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特許7578886組成物、回路基板、及び、組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】組成物、回路基板、及び、組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20241030BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20241030BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20241030BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/3472
C08K5/3492
C08K5/357
H05K1/03 610H
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022163014
(22)【出願日】2022-10-11
(65)【公開番号】P2023058453
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2021168125
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】澤木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】上田 有希
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】立道 麻有子
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-030405(JP,A)
【文献】国際公開第2022/113926(WO,A1)
【文献】特表平04-503081(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106009430(CN,A)
【文献】国際公開第2020/090607(WO,A1)
【文献】特開平11-199738(JP,A)
【文献】特開2004-175983(JP,A)
【文献】特開2009-126962(JP,A)
【文献】特開2018-039916(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221643(WO,A1)
【文献】特開2019-199576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂と、熱分解で1質量%減量するときの温度が330℃以上の含窒素複素環化合物と、無機フィラーとを含有し、
波長が355nmの光の吸光度が0.6以上であり、
前記フッ素樹脂は、融点が240~320℃であり、372℃におけるメルトフローレートが0.1~100g/10分であり、
前記含窒素複素環化合物中の含窒素複素環は、3員環~10員環であり、かつ、窒素原子及び酸素原子の合計が2個以上であり、
前記含窒素複素環化合物は、含窒素複素環以外の芳香環を更に含み、
前記芳香環は、前記含窒素複素環化合物の1分子中に1~5個含まれ、
前記無機フィラーは、BET法による比表面積が1.0~25.0m /gである組成物。
【請求項2】
前記含窒素複素環化合物は、非ポリマー系である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記含窒素複素環化合物は、分子量が1200g/mol以下である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記含窒素複素環化合物中の含窒素複素環は、トリアジン環である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
前記含窒素複素環化合物中の含窒素複素環は、前記含窒素複素環化合物の1分子中に1~3個含まれる請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記含窒素複素環化合物は、下記式(1)で表される構造を有する化合物である請求項1又は2記載の組成物。
X-Y (1)
(式中、Xは、含窒素複素環である。Yは、含窒素複素環以外の芳香環である。X及びYは、置換基を有してもよい。)
【請求項7】
前記式(1)で表される構造を有する化合物は、下記式(2A)で表される化合物、又は、下記式(2B)で表される化合物である請求項記載の組成物。
(Y)m1-(X)(-(Y)m2)-(Y)m3 (2A)
(式中、X及びYは、式(1)と同様である。nは、1~3の整数である。m1、m2及びm3は、0~5の整数であり、m1、m2及びm3の少なくとも1つは0でない。Xが複数の場合、同一でも異なってもよい。Yが複数の場合、同一でも異なってもよい。)
(X)n1-(Y)(-(X)n2)-(X)n3 (2B)
(式中、X及びYは、式(1)と同様である。n1、n2及びn3は、0~3の整数であり、n1、n2及びn3の少なくとも1つは0でない。mは、1~5の整数である。Xが複数の場合、同一でも異なってもよい。Yが複数の場合、同一でも異なってもよい。)
【請求項8】
前記含窒素複素環化合物の含有量は、前記組成物に対して0.1~5.0質量%である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項9】
レーザ顕微鏡観察の画像解析において、前記含窒素複素環化合物の5μm以上の塊が1mmの面積あたり2500個未満である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項10】
前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項11】
前記無機フィラーは、紫外線吸収性を持たないものである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項12】
前記無機フィラーは、25℃、1GHzの比誘電率が5.0以下、かつ、25℃、1GHzの誘電正接が0.01以下のものである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項13】
前記無機フィラーの含有量は、前記組成物に対して5~50質量%である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項14】
回路基板の絶縁材料又は基板用誘電材料である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項15】
請求項1又は2記載の組成物と、導電層とを有する回路基板。
【請求項16】
前記導電層は、金属である請求項15記載の回路基板。
【請求項17】
前記金属は、前記組成物側の面の表面粗度Rzが2.0μm以下である請求項16記載の回路基板。
【請求項18】
前記金属は、銅である請求項16記載の回路基板。
【請求項19】
前記銅は、圧延銅又は電解銅である請求項18記載の回路基板。
【請求項20】
プリント基板、積層回路基板又は高周波基板である請求項15記載の回路基板。
【請求項21】
請求項1又は2記載の組成物の製造方法であって、
前記フッ素樹脂及び前記含窒素複素環化合物を溶融混錬し、前記組成物を得る組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、回路基板、及び、組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の高速化に伴い、電気機器、電子機器、通信機器等に用いられる回路基板には、低誘電、低損失の材料が求められている。このような材料としてフッ素樹脂が検討されているが、フッ素樹脂は、紫外線を吸収しにくく、UVレーザ加工性に劣るという点で改善の余地がある。
【0003】
フッ素樹脂の紫外線吸収性を向上させる手法として、特許文献1には、酸化チタン等の金属酸化物をフッ素樹脂に配合する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-37662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、UVレーザ加工性に優れた組成物、回路基板、及び、組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示(1)は、フッ素樹脂と、熱分解で1質量%減量するときの温度が330℃以上の含窒素複素環化合物とを含有し、波長が355nmの光の吸光度が0.6以上である組成物(以下、「本開示の組成物」とも記載する)に関する。
【0007】
本開示(2)は、上記含窒素複素環化合物が、非ポリマー系である本開示(1)の組成物である。
【0008】
本開示(3)は、上記含窒素複素環化合物が、分子量が1200g/mol以下である本開示(1)又は(2)の組成物である。
【0009】
本開示(4)は、上記含窒素複素環化合物中の含窒素複素環が、3員環~10員環であり、かつ、窒素原子及び酸素原子の合計が2個以上である本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0010】
本開示(5)は、上記含窒素複素環化合物中の含窒素複素環が、トリアジン環である本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0011】
本開示(6)は、上記含窒素複素環化合物中の含窒素複素環が、上記含窒素複素環化合物の1分子中に1~3個含まれる本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0012】
本開示(7)は、上記含窒素複素環化合物が、含窒素複素環以外の芳香環を更に含む本開示(1)~(6)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0013】
本開示(8)は、上記芳香環が、上記含窒素複素環化合物の1分子中に1~5個含まれる本開示(7)の組成物である。
【0014】
本開示(9)は、上記含窒素複素環化合物が、下記式(1)で表される構造を有する化合物である本開示(7)又は(8)の組成物である。
X-Y (1)
(式中、Xは、含窒素複素環である。Yは、含窒素複素環以外の芳香環である。X及びYは、置換基を有してもよい。)
【0015】
本開示(10)は、上記式(1)で表される構造を有する化合物が、下記式(2A)で表される化合物、又は、下記式(2B)で表される化合物である本開示(9)の組成物である。
(Y)m1-(X)(-(Y)m2)-(Y)m3 (2A)
(式中、X及びYは、式(1)と同様である。nは、1~3の整数である。m1、m2及びm3は、0~5の整数であり、m1、m2及びm3の少なくとも1つは0でない。Xが複数の場合、同一でも異なってもよい。Yが複数の場合、同一でも異なってもよい。)
(X)n1-(Y)(-(X)n2)-(X)n3 (2B)
(式中、X及びYは、式(1)と同様である。n1、n2及びn3は、0~3の整数であり、n1、n2及びn3の少なくとも1つは0でない。mは、1~5の整数である。Xが複数の場合、同一でも異なってもよい。Yが複数の場合、同一でも異なってもよい。)
【0016】
本開示(11)は、上記含窒素複素環化合物の含有量が、上記組成物に対して0.1~5.0質量%である本開示(1)~(10)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0017】
本開示(12)は、レーザ顕微鏡観察の画像解析において、上記含窒素複素環化合物の5μm以上の塊が1mmの面積あたり2500個未満である本開示(1)~(11)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0018】
本開示(13)は、上記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(12)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0019】
本開示(14)は、上記フッ素樹脂が、融点が240~320℃である本開示(1)~(13)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0020】
本開示(15)は、無機フィラーを含有する本開示(1)~(14)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0021】
本開示(16)は、上記無機フィラーが、紫外線吸収性を持たないものである本開示(15)の組成物である。
【0022】
本開示(17)は、上記無機フィラーが、25℃、1GHzの比誘電率が5.0以下、かつ、25℃、1GHzの誘電正接が0.01以下のものである本開示(15)又は(16)の組成物である。
【0023】
本開示(18)は、上記無機フィラーの含有量が、上記組成物に対して5~50質量%である本開示(15)~(17)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0024】
本開示(19)は、回路基板の絶縁材料又は基板用誘電材料である本開示(1)~(18)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0025】
本開示(20)はまた、本開示(1)~(19)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物と、導電層とを有する回路基板(以下、「本開示の回路基板」とも記載する)に関する。
【0026】
本開示(21)は、上記導電層が、金属である本開示(20)の回路基板である。
【0027】
本開示(22)は、上記金属が、上記組成物側の面の表面粗度Rzが2.0μm以下である本開示(21)の回路基板である。
【0028】
本開示(23)は、上記金属が、銅である本開示(21)又は(22)の回路基板である。
【0029】
本開示(24)は、上記銅が、圧延銅又は電解銅である本開示(23)の回路基板である。
【0030】
本開示(25)は、プリント基板、積層回路基板又は高周波基板である本開示(20)~(24)のいずれかとの任意の組み合わせの回路基板である。
【0031】
本開示(26)はまた、本開示(1)~(19)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物の製造方法であって、上記フッ素樹脂及び上記含窒素複素環化合物を溶融混錬し、上記組成物を得る組成物の製造方法(以下、「本開示の製造方法」とも記載する)に関する。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、UVレーザ加工性に優れた組成物、回路基板、及び、組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、及び、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0034】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0035】
本開示の組成物は、フッ素樹脂と、熱分解で1質量%減量するときの温度が330℃以上の含窒素複素環化合物とを含有し、波長が355nmの光の吸光度が0.6以上である。
本開示の組成物は、上記含窒素複素環化合物を含むことから、フッ素樹脂を含んでいるにも関わらず、吸光度が高く、UVレーザ加工性に優れる。
また、特許文献1に記載された酸化チタン等の金属酸化物を配合した場合、フッ素樹脂の電気特性が損なわれるおそれがあるが、上記含窒素複素環化合物は、電気特性への影響が少ないという利点がある。
さらに、上記含窒素複素環化合物は、熱分解が生じにくいため、溶融混錬でフッ素樹脂と混合することができる。溶融混錬を行うことで、フッ素樹脂中に上記含窒素複素環化合物を良好に分散させ、UVレーザ加工性をより向上させることができる。
【0036】
上記フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン[TFE]の重合体や、TFEと共重合可能な共重合モノマーとの共重合体等を用いることができる。
【0037】
上記共重合モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルエチレン、一般式(100):CH=CFRf101(式中、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、フルオロアルキルアリルエーテル等が挙げられる。
【0038】
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(110):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(120):CF=CF-OCH-Rf121
(式中、Rf121は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(130):CF=CFOCFORf131
(式中、Rf131は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(140):CF=CFO(CFCF(Y141)O)(CF
(式中、Y141はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0040】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf111が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0041】
一般式(110)におけるパーフルオロ有機基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、上記一般式(110)において、Rf111が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf111が下記式:
【0042】
【化1】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf111が下記式:
【0043】
【化2】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0044】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]が好ましく、
一般式(160):CF=CF-ORf161
(式中、Rf161は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーがより好ましい。Rf161は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0045】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)、(130)及び(140)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0046】
一般式(160)で表されるフルオロモノマー(PAVE)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[PMVE]、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[PEVE]、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0047】
一般式(130)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
一般式(140)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0049】
一般式(150)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CFCFSOF)OCFCFSOF及びCF=CFOCFCF(SOF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0050】
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf101が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf101が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf101の炭素数は1~6であることが好ましい。一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFH、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)等が挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0051】
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(170):CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH=CH-C、及び、CH=CH-C13からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0052】
上記フルオロアルキルアリルエーテルとしては、例えば、
一般式(180):CF=CF-CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0053】
一般式(180)のRf111は、一般式(110)のRf111と同じである。Rf111としては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。一般式(180)で表されるフルオロアルキルアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0054】
上記共重合モノマーとしては、組成物の変形を少なくでき、線膨張率を低くできる点で、パーフルオロビニル基を有するモノマーが好ましく、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及び、パーフルオロアリルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PAVE、及び、HFPからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、組成物の半田加工時の変形を抑制できる点で、PAVEが特に好ましい。
【0055】
上記フッ素樹脂は、上記共重合モノマー単位を合計で、全単量体単位の0.1質量%以上含むことが好ましく、1.0質量%以上含むことがより好ましく、1.1質量%以上含むことが更に好ましい。上記共重合モノマー単位の合計量は、また、全単量体単位の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
上記共重合モノマー単位の量は、19F-NMR法により測定する。
【0056】
上記フッ素樹脂としては、組成物の変形を少なくでき、線膨張率を低くできる点で、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)共重合体(PFA)及びテトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0057】
上記フッ素樹脂がTFE単位及びPAVE単位を含むPFAである場合、PAVE単位を全重合単位に対して0.1~12質量%含むことが好ましい。PAVE単位の量は、全重合単位に対して0.3質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが更により好ましく、1.1質量%以上であることが特に好ましく、また、8.0質量%以下であることがより好ましく、6.5質量%以下であることが更に好ましく、6.0質量%以下であることが特に好ましい。
なお、上記PAVE単位の量は、19F-NMR法により測定する。
【0058】
上記フッ素樹脂がTFE単位及びHFP単位を含むFEPである場合、TFE単位とHFP単位との質量比(TFE/HFP)が70~99/1~30(質量%)であることが好ましい。上記質量比(TFE/HFP)は、85~95/5~15(質量%)がより好ましい。
上記FEPは、HFP単位を全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0059】
上記FEPは、TFE単位及びHFP単位とともに、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]単位を含むことが好ましい。
上記FEPに含まれるPAVE単位としては、上述したPFAを構成するPAVE単位と同様のものを挙げることができる。なかでも、PPVEが好ましい。
上述したPFAは、HFP単位を含まないので、その点で、PAVE単位を含むFEPとは異なる。
【0060】
上記FEPが、TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位を含む場合、質量比(TFE/HFP/PAVE)が70~99.8/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。上記範囲内であると、耐熱性、耐薬品性に優れている。
上記質量比(TFE/HFP/PAVE)は、75~98/1.0~15/1.0~10(質量%)であることがより好ましい。
上記FEPは、HFP単位及びPAVE単位を合計で全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0061】
上記TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位を含むFEPは、HFP単位が全単量体単位の25質量%以下であることが好ましい。
HFP単位の含有量が上述の範囲内であると、耐熱性に優れた組成物を得ることができる。
HFP単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは15質量%以下である。また、HFP単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。特に好ましくは、2質量%以上である。
なお、HFP単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0062】
PAVE単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは3質量%以下である。また、PAVE単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。なお、PAVE単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0063】
上記FEPは、更に、他のエチレン性単量体(α)単位を含んでいてもよい。
他のエチレン性単量体(α)単位としては、TFE、HFP及びPAVEと共重合可能な単量体単位であれば特に限定されず、例えば、フッ化ビニル[VF]、フッ化ビニリデン[VdF]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、エチレン[Et]等の含フッ素エチレン性単量体や、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化エチレン性単量体等が挙げられる。
【0064】
上記FEPがTFE単位、HFP単位、PAVE単位、及び、他のエチレン性単量体(α)単位を含む場合、質量比(TFE/HFP/PAVE/他のエチレン性単量体(α))は、70~98/0.1~25/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。
上記FEPは、TFE単位以外の単量体単位を合計で全単量体単位の1質量%以上、好ましくは1.1質量%以上含む。
【0065】
上記フッ素樹脂は、上記PFA及び上記FEPであることも好ましい。言い換えると、上記PFAと上記FEPとを混合して使用することも可能である。上記PFAと上記FEPとの質量比(PFA/FEP)は、9/1~3/7であることが好ましく、9/1~5/5であることがより好ましい。
【0066】
上記PFA、上記FEPは、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0067】
上記フッ素樹脂は、融点が240~320℃であることが好ましい。これにより、溶融混錬を容易に行うことができる。
上記フッ素樹脂の融点は、より好ましくは318℃以下、更に好ましくは315℃以下であり、また、より好ましくは245℃以上、更に好ましくは250℃以上である。
なお、フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0068】
上記フッ素樹脂は、372℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましい。これにより、溶融混錬を容易に行うことができる。
MFRは、0.5g/10分以上がより好ましく、80g/10分以下がより好ましく、40g/10分以下が更に好ましい。
MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0069】
上記フッ素樹脂の比誘電率と誘電正接は特に限定されず、25℃、周波数10GHzにおいて、比誘電率が4.5以下であればよいが、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは2.5以下である。また誘電正接が0.01以下であればよいが、好ましくは0.008以下であり、より好ましくは0.005以下である。
【0070】
上記フッ素樹脂の含有量は、上記組成物に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.0質量%以下である。
【0071】
上記含窒素複素環化合物は、熱分解で1質量%減量するときの温度(以下、1%熱分解温度ともいう。)が330℃以上である。
溶融混錬を容易に行うことができるという点から、上記1%熱分解温度の下限は、好ましくは340℃、より好ましくは350℃である。上限は特に限定されない。
なお、上記1%熱分解温度は、株式会社日立ハイテクサイエンス社製熱分析装置 STA7200を用いて測定した。測定は200mL/minの窒素パージ雰囲気下で行った。アルミ製パンに試料10mgを入れ、25℃で10分間保持した後、10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した。その際の初期質量から1%質量減少温度を1%熱分解温度とした。
【0072】
上記含窒素複素環化合物は、非ポリマー系含窒素複素環化合物であることが好ましい。ポリマー系の場合、溶融混錬後の組成物のフィルム化が難しい場合があるが、非ポリマー系では、溶融混錬した場合であっても、組成物を容易にフィルム化することができる。
なお、上記非ポリマー系含窒素複素環化合物は、ポリマーでないものであれば特に限定されない。
【0073】
上記含窒素複素環化合物は、分子量が1200g/mol以下であることが好ましい。これにより、溶融混錬した場合であっても、組成物を容易にフィルム化することができる。
上記分子量の上限は、より好ましくは1100g/mol、更に好ましくは1000g/molであり、下限は、好ましくは50g/mol、より好ましくは100g/molである。
【0074】
上記含窒素複素環化合物は、含窒素複素環を含むことが好ましい。これにより、優れた光吸収能を付与できる。
【0075】
上記含窒素複素環は、3員環~10員環であり、かつ、窒素原子及び酸素原子の合計が2個以上であることが好ましい。これにより、上記含窒素複素環化合物に優れた光吸収能が付与されるとともに、上記含窒素複素環化合物と樹脂との馴染みやすさが向上する。
【0076】
上記含窒素複素環は、より好ましくは4員環以上、更に好ましくは5員環以上であり、また、より好ましくは9員環以下、更に好ましくは8員環以下である。
【0077】
上記含窒素複素環に含まれる窒素原子及び酸素原子の合計は、好ましくは5個以下、より好ましくは4個以下、更に好ましくは3個以下、特に好ましくは3個である。
なお、上記で説明した窒素原子及び酸素原子の合計は、上記含窒素複素環の環構成原子のみを考慮したものであり、上記含窒素複素環の置換基のものは含まない。
【0078】
上記含窒素複素環の具体例としては、トリアジン環、ベンゾトリアゾール環、オキサジン環、ベンゾオキサジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、テトラゾール環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。なかでも、トリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサジン環が好ましく、トリアジン環がより好ましい。トリアジン環は、1,2,3-トリアジン環、1,2,4-トリアジン環、1,3,5-トリアジン環のいずれであってもよいが、1,3,5-トリアジン環が好ましい。
なお、上記含窒素複素環は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0079】
上記含窒素複素環は、上記含窒素複素環化合物の1分子中に1~3個含まれることが好ましい。上記含窒素複素環の数は、より好ましくは1~2個、更に好ましくは1個である。
なお、ベンゾトリアゾール環等の縮合環の場合、縮合環を1個と数える。
【0080】
上記含窒素複素環化合物は、含窒素複素環以外の芳香環を更に含むことが好ましい。これにより、優れた光吸収能を付与できる。
【0081】
上記芳香環は、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上であり、また、好ましくは10個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは6個以下である。
【0082】
上記芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。なかでも、ベンゼン環が好ましい。
なお、上記芳香環は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0083】
上記芳香環は、上記含窒素複素環化合物の1分子中に1~5個含まれることが好ましい。上記芳香環の数は、より好ましくは2~5個、更に好ましくは3~5個である。
なお、ナフタレン環等の縮合環の場合、縮合環を1個と数える。
【0084】
上記含窒素複素環及び上記芳香環は、置換基を有してもよい。
上記置換基としては特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。なかでも、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキソ基が好ましい。
なお、上記置換基は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
また、上記含窒素複素環及び上記芳香環において、上記置換基の数は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下であり、0であってもよい。
【0085】
上記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
上記アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0086】
上記アルコキシ基は、酸素原子に上記アルキル基が結合したものである。
上記アルコキシ基に結合する上記アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0087】
上記含窒素複素環化合物としては、下記式(1)で表される構造を有する化合物を好適に用いることができる。
X-Y (1)
(式中、Xは、含窒素複素環である。Yは、含窒素複素環以外の芳香環である。X及びYは、置換基を有してもよい。)
【0088】
上記式(1)において、Xが表す含窒素複素環、及び、Yが表す芳香環は、上記で説明したものと同様である。
また、上記式(1)において、X及びYは、直接結合していてもよいし、上記アルキル基等の置換基を介して結合していてもよい。
【0089】
上記式(1)で表される構造を有する化合物として、下記式(2A)で表される化合物、又は、下記式(2B)で表される化合物を好適に用いることができる。
(Y)m1-(X)(-(Y)m2)-(Y)m3 (2A)
(式中、X及びYは、式(1)と同様である。nは、1~3の整数である。m1、m2及びm3は、0~5の整数であり、m1、m2及びm3の少なくとも1つは0でない。Xが複数の場合、同一でも異なってもよい。Yが複数の場合、同一でも異なってもよい。)
(X)n1-(Y)(-(X)n2)-(X)n3 (2B)
(式中、X及びYは、式(1)と同様である。n1、n2及びn3は、0~3の整数であり、n1、n2及びn3の少なくとも1つは0でない。mは、1~5の整数である。Xが複数の場合、同一でも異なってもよい。Yが複数の場合、同一でも異なってもよい。)
【0090】
上記式(2A)及び(2B)において、Xが複数の場合、直接結合していてもよいし、上記アルキル基等の置換基を介して結合していてもよい。Yが複数の場合も同様である。
【0091】
上記式(2A)において、nは、好ましくは1~2、より好ましくは1である。m1、m2及びm3は、好ましくは1~2である。また、n1、n2及びn3の1つが1で、残り2つが1~2であることが特に好ましい。
【0092】
上記式(2A)で表される化合物の具体例として、下記式(2A-1)~(2A-4)で表される化合物が挙げられる。これらの式で表される化合物の具体的な商品としては、BASFジャパン(株)製のTinuvin1600、(株)ADEKA製のアデカスタブLA-F70等が挙げられる。
【化3】
【0093】
上記式(2B)において、mは、好ましくは1~2である。
n1、n2及びn3は、好ましくは1~2、より好ましくは1である。また、n1、n2及びn3の1つが0で、残り2つが1であることが特に好ましい。
【0094】
上記式(2B)で表される化合物の具体例として、下記式(2B-1)~(2B-2)で表される化合物が挙げられる。これらの式で表される化合物の具体的な商品としては、(株)ADEKA製のアデカスタブLA-31RG等が挙げられる。
【化4】
【0095】
上記含窒素複素環化合物の含有量は、上記組成物に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0096】
本開示の組成物は、波長が355nmの光の吸光度が0.6以上である。
UVレーザ加工性がより良好となるという点から、上記光の吸光度の下限は、好ましくは0.7である。上限は特に限定されない。
なお、上記光の吸光度は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V-770」)を用いて、厚み100μmのシート状に成形した組成物に対し、反射配置で測定した際の値である。
【0097】
本開示の組成物は、レーザ顕微鏡観察の画像解析において、上記含窒素複素環化合物の5μm以上の塊が1mmの面積あたり好ましくは2500個未満、より好ましくは2000個以下、更に好ましくは1000個以下である。下限は特に限定されない。この範囲であれば、上記含窒素複素環化合物が良好に分散しており、UVレーザ加工性が特に良好となる。
上記レーザ顕微鏡観察の画像解析は、後述の実施例の方法で行う。
【0098】
本開示の組成物は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、充填剤、架橋剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、発泡剤、発泡核剤、酸化防止剤、界面活性剤、光重合開始剤、摩耗防止剤、表面改質剤、樹脂(但し、上記改質フッ素樹脂を除く)、液晶ポリマー等の添加剤等を挙げることができる。
【0099】
上記他の成分としては、無機フィラーが好ましい。無機フィラーを含むことで、強度の向上効果、線膨張係数の低下効果等が得られる。
【0100】
上記無機フィラーは、紫外線吸収性を持たないものが好ましい。紫外線吸収性を持たないとは、波長が355nmの光の吸光度が0.1未満であることを意味する。
なお、上記光の吸光度は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V-770」)を用いて、厚み100μmとなるように充填した上記無機フィラーの粉末に対し、反射配置で測定した際の値である。
【0101】
また、上記無機フィラーは、25℃、1GHzの比誘電率が5.0以下、かつ、25℃、1GHzの誘電正接が0.01以下のものも好ましい。
【0102】
上記無機フィラーの具体例としては、シリカ(より具体的には結晶性シリカ、溶融シリカ、球状溶融シリカ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、アルミナ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の無機化合物が挙げられる。また、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノライト、バーキュライト、セリサイト等の鉱物が挙げられる。その他の無機フィラーとしては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン等の各種ガラス等を挙げることができる。
【0103】
上記無機フィラーは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
また、上記無機フィラーは、粉体をそのまま使用してもよく、樹脂中に分散させたものを用いてもよい。
【0104】
上記無機フィラーとしては、強度の向上効果、線膨張係数の低下効果に優れるという点で、シリカ、窒化ホウ素、タルク及び水酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、シリカが特に好ましい。
【0105】
上記無機フィラーの形状としては、特に限定されず、例えば、粒状、球状、鱗片状、針状、柱状、錘状、錘台状、多面体状、中空状等を用いることが出来る。特に球状、立方体、鉢状、円盤状、八面体状、鱗片状、棒状、板状、ロッド状、テトラポッド状、中空状であることが好ましく、球状、立方状、八面体状、板状、中空状であることがより好ましい。鱗片状又は針状の形状とすることで、異方性を有するフィラーを配列させることにより、より高い密着性を得ることができる。球状のフィラーは、表面積が小さいため、フッ素樹脂の特性への影響を小さくすることができ、また、液状物に配合した場合に増粘の程度が小さい点で好ましい。
【0106】
本開示の組成物が上記無機フィラーを含む場合、上記無機フィラーの含有量は、上記組成物に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0107】
上記無機フィラーは、平均粒子径が0.1~20μmであることが好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、凝集が少なく、良好な表面粗度を得ることができる。上記平均粒子径の下限は、0.2μmであることがより好ましく、0.3μmであることが更に好ましい。上記平均粒子径の上限は、5μmであることがより好ましく、2μmであることが更に好ましい。
上記平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって測定した値である。
【0108】
上記無機フィラーは、最大粒子径が10μm以下であることが好ましい。最大粒子径が10μm以下であると、凝集が少なく、分散状態が良好である。更に、得られたフッ素樹脂材料の表面疎度を小さいものとすることができる。上記最大粒子径は、5μm以下であることがより好ましい。最大粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、SEM用画像解析ソフトウェアを用いて、無作為に選択した粒子200個の画像データより求めた。
【0109】
上記無機フィラーは、表面処理されたものであってもよく、例えば、シリコーン化合物で表面処理されたものであってもよい。上記シリコーン化合物で表面処理することにより、無機フィラーの誘電率を低下させることができる。
上記シリコーン化合物としては特に限定されず、従来公知のシリコーン化合物を使用することができる。例えば、シランカップリング剤及びオルガノシラザンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
上記シリコーン化合物の表面処理量は、無機フィラー表面への表面処理剤の反応量が単位表面積(nm)あたり0.1~10個であることが好ましく、0.3~7個であることがより好ましい。
【0110】
上記無機フィラーは、例えば、BET法による比表面積が、1.0~25.0m/gであることが好ましく、1.0~10.0m/gであるのがより好ましく、2.0~6.4m/gであるのが更に好ましい。比表面積が上記範囲内であることにより、フッ素樹脂材料中の無機フィラーの凝集が少なく表面が平滑であるため好ましい。
【0111】
本開示の組成物は、上記フッ素樹脂及び上記含窒素複素環化合物を溶融混錬し、上記組成物を得る製造方法により、好適に製造することができる。本開示は、上記製造方法も提供する。
なお、本開示の組成物は、上記製造方法以外の方法、例えば、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空・圧空成形で製造されてもよい。また、溶媒に分散または溶解させた状態であれば、ペースト押出、キャスト法等で製造されてもよい。
【0112】
上記溶融混練に使用する装置は特に限定されず、二軸押出機、単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等を使用できる。
【0113】
上記溶融混練の時間は、1~1800秒が好ましく、60~1200秒がより好ましい。時間が長すぎると、フッ素樹脂が劣化するおそれがあり、時間が短すぎると、上記含窒素複素環化合物を十分に分散できないおそれがある。
上記溶融混練の温度は、上記フッ素樹脂及び上記含窒素複素環化合物の融点以上であればよいが、240~450℃が好ましく、260~400℃がより好ましい。
【0114】
フッ素樹脂と特定の含窒素複素環化合物とを含む本開示の組成物は、UVレーザ加工性及び電気特性(低誘電率等)に優れ、さらに分散性も良好であることを本発明者らは見出した。これらの特性は、回路基板用材料に適したものである。
すなわち、本開示の組成物は、回路基板の絶縁材料や、基板用誘電材料として好適に用いられる。
【0115】
本開示の回路基板は、上述した本開示の組成物と、導電層とを有する。
【0116】
上記導電層としては、金属を用いることが好ましい。
上記金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、銀、金、ルテニウム等が挙げられる。また、これらの合金も使用可能である。なかでも、銅が好ましい。
【0117】
上記銅としては、圧延銅、電解銅等を使用できる。
【0118】
上記金属は、上記組成物側の面の表面粗度Rzが2.0μm以下であることが好ましい。これにより、上記組成物と上記金属とを接合した際の伝送損失が良好となる。
上記表面粗度Rzは、より好ましくは1.8μm以下、更に好ましくは1.5μm以下であり、また、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上である。
なお、上記表面粗度Rzは、JIS C 6515-1998の方法で算出される値(最大高さ粗さ)である。
【0119】
上記導電層の厚みは、例えば、2~200μmであってよく、5~50μmであることが好ましい。
【0120】
上記導電層は、本開示の組成物を含む層の片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。
【0121】
本開示の組成物を含む層の膜厚は、例えば、1μm~1mmであってよく、1~500μmであることが好ましい。より好ましくは、150μm以下であり、更に好ましくは、100μm以下である。
【0122】
本開示の回路基板は、プリント基板、積層回路基板(多層基板)、高周波基板として好適に用いられる。
【0123】
高周波回路基板は、高周波帯域でも動作させることが可能な回路基板である。高周波帯域とは、1GHz以上の帯域であってよく、3GHz以上の帯域であることが好ましく、5GHz以上の帯域であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、100GHz以下の帯域であってもよい。
【0124】
本開示の回路基板は、シートであることが好ましい。本開示の回路基板の厚みは、10~3500μmであることが好ましく、20~3000μmであることがより好ましい。
【実施例
【0125】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0126】
実施例で使用する材料は、以下のとおりである。
(フッ素樹脂)
PFA(TFE/PAVE(質量%):94.6/5.4、融点:303℃、MFR:14g/10分、比誘電率(25℃、10GHz):2.1、誘電正接(25℃、10GHz):0.0003)
FEP(TFE/HFP(質量%):90/10、融点:270℃、MFR:6g/10分、比誘電率(25℃、10GHz):2.1、誘電正接(25℃、10GHz):0.0015)
(含窒素複素環化合物)
上記式(2A-1)で表される化合物(非ポリマー系含窒素複素環化合物、1%熱分解温度:392℃、分子量:606g/mol)
上記式(2A-3)で表される化合物(非ポリマー系含窒素複素環化合物、1%熱分解温度:384℃、分子量:700g/mol)
上記式(2B-1)で表される化合物(非ポリマー系含窒素複素環化合物、1%熱分解温度:341℃、分子量:659g/mol)
(無機フィラー)
シリカ(紫外線吸収性なし(波長が355nmの光の吸光度:0.1未満)、比誘電率(25℃、1GHz):2.8、誘電正接(25℃、1GHz):0.001、平均粒子径:0.5μm、比表面積:6.1m/g)
【0127】
(実施例及び比較例)
フッ素樹脂、含窒素複素環化合物及び無機フィラーを、表1に示す割合(質量%)で、ラボプラストミルミキサーを用いて溶融混錬(時間:600秒、温度:350℃)し、組成物を得た。
得られた組成物を、表1に示す加工温度で押出成形し、表1に示す厚さのシートを得た。
実施例9は、実施例1で得られたシートを銅箔(電解銅、厚み:18μm、シートに接合される側の表面粗度Rz:1.5μm)と積層し、加熱温度:320℃、圧力:15kNで5分間プレスすることにより、銅箔の片面にシートが接合された接合体を得た。
【0128】
(UVレーザ加工性)
上記シートに対し、以下の条件でUVレーザを照射した際の状態を評価した。実施例9は、接合体中のシートにUVレーザを照射した。
孔径:100μm
出力:2W
繰り返しショット数:7回
評価は、下記基準で行った。
◎:完全に貫通し、穴形状に異形無し
〇:一部貫通、または、完全に貫通しているが穴形状に異形有り
×:貫通無し
【0129】
(含窒素複素環化合物の塊の数(レーザ顕微鏡観察の画像解析)、添加剤分散性)
以下の方法で、1mmの面積あたりの含窒素複素環化合物の5μm以上の塊の数を評価した。
試料(シート)を剃刀で切出し、断面をレーザ顕微鏡で観察した。含窒素複素環化合物の塊の数は、倍率150倍で測定した画像で面積0.008mm(縦0.08mm、横0.1mm)の面積当たりの塊の数を数え、1mmの面積あたりの塊の数に換算した。
また、以下に記した基準で、添加剤(含窒素複素環化合物)の分散性を評価した。
◎:レーザ顕微鏡観察の画像解析で含窒素複素環化合物の5μm以上の塊の数が2000個未満
〇:レーザ顕微鏡観察の画像解析で含窒素複素環化合物の5μm以上の塊の数が2000個以上2500個未満であるが、目視評価で均一なもの
×:レーザ顕微鏡観察の画像解析で含窒素複素環化合物の5μm以上の塊の数が2500個以上であり、目視評価で不均一なもの
【0130】
(吸光度)
上記シートに対し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製「V-770」)を用いて、反射配置で、波長が355nmの光の吸光度を測定した。なお、銅張積層板である実施例9は、吸光度を測定していない。
【0131】
(比誘電率(Dk)、誘電正接(Df))
実施例5と比較例1のシートに対して、スプリットシリンダ式誘電率・誘電正接測定装置(EM lab社製)を用いて、25℃、10GHzのDk及びDfを測定した。その結果、実施例5のシートはDk:2.02、Df:0.00034、比較例1のシートはDk:2.08、Df:0.00031であり、含窒素複素環化合物を添加したことによる電気特性の大幅な悪化は見られなかった。
【0132】
【表1】