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  • 特許-光硬化性材料及び画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】光硬化性材料及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20241030BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241030BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241030BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G09F9/00 313
C08F2/44 B
C08F290/06
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021137824
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023031994
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友部 彬
(72)【発明者】
【氏名】若色 将克
(72)【発明者】
【氏名】中田 芳昭
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140601(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110666(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039289(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/168173(WO,A1)
【文献】特開2014-162853(JP,A)
【文献】特開2014-148606(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046182(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/148506(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0302641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
C08F 2/44
C08F 290/06
C09J 4/02
C09J 11/06
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該透明樹脂層を形成するための光硬化性材料であって、以下の成分(a)~成分(c):
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分;
成分(b)可塑剤成分;及び
成分(c)光重合開始剤成分
を含有し、
成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下である光硬化性材料。
【請求項2】
成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物は、(メタ)アクリル酸エステル成分100質量部に、成分(c)の光重合開始剤成分0.5質量部~1.0質量部を混合し、光硬化させたものである請求項1記載の光硬化性材料。
【請求項3】
成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分が、1種以上の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと1種以上の単官能(メタ)アクリレートモノマーとを含有する請求項1又は2記載の光硬化性材料。
【請求項4】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが、2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであり、単官能(メタ)アクリレートモノマーがヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーである請求項3記載の光硬化性材料。
【請求項5】
成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分が含有する各オリゴマー及び各モノマーの光硬化物相互間の屈折率の差が0.02以下である請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項6】
成分(b)の可塑剤成分が複数の可塑剤を含有している場合、成分(b)の可塑剤成分の屈折率は、複数の可塑剤の各可塑剤について、屈折率にその存在量(質量部)を乗じて数値を求め、各可塑剤で求められた数値をすべて足し合わせて得られた数値を、複数の可塑剤の合計の存在量で除することにより得られる数値である請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項7】
成分(b)の可塑剤成分が、屈折率RIaの第1可塑剤と屈折率RIbの第2可塑剤とを含有し、第1可塑剤の存在量がW1質量部であり、第2可塑剤の存在量がW2質量部であるときの成分(b)の可塑剤成分の屈折率は以下の式
【数1】
に従って算出される請求項1~6のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項8】
成分(b)の可塑剤成分が複数の可塑剤を含有している場合、複数の可塑剤の相互間の屈折率差が、0.03以下である請求項1~7のいずれかに記載の光硬化性材料。
【請求項9】
該透明樹脂層が、画像表示パネルの表示部に対応した位置に存在するフィル部とその外周を囲むダム部とから構成されている場合に当該ダム部を形成するための請求項1~8のいずれかに記載の光硬化性材料は、更に成分(d)としてフィラーを含有する光硬化性材料。
【請求項10】
画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置であって、当該透明樹脂層が、請求項1~9のいずれかに記載の光硬化性材料の光硬化物である画像表示装置。
【請求項11】
該透明樹脂層が、画像表示パネルの表示部に対応した位置に存在するフィル部とその外周を囲むダム部とから構成されている場合に、当該ダム部を形成するための請求項1~9のいずれかに記載の光硬化性材料における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下であり、当該フィル部を形成するための請求項1~9のいずれかに記載の光硬化性材料における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下である画像表示装置。
【請求項12】
ダム部における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、フィル部における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率との差、及びダム部における成分(b)の可塑剤成分の屈折率と、フィル部における成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差が、それぞれ0.02以下である請求項11記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性材料及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像表示装置は、前面パネルと画像表示パネルとが光硬化性樹脂組成物の硬化物である透明樹脂層を介して積層された構造を有している。この構造は、通常、画像表示パネルの外縁に、ダム剤として機能する光硬化性樹脂組成物を塗布して光硬化性ダム部を形成し、続いて、光硬化性ダム部に囲まれた領域にフィル剤として機能する同じ又は別の光硬化性樹脂組成物を塗布して光硬化性フィル部を形成した後、画像表示パネルと前面パネルとを貼り合わせ、光硬化性ダム部と光硬化性フィル部とに紫外線を照射して光硬化させることにより透明樹脂層を形成するという工法(所謂ダムフィル工法)により作成されている(特許文献1)。
【0003】
このようなダムフィル工法で作成された画像表示装置の透明樹脂層のダム部とフィル部とにおいては、使用された光硬化性樹脂組成物の成分の種類や配合割合の相違のために、あるいはダム部とフィル部との間で低分子物質のマイグレーションが発生するために、ダム部とフィル部との間で屈折率差が生じてしまい、それらの境界線をいわゆるニットラインとして視認させてしまうことが懸念されている。
【0004】
このため、特許文献1では、ダム部とフィル部との間にニットラインが視認できないようにするために、ダム剤として機能する硬化性樹脂組成物とフィル剤として機能する硬化性樹脂組成物とをそれぞれ調整する際に、両者の400nm透過率差を5%以下、屈折率差を0.01%以下、ヘイズ差を0.2%以下となるように調整することが推奨されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/168173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像表示装置の透明樹脂層におけるダム部とフィル部との間のニットラインについては、硬化後の透明樹脂層における視認性が問題になる。
【0007】
しかし、特許文献1では、硬化前のダム剤として使用する硬化性樹脂組成物と、硬化前のフィル剤として使用する硬化性樹脂組成物とが接触した場合の境界線の視認性を問題としており、硬化後の透明樹脂層におけるニットラインについて検討したものとは言えない。しかも、特許文献1では、硬化前のダム剤として使用する硬化性樹脂組成物と、硬化前のフィル剤として使用する硬化性樹脂組成物との間の“400nm透過率差”と“屈折率差”と“ヘイズ差”とをそれぞれ所定数値を超えないことを推奨するだけで、どのように構成成分を選択すればよいのか、具体的な指標は示されていない。
【0008】
本発明の目的は、以上の従来の課題を解決しようとすることであり、画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の製造において、透明樹脂層を形成するための光硬化性材料をダム剤もしくはフィル剤として使用した際に、硬化後の透明樹脂層のダム部とフィル部との間にニットラインが視認され難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該透明樹脂層のダム部及び/又はフィル部を形成するための光硬化性材料を、特定の光硬化性成分に加えて可塑剤と光重合開始剤とから構成し、当該光硬化性成分の光硬化物の屈折率と、可塑剤の屈折率との差を、所定の数値以下とすることにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該透明樹脂層を形成するための光硬化性材料であって、以下の成分(a)~成分(c):
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分;
成分(b)可塑剤成分;及び
成分(c)光重合開始剤成分
を含有し、
成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下である光硬化性材料を提供する。
【0011】
また、本発明は、画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置であって、当該透明樹脂層が、上述の本発明の光硬化性材料の光硬化物である画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性材料は、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分と、成分(b)可塑剤成分と、成分(c)光重合開始剤成分とを含有し、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、成分(b)可塑剤成分の屈折率との差を0.02以下としている。一般に、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分中のマイグレーションし易い成分が、透明樹脂層のダム部及びフィル部の一方から他方へマイグレーションした場合には、ダム部とフィル部との間の境界線がニットラインとして視認されるようになることが懸念される。前述したように、本発明の光硬化性材料においては、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物と成分(b)可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下と非常に小さくなっている。従って、透明樹脂層のダム部とフィル部との境界線をニットラインとして視認され難くすることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、画像表示装置の一態様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の光硬化性材料について詳細に説明する。
【0015】
本発明の光硬化性材料は、図1の画像表示装置10の透明樹脂層5を作成するために好ましく用いられる。ここで、画像表示装置10は、画像表示パネル1と前面パネル2とが、ダム部3とダム部3で囲まれたフィル部4とからなる透明樹脂層5を介して積層された構造を有し、通常、透明樹脂層5側の画像表示パネル1の表面には偏光板6が配置されている。本発明の光硬化性材料は、画像表示装置10における透明樹脂層5のダム部3及びフィル部4の双方の形成に適用してもよく、ダム部3又はフィル部4のいずれかの形成に適用してもよい。なお、本発明の光硬化性材料を適用できる画像表示装置は、図1の態様に限定されるものではない。
【0016】
<光硬化性材料の屈折率>
本発明の光硬化性材料は、光重合成分である成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分と、成分(b)可塑剤成分と、成分(c)光重合開始剤成分とを含有する。本発明の光硬化性材料は、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、成分(b)可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下、好ましくは0.015以下に調整されている材料である。
【0017】
なお、本発明の光硬化性材料の粘度は、低すぎると材料の塗工の際に、意図した領域を超えて濡れ広がり易くなり、塗布領域制御が困難になる傾向があり、高すぎると材料の濡れ広がり性が低下し、材料の塗工が困難になる傾向があるので、好ましくは25℃で1000~8000mPa・s、より好ましくは2000~7000mPa・sである。粘度は一般的な回転粘度計(コーンプレートレオメータ、25℃、コーンC35/2、回転数10rpm)を用いて測定することができる。
【0018】
前述したように、硬化前の成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分中のマイグレーションし易い成分が、ダム部及びフィル部の一方から他方へマイグレーションしたとしても、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下と非常に小さいため、光硬化後の透明樹脂層のダム部とフィル部との境界線がニットラインとして視認され難くなる。
【0019】
(成分(a)の光硬化物の屈折率の測定)
屈折率の測定対象である成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物は、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分100質量部に、成分(c)光重合開始剤成分を0.5~1.0質量部で混合し、紫外線などの光照射により光硬化させたものである。なお、もう一方の屈折率の測定対象である成分(b)可塑剤成分については、硬化処理などの特別な前処理を施すことなく、そのまま屈折率を測定すればよい。なお、屈折率の測定対象の光硬化物が固体である場合、その屈折率の測定は、市販のアッベ式屈折率測定装置を用いて行うことができる。なお、屈折率の測定対象の光硬化物が高粘度液体である場合には、光屈折臨界角検出方式のデジタル屈折計を用いて行うことができる。
【0020】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化条件としては、FT-IR法で算出される硬化率が90%以上、好ましくは95%以上となるような条件を適宜選択することができる。一例として、メタルハライドランプで5000mJ/cm以上という硬化条件を挙げることができる。
【0021】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率の具体的な測定は、以下のように行うことができる。なお、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分が複数の成分を含有している場合には、複数の当該成分の混合物の光硬化物を測定することになる。なお、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率の調整は、(メタ)アクリル酸エステル成分として使用する(メタ)アクリル酸エステル類の種類と数、それぞれの配合割合を変化させることにより行うことができる。
【0022】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化は、その種類や重合開始剤の種類による重合形式に応じて、公知の手法に従って適宜実施することができる。光硬化は、0.3mm厚の成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分に対して、通常、メタルハライドランプが発する紫外線を、積算光量が3000~5000mJ/cmとなるように照射することで行うことができる。この場合、その光硬化物は、その全体の平均的な反応率(硬化率)が90%以上(好ましくは95%以上)となるように硬化させたものをいう。光硬化物全体の反応率は、例えば厚さ0.3mmに成膜した硬化物について測定した反応率を意味する。
【0023】
ここで、反応率とは、光硬化前の成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する、光硬化後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)で定義される数値である。反応率の数値が大きい程、反応がより進行していることを示す。具体的には、反応率は、光硬化前の光硬化性材料のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(X)と、光硬化後の光硬化性材料(光硬化層)のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(Y)とを、下記式に代入することにより算出することができる。
【0024】
【数1】
【0025】
(成分(b)の可塑剤成分の屈折率の測定)
可塑剤成分が単一成分である場合と、複数の可塑剤を含有している場合(合算屈折率)に分けて説明する。
【0026】
(成分(b)が単一の可塑剤成分のみ含有している場合の屈折率の具体的測定例)
可塑剤成分の屈折率は、可塑剤成分が、通常、高粘度液体なので、光屈折臨界角検出方式の市販のデジタル屈折計(例えば、ATAGO社のRX-5000α)のプリズム部に測定対象である可塑剤成分をセットして測定することができる。
【0027】
(成分(b)が複数の可塑剤を含有している場合の屈折率の具体的測定例)
上述したように、複数の可塑剤のそれぞれの屈折率Rを測定する。各可塑剤の屈折率Rにその存在量(質量部)Mを乗じて数値Aを求め、各可塑剤で求められた数値Aをすべて足し合わせて得られた数値Bを、複数の可塑剤の合計の存在量Cで除することにより得られる数値を屈折率とする。具体例として、成分(b)の可塑剤成分が2種類の可塑剤(第1可塑剤と第2可塑剤)を含有している場合、以下のように算出される。
【0028】
即ち、成分(b)の可塑剤成分が、屈折率RIaの第1可塑剤と屈折率RIbの第2可塑剤とを含有し、第1可塑剤の存在量がW1質量部であり、第2可塑剤の存在量がW2質量部である場合、成分(b)の可塑剤成分の屈折率は以下の式に従って算出される。
【0029】
【数2】
【0030】
以下、本発明の光硬化性材料の構成成分について、構成成分毎に説明する。
【0031】
<成分(a)>
本発明の光硬化性材料は、成分(a)として(メタ)アクリル酸エステル成分を含有する。ここで、“(メタ)アクリル酸エステル”という用語は、本発明においてはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを包含する。
【0032】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分は、1種以上の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと、1種以上の単官能(メタ)アクリレートモノマーとを含有することが好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する理由は、光硬化性材料から透明樹脂層を作成する場合に、光硬化性材料の成膜性を維持するためであり、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する理由は、光硬化性材料の塗布性や粘度を調整すると共に、上記のオリゴマーを含む透明樹脂層に良好な接着性を付与するためである。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、好ましくは100kHzで4.0以上の比誘電率を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。比誘電率が4.0未満であると、光硬化性材料の硬化物の透湿性が低くなりすぎる傾向がある。なお、比誘電率は、一般的なLCRメーターにより測定することができる。
【0034】
100kHzで4.0以上の比誘電率を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、多官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能ポリエステル系ウレタンオリゴマー、多官能ヒドロキシ基含有オリゴマー等を好ましく挙げることができる。中でも、光硬化性材料の硬化物に良好な透湿性を付与できる点から2官能ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0035】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、小さすぎると光硬化性材料の硬化物が硬くなりすぎて表示装置に適用した場合に表示ムラが発生し、大きすぎても光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなくなることが懸念されるので、好ましくは20000~50000、より好ましくは30000~40000である。この重量平均分子量は一般的なゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC装置)を用いて測定することができる。
【0036】
また、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの粘度は、低すぎると光硬化性材料硬化物が硬くなりすぎて表示装置に適用した場合に表示ムラが発生し、高すぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなくなる傾向があるので、60℃で好ましくは20000~60000mPa・s、より好ましくは30000~50000mPa・sである。粘度は一般的なB型粘度計を用いて測定することができる。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーのガラス転移温度は、低すぎると光硬化性材料に良好な接着性を付与することができず、高すぎると光硬化性材料の硬化物が硬くなりすぎて表示装置に適用した場合に表示ムラが発生する傾向があるので、好ましくは-30~10℃、より好ましくは-20~0℃である。ガラス転移温度は、一般的な示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
【0038】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分中の100kHzで4.0以上の比誘電率を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、光硬化性材料の接着性及び反応性の観点から、好ましくは20質量%~40質量%、より好ましくは20質量%~30質量%である。
【0039】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分は、本発明の効果を損なわない限り、100kHzで4.0以上の比誘電率を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマー以外の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、例えば、ポリエーテル変性多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等を含有することができる。
【0040】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分が含有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、光硬化性材料に高い極性を付与し、光硬化性材料の硬化物の透湿性を向上させ、偏光板から発生する水分を画像表示装置外へ逃がすために、好ましくはヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを例示することができる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーは、2以上のヒドロキシ基を含有しても良いが、光硬化物の耐水性の低下や粘着力の低下を避ける点からヒドロキシ基が一つであることが好ましい。
【0041】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、アルキルの炭素数は限定されるものではないが、通常C1~12、好ましくはC1~6であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル、tertブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルブチル等が挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、光硬化性材料の光硬化物の透湿性を効率よく高めることができる点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや特に4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
なお、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分は、発明の効果を損なわない限り、ヒドロキシ基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーを含有することができる。ヒドロキシ基を含有しない(メタ)アクリレートモノマーとしては、鎖状炭化水素基含有タイプ、環状炭化水素基含有タイプ等が挙げられる。例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、シクロアルキル又はビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又はヘテロシクロアルキル又はヘテロビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレートを好ましく挙げることができる。シクロアルキル又はビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、好ましくはイソボルニルアクリレートを挙げることができる。ヘテロシクロアルキル又はヘテロビシクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、好ましくはモルフォリルアクリレートを挙げることができる。
【0043】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分中のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーなどの単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、前述したように、光硬化性材料の硬化物の透湿性を向上させたりするために、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
【0044】
成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することが難しく、多すぎると光硬化性材料の硬化時の収縮率が大きくなりすぎることが懸念されるので、好ましくは20質量%~40質量%、より好ましくは25質量%~35質量%である。
【0045】
なお、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分が含有する1種以上の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び1種以上の単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化物相互間の屈折率の差[即ち、成分(a)内屈折率差]は、ダム部及びフィル部の一方から他方へのマイグレーションの点から、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下である。
【0046】
各多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び各単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化物は、各オリゴマー又はモノマー100質量部に、成分(c)の光重合開始剤成分0.5質量部~1.0質量部を混合し、光硬化させたものである。光硬化条件としては、FT-IR法で算出される硬化率が90%以上、好ましくは95%以上となるような条件を適宜選択することができる。一例として、メタルハライドランプで5000mJ/cm以上という硬化条件を挙げることができる。また、本発明において、屈折率の測定は、市販のアッベ式屈折率測定装置を用いて行うことができる。
【0047】
<成分(b)>
本発明の光硬化性材料は、成分(b)として可塑剤成分を含有する。可塑剤は、光照射によりそれ自身が光硬化をせず、光硬化後の光硬化物に柔軟性を付与するものである。このような可塑剤は、他の成分との相溶性の観点から、好ましくはポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールの1種を含有することが好ましい。ポリエーテル系ポリオールを含有することがより好ましい。また、これらの可塑剤成分と混和する一般的なポリマーも可塑剤として使用可能である。このような可塑剤として使用可能なポリマーとしては、併用される成分(b)の可塑剤成分に対して屈折率差が小さいポリマーを好ましく使用できる。例えば、水酸基を含有するポリマーを例示することができる。
【0048】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のポリオールに、アルキレンオキシドを付加重合することにより得られる一般的なポリエーテルポリオールを用いることができる。アルキレンオキシドは、特に限定されず、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0049】
ポリエーテル系ポリオールの市販品としては、例えばADEKA社製の「アデカポリエーテル」が挙げられる。より具体的には、ポリプロピレングリコールである「Pシリーズ」、ビスフェノールAのポリプロピレングリコール付加物である「BPXシリーズ」、グリセリンのポリプロピレングリコール付加物である「Gシリーズ」、トリメチロールプロパンのポリプロピレングリコール付加物である「Tシリーズ」、エチレンジアミンのポリプロピレングリコール付加物である「EDPシリーズ」、ソルビトールのポリプロピレングリコール付加物である「SPシリーズ」、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムコポリマーである「PRシリーズ」、プロピレングリコールにプロピレンオキシド-エチレンオキシドブロックコポリマーを付加させた「CMシリーズ」等が挙げられる。
【0050】
ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、小さすぎると光硬化性材料の硬化物から染み出しが発生する場合があり、大きすぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなくなることが懸念されるので、好ましくは500~8000、より好ましくは1000~5000である。数平均分子量は、一般的なゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC装置)を用いて測定することができる。
【0051】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばジカルボン酸とジオールとを縮合重合することにより得られる一般的なポリエステルポリオールを用いることができる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール等の直鎖構造のジオール;1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等が挙げられる。
【0052】
ポリエステル系ポリオールの市販品としては、「P-1010」、「P-2010」、「P-3010」、「P-2050」(以上、クラレ社製)、「OD-X-102」、「OD-X-668」、「OD-X-2068」(以上、DIC社製)、「NS-2400」、「YT-101」、「F7-67」、「#50」、「F1212-29」、「YG-108」、「V14-90」、「Y65-55」(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0053】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、小さすぎると光硬化性材料の硬化物から染み出しが発生する場合があり、大きすぎると光硬化性材料の取り扱い時に適切な粘度を付与することができなくなることが懸念されるので、好ましくは500~8000、より好ましくは1000~5000である。
【0054】
成分(b)の可塑剤成分の光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると光硬化性材料の硬化物を画像表示装置用の貼合剤として適用する場合に必要な十分な柔軟性が得られず、多すぎると光硬化性材料に十分な接着力を付与できないことが懸念されるので、好ましくは30質量%~60質量%、より好ましくは40質量%~50質量%である。
【0055】
なお、成分(b)の可塑剤成分が2以上の可塑剤を含有する場合、それら相互間の屈折率の差[即ち、成分(b)内屈折率差]は、ダム部及びフィル部の一方から他方へのマイグレーションを抑制する点から、好ましくは0.03以下、より好ましくは0.02以下である。ここで、成分(b)内屈折率差の好ましい上限(0.03以下)を、成分(a)内屈折率差の好ましい上限(好ましくは0.02以下)よりも高くしたのは、成分(b)可塑剤成分が成分(a)よりも粘度が高く、そもそも流動し難いからである。
【0056】
<成分(c)>
本発明の光硬化性材料は、成分(c)として重合形式に応じた光重合開始剤を含有する。中でも、光硬化性材料に高反応性を付与する点から、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の少なくとも1種を含有することがより好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2一ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア127、BASF社製)等を用いることができる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュアTPO、BASF社製)等を用いることができる。その他、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を用いることもできる。
【0057】
本発明の光硬化性材料における成分(c)の光重合開始剤の含有量は、光ラジカル重合開始剤である場合、上述の成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分100質量部に対し、0.2質量部~2質量部が好ましく、0.5質量部~1質量部がより好ましい。このような範囲にすることにより、光照射時に硬化不足となるのをより効果的に防ぐとともに、重合反応によるアウトガスの増加をより効果的に防ぐことができる。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0058】
<成分(d)>
本発明の光硬化性材料は、光硬化性材料の用途等に応じ、成分(d)として公知のフィラーを含有することができる。特に、フィラーとしてシリカを含有することが好ましい。シリカを含有することにより、光硬化性材料に好ましくは2~5、より好ましくは2.5~3.5のチキソ比を付与することができ、ダム剤として有用となるからである。具体的には、小さすぎると光硬化性材料の形状保持が困難となり、大きすぎると光硬化性材料のディスペンサー等からの吐出性が低下するからである。ここで、チキソ比は、一般的な回転粘度計(コーンプレートレオメータ、25℃、コーンC35/2、回転数10rpm)を用いて測定した粘度から計算されるものであり、具体的には、25℃で回転速度1rpm時の粘度を回転速度10rpm時の粘度で除して得られる数値として定義される。
【0059】
このようなシリカの平均粒子径は、小さすぎると光硬化性材料中で2次凝集するリスクが高くなり、大きすぎると光硬化性材料に十分なチキソ性を付与できない可能性があるので、好ましくは7nm以上40nm以下、より好ましくは10nm以上20nm以下である。平均粒子径は一般的なレーザー回折粒度分布計を用いて測定することができる。
【0060】
なお、成分(d)としてのシリカは、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理されたシリカを含有する光硬化性材料は、その硬化物の透湿性や透明性が損なわれることなく、良好なチキソ性を示すことができる。このような疎水化処理としては、シリカの公知のアルキルシリル化処理を好ましく挙げることができる。中でも、炭素数12~18の高級アルキルシリル化処理、特に、以下に説明するようなヘキサデシルシリル化処理が好ましい。
【0061】
シリカのヘキサデシルシリル化処理は常法に従って行うことができる。例えば、未処理表面を有するシリカフィラの表面に存在する水酸基に、ヘキサデシル基を有するシラノールを重縮合反応させることにより行うことができる。
【0062】
また、成分(d)のフィラー(特にシリカ)のBET比表面積は、小さすぎると光硬化性材料に十分なチキソ性を付与できない可能性があり、大きすぎると光硬化性材料中で2次凝集するリスクが高くなる傾向があるので、好ましくは100m/g以上300m/g以下、より好ましくは130m/g以上200m/g以下である。BET比表面積は、所謂BET法により測定することができる。
【0063】
成分(d)のフィラー(特にシリカ)の光硬化性材料中の含有量は、少なすぎると十分なチキソ性が得られなくなり、多すぎると硬化物の透明性が維持できないことが懸念されるので、好ましくは5質量%以上15質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0064】
<光硬化性材料の他の成分>
本発明の光硬化性材料は、上述した成分(a)~(d)の他、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、溶剤、紫外線吸収剤、着色剤、有機または無機フィラー等の公知の樹脂用添加剤を含有することができる。
【0065】
<光硬化性材料の製造方法>
本発明の光硬化性材料は、上述した各成分を、公知の混合手法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0066】
<画像表示装置>
本発明の光硬化性材料は、図1に示すような、画像表示パネル1と前面パネル2とが、フィル部4とその外周を囲むダム部3とから構成された透明樹脂層5を介して積層されてなる画像表示装置10の当該ダム部3又はフィル部4もしくはダム部3とフィル部4の双方を形成するための材料として、好ましく使用することができる。このように、本発明の光硬化性材料を透明樹脂層に適用することにより、ダム部3とフィル部4との境界線においてニットラインを視認されにくくすることができる。なお、透明樹脂層5に接する画像表示パネル表面には偏光板6が配置されていてもよい。このような画像表示装置も本発明の一態様であるが、本発明の画像表示装置は、図1の態様に限定されるものではない。
【0067】
なお、透明樹脂層5が、画像表示パネル1の表示部に対応した位置に存在するフィル部4とその外周を囲むダム部3とから構成されている場合に、ダム部3における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差を0.02以下、好ましくは0.015以下とするだけでなく、フィル部4における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差を0.02以下、好ましくは0.015以下とする。これにより、ダム部3とフィル部4との境界線においてニットラインをより視認されにくくすることができる。更に、ニットラインをより視認され難くするために、ダム部3における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、フィル部4における成分(a)の(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率との差を好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下とし、ダム部3における成分(b)の可塑剤成分の屈折率と、フィル部4における成分(b)の可塑剤成分の屈折率との差も好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下とする。
【0068】
(画像表示パネル1)
本発明の画像表示装置10を構成する画像表示パネル1としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、タッチパネル等が挙げられる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0069】
(前面パネル2)
本発明の画像表示装置10を構成する前面パネル2は、画像表示パネル1の保護パネルとして機能するものである。前面パネル2としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面にハードコート処理、反射防止処理などが施されていてもよい。前面パネル2の厚さや弾性率などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。なお、前面パネル2には、上記のような比較的構成の簡単な部材だけでなく、タッチパネルモジュールのような各種シート又はフィルム材が積層されたものも含まれる。
【0070】
前面パネル2の周縁部には、画像のコントラスト向上のために遮光層が設けられていてもよい(図示せず)。遮光層は、例えば、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷法などで塗布し、乾燥・硬化させて形成することができる。遮光層の厚さは、通常5~100μmである。
【0071】
(透明樹脂層5)
本発明の画像表示装置10の透明樹脂層5は、ダム部3とフィル部4とから構成される。ダム部3は、画像表示パネルの外周に設けられ、その内側にフィル部4が充填されるものである。ダム部3は、通常、幅0.3mm~3mmで高さ0.1mm~2mmの大きさの連続した構造物である。また、金属ベゼル(図示せず)が画像表示パネル1の外縁に設けられている場合には、金属ベゼルと画像表示パネルの境界に、通常、幅0.3mm~3mmで高さ0.1mm~2mmの大きさの連続した別のダム部が設けられていてもよい。
【0072】
(偏光板6)
偏光板6は、偏光子(図示せず)を一対の保護層(図示せず)で挟持したものである。挟持する際、接着剤を用いてもよい。また、偏光板6は、偏光子と保護層以外の他の光学層(例えば位相差板)をさらに備えていてもよい。偏光板6の厚みは、通常0.1mm~0.3mmである。
【0073】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂に、二色性物質(例えばヨウ素化合物)による染色処理と、延伸処理とを施すことによって得られる、周知の構成の偏光子を用いることができる。
【0074】
偏光子を挟持する保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れた熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
<画像表示装置の製造方法>
図1に示す本発明の画像表示装置は、以下に説明するように製造することができるが、限定されるものではない。
【0076】
まず、画像表示パネルの片面に偏光板を常法に従って設置し、その周囲に本発明の光硬化性材料をディスペンサー等によりダム状に塗布し、紫外線の照射により光硬化性ダム部を形成する。
【0077】
次に、光硬化性ダム部で囲まれた領域に、フィル部を形成するための光硬化性樹脂組成物をディスペンサー等により塗布し乾燥して光硬化性フィル部を形成する。これにより光硬化性ダム部と光硬化性フィル部とからなる光硬化性樹脂層を形成する。
【0078】
次に、光硬化性樹脂層上に前面パネルを積層する。
【0079】
続いて、前面パネルを介して紫外線を光硬化性樹脂層に照射することにより光硬化させ、それにより光硬化した透明樹脂層を形成し、図1の画像表示装置が得られる。
【実施例
【0080】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。以下の実施例及び比較例において用いた化合物は以下のとおりである。
【0081】
<成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分>
(オリゴマー)
ポリエーテル系オリゴマー:UV-3700B(ウレタンアクリレートオリゴマー、三菱ケミカル社製)。
(モノマー)
水酸基含有モノマー:4-HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業社製);
環状基含有モノマー:ビスコート200(環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレ―ト、大阪有機化学工業社製);
エーテル基含有モノマー:ビスコート190(エトキシエトキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製);
アルキル基含有モノマー:IDAA(イソデシルアクリレート、大阪有機化学工業社製)。
【0082】
<成分(b)可塑剤成分>
ポリエーテル系可塑剤:アデカポリエーテルP-3000(プロピオングリコールの反応物、ADEKA社製);
水酸基含有ポリマー:エルフォート3122L(2-エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートの重合体、昭和電工マテリアルズ社製)。
【0083】
<成分(c)光重合開始剤成分>
ホスフィンオキサイド系光重合開始剤:SPEEDCURE TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ランサム社製)。
【0084】
<成分(d)シリカ>
表面未処理シリカ:アエロジル200(ヒュームドシリカ、日本アエロジル社製);
疎水化表面処理シリカ:VP NKC130(ヘキサデシル基含有シラン(炭素数16のアルキル基含有シラン化合物)で表面処理されたヒュームドシリカ、日本アエロジル株式会社製)。
【0085】
実施例1~3、比較例1~2
表1に示す成分(a)~(d)及びその他の成分を、常法に従って均一に混合することによりダム部用並びにフィル部用の光硬化性材料を調整した。
【0086】
(ニットラインの視認性評価)
各実施例、比較例で得られた図1の構造を有する画像表示装置の透明樹脂層のダム部とフィル部との境界線のニットラインの目視による視認性評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(評価結果の考察)
表1からわかるように、成分(a)の全体の屈折率と成分(b)の屈折率差に関し、実施例1~3の光硬化性材料は0.02未満となっていたため、ニットラインは視認されなかった。特に、実施例1及び2の光硬化性材料は0.02を大きく下回っていたため、実施例3の光硬化性材料よりもニットラインの視認性が低下していると期待される。
【0089】
一方、比較例1、2の光硬化性材料は、成分(a)の全体の屈折率と成分(b)の屈折率差が0.02を超えていたため、ニットラインが視認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の光硬化性材料は、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分と、成分(b)可塑剤成分と、成分(c)光重合開始剤成分とを含有し、成分(a)(メタ)アクリル酸エステル成分の光硬化物の屈折率と、成分(b)可塑剤成分の屈折率との差が0.02以下となっている。従って、本発明の光硬化性材料を、画像表示パネルと前面パネルとが、透明樹脂層を介して積層されてなる画像表示装置の当該透明樹脂層の形成に適用した場合、透明樹脂層のダム部とフィル部との境界線をニットラインとして視認され難くすることが期待できる。よって、本発明の光硬化性材料は、種々のタイプの画像表示装置の製造に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 画像表示パネル
2 前面パネル
3 ダム部
4 フィル部
5 透明樹脂層
6 偏光板
10 画像表示装置
図1