(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】塗装方法及び下塗り塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 129/14 20060101AFI20241030BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241030BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C09D129/14
C09D5/00 D
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2020181220
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】四ツ▲柳▼ 雄太
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-013867(JP,A)
【文献】特開2009-148718(JP,A)
【文献】特開2009-149767(JP,A)
【文献】特開2001-001453(JP,A)
【文献】特開平10-159292(JP,A)
【文献】特表2018-534374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並べて配置された複数の壁材の表面に、隣り合う壁材間の継目を覆うように下塗り塗料組成物を塗装して下塗り塗膜を形成し、前記下塗り塗膜の上に上塗り塗料組成物を塗装する方法であって、
前記下塗り塗料組成物が樹脂成分と水性媒体とを含み、前記樹脂成分がブチラール樹脂を含み、前記樹脂成分100質量%に対する前記ブチラール樹脂の割合が10質量%以上であ
り、
前記下塗り塗料組成物中の乳化剤の含有量が、前記ブチラール樹脂100質量部に対し、0質量部以上10質量部未満であることを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
前記乳化剤の含有量が、前記ブチラール樹脂100質量部に対し、0質量部であり、
前記ブチラール樹脂が、前記水性媒体に可溶である、請求項1に記載の塗装方法。
【請求項3】
前記樹脂成分が、前記水性媒体に分散可能なウレタン樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載の塗装方法。
【請求項4】
並べて配置された複数の壁材の表面に、隣り合う壁材間の継目を覆うように塗装される下塗り塗料組成物であって、
樹脂成分と水性媒体とを含み、前記樹脂成分がブチラール樹脂を含み、前記樹脂成分100質量%に対する前記ブチラール樹脂の割合が10質量%以上であ
り、
乳化剤の含有量が、前記ブチラール樹脂100質量部に対し、0質量部以上10質量部未満であることを特徴とする下塗り塗料組成物。
【請求項5】
前記乳化剤の含有量が、前記ブチラール樹脂100質量部に対し、0質量部であり、
前記ブチラール樹脂が、前記水性媒体に可溶である、請求項4に記載の下塗り塗料組成物。
【請求項6】
前記樹脂成分が、前記水性媒体に分散可能なウレタン樹脂をさらに含む、請求項4又は5に記載の下塗り塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装方法及び下塗り塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面においては、外壁ボード等の複数の壁材が敷き詰められ、その表面に塗装によって塗膜が設けられる場合がある。このような壁面においては、気温変化等によって壁材間の継目において壁材間の間隔が変化してしまい、その結果、壁材間の継目において、塗膜に割れが生じてしまうことがある。
【0003】
壁材間の継目における塗膜の割れを抑える方法としては、壁材間の間隔が広がる際の広がり方向の力を緩和して塗膜に伝えないようにする帯状の継目処理材を、壁材間の継目及び該継目の両側の壁材の側縁を覆うように設け、継目処理材の表面及び継目処理材の両側の壁材の表面に塗装によって塗膜を設ける継目処理方法が知られている。
【0004】
継目処理材としては、例えば、下記のものが提案されている。
・壁材間の継目を覆うように貼着される粘着層と、粘着層の外側に設けられる、不織布によって補強されたアクリルゴムからなる補強層と、粘着層と補強層との間に形成された、シリコーン樹脂からなる緩衝材が部分的に設けられた緩衝部とを有する帯状の継目処理材(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の継目処理材を用いた継目処理方法は、施工の手間がかかる他、塗料以外に継目処理材が余計に必要となる。
【0007】
本発明は、壁材間の継目に予め継目処理材を設けなくても、壁材間の間隔の変動による割れが発生しにくい塗膜を形成できる塗装方法及び下塗り塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
[1]並べて配置された複数の壁材の表面に、隣り合う壁材間の継目を覆うように下塗り塗料組成物を塗装して下塗り塗膜を形成し、前記下塗り塗膜の上に上塗り塗料組成物を塗装する方法であって、
前記下塗り塗料組成物が樹脂成分と水性媒体とを含み、前記樹脂成分がブチラール樹脂を含み、前記樹脂成分100質量%に対する前記ブチラール樹脂の割合が10質量%以上であることを特徴とする塗装方法。
[2]並べて配置された複数の壁材の表面に、隣り合う壁材間の継目を覆うように塗装される下塗り塗料組成物であって、
樹脂成分と水性媒体とを含み、前記樹脂成分がブチラール樹脂を含み、前記樹脂成分100質量%に対する前記ブチラール樹脂の割合が10質量%以上であることを特徴とする下塗り塗料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、壁材間の継目に予め継目処理材を設けなくても、壁材間の間隔の変動による割れが発生しにくい塗膜を形成できる塗装方法及び下塗り塗料組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る塗装方法を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔塗装方法〕
以下、
図1を参照しながら、本発明の塗装方法の一実施形態について説明する。なお、
図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
本実施形態に係る塗装方法では、並べて配置された複数の壁材10の表面に、隣り合う壁材10間の継目Cを覆うように特定の下塗り塗料組成物を塗装して下塗り塗膜1を形成し(工程(a))、下塗り塗膜1の上に上塗り塗料組成物を塗装して上塗り塗膜3を形成する(工程(b))。これにより、複数の壁材10の表面に、隣り合う壁材10間の継目Cを覆うように、下塗り塗膜1と上塗り塗膜3とが積層された多層構造の塗膜が形成される。
【0012】
<下塗り塗料組成物>
下塗り塗料組成物は、樹脂成分と水性媒体とを含む。樹脂成分は、ブチラール樹脂を含む。樹脂成分100質量%に対するブチラール樹脂の割合は10質量%以上である。
樹脂成分は、ブチラール樹脂以外の他の樹脂をさらに含んでいてもよい。
下塗り塗料組成物は、必要に応じて、乳化剤をさらに含んでいてもよい。
下塗り塗料組成物は、必要に応じて、可塑剤をさらに含んでいてもよい。
下塗り塗料組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0013】
ブチラール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂ともいい、典型的には、ポリビニルアルコールのブチラール化物である。ポリビニルアルコールのブチラール化物は、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとを酸触媒の存在下で反応させて得られる。
ブチラール樹脂は、水性媒体に可溶でも不溶でもよいが、水性媒体に可溶であることが好ましい。ブチラール樹脂が水性媒体に可溶であれば、ブチラール樹脂を水性媒体に分散させるために乳化剤を配合する必要がない。
【0014】
ブチラール樹脂は市販品を用いることができる。ブチラール樹脂の市販品としては、積水化学工業株式会社製のエスレック(登録商標)BM-5、エスレックKW-10、エスレックKW-M等が挙げられる。
【0015】
他の樹脂としては、特に制限はなく、公知の塗料用樹脂を用いることができ、例えば、ウレタン、アクリル、エポキシ、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然又は合成ゴム、及びこれらの共重合体のエマルション等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
他の樹脂は、塗膜の耐水性の点から、水性媒体に分散可能な樹脂であることが好ましく、上塗り塗膜3との密着性の点から、水性媒体に分散可能なウレタン樹脂、又は水性媒体に分散可能なアクリル樹脂がより好ましく、水性媒体に分散可能なウレタン樹脂が特に好ましい。
水性媒体に分散可能な樹脂は、典型的には、エマルションやディスパージョンの形態で配合される。具体例としては、アクリル樹脂エマルション、アクリル樹脂ディスパージョン、ウレタン樹脂ディスパージョンが挙げられる。これらのエマルションやディスパージョンは市販品を使用することができる。
【0016】
水性媒体は、水のみの媒体、又は水に水と相溶性のある溶剤を加えた媒体である。
水としては、イオン交換水、水道水等を使用できる。
水と相溶性のある溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、エチレングリコール等が挙げられる。
水性媒体は、水であることが好ましい。
【0017】
ブチラール樹脂が水性媒体に不溶である場合、ブチラール樹脂の水性媒体への分散性を高めるために、下塗り塗料組成物に乳化剤を含有させることができる。
乳化剤としては、公知の乳化剤を用いることができ、例えばアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、双性界面活性剤が挙げられる。
【0018】
ブチラール樹脂を軟化させるために、下塗り塗料組成物に可塑剤を含有させることができる。
可塑剤としては、公知の可塑剤を用いることができ、例えばリシノール酸ブチル、リシノール酸メチル、フタル酸ジデシル、アジピン酸ジイソブチルが挙げられる。
【0019】
他の成分としては、例えば消泡剤、分散剤、増粘剤、造膜助剤、防腐剤、レベリング剤が挙げられる。
【0020】
下塗り塗料組成物において、樹脂成分100質量%に対するブチラール樹脂の割合は10質量%以上であり、30質量%以上が好ましい。ブチラール樹脂の割合が前記下限値以上であれば、形成される下塗り塗膜1が伸び性、強靭性に優れ、壁材10間の間隔が広がったときに、下塗り塗膜1がその動きに追従して伸びることが可能となり、その上に形成された上塗り塗膜3に割れが発生することを抑制できる。
樹脂成分100質量%に対するブチラール樹脂の割合は100質量%であってもよい。
【0021】
樹脂成分が他の樹脂を含む場合、樹脂成分100質量%に対するブチラール樹脂の割合は、80質量%以下が好ましい。ブチラール樹脂の割合が前記上限値以下であれば、下塗り塗膜1の耐水性、上塗り塗膜3との密着性がより優れる。
【0022】
樹脂成分の含有量は、下塗り塗料組成物100質量%に対して、10~50質量%が好ましい。樹脂成分の含有量が前記範囲内であれば、塗装作業性に優れる。
【0023】
水性媒体の含有量は、下塗り塗料組成物100質量%に対し、10~80質量%が好ましい。水性媒体の含有量が前記範囲内であれば、塗装作業性に優れる。
【0024】
乳化剤の含有量は、ブチラール樹脂100質量部に対し、0~10質量部が好ましい。乳化剤の含有量が前記上限値を超えると、塗膜の耐水性が悪化し膨れのおそれがある。
下塗り塗料組成物は乳化剤を含まないことが好ましい。
【0025】
可塑剤の含有量は、ブチラール樹脂100質量部に対し、0~50質量部が好ましい。可塑剤の含有量が前記上限値を超えると、可塑剤がブリードアウトし、上塗り塗膜3のフクレ、はがれを引き起こすおそれがある。
下塗り塗料組成物は可塑剤を含まないことが好ましい。
【0026】
他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選定できるが、例えば、樹脂成分100質量部に対し、0~30質量部程度である。
【0027】
下塗り塗料組成物は、例えば、ブチラール樹脂と水性媒体とを混合することにより製造できる。必要に応じて、他の樹脂、乳化剤、可塑剤、他の成分等を混合してもよい。
【0028】
<工程(a)>
工程(a)では、並べて配置された複数の壁材10の表面に、隣り合う壁材10間の継目Cを覆うように下塗り塗料組成物を塗装する。
【0029】
壁材10としては、例えば建築物の外壁材、内壁材が挙げられる。壁材10の材質としては、例えばモルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材が挙げられる。壁材10の表面は平滑でもよく、凹凸を有していてもよい。壁材10の表面に塗膜が設けられていてもよい。
隣り合う壁材10間の継目Cには、必要に応じて、目地材が充填されてもよい。目地材としては、例えばシーリング材、パテ材が挙げられる。
【0030】
下塗り塗料組成物の塗装方法としては、例えば、下塗り塗料組成物を、ローラー、スプレー、刷毛、こて等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
乾燥は、水性媒体を除去できればよく、常温乾燥でも加熱乾燥でもよい。乾燥温度は、例えば5~70℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、例えば10分間~4時間である。
【0031】
下塗り塗料組成物の塗着量は、形成する下塗り塗膜1の厚みに応じて設定される。
下塗り塗膜1の厚みは、20~300μmが好ましく、50~100μmがより好ましい。下塗り塗膜1の厚みが前記範囲内であれば、下塗り塗膜1の伸び性と強靭性とのバランスに優れ、壁材間の間隔の広がりに追従しやすい。
【0032】
<工程(b)>
工程(b)では、下塗り塗膜1の上に上塗り塗料組成物を塗装する。
上塗り塗料組成物に特に制限はなく、公知の各種の塗料組成物を用いることができる。上塗り塗料組成物としては、例えば、樹脂、着色顔料等を含む塗料組成物が挙げられる。樹脂としては、例えば前記した他の樹脂が挙げられる。
上塗り塗料組成物の塗装方法も特に制限はなく、公知の塗装方法を用いることができる。
上塗り塗料組成物の塗着量は、例えば100~450g/m2である。
【0033】
なお、上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において「部」は「質量部」を示す。
【0035】
(使用材料)
ブチラール樹脂水溶液A:積水化学社製「エスレックKW-10」、樹脂分24質量%、ブチラール樹脂の計算分子量27858、ブチラール化度9モル%。
ブチラール樹脂水溶液B:積水化学社製「エスレックKW-M」、樹脂分20質量%、ブチラール樹脂の計算分子量30288、ブチラール化度24モル%。
ブチラール樹脂分散液C:表1に示す配合(部)に従って、ブチラール樹脂(積水化学社製「エスレックBL-5」、樹脂分100質量%、計算分子量3200、ブチラール化度77モル%)、水、可塑剤(リシノール酸ブチル)を混合した後、攪拌下に乳化剤(日本乳化剤社製「ニューコール2360」)を投入し、強制乳化させたもの。
ウレタン樹脂ディスパージョン:第一工業製薬社製「スーパーフレックス420」、樹脂分32質量%。
アクリル樹脂エマルション:ジャパンコーティングレジン社製「モビニールLDM7522」、樹脂分51質量%。
【0036】
【0037】
(実施例1~14、比較例1~2)
<下塗り塗料組成物の製造>
表2~3に示す配合量(樹脂分換算)の原料、及び必要に応じて水をディスパーにて混合して下塗り塗料組成物を得た。水の配合量は、下塗り塗料組成物100質量%に対する樹脂成分の割合(質量%)が表2~3に示す値になるように設定した。
表2~3に、樹脂成分100質量%に対するブチラール樹脂の割合(質量%)を示す。
【0038】
<試験片の作製>
2枚のスレート板(幅10mm、長さ20mm、厚み4mm)を水平面上に、各スレート板の長手方向の一端同士が当接するように隙間なく並べた。それらのスレート板の上に下塗り塗料組成物を、乾燥後の厚みが50μm又は100μmになるように刷毛で塗布し、常温で12時間乾燥して下塗り塗膜を形成した。次いで、下塗り塗膜の上に、上塗り塗料としてアクリル樹脂塗料を150g/m2の塗着量で塗布し、常温で12時間乾燥して上塗り塗膜を形成した。これにより、2枚のスレート板が、下塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる塗膜により連結された試験片を得た。
【0039】
<伸び性の評価>
引張試験機(株式会社オリエンテック製「テンシロンRTC-1210」)のチャックに、試験片の長手方向の両端部を取り付け、測定雰囲気23℃、定格荷重250N、引張速度20mm/分の条件で長手方向に3mm伸ばし、その後、元の位置に戻す操作を合計で3回行った。その後、試験片の塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を表2~3に示す。
「伸び性の評価基準」
○:亀裂も割れも無い。
△:亀裂は有るが割れは無い。
×:割れが有る。
試験片を伸ばしていくと、主に2枚のスレート板の境界付近で塗膜が伸ばされる。このとき、下塗り塗膜の伸び性が低いと、塗膜に切れ目が発生し、切れ目の両側が離れる。試験片を元の位置に戻したときに、離れていた切れ目の両側が接触して筋状になっている場合を「亀裂」、切れ目の両側が離れたままになっている場合を「割れ」とした。
【0040】
<サイクル試験>
下塗り塗膜の厚みが50μmの試験片を、-5℃の環境下で4時間放置し、次に65℃の環境下で4時間放置する操作を1サイクルとし、これを20サイクル又は40サイクル行った。その後、試験片の塗膜の目視で観察し、以下の基準で外観及び付着を評価した。結果を表2~3に示す。
「外観の評価基準」
○:亀裂、割れ、膨れが無い。
△:亀裂、割れが無いが、面積10%以下の膨れがある。
×:亀裂、割れ、膨れがある。
「付着の評価基準」
○:下塗り塗膜と上塗り塗膜との間の剥離面積が0%(剥離が見られない)。
△:下塗り塗膜と上塗り塗膜との間の剥離面積が0%超10%以下。
×:下塗り塗膜と上塗り塗膜との間の剥離面積が10%超。
【0041】
【0042】
【0043】
実施例1~14の試験片の塗膜は、優れた伸び性を有していた。この結果から、壁材間の間隔の変動による亀裂が発生しにくいものであることがわかる。
実施例1~14のうち、下塗り塗料組成物が可塑剤を含まない実施例1、2、6~14の試験片の塗膜は、サイクル試験後の外観に優れていた。
下塗り塗料組成物の樹脂成分が他の樹脂を含む実施例4~14の試験片の塗膜は、40サイクルのサイクル試験後においても下塗り塗膜と上塗り塗膜とが良好に付着していた。
一方、下塗り塗料組成物がブチラール樹脂を含まない比較例1、2の試験片の塗膜は、伸び性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の下塗り塗料組成物により形成される塗膜は、伸び性、強靭性に優れており、壁材間の間隔の変動にあわせて伸縮できる。そのため、上塗り塗料組成物を塗装する前に予め、壁材間の継目に継目処理材を設けなくても、本発明の下塗り塗料組成物を塗装することで、壁材間の間隔が広がったときに上塗り塗膜に割れが発生することを抑制できる。
【符号の説明】
【0045】
1 下塗り塗膜
3 上塗り塗膜
C 継目
10 壁材