(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】検査治具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H01L21/68 G
(21)【出願番号】P 2021015320
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊福 亮玄
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-122182(JP,A)
【文献】特開2019-186356(JP,A)
【文献】特開2005-207996(JP,A)
【文献】特開2007-230580(JP,A)
【文献】特開2008-202999(JP,A)
【文献】特開平05-047863(JP,A)
【文献】特開2002-277485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042265(US,A1)
【文献】特開2011-037518(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1033992(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々デバイスが載置される複数の載置部が設けられ、当該載置部の所定位置にデバイスを位置決めする位置決め壁が形成された下側ベースと、
長手方向における一端側に前記下側ベースに固定された固定部と、他端部にデバイスを押圧する押圧部と、前記固定部と前記押圧部との間に下向きの押圧により長手方向に弾性伸長可能な板バネ部とが設けられた複数の押圧部材と、
前記下側ベースの上方に所定の間隔を空けて対向配置され、外力によって当該下側ベース側に移動することにより、複数の前記押圧部材の前記板バネ部をそれぞれ下方へ押圧する上側ベースと、を備え、
前記板バネ部が前記上側ベースに押圧されて伸長することで、前記押圧部がデバイス側へ移動し、前記位置決め壁との間でデバイスを挟持する検査治具。
【請求項2】
前記下側ベースは、デバイスの下面を支持するベース部と、前記ベース部の上面に積層される枠状プレートとを備え、
前記枠状プレートは、前記ベース部の上面に複数の前記載置部を区画する載置孔が形成され、前記載置孔の側壁が前記位置決め壁を構成する請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
前記枠状プレートは、前記押圧部を収容して前記載置部から前記押圧部材の長手方向に沿って延びる通路を前記ベース部の上面に区画する長孔が形成されている請求項2に記載の検査治具。
【請求項4】
前記枠状プレートの上面に積層され、前記通路の上面の一部を閉塞する上側プレートを備える請求項3に記載の検査治具。
【請求項5】
前記板バネ部は、長手方向における中央部が前記下側ベースと離間するように湾曲したアーチ状をなしている請求項1~4のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項6】
前記位置決め壁は、互いに直交する第1壁面と第2壁面とを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項7】
前記押圧部材の長手方向が、前記第1壁面及び前記第2壁面の法線方向に対して傾斜している請求項6に記載の検査治具。
【請求項8】
前記押圧部は、デバイスを第1壁面側へ押圧する第1押圧片と、デバイスを第2壁面側へ押圧する第2押圧片とを含む請求項6又は7に記載の検査治具。
【請求項9】
前記押圧部の先端部は、二股状に分岐し、一方の先端部に前記第1押圧片が設けられ、他方の先端部に前記第2押圧片が設けられている請求項8に記載の検査治具。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記押圧部と前記板バネ部との間に、長手方向の押圧力を受けて弾性的に変形する波形状部を有する請求項1~9のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項11】
複数の前記押圧部材は、第1の方向に間隔をあけて互いに平行に配置された複数の前記押圧部材からなる第1の押圧部材群と、第1の方向に間隔をあけて互いに平行に配置された複数の前記押圧部材からなる第2の押圧部材群と、から構成され、
前記第2の押圧部材群は、前記第1の押圧部材群から第1の方向に対して垂直な第2の方向へずれた位置であって、前記第2の押圧部材群を構成する複数の前記押圧部材が挟持するデバイスの位置が、前記第1の押圧部材群を構成する複数の前記押圧部材が挟持するデバイスの位置と第2の方向に重なるように、前記下側ベースに設けられている請求項1~10のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項12】
前記押圧部と前記位置決め壁との間で挟持されたデバイスと接触する複数のプローブ針が設けられたプローブユニットと、前記上側ベースの上側に配置され前記プローブユニットが取り付けられたプローブベースと、前記プローブベースの上下方向への移動を案内するガイド部を備える請求項1~11のいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項13】
前記プローブユニットは、分割して前記プローブベースに固定されている請求項12に記載の検査治具。
【請求項14】
前記ガイド部が前記下側ベースに固定されている請求項12又は13に記載の検査治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスを一括して所定位置に位置決め固定する検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスを同時に検査するために、複数のデバイスを一括して所定位置に位置決め固定する検査治具が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の検査治具では、上側プレートと枠状プレートと下側プレートとが順次積層配置され、上側プレートおよび下側プレートの少なくとも一方にワークが挿入される孔が形成されている。可動プレートは、上側プレートおよび下側プレートに形成された孔に挿入されたワークを収容可能とする収容可能位置と、収容されたワークを押さえて固定する固定位置との間を移動可能なように枠状プレートの内側に設けられている。そして、可動プレートがバネ部材によって固定位置に付勢され孔に挿入されたワークを保持する。
【0004】
しかしながら、特許文献1の検査治具では、1枚の可動プレートがバネ部材から付勢力を受けて複数のデバイスを押圧するため、デバイスを収容する位置によって押圧力にバラツキが発生しやすく、デバイスが小さい場合や一度に多数のデバイスを固定する場合に全てのデバイスを所定位置に安定的に固定することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、デバイスを押圧する押圧力にバラツキが発生しにくく、複数のデバイスを安定的に所定位置に固定することができる検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる検査治具は、各々デバイスが載置される複数の載置部が設けられ、当該載置部の所定位置にデバイスを位置決めする位置決め壁が形成された下側ベースと、長手方向における一端側に前記下側ベースに固定された固定部と、他端部にデバイスを押圧する押圧部と、前記固定部と前記押圧部との間に下向きの押圧により長手方向に弾性伸長可能な板バネ部とが設けられた複数の押圧部材と、前記下側ベースの上方に所定の間隔を空けて対向配置され、外力によって当該下側ベース側に移動することにより、複数の前記押圧部材の前記板バネ部をそれぞれ下方へ押圧する上側ベースと、を備え、前記板バネ部が前記上側ベースに押圧されて伸長することで、前記押圧部がデバイス側へ移動し、前記位置決め壁との間でデバイスを挟持するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のデバイスを一括して固定する場合であっても、デバイスを押圧する押圧力にバラツキが発生しにくく、複数のデバイスを安定的に所定位置に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる検査治具の一部を分解した斜視図。
【
図3】上側ベースを取り除いたクランプ部の要部拡大斜視図
【
図5】押圧部が収容可能位置に配置された検査治具の要部拡大断面図
【
図6】押圧部が収容可能位置に配置されたクランプ部の要部拡大平面図
【
図7】押圧部が固定位置に配置された検査治具の要部拡大断面図
【
図8】押圧部が固定位置に配置されたクランプ部の要部拡大平面図
【
図10】プローブ針がデバイスに接触した状態を示す検査治具の要部拡大断面図
【
図11】本発明の変更例にかかるクランプ部の要部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
なお、以下の説明において、上下方向とはデバイスDを載置する面を鉛直上向きに配置したときの方向を示す。第1の方向、第2の方向、上下方向とは、それぞれ互い垂直な方向であって、各図において矢符X、Y、Zで示す方向である。
【0012】
(1)検査治具1の全体構成
検査治具1は、
図1に示すように、複数のデバイスDを一括して所定位置に位置決め固定するクランプ部10と、クランプ部10の上方に配置されたコンタクト部70とを備える。検査治具1は、不図示の駆動機構によってコンタクト部70を下方へ移動させて、クランプ部10に固定された複数のデバイスDの上面に設けられた電極にプローブ針82を接触させて電気接続する。
【0013】
(2)クランプ部10
クランプ部10は、
図2に示すように、下側ベース12と、下側ベース12の上側に設けられた上側ベース14と、下側ベース12と上側ベース14の間に挟まれた押圧部材16とを備える。
【0014】
(3)下側ベース12
下側ベース12は、
図3に示すように、デバイスベース18と、デバイスベース18の上面に積層された薄い平板状の枠状プレート20と、枠状プレート20の上面に積層された薄い平板状の上側プレート22とを備える。枠状プレート20及び上側プレート22は複数のネジなどの固定具によってデバイスベース18に固定され、デバイスベース18が枠状プレート20及び上側プレート22を支持する。
【0015】
なお、デバイスベース18、枠状プレート20及び上側プレート22は、ステンレス(SUS304,SUS430)などの金属など任意の材料で形成することができる。また、デバイスベース18、枠状プレート20及び上側プレート22は、全て同一の材料で形成してもよく、また、異なる材料で形成してもよい。
【0016】
下側ベース12の上側には、
図2~
図6に示すように、平面視略正方形状のデバイスDを載置する載置部24が複数設けられている。載置部24に載置されたデバイスDは、押圧部材16によって載置部24の所定位置に位置決めされた状態で固定される。
【0017】
好ましい態様として、複数の載置部24は、第1の方向Xに沿って一定の間隔をあけて設けられた複数の載置部24からなる第1の載置部群24Aと第2の載置部群24Bとから構成されている。第2の載置部群24Bは、第1の載置部群24Aから第2の方向Yへ所定距離ずれた位置であって、第2の載置部群24Bを構成する複数の載置部24の位置が、第1の載置部群24Aを構成する複数の載置部24の位置と第2の方向Yに重なるように下側ベース12に配置されている。
【0018】
枠状プレート20は、複数の載置部24に対応する位置に設けられた複数の載置孔26と、各載置孔26に接続された長孔28と、収容孔29が形成されている。
【0019】
載置孔26は、デバイスDを受け入れ可能なデバイスDより大きい略矩形状の孔からなり、デバイスベース18の上面に複数の載置部24を区画する。載置孔26の内側壁は、載置部24に載置されたデバイスDと接触してデバイスDを位置決めする位置決め壁30を構成する。
【0020】
長孔28は、位置決め壁30を構成する第1壁面30a及び第2壁面30bの法線方向に対して傾斜する方向(以下、この方向を「長手方向」ということもある)Lに延びる細幅の孔からなる。長孔28は、後述する押圧部材16の押圧部42を収容可能なように、押圧部42より幅寸法(長手方向Lに垂直な方向の長さ)が大きく設けられている。
本実施形態では、長孔28の延びる長手方向Lが第1壁面30a及び第2壁面30bに対して等しい角度(つまり、45度)となっている。長孔28は、押圧部材16の押圧部42を収容し、押圧部42が長孔28の長手方向Lへ移動する通路をデバイスベース18の上面に区画する。
【0021】
好ましい態様として、
図3及び
図6に示すように、位置決め壁30は互いに直交する第1壁面30aと第2壁面30bであってもよい。また、複数の載置孔26に設けられた各第1壁面30aは互いに平行に設けられ、各第2壁面30bも互いに平行に設けられてもよい。また、複数の載置孔26に接続された長孔28は互いに平行に設けられてもよい。
【0022】
長孔28の長手方向Lの一方の端部に載置孔26が連結されており、押圧部42が長孔28から載置孔26へ進入可能になっている。
【0023】
収容孔29は、長孔28の長手方向Lの他方の端部から長手方向Lへ離れた位置に設けられた孔で、その内部に押圧部材16が収納されている。
【0024】
枠状プレート20の上面に積層された上側プレート22は、枠状プレート20に設けられた載置孔26、長孔28の一部分、及び収容孔29のそれぞれと上下に連通する載置連通孔32、導入孔34及び収容連通孔36が設けられている。
【0025】
導入孔34は載置連通孔32から長手方向Lに離れた位置に設けられており、導入孔34と載置連通孔32との間において、上側プレート22が枠状プレート20に設けられた長孔28の上面の一部を閉塞している。
【0026】
(4)押圧部材16
押圧部材16は、細幅帯状の部材であり、複数の載置部24に対応してそれぞれに1つずつ設けられている。複数の押圧部材16は、その長手方向Lが下側ベース12に設けられた長孔28の長手方向Lと平行に配置されている。
【0027】
具体的には、
図3に示すように、押圧部材16は、長手方向Lの一端側に設けられた固定部40と、長手方向Lの他端側に設けられた押圧部42と、固定部40と押圧部42との間に設けられた板バネ部44とを備える。押圧部材16を構成する固定部40、押圧部42及び板バネ部44は、ステンレス(SUS304)などの適度なバネ性を有する金属から一体に形成されている。
【0028】
固定部40は、下側ベース12に設けられた収容孔29及び収容連通孔36に設けられている。固定部40は、収容連通孔36を上方から覆うようにデバイスベース18に固定された押さえ板46とデバイスベース18の間で挟持され、デバイスベース18に対して固定される。
【0029】
板バネ部44は、長手方向Lにおける中央部が下側ベース12から離間するように湾曲したアーチ状をなしている。板バネ部44は、弾性力に抗して下方へ押圧されると長手方向Lに弾性伸長するようになっている。押圧部材16は、固定部40において長手方向Lの一端側がデバイスベース18に固定されているため、板バネ部44が弾性力に抗して下方へ押圧され長手方向Lに伸長すると、押圧部42が枠状プレート20の長孔28によって区画された通路を通って長手方向Lへ移動して載置孔26へ進入する。
【0030】
押圧部42は、長手方向Lへ移動しながら載置孔26へ進入すると、載置孔26に収容されたデバイスDに当接し、デバイスDを第1壁面30a及び第2壁面30bに押し付ける。これにより、デバイスDが、第1壁面30a及び第2壁面30bと押圧部42との間で挟持され、第1壁面30a及び第2壁面30bによって位置決めされた状態で固定される。
【0031】
好ましい態様として、複数の押圧部材16は、第1の載置部群24Aに対応して設けられた複数の押圧部材16からなる第1の押圧部材群16Aと、第2の載置部群24Bに対応して設けられた複数の押圧部材16からなる第2の押圧部材群16Bとから構成されている。第2の押圧部材群16Bを構成する複数の押圧部材16によって挟持されたデバイスDが、第1の押圧部材群16Aを構成する複数の押圧部材16によって挟持されたデバイスDと第2の方向Yに重なるように、複数の押圧部材16が下側ベース12に配置されている。
【0032】
好ましい態様として、
図3、
図6及び
図8に示すように、押圧部42は先端部が二股状に分岐し、外力を受けて互いに離隔するように弾性変形する一対の押圧片42-1、42-2が形成されてもよい。
【0033】
このような一対の押圧片42-1、42-2が載置孔26へ進入すると、
図8に示すように、一対の押圧片42-1,42-2の間に形成された隙間に載置部24に載置されたデバイスDの角部が嵌まる。そして、一方の押圧片42-1が第1壁面30aに平行なデバイスDの側面に接触してデバイスDを第1壁面30aへ押圧し、他方の押圧片42-2が第2壁面30bに平行なデバイスDの側面に接触してデバイスDを第2壁面30bへ押圧する。
【0034】
このような二股状に分岐した一対の押圧片42-1、42-2では、一対の押圧片42-1、42-2によるデバイスDの押圧力が大きくなるにつれて、一対の押圧片42-1,42-2の先端が第1壁面30a及び第2壁面30bの滑りながら、一対の押圧片42-1,42-2の隙間が広がるように弾性変形することで、デバイスDに過剰な押圧力が作用することを防止する。
【0035】
(5)上側ベース14
下側ベース12の上側に配置された上側ベース14は、ステンレス(SUS304,SUS430)などの金属で形成された平板状の部材である。
図1、
図2及び
図5に示すように、上側ベース14の下面には、下側ベース12に設けられた全ての押圧部材16の板バネ部44と接触する加圧面56と、押圧部材16と接触しない位置において加圧面56より下方へ突出するストッパ部58とを備える。
【0036】
上側ベース14は、加圧面56に板バネ部44を接触させた状態で、第1の方向Xに間隔をあけて設けられた連結ピン48及び固定具52や連結具49を介して下側ベース12に連結されている。
【0037】
連結ピン48は、
図2に示すように、軸部48aと、軸部48aの上側に設けられた雄ネジ部48bと、雄ネジ部48bの上側に設けられた先端軸部48cとが、下側ベース12より上方へ突出するように下側ベース12に固定されている。連結ピン48は、上側ベース14に設けられた挿通孔50に挿通され、雄ネジ部48bに固定具52が螺合する。
【0038】
連結具49は、雄ネジ部49aと、雄ネジ部49aの上側に設けられた軸部49bと、軸部49bの上側に設けられた頭部49cとを備える。連結具49は、上側ベース14に設けられた挿通孔54に挿通され、雄ネジ部49aが下側ベース12に設けられた雌ネジ部55に螺合する。
【0039】
連結ピン48及び連結具49を介して下側ベース12の上方に連結された上側ベース14は、上側ベース14に設けられた挿通孔50及び挿通孔54が連結ピン48の軸部48a及び連結具49の軸部49bにそれぞれガイドされながら上下動可能に設けられている。また、連結ピン48の先端軸部48cが上側ベース14の上面より上方へ突出する。
【0040】
このような構成のクランプ部10は、
図5に示すような押圧機構90によって上側ベース14が押圧されていない状態では、加圧面56に当接する複数の板バネ部44によって、ストッパ部58が下側ベース12より上方に離れた位置に上側ベース14が配置される。この状態では、
図6に示すように、押圧部材16の押圧部42が、載置孔26の第1壁面30a及び第2壁面30bから充分に離れた位置(以下、この位置を「収容可能位置」ということもある)にあり、載置部24にデバイスDを載置したり、載置部24に載置されたデバイスDを取り出すことができる。
【0041】
そして、クランプ部10は、
図7に示すように押圧機構90によって上側ベース14が下方へ押圧されると、上側ベース14の加圧面56が複数の押圧部材16の板バネ部44を下方へ押圧し弾性変形させる。上側ベース14は、このように板バネ部44を弾性変形させながらストッパ部58が下側ベース12の上面に接触するまで下方へ移動する。このような板バネ部44の弾性変形によって、押圧部42は、
図8に示すようにデバイスDを第1壁面30a及び第2壁面30bに押し付けて固定する位置(以下、この位置を「固定位置」ということもある)まで長手方向Lへ移動する。
【0042】
そして、クランプ部10は、押圧機構90による上側ベース14の押圧を解除すると、押圧部材16の板バネ部44の弾性力によって上側ベース14が上方へ移動し、押圧部材16の押圧部42が
図6に示すような収容可能位置へ移動する。
【0043】
なお、本実施形態では、複数の押圧部材16の板バネ部44の弾性力によって上側ベース14を支持する場合について説明したが、板バネ部44の弾性力を補うコイルバネなどの弾性体を下側ベース12と上側ベース14との間に設け、板バネ部44及び当該弾性体によって上側ベース14を支持してもよい。
【0044】
(6)コンタクト部70
コンタクト部70は、
図1及び
図9に示すように、回路基板74と、回路基板74の下面に積層された絶縁板75と、絶縁板75の下面に積層されたプローブベース76と、プローブベース76の下面に設けられたプローブユニット78と、押圧機構90とを備える。
【0045】
回路基板74は不図示の検査装置に接続され、検査装置から供給される検査信号をプローブユニット78へ伝送する。
【0046】
プローブベース76は、回路基板74やプローブユニット78を支持する平板状の部材である。プローブベース76は、クランプ部10の上側ベース14の上側に配置され、プローブベース76の下面にプローブユニット78が設けられている。プローブユニット78のプローブ針82は、押圧部材16の押圧部42によって載置部24の所定位置に位置決め固定されたデバイスDの電極と上下に対向する。
【0047】
絶縁板75及びプローブベース76は、下側ベース12のデバイスベース18に固定された連結ピン48の先端軸部48cが挿入されるガイド孔77a、77bが設けられている。ガイド孔77a、77bが連結ピン48の先端軸部48cを摺動することでプローブベース76の上下方向への移動が案内される。つまり、連結ピン48の先端軸部48cは、不図示の駆動装置によってコンタクト部70が上下方向に移動する際に生じる下側ベース12に対する水平方向(第1の方向X及び第2の方向)への位置ずれを防ぐガイド部として機能する。
【0048】
なお、本実施形態のように、多数のプローブ針82を並べて設けた第1の方向Xに複数の連結ピン48及び複数のガイド孔77a、77bを並べて設ける場合、1のガイド孔77aを先端軸部48cの摺動に必要なクリアランスのみが形成されるよう形成し、残りのガイド孔77bを第2の方向Yに先端軸部48cの摺動に必要なクリアランスのみが形成され、第1の方向Xに先端軸部48cの摺動に必要なクリアランスより大きい隙間ができるように形成してもよい。つまり、1のガイド孔77aと先端軸部48cとの間に形成される隙間や、第2の方向Yに他のガイド孔77bと先端軸部48cとの間に形成される隙間に比べて、第1の方向Xに他のガイド孔77bと先端軸部48cとの間に形成される隙間が大きく設けられてもよい。このようにガイド孔77a、77bを形成することで、コンタクト部70が高温雰囲気に曝され熱膨張することがあっても、下側ベース12に対するコンタクト部70の水平方向の位置ずれを防ぎつつ、コンタクト部70をスムーズに上下動させることができる(
図9参照)。
【0049】
プローブベース76は、ステンレス(SUS304,SUS430)などの金属など任意の材料で形成することができるが、デバイスベース18と同一の材料で形成することが好ましい。また、プローブベース76よりプローブユニット78は熱膨張係数の低い材料によって形成されていることが好ましい。
【0050】
プローブユニット78は、プローブベース76の下面に重ねて設けられた小基板80と、押圧部材16の押圧部42と第1壁面30a及び第2壁面30bとの間で挟持されたデバイスDの電極に接触するプローブ針82と、プローブ針82を保持する保持部材84とを備える。
【0051】
小基板80は、プローブベース76及び絶縁板75を貫通するスルーホール86を介して回路基板74に接続されている。小基板80は、下方へ突出するプローブ針82が設けられており、回路基板74とプローブ針82とを電気的に接続する。
【0052】
プローブ針82は、銅や銅合金等の導電性の金属からなる棒状の部材であり、下側ベース12に設けられた複数の載置部24に対応して複数(載置部24と同数)設けられている。本実施形態では、第1の載置部群24Aに対応して第1の方向Xに沿って一定の間隔をあけて複数のプローブ針82が設けられ、これらのプローブ針82と第2の方向Yへ所定距離ずれた位置に第2の載置部群24Bに対応して第1の方向Xに沿って一定の間隔をあけて複数のプローブ針82が設けられている。
【0053】
保持部材84は、セラミックスや合成樹脂など絶縁性の材料からなり、小基板80から下方に突出するプローブ針82を保持する。
【0054】
好ましい態様として、プローブユニット78は、多数のプローブ針82を並べて設けた第1の方向Xに分割してプローブベース76に固定されてもよい。つまり、プローブユニット78を構成する小基板80及び保持部材84が第1の方向Xに分割されている。なお、本実施形態では、
図9に示すように、第1の方向Xに分割された小基板80及び保持部材84にそれぞれ複数(5つ)のプローブ針82が設けられているが、プローブ針82毎に小基板80及び保持部材84が分割されていてもよい。
【0055】
押圧機構90は、
図5及び
図7に示すように、回路基板74、絶縁板75、及びプローブベース76を貫通する孔部91と、孔部91に挿入された押圧棒94と、押圧棒94を上方へ付勢する付勢バネ96とを備える。孔部91はクランプ部10の上側ベース14と上下に対向する位置に設けられており、押圧機構90に外力が作用していない状態では、
図5に示すように、押圧棒94が付勢バネ96によって上側ベース14から上方へ離れた位置に保持されている。
【0056】
このような押圧機構90は、押圧棒94が下方に押圧されると付勢バネ96の付勢力に抗して下方へ移動して上側ベース14を下方へ押圧する。これにより、ストッパ部58が下側ベース12の上面に接触するまで上側ベース14が下方へ移動する。
【0057】
(7)検査治具1の動作
図5に示すように、コンタクト部70がクランプ部10の上方に離れた位置にあり、上側ベース14のストッパ部58が下側ベース12より上方に離れた位置に配置され、押圧部材16の押圧部42が収容可能位置に配置された状態で、載置部24にデバイスDを載置する。
【0058】
複数の載置部24にデバイスDを載置した後、押圧機構90の押圧棒94を下方へ押圧して、
図7に示すように、ストッパ部58が下側ベース12の上面に接触するまで上側ベース14が下方へ移動させる。このように上側ベース14が下方へ移動することで、押圧部材16の押圧部42が収容可能位置から固定位置へ移動して載置部24に載置されたデバイスDを第1壁面30a及び第2壁面30bに押し付けて固定する。
【0059】
デバイスDを固定した後、押圧機構90が上側ベース14を下方へ押圧した状態を維持しつつ、
図10に示すようにコンタクト部70が下方へ移動することで、デバイスDの電極にプローブ針82を接触させて電気接続する。
【0060】
(8)効果
本実施形態の検査治具1では、複数の載置部24に対応して複数の押圧部材16が設けられているため、下側ベース12に設けられた載置部24の位置によることなく一定の押圧力でデバイスDを保持することができ、複数のデバイスDを一度に安定的に所定位置に固定することができる。
【0061】
本実施形態の検査治具1では、押圧部材16の板バネ部44が下側ベースと離間するように湾曲したアーチ状をなしており、平坦な加圧面56によって複数の押圧部材16の板バネ部44を一度に押圧することで、全ての板バネ部44を均一に下方へ押圧することができ、各載置部24において一定の押圧力でデバイスDを保持することができる。そのため、上側ベース14を下方へ移動させるといった簡便な機構によって、複数のデバイスDを一度に安定的に固定することができる。
【0062】
本実施形態の検査治具1では、デバイスベース18の上面に設けられた枠状プレート20に載置孔26が設けられており、載置孔26の周壁が位置決め壁30を構成しているため、位置決め壁30を精度良く設けることができ、デバイスDを所望の位置に精度よく固定することができる。
【0063】
本実施形態の検査治具1では、載置部24から長手方向Lに沿って延びる通路をデバイスベース18の上面に区画する長孔28が枠状プレート20に形成され、押圧部材16の押圧部42が長孔28によって形成された通路に収容されているため、押圧部42が不所望な移動をすることがなく、デバイスDを所望の位置に精度よく固定することができる。
【0064】
本実施形態の検査治具1では、長孔28によりデバイスベース18の上面に形成された通路の上面の一部が上側プレート22によって閉塞されているため、押圧部42が長孔28から脱出するような不所望な移動をすることがなく、デバイスDを所望の位置に精度よく固定することができる。
【0065】
本実施形態の検査治具1では、第1壁面30a及び第2壁面30bの法線方向に対して傾斜する長手方向LにデバイスDを押圧して第1壁面30a及び第2壁面30bに接触させて位置決めするため、押圧部42によってデバイスDを一方向へ押圧するだけで、第1の方向X及び第2の方向Yに位置決めすることができる。
【0066】
本実施形態の検査治具1では、押圧部材16の押圧部42が二股状に分岐し、一方の先端部に設けられた押圧片42-1がデバイスDを第1壁面30a側へ押圧し、他方の先端部に設けられた押圧片42-2がデバイスDを第2壁面30b側へ押圧するため、デバイスDに過剰な押圧力が作用することを防止することができる。
【0067】
本実施形態の検査治具1では、第2の押圧部材群16Bを構成する複数の押圧部材16によって挟持されたデバイスDが、第1の押圧部材群16Aを構成する複数の押圧部材16によって挟持されたデバイスDと第2の方向Yに重なるように、複数の押圧部材16が下側ベース12に配置されている。これにより、搬送装置によって複数の載置部24にデバイスDを載置したり、載置されたデバイスDを取り出したりする場合に、搬送装置の移動領域を小さくすることができ、検査治具1を組み込む検査装置を小型化することができる。
【0068】
本実施形態の検査治具1では、複数のプローブ針82が設けられたプローブユニット78が、プローブ針82を並べて設けた第1の方向Xに分割してプローブベース76に固定されているため、検査治具1を高温雰囲気に曝す場合であっても、小基板80や保持部材84の熱膨張によってプローブ針82の位置が変化しにくくなり、載置部24に固定されたデバイスDにプローブ針82を接触させることができる。
【0069】
本実施形態の検査治具1では、コンタクト部70の上下方向への移動を案内する連結ピン48が下側ベース12に固定されているため、検査治具1を高温雰囲気に曝す場合であっても、下側ベース12に生じた熱膨張に追従して連結ピン48の位置が変化し、載置部24に固定されたデバイスDにプローブ針82が接触するようにコンタクト部70を上下動させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下に変更例を列挙する。
【0071】
(変更例)
次に上記した実施形態の変更例について説明する。上記した実施形態では、押圧部42の先端部が二股状に分岐し、外力を受けて互いに離隔するように弾性変形する場合について説明したが、
図11に示すように、押圧部42と板バネ部44との間に、長手方向Lの押圧力を受けて弾性的に変形する波形状部59を設けてもよい。
【0072】
このような場合であっても、押圧部42によるデバイスDの押圧力が大きくなるにつれて、波形状部59が長手方向Lに弾性変形することでデバイスDに過剰な押圧力が作用することを防止する。
【0073】
また、上記した実施形態では、押圧機構90の押圧棒94によって上側ベース14を下方へ移動させることで、押圧部材16の板バネ部44を下方へ押圧する場合について説明したが、本発明において上側ベース14を下方へ移動させる機構としては種々の機構を適用することができる。例えば、連結ピン48の雄ネジ部48bに対して固定具52を締付方向へ回転することによって上側ベース14を押し下げてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…検査治具、10…クランプ部、12…下側ベース、14…上側ベース、16…押圧部材、16A…第1の押圧部材、16B…第2の押圧部材、18…デバイスベース、20…枠状プレート、22…上側プレート、24…載置部、24A…第1の載置部群、24B…第2の載置部群、26…載置孔、28…長孔、29…収容孔、30…位置決め壁、30a…第1壁面、30b…第2壁面、40…固定部、42…押圧部、44…板バネ部、46…押さえ板、48…連結ピン、48a…軸部、48b…雄ネジ部、48c…先端軸部、56…加圧面、58…ストッパ部、70…コンタクト部、72…プローブ針、74…回路基板、75…絶縁板、76…プローブベース、77a…ガイド孔、77b…ガイド孔、78…プローブユニット、80…小基板、82…プローブ針、84…保持部材、90…押圧機構