(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】CD300C抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241030BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241030BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241030BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241030BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20241030BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241030BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241030BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241030BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241030BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241030BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/15
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K45/00
A61K35/17
C07K14/725
(21)【出願番号】P 2022532160
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2020017230
(87)【国際公開番号】W WO2021107726
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0155027
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0162200
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522193293
【氏名又は名称】セントリックスバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チェウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スイン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、スギョン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513818(JP,A)
【文献】Journal of Innate Immunity,2013年04月06日,Vol.5,P.389-400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-15/90
C12P 1/00-41/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD300c抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体であって、
前記キメラ抗原受容体は、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10及び配列番号12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列に含まれる、6つの相補性決定領域(CDR)配列を含
み、
抗体又は単鎖可変フラグメント(scFv)を含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記キメラ抗原受容体は、配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列に含まれる、6つの相補性決定領域(CDR)配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチド(signal peptide)、GSリンカー、膜貫通ドメイン(transmembrane domain)、および細胞質内ドメイン(intracytoplasmic domain)を追加で含むことを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記シグナルペプチドはCD8αシグナルペプチドであることを特徴とする、請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインはCD8ヒンジ(hinge of cluster of differentiation 8)およびCD28膜貫通ドメイン(CD28 transmembrane domain)であることを特徴とする、請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記細胞質内ドメインはCD28細胞内ドメイン(CD28 intracellular domain)およびCD3ζ細胞内ドメイン(CD3ζintracellular domain)であることを特徴とする、請求項3に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記キメラ抗原受容体は、CD300c抗原を発現するがんの治療用途で使われることを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載されたキメラ抗原受容体を発現する、組換えベクター。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載されたキメラ抗原受容体を含む、免疫細胞。
【請求項10】
前記免疫細胞は、単核球、大食細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞(Natural
killer cell;NK cell)および樹状細胞からなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項9に記載の免疫細胞。
【請求項11】
請求項9に記載された免疫細胞を有効成分として含む、CD300c抗原を発現するがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項12】
前記がんは、大腸がん、直腸がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、すい臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がんおよび血液がんからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記薬学的組成物は他の抗がん剤を追加で含むことを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記薬学的組成物はがんの増殖、生存、転移、再発または抗がん剤耐性を抑制することを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
請求項9に記載された免疫細胞を有効成分として含む組成物を、ヒト以外の個体に投与する段階を含む、がんの予防または治療方法。
【請求項16】
請求項9に記載された免疫細胞を有効成分として含む組成物の、がん予防または治療用医薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体、これを発現する免疫細胞、およびその用途などに関する。
【背景技術】
【0002】
がんは現代人の死亡原因の中で最も大きな比重を占めている疾患のうち一つであって、多様な原因によって発生した遺伝子の突然変異によって正常細胞が変化して発生した病気であり、正常な細胞の分化、増殖、成長形態などに従わない腫瘍のうち悪性のもの指称する。がんとは、「制御されていない細胞成長」と特徴づけられ、このような異常な細胞成長によって腫瘍(tumor)と呼ばれる細胞塊が形成されて周囲の組織に浸透され、酷い場合には身体の他の器官に転移したりもする。がんは手術、放射線および薬物療法などで治療をしても、多くの場合に根本的な治癒には至らず、患者に苦痛を与え、最終的には死に至らせる難治性慢性疾患である。特に、最近では老年人口の増加、環境の悪化などによって世界のがん発生率は毎年5%以上増加している趨勢であり、WHO報告書によると、今後25年内にがんの発生人口は3千万人に増加し、このうち2千万人の人口はがんで死亡するものと推定されている。
【0003】
がんの薬物治療、すなわち、抗がん剤は一般的に細胞毒性を有している化合物であって、がん細胞を攻撃して死滅させる方式でがんを治療するが、がん細胞だけでなく正常細胞にも損傷を与えるため高い副作用が出ている。したがって、副作用を減少させるために標的抗がん剤が開発された。しかし、このような標的抗がん剤の場合には副作用は低くすることができたものの、高い確率で耐性ができるという限界点を露呈した。したがって、最近では体内の免疫体系を利用して毒性および耐性による問題点を減少させる免疫抗がん剤に対する関心が急増している趨勢である。このような免疫抗がん剤の一例として、がん細胞表面のPD-L1に特異的に結合してT細胞のPD-1との結合を抑制してT細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃するようにさせる免疫チェックポイント阻害剤が開発されたことがある。しかし、このような免疫チェックポイント阻害剤の場合にも効果を示すがんの種類が多様でないため、多様ながんにおいて同一に治療効果を示す新しい免疫チェックポイント阻害剤の開発が切に要望されているのが実情である(大韓民国公開特許10-2016-0016725)。
【0004】
一方、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)はT細胞に抗原特異性を伝達するように設計された人工受容体であり、これらはT細胞を活性化させて特異的免疫性を提供するように選択された抗原特異的構成要素、膜貫通構成要素、細胞内構成要素などで構成される。最近では、このようなキメラ抗原受容体をコードする遺伝子を導入した細胞を利用してがん免疫療法、すなわち、患者からT細胞を採取して、このようなT細胞にキメラ抗原受容体をコードする遺伝子を導入して増幅し、再び患者に移入する療法を通じてがんを治療する方法に関する研究が活発に進行されているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のような従来技術上の問題点を解決するために案出されたもので、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体、これを発現する免疫細胞、およびこれを利用したがん予防または治療用組成物などを提供することをその目的とする。
【0006】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業界で通常の知識を有する者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を提供する。
【0008】
本発明の一具体例において、前記キメラ抗原受容体は好ましくは、CD300c抗原に特異的に結合する抗体(antibody)、単一ドメイン抗体(single domain antibody)、単鎖可変領域フラグメント(single chain variable fragment;scFv)等を含むか、CD300c抗原(antigen)を含むことによって、CD300c抗原またはその受容体に特異的に認識し結合することができる。前記CD300c抗原は受容体に結合するために、CD300c抗原の配列全体を含んでもよくき、CD300c抗原の配列のうち細胞外ドメイン(extracellular domain;ECD)のみを含んでもよい。前記CD300c抗原の細胞外ドメイン配列は配列番号14で表示されるアミノ酸配列を含むことができ、好ましくは前記配列番号14と90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。また、前記抗体、単一ドメイン抗体、単鎖可変領域フラグメントなどはCD300c抗原と結合するために、配列番号4、6、8、10、または12で表示されるアミノ酸配列を含むことができ、好ましくは前記配列番号4、6、8、10、または12と90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。アミノ酸配列に対する「配列相同性の%」は最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域でアミノ酸配列の一部は配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べてさらに追加または削除(すなわち、ギャップ)を含むことができる。しかし、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合できる配列であればこれに制限されない。
【0009】
本発明の他の具体例において、前記キメラ抗原受容体は好ましくはシグナルペプチド(signal peptide)、GSリンカー、膜貫通ドメイン(transmembrane domain)、細胞質内ドメイン(intracytoplasmic domain)等を追加で含むことができ、一般的に知られているキメラ抗原受容体の構成要素であれば、これに制限されない。
【0010】
本発明のさらに他の具体例において、好ましくは前記シグナルペプチドはCD8αシグナルペプチド配列を含むことができ、前記膜貫通領域はCD8ヒンジ(hinge of cluster of differentiation 8)、CD28膜貫通ドメイン(CD28 transmembrane domain)等の配列を含むことができ、前記細胞質内領域はCD28細胞内ドメイン(CD28 intracellular domain)、CD3ζ細胞内ドメイン(CD3ζintracellular domain)等の配列を含むことができる。
【0011】
本発明のさらに他の具体例において、前記キメラ抗原受容体はCD300c抗原またはその受容体を特異的に認識および/または結合することによって、CD300c抗原を表面に発現しているがんの治療用途で使われ得る。
【0012】
また、本発明は前記キメラ抗原受容体を発現する組換えベクターを提供する。
【0013】
また、本発明は前記組換えベクターで形質転換された免疫細胞を提供する。
【0014】
本発明の一具体例において、前記免疫細胞は好ましくは単核球、大食細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞(Natural killer cell;NK cell)、樹枝状細胞などであるが、がんの治療用途で使われている免疫細胞であれば制限がない。
【0015】
また、本発明は前記免疫細胞を有効性分として含む、CD300c抗原またはCD300c受容体を発現するがんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明の一具体例において、前記がんは大腸がん、直腸がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、すい臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がん、血液がんなどであるが、CD300c抗原またはCD300c受容体を表面に発現しているがんの種類であれば、これに制限されない。
【0017】
本発明の他の具体例において、前記薬学的組成物は他の既存の抗がん剤を追加で含むことができ、前記抗がん剤は好ましくは毒素ルビシン、シスプラチン、ゲムシタビン、オキサリプラチン、5-FU、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、ネシツムマブ、がん抗原、抗がんウイルスなどであるが、現在抗がん剤として使われている物質であればこれに制限されない。前記がん抗原はがん腫に特異的ながんワクチン(cancer vaccine)であって、好ましくは膀胱がん特異的ながん抗原としてNY-ESO-1、乳ガン特異的ながん抗原としてHER2、大腸がん特異的ながん抗原としてCEA、肺がん特異的ながん抗原としてVEGFR1、VEGFR2等であり得るが、がんワクチンとして知られているがん抗原の種類であれば、これに制限されない。抗がんウイルスの一例としてイムリジック、Pexa-Vecなどがあるが、知られている抗がんウイルスであれば、これに制限されない。前記抗がん剤を追加で含むのは、好ましくは併用投与であるか、本願発明の免疫細胞内に含まれている形態であり得、またはCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体に結合された形態であってもよく、抗がん剤の伝達体内に共に含まれている形態であってもよい。しかし、これに制限されはしない。
【0018】
本発明のさらに他の具体例において、前記薬学的組成物はがんまたはがん幹細胞の増殖、生存、転移、再発、抗がん剤耐性などを抑制することを特徴とするが、本発明の薬学的組成物によって発生する効果であれば、これに制限されない。
【0019】
また、本発明はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を有効性分として含む組成物を個体に投与する段階を含むがん治療方法を提供する。
【0020】
また、本発明はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を有効性分として含む組成物のがん予防または治療用途を提供する。
【0021】
また、本発明はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞のがん治療に利用される薬剤を生産するための用途を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体は、多様ながんの表面で発現するCD300c抗原またはその受容体に特異的に高い結合力を有して結合されることによって、T細胞を活性化させるとともにがん細胞の増殖を抑制することによって多様ながんの免疫治療剤として効果的に使われ得る。また、本発明に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を利用することによって、免疫細胞自らの治療効果を有することができるだけでなく、キメラ抗原受容体を通じてCD300c蛋白質の生成を抑制することによってT細胞を活性化させるとともに、がん細胞の増殖を抑制することによって 効果的にがん細胞の成長、発達、転移などを抑制できることを確認した。そして、細胞死滅に抵抗する能力を示すがん細胞に本発明に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞を処理する場合、がん細胞のこのような能力を顕著に弱化させてがん再発防止にも優れた効能を見せるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体製作のための遺伝子配置を簡略に示した図面である。
【
図2】本発明の一実施例に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体製作のためのベクターマップを示した図面である。
【
図3】本発明の一実施例に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞株をウエスタンブロッティングで確認した結果を示した図面である。
【
図4】本発明の一実施例に係るCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞株の抗がん効果を確認した結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞は、がん細胞表面のCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合することによって、CD300cのメカニズムを効果的に抑制することによってがん細胞の成長およびがんの発達を効果的に抑制できるため、CD300c抗原またはCD300c受容体を表面に発現している多様ながんの治療に効果的に使われ得る。
【0025】
本明細書において、「抗体(antibody)」とは、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を意味し、ポリクローナル抗体(polyclonal antibody)、単クローン抗体(monoclonal antibody)およびこれの機能的なフラグメント(fragment)をすべて含む。また、前記用語はキメラ性抗体(例えば、ヒト化ミュリン抗体)および異種結合抗体(例えば、両特異性抗体)のような遺伝工学によって生産された形態を含むことができる。このうち単クローン抗体は単一抗原性部位(エピトープ、epitope)に対して単一結合特異性および親和度を示す抗体であって、異なるエピトープに対して特異性を示す抗体を含むポリクローナル抗体とは異なって、単クローン抗体は抗原上の単一エピトープに対してのみ結合特異性および親和度を示すため、治療剤としての品質管理が容易である。特に、本発明の抗-CD300c単クローン抗体はCD300cを発現するがん細胞に特異的に結合してそれ自体としても抗がん活性を示すだけでなく、免疫細胞を刺激することによってがん細胞依存性抗がん活性を最大化させることができる。前記抗体は構成のうち重鎖(heavy chain)および/または軽鎖(light chain)の可変領域(variable region)を含み、前記可変領域は1次構造として抗体分子の抗原結合部位を形成する部分を含み、本発明の抗体は前記可変領域を含む一部のフラグメントで構成され得、好ましくは前記可変領域はCD300cに対する可溶性受容体で代替され得るが、本発明の抗-CD300c単クローン抗体と同一の効果を示すのであればこれに制限されない。
【0026】
本明細書において、「単一ドメイン抗体(single domain antibody)」はCD300c抗原に対する特異抗体であって、CDRが単一ドメインポリペプチドの一部である抗体であり、一般的に二つの重鎖(heavy chain)と抗原結合部位のみを利用して製作された抗体であり得るが、軽鎖が自然的にない抗体、従来の4-鎖抗体から由来した単一ドメイン抗体、操作された抗体および抗体から由来したもの以外の単一ドメインスキャフォールドをすべて含むことができる。
【0027】
本明細書において、「単鎖可変領域フラグメント(single-chain variable fragment;scFv)」とは、抗体の軽鎖および重鎖の可変領域を15個内外のアミノ酸が連結されたペプチド配列からなるリンカー(linker)で連結した蛋白質であり、軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域、または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域の順のいずれも可能であり、元の抗体と同一あるいは類似する抗原特異性を有する。連結部位は主にグリシン(glycine)とセリン(serine)からなる親水性の柔軟なペプチド鎖(GS linker)であり、「(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3」の15個のアミノ酸配列またはこれと類似する配列が主に使用される。前記抗体(antibody)は免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を意味し、ポリクローナル抗体(polyclonal antibody)、単クローン抗体(monoclonal antibody)およびこれの機能的なフラグメント(fragment)をすべて含む。また、前記用語はキメラ性抗体(例えば、ヒト化ミュリン抗体)および異種結合抗体(例えば、両特異性抗体)のような遺伝工学によって生産された形態を含むことができる。このうち単クローン抗体は単一抗原性部位(エピトープ、epitope)に対して単一結合特異性および親和度を示す抗体であり、異なるエピトープに対して特異性を示す抗体を含むポリクローナル抗体とは異なって、単クローン抗体は抗原上の単一エピトープに対してのみ結合特異性および親和度を示すため、治療剤としての品質管理が容易である。特に、本発明の抗-CD300c単クローン抗体はCD300cを発現するがん細胞に特異的に結合してそれ自体としても抗がん活性を示すだけでなく、免疫細胞を刺激することによってがん細胞依存性抗がん活性を最大化させることができる。前記抗体は構成のうち重鎖(heavy chain)および/または軽鎖(light chain)の可変領域(variable region)を含み、前記可変領域は1次構造として抗体分子の抗原結合部位を形成する部分を含み、本発明の抗体は前記可変領域を含む一部のフラグメントで構成され得る。
【0028】
本明細書において、「予防(prevention)」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によってがんなどの疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0029】
本明細書において、「治療(treatment)」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によってがんなどの症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0030】
本明細書において、「個体(individual)」とは、本発明の薬学的組成物が投与され得る対象を指し、その対象には制限がない。
【0031】
本明細書において、「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」とは、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末または飲料の形態であることを特徴とすることができ、前記薬学的組成物はヒトを対象とすることを特徴とすることができる。前記薬学的組成物はこれらに限定されるものではないが、それぞれ常法により散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、座剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われ得る。本発明の薬学的組成物は薬剤的に許容可能な坦体を含むことができる。薬剤学的に許容される坦体は、経口投与時には結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使うことができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使うことができ、局所投与用の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使うことができる。本発明の薬学的組成物の剤形は前述したような薬剤学的に許容される坦体と混合して多様に製造され得る。例えば、経口投与時には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で製造することができるし、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放性製剤などに剤形することができる。
【0032】
一方、製剤化に適合な坦体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使われ得る。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる
【0033】
本発明に係る薬学的組成物の投与経路はこれらに限定されるものではなく、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願で使われた用語「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学的組成物はまた、直腸投与のための座剤の形態で投与され得る。
【0034】
本発明の薬学的組成物は使われた特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健常、性別、規定食、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含んだ多様な要因により多様に変わり得、前記薬学的組成物の投与量は患者の状態、体重、病気の程度、薬物の形態、投与経路および期間により異なるが、当業者によって適切に選択され得、1日0.0001~500mg/kgまたは0.001~500mg/kgで投与することができる。投与は一日に一度投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量はいかなる場合であれ、本発明の範囲を限定するものではない。本発明に係る薬学的組成物は丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化され得る。
【0035】
以下、本発明の理解を助けるために下記の実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0036】
<実施例>
実施例1:CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体発現ベクターの製造
CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を製造するために、pLVX-Puroベクター(Addgene)に、合成された蛋白質が細胞膜を通過して正確な位置に移動するようにする配列番号2のアミノ酸配列を含むCD8αシグナルペプチド(CD8αsignal peptide、DNA配列は配列番号1)、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合する各配列番号4、6、8、10、12のアミノ酸配列を含むCK1、CL6、CL7、CL10、SL18それぞれの単鎖可変領域フラグメント(anti-CD300c single chain variable fragment;aCD300c scFv、DNA配列はそれぞれ配列番号3、5、7、9、11)または配列番号14のアミノ酸配列を含むCD300c ECD(extracellular domain)抗原(DNA配列は配列番号13)、配列番号16のアミノ酸配列を含むGSリンカー(DNA配列は配列番号15)、そして膜貫通ドメイン(transmembrane domain)として配列番号18のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジ(hinge of cluster of differentiation 8、DNA配列は配列番号17)、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通ドメイン(CD28 transmembrane domain、DNA配列は配列番号19)、そして大食細胞活性化信号伝達のための細胞質内ドメイン(intracytoplasmic domain)として配列番号22のアミノ酸配列を含むCD28細胞内ドメイン(CD28 intracellular domain、DNA配列は配列番号21)、および配列番号24のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内ドメイン(CD3ζintracellular domain、DNA配列は配列番号23)を順に挿入して、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体発現ベクター(pLVX-Puro/aCD300c scFvまたはpLVX-Puro/CD300c ECD-CAR)を製造した。製造した各ベクターの遺伝子および蛋白質配列の組み合わせは表1に表した。そして遺伝子の配列の模式図は
図1に示し、製作されたベクターマップの例示は
図2に示した。
【0037】
【0038】
実施例2. CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体発現用組換えレンチウイルスの製造
CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体発現用組換えレンチウイルスの製造に必要なHEK293T細胞株(ATCC)を、次のように準備した。細胞の培養に使った完全培地は、新鮮なDMEM培地(Gibco)に熱処理したFBS(fetal bovine serum)を10%の濃度となるように添加し、1XのPenicillin-Streptomycin(Gibco)を添加した後に、上下に転倒させて均一に混合した後に37℃で予熱して使った。そしてHEK293T細胞株は冷凍保管された細胞stockを使用前に迅速に37℃恒温水槽に転移して、2~3分の間急速解凍した後に、30mLの完全培地に接種し、37℃、5%CO2培養器で培養した。そして細胞飽和度が80%以上となった時、継代培養しながら維持した。レンチウイルスの形質感染(transfection)のためには、HEK293T細胞株を1-2 X 106cellsの濃度で10mLの完全培地に接種し、16時間の間培養した後に、レンチウイルスの形質感染を実施した。
【0039】
CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体発現用レンチウイルスの形質感染は、Lenti-XTM Expression System(Takara)キットを利用した。実施例1と同一の方法で製造された7μgのpLVX-Puro/aCD300C scFvまたはpLVX-Puro/CD300c ECD-CAR発現ベクターにsterile water(Invitrogen)を添加して600μLとなるように合わせた後に、Lenti-XTM Expression System内のLenti-X Packaging Single Shots tubeに入れて混合してnanoparticle complex solutionを製造した。そして常温で10分間反応させたnanoparticle complex solutionを予め準備されたHEK293T細胞に一滴ずつ添加した後、左右に振りながら混合した。そして培養器で4時間の間培養した後に、新しい完全培地を6mLを追加で添加した後に、48時間の間培養した。培養後には上清液を回収し遠心分離で細胞残余物を除去した後に0.45μmフィルタで濾過し、使用前まで-80℃に保管した。
【0040】
獲得されたレンチウイルス上清液のうち20μLをLenti-XTM Expression System内のGoStix cassette sample well(S)に添加し、Chase溶液3滴をsample wellに落とした後に常温で10分の間反応させた後、バンドの有無で5X105IFU/mL以上の有効容量の組換えレンチウイルスを獲得したことを確認した。
【0041】
その結果、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する組換えレンチウイルスが製造されたことを確認した。製造したレンチウイルスが配列番号4、6、8、10、12または14のアミノ酸配列をそれぞれ含むキメラ抗原受容体を発現することを確認した。
【0042】
実施例3:CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞の製造
CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞を製造するために、実施例2と同一の方法で製造された組換えレンチウイルスをJurkat細胞株に形質感染させた。より詳しくは、0.1~10MOIの組換えレンチウイルスを8μg/mLのpolybrene(Merk)が添加された完全培地に接種し、上下に転倒させて均一に混合した。そして混合物を6-ウェルプレートに準備されたJurkat細胞株に1mLずつ添加した後に、1,800rmpで45~90分の間遠心分離し、37℃、5%CO2培養器で24時間の間培養した。そして24時間後に、5X105cells/mLの濃度で継代培養した。
【0043】
そして形質感染されたJurkat細胞株でCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体が正常に発現するかを確認するために、培養されたJurkat細胞の総蛋白質をPRO-PREP溶液(iNtRON)を利用して収得した。そして収得された蛋白質の濃度はmicroBCA protein assay kit(Thermofisher)を使って測定した後に、同一の量の蛋白質を利用してウエスタンブロッティングを実施した。より詳しくは、同一の量の蛋白質をSDS-PAGE(Invitrogen)に電気泳動した後に、電気泳動された蛋白質をnitrocellulose membrane(Invitrogen)に移動させた。そして蛋白質が結合されたnitrocellulose membraneを5%skim milk(BD)溶液を利用してブロッキングさせて非特異的抗体反応を遮断し、1次抗体として抗-CD3抗体および抗-GAPDH抗体(Cell Signaling Technologies、USA)を1:1,000の濃度となるようにそれぞれ5%skim milkを利用して希釈し、これをnitrocellulose membraneに処理し反応させた後に、結合されなかった抗体は除去した。そして2次抗体としてホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase;HRP)-接合2次抗体(Cell Signaling Technologies)を1:2,000の濃度で希釈して処理した。そしてECL solution(Thermofisher)を処理して発色反応を誘導した後に、Luminescentイメージ分析装置iBright1500(Invitrogen)を使って蛋白質の量を定量した。ウエスタンブロッティング結果は
図3に示した。
【0044】
図3に示された通り、抗-CD3抗体が結合されたCD3ζ細胞内ドメインを確認することができたし、これを通じてCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞株が製造されたことを確認した。
【0045】
そして追加的に、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体の発現の程度を、フローサイトメーター(FACS)を利用して確認した。より詳しくは、Jurkat細胞株にPE-融合抗-IgG抗体(Jackson immunoresearch)を処理し、30分の間4℃で培養して反応させた後に、フローサイトメーターを利用して確認した。
【0046】
フローサイトメトリー分析結果、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞株が製造されたことを確認した。
【0047】
実施例4:CD300cのがん細胞発現確認
CD300cが多様ながん細胞で発現しているかを評価するために、多様なヒト由来固形がん細胞株を培養してmRNAおよび蛋白質水準でCD300cの発現を評価した。より詳しくは、ヒト肺がん細胞株であるA549、ヒト乳ガン細胞株であるMDA-MB-231、マウス大腸がん細胞株であるCT26を培養し、それぞれの細胞を4%ホルムアルデヒドで固定させた後に、5%Normal goat serumを利用してブロッキングした。そして1μgの抗-CD300c抗体を処理し反応させた後に、FITC-labeled抗-rabbit IgG抗体を利用して染色した。そして蛍光標識された細胞をフローサイトメーター(FACS)を利用して確認した。
【0048】
その結果、大腸がん、肺がん、乳ガンなどの多様ながん細胞の細胞表面にはCD300c抗原を有していることを確認した。
【0049】
実施例5:CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞の抗がん効果
CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞の抗がん効果を確認するために、A549細胞株を利用してがん細胞死滅効果を確認した。より詳しくは、A549細胞株を96-ウェルプレートに1X10
5cells/mLの濃度で接種した。そして実施例3に記載された方法と同一の方法で製造されたCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞をがん細胞に20:1の濃度となるように処理し共培養した。対照群としてレンチウイルスで形質感染されていないJurkat細胞を使った。24時間の間共培養した後に、各ウェルから共培養したJurkat細胞株を除去し、CCK-8(Dojindo)を利用して1時間の間反応させた後に、OD
450nmで吸光度を測定してがん細胞の死滅程度を確認した。その結果は
図4に示した。
【0050】
図4に示された通り、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するJurkat細胞株はA549細胞株に対して抗がん効果を示し、レンチウイルスで形質感染されていないJurkat細胞株より高い抗がん効果を示すことを確認した。
【0051】
前記結果を通じて、CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞株を利用すると、免疫細胞株を利用したがん治療効果を増加させて効果的にがんを治療できることを確認することができた。また、CD300c抗原を表面に発現するがん細胞に対してのみ特異的に反応するため、副作用を減少させるとともに治療効果は最大化できるということを確認することができた。
【0052】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形できることが理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではないものと理解されるべきである。
【産業上利用の可能性】
【0053】
本発明のCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するため、CD300c抗原を分泌するすべてのがんの治療に使われ得るだけでなく、CD300cの抑制を通じて体内でT細胞などを活性化することによって副作用は減少させ得るだけでなく、がんの治療効果は増加することによって多様ながんの免疫治療に効果的に使うことができる。
本発明は以下の態様を含む。
<1>
CD300c抗原またはその受容体に特異的に結合するキメラ抗原受容体であって、
前記キメラ抗原受容体はCD300c抗原またはその受容体に特異的に結合する抗体、単一ドメイン抗体、単鎖可変領域フラグメント、および抗原からなる群から選択されたいずれか一つ以上を含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体。
<2>
前記キメラ抗原受容体は、配列番号4、6、8、10、12または14で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、<1>に記載のキメラ抗原受容体。
<3>
前記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチド(signal peptide)、GSリンカー、膜貫通ドメイン(transmembrane domain)、および細胞質内ドメイン(intracytoplasmic domain)を追加で含むことを特徴とする、<1>に記載のキメラ抗原受容体。
<4>
前記シグナルペプチドはCD8αシグナルペプチドであることを特徴とする、<3>に記載のキメラ抗原受容体。
<5>
前記膜貫通ドメインはCD8ヒンジ(hinge of cluster of differentiation 8)およびCD28膜貫通ドメイン(CD28 transmembrane domain)であることを特徴とする、<3>に記載のキメラ抗原受容体。
<6>
前記細胞質内ドメインはCD28細胞内ドメイン(CD28 intracellular domain)およびCD3ζ細胞内ドメイン(CD3ζintracellular domain)であることを特徴とする、<3>に記載のキメラ抗原受容体。
<7>
前記キメラ抗原受容体は、CD300c抗原またはCD300c受容体を発現するがんの治療用途で使われることを特徴とする、<1>に記載のキメラ抗原受容体。
<8>
<1>~<7>のいずれか一項に記載されたキメラ抗原受容体を発現する、組換えベクター。
<9>
<8>に記載された組換えベクターで形質転換された、免疫細胞。
<10>
前記免疫細胞は、単核球、大食細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞(Natural
killer cell;NK cell)および樹状細胞からなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、<9>に記載の免疫細胞。
<11>
<9>に記載された免疫細胞を有効成分として含む、CD300c抗原またはCD300c受容体を発現するがんの予防または治療用薬学的組成物。
<12>
前記がんは、大腸がん、直腸がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、すい臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がんおよび血液がんからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、<11>に記載の薬学的組成物。
<13>
前記薬学的組成物は他の抗がん剤を追加で含むことを特徴とする、<11>に記載の薬学的組成物。
<14>
前記薬学的組成物はがんの増殖、生存、転移、再発または抗がん剤耐性を抑制することを特徴とする、<11>に記載の薬学的組成物。
<15>
<9>に記載された免疫細胞を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、がんの予防または治療方法。
<16>
<9>に記載された免疫細胞を有効成分として含む組成物のがん予防または治療用途。
【配列表】