上で行われる。スマートコントラクト2上で、NFTの発行が承認されたら(S202)、スマートコントラクト2は、NFTを発行する(S203)。
【0030】
NFTが発行されたら、売主は、マルチシングウォレットにNFTを取得する(S702)。
次に、売主は、売主端末7を利用して、不動産売買掲載用サイトへの不動産情報の掲載を依頼する(S703)。
不動産掲載用サーバ4は、不動産情報を掲載する(S401)。
【0031】
不動産売買掲載サイトを閲覧した買主は、買主端末5を利用して、スマートコントラクト2に対して、購入希望を申し込む(S501)。スマートコントラクト2は、トランザクションTx1として、購入希望申し込みがあった旨に署名する(S204)。このトランザクションTx1が、売買の対象となる不動産(NFT)についての最初の記録として、ブロックチェーン上に記録されていくこととなる。NFTと紐付けてトランザクションが記録されていくとよいが、手法は限定されない。
【0032】
買主は、買主端末5を利用して、頭金デポジットtx1をDAOのアドレスに送金する(S502)。このトランザクションをtx1とする。トランザクションtx1は、先のトランザクションTx1の次に記録されていく。
【0033】
なお、ここでは、仮想通貨が送金されると想定している。ただし、頭金デポジットは、電子マネーやクレジットカード払い、銀行口座への振り込みであってもよい。当該仮想通貨は、スマートコントラクト2が実現されているブロックチェーンで用いられる仮想通貨であってもよいし、他のブロックチェーンで用いられている仮想通貨であってもよい。
【0034】
決済システム3は、着金があったら、買主からDAOに対して送金する(S301)。この送金は、スマートコントラクト2上で自動的に行われるとよいが、限定されない。
もし、頭金で売却費用に達した場合は、「取引成立通知(S216)」に処理が移行する。
【0035】
スマートコントラクト2は、頭金デポジットtx1をDAOのウォレットに入手したら(S205)、売主に対して違約金デポジットの支払を要求する(S206)。
【0036】
売主は、売主端末7を利用して、不動産の販売意思を表明して、違約金デポジットtx91をDAOのアドレスに送金する(S705)。違約金デポジットのトランザクションtx91も、先のトランザクションの次に記録されていく。このようにして、取引対象となる不動産の取引記録が、ブロックチェーンで記録されていくこととなる。
なお、同じく、ここでは、仮想通貨が送金されると想定している。ただし、違約金デポジットは、電子マネーやクレジットカード払い、銀行口座への振り込みであってもよい。当該仮想通貨は、スマートコントラクト2が実現されているブロックチェーンで用いられる仮想通貨であってもよいし、他のブロックチェーンで用いられている仮想通貨であってもよい。
【0037】
決済システム3は、着金があったら、売主からDAOに対して送金する(S302)。この送金は、スマートコントラクト2上で自動的に行われるとよいが、限定されない。
【0038】
スマートコントラクト2は、違約金デポジットtx91をDAOのウォレットに入手したら(S207)、プロジェクトの始動を不動産売買掲載用サーバ4の運営者に指示する(S208)。
【0039】
当該運営者は、不動産売買掲載用サイト4に、信用提供の募集を開始する旨を表記する(S402)。
【0040】
図3において、信用提供者Aは、信用提供者端末6を使用して、信用提供Aを提供する旨をスマートコントラクト2に通知する(S601)。この信用提供Aのトランザクションをtx92とする。トランザクションをtx92が、先のトランザクションの次に記録されていく(S209)。
【0041】
また、ここでは、信用提供者Bは、信用提供者端末6を使用して、信用提供Bを提供する旨をスマートコントラクト2に通知するとしている(S602)。この信用提供Bのトランザクションをtx93とする。トランザクションをtx93が、先のトランザクションの次に記録されていく(S210)。
【0042】
信用提供が満額になるまで、信用提供の募集が行われる。
【0043】
スマートコントラクト2は、信用提供が満額になったと判断したら、その旨のトランザクションtx94を、先のトランザクションの次に記録していく(S211)。
【0044】
次に、スマートコントラクト2は、信用提供者端末6に対して、信用提供を送信するように依頼する(S212)。
【0045】
信用提供者Aは、信用提供者端末6を利用して、信用提供AをDAOのプール用アドレスに送金する(S603)。信用提供者Bは、信用提供者端末6を利用して、信用提供BをDAOのプール用アドレスに送金する(S604)。ここでは、仮想通貨が送金されると想定している。ただし、信用提供は、電子マネーやクレジットカード払い、銀行口座への振り込みであってもよい。当該仮想通貨は、スマートコントラクト2が実現されているブロックチェーンで用いられる仮想通貨であってもよいし、他のブロックチェーンで用いられている仮想通貨であってもよい。
【0046】
決済システム3は、信用提供AをDAOのプール用ウォレットに送金する(S303)。決済システム3は、信用提供AをDAOのプール用ウォレットに送金する(S304)。
【0047】
DAOのプール用ウォレットに信用提供Aが入手されると、スマートコントラクト2は、その旨を先のトランザクションの次に記録していく(S213)。同じく、DAOのプール用ウォレットに信用提供Bが入手されると、スマートコントラクト2は、その旨を先のトランザクションの次に記録していく(S214)。
【0048】
スマートコントラクト2は、信用提供がプール用ウォレットに満額送金されたと判断すると(S215)、取引が成立した旨を各端末に送信する(S216)。なお、頭金で、売却費用に達した場合は、信用提供を待たずして、スマートコントラクト2は、当該S216の動作に進む。
【0049】
S601~S604及びS209~S214は、信用提供者が買主に対して、資金を貸し付けるファイナンス機能を実現するものである。
【0050】
各端末は、取引が成立した旨の通知を受領する(S403,S503,S706,S605)。
スマートコントラクト2は、司法書士等の専門家に対して、当該不動産の移転手続を行うように指示する(S217)。
【0051】
所有権の移転手続及び抵当権の設定(必要に応じて)が完了した旨がスマートコントラクト2に入力される(S218)。
スマートコントラクト2は、NFTの移転完了時に送金する旨のトランザクションTx2が生成される(S219)。トランザクションTx2も、先のトランザクションの次に記録されていく。
【0052】
売主は、売主端末7を利用して、NFTの移転に関するマルチシグ署名tx97を行う(S707)。次に、スマートコントラクト2は、DAOの決議の後、NFTの移転のマルチシグ署名のトランザクションtx98を行う(S220)。トランザクションtx92及び98も、先のトランザクションの次に記録されていく。
【0053】
NFTの移転のマルチシグ署名の後、スマートコントラクト2は、DAOのプール用ウォレットから、売主に対して、売上金を送金するように、決済システム3に指示して送金を実行する(S221)。合わせて、スマートコントラクト2は、DAOの利益用ウォレットのアドレスに手数料を送金するように、決済システム3に指示して送金を実行する(S221)。なお、ここでは、仮想通貨が送金されると想定している。ただし、売上金又は手数料は、電子マネーやクレジットカード払い、銀行口座への振り込みであってもよい。当該仮想通貨は、スマートコントラクト2が実現されているブロックチェーンで用いられる仮想通貨であってもよいし、他のブロックチェーンで用いられている仮想通貨であってもよい。なお、手数料はなくてもよい。
【0054】
決済システム3は、DAOの利益用ウォレットに手数料を送金する(S305)。スマートコントラクト2は、利益用ウォレットへの手数料の着金を確認する(S222)。
【0055】
決済システム3は、売主に売上金を送金する(S306)。売主端末7は、売主のウォレットにて、売上金の着金を確認する(S708)。
【0056】
スマートコントラクト2は、NFTを買主に移転する(S223)。この移転のトランザクションも、先のトランザクションに記録されていく。
【0057】
買主端末5は、買主のマルチシグウォレットに、NFTを取得したのを確認する(S504)。
【0058】
上記までの動作によって、マッチングサイト(不動産掲載サイト)への掲載、NFTの作成、NFTのブロックチェーンでの取引、不動産取引のブロックチェーン上への記録、DAOでのNFTの管理、登記、抵当権の設定が行われることとなる。DAOの決議権、NFT、手数料の支払等のトークンが利用されている。
【0059】
図5において、ローンの支払に流れを説明する。買主は、買主端末5を利用して、ローンの支払の通知及び送金依頼をスマートコントラクト2及び決済システム3に行う(S505)。なお、スマートコントラクト2が支払を決済システム3に依頼してもよい。
【0060】
決済システム3は、買主のウォレットから、信用提供者のウォレットに対して、ローンの支払を実行する(S307)。信用提供者端末6は、信用提供者のウォレットで、ローンの支払を確認する(S606)。もし、ローンの支払が行われなければ、信用提供者は、DAOに通知できる。
【0061】
スマートコントラクト2は、ローンの支払の受領があったか否かを、決済システム3からの通知、又は、信用提供者端末6からの通知で認識する(S224)。もし、ローンの支払通知がない場合(S225)、スマートコントラクト2は、買主端末5に督促するが、それでも、支払がない場合は、DAOで取引の停止の決議を行う(S226)。
【0062】
その後、スマートコントラクト2は、専門家に、抵当権の実行や、民事訴訟などの法的手段を依頼する(S227)。最後に、スマートコントラクト2は、NFTの移転処理を実行する(S228)。ローンの支払から、抵当権の実行、NFTの移転処理についても、先のトランザクションの続きに、ブロックチェーンとして、記録されていく。
【0063】
このようにして、ローンの支払から抵当権の実行、NFTの移転まで、不動産取引システムで実行可能となっている。
【0064】
(変形例1)
上記実施形態では、専門家による所有権の移転手続が完了して、登記が完了したこと(S217~S218)を条件として、NFTが売主から買主に移転されるとした。しかし、NFTの移転については、所有権の移転手続を必須の条件とするものではない。所有権の移転手続が行われなくても、売上金の支払があったことを条件にNFTを移転するようにしてもよい。上記実施形態の例であれば、S217~S218の動作が行われずに、取引成立通知後に、NFTの移転が行われるようにしてもよい。
【0065】
さらに、NFTの移転後に、所有権の移転手続を経ずに、NFTの所有者を変更するように、上記実施形態を利用してもよい。この場合、NFTの所有者は、NFTを所有しているが、登記上の所有権を所有していない場合にも、不動産売買掲載用サイトに、売買対象の不動産を掲載することができるとする。
【0066】
中間登記省略も、本発明に含まれるものとする。
【0067】
NFTを所有しているが、登記上の所有権を移転していないような場合については、取引の安全を考慮して、所有権の移転手続を、期間を限って行うように、不動産取引システムが管理するようにしてもよい。もし、当該期間以内に、所有権の移転手続を行わなかった場合は、NFTを元の所有者に戻すなどのペナルティを与えるようにしてもよいが、本発明を限定するものではない。
【0068】
不動産の取引については、各国の法制度によって、種々の相違が考えられるが、本発明では、取引対象の不動産を、NFTとして管理することで、所有者が一意に決まるため、安全な不動産取引が可能となる。
【0069】
(変形例2)
不動産取引システムへの参加者(信用提供者や売主、買主など)に対して、不動産取引システムを利用している間は、トークン(仮想通貨や議決権など)を発行するなどして、不動産取引システムに参加することのインセンティブを付与するようにしてもよい。
【0070】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、不動産取引システムに関し、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ネットワーク
2 DAOのスマートコントラクト(ブロックチェーン)
3 不動産売買掲載用サイト
5 買主端末
6 信用提供者端末
7 売主端末